当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
<経営方針>
(1) 企業理念
当社グループは、以下の企業理念に基づき、様々な産業分野に特色のある高品質な化学製品を提供することを主方針として経営諸活動を遂行しております。
・ 企業使命 「化学の力」で、よりよい明日を実現する。
・ 経営姿勢 確かな技術と豊かな発想で、夢を「かたち」にする。
・ 行動指針 「新たな一歩」を踏み出して、さらなる高みに挑戦する。
・ 安全指針 自分を守る、仲間を守る。
(2) VISION 2030
当社グループは中長期的な視点から目指す姿を描くとともに、実現に向けた道筋を示すものとして「VISION 2030 ~世界で輝くスペシャリティケミカル企業~」を策定しております。
VISION 2030において、当社グループが目指す具体的な姿は以下の3点です。
目指す姿① 地球温暖化抑制・豊かな暮らしに貢献するスペシャリティケミカル素材を提供
事業活動を通じて地球温暖化抑制に資する製品や、よりよい暮らしに貢献できる素材を世界に向けて提供してまいります。
目指す姿② 戦略ドメインで世界シェアNo.1製品と新事業を拡大
当社が強みをもつ、冷凍機油原料、化粧品原料、高純度溶剤分野の製品を核とし、設備投資や研究開発など集中的に資源を配分する領域として、戦略ドメインを「環境」「ヘルスケア」「エレクトロニクス」に設定しました。この戦略ドメインにおいて、世界シェアNo.1の製品を拡大するとともに、新たな事業や製品を創出します。
目指す姿③ 国内で化学業界トップクラスの利益率
戦略ドメインにおいて、高付加価値で独自性の高い製品に対して生産能力の増強や新製品の開発を進め、AIやIoT等の最新技術を取り込み、生産効率を向上させることで、国内の化学業界の中でもトップクラスの営業利益率を目指します。
なお、2030年長期経営目標として、売上高 1,800億円、営業利益 250億円超、ROE 12%超、自己資本比率 50%を掲げております。
(3) 第4次中期経営計画
当社グループは、VISION 2030の達成に向けて、2022年度から2024年度の3ヵ年を対象とした第4次中期経営計画を策定し、その基本方針を「サステナブル経営の推進」と位置づけ、持続可能な社会の実現に貢献するとともに企業価値向上を図ってまいります。なお、基本戦略として以下の3つを掲げ、各種施策を推進しております。
戦略Ⅰ 戦略ドメインにおける更なる成長
戦略Ⅱ 社会課題解決に向けた中長期的な取り組み
戦略Ⅲ ビジネス基盤の強化
なお、経営数値目標としては、2022年度~2024年度までの期間累計連結営業利益 486億円、
期間累計連結EBITDA 635億円、ROE 15%以上としており、目標達成に向けて邁進してまいります。
(注)EBITDA=営業利益+減価償却費+のれん償却費
以上のような、長期ビジョン及び中期経営計画のもと、2024年において、次のように、経営環境を認識し、様々な課題に全社一丸となって取り組んでまいります。
<経営環境>
中期経営計画の策定以降、外部環境は、当初の想定から大きく変化しており、ウクライナや中東情勢といった地政学リスクの高まりや、インフレに伴う各国の金融引き締めなど、世界経済の不透明感が高まっております。
とりわけ、当社グループを取り巻く経営環境は、中国経済の減速や半導体市場の低迷などによる需要減少に加え、物価高騰に伴い原燃料、物流、建設・メンテナンス等の主要コストが著しく増大するなど厳しさを増しております。
<対処すべき課題>
上記、経営環境の下、当社グループは、喫緊の課題である高経年化に伴う生産トラブルを低減させるため、予防保全を推進し、プラント設備の維持管理をより高いレベルに引き上げてまいります。さらに、機器異常を初期段階で検知することによりトラブルを未然に防ぐ、予兆診断システムを導入するほか、従業員への安全教育を実施するなど各施策を講じ、安全・安定操業へと繋げてまいります。一方、物価高騰等に伴うコストの増加に対しては、生産効率の最適化などによりコスト削減を図るとともに、適切なタイミングで製品価格に転嫁することで、収益を改善させてまいります。さらに、各業務執行ラインを統括するCxO(最高執行責任者)を新たに設置し、業務執行における権限と責任をより明確化することで、迅速かつ適切な業務遂行を実現いたします。
一方、中長期的な成長に向けた取組みでは、当社の主力製品である冷凍機油原料において、千葉工場での設備能力の増強を計画通り本年夏に完成させ、スムーズな立ち上げを行うことで、拡大する需要を積極的に取り込んでまいります。加えて、グループ会社の黒金化成株式会社で進行中の次世代半導体向け材料設備の増強工事を秋口に完工させ、成長が期待される最先端分野を中心に拡販を図ります。
また、新規事業の創出に向けたスタートアップ企業などとの協業や、既存事業における新製品開発を推進いたします。さらに、事業ポートフォリオの見直しを進め、成長分野への経営資源の投入を加速させてまいります。
カーボンニュートラル実現に向けた取組みとしましては、2023年に決定したCO2回収装置の設備投資について、2025年上期の完工に向け、準備を進めてまいります。本装置を用いることで、自社の製造工程において発生するCO2を回収し、当社のコア技術であるオキソ反応の原料として再利用することが可能となります。
これらの施策を実現するため、引き続き、ビジネス基盤を強化してまいります。具体的には、次世代リーダーの育成や社員の自律的なキャリア形成に向けた施策を拡充するなど、人的資本へ経営資源をより一層投じてまいります。また、プラント高度制御システムや予兆診断システムへのビッグデータの活用、業務改善システム導入による生産性向上、知的財産管理システムの導入など、DXを推進してまいります。
コーポレートガバナンスにつきましては、取締役会の監督機能を一層強化することを目的に、監査等委員会設置会社へ移行いたします。また、株価や資本コストを意識した経営の徹底、リスク管理レベルやコンプライアンス意識の向上などにより、企業価値の最大化を図ってまいります。
以上の取組みを推し進めるとともに、2025年度から始まる第5次中期経営計画へと繋げてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般
当社グループは「「化学の力」で、よりよい明日を実現する。」を企業使命とし、事業を通じ「安心・安全・信頼」を基盤として「環境に優しい社会」「人々の豊かな暮らし」に寄与する価値を提供するとともに、持続可能な社会に貢献することで、当社自身も持続的に企業価値を向上していく「サステナブル経営」を推進しています。
① ガバナンス
「
② 戦略
