第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

① グループ長期ビジョン及び中期経営計画

 当社グループは、持続的成長と中長期的な企業価値の向上を目指すため、2030年頃を見据えた長期ビジョン「次世代デベロッパーへ」及び2020~2024年度を対象としたグループ中期経営計画を策定しております。長期ビジョンでは、「社会課題の解決」と「企業としての成長」をより高い次元で両立していくことで、2030年頃に連結事業利益1,200億円を達成するとともに、SDGs達成への貢献を果たすことを掲げております。グループ中期経営計画(2020~2024年度)では、長期ビジョン実現に向けて、以下の「5つの重点戦略」と「ESG経営の高度化」を着実に推進することにより、後記「(2)目標とする経営指標」に示す経営指標に係る目標数値等の達成を目指すこととしております。

 

〈当社グループ長期ビジョン〉

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イ.重点戦略① 「大規模再開発の推進」

環境負荷の低減、自然災害への対策強化、賑わい拠点の創出、豊かなコミュニティの形成及び多様なパートナーとの協働と先進的なテクノロジーの活用による新たな価値の創出等によって、社会課題解決に貢献するまちづくりを実現し、オフィスビルポートフォリオの価値向上を目指します。

・東京駅前の旧本社ビルを含む再開発プロジェクトをはじめとする複数の大規模再開発プロジェクトを推進することで、安定的な賃貸利益の拡大を図ります。

ロ.重点戦略② 「分譲マンション事業の更なる強化」

・競争力の高いマンションの開発機会を継続的に獲得し、社会変化に対応した良質な住まいを提供することで、分譲マンション事業の更なる強化を図ります。

・大規模な再開発や建替えプロジェクトを継続的に展開し、安定的な利益の確保を目指します。

 

ハ.重点戦略③ 「投資家向け物件売却の拡大」

・不動産投資ニーズを捉えた多様なアセットの開発機会の積極的な獲得及び戦略的投資・売却の推進により、継続的な利益成長と資本効率の向上を目指します。

・資本効率の観点から固定資産についても収益性・将来性等を考慮し、ポートフォリオを見直します。

ニ.重点戦略④ 「仲介・ファンド・駐車場事業の強化」

・不動産ストックの増加に着目した仲介事業並びに不動産の有効活用ニーズを捉えた駐車場事業を強化し、グループ関与アセットの拡大を目指します。

・開発・保有物件を当社がスポンサーを務めるREIT等へ売却することで、グループAUMを拡大し、ファンド事業の成長を図ります。

ホ.重点戦略⑤ 「海外事業の成長」

・長期にわたり展開している中国での事業及び他のアジア諸国での開発を継続して推進します。

・現地有力パートナーとの協業を通じて新規の事業機会を獲得することにより、利益の拡大を目指します。

ヘ.「ESG経営の高度化」

・サステナビリティ施策をグループ全社で横断的に推進するため、サステナビリティ委員会等を通じて、ESGに関する重要事項の審議や目標の設定、進捗状況のモニタリング、達成内容の評価等を行うことで、サステナビリティ施策を継続的に展開します。

・ESG格付機関等による評価項目をベンチマークツールとして活用し、ESGインデックスへの組み入れを目指します。

 

② マテリアリティ

  当社グループは、長期ビジョンの達成に向けて、事業を通じて実現する「社会との共有価値」を意識し、バックキャスティングによって取り組むべき重要課題の見直しを行い、「社会価値創出」と「価値創造基盤」の観点から14のマテリアリティ(事業との関連性が高い重要課題)を特定しております。事業を通じてマテリアリティの解決に取り組み、社会との共有価値の創出を実現することで、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 

〈当社グループマテリアリティ〉

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(2)目標とする経営指標

 当社グループは、グループ中期経営計画(2020~2024年度)において、連結営業利益に持分法投資損益を加えた「連結事業利益」を目標とする利益指標として採用し、最終年度である2024年度については「連結事業利益750億円」を目標として掲げております。

 

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 また併せて、2024年度における資本効率の指標として「ROE8~10%」、財務指針として「D/Eレシオ2.4倍程度」、「有利子負債/EBITDA倍率12倍程度」を掲げており、財務健全性の維持と資本効率の向上を図りながら利益目標の達成を目指すとともに、事業ポートフォリオ及び資産構成の最適化に取り組みます。

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(3)経営環境及び対処すべき課題

 今後のわが国経済は、経済社会活動の正常化が一層進み、個人消費の回復やインバウンド需要の拡大などにより、景気の回復基調が継続することが期待されるものの、物価高の影響、賃上げや金利の動向、世界経済の減速リスク等を引き続き注視する必要があり、先行きは不確実性の高い状況が続くものと思われます。

 当不動産業界におきましては、建築費の高騰や金利上昇リスクに対し適切に対処するとともに、アフターコロナを迎え、対面での交流やリアルな体験を求める動きが広がるなか、人々を惹きつける、魅力ある「場の価値」と「体験価値」の創出に取り組むことが求められます。また、コロナ禍を契機に多様化した働き方・住まい方のニーズに応える商品・サービスを提供するとともに、サステナブルなまちづくりの実現に向けて、多角的な取り組みが引き続き必要とされるものと考えます。

 このような状況のもと、当社グループは、グループ中期経営計画(2020〜2024年度)の最終年度を迎え、同計画の着実な達成に向けて、重点戦略である「大規模再開発の推進」、「分譲マンション事業の更なる強化」、「投資家向け物件売却の拡大」、「仲介・ファンド・駐車場事業の強化」、「海外事業の成長」の推進と「ESG経営の高度化」に、総力を挙げて取り組んでまいります。

