第一部【企業情報】

第1【企業の概況】

1【主要な経営指標等の推移】

(1)連結経営指標等

 

回次

第81期

第82期

第83期

第84期

第85期

決算年月

2019年12月

2020年12月

2021年12月

2022年12月

2023年12月

売上高

(百万円)

28,431

30,250

32,485

30,229

36,280

経常利益

(百万円)

2,169

3,363

4,110

2,929

4,164

親会社株主に帰属する当期純利益

(百万円)

1,512

2,342

3,159

2,169

3,141

包括利益

(百万円)

2,853

2,715

4,338

451

4,209

純資産額

(百万円)

14,945

16,703

19,152

18,396

21,028

総資産額

(百万円)

28,065

32,509

35,725

33,528

41,917

1株当たり純資産額

(円)

1,133.60

1,328.99

1,566.10

1,515.25

1,761.94

1株当たり当期純利益

(円)

114.71

184.60

253.05

177.15

263.12

潜在株式調整後

1株当たり当期純利益

(円)

-

-

-

-

-

自己資本比率

(%)

53.3

51.4

53.6

54.9

50.2

自己資本利益率

(%)

11.01

14.80

17.62

11.55

15.93

株価収益率

(倍)

9.70

11.00

9.83

12.44

11.23

営業活動による

キャッシュ・フロー

(百万円)

717

4,073

3,147

1,615

4,712

投資活動による

キャッシュ・フロー

(百万円)

1,225

1,037

108

9

143

財務活動による

キャッシュ・フロー

(百万円)

428

957

1,681

1,614

1,680

現金及び現金同等物の期末残高

(百万円)

5,227

9,381

10,955

10,965

13,854

従業員数

(人)

479

490

500

514

531

(外、平均臨時雇用者数)

(110)

(113)

(112)

(111)

(115)

(注)1.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式が存在しないため記載しておりません。

2.第83期以降の1株当たり純資産額及び1株当たり当期純利益の算定上の基礎となる自己株式数には、従業員持株会信託型ESOPの信託口が保有する当社株式を含めております。

3.2021年7月1日付で普通株式1株につき2株の割合で株式分割を行っております。第81期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純利益を算定しております。

4.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日) 等を第84期の期首から適用しており、第84期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

 

(2)提出会社の経営指標等

 

回次

第81期

第82期

第83期

第84期

第85期

決算年月

2019年12月

2020年12月

2021年12月

2022年12月

2023年12月

売上高

(百万円)

26,556

28,671

30,713

28,350

33,541

経常利益

(百万円)

1,950

3,229

4,094

2,907

3,933

当期純利益

(百万円)

1,390

2,280

3,174

2,186

2,906

資本金

(百万円)

1,001

1,001

1,001

1,001

1,001

発行済株式総数

(千株)

6,715

6,715

13,430

12,930

12,930

純資産額

(百万円)

14,165

15,848

18,266

17,519

19,913

総資産額

(百万円)

26,721

31,179

34,248

32,127

40,156

1株当たり純資産額

(円)

1,074.46

1,260.94

1,493.60

1,443.01

1,668.56

1株当たり配当額

(円)

60.00

110.00

122.50

85.00

85.00

(内1株当たり中間配当額)

(30.00)

(30.00)

(75.00)

(42.50)

(42.50)

1株当たり当期純利益

(円)

105.49

179.67

254.25

178.54

243.46

潜在株式調整後

1株当たり当期純利益

(円)

-

-

-

-

-

自己資本比率

(%)

53.0

50.8

53.3

54.5

49.6

自己資本利益率

(%)

10.67

15.19

18.61

12.22

15.53

株価収益率

(倍)

10.55

11.30

9.78

12.34

12.14

配当性向

(%)

28.44

30.61

33.43

47.61

34.91

従業員数

(人)

418

425

444

457

471

(外、平均臨時雇用者数)

(105)

(109)

(103)

(101)

(102)

株主総利回り

(%)

126.6

234.3

154.0

143.0

189.4

(比較指標:配当込みTOPIX)

(%)

(118.1)

(126.8)

(143.0)

(139.5)

(178.9)

最高株価

(円)

2,595

4,235

3,390

(6,780)

2,583

3,305

最低株価

(円)

1,704

1,770

1,852

(3,705)

2,078

2,144

(注)1.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式が存在しないため記載しておりません。

2.最高株価及び最低株価は、2022年4月4日より東京証券取引所プライム市場におけるものであり、それ以前については東京証券取引所市場第一部におけるものであります。

3.第83期以降の1株当たり純資産額及び1株当たり当期純利益の算定上の基礎となる自己株式数には、従業員持株会信託型ESOPの信託口が保有する当社株式を含めております。

4.2021年7月1日付で普通株式1株につき2株の割合で株式分割を行っております。第81期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純利益を算定しております。

5.2021年7月1日付で普通株式1株につき2株の割合で株式分割を行っております。第83期の1株当たり配当額は、当該株式分割前の1株当たり中間配当額75円と、当該株式分割後の1株当たり期末配当額47円50銭を合算した金額となっております。当該株式分割後の1株当たり配当額に換算すると、中間配当額は37円50銭に相当しますので、期末配当額と合わせた年間配当額は1株当たり85円となります。

6.2021年7月1日付で普通株式1株につき2株の割合で株式分割を行っております。第83期の株価については当該株式分割後の最高株価及び最低株価を記載しており、( ) 内に株式分割前の最高株価及び最低株価を記載しております。

7.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日) 等を第84期の期首から適用しており、第84期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

 

2【沿革】

1946年11月

風水力機械などの販売を目的として東京都京橋区(現中央区)木挽町七丁目1番地に資本金19万円をもって荏原工業㈱を設立

1949年12月

建設業法による東京都知事登録(い)第950号

1950年7月

㈱荏原製作所と同社製品の販売に関し代理店契約を締結

1950年12月

東京都大田区に嶺町工場を開設し、機械の据付け及び配管工事を開始

1952年6月

会社の商号を荏原実業㈱に変更

1956年4月

荏原インフィルコ㈱(1994年10月㈱荏原製作所に合併)と代理店契約を締結し、水処理プラントの販売及び工事を開始

1966年5月

静岡県静岡市に静岡営業所(現静岡支社)を設置

1968年2月

建設業法による建設大臣登録(ワ)第8521号

1971年6月

大阪府大阪市に大阪営業所(現大阪支社)を設置

1971年11月

宮城県仙台市に仙台営業所(現東北営業所)を設置

1972年10月

信和産業㈱(現荏原冷熱システム㈱)と代理店契約を締結し、冷却塔の販売を開始

1974年4月

建設業の許可を取得、建設大臣許可(特-49)第3762号

1975年12月

㈱ヘリオスと代理店契約を締結し、破砕機の販売を開始

1976年1月

神奈川県川崎市にオゾン濃度計の製品開発を目的とし、川崎研究所を設置

1978年2月

埼玉県浦和市(現さいたま市)に埼玉営業所(現関東支社)を設置

1979年6月

岩手県盛岡市に盛岡営業所(現北東北営業所)を設置

1980年10月

萩原ボイラ工業㈱(資本金2,000万円)を買収し、子会社とするとともに商号を関東エハラボイラ工業㈱に変更

1983年11月

静岡県富士市に富士出張所(現富士営業所)を設置

1984年3月

千葉県千葉市に千葉営業所(現東関東支社)を設置

1984年10月

群馬県前橋市に群馬営業所を設置

1985年8月

エンザイム興業㈱(現エンザイム㈱)と脱臭剤(ボエフ)及び脱臭装置の製造販売に関し、独占的実施契約を締結し、脱臭剤などの製造販売を開始

1985年10月

嶺町工場を分離独立し、機械の据付け及び配管工事の専門会社として全額出資の㈱エバジツを設立

1991年11月

川崎研究所内に環境分析・計量に関する技術開発を目的に環境分析センターを設置。また、栽培漁業に関する技術開発を目的に水産技術研究所を設置

1993年2月

新潟県柏崎市(後に長岡市に移転)に商品開発室を設置

1995年10月

子会社の関東エハラボイラ工業㈱を吸収合併

1996年5月

埼玉県北葛飾郡鷲宮町(現久喜市)に環境関連製品の実証試験を行うため、埼玉研究所を設置

1996年5月

広島県広島市に広島事務所を設置

1996年6月

愛知県名古屋市に中部営業所を設置

1998年11月

日本証券業協会に株式を店頭登録

1999年7月

環境分析センター、水産技術研究所及びテクニカルセンターを中央研究所として統合

1999年11月

ISO9001認証取得(静岡支社、中部営業所)