当社グループは、VISION 2030の実現に向け、第4次中期経営計画の基本方針を「サステナブル経営の推進」と定め、当社の企業価値をさらに向上させることを目指し、以下の3つの基本戦略を掲げ、各種施策を推し進めています。
戦略Ⅰ 戦略ドメインにおける更なる成長
戦略Ⅱ 社会課題解決に向けた中長期的な取り組み
戦略Ⅲ ビジネス基盤の強化
③ リスク管理
当社グループは、
④ 指標及び目標
当社の持続可能なあり方を「サステナブル経営」としてまとめ、これを推進するためにステークホルダーの皆様との「7つの約束」を定めました。この7つの約束を実践する上で、「VISION 2030」における目指す姿と現状とのギャップを長期的な視点で洗い出し、その中からステークホルダーの皆様への影響度と自社への影響度が特に大きい重要課題を「マテリアリティ」として特定しております。
当社は、マテリアリティに対して、KPIを設けて真摯に取り組むことで、サステナブル経営を推進する7つの約束を実践していきます。KPIについては取締役会において定期的に進捗管理を行っており、未達の項目があれば対策を講じています。このKPIの達成状況については継続的に開示を行い、これをベースとしたステークホルダーの皆様との建設的な対話の充実に努めています。
(7つの約束、マテリアリティ、KPI)
7つの約束 |
マテリアリティ |
マテリアリティに対するKPI(注) |
|
1 |
社会課題解決に |
① 戦略ドメインを中心とした ② イノベーションの促進 ③ 成長基盤を強固にする |
① 冷凍機油原料の販売数量の伸び率 ②③ 研究開発における外部機関との |
2 |
環境への負荷低減を意識した事業活動を行うこと |
④ エネルギー効率の向上とCO2 ⑤ 化学物質の適正管理 |
④ GHG排出量(CO2換算) ④ エネルギー原単位 ⑤ 産業廃棄物最終埋立処分量 |
3 |
安全・安定操業を |
⑥ 地域に配慮した工場の ⑦ 顧客への責任ある安定供給 |
⑥ スマート保安の計画的な導入 ⑦ 生産計画の達成状況 |
4 |
高い倫理観を持った透明性ある経営を |
⑧ コーポレート・ガバナンスと ⑨ コンプライアンス ⑩ ステークホルダーとの透明で |
⑧ リスクマップによる重要リスクの抽出と ⑨ 全事業場へのコンプライアンス教育研修 ⑩ 投資家との面談回数 |
5 |
多様な人財が |
⑪ 従業員の安全衛生 ⑫ サステナブル経営を支える ⑬ 従業員エンゲージメント向上と |
⑪ 社員休業労働災害件数 ⑫ 総合職に占める女性社員比率 ⑫ 採用者(3年未満)の離職率 ⑬ エンゲージメント調査のスコア ⑬ 年次有給休暇取得率 |
6 |
責任あるサプライチェーンマネジメントを推進すること |
⑭ CSR調達の推進 |
⑭ 主原料のCSRアンケート調査の |
7 |
「稼ぐ力」を |
⑮ 安定的な利益創出のための ⑯ 工場の生産性向上・効率化の |
⑮ 主力製品(機能性材料+電子材料)の ⑮ ROE ⑯ 高度制御システムの導入による ⑯ DX関連の導入進捗状況 |
(注)No.⑮のみ連結(営業利益は本社費用除く)、①~⑭、⑯は単体
(2)気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への対応
気候変動に起因する熱中症や自然災害の増加、カーボンニュートラルに向けた脱炭素要請の高まりなど、当社を取り巻く事業環境の不確実性はますます高まっています。当社は、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言」への賛同を表明し、気候変動に関する情報開示を進めています。
① ガバナンス
② 戦略
当社は、気候変動の観点からリスク・機会を洗い出し、4℃シナリオや1.5℃シナリオに基づきシナリオ分析を行い、2030年時点のリスクや機会の影響度を評価しています。これらのリスクや機会に対し「7つの約束」に取り組み、「サステナブル経営」を推進することで、リスクの低減と機会の拡大を図り、企業価値の向上を目指しています。
(気候変動に対する戦略)
③ リスク管理
当社は、リスク評価プロセスに則り重要リスクを特定していますが、気候変動に起因するリスクについても、当社に影響を大きく与えるものとして、経営上の重要リスクに特定しています。また、リスクマネジメントシステムに基づいて、リスクアセスメントを継続的に実施するとともに適宜、取締役会にてモニタリングするなど、リスク顕在化に対する予防や影響度低減のための対策を実行しています。
④ 指標と目標
(気候変動リスクに対する指標)
気候変動リスクに対する指標として、GHG排出量(Scope1,2)の削減を経営目標に設定しております。2050年までにカーボンニュートラルを目指すとともに、そのマイルストーンとして2030年におけるGHG排出量を2017年度比30%削減するという目標を設定しています。この削減目標に対し、2022年度は大幅な減産となったことが主な要因ではあるものの、プラント高度制御システム導入による効率的な運転の実現や高効率なLNG発電を導入するなど、様々な対策を講じたこともあり、2017年度比で29.8%の削減となりました。なお、原料として外部購入し消費したCO2を控除前の、省エネ法に基づく報告数値ベースでは、2017年度比で20.0%の削減となっています。今後は、定常的な生産状況の下でも削減目標を達成できるよう、引続き取組みを強化してまいります。
(気候変動の機会)
気候変動の機会として、当社が、環境に配慮したエアコンに用いられる冷凍機油の原料を製造・販売していることが挙げられます。エアコンの冷媒にはさまざまな種類のガスが使用されており、冷媒の種類によって必要とされる冷凍機油の種類も変わります。これらの冷媒に起因する世界のGHG排出量は、CO2換算で年間約10億tであり、その90%以上が、エアコンによるものだといわれています。そのため、環境に優しい(GHG排出量が少ない)冷媒への移行が世界的に進んでおり、それに適応した冷凍機油の製造には、当社の冷凍機油原料が必要不可欠なものとなっています。
加えて、当社のコア技術であるオキソ反応の原料としてCO2を使用しており、他社から購入するほか、自社で発生したCO2の一部を回収し、再利用することで排出量を低減しています。さらに、新たなCO2回収装置の設備投資を2023年に決定いたしました。2025年上期の完成を目指し、建設工事を進めており、排出量のさらなる削減に取り組んでいます。
オキソ反応の概要
(3)人的資本
① ガバナンス
経営による人事施策のモニタリング
3ヵ年の中期経営計画期間中に実行すべき人事施策ごとに指標を設定し、代表取締役社長をはじめとする経営陣のリーダーシップのもと、取締役会又は経営会議にてその進捗を四半期ごとにモニタリングし、各種人事施策の有効性を経営が確認しています。
