第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社は、1890年(明治23年)に伊藤喜商店として大阪で創業後、大正、昭和、平成、令和と続く時代の変遷の中で、着実な足どりで日本経済の歴史とともに歩み、日本のオフィスの発展に大きな役割を果たしてきました。その間、1950年には製造部門が分離独立するなど時代に合った経営を行い発展してまいりましたが、2005年6月に新たな企業価値の創造に向けて、製販統合を行い、半世紀余ぶりにひとつの企業としての歴史を刻み始めました。

当社グループは、CS(顧客満足度)とES(従業員満足度)の両立を目指した事業活動に注力し、さらに企業としての社会的責任を最大限果たすことが存在意義であると認識しております。ミッションステートメント「明日の『働く』を、デザインする。」のもと、オフィスをはじめとする様々な環境における課題解決に貢献し、新たな価値を生み出すことを目指してまいります。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは、事業の成長及び収益力の向上、並びに資産の効率的な運用の観点から、

① 売上高営業利益率

② 自己資本当期純利益率(ROE)

を、重要な経営指標としております。

当社グループのビジョンステートメントである「人も活き活き、地球も生き生き」の実現に向けて、魅力ある商品とサービスを提供し続け、また継続的なコスト削減と生産性向上により、安定的かつ永続的な事業成長を目指しております。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

当社は2021年に発表した中期経営計画「RISE ITOKI 2023」(ライズ イトーキ 2023)において、連結売上高 1,330 億円、営業利益60億円とする目標を掲げ、着実な事業成長を実現しました。この間、当社をとりまく事業環境では、ハイブリッドワーク(※1)に対する企業や働く人々の関心がコロナ禍を経て高まり、また人的資本投資が注目されることで、オフィスの在り方が経営課題の一つと言われるようになってきております。

このような環境変化を好機と捉え、さらなる事業成長を実現するため、2024年から2026年までの3ヶ年の中期経営計画「RISE TO GROWTH 2026」(ライズ トゥ グロース 2026)を策定いたしました。当中期経営計画においては、「持続的な成長力を高める」ことをテーマとし、重点戦略「7Flags」及びESG戦略を掲げています。これら戦略の下に展開される施策の実現を通じて、2026年に売上高1,500億円、営業利益140億円、ROE15%の達成を目指します。また、事業成長により得た利益は中長期視点での戦略投資として活用するとともに、ステークホルダーの皆様へ計画的に還元してまいります。

当中期経営計画「RISE TO GROWTH 2026」の重点戦略「7Flags」及びESG戦略は以下の通りです。

 

■重点戦略「7Flags」

1. Office 1.0 / 2.0 領域(※2)

新しい働き方やその働き方を実装するオフィス空間などに対し、付加価値提案を強化し、売上と利益のベースを確保する。

2. Office 3.0 領域(※3)

オフィス家具のIoT化と空間センシングにより、データドリブンで、最適な働き方・オフィス空間を提供するサービスを開発する。

3. 専門施設領域

物流施設領域・研究施設領域において開発・エンジニアリングにリソースを重点配分し、第2の柱に育成する。

 

4. 高収益化

グループ生産供給体制の再編と社内ITインフラの刷新により生産・業務効率を高める。

5. グループシナジー

イトーキ単体で実施した構造改革プロジェクトによる成功体験をグループ会社に水平展開し、グループシナジーを追求する。

6. 人的資本

人事制度改革を軸に、社員一人ひとりの主体的かつ能動的な「創意と工夫」を啓発する。

7. 財務戦略

中長期の観点から、成長戦略投資・社員還元・株主還元を計画的に実践する。

 

■ESG戦略

・Environment

「ITOKI Ecosystem Initiative toward 2050 ~自然共生」(※4)のもと、生態系へのネガティブインパクト・ゼロ社会の実現に貢献する。

・Social

自社を「働く」環境投資の実証実験の場として発信し、本業のWork Style Designを推進することで、人的資本の最大化に貢献する。

・Governance

単体から連結視点に立った経営基盤の再構築を行い、グループ全体のガバナンス向上を図る。

 

※1:出社型オフィスワークとテレワークを組み合わせた働き方

※2:Office 1.0:プロダクトベースの商品販売事業 / Office 2.0:空間ベースの商品ソリューション

   提供事業

※3:Office 3.0:働き方べースのオフィスDX事業

※4:「気候変動対応」「資源循環促進」「サステナブル素材活用」を重点領域として環境貢献活動を

   推進する社内イニシアチブ

 

■数値目標(連結) 

 

2026年度目標

売上高

1,500億円

営業利益

140億円

営業利益率

9%

ROE

15%

 

 

(4) 会社の対処すべき課題

昨今の当社グループの外部事業環境におきましては、新型コロナウイルス感染症による行動制限が緩和され、経済正常化の動きが続いているものの、ウクライナ情勢の長期化や中東情勢の悪化など地政学的リスク、また資材・部品価格の高騰が継続するなど、先行き不透明な状況が依然続くものと見込まれます。このような状況のなか、当社グループとしましては、新たに策定した中期経営計画「RISE TO GROWTH 2026」の重点戦略「7Flags」及びESG戦略を着実に推し進め、高い価値を創出・提供し続ける企業へと進化することを目指してまいります。

当社グループは、全社戦略推進の一環として構造改革プロジェクトを2020年に発足させました。このプロジェクトのもとで収益体質改善の活動を力強く促進し、当該事業年度までに一定の成果を得ることができました。2024年からは新中期経営計画の達成を目指し、新たな枠組みのもとで本活動を継続、発展させてまいります。プロジェクト活動を通じて、業務のプロセス改革や経営資源の最適化により事業の生産性を高め、さらには新規事業開発を加速させ、革新的かつ高収益体質な企業へと変革させてまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び具体的な取り組みは以下の通りです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ全般

当社グループではビジョンステートメント「人も活き活き、地球も生き生き」のもと、人々の「働く」を支援することで、個人の幸せ、企業の幸せ、社会の幸せへの貢献を目指し持続可能な企業活動を行っています。一方、地球温暖化、人権、少子高齢化等、社会課題は年々深刻化しており、気候変動への対応、人権の尊重、人的資本やDXへの投資等社会課題へ配慮した企業活動が従来以上に求められています。そのような背景を受け、当社グループでは、2021~2023年の3ヶ年中期経営計画「RISE ITOKI 2023」において、「ESG経営の実践」を重点方針に据え、省エネルギー化やサステナブル素材の活用、経営戦略と連動した人財戦略の遂行など、多様な観点での施策に取り組んでまいりました。