2000年5月

神奈川県川崎市に神奈川支社を設置

2000年6月

ISO9001認証取得(環境システム本部、環境事業本部、環境計測器事業部、医療・環境部)

2001年2月

東京証券取引所市場第二部に株式を上場

2001年7月

山梨県甲府市に山梨事務所(現山梨営業所)を設置

2001年7月

福岡県福岡市に九州事務所を設置

2001年9月

茨城県つくば市に茨城事務所(現茨城営業所)を設置

2004年3月

東京証券取引所市場第一部に株式を上場

2004年4月

当社全額出資のイージェイ㈱を設立

2005年9月

神奈川県川崎市に新研究施設を建設し、中央研究所全機能を移転

2009年6月

神奈川県川崎市に環境計測技術センターを建設し、川崎研究所全機能を移転

2010年4月

当社全額出資のトリニタス㈱を設立

2014年7月

千葉県木更津市のかずさ生産技術センター竣工、稼働開始

2014年10月

トリニタス㈱を吸収合併

2014年10月

イージェイ㈱の全株式を譲渡

2016年3月

監査等委員会設置会社へ移行

2018年6月

千葉県木更津市のかずさファシリティ開発センター竣工、稼働開始

2020年12月

2022年4月

当社全額出資の荏原実業パワー㈱を設立

東京証券取引所の市場区分の見直しにより、東京証券取引所の市場第一部からプライム市場に移行

 

3【事業の内容】

当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、当社並びに子会社の㈱エバジツ及び荏原実業パワー㈱により構成され、環境関連機器・装置の製造・販売、水処理施設などの各種プラント類の設計・施工、風水力冷熱機器などの仕入・販売を主な内容として事業活動を展開しております。また、㈱荏原製作所及び同社の関係会社(以下「荏原グループ」という。)とは、販売代理店契約を締結して風水力冷熱機器など荏原グループ製品の仕入・販売を行うとともに、水処理施設など各種プラント類の施工では荏原グループから機器材料を調達するなど継続的な事業上の関係があります。

主な事業内容と当社及び子会社の位置付けは、以下のとおりであります。

なお、次の3事業は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であります。

メーカー事業 (環境関連) ……………… オゾン濃度計、オゾン応用機器、脱臭装置、感染症対策製品、栽培漁業関連装置、廃棄物処理装置、水処理プラント、家庭用蓄電システムをはじめとするZEB・ZEH関連商品などの当社が自社開発した製品を当社の設計・生産管理に基づき特定の協力会社に生産委託し、販売しております。

エンジニアリング事業 (水処理関連) … 当社が官公庁など得意先から直接受注し、荏原グループなどの機器材料によって設計・施工しております。なお、施工にあたっては、専門工事会社に外注委託しております。

商社事業 (風水力冷熱機器等関連) …… 当社が得意先から直接受注し、荏原グループから調達した機器材料などを使用して設計・施工並びに商品販売を行っております。

以上、当社グループについて、セグメントとの関連を含めた事業系統図を示すと、次のとおりであります。

 

0101010_001.png

 

(注) 荏原グループとの取引関係

① ㈱荏原製作所の概要及び当社との関係

会社名
(住所)

資本金
(百万円)

事業内容

当社の出資
比率

(当社への出
資比率)(%)

関係内容

役員等の
兼務等

事業上の関係

㈱荏原製作所

(東京都大田区)

80,489

風水力事業、環境プラント事業、精密・電子事業

0.24

(-)

-

当社は㈱荏原製作所と代理店契約を締結しており、同社の販売代理店として、主として風水力事業・環境プラント事業関連製品を販売しております。

(注) 出資比率は2023年12月31日現在の状況であります。なお、㈱荏原製作所は関連当事者には該当しておりません。

 

② 当連結会計年度の荏原グループとの取引高及び債権債務残高等

取引内容

取引金額
(百万円)

科目

期首残高
(百万円)

期末残高
(百万円)

営業取引

 

 

 

 

機器材料仕入

3,346

買掛金

1,175

2,046

材料仕入

0

電子記録債務

1,613

2,328

商品仕入

2,569

支払手形

0

0

製品及び工事売上高

445

売掛金

40

37

商品売上高

8

電子記録債権

96

147

(注)1.取引金額及び債権債務残高は、相殺後の金額で記載しております。

2.取引条件及び取引条件の決定方針等

仕入取引については、代理店契約等に基づき決定しております。

売上取引については、一般取引条件と同様に決定しております。

 

4【関係会社の状況】

連結子会社

名称

住所

資本金
(百万円)

主要な事業の内容

議決権の所有割合(%)

関係内容

役員の兼任(名)

資金援助

営業上の取引

設備の賃貸借
関係等

当社
役員

当社
従業員

㈱エバジツ

東京都大田区

50

機械器具設置、設備工事の請負・施工及び保守

100

-

1

借入保証

設置工事の請負、施工及び保守

-

荏原実業パワー㈱

千葉県木更津市

100

蓄電池及び蓄電設備の企画、製造及び販売等

100

-

1

運転資金の
貸付

商品の購入

事務所等の
賃貸

(注)1.上記子会社は、有価証券届出書又は有価証券報告書を提出しておりません。

2.上記子会社の売上高(連結会社間の内部売上を除く。)は、連結売上高に占める割合が100分の10を超えていないため、主要な損益情報等の記載を省略しております。

3.当社は、2024年2月9日開催の取締役会において、当社の連結子会社荏原実業パワー㈱を2024年4月1日(予定)に吸収合併することを決議いたしました。

 

5【従業員の状況】

(1)連結会社の状況

セグメントと事業部門とが必ずしも一致しないため、従業員の状況をセグメントに分類して記載することは困難であります。従いまして、従業員の状況を事業部門別・子会社別に記載しております。

 

 

2023年12月31日現在

事業部門・子会社の名称

従業員数(人)

報告セグメントとの関連

環境システム首都圏・西日本本部

82

(25)

メーカー事業、エンジニアリング事業、商社事業

環境システム東日本本部

76

(15)

メーカー事業、エンジニアリング事業、商社事業

環境設備本部

69

(10)

メーカー事業、エンジニアリング事業、商社事業

計測器・医療本部

43

(12)

メーカー事業

環境事業本部

32

(3)

メーカー事業、エンジニアリング事業、商社事業

上下水道エンジニアリング本部

56

(7)

メーカー事業、エンジニアリング事業、商社事業

管理本部他

113

(30)

全社

㈱エバジツ (子会社)

52

(10)

商社事業

荏原実業パワー㈱ (子会社)

8

(3)

メーカー事業

合計

531

(115)

 

(注) 従業員数は、就業人員数(当社グループからグループ外への出向者を除き、グループ外からの出向者を含む。)であり、臨時雇用者数(顧問、嘱託、非常勤顧問、パートタイマーを含む。)は、年間の平均人員を( )外書で記載しております。

 

(2)提出会社の状況

 

 

 

 

2023年12月31日現在

従業員数(人)

平均年齢(才)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

471

(102)

42.6

14.6

7,625

(注)1.従業員数は、就業人員数(当社から社外への出向者を除き、社外からの出向者を含む。)であり、臨時雇用者数(顧問、嘱託、非常勤顧問、パートタイマーを含む。)は、年間の平均人員を( )外書で記載しております。

2.平均年間給与は、税込支払給与額であり、基準外賃金及び賞与を含んでおります。

 

(3)労働組合の状況

労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております。

 

(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

① 提出会社

 

2023年12月31日現在

当事業年度

補足説明

管理職に占める女性労働者の割合(%)

(注)1.

男性労働者の育児休業取得率(%)

(注)2.

労働者の男女の賃金の差異(%)

(注)1.

