第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針・コアバリュー・事業コンセプト

 当社グループは、2015年3月19日に東京証券取引所マザーズ市場に上場し、2016年12月21日に東京証券取引所市場第一部へ市場変更いたしました。そして、2022年4月には東京証券取引所スタンダード市場に移行いたしました。Webマーケティングの分野においては、独自の特許技術に基づく自社製品を数多くリリースし、多くの素晴らしいお客様とのご縁をいただきました。

 そして2019年1月から、「おもてなしテクノロジーで人を幸せに」をコアバリューとし、商号を株式会社ショーケースとして新たなスタートを切りました。また、ステークホルダーの皆様に事業戦略がより伝わりやすいよう、ビジネスコンセプトを「企業と顧客をつなぐDXクラウドサービス」に一新いたしました。

 2022年1月には日本テレホン社(現:ReYuu Japan株式会社)と資本業務提携を行い、同年2月に連結子会社化いたしました。Webマーケティング企業としては勿論のこと、多様な人々のニーズに応え課題解決が可能なテクノロジーカンパニーとして、パフォーマンスの高いサービスを開発・提供し、顧客からの信頼を向上させ、収益基盤をより強化する必要があると認識しております。

 

(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループの経営上の目標達成状況を判断するために、売上高成長率を重要な経営指標として位置付け、各経営課題に取り組んでおります。営業利益及び当期純利益については、経営上の目標達成のための戦略的投資や外部環境変化に応じて経営をコントロールするための指標として位置付けるとともに、中長期的な拡大を目指しております。

 

(3)事業上及び財務上の対処すべき課題

 そのために、当社グループは、以下の8点を主な経営の課題として認識しております。

 

① 既存事業の収益の拡大

 当社グループは、インターネットを通じてのサービス提供や、リユーススマートフォンの売買等が主な収益基盤の事業となっておりますが、これらの事業の安定的・持続的な発展が不可欠なものであると考えております。そのためにも継続的なユーザビリティの改善や、安定的なサービス提供及び調達環境が必須であります。今後、機能面において継続的な改善や、保守管理体制の強化、営業体制の再構築等により、信頼性の向上及び顧客獲得増加を実現し、既存事業の収益基盤の拡大を行ってまいります。

 

② 認知度の向上

 当社グループは、収益基盤強化のため、オンライン手続きプラットフォームサービス「おもてなしSuite」、Webマーケティングの最適化サービス「ナビキャストシリーズ」やオンライン本人確認サービス「ProTechシリーズ」、その他サービスの認知度の向上を図ることが必要であり、これらの認知度向上は新規の顧客開拓や優秀な人材の確保に寄与するものと考えております。当社グループとしましては、昨年に引き続き積極的な広報活動やマーケティングを実施することにより認知度向上を目指してまいります。

 

③ 新規事業及び新商品開発による収益基盤の拡大

 当社グループは、急激な事業環境の変化に対応し、競合他社に比べて更なる収益の拡大を図るために、事業規模の拡大と新たな収益源の確保が必須であると考えております。そのため、業界の動向を注視しつつ、また、クライアントの潜在需要をいち早く読み取り、商品戦略の確立や、パートナー企業との提携による新たなビジネスの創出等、新規事業及び新商品開発に積極的に取り組むことで、更なる収益基盤の拡大を推進してまいります。

 

④ アライアンスによるシナジー創出

 当社グループは、今後の新規事業展開や既存事業拡大を加速させていく上で、アライアンスによる事業シナジーの創出が必要と考えております。特に連結子会社であるReYuu社とのグループ間連携においては、両社の強みを融合した新事業・新サービスの創出を目指してまいります。また、企業価値最大化を目的としたM&A等の資本戦略にも注力し、投資活動に関する専門業者からの支援や、投資検討委員会と取締役会を経た検討フローや、投資基準の更なる厳格化などを実施し、精度向上にも努めてまいります。

 

⑤ 情報セキュリティ体制の強化

 当社グループは、インターネットを通じてサービスを提供することを主な事業としております。強固なセキュリティを確保しつつ安定的なサービスを維持・継続するには、サービス提供に係るシステムの安定的な稼働が重要であると認識しております。今後も引き続き、技術的セキュリティ向上のみならず、組織全体のマネジメント体制も含め、情報セキュリティ体制の継続的な改善に努めてまいります。

 

⑥ 技術革新への対応

 当社グループは、新たなインターネット端末等の技術革新に対して適時に対応を進めることが、事業展開上重要な要素であると認識しております。業界内の主要ベンダーや技術コミュニティから発せられる最新情報を定期的に入手し、自社製品に迅速に反映することでサービスの先進性や安定性を確保していく方針であります。また、パートナー企業との連携強化や、オープン・イノベーションへの取組みに注力することで、技術革新に対応できる体制強化に取り組んでまいります。

 

⑦ 人材の確保

 当社グループが今後更に事業を拡大していくためには、優秀な人材の確保と育成が必要不可欠であると考えております。特に技術者の採用においては、他社との獲得競争が激しさを増し、今後も安定した人材確保には厳しい状況が続くものと思われます。採用市場における認知度向上により、競争力の強化を図るとともに、魅力のある職場環境を構築し、社員の能力やモチベーション向上に資するため、研修制度の強化、福利厚生の充実、人事制度の整備・運用を進めてまいります。

 

⑧ 内部管理体制の強化

 当社は、子会社に東証スタンダード上場のReYuu社を有しており、少数株主の保護の観点から、子会社の独立性を確保することが重要であると考えております。こうした状況から当社グループといたしましては、各事業会社の事業運営における独立性は維持しつつも、経営管理を統括する当社を主体として、グループ内のガバナンス強化や各事業会社への経営監視を十分に行うことで、株主価値向上を目的としたグループ一丸となった経営戦略の遂行に努める方針です。加えて、企業の社会的責任を果たすための取り組みや、企業経営のリスクに対応するための内部統制システムの構築及び運用についても、一層の強化を図ります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 