 そのなかで、長期ビジョンの実現に向けて、当社グループのマテリアリティとして特定した「価値共創とイノベーション」、「ウェルビーイング」、「脱炭素・循環型社会の推進」等に関する取り組みを推進してまいります。具体的には、当社が複数の再開発事業を推進する八重洲・日本橋・京橋エリアにおいて、グローバルスタートアップ企業の集積やコミュニティ形成等を支援する施設を運営することで、スタートアップ企業の創出・成長に貢献するとともに、大手企業やベンチャーキャピタルとの交流を促進するなど、イノベーション・エコシステム(注)1の強化にも取り組んでまいります。このほか、同エリアでは、生産性向上や離職率低下等に寄与する「ウェルビーイングが向上するオフィス」を実現するために、デジタル技術を活用した実証実験を実施するなど、同エリアの「場の価値」と「体験価値」を高める多様な取り組みを今後も進めてまいります。さらに、脱炭素・循環型社会の実現に向けて、ZEHの開発を拡大するとともに、環境省主催の「令和5年度気候変動アクション環境大臣表彰」及び日本不動産学会主催の第29回業績賞「国土交通大臣賞」を受賞した「物流施設と自己託送制度(注)2を活用した持続可能なカーボンニュートラルの取り組み」を推進するなど、様々な取り組みを加速してまいります。なお、喫緊の課題である建築費の高騰については、コストコントロールや施工業者との連携の強化、高い価値訴求力のある魅力的な商品の開発に注力するとともに、引き続き厳選投資を徹底するなど、業績への影響の緩和に努めてまいります。

 当社グループは、2030年頃を見据えた長期ビジョン「次世代デベロッパーへ」のもと、2024年度を最終年度とするグループ中期経営計画の着実な達成を図るとともに、引き続き、事業を通じて「社会課題の解決」と「企業としての成長」をより高い次元で両立することで、すべてのステークホルダーにとっての「いい会社」を目指してまいります。

 

(注)1.ベンチャー企業や大企業、投資家、研究機関など、産学官の様々なプレーヤーが集積・連携することで先端産業の育成や経済成長の好循環を生み出すビジネス環境を、自然環境の生態系になぞらえたもの。

2.自社が持つ発電施設から生み出される電力を、一般送配電事業者が維持・運用する送配電ネットワークを介して、自社の別の場所にある施設等に送電すること。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下の通りであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 当社グループは、2030年頃を見据えた長期ビジョン「次世代デベロッパーへ」において、事業を通じて「社会課題の解決」と「企業としての成長」をより高い次元で両立することを目指すこととし、あわせて「SDGs達成への貢献」を掲げております。その実現に向けて取り組むべき課題として、14のマテリアリティを特定し、グループ中期経営計画に基づく重点戦略の推進と「ESG経営の高度化」等を通じて、マテリアリティの解決につながる様々なサステナビリティの取り組みを推進しております。

 また、サステナビリティの取り組みをグループ全体で横断的かつ継続的に推進するため、「サステナビリティ委員会」を設置のうえ、グループ各社を含むPDCAサイクルを構築、運用することで、サステナビリティの着実な推進と高度化に取り組んでおります。

 

 なお、上記の長期ビジョン、グループ中期経営計画及びマテリアリティの詳細については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(1)経営方針」をご参照ください。

 

(1)ガバナンス

 気候変動をはじめとするサステナビリティの推進体制については、当社社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置し、下部組織としてサステナビリティ推進協議会及び人権分科会を設置しております。

 サステナビリティ委員会は、グループ経営会議、リスクマネジメント委員会、内部統制委員会と並ぶ当社社長直轄の会議体と位置付け、原則として年2回以上開催し、当社グループのサステナビリティに関する方針の策定、体制の整備、指標や目標の設定、進捗状況のモニタリングや評価に関する事項等について審議及び協議しております。サステナビリティ委員会では、気候変動に関して、リスクと機会の特定や温室効果ガス排出の削減目標と対応方針、その取り組み状況等の重要事項について審議及び協議しております。

 サステナビリティ委員会での審議及び協議事項のうち重要な事項は取締役会に付議又は報告され、取締役会は、サステナビリティに関する重要な事項の決定、対応状況のモニタリング等を行い、監督しております。

 サステナビリティ推進協議会では、委員会での決定事項の共有や検討事項の事前協議、当社グループのサステナビリティ推進に関する進捗状況の報告・協議等を行っております。また人権分科会では、人権に関する委員会での決定事項の推進や取り組み状況の報告・協議等を行っております。

 

<サステナビリティ推進体制>

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(2)戦略

① 気候変動への対応

 気候変動への対応はグローバルでの解決が求められる社会課題であり、不動産業界としても、保有不動産や事業活動由来の温室効果ガスの排出削減をはじめとした取り組みが求められております。当社グループでは、気候変動が引き起こす風水害等の自然災害の激甚化は、当社グループの保有資産に大きく影響を及ぼす可能性があると考えており、その観点からも優先的に取り組むべき課題だと認識しております。

 当社は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に賛同しており、シナリオ分析を行い、気候変動リスク及び機会の特定、重要度の評価、並びに当社グループの事業利益に与える影響を検証し、公表しております。

 

(a)シナリオの設定

 シナリオ分析にあたり、将来の世界観(シナリオ)の設定をしております。国際気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や国際エネルギー機関(IEA)が発表したシナリオを用いて、2100年時点で産業革命前の水準と比べて平均気温が4以上上昇する「4シナリオ」、平均気温の上昇を2未満に抑える「2シナリオ」、さらに1.5に抑える「1.5℃シナリオ」を設定しております。

 