全労働者

正規雇用

労働者

パート・

有期労働者

3.2

42.9

66.7

67.5

43.9

(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号) の規定に基づき算出したものであります。

2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号) の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号) 第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

 

② 連結子会社

連結子会社は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号) 及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定による公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。

 

第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針・経営戦略・経営指標等

当社グループは、「豊かな人間環境の創造を目指して社会に貢献する」という経営理念に基づき、環境に対する社会的な関心が高まる以前から、長年にわたり様々な環境問題に目を向け、環境保全のエキスパートとしてノウハウを蓄積し続けてきました。

2030年に目指す姿として、「トータル環境ソリューションカンパニーへの進化」を掲げ、2030年の事業規模として「売上高600億円、営業利益80億円」という長期ビジョンを設定しております。この長期ビジョン実現に向けた第一のステージとして2022年から2024年までの3か年中期経営計画「EJ2024」を策定しております。

① 長期ビジョン概略

a. 2030年に目指す姿

世の中の変化に合わせて社会課題の解決を図るトータル環境ソリューションカンパニーへの進化

b. 2030年に目指す事業規模

・ 売上高600億円

・ 営業利益80億円

・ 営業利益率13%以上

・ ROE13%以上

② 中期経営計画「EJ2024」の概要

a. 経営戦略

メーカー事業(環境関連)の拡大による飛躍的な成長を目指す

b. 目指す経営指標

・ メーカー事業(環境関連)の売上総利益構成比率50%以上

・ 売上総利益率30%以上

・ 営業利益率10%以上

・ ROE13%以上

・ 研究開発投資25億円以上 (中期経営計画期間累計)

・ 成長投資25億円以上 (中期経営計画期間累計)

c. 数値計画

(単位:百万円)

 

2022年12月期実績

2023年12月期実績

EJ2024最終年度

2024年12月期計画

2024年12月期

事業計画

差異

売上高

30,229

36,280

38,000

38,000

-

売上総利益

9,282

11,142

11,400

11,850

+450

売上総利益率(%)

30.7

30.7

30.0

31.2

+1.2

営業利益

2,756

4,025

4,400

4,050

△350

営業利益率(%)

9.1

11.1

11.6

10.7

△0.9

(差異の発生理由)

・ 売上高は「EJ2024」最終年度計画どおり。売上総利益は計画を上回る (+4.5億円)

・ 急速な物価上昇に伴い、人件費及び研究開発費を中心に販管費が増加 (+8.0億円)

・ 販管費の増加により営業利益は40.5億円 (△3.5億円)

d. 基本方針

基本方針

取組みの進捗・成果

新事業の創出、新製品開発の加速

・ 防災・減災に貢献する新製品の市場展開

・ 蓄電池のラインナップを拡充

・ 脱炭素、環境負荷低減に資するソリューションの開発・事業投資

事業領域の拡大

・ 国土強靭化基本計画に基づく防災・減災需要に応える

・ 新規進出エリアである北海道、新潟、広島などで事業基盤強化

・ 官民連携、広域化、包括化対応のための準備を進める

安定的収益基盤の確立

・ 積算技術の向上による受注確度の上昇

・ 原材料価格の高騰、納期遅延等への対応

 

(2) 経営環境

当社を取り巻く環境装置機械業界においては、資機材の供給不足や原材料価格上昇の影響はあるものの、公共分野では水インフラ設備の更新・整備需要や雨水排水施設などの防災・減災需要が堅調に推移し、民間分野では設備投資の増加など明るい兆しが見えております。

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループは、「豊かな人間環境の創造を目指して社会に貢献する」という経営理念に基づき、環境に対する社会的な関心が高まる以前から、長年にわたり様々な環境問題に目を向け、環境保全のエキスパートとしてノウハウを蓄積し続けてまいりました。

2023年8月には次の4つの項目を「マテリアリティ」として特定し、社会と自然環境、及び当社の事業を持続可能なものにしていくための基本方針を具体化いたしました。

・ イノベーションを通じた持続可能な地球環境の実現

・ 未来に向けた水と空気のインフラづくり

・ 信頼に応えるソリューションの提供

・ 変化を成長に変える組織づくり

これらのマテリアリティを基に、重要課題、主な取組み及び重要指標 (KPI) を定め、当社グループの社会的・経済的価値の向上に向けて施策の実行・管理を行ってまいります。

また、長期ビジョンにおいて2030年に目指す姿として掲げた「トータル環境ソリューションカンパニーへの進化」及びその目標に向けた第一ステージである中期経営計画「EJ2024」の実現に向けた取組みを継続的に行っております。

中期経営計画「EJ2024」の実現に向けて、当社グループが特に注力する領域として挙げている「防災・減災」、「蓄電池」、「水産」の3つの分野の現況は次のとおりであります。

① 防災・減災

2023年4月に「停電時マンホールポンプ起動支援システム」の販売を開始いたしました。

この製品は、災害等で電源を喪失したマンホールポンプを蓄電池等の電源を用いて応急起動することで、マンホールからの溢水を防ぐ防災ソリューションです。停電発生時の迅速な対応を可能とすることに加え、災害対応時の省人化・省力化にも貢献します。

近年の自然災害は、気候変動の影響により激甚化・頻発化する傾向にあり、防災・減災を目的としたインフラ整備の社会的要請は今後も益々高まるものと想定されます。当社グループは今後もこの分野における研究開発を進めてまいります。

② 蓄電池

脱炭素社会の実現に向けた取組みが前進するにつれて、エネルギー関連ソリューションの重要性が今後益々高まると当社グループは予想しております。蓄電池分野はこれまで、当社グループの一社である荏原実業パワー㈱において事業を展開しておりましたが、昨今の社会・市場環境の変化を踏まえ、親会社である当社が2024年4月に同社を吸収合併することといたしました。この再編は、グループ内の経営資源を集約し、グループ内の販売チャネルの活用や周辺領域への業容拡大による事業の育成を企図するものであり、引き続き当社グループの注力分野として投資を進めてまいります。

③ 水産

当社グループは全国の栽培漁業センター、水産試験場などのお客様に、栽培漁業・養殖業向けの種苗、稚魚を育てるための設備を長年納入してまいりました。近年、水産養殖の領域では「循環式陸上養殖」への参入・新設計画が相次いでおり、設備投資に対する需要が高まっております。

当社グループは、これまで同様、陸上養殖ビジネスを支える事業者であり続けるために、積極的な研究開発を進め、新たなソリューションを提供してまいります。

 

また、これらの取組みを通して業容を拡大し、事業をサステナブルな形で構築していくためには、コンプライアンスの充実もまた重要であると認識しております。事業運営におけるコンプライアンスの徹底を図るとともに、経営の透明性と効率性を高め、コーポレートガバナンス体制の一層の充実を図ってまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

① サステナビリティの基本的な考え方

当社グループは、「豊かな人間環境の創造を目指して社会に貢献する」という経営理念のもと、1946年の創業以来75年超にわたりお取引先様の信頼を得ながら、風水力機械や水処理、環境改善に関連する事業を行ってまいりました。社会のサステナビリティに関するインフラストラクチャーの整備に貢献することで当社グループは成長を遂げてまいりましたが、気候変動をはじめとする環境的、社会的な課題が浮き彫りとなる中で、当社グループの果たすべき役割は益々重要なものになっていると認識しております。

当社グループは、人と社会そして地球全体を持続可能な状態にしていく取組みを推進し、より良い未来を従業員と共に創ることを、より一層目指してまいります。

② サステナビリティ推進体制

当社グループは、サステナビリティ課題に起因する機会とリスクが今後の企業価値に大きな影響を与えるとの認識のもと、持続可能な世界の実現に向けた取組みをグループ全体で強化することを目的とし、「サステナビリティ委員会」を設置しております。

サステナビリティ委員会の主な活動内容とサステナビリティ推進体制の概要は次のとおりであります。

a.サステナビリティに関する方針・主要な取組みについての決定

b.サステナビリティに関する社内外コミュニケーションの取組方針の決定と推進

c.サステナビリティに関する重要事項の取締役会からの諮問と答申

 

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(2) 戦略

当社グループは、上記サステナビリティの基本的な考え方にて表明した方針を具体化し、ステークホルダー各位と課題認識を共有するために、サステナビリティ委員会においてマテリアリティ(重要課題)を特定いたしました。

