当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「食糧増産技術(アグリテクノロジー)と真心で、世界の人々に貢献します。」という企業理念のもと、農薬や肥料、あるいは独自の栽培システムなどを開発・製造・販売する過程で、作物の増収に寄与する総合的かつ包括的な技術の開発と体系化に取り組んでおります。この技術・ノウハウの蓄積を基礎に「新たな食糧増産技術」を開発していくことで、増え続ける世界人口を支えるための食糧問題を解決し、株主の皆さまやお客さまから高い信頼と評価を得られるよう、企業価値の最大化を図ることを経営の基本方針としています。
当社グループの持つ技術や製品の機能を広く提案し、積極的な展開を行うことにより持続的な企業価値の向上を図ってまいります。またESG(環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance))の観点も積極的に経営に取り入れてまいります。当社グループの企業活動は、持続可能な未来を社会と共に築くものであり、SDGs活動そのものであると考えております。
(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、食糧増産技術(アグリテクノロジー)の提供を通じ社会に貢献するとともに、企業収益を高め、企業価値の向上を図ることを基本方針とし、収益の拡大と財務体質の強化に取り組み、かつ、人や環境に優しい持続可能な農業に貢献できる事業活動を進めてまいります。
2024年2月に公表いたしました新中期経営計画(2024-2026年)に記載の通り、さらなる成長に向けた積極投資を行い、世界の農業の課題解決に向けたイノベーションを実現させることで企業価値の向上に努め、社会環境の変化に柔軟に対応した企業活動を行ってまいります。また、人と環境に優しい持続可能な農業への貢献を企業の社会的責任と認識し、サステナビリティ経営の実践を行ってまいります。気候変動リスクへの対応やカーボンニュートラルの実現、日本政府が2021年5月に策定した持続可能な食料システムの構築を目指す「みどりの食料システム戦略」、EUの「Farm to Fork戦略」への対応推進などに引き続き取り組んでまいります。活動方針及び具体的な取組みは以下のとおりであります。
①企業価値の向上
2024年2月に発表した「新中期経営計画(2024-2026年)<さらなる挑戦への積極投資>」に記載のとおり、持続可能な農業に貢献すべくイノベーションに向けて研究開発への集中投資を行い、日本国内やグローバルにおける農業の課題を解決できるよう取り組んでまいります。
②研究開発体制について
当社グループにおいては、人や環境に優しい持続可能な農業に貢献するために安全性の高い新規防除資材や、天然・食品添加物由来であり、有機JAS適合農薬など使用回数に制限のない防除資材であるグリーンプロダクツ製品、植物が本来持つ免疫力を高め、耐寒性・耐暑性・病害虫耐性及び成長を促すバイオスティミュラント製品の研究開発に注力してまいります。また、循環型社会の実現を目指したプロバイオポニックス(有機質肥料活用型養液栽培)の実証試験、施設園芸分野での省力化・効率化、ビッグデータを活用したスマート農業の実践に向けた栽培トータルソリューションサービス『アグリオいちごマスター』のバージョンアップや普及にも引き続き取り組んでまいります。
2030年の「あるべき姿」を具現化するために、農業最先端技術にも積極的に投資を行ってまいります。
③成長ドライバーへの取り組み
2021年に発表した新中期経営計画にて掲げた成長ドライバーへの取り組みを具現化するために「人と環境にやさしいグリーンプロダクツ」「バイオスティミュラント事業」「施設園芸分野での潜在需要の掘り起こし」「グローバル製品展開」へ注力してまいりました。今後も持続的な成長に向け、成長ドライバーへの取り組みを実践してまいります。
④企業文化の構築
『栽培の楽しさ・難しさを自ら体験し、世界に発信する』ことを企業文化とし、当社グループの強みである栽培技術を通して、全ての人々に『育てる喜び』『観る感動』『食べる幸せ』をお届けできるよう取り組んでまいります。
また、食糧増産技術(アグリテクノロジー)を普及することにより、人や環境に優しい持続的な農業に貢献できるよう努めてまいります。
⑤生産性の向上
原材料の動向、製品の販売状況及び在庫状況等を勘案し、生産体制の最適化・効率化をすすめてまいります。また、SDGsの概念を当社グループ内に周知するとともに人材育成への注力、職場環境の改善へ継続投資を行い、付加価値の高い業務への移行実現に向けて取り組んでまいります。
⑥財務体質の強化