(b)リスク・機会の特定/重要度評価

 当社グループの財務に与える影響の大きさを考慮し、主力事業であるビル事業と住宅事業を対象として、建物を開発・保有するエリアや、開発、運営・管理、販売・売却の各事業フェーズの実態を踏まえ、それぞれで想定される気候変動リスク・機会を特定したうえで、影響度と発生可能性から重要度評価を行っております。なお、影響を受ける期間を、短期(1~5年)、中期(5~10年)、長期(10年超)に分けて整理しております。

 

<特定した気候変動リスク・機会及び重要度>

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(c)事業インパクトの試算

 特定した気候変動リスクと機会が当社グループの2030年度の財務に与える影響を定量的に評価しております。

なお、定量的なデータが入手困難なリスク・機会については、定性的な分析を実施しております。

 

<当社グループ事業利益に与える影響>

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(d)対応策

 当社は、マテリアリティとして「脱炭素社会の推進」を特定し、事業を通じて気候変動リスクの最小化に努めるとともに、機会としても捉え、課題解決に取り組んでおります。「脱炭素社会の推進」に関しては、温室効果ガス排出削減の中長期目標を設定し、その達成に向けて、ZEB・ZEH開発、グリーンビルディングの開発、再生可能エネルギーの導入等を行うとともに、気候変動に伴い多発する風水害等の自然災害に強いレジリエンスを意識したまちづくりや不動産の開発にも力を入れております。

 温室効果ガス排出削減の中長期目標として、2021年に、「2050年度CO2排出量ネットゼロ」を掲げ、Scope1・2及びScope3について「2030年度に2019年度対比CO2排出量『40%削減』」を設定いたしました。2023年には、Scope1・2について、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比較して1.5℃に抑える水準である「2030年度に2019年度対比CO2排出量『46.2%削減』」に目標を引き上げ、取り組みを加速しております。また、中長期目標を達成するためのプロセス目標として、「ZEB・ZEHの開発推進」「再生可能エネルギーの導入」「グリーンビルディング認証の取得」に関する目標を設定しております。

 

<温室効果ガス排出削減目標の達成(CO2排出削減)に向けた当社の取り組み>

ⅰ.自社開発物件における再生可能エネルギーの創出・自家消費と自己託送を活用した余剰分の有効活用

 当社が開発する物流施設「T-LOGI」シリーズでは、屋根に太陽光パネルを設置し、発電した再生可能エネルギーを各施設で自家消費しております。また、各施設において意図的に自家消費量を上回る再生可能エネルギーを発電しており、余剰となった再生可能エネルギーを当社が所有する郊外型商業施設やオフィスビルへ送電する「自己託送」を複数のエリアに対して実施することとしております。2023年には、東京都の「八重洲・日本橋・京橋エリア」の都心ビルへの自己託送を開始いたしました。この取り組みを通じて、再生可能エネルギーの地産地消が困難な都心部における脱炭素を推進しております。

 

 

ⅱ.ZEB・ZEH の更なる開発推進

 当社は以前よりZEB・ZEH の開発を積極的に進めております。2023年に、これまで2030年度までとしていた目標年限を撤廃するとともに、賃貸マンションも対象として追加し、原則として新築する全てのオフィスビル、物流施設、分譲マンション、賃貸マンションでZEB・ZEHを開発しております。

 

② 人的資本

 当社は、人材こそが当社グループの価値創造と持続的な成長を実現する源泉であり、経営の最も重要な基盤の一つであると認識しております。長期ビジョン実現に向けて、マテリアリティとして「従業員の成長と働きがいの向上」「ダイバーシティ&インクルージョン」を掲げ、経営の最重要課題の一つとして人的資本の強化に取り組んでおります。「人材価値の最大化」によって企業価値の向上を実現していくため、以下に掲げる通り、人事理念及び人事方針に基づき、人材育成・社内環境整備の取り組みと人材への投資の拡充を積極的に推進しております。

 

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(a)人事理念及び人事方針

ⅰ.人事理念 「会社は社員の貢献に応え、社員の成長を会社の成長につなげる」

 

当社は、会社と社員がともに成長する組織を目指し、人事施策の基本となる「人事理念」を定めております。人事理念に基づき、従業員の活躍・成長を促し、その貢献に応える人事制度や各種施策を策定、運用することにより、従業員が自ら成長を志向し、能力を最大限に発揮して新たな価値創造に挑戦しようとする環境や企業風土の維持・進化に取り組んでいます。

 

ⅱ.人事方針 ・求める人材像 「信頼」される人、「未来」を切り拓く人

       ・社員が成長を実感できる「働きがいのある」職場の実現

 

 当社は、企業理念「信頼を未来へ」のもと、その実践として、求める人材像と職場のあるべき姿を「人事方針」に定めております。この方針に基づき、人材の採用・育成方針や働き方に関する各種人事施策を策定、運用するとともに、職場診断として従業員エンゲージメントサーベイや360度フィードバックサーベイを実施し、職場環境の改善に取り組んでいます。こうした取り組みを通じて、会社として従業員が能力を十分に発揮できる職場環境を整え、従業員一人ひとりが自ら挑戦・活躍を通じて成長を実感するという好循環を生み出し、企業価値の向上につなげることを目指しております。

 

 

(b)人材価値の最大化に向けた人材育成・社内環境整備の取り組み

ⅰ.多様性の発揮

 当社は、多様な人材の活躍を推進し組織力の強化につなげることで、高度化・多様化するお客様ニーズを捉えた商品・サービスの提供や生産性の向上、イノベーション創出を促進し、企業としての成長を実現したいと考えております。かかる考えのもと、「ダイバーシティ&インクルージョン」をマテリアリティとして掲げ、新卒採用とあわせてキャリア採用を積極的に行うとともに、専門性の高い人材やデジタル化・グローバル化を推進できる人材の獲得にも注力しております。また、指標及び目標として女性管理職比率と障がい者雇用率を設定し、目標達成を意識した採用・登用を進めております。さらに、多様な人材が障壁を感じることなく、「働きやすさ」と「働きがい」を感じながら活躍できる環境づくりに向けて、以下の各種制度を整備、運用しております。

・柔軟な働き方を実現するフレックスタイム制度、テレワーク制度、時短勤務制度

・妊娠・出産・育児・介護のための休業制度や退職者再雇用制度

・配偶者の海外転勤に同行して海外で生活する場合に最長3年間の休業を認める制度

・シニア世代のこれまでのキャリアを活かした活躍推進

・障がい者の適性や障がいの状況に応じた柔軟な勤務形態による活躍推進

 

ⅱ.働きがいのある職場の実現

当社は、「従業員の成長と働きがいの向上」に向けて、人材の成長の土壌となる「働きがいのある職場」づくりのため、従業員エンゲージメントサーベイを定期的に実施し、課題を抱える部室店が専門家の支援を得て改善に取り組むPDCAサイクルを実践することで、従業員エンゲージメントの継続的な強化に努めております。また、従業員の働きやすさを高めるために、年次有給休暇取得率と男性の育児休業取得率を指標及び目標に設定し、柔軟な働き方を可能とする各種制度の導入、ICT環境の整備等を行っております。

 

ⅲ.人材の育成

成長ステージに応じた役割の認識や能力開発を目的として階層別に研修体系を整備しており、一人当たりの平均研修時間とキャリア研修受講率を指標及び目標として設定し研修を実施しております。そして、自己啓発支援制度や各種資格取得支援制度、外部派遣型研修等、社員本人が必要な知識や能力について考え、選択する仕組みを整えることにより、社員の「自ら学ぶ」風土の醸成に力を入れております。また、幅広い見識と経験を積むという目的のもと、入社後約10年間で3部署程度の職務を経験する人事ローテーションを行っており、様々な分野で活躍できる人材の育成に取り組んでおります。

 

ⅳ.健康経営

当社グループは、役職員が心身ともに健康で活き活きと働くことができるよう「グループ健康経営宣言」に基づき、グループ役職員一人ひとりの健康維持・増進に向けて様々な施策を実施しており、当社においては健康診断受診率、再検査受診率及び喫煙率を指標及び目標に設定して取り組んでおります。このような当社における健康への取り組みが評価され、2023年3月に、経済産業省が優良な健康経営を実践している法人を顕彰する「健康経営優良法人」の中で「ホワイト500(健康経営調査結果の上位500法人)」に3年連続6回目の認定を受けました。また、WEB歯科問診、スマートフォンアプリを活用したウォークラリーイベントなどを実施し、ICTを活用した研修やイベントを通じてヘルスリテラシーの向上に取り組んでおります。

 

ⅴ.コミュニケーションの活性化

従業員エンゲージメントサーベイにおいて、階層間の意思疎通にやや課題があることがわかりました。近年における急速な従業員数の増加や新型コロナウイルス感染拡大の影響等により、従業員間のコミュニケーションが希薄化したことが主な要因と分析し、その改善に向けて取り組んでおります。経営層と従業員とのランチミーティング、従業員間の懇親会費用の会社負担、従業員の一人ひとりの経験業務を可視化するなど、コミュニケーションのきっかけとなる施策を通じ、社内のコミュニケーションを活性化させ、一体感の醸成に取り組んでおります。

 

 

(3)リスク管理

 当社では、社長を委員長とするリスクマネジメント委員会を設置し、当社グループのリスク管理を統括する体制を構築しております。リスクマネジメント委員会は、リスクマネジメントに関する年次計画の策定、当社グループの経営上重要なリスク(対策優先リスク)の評価及び分析、予防策ならびに対応策の策定を行い、対応状況について定期的にモニタリングしております。対策優先リスク以外のリスクについては、各部室店長や各会議体がリスク対応組織(リスクオーナー)として、その予防及び管理を実施しております。

 サステナビリティに関するリスクについては、サステナビリティ委員会がリスク対応組織(リスクオーナー)として、関係する部室店と連携して予防及び管理を行うとともに、その実施状況のうち重要な事項をリスクマネジメント委員会に報告することとしております。なお、社内規程に基づき、リスクマネジメント委員会における審議事項のうち重要な事項は取締役会に付議又は報告を行っており、サステナビリティに関するリスクを含む当社グループのリスクマネジメントの有効性を取締役会が監督しております。

 なお、リスクマネジメント体制の詳細については、「3 事業等のリスク(1)リスクマネジメント体制」をご参照ください。

 

(4)指標及び目標

① 気候変動への対応

当社は、マテリアリティとして特定した「脱炭素社会の推進」に関する指標及び目標(KPI・目標)を設定し、各年度の状況を定量的にモニタリングしながら、各種施策に取り組んでおります。

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(注)1.Scope3カテゴリー11、13が対象

2.各目標に対する進捗状況の詳細については、東京建物グループサステナビリティレポートをご参照ください。

 

 

 

② 人的資本

当社は、マテリアリティとして特定した「従業員の成長と働きがいの向上」「ダイバーシティ&インクルージョン」に関する指標及び目標(KPI・目標)を設定し、各年度の状況を定量的にモニタリングしながら、各種施策に取り組んでおります。

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(注)各目標に対する進捗状況の詳細については、東京建物グループサステナビリティレポートをご参照ください。

 

 

 

3【事業等のリスク】

 当社グループは、企業価値の安定的な向上に向け、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性のあるリスクを適切に管理するため、関連規程を整備するとともに、リスクマネジメント体制を構築し、継続的なリスクのモニタリング・コントロールを実行しております。