マテリアリティ(重要課題)の特定プロセスは、次の方法に拠っております。

 

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上記のプロセスを経て特定したマテリアリティ(重要課題)は、次のとおりであります。

 

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「豊かな人間環境の創造を目指して社会に貢献する」という経営理念のもと、これらのマテリアリティ(重要課題)に重点的に取り組むことで、企業としての持続可能な成長と社会全体が抱える課題の解決を同時に目指してまいります。

当社グループの事業及び課題との関連性が深く、企業への開示要求が高い「気候変動対策」と「人的資本」に関する戦略については次のとおりであります。

 

 

① 気候変動対策

当社グループは、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の枠組みに則り、2022年12月に「ガバナンス・リスク管理」の各項目について、2024年2月には「戦略」及び「指標と目標」の各項目について情報の開示を行いました。開示にあたっては、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)及び国際エネルギー機関(IEA)が提示する公開シナリオから、「1.5℃シナリオ」及び「4℃シナリオ」の2つを採用し、各シナリオで気候変動が進行した場合の、2050年時点における当社グループを取り巻く経営環境(世界観)を整理いたしました。それらを基に導出した事業インパクト評価及び対応策の検討は次のとおりであります。

a. 1.5℃シナリオ

政府の政策による脱炭素社会への移行が進行することで、エネルギーの非化石燃料化がより強く進展し、当社グループの顧客である地方自治体や民間企業においても、省エネ・創エネ関連の設備投資が拡大することから、省エネ・創エネソリューションや蓄電池を扱う当社グループのメーカー事業の事業機会拡大が期待されます。一方で、資機材価格の上昇からビルや産業設備の建設・設置コストが増加することにより、新規の設備投資や開発案件が減少するリスクがあります。

1.5℃シナリオで主に認識される移行リスクにおいては、増益・減益両面でのインパクトがあると考えられますが、このシナリオにおいて利益を最大化するためには、成長分野における積極的な研究開発・事業投資を行い、競争力を形成・確保すること、及び社会のニーズに合わせて事業ポートフォリオを柔軟に変化・拡大させることが必要になります。

b. 4℃シナリオ

政策による規制が現状程度で推移することで、降水・気象パターンの変化や風水害の激甚化等のリスクが高まり、当社グループの顧客である地方自治体や民間企業においても物理リスクへの対策が進行いたします。水インフラ設備を提供する当社グループのエンジニアリング事業においては、防災・減災ソリューションの需要拡大が予想されます。また、メーカー事業においては海洋環境の変化に伴う閉鎖循環式陸上養殖の普及、商社事業においては民間企業のBCPに対応した設備投資などの拡大が見込まれます。一方で、基幹的な製造拠点等を持たない当社グループは、風水害の激甚化等による被災リスクは低いものの、当社グループの仕入先や協力会社が被災することによるサプライチェーンの寸断リスクは上昇いたします。

4℃シナリオで主に認識される物理リスクにおいては、当社グループがこれまで提供してきたソリューションの重要性が一層高まることで全ての事業セグメントにおいて事業機会が拡大し増益が見込まれますが、その責任を果たすためには、レジリエントなサプライチェーンの構築が重要になります。

「豊かな人間環境の創造」の実現に向けて、TCFDの枠組みに基づく分析を今後も継続して取り組み、事業インパクトの定量化、対応策の具体化・言語化を進めてまいります。

 

(指標及び目標)

当社グループは、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目標としております。その中間目標として、2030年時点での温室効果ガス排出量の削減目標を、次のとおり策定いたしました。

項目

目標

基準年実績 (連結)

Scope1 + Scope2

温室効果ガスの排出量を45%削減

1,252 t-CO2 (2022年度)

Scope1:当社グループの事業活動による直接排出

Scope2:当社グループが事業活動に際して調達したエネルギー由来の間接排出

なお、Scope1及び2の算出方法については、内部での検討・最適化に継続して取り組んでおります。係数の見直し等により、計算方法を変更する場合には、削減目標の基準年である2022年度の数値を遡及して修正する可能性がありますが、削減目標(%)に変更はありません。

 

 

② 人的資本

当社グループは、持続可能な社会の実現に向け、時々刻々と変化する社会的ニーズに応える「新たな価値」を創造し続けることを目指しております。その全ての事業活動の礎となるのが「人材」であるとの考えから、当社グループでは、多様な人材を適切に採用・配置し、また従業員一人ひとりが、持てる力を最大限発揮できるよう以下の環境を整備しております。

a. ダイバーシティ

当社グループが今後も持続的に発展し、社会へ価値を提供し続けるためには、多様なバックグラウンドを持つ役職員が、互いに刺激を受けながら、各々の持つポテンシャルを最大限に発揮することが欠かせません。当社グループでは女性活躍推進や仕事と育児・介護・生活との両立支援、障がい者の活躍機会の創出、能力と意欲のあるシニア従業員の活躍推進などの観点からダイバーシティを推進しております。

b. 健康・ワークライフバランス

「豊かな人間環境の創造を目指して社会に貢献する」という経営理念を実現するためには、従業員一人ひとりが心身ともに健康であり、心豊かに充実した生活を送ることが重要との認識のもと、「荏原実業 健康宣言」を2022年に策定いたしました。また、当社は経済産業省及び日本健康会議が主催する「健康経営優良法人 (大規模法人部門)」の認定を2023年度より受けております。

当社グループは、健康増進や働き方の改善に向けた様々な取組みを、健康保険組合や従業員、その家族と一体となって実践し、従業員一人ひとりが持てる力を最大限発揮できる職場環境を構築するとともに、従業員とその家族からも魅力ある会社を目指してまいります。

c. 労働安全衛生

当社グループでは機器・設備の取扱いや建設現場における作業・監督などがあることから、安全・衛生の確保は最優先事項と捉えており、当社グループの行動規範において「職場の安全衛生」に関する項目を定めております。また、業務遂行上発生する災害及び疾病を予防するため、労働基準法等の労働関連法規の遵守のみならず、従業員の安全と健康を確保し、快適な職場環境の形成を促進するとともに、業務遂行の円滑化と生産性向上にも取り組んでおります。

d. 人権

当社グループは、「国際人権章典」、国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」を支持・尊重し、「荏原実業グループ行動規範」の中で示している「各自の人権を尊重し、差別につながる行為はこれを一切行ってはならない」ことを、人権に関する基本的な考え方としております。環境保全のリーディングカンパニーを目指す企業グループとして、SDGsの活動を進めるとともに、環境・社会・ガバナンス(ESG)に配慮した経営を推進し、幅広い人権尊重への取組み、そして人と社会、地球全体を持続可能な状態にしていく取組みを行い、より良い未来を従業員と共に創ることを目指してまいります。

また、当社グループの全役職員を対象として、人権に対する意識向上に向けた研修を実施しております。この研修では、企業経営において重要性を増す人権尊重の必要性について、全役職員の意識を向上させるため、弁護士を講師として実施しております。

加えて、人権を含むコンプライアンス違反及びハラスメント等の相談や通報ができる、常勤監査等委員を窓口とした内部通報窓口を設置しております。ハラスメントについては、人事部長を窓口とした専用窓口(ハラスメント相談・苦情窓口)も設けており、「ハラスメントの防止に関する規則」において、禁止事項と事案発生時の対応方法等を定めております。相談や通報の方法は、架電や電子メールのほか、FAX、書面、面会とし、匿名での相談や通報も可能としており、利用しやすい環境を整えております。相談・通報者や事実関係確認のための協力者及び相談・通報内容は、公益通報者保護法等の法令と当社の「内部通報規程」及び「ハラスメントの防止に関する規則」により保護されます。相談・通報者、相談・通報対象者、関係者のプライバシー保護、相談・通報者への不利益取扱いの禁止を徹底し、相談・通報者が相談・通報したこと等を理由として不利益を被ることが無い旨を「内部通報規程」及び「ハラスメントの防止に関する規則」に明記しております。

 

 

(3) リスク管理

当社グループは、「リスクマネジメント規則」を制定し、事業上のリスクを洗い出し、その対応を整理することでリスク管理を行っております。全社的なリスクマネジメント推進に関する課題・対応策を協議する組織として「リスク・コンプライアンス委員会」を設置し、年4回、洗い出したリスクの検討を行い、個別の対応策を協議しております。

