第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの事業環境は、国際関係・政治・経済・環境問題・技術革新といったあらゆる面において、変化が複合的・加速度的に起こり続けています。さらに、気候変動対策をはじめとしたサステナビリティに取り組むことの重要性も、より一層高まり、EV化、デジタル化の加速など、モビリティ業界におけるCASE(ケース)、MaaS(マース)の動きへも繋がっています。このような事業環境において、新興EVメーカーが急成長を遂げるなどモビリティ業界の構造変化が進むと共に、タイヤに求められる価値も大きく変化し続けています。当社グループは、変化が常態化し、予測困難な時代を生き抜き、ビジョンに掲げる「サステナブルなソリューションカンパニー」として社会価値・顧客価値を持続的に提供し続けるため、2022年に発表した「2030年 長期戦略アスピレーション(実現したい姿)」を当社創立100周年となる2031年へ向けた道筋として、常態化する変化に動じず、ゴムのように強靭でしなやかに、変化をチャンスに変えるということを意味するレジリアントな“エクセレント”ブリヂストンを目指し、変革を加速しております。

2023年に最終年を迎えた中期事業計画(2021-2023)においては、事業環境の変化に対応できる強いブリヂストンへ戻すことを目指して歩を進めてまいりました。コア事業であるプレミアムタイヤ事業においては、乗用車用高インチタイヤや鉱山車両用タイヤなどのプレミアムタイヤとリトレッドの生産強化投資を実行すると共に、プレミアム領域へのフォーカスをより一層徹底するなど今後の成長へ向けた布石を打ちました。一方で、成長事業と位置付けたソリューション事業では、プレミアムタイヤ事業との連動を深めることで成長を図りましたが、成長性・収益性の観点から欧米の乗用車用タイヤ向けソリューションの一部中止を決定するなど、今後の成長へ向けては課題が残る結果となりました。このような中期事業計画(2021-2023)の結果を踏まえて、2024年は、PDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルを迅速に回し、継続的改善及び、経営・業務品質の向上を徹底してまいります。

2024年を初年度とする中期事業計画(2024-2026 : 2026年度 売上収益4兆8,000億円レベル、調整後営業利益6,400億円レベル、調整後営業利益率13%レベル、ROIC10%レベル、ROE11%レベル)においては、中期事業計画(2021-2023)から継続して以下の3つの軸に沿って、経営を進めてまいります。その1つ目は、「過去の課題に正面から向き合い、先送りしない」、2つ目は、「足元をしっかり、実行と結果に拘る」、3つ目は2030年をマイルストンとした「将来への布石を打つ」であります。また、経営・業務品質の向上を徹底させ、当社グループのあらゆる業務において、生産性の向上や、質の高い業務を遂行することを常に目指すという意味のオペレーショナルエクセレンスを当社のバリューチェーン全体において追求してまいります。そのために、経営スタンスとして「Passion for Excellence(パッション フォー エクセレンス)(常に生産性、質の高い業務を追求することへの情熱を持つこと)」を設定し、グローバルで取り組みを進めております。さらに、価値創造へよりフォーカスするため、中期事業計画(2024-2026)のビジネス基本シナリオとして、4つの項目を掲げております。1つ目は、「良いビジネス体質を創る」、2つ目は「良いタイヤを創る」、3つ目は「良いビジネスを創る」、4つ目は「良い種まきをし、新たなビジネスを創る」です。

2024年の最優先課題は、「良いビジネス体質を創る」であり、経営・業務品質の向上を徹底することにより、本来2023年で完了を目指していた、変化に対応できる強いブリヂストンに戻ることを実現してまいります。グローバルでより現物現場で基本に忠実にPDCAを回し、ブリヂストンのDNAである継続的改善とイノベーションを組み合わせ、オペレーショナルエクセレンスを追求してまいります。これを可能とするために、2024年1月1日より、より進化させた「グローカル体制」を構築しております。当社グループのビジネスを、主に米欧を中心とするBridgestone West(ブリヂストン ウェスト)、日本・アジアを中心とするBridgestone East(ブリヂストン イースト)の2つのリージョンとして区分し、さらにその下に地域、市場、ビジネスの特性に合わせて細かく47エリアを設定し、現物現場で価値創造へフォーカスする体制といたしました。プレミアムタイヤ事業においては、収益性の低い地域である欧州事業を中心に不採算ビジネスの削減や小売事業の再編、再構築など、よりプレミアム領域にフォーカスするためのビジネス再編・再構築を実行し、稼ぐ力を強化することで、今後の成長につなげてまいります。

また、2024年に変化に対応できる強いブリヂストンに戻した後、基本ビジネスシナリオに沿って、2025年から2026年に着実に成長を実現するため、成長へ向けた基盤を構築してまいります。その中核は、「良いタイヤを創る」と「良いビジネスを創る」です。

「良いタイヤを創る」では、当社が独自に創造する「新たなプレミアム」として位置付けた商品設計基盤技術「ENLITEN(エンライトン)」技術を搭載した断トツ商品を、EVを含めた新車装着用タイヤから市販用タイヤへ拡大すると共に、生産・開発をシンプル化し、コストを最適化するモノづくり基盤技術BCMA(Bridgestone Commonality Modularity Architecture(ブリヂストン コモナリティ モジュラリティ アーキテクチャ))の導入を推進し、価値創造を加速させてまいります。断トツ商品の拡大においては、その価値を認めて頂くことにより価格ポジションを向上させると共に、鉱山車両用タイヤの断トツ商品である「Bridgestone MASTERCORE(ブリヂストン マスターコア)」や、乗用車用及びトラック・バス用プレミアムタイヤの販売拡大・シェアアップも継続強化してまいります。

「良いビジネスを創る」では、お客様が断トツ商品を使っていただく段階において、断トツ商品の価値を増幅させることを目指し、小売拠点の拡大や質の強化など、販売・サービスチャネルを進化させてまいります。特に、日本・米国において、現物現場でお客様一人ひとりに寄り添い、困りごとを解決した上で、高品質なサービス・ソリューションを提供するリアルと、Eコマースを含めたデジタルを活用したサービスを強化する計画です。加えて、サステナブルなグローバルモータースポーツ活動をコアとして新たなコーポレートブランディングへ着手いたします。その活動を通じ、モータースポーツ文化の発展を支え続けると共に、「Passion to Turn the World(パッション トゥ ターン ザ ワールド)(世界を変えていく情熱)」というメッセージを中心に、レースに掛ける情熱、「自ら極限へ挑戦」する姿を示していくことで、多くのステークホルダーの皆様に共感を頂きながら、サステナブルなプレミアムブランドを構築し、企業価値の向上を目指してまいります。

最後に、4つ目の「良い種まきをし、新たなビジネスを創る」では、2027年以降の次期中期事業計画期間も含め、「2030年 長期戦略アスピレーション(実現したい姿)」で設定した実現したい姿への布石を打ってまいります。まずは、生産財(鉱山車両用、航空機用、トラック・バス用タイヤ)ソリューションにおいて、断トツ商品・現物現場におけるサービスなどの強いリアルと、デジタルを駆使した独自のアルゴリズムの構築により、タイヤの摩耗予測を耐久予測ソリューションへ進化させることに着手をいたします。鉱山車両用、航空機用タイヤソリューションにおいては、お客様との共創を推進し、価値創造を進めております。また、トラック・バス用タイヤにおいては、米国を中心にプレミアムタイヤとリトレッド、メンテナンス、車両運行モニタリングを一括したパッケージとして、お客様にご提供する「Fleetcare(フリートケア)」プログラムの拡大を推進してまいります。これらの事業は、モビリティテック事業として、構築を進めてまいります。

さらに、化工品・多角化事業においては、当社グループの強みが活きる領域にフォーカスし、油圧ホース事業などを強化し、探索事業ではリサイクル事業、ソフトロボティクス事業、グアユール事業を技術開発から事業化へ向けた取り組みを推進してまいります。

経営の中核であるサステナビリティについては、商品を「創って売る」「使う」、原材料に「戻す」という、バリューチェーン全体でカーボンニュートラル化(脱炭素化)、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現を推進する取り組みとビジネスを連動する当社グループ独自のサステナビリティビジネスモデルを進化させてまいります。

特に、環境面は、2050年を見据えた環境長期目標を2012年に策定し、これを達成するために2030年を目標とした環境中期目標「マイルストン2030」を設定し、その実現に向けた取り組みを進めております。カーボンニュートラル化へ向けては、2030年にCO2の総量(Scope1、2)(注)を2011年対比50%削減、2050年にカーボンニュートラル化という明確なターゲットを掲げており、2023年は30%削減の目標を上回る約50%の削減を見込んでおります。このCO2排出量削減に向けたグローバル各工場における再生可能エネルギー(電力)比率についても、2023年は50%の目標を上回る約60%を見込んでおり、2030年目標の100%達成に向けて取り組みを進めてまいります。バリューチェーン全体のCO2排出量(Scope3)(注)については、2030年までに、商品・サービス・ソリューションのライフサイクルを通じて、Scope1、2における排出量の5倍以上のCO2削減に貢献(基準年:2020年)することを目標とし、活動を進めてまいります。サーキュラーエコノミーの実現に向けては、2030年までに再生資源・再生可能資源比率を40%に向上、2050年までにサステナブルマテリアル化を目標としており、2023年は再生資源・再生可能資源比率の目標37%の達成を見込んでおります。引き続きENLITEN(エンライトン)、リトレッドを含む商品戦略を進化させると共に、リサイクル事業、天然ゴム事業、グアユール事業などを通じた再生可能資源の活用を強化してまいります。さらに、中期事業計画(2024-2026)期間全体においては、森林破壊防止や小規模農家支援など、ネイチャーポジティブの実現に向けた取り組みをより一層強化してまいります。これらのサステナビリティに関する取り組みについては、サステナブルなグローバルモータースポーツ活動の推進を通じて、原材料調達からリサイクルまで、モータースポーツタイヤのバリューチェーン全体で、サステナブル化をいち早く進めることで、経営全体もアジャイルでサステナブルな経営に進化することを目指してまいります。

また、事業環境が常に変化していく中、変化に動じないためにグローバル経営リスク管理を強化してまいります。各地域事業のトップマネジメントで構成されるグローバル経営リスクコミッティにおいて、経営リスクについて幅広い議論を実施し、3つの重点アイテムを設定しております。重点アイテムごとにプロジェクトチームを設置し、それぞれのアイテムについてリスクの洗い出しと対策を推進してまいります。1つ目は、地政学リスクであります。リスク発生時のビジネス影響の分析とその最小化に向けた対策の検討、実行体制を整備し、従業員の安全確保、資産保護、顧客対応、企業・ブランドイメージの保護、原材料の代替ソーシング検討及び確保などの対応を進めてまいります。2つ目は、TRWP(Tire Road Wear Particle(タイヤ ロード ウェア パーティクル))、6PPD(タイヤ業界で一般的に使用される老化防止剤)についての対応であります。TRWPは、タイヤが安心安全な移動を支えるために必要な路面と摩擦することによって発生する粉塵で、タイヤの表面であるトレッドと道路舗装材の混合物です。当社グループは業界のリーダーとして、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)傘下のタイヤ産業プロジェクトや、各地域業界団体での取り組みをリードし、他の業界関係者や学術機関などとも連携しながら、タイヤのライフサイクルにおける環境への影響についての調査を推進してまいります。その他、ロングライフ商品などの訴求やソリューション事業との連携を含め、継続的なアプローチを進めてまいります。6PPDについては、業界全体として取り組み、代替品の評価を進めております。3つ目は、サイバー攻撃への対応であります。当社グループでは2022年第1四半期に米国子会社においてサイバー攻撃が発生し、各地域においても緊急対策を実施、グローバルでセキュリティー対応チームを立ち上げ、抜本的な対策を進めております。2023年には、グローバルアセスメントを実施し、サイバー攻撃に対応する当社グループのグローバル標準の設定を進めております。

