第一部 【企業情報】

 

第1 【企業の概況】

 

1 【主要な経営指標等の推移】

 

回次

第21期

第22期

第23期

第24期

第25期

決算年月

2019年12月

2020年12月

2021年12月

2022年12月

2023年12月

売上高

(千円)

1,286,109

1,973,405

2,206,940

2,479,404

3,194,521

経常利益

又は経常損失(△)

(千円)

59,458

106,696

503,929

1,161,815

452,714

当期純利益

又は当期純損失(△)

(千円)

63,142

103,089

511,669

1,036,610

463,354

持分法を適用した
場合の投資利益

(千円)

資本金

(千円)

100,000

100,000

2,345,062

2,394,756

2,476,719

発行済株式総数

(株)

288,081

28,808,100

33,410,900

34,027,600

35,090,800

純資産額

(千円)

346,607

408,996

4,622,104

3,684,864

3,385,324

総資産額

(千円)

866,466

905,347

5,426,315

4,794,501

4,596,788

1株当たり純資産額

(円)

12.01

14.29

138.32

108.27

96.46

1株当たり配当額

(円)

(1株当たり中間配当額)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

1株当たり当期純利益又は当期純損失(△)

(円)

2.19

3.58

16.02

30.73

13.32

潜在株式調整後
1株当たり当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

39.9

45.1

85.2

76.8

73.6

自己資本利益率

(%)

20.1

27.3

株価収益率

(倍)

配当性向

(%)

営業活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

20,509

130,256

493,475

1,000,775

331,218

投資活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

17,497

12,909

610,355

508,676

85,009

財務活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

6,113

43,670

4,830,050

363,049

217,612

現金及び現金同等物
の期末残高

(千円)

365,480

464,976

4,191,195

3,044,793

2,846,178

従業員数

(名)

65

92

136

180

176

(外、平均臨時雇用者数)

(20)

(21)

(37)

(53)

(67)

株主総利回り

(%)

48.8

55.7

(比較指標:配当込みTOPIX)

(%)

(-)

(-)

(-)

(97.5)

(125.1)

最高株価

(円)

2,629

1,327

954

最低株価

(円)

1,214

350

503

 

 

(注) 1.当社は、連結財務諸表を作成しておりませんので、連結会計年度に係る主要な経営指標等の推移については記載しておりません。

2.第23期から第25期は、事業規模拡大に伴う先行投資による人件費の増加等により経常損失及び当期純損失となりました。

3.持分法を適用した場合の投資利益については、関連会社が存在しないため記載しておりません。

4.第23期から第25期の自己資本利益率については、当期純損失であるため記載しておりません。

5.第21期及び第22期の株価収益率は、当社株式が非上場であったため記載しておりません。また、第23期から第25期の株価収益率については、1株当たり当期純損失であるため記載しておりません。

6.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、第23期から第25期は、潜在株式は存在するものの、1株当たり当期純損失であるため記載しておりません。また、第21期及び第22期は、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であったことから、期中平均株価が把握できないため、記載しておりません。

7.1株当たり配当額及び配当性向については、当社は配当を実施していないため記載しておりません。

8.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数は( )内に年間の平均人員を外数で記載しております。

9.2020年12月8日付で普通株式1株につき100株の株式分割を行っており、第21期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して1株当たり純資産額、1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失を算定しております。

10.当社株式は2021年3月30日付で東京証券取引所マザーズ市場に上場いたしましたので、第21期から第23期までの株主総利回り及び比較指標については記載していません。第24期以降の株主総利回り及び比較指標は、2021年12月末を基準として算出しています。

11.最高株価及び最低株価は、東京証券取引所マザーズ市場における株価であり、2022年4月4日以降は同取引所グロース市場における株価を記載しております。なお、当社株式は2021年3月30日付で同取引所に上場いたしましたので、それ以前の株価については記載しておりません。

12.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第24期の期首から適用しており、第24期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

 

 

2 【沿革】

当社の沿革は、創業者である伊藤謙自(現当社代表取締役社長)が、1997年9月に埼玉県戸田市において、個人事業として熱絶縁工事を営む、伊藤工業を創業したことに始まります。創業以降の経緯は次のとおりであります。