なお、気候変動に係るリスクについては中長期的な視点での認識・評価が必要であることから、サステナビリティ委員会がその機会と併せて管理を行っております。リスクマネジメントプロセスの過程において認識された短期的な、又は顕在化したリスクについては、リスク・コンプライアンス委員会において取り扱うこととしております。

 

(4) 指標及び目標

当社グループは、上記の戦略において記載した4つのマテリアリティ(重要課題)について、達成度を計測・評価する指標及び目標(KPI)を策定いたしました。

マテリアリティ(重要課題)の指標及び目標(KPI)は次のとおりであります。

 

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なお、人材の多様性を含む人的資本に関する指標に係る実績については、「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しております。

 

(5) その他のサステナビリティに関する考え方及び取組み

「気候変動対策」と「人的資本」以外のサステナビリティに関する考え方及び取組みについては、当社ウェブサイト(https://sustainability.ejk.co.jp/)に掲載しております。

 

3【事業等のリスク】

以下においては、当社グループの事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしも上記のようなリスク要因に該当しない事項についても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。

当社グループは、これらのリスクの発生可能性と重要度を認識・予測したうえで、発生回避に向けた取組み及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載内容も併せて、慎重に検討したうえで行われる必要があります。なお、以下の記載は当社株式への投資に関するリスクを全て網羅するものではありませんので、この点ご留意ください。

以下の事項には将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 官公庁への依存について

当社グループは、受注高及び売上高の官公庁依存度が高い水準になっており、公共投資予算の抑制や公共工事コストの縮減策によって、当社グループの受注状況及び損益が影響を受ける可能性があります。

当社グループでは、オゾン・省エネ・脱臭・水処理・水産などの「メーカー事業」分野における技術開発力及び新製品開発力の強化により積極的な民需の開拓を行い、民間からの安定した受注及び収益の向上に努める方針であります。なお、現状では当該リスクが顕在化する可能性は低く、顕在化の時期は特定できません。

また、官公庁依存度が高いことから、公共工事の売上高が12月から3月に集中する季節的変動があります。

① 受注先別実績

 

官公庁(百万円)

民間(百万円)

計(百万円)

官公庁比率(%)

2022年12月期

20,620

14,023

34,643

59.5

2023年12月期

24,631

13,820

38,452

64.1

(注) 当社グループが建設業者を通じて受注した官公庁発注工事は、官公庁欄に計上しております。

② 販売先別実績

 

官公庁(百万円)

民間(百万円)

計(百万円)

官公庁比率(%)

2022年12月期

18,919

11,310

30,229

62.6

2023年12月期

21,761

14,519

36,280

60.0

(注) 当社グループが建設業者を通じて受注した官公庁発注工事は、官公庁欄に計上しております。

 

(2) 市場環境について

当社グループでは、市場環境の変化に対応すべく製品開発力を強化しておりますが、民間設備投資の動向、新規参入業者の増加等による価格競争の激化、原材料価格の変動など急激な市場環境の変化が生じた場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。なお、現状では当該リスクが顕在化する可能性は低く、顕在化の時期は特定できません。

 

(3) 業績の季節的変動について

上記「(1)官公庁への依存について」で記載のとおり、官公庁依存度が高いことから、売上高が上期に集中する季節的変動があります。

 

2022年12月期

2023年12月期

上期

下期

通期

上期

下期

通期

売上高

(百万円)

16,864

13,364

30,229

20,599

15,681

36,280

上下比率

(%)

55.8

44.2

100.0

56.8

43.2

100.0

経常利益

(百万円)

2,309

620

2,929

2,754

1,409

4,164

上下比率

(%)

78.8

21.2

100.0

66.1

33.9

100.0

(注) 下期の数値は、通期の数値から上期の数値を差し引いたものであります。

 

 

(4) ㈱荏原製作所及び同社の関係会社との取引関係について

当社グループは、㈱荏原製作所及び同社の関係会社(以下「荏原グループ」という。)と資本関係はないものの、販売代理店契約を締結して荏原グループ製品の仕入・販売を行うとともに、環境関連装置、水処理施設など各種プラント類の施工では荏原グループから機器材料を調達するなど継続的な事業上の関係があります。

最近2連結会計年度における製品及び工事売上原価、商品仕入高に占める荏原グループの割合は、次のとおりであります。

 

2022年12月期

2023年12月期

A 荏原グループ

(百万円)

2,647

3,347

B 製品及び工事売上原価

(百万円)

16,657

18,741

A/B

(%)

15.9

17.9

C 荏原グループ

(百万円)

1,786

2,569

D 商品仕入高

(百万円)

4,289

6,586

C/D

(%)

41.6

39.0

荏原グループとの取引関係は、今後も安定的に推移するものと判断しておりますが、荏原グループとの代理店基本契約等が延長されなかった場合又は取引関係が大幅に縮小した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。なお、現状では当該リスクが顕在化する可能性は低く、顕在化の時期は特定できません。

 

(5) 製造について

当社グループは、自社の生産設備を保有しない、いわゆるファブレス企業であり、環境関連製品の製造を外部委託しております。生産設備を保有しないことにより経営資源を研究開発に集中させることができる一方で、十分な製造委託先の確保ができない場合、製品の品質に問題が生じた場合又は原材料の調達が困難になった場合などには、製品の供給を受けられなくなる可能性があります。かかる場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、複数の製造委託先を有していること、また、製品製造に必要な技術及びデータは全て当社が管理しているため、特定の製造委託先への委託が不可能になった場合でも、短期間で代替の委託先を選定し製品供給を再開することができると認識しております。そのため、現状では当該リスクが顕在化する可能性は低く、顕在化の時期は特定できません。

 

(6) 環境法規制について

当社グループは、環境法規制の強化に対応した製品の開発に経営資源を集中させており、数々の環境法規制の強化は当社グループの成長要因の一つとなっております。しかしながら、環境法規制の強化に対応した魅力ある製品やサービスを開発できない場合又は開発が長期化した場合などには、将来の成長性を低下させ、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。なお、現状では当該リスクが顕在化する可能性は低く、顕在化の時期は特定できません。

 

(7) 法的規制について

当社グループは、建設業法、製造物責任法、計量法、産廃物の処理及び清掃に関する法律、高圧ガス保安法、毒物及び劇物取締法など様々な法規制の適用を受けております。当社グループでは法令遵守の徹底を図るとともに、関連法令の動向を十分注視しておりますが、法律・規制等が強化された場合又は想定外の法律・規則等の導入・改正等があった場合、規制対応に不備が生じ、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

なお、現状では当該リスクが顕在化する可能性は低く、顕在化の時期は特定できません。

 

(8) 工事損失費用について

当社グループは、顧客の要望に応えるよう品質、機能、安全性、納期等に万全を期しておりますが、販売した製品及び設計・施工したプラント類の不具合や納期遅延等により、大規模な追加工事による多額の追加費用や顧客への補償等費用の発生、更には顧客等からの多額な損害賠償請求等の訴訟や係争が生じる可能性があります。これらが生じた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

なお、現状では当該リスクが顕在化する可能性は低く、顕在化の時期は特定できません。

 

 

(9) 研究開発について

継続的成長及び競争力強化の源泉は、差別化された新技術・新製品等の研究開発にあると認識し、積極的な研究開発活動を継続的に行っております。しかしながら、研究開発の成果には不確実性が伴い、定期的に部門会議や研究開発委員会において進捗管理は行っているものの、必ずしも計画どおりに当社グループの業績に結び付かない可能性があります。

 

(10) 新規事業について

当社グループは、将来の事業拡大及び企業価値向上に向け、既存事業に加えて新規事業及び新製品の開発に積極的に取り組んでおります。しかしながら、新規事業及び新製品の展開には不確実な要素が多く、事業が当初の見込みどおりに推移せず、投資に対し十分な回収を行うことができない場合又は投資回収が長期化する場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(11) 情報セキュリティについて