(1)リスクマネジメント体制

 当社は、リスクマネジメントの推進にあたり、「リスク管理規程」に基づき、社長を「リスク管理統括責任者」として定めるとともに、当社グループのリスク管理を統括するため、社長を委員長とする「リスクマネジメント委員会」を設置しております。

 リスクマネジメント委員会では、リスクマネジメントに関する年次計画の策定、当社グループの経営上重要なリスク(対策優先リスク)にかかる評価及び分析、予防策並びに対応策の策定、対応状況の定期的なモニタリングを実施するとともに、その内容を取締役会に対して定期的に付議・報告を行っております。

 また、対策優先リスク以外のリスク(部門管理リスク)については、リスク管理規程に定める「リスク管理責任者」である各部室店長のほか、各会議体がリスク対応組織(リスクオーナー)として、リスクの予防及び管理を適切に実施しております。

 さらに、リスクマネジメント活動にかかる実効性の維持・向上のため、リスクガバナンス(3ラインモデル)体制を構築しており、コーポレート部門及び各事業本部企画部門(第2線)は、各部室店等(第1線)のリスク管理に関して、モニタリング、支援、指導を行い、内部監査室(第3線)は、これらのコーポレート部門及び各事業本部企画部門による各部室店等のリスク管理に対する対応について、監査、助言を行うこととしております。

 

(当社グループリスクマネジメント体制図)

 

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(2)事業等のリスク

 当社グループでは、リスクを「当社グループにおける業務遂行に伴い生じるすべての不確実性」と定義し、当社グループにおけるリスクに関して、影響度(財務損失・人的損失等)、発生可能性、事業環境の変化及び企業の価値観の観点からリスクアセスメントを実施し、リスクマネジメント委員会において、同委員会が直接モニタリングするべき「対策優先リスク」を特定しております。

 対策優先リスクを含む、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のある主なリスクを、以下に記載しております。なお、以下に記載したリスクは当社グループに係る全てのリスクを網羅したものではなく、その他のリスクも存在し、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。

 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報に基づき、当社グループが判断した内容であります。

 

① 不動産開発に関するリスク

 当社グループは、不動産開発事業で想定されるリスクを、主にグループ経営会議において、あらかじめ把握・分析し、対策を講じたうえで事業を推進しておりますが、天候不順、自然災害の発生、許認可の取得の遅延、土壌汚染や埋設物の判明その他の予期し得ない事象等の影響により、事業におけるスケジュールの遅延、コストの増加等が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 物価変動に関するリスク

 当社グループは、各事業における原価の動向を常に把握・分析するなど、収益性への影響を注視しておりますが、大幅かつ急激な物価変動が発生し、コスト上昇分を必ずしも賃料や販売価格に反映することができない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 不動産市況の動向に関するリスク

 当社グループは、国内外の景気動向や不動産市況を常に把握・分析し、経営への影響を注視しておりますが、急速又は大幅な景気や市況の変動により、賃貸オフィス市場における企業業績悪化に伴うオフィスニーズの減退、分譲住宅市場における顧客の購入意欲の低下、不動産投資市場における投資需要の低下等が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 金利の変動に関するリスク

 当社グループは、有利子負債の大部分を長期の借入等とする安定的な資金調達を行うとともに、ほぼ全ての長期借入について金利を固定化し、金利変動による影響を極力少なくするべく対処しておりますが、金利が上昇した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼし、また当社グループ所有資産の価値低下につながる可能性があります。

 

⑤ 保有株式に関するリスク

 当社グループは、取引関係の維持・強化等により、中長期的な企業価値の向上に資すると判断される他社株式を純投資目的以外の株式(政策保有株式)として保有しております。個別の政策保有株式については、「コーポレートガバナンス・コード(原則1-4)」に則り、取締役会へ取引実績等を定期的に報告し、保有意義の適否を検証するなど、縮減に向けて適切に管理しておりますが、株式の市場価格が下落するなど、保有する株式の価値が大幅に下落した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 環境問題・気候変動に関するリスク

 当社グループは、気候変動に伴う政策・法規制の強化や異常気象の頻発・激甚化等は、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があると考えております。そのため、当社社長を委員長とするサステナビリティ委員会における協議を経て「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言」に賛同し、TCFD提言に沿ったシナリオ分析を行うことで、気候変動リスク及び機会の特定、重要度の評価、並びに当社グループの事業利益に与える影響を検証しております。そのうえで、マテリアリティの一つとして特定した「脱炭素社会の推進」に関する目標を設定し、目標の達成に向けた取り組みを推進しております。しかし、今後、気候変動に伴う政策・法規制の更なる強化等が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

⑦ 自然災害・人災等に関するリスク

 当社グループでは、地震、暴風雨、洪水その他の自然災害、戦争、暴動、テロその他の人災が発生した場合に備え、各種規程やマニュアルの整備、定期的な訓練の実施など、有事の際における事業継続のための対策を講じておりますが、自然災害や人災等が発生した場合には、従業員の被災による事業活動への支障や、当社グループが保有、管理、運営する不動産の価値低下等を招く恐れがあり、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ 情報漏洩・セキュリティに関するリスク

 当社グループでは、各事業において個人情報をはじめとする多くの機密情報を取り扱っているため、「情報管理規程」及び「情報システム管理規程」等を整備し、書類・データ等の管理体制を強化するなど、適切な情報管理を行っております。また、情報端末に対するハード・ソフト両面でのセキュリティ強化や情報セキュリティリスクの発現を想定した訓練など、具体的な取り組みを進めるとともに、必要に応じてサイバー保険を付保しております。しかし、サイバー攻撃や当社グループ役職員の不注意等によって外部への情報漏洩が発生した場合、当社グループの社会的信用の失墜、損害賠償の発生等により、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ 法令遵守に関するリスク