これら全ての企業活動の基盤となる人財については、生産性・創造性の向上を基本として、「人財投資を強化し、付加価値をあげ、価値創造の好循環を生む」ことを目指しております。その取り組みを表す指標として「人的創造性」をグローバル経営指標として2023年から試行いたしました。厳しい事業環境下においても、人財投資を拡大し、日本においては、リスキリングやデジタル研修、現場での挑戦を後押しする現場100日チャレンジ、女性特有の健康課題をテクノロジーで解決するフェムテック・プログラム、生産現場の環境改善を実行するなど、多様な人財が輝く場、働きやすい職場づくりを進めております。2024年からは、人的創造性を正式なグローバル経営指標へ加え、より一層の取り組み強化を計画しております。また、人的創造性向上に関連した活動を連動し、企業文化の進化も推進してまいります。

当社グループは、「Bridgestone E8 Commitment(ブリヂストン イーエイト コミットメント)」を未来からの信任を得ながら経営を進める軸及びベクトルとして、サステナビリティとビジネスの成長を両立し、社会・パートナー・お客様といった様々なステークホルダーと共に価値を創出することで、持続可能な社会の実現に取り組んでまいります。

 

(注) Scope1は企業が直接排出するCO2(自社工場のボイラーなどからの排出)、Scope2はエネルギー起源間接排出(電力など他社から供給され、自社で消費したエネルギーに伴うCO2排出)、Scope3はライフサイクルにおける原材料調達、流通、顧客の使用と廃棄・リサイクル段階のCO2排出量等を指します。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1) サステナビリティ全般

当社グループは創業以来、変わりゆく社会のニーズに対応し、それぞれの時代において一人ひとりの安心・安全な移動や暮らしを支え続けるために事業を拡大・進化させてきました。社会の変化を先取りし、変化をチャンスに変え、事業活動・社会貢献活動を通じて、持続可能な社会の実現に貢献することは、「最高の品質で社会に貢献」を使命とする当社グループの果たすべき役割・責任だと考えております。

2020年を初年度とした「第三の創業」Bridgestone 3.0では、サステナビリティを経営の中核に据えた中長期事業戦略を発表し、「2050年 サステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社へ」をビジョンとして掲げました。同時に、2020年に、当社グループ自身の持続的な成長のためにも、社会価値と顧客価値の創造を両立させ、社会、お客様、ブリヂストンが共にWin-Win-Winとなる「サステナビリティビジネス構想」を発表し、当社グループのバリューチェーン全体でサーキュラーエコノミー、カーボンニュートラル化への取り組みと、ビジネスモデルを連動させるサステナビリティビジネスモデルの確立と進化に取り組んでおります。

 

① ガバナンス

当社は、企業理念に掲げた使命である「最高の品質で社会に貢献」の下、ビジョンの実現に向け中長期事業戦略を基に、3ヶ年毎に作成する中期事業計画に沿って経営を進めており、その一環としてガバナンス体制の整備も進めております。当社は、内部統制のより一層の強化によるガバナンス体制の向上に継続的に取り組み、サステナブルなソリューションカンパニーへの進化を実現してまいります。

当社の取締役会は、執行部門からの業務執行状況の進捗報告・情報共有等を通じて、多様な視点から執行部門と議論し、監督機能を発揮することで、中長期事業戦略の実現を目指すコーポレート・ガバナンス体制となっております。カーボンニュートラル化やサーキュラーエコノミーの実現、ネイチャーポジティブなどのサステナビリティに関する取り組みについて定期的に報告を受け、進捗状況のレビューを実施しております。

執行部門においては、2024年1月より、Global CEOの下、当社グループのビジネスを主に米欧を中心とするBRIDGESTONE WEST、日本・アジアを中心とするBRIDGESTONE EASTの2つのリージョンとして区分し、それぞれJoint Global COOがそのトップを兼務しております。2つのリージョンの下に、複数のSBU(戦略的事業ユニット)を設置し、より現場に密着し、課題に深く入り込めるよう、細かく事業エリアとしてブレークダウンしております。さらに、グローバル戦略とリージョナル戦略の整合性担保、且つ効果・効率を最大化するため、グローバル横ぐし機能を設置し、Global CAO(Chief Administration Officer)、Global CDXO(Chief Digital Transformation Officer)及びGlobal CTO(Chief Technology Officer)等を任命しております。

そして、これらのメンバーを中心に構成するグローバル経営執行会議体(Global EXCO)を当社グループにおける最上位の経営執行会議体として設置し、グローバルな視点から経営戦略や経営課題について議論、審議することにより、当社グループとしてのチェック&バランス機能の強化、意思決定プロセスでの透明性の向上を図っております。サステナビリティを経営の中核に据えた中長期事業戦略を基にした中期事業計画、年度予算、重要な投資案件などの承認、計画の進捗を管理しております。

取締役及び執行役の報酬体系は「優秀人材の確保と啓発」、「競争力のある水準」、「事業戦略遂行の動機付け」、「株主価値増大への動機付け」という報酬原則に基づいて設計されており、2022年度よりサステナビリティ及びトランスフォーメーション推進と中長期事業戦略実現を後押しすることを目的とした中長期インセンティブを導入し、報酬委員会で以下5つの目標を設定したうえで、取り組みを評価しております。

 

a.「Bridgestone E8 Commitment」の制定と社内外のステークホルダーとのコミュニケーション

b.付加価値と働き甲斐を向上させるための人への投資と育成

c.CO2排出量の削減をはじめとしたカーボンニュートラル

d.再生資源・再生可能資源比率の向上を含むサーキュラーエコノミー

e.ネイチャーポジティブに向けた取組、ウォータースチュワードシッププランの策定

 

当社のコーポレート・ガバナンス体制の概要図は次のとおりであります。

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2024年3月26日現在

 

コーポレート・ガバナンス体制及び報酬体系の詳細につきましては、第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ①コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方及びその施策の実施状況 b.コーポレート・ガバナンス体制の概要、(4) 役員の報酬等 ①当事業年度に係る取締役及び執行役の報酬等の額 c.業績連動報酬の算定方法と評価結果の記載内容を参照ください。

 

また、Global EXCOのもとでは、経営戦略や経営課題に基づいてコミッティを設置し、各コミッティが地域や組織を横断して課題解決に向けた取り組みを推進しております。サステナビリティについてはグローバルサステナビリティコミッティ(GSC)が当社グループのサステナビリティフレームワークを整理し、サステナビリティの取り組みの計画・実行を包括的に推進する役割を担っております。GSCの傘下には、主要なテーマごとに部門横断的・地域横断的に必要な機能のリーダーを集めたワーキンググループが活動し、計画と進捗を少なくとも四半期ごとにコミッティに報告しております。GSCでは、重点課題を定期的に見直すと共に、Global EXCOにおいて取り組みの進捗や新たな課題への対応について報告・答申しております。また、進捗を管理する目標値やKPI、測定基準の策定を進め、PDCAを回しながら継続的に取り組みを強化しております。

 

グローバルサステナビリティ推進体制(2024年1月1日現在)

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② 戦略・リスク管理

社会やお客様への新たな価値を創出し、お客様・パートナーの皆様と共に持続的に成長していくためには、責任ある企業として不可欠な基盤となる取り組みを継続的に推進しながら、ステークホルダーの皆様と強い信頼関係を構築していくことが重要であると考えております。当社グループのサステナビリティ戦略は、事業活動や社会貢献活動、あらゆるパートナーとの共創活動を通じて社会やお客様への価値を創出していくための方向性を示したものであり、社会価値・顧客価値を両立しながら持続的に創出していくために取り組むべき重点課題を明確にしております。

 

取り組むべき重点課題

・サステナビリティビジネスモデルの確立・進化:カーボンニュートラルへの対応力強化、サーキュラーエコノミービジネス活動の推進、ネイチャーポジティブの推進

・お客様やパートナー、地域との信頼の醸成:地域社会の課題解決に貢献、世界各地での交通安全啓発活動の推進

・天然ゴムバリューチェーン:持続可能な天然ゴムの調達、天然ゴムの小規模農家支援強化

・人権:グローバル人権方針に沿った取り組みの推進・活動レベルの継続強化

・タイヤ・路面摩耗粉じん(TRWP):業界団体や学術機関などと連携し、タイヤのライフサイクルにおける環境への影響についての調査を推進。また、ロングライフ商品などの訴求やソリューション事業との連携を含め、タイヤを「創って売る」「使う」全体でTRWP発生量削減の取り組みを継続的に推進。

 

サステナビリティビジネスモデル

当社グループはビジョンとして掲げる「2050年 サステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社へ」の実現に向けて、サステナビリティを中核に据えた中長期事業戦略構想を策定し、具体的な実行計画である中期事業計画に沿って、取り組みを進めております。

経営の中核に据えているサステナビリティについては、商品を「創って売る」「使う」、原材料に「戻す」という、バリューチェーン全体でカーボンニュートラル化・サーキュラーエコノミーの実現にフォーカスする取り組みと、ビジネスモデルを連動させるブリヂストン独自のサステナビリティビジネスモデルの確立を進めております。

当社グループは、2011年にリファインした「環境宣言」を起点に、「自然と共生する」ために、「資源を大切に使う」技術を開発・活用し、喫緊の課題である地球温暖化に対して「CO2を減らす」ことに取り組み、長年にわたり自然共生に向けて包括的に取り組んでまいりました。2050年を見据えた環境長期目標を2012年に策定し、これを達成するために、2030年を目標とした環境中期目標「マイルストン2030」を2020年に公開しました。カーボンニュートラル化については、2030年にCO2の総量(Scope1、2)を2011年対比50%削減、2050年にカーボンニュートラルへという明確なターゲットを掲げております。サーキュラーエコノミーについては、2030年までに使用する原材料に占める再生資源・再生可能資源比率を40%に向上、2050年に100%サステナブルマテリアル化を目標にしております。

2023年には、新たに、自然生態系の損失を食い止め、回復させていくネイチャーポジティブの実現に向けて、自然環境毀損につながる行動を回避し(Avoid)、できるだけ低減し(Reduce)、自然の再生および回復に貢献し(Restore and Regenerate)、根本的なシステムを変革していく(Transform)といったSBTs(注) for Natureフレームワークの考え方に沿って、このサステナビリティビジネスモデルをより循環型・再生型のビジネスモデルとして進化させてまいります。サステナビリティへの取り組みをバリューチェーン全体で推進し、「Bridgestone E8 Commitment」の「Energy カーボンニュートラルなモビリティ社会の実現を支えること」や「Ecology 持続可能なタイヤとソリューションの普及を通じ、より良い地球環境を将来世代に引き継ぐこと」にコミットしてまいります。

 

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リスク管理につきましては、第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等の「グローバル経営リスク管理」に関する記載内容、 3 事業等のリスクの記載内容もご参照ください。

 

(注) Science-based targets

 

③ 指標及び目標

当社グループは、社会価値・顧客価値を両立しながら持続的に創出していくために取り組むべき重点課題について指標及び目標を設定しております。課題解決に向けた活動については、これらの指標及び目標に基づいて、中長期事業戦略の実現を目指す当社のコーポレート・ガバナンス体制のもとで適切に進捗管理を行っております。

バリューチェーン全体でカーボンニュートラル化、サーキュラーエコノミーの実現、ネイチャーポジティブの推進とビジネスを連動させる独自のサステナビリティビジネスモデルの確立に向けた取り組みの進捗は以下の通りであります。

取り組むべき重点課題

サブカテゴリー

目標

進捗

(2023年)

SDGsへの貢献

Bridgestone E8 Commitmentに掲げる価値の創出

サステナビリティビジネスモデルの確立・進化

カーボンニュートラルへの対応力強化

Scope1、2におけるCO2排出量削減:2030年 50%削減(2011年対比)

2050年 カーボンニュートラル化

Scope1、2:53%削減(2011年対比)(注1)

再生可能エネルギー比率(電力):64%(注1)

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・Energy:カーボンニュートラルなモビリティ社会の実現を支えることにコミットする

・Ecology:持続可能なタイヤとソリューションの普及を通じ、より良い地球環境を将来世代に引き継ぐことにコミットする

Scope3におけるCO2削減貢献:2030年排出量の5倍以上

サーキュラーエコノミービジネス活動の推進

資源生産性の向上、長寿命・省資源商品の開発

サーキュラーエコノミーへの貢献:2030年 再生資源・再生可能資源比率40%(注2)

2050年 100%サステナブルマテリアル化

再生資源・再生可能資源率:39%(注1)

(注1) 2024年3月26日時点の見込値であり、第三者機関による保証審査を経た確定時に修正する可能性があります。

(注2) リトレッド用台タイヤを含むタイヤの総原材料重量に占める比率

 

その他、ESG関連データは当社Webサイト「サステナビリティ」をご参照ください。

 

(2) 気候変動及び自然資本損失に関する取組み

気候変動及び自然資本損失への対応に世界的な関心が高まり、パリ協定に代表される脱炭素社会への動き、ならびに、昆明・モントリオール生物多様性枠組として採択された、生態系や自然資本の損失を止め、反転させ、回復軌道に乗せることを目指すネイチャーポジティブの達成に向けた動きが加速する中で、当社グループは気候変動及び自然資本損失によるリスクと機会を統合的に認識し、事業戦略への反映を進めております。

主なリスクとしては、脱炭素社会や自然と共生する社会への転換に伴う「移行リスク」並びに気候変動及び自然資本損失による「物理的リスク」を認識しております。「移行リスク」には、気候変動や自然資本損失のために、国内外において、炭素税やCO2排出削減義務・排出量取引制度、タイヤの低燃費性能等に関する制度・規制、使用済タイヤのリサイクルに関する制度・規制、取水に関する制度・規制、持続可能な天然ゴムに関する制度・規制などの導入が進む際に、社会や顧客の急速なニーズ変化に対して研究開発費を十分な事業成果に結びつけることができない場合は、事業活動の制約やコストの上昇など当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。「物理的リスク」には、台風の大型化、洪水や渇水の発生頻度の増加による事業活動中断のリスク、降雨パターンの変化に伴う天然ゴムの収穫不良による原材料調達に関するリスク、降雪量の減少により冬タイヤの需要が減少するリスクがあります。反面、これらの社会や顧客のニーズ変化を新たな成長機会とも捉えております。

「移行リスク」及び機会への認識を踏まえ、カーボンニュートラル化やサーキュラーエコノミーの実現、ネイチャーポジティブに向けた取り組みを進め、2030年目標として「私たちが排出するCO2の総量(Scope1、2)を50%削減する(2011年比)」「ソリューションの提供により、商品・サービスのライフサイクル、バリューチェーン全体(Scope3)を通じて、私たちの生産活動により排出するCO2排出量(Scope1、2)の5倍以上のCO2削減に貢献していく(2020年比)」「再生資源または再生可能資源に由来する原材料の比率を40%に向上する」「水ストレス地域における生産拠点において、水リスク低減に向けたウォータースチュワードシッププランを推進する」を設定し、CO2削減に貢献する新技術の開発、当社グループの生産拠点におけるCO2排出や水ストレス地域での取水などによる自然資本への影響の低減、低燃費タイヤの開発・販売、リトレッドタイヤビジネスの拡大、取引先との協働によるサプライチェーンのCO2排出量及び自然資本への影響の低減など目標の達成へ向けた活動を進めております。投資の判断においても「移行リスク」及び機会が評価できるように、社内カーボンプライシングによるCO2排出コストと削減効果を加味した投資判断を行っております。また、使用済タイヤを原材料などに「戻す」リサイクル事業の構築、天然ゴム事業における生産性向上に向けた取り組みを通じて、バリューチェーン全体でのCO2排出量及び各種環境負荷による自然資本への影響の低減にも取り組んでおります。

「物理的リスク」及び機会に対しては、事業継続計画(Business Continuity Plan、以下BCP)を策定して事業の継続または再開に向けて適切な危機対応や支援が行えるように体制を整えると共に、乾燥地帯で育つ「ゴムをつくる植物」グアユールの事業化に向けた取り組みを通じて、天然ゴム供給源の多様化に取り組んでおります。

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)最終提言及びTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)最終提言V1.0が推奨する開示内容に沿った当社グループの対応状況は以下の通りであります。

 

① ガバナンス

推奨される開示内容

ブリヂストングループの対応状況

TCFD

TNFD

依存関係・影響・リスク・機会に対する取締役会の監督体制

・取締役会はカーボンニュートラル化やサーキュラーエコノミーへの貢献促進、自然共生に向けた活動を含むサステナビリティへの取り組みの状況について定期的に報告を受け、進捗状況のレビューを実施

依存関係・影響・リスク・機会の評価と管理における経営者の役割

・最上位の経営執行会議体であるGlobal EXCOでカーボンニュートラル化、サーキュラーエコノミーへの貢献促進、自然共生に向けた中長期の戦略・目標、実行計画の承認、計画の進捗を管理

先住民族・地域社会・影響を受けるステークホルダー・その他ステークホルダーに向けた人権方針とエンゲージメント活動、取締役会・経営者の監督

(TNFD推奨開示内容)

・「グローバル人権方針」及び当社グループの「グローバルサステナブル調達ポリシー」を策定し、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」など国際基準が掲げる人権の尊重に対して強いコミットメントを表明。お取引先様に必ず実施いただきたい事項として、国連「先住民族の権利に関する宣言」に従った合法的な手段での土地取得・利用、土地取得時や森林開発評価・実行方針策定時のFPIC原則の遵守を定め、当社グループ内・お取引先様・サプライチェーン全体への浸透活動を推進

・サプライチェーンが「グローバルサステナブル調達ポリシー」に準拠しているかどうかを確認するデューディリジェンスプロセスを検討・開発するため公益財団法人世界自然保護基金(WWF)ジャパンと協働。WWFと連携して開発したSAQ(Self-Assessment Questionnaire)を使って、天然ゴムの小規模農家を含むお取引先様のESG現地監査を行い、FPIC原則の遵守含め、リスク評価を実施

・天然ゴムのサプライチェーンを対象としたグリーバンスメカニズムを構築し、標準作業手順書と苦情(グリーバンス)への対応状況を公開。先住民族・地域社会に関連するリスクも本メカニズムを活用し確認

・人権の尊重を含むサステナビリティへの取り組みの実行計画や進捗状況は最上位の経営執行会議体であるGlobal EXCOで承認・管理され、取締役会がレビューを実施

 

② 戦略

推奨される開示内容

ブリヂストングループの対応状況

TCFD

TNFD

短期・中期・長期の依存関係・影響・リスクと機会

・気候・自然資本への依存関係と影響、気候変動及び自然資本損失によるリスクと機会を統合的に評価・管理。以下の依存関係・影響・リスク・機会を特定

気候・自然資本との依存関係(注)

・原材料調達段階における水やバイオマスを供給するサービス、生態系が持つ気候・良好な土壌等を維持調整するサービスへの依存

・タイヤ製造段階における水を供給するサービスへの依存

気候・自然資本への影響(注)

・原材料調達段階における土地利用による影響

・タイヤ製造段階における水資源の使用、廃棄物の排出による影響

・バリューチェーン全体での温室効果ガスの排出、水資源の使用、大気・水質・土壌への排出、廃棄物の排出による影響

気候変動・自然資本損失による物理的リスク・機会

・台風の大型化、洪水や渇水の発生頻度の増加による事業活動中断のリスク

・降雨パターンの変化に伴う天然ゴムの収穫不良による原材料調達に関するリスク

・降雪量の減少により冬タイヤの需要が減少するリスク

・熱帯地域に偏在するパラゴムノキ由来の天然ゴムの収穫不良に伴う、乾燥地帯で育つグアユール由来の天然ゴムの事業化機会

脱炭素社会や自然と共生する社会への移行リスク・機会

・気候変動や自然資本損失のために制度・規制などの導入が進む際、社会や顧客の急速なニーズ変化に対して研究開発費を十分な事業成長に結びつけることができない場合における事業活動の制約やコストの上昇など、業績や財務状態に悪影響を及ぼすリスク(炭素税やCO2排出削減義務・排出量取引制度、タイヤの低燃費性能に関する制度・規制、使用済タイヤのリサイクルに関する制度・規制、取水に関する制度・規制、持続可能な天然ゴムに関する制度・規制など)

・モビリティニーズの変化に伴う競争要因変化に伴う機会(EV向けタイヤの需要増加、お客様のCO2排出量削減に貢献するタイヤ及びソリューションの需要増加等)

・使用済タイヤのリサイクルに関する規制地域拡大に伴うリサイクル事業の事業化機会

(注) 国連環境計画世界自然保全モニタリングセンター(UNEP-WCMC)他の

   「ENCORE」の産業グループ別評価で重要性が「非常に高い」または「高

   い」と評価された、タイヤ事業のバリューチェーンにおける主な依存関

   係及び影響

ビジネスモデル・バリューチェーン・戦略・財務計画に及ぼす影響

様々なシナリオを考慮した組織戦略のレジリエンス

・複数の気候関連シナリオ・自然関連シナリオに基づいてリスク・機会を評価し、特定された重要度の高いリスク・機会について、既に対応を始めており、今後も定期的な評価を行っていく

直接事業・上流・下流において次に該当する地域

・生態系の完全性が高いまたは低下している地域

・生物多様性の重要性が高い地域

・水ストレスのある地域

・大きな依存関係や影響を持つ可能性がある地域

(TNFD推奨開示内容)

・荒廃地緑化によるCO2吸収・固定化の拡大

・水資源の量や質の低下リスクのある水ストレス地域に立地する生産拠点を定期的に評価。2023年末時点でインド、インドネシア、中国などの7拠点が、「非常に水リスクが高い」流域に立地。これら全拠点で、地域の水事情を踏まえたウォータースチュワードシッププランを策定し、実行中

 

③ リスクと影響の管理

推奨される開示内容

ブリヂストングループの対応状況

TCFD

TNFD

直接事業、バリューチェーンの上流及び下流における依存関係・影響・リスク・機会の特定・評価・優先順位付けプロセス

・グループ会社の事業規模や特性を考慮に入れながら、グループ共通のリスク・機会に包括的かつ適切に特定及び対処するよう努めており、気候及び自然資本に関しては、国連環境計画世界自然保全モニタリングセンター(UNEP-WCMC)他の「ENCORE」及び一般社団法人企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)の「企業と生物多様性の関係性マップ®」を活用して評価したバリューチェーン全体における依存関係・影響を考慮の上、リスク・機会を特定