また、会社の持続的成長に関わる重要な人事施策の進捗については、取締役会の諮問機関であるサステナビリティ委員会等でもモニタリングを行い、中長期的な視点での有効性の確認を実施してまいります。
② 戦略
当社は、中長期視点で経営戦略と人財戦略の連動性を強化し、「多様な人財が活躍し、成果を最大化する企業風土を醸成することが必要である」という考えのもと、さまざまな人事施策および企業風土改革に取り組んでおります。
企業価値向上に向けた人財強化の観点からは、部門長などの重要ポジションの後継者計画を検討する「人事会議」の開催をはじめ、社内人財の育成、および社内にない知見やネットワーク、多様な価値観・経験を有する人財の採用、また実力主義に基づく「適所適材」の人財配置実現に向けた活動を開始しております。
また、「VISION 2030」の実現、さらに、その先を見据えた持続的な成長のためには、会社として新しいことへの挑戦、スピード感、専門性といった面を一層強化し、成果を最大化する企業風土醸成に取り組むことはもちろん、当社の次世代、次々世代を担う「プロ」としての人財を継続的に輩出していく必要があると考え、年齢や性別、勤続年数等によらず「挑戦し、やれば報われる」新人事制度をスタートいたしました。今後も、制度や仕組み等ハード面のさらなる整備に加え、エンゲージメント向上、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)、働き方改革などの各種施策を推進し、持続的な企業価値向上に不可欠である変化に強い強靭な企業体質、風土づくりに邁進してまいります。
③ リスク管理
当社は、リスク評価プロセスに則り重要リスクを特定していますが、人財戦略を遂行する上での重要なリスク、及びそれに対する主な対応策は次の通りです。
リスク |
主な対策 |
■人財確保や人財の定着に関するリスク ・人財は会社のサステナブルな成長、そして経営目標を達成するための原動力であることから、適切な人財を確保できないことで、経営計画の進捗に遅れが生ずる恐れがあります。特に、次期経営幹部候補などの中核人財の育成停滞については、経営上特に大きなリスクと捉えております。 |
主な対策として以下の施策に取り組んでいます。 ・採用ブランディングやチャネルの多様化等の採用強化 ・次期経営層・部門長等中核ポジションの後継計画を検討する人事会議の開催 ・中核人財の育成計画立案及び研修制度の整備 ・自律的なキャリア開発の支援・成長機会の提供 |
■D&Iに関するリスク ・当社の経営方針であるVISION 2030で掲げる「世界で輝くスペシャリティケミカル企業」を目指す上で、イノベーションの創出は欠かせません。そのイノベーションの源泉である多様性をもった人財が生き生きと活躍できる職場環境を整備できていないことは、当社の持続的な成長の阻害要因になり得ると共に、レジリエンス(困難をしなやかに乗り越え回復する力)が低下する恐れがあります。 |
多様性を受け入れ、活かすための組織風土を醸成するべく、以下の各種施策に取り組んでいます。 ・多様な人財が自律的に働き成果を発揮できるよう、フレックスタイム制度や在宅勤務制度等のワークライフバランスを重視した勤務制度を導入 ・国籍、年齢、性別等にかかわらず「挑戦し、やれば報われる評価・処遇制度」を導入 |
④ 指標及び目標
当社の経営方針である「VISION 2030」にて掲げるチャレンジングな目標を達成するためには、その原動力となる「人財」を強化していくことが極めて重要と捉えております。そして、その人財強化の実現に向けて、「多様な人財が活躍し、成果を最大化する企業風土の醸成」を人財戦略の大きなテーマに掲げており、次の人事に関する指標を目標とし、定期的に実績のモニタリングをしております。
NO |
指標 |
2023年末実績 (注)1 |
2024年目標 (注)2 |
1 |
総合職に占める女性社員比率 |
13.3% |
15%以上 |
2 |
採用者(3年未満)の離職率 |
9.3% |
10%以下 |
3 |
エンゲージメント調査のスコア |
3.14ポイント |
10%以上改善 (3.44以上) |
4 |
年次有給休暇取得率 (休暇年度:4月1日~3月31日) |
88.9% (注)3 |
80%以上 |
5 |
管理職に占める女性労働者の割合 |
7.7% |
9%以上 |
6 |
男性労働者の育児休業取得率 (育児目的の休暇制度取得を含む) |
105% (注)4 |
20%以上 |
(注)1.実績は、NO4を除き2023年12月31日現在の実績を表記しております。
2.第4次中期経営計画で掲げた目標数値を表記しております。
3.2022年4月1日~2023年3月31日を休暇年度とした年次有給休暇取得率の実績を表記しております。
4.2022年年末に子が生まれた社員が、2023年年初に休暇取得した為、100%を超える取得率になっております。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。ただし、以下の事項は当社グループのリスクのうち主要なものを記載しており、当社グループのリスクを網羅的に記載したものではなく、記載された事項以外にも予測しがたいリスクが存在する可能性があるものと考えております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)リスク管理への取組み状況
① リスク管理活動
当社グループは、リスクを経営活動・事業活動に影響を及ぼす不確実性と定義しております。部門横断による全社視点からの内部リスク及び政治・経済・社会情勢等を考慮した外部リスクの両面から可能な限りリスクを洗い出したうえで、一覧化した全社リスク台帳を作成し、リスク毎に影響度と発生可能性を評価したリスクマップを作成しております。リスクを把握することによって、リスクの顕在化を可能な限り未然防止するとともに、リスクが顕在化した際にその影響を最小限にとどめるためのリスク管理活動をしています。
② リスク管理体制
1)サステナビリティ委員会
サステナビリティに関する経営リスク全般の抽出と対策の検討・策定を行っています。専門委員会であるリスク管理委員会で検討・審議された内容や意思決定に必要な分析等につき、取締役会へ報告します。
2)リスク管理委員会
当社グループのリスク管理を推進するため、CFO(最高財務責任者)を委員長、全部門長をメンバーとするリスク管理委員会を設置し、当社グループの経営上重要なリスクの抽出・評価・対策計画の立案に関する検討及び審議を行い、対策の進捗状況のモニタリングを行っております。本委員会は、原則として年2回開催することとし、議論された内容は、サステナビリティ委員会や取締役会に報告します。