2024年度より開始する新中期経営計画「RISE TO GROWTH 2026」では重点戦略「7Flags」及びESG戦略を計画の中心に据え、そのうちESG戦略は事業戦略の基盤として掲げられています。

※新中期経営計画「RISE TO GROWTH 2026」、またESG戦略については「第2 事業の状況」に記載しております。

 

 ① サステナビリティにおけるガバナンス

気候変動や人権などサステナビリティに関連するリスク/機会の管理及び戦略については、企画部門の取締役常務執行役員が管掌しています。マテリアリティ(重要課題)をはじめとしたサステナビリティに係る重要な方針施策は、経営企画部門の配下に設置されたサステナビリティ推進部門が立案し、管掌役員を経て適宜常務会で審議・報告され、取締役会による監督を受ける体制となっています。またサステナビリティの取り組みの進捗状況も、各部門からサステナビリティ推進部門が報告を受けてとりまとめ、適宜管掌役員への報告を行っています。

※取締役会及び監査役会の状況については「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」及び「統合報告書」の「コーポレート・ガバナンス」項目に記載しております。

 

 ② リスク管理

当社グループは、事業活動全般にわたって生じ得るさまざまなリスクを想定した対策を立て、リスクの発生可能性や影響の低減を図るなど、適切な管理を行うとともに、万一リスクが顕在化した場合の被害・損害の極小化と再発防止のためのリスクマネジメントに取り組んでいます。さまざまな要因を想定して洗い出したリスクに対して、その発生可能性、影響度をそれぞれ4段階で分類し、これらを掛け合わせた点数(1点~16点)により評価を行います。

当社グループでは、「イトーキグループリスク管理基本規程」に基づき、社長を委員長とするリスク管理委員会を設置し、リスクマネジメントの実効性を確保しております。リスク管理委員会は、リスク管理方針の策定とリスク評価、対策レベルの決定を行い、下位に位置するコンプライアンス委員会、情報セキュリティ委員会や主管部門に具体的な対策を指示します。

当連結会計年度においては、リスク評価に基づき、特に点数が高いリスク項目(12点以上)から次の7つをリスク管理委員会で重点的に取り上げるべきリスクとして選定して、それぞれのリスクに対する対策の実効性を高めています。

サステナビリティに関するリスクは企業の中長期的な成長に多大な影響を与えるため、特に注視すべき「ビジネスと人権リスク」についてはリスク管理シートを作成し、全社リスク管理体系の中で管理しています。リスク管理シートには、具体的なリスク詳細、対策、関連部門・法規などを明記することで、リスクの未然回避と問題発生時の迅速な対応に役立てています。また、「気候変動リスク」についても来期より全社リスク管理体系の中で管理していきます。

※リスクマネジメントの状況については「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。

 

③戦略

当社グループでは、将来に亘って働く場を取り巻くさまざまな社会課題を解決するため、2018年よりマテリアリティ(重要課題)を掲げています。2022年には、社会課題の変化を受け、経営層との対話を重ね「社会と人々を幸せにする」「会社と社員が幸せになる」という2つの大きなマテリアリティで課題を整理し、重点テーマを見直しました。

さらに、新中期経営計画「RISE TO GROWTH 2026」の策定に合わせ、経営とサステナビリティを融合する視点から重点テーマの再整理を進めております。新たな重点テーマは中期経営計画と紐づけることを検討しており、マテリアリティに基づいた様々な活動の進捗は中期経営計画の進捗(KPI)と同一に管理していく想定です。

 

(2) 気候変動

当社グループは気候変動への対応を重要な経営課題の一つと捉え、2020年6月、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言へ賛同を表明しました。TCFDの提言に基づき、気候変動が事業にもたらす影響を分析しています。

 

    ① 気候変動におけるガバナンス

  気候変動におけるガバナンス体制は(1)サステナビリティ全般 と共通です。

 

② 気候変動におけるリスク管理

気候変動におけるリスクや機会については、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に基づき、サステナビリティ推進部門にて事業上の課題や、環境マネジメントシステム(EMS)を通じた環境側面の影響評価、またステークホルダーからの要望・期待などを総合的に勘案して重要なリスクと機会を特定し、影響度と発生可能性の2軸で評価しています。来期からは気候変動関連の課題を「気候変動リスク」として、その他の事業等のリスクと同様に全社リスク管理体系の中で管理してまいります。気候変動におけるリスクとして当社グループが認識しているのは以下の通りです。

・移行リスク: 炭素税が導入された場合のコスト増やステークホルダーの行動変容への対応遅れなどがインパクトの大きいリスクとして特定されました。これらには再生可能エネルギーの活用や環境配慮型製品の開発・設計といった対応策をとることにより、管理してまいります。

・物理的リスク:異常気象の発生頻度が増した場合にサプライチェーンが分断されるリスク等を認識しております。環境変化に応じて事業継続計画を見直していくことで対応してまいります。

※特定したリスクと機会の詳細は、当社ウェブサイトに開示しております。

サステナビリティサイト E(環境) → https://www.itoki.jp/sustainability/envreport/

 

③ 気候変動における戦略

長期的に予想される気候変動について、IPCC(※)が公表する複数の既存シナリオを参考に3つのシナリオ(サステナビリティ進展・標準・停滞シナリオ)を定義し、分析を行いました。その結果、気候変動は政策・法規制リスクをはじめとして、短期・中期・長期で当社グループの事業に大きな影響を及ぼす可能性が明らかになりました。すでに顕在化している異常気象の頻発化・大型化以外にも、炭素税の導入や、調達コストの増加、既存市場の縮小などが挙げられます。

当社グループでは気候変動を重要な経営課題と捉え、マテリアリティの中に「カーボンニュートラルな社会に貢献する」「自然環境を守り、資源循環を促進する」という重点テーマを定めております。この重点テーマのもと、中長期CO2排出量削減目標を策定し、DXの推進やお客様の働き方改革の支援を通じたCO2排出量の少ない働き方の促進、また自社内でもその達成に向けて再生可能エネルギーの導入や環境配慮型製品の開発・設計などの取り組みを行ってまいります。さらに、これらの活動はPDCAを着実に回すことにより、目標の達成に向けて歩みを進めます。

※IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change):気候変動に関する政府間パネル

 

    ④指標及び目標

当社グループでは、気候変動への対応として中長期CO2排出量削減目標を策定し、具体的な行動計画に落としこんで取り組みを進めています。本年より、従来定めていた2030年までのCO2排出量削減目標を見直し、Science Based Targets initiative(SBTi)が示す1.5度水準を視野に入れた新たな目標値を定めました。

なお、当社グループのCO2排出量の多くはScope3カテゴリー1「購入した製品・サービス」が占めるため、今後サプライヤーの皆様とさらなる協働体制を構築し、本数値集計の精緻化を推し進め、CO2削減への取り組みを進めてまいります。

<中長期CO2排出量削減目標>

2030年目標

Scope1+2

42.7%削減(2022年比)

Scope3

25%削減(2022年比)

2050年目標

Scope1+2

ネット・ゼロ

 

<CO2排出量実績(単位:t-CO2)>

 

Scope1

Scope2

Scope3

合計

2022年(基準年)

6,081.2

8,397.2

318,343.3

332,821.7

 

(注) 2023年度のデータは現在集計中のため本年度発行の統合報告書にて開示予定です。

 

(3) 人的資本・多様性に関する取り組み

当社は『明日の「働く」を、デザインする。』をミッションステートメントに掲げる企業として、まずは自社から、社員一人ひとりがやりがいを持ってイキイキと働き、最大のパフォーマンスを発揮できる職場づくり(組織・制度・風土)、安心・安全に働ける環境づくりを進めています。

社員が成長し能力を発揮できる環境づくり、社員一人ひとりの多様な働き方を支える取り組みの詳細については、以下、当社ウェブサイトに開示しております。

サステナビリティサイト S(社会)→ https://www.itoki.jp/sustainability/social/

 

① 戦略

イトーキは経営戦略の目標達成には、連動した人財戦略の遂行が不可欠であると考えています。この考えに基づき、事業戦略を見据えた採用を含む人員計画の策定、求める人財像、キャリアに応じた社員一人ひとりの成長を支援する教育体系、社員の成長と働きがい向上を踏まえた人事制度を整備しています。なお、人材を「コスト消費の対象」ではなく「資本 投資の対象」と捉え、人財への投資によって事業価値を高めてまいります。さらに、ダイバーシティに配慮した人財育成、ポストコロナ時代の働き方に合った人事制度を早期に導入するなどして、経営戦略の目標達成を人財戦略で後押ししていきます。


 

◆ 人財育成方針/事例

イトーキは、求める人財像に基づき、キャリアに応じた社員一人ひとりの成長を支援する教育体系を軸に、さまざまなカリキュラムを実施。また、個人での面談や各種研修では、内容に応じてオンラインとリアルを使い分け、全体の質の向上に取り組んでいます。

 

―当社の人財育成に関する取り組み事例―

・管理職研修

社員のマネジメントに従事する管理職の役割は非常に大きく、特にファーストラインマネジャーの意識改革に注力しています。

事例)1on1研修

管理職がリーダーの役割を果たすには、部下の信頼関係が重要です。その手段として、1on1研修を2年かけて実施し、傾聴とコーチングの重要性と実践をみにつけてもらいました。

事例)評価者研修

研修や評価者ワークショップ等を通し、評価者の目線合わせや育成面談スキル向上を行い、部下の成長に繋がる評価の実践をサポートしています。

事例)選択型研修

社員の自主的なキャリア形成支援のため、幅広いカリキュラムを用意し、自律的に学ぶ機会を提供しています。

事例)ビジネス基礎研修

 ロジカルシンキング・ファシリテーション研修・ビジネスライティング・説得力の鍛え方など、ビジネスを

遂行する上で、ベースとなる研修。

事例)異業種交流研修

 自身が目指すリーダーシップをテーマに、異業種4社で、6回に渡るセッションを実施し、最終日に発表。

事例)チームで取り組む課題解決

 チームで研修に参加し、自部門の課題解決に取り組む研修。チームビルディングの形成にもつながります。

事例)ストレングスファインダーを活用した研修

 自身やチームメンバーの強みの資質を把握し、お互いの強みの引き出し方や強みを活かして業務を進める方法

 を学びます。

事例)Eラーニング

 グロービス学び放題・Udemy・Schooなど、自身が強化したいスキルをオンラインで習得して、行動変容に繋げ

 ます。

 

◆ 採用方針/事例

イトーキの仕事はさまざまな人と関わり、チームでプロジェクトを進めています。一人ひとりが自分には何が求められているか、自分が何をすれば、お客さま、社会、自社に貢献できるかを考え、自分を取り巻く周囲の人々を巻き込み、失敗を恐れず、最後まで責任を持ってやり遂げることができる人財を採用すべく活動しています。

 

□新卒採用

就職活動中の学生の方々とは、イトーキでどのように成長して自己実現をしたいのか、また、どのようなキャリアアップを目指すのかなど、エントリーシートだけでは把握できない部分は、採用過程において一人ひとり時間をかけてお互いの理解を深めていくことを重視しています。業界理解、会社理解を深めて頂くためにインターンシップを積極的に開催しました。また、リファーラル採用の推進も行っており、新卒社員から入社決定事例もございます。

 

□経験者採用

今後のイトーキの変革と成長を加速させるため、外部から新しい知見を持った人財を採用しています。これまでの経験や実績に加え、求める人財像への適性を見極めながら、採用活動を行っています。各オフィスでの会社説明会や、ミートアップという社員と求職者の接点を設けるような新しい取り組みも行ってまいりました。

 

 

□グローバル採用

海外高度人財の採用に力を入れており、ベトナムでの採用活動、インドネシアへの視察を行いました。ベトナム出身で既に入社して活躍中の人財もおり、今年も数名の内定者をお迎えする予定です。

 

―当社の採用に関する取り組み・表彰等の事例―

・社員からの紹介によるリファーラル採用を2022年7月のスタート、20名の採用につながっている。

 (2024年1月時点)

・海外高度人財の採用に力を入れており、ベトナムのハノイで開催され、日本企業と現地学生のマッチングを目

 的とした「SEKISHO JOB FAIR」に2年連続参加(2023年)

 

