文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、中期方針として「ICTの発展をお客様価値向上へ結びつけるイノベーション企業グループ」を目指し、付加価値向上を実現してまいります。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、2024年2月14日に公表いたしました「中期経営計画 2028」におきまして、売上高、
営業利益、当期純利益、ROE、1人当たり営業キャッシュ・フローを経営目標として設定しております。
また、当社単体においては最重要KPIとして「社員1人当たり営業利益額」を設定しております。
具体的な目標数値につきましては、2024年2月14日に公表いたしました「中期経営計画 2028(※)」をご参照下さい。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、2024年度から2028年度までの5ヵ年を確実な成長と革新とさらなる飛躍への礎作り、革新と発展の5年と位置づけ、中期経営計画を策定し公表しております。これは、富士ソフトグループが、企業価値向上と将来ビジョンである「IT×OT分野のシステム/ソフト&サービスを提供するリーディングカンパニー」となりお客様と社会に貢献することを目指し、売上成長を行いつつも、収益力をより強化させる方針で計画を策定したものです。詳細は、2024年2月14日に公表いたしました「中期経営計画 2028」をご参照下さい。
※ URL https://www.fsi.co.jp/ir/management/tyukei.html
(4) 会社の対処すべき課題
今後の日本経済は、新型コロナウイルス感染症からの経済活動の正常化を背景に、企業収益や個人消費活動が回復する等、経済活動は活性化しつつあります。しかしながら、欧米を中心とした金融引き締めによる影響や中国経済の先行き懸念、国内では原材料・エネルギー価格の高止まりと円安に伴う物価上昇等、経済に与える影響を引き続き注視する必要があります。
情報サービス産業におきましては、多岐にわたる業種で事業拡大や競争力強化、人手不足を背景とした生産性向上・業務効率化を目的としたシステム投資の意欲は根強く、DX(デジタルトランスフォーメーション)化の潮流に対応するための戦略的なシステム投資需要は拡大基調が続いております。当社グループが今後も持続的な成長と付加価値向上を実現するためには、このような、マーケットの変化や日々進化する技術革新への柔軟な対応、加えて、新規事業への挑戦と創造が必要と認識しております。
以上のような事業環境や課題を踏まえ、当社は、「デジタル技術でIT・OTの両面からDXをリードし、お客様と社会の価値向上とイノベーションに貢献」を経営方針に掲げ、2024年度から2028年度までの5ヵ年を対象とした中期経営計画に従い、環境・時代の変化に機動的に対応し、今後も持続的な成長と付加価値向上の実現を目指して、以下の取り組みを進めてまいります。
更なる成長と収益力の強化
受託分野の成長
加速度的に発展するICT環境に対応するため、人的資源を整備し、教育、研究開発や実践の場を通して人財育成とノウハウ蓄積を行うとともに、様々な開発手法や環境面における改良等を行い、生産性や品質の強化を図り、より付加価値の高いサービスを提案・提供できるようお客様対応体制を強化してまいります。併せて、国内外の様々なソリューションベンダーやパートナーとの連携も行い、より競争力のあるソリューション構築やサービス提供を行い、お客様への提供価値を向上することで、お客様の競争力強化に貢献してまいります。
収益性の向上
当社の「1人当たり営業利益額」は、同業他社に比べ低い水準であると認識しております。これは、人財レベルの向上に伴うシステム開発ケイパビリティ改善を経済的価値に転化しきれていない、当社のビジネス構造の問題が大きく影響しております。クロスビジネスの強化や一括請負型案件の拡大などのビジネスモデルの進化に加えて、従来から取り組んできたお客様提供価値の向上やパートナー政策の強化、生産性向上等の施策についてもより強力に取り組んでまいります。
また、新たな開発手法や先進技術の利用拡大に伴い、これまでとは異なったシステムトラブルの発生も予見されます。従来型のトラブルの抑制とともに、新たなタイプのプロジェクトへの対応についての様々なトラブル抑制手法を確立していきます。
業務改革とDX推進を活用した販売管理費の抑制
当社自身のDXや業務改革を強力に進め、販売管理費の抑制を進めるとともに、技術・ノウハウを蓄積し、新たなビジネススキームの確立や従来ビジネスの革新をしていくことで、当社グループの競争力を強化するとともに、お客様への提供価値を向上してまいります。
プロダクト・サービス分野の成長
これまで、様々な自社サービスやプロダクトを提供してまいりましたが、既存のプロダクト・サービスの強化販売促進に加え、新たなプロダクト・サービスの開発にも積極的に取り組んでまいります。併せて、競争力のある他社との連携も強化し、お客様への適切なプロダクト・サービスの提供とお客様接点の拡大を進めてまいります。
より付加価値の高い新規事業への挑戦
今後も持続的な成長と付加価値向上を続けるためには、既存事業に加え、新規事業の確立が重要な課題であると認識しており、新たなプロダクト・サービスやお客様との協働モデル作り、新たなアライアンスビジネス、積極的なM&A等、新たなビジネス分野や新規事業にも挑戦していきます。
技術力強化
様々な事業で成長するには、あらゆる分野に対応する高い技術力が求められ、その技術力を維持することが必要です。また、生成AIを始めとする技術変化のスピードは加速度的に増しており、技術革新に対応していく必要もあります。当社グループでは、いち早く市場環境の変化や最新の技術動向を認識し、技術者のスキルアップや新技術の習得等を支援するため、様々な教育研修の機会を整備してまいります。さらに、DXや5G等の先端技術に加えて、上流コンサルティングやサービスデザイン等、幅広く強化を進め、当社の重点技術分野であるAIS-CRMを含めた更なる強化を図ってまいります。
グループシナジーの強化
グループ会社とのシナジー効果を最大化するために、グループシナジーを推進する組織を設置しており、グループ全体の事業の強化に取り組みます。事業の強化と融合分野・新分野の創出に加えて、知財・研究結果の共有、営業効率の向上等でお客様への提供価値向上を目指してまいります。
グローバル展開の強化
今後も持続的な成長と付加価値向上を続けるためには、グローバル化についても重要な課題と認識しており、グループ子会社を含めてグローバルに展開しております。海外子会社や現地企業と連携し、販売、サービス等の体制を拡大させ、更なる成長を図ってまいります。
経営基盤の強化
人財強化
人財力は、お客様へ提供する価値のベースであり、当社グループの競争力を決定づける最も重要な経営資源と考えております。今後も、積極的な採用活動と合わせて様々な教育・研修・学びの機会による多様な人財の育成を強化するとともに、社員の処遇の改善や多様な働き方を支える環境・制度の構築にも努めてまいります。
コーポレート・ガバナンスの強化
当社グループの持続的な成長と企業価値の向上を実現するためには、コーポレート・ガバナンス体制の強化が重要であると認識しております。当社グループは、的確かつ迅速な意思決定及び業務執行体制とそれを適切に監督・監視する体制の構築を図っております。経営の健全性や透明性を確保する観点から、今後も必要に応じたコーポレート・ガバナンス体制の強化を図ってまいります。
サステナビリティ経営の推進
当社グループは、サステナビリティ活動方針となる当社の基本方針“もっと社会に役立つ もっとお客様に喜んでいただける もっと地球に優しい企業グループ そして「ゆとりとやりがい」” および中期方針“ICTの発展をお客様価値向上へ結びつけるイノベーション企業グループ” に基づき、社会と企業の持続可能な発展に貢献できるよう取り組んでおります。この取り組みをさらに強化し、事業を通じて社会問題の解決に寄与しながら、持続可能な成長を実現してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理