グループ全体でのキャッシュマネジメントを通じ、グループ内での資金融通など効率的かつ機動的な資金バランスを整え、有利子負債残高の減少に努めてまいります。また、重要な財務指標として自己資本比率やROEに具体的な目標値を設定し、引き続き、株主還元や積極的な事業展開、研究開発投資のため、安定した強固な財務基盤の構築を進めてまいります。
⑦営業体制の強化
農業分野の課題を真正面から受け止め解決するために、市場のニーズ及び問題点等を把握し、日々変化する課題に対して迅速に対応できる営業体制の構築に取り組んでまいります。また、収集した情報を製品開発に活かし、食糧増産技術で世界の人々に貢献する企業を目指してまいります。
(3)目標とする経営指標
当社グループは、2024年2月13日に公表いたしました2026年12月期を最終年度とする新中期経営計画(2024-2026年)において、目標とする経営指標として連結営業利益率12.0%、連結ROE13.8%を掲げております。
過去5年間の経営指標の推移
|
2019年 12月期 |
2020年 12月期 |
2021年 12月期 |
2022年 12月期 |
2023年 12月期 |
売上高営業利益率(%) |
4.9 |
7.5 |
8.8 |
12.4 |
13.0 |
連結ROE(%) |
0.1 |
12.9 |
19.2 |
23.4 |
20.0 |
(4)経営者の問題意識と今後の方針について
2023年度の激変した世界情勢の中で、当社グループは、2023年2月に公表いたしました「新中期経営計画(2023-2025年)」にて明確化した長期ビジョンの達成に向け、ひいては経営理念『食糧増産技術(アグリテクノロジー)と真心で世界の人々に貢献します』の実現に向け、一丸となって新たなる挑戦へ向かうべく土台固めを進めてまいりました。当社グループは、今後も引き続き持続的な成長を維持していくために、企業価値の向上、研究開発、成長ドライバー、企業文化の構築、生産性の向上、財務体質の強化、営業体制の強化の課題に取組み、更なる企業価値の向上に努めてまいります。詳細につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
[基本的な考え方]
当社グループは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に対してその取組みを推進しており、TCFDのフレームワークに基づき、気候変動が当社グループの事業に与える影響とリスクと機会の側面を分析し、経営戦略・リスクマネジメントに反映するとともに、その進捗を適切に開示することで、社会の持続的な発展と中長期的な企業価値の向上を目指してまいります。
(1)ガバナンス
取締役会は、TCFDへの対応状況を含め、全社経営に関するマテリアリティを決定してまいります。アグリビジネスを通じた社会課題の解決に向け、サステナビリティへの取組みの推進と、中長期的な企業価値の一層の向上を目指すため、2022年6月に取締役会の下に代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置しました。
サステナビリティ推進委員会は、委員長の指示を受け、気候変動をはじめとしたサステナビリティに係る方針の策定や必要な戦略の立案に加えて、各取組み状況の確認を行います。気候変動による関連リスクや事業機会を取締役会に報告することで、進捗状況に関する監督が適切に図られるように体制を整備しております。
詳細は、当社WEBサイト掲載の「
(2)戦略
当社グループは、サステナビリティ経営を推進するにあたって、気候変動が事業に与えるリスクと機会に関する影響を分析し、企業経営に分析に基づいた適切な対応が反映されることが重要だと考えています。
この考えに基づき、気候関連シナリオは気候変動対策が推進されるシナリオ(2℃未満、1.5℃含む)、対策なしの成り行きであるシナリオ(4℃)の2つの世界を想定し、抽出したリスク(移行リスク、物理リスク)と新たに想定される事業機会の側面に基づいてシナリオ分析を実施中です。
参照しているシナリオ
世界観の定義 |
シナリオ名称 |
2℃未満シナリオ (1.5℃シナリオを含む) |
IEA WEO2022「Net‐Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE)」 IEA WEO2022「Sustainable Development Scenario(SDS)」 IPCC AR6「Shared Socio-economic Pathways(SSP1-2.6)」 |
4℃シナリオ |
IEA WEO2022「Stated Policy Scenario(STEPS)」 IPCC AR6「Shared Socio-economic Pathways(SSP5-8.5)」 |
人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針については、以下の通りとなっております。
①経営理念を軸に多様な人材が揃う
経営理念を軸に多様な人材が揃うグローバルに事業を展開する当社では、グループ社員全体の6割強が外国籍となっており、国籍・性別を問わず多様なスキルを持つ社員が活躍しています。この多様な人材を根幹でつないでいるのが、当社の経営理念「食糧増産技術(アグリテクノロジー)と真心で世界の人々に貢献します。」です。
人材の採用では、当社の経営理念への十分な理解と賛同をいただいた候補者に向けて、入社前から在籍社員との面談や職場見学を実施し、キャリア形成に関する個別説明など、細やかに対応することで当社の社風や魅力を感じていただけるよう努めています。近年は特に、候補者が企業の社会貢献度に注目して就職先を決める傾向が強く、社会貢献を掲げる当社の経営理念に共感した人材が多く入社しています。
全ての社員に持てる能力・価値を最大限発揮してもらうために、社員間のコミュニケーションアップを図り、職場環境の改善や福利厚生の充実にも力を入れ、社員のウェルビーイングを高められるよう努めております。
②人材育成と柔軟な働き方の定着に注力
人材は当社の成長力の源泉であり、人材育成は特に注力しています。2023年には、全管理職を対象に、マネジメントの基本・応用や、重要な社内制度・評価制度等の正しい理解を促す研修を実施しました。管理職が「目標設定・進捗管理・フィードバック」の重要性を再認識することで、社員のキャリア形成、部下の育成、社員間コミュニケーションの活性化へとつなげます。人材の育成と同時に、より柔軟な働き方の定着にも注力しています。国内では、時差勤務や在宅勤務制度に加えて新たにノー残業デーを設置し、慢性的な勤務時間超過の抑制と削減を図っています。特に時差勤務は、これまで以上にメリハリの利いた業務遂行につながっており、時間外労働時間が着実に減少しています。働き方改革の推進と並行して、2023年には業務改善プロジェクトを立ち上げました。重複業務の見直しや改善、データ化、システム化といったDX活用の検討など、会社と個々の社員とが一緒になって、業務パフォーマンスの最大化に向けた改革も推し進めています。
詳細は、当社WEBサイト掲載の「
(3)リスク管理
全社的なリスク管理体制を構築するために定期的にサステナビリティ推進委員会にて当社グループが直面する、あるいは将来発生する可能性のあるリスクを識別・評価を行い、優先順位付けしたうえでリスク対応計画を策定し、その進捗を確認してまいります。
特定された気候関連リスクと同様に新たに想定される事業機会においても、その影響とその対応策を、定期的(年1回以上)に取締役会に報告・提言することで全社的リスクマネジメントにおいても統合されるように体制を整えてまいります。
(具体的なプロセス)
・グループ全体におけるサステナビリティに関するリスクの識別と評価
・審議と必要に応じた再評価の指示、 対応策の再設計
・対応策の決定
・決定された対応策の各部署での展開とその実行
・進捗状況の確認と報告
(4)指標及び目標
当社グループは、温室効果ガスについて「2050年に温室効果ガス排出量をゼロにする」という目標も設定し、カーボンニュートラルの実現を目指しております。
これらの目標達成のため、太陽光パネル導入や製造設備・空調設備の省エネ機器への切り替えに積極的に取り組みます。またSCOPE3データの精度向上、排出量の多いカテゴリ1の削減方法検討など、目標達成に向けて取り組んでいきます。
また、『サステナビリティレポート 2023』の更新版として、2024年3月に当社HP上に『
人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績については、以下の通りとなっております。
①社員のライフプランをサポート
子育て世代の社員に向けては、2022年10月から2023年12月にかけて、3か月に1度の頻度で情報交換会を開催しました。女性の活躍と男性の育児参加は切り離して考える内容ではありません。そこで敢えて世代全体を対象に実施しましたが、育児の情報共有を通じて、業務上交流のなかった社員同士のコミュニケーションの幅が広がり、男性社員の育休取得率も、2023年度は当初目標の20%を大きく上回る33%となりました。また情報交換会を通じて、参加者の多くが将来の資産形成に不安を感じていることが確認できたため、子育て世代向けに資産形成セミナーを開催しました。資産形成は全世代に共通するテーマです。企業年金についても、確定拠出年金制度に関する定期的な研修を継続するだけでなく、社員の希望する商品の取り込みや、公的年金制度についての周知などを通じて、社員の教育機会の拡充と、社員の資産形成意欲の向上を図っていきます。
②社員のウェルビーイング向上を目指して
社員のウェルビーイング向上に向けて、健康経営にも本格的に取り組んでいます。2023年には、加入する健康保険組合から「健康優良企業」の銀賞認定を取得したほか、ストレスチェック実施後にはメンタル面の研修も開催しています。今後は、健康経営優良法人の認定を目標に、健康に関する研修も定期的に実施し、社員の健康増進につなげたいと考えます。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、本項の記載内容は当社株式の投資に関するすべてのリスクを網羅しているものではありません。
当社グループはこれらのリスクの発生可能性を認識した上で発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容も合わせて慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
重要なリスク
(1)農業市場の動向に係るリスク
当社グループの主要な製品である、農薬・肥料の最終消費者は農業従事者となります。このため、農業市場の動向により、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
近年における国内の農業市場は、国内人口の減少、農作物の販売価格の下落や、農業従事者の高齢化・後継者不足により漸減傾向が続いております。今後の国内市場の動向としましても、政府の農業政策の方針によっては、依然として不透明な環境が継続すると予想されます。
政府が公表している計画、戦略の主なものは、以下のとおりであります。
食料・農業・農村基本計画 (2020年3月 農林水産省) |
主な講ずべき施策 ・グローバルマーケットの戦略的な開拓 ・農業担い手の育成 ・農業生産・流通現場のイノベーションの促進 ・環境政策の推進 |
みどりの食料システム戦略 概要 (2021年5月 農林水産省) みどりの食料システム法 (2022年7月 施行) 「みどりの食料システム戦略」に基づく取組の進捗状況 (2023年12月 農林水産省) |
KPIと目標設定(2030年、2050年) ・Co2ゼロエミッション ・低リスク農薬への転換、総合的な病害虫管理体制の確立・普及等を図ることに加え、従来の殺虫剤に代わる新規農薬等の開発により化学農薬の使用量(リスク換算)を50%低減 ・輸入原料や化石燃料を原料とした化学肥料の使用量を30%低減 ・耕地面積に占める有機農業の面積を25%(100万ha)に拡大 |
当社グループは、創業当時の企業理念及び当社の事業に係る政府の農業政策等も考慮し中期経営計画を策定しております。2024年2月に改訂した「新中期経営計画(2024‐2026年)<さらなる成長への積極投資>」においても、基本方針は前年の中期計画を踏襲して、成長ドライバーへの取組みとして「人と環境にやさしいグリーン農薬(グリーンプロダクツ)」「バイオスティミュラント事業」「施設園芸分野での潜在需要の掘り起こし」「グローバル製品展開」、スマート農業への取組みを引き続き行うことにより持続的な成長ができるものと判断しております。しかしながら、政府の農業政策変更等に伴う外部環境の変化、農業後継者不足等に伴う市場縮小などの要因等により、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)法規制によるリスク
当社グループの主な事業は、国内外での農薬・肥料の生産及び販売活動であり、農薬や肥料、登録制度などに関する法令のさまざまな規制を受けております。当社グループでは、社内の管理体制の構築やコンプライアンス推進活動等によりこれらの法令遵守に取り組んでおりますが、今後、これらの法令に違反する行為が行われた場合、もしくは、法令の改正又は新たな法令の制定が行われた場合には、当社グループの経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
法規制による主なリスクは以下になります。
①当社グループが取り扱う製品は、原料調達、製造、輸出、販売、使用の全ての過程において法規制されております。法令改正により、既存の製品や開発中製品の原料調達、製造、販売、使用ができなくなる、輸入販売ができなくなる、また追加の試験研究費が発生する可能性があります。
②当社グループが取り扱う製品の製造場所・保管場所においても法令の制限を受け登録が必要となります。法令改正により製造場所・保管場所の機能に支障が発生する可能性があります。
③海外大手企業の新規市場参入制限の緩和、競合品の市場参入により販売価格が下落する可能性があります。
当該リスクの発生する時期は、法令制定及び改正が施行された時期となり、時期を特定することが困難であります。そのため、当社としては、事業活動においては、関係法令の動向を確認し、最新の法規制を理解して活動する、製品については、研究活動による既存製品の改善・改良、新製品の開発、成長ドライバーへの取組み活動、製造場所及び保管場所については、取引先の代替を確保する活動を行い、当該リスクの軽減化に努めてまいります。