◆ DE&I(Diversity Equity & Inclusion)方針/事例

イトーキは、トップコミットメントのもと、さまざまな年齢、性別、性的指向、性自認、国籍、障がい、雇用形態や働き方、習慣、価値観などを持つ仲間を「多様な人財」と捉え、一人ひとりが「活き活き」とその特性を活かし、持てる力を発揮することを目指しています。

 

―当社のDE&Iに関する取り組み・表彰等の事例―

・ダイバーシティ&インクルージョンに取り組む企業を認定する「D&I Award 2023」にて「D&I AWARD賞」を受

 賞、最高ランクの「ベストワークプレイス」に2年連続認定(2023年)

・職場におけるLGBTQへの取り組みの評価指標である「PRIDE指標2023」にて 「ゴールド」を受賞(2023年)

・ベトナムのハノイ工科大学と友好交流及び高度人財に関するパートナーシップ締結(2023年)

・性別を問わず育児休業を取得した直接雇用社員全員に、取得期間に応じて支援金を支給する、「育児休業復職

 支援金制度」導入(2023年)

・事実婚や同性のパートナー、及びその子、親に対し、法律上の配偶者や家族と同様に福利厚生や規程を適用

 する「パートナーシップ制度」導入(2023年)

・全社員向けに「仕事と介護の両立支援セミナー」、「LGBTQ研修」を実施(2023年)

・障がいへの理解浸透を目的に、地域の障がい者就労施設と提携し社内で手作りお菓子販売会を実施(2023年)

・全管理職向けに「アンコンシャスバイアス研修」を実施(2023年)

 

□ 女性活躍推進コミュニティSPLi(サプリ)

イトーキは、あらゆる多様性が融合し活性することで、大きな変革と成長につなげていくため、多様な人財が活躍の場を広げられる環境整備とともに、女性のリーダーシップ開発を経営上の重点施策と置き、様々な取り組みを展開しております。

SPLiは、自分らしさや多様な個性を活かしながら、リーダーシップを発揮できる環境やプランを用意することで、継続的なキャリアデベロップメントをサポートするコミュニティです。グループ会社を含め、約150名のメンバーが自ら主体的に集まり、様々な活動を展開しております。

 

□ グローバル活躍推進コミュニティAPI(アピ)

国内外のイトーキグループメンバーが、言葉や考え方、習慣の違いなどあらゆる壁を超え、「自主的に、相互に学び、グローバルに活躍できる人財に育つ」ためのプラットフォーム、ITOKI Global Initiative“API”(アピ)を発足しました。国ごとの文化や宗教・慣習など、その違いを本質的に深く理解することで、ダイバーシティ、そして、真の「グローバル」に対する理解、考え、意識の向上を目指します。グループ会社含め、約90名のメンバーが参加しております。

 

 

◆ エンゲージメント向上の取り組み

イトーキでは2016年より、社員のモチベーションの状態やその影響要因について把握するために、エンゲージメント調査を実施しています。調査結果は経営の重要指標の一つとし、組織のエンゲージメント向上の取り組みにつなげることで、社員一人ひとりが輝く、活力あふれる豊かな会社へ変革をするために活用をしています。

数ある指標の内、「イトーキは誇りを持って働ける会社である」の肯定回答率を最重要指標として経営目標の1つに掲げ、経営層が主体となり各部門にてエンゲージメント向上の取り組みを行っております。直近の3年間ではイトーキ全体としては18.5ポイントの改善をしております。一方、一部の部門や職種では改善はしているが、まだスコアが低い傾向も見えてきており、課題として把握をしております。2024年は各部門のエンゲージメント向上の取り組み好事例の社内広報による共有を開始し、さらなるエンゲージメント向上に向け、2024年80%、中期経営計画最終年度2026年85%を目標に掲げ、取り組みを継続しています。

 

② 指標と目標

◆ 従業員エンゲージメント重要指標スコア 

<目標>2024年80% <実績>  2021年56.2%  2022年63.6%  2023年74.7% 


 

◆ 女性管理職比率

<目標>2025年13% <実績(※)>2021年8.9%   2022年10.7%  2023年10.3%

(※)「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出していま

  す。

 

 

◆その他、人的資本・多様性に関する取り組みに係る実績指標(※1)

<男女間の賃金差に係る指標>

 

 

2021年

2022年

2023年

男性の賃金に対する女性の賃金の割合

全労働者

(%)

70.3

69.8

70.4

(内正規雇用者)

(%)

(69.2)

(68.1)

(68.6)

(内パート・有期労働者)

(%)

(71.9)

(73.1)

(83.9)

 

<休暇に係る指標>

 

 

2021年

2022年

2023年

育児休業取得率(※2)

男性

(%)

26.3

45.7

70.0

女性

(%)

100.0

100.0

100.0

有給休暇取得率

全労働者

(%)

51.6

59.0

63.1

 

<採用に係る指標>

 

 

2021年

2022年

2023年

新卒採用数

合計

(名)

34

29

63

(内女性比率)

(%)

(41.2)

(48.3)

(54.0)

経験者採用数

合計

(名)

15

53

130

(内女性比率)

(%)

(40.0)

(37.7)

(33.8)

海外人財採用数

(名)

0

4

3

 

<人財育成に係る指標>

 

 

2021年

2022年

2023年

従業員1名あたりの年間教育訓練費(※3)

(千円/名)

32.14

64.07

72.93

 

(※1)目標及び実績は、提出会社の従業員の状況となります。

(※2)「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規

   定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平

   成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出しています。

(※3)従業員1名あたりの年間教育訓練費には交通費を含みます。

 

また、イトーキは働く環境づくりをリードする企業として、従業員が働きやすい環境整備、すなわちファシリティ投資は企業が人的資本経営で取り組むべき重要事項と認識しており、自社においてその実践を行っております。生産性の高い、安心・安全なオフィスづくりに継続して投資していくことで、人的資本経営に寄与するものと考え、また実際に下表に示すリターンを得ております。

 

◆ 自社ファシリティ投資件数

<2023年実績>東京本社をはじめとするオフィス計7拠点の改修・移転を実施。

 

◆ オフィス投資(人的資本投資)のリターン


(注) 上記資料は、提出会社の中期経営計画掲載資料の抜粋です。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は、以下のようなものがあります。