当社グループは、事業活動において顧客情報及び個人情報を扱う場合があり、また、営業上・技術上の機密情報を保有しております。これらの情報の取扱いには細心の注意を払っており、外部からの不正アクセス、自社又は委託先での人為的過失等を防ぐために技術的対策、社員教育及び訓練の実施など適切な措置を講じておりますが、想定外の重大な情報漏洩や不正アクセス等が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況等に重大な影響を与える可能性があります。

 

(12) 保有有価証券の時価下落について

当社グループは、取引先との安定的な関係を維持するため、取引先の株式を保有しており、また資金運用のため一定額の有価証券を保有しております。政策保有株式の縮減には努めておりますが、急激な株式市況の悪化は、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があるものの、現状、顕在化の時期は特定できません。

 

(13) 自然災害等について

地震・風水害等の天災地変、戦争、テロ、その他突発的な事故等の発生により、当社グループの所有資産や仕掛工事中の機器資材等の価値が低下した場合又は原材料の調達制限等で一部事業を一時的に中断せざるを得ない状況に陥った場合などには、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。当社グループでは事業継続計画(BCP)を策定してリスク回避に努めております。なお、現状では当該リスクが顕在化する可能性は予測できず、顕在化の時期も予測できません。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度(2023年1月1日から2023年12月31日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に係る各種行動制限の緩和等により経済活動の正常化が進み、景気は緩やかに持ち直しつつあります。一方で、原材料、資源価格の高騰や円安などは継続しており、景気の先行きは依然として不透明な状況が続いております。

当社を取り巻く環境装置機械業界においては、資機材の供給不足や原材料価格上昇の影響はあるものの、公共分野では水インフラ設備の更新・整備需要や雨水排水施設などの防災・減災需要が堅調に推移し、民間分野では設備投資の増加など明るい兆しが見えております。

このような事業環境のもと、当社グループは以下を基本的方針とし、特に「防災・減災」、「蓄電池」、「水産」の3つを注力領域として、企業価値の向上を目指しております。

・ 新事業の創出・新製品開発の加速

・ 事業領域の拡大

・ 安定的収益基盤の確立

これらの結果、当連結会計年度の受注高は38,452百万円(前年同期比11.0%増)、売上高は36,280百万円(前年同期比20.0%増)、営業利益は4,025百万円(前年同期比46.0%増)、経常利益は4,164百万円(前年同期比42.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は3,141百万円(前年同期比44.8%増)となりました。

なお、売上高・営業利益・経常利益は過去最高を更新しました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

a. メーカー事業 (環境関連)

当セグメントでは、受注高は7,255百万円(前年同期比4.9%減)、売上高は7,654百万円(前年同期比21.7%増)、セグメント利益は1,652百万円(前年同期比84.8%増)となりました。

b. エンジニアリング事業 (水処理関連)

当セグメントでは、受注高は20,835百万円(前年同期比27.4%増)、売上高は17,671百万円(前年同期比22.6%増)、セグメント利益は、2,182百万円(前年同期比23.7%増)となりました。

c. 商社事業 (風水力冷熱機器等関連)

当セグメントでは、受注高は10,360百万円(前年同期比2.9%減)、売上高は10,954百万円(前年同期比14.9%増)、セグメント利益は1,328百万円(前年同期比23.2%増)となりました。

 

財政状態については、次のとおりであります。

資産合計は、前連結会計年度末と比べ8,389百万円増加し、41,917百万円となりました。売上高の増加に伴い、受取手形、売掛金及び契約資産が3,641百万円増加したこと、現金及び預金が3,201百万円増加したこと、また、保有株式の時価上昇等に伴い投資有価証券が1,395百万円増加したこと等が主な要因であります。

負債合計は、前連結会計年度末と比べ5,757百万円増加し、20,889百万円となりました。売上高の増加に伴い、支払手形及び買掛金が2,779百万円増加したこと、契約負債が1,471百万円増加したこと、未払法人税等が508百万円増加したこと、未払消費税等が253百万円増加したこと、また、投資有価証券の時価評価に係る繰延税金負債が378百万円増加したこと等が主な要因であります。

純資産合計は、前連結会計年度末と比べ2,631百万円増加し、21,028百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益の計上により3,141百万円増加したこと、保有株式の時価上昇等に伴いその他有価証券評価差額金が1,065百万円増加したこと、一方で、剰余金の配当により1,027百万円減少したこと、自己株式の取得により673百万円減少したこと等が主な要因であります。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べ2,888百万円増加し、13,854百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

a. 営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動の結果獲得した資金は4,712百万円(前年同期は1,615百万円の獲得)となりました。税金等調整前当期純利益の計上4,365百万円に加え、売上債権及び契約資産が3,641百万円増加、仕入債務が2,779百万円増加、契約負債が1,471百万円増加、法人税等の支払額826百万円等により、営業活動全体では4,712百万円の増加となったものであります。

b. 投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動の結果使用した資金は143百万円(前年同期は9百万円の獲得)となりました。主な要因は、投資有価証券の売却及び償還による収入541百万円、拘束性預金の増加312百万円、投資有価証券の取得による支出199百万円、有形固定資産の取得による支出119百万円等であります。

c. 財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動の結果使用した資金は1,680百万円(前年同期は1,614百万円の使用)となりました。支出の主な内訳は、配当金の支払額1,026百万円、自己株式の取得による支出627百万円であります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

 至 2023年12月31日)

前年同期比(%)

メーカー事業 (環境関連)

(百万円)

3,902

104.5

エンジニアリング事業 (水処理関連)

(百万円)

11,670

122.4

商社事業 (風水力冷熱機器等関連)

(百万円)

3,156

99.2

合計

(百万円)

18,729

113.8

(注) 金額は生産価格によっております。

 

b. 商品仕入実績

当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

 至 2023年12月31日)

前年同期比(%)

メーカー事業 (環境関連)

(百万円)

670

334.7

エンジニアリング事業 (水処理関連)

(百万円)

789

208.8

商社事業 (風水力冷熱機器等関連)

(百万円)

5,126

126.9

合計

(百万円)

6,586

142.7

(注) 金額は仕入価格によっております。

 

 

c. 受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

1) 受注実績

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

メーカー事業 (環境関連)

7,255

95.1

4,112

91.2

エンジニアリング事業 (水処理関連)

20,835

127.4

21,549

117.2

商社事業 (風水力冷熱機器等関連)

10,360

97.1

5,759

90.6

合計

38,452

111.0

31,421

107.4

(注) 金額は販売価格によっております。

 

2) 受注先別実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

 至 2023年12月31日)

官公庁(百万円)

民間(百万円)

計(百万円)

前年同期比(%)

メーカー事業 (環境関連)

3,100

4,155

7,255

95.1

エンジニアリング事業 (水処理関連)

20,398

437

20,835

127.4

商社事業 (風水力冷熱機器等関連)

1,131

9,228

10,360

97.1

合計

24,631

13,820

38,452

111.0

(注)1.金額は販売価格によっております。

2.当社グループが建設業者を通じて受注した官公庁発注工事は、官公庁欄に計上しております。

 

d. 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

 至 2023年12月31日)

官公庁(百万円)

民間(百万円)

計(百万円)

前年同期比(%)

メーカー事業 (環境関連)

3,511

4,143

7,654

121.7

エンジニアリング事業 (水処理関連)

16,886

785

17,671

122.6

商社事業 (風水力冷熱機器等関連)

1,363

9,590

10,954

114.9

合計

21,761

14,519

36,280

120.0

(注)1.総販売実績に対する販売割合が、10%以上の相手先はありません。

2.当社グループが建設業者を通じて受注した官公庁発注工事は、官公庁欄に計上しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 経営成績等

1) 財政状態

当連結会計年度の財政状態については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

 

 

2) 経営成績

イ.経営成績の概要

当連結会計年度における経営成績の概要は、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

ロ.受注高について

公共分野では水インフラ設備の更新・整備需要や雨水排水施設などの防災・減災需要が堅調に推移し、民間分野では設備投資の増加など明るい兆しが見えております。感染症対策製品の需要減少や前期における前倒し受注の反動減の影響はあるものの、エンジニアリング事業では大都市圏を中心に大型案件を獲得し、大きく受注が増加いたしました。その結果、受注高は前年同期比11.0%増の38,452百万円となりました。セグメント別では、メーカー事業は前年同期比4.9%減、エンジニアリング事業は前年同期比27.4%増、商社事業は前年同期比2.9%減となりました。

ハ.売上高について

高水準の期首受注残高が順調に売上計上され、全てのセグメントで売上高が増加いたしました。その結果、売上高は前年同期比20.0%増の36,280百万円となりました。セグメント別では、メーカー事業は前年同期比21.7%増、エンジニアリング事業は前年同期比22.6%増、商社事業は前年同期比14.9%増となりました。

ニ.売上総利益について

売上高の増加に伴い売上総利益も増加し、売上総利益は前年同期比20.0%増となる11,142百万円となりました。

ホ.販売費及び一般管理費について

人件費等の増加により、販売費及び一般管理費は前年同期比9.1%増となる7,117百万円となりました。

ヘ.営業利益について

売上総利益の増加により、営業利益は前年同期比46.0%増の4,025百万円となりました。

ト.経常利益について

営業利益に、受取配当金、投資不動産賃貸料等による営業外収益241百万円、不動産賃貸費用等による営業外費用103百万円が計上され、経常利益は前年同期比42.1%増の4,164百万円となりました。

チ.親会社株主に帰属する当期純利益について

経常利益に投資有価証券売却益201百万円等の特別損益、法人税等1,224百万円が計上され、親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期比44.8%増の3,141百万円となりました。

 

b. 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、「3 事業等のリスク」及び下記「③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定」に記載しております。

 

c. セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

メーカー事業 (環境関連)

環境関連製品の製造・販売を手掛ける当セグメントの受注高は、脱臭設備・資材や陸上養殖設備などの需要が増加した一方で、感染症対策製品、半導体製造装置向けオゾンモニタの需要が減少したことにより、セグメント全体では前年同期比4.9%減の7,255百万円となりました。売上高は、資機材の供給不足等により遅れていたオゾンモニタの出荷が進んだことに加え、蓄電池、陸上養殖設備などの増加により、前年同期比21.7%増の7,654百万円となりました。セグメント利益も売上高の増加に伴い、前年同期比84.8%増の1,652百万円となりました。

エンジニアリング事業 (水処理関連)

上下水道向けの設計・施工を手掛ける当セグメントの市場環境は、水インフラ設備の更新・整備需要の増加に加え、雨水排水施設などの防災・減災需要も増加しており、受注高は前年同期比27.4%増の20,835百万円となりました。売上高は資機材の供給不足等による工事進捗の遅れは残るものの、高水準の期首受注残高が売上計上され、前年同期比22.6%増の17,671百万円となりました。セグメント利益も売上高の増加に伴い、前年同期比23.7%増の2,182百万円となりました。

商社事業 (風水力冷熱機器等関連)

主にポンプ、冷凍機、空調機器などを商社として販売する当セグメントの市場環境は、機器の納期長期化など不透明な要素は残るものの、民間分野の設備投資は回復傾向にあります。しかし、前年同期に見られた、顧客による納期長期化を見越した前倒し発注の動きの反動により、受注高は前年同期比2.9%減の10,360百万円となりました。一方、売上高は高水準の期首受注残高が順調に売上計上され、前年同期比14.9%増の10,954百万円となりました。セグメント利益も売上高の増加に伴い、前年同期比23.2%増の1,328百万円となりました。

 

d. 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

1) 目標とする経営指標

当社グループは、メーカー事業(環境関連)を核とした成長基盤の構築を図り、利益成長により企業価値を向上させるために、「目指す経営指標」として次の3つの経営指標を設定しております。

・ メーカー事業(環境関連)の売上総利益構成比率50%以上

・ 売上総利益率30%以上

・ 営業利益率10%以上

当連結会計年度においては、メーカー事業(環境関連)の売上総利益構成比率29.3%、売上総利益率30.7%、営業利益率11.1%となっております。

2) 中長期的な会社の経営戦略

中長期的な会社の経営戦略については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)経営方針・経営戦略・経営指標等」に記載しております。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a. キャッシュ・フロー

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

また、重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源等については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載しております。

なお、当社グループのキャッシュ・フロー関連指標の推移は、次のとおりであります。

 

2019年12月期

2020年12月期

2021年12月期

2022年12月期

2023年12月期

自己資本比率

(%)

53.3

51.4

53.6

54.9

50.2

時価ベースの自己資本比率

(%)

52.3

78.5

85.1

79.8

84.2

キャッシュ・フロー対有利子負債比率

(年)

1.5

0.3

0.4

0.7

0.2

インタレスト・カバレッジ・レシオ

(倍)

90.3

611.8

467.0

309.0

865.4

自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

(注)1.各指標はいずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

3.営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

 

b. 資本の財源及び資金の流動性

1) 資金の需要

当社グループは、長期ビジョン(2030年度に目指す姿)を実現するための研究開発投資及び成長投資、並びに債務の返済及び運転資金等の資金需要に備え、流動性の確保、内部留保の充実及び資金調達に努めております。

2) 資金の調達

当社グループは、必要な資金は内部資金より充当し、不足が生じた場合は銀行借入により調達しております。

3) 資金の流動性

当社グループは、複数の金融機関と当座貸越契約を設定しております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。その作成には経営者による会計方針の採用や、資産・負債及び収益・費用の計上及び開示に関する見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績等を勘案して合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表作成において採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

また、重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

相手方の名称

契約内容

備考

契約期間

㈱荏原製作所

同社が扱う風水力機械製品及び風水力システム製品(エンジニアリング及び付帯工事を含む)の取引についての基本契約

代理店基本契約

契約日2021年10月1日から2023年9月30日以後1か年のみ自動延長

同社汎用製品などの販売に関する契約

特約店基本契約

契約日2004年4月1日から1か年以後1か年ごとに自動延長

当社が開発した腐植質を用いた下水汚泥改質装置を同社が下水道施設に販売するための優先的権利を付与する販売協定書

販売協定

協定日2001年4月1日から2か年以後1か年ごとに自動延長

 

6【研究開発活動】

(1) 方針及び目的

当社グループの研究開発は、「豊かな人間環境の創造を目指して社会に貢献する」という経営理念に基づき、脱炭素、水、空気、エネルギーなど環境に関わる様々な社会課題の解決と、当社の持続的な成長に向けて、計測、省エネ・創エネ、脱臭、水処理プラント、医療など、主としてメーカー事業(環境関連)に属する分野において、製品及びシステムの開発を行っております。

研究開発体制については、当社の研究開発委員会において、全ての研究開発活動の妥当性、方向性、方法、工程、予算及び市場性について審議し、適確、迅速かつ経済的に研究開発活動を遂行できる体制を構築しております。

また、研究開発活動の実施については、次の各拠点において、関連部門が連携しながら取り組んでおります。

中央研究所では、脱臭、脱硫、水処理、バイオマス等の環境関連製品に向けた研究開発、及び他部門における製品開発への協力業務を行っております。

環境計測技術センターでは、オゾン濃度測定を中心とした測定器・装置及び除菌・脱臭などの環境整備に役立つオゾン応用製品の研究開発を進めております。加えて、オゾンの用途拡大や有効利用が期待される医療・福祉分野に向けた製品の開発にも取り組んでおります。これらの拠点では、大学など外部研究機関との共同研究も積極的に推進しております。

かずさ生産技術センターでは、高効率のターボブロワを中心とする送風機の改良・開発を行っております。

かずさ開発センター及び荏原実業パワー㈱では、マルチモード空調機や蓄電システムなど、ZEB・ZEH関連製品の開発を進めております。

なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は732百万円であります。

 

 

(2) 主な研究開発の成果

以下は、全てメーカー事業(環境関連)に係る研究開発の成果であります。

計測分野

① テーマ名:アンモニア性窒素濃度測定装置

概要:従来のイオン電極式とは異なる新技術を採用し、安定した連続測定が可能なアンモニア性窒素濃度測定装置を開発し、東京都下水道局との共同研究を実施し研究目標を達成いたしました。流入水のアンモニア性窒素濃度の把握は、ばっ気風量の最適化や処理水質の安定化に寄与し、下水処理の省エネルギー化を実現いたします。順次、市場展開を進めてまいります。

期間:2021年1月~2023年12月

② テーマ名:プラズマ・オゾン・UVによる複合表面処理技術・装置

概要:オゾン/UV、大気圧プラズマを活用した表面処理技術の確立と実証装置の製作を、大学等研究機関と共同で進めております。この表面処理技術開発では、化粧品原料等に使用される粉体材料への機能付加のための基礎技術を確立いたしました。現在、機能性評価試験を継続実施しております。また、細胞培養基材に対する表面処理では、培養時に使用する薬剤の使用量を更に低減するための処理条件の確立・検証を行っております。

期間:2018年1月~2023年12月 (現在継続中)

③ テーマ名:着色排水検知器の開発

概要:工場及び事業所から着色した排水が河川に流出する事故を防止するため、放流槽等の水の色を測定して異常を検知する装置の開発を実施いたしました。着色した排水に含まれる物質による生態系への悪影響や環境負荷の低減に向けて市場展開を進めてまいります。

期間:2022年1月~2023年12月

 

省エネ・創エネ分野

① テーマ名:水素添加型メタン生成プロセスの共同研究

概要:バイオメタネーションは、微生物の働きで炭酸ガスを水素との反応によりメタンガスに転換する技術です。当社は大学等と共同で、このバイオメタネーションシステムの適正化の研究開発を行っております。脱炭素社会の実現に向けて本技術の実用化を進めております。

期間:2021年6月~2023年12月 (現在継続中)

② テーマ名:デシカント除湿機(天吊り・縦型)の改良

概要:スーパーマーケット等の施設のゼロエネルギービル(ZEB)化に採用されるシステムにおいて、エネルギーの使用状況を可視化するとともに、設備機器の稼働を制御してエネルギー運用を最適化する「EMS」に対応可能な制御盤を開発いたしました。省エネと環境改善を進めるシステムとなっております。

期間:2023年1月~2023年12月

③ テーマ名:省エネ空調機に使用するデシカント技術の改良

概要:セントラル空調方式に採用される高効率な空調機の主要部であるローターの大型化と分割化構造の採用により、大風量の空調機本体のコストダウン、現場搬入時の輸送問題及びメンテナンス時の搬入経路への対応等を可能といたしました。快適性とビル空調のCO2削減に貢献してまいります。

期間:2023年1月~2023年12月

④ テーマ名:停電時マンホールポンプ起動支援システム

概要:風水災害等による停電に伴うマンホールポンプの稼働停止に対する問題解決のため、自然エネルギーである太陽光発電や可搬式蓄電池、電気自動車を組み合わせた災害に強いシステムであります。公益財団法人日本下水道新技術機構他2社との共同研究が2022年12月に完了し、2023年3月に技術マニュアルが発刊されました。

期間:2021年8月~2023年12月

⑤ テーマ名:蓄電池による水門駆動システム

概要:洪水・高潮・津波等による浸水被害から住民の生命及び財産を守るため、迅速かつ確実な水門(樋門等を含む。)の開閉操作システムを開発及び事業化することを目的とし、公益財団法人日本下水道新技術機構他2社と蓄電池を用いた樋門の電動化及び遠隔化技術に関する共同研究をしております。

期間:2023年6月~2023年12月 (現在継続中)

 

 

脱臭分野

テーマ名:脱臭設備最適化システム

概要:公共下水道設備や民間工場に設置されている脱臭設備において、設備の運転状況をコントロールするシステムの開発を実施しており、2024年1月より開発を再開いたします。脱臭設備を省エネ化し、C02削減に貢献してまいります。

期間:2021年7月~2023年12月 (開発中断中→2024年1月より開発再開)

 

水処理プラント分野

① テーマ名:能力増強型水処理システム

概要:国内の下水処理方式として広く普及している標準活性汚泥法について、既存施設を活用しながら処理能力を1.5倍程度へ増強することが可能な新たなシステムを地方共同法人日本下水道事業団と共同開発しております。

期間:2019年1月~2023年12月 (現在継続中)

② テーマ名:新規接触材の開発

概要:公共下水道設備や民間排水処理設備のばっ気槽に充填し、表面に高密度の微生物を付着させることにより効率よく浄化を促進させる接触材を開発し、販売を開始いたしました。ばっ気槽の省スペース化やばっ気量の削減による省エネ効果(CO2削減)を訴求ポイントとし、脱炭素ニーズに貢献してまいります。

期間:2022年1月~2023年12月

③ テーマ名:無機排水に対する膜処理の適用

概要:化学工場等から排出される重金属を含む無機排水に対して、高強度の膜を用いた固液分離技術の開発を進めております。現在最もよく使用されている「凝集沈殿処理」に比べ、省スペース化や処理水質の安定化が図れる水処理プラントの提供を目指してまいります。

期間:2022年1月~2023年12月 (現在継続中)

 

第3【設備の状況】

1【設備投資等の概要】

当社グループは、メーカー事業の拡充と研究開発の強化を図るため、当連結会計年度において総額197百万円の設備投資を実施いたしました。なお、当連結会計年度において重要な設備の除却、売却等はありません。

 

2【主要な設備の状況】

当連結会計年度末における主要な設備は、以下のとおりであります。

(1) 提出会社

(2023年12月31日現在)

 

事業所名
(所在地)

セグメントの名称

設備の内容

帳簿価額

従業

員数
(人)

建物及び構築物

(百万円)

機械装置及び運搬具

(百万円)

工具、器具及び備品

(百万円)

リース資産

(百万円)

土地

合計
(百万円)

面積
(㎡)

金額
(百万円)

本社

(東京都中央区)

メーカー、エンジニアリング、商社、全社

統括業務、営業設計、生産管理、営業、賃貸

338

(26)

0

14

25

480.85

(24.00)

814

(147)

1,192

(174)

212

(35)

静岡支社

(静岡市駿河区)

メーカー、エンジニアリング、商社

営業

31

-

0

-

221.96

89

121

18

(6)

関東支社

(さいたま市浦
和区)

メーカー、エンジニアリング、商社、全社

営業、賃貸

80

(48)

-

0

4

231.04

(138.84)

196

(117)

281

(165)

22

(2)

神奈川支社

(川崎市川崎区)

メーカー、エンジニアリング、商社、全社

営業、賃貸

165

(144)

-

0

-

464.16

(386.80)

5

(4)

171

(148)

15

(7)

環境計測技術
センター

(川崎市麻生区)

メーカー

総合研究、生産管理、設計

230

0

26

-

1,115.41

207

464

45

(14)

中央研究所

(川崎市麻生区)

メーカー、エンジニアリング、商社

総合研究

118

3

34

-

-

-

157

14

(4)

かずさ事業所

(千葉県木更津市)

メーカー、エンジニアリング、商社

総合研究、生産管理、設計

736

(336)

34

20

(0)

-

55,480.53

242

1,034

(336)

14

(1)

埼玉研究所

(埼玉県久喜市)

メーカー

実証実験

1

-

0

-

215.28

20

22

-

保養所

(神奈川県足柄下郡他)

全社

厚生施設

24

-

0

-

1,077.12

44

69

-

(注)1.「従業員数」欄以外の( )書は、内書で賃貸中のものであり、貸借対照表上、投資不動産として表示しております。

2.「従業員数」欄の( )書は、臨時雇用者数(顧問、嘱託、非常勤顧問、パートタイマーを含む。)の年間の平均人員を外書で記載しております。

 

(2) 国内子会社

(2023年12月31日現在)

 

会社名
(本社所在地)

セグメントの
名称

設備の内容

帳簿価額

従業員数
(人)

建物及び構築物

(百万円)

工具、器具及び備品

(百万円)

土地

合計
(百万円)

面積
(㎡)

金額
(百万円)

㈱エバジツ

(東京都大田区)

商社

統括業務、営業、賃貸

119

(86)

1

(0)

1,330.95

(1,056.84)

76

(71)

196

(158)

52

(10)

(注)1.「従業員数」欄以外の( )書は、内書で賃貸中のものであり、連結貸借対照表上、投資不動産として表示しております。

2.「従業員数」欄の( )書は、臨時雇用者数(顧問、嘱託、非常勤顧問、パートタイマーを含む。)の年間の平均人員を外書で記載しております。

 

3【設備の新設、除却等の計画】

該当事項はありません。