(3)減損会計及び子会社株式評価に関するリスク
当社グループは、事業の拡大に向け積極的に外部の経営資源を獲得してまいりました。そのため多額の固定資産を有しております。
当該リスクは、景気変動、天候変動、世界的災害等が生じたときに発生すると考えており、これらの影響により今後の事業計画との乖離等によって期待されるキャッシュ・フローが生み出されない場合には、固定資産の減損リスクが発生いたします。また、当社が保有する子会社株式の評価基準は原価法によっておりますが、市場価格のない株式については財政状態の悪化等により実質価額が著しく下落した場合、子会社株式の減損処理が必要となり、個別財務諸表の業績に影響を与える可能性があります。
なお、当連結会計年度末の固定資産については、当該リスクが顕在化する可能性や経営成績及び財務状況の影響については、現時点では認識しておりませんが、定期的にモニタリングし監督機能の強化を行い、更に、グループ各社と協力したシナジー効果による業績向上を目指した経営を行ってまいります。
(4)地政学リスクについて
ウクライナ情勢等による地政学的リスクやそれに伴うエネルギー・原材料価格の高騰等が懸念されます。当社は、調達先の検討や原価削減の徹底を図っておりますが、予想以上の急騰や長期にわたって高騰が続くことにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、紅海周辺で起きている船舶への攻撃によって海上輸送の遅れや輸送費高騰等が懸念され、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)為替変動について
当社グループでは、輸出入取引の一部を米ドル、ユーロ、インドルピー建てで行っておりますが、外貨建てによる輸出額と輸入額のバランスを保つように努めております。また、外貨取引において為替変動によるリスクが生じる恐れのある場合には、社内規程に基づいた所定の手続きを行い、為替予約等によるリスク回避を行っております。但し、これにより当該リスクは完全な回避、低減を保証するものではありません。
さらに、当社グループは、海外子会社の財務諸表を連結財務諸表作成のため円貨換算しております。現地通貨建ての項目は、換算時の為替レートにより円貨換算後の価値が影響を受ける可能性があります。
当社グループは、海外連結子会社が多いことから円安基調が連結業績に好影響をもたらします。
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
(1)経営成績
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の法的位置付けが移行されたことに伴い社会活動が通常へと戻りつつある中、インバウンド需要の回復等も見られた一方、堅調な米国経済の影響による大幅な円安の進行や物価上昇による個人消費の停滞等が継続しました。長引くウクライナ情勢に加えイスラエルの武力紛争も勃発し、欧州経済の低迷等も含め、先行き不透明な状況は依然として続いております。
このような経営環境のもと当社グループは『新たなる挑戦に向けて』と題し、2023年2月に「新中期経営計画(2023-2025年)」を公表しております。
経営理念『食糧増産技術(アグリテクノロジー)と真心で世界の人々に貢献します』の実現に向け、当社グループ一丸となって新たなる挑戦へ邁進してまいりました。
また、2023年9月に公表しました通り、中長期的な企業価値や株主利益の向上をはかるべく、東京証券取引所の市場につきスタンダード市場を積極的に選択することとしました。経営理念の実現を通して「育てる喜び」「観る感動」「食べる幸せ」を世界中の人々へ届けることを当社グループの使命と捉えております。
当社グループの提唱する食糧増産技術(アグリテクノロジー)の普及という活動そのものが「環境保全」「資源効率の改善」「飢餓撲滅」といった持続可能な開発目標(SDGs)に資するものと捉え、新たな製品や技術、サービスの開発を通じ、人や環境に優しい持続可能な農業に貢献するために、来期以降も引き続き事業活動を進めてまいります。
以上の事業活動の結果、当連結会計年度の売上高は289億88百万円(前連結会計年度比20億28百万円増加、同7.5%増)、営業利益37億66百万円(前連結会計年度比4億20百万円増加、同12.6%増)、経常利益38億円(前連結会計年度比4億14百万円増加、同12.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益24億88百万円(前連結会計年度比2億26百万円増加、同10.0%増)となりました。
当社グループはアグリテクノ事業の単一セグメントでありますが、各分野の状況は次のとおりであります。