年月

概要

1997年9月

埼玉県戸田市にて個人事業として伊藤工業創業

2000年2月

伊藤工業を資本金3,000千円にて、有限会社ケイ・ファクトリー設立

2001年4月

建設業許可取得

2001年10月

資本金10,000千円にて、株式会社ケイ・ファクトリーへ組織変更

2002年2月

アーマセル社(香港)製品の日本認定工事店に登録
「アーマフレックス」を使用した熱絶縁工事の施工開始

2010年9月

創業者伊藤謙自が、IT事業を立ち上げるにあたって、東京都豊島区に資本金3,000千円にて株式会社ヴェイシスを設立
積算システム「SPIDER」を開発・販売

2011年9月

建築図面・現場管理アプリ「SPIDERPLUS」をリリース

2012年6月

株式会社ケイ・ファクトリーが株式会社ヴェイシスを吸収合併 株式会社レゴリスへ商号変更

2014年11月

「情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)のISO27001認証」を取得

2017年5月

本社を東京都豊島区に移転

2017年6月

大阪府大阪市北区に大阪営業所を開設

2020年11月

株式会社レゴリスをスパイダープラス株式会社へ商号変更

2021年3月

東京証券取引所マザーズに株式を上場

2021年7月

建設関連の教育機関にSPIDERPLUSアカデミックプランを提供開始

2022年1月

エンジニアリング事業をArmacell Japan株式会社に事業譲渡

2022年4月

東京証券取引所の市場区分の見直しにより、東京証券取引所マザーズからグロース市場へ移行

北海道札幌市北区に札幌営業所を、福岡県福岡市博多区に福岡営業所を開設

2022年5月

本社を東京都港区に移転

2022年8月

リニューアル版SPIDERPLUS「ベーシック版」をリリース

2023年2月

愛知県名古屋市中村区に名古屋営業所を開設

2023年7月

新たなDX領域として「プラント業界」への展開を本格化

2023年12月

現場のペーパーレス化を進める新サービス「S+Report」のリリース

宮城県仙台市青葉区に仙台営業所を開設(2024年1月から営業開始)

 

 

3 【事業の内容】

(1) ミッション

当社は、「私たちは、“働く”にもっと「楽しい」を創造する。」をミッションとし、お客様の課題を解決していく喜びや楽しさを通じて仕事にもっと夢中になれる世の中を作り続けていくことを目標にしています。

私たちは、“働く”を心底楽しいと思えることが最も生産性を向上させると信じています。

 

(2) 事業概要

当社は、熱絶縁工事事業にて創業し、自社の生産性改善に真摯に向き合った結果、ITを活用する必要性を感じ、自社のみならず建設業界全体の生産性改善に貢献すべく2010年にICT事業(ICT:Information and Communication Technologyの略称で、情報通信技術を表します。)を開始いたしました。

ICT事業では、建設現場の現場業務をDX(デジタルトランスフォーメーション)によって生産性向上に寄与する建設DXサービス「SPIDERPLUS」を開発・販売しております。

「SPIDERPLUS」は、タブレットやスマートフォンで施工図面のペーパーレス化や、検査業務のデジタライゼーションにより業務効率化を実現するサービスです。ビルやマンションなど大規模な建設現場で施工管理を行う、総合建設業及び電気・空調設備業の現場監督が主な利用者です。

建設業界は、一般財団法人建設経済研究所「建設投資の中長期予測(2035年度までの見通し)」によると、都市部の再開発や老朽インフラの修繕等により、建設投資額が2021年の62.7兆円から2035年には71.3兆円まで拡大すると考えられる一方で、高齢化・若手入職者の減少などを背景に働き手は減少の一途を辿っています。

また、2024年4月には、建設業界への適用開始が5年間猶予されていた「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(以下、「働き方改革関連法案」といいます。)」が適用開始となり、建設業界においても残業時間の罰則付き上限規制が設けられます。

これらを背景として、建設業界各社のDXニーズは高まっており、その中で、当社の「SPIDERPLUS」は、建設現場の生産性向上に資するサービスとして、2023年12月末時点では大手企業を中心として1,800社以上、約69,000人のユーザーに利用されております。

 

ICT事業の各指標は、上記のような建設業界の環境下で、以下のとおり順調に推移しております。

 

項目

2019年12月

2020年12月

2021年12月

2022年12月

2023年12月

 ID数(ID)