なお、下記記載のリスク項目は、当社グループの事業に関する全てのリスクを網羅したものではなく、想定していないリスクや重要性が低いと考えられる他のリスクの影響を将来的に受ける可能性もあります。また本項における将来に関する事項につきましては、有価証券報告書提出日(2024年3月27日)現在において、当社グループが判断したものであります。

 

<当社グループのリスクマネジメント体制>

当社グループは、事業活動全般にわたって生じ得るさまざまなリスクを想定した対策を立て、リスクの発生可能性や影響の低減を図るなど、適切な管理を行うとともに、万一リスクが顕在化した場合の被害・損害の極小化と再発防止のためのリスクマネジメントに取り組んでいます。さまざまな要因を想定して洗い出したリスクに対して、その発生可能性、影響度をそれぞれ4段階で分類し、これらを掛け合わせた点数(1点~16点)により評価を行います。

当社グループでは、「イトーキグループリスク管理基本規程」に基づき、社長を委員長とするリスク管理委員会を設置し、リスクマネジメントの実効性を確保しております。リスク管理委員会は、リスク管理方針の策定とリスク評価、対策レベルの決定を行い、下位に位置するコンプライアンス委員会、情報セキュリティ委員会や主管部門に具体的な対策を指示します。

当連結会計年度においては、リスク評価に基づき、特に点数が高いリスク項目(12点以上)から次の7つをリスク管理委員会で重点的に取り上げるべきリスクとして選定して、それぞれのリスクに対する対策の実効性を高めています。

 

・重要品質問題の発生に関わるリスク

・人権問題の発生に関わるリスク(パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、差別的行為等)

・情報漏洩、サイバー攻撃の発生に関わるリスク

・重大労働災害の発生に関わるリスク

・災害や事故による業務停止の発生に関わるリスク

・サプライチェーンに関わるリスク(商品供給の遅れ)

・情報システムの計画外停止の発生に関わるリスク

 

また、来期においては、上記の7つに加えてグループ会社管理の不備に関わるリスクも追加して、当社グループのリスクマネジメントのさらなる強化を図ります。


 

<事業等のリスク>

当社グループが展開する事業に関わるリスクのうち、当連結会計年度において、リスク管理委員会で重点的に取り上げるべきリスクとして選定したリスクの詳細は以下の通りです。

 

(1) 重要品質問題の発生に関わるリスク

当社グループは、社内で確立した厳しい品質基準をもとに製品を製造しておりますが、予期せぬ事情によりリコールが発生する可能性や、当社グループが提供する、製品・サービスにおいて不測の事象やクレームが発生する可能性があります。当社グループは、重要品質問題が発生した場合への対応として、製造物責任賠償については保険に加入しておりますが、損失額をすべて賄える保証はなく、結果として当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。またこのことにより、当社グループの製品に対する信頼性に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループとしては、品質問題の発生を重大なリスクと捉え、品質保証領域に対して必要な経営資源を配し、検査やパトロールの強化による品質管理体制の維持や品質教育の徹底等により品質問題の予防に努めております。また、万一問題が発生した場合には迅速に対応しその影響を最小限にとどめられるような管理体制を維持してまいります。

 

(2) 人権問題の発生に関わるリスク(パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、差別的行為等)

当社グループは、「イトーキグループ行動規範」を制定し、従業員の人権を尊重するとともに、人格・個性と多様性を重視し、一人ひとりが活き活き働き、能力を最大限に発揮できる制度と環境づくりを行い、社会に誇れる企業倫理を確立するとともに、コンプライアンス重視の経営を推進するために充実した内部管理体制の確立に努めております。しかしながら、これらの活動が適切に推進できなかった場合は当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 情報漏洩、サイバー攻撃の発生に関わるリスク

当社グループは、事業を展開する上で、顧客及び取引先の個人情報並びに当社グループ内の個人情報を有しております。情報セキュリティの一環として厳重な管理を行い、規程類の整備や各種対策の実施、従業員への教育などを実施し、内部監査を含めたマネジメントサイクルを運用することで個人情報の保護の徹底を図っておりますが、想定を超えた技術によるサイバー攻撃等の予期せぬ事態により流出する可能性があります。このような事態が生じた場合は、当社グループのブランド価値低下を招くとともに、多額の費用負担が発生する可能性があります。

 

(4) 重大労働災害の発生に関わるリスク

当社グループは、労働災害の発生を防止するため、安全診断の実施、改善活動及び安全衛生教育の推進など安全管理に関わる取り組みを実施しておりますが、重大な労働災害が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 災害や事故による業務停止の発生に関わるリスク

当社グループは、災害等によって事業活動が停止しないよう安全衛生面を含めた災害防止活動、設備点検等の対策を行っておりますが、予想を超える大規模な災害が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対して、当社グループとしては安全衛生、事業継続の両面からサプライチェーンを含めた対策の実施及び災害対策体制の構築により、災害等のリスク低減を図っております。

 

(6) サプライチェーンに関わるリスク(商品供給の遅れ)

当社グループは、事故、災害及び倒産などによる突然の供給停止のリスクに備え、調達先の評価や突然の供給停止に備えた代替取引先の整備などを行っておりますが、取引先が事故、災害、倒産などにより当社製品に用いる原材料の供給が停止した場合に、商品供給が適切なタイミングで行うことができなくなり、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(7) 情報システムの計画外停止の発生に関わるリスク

当社グループは、コンピュータシステムを結ぶ通信ネットワークに依存しており、自然災害等偶然な事由によりネットワークの機能が停止した場合、商品の受発注や生産、物流をはじめとした事業活動に影響が生じる可能性があります。また、外部からの不正な手段によりコンピュータ内へ侵入され、ホームページ上のコンテンツの改ざん・重要データの不正入手、コンピュータウィルスの感染により重要なデータが消去される可能性もあります。

当社グループでは、ITシステムに特化した事業継続計画(IT-BCP)をはじめとした情報セキュリティの取り組みにより、自然災害や外部からのサイバー攻撃に対しても影響が最小限となるよう努めておりますが、このような状況が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

上記のほか、当社グループが、リスク軽減策を継続的に実施している主なリスクは以下の通りです。

 

(1) 市場環境の変化、市場競争の激化

当社グループの売上高は、国内市場に大きく依存しており、国内の設備投資動向に大きな影響を受けます。このことにより、国内景気の後退による民間設備投資及び公共投資の減少に伴い需要が減少した場合は、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

また当社グループは、先進のデザイン・機能性を備えた商品とトータルソリューション提案力でお客様の快適な環境づくりをサポートすることで高い評価をいただいております。しかしながら、市場では激しい競争に直面しており、特に価格面においては必ずしも競争優位に展開できる保証はなく、結果として当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対し、当社グループとしては、景気動向や競合他社の動向にかかわらずお客様に選択いただける高付加価値の商品・サービスの開発を目指すとともに、環境変化に沿った適切な事業ポートフォリオ維持のための経営資源の最適化を図ってまいります。

 

(2) 原材料の価格変動、商品仕入価格の上昇

当社グループで生産している製品の主要原材料である鋼板等については市況価格の変動リスクを有しております。また、グループ外から仕入れる商品の価格につきましても、今後鋼材や原油価格等の原材料の価格が上昇し、仕入先からの仕入価格上昇圧力が強まった場合には、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対しては、製造原価の低減活動や、諸経費の圧縮で対応していく考えでありますが、自社内の取り組みだけでは吸収できない場合には、販売価格の見直しを行うなど、コストと価格の適正化に努めてまいります。

 

(3) 海外事業

当社グループは、海外における事業展開は、地政学リスクを含め展開先地域のリスクを把握したうえで進めております。しかし、予期しない法律・規制の変更や経済環境の変化等のリスクが存在するほか、戦争、テロリズム、紛争又はその他の要因による社会的又は政治的混乱等の発生の可能性や、為替相場の変動により当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループとしては、当該リスクを踏まえた地域ごとの管理体制を構築し現地と密接なコミュニケーションが取れる体制を敷くことにより、リスク低減を図ってまいります。

 

(4) 企業買収

当社グループは、企業買収に当たっては、対象企業のリスクを把握したうえで決定しております。しかしながら、事業環境等の変化等により、当初想定した買収による効果が得られない場合には、のれんの減損などが発生し、業績に影響を与える可能性があります。

当社グループとしては、買収・提携前のデューデリジェンスを通じてリスクの洗い出しを徹底しております。また、事業環境の変化にいち早く対応できる体制を構築し、業務効率の向上に資する活動を推進しています。

 

 

(5) 繰延税金資産

当社グループでは繰延税金資産について、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を判断して計上しております。しかし、今後将来の課税所得の見積り等に大きな変動が生じた場合には繰延税金資産の取崩が発生し、その結果当社グループの業績及び財政状況に悪影響を与える可能性があります。

 

(6) 法令遵守・公的規制に関するリスク

当社グループは、事業の許認可、輸出入に関する制限や規制等の適用を受けております。また、公正取引、消費者保護、知的財産、環境関連、租税等の法規制の適用も受けております。当社グループは、法令遵守、企業倫理を確立するために「イトーキグループ行動規範」を制定し、コンプライアンス重視の経営を推進するために委員会を設置し、充実した内部管理体制の確立に努めております。しかしながら、これらの規制を遵守できなかった場合は当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。また、これらの規制の改廃や新たな公的規制の新設等がなされ、当社グループが対応困難となった場合、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 有価証券の時価変動リスク

当社グループは、売買を目的とした有価証券は保有しておりませんが、様々な理由で、主要取引先、取引金融機関の株式等の売却可能な有価証券を保有しております。これらの有価証券のうち、時価を有するものについては、全て時価にて評価されており、定期的に保有の合理性判断を行い時価変動リスクが小さくなるよう努めておりますが、市場における時価の変動が、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績の状況

当社グループは中期経営計画「RISE ITOKI 2023」の最終年度となる当年度においても、強靭な体質の「高収益企業」を目指し、引き続き構造改革プロジェクトに基づいた各種施策を推進するとともに、ポストコロナの「働く環境」づくりをリードするための新しい働き方やワークプレイスの提案、価値向上に重点を置いた営業活動の展開などにより、売上・利益の拡大を図ってまいりました。

 

(単位:百万円)

 

2022年12月

2023年12月

増減額

増減率

売上高

123,324

132,985

9,660

7.8%

売上総利益

45,749

52,240

6,491

14.2%

販売費及び一般管理費

41,167

43,717

2,550

6.2%

営業利益

4,582

8,523

3,940

86.0%

営業外収益

556

481

△74

△13.5%

営業外費用

961

448

△512

△53.3%

経常利益

4,177

8,555

4,378

104.8%

特別利益

7,805

186

△7,619

△97.6%

特別損失

3,611

363

△3,247

△89.9%

税金等調整前当期純利益

8,372

8,378

6

0.1%

法人税等合計

3,191

2,471

△719

△22.5%

当期純利益

5,181

5,907

725

14.0%

親会社株主に帰属する

当期純利益

5,294

5,905

610

11.5%

 


(ⅰ)売上高

 前期比96億60百万円7.8%)増収の1,329億85百万円となりました。

・ワークプレイス事業は、ハイブリッドな新しい働き方にあわせたリニューアル案件やオフィス移転などを中心に好調に推移しました。

・設備機器・パブリック事業は、博物館、美術館の展示ケースやデジタルサイネージ等の公共施設向け設備及び物流施設向け設備の需要が堅調に推移しました。

・IT・シェアリング事業は、システム開発事業に加え、第二の柱として推進してきたシステム検証事業が順調に推移しました。

 

(ⅱ)売上総利益

 前期比64億91百万円14.2%)増益の522億40百万円となりました。

・ワークプレイス事業は、原材料価格高騰の影響を見込みつつ、増収効果や提供価値の向上による利益率の改善により、大幅増益となりました。

・設備機器・パブリック事業は、原材料価格高騰の影響を見込みつつ、公共施設や物流施設向け設備における需要拡大及び利益率の改善により、増益となりました。

・IT・シェアリング事業は、システム開発・検証事業が堅調に推移しました。

 

(ⅲ)販売費及び一般管理費

 DX推進のためのIT基盤強化等の将来の飛躍に向けた戦略的支出や中途人財の採用及び業績連動型賞与の引当金計上等を計画通りに実行するとともに、構造改革プロジェクトによる物流費削減の継続等の販管費抑制の効果により、前期と比較して25億50百万円6.2%)増加の437億17百万円となりました。

 

(ⅳ)営業利益

 以上の結果、営業利益は、前期比39億40百万円86.0%)増益の85億23百万円となりました。

・ワークプレイス事業は、増収効果及び提供価値の向上による利益率の改善により、大幅増益となりました。

・設備機器・パブリック事業は、公共施設向け設備における提供価値の向上等による利益率の改善により、大幅増益となりました。

・IT・シェアリング事業は、前期並みとなりました。

 

(ⅴ)営業外収益

 新型コロナウイルス感染拡大防止に関する助成金収入の減少等により、前期比74百万円13.5%)減少の4億81百万円となりました。

 

(ⅵ)営業外費用

 前期に為替の変動による為替差損、及び子会社の事業再編費用等があったことにより、前期比5億12百万円53.3%)減少の4億48百万円となりました。

 

(ⅶ)経常利益

 以上の結果、経常利益は、前期比43億78百万円104.8%)増益の85億55百万円となりました。

 

(ⅷ)特別利益

 前期は資産効率化を目的とした非事業資産の売却益や連結子会社GlobalTreehouse㈱の解散に伴う同社一部債権者からの債権放棄による債務免除益の計上等があったことにより、76億19百万円97.6%)減少の1億86百万円となりました。

 

(ⅸ)特別損失

 前期は将来の使用見込みのない非事業資産の除却及び減損損失の計上を実施したこと等により、前期比32億47百万円89.9%)減少の3億63百万円となりました。

 

(ⅹ)親会社株主に帰属する当期純利益

 以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比6億10百万円11.5%)増益の59億5百万円となり、過去最高益を更新いたしました。

 

セグメントの業績は、次のとおりであります。

   (単位:百万円)

セグメントの名称

2022年12月

2023年12月

増減額

増減率

ワークプレイス

事業

売上高

85,945

94,257

8,311

9.7%

営業利益

2,579

6,128

3,549

137.6%

設備機器・

パブリック事業

売上高

35,667

36,839

1,171

3.3%

営業利益

1,482

1,906

424

28.6%

IT・シェアリング
事業

売上高

1,624

1,749

125

7.7%

営業利益

449

444

△4

△1.1%

報告セグメント計

売上高

123,237

132,846

9,609

7.8%

営業利益

4,511

8,479

3,968

88.0%

その他

売上高

87

138

51

59.0%

営業利益

71

43

△27

△38.4%

合計

売上高

123,324

132,985

9,660

7.8%

営業利益

4,582

8,523

3,940

86.0%

 

 

 

 

②財政状態の状況

(単位:百万円)

 

2022年12月

2023年12月

増減額

増減率

資産の部

115,288

117,437

2,149

1.9%

負債の部

65,377

62,437

△2,940

△4.5%

純資産の部

49,910

54,999

5,089

10.2%

 

 

(資産の部)

総資産は、好調な受注に起因した受取手形、売掛金及び契約資産、電子記録債権の増加等により、前連結会計年度末に比べて21億49百万円増加し、1,174億37百万円となりました

 

 (負債の部)

負債合計は、余剰資金による借入金の返済等により、前連結会計年度末に比べて29億40百万円減少し、624億37百万円となりました。

 

(純資産の部)

純資産は、増益により利益剰余金が42億30百万円増加したこと等により、前連結会計年度末に比べて50億89百万円増加し、549億99百万円となりました。この結果、自己資本比率は46.8%となり、前連結会計年度末に比べ3.6ポイント上昇しております。

また、1株当たり純資産額は、前連結会計年度の1,100円33銭から1,210円96銭になりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ17億55百万円の減少があり、236億64百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りであります。

 

(ⅰ)営業活動によるキャッシュ・フロー
  営業利益の増益等により、営業活動による資金の増加は63億21百万円前期は58億4百万円の増加)となりました。

 

(ⅱ)投資活動によるキャッシュ・フロー

ITOKI TOKYO XORKのリニューアル等の戦略的支出に伴う有形固定資産の取得による支出が33億16百万円あったことなどにより、投資活動による資金の減少は40億12百万円前期は49億23百万円の増加)となりました。

 

(ⅲ)財務活動によるキャッシュ・フロー
  配当金の支払額が16億75百万円あったことなどにより、財務活動による資金の減少は41億48百万円前期は14億26百万円の減少)となりました。

当社グループのキャッシュ・フロー指標の推移は以下の通りであります。

 

 

2022年
12月期

2023年
12月期

自己資本比率(%)

43.2

46.8

時価ベースの自己資本比率(%)

23.1

52.0

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

3.8

3.2

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

39.5

46.0

 

 

 

④生産、受注及び販売の実績

 a. 生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

                                          (単位:百万円)

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

前期比

ワークプレイス事業

37,860

147.1%

設備機器・パブリック事業

22,633

117.4%

IT・シェアリング

923

101.1%

合計

61,417

133.7%

 

(注) 金額は販売価格によっております。

 

 b. 受注実績

当社グループは見込生産を主体としているため、受注状況の記載を省略しております。

 

 c. 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

                                          (単位:百万円)

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

前期比

ワークプレイス事業

94,257

109.7%

設備機器・パブリック事業

36,839

103.3%

IT・シェアリング

1,749

107.7%

132,846

107.8%

その他

138

159.0%

合計

132,985

107.8%

 

(注) 金額は販売価格によっております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたり、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発債務の開示並びに報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積りについては、継続的な評価を行っております。見積り及び判断は、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づいて行っておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 経営成績の分析

当連結会計年度における経営成績の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載しております。

経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」に記載しております。

b. 財政状態の分析

当連結会計年度における財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載しております。

c. キャッシュ・フローの状況の分析

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性の分析

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、材料、商品等の購入のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用です。また、投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものです。なお、重要な設備の新設等の計画はありません。

運転資金及び投資資金の調達については、自己資金又は銀行借入で賄う方針であります。

当社は運転資金の効率的な調達を行なうため、取引金融機関4社と6,650百万円の貸出コミットメント契約を締結しております。

 

④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、事業の成長及び収益力の向上、並びに資産の効率的な運用の観点から、売上高営業利益率、自己資本当期純利益率(ROE)を、重要な経営指標としております。

当社の経営理念である「時代の先端を切り開き、グローバル社会に貢献する高収益企業」の実現に向けて、魅力ある商品とサービスを提供し続けること、並びに継続的なコスト削減と生産性向上により、安定的かつ永続的な成長を目指しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

 技術導入契約等

当社グループが締結している技術導入契約等は、次のとおりであります。

契約先

国名

内容

対価

期限

KRUEGER INTERNATIONAL,INC.