農薬分野においては、国内市場では、当社主力製品の殺虫剤「オンコル」や「オリオン」が好調を維持し、殺ダニ剤「ダニサラバ」や殺菌剤「ガッテン」混合剤の売上も年間を通して堅調に推移しました。当社が注力しているグリーンプロダクツ(注1)各種も殺ダニ剤「サフオイル」や殺虫剤「トモノール」等が堅調に推移し、売上高を伸ばしました。海外市場においては殺ダニ剤「ダニサラバ」が好調で売上を大きく伸ばし、殺菌剤「カリグリーン」も前年の売上高を上回りました。それらの結果、農薬分野全体の売上高は118億85百万円(前連結会計年度比4億91百万円増加、同4.3%増)となりました。
肥料・バイオスティミュラント(注2)分野においては、肥料に関し国内市場では流通過程における過剰在庫の影響により、ハウス肥料や養液栽培用肥料等の販売が前連結会計年度比で減少しましたが、バイオスティミュラント剤「ポテトール」「リダバイタル」「アルガミックス」「フルボディ」が好調に推移し、また、各種肥料の製造販売を行う子会社である旭化学工業も売上高を伸長させました。海外市場におきましては「アトニック」が年間を通じて売上高を伸ばし、東南アジアや中南米へ向け、当社の製品を大きく展開させることができました。オランダの子会社であるBlue Wave Holding B.V.やスペインの子会社であるLIDA Plant Research, S.L.の業績も好調に推移し、「アトニック」の販売を行うインドネシアの子会社であるPT.OAT MITOKU AGRIOも堅調な売上高を維持しました。これらの結果、肥料・バイオスティミュラント分野等全体の売上高は171億3百万円(前連結会計年度比15億37百万円増加、同9.9%増)となりました。
一方、人件費や研究開発費等が昨年比で増加した影響もあり、販売費及び一般管理費は101億80百万円(前連結会計年度比8億66百万円増加、同9.3%増)となりました。
(2)生産、受注及び販売の実績
①生産実績
当連結会計年度の生産実績は以下のとおりであります。なお、当社グループはアグリテクノ事業の単一セグメントであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) (百万円) |
前年同期比(%) |
アグリテクノ事業 |
14,072 |
103.4 |
②商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績は以下のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) (百万円) |
前年同期比(%) |
アグリテクノ事業 |
817 |
67.7 |
③受注実績
当社グループは主として見込み生産を行っているため、記載を省略しております。
④販売実績
当連結会計年度の販売実績は以下のとおりであります。なお、当社グループはアグリテクノ事業の単一セグメントのため分野別に記載しております。
分野別の名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) (百万円) |
前年同期比(%) |
農薬 |
11,885 |
104.3 |
肥料・バイオスティミュラント |
16,930 |
109.8 |
その他 |
172 |
117.8 |
合計 |
28,988 |
107.5 |
(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年1月1日 至 2022年12月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
||
金額 (百万円) |
割合(%) |
金額 (百万円) |
割合(%) |
|
丸善薬品産業株式会社 |
4,852 |
18.0 |
4,943 |
17.1 |
(3)財政状態の分析
① 資産の部
当連結会計年度末の総資産は340億円となり、前連結会計年度末に比べ29億91百万円増加しました。その内訳は、流動資産が26億66百万円増加、固定資産が3億24百万円増加したことによるものであります。
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産は195億86百万円となり、前連結会計年度末に比べ26億66百万円増加しました。その主な要因は、現金及び預金が4億41百万円増加、売掛金が14億97百万円増加、商品及び製品が1億78百万円減少、原材料及び貯蔵品が12百万円減少、仕掛品が5億42百万円増加、その他が3億5百万円増加したことによるものであります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産は144億14百万円となり、前連結会計年度末に比べ3億24百万円増加しました。その主な要因は、機械装置及び運搬具が51百万円増加、リース資産が46百万円増加、ソフトウェアが25百万円増加、のれんが45百万円減少、投資有価証券が93百万円増加したことによるものであります。
② 負債の部
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債は152億33百万円となり、前連結会計年度末に比べ36億15百万円増加しました。その主な要因は、支払手形及び買掛金が7億64百万円減少、短期借入金が40億83百万円増加、その他が3億98百万円増加したことによるものです。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債は38億93百万円となり、前連結会計年度末に比べ35億48百万円減少しました。その主な要因は、長期借入金が35億96百万円減少したことによるものであります。
③ 純資産の部
当連結会計年度末における純資産の部は148億72百万円となり、前連結会計年度末に比べ29億23百万円増加しました。その主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上24億88百万円、剰余金の配当4億75百万円、為替換算調整勘定が13億1百万円増加したことによるものであります。
(4)キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ3億44百万円増加し、当連結会計年度末には37億16百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、獲得した資金は17億89百万円(前連結会計年度は14億16百万円の収入)となりました。これは主として収入面では、税金等調整前当期純利益37億96百万円、減価償却費9億91百万円、のれん償却額6億82百万円等に対して、支出面では、売上債権の増加額14億12百万円、仕入債務の減少額8億95百万円、法人税等の支払額15億74百万円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、支出した資金は5億85百万円(前連結会計年度は5億69百万円の支出)となりました。これは主として支出面では、有形固定資産の取得による支出3億97百万円、無形固定資産の取得による支出1億22百万円、定期預金の預入80百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、支出した資金は10億52百万円(前連結会計年度は10億29百万円の支出)となりました。これは主として、収入面では、短期借入金の純増加額16億14百万円に対して、支出面では、長期借入金の返済による支出13億33百万円、自己株式の取得による支出6億円、配当金の支払額4億74百万円等によるものであります。
(5)資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料及び商品の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、子会社株式の取得によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの借入を基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は128億14百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は37億16百万円となっております。
(6)経営方針、経営戦略等又は目標とする経営指標に照らした分析、検討内容
当社グループの経営方針、経営戦略等又は目標とする経営指標は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
当連結会計年度においては、2022年2月に策定・公表いたしました「新中期経営計画(2022-2024年)」に掲げた企業活動を実践してまいりました。主な活動は以下のとおりであります。
①成長ドライバーへの取組み
・グリーンプロダクツの拡販
国内果樹・柑橘市場への製品拡販活動の結果、製品に対する高評価を受け、販売量が拡大いたしました。
・バイオスティミュラントの拡販
バイオスティミュラント製品のメカニズム解明を行い、解明結果を生産者へ伝え製品拡販活動を実施いたしました。
・グローバル製品展開
殺ダニ剤「ダニサラバ」、殺菌剤「ガッテン」及び「カリグリーン」、肥料製品の販売国を拡大し、輸出量が増加いたしました。
②グローバルシナジーの最大化への取組み
・南米、アジアエリアでグループ会社製品の販売展開を行うため、拡販プロジェクトを立ち上げ、販売展開を開始しております。また、研究開発・生産・購買調達の最適化を図るため、グループ会社間連携協力に取り組んでおります。