(1)ガバナンス

 当社グループは、経営の効率性及び透明性を高めながら、株主をはじめとした多くのステークホルダーの利益を最大化し、企業価値を向上させるために、コーポレート・ガバナンスの確立が重要な経営課題の一つであると考えております。そのような状況を踏まえ、経営環境の変化に迅速かつ柔軟に対応しながら、関係諸法令を遵守し、経営組織体制を整備運用してまいります。

 当社グループは、経営環境の変化に対応した競争優位性の高い戦略を実践し、迅速な意思決定を行うため、取締役会を月1回開催し、緊急を要する場合には、書面決議による取締役会を開催しております。取締役会には社外取締役及び社外監査役も出席し、専門的な知見をもとにした助言などにより取締役会の監督機能を高めるとともに、活発な議論が交わされるように努め、公正・迅速な意思決定を行っております。

 また、事業リスク等の認識及び対応や、コンプライアンス体制の構築を図るべく、当社の代表取締役社長を委員長とし、取締役、監査役及び顧問弁護士等で構成された「コンプライアンス委員会」を年に6回開催しております。コンプライアンス委員会では、全社に対して法令・定款・規程等違反をはじめとしたコンプライアンス違反を未然に防止するとともに、違反が生じた場合でも速やかに対応をすることで被害を最小限に留めるよう情報の収集や意見交換を行うとともに、社員教育の徹底を行っております。

 

(2)戦略

 当社グループは、「おもてなしテクノロジーで人を幸せに」というコアバリューに基づき、社会の「不」を解消するサービスを通じて、中長期的な企業価値向上を目指すため、サステナビリティの取り組みを検討・推進しております。また、その取り組みにより、ステークホルダーの期待を知り、その期待を上回る幸せを提供することで持続可能な社会の実現を目指してまいります。

 当社グループは、未知の感染症や気候変動による異常気象などによる影響を低減させ、事業継続を図るためにも業務のデジタル化を始めとするDXを推進しており、そのDX推進を通じて、顧客企業の事業成長を支援し、継続的な発展に貢献することで持続可能な社会の実現に寄与するものと考えております。

 また、当社の子会社であるReYuu社においては、リユース関連事業を主要事業として推進しており、リユース関連事業が拡大することで、捨てられることなくリユース端末として再活用される使用済み端末が増加し、廃棄物の削減につながり、循環型社会の実現に近づいていきます。

 人材の多様性の確保を含む人材育成方針として、当社グループは「すべての社員が誠実に仕事に向き合い、挑戦を続け、社員と会社が共に成長できる環境創り」を人事ビジョンとして掲げており、本ビジョンを実現するために、性別や国籍等を問うことなく、また、新卒や中途採用等に関わらず、個人の持つパーソナリティが当社グループの多様性と組織力向上に寄与するかを方針と定めております。

 社内環境整備においては、テレワークの推進を筆頭に、フルフレックス勤務や法定以上の年次有給休暇の付与、副業の許可等、社員が働きやすい勤務形態や環境整備を継続的に実施しております。

 

(3)リスク管理

 サステナビリティに関するリスク管理については、リスク管理規程及びコンプライアンス規程を定めるとともに、取締役会において、中長期的な事業継続に関するリスクの一環として検討がなされている状況であります。その主な内容は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載の通りでありますが、サステナビリティ推進の観点からも、継続したリスク管理の体制化を実施してまいります。

 

(4)指標及び目標

 当社グループは、多様な人材を活かし、その能力を最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造が可能となる環境構築が、当社グループの持続的な成長に重要であることを認識しております。多様性の確保という観点から、女性従業員や外国人等の採用、また、女性管理職の登用等、当社グループで活躍できる環境整備を充実し、中長期的な企業価値向上を目指しておりますが、現時点で測定可能な目標設定や状況の開示には至っておりません。しかしながら多様な人材にとって働きがいがあり、多様性が活かされる組織になることで、持続的な成長を実現してまいります。

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項を以下に記載しております。以下の記載のうち将来に関する事項については、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。

 なお、新型コロナウイルス感染症の拡大、急激な円安の進行及びウクライナ情勢等による当社グループの事業等への影響は、今後状況の経過により当社グループの財政状態、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(1)関連市場及びサービスに関連するリスクについて

 当社グループは、Webマーケティングに関連したDXクラウド事業、広告・メディア事業、投資関連事業、情報通信関連事業を展開する企業です。当社グループはインターネット上におけるサービス提供を中核事業としており、事業の拡大においてはインターネット関連市場の更なる拡大が必要であると考えております。しかしながら、インターネット関連市場に対する新たな規制や技術革新等の要因により、市場の拡大が困難となった場合や新規参入企業との競争が激化した場合、知的財産権の侵害等があった場合には、当社グループの収益力等が低下し経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 自社で蓄積したノウハウや、サービスの技術的開発力、市場ニーズをいち早く汲み取ること等によって、サービスの優位性を強化しリスク低減に努めております。

 また、サービスを安定的に供給するために、クラウドサービスへのサーバーの設置、定期的なバックアップ、稼働状況の常時監視及び脆弱性診断等により、システムトラブルの事前防止及び回避に努めております。

 さらに、当社グループは積極的な知的財産権の取得に努めており、第三者の知的財産権を侵害することのないよう、顧問弁護士等に事前調査等を委託しております。

 これらの対策に努めているものの、自然災害や事故などにより通信ネットワークの遮断又は障害が生じた場合、急激なアクセス増加による負荷の増大によってサーバーが停止した場合には、当社グループがサービスを提供することができなくなり、売上高の減少、システムコストの増加、信頼性の低下等の可能性があります。

 

(2)技術革新について

 当社グループが事業を展開する上での土台となるIT及びインターネット関連業界は、極めて早いスピードで技術革新が続いております。それに応じた業界標準及び利用者ニーズが急速に変化するため、当社グループにおきましては、それらの技術革新による急速な変化に対応すべく、先端技術の知見やノウハウの蓄積、更には優秀な技術者の採用を推進する等、積極的な対応に努めております。

 これらのリスクの顕在化を未然に防ぐため、先端技術の台頭や動向に十分留意するとともに、継続的なシステム投資及び技術者の能力向上に努めておりますが、技術革新への対応が遅れ、当社グループの技術的優位性やサービス競争力の低下を招いた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)法的規制及びコンプライアンス体制に関するリスクについて

 当社グループの事業を規制する主な法規則として、「電気通信事業法」、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」、「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」等、また個人情報の取扱いなどについては、「個人情報の保護に関する法律」等があります。インターネットの利用や関連するサービス及びインターネット関連事業を営む事業者を規制対象とする新たな法令等の規制や既存法令等の解釈変更がなされた場合には、当社グループの事業が制約を受ける可能性があります。また、情報通信関連事業セグメントについて、主として「電気通信事業法」、「消費者契約法」、「携帯電話不正利用防止法」、「古物営業法」及び関連法令の制限を受けており、電気通信事業者としての届出を行っているため、ユーザーの通信の媒介にかかる通信の秘密の遵守等が義務付けられております。

 これらの規制等に従うため、コンプライアンス体制の整備、運用及び改善に努めております。また、プライバシーマーク及び情報セキュリティマネジメントシステム「ISO27001」、「ISO27017」の認証を取得・更新しており、当該公的認証に準拠した規定・マニュアルの整備・運用を行うことで、情報管理体制の強化に努めております。引き続き、細心の注意を払い、関連諸法令遵守に努め、情報漏洩防止に取組み、リスクの低減に努めてまいります。

 これらの対策に努めているものの、コンプライアンス体制の整備の遅れ等によって適切に対応ができず、これらの規制等への違反・抵触が生じ、監督官庁等から処分や指導を受け、当社グループの社会的信用の失墜又は損害賠償請求の発生等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)情報セキュリティについて

 当社グループの事業においては、サービス利用において、ユーザー企業等にかかる個人情報や機密情報が含まれており、これらの情報にかかるデータ等を取り扱っております。

 当社グループは、役職員に対する個人情報取扱いにおける研修の実施、システム上のセキュリティ対策やアクセス権限管理の徹底に加え、プライバシーマーク及び情報セキュリティマネジメントシステム「ISO27001」、「ISO27017」の認証を取得・更新しており、当該公的認証に準拠した規定・マニュアルの整備・運用を行うことで、情報管理体制の強化に努めております。

 なお、当社グループでは、第三者からの不正アクセス攻撃に備えて、サーバーシステム及びソースコードに対するセキュリティ対策を講じることで、情報の漏洩防止にかかわる強化を図っております。また、様々な事業上の各種情報の管理・保管等に関して、規定の策定、社内ネットワークの監視、業務従事者に対する教育、役職員からの誓約書の提出、業務委託先企業に対する管理監督、その他情報セキュリティの確保を継続的に行っております。

 しかしながら、このような対策をとっているものの、万が一、外部からの不正アクセス、システム運用における人的過失、その他想定外の事態の発生により情報等が社外に流出した場合、当社グループの社会的信用の失墜又は損害賠償請求の発生等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)経営体制に関するリスクについて

 当社の代表取締役社長である平野井順一は、幅広い業界でCFOや代表取締役の要職を歴任し、財務を始めとする豊富な経験と実績を有しており、子会社であるReYuu社の代表取締役会長を兼任しております。当社の代表取締役会長である永田豊志は、Webマーケティングに関するノウハウや新規事業の立案、業界での情報収集等に関して豊富な知識と経験を有しており、子会社であるReYuu社の取締役も兼任しております。両者とも当社グループの事業運営において重要な役割を果たしており、経営体制の整備、権限委譲及び次世代を担う人材の育成に注力しているものの、何らかの理由により両氏による事業運営が困難となった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)人材の確保に関するリスクについて

 当社グループが今後の更なる事業拡大を図るためには、営業、開発、管理をはじめとする各部門において、優秀な人材の確保と育成が必要不可欠であると認識しております。

 当社グループにおいては、積極的な採用活動への注力及び社内教育体制の構築等、優秀な人材の確保と育成を行いリスク低減に努めているものの、計画どおりに人材の採用や育成、又は、事業拡大に応じた管理体制の構築が進まなかった場合、想定どおり事業拡大ができない可能性、採用コストの増加の可能性等があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)自然災害・未知の感染症に関するリスク

 当社グループでは、新型コロナウイルス感染症や未知の感染症が発生した場合には国内外経済に悪影響が及び、当社グループの経営成績及び財政状態へも悪影響を及ぼす可能性があります。

 その他、大地震等の自然災害及び火災等により、設備の損壊や電力供給の制限等の不測の事態が発生した場合や予期できない経済又は社会活動の行動変容が起こった場合、当社グループの事業継続、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループの感染症リスクへの社内対策として、新型コロナウイルス感染症拡大以降、原則在宅でのフルリモートワークの実施、週に1回程度の出社とリモートワークを組み合わせたハイブリッド勤務など、従業員の健康を守りつつ、非対面営業体制の確立やデジタルマーケティング等の生産性の向上につなげるための施策を講じております。当社グループとしましては、今後もこれまでの常識にとらわれない、新たな働き方を模索し、最適解を見つけ出してまいります。また、災害対策におきましては、BCPに則り災害時の対策フローを確立し、災害時にも事業継続ができる対策を講じ、リスクの低減に努めております。

 

(8)継続企業の前提に関する重要事象等

 当社グループは、複数の事業を運営している中で、情報通信関連事業において新型コロナウイルス感染症の拡大により調達難等の影響を受けたことで、前連結会計年度から継続して多額の営業損失、経常損失、親会社株主に帰属する当期純損失、マイナスの営業キャッシュ・フローを計上しているため、当連結会計年度末において継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。

 当社グループは、このような状況を解消するため、情報通信関連事業では、事業環境の変化により将来の成長を見込むことが難しいと判断した移動体通信関連事業から撤退し、市場の安定的かつ高い成長率が期待できるリユース関連事業に経営資源を集中させる体制へと移行し、業績回復を図っております。また、各チャネルにおいて取引先との関係強化および新規開拓に努め、来期以降の伸長を見据えた基盤の構築を進めております。

 また、当社グループは翌事業年度の事業計画において売上高の増加を見込んでおりますが、合理的な資金計画に基づいて2024年12月31日まで十分な資金を維持することが可能と判断しておりますので、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。

 

(9)子会社の経営状況に関するリスク

 当社は2022年1月にReYuu社と資本業務提携を行い、同年2月に連結子会社化いたしました。ReYuu社において、以下8つのリスクがあると考えております。

 

① ReYuu社の収益構造について

 当連結会計年度におけるReYuu社の事業部門別の売上構成比は、リユース関連事業が91.4%、移動体通信関連事業が8.1%、その他の事業が0.5%と、リユース関連事業の売上構成比が高いものとなっております。今後につきましては、移動体通信関連事業において運営店舗の事業譲渡および閉店を実施したため、売上高全体に占める割合は、リユース関連事業が100%に近い構成比となることが想定されます。このため、当該事業への依存度が高いことによって、当該事業の業績が悪化した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。利益面から見た場合においても、リユース関連事業においては、円安や半導体不足等の外部要因による調達価格の高騰や、メーカーや移動体通信事業者による新品価格の値下げ等によりリユースモバイル端末の価格優位性が損なわれる等、利益率が低下する可能性があります。

 

② リユース関連事業の運営上のリスクについて

(i)同事業の事業モデルについて

 当事業は、スマートフォン、タブレット、パソコン等の通信端末機器について、リユース品を中心として売買する事業であります。これらの機器が不要となった消費者や国内外の法人企業から同端末機器を買取り、ReYuu社のモバイルリファビッシュセンターにおいて、商品査定、データの消去処理や外装のクリーニング等の処理を施した後、リユースモバイル端末として販売しております。同事業においては、リユースモバイル端末を国内のMVNO事業者や国内外の卸売業者、一般法人企業等へ向けて販売するとともに、ReYuu社運営サイトおよび外部ECモールにおいて、個人向けのオンライン販売を実施しております。

 

(ⅱ)需要の減少について

 リユースモバイル端末の需要は、高機能なスマートフォンの普及や円安に伴って価格が上昇している新品端末機器への買替えを躊躇する顧客層に対してデザインや機能面において遜色のないリユースモバイル端末を低廉な価格で供給することや、低価格帯の通信サービスと組み合わせて2台目としての利用や法人利用を目的とした顧客層に対して低価格で実用的なリユースモバイル端末を提供することで成り立っております。同事業においては、リユースモバイル端末の流通量に応じて調達価格が影響を受けることから、端末メーカーの生産量や移動体通信事業者の販売量の減少の影響からリユースモバイル端末の流通量が減少し、調達価格が高騰することによってそれが販売価格に転稼され、その結果により販売価格が上昇した場合や、移動体通信事業者や端末メーカーによって新品端末機器の大幅な値下げが実施されることでリユースモバイル端末の価格優位性が著しく損なわれ需要が減退し、同事業の事業モデルにより得られる売上高や収益が減少することにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(ⅲ)リユースモバイル端末の仕入について

 リユースモバイル端末の仕入は、国内外のパートナー企業や法人企業からの仕入を実施しております。

 しかしながら、商品の特性上、安価で安定的かつ継続的にReYuu社にリユースモバイル端末が供給されることが保証された環境ではなく、特定のパートナー企業に依存した仕入を実施した場合や、国外からの仕入に依存した場合、パートナー企業の調達状況、為替や国際情勢の状況、資源価格の高騰や半導体不足による仕入価格の高騰等の影響により、合理的な価格でリユースモバイル端末を確保できないことから販売に支障を来すことにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、各移動体通信事業者の販売施策において、次回の買替え時に移動体通信事業者が下取りをすることを前提とした契約の普及等により、リユースモバイル市場への端末機器の流通量が大幅に低下する恐れがあり、その場合、顧客の需要に応じたリユースモバイル端末を確保できないことから販売に支障を来すことにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(ⅳ)主要な販売先について

 同事業の主要な販売先は、株式会社インターネットイニシアティブへの売上高が相対的に大きいものとなっております。各社が要望する商品と、当社の提供可能商品が一致したため、売上が拡大し、売上比率が高まったものであります。

 

③ 法的規制等について

 ReYuu社ではリユース関連事業およびその他の事業を行うにあたって、以下のような法令やガイドライン等の規制を受けており、ReYuu社はこれらの法的規制等を遵守し企業活動を行っております。

 しかし、将来においてこれらの法的規制等が改正された場合、またはReYuu社がこれらの法的規制等に抵触した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

関係する事業

法的規制等

リユース関連事業

その他の事業

電気通信事業法

消費者契約法

携帯電話不正利用防止法

電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン(総務省告示)

オンラインショップを介して商品を提供する場合

特定商取引に関する法律

電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律

リユース品の売買

古物営業法

商標法

事業全般

個人情報の保護に関する法律

 

④ 個人情報の取扱いについて

 ReYuu社では、リユース関連事業においてはリユースモバイル端末の買取等を行う場合やオンラインショップでの販売を行う場合、その他の事業においてはレンタルサービスの申込みを受ける場合において、顧客の氏名、生年月日、住所等の個人情報を取り扱っております。