当社では、代表取締役社長執行役員を議長とする「サステナビリティ会議」とサステナビリティの責任者である担当役員を議長とする「サステナビリティ推進委員会」を設置し、中長期的な企業価値向上と結び付けた全社的な活動として、気候変動問題や人権問題を含むサステナビリティ課題に取り組んでいます。サステナビリティ推進委員会にて課題抽出・検討のうえ、サステナビリティ会議の審議を経て、四半期ごとに取締役会で決議・報告が行われ、取締役会による監督・助言体制を整えています。
②リスク管理
当社では、サステナビリティに関するリスクおよび機会について、「サステナビリティ推進委員会」が識別・評価を行い、「リスク・コンプライアンス委員会」と連携して全社的なリスク管理に統合しています。
「リスク・コンプライアンス委員会」は、四半期ごとに開催され、平常時および緊急時の行動基準を規程に定め、各部門の事業から生じるさまざまなリスクに関して運用状況をモニタリングしており、サステナビリティ関連リスクとその他リスクの相対的な評価を行うことで、自社の重要リスクを選定し、対応を検討しています。また、本委員会の活動は経営会議・取締役会に報告されており、経営循環に取り込まれています。
(2)重要なサステナビリティ項目
上記、ガバナンス及びリスク管理を通して今回特定した当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は以下のとおりであります。
・気候変動対応
・人的資本
それぞれの項目に係る当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
①気候変動対応
Ⅰ.戦略
気候関連のリスクと機会、およびその財務影響について、以下のシナリオを元に、2030年および2050年時点を想定し定性・定量の両面からシナリオ分析を実施しております。
リスクとしては、時代の潮流に対応できなかった場合の炭素税によるコストや、不十分な技術投資による顧客離れが想定されたものの、事業活動に甚大な影響を及ぼすものは想定されませんでした。一方、機会としては、脱炭素化や省エネ化を目指したDX需要の拡大に伴い、自社事業拡大や売上機会の増加が想定され、中期経営計画との整合も確認できました。
引き続き、自社の脱炭素化・レジリエンス性を高めるだけでなく、デジタル技術を通じて、環境・時代に沿ったプロダクトを展開してまいります。
気候変動影響によるシナリオ分析の結果は、当社コーポレートサイト「TCFDに関する取り組み」をご確認ください。
https://www.fsi.co.jp/csr/tcfd.html
Ⅱ.指標と目標
当社は、自社事業活動に伴う温室効果ガス(GHG)排出量を指標とし、2013年度比2030年に実質50%削減、2050年に実質100%削減を目指しております。(※対象は富士ソフト単体のScope1,2)
なお、今後は連結子会社を含むグループ会社への算定範囲拡大や、Scope3算定を視野に検討を進めてまいります。
当社事業における温室効果ガス(GHG)排出量は、当社コーポレートサイト「TCFDに関する取り組み」をご確認ください。
https://www.fsi.co.jp/csr/tcfd.html
②人的資本
当社は「挑戦と創造」を社是に持続的な成長と企業価値向上を目指すため、「企業は人なり」の精神のもと“人(社員)”という当社最大の財産に対するポリシーを定めています。 人財の価値がそのまま企業価値に直結すると理解しているからこそ、学歴や経験にこだわらず、人を大切にし、チャレンジする人を支援することで、社員のパフォーマンスが十分発揮できるよう取り組んでいます。
I.マネジメント、技術をそれぞれ極めていく認定制度
当社には、エンジニア一人ひとりが柔軟なキャリアパスが描ける認定制度があります。プロジェクトマネージャー(PM)、スペシャリスト(SP)それぞれに認定制度があり、スキルレベルを明確化することでスキルアップへのモチベーションを高め、高付加価値ビジネスに対応できる人財育成を加速しています。
Ⅱ.多様な人財が活躍できる職場環境へ
多様な人財を広く受け入れ、社員が安心して、いきいきと自分らしく働ける職場づくりを目指し、人種・宗教・性別、性的指向・性自認などの人格・個性を尊重し、活躍できる場を提供しています。
Ⅲ.障がいのある人が活躍できる仕組み
当社は、特例子会社の「富士ソフト企画株式会社」を通じて、積極的な障がい者雇用を推進し、障がいのある人がいきいきと活躍できる企業を目指しています。同社は、「自立と貢献」「生涯働ける会社」を経営理念とし、社員の9割が障がい者手帳を持ち、その約半数に精神障がいがあります。精神・身体・知的・発達などの障がいのある社員同士が互いに協力し合い、パソコンを活用した業務を中心に行っています。また、長年にわたる障がい者雇用のノウハウを活かし、2014年から就労移行支援事業として「就職予備校(神奈川県鎌倉市)」を開始し、障がい者の自立・就労支援に取り組むとともに、障がい者職業委託訓練を行っています。現在、これらの訓練を受けた障がい者が様々な会社で活躍しています。2020年12月24日には、もにす認定制度において神奈川県初の障害者雇用に取り組む優良事業主として認定されました。
2023年現在、社員階層別研修やJOBコーチの相互活用・JOBサポート窓口を設置し社員が安定して働ける会社の仕組みづくりに取り組んでいます。先進の特例子会社として障がい者が働くその働き方を社会に発信し、さらに障がい者が活躍できる社会を実現すべく障がい当事者の社員が中心となり日々邁進しています。
Ⅳ.働き方改革・支援の先進的な取り組み
基本方針に掲げる「ゆとりとやりがい」の実現に向け、社員の柔軟な働き方をバックアップする「コアタイム」なしのフレックスタイム制度を基本の働き方としています。社員の事情に応じた多様な働き方を推進するなかで、在宅勤務の環境を整備し、テレワークを推進してきました。さらに、短縮勤務制度、裁量労働制度を導入しており、社員が様々な制度を活用し、個々のライフスタイルに合わせた多様な働き方ができるよう支援しています。また、生産性向上を意識し、残業時間削減やフレキシブルに取得できる有休制度などの働き方改革を行い、仕事と生活の調和を目指して、社員一人ひとりが元気に働ける職場環境の実現に取り組んでいます。
Ⅴ.健康経営への取り組み
<健康経営方針>
当社は「企業は人なり」の基本理念に則り、社員およびその家族が心身ともに健康で、安心安全に働ける環境づくりに取り組む健康経営を推進します。2014年から健康管理センターを設置して健康管理体制を整え、グループ各社の健康管理業務を集約、サービスレベルを統一して疾病予防や健康増進に取り組んでいます。
Ⅵ.社員満足度
当社は、基本方針にある“ゆとりとやりがい”の改善対策を図ることを目的に「社員満足度調査」を年1回実施しており、社内外の変化に伴う、社員満足度を把握し、課題をとらえ、対策を検討し実行するというサイクルを回すことで、常に職場の環境改善に努めています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。当社グループでは、「リスク」を「会社の業務遂行または事業継続に直接または間接的に影響を与える可能性のある不確実な要素」と定義しております。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
〔体制〕
当社グループは、事業活動に関わるあらゆるリスクを的確に把握し、経営への影響を低減していくために、「リスクマネジメント規程」を定めるとともに、リスクに適切に対応できる体制の整備を図るために「リスク・コンプライアンス委員会」を設置しております。リスク・コンプライアンス委員会は、リスクマネジメント規程にもとづき、具体的なリスクの特定・分析・評価を行い、その対応方針を定め、定期的に取締役会への報告を行っております。
〔個別のリスク〕
(1) マーケット環境及び技術動向について