アメリカ

事務用収納扉の技術、製造、販売権の許与

 一時金及び
ロイヤリティ

2023年12月31日

WALDNER Laboreinrichtungen GmbH&Co.KG

ドイツ

実験用家具の技術、製造、販売権の許与

 一時金及び
ロイヤリティ

2027年1月28日

KNOLL OVERSEAS,INC.

アメリカ

家具の製造、販売権の許与

 一時金及び
ロイヤリティ

2023年12月31日

 

 ※ KNOLL OVERSEAS,INC.については契約期間満了に伴い終了しております。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループでは、新たな価値を提供する活動を継続・促進するため、研究開発活動に取り組んでおります。当連結会計年度の研究開発費の総額は、2,719百万円であります。

ワークプレイス事業領域においては、コロナ禍を経て、働き方の多様化とオフィス回帰という大きな流れをうけ、オフィスに求められる価値観の変化や新たな課題解決に焦点をあて、新製品やソリューションの開発、並びに先行技術の開発を行っています。加えて、長期的な課題を探求する部門として中央研究所を新設いたしました。オフィスの長期的なトレンドを捉え、モノづくりの新しい技法・材料などの技術革新と結びつけることでサステナブルなオフィスづくりに貢献いたします。

また、「働く」をデザインする上で重要と考える、次世代の「学び」の環境を『スマートキャンパス』として企画・設計し、高等教育、特に、大学・高校の現場で、実装と検証の共同研究を継続して行っています。先進技術を活用したDXの開発研究、学術機関との産学連携を進めております。

[ワークプレイス事業]

オフィス家具とテクノロジーを融合した分野では、オフィスとリモートワークをつなぐハイブリッドワークが定着する中、Web会議の一体感を高める会議室空間を提案するテーブル「Panora(パノラ)」や、オープンスペースでもスピーカーからの音を漏れにくくし、座っている人だけが聞こえるWeb会議空間を提供するボックス型ソファ席「sound sofa(サウンドソファ)」を発売しました。また、フリーアドレスでの座席や打ち合わせテーブル、会議室の予約状況を表示する「Workers Trail Hoteling Label(ワーカーズ トレイル ホテリング ラベル)」を発売し、働く場所の選択と利用の円滑化を実現します。

オフィス家具の分野においては、本物の木をふんだんに取り入れた「Feel So Wood」な木質製品群により、働く時間を心地よくする“行きたくなるオフィス”を実現するとともに、森林循環や炭素固定にも貢献し、人と地球にやさしい持続可能なワークプレイスを提案しました。製品群としては、本物の木の心地よさを実感できる天然無垢テーブル「knot Work Wood(ノットワークウッド)」、突板仕上げの不燃パーティション「Feels(フィールス)」、柴田文江氏デザインのvertebra03に木の温もりとエルゴノミクスを両立させた「vertebra03 WOOD(バーテブラ03ウッド)」などを発売しました。

また、外部デザイナーとの協業によるデザイン性向上にも力を入れました。柴田文江氏デザインシリーズとしては新たにポータブルバッテリー「hako(ハコ)」を発売し、デザイン性が高くシンプルで機能的なバッテリーにより“電源の制約に縛られずにカジュアルに働く”スタイルを提案しています。

建材分野におきましては、成瀬・猪熊建築設計事務所と共同開発した「common furniture / Partition(コモンファニチャー パーティション)」を発売しました。30種以上のフレームスタイルと23種のCMF(Color,Material,Finish)による600通り以上の組み合わせで、オフィスパーティションのシステム性はそのままに、デザイナーや設計者の表現の幅をひろげ、オフィスワーカーの創造性を刺激する自由な空間の構築を可能にします。

また、DX(デジタル変革)分野では、多様な場における創造的なオンラインコミュニケーションやリモートグループワークを実現する空間DX化及びICTシステムを、先行して大学等の教育空間へ導入し、実践運用を推進しております。新しい技術活用では、メタバース(仮想)空間の設計や、音声画像系AI技術を応用したソリューションの先進的トライアルを実践し、文部科学省や経済産業省の政策ビジョンに応じた次世代の学びの場、共創空間の提案を進めて参ります。

家庭用家具分野におきましては、家族でシェアして使える新しいコンセプトの家具「MINOTO(ミノト)」デスク&ラック、ジェンダーレスでエイジレスなスタディバッグ「SELUCK(セルク)」でイトーキ家庭向け商品としては初めてのGマークを受賞しました。

さらに、新商品開発及びAIによるデータ分析・活用の領域における取り組みを強化するため、「ITOKI OFFICE A/BI(イトーキ・オフィス・エー/ビーアイ)プラットフォーム」を構築しサービス提供基盤の確立をすすめ、AIスタートアップ他様々なパートナー企業と連携しプロジェクトの推進、イノベーションの加速を目指して研究開発を進めています。

なお、研究開発費の額は1,747百万円であります。

 

 

設備機器・パブリック事業

物流機器分野におきましては、前期に続き、物販系のEC市場拡大や物流の2024年問題を背景とした物流倉庫における課題に対して、シャトル式立体自動倉庫SAS-R(システマストリーマ)の機能を拡充することで、倉庫内でのGTP(Goods To Person:歩行レスピッキング)システムへの対応に注力しました。

その成果として、公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会によるロジスティクス推進に向けて優れた実績をあげた企業を表彰する「2023年度ロジスティクス大賞」受賞の企業様向け主要設備としても導入されております。

更には運用開始後のお客様負担を軽減するため、IoT技術の活用でメンテナンス対応を容易にするとともに、AI・機械学習による予防保全の強化でトラブルを未然に防止する予知保全システムの開発・実証実験も進めております。

公共施設分野におきましては、美術館・博物館向けの新型展示ケースとして、建築施設や展示品と調和した高い意匠性、展示品本来の色味や姿を忠実に再現した高い演色性、展示品の保護や展示空間の環境維持機能を兼ね備えた商品「Artivista(アルティビスタ)」を発売するとともに、新商品の企画開発や試作品の実験を行う「ラボ機能」と、新商品や試作品を見学・体験していただける「ショールーム機能」を兼ね備えた共創空間・開発工房「カロッツェリア」を開設するなど、様々な要求に応える設計開発力で需要拡大を図っております。

なお、研究開発費の額は971百万円であります。