(2)リスク認識
① 外部環境リスク
当社グループの事業は、経済・市場環境、原燃料の価格変動、為替変動等の外部環境の影響を受けるおそれがあります。
1)経済及び市場環境の変動に係るリスク
当社グループの製品の需要は、自動車、住宅、電子電機機器及び消費財等の最終製品の需要に左右され、国内外の工業生産量の全体的な変動及び個別最終製品を消費する国または地域の経済状況や地政学的リスクが当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、競合他社による大型生産設備の建設等により供給過剰となった場合等により市場環境が大幅に変動した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、その対策として、製品需要に応じた生産及び在庫調整を行うとともに、販売施策を講じることにより、これらの影響を低減するように努めております。
2)原燃料の価格変動に係るリスク
当社グループは、ナフサを分解して製造されるプロピレンやエチレンを主要原材料とし、またLNG等を原燃料とする等、グローバルな経済活動と連動した事業特性を有しております。そのため、原油価格、需給バランス、為替等の影響により、これらの価格が急激に変動した場合、もしくは価格の高騰が続く場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、その対策として、製品販売価格への転嫁等をタイムリーかつ適切に講じることにより、これらの影響を低減するように努めております。
3)為替変動に係るリスク
当社グループは、海外から原材料の一部を輸入するとともに、国内で製造した製品の一部を海外に輸出しております。そのため、為替レートが大幅に変動した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、その対策として、為替予約等によりリスクヘッジを行っております。
4)感染症に係るリスク
当社グループが事業活動を行う国・地域で重篤な感染症が発生・拡大し、事業活動に制限が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、感染症蔓延に備え、従業員の行動ガイドラインを策定し、これを徹底させること等により、事業への影響の最小化に努めてまいります。
② 重要リスク
当社グループの経営上、極めて影響度・重要度が高いリスクを重要リスクと位置づけ、重要リスク毎に取締役をリスクオーナーとして任命し、リスク対策の立案及び対策の実行を推進する統括部門及び関連部門が連携を図りながら、実効的なリスク対策を推進しています。
リスク分類 |
リスク項目 |
1)コンプライアンス |
法令違反、法的規制 |
2)生産活動 |
設備・機械の損傷・故障、事故 |
3)人財 |
人員不足、中核人財の育成停滞 |
4)事業継続 |
大地震・自然災害、原材料等の調達不能 |
5)情報セキュリティ |
サイバー攻撃 |
6)気候変動 |
異常気象、炭素税の賦課 |
1)コンプライアンスに係るリスク
当社グループは、事業の特性上、高圧ガス保安法に基づく高圧ガス製造に係る許認可をはじめとする各種許認可を受け事業を展開しております。さらに、取り扱う化学物質に関する国内外の様々な法規制の適用を受けており、法令遵守とともに、これら法令に基づく手続きを漏れなく適切に行うことが求められます。これらの規制は強化される傾向にあり、法規制の大幅な変更や規制強化が行われた場合、あるいは予期せず対応が遅れた場合、事業上の制約や法令遵守のための費用の増加、もしくは行政処分、罰則等の賦課により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
また、当社グループにおいて、役職員等による個人的なコンプライアンス上の違反が判明した場合、当社グループの社会的信用の失墜、ブランドイメージの低下、損害賠償請求等を受けた場合には、対応措置のための費用の発生等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、その対策として、当社グループの持続的な成長を可能とするために実施すべき行動原則としてコンプライアンス・コードを定め、商取引、保安・安全衛生、環境・化学物質、労働などに関する国内外の様々な関連法規制に則り、コンプライアンスの徹底を図りながら事業活動を行っております。さらに、コンプライアンス研修や教育を行うなど、コンプライアンス意識向上に積極的に努めております。
2)生産活動に係るリスク
当社グループは、生産活動において各種化学物質を使用しており、その取扱いには万全の対策を講じております。しかしながら、火災や爆発等の産業事故災害、労働災害等が発生した場合には、生産への影響、行政処分、社会的信頼の失墜等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、その対策として、製造設備に対する保守点検・計画的な検査修繕、安全確保のための設備投資等を実施するなど、工場の保安事故の発生防止に努めております。また、保安・安全及び環境保全に係る環境保安ポリシーを定め、当社のRC(レスポンシブル・ケア)活動を確実に推進するとともに、全社重点施策等を立案する機関として、環境保安委員会を設置し、原則として年1回開催しております。
3)人財に係るリスク
当社グループは、労働市場の人財獲得競争の激化や人財流動化等により、必要な人財が確保できず、また中核人財等の育成が計画通りに進まない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、その対策として、採用活動・体制を強化し、人財要件を明確化した上で採用計画を策定するなど、必要な人財の確保に取り組んでおります。また、中核人財の育成計画の策定及び研修制度の整備などに積極的に取り組んでおります。
4)事業継続に係るリスク
(大地震・自然災害等に係るリスク)
当社グループは、大規模な地震、大型台風等の自然災害の発生等により、当社グループの役職員等の人的な被害、製造設備の被害による生産活動の停止及び修繕のための費用の発生、または、サプライチェーン上の障害に伴う機会損失が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、その対策として、地震をはじめとした災害に対しては、本社及び工場を対象に災害対策、事業継続計画(BCP)を策定し、定期的に訓練を実施することで、災害が発生した際に損害を最小限に抑え、事業の継続や復旧を図る体制を整備しております。
(原材料等の調達に係るリスク)