当社グループが属する情報サービス業界は、国内外の企業間の激しい競争により急速なスピードで技術革新が進んでおります。マーケット環境の変化等によりお客様の投資ニーズが急激に変化する可能性、価格競争の激化や当社グループが保有する技術・ノウハウ等が陳腐化する可能性があります。これらの技術革新やお客様のニーズ等のマーケット環境の変化に対し適切に対応できなかった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、お客様における投資の時期や規模は、経済動向、金利・為替動向等に影響を受けるため、当社グループの業績も影響を受ける可能性があります。
また、当社グループは多数の事業ポートフォリオを有するとともに、マーケット環境の変化をビジネスチャンスと捉え、新製品の開発・販売を実施する等、マーケット環境の変化に対して柔軟な対応が可能であるものの、急激な環境等の変化により、多数の事業分野における需要が大きく減退した場合には、技術者の継続雇用による収益の圧迫や、人財が流出することでその後の回復が遅れることにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、当社グループは技術革新のスピードに対処するために、技術者に対する教育研修や現場における実践教育を通じて基礎技術力を鍛え上げた上で、常に先端技術や新しい領域へ幅広いチャレンジを行いながら技術力を高め、お客様のニーズに対して的確に対応しております。
(2) 人財の確保及び労務関連について
当社グループは、事業の推進にあたり、人的資源に依存するビジネスを展開しており、当社グループの継続的な成長のためには、お客様へ専門的で高付加価値な技術を提供する優秀な人財の確保・育成が重要な課題であると認識しております。特に日本国内においては少子高齢化に伴う労働人口の減少等もあり、人財を獲得するための競争は厳しく、優秀な人財の確保・育成が想定どおりに進まない場合や、賃金水準が上昇し人件費が増加した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、ハラスメントや長時間労働等の労務コンプライアンス違反が生じた場合、生産性低下に止まらず、人財の流出、訴訟や社会的信用の低下等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、積極的な採用活動に加え、働き方改革やダイバーシティを実現するために、様々な教育・研修・学びの機会による多様な人財の育成を強化するとともに、社員の処遇の改善や全社横断で女性活躍を推進する「Lキャリア推進室」の設置を始めとした、多様な働き方を支える環境・制度の構築に努めております。労務コンプライアンス違反に対しては、防止するための教育・啓蒙活動を研修等を通じて実施しており、また、内部通報制度により、早期に発見し適切に対処する仕組みを構築し、労務関連リスク低減に取り組んでおります。
(3) 受託ソフトウェア等の開発について
当社グループは、お客様の要求事項に基づき受託ソフトウェアの設計・開発、製造等を行っており、それらの品質管理や納期管理を徹底しお客様に対する品質保証を行うと共に、お客様サービスの満足度向上に努めております。しかしながら、受託ソフトウェア等の開発が高度化・複雑化する中、当社グループの提供するサービス等において、品質上や納期遅延のトラブルが発生する可能性があり、トラブル対応による追加コストの発生や損害賠償等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、当社グループでは、1995年6月にISO9001の認証を取得し、品質マニュアル及び品質目標を設定することにより、品質管理の徹底を図っております。加えて、システム開発に際しては、当社とお客様の責任範囲を明確にした上で、引合い・見積り・受注段階からのプロジェクト管理の徹底、専門部門によるチェックや案件進捗管理等、プロジェクトマネジメント力の強化に努め、不採算案件の発生防止に努めております。
(4) ビジネスパートナーへの業務委託について
当社グループは、受託ソフトウェア等の開発にあたり、生産能力の確保、生産効率化、技術支援等のためにオフショア・ニアショアの活用を含め国内外のビジネスパートナーに業務の一部を委託しております。情報サービス業界においては特定の技術に需要が偏る傾向があり、今後、需給バランスから十分なビジネスパートナーの確保ができなかった場合や、獲得競争の激化によりコストが大幅に増加した場合等には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、当社グループでは、ビジネスパートナーとの定期的なコミュニケーション等による状況の把握や関係強化を図り、国内外で最適なビジネスパートナーの確保に努めております。
(5) プロダクト・サービスについて
当社グループは、自社プロダクト及び他社プロダクトの提供をしております。自社プロダクトについては、マーケットニーズを考慮した投資及び販売計画を作成しておりますが、マーケットニーズの変化や急速な技術革新等により製品の陳腐化が進み、想定どおりの販売が困難になった場合には、当該プロダクトに係る追加の減価償却費や減損損失が生じることとなります。
また、自社プロダクトについて品質管理を徹底し、他社プロダクトについても製品の性質を踏まえた契約や適切な形式での提供に努めておりますが、バグや製品の欠陥による交換対応等が発生した場合には追加コストの発生や損害賠償責任を負う可能性があることに加え、他社製品に組み込まれる場合においては、想定外の多額の損害賠償請求を受ける可能性があります。
一方で、知的財産権については、他者の権利侵害に注意したうえで、その取得及び保護を進めております。しかしながら、当社グループが認識しない他者の知的財産権を侵害した場合には、損害賠償請求や当該知的財産権の対価等を請求されることがあり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 調達先に関するリスク
当社グループが取り扱っている他社プロダクトや受託ソフトウェア開発で必要なグローバルベンダー製品は、その多くを開発元から直接仕入れておりますが、仕入先が限定されており、その依存度が高いと考えております。また、主要な仕入先との販売代理店契約は原則として、非独占かつ短期間で更新するものとなっており、他の有力な販売代理店が指定される場合や、仕入先自身が直営を開始する場合、または、販売代理店契約が更新されない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。なお、買収等による仕入先の経営権の変化等により、契約の見直しを求められる可能性があります。
(7) アウトソーシング業務の請負について
当社グループは、データセンター設備を使用したアウトソーシングサービスやクラウドサービス等を行っております。当サービスを安定供給するためには、システムの安定的な稼動、システム障害が発生した場合には適切な対応策を講じることが不可欠であり、データセンター設備の整備や安定的な運用体制の構築、あるいは、突発的なシステム障害に対応できる組織作りに努めております。
しかしながら、運用上の作業手順が守られない等の人的ミスや機器・設備の故障等の予期せぬ事象により、お客様と合意した一定水準以上のサービス提供が実現できなかった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。そのため、継続的な運用品質の改善を行うとともに、障害発生状況の確認・早期検知、障害削減や障害予防に向けた対策の整備・強化に努めています。
また、データセンター事業では、安定的に運用するために、電源設備・空調設備等の設備更新等、継続的に多額の設備投資が必要となります。設備の稼働能力に対し稼働が低水準で推移し、収益性が低下した場合には、当該データセンターに係る減損損失が生じ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。さらに、データセンターでは大量の電力を必要しており、電力料金が高騰する状況において、お客様への転嫁等の対応が取れない場合、電力調達に追加的費用が生じ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8) ファシリティ事業について