・中長期事業戦略の実行に直接関連するビジネス戦略リスク・機会については、Global EXCO直下に年次リスク管理プロセスを設けることで管理強化を図る方法を検討。また、日常諸業務に係るオペレーショナル・リスクに関しては、チーフリスクオフィサー(CRO)が統括責任者として対応し、リスクへの対応計画を策定

・毎年各地域及びグループ全体で直面する可能性のあるリスクを特定し、そのリスクに対してグループ全体だけではなく、事業・SBU・部門単位での責任者を明確にし、自律的かつ継続的にリスク管理を実施

管理プロセス

組織全体のリスク管理への統合・伝達状況

 

④ 指標及び目標

推奨される開示内容

ブリヂストングループの対応状況

TCFD

TNFD

リスクと機会の評価・管理に用いる指標

・気候関連リスク・機会・影響を評価・管理する指標の一つとして温室効果ガス排出量(Scope1、2、3、及び商品・サービスのライフサイクル・バリューチェーン全体を通じた温室効果ガス排出量の削減貢献量)を設定し、定期的にモニタリング

・投資の判断においてもリスク・機会が評価できるよう、社内カーボンプライシングによるCO2排出コスト(US$100/tCO2)と削減効果を加味した投資判断を実施

・自然関連リスク・機会・影響を評価・管理する指標として、水ストレス地域における取水量、環境負荷(有害/非有害廃棄物排出量・埋立量、VOC排出量、SOx/NOx排出量)、生息地の保全・管理面積などを設定し、定期的にモニタリング

依存関係と影響の評価・管理に用いる指標

依存関係・影響・リスク・機会の管理に用いる目標と実績

・カーボンニュートラル化及びサーキュラーエコノミーへの貢献促進、自然共生に向けた中長期環境目標(2050年以降、2030年)を設定し、毎年実績を評価・開示

・2030年に向けた目標として「私たちが排出するCO2の総量(Scope1、2)を50%削減する(2011年比)」「ソリューションの提供により、商品・サービスのライフサイクル、バリューチェーン全体(Scope3)を通じて、私たちの生産活動により排出するCO2排出量(Scope1、2)の5倍以上のCO2削減に貢献していく(2020年比)」「再生資源または再生可能資源に由来する原材料の比率を40%に向上する」「水ストレス地域における生産拠点において、水リスク低減に向けたウォータースチュワードシッププランを推進する」を設定

・2030年に向けた目標に対する主な実績は以下の通りであります。

取り組むべき重点課題

指標

2022年実績

2023年実績

2030年目標

サステナビリティビジネスモデルの確立・進化

カーボンニュートラル化への対応力強化

私たちが排出するCO2の総量削減(Scope1、2)(2011年比)

31%

53%(注1)

50%

サーキュラーエコノミービジネス活動の推進

再生資源または再生可能資源に由来する原材料の比率(注2)

38%

39%(注1)

40%

(注1) 2024年3月26日時点の見込値であり、第三者機関による保証審査を経た確定時に修正する可能性があります。

(注2) リトレッド用台タイヤを含むタイヤの総原材料重量に占める比率

 

(3) 人的資本・多様性に関する取組み

① 戦略

当社グループでは、2024年を初年度とする中期事業計画(2024-2026)において、経営スタンスを、「危機対応」から、経営・業務品質の向上を最優先に、それを追求する情熱を示す「Passion for Excellence」へ進化させ、「良いビジネス体質を創る」、「良いタイヤを創る」、「良いビジネスを創る」、「良い種まきを実施し、新たなビジネスを創る」の4つのシナリオで構成される「ビジネス具体化シナリオ」にそって、価値創造へよりフォーカスしてまいります。このビジネス具体化シナリオの中でも、「良いビジネス体質を創る」すなわち、経営・業務品質の向上を、2024年に取り組むべき最優先課題と捉えており、その推進のためには、すべての企業活動の基盤、原動力である「人財」一人ひとりが生産性・創造性(人的創造性)の向上に取り組むこと、それに向けた環境を整備していくことが不可欠であると考えております。

 

・一人ひとりの生産性・創造性(人的創造性)の向上

当社グループでは、事業戦略と連動した人財戦略の推進に向けて、事業戦略と連動した付加価値創造により、企業価値向上を図ると共に個人の成功・自信の波及を通じて、多様な人財が輝ける様になることを人財戦略の軸とし、付加価値の最大化、人財一人ひとりの生産性・創造性の向上に向けて、持続的な成長を図る様々な取り組みを進めております。これらの取り組みを表す指標として、「人的創造性」を2023年から試行し、中期事業計画(2024-2026)からグローバル経営KPIとして導入しております。「人的創造性」は、人財投資を強化し、付加価値を上げ、価値創造の好循環を生むことを基本的な考え方としております。グローバル共通の一本の軸として、人的創造性KPI(調整後営業利益(付加価値)を人財投資(労務費、教育訓練費、福利厚生費の和)で割ったもの)でグローバルの推移を把握しながら、地域別・国別の課題に取り組んでおります。

この人財戦略を推進し、「人的創造性」を向上させていくにあたり、グローバル共通の重点課題である「ブリヂストンらしい人財の確保」、「人財能力開発」、「働きやすい環境整備」、「多様な人財が輝ける場所の提供」に取り組み、また、事業戦略と連動した人財ポートフォリオ推進・強化を図っていくべく、「人財の見える化」「ポジションの見える化」の取り組みにも着手しております。

 

人的創造性KPI

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・ブリヂストンらしい人財の確保-経営・業務品質の向上-

当社グループは、創業以来、「最高の品質で社会に貢献」を不変の使命として、変わりゆく社会のニーズに対応し、安心・安全なヒトとモノの移動を支え続けるために、事業を拡大・進化させてまいりました。「品質へのこだわり」「現物現場」「お客様の困りごとに寄り添う」「挑戦」というブリヂストンDNAはブリヂストンの挑戦の歩みとその歴史の中で培われたものであります。こうした4つのDNAに共感し、体現していく「ブリヂストンらしい人財」を確保していくことは、「2030年 長期戦略アスピレーション(実現したい姿)」で掲げている「常態化する変化に動ぜず、ゴムのように強靭でしなやかに、変化をチャンスに変えるレジリアントな“エクセレント”ブリヂストン」に向けて、また、中期事業計画(2024-2026)の初年度2024年において、「良いビジネス体質を創る」すなわち経営・業務品質向上に取り組んでいくために不可欠であると捉えております。そして、その基盤となるのは1960年代に、卓越した総合的品質管理を実施している企業に与えられる「デミング賞実施賞」の受賞に向けて策定した当社独自の「デミング・プラン」であります。1968年にデミング賞実施賞を受賞し、その活動は、当社グループの使命である「最高の品質で社会に貢献」及び、ブリヂストンDNAである「品質へのこだわり」に強く反映されております。「現物現場」で行われている継続的改善活動は、当社グループのグローバルでの財産となっており、この財産を大切に、リーダーから、組織全体、そして従業員一人ひとりが、それぞれの役割の中で、イノベーションと継続的改善を推進し、当社グループのあらゆる業務において、生産性の向上や、質の高い業務を遂行することを常に目指すという意味のオペレーショナルエクセレンスを追求することが業務品質の向上につながっていくものと考えております。ブリヂストンらしい人財の確保及び育成に向けて、ブリヂストンらしい品質経営研修を2023年より当社経営層から強化し、2024年からは、さらに幅広い層に実施していくと共に、グローバルへ展開してまいります。

 

・人財能力開発(人財の育成に関する方針)

当社グループは事業戦略と連動した人財戦略に基づく人財育成を推進しております。「2030年 長期戦略アスピレーション(実現したい姿)」の実現、中期事業計画(2024-2026)の遂行に向けて、ブリヂストンDNA強化を進めていくと共に、会社の成長と従業員一人ひとりの成長の実現が両輪をなすものであるよう、自ら挑戦・成長する意欲がある人財が更なる価値創出につなげていくための人財育成施策を加速させております。

 

a.挑戦意欲の向上

「挑戦」に関しては、特に探索事業において、他社とのアライアンスに加え、社内ベンチャー「ソフトロボティクス ベンチャーズ」を立ち上げ、新しい事業をゼロから創り出したいという起業家精神を持った多様な人財が集結、早期の事業化に挑戦するなど、「多様な人財が“輝く”、多様な挑戦の場」づくりを進めております。当社グループには、プレミアムタイヤ、ソリューション、化工品・多角化といった幅広い事業領域と川上(原材料)から川下(販売・サービス)までのバリューチェーンがありますが、どの事業領域・バリューチェーンにおいても、ステークホルダーにさらなる価値を提供すべく、主体的に行動を起こし、挑戦する姿勢は不可欠と考えております。当社においては、自ら手を挙げて各業務における国内外の現場において、自分で立てた課題・仮説の調査・検証に取組む「現場100日チャレンジプログラム」やマネジメントへのチャレンジ意欲のある若手従業員が、マネジメント補佐として早期にマネジメント経験に挑戦する「マネジメント・チャレンジ制度」等を導入し、意識と行動変革を進めております。なお、2023年、現場100日チャレンジプログラムには15名、マネジメント・チャレンジには10名がそれぞれ参加しました。現場100日チャレンジプログラムについては、2024年以降、グローバルへの展開も進め、さらに多くの従業員の挑戦を後押ししてまいります。

 

b.リーダーシップ開発

当社グループは150か国以上で事業を展開しており、海外売上比率は約80%となっております。より進化させた「グローカル」経営体制の構築と共に、将来にわたり、持続的に成長し、企業価値向上を図っていくためには、単にビジネスに精通するだけでなく、異文化対応力を持つ次世代経営リーダーの育成が急務であると考えております。各地域・国別にリーダーシップ開発を進めると共に、次世代グローバル経営リーダー育成を目的とした「Bridgestone NEXT100」ではグローバルで毎年約100人を選抜し、各経営報告会議体への参画、海外ビジネススクール研修への参加等を通じた重点育成も進めております。

 

c.デジタルスキル強化

“リアル”דデジタル”の融合による社会価値・顧客価値の創造は中期事業計画(2024-2026)の達成、「2030年 長期戦略アスピレーション(実現したい姿)」の実現に不可欠であると考えております。デジタル領域に関しては、グローバルでデジタル人財の育成・獲得を図っております。2023年デジタル人財はグローバルで約1,600名となっております。当社では2023年より導入した幅広いレベルをカバーした「デジタル100日研修」に延べ700名を超える従業員が自分に合ったレベルを組み合わせたプログラムに参画し、デジタルスキル強化に取り組んでおります。

 

d.幅広い層に対する学びの機会

従業員一人ひとりの生産性・創造性の向上に向けて、意欲ある人財に継続的な学び(研修や教育)と挑戦の場を提供することは、会社の成長と従業員一人ひとりの成長の実現を両輪とし、レジリアントな“エクセレント”ブリヂストンへ変革させていくために非常に重要なものと考えております。地域別・国別の状況を踏まえながら、グループ全体で学びと挑戦の機会に対する人財育成投資を実行してまいります。当社においては、職種にかかわらず、全従業員に共通して必要な能力(職務遂行力・マネジメント力)を強化すること、自ら挑戦・成長する意欲のある従業員を支援することを目的とした研修体系「人財育成カレッジ」を構築・運営しており、「学ぶ機会」と「実践の場」を効果的に組み合わせることで、個人の成長と能力発揮、組織の活性化、事業戦略への貢献を図っております。また、受講者の声やニーズを把握し、PDCAをしっかり回しながら、毎年プログラムのレビューや拡充も行なっております。