当社グループは、原材料等について製造拠点の立地条件及び運搬・貯蔵方法等に伴う制約から特定の仕入先に依存する場合があり、特定の仕入先における被災や事故、事業ポートフォリオの見直しによる事業撤退や統廃合等により長期間に亘る原材料等の供給不能又は供給不足・停止が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、その対策として、原材料等を複数の仕入先から購入することにより安定調達を図るとともに、適正在庫を保有することで、生産に必要な原材料等が十分に確保されるよう努めております。
5)情報セキュリティに係るリスク
当社グループは、事業活動を行ううえで多くの機密情報や個人情報を保有しております。年々高度化するサイバー攻撃や不正アクセス、ネットワーク障害等が発生した場合には、業務活動に支障が出るとともに、競争力の低下により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、不測の事態により、個人情報等の情報漏洩やデータ改ざんが発生した場合には、社会的信用の低下を招く可能性があります。
当社グループでは、その対策として、情報セキュリティポリシー及び個人情報保護ポリシーを定め、厳正な管理体制のもとで情報漏洩の防止に努めるとともに、様々な情報セキュリティに関する防衛策を講じております。
6)気候変動に係るリスク
当社グループは、気候変動に関して生じる変化を重要なリスク要因と認識しております。当社グループでは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同し、TCFD提言の枠組みに基づき、事業活動への影響分析を行い、統合報告書等において、その対応結果や進捗の開示に努めております。
気候変動によって、高潮・豪雨・洪水・台風等の異常気象が増加した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、脱炭素社会の実現に向け、炭素税等のカーボンプライシングの導入が進むことで、財務的な負担が増加するおそれがあります。具体的には、IEA(国際エネルギー機関)のNZE2050に基づく、1.5℃シナリオでは、2030年時点における炭素価格が130USD/1トンとなり、仮に炭素税等が導入された場合、2022年度のGHG排出量約37.9万トンに対し、約69.0億円/年(為替1USD=140円)の負担が増加する可能性があります。将来の炭素税等の導入リスクを鑑み、2024年からインターナルカーボンプライシングを導入いたしました。社内炭素価格をCO2排出量1トンあたり1万円とし、今後の投資判断の参考といたします。
また、最新技術を活用したプラント高度制御システムの導入を拡大することや自家発電設備の更新等、これまで培ってきた技術力を活用することにより、生産活動におけるエネルギー効率向上を通じたGHG排出量の削減などに積極的に取り組んでおります。当社の主力製品である冷凍機油原料は、低GWP(地球温暖化係数)冷媒を使用したエアコンに使用されており、事業を通じ、地球温暖化抑制に貢献しております。加えて、当社は、製品の生産において、CO2を原料として使用するオキソ技術を用いており、自社で発生したCO2の一部を回収し、再利用することで排出量の削減に貢献しております。さらに、新たなCO2回収装置の設備投資を2023年に決定いたしました。2025年上期の完成を目指し、建設工事を進めており、CO2排出量のさらなる低減に取り組んでまいります。
引き続き、気候変動による事業活動への影響分析や、その対応策等に関しては、サステナビリティ委員会において、審議・モニタリングを行い、定期的に施策を見直すことで、リスクの低減に努めてまいります。
③ その他事業上のリスク
1)海外事業に係るリスク
当社グループは、アジア及び米州を中心とした海外事業を展開しておりますが、海外においては、政治、経済情勢の変化、予期しえない法規制の変更、自然災害、テロ、戦争による社会的又は経済的な混乱、慣習等に起因する予測不可能な事態の発生等、それぞれの国や地域固有のリスクが存在します。これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、その対策として、駐在員の派遣等の対応により現地事情などの情報収集に努めております。
2)製品品質保証・製造物責任に係るリスク
当社グループにおいて、大規模な製造物責任につながる製品の欠陥が発生した場合には、多額の賠償額が発生することにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、その対策として、国際的な品質マネジメントシステム規格であるISO9001に従い、製品品質の向上に努めた生産活動を行うとともに、万一の事故に備え、製造物責任賠償保険に加入することでリスクヘッジしております。また、品質保証に係る品質保証ポリシーを定め、当社の品質管理活動を確実に推進するとともに、全社重点施策等を立案する機関として、品質保証推進会議を設置し、原則として年1回開催しております。
3)知的財産に係るリスク
当社グループにおいて、第三者が当社グループの特許権等を侵害している場合には、警告や訴訟提起などの対策を行いますが、第三者の侵害行為や同様の技術開発を全て発見できない可能性があります。また、第三者から特許権等への抵触を理由として差止訴訟、損害賠償請求訴訟等を提起され、当社グループにとって不利な判断が下される可能性があります。このような場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、その対策として、知的財産ポリシーを制定し、自社の知的財産の保全、管理、活用と第三者の知的財産の尊重とを進めることを通じて、企業価値の維持・向上、知的財産リスク低減に努めております。研究開発の成果について特許権等の権利化を進めることにより知的財産権の保護や他社へのライセンス等による活用を図るとともに、他社の知的財産を侵害しないために、新製品や新技術の開発前に先行技術等の調査を行うほか、既存製品についても定期的に調査を実施しております。
(1) 経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の「5類感染症」への移行に伴い、経済活動の正常化が進み緩やかな回復がみられました。一方、原材料価格・エネルギー価格の上昇や各国のインフレ対策を目的とした金融引き締めの影響など、依然として先行き不透明な状況が続きました。
このような環境のもと、当社グループは、機能性材料分野を中心とした積極的な販売展開により、販売数量、売上高は増加しました。また、あらゆるコストが上昇若しくは高止まりしたことを受けて製品への価格転嫁を着実に進めてまいりましたが、在庫メリットの剥落、一部原料調達に支障を生じたこと、国際市況の下落等が減益要因となりました。
それらの結果、当連結会計年度の当社グループの売上高は1,152億17百万円(前連結会計年度比0.3%増)、営業利益は99億46百万円(同20.1%減)、経常利益は97億25百万円(同23.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は68億26百万円(同15.4%減)となりました。
事業分野別には、次のとおりであります。
(事業分野別の売上高の概況)
区分 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
|||
金額 |
構成比 |
金額 |
構成比 |
金額 |
増減率 |
|
(百万円) |
(%) |
(百万円) |
(%) |
(百万円) |
(%) |
|
機能性材料 |
46,158 |
40.2 |
50,374 |
43.7 |
4,215 |
9.1 |
電子材料 |
13,684 |
11.9 |
11,668 |
10.1 |
△2,016 |
△14.7 |
基礎化学品 |
54,265 |
47.2 |
52,352 |
45.4 |
△1,912 |
△3.5 |
その他 |
771 |
0.7 |
822 |
0.7 |
50 |
6.6 |
合計 |
114,880 |
100.0 |
115,217 |
100.0 |
337 |
0.3 |
(事業分野別の営業利益の概況)
区分 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
|||
金額 |
構成比 |
金額 |
構成比 |
金額 |
増減率 |
|
(百万円) |
(%) |
(百万円) |
(%) |
(百万円) |
(%) |
|
機能性材料 |
7,730 |
49.3 |
8,430 |
64.4 |
700 |
9.1 |
電子材料 |
3,047 |
19.4 |
1,883 |
14.4 |
△1,163 |
△38.2 |
基礎化学品 |
4,850 |
30.9 |
2,611 |
19.9 |
△2,238 |
△46.2 |
その他 |
57 |
0.4 |
167 |
1.3 |
110 |
193.0 |
本社費 |
△3,229 |
- |
△3,146 |
- |
82 |
△2.6 |
合計 |
12,456 |
100.0 |
9,946 |
100.0 |
△2,509 |
△20.1 |
(注)上記の事業分野別の「営業利益」には、全社に共通する管理費用等を配分しておりません。
機能性材料は、冷凍機油原料は、中国および米国における不動産不況の影響等によりエアコン市場の成長が減速しましたが、製品値上げや拡販等を実施いたしました。化粧品原料に関しては国内外ともに需要の本格回復には至りませんでした。その結果、売上高は503億74百万円(前連結会計年度比9.1%増)、営業利益は84億30百万円(同9.1%増)と増収増益となりました。
電子材料は、半導体およびディスプレイ市場は、スマートフォンやパソコン、データセンター等の末端需要が年間を通じて低調に推移したことから、売上高116億68百万円(前連結会計年度比14.7%減)、営業利益18億83百万円(同38.2%減)となりました。
基礎化学品は、国内需要は、自動車生産台数は大きく回復したものの住宅着工件数は弱含みで推移したことから、緩やかな回復に留まりました。また、増加するコストの製品への価格転嫁を進めましたが、在庫メリットの剥落や一部製品における輸入品の流入等により、売上高は523億52百万円(前連結会計年度比3.5%減)、営業利益は26億11百万円(同46.2%減)となりました。
その他の分野の売上高は8億22百万円(前連結会計年度比6.6%増)、営業利益は1億67百万円(同193.0%増)となりました。
②財政状態
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は662億44百万円となり、前連結会計年度末に比べ79億94百万円減少いたしました。これは主に、受取手形、売掛金及び契約資産が46億2百万円、棚卸資産が18億89百万円、現金及び預金が12億41百万円それぞれ減少したことによるものであります。
固定資産は582億53百万円となり、前連結会計年度末に比べ12億45百万円増加いたしました。これは主に、無形固定資産が1億7百万円減少しましたが、有形固定資産が10億68百万円、投資有価証券が5億2百万円増加したことによるものであります。
この結果、資産合計は1,244億98百万円となり、前連結会計年度末に比べ67億49百万円減少いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は513億32百万円となり、前連結会計年度末に比べ54億26百万円減少いたしました。これは主に、1年内償還予定の社債が50億円増加しましたが、コマーシャル・ペーパーが59億99百万円、支払手形及び買掛金が45億33百万円減少したことによるものであります。
固定負債は66億72百万円となり、前連結会計年度末に比べ57億49百万円減少いたしました。これは主に、社債が50億円、修繕引当金が6億60百万円減少したことによるものであります。
この結果、負債合計は580億4百万円となり、前連結会計年度末に比べ111億75百万円減少いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は664億93百万円となり、前連結会計年度末に比べ44億26百万円増加いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益68億26百万円及び剰余金の配当32億50百万円によるものであります。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ12億41百万円減少し、96億84百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は132億1百万円(前連結会計年度は51億31百万円の獲得)となりました。これは主に、仕入債務の減少額46億28百万円、その他の流動負債の減少額26億円及び法人税等の支払額24億77百万円により資金が減少しましたが、税金等調整前当期純利益97億25百万円、減価償却費45億17百万円、売上債権の減少額46億29百万円、棚卸資産の減少額19億76百万円、修繕引当金の増加額11億78百万円により資金が増加したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は49億37百万円(前連結会計年度は100億82百万円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出50億91百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は95億1百万円(前連結会計年度は10億76百万円の使用)となりました。これは主に、コマーシャル・ペーパーの純減少額60億1百万円及び配当金の支払額32億50百万円により資金が減少したことによるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