29,041

38,560

48,787

58,690

68,508

 契約社数(社)

473

793

1,204

1,524

1,841

 MRR(千円)(注)1

96,855

139,434

181,688

229,331

293,338

 ARR(千円)(注)2

1,162,265

1,673,212

2,180,264

2,751,975

3,520,055

 

 

 「SPIDERPLUS」は、1ID毎に月額利用料をお支払いいただくサブスクリプションモデルとなっており、利用開始後は継続的な売上高となります。

当社は、建設業界でのDXサービス浸透にはフォローアップ体制の充実が特に重要であると考えております。そのため、営業が直接建設現場に赴いて現場説明会を実施、更に建設現場のニーズをヒアリングし、開発チームと連携して「SPIDERPLUS」の機能に反映するとともに、カスタマーサポートが顧客の困りごとをメール並びに電話で対応するなど、フォローアップ体制を強化しております。その結果として、導入初期及び日々の問合せ対応について顧客満足度が高く、契約社数に対する2023年12月期の月次平均解約率(注3)は0.6%と低い水準となっております。

 

(注) 1.MRR:Monthly Recurring Revenueの略称。月末時点における顧客との契約において定められたID単位で毎月課金される月額利用料の合計額(一時収益は含まない)。

2.ARR:Annual Recurring Revenueの略称。各年12月のMRRを12倍して算出。

3.月次平均解約率:「(n月の解約社数)÷(n-1月末時点の契約社数)」により算出した月次解約率の年平均。

 

(3) 「SPIDERPLUS」の特徴、選ばれる理由

 当社が提供する建設DXサービス「SPIDERPLUS」は、2011年9月にリリースしてから10年超にわたって建設業界大手顧客と共に様々な機能を開発し、建築工事や設備工事における様々なDXニーズに対応できる機能群を有していることが特徴です。当社が顧客に行った導入効果に関する調査によれば、「SPIDERPLUS」を活用することで1日2.5時間の業務効率化に繋がるという結果が表れています。

 
  また、当社が建設事業に従事してきた経験から「建設現場に対してDXサービスを使っていただくためには、サポート体制が重要である。」と考え、「SPIDERPLUS」と同様に10年超にわたってサポート体制も強化してまいりました。そして今では、様々なDXニーズに応えることができる機能群の他、充実したサポート体制もSPIDERPLUSが導入される理由の一つとなっております。

 

(4)「SPIDERPLUS」の機能紹介

① 基本機能

 SPIDERPLUSには、現場監督の施工管理業務において基本となる業務を効率化するための下記のような機能が「基本機能」として備わっています。
 


a. 図面管理機能

建設現場では、設計図や業種別の施工図など、多くの図面が存在します。また、工事の進捗や設計の変更によって図面の更新が頻繁に発生します。

 

施工は最新の図面をもとに工事を進めなければならないため、現場監督の業務として図面の管理は重要になります。「SPIDERPLUS」の図面管理機能を使うことで、常に最新図面をもとに工事を進めることが可能となり、図面の取り違いによる施工ミスなどが防止できます。

 

b. 写真管理機能

 建設現場では、工事に不備がないことの証拠として現場写真を撮影します。現場によっては数百枚、数千枚の写真を撮影することもあります。

 

 また、現場で写真を撮影したのち、撮影した写真の整理や報告書に写真の添付などを行います。施工中の工事写真は画像が似通っているため、写真整理の段階になって、「この写真は図面のどこに該当するのか」と撮影場所を失念してしまうことも多くあります。「SPIDERPLUS」の写真管理機能を使うことで、タブレットで工事写真を撮影すると同時に図面情報と紐づけることができます。これにより、多くの時間を要していた工事写真の管理業務を効率化することができます。

 

c. 資料閲覧機能

  現場監督は、図面や業務マニュアルなど、様々な書類を携行しなければなりませんでした。「SPIDERPLUS」の資料閲覧機能を活用することで、現場に携行しなければならない書類がタブレットに集約され、携行品を減らすことが可能となります。
 

d. 帳票作成機能

  現場監督は、自社や元請け企業(または施主)に対する報告書や協力会社に対する作業指示書など、工事の進捗に応じて多くの報告書を作成します。また、事務所仕事である報告書の作成は現場が閉所してから行うことが一般的であるため、業務負担も相まって現場監督の長時間労働を誘発しておりました。「SPIDERPLUS」の帳票作成機能を活用することで、現場にいながら報告書を作成することが可能になり、またクラウドを通じてそのまま報告書の提出が可能となります。
 