 当社グループは、会社法、金融商品取引法、労働基準法、宅地建物取引業法、建築基準法をはじめとする法規制のもとで事業活動を行っております。また、「コンプライアンス憲章」及び「コンプライアンス規程」に基づく法令遵守のための体制を整備し、当社グループとその役職員に対し、定期的な研修をはじめとする教育等を実施しておりますが、当社グループとその役職員が法令等に違反した場合、当社グループの社会的信用の失墜、罰金・罰則等が課されることにより、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩ 法制、税制、政策の制定・改定に関するリスク

 当社グループの事業は、各種法令のほか、各自治体が制定した条例、税制等の規制に影響を受けているため、関係当局、業界団体及び専門家等より、適時情報を収集し適切な対応を図ったうえで事業を推進しておりますが、将来において、関連する法令、条例、税制等が制定・改定等された場合には、新たな義務の発生、費用負担の増加、権利の制限等により、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼし、また当社グループ所有資産の価値低下につながる可能性があります。また、税務申告において税務当局との見解に相違が生じた場合は、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑪ 海外展開におけるカントリーリスク

 当社グループは、グループ中期経営計画の重点戦略「海外事業の成長」に基づき、中国、東南アジア及び米国において事業展開を行っております。海外での事業にあたっては、進出国における政治・経済情勢や法規制等に精通した現地企業との連携等を通じて必要かつ適切な情報収集に努めておりますが、進出国における政治・経済情勢の悪化、法規制の変更、治安の悪化等により、事業の休停止、スケジュールの遅延、コストの増加等が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑫ 感染症に関するリスク

 わが国においては、新型コロナウイルス感染症の再拡大やインフルエンザの流行等により、経済が停滞又は悪化した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。当社グループが海外事業を展開している国(中国、東南アジア及び米国)においても同様の懸念があり、経済が停滞又は悪化した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は以下の通りであります。

 

① 経営成績の状況

 当連結会計年度のわが国経済は、コロナ禍の収束に伴い経済社会活動の正常化が進み、雇用・所得環境の改善と各種政策効果等が相まって、景気は緩やかな回復基調で推移しましたが、ウクライナ情勢の長期化、中東情勢の不安定化、世界経済の下振れリスク、為替変動の影響等が懸念されるなど、先行き不透明な状況が続きました。
 当不動産業界におきましては、賃貸オフィス市場については、空室率は比較的高い水準で推移したものの、オフィスへの出社回帰の動きが広がり、年度後半には一部エリアで空室率が低下に転じました。分譲住宅市場については、新築マンションの供給戸数の減少や分譲価格の上昇が続くなか、低金利の継続や共働き世帯の増加等を背景として、引き続き好調に推移しました。不動産投資市場については、海外投資家の投資需要が、海外における不動産市況悪化や国内の金利の先高観等の影響もあって減退したものの、国内の投資家は依然として投資意欲が旺盛だったことから、総じて堅調に推移しました。

 このような事業環境のもと、当社グループは、2030年頃を見据えた長期ビジョンで掲げる“「社会課題の解決」と「企業としての成長」のより高い次元での両立”に向けて、2020~2024年度を対象期間とするグループ中期経営計画に基づき、5つの重点戦略を推進するとともに「ESG経営の高度化」に注力してまいりました。重点戦略の一つである「大規模再開発の推進」については、八重洲、京橋、渋谷の各エリアの再開発事業において重要な許認可手続等が着実に進捗いたしました。また、「分譲マンション事業の更なる強化」については、当社独自のノウハウと「Brillia」ブランドを活かし、東京23区内最大級の大型団地の一括建替事業「Brillia City 石神井公園 ATLAS」(東京都練馬区)など、社会と顧客ニーズの変化を的確に捉えた良質な住まいの提供に取り組むとともに、新たな再開発・建替案件等の多様な事業機会の創出に注力いたしました。

 「ESG経営の高度化」については、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを加速するため、当社グループの温室効果ガス排出削減の中長期目標を、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比較して1.5℃に抑える水準に引き上げるとともに、人権尊重と環境保全等に配慮した調達をサプライチェーン全体で実現することを目的とする「サステナブル調達基準」について、サプライヤーによる理解・実践を促進するため、新たにガイドラインを策定、開示いたしました。当社グループは、自然との共生を目指した取り組みを継続的に進めており、竣工以来10年にわたり都心での自然環境の再生に取り組んできた「大手町の森」を擁する「大手町タワー」(東京都千代田区)は、環境省により、生物多様性の保全が図られている区域として「自然共生サイト」(注)に認定されました。また、当事業年度に一部開園した東京都初のPark-PFI事業「都立明治公園」(東京都新宿区)では、民間事業者の代表として、都民の皆様とともに時間をかけて育てる杜づくりをコンセプトとする樹林地など、豊かな自然環境とにぎわい機能が融合した、「東京」という都市の“レガシー”となる公園づくりを進めております。当社グループのESG経営に対する外部評価は年々高まっており、当事業年度はESG投資の主要指数である「FTSE4Good Index Series」、「FTSE Blossom Japan Index」の構成銘柄に選定され、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が採用する国内株式を対象とした全てのESG指数の構成銘柄となりました。

 このほか、「事業ポートフォリオの最適化」の取り組みとして、保育施設関連事業と人材派遣事業をそれぞれ担う2つの子会社の全株式を譲渡するとともに、ファンド事業の強化のため、㈱東京リアルティ・インベストメント・マネジメントを完全子会社化するなど、長期ビジョンの実現とグループ中期経営計画の達成に向けて、様々な取り組みを推進してまいりました。