当社グループは化学品事業の単一セグメントであるため、事業分野別に記載しております。
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績を事業分野ごとに示すと、次のとおりであります。
事業分野の名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
前年同期比(%) |
機能性材料 (百万円) |
49,514 |
116.2 |
電子材料 (百万円) |
11,396 |
83.9 |
基礎化学品 (百万円) |
47,760 |
92.2 |
合計(百万円) |
108,671 |
100.6 |
(注)金額は販売価格によっております。
b.受注実績
当社グループでは一部受注生産を行っておりますが、売上高のうち受注生産の占める割合が低いため、受注実績は記載しておりません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績を事業分野ごとに示すと、次のとおりであります。
事業分野の名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
前年同期比(%) |
機能性材料 (百万円) |
50,374 |
109.1 |
電子材料 (百万円) |
11,668 |
85.3 |
基礎化学品 (百万円) |
52,352 |
96.5 |
その他 (百万円) |
822 |
106.6 |
合計(百万円) |
115,217 |
100.3 |
(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年1月1日 至 2022年12月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
||
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
出光興産㈱ |
13,772 |
12.0 |
14,755 |
12.8 |
ミヤコ化学㈱ |
12,460 |
10.8 |
11,803 |
10.2 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の当社グループの売上高は1,152億17百万円(前連結会計年度比0.3%増)、営業利益は99億46百万円(同20.1%減)、経常利益は97億25百万円(同23.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は68億26百万円(同15.4%減)となり、前連結会計年度に比べ増収減益となりました。
当連結会計年度末における有利子負債(リース債務を除く。)残高は前連結会計年度末に比べ60億49百万円減少の148億20百万円、純有利子負債(リース債務を除く。)残高は前連結会計年度末に比べ48億8百万円減少の51億35百万円となりました。これは主に、コマーシャル・ペーパーを返済したことによるものであります。
当連結会計年度末における自己資本比率は51.20%となり、引き続き安定的な水準にあるものと認識しております。
なお、経営成績等の概要につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況及び②財政状態」に記載のとおりであります。
②経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、経済・市場環境、原燃料の価格変動、為替変動が挙げられます。詳細につきましては「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況の概要は「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
当社は、運転資金及び設備投資に使用するための資金を内部資金または借入金及び社債により調達しております。このうち、有利子負債による資金調達につきましては、運転資金を主に短期借入金及びコマーシャル・ペーパーにより、設備投資などのための長期資金を主に長期借入金及び社債により、それぞれ調達しております。
当連結会計年度末における現金及び預金は96億84百万円となりました。前連結会計年度末の109億26百万円から12億41百万円減少しておりますが、十分な手元流動性を確保しているものと認識しております。
当社グループは、現在の手元流動性と営業活動によるキャッシュ・フローの創出により、財務健全性を維持しながら、今後の資金需要に対応可能であると考えております。
④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
⑤経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
合弁関係
KHネオケム株式会社(当社)
締結先 |
合弁会社名 |
設立の目的 |
資本金 |
設立年月日 |
三菱ケミカル㈱ |
㈱ジェイ・プラス (持分法適用関連会社) |
可塑剤の製造及び販売 |
480百万円 出資比率50.0% |
2000年4月 |
企業使命『「化学の力」でよりよい明日を実現する。』および経営姿勢『確かな技術と豊かな発想で、夢を「かたち」にする。』を企業理念に据えVISION 2030で掲げる「環境」、「ヘルスケア」、「エレクトロニクス」の3分野を中心に既存事業の拡大に加えて新規事業の創出を目標に、新技術・新製品の導入により「稼ぐ力の強化」に努めています。第4次中期経営計画では、研究開発活動のマイルストーンとしてのKPIを「外部機関との協業件数10件以上/年」として設定し、自前主義にこだわることなく、外部との協創を深める取組みを加速しています。加えて、既存事業周辺および新規事業創出に向けた技術やナレッジ獲得を目的としたベンチャー及びスタートアップ企業に対する投資についても推進しています。