 個人情報の記載された書類としては申込書等があり、また社内のサーバー内や委託先のクラウド環境、各通信事業者から貸与されている端末には個人情報がデータとして保存されておりますが、ReYuu社では個人情報が記載された書類等について必要時以外はキャビネットの中に入れて施錠をする、また電子データについてはパスワード管理を行う等、厳重に管理を行っております。またReYuu社においては、プライバシーマークおよび情報セキュリティマネジメントISO27001認証(モバイルリファビッシュセンター)取得をしており、セキュリティの強化に努めております。

 しかしながら、書類が盗難等される場合や第三者がネットワークへ不正侵入する等により、個人情報の記載された書類や電子データ等が社外に流出し、個人情報が漏洩する可能性については否定できません。

 その場合、顧客から損害賠償訴訟の提起や賠償金の請求、また既存顧客の信用や社会的な信用の失墜により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 海外の事業展開について

 ReYuu社は、企業として一層の成長を図るため、国内だけではなく、海外での商品の販売と調達の拡大へ積極的に取り組む方針であります。

 しかしながら、取引先相手国における政情、経済、法規制等のカントリーリスクや現地企業に対する信用リスク、為替の影響等、これらのリスクの発生によりReYuu社の方針が奏功せず、係るリスクが顕在化した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 対処すべき課題に対する対応について

 ReYuu社は同社の第36期有価証券報告書の1 経営方針経営環境及び対処すべき課題等に記載のとおり当社グループの事業の進展のために克服すべき当面の課題が認識されており係る課題を早期に克服すべく対応を行ってまいりますがこれらの施策が奏功する保証はなく当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります

 

⑦ 新型コロナウイルス感染症の流行について

 新型コロナウイルス感染症については感染症法上の位置づけが5類感染症となり日常生活の行動制限が撤廃されるなど一定の収束はみられたものの事業環境の急激な変化や経済状況の悪化等のリスクは依然として存在しております

 感染の再拡大等があった場合営業活動が制限されリユースモバイル端末の調達および販売が減少することによって売上高収益ともに減少し当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります

 

⑧ 継続企業の前提に関する重要事象等

 ReYuu社は2022年4月期および2022年10月期(6ヵ月決算)において新型コロナウイルス感染症の影響による調達難等により営業損失を計上する結果となりました

 2023年10月期においては業績回復のため事業環境の変化により将来の成長を見込むことが難しいと判断した移動体通信関連事業から撤退し市場の安定的かつ高い成長率が期待できるリユース関連事業に経営資源を集中させる体制へと移行いたしましたそのような状況の中で同社は各チャネルにおいて取引先との関係強化および新規開拓に努め来期以降の伸長を見据えた基盤の構築には一定の成果を得たものの大型案件の一部不成立等の要因により営業損失を計上する結果となりました

 これらの状況から継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象または状況が存在しております

 しかしながら当連結会計年度末日現在の現金及び預金が1,090百万円当連結会計年度の販売費及び一般管理費が637百万円であることから十分な運転資金を確保できていると判断しておりますまた今後につきましては当期に開拓した新規取引先との取引が本格化することによる業績への貢献が見込まれております成長の見込まれるリユースモバイル端末の市場を中心にチャネル別の戦略に基づき業績の改善に努めてまいります以上により継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における我が国経済は、ウクライナ情勢等の影響はあるものの、新型コロナウイルス感染症が5類に移行し、経済のさらなる回復が期待されております。

 当社グループでは、「おもてなしテクノロジーで人を幸せに」をコアバリューに据え、「企業と顧客をつなぐDXクラウドサービス」をコンセプトに事業を推進しています。

 昨今の新型コロナウイルス感染症拡大以降、リモートワーク等の働き方改革やDX推進、不正口座利用問題によるオンライン本人確認(eKYC等)やマイナンバーカードを利用した公的個人認証サービス、多要素認証(MFA:Multi-Factor Authentication)ニーズ等を受け、非対面取引に関する市場が急拡大しております。

 当社グループが事業展開する主要マーケットの1つである、国内デジタルマーケティング市場は、2020〜2025年にCAGR(年平均成長率)7.2%の6,102億円(※1)と高い成長率が見込まれます。また、国内DX市場規模は、2030年には6兆5,195億円に拡大する見通しです。(※2)

 今後も、これらの成長市場に対して、当社グループの培ったユーザビリティの高い技術を活用し、社会の「不」を解消する価値の高いサービスを積極的に提供してまいります。

 

 

 なお、連結子会社は投資関連事業を行う株式会社Showcase Capitalと情報通信関連事業を行うReYuu社(※3)(東証スタンダード:9425)の2社となります。

 

 

※1 IDC 国内デジタルマーケティング関連サービス市場 セグメント別/産業分野別予測、2020~2025年より

※2 富士キメラ総研『2023 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望 市場編』より

※3 「日本テレホン株式会社」は2024年2月1日をもって、「ReYuu Japan株式会社」に商号変更いたしました。

 

 この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

(a)財政状態

 当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ541,728千円減少し、3,461,127千円となりました。当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ223,991千円増加し、1,951,169千円となりました。当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ765,720千円減少し、1,509,958千円となりました。

 

(b)経営成績

 当連結会計年度における売上高は5,683,668千円(前年同期比22.7%増)、営業損失は285,557千円(前年同期は営業損失530,602千円)、経常損失は298,419千円(前年同期は経常損失541,085千円)、親会社株主に帰属する当期純損失は117,980千円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失526,332千円)となりました。

 

 

 セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

 なお、当連結会計年度より、報告セグメントの変更を行っております。変更の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等) セグメント情報」の「1.報告セグメントの概要 (3)報告セグメントの変更等に関する事項」をご参照ください。

 