当社グループは、賃借した場合のランニングコストと自社保有の場合の初期費用及び運用コストとで長期間の現在価値の比較を行う等、多面的な評価を行った上で、各地に自社利用オフィスとして不動産を所有しております。自社利用オフィスは、コア事業である受託ソフトウェア等の開発スペースとして利活用しておりますが、その時々のビジネス環境、中長期の展望や物件のテナントニーズ等を総合的に勘案して、不動産利用の最適化を図っており、一時的に自社利用の必要性が無くなったビルや一部フロアをファシリティ事業として賃貸しております。これらの資産は、テレワークの増加等を背景としたテナント及び貸会議室需要の減退による事業収入の圧迫や、不動産市況の変動による大幅な地価の下落等が起こる場合、当該不動産に係る減損損失が生じることとなり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 投資活動について
当社グループは、企業価値を向上させ継続的に事業を成長させる上で、技術の獲得やアライアンスが有効な手段となる場合、必要に応じて国内外での企業買収や子会社の設立、ベンチャー企業への投資等を実施しております。
また、生産能力向上等のためオフィス建設等の設備投資を実施しております。これらの投資の実施に当たっては、事前に収益性や回収可能性について調査・検討を行っておりますが、投資後の市場環境や競争環境に著しい変化があった場合や、投資先の事業が当初に計画した通りの成果を得られない場合、投資の一部又は全部が損失となる、あるいは、追加資金拠出が必要となる等、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 資金調達について
当社グループは、事業活動に必要な資金を金融機関からの借入やコマーシャル・ペーパーの発行等により調達しております。
しかしながら、将来、当社の信用格付けの引下げに伴う信用力の低下や大幅な金利変動等が生じた場合、当社グループの資金調達に支障が生じる可能性や、資金調達コストが増加する可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 収益認識に関するリスク
当社グループは、受注制作ソフトウェア開発に係る収益の計上基準について、進捗部分について成果の確実性が認められる契約の場合は工事進行基準を適用しており、原価比例法にて算出した進捗率により売上高を計上しております。工事進行基準は受注総額及び総製造原価の見積りに大きく依存しており、契約及び見積りの管理や計画管理の正確性が求められております。受注総額及び総製造原価の見積りについて、実績との乖離が発生した場合は見直しを行い収益計上の精度を確保しておりますが、適切な対応が遅れた場合には当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。総製造原価の見積りについては、精度を高める取組みや独立した管理部門が、第三者的な視点から見積り精度を評価する等の体制を構築し運用しております。
当社グループは、企業価値を継続的に高めていくために、業務執行の適正性及び健全性の確保が重要であると認識しております。そのためには、コーポレート・ガバナンスが有効に機能するよう、内部統制システムの適切な構築及び運用を実施しております。しかしながら、このような施策を講じても役員、従業員による不正行為は完全には回避できない可能性があります。また、経営環境の急激な変化や新たな事業の拡大等により、内部管理体制の整備が行き届かず想定外の不正行為等が発生した場合には、適切な業務運営が困難となり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、お客様企業情報及び社内外の個人情報を取り扱っており、「個人情報保護法」や「マイナンバー法」等に沿った対応を整備する等、法令を遵守した運用に努めております。それらの機密情報を適切に管理し安全性を確保することが企業に課せられた社会的責務であると認識しております。
サイバー攻撃は日々高度化、巧妙化しており、サイバーセキュリティリスクは重要な経営課題となっております。そのため、当社グループでは、サイバー攻撃対策及びネットワーク管理等の情報保護に関する社内基準の策定と遵守、合理的な技術的セキュリティ対策の実施、情報管理に関する社内教育の徹底及び外部委託先との機密保持契約の締結に加え、当社プロダクト製品においても情報漏洩を未然に防ぐ様々な技術対策を講じております。また、当社ではCSIRT(※1)・SOC(※2)を設置し、サイバーセキュリティに関する脅威の監視や分析、対応能力の強化を行っております。
このような対策にもかかわらず、予期せぬ事象により情報漏洩等が発生した場合には、お客様からの損害賠償責任の発生や、当社グループに対する信用の低下により、受託ソフトウェア開発業務の継続にも支障が生じる場合がある他、今後の法令改正等によっては、当社プロダクト製品に新たな技術対策が必要になり、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、重複する経営資源の効率化や意思決定の迅速化等、グループ会社とのシナジー効果の最大化を目的とし、子会社4社の完全子会社化を実施しております。しかしながら、期待した効果を十分に発揮できない場合や、展開するサービスの連携の不調等の問題の発生により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、海外の商品を取り扱うと共に、欧米・アジアの各国において開発・生産・販売拠点の設立、企業買収や資本提携等を通じてグローバルに事業展開しております。現地での予期せぬ特殊事情、政治体制の変更、為替相場の急激な変化、テロ行為、伝染病等の想定外の事象があった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。そのため、これらの国や地域における商習慣・法的規制の相違等については、事前調査や専門家等を通じて対策を実施しております。
また、海外子会社への人材派遣や専門組織を通じて、海外子会社への適切な指導・監査を行いガバナンス強化の取り組みを進めております。
(16) 自然災害等について
当社グループは、地震等の大災害や感染症の大流行等に備え、グループ各社の危機管理情報の集約体制構築や、国内事業の情報システムの分散等の施策に加え、在宅勤務制度の導入、全社員にタブレットを配布、オンラインによる人材の確保や育成等の環境整備を進めております。
しかしながら、大災害の発生等により営業活動の停止、当社グループの施設等の損壊や閉鎖、交通・通信・物流といった社会インフラの混乱、お客さまやビジネスパートナーの被害状況等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、感染症の大流行により、マーケット環境の大幅な悪化や人材確保に問題が生じた場合、生産体制や品質管理等の問題が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(17) 気候変動について
世界各国で、気候変動の要因とされる温室効果ガス削減への取り組みが進められております。気候変動に対する政策及び法規制が強化され炭素価格制度(排出権取引制度や炭素税)が導入され、温室効果ガス排出量に応じたコストが発生した場合や、再生可能エネルギーの需要変動によりエネルギーコストが著しく高騰した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
一方、気候変動に関する政策及び法規制の強化により、脱炭素化や省エネ化を目指したDX需要の拡大に伴い、ビジネス機会が増大すると想定しております。引き続き、自社の脱炭素化・レジリエンス性を高めるだけでなく、デジタル技術を通じて、環境・時代に沿った取り組みを展開してまいります。
※1 CSIRT(Computer Security Incident Response Team):サイバーセキュリティ関連のインシデントが起こった場合に対応する専
門組織で、専門組織による早期の問題解決、サイバー攻撃による被害の範囲や深刻度の判断、セキュリティトピックの提供を行う
※2 SOC(Security Operation Center):情報システムへの脅威の監視や分析等を行う専門組織
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度における日本経済は、コロナ禍からの経済活動の正常化を背景に、企業収益や個人消費に改善がみられ、景気回復の動きが続きました。一方、欧米を中心としたインフレと金融引き締めによる影響や中国経済の先行き懸念、国内では原材料・エネルギー価格の高止まりと円安に伴う物価上昇が消費に影響を及ぼし、国内外の景気の先行きは不透明な状況が続いております。
情報サービス産業におきましては、多岐にわたる業種で事業拡大や競争力強化を目的としたシステム投資の意欲は根強く、DX(デジタルトランスフォーメーション)化の潮流に対応するための戦略的なシステム投資需要は拡大基調が続いております。
また、ChatGPTを始めとする生成AIモデルの1つである大規模言語モデル(LLM)が注目され、コミュニケーションや情報収集を飛躍的に簡便化・低コスト化するモデルやツールの登場が期待されるとともに、様々な分野でのイノベーションが期待されています。
このような状況の下、当社グループは、2024年12月期までの3カ年の中期経営計画における持続的な成長と付加価値向上の実現に取り組み、掲げていた営業利益やROE等の経営目標について1年前倒しで達成いたしました。それを受けて、当社グループの今後の成長の道筋について検討を重ね、次の5カ年に向けた「中期経営計画2028」を策定いたしました。
また、当社は、2022年に企業価値向上委員会を立ち上げ、企業価値向上への取り組みを公表しております(※)
主な企業価値向上への取り組み
① 子会社上場の見直し
富士ソフトグループ全体でのダイナミックな運営、グループシナジーを最大化するため、上場子会社4社の
完全子会社化を実施
② 不動産事業の見直し
不動産事業を縮小し、保有不動産について流動化を決定し、流動化プロセスを実施中
③ キャピタルアロケーション方針の策定
更なる成長投資と資本効率の改善を図り、5ヵ年のアロケーション方針を策定
④ 経営目標の設定
最重要KPIとして、単体での「1人当たり営業利益額300万円以上」を目標に設定し、資本効率等の向上を目
指す
⑤ ガバナンス体制の見直し
よりガバナンスを強化するための体制強化
事業の状況としましては、システム構築分野の業務系システム開発におきましては、DX推進の流れを受け、業務効率と生産性向上等を達成するために必要不可欠である仮想化やクラウド化を、グローバルベンダーの技術も活用して実現するシステムインフラ構築分野、老朽化や事業基盤強化に対応する基幹システムの再構築、消費者の生活様式に大きく浸透したことで活況なEC分野、今後さらなる拡大が見込まれるデジタル金融分野等、これまでに培った豊富なノウハウと技術力をもとに、好調に推移いたしました。
また、当社は長年、知能化技術・AIに取り組んでおります。これまでに培った豊富なノウハウと技術力をもとに、昨今、対策の重要性が高まっているサイバーセキュリティ分野でも事業を拡大してまいりました。さらに、ChatGPTについてもいち早くサービス検証を開始し、効率的・効果的な活用方法の研究を進めてまいりました。ここでの成果につきましては、社内業務の変革やシステム開発プロセスの開発支援としてお客様へ提供予定です。
組込/制御系システム開発におきましては、機械制御分野では、社会のデジタル化を背景に半導体製造装置関連分野が好調に推移するとともに、大手メーカーのデジタル家電機器関連分野への投資も継続され、堅調に推移いたしました。また、自動車のEVシフトが加速する中で、EV部品の増産に向けた工作機械への設備投資等が見込まれ、これに対応するための積極的な営業活動を展開してまいりました。
自動車分野では、引き続き、国際的なカーボンニュートラルの実現に向けたEV化や、進化する自動運転等のCASE分野への投資活発化を背景に好調に推移いたしました。さらに、自動車の進化をソフトウェアが担う、ソフトウェア・ディファインド・ビークル(SDV)等の新領域での投資拡大もあり、積極的な受注戦略の推進に取り組んでまいりました。
プロダクト・サービス分野におきましては、グローバルベンダーと連携したライセンスビジネス等で、販売が好調に推移いたしました。また、モバイルルーターについては、新型コロナウイルス感染症に対する規制緩和等によりインバウンドが徐々に戻り、レンタル需要が高まり好調に推移いたしました。
今後も、お客様のニーズに合致したより質の高い製品の提供を行うとともに、社会変化に柔軟に対応した新たなプロダクト製品の開発・販売を進め、事業の強化・拡大を目指してまいります。
当社グループは、「もっと社会に役立つ。もっとお客様に喜んでいただける。もっと地球に優しい企業グループ。そして「ゆとりとやりがい」」を基本方針として、社会と協調しながら、事業活動及び様々な社会貢献活動を通じて持続可能な地球と社会の発展に貢献しております。
CSR(企業の社会的責任)活動としましては、特例子会社の富士ソフト企画株式会社では、SDGsのコンセプトに共感し、「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現に向け、障がい者の就労拡大に向けた就労移行支援活動や、ICT技術を生かした新しい農業としてのしいたけ栽培に引き続き取り組んでおります。
また、ロボット競技大会「全日本ロボット相撲大会2023」を開催する等、ロボット相撲を通して研究意欲の向上と創造性発揮の場を提供し「ものづくり」の楽しさを広め、ロボットテクノロジーの向上を図る活動を推進してまいりました。
当社は持続的な成長と企業価値向上を進めるなかで、様々な企業活動を通して、社会の発展に貢献することを重要な使命としてきました。当社の基本方針は、ESG(環境、社会、ガバナンス)の概念を包含しているものであり、より一層事業を発展させるとともに、社会的責任も果たしていく所存です。
このような活動により、当連結会計年度の業績につきましては、SI事業が好調に推移し、売上高は2,988億55百万円(前年同期比7.2%増)となりました。また、販売費及び一般管理費は465億52百万円(前年同期比7.5%増)になり、営業利益は206億84百万円(前年同期比13.2%増)、上場子会社4社の公開買付けに係る費用等の増加により、経常利益は196億75百万円(前年同期比2.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は118億49百万円(前年同期比4.1%増)となりました。
(※)当社の企業価値向上への取り組み
https://www.fsi.co.jp/ir/management/kigyoukachi.html
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
① SI(システムインテグレーション)事業
SI事業における、組込系/制御系ソフトウェアにおきましては、モバイル系および社会インフラ系は減少したものの、自動車関連においてEV・先進分野、機械制御系において産業分野向け開発案件が好調に推移し、増収・増益となりました。業務系ソフトウェアにおきましては、製造業・金融業を中心に各分野向けのインフラ構築・基幹系開発案件等が好調に推移し増収となり、営業利益は、増収および生産性の改善などにより増益となりました。プロダクト・サービスにおきましては、他社ライセンス販売および、自社プロダクト販売が堅調に推移し、増収・増益となりました。アウトソーシングにおきましては、海外小売業向けITサービスの減少等により減収となり、営業利益は、減収およびデータセンターにおける電力価格高騰の影響により減益となりました。
以上の結果、売上高は2,824億18百万円(前年同期比7.3%増)となり、営業利益は189億4百万円(前年同期比12.7%増)となりました。
※SI事業の主な売上高及び営業利益の内訳については、次のとおりであります。
(単位:百万円)
(注) 営業利益については、セグメント間取引消去0百万円が含まれております。
② ファシリティ事業
ファシリティ事業におきましては、テナントの増加等により、売上高は29億6百万円(前年同期比9.5%増)となり、営業利益は10億10百万円(前年同期比23.9%増)となりました。
③ その他
その他におきましては、コールセンターサービス及びBPOサービスともに前年度に開始した年金関連業務が大きく寄与したことにより、売上高は135億30百万円(前年同期比4.2%増)となり、営業利益は7億68百万円(前年同期比12.6%増)となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 金額は、製造原価により算出しております。
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、100分の10に満たないため、記載を省略しております。
当連結会計年度末における総資産は2,575億96百万円(前連結会計年度末差167億61百万円増)となりました。その内訳は、流動資産が1,231億53百万円(前連結会計年度末差104億22百万円増)、固定資産が1,344億43百万円(前連結会計年度末差63億38百万円増)であります。
流動資産の主な変動要因は、受取手形、売掛金及び契約資産が626億96百万円(前連結会計年度末差60億61百万円増)、現金及び預金が353億24百万円(前連結会計年度末差25億88百万円増)、前渡金が34億61百円(前連結会計年度末差7億56百万円増)、仕掛品が44億78百万円(前連結会計年度末差7億14百万円増)、前払費用が65億47百万円(前連結会計年度末差6億57百万円増)、有価証券が81億円(前連結会計年度末差4億円減)によるものです。
固定資産の主な変動要因は、建物及び構築物が317億7百万円(前連結会計年度末差40億99百万円増)、投資有価証券が89億86百万円(前連結会計年度末差12億93百万円増)、建設仮勘定が142億73百万円(前連結会計年度末差12億94百万円増)によるものです。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
① SI事業
SI事業におきましては、好調な受注環境により売掛金が増加したこと及び建設中の汐留ビル、新福岡ビル等により、セグメント資産は2,491億53百万円(前連結会計年度末差160億26百万円増)となりました。
② ファシリティ事業
ファシリティ事業におきましては、建物等の減価償却により、セグメント資産は2億38百万円(前連結会計年度末差60百万円増)となりました。
③ その他
その他におきましては、増収に伴う売掛金の増加等により、セグメント資産は82億5百万円(前連結会計年度末差6億74百万円増)となりました。
当連結会計年度末における負債総額は1,286億74百万円(前連結会計年度末差405億83百万円増)となりました。その内訳は、流動負債が1,127億40百万円(前連結会計年度末差407億94百万円増)、固定負債が159億34百万円(前連結会計年度末差2億10百万円減)であります。
流動負債の主な変動要因は、短期借入金、コマーシャル・ペーパー及び1年内返済予定の長期借入金が515億4百万円(前連結会計年度末差336億48百万円増)、賞与引当金が117億39百万円(前連結会計年度末差42億69百万円増)、未払法人税等が57億89百万円(前連結会計年度末差29億60百万円増)によるものです。
固定負債の主な変動要因は、長期借入金が85億24百万円(前連結会計年度末差2億59百万円減)によるものです。
当連結会計年度末における純資産は1,289億21百万円(前連結会計年度末差238億22百万円減)となりました。
この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の55.7%から48.1%となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)の残高は、347億85百万円で前連結会計年度末に比べ16億98百万円増加しました。
営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における営業活動による資金の増加は161億51百万円となりました。
これは、増収・増益に伴う入金額の増加によるもので、税金等調整前当期純利益204億39百万円、業績評価期間の変更に伴う未払人件費の増減額43億68百万円により増加し、法人税等の支払額46億42百万円により減少しました。
投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は92億9百万円となりました。
これは、有形・無形固定資産の取得による支出111億20百万円、有価証券の取得による支出84億円、定期預金の預入による支出39億28百万円により減少し、定期預金の払戻による収入57億54百万円により増加しました。
財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における財務活動による資金の減少は54億47百万円となりました。
これは、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出342億20百万円、借入による収支293億86百万円によるものです。
資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、人件費及び外注費のほか、オフィスの賃借に伴う地代家賃等の営業費用であります。当社グループは、事業運営上適切な手元流動性と資金需要に応じた調達手段を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は、自己資金に加えて、金融機関からの短期借入及びコマーシャル・ペーパーによる調達を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。当社は、㈱日本格付研究所から信用格付を取得しており、当連結会計年度末現在、当社の発行体格付は、A-(長期)、J-1(短期)となっております。なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は600億34百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は347億85百万円となっております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されています。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者は会計方針の選択・適用、また、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としています。これらの見積りについては過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成において使用される当社グループの重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
(履行義務の充足に係る進捗度に基づき一定の期間にわたり認識する収益)
当社グループは、請負契約など成果物の引渡し義務を伴う受注制作ソフトウェア開発において、契約における取引開始日から完全に履行義務を充足すると見込まれる時点までの期間がごく短い場合を除き、履行義務の充足に係る進捗度に基づき、一定の期間にわたり収益を認識しております。履行義務の進捗度の見積りは総製造原価の見積りに対する当連結会計年度末までに発生した製造原価の割合によって算出しております。
履行義務の充足に係る進捗度に基づき一定の期間にわたり認識する収益の計上にあたっては、履行義務の充足に係る進捗度について、受注総額及び総製造原価の見積りに大きく依存しており、契約及び見積りの管理や計画管理の正確性が求められております。受注総額及び総製造原価の見積りについて、実績との乖離が発生した場合は見直しを行い収益計上の精度を確保しておりますが、適切な対応が遅れた場合には当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(工事損失引当金)
当社グループは、受注制作ソフトウェア開発に係る将来の損失に備えるため、当連結会計年度末における受注制作ソフトウェア開発のうち、損失の発生が見込まれ、かつ、その金額を合理的に見積もることができる契約について、損失見込額を計上しております。損失見込額については、見積りの合理性及びプロジェクト進捗報告による開発進捗・原価発生状況のモニタリング、完成後の品質確認等のプロジェクト管理体制を整備しており、見込額計上の精度を確保しております。しかしながら、想定できなかった原価の発生等により、当初の見積りを超える原価が発生する場合には当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(固定資産の減損)
当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、各社ごとに資産のグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについては、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することになります。固定資産の回収可能価額については、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に基づき算出しているため、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、固定資産の減損を実施し、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
(繰延税金資産)
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の評価に際して、将来の課税所得を合理的に見積もっております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存しますので、その見積額が減少した場合、繰延税金資産は減額され税金費用が計上される可能性があります。
② 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、当連結会計年度までは、売上高成長率、営業利益率及び安定配当を重要な経営目標と位置づけしております。なお、翌連結会計年度においての経営目標は「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 目標とする経営指標」をご参照ください。
売上高におきましては、当連結会計年度は2,988億55百万円となり、売上高成長率は7.2%となりました。主な要因としては、SI事業における業務系では製造業・金融業を中心に各分野向けのインフラ構築・基幹系開発案件等が好調に推移し、組込系では自動車関連のEV・先進分野および、機械制御系の産業分野向け開発案件等が好調に推移したことであります。
営業利益におきましては、当連結会計年度は206億84百万円となり、営業利益率は6.9%となりました。主な要因としては、処遇改善・体制強化による人件費等の増加および、AIなどの新技術に関する調査研究費の増加はあるものの、増収および生産性が改善したことであります。
また配当については、当連結会計年度の年間1株当たり配当額は102.5円(※)となりました。
今後も当社グループの企業価値向上に努めてまいります。
※当社は、2023年7月1日を効力発生日として普通株式1株につき2株の割合で株式分割を実施
しております。2023年12月期の1株当たり配当金については当該株式分割前の1株当たり中間
配当額68円と、当該株式分割後の1株当たり期末配当額34円50銭(株式分割前換算69円)を合
算した金額となっております。
該当事項はありません。
当社グループにおける研究開発活動は、主に連結財務諸表を作成する当社が行っております。
また、当社における研究開発活動はSI事業に係るものであり、その活動状況は次のとおりであります。
当社の研究開発につきましては、技術管理統括部、ミライクリエーションラボプロジェクトをはじめとする各研究開発部門において、最新の技術動向を調査・研究すると共に、実践レベルでの各種検証を行っております。
なお、当連結会計年度末の研究開発に従事する人員数は、108名であります。
当連結会計年度において当社グループが支出した研究開発費の総額は、
①DX
・ UiPathTestSuiteと既存テスト手法(TestCafeでの自動テスト、および手動テスト)との比較検証による効果測定
製造業向けの開発案件において、機能増加や高機能化に伴いテスト工数増加やデグレードリスクが高まっているため、RPA技術を用いて自動テストを実現できる「UiPath Test Suite」を用いて、有効性の検証を実施いたしました。検証の観点としては、「1.OSSの自動テストツールとUiPath Test Suiteでのテストシナリオ作成の生産性比較検証」、及び「2.手動でのテスト実施とUiPath Test Suiteを用いたテスト実施との比較検証」としております。
1.の検証結果としては、ツールを用いたテストシナリオの作成効率の観点では17%の改善効果が得られました。
また、UiPath Test SuiteはRPAツールの特色から幅広いアプリケーションに対応しており、これまでWebUIを中心としていた自動化対象を組込開発で使用される各種ツールにまで拡大可能なことが判明いたしました。
2.の検証結果としては、自動化したテストを安定稼働させるために必要な手法や、想定通りに稼働しなかったテストの原因特定にコード解析やWebUIの知見が必要であり、開発知見の有無でシナリオの作成効率に大きな差異が発生することが分かりました。このことから、自動化コストの改修には8~30回程度のテスト実施が必要となることが判明いたしました。
今後は本研究開発活動を通じて得られたことを活かし、テスト自動化環境の構築からテストシナリオの作成、実行までを富士ソフトが行う事で、UiPath Test Suiteによるテスト自動化を一括で対応するサービスの検討を進めてまいります。
・ Web3/NFT/メタバースに関する調査研究
2022年7月より開始した、「Web3/NFT/メタバースワーキンググループ」において検討した結果、日々進化している同ビジネス環境については、ネットや書籍から得られる情報だけでの検討では不足しており、実際の環境やオープンマーケット上での活動を行うことにより、より実ビジネスに即した最新の情報獲得やネットや書籍からは得る事の出来ない、ビジネス上の課題や技術要素を発見し解決する事ができるとの結論となり、実環境を行った調査研究の実施を行うこととし、目的達成のため、以下2テーマの調査研究を同時に実施いたしました。
・テーマ①:実際に社内で触れる環境、コンテンツをクローズド環境で構築。技術調査、応用利用を調査・研
究する。
・テーマ②:オープンマーケット上に実ビジネス環境同等の環境を構築。技術要素調査、周辺システム、企業法
務の課題を調査・研究する。
テーマ①の調査研究の結果としては、目標とするクローズド環境にて、NFTを動作させるシステム構築および、コンテンツとなるFUJIPOINTの構築を完了、また、構築における技術要素及び課題事項についての洗い出しが完了いたしました。
テーマ②の調査研究の結果としては、目標とするオープンマーケット上にてNFTシステムの構築を完了、実際に仮想通貨を流通させ、ビジネスに必要な条件構築が完了いたしました。
・ 「人材育成プラットフォーム」に関する調査研究
2022年7月より、全社教育市場戦略検討・推進WGを立ち上げ、教育市場において「今後当社が注力すべき分野の検討」等を検討して参りました。検討の結果、市場成長率が高く今後拡大が見込まれる社会人教育市場を対象に、当社の技術者育成ノウハウを活かし、社会人が日々意欲的に学習しスキル習得/向上を実現する「人材育成プラットフォーム」を立案し、社会人の技術者育成プロセスの確立や課題点を抽出するため、社内実証による研究を実施することとしました。
社内実証の実施に向け、2023年3月より教育プログラムや実証フィールド等を検討し、参加者募集の準備を開始、2023年4月からは社内実証フェーズ1を開始し、3つのテーマ(AI/EC/セキュリティ)について社内で実証参加者を募り、個別学習とワークショップを中心とした協働学習による育成プロセスを検証いたしました。
フェーズ1では、意欲的に学習する資質を持つ人材の発掘プロセスや育成プロセスにおけるワークショップの有用性を確認、2023年11月から開始したフェーズ2では、フェーズ1の実績/課題を踏まえ、有効性を確認した「探求/協働学習」の割合を拡大したカリキュラムに変更し、意欲的に学習する資質を持つ人材の候補者を発掘するAI等、運営面の効率化や、学習者の理解度・スキル向上を図るためのAI・ツールのプロトタイプを開発し、効果検証を実施しております。
②AI
・ AI技術に関する調査研究
大型GPUサーバーを導入し、開発者に提供することで早期提案の実現や開発の生産性を向上する取り組みを行っております。この取り組みの実現により、お客様のサービス提供スピードの向上とともに高付加価値の実現への貢献を果たしております。医療分野においては引き続き大学病院と共同研究を実施しており、他の部位や異なる症状についての共同研究を進めております。デジタルツインを実現するシミュレータの研究においては、ビジネスへの転用を図っており、多くの引き合いを頂いております。大規模自然言語モデル(LLM)においては、全社員に利用できる環境を公開するとともに、カスタマイズの手法や様々なLLMの評価などを経てソリューション化の一助となる調査、研究活動を実施しております。ロボット分野においてはROSを利用したロボット、AMR等を低予算で少量多品種の生産現場へ適用すべく研究を進めております。
今後も市場の動向や研究で発表される新たな技術の調査・検証を進めると共に、開発の生産性や品質の向上、お客様の付加価値を提供すべく継続して研究を進めてまいります。
・ データ分析技術に関する調査研究
データ分析技術活用によるビジネスの拡大を研究目的としております。DX時代に必要なデータ分析基盤の調査研究と合わせて取り組んでおり、これらの活動を経て、お客様のデータドリブン経営の実現に貢献してまいります。
③Security
・セキュリティに技術関する調査研究
社内システム・自社プロダクト・受託開発のセキュリティ強化のため、「セキュア開発・運用プロセス」、「脆弱性検査・管理」、「ハッキング・堅牢化手法」、「セキュリティアーキテクチャ」等の研究を実施しております。
④Cloud
・ Rubrikを活用したランサムウェア対策のバックアップサービスに関する調査研究
近年、日本国内でもランサムウェア被害が企業規模に関わらず拡大しており、メディアやマスコミでも多く取り上げられております。「セキュリティ」は当社注力領域であることから、拡大するランサムウェア対策市場に対し、優位性を持ったマネージドサービスの開発は急務であると考え、ランサムウェア対策サービスの立案に向けた、調査研究をフェーズ1とフェーズ2に分けて実施しております。
市場への当社優位性を考慮し、調査研究プロダクトは「Rubrik」としています。Rubrikは2023年Gartneのバックアップ/リカバリ・ソフトウェア・ソリューション部門でリーダーに選出されており、当社はRubrik社のGlobal Partner AwardsにおいてPartner Sales Champion of the Year(APAC)を国内初受賞しております。
主要課題としては、マネージドサービスを提供することを目的に、以下の観点で実機検証を行っております。
・性能検証:バックアップ機能、リストア機能、ランサムウェア感染時の検知機能や通知機能の検証
・構成検証:バックアップ/リカバリ環境(オンプレ、クラウド)に応じた可用性、拡張性を考慮したシステ
ム全体構成検討
・運用検証:「システムの安定的な稼働」を実現するための運用・保守面の要件策定
調査研究の結果、Rubrikをベースとした構成は当社がマネージドサービスを提供するに十分なレベルであると判断し、サービス仕様書(案)、システム構成図(案)及び運用仕様書(案)のアウトプットにまとめております。
今後は今回の結果を踏まえて、まずはオンプレを中心としたフェーズ1のサービス提供の開始を1月に行い、かつ、更なるお客様ニーズに合わせたサービスメニューの拡大や品質向上のための調査研究をフェーズ2で進めてまいります。
⑤Mobile & AutoMotive
・ 車両サイバーセキュリティに対応した車載標準プロセス構築に関する調査研究
BEVの急速な伸長、自動運転、OTAが次々と市場に投入され、より一層増加傾向にある車載ソフトウェア開発を支えるため、当社はMBD/CIを活用した再利用性の高い開発手法への取組み、HILS/SILSを活用したシミュレーション環境構築への取組み、従来よりも高い精度と効率を実現する画像AIアルゴリズム開発への取組み等を行っております。また、モビリティ社会の発展のため、国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学や複数企業と共同でレベル4以上の自動運転サービスの社会実装を進める研究開発を開始しております。
品質および開発効率といった観点においては、Automotive Spice Level3の認証取得をはじめISO26262(機能安全)、ISO/SAE21434(セキュリティ)などのプロセス構築を継続し、開発現場での活用を通じて改善を進めております。
今後はECU統合化などE/Eアーキテクチャの進化に向けて、旧来より取り組んできたAUTOSARのみならず、これまでの知見と資産を活かした次世代技術への取組みを進めてまいります。
・ MBDプロセス委託サービス実現に向けた調査研究
経済産業省主導でモビリティ社会の最先端の開発コミュニティの実現を目的としてJAMBE(一般社団法人 MBD推進センター)が設立され、より一層自動車業界でのモデルベース開発普及推進傾向にあり、当社はA-SPICEやAUTOSARに対応したモデルベース開発プロセスの構築に取り組んでおります。
また、より効率的にモデルベース開発関連の委託業務を進めることを目的として、モデルベース開発プロセスの標準化、自動化、CI環境の導入をするため、プロセステーラリング、自動化に適したフォーマット定義、自動化システムの技術調査および試作検証を進めてまいります。
⑥5G
・ ローカル5Gに関する調査研究
2021年6月より開始した、ローカル5G技術研究及び検証強化のためのラボプロジェクトについて、研究検証ラボ機材の調査・調達・構築を完了し、ローカル5G基地局の無線免許を取得いたしました。その後、実際の無線利用を可能とした環境を当社秋葉原オフィスに用意し、「ローカル5Gラボ」を開設いたしました。
2023年での研究は、より現実利用環境における通信パフォーマンスを検証すべく、複数機器による同時通信環境における5G通信のデータ収集を実施し、他の無線通信との同環境における通信品質比較した結果、当初の想定通り、5G通信は遅延性が低く、他の無線通信と比較しても安定的な通信が可能なことを確認しています。これらの事から「音声や映像の途切れ」が発生しにくいことも確認しており、AIとの連携による製品品質向上することを確認しました。今回の研究により、通信単位での優先度調整や帯域制限を組み合わせることで限られた通信リソースを用途に応じ配分による用途に応じた活用が可能であり、今後課題に応じた最適な構成を検証し、サービス提供を目指します。
更に今後、5G通信の特性検証だけでなく、ユーザー利用時に発生するであろう、リソースの最適化や運用コスト低減に向けた研究を取り組み、利用したいユーザーが誰でも容易に利用することが出来る機能の研究開発を行ってまいります。