当社は、単に規模を追い求めるのではなく、小回りをきかせて多様な製品を上市し、お客様にとって必要不可欠な特長ある製品を提供することに注力してきました。当連結会計年度では、顧客との信頼関係と独自技術という強みを活かしてさらなる成長・価値創造を推進するため、以下の様な組織体制のもと既存事業と新規事業に求められる機能を明確化し、持続的成長に向けた新たなる価値の創出を進めています。
・事業部
既存製品の販売戦略・投資戦略立案、およびマーケティング等の事業戦略機能について一気通貫で強力に推進するなかで、既存事業の新製品開発を進めていきます。
・技術開発センター
当社競争力の源泉である生産技術力の一層の強化を図るとともに、カーボンニュートラル等に向けた新技術導入を見据え、各部署に分散していた生産技術に係る知見を集約し、製造技術向上を推進していきます。
・イノベーション戦略部
新規テーマ探索機能を集約し、新規事業創出に向けたテーマ検討を加速します。
・知的財産部
知財戦略立案機能を強化し、既存事業の競争力を高めるとともに新規事業創出を加速します。
当連結会計年度における主な研究開発活動の内容は以下のとおりであります。
(1)生産性向上、新技術開発への取り組み
当社は、コア技術である高圧法と低圧法の2種類の大規模なオキソ反応技術や、精密蒸留等の精製技術、炭酸ガス回収や高度制御による省資・省エネ技術、超高純度管理技術等を駆使し、高品質で競争力のある化学品を製造しています。技術開発センターでは、工場と連携して生産性改善、生産プロセスの改変、新製法の研究等、既存製品や開発品の競争力強化に継続的に取り組んでいます。同時に、カーボンニュートラルへの対応にも取り組んでおり、他社や大学との委託・共同研究を推進しています。
また、知的財産部では当社の技術ノウハウなどの知的資産をデータベース化して活用できる「技術プラットフォーム」の構築を進めています。研究開発を担う社員が長年蓄積された知的資産を容易に把握して活用できるようにすることで、新製法の研究や当社独自の技術を起点とした新たな価値創造などの実現性を高めていきます。
(2)既存事業周辺への取り組み
当社は、「環境」、「ヘルスケア」、「エレクトロニクス」分野において、幅広い開発を進めております。
当連結会計年度にて事業部が事業戦略機能を一気通貫で推進する体制へと整備したことで、顧客との対話や、展示会等での新製品候補群の提案等を通じて潜在ニーズを洞察し、仮説・検証サイクルをより早く回しながら、新製品の早期事業化を目指すことが可能となりました。
当社が培ってきた生産技術と研究開発部門が獲得した高度な各種評価技術などを組み合わせて進化させた、いわゆるシーズを起点とした新たな価値創造だけでなく、マーケティング活動から得たニーズや知見と自社の強みとの掛け合わせによる価値創造を一気通貫で進めることで、社会課題の解決に寄与する価値創出に取り組んでいきます。
(特殊脂環式モノマー[光学用途向け材料])
当社開発の特殊脂環式モノマーは、耐熱性の向上に加え、低誘電特性や低吸水性などの特徴を付与できます。車載カメラ・スマートフォンのカメラ、5G・6G通信などでは、これらへの要求性能が益々高まっています。お客様の課題を解決する次世代材料として期待されており、事業化の可能性を検証しています。
(天然高級アルコール)
開発中の高級アルコールはバイオマス度(グリーン素材比)が高く、常温液体で扱いやすさに優れる等の機能的特徴もあり、樹脂原料、インキ・コーティング剤、潤滑油等のさまざまな用途に使用可能です。当社ならではの材料により、カーボンニュートラル社会の実現に貢献します。
(3)新規事業・新製品探索機能強化への取り組み
2019年に新川崎・創造の森(AIRBIC)に開設したオープンイノベーション拠点「KH i-Lab(KH Neochem innovation Laboratory)」では2021年4月に「オープンラボ」を開設し、スタートアップ企業や様々な研究機関との技術検証を加速させ、社会課題解決に資するマーケットイン型での新規ビジネス創出を加速させています。特に、カーボンニュートラル実現に向けたバイオ原料からの新素材開発は、当社のコア技術である化学プロセス技術と出資・共同研究により獲得したバイオプロセス技術とのシナジーを意識して進めています。
また、2022年に出資したスタートアップ企業との取り組みも加速しております。アクプランタ株式会社は独自のバイオスティミュラント資材(植物の成長促進・耐性向上に役立つ農業向け資材)でアグリバイオビジネスを展開しており、両社の技術を持ち寄った新製品の開発を進めています。また、株式会社糖鎖工学研究所は医薬等への応用が期待される素材(糖鎖)の量産化技術を有しており、量産化検討や業界関連企業・アカデミアへの共同マーケティングなど連携の幅を拡げています。これらの出資先との関係強化を通じた協創検証による新たな知見獲得も目指しながらビジネスプラン検証を進めています。今後も、新規ビジネスの創出に必須な人財の多様化を図りながら、より一層外部とのネットワークの拡大と活用による協創検証を加速して、新規事業の創出によりポートフォリオの幅を拡げる取り組みを進めて参ります。
(海洋生分解性樹脂の開発)
KH i-Labにてベンチャー企業等と共同研究を行いながら、新規技術である微生物発酵を用いて開発を進めてきました。展示会等での情報発信を継続するとともに、お客様との関係を強化しつつサンプル評価・開発を進めており、新規事業構築に向けたステージが上がってきています。
(4)黒金化成㈱での取り組み
黒金化成㈱では、受託事業に関連した研究開発活動を中心に行っています。新規受託案件を検討する「研究部」と量産化に向けた工業的製法の確立と製造担当部門への業務移管を行う「生産技術部」の2部門を設置し、開発段階に応じた業務分担により、委託者であるお客様に対して柔軟かつ迅速に対応できる体制をとっております。
半導体関連材料やディスプレイ関連材料等の電子材料分野の受託製造に関する研究活動を主に行っております。特に、2020年秋に完成した「次世代半導体向け材料設備(第Ⅰ期投資)」を活用した受託製造をはじめとする半導体関連材料の研究開発活動を精力的に推進しています。これまでの電子材料の研究開発で培った製造技術を半導体関連材料に対応可能な水準に洗練させ、高まる品質要求への対応を進めています。
また、2022年に機関決定しました第Ⅱ期投資では、大型の製造設備を増設し、拡大する需要を取り込んでいきます。これら設備投資の他、次世代半導体向けの素材需要取込みをより確実なものにするため、引き続き半導体関連材料の研究開発活動を進めていきます。
(5)当連結会計年度の研究開発活動
当連結会計年度における研究開発費の総額は
当社グループは、化学品事業の単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載を省略しております。