<DXクラウド事業>

 今年度の注力事項として掲げておりました、「おもてなしSuite」におけるサイボウズ株式会社(東証プライム:4776 以下、「サイボウズ社」という。)との連携は、2022年12月に「kintone(キントーン)」のサイボウズオフィシャルパートナー(プロダクト)に認定されたほか、2023年3月にはサイボウズ社の元常務執行役員:中原裕幸氏を社外取締役として経営陣に招聘するなど、戦略的な事業運営を行ってまいりました。2023年5月に「ショーケース LLM Labs(※4)」を立ち上げ、2023年11月にはkintoneでの業務をサポートするAIアシスタント「Associate AIHub for kintone(※5)」のプロトタイプを開発しました。このサービスはサイボウズ社が開催するCybozu Days 2023年11月のProduct Keynote(基調講演)にて発表され、2024年上期中の販売開始を予定しております。

 

 今後も「おもてなしSuite」はkintoneとの連携を軸に、フォーム作成や会員機能を持ったマイページ作成などの機能を備えたDXソリューションと、「有人・AIによる無人の両方に対応可能なチャット機能」を備えたWeb接客ソリューションの統合Webプラットフォームとして、企業や自治体への導入を進めてまいります。

 

※4 生成AIの急速な発展を受けて、大量のテキストデータによって学習するLLM(自然言語処理モデル)を活用した新規プロダクト開発、協業企業との概念実証(PoC)、LLM導入コンサルティングを行う目的で立ち上げた社内プロジェクト。

※5 名称は仮のものであり、今後変更される可能性がございます。

 

 2023年7月に「ナビキャストシリーズ」「ProTechシリーズ」の一部製品における価格改定を行いました。その影響として、解約率2~5%を見込んでおりましたが、当連結会計年度の解約率は1.78%と、予想よりも低い解約率となりました。結果としてARR(Annual Recurring Revenue、年次経常収益)は昨年度と比較し11.8%成長いたしました。

 オンライン本人確認/eKYCサービス「ProTech ID Checker(プロテック アイディー チェッカー)」では、2023年6月より販売開始したマイナンバーカードを活用した本人確認「公的個人認証サービス」をきっかけに認知度が拡大しました。その結果、今年度は前期比で51%成長し、累計導入社数は2023年12月末時点で190社を突破いたしました。利用企業は金融機関、古物商、法律事務所、レンタルショップなど多岐に亘っています。引き続き、利用企業の拡大を目指してまいります。

 

 以上の結果、DXクラウド事業全体における売上高は1,255,169千円(前年同期比7.3%増)、セグメント利益(営業利益)は494,072千円(前年同期比44.4%増)となりました。

 

<広告・メディア事業>

(広告関連サービス)

 広告関連サービスについては、従来から提供してきた運用広告関連サービスに加え、顧客のニーズに合わせたSNS広告運用サービス等の提供により、安定的に売上貢献をしております。

 

(オウンドメディア)

 主力となるスマートフォン関連ニュース系メディア「bitWave」・「スマホのススメ」・「ひかりチョイス」に、今期からスタートした「なるほどスマホ」・「スマホ365」を加えたラインナップで、2023年9月のiPhone15販売期を迎えました。今期も送客数は堅調で、2023年スマートフォン関連SEOメディアの送客数は国内最大級(※当社調べ)となりました。

 今期の注力事項として新メディアの立ち上げを掲げており、2023年11月はDXHUB株式会社(京都府京都市下京区)との共同で、光回線・格安SIM・Wi-Fi・ホームルーターをわかりやすく比較するメディア「Nextline」をリリースしました。

 

 

 今期はSEOメディアへの集中の方針を策定し、今期の初めに広告由来のメディアを停止いたしました。また、主力となるスマートフォン関連ニュース系メディアの一部において、Googleの検索アルゴリズムの順位変動が影響し、重要なKPIである送客数と成果報酬単価は昨年よりも低下する結果となりました。

 新たなユーザーとのタッチポイント獲得を目的として、新メディアの立ち上げに取り組んだ結果、今期は合計6メディアを新たにスタートさせることができました。今後は立ち上げたメディアの収益化に特化し、既存のアセットの成長に注力してまいります。

 

 以上の結果、広告・メディア事業全体における売上高は342,331千円(前年同期比22.5%減)、セグメント利益(営業利益)は66,207千円(前年同期比4.7%減)となりました。

 

<投資関連事業>

 投資関連事業を手掛ける株式会社Showcase Capitalは、スタートアップと事業会社やVC・CVCをオンラインでマッチングするプラットフォーム「SmartPitch(スマートピッチ)」等を通じて、スタートアップ・エコシステムの形成の一助となる活動に取り組んでおります。本書提出日現在、登録数はスタートアップ企業側が480社超、事業会社等の投資家側も220社以上が登録されています。今年度はオフラインイベントも開催し、年間で合計約300名の投資家・起業家が参加しました。

 今後も事業会社・投資家とスタートアップのマッチングの支援を通じて、スタートアップ・エコシステムへの貢献を目指してまいります。

 

 以上の結果、投資関連事業全体における売上高は13,103千円(前年同期比82.1%減)、セグメント損失(営業損失)は43,241千円(前年同期はセグメント損失(営業損失)19,295千円)となりました。

 

<情報通信関連事業>

 情報通信連事業を手掛けるReYuu社におきましては、中古スマートフォンの販売を中心としたリユース関連事業を展開しております。

 

 MVNO事業者チャネルでは、商品保証付き認定リユース品の商品展開、端末のオンライン買取サービスの提供等をフックとして、パートナー企業との連携を拡大・強化してまいりました。また、来期以降の伸長へ向けた基盤の確立のため、卸販売だけでなくレンタルのスキームも組み合わせて新規取引先の開拓を積極的に実施し、一定の成果を上げることができました。

 国内法人チャネルにおいては、リユースパソコンの取扱高が好調に推移いたしました。リユースモバイル端末の売買につきましては、円安傾向が国内同業向け商品の調達に及ぼす影響への対策として、既存ネットワークの関係強化と、きめ細やかな価格調整による成約率上昇に向けて取り組みを実施しております。