以上の結果、当連結会計年度の営業利益は37億66百万円(前連結会計年度比4億20百万円増加、同12.6%増)、売上高営業利益率は13.0%(前連結会計年度比3.6%増)、連結ROEは20.0%(前連結会計年度比3.5%減)となり、2023年2月に策定・公表した「新中期経営計画(2023-2025年)」で目標と定めた2025年の経営指標(営業利益、売上高営業利益率、連結ROE)を当連結会計年度で達成いたしました。
当社グループが主に事業を展開する農業業界においては、国内販売におきましては、農業生産額の減少などにともない市場は縮小傾向にあり、事業環境としてはやや厳しい状況が続くものと考えられます。また、海外販売におきましては、食料の安定供給や作物生産技術の高度化や高品質化など、中長期的には拡大傾向で推移するものと予想しております。
このような中、当社グループは、「新中期経営計画(2024-2026年)」に基づいた重要課題に取組み、2026年12月期には売上高317億円(当連結会計年度比9.4%増)、営業利益38億円(当連結会計年度比0.9%増)、連結ROE13.8%を達成し、持続的成長軌道に乗せるよう目指してまいります。
(7)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表の作成にあたっては、資産・負債及び収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要としますが、これらの見積りには不確実性が伴うため、実際の結果と異なる場合があります。
会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
(のれんの減損)
当社グループは、のれんについて、主として発生日以降5~15年間で均等償却しております。その資産性について子会社の業績や事業計画等を基に検討しており、将来において当初予想していた収益が見込めなくなった場合、減損処理が必要となる可能性があります。
(固定資産の減損)
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。
(棚卸資産の評価)
当社グループは、販売目的で保有する棚卸資産は収益性の低下等により期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。正味売却価額の算定に当たっては、直近の販売価額、市場環境等を勘案しておりますが、これらの前提条件や仮定に変更が生じ、正味売却価額が減少することになった場合には、評価損計上の処理が追加で必要となる可能性があります。
(繰延税金資産)
当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
(1)当社における経営上の重要な契約等 |
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契約会社名 |
契約相手先 |
相手先の 所在地 |
契約期間 |
契約内容 |
当社 |
全国農業協同組合連合会 |
日本 |
2010年10月18日~ 2011年10月17日 (1年毎の自動更新の定めあり) |
全農が取り扱う農薬・資材の売買についての基本契約 |
当社
|
全国農業協同組合連合会 |
日本 |
2010年12月16日~ 2011年12月15日 (1年毎の自動更新の定めあり) |
全農が取り扱う肥料の売買についての基本契約 |
当社 |
大塚化学㈱ |
日本 |
2010年9月28日~ 2040年9月27日 |
当社鳴門事業所敷地の借地にかかる賃貸借契約 |
当社 |
丸善薬品産業㈱ |
日本 |
2020年2月28日~ 2023年2月27日 (1年毎の自動更新の定めあり) |
当社製品の販売における業務提携契約
|
(2)当社連結子会社における経営上の重要な契約等
該当事項はありません。
当社グループにおいては、人や環境に優しい持続可能な農業に貢献するために安全性の高い新規防除資材の開発に取り組んでいます。植物が本来持つ免疫力を高め、耐寒性・耐暑性・病害虫耐性及び成長を促すバイオスティミュラント製品については、スペインのLIDA Plant Research S.L.と共同で新製品の開発及び作用機作の解明に積極的に取り組んでまいりました。市場動向やニーズに基づいた新製品の開発、既存製品の改良を行い、登録国の拡大や適用拡大をすすめております。また、宮崎県新富町に栽培研究センター宮崎農場を開設し、栽培トータルソリューションサービス『アグリオいちごマスター』及び循環型社会の実現を目指したプロバイオポニックス(有機質肥料活用型養液栽培)の実証実験に取り組んでおります。
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は