 

 

・働きやすい環境整備(社内環境整備に関する方針)

当社グループは、多様な人財の活躍こそが「Bridgestone E8 Commitment」に表される価値の創出につながるという考えの下、多様な人財が輝く職場環境を整備しております。「Bridgestone E8 Commitment」と連動したグローバルカルチャーチェンジを推進するうえで、従業員エンゲージメントの向上を重要課題のひとつと位置付け、エンゲージメントサーベイによりモニタリングを行い、各地域の事例を共有し合う取り組みも始めております。また、2023年からはグローバル統一のエンゲージメントサーベイを実施し、各地域の文化、特性の違いを尊重しながらも、グローバル共通の評価と活動の軸をもって、取り組みを深化・進化させております。日本においては、当社グループの海外拠点と比べ、エンゲージメントやDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)領域でギャップがあり、その解消に向け、取り組んでおります。具体的には、当社グループで働く誇りの醸成を図るべく、入社時研修や新任管理職研修において創業の地である久留米へ訪問するプログラムを導入し、創業者の想いやDNA、企業理念を一層体感できるような機会を提供していることが挙げられます。また、多様な価値観を尊重し、組織としての意思決定の多様化を進めるため、女性リーダーの育成・登用促進へますます注力すると共に、多様な人財の活躍基盤整備として、全ライン長を対象としたDE&Iマネジメントワークショップの実施、女性特有の健康課題をテクノロジーを活用し解決するフェムテックプログラム導入等、ブリヂストンらしい取り組みを様々な形で進めております。

当社グループの企業経営の基盤は、「安全宣言」に掲げております「安全はすべてに優先する」であります。従業員一人ひとりが安全な職場で安心して働くための活動推進はもちろん、お客様をはじめとするステークホルダーの皆様からも期待されており、高い安全基準の適用により当社グループの従業員や協力会社の労働安全・衛生を確保する上で、この安全宣言は一層重要になっております。当社グループは、高齢化に伴う人間工学的リスクの増加、規制の変更、機械や設備の老朽化、そして新技術の現場への導入にも対応するように安全基準を継続的に更新すると共に、当社グループが取り組みを開始する新規事業においても安全に対する意識を真摯に育んでまいります。

また、生産現場における環境整備に関しては、現場最前線の声を反映した即効性がある投資を実施し、福利厚生の充実化、職場環境改善、労働負荷軽減策に取り組んでおります。

 

・多様な人財が輝ける場所

当社グループは種々取り組みを通じて、多様な人財が“輝く”、多様な挑戦の場づくりをさらに進め、これらを通じて従業員エンゲージメントの向上や「Bridgestone E8 Commitment」による価値創造と連動した新たなDNAの創造、カルチャーチェンジの推進、女性リーダー人財の育成と登用、配置を実行してまいります。「Bridgestone E8 Commitment」で示す8つの「E」は、ブリヂストンらしい価値創造の軸と指針となっており、当社グループの最高位の従業員表彰制度であるBGA(ブリヂストングループアワード)やTQM(Total Quality Management)大会においても、主要な審査基準として取り入れ、実際のビジネスや現場の改善活動にも組み込んでおります。エンゲージメントサーベイ含め、各種意識・行動を測る調査等も通じて、進捗を見える化、PDCAを回しながら活動の質とレベルを向上させてまいります。

 

② 指標及び目標

 

グローバル

2026年目標

グローバル

2023年実績

人的創造性KPI

(注)2019年を100とした場合のindex推移

130レベル

110

 

人的創造性 重点活動指標

グローバル

2026年目標

グローバル

2023年実績

経営・

業務

品質

向上

人財

能力

開発

働き

やすい

環境

整備

多様な

人財が

輝ける

場所

a.経営・業務品質向上活動

ブリヂストンらしい品質経営研修

-2024年より当社幅広い層へ拡大、グローバル展開開始

ブリヂストンらしい品質経営研修

-当社経営層から強化

 

 

 

b.デジタル人財数

2,000人レベルへ拡充

約1,600人

 

 

 

c.現場100日チャレンジプログラム実行者数

2024年よりグローバル展開開始

2026年に45人レベル/年が取り組みへ拡充

日本でスタート

2023年 15人が取り組み

 

 

 

d.労働災害発生状況

①重篤災害

0件

2件

 

 

 

②休業度数率(注1)

2.50

2.76

e.女性リーダーの割合(注2)

2023年対比+3%レベル

16.1%(注3)

 

 

 

(注1) 算出方法は、(死傷者数/延実労働時間数)×1,000,000としております。

(注2) 生産現場を始めとする現場のチームを管理・監督するリーダーを含めたマネジメントポジションを対象にしております。

(注3) 当社グループのセグメント別の女性リーダーの割合は以下の通りとなっております。

(2023年12月31日現在)

 

カテゴリー

セグメント

女性リーダーの割合

トップ

マネジメント

マネジメント

ポジション

ジュニアマネジメント

ポジション

合計

日本

2.2%

7.6%

5.7%

6.2%

中国・アジア・大洋州

9.9%

20.8%

10.6%

14.3%

米州

26.5%

26.6%

21.5%

22.3%

欧州・ロシア・中近東・インド・アフリカ

3.0%

22.9%

15.1%

17.5%

合計

7.8%

17.9%

15.7%

16.1%

・就業人員に基づいた割合を示しております。

・「日本」には「その他」「全社(共通)」セグメントも含んでおります。

・各カテゴリーの当社及び連結子会社における定義は以下の通りであります。

トップマネジメント:役員相当の者(Executives & VPs)

マネジメントポジション:組織のマネジメントを担う立場にある者(ライン長)

ジュニアマネジメントポジション:個人の知見や経験で組織に貢献する、あるいは組織の日々の管理目標を指導する立場にある者

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、当該リスク発生の回避、及び発生した場合の対応に努めております。

ただし、記載された事項以外にも予見することが困難なリスクが存在し、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

なお、文中に含まれる将来に関する記載は、有価証券報告書提出日(2024年3月26日)現在で判断したものであります。

 

(リスクの管理・評価プロセス)

当社グループでは、毎年各地域及びグループ全体で直面する可能性のあるリスクを影響度と発生可能性の観点から評価及び特定し、そのリスクに対してグループ全体だけではなく、事業・SBU・部門単位での責任者を明確にし、自律的且つ継続的にリスク管理を行うとともに、経営上重大なリスクに関しては、Global CEOの直接の指揮の下で対応する体制をとっております。

 

(1) 事業を取り巻く経済環境、及び需要動向に関するリスク

当社グループは、開発・調達・生産・流通・販売などの事業活動をグローバルに展開しており、当社グループの業績及び財政状態は、事業活動を行っているそれぞれの国や地域における金利、為替、株式相場の変動などの経済環境や需要動向の変化により、さまざまな形で影響を受けております。当連結会計年度の当社グループの地域ごとの売上収益比率は、米州が51%、欧州・ロシア・中近東・インド・アフリカが22%、日本が14%、中国・アジア・大洋州が13%の構成となっており、これらの地域の経済環境が悪化した場合には、当社グループの業績及び財政状態に特に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。なお、当社グループはロシア事業の譲渡を2023年12月に完了いたしました。

また、当社グループのビジネスは自動車産業と密接に関連していることから、当社グループの業績及び財政状態は、グローバルな自動車産業の景況による影響を受けております。自動車産業の動向以外にも、タイヤ市販用市場では各国の消費動向や自動車燃料価格の変動などによる影響を受けており、これらの要因によりタイヤ需要が減少する、あるいは予想している需要増加が減速する場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループの鉱山・建設車両用大型・超大型ラジアルタイヤや油圧ホース等一部の商品につきましては、資源産業及び土木・建築産業の景況による影響を受けており、これらの要因により需要が減少する、あるいは予想している需要増加が減速する場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

さらに、当社グループは、日本、欧州、北米などさまざまな地域で冬用タイヤを販売しておりますが、これらの地域における降雪が少なく需要が減少する場合には、当社グループの業績が悪影響を受ける可能性があります。

 

(2) 法律・規制・訴訟に関するリスク

当社グループは、事業活動を行っている各国において、投資、貿易、為替管理、移転価格を含む税制、独占禁止、環境保護、個人情報保護など、関連する法律や規制の適用を受けております。当社グループの事業活動に影響を及ぼすものとして、例えば、国内外においてタイヤ性能に関する表示制度・規制や化学物質規制などが制定・導入されております。したがって、将来においても、新たな法律や規制により、事業活動の制約やコストの上昇など当社グループの業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

これらの他、当社グループは、国内外の事業活動に関連して、訴訟や各国当局による捜査・調査の対象となる可能性があります。重要な訴訟が提起された場合や、各国当局による捜査・調査が開始された場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 事業活動中断のリスク

・災害、戦争・テロ・暴動、社会的・政治的混乱など

当社グループは、開発・調達・生産・流通・販売などの事業活動をグローバルに展開しており、さまざまな国や地域における大規模な地震や風水害などの自然災害や、戦争・テロ・暴動、ボイコット、感染症、エネルギー供給障害、交通機能障害を含む社会的・政治的混乱などのリスクにさらされております。さらに、国内外における政治的・経済的条件の急激且つ大幅な変動などの要因により、当社グループの事業活動の継続に支障をきたす可能性があり、その結果、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループの事業活動の中核として重要な拠点が多数所在している日本における地震災害リスクに対しては、当社グループは耐震診断の結果に基づき優先順位をつけて耐震補強工事を計画的に進めております。さらに、地震災害が発生した場合の迅速な初期対応の推進及び業務を早期に復旧継続させることを目的としたBCPを策定し、その運用を振り返ることで内容を継続的に改善しております。また、新型インフルエンザや新型コロナウイルスなどの未知なる病原体が引き起こす感染症の拡大に対しても、従業員・家族・関係者の生命と安全の確保を最優先しながら事業損失の最小化を図るためのBCPを策定し、その運用を通じて内容を拡充しております。しかしながら、実際に発生した場合には、操業の中断・縮小、施設等の損害、多額の復旧費用などにより、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループの特定商品や特定原材料を集中的に生産している拠点で事業活動の継続に支障をきたすような事態が生じた場合は、供給義務を果たせないことによる顧客からの信頼の喪失や賠償責任の追及につながる可能性もあり、その場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

・情報システム障害

当社グループの事業活動における情報システムの重要性は非常に高まっており、セキュリティの高度化などシステムやデータの保護に努めておりますが、それにもかかわらず、災害やサイバー攻撃など外的要因や人為的要因などにより情報システムに障害が生じた場合、重要な業務やサービスの停止、機密情報・データや個人情報の盗取や漏洩などのインシデントを引き起こし、事業活動の継続に支障をきたす可能性があります。その結果、当社グループのブランドイメージや社会的信用の低下、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

・ストライキ

当社グループは、円滑な労使関係の構築に努めておりますが、労使間の交渉が不調に終わり、長期間に及ぶストライキなどが発生した場合、事業活動の継続に支障をきたす可能性があり、その結果、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 気候変動及び自然資本損失に関するリスク

当社グループは気候変動及び自然資本損失によるリスクと機会を統合的に認識し、事業戦略への反映を進めております。主なリスクとしては、脱炭素社会や自然と共生する社会への転換に伴う「移行リスク」並びに気候変動及び自然資本損失による「物理的リスク」を認識しております。反面、これらの社会や顧客のニーズ変化を新たな成長機会とも捉えております。リスクとその対応の詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) 気候変動及び自然資本損失に関する取組み」に記載しております。

 

(5) 企業イメージに関するリスク

当社グループは、事業活動を通じて企業イメージ・ブランドイメージの維持向上に努める一方、法令遵守や企業倫理に基づく事業活動、及び火災や労働災害などの企業災害の防止・対策活動に努めておりますが、それにもかかわらず、社会的な信用を失墜させるような企業不祥事や企業災害が発生した場合には、顧客からの信頼喪失や株価の下落を招き、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 為替変動に関するリスク

当社グループは、開発・調達・生産・流通・販売などの事業活動をグローバルに展開しており、原材料の調達や販売活動などにおいて、多種の通貨による取引を行っております。外貨建営業債権債務に対しては為替予約取引など、また、外貨建貸付金及び借入金に対しては通貨スワップ取引などを行うことにより、短期的な為替相場の変動影響を最小限にする努力をしておりますが、世界各地で国際間取引を行っていることから、為替相場の変動は、当社グループの業績に影響を及ぼすことになります。また、海外での売上収益、費用、資産・負債等は、連結財務諸表作成のために円換算されることから、為替相場の変動による影響を受けることになります。一般に、他国通貨に対する円高は当社グループの業績に悪影響を及ぼし、円安は当社グループの業績に好影響をもたらします。

 

(7) 競争激化に関するリスク

当社グループは、それぞれの市場で多数の企業と競合しており、販売価格競争を含む厳しい競争環境の中で事業を推進しております。また、原材料価格・エネルギー費・労務費の上昇等によって原価・経費面でマイナス影響を受けることがあります。このような事業環境に対し、当社グループは、生産性の向上や経費マネジメントの改善、顧客や市場への新しい商品価値の提案などによる内部努力を継続しておりますが、それらの努力で利益低下を吸収できない場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、製造業者として技術力を核とした戦略を重視しており、新技術を搭載した製品の市場投入を積極的に進めております。これらの技術開発のための投資や費用は、最終的に高い商品価値を顧客に認めていただくために投入しているものですが、競合他社との激しい競争において、事業として十分な成果に結びつけることができない場合は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 製品の欠陥に関するリスク

当社グループは、製造業者として販売する製品の品質に万全を期すことに努めております。特に、タイヤなど人命にかかわる商品を主に扱っているという認識に立ち、製品品質の確保、市場情報の収集や品質に関する早期警報システムの構築など、品質保証体制の充実に努めておりますが、予測できない原因により製品に欠陥が生じた場合や、顧客の安全・安心を最優先に確保するという観点から大規模なリコールなどを実施する可能性は皆無ではありません。そのような事態が発生した場合には、回収費用、社会的な信用の毀損、顧客への補償や訴訟費用・賠償費用などにより、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。特に米国の製造物責任訴訟や集団訴訟は、より重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 原材料調達に関するリスク

当社グループは、タイヤなどゴム製品の原材料として天然ゴムを使用しておりますが、天然ゴムの主要生産地である東南アジア諸国における災害、戦争・テロ・暴動、社会的・政治的混乱、ストライキ、あるいは収穫不良などにより、天然ゴムの安定供給に支障が生じた場合、当社グループの生産に必要な量を確保することが困難になり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、天然ゴム以外の主要原材料調達においても、原料需給の逼迫や供給能力の制約により、当社グループの生産に必要な量を確保することが困難になる場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

さらに、当社グループは、いくつかの主要原材料の調達について、グループ内の原材料生産拠点、又は一部のグループ外供給元に依存しております。このため、特定の原材料供給元の操業が停止するなどにより、必要な原材料の調達ができない状況が発生した場合は、当該原材料に依存している当社又はグループ会社の生産に著しい悪影響を及ぼし、その結果、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

加えて、需給の逼迫や投機目的の売買などにより、当社グループが調達している原材料の価格が高騰し、生産性向上などの内部努力や価格への転嫁などにより吸収できない場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 退職給付費用及び債務に関するリスク

当社グループの退職給付費用及び債務は、数理計算上の割引率などの前提条件に基づいて算出しております。しかしながら、年金資産等の制度資産の公正価値、金利の変動等により、これらの前提条件に大きな変動があった場合、あるいは前提条件の変更が必要になった場合には、退職給付費用や債務が増加し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 知的財産侵害に関するリスク

当社グループでは、知的財産を企業の競争力を高めるための重要な経営資源と位置づけ、第三者の知的財産権に対する侵害の予防、及び保有している多数の知的財産権の保護に努めております。それにもかかわらず、当社グループの認識又は見解との相違から、第三者から知的財産権を侵害したとして訴訟を受け、当社グループとして製造販売中止、あるいは損害賠償などが必要になった場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、第三者による知的財産権侵害を当社グループが主張したにもかかわらず、侵害があったと認められない場合には、当社グループの製品差別化や競争優位性が確保されず、結果として当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度より、当社グループではグローバルサプライチェーンマネジメントへの日本の生産拠点の貢献を評価する目的から、一般タイヤ取引における日本の輸出損益について、「全社又は消去」から「日本」セグメントへ変更しております。これにより、前連結会計年度の数値についても新たなセグメント区分に組み替えたうえで表示しております。

また、当社グループは米国建築資材事業、防振ゴム事業、化成品ソリューション事業を非継続事業に分類しており、前連結会計年度及び当連結会計年度の金額から非継続事業を控除しております。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 6.事業セグメント」に記載のとおりであります。

文中の将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日現在において、判断したものであります。

 

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

a.業績全般

 

当連結会計年度

前連結会計年度

増減

金額

比率

 

億円

億円

億円

売上収益

43,138

41,101

+2,037

+5

調整後営業利益

4,806

4,826

△20

△0

営業利益

4,818

4,413

+405

+9

税引前当期利益

4,442

4,235

+207

+5

親会社の所有者に帰属する当期利益

3,313

3,003

+310

+10

 

 当社グループは、企業理念の「使命」として掲げる「最高の品質で社会に貢献」の下、「2050年 サステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社へ」というビジョンの実現に向け、2021年2月に発表した中期事業計画(2021-2023)に沿って活動を進めてまいりました。また、使命、ビジョンの下に、従業員、社会、パートナー、お客様と共に持続的な社会を支えることにコミットする「Bridgestone E8 Commitment」を企業コミットメントとして制定し、これを価値創造の軸及びベクトルとしております。当社創立100周年となる2031年へ向けて実現したい姿を描いた「2030年 長期戦略アスピレーション(実現したい姿)」を道筋として、歩みを進めております。

 当連結会計年度は、下期以降に顕著となった米欧の市販用トラック・バス用タイヤの需要減速及び低迷などを背景に、想定以上に厳しい事業環境となる中、中期事業計画(2021-2023)の最終年として「実行と結果」に拘り、変化に対応できる強いブリヂストンへ戻すことを目指し、プレミアムタイヤ事業における「稼ぐ力の再構築」と、厳しい事業環境においてもプレミアムタイヤ生産強化を中心に戦略的成長投資を厳選して実行し、「将来への布石を打つ」ことに注力いたしました。

 

 プレミアムタイヤ事業においては、市販用タイヤの全体需要環境が厳しく、グローバルの販売数量が前連結会計年度比減少する中、プレミアム領域へのフォーカスを一層強化いたしました。市販用乗用車用タイヤにおいては、戦略的価格マネジメントを推進すると共に、環境変化に対する影響が比較的少なく安定した需要を維持した高インチタイヤの販売拡大を中心に、赤字・不採算領域の削減を推進すると共に、高性能・高付加価値な断トツ商品を投入し、販売MIX改善を徹底いたしました。高い商品力、サービス拠点網などの強いビジネス基盤を持つ北米での市販用トラック・バス用タイヤにおいては、想定した以上に新品タイヤの需要が厳しくなる中、リトレッド(更生)タイヤを組み合わせ、プレミアム領域における新品タイヤ、リトレッドタイヤのシェアを向上することができました。また、断トツ商品を基盤にタイヤのメンテナンス・サービスなど現物現場の強い力を発揮し、堅調な販売・シェア向上を達成した鉱山車両用タイヤが、厳しい事業環境下、全社業績を下支えした結果となりました。一方で、これまでも収益性や事業基盤の面で当社グループの経営課題であった欧州事業については、厳しい事業環境下に、販売チャネル基盤などの弱さが顕在化し、その改善へ向けた課題が残っております。米州事業では、超インフレ会計(注)を適用しておりますアルゼンチンにおいて、大幅な通貨の切り下げ影響が業績を大きく押し下げ、全社業績にネガティブな影響を与えました。

 以上を踏まえ、当連結会計年度の業績については、変化への対応不足が顕在化し、変化を捉える兆候管理、変化へ素早く対応する感度、PDCAサイクルの質・スピードの改善が来期へ向けて急務となり、期初に目標としていた「変化に対応できる強いブリヂストン」へは課題を残す結果となりました。売上収益は、米欧の市販用トラック・バス用タイヤ需要の大幅な減少に起因する販売数量減少及びアルゼンチンの超インフレ会計による影響がある中、市販用乗用車用プレミアムタイヤ(18インチ以上高インチタイヤ、各地域において高収益なプレミアムタイヤブランドなど)の販売拡大による販売MIX改善、鉱山車両用タイヤの前連結会計年度比販売数量増を達成し、為替の追い風もあり前連結会計年度比で増収となりました。調整後営業利益については、原材料価格・インフレ(エネルギー費、労務費等)等による原価・経費面のマイナス影響を売値・販売MIXの改善でカバーし、徹底した経費マネジメント・生産現場の生産性改善に継続的に取り組みましたが、販売数量減少による工場操業度悪化による加工費増及びアルゼンチンの超インフレ会計に関連する減益が大きく影響し、為替影響込みで前連結会計年度比減益となりました。アルゼンチンの超インフレ会計による前連結会計年度比減益影響は約100億円であり、当該影響を除けば前連結会計年度比増益となりました。調整後営業利益率は前連結会計年度比0.6ポイント低下の11.1%と前連結会計年度に及ばず、今後も、変化に対応できるビジネス体質の向上に向けて取り組みを加速してまいります。

 以上の結果、当社グループの当連結会計年度の売上収益は43,138億円(前連結会計年度比5%増)、調整後営業利益は4,806億円(前連結会計年度比0.4%減)、営業利益は4,818億円(前連結会計年度比9%増)、税引前当期利益は4,442億円(前連結会計年度比5%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は3,313億円(前連結会計年度比10%増)となりました。

 

(注) IAS第29号超インフレ会計

 

b.セグメント別業績

 

 

当連結会計年度

前連結会計年度

増減

金額

比率

 

日本

 

億円

億円

億円

売上収益

12,424

11,571

+854

+7

調整後営業利益

2,065

1,506

+559

+37

中国・アジア・大洋州

売上収益

4,611

4,570

+41

+1

調整後営業利益

416

399

+17

+4

米州

売上収益

20,800

19,880

+920

+5

調整後営業利益

2,120

2,512

△392

△16

欧州・ロシア・中近東・インド・アフリカ

(注)

売上収益

9,085

8,700

+385

+4

調整後営業利益

251

664

△412

△62

その他

売上収益

784

805

△21

△3

調整後営業利益

56

73

△17

△24

連結 合計

売上収益

43,138

41,101

+2,037

+5

調整後営業利益

4,806

4,826

△20

△0

(注) ロシア事業は2023年12月に譲渡が完了しております。

 

[日本]

 売上収益は12,424億円(前連結会計年度比7%増)、調整後営業利益は2,065億円(前連結会計年度比37%増)となりました。

 市販用乗用車及び小型トラック用タイヤ、並びにトラック・バス用タイヤの販売本数は前連結会計年度比で下回った一方で、戦略的価格マネジメントに加え、低採算領域の削減によりプレミアム領域へのフォーカスを強化し、原材料高騰・インフレ影響を売値・販売MIX改善でカバーいたしました。鉱山車両用タイヤの販売拡大並びに乗用車用及びトラック・バス用タイヤの海外向け輸出が堅調であったことに加え、為替円安の追い風もあり前連結会計年度比増収増益となりました。

[中国・アジア・大洋州]

 売上収益は4,611億円(前連結会計年度比1%増)、調整後営業利益は416億円(前連結会計年度比4%増)となりました。

 販売本数では、新車用・市販用合計にて乗用車及び小型トラック用タイヤは前連結会計年度を下回り、トラック・バス用タイヤは前連結会計年度並みに推移した一方で、域内各国での売値改善、プレミアム領域へのフォーカス徹底による販売MIX改善を達成し、為替円安の追い風もあり前連結会計年度比増収増益となりました。

[米州]

 売上収益は20,800億円(前連結会計年度比5%増)、調整後営業利益は2,120億円(前連結会計年度比16%減)となりました。

 北米タイヤ事業において、販売本数は新車用・市販用を合わせて、乗用車及び小型トラック用タイヤ全体では前連結会計年度並みとなり、トラック・バス用タイヤは大幅な需要減速の影響もあり、前連結会計年度を大きく下回りました。一方で、売値・販売MIXは着実に改善いたしました。コスト面においては、インフレ及び販売本数減により生産調整を行い、加工費が悪化したことに加え、アルゼンチンの超インフレ会計に関連する減益が大きく影響し、為替の追い風があったものの前連結会計年度比増収減益となりました。

 

[欧州・ロシア・中近東・インド・アフリカ]

 売上収益は9,085億円(前連結会計年度比4%増)、調整後営業利益は251億円(前連結会計年度比62%減)となりました。

 欧州事業において、販売本数は市販用乗用車及び小型トラック用タイヤ並びにトラックバス用タイヤにて前連結会計年度を大幅に下回り、特にトラック・バス用タイヤでは需要低迷が続き販売へ大きく影響いたしました。これに対し、市販用乗用車用タイヤを中心に、戦略的価格マネジメント・低採算領域の削減を加速することで対応し、売値・販売MIXは改善した一方で、コスト面におけるインフレ及び販売本数減のための生産調整による加工費悪化が大きく、為替の追い風があったものの前連結会計年度比増収減益となりました。

 

(注) セグメント別の金額はセグメント間の取引を含んでおり、連結合計の金額はそれらを消去した後の数値であります。

c.財政状態

(流動資産)

 流動資産は、棚卸資産が167億円、売却目的で保有する資産が256億円減少したものの、現金及び現金同等物が2,057億円増加したことなどから、前連結会計年度末比1,848億円増加(同7%増)し、26,974億円となりました。

(非流動資産)

 非流動資産は、有形固定資産が1,818億円、無形資産が409億円増加したことなどから、前連結会計年度末比2,808億円増加(同11%増)し、27,304億円となりました。

(流動負債)

 流動負債は、引当金が161億円減少したものの、社債及び借入金が1,502億円、未払法人所得税等が373億円増加したことなどから、前連結会計年度末比1,790億円増加(同16%増)し、12,648億円となりました。

(非流動負債)

 非流動負債は、リース負債が133億円増加したものの、社債及び借入金が1,058億円減少したことなどから、前連結会計年度末比1,063億円減少(同12%減)し、7,576億円となりました。

 なお、流動負債及び非流動負債に計上された有利子負債(注)の合計は、前連結会計年度末比630億円増加(同8%増)し、8,302億円となりました。

(注) 有利子負債には社債及び借入金、リース負債を含んでおります。

(資本)

 資本合計は、配当金(親会社の所有者)により1,301億円減少したものの、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上により3,313億円増加したことなどから、前連結会計年度末比3,929億円増加(同13%増)し、34,054億円となりました。

 

 これらの結果、当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べて4,656億円増加(同9%増)し、54,278億円となりました。また、当連結会計年度の親会社所有者帰属持分比率は61.8%となり、前連結会計年度末比2.0ポイントの上昇となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 

当連結会計年度

前連結会計年度

増減

金額

 

億円

億円

億円

営業活動によるキャッシュ・フロー

6,614

2,685

+3,930

投資活動によるキャッシュ・フロー

△2,977

△3,380

+403

財務活動によるキャッシュ・フロー

△1,837

△3,641

+1,805

現金及び現金同等物に係る換算差額

255

652

△397

現金及び現金同等物の増減額

2,055

△3,685

+5,740

現金及び現金同等物の期首残高

5,189

7,875

△2,686

売却目的で保有する資産に含まれる現金及び現金同等物の増減額

998

△997

現金及び現金同等物の期末残高

7,246

5,189

+2,057

 

 当連結会計年度における当社グループの現金及び現金同等物(以下、「資金」)は、全体で2,057億円増加(前連結会計年度は2,686億円の減少)し、当連結会計年度末には7,246億円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動による資金収支は、6,614億円の収入(前連結会計年度比3,930億円の収入増)となりました。これは、未払賞与の減少額108億円(前連結会計年度は13億円)や、営業債務及びその他の債務の減少額553億円(前連結会計年度は営業債務及びその他の債務の増加額525億円)や、法人所得税の支払額580億円(前連結会計年度は862億円)などがあったものの、税引前当期利益4,442億円(前連結会計年度は4,235億円)や、減価償却費及び償却費3,058億円(前連結会計年度は2,821億円)や、営業債権及びその他の債権の減少額568億円(前連結会計年度は営業債権及びその他の債権の増加額1,396億円)や、棚卸資産の減少額853億円(前連結会計年度は棚卸資産の増加額1,954億円)などがあったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動による資金収支は、2,977億円の支出(前連結会計年度比403億円の支出減)となりました。これは、有形固定資産の売却による収入296億円(前連結会計年度は277億円)や、投資有価証券の売却による収入279億円(前連結会計年度は29億円)や、貸付金の回収による収入149億円(前連結会計年度は195億円)などがあったものの、有形固定資産の取得による支出2,824億円(前連結会計年度は2,213億円)や、無形資産の取得による支出605億円(前連結会計年度は334億円)や、長期貸付けによる支出211億円(前連結会計年度は289億円)などによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動による資金収支は、1,837億円の支出(前連結会計年度比1,805億円の支出減)となりました。これは、短期借入金の増加額209億円(前連結会計年度は216億円)や、長期借入れによる収入231億円(前連結会計年度は6億円)などがあったものの、長期借入金の返済による支出207億円(前連結会計年度は541億円)や、リース負債の返済による支出684億円(前連結会計年度は658億円)や、配当金の支払額(親会社の所有者)1,300億円(前連結会計年度は1,190億円)などがあったことによるものであります。

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)(注1)

前連結会計年度比(%)

日本

798,975

+4.4

中国・アジア・大洋州

363,838

+3.9

米州

1,611,785

△1.8

欧州・ロシア・中近東・インド・アフリカ(注2)

741,073

△4.7

合計

3,515,672

△0.5

  (注1) 金額は、販売価格によっております。

  (注2) ロシア事業は2023年12月に譲渡が完了しております。

 

b.受注実績

 当社グループは、少数の特殊製品(特殊ホース等)について受注生産を行うほかは、すべて見込生産であります。

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

日本

946,547

+6.4

中国・アジア・大洋州

398,135

+5.7

米州

2,063,073

+4.7

欧州・ロシア・中近東・インド・アフリカ(注)

888,479

+3.7

その他

17,543

+3.8

全社又は消去

23

△42.0

合計

4,313,800

+5.0

  (注) ロシア事業は2023年12月に譲渡が完了しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年3月26日)現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下、「連結財務諸表規則」という。)第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性のある会計方針」及び「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりであります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、次のとおりであります。

 なお、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因や当該事項への対応については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

 (売上収益、調整後営業利益及び営業利益)

 売上収益、調整後営業利益及びセグメント別の状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。また、営業利益は、上記による影響に加えて、その他の一時的かつ多額の費用が178億円、減損損失が157億円それぞれ減少したことなどにより前連結会計年度比405億円増加(同9%増)し、4,818億円となりました。

 この結果、調整後営業利益率は11.1%となり、前連結会計年度比0.6ポイントの低下となりました。

 (親会社の所有者に帰属する当期利益)

 親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度比310億円増加(同10%増)し、3,313億円となりました。これは、金融費用が364億円増加したものの、営業利益が405億円増益、金融収益が171億円増加したことなどによるものです。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性

 現金及び現金同等物は、前連結会計年度末比2,057億円増加し、7,246億円となりました。なお、活動区分ごとのキャッシュ・フローについては、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

 資金調達にあたっては、金融機関からの借入れに加え、引き続き、国内普通社債やコマーシャル・ペーパーなどの直接金融手段や、売上債権の証券化、リースの活用など、リスク分散や金利コストの抑制に向けその多様化を図ってまいります。

 資金使途につきましては、主に稼ぐ力の強化、価値創造へのフォーカス、サステナブルなプレミアムブランド構築のための戦略的成長投資による持続的な成長と企業価値向上の実現を優先しつつ、適正な財務体質の維持と株主還元に活用してまいります。

 

④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、2023年に最終年を迎えた中期事業計画(2021-2023:2023年度 売上収益3兆3,000億円レベル、調整後営業利益4,500億円レベル、調整後営業利益率13%レベル、ROIC10%レベル、ROE12%レベル)においては、事業環境の変化に対応できる強いブリヂストンへ戻すことを目指して歩を進めてまいりました。

 当連結会計年度においては、売上収益4兆3,138億円、調整後営業利益4,806億円、調整後営業利益率11.1%、ROIC8.7%、ROE10.4%となりました。

(注) ROEにつきましては、親会社の所有者に帰属する当期利益のうち継続事業に係る金額に基づいて算出しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループはプレミアムタイヤ事業をコア事業としてソリューション事業との連携を深めることで、お客様に商品を使って頂く段階において、断トツ商品の価値を増幅することに挑戦しております。化工品・多角化事業、探索事業においても、社会価値、顧客価値を創出するための様々な活動を推進しております。その価値の増幅において、当社の強みを高めるための取り組みが技術イノベーションです。当社グループの技術イノベーションは、「ゴムを極める」「接地を極める」「モノづくりを極める」の3つの「極める」を軸に推進しております。この3つの「極める」を軸に研究開発活動に取り組み、当社グループが現物現場で長年培ってきたゴム、タイヤに関連する技術や知見、ノウハウなどの強い「リアル」に「デジタル」を組み合わせてイノベーションを加速させ、「断トツ商品」や「断トツソリューション」の開発につなげてまいります。

これらの技術イノベーションを推進するため、2022年に技術開発拠点である東京都小平地区を再開発し、グローバルなイノベーション拠点として「Bridgestone Innovation Park(ブリヂストン イノベーション パーク)」を構築いたしました。イノベーションセンター「B-Innovation(ビーイノベーション)」とテストコース「B-Mobility(ビーモビリティ)」の活用を進め、さらに2023年4月からは小平地区に日本タイヤ事業の本社機能の一部を移管し、R&B(Research and Business(リサーチ アンド ビジネス))として新たな取り組みを開始し、社内外共創活動を加速しております。開所以降、多くのパートナーの方々にイノベーションパークへご来場頂き、様々な共同研究、共創活動が生まれております。また、従業員一人ひとりが個とチームのアウトプット最大化のために自分自身で多様な働き方をデザインするABW(Activity Based Working(アクティビティ ベースド ワーキング))の考え方を取り入れた働き方変革など主体性を尊重する組織風土の醸成にも取り組んでおります。この「Bridgestone Innovation Park(ブリヂストン イノベーション パーク)」を中核として、欧州「Digital Garage(デジタル ガレージ)」、米国「Mobility Lab(モビリティ ラボ)」といった当社グループのイノベーション拠点それぞれが強みを活かして連携し、価値の創造へフォーカスしてまいります。

プレミアムタイヤ事業では、当社グループのプレミアムタイヤ事業の中核となる商品設計基盤技術「ENLITEN(エンライトン)」の進化に取り組んでおります。「ENLITEN(エンライトン)」技術は、当社グループが独自に価値を創造する「新たなプレミアム」と位置づけ、従来品のタイヤ性能を全方位で向上させると共に、商品、市場、お客様毎に異なるタイヤ性能への要求や付加価値を、それぞれに合わせてカスタマイズして提供する「究極のカスタマイズ」の実現を目指して技術の確立・進化へ取り組んでおります。一例として、2023年に北米にて発売した当社グループ初のEV専用タイヤである「TURANZA EV(トランザ イーブイ)」は、お客様や小売店からのタイヤに関するご要望をよくお聞きした上で商品企画、開発をしております。EV用タイヤの課題であった早期摩耗に対応し、耐摩耗性能を従来品比で約50%向上させると共に、サステナビリティへの意識の高まりに対応し、タイヤの原材料における再生資源・再生可能資源比率を50%に向上いたしました。日本においては、市販用乗用車用タイヤに初めて「ENLITEN(エンライトン)」技術を搭載したプレミアムブランド商品「REGNO GR-XⅢ(レグノ ジーアール - クロススリー)」を2024年2月に発売しております。「REGNO GR-XⅢ(レグノ ジーアール - クロススリー)」は、静粛性・乗り心地・運動性能などタイヤに求められる基本性能を進化させることで深みを増した空間品質と磨き抜かれた走行性能を提供し、サステナビリティに対応する再生資源・再生可能資源比率も従来品対比で向上させた商品です。

さらに、今後へ向けては、サステナブルなグローバルモータースポーツ活動の強化と連動して、「ENLITEN(エンライトン)」技術をさらに進化させてまいります。2023年には、当社がタイトルスポンサーを務める世界最高峰のソーラーカーレース「2023 Bridgestone World Solar Challenge(ブリヂストン ワールド ソーラー チャレンジ)」にて、モータースポーツタイヤで初めて「ENLITEN(エンライトン)」技術を搭載したタイヤを開発、供給いたしました。再生資源・再生可能資源比率を2019年に開催された前回大会から約2倍の63%へ向上させると共に、ソーラーカー向けタイヤに必要とされる軽量化、オーストラリアを縦断する約3,000キロのレース環境に対応する耐久性などを大幅に向上させました。欧州においても、ゼロエミッション車で一般ドライバーが参加する公道でのラリーイベント「Bridgestone FIA ecoRally Cup(ブリヂストン エフアイエー エコラリー カップ)」にて、「ENLITEN(エンライトン)」技術を搭載したタイヤをご使用いただいたお客様の声を聞くことで、次期商品の企画へ繋げるなど、様々な活動を推進しております。また、「ABB FIA フォーミュラE世界選手権」において、2026-2027シーズンから単独タイヤサプライヤーとして選定されており、タイヤ供給開始へ向けて「ENLITEN(エンライトン)」技術を進化させてまいります。これらサステナブルなグローバルモータースポーツ活動を「走る実験室」として、モータースポーツの極限の条件で技術を磨き、「From Circuit to Street(フロム サーキット トゥ ストリート)」のコンセプトの下、市販用タイヤ開発を次のステージへ進化させてまいります。

また、鉱山車両用タイヤにおける「MASTERCORE(マスターコア)」技術は、「ENLITEN(エンライトン)」技術に並ぶ当社グループの新たなプレミアムとして、内製スチールコードをはじめとした素材・構造・製造技術を含む、当社独自の新技術を結集することにより、断トツの高耐久性能を実現しております。今後も、高付加価値な鉱山車両用タイヤの開発を推進してまいります。

さらに、「ENLITEN(エンライトン)」技術を活用した「究極のカスタマイズ」を支えるモノづくり基盤技術であるBCMAは、開発・生産過程において、タイヤの骨組みであるカーカス、補強帯のベルト、表面のトレッドの3つのモジュールに分け、モジュール1(カーカス)、モジュール2(ベルト)を異なる商品間で共有し、開発から生産・販売のバリューチェーンをシンプル化すると共に、モジュール3(トレッド)で性能をカスタマイズし商品を差別化するものです。商品、サイズ数の効率化及び開発や製造工程の効率化による生産性の向上とコスト最適化を実現してまいります。さらに、モジュールを共有することで各地域の市場環境や販売戦略に合わせたフレキシブルなタイヤ生産が可能となり、販売機会が最大化できると共に、需要地に近い工場での生産対応などを含めて在庫管理や物流費の効率化など、バリューチェーン全体への効果創出へも取り組んでまいります。

また、モノづくりにおいては、プレミアムタイヤを持続的かつ安定的に供給できるよう進化させ、その実現にむけて工場のグリーン&スマート化を計画的に推進してまいります。BCMAの展開推進と連動し、開発・製造工程の生産性向上、効率化、バリューチェーン全体における環境負荷の低減など、社会価値・顧客価値の創造を進めてまいります。

成長事業であるソリューション事業では、トラック・バス用、鉱山車両用、航空機用タイヤにおいて、デジタルを活用してタイヤの使用状況データを解析し、お客様にタイヤの摩耗予測をご提供するソリューションの開発を進めております。さらに、お客様との共創を基盤として、タイヤに関連するデータに車両運行状況のデータを組み合わせ、AIを活用した独自のアルゴリズムを構築することにより、より安全で効率的に長く使えるタイヤの使い方や車両の効率的な運行をご提案するタイヤの耐久予測ソリューションへの進化へも挑戦しております。その一例として、トラック・バス用タイヤ向けのソリューションとして、お客様の使用状況に応じた最適なプレミアムタイヤ、タイヤメンテナンス、リトレッドタイヤ、デジタル車両運行管理を一括パッケージとして提供する「Fleetcare(フリートケア)」プログラムを欧州から開始し、北米にて拡大をしてまいります。また、無線通信を用いて情報を非接触で読み書きする自動認識技術であるRFID(Radio Frequency Identification(ラジオ フリークエンシー アイデンティフィケーション))を利用した、新品タイヤからメンテナンス、リトレッドまでタイヤのライフサイクルを通じた個体管理をグローバルに拡大するとともに、TOPPANエッジ株式会社との共創により、通信性能を最大化するタイヤ用次世代RFIDの開発を進めております。

鉱山車両用タイヤ向けソリューションでは、断トツ商品「Bridgestone MASTERCORE(ブリヂストン マスターコア)」と、車両とタイヤをモニタリングするデジタルツールを組み合わせ、鉱山事業者のオペレーションを最適化する鉱山ソリューションの開発に力を入れております。

また、安心・安全な自動運転車両の開発及び運営に必要となるソリューションを提供する株式会社ティアフォーとの共創を通じて、自動運転の研究開発や実用化などモビリティの進化へも貢献してまいります。

サステナビリティに向けた取り組みとして、天然ゴムの持続可能な安定供給・生産性向上、供給源の多様化を推進するため、様々なパートナーとの共創を通じて技術の構築を進めております。具体的には、ビッグデータを活用した「パラゴムノキ」の植林計画最適化システムの開発、農園の作地面積を増やさずに天然ゴムの生産性の安定的な向上、天然ゴム供給源の多様化に向けた乾燥した地域で栽培可能な植物「グアユール」由来の天然ゴムの実用化、グアユールの優良品種の苗を効率的かつ安定的に増やすための技術開発などに取り組んでおります。

 

共創をベースとして、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進にも力を入れております。高度なAIとアルゴリズムの分析や開発を担当するデータサイエンティストなどのデジタル人財の育成、採用も進めております。国立大学法人東北大学の構内に「ブリヂストン×東北大学共創ラボ」を設置し、ゴムのシミュレーション基盤技術に関する共同研究を開始するなど、デジタル分野における幅広い交流を通じてデジタル人財を育成し、新たなパートナーとの連携も深めブリヂストン流のDXを推進してまいります。また、2024年は次世代放射光施設「NanoTerasu(ナノテラス)」の稼働開始年となります。ここから生まれる様々なデータとシミュレーションを融合させ、革新的な材料開発を加速してまいります。

さらに、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)、トヨタ自動車株式会社と共に、人類の夢を背負って過酷な月面環境に挑戦する国際宇宙探査ミッションへ参加し、有人月面探査車向けタイヤの研究開発を推進しております。

化工品・多角化、探索事業としては、リサイクル事業として、「EVERTIRE INITIATIVE(エバータイヤ イニシアチブ)」を掲げ、使用済タイヤのケミカルリサイクル技術の社会実装に向けたENEOS株式会社との共同プロジェクトを開始しております。本プロジェクトでは、経済産業省により設置された「グリーンイノベーション基金事業」の支援を受け、企業とアカデミアの持つ知見や技術力の結集、共創により、タイヤ・ゴム産業及び石油化学産業のバリューチェーンにおける資源循環性の向上とカーボンニュートラル化への貢献を目指しております。2023年6月には、使用済タイヤの精密熱分解(油化)によるケミカルリサイクル技術の社会実装に向け、新たに「Bridgestone Innovation Park(ブリヂストン イノベーション パーク)」内に実証機を導入し、使用済タイヤを熱分解することによって分解油や再生カーボンブラックを生成する取り組みを開始しております。

ソフトロボティクス事業においては、ソフトロボットハンドを用いたピースピッキング(品物を一つひとつ選び出す作業)の有償での実証実験を開始し、物流業界を始め、食品業界やファクトリーオートメーション業界への提案を推進しております。加えて、スタートアップ企業との資本業務提携も含め、様々なパートナーとの共創により、小規模な事業化へ向けて加速しております。また、ソフトロボティクス事業は、2023年より社内ベンチャー化し、「Softrobotics Ventures(ソフトロボティクス ベンチャーズ)」を設立いたしました。技術開発及び事業化へ向けた探索を通じ、起業家精神を発揮し多様な人財が“輝く”場を実現する好例として、社内の人的創造性向上へも取り組んでまいります。

なお、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は1,220億円であります。

 

(注) 当社グループの研究開発活動には、特定のセグメントに紐づかないものがあり、またその成果はセグメント横断的に効果があるため、セグメント別の状況及び金額の記載を省略しております。