 個人向けオンラインチャネルにおいては、有力モールへの出店と自社サイトのリニューアルが予定どおり完了いたしました。当社が持つオンライン領域での強みを活かしたSEO対策等の販売促進施策と並行して、ReYuu社独自の商品戦略・調達力を活用してリユースパソコンの新規追加を中心とする商品ラインナップの強化を行った結果、売上高・利益ともに当初の想定を上回りました。

 グローバルチャネルにおいては、中古端末の国際的な集積地となっている香港およびドバイにおいて海外事業者の開拓が進み、取引社数および取引量が伸長いたしました。

 関連して、商品の再生や物流を管理するモバイルリファビッシュセンターでは、再生業務および工程管理の効率化が進んでおり、取扱量増加に耐えうるキャパシティの確保に引き続き取り組んでおります。

 

 以上の結果、情報通信関連事業全体における売上高は4,089,442千円(前年同期比38.5%増)、セグメント損失(営業損失)は244,624千円(前年同期はセグメント損失(営業損失)193,115千円)となりました。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の期末残高は、1,288,935千円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況及び主な変動要因は次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果使用した資金は、181,986千円(前年同期は806,471千円の使用)となりました。主な増加要因は、売上債権及び契約資産の減少額172,098千円、のれん償却額100,730千円、減価償却費96,502千円であります。主な減少要因は、税金等調整前当期純損失185,323千円、棚卸資産の増加額151,405千円、事業譲渡益135,431千円、仕入債務の減少額119,665千円であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果得られた資金は、51,630千円(前年同期は249,882千円の獲得)となりました。無形固定資産の取得による支出219,827千円等により資金を使用した一方で、事業譲渡による収入248,615千円等により資金を獲得したことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は、215,926千円(前年同期は311,974千円の獲得)となりました。短期借入金の純増加額500,000千円、長期借入れによる収入180,000千円等により資金を獲得した一方で、自己株式の取得による支出599,998千円、長期借入金の返済による支出293,826千円等により資金を使用したことによるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の状況

(1)生産実績

 当社グループは、生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

(2)受注実績

 当社グループのサービスは、受注から納品までの期間がきわめて短いため、記載を省略しております。

 

(3)販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

DXクラウド事業

1,251,303

107.1

広告・メディア事業

337,831

77.3

投資関連事業

13,053

17.8

情報通信関連事業

4,080,760

138.2

その他(注)1

720

81.8

合計

5,683,668

122.7

(注)1.「その他」の区分は報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、経営管理業務受託事業等であります。

2.セグメント間取引については、相殺消去しております。

3.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。なお、最近2連結会計年度における主な相手先別の販売実績のうち、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満の相手先については、記載を省略しております。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

兼松コミュニケーションズ株式会社

511,094

11.0

エヌ・ティ・ティレゾナント株式会社

487,990

10.5

株式会社インターネットイニシアティブ

1,118,026

19.7

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 なお、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う会計上の見積りに与える影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(a)財政状態の分析

(資産)

 当連結会計年度末における資産合計は、3,461,127千円(前連結会計年度末比541,728千円の減少)となりました。これは主に、ソフトウエア仮勘定が172,222千円増加した一方で、現金及び預金が346,514千円、売掛金が101,194千円、のれんが100,730千円、契約資産が71,594千円減少したことによるものであります。

 

(負債)

 当連結会計年度末における負債合計は、1,951,169千円(前連結会計年度末比223,991千円の増加)となりました。これは主に、買掛金が119,895千円、長期借入金(1年内返済予定含む)が113,826千円減少した一方で、短期借入金が509,998千円増加したことによるものであります。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は、1,509,958千円(前連結会計年度末比765,720千円の減少)となりました。これは主に、自己株式が599,998千円増加したこと、親会社株主に帰属する当期純損失117,980千円を計上したことによるものであります。

 この結果、自己資本比率は25.5%(前連結会計年度末は39.9%)となりました。

 

(b)経営成績の分析

(売上高)

 当連結会計年度の売上高は、中核事業であるDXクラウド事業のストック売上の向上、既存顧客へのコンサルタントによる追加提案売上、オンライン本人確認/eKYCサービス「ProTech ID Checker」や企業と顧客をつなぐプラットフォーム「おもてなしSuite」の販売数増加、DX支援開発による受託開発案件の納品、「bitWave」「スマホのススメ」等の販売送客アフィリエイト収益、リユースモバイルの販売・レンタル等により5,683,668千円(前年同期比22.7%増)となりました。

 

(営業利益)

 売上原価は、4,078,819千円(前年同期比38.9%増)、販売費及び一般管理費は1,890,406千円(前年同期比15.1%減)となりました。販売費及び一般管理費の主な減少要因は、2022年に行ったTVCM等の広告宣伝費の減少によるものであります。

 この結果、営業損失は285,557千円(前年同期は営業損失530,602千円)となりました。

 

(経常利益)

 貸倒引当金戻入額8,140千円、保険解約返戻金4,736千円、支払利息12,797千円、棚卸資産除却損7,747千円等が発生したことにより、経常損失は298,419千円(前年同期は経常損失541,085千円)となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 事業譲渡益135,431千円、情報セキュリティ対策費18,247千円、減損損失10,273千円等が発生したことにより、親会社株主に帰属する当期純損失は117,980千円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失526,332千円)となりました。

 

(3)資本の財源及び資金の流動性

① キャッシュ・フローの状況の分析

 キャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

② 資金需要

 当社グループの主な運転資金需要は、今後の成長基盤となる開発人員・営業人員に対する投資及び開発に係る業務委託や広告宣伝費などであります。また、主な投資資金需要は、外部リソースを積極的にグループに取り入れるためのM&Aやベンチャーキャピタル投資における新規案件への投資に係るものであります。

 

③ 財務政策

 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保すること、将来の不確実性に備えて比較的厚めのキャッシュポジションとすることを基本方針としております。そのうえで、短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を、投資資金や長期運転資金の調達につきましては金融機関からの長期借入や第三者割当増資による調達を行う方針であります。

 

(4)経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりでありますが、外部要因と内部要因に大別されます。

 外部要因としては、自然災害によるサーバー停止、インターネット関連市場の新たな規制や技術革新、競合他社との競争激化、法的規制の変化等により影響を受ける可能性がありますが、このような環境下において、当社グループの売上は堅調に推移しております。

 内部要因としては、システム障害、コア事業であるDXクラウド事業への依存、特定人物への依存、優秀な人材の確保や育成、情報漏洩による情報セキュリティの管理等の影響を受ける可能性がありますが、組織体制の整備及び内部管理体制の強化により、これらのリスク要因に対応するよう努めてまいります。

 

(5)経営者の問題意識と今後の方針について

 経営者の問題意識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりでありますが、収益拡大のためには既存事業の拡大及び認知度の向上のための広報活動やマーケティング、新規事業及び新商品の開発や投資事業によるシナジー創出が必要不可欠であると認識しております。そのためには、優秀な人材の確保や組織体制の整備をこれまで以上に強化し、これらの課題に対して企業価値向上を図るべく、当社グループ経営陣は最善の事業戦略を立案するよう努めてまいります。

 

(6)経営戦略の現状と見通し

 当社グループは、企業のWebサイト分析・解析支援を行うDXクラウド事業を中心に、広告・メディア事業、オンライン本人確認/eKYCやDX支援開発などの新規事業を通じて、企業価値の向上に取り組んでおります。企業と顧客のオンライン手続きを「見やすく、わかりやすく、安全に」するプラットフォーム構築を目指す「おもてなしSuite」は、順調にMRRの比率を拡大しております。成長エンジンであるオンライン本人確認/eKYC「ProTech ID Checker」や「おもてなしSuite」の開発と販売への投資を強化してまいります。また、有力パートナー企業とのアライアンスを実現させ、事業成長を加速してまいります。そして、中核事業の拡大を目的とするM&A戦略を進め、中期的な企業価値の向上と株主還元を目指してまいります。

 

5【経営上の重要な契約等】

資本業務提携契約(日本テレホン株式会社(現、ReYuu社))

契約会社名

相手方の名称

契約期間

契約内容

株式会社

ショーケース

日本テレホン株式会社(現、ReYuu社)

契約締結日(2022年1月26日)から両社が合意した日または当社がReYuu社の株式を保有しなくなった日のいずれか早い日まで

(資本提携)

・ReYuu社が当社に対し、普通株式を第三者割当の方法により発行

(業務提携)

①「eKYC」に関する技術を利用したReYuu社のオンライン買取サービス、買取プラットフォームおよびAIを利用した自動査定・買取システムの構築・導入

②ReYuu社の法人向けレンタルサービスにおけるサブスクリプションモデル強化

③リユースモバイル事業全体のDX推進

④その他、両社が別途協議し合意する事項

(その他)

・当社はReYuu社の取締役の構成員の総数に対して当社が指名した取締役の数が過半数となるよう、取締役候補者を指名する権利を有する

 

ReYuu社(連結子会社)の事業譲渡契約

 連結子会社であるReYuu社は、2022年11月25日開催の取締役会において、リユース関連事業に経営資源を集中させることを目的に、ReYuu社の運営する移動体通信事業者ブランドによる3店舗の専門ショップにつき、ITXコミュニケーションズ株式会社に対してauショップ2店舗を事業譲渡すること、株式会社テレックス関西に対してドコモショップ1店舗を事業譲渡することを決議いたしました。

 このうち、ITXコミュニケーションズ株式会社に対するauショップ2店舗の事業譲渡については、2023年2月1日に事業譲渡契約を締結し、事業譲渡を行いました。また、株式会社テレックス関西に対するドコモショップ1店舗の事業譲渡については、2023年4月1日に事業譲渡契約を締結し、事業譲渡を行いました。

 詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (企業結合等関係) 事業分離等」に記載のとおりであります。

 

重要な契約の解除及び株式譲渡契約(特定の株主からの自己株式の取得)

 当社は、2023年7月20日開催の取締役会において、AI inside株式会社(以下、「AI inside社」という。)との資本業務提携(以下、「本資本業務提携契約」という。)を解消することを決議し、2023年7月20日付でAI inside社と本資本業務提携契約の解消に係る合意書を締結いたしました。

 併せて、AI inside社が保有する当社株式の全部又は一部を当社が取得することを決議し、2023年9月20日開催の臨時株主総会(以下、「本臨時総会」という。)に、「特定の株主からの自己株式取得の件」を付議することを決議いたしました。会社法第156条第1項及び第160条第1項の規定に基づき、相対取引による自己株式の取得(以下、「本自己株式取得」という。)を行うものであり、本自己株式取得が本臨時総会で承認されること等を条件として、AI inside社と本自己株式取得に関する株式譲渡契約を締結いたしました。

 本臨時総会において、本自己株式取得が承認されたため、2023年9月21日付で、AI inside社が保有していた当社の普通株式1,771,100株(議決権所有割合20.67%)のうち、1,612,900株を当社が取得し、AI inside社の所有株式数は158,200株(議決権所有割合2.27%)となりました。また、製品の開発及び販売等の共同事業を目的とした業務提携について解消いたしました。

 

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、急激な事業環境の変化や、競合他社に比して更なる収益の拡大を図るために、利用者ニーズの急激な変化をいち早く察知し、新たな技術・サービスを提供することが必須であると考えております。そこで、当社グループでは、この急激な変化に柔軟に対応しつつ顧客満足度の向上を目指すため、研究開発活動を行っております。

 

 以上の結果、当連結会計年度における研究開発費の総額は1,081千円となりました。