(注)2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標(30by30目標)の達成に向けた主要施策として、2023年度から環境省が実施するもの

 

 当連結会計年度におきましては、ビル賃貸及び駐車場事業が堅調に推移するとともに、ビル事業、住宅事業及びアセットサービス事業における投資家向け物件売却による売上が前年度比で増加いたしました。この結果、営業収益は3,759億4千6百万円(前期3,499億4千万円、前期比7.4%増)、営業利益は705億8百万円(前期644億7千8百万円、前期比9.4%増)となりました。また、海外事業において持分法による投資利益が増加したこと等により、事業利益は744億2千8百万円(前期663億4百万円、前期比12.3%増)、経常利益は694億7千1百万円(前期635億3千1百万円、前期比9.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は450億8千4百万円(前期430億6千2百万円、前期比4.7%増)となりました。

 なお、当社グループは営業利益に持分法による投資損益を加えた「事業利益」を利益指標として設定しております。

 各セグメントの業績は以下の通りであります。

 

イ.ビル事業

 大規模再開発プロジェクトについては、「東京駅前八重洲一丁目東地区第一種市街地再開発事業(A地区・B地区)」(東京都中央区)においてA地区の権利変換計画が認可され、「渋谷二丁目西地区第一種市街地再開発事業」(東京都渋谷区)においては市街地再開発組合の設立が認可されるなど、重要な許認可手続等が着実に進捗いたしました。また、投資家向け売却用物件については、物流施設「T-LOGI 一宮」(愛知県一宮市)など4物件を竣工させたほか、中規模オフィスビル「T-PLUS」シリーズ、ホテル、商業施設等、多様なアセットの開発を積極的に推進いたしました。
 当連結会計年度におきましては、投資家向け物件売却として「T-LOGI習志野Ⅱ」(千葉県習志野市)、「T-LOGI本庄児玉」(埼玉県児玉郡)等を収益に計上した一方、ビル賃貸における費用が前年度比で増加いたしました。この結果、営業収益は1,552億5千6百万円(前期1,451億5千5百万円、前期比7.0%増)、営業利益は384億8千3百万円(前期409億1千万円、前期比5.9%減)、事業利益は401億5千3百万円(前期412億4百万円、前期比2.5%減)となりました。

 

 

区分

前連結会計年度

当連結会計年度

数量等

営業収益

(百万円)

数量等

営業収益

(百万円)

ビル賃貸

建物賃貸面積

947,514㎡

76,735

建物賃貸面積

1,040,870㎡

78,275

(うち転貸面積

81,095㎡)

(うち転貸面積

67,227㎡)

不動産売上

2件

29,812

8件

38,643

管理受託等

38,607

38,337

営業収益計

145,155

155,256

営業利益

40,910

38,483

事業利益

41,204

40,153

 

ロ.住宅事業

 分譲マンションについては、住宅・商業・工場・病院等を配した多彩な都市機能を維持・更新する街づくりである市街地再開発事業「SHIROKANE The SKY」(東京都港区)や東京23区最大級の大型団地の一括建替事業「Brillia City 石神井公園 ATLAS」(東京都練馬区)を収益に計上するとともに、関西初のマンション敷地売却制度活用事例である「みのおサンプラザ1号館敷地売却事業」(大阪府箕面市)など、多様な事業手法で新たなプロジェクトの開発を推進いたしました。また、投資家向け売却用物件については、賃貸マンション「Brillia ist」の開発を積極的に推進し、「Brillia ist 蔵前 Residence」(東京都台東区)など2物件を竣工させました。

 当連結会計年度におきましては、分譲マンションとして上記の収益計上物件のほか「Brillia 練馬春日町」(東京都練馬区)等を、投資家向け物件売却として「Blan Canvas 六甲道」(神戸市灘区)等を収益に計上いたしました。この結果、営業収益は1,341億4千万円(前期1,313億9千万円、前期比2.1%増)、営業利益は271億5千5百万円(前期233億4百万円、前期比16.5%増)、事業利益は271億4千9百万円(前期233億4百万円、前期比16.5%増)となりました。

 

 

区分

前連結会計年度

当連結会計年度

数量等

営業収益

(百万円)

数量等

営業収益

(百万円)

住宅分譲

 

1,435戸

85,958

 

1,058戸

84,029

不動産売上

17,500

20,664

住宅賃貸

建物賃貸面積

125,085㎡

5,309

建物賃貸面積

117,973㎡

5,948

マンション管理受託

管理戸数

98,006戸

13,743

管理戸数

99,083戸

14,321

その他

8,879

9,176

営業収益計

131,390

134,140

営業利益

23,304

27,155

事業利益

23,304

27,149

 

 

ハ.アセットサービス事業

 東京建物不動産販売㈱が展開する仲介事業については、法人のお客様との関係強化や投資家との取引拡大等により、更なる収益力の向上を図りました。また、同社によるアセットソリューション事業については、仲介事業との連携や既存の取引先への営業強化等により、販売用不動産の取得・売却が順調に進捗したほか、新たな取り組みとして、不動産小口化商品の組成・販売を行いました。日本パーキング㈱が展開する駐車場事業については、更なる収益向上のため新規施設の獲得に努めるとともに、顧客サービス向上に向けて駐車場システムの高機能化等に取り組みました。

 当連結会計年度におきましては、駐車場事業において既存施設の稼働率の回復及び新規開業による車室数の増加が進むとともに、アセットソリューション事業において投資家向け物件売却による売上が前年度比で大幅に増加いたしました。この結果、営業収益は638億円(前期502億4千万円、前期比27.0%増)、営業利益及び事業利益は129億7百万円(前期73億9千9百万円、前期比74.4%増)となりました。

 

 

区分

前連結会計年度

当連結会計年度

数量等

営業収益

(百万円)

数量等

営業収益

(百万円)

仲介

1,086件

4,626

1,097件

5,499

アセットソリューション(注)

19,084

29,999

賃貸管理等

4,554

4,567

駐車場運営

車室数

80,057室

21,975

車室数

82,542室

23,734

営業収益計

50,240

63,800

営業利益

7,399

12,907

事業利益

7,399

12,907

(注)取得した不動産の付加価値を向上させて再販する買取再販業務を主に行っております。

 

ニ.その他事業

 クオリティライフ事業については、東京建物リゾート㈱が展開する愛犬同伴型リゾートホテル「レジーナリゾート」及びゴルフ場において、引き続き、通年で高い稼働率を維持するとともに、コロナ禍による影響が長期化していた温浴施設においても、来館者数、売上ともに回復いたしました。また、事業ポートフォリオの最適化に向けた取り組みとして、保育施設関連事業と人材派遣事業をそれぞれ担う2つの子会社の全株式を譲渡いたしました。海外事業については、タイにおいて中規模オフィスビルの開発事業「スクンヴィット25プロジェクト」(バンコク都)に参画し、米国のワシントンD.C.近郊においては賃貸住宅の開発事業「ハーンドンプロジェクト」(バージニア州)に参画いたしました。
 当連結会計年度におきましては、クオリティライフ事業において2つの子会社の全株式を譲渡した影響等により収益が前年度比で減少した一方、海外事業において持分法による投資利益が前年度比で増加いたしました。この結果、営業収益は227億4千8百万円(前期231億5千4百万円、前期比1.8%減)、営業利益は22億4百万円(前期25億1千8百万円、前期比12.5%減)、事業利益は44億6千万円(前期40億5千万円、前期比10.1%増)となりました。

 

 

区分

前連結会計年度

当連結会計年度

営業収益

(百万円)

営業収益

(百万円)

クオリティライフ事業

18,541

18,582

その他

4,612

4,166

営業収益計

23,154

22,748

営業利益

2,518

2,204

事業利益

4,050

4,460

 

② 財政状態の状況

(資産)

 当連結会計年度末における資産合計は1兆9,053億9百万円となり、前連結会計年度末比で1,851億7千5百万円の増加となりました。これは、販売用不動産(仕掛販売用、開発用不動産含む)、現金及び預金、有形固定資産及び投資有価証券の増加があったこと等によるものであります。

(負債)

 当連結会計年度末における負債合計は1兆3,972億7千4百万円となり、前連結会計年度末比で1,339億7千7百万円の増加となりました。これは、有利子負債の増加があったこと等によるものであります。なお、有利子負債残高(リース債務除く。)は1兆890億6百万円となり、前連結会計年度末比で992億7百万円の増加となりました。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は5,080億3千5百万円となり、前連結会計年度末比で511億9千7百万円の増加となりました。これは、利益剰余金及びその他有価証券評価差額金の増加があったこと等によるものであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、営業活動により205億8千8百万円増加、投資活動により540億6千9百万円減少、財務活動により779億8百万円増加したこと等により、前連結会計年度末比で448億6千4百万円増加し、1,273億3百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は以下の通りであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動による資金の増加は、205億8千8百万円(前期比239億2千1百万円増加)となりました。これは主に、棚卸資産の増加による資金の減少があった一方で、税金等調整前当期純利益及び減価償却費による資金の増加があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、540億6千9百万円(前期比328億6千4百万円減少)となりました。これは主に、固定資産の取得及び貸付けによる資金の減少があったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動による資金の増加は、779億8百万円(前期比594億8千7百万円増加)となりました。これは主に、長期借入れによる資金の増加があったことによるものであります。
 

④ 生産、受注及び販売の実績

 生産、受注及び販売の実績については、「① 経営成績の状況」における各セグメント業績に関連付けて示しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下の通りであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、2020年度に策定したグループ中期経営計画(2020~2024年度)において、最終年度である2024年度の利益目標として、連結事業利益750億円を掲げております。また、D/Eレシオ2.4倍程度、有利子負債/EBITDA倍率12倍程度を目標達成に向けた財務指針として設定しております。

 なお、当連結会計年度における達成状況は次の通りであります。

 

 

2023年12月期 実績

連結事業利益

744億円

D/Eレシオ

2.2倍

有利子負債/EBITDA倍率

10.9倍

 

② 経営成績の分析

 当連結会計年度における当社グループの連結業績については、ビル賃貸及び駐車場事業が堅調に推移するとともに、ビル事業、住宅事業及びアセットサービス事業における投資家向け物件売却による売上が前年度比で増加いたしました。この結果、営業収益は3,759億4千6百万円(前期3,499億4千万円、前期比7.4%増)、営業利益は705億8百万円(前期644億7千8百万円、前期比9.4%増)となりました。また、海外事業において持分法による投資利益が増加したこと等により、事業利益は744億2千8百万円(前期663億4百万円、前期比12.3%増)、経常利益は694億7千1百万円(前期635億3千1百万円、前期比9.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は450億8千4百万円(前期430億6千2百万円、前期比4.7%増)となりました。

 各セグメントの業績概要については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載の通りであります。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの資金需要は主に不動産の取得・開発資金であり、これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、金融機関からの借入や社債発行等により資金調達を行っております。また、当社及び主要な連結子会社は、キャッシュマネジメントシステム(CMS)を導入することにより、各社の余剰資金を当社へ集約し、一元管理を行うことで、資金の効率化を図っております。

 なお、資本の財源及び資金の流動性についての分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に、財政状態の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に記載の通りであります。

 

④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載の通りであります。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

 

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 

 該当事項はありません。