② 検査機能

 SPIDERPLUSは、上述の施工管理における基本業務に対応する機能群の他、建築工事や電気設備工事など、業種に応じた検査機能を豊富に有しております。

検査機能を活用することにより、これまで複数人で実施していた検査の省人化や、検査モレや記録の誤記入など検査時に発生するヒューマンエラーを解消することが可能になります。

 

 検査機能の中で、業種問わず活用可能な「指摘管理機能」を下記にて説明いたします。

 


 

「指摘管理機能」とは、工事の是正指示など現場監督が協力会社に対して行う品質管理業務を効率化する検査機能です。本機能を活用することで、数社、数十社の協力会社ごとに作成していた指示書の作成を効率化し、また指示した是正工事の進捗管理や完了報告のとりまとめが効率化されます。

 

また、指摘管理機能の他、風量測定器、絶縁抵抗器など各種検査機器との連携機能や、建設現場で現場監督と協力会社との情報共有が「SPIDERPLUS」で完結する追加機能S+Partner機能など、豊富なラインナップを備えております。

 

(5)今後の「SPIDERPLUS」及びその他サービス開発の展望

「SPIDERPLUS」は現在、建築工事、設備工事における様々なDXニーズに対応しておりますが、今後も建設業界のDXニーズは多様化、高度化していくと当社は考えております。

そのため、今後も「SPIDERPLUS」の機能開発を進めるだけでなく、より多くの業務効率化ニーズに対応するサービス開発を行ってまいります。

 

取り組み事例①:「SPIDERPLUS」のリニューアル開発

 当社は現在「SPIDERPLUS」のリニューアル開発を行っております。

現在提供している「SPIDERPLUS」は、紙図面のペーパーレス化から始まり建設業界のIT化の進展に応じて、様々な機能を実装してまいりました。

 

  一方で、現在提供している「SPIDERPLUS」は10年以上改修を続けてきたことからそのシステムが複雑化し、機能開発や機能改善に多くの開発工数を要しておりました。建設業界の多岐にわたる開発要望の早期実現と、今後も拡大するDXニーズに対応可能なプロダクトへと進化すべく、リニューアル版「SPIDERPLUS」の開発に着手し、開発を進めております。
 

 リニューアル版「SPIDERPLUS」は、現行版「SPIDERPLUS」をご利用中のお客様には更なる利便性の向上を、未導入のお客様には導入に値する価値を提供できるものと考えております。順次現行版に実装している機能をリニューアル版向けに開発し、長期的には現行版をリニューアル版に切り替えてまいります。リニューアル版「SPIDERPLUS」は、現行版「SPIDERPLUS」に寄せられている約600件の開発要望に対して1,500超の機能実装を予定しております。
 

 取り組み事例②:「SPIDERPLUS BPO」の展開

 当社が提供する「SPIDERPLUS」はデジタル活用によって施工管理業務を効率化しておりますが、現場監督の業務ではデジタル活用ができないものの生産性改善の余地がある業務が多く存在します。

 

 そこで当社は、デジタル活用ができないものの効率化の余地が残る業務を代行する「SPIDERPLUS BPO」をサービスとして提供しております。

 

 「SPIDERPLUS」と「SPIDERPLUS BPO」を活用することによって、施工管理業務の効率化と外部化が可能となり、デジタル活用だけにとどまらない業務効率化が可能となります。

 

(6) 事業系統図

  当社事業を、事業系統図によって示すと次のとおりであります。

 


 

4 【関係会社の状況】

該当事項はありません。

 

5 【従業員の状況】

(1) 提出会社の状況

 

 

 

 

2023年12月31日現在

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

176

(67)

34.3

2.75

5,609

 

 

セグメントの名称

従業員数(名)

ICT事業

176

(67)

合計

176

(67)

 

(注) 1.当社は、「ICT事業」の単一セグメントであります。

2.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数は( )内に年間の平均人員を外数で記載しております。

3.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

 

(2) 労働組合の状況

労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております。