第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中には、中期経営方針等に関する様々な業績予想及び目標数値、並びにその他の将来に関する情報が開示されています。これらの業績予想及び目標数値、並びにその他の将来に関する情報は、将来の事象についての現時点における仮定及び予想、並びにアサヒグループが現在入手可能な情報や一定の前提に基づいているため、今後様々な要因により変化を余儀なくされるものであり、これらの予想や目標の達成及び将来の業績を保証するものではありません。

 

(1)経営の基本方針

 アサヒグループは、純粋持株会社であるアサヒグループホールディングス株式会社のもと、日本、欧州、オセアニア、東南アジアを核として主に酒類、飲料、食品事業を展開しています。

 グループ理念「Asahi Group Philosophy(AGP)」に基づき、未来のステークホルダーからも信頼されるグループを目指しています。AGPは、Mission、Vision、Values、Principlesで構成され、グループの使命やありたい姿に加え、受け継がれてきた大切にする価値観とステークホルダーに対する行動指針・約束を掲げています。

 

 

 

 

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(2)中長期経営方針

 AGPの実践に向けて、『中長期経営方針』では、長期戦略のコンセプトとして「おいしさと楽しさで“変化するWell-being”に応え、持続可能な社会の実現に貢献する」ことを掲げています。

 目指す事業ポートフォリオを示すとともに、サステナビリティと経営の統合、DX(デジタル・トランスフォーメーション)やR&D(研究開発)といったコア戦略の一層の強化により、持続的な成長と全てのステークホルダーとの共創による企業価値向上を目指しています。

1.『中長期経営方針』:長期戦略の概要

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2.目指す事業ポートフォリオ

 長期戦略における事業ポートフォリオでは、人々のWell-beingの変化に応えていくなかでの「リスクと機会」を捉え、ビールを中心とした既存事業の持続的成長に加えて、その事業基盤を活かした周辺領域や新規事業・サービスの拡大を目指しています。

 既存事業については、主力ブランドを中心としたプレミアム戦略の推進などにより、各地域において販売単価の向上を実現したほか、『Asahi Super Dry』と『Peroni Nastro Azzurro』を中心とした世界的なパートナーシップの強化などにより、グローバル5ブランド全体で販売数量は前年比4%増加しました。

 新規領域については、各地域でのノンアルコールや低アルコールカテゴリーの取り組みを推進するなど、BACへの投資強化による新市場拡大を図りました。また、新たな成長ドライバーの探索を目指して設立した米国の投資運用会社が本格的に稼働をスタートしたほか、酵母・乳酸菌技術を活用した新たな領域拡大やデジタル技術を活かした新サービスの開発に取り組みました。

 今後もビールを中心に培ってきたケイパビリティや事業基盤を活かし、BACや新商材・新サービスの領域で成長機会を拡大することで、最適な事業ポートフォリオを構築していきます。

※ BAC:Beer Adjacent Categoriesの略。低アルコール飲料、ノンアルコールビール、成人向け清涼飲料など、ビール隣接カテゴリーを指します。

 

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3.コア戦略 ―サステナビリティ戦略―

 アサヒグループは、事業成長と社会価値の創出の最大化を目指して、バリューチェーン全体で人々のサステナブルな生活を実現することを重点方針として定めています。また、経営課題として取り組む領域を特定したマテリアリティ・取り組みテーマを設定し、適切で実効性のある取り組みにつなげています。

 詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。

 

 

4.コア戦略 ―DX戦略―

 アサヒグループのDXは単なるデジタライゼーションではなく、生き残りをかけた経営改革であると認識しており、DX=BXと捉え、「Business」「Process」「Organization」の領域において、三位一体でイノベーションを推進しています。

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①Business Innovation

 一人ひとりの“Well-being”の形を捉え、パーソナライゼーションモデルの実現を目指します。また、デジタル技術でサステナビリティに関する課題を解決し、人々のサステナブルな生活の実現に向けた取り組みを推進していきます。

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②Process Innovation

 全工場の生産性・品質情報を数値化・透明化し、生産性向上を目指します。また、グローバル調達で規模の経済を実現し、調達コストやリスクを最適化するとともに、サプライチェーン、サステナビリティチームとIT組織が協働し、最適なソリューションの導入に向け、取り組んでいます。

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③Organization Innovation

 デジタルネイティブ組織への変革を目指し、各機能・組織がIT/データ活用スキルを当たり前のスキルとして持つ「IT/データ活用の民主化」を目指します。また、アジャイルな働き方※1の導入を同時に進めていきます。

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5.コア戦略 ―R&D戦略―

 R&D戦略においては、中長期的な社会環境や競争環境の変化を見据え、メガトレンドからバックキャストで導いた未来シナリオとこれまでの研究で蓄積してきた技術・知見・ノウハウを踏まえ、以下の4つを重点領域として位置付け、新たな価値創造やリスク軽減に向けた商品・技術開発に取り組んでいます。また、海外を含む拠点間での技術シナジーの醸成、異分野とのオープンイノベーション活用による新たな価値創造にも積極的に取り組んでいます。

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①アルコール関連

 アルコールを取り巻く消費者ニーズの変化や将来予測に複数の角度から対応すべく、アルコール価値代替、新価値創造、BACにおける優位性構築に向けた商品・技術開発を中心に研究開発に取り組んでいます。

 変化する消費者ニーズを捉えるべく、2023年は、欧州で発売したノンアルコールビール『Kozel 0,0%』では、従来の脱アルコール技術を用いながら、より環境負荷が低い製法を開発しました。スマートドリンキングをはじめとしたBAC領域の開拓を目的に、今後もさまざまな技術開発を進めていきます。

 また、消費者ニーズのダイナミックな変化に対応すべく、Z世代のインサイト探索手法の構築及び迅速なZ世代向けコンセプト生成技術の開発も進めています。

 ニーズを技術課題に落とし込み、製品提案に至るまでの一連のプロセスを迅速にすることで、研究成果の更なる導出を目指します。

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②ヘルス&ウェルネス

 身体や心の健康に関する消費者の拡大するニーズに対し、さまざまなタイプのソリューションを提供することで人々の健康的な生活をサポートしています。

 「L-92乳酸菌」は、長年にわたって積み重ねてきたデータやエビデンスにより、健康な人の免疫機能の維持に役立つことが確認されました。「L-92乳酸菌」と免疫の関わりをさらに明らかにすることで、人々の生涯にわたる健康の維持増進に貢献していきます。

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 また、長年、研究をしてきた乳酸菌「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」は、腸に作用し、脳腸相関※1を介して脳に働きかけ、精神ストレスを緩和することが確認されました。今回、フェムケア※2領域への展開を目指し、ヒト試験により効果の評価を行い、女性の月経周期に関連した精神的疲労や眠気の軽減効果を持つ機能性表示を届け出て、「月経周期」に関連した具体的な機能性を表示する製品として初めて受理されました。

 独自性のある健康機能性素材とそれを活用したサービスに関する研究を強化し、国内外での新しい価値提案を目指します。

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※1 脳腸相関:腸と脳が互いに情報伝達を行い、生体機能を保つ仕組み

※2 女性の体や健康をケアすること

 

③サステナビリティ

 環境・エネルギー分野や副産物利用における世界トップ水準の技術の実装を目指すとともに、気候変動に伴う原料コスト影響の最小化や容器包装の環境負荷低減に取り組み、サステナビリティ戦略の実効性を高めています。

 環境・エネルギー分野では、ビール工場排水由来のバイオメタンガスを利用した燃料電池による発電技術の実証を行っており、2023年は、アラブ首長国連邦・ドバイで開催された国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)の「ジャパン・パビリオン」に出展し、技術普及にも取り組みました。

 サステナビリティに関する研究開発を通じて、社会的責務を果たすとともに、持続的な企業活動を通じ、事業利益につながる成果獲得を目指します。

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④新規事業

 中長期的に目指す事業ポートフォリオの実現に向け、グループ内外の技術とビジネスモデルとの掛け合せ等により、新規事業につながる非凡なシーズの創出に取り組んでいます。

 酵母や乳酸菌など、アサヒグループがこれまでに活用してきた微生物領域に新たな視点を加えることで、グループのメリットを活かした新規事業を開拓していきます。これらを実現するため、革新的な外部技術の取り込みや従来とは異なる領域との融合を積極的に推進していきます。

 

6.人的資本の高度化

 戦略基盤強化に向けて、「ありたい企業風土の醸成」、「継続的な経営者人材の育成」及び「必要となるケイパビリティの獲得」の3つの取り組みを連携させながら、競争優位の源泉となる「人的資本の高度化」の実現を目指しています。

※ 戦略を実現するために必要な組織的能力

 詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本」をご参照ください。

 

(3)中期的なガイドライン

 『中長期経営方針』の中期的なガイドラインについては、以下のとおりです。

 

■主要指標のガイドライン

 

3年程度を想定したガイドライン

事業利益

・CAGR(年平均成長率):一桁台後半※1

EPS(調整後※2

・CAGR(年平均成長率):一桁台後半

FCF※3

・年平均2,000億円以上

※1 為替一定ベース

※2 調整後とは、事業ポートフォリオの再構築や減損損失など一時的な特殊要因を除いたものです。

※3 FCF=営業CF-投資CF (M&A等の事業再構築を除く)

 

■財務方針のガイドライン

 

2022年以降のガイドライン

成長投資・債務削減

・FCFは債務削減へ優先的に充当し、成長投資への余力を高める

・Net Debt/EBITDA※1は2024年に3倍程度を目指す

(劣後債の50%はNet Debtから除いて算出)

株主還元

・配当性向※235%程度を目途とした安定的な増配

(配当性向は2025年までに40%を目指す)

※1 Net Debt/EBITDA(EBITDA純有利子負債倍率)=(金融債務-現預金)/EBITDA

※2 配当性向は、親会社の所有者に帰属する当期利益から事業ポートフォリオ再構築及び減損損失などに係る一時的な損益(税金費用控除後)を控除して算出しております。

 

(4)対処すべき課題

 中長期的な外部環境としては、テクノロジーの発展が人類に新たな技術力と自由な時間を与え、気候変動・資源不足といった地球規模の課題を抱える中、社会・経済だけではなく人類の幸福(Well-being)のあり方も変化していくものと想定されます。

 そうしたメガトレンドを踏まえて更新した『中長期経営方針』に基づき、各地域統括会社は、既存事業の持続的成長に加えて、その事業基盤を活かした周辺領域や新規事業・サービスを拡大していきます。さらに、サステナビリティと経営の統合などコア戦略の一層の強化により、グループ全体で企業価値の向上に努めていきます。

<地域統括会社の中期重点戦略>

[日本]

① 変化を先読みする商品ポートフォリオ最適化とシナジー創出による日本事業のポテンシャル拡大

② ニーズの多様化に対応したスマートドリンキングなどの推進、高付加価値型サービスの創造

③ カーボンニュートラルなど社会課題の事業による解決、日本全体でのサプライチェーン最適化

[欧州]

① グローバル5ブランドの拡大と強いローカルブランドを軸としたプレミアム戦略の強化

② ノンアルコールビールやクラフトビール、RTDなど高付加価値商品を軸とした成長の加速

③ 再生エネルギーの積極活用や循環可能な容器包装の展開など環境負荷低減施策の推進

[オセアニア]

① 酒類と飲料を融合したマルチビバレッジ戦略の推進、統合シナジーの創出

② BACなど成長領域でのイノベーションの推進、健康・Well-beingカテゴリーの強化

③ 新容器・包装形態などサステナビリティを重視した新価値提案、SCM改革の推進

[東南アジア]

① マレーシアの持続成長と自社ブランドの強化など、域内6億人超の成長市場での基盤拡大

② 植物由来商品など新セグメントの拡大による最適なプレミアムポートフォリオの構築

③ 環境配慮型容器の展開などによる持続可能性の確保や原材料調達での地域社会との共創

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)サステナビリティ

 アサヒグループは『中長期経営方針』のコア戦略のひとつに、「サステナビリティと経営の統合による社会・事業のプラスインパクトの創出、社会課題解決」を掲げています。その実現に向けてサステナビリティ・ガバナンス体制の実効性を高めるとともに、マテリアリティに基づいた取り組みを推進しています。

 

①ガバナンス

[サステナビリティ・ガバナンス]

 アサヒグループでは取締役会の諮問機関として、取締役会のモニタリング体制の強化を目的とした「サステナビリティ委員会」を2023年12月に設置しました。社外取締役2名及び代表取締役社長兼Group CEOを含む社内取締役2名で構成し、委員長は代表取締役社長兼Group CEOが務め、諮問・討議事項により、外部有識者を都度招へいします。

 また、執行側においてはアサヒグループホールディングス(株)の代表取締役社長兼Group CEOが委員長となる「グローバルサステナビリティ委員会」を設置して、サステナビリティ推進を包含したコーポレート・ガバナンス体制を構築しています。

 「グローバルサステナビリティ委員会」で決定した内容は、「サステナビリティ実行会議」「サステナビリティタスクフォース」を通じてグループ全体の戦略として落とし込む仕組みになっており、グループ一体となってサステナビリティを推進する体制を組んでいます。

 

組織体

役割

構成

開催頻度

サステナビリティ

委員会

●専門的な見地から、サステナビリティと経営の統合のさらなる推進、サステナビリティに関する重要なテーマについて取締役会に提言

委員長:

アサヒグループホールディングス

(株)代表取締役社長 兼 Group CEO

委員:

●アサヒグループホールディングス(株)

社内取締役 1名

●アサヒグループホールディングス(株)

社外取締役 2名

年2回

グローバル

サステナビリティ

委員会

●グループのサステナビリティ方針の策定

●サステナビリティ戦略の決定

●サステナビリティに関する投資判断

委員長:

アサヒグループホールディングス(株)

代表取締役社長 兼 Group CEO

委員:

●アサヒグループホールディングス(株)

サステナビリティ担当役員・関係部門 Head

●Regional Headquarters CEO、

サステナビリティ担当役員

年1回

サステナビリティ

実行会議

●グローバルサステナビリティ委員会で決定された戦略の、Regional Headquarters(地域統括会社)・事業会社への落とし込みの具体化

議長:

アサヒグループホールディングス(株)Sustainability 部門 Head

メンバー:

●Regional Headquarters

サステナビリティ担当役員・関係部門 Head

年2回

サステナビリティ

タスクフォース

(各マテリアリティ)

●各マテリアリティの具体的検討及び推進

リーダー:

アサヒグループホールディングス(株)Sustainability 部門・関連機能部門

各マテリアリティ担当者

メンバー:

●アサヒグループホールディングス(株)

各マテリアリティ担当者、関係部署担当者

●Regional Headquarters

各マテリアリティ担当者

適宜開催

 

 

2022年の開催実績

組織体

開催月

主な議題

グローバルサステナビリティ委員会

11月

●コミュニティ戦略に関する討議と決議

●責任ある飲酒 取り組みの方向性に関する討議

サステナビリティ実行会議

3月

●2021年12月のグローバルサステナビリティ委員会で決議した「PETボトル環境配慮素材100%達成」についての、2030年までのロードマップ

●重点方針実現に向けた議論

9月

●コミュニティ戦略に関する討議

●重点方針の実現に向けた進捗の共有

サステナビリティリーダー会議

6、7、11月

●「アサヒカーボンゼロ」目標設定に関する議論

●コミュニティ戦略、目標に関する討議

●エンゲージメントの共有など

サステナビリティタスクフォース

環境

4、7、10月

●「気候変動、プラスチック問題などへの取り組みに関する議論

●2022年計画の進捗の共有など

コミュニティ

4、6、9月

●グローバル共通で行うコミュニティ支援に関する議論

●コミュニティ戦略に関する議論など

責任ある飲酒

2、4、6、8、10、12月

●グローバルトレンドの共有

●グローバル目標設定や達成に向けた議論

●各地域取り組み事例の共有など

※サステナビリティ実行会議の議論を補完するために実施

 

[取締役会におけるサステナビリティの議論]

 アサヒグループでは、『中長期経営方針』のコア戦略に位置付けられているサステナビリティ戦略について、取締役会においても重点的に議論を行っています。「グローバルサステナビリティ委員会」で議論した戦略や目標値は経営戦略会議(現 Corporate Management Board)で審議し、取締役会に報告してモニタリングされています。また、各Regional Headquarters(以下、RHQ)のCEOが毎年2回、各地域でのサステナビリティに関する具体的な取り組みや進捗について、取締役会に報告しています。

 

サステナビリティに関する直近の取締役会報告内容

 

議題

内容

2023年3月

TCFD提言への取り組み

シナリオ分析で特定されたリスクと機会、取り組み強化に向けた課題

2023年7月

サステナビリティと経営の統合

サステナビリティと経営の統合に向けた、[戦略][計画][管理][エンゲージメント][ガバナンス]における主な内容と今後の課題

2023年12月

アサヒグループ人権方針の改定

全社取り組み強化に向けた、人権方針の改定

2023年12月

サステナビリティ委員会の設置

取締役会のモニタリング体制強化に向けた、サステナビリティ委員会設置

2024年1月

TCFD/TNFD開示

TCFD/TFNDを統一したシナリオ分析結果と開示内容

 

[取締役会のサステナビリティスキル・能力]

 アサヒグループホールディングス(株)は「取締役会スキルマトリックス」に照らし、豊富な経験、高い見識、高度な専門性・能力を有する人物により取締役会を構成することとしています。

 「取締役会スキルマトリックス」は、役員に求める要件をグループ理念“Asahi Group Philosophy”(以下、AGP)や経営戦略などから導いて策定したもので、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に必要な取締役会全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性を確保することを目的としています。この中では意思決定スキルとして「サステナビリティ」も設定しており、「事業を通じた社会インパクト創出をリードするスキル」「ESGの知識と見識に基づき経営を方向付けるスキル」と定義しています。具体的には、サステナビリティの重点テーマである「気候変動への対応」「持続可能な容器包装」「人と人とのつながりの創出による持続可能なコミュニティの実現」などの監督経験があることや、「不適切飲酒の撲滅」「新たな飲用機会の創出によるアルコール関連問題の解決」への対応を踏まえ酒類事業の経験があることなどを指しています。

取締役会スキルマトリックス

 

意思決定スキル

監督スキル

 

長期戦略

グローバル

サステナ

ビリティ

非連続成長

シニア

リーダー

シップ

財務

リスク・

ガバナンス

人材・文化

小路 明善

 

 

勝木 敦志

 

 

谷村 圭造

 

 

 

 

﨑田 薫

 

 

 

 

クリスティーナ・

アメージャン

 

 

 

 

佐々江 賢一郎

 

 

 

 

大橋 徹二

 

 

 

松永 真理

 

 

 

 

西中 直子

 

 

 

 

佐藤 千佳

 

 

 

 

メラニー・ブロック

 

 

 

 

*「取締役会スキルマトリックス」は各取締役の役割に照らして発揮が期待されるスキルを記載しており、各取締役が保有するすべての知見・経験を表すものではありません。

 

「取締役会スキルマトリックス」に定めるスキルの定義

スキル

定義

意思決定スキル

長期戦略

●長期あるいは超長期の社会の変化を洞察するスキル

●洞察した将来をバックキャストして戦略に導くスキル

グローバル

●グローバルの視点・視座で意思決定を行うスキル

●ローカルとグローバルを融合し最適化するスキル

サステナビリティ

●事業を通じた社会インパクト創出をリードするスキル

●ESGの知識と見識に基づき経営を方向付けるスキル

非連続成長

●事業構造や稼ぐモデルを変革するスキル

●イノベーションを促し、新規領域を探索するスキル

監督スキル

シニアリーダーシップ

●的確な執行状況の把握と課題提起するスキル

●リーダーシップチームの業務遂行を評価するスキル

財務

●業績・経営指標から経営状況を把握し課題提起するスキル

●資源配分の状況を把握し課題提起するスキル

リスク・ガバナンス

●リスクコントロール状況を把握し課題提起するスキル

●執行ガバナンスの状況を把握し課題提起するスキル

人材・文化

●多様な人材の能力発揮の状況を評価するスキル

●企業文化の状況を把握し課題提起するスキル

 

[役員報酬への社会的価値指標(サステナビリティ指標)の組み込み]

 アサヒグループホールディングス(株)は、取締役の報酬がAGPの実現やサステナビリティと経営の統合などに向けたインセンティブとして機能するよう設計しています。取締役の報酬はあらかじめ株主総会で決議された総額の範囲内で取締役会の決議により決定されており、決議の際は報酬委員会で内容を検討したうえで、透明性及び客観性を高めて公正なプロセスで決定しています。報酬委員会は取締役会の諮問機関として社外取締役が委員長を務めるとともに過半数が社外取締役で構成されており、公正な判断を保証するため、必要に応じて外部の客観的データを活用しています。

 

 取締役の報酬は、社内取締役は基本報酬と賞与(年次・中期)及び株式報酬で構成し、社外取締役は基本報酬のみとしています。社内取締役の賞与のうち3年ごとに支給される中期賞与は、業績指標のうち40%が社会的価値指標によって決定されます。サステナビリティ戦略における重点方針及び事業・社会への影響を踏まえ、グループとして取り組むべき領域を選定して社会的価値指標としています。具体的には、サステナビリティ戦略の5つの重点テーマと、『中長期経営方針』で戦略基盤強化として位置付けている「人的資本の高度化」において取り組んでいる「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン」の5領域を選定しています(マテリアリティ「責任ある飲酒」に紐づく2つの重点テーマは1領域として設定)。

 これらの各指標は中期計画KPIと連動しており、領域に応じてウェイトを設定しています。ウェイトを考慮し、目標達成度合いに応じて50~150%の範囲で、各指標の進捗及び達成状況を総合的に評価して決定します。

 具体的な中期賞与の算定方法については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(4)役員の報酬等 5) 変動報酬」をご参照ください。

 

②戦略

 アサヒグループは、事業成長と社会価値の創出の最大化を目指して、バリューチェーン全体で人々のサステナブルな生活を実現することを重点方針として定めています。また、経営課題として取り組む領域を特定したマテリアリティ・取り組みテーマを設定し、適切で実効性のある取り組みにつなげています。

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③リスク管理

[リスクマネジメント体制]

 アサヒグループは、グループ全体を対象に、エンタープライズリスクマネジメント(ERM)を導入しています。

ERMには、サステナビリティ関連のリスクも含んでおり、詳細については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

 

④指標及び目標

[2023年指標・目標]

テーマ

対象組織

指標・目標(2023年現在)

SDGs

(貢献できるゴール・ターゲット)

環境

気候変動への

対応

グループ全体(共通)(AB、ASD、AGS、AEI、AHA、AHSEA)

2040年までに、Scope1,2,3においてCO2排出量ネットゼロを達成する(排出量の削減が90%以上、炭素除去※1は最大10%)※2

7.2/7.3/13.1/13.2

グループ全体(平均)(AGJ、AEI、AHA、AHSEA)

2030年までに、Scope1,2においてCO2排出量を70%削減する(2019年比)

グループ全体(平均)(AB、ASD、AGS、AEI、AHA、AHSEA)

2030年までに、Scope3においてCO2排出量を30%削減する(2019年比)

グループ全体(平均)(AGJ、AEI、AHA、AHSEA)

2025年までに、Scope1,2においてCO2排出量を40%削減する(2019年比)

AGJ

2025年までに、全生産拠点の購入電力を100%再生可能エネルギーにする

AGJ

CO2排出量を毎年前年比1%以上削減する

AEI

2030年までに、生産拠点におけるカーボンニュートラルを実現する

AEI

2025年までに、生産拠点において使用する電力を100%再生可能エネルギーにする

AHA

2025年までに、Scope1,2においてCO2排出量を50%削減する(2019年比)

AHA

2025年までに、購入電力の100%を再生可能エネルギーにする

AHSEA

2030年までに、Scope1,2においてCO2排出量を50%削減する(2019年比)

持続可能な

容器包装

グループ全体(共通)

(AB、ASD、AEI、AHA、AHSEA)

2025年までに、プラスチック容器※3を100%有効利用可能※4な素材とする※2

12.4/12.5/14.1

グループ全体(共通)(ASD、AEI、AHA、AHSEA)

2030年までに、PETボトルを100%リサイクル素材、バイオ由来の素材等に切り替える※2

グループ全体

(共通)

プラスチックに替わる持続可能な新素材の開発・プラスチック容器包装を利用しない販売方法を推進する※2

AGJ

「ラベルレス商品」の売上目標(2023年前年比:117%)を達成する(対象:アサヒ飲料(株))

AEI

2030年までに、容器及び二次包装を、リユースまたはリサイクル可能で、主にリサイクル材料から作られた素材とする

AEI

2030年までに、プラスチック使用量を25%削減する(2019年比)

AHA

2030年までに、びんとアルミ缶におけるリサイクル素材の使用率を50%以上にする

AHSEA

2025年までに、PETボトルにリサイクル素材を30%使用する

 

 

 

テーマ

対象組織

指標・目標(2023年現在)

SDGs

(貢献できるゴール・ターゲット)

環境

持続可能な

農産物原料

グループ全体(共通)(AB、ASD、AGS、AEI、AHA、AHSEA)

2030年までに大麦とコーヒーについて、認証※5を活用して、100%持続可能に生産された原料の調達を実現する※2

 

グループ全体(共通)(AB、ASD、AGS、AEI、AHA、AHSEA)

2030年までに5原料(コーヒー、サトウキビ、パーム油、カカオ、茶)の農園レベルの人権デューデリジェンス実施により、原料生産地の人権リスクを低減し、持続可能に生産された原料を調達する※2

 

AGJ

2023年RSPO認証パーム油(Book & Claim認証方式)の購入量1,900トンを達成する

(購入見込み総量の50%)

2.4/12.2

持続可能な

水資源

グループ全体(平均)(AB、ASD、AEI、AHA、AHSEA)

2030年までに水使用量の原単位をグローバル平均3.2m3/kl以下、優先流域の主要な生産拠点※6では平均2.7m3/kl以下にする※2

6.4/6.6

AEI

2030年までに、欧州におけるビール1Lあたりの水の消費量を2.75Lにする

すべての醸造所で1Lのビールを醸造するために使用する水の量を3L未満にする

AHA

2030年までに、主要生産拠点における製品1Lあたりの水の使用量を2.19Lにする

グループ全体(共通)

2030年までに水リスクの高い地域※7にある生産拠点100%で、流域の各課題※8改善に貢献する取り組みを実施する※2

その他環境の

取り組み

グループ全体(共通)

(AGJ、AEI、AHA、AHSEA)

2030年までに、自社生産拠点の埋立廃棄ゼロを達成する

2.4/12.2/12.5

AGJ

副産物、廃棄物再資源化比率100%を継続する

コミュ

ニティ

人と人との

つながりの創出による持続可能なコミュニティの実現

グループ全体(共通)

基本活動「コミュニティ支援活動」において、グローバル施策「RE:CONNECTION for the EARTH」を実施し、全RHQが参画する

2.4/11.a/17.16/17.17

AGJ

地域環境に関するグループ横断型コミュニティ支援施策を年2回実施する

AHSEA

各ビジネスユニットでコミュニティプログラムを年2回実施する

 

 

 

テーマ

対象組織

指標・目標(2023年現在)

SDGs

(貢献できるゴール・ターゲット)

責任ある飲酒

不適切飲酒の

撲滅

グループ全体(共通)(AGJ、AEI、AHA)

2023年までに従業員の研修参加率100%(2021年以降で1回以上)を達成する

3.5

グループ全体(共通)

2024年までに「IARDデジタルガイドライン」への対応率100%を達成する

グループ全体(共通)

2024年までに、すべてのアルコール飲料ブランド(そのブランドで販売されるノンアルコール飲料を含む)の商品に、飲酒の年齢制限に関する表示をする

新たな飲用機会

の創出による

アルコール関連

問題の解決

グループ全体(平均)

2030年までに主要な酒類商品※9に占めるノンアルコール飲料・低アルコール飲料の販売量構成比20%以上を達成する※2

健康

健康価値の創造

AGJ

特保・機能性・ヘルスケア商品の売上目標を達成する※10

3.2/3.4

AGJ

健康価値を訴求する小容量シリーズの売上目標を達成する※11

AHSEA

100ml当たり砂糖の使用量5g以下の商品の構成比70%以上を継続する

人権

人権の尊重

AGH

2030年までに自社従業員※12と直接材一次サプライヤー※13の100%で人権デューデリジェンスを実施し、各事業会社・機能部門が継続的にPDCAをモニタリングできる状態にする※2

8.5/8.7/8.8/10.2

その他

諸課題

持続可能なサプライチェーンの実現

AGH

「アサヒグループサプライヤー行動規範」について、コミットメント高度化のため見直しを行い2023年中に改正案を決定する

2.3/2.4/12.6/12.7

食の安全・安心

グループ全体(共通)

品質事故※14ゼロを実現する

3.2/3.4

AHSEA

2024年までにすべての工場でFSSC 22000認証を取得する

*略称で記載している会社の正式名称は以下のとおりです。

AGH:アサヒグループホールディングス(株)

AGJ:アサヒグループジャパン(株)

AB :アサヒビール(株)

ASD:アサヒ飲料(株)

AGS:アサヒグループ食品(株)

AEI:アサヒヨーロッパアンドインターナショナル

AHA:アサヒホールディングスオーストラリア

AHSEA:アサヒホールディングスサウスイーストアジア

 

※1.炭素除去:SBTイニシアチブに準拠し、ネットゼロ目標時点における残余排出量、及びそれ以降に大気中に放出されるすべてのCO2排出量について、大気中から炭素を除去し、永続的に貯蔵することで中和する

※2.2024年に目標として新設または目標・文言改訂

※3.対象とするプラスチック容器:PETボトル、プラボトル、PETボトル・プラボトルに使用する一部のキャップ、プラカップ(販売用)など

※4.有効利用:リユース可能、リサイクル可能(研究段階でのリサイクル可能性を含む)、堆肥化可能、熱回収可能など

※5.原料ごとに活用する認証・基準を2024年に最終化する

※6.優先流域の生産拠点は水リスク評価ツール(Aqueduct, Water Risk Filter, Integrated Biodiversity Assessment Tool(IBAT))の結果及び各生産拠点で行っている水リスク詳細調査に基づき選定(対象:9生産拠点)

※7.水リスクの高い地域とは水量、水質、Water Sanitation and Hygiene(WASH)等に関するリスクのある流域または世界的に認知されている流域(例えばCEO Water Mandate priority basins)を加味し、選定(対象:7製造生産拠点)

 

※8.流域課題は、水量、水質、Water Sanitation and Hygiene(WASH)などに関するリスク含む各流域固有の課題

※9.主要な酒類商品:ビール類、RTD、ノンアルコール飲料(ノンアルコールのアルコールテイスト(風味)飲料)

※10.対象商品:『カラダカルピス® BIO(ビオ)』『アサヒ 十六茶 糖と脂肪にはたらく』など

※11.対象商品:『届く強さの乳酸菌』『守る働く乳酸菌』など

※12.ディストリビューターを通じた輸出事業を除く事業展開国

※13.原材料・包装資材の10万米ドル以上の既存サプライヤー

※14.品質事故:GRIスタンダード416-2、及び417-2にて示された関連規制及び自主的規範の違反などを理由とした新聞社告または自社Webサイトにて告知した商品回収の事例

 

[取り組み進捗状況(2022年)]

 2022年の取り組み状況は以下のとおりです。サステナビリティ推進体制のもと、未達の項目についてはその原因を把握し、達成に向けて推進していきます。

テーマ

対象組織

指標・目標(2022年現在)

2022年実績

環境

気候変動への

対応

グループ全体(共通)(AB、ASD、AEI、AHA、AHSEA)

2050年までに、Scope1,2,3においてCO2排出量をゼロとし、カーボンニュートラルを実現する

Scope1,2,3の排出量:8,914千t-CO2

グループ全体(平均)(AGJ、AEI、AHA、AHSEA)

2030年までに、Scope1,2においてCO2排出量を70%削減する(2019年比)

Scope1,2の排出量:686千t-CO2、2019年比30%削減

グループ全体(平均)(AB、ASD、AEI、AHA、AHSEA)

2030年までに、Scope3においてCO2排出量を30%削減する(2019年比)

Scope3の排出量:8,328千t-CO2、2019年比5%削減

AGJ

2025年までに、全生産拠点の購入電力を100%再生可能エネルギーにする

生産拠点における購入電力の再生可能エネルギー比率:83%

AGJ

CO2排出量を毎年前年比1%以上削減する

Scope1,2の排出量:341千t-CO2、前年比15%削減

AEI

2030年までに、生産拠点におけるカーボンニュートラルを実現する

生産拠点におけるScope1,2の排出量:139千t-CO2、2019年比54%削減

AEI

2025年までに、生産拠点において使用する電力を100%再生可能エネルギーにする

生産拠点における使用電力の再生可能エネルギー比率:65%

AHA

2025年までに、Scope1,2においてCO2排出量を50%削減する(2019年比)

Scope1,2の排出量:168千t-CO2、2019年比11%増加

AHA

2025年までに、豪州とニュージーランドにおいて使用する電力を100%再生可能エネルギーにする

豪州とニュージーランドにおける使用電力の再生可能エネルギー比率:9%

AHSEA

2030年までに、Scope1,2においてCO2排出量を20%削減する(2019年比)

Scope1,2の排出量:38千t-CO2、2019年比29%削減

持続可能な

容器包装

グループ全体(共通)(AB、ASD、AHA、AHSEA)

2025年までに、プラスチック容器を100%有効利用※1可能な素材とする

有効利用可能な素材の比率:99%(事業国により、有効利用の考え方が異なる)

グループ全体(共通)(ASD、AEI、AHA、AHSEA)

2030年までに、PETボトルを100%環境配慮素材※2に切り替える

環境配慮素材の比率:21%

 

 

 

テーマ

対象組織

指標・目標(2022年現在)

2022年実績

環境

持続可能な

容器包装

グループ全体(共通)

環境配慮新素材の開発・プラスチック容器包装を利用しない販売方法を検討する

●日本でラベルレス商品の拡大

●欧州・豪州でプラスチック製シュリンクフィルムから段ボールへの切替えを実施

●日本のアサヒユウアス(株)で、「森のタンブラー」などのリユースカップにより、スポーツ施設やイベントにおける使い捨てプラスチックカップを削減

AGJ

「ラベルレス商品」の売上目標(2022年前年比:109%)を達成する(対象:アサヒ飲料(株))

売上目標達成率:134%(前年比:149%)

AEI

2030年までに、容器及び二次包装を、リユースまたはリサイクル可能で、主にリサイクル材料から作られた素材とする

リユース、またはリサイクル可能な素材の比率:97%

AEI

2030年までに、プラスチック使用量を25%削減する(2019年比)

2019年比21%削減

AHSEA

2025年までに、PETボトルにリサイクル素材を30%使用する

リサイクル素材使用率:0%

取り組み開始に向け、社外イニシアチブへの参画などを推進

持続可能な

農産物原料

AGJ

2022年までに、RSPO認証パーム油の購入比率50%を達成する(Book & Claim認証方式)※3

購入比率:48%

持続可能な

水資源

グループ全体(平均)(AB、ASD、AEI、AHA、AHSEA)

2030年までに、水使用量の適正化やリサイクルシステムの拡大などにより、水使用量の原単位を3.2m3/kl以下とする

水使用量原単位:3.4m3/kl

AEI

2030年までに、欧州におけるビール1Lあたりの水の消費量を2.75Lにする

すべての醸造所で1Lのビール醸造に使用する水の量を3L未満にする

水使用量原単位:2.92L

AHA

2030年までに、主要生産拠点における製品1Lあたりの水の使用量を2.19Lにする

水使用量原単位:2.23L

グループ全体(共通)

グループ内の酒類、飲料の主要生産拠点における水リスク調査を定期的に(5年に1回)実施する

水リスク調査実施拠点数:18拠点(2024年までに全主要拠点で実施予定)

AGJ

「アサヒの森」を活用した日本国内ビール工場のウォーターニュートラルを継続する

日本国内ビール工場の水使用量の1.1倍の水を「アサヒの森」で涵養

その他環境の

取り組み

グループ全体(共通)(AGJ、AEI、AHA、AHSEA)

2030年までに、自社生産拠点の埋立廃棄ゼロを達成する

埋立廃棄率:2%

AGJ

副産物、廃棄物再資源化比率100%を継続する

再資源化比率:100%

 

テーマ

対象組織

指標・目標(2022年現在)

2022年実績

コミュ

ニティ

人と人との

つながりの創出による持続可能なコミュニティの実現

グループ全体(共通)

●「食」「地域環境」「災害支援」を重点領域とする

●「食」を支える基盤であり、地域環境にも影響の大きい農業を未来へつなぐための「地域農業支援活動」と、従業員が地域の社会課題の解決に参画することでコミュニティのつながりの強化を目指す「コミュニティ支援活動」を重点施策とする

「RE:CONNECTION for the EARTH」を6月に実施し、全RHQが参加

AGJ

日本国内事業会社共通のプラットフォームを立ち上げ、従業員のコミュニティ支援活動機会を提供する

コミュニティ支援活動ポータルサイト「ぐるぐるアサヒ」を2月に開設

AGJ

「地域共創」事業場オリジナル施策実施数について、2022年の目標を達成する(対象:アサヒ飲料(株))

計画8件に対して、22件実施。目標達成率:275%

AHSEA

各ビジネスユニットでコミュニティプログラム(ビーチクリーンなど)を、年に2回実施する

実施回数:46回

責任ある飲酒

不適切飲酒の

撲滅

グループ全体(共通)(AGJ、AEI、AHA)

2023年までに、従業員の研修参加率100%(1回以上)を達成する

2023年にグローバルで開始予定(日本での受講率:93%)

グループ全体(共通)

2022年までに、「IARDデジタルガイドライン」への対応率95%を達成する

対応率:77%

グループ全体(共通)

2024年までに、すべてのアルコール飲料ブランド(そのブランドで販売されるノンアルコール飲料を含む)の製品に、飲酒の年齢制限に関する表示をする

グループ全体で目標達成に向けて取り組み中(日本での表示率実績:100%)

新たな飲用機会

の創出による

アルコール関連

問題の解決

グループ全体(平均)

2025年までに、主要な酒類商品

※4に占めるノンアルコール飲料・低アルコール飲料の販売量構成比15%以上を達成する

販売量構成比:10%

AGJ

2025年までに、ノンアルコール飲料・低アルコール飲料の販売量構成比20%を達成

販売量構成比:8%

AEI

2030年までに、ノンアルコール飲料の販売量構成比20%を達成する

販売量構成比:6%

AHA

2025年までに、ノンアルコール飲料・低アルコール飲料の販売量構成比30%を達成する

販売量構成比:27%

 

 

テーマ

対象組織

指標・目標(2022年現在)

2022年実績

健康

健康価値の創造

AGJ

特保・機能性・ヘルスケア商品の売上目標を達成する※5

売上目標達成率:99%(前年比:113%)

AGJ

健康価値を訴求する100mlシリーズの売上目標を達成する※6

売上目標達成率:110%(前年比:145%)

(2022年に、200mlシリーズを発売)

人権

人権の尊重

AGH

2022年までに、サプライヤーにおける人権デューデリジェンスプロセスを一巡させる

目標に対して計画どおり進捗。2022年は、前年に引き続き、サプライヤーCSR質問表の結果を踏まえた一次サプライヤーへのオンラインによる取り組み状況のヒアリング実施。現代奴隷リスク分析により高リスクと判断した農作物栽培地域において、関連するステークホルダーやNGOへのインタビュー調査、デスクリサーチを実施

AGH

従業員に対する人権研修を年2回実施する

実施回数:2回

その他

諸課題

持続可能なサプ

ライチェーンの

実現

AGH

サプライヤーCSR質問表実施後の現地インタビューを、年間12件実施する

実施回数:9件(オンラインで実施)

食の安全・安心

グループ全体(共通)

品質事故※7ゼロを実現する

品質事故:1件

AHSEA

2024年までに、すべての工場でFSSC 22000認証を取得する※8

4工場のうち3工場で取得

*略称で記載している会社の正式名称は以下のとおりです。

AGH:アサヒグループホールディングス(株)

AGJ:アサヒグループジャパン(株)

AB :アサヒビール(株)

ASD:アサヒ飲料(株)

AEI:アサヒヨーロッパアンドインターナショナル

AHA:アサヒホールディングスオーストラリア

AHSEA:アサヒホールディングスサウスイーストアジア

 

※1.有効利用:リユース可能、リサイクル可能、堆肥化可能、熱回収可能など

※2.環境配慮素材:リサイクル素材、バイオマス素材など

※3.2021年に実績算出方法を見直した

※4.ビール類、RTD、ノンアルコール飲料(ノンアルコールのアルコールテイスト(風味)飲料)

※5.対象商品:『カラダカルピス® BIO(ビオ)』『アサヒ 十六茶 糖と脂肪にはたらく』

※6.対象商品:『届く強さの乳酸菌』『守る働く乳酸菌』など

※7.品質事故:GRIスタンダード416-2、及び417-2にて示された関連規制及び自主的規範の違反などを理由とした新聞社告または自社Webサイトにて告知した商品回収の事例

※8.2022年に目標を見直した

 

 

(2)その他の項目

a.気候変動への対応

 地球温暖化による気候変動は、干ばつや洪水といった異常気象の激化を引き起こし、世界中の人々の生活や多様な生態系に大きな影響を与えています。気候変動による生態系への被害は年々激化しており、社会全体の脱炭素化の実現が叫ばれています。そのため、「自然の恵み」を享受して事業を行うアサヒグループにとって、気候変動問題への対策は重要な課題と認識しています。アサヒグループは大切な「自然の恵み」を地球温暖化から守り、次世代につなげるために、事業の脱炭素化を実現しなくてはいけません。

 アサヒグループは、2024年にScope1,2,3の中長期脱炭素目標「アサヒカーボンゼロ」を10年前倒しして、2040年にCO2排出量ネットゼロを目指しています。また、事業の枠を超えた社会全体におけるカーボン排出量削減に貢献するありたい姿「Beyondカーボンニュートラル」を掲げ、達成に向けてさまざまな取り組みを積極的に推進しています。

 アサヒグループは、気候変動を看過できない事業上のリスクとして認識しています。これまで、シナリオ分析を通じて気候変動の自社への将来影響を分析してきた結果、炭素税が導入された場合、2030年に90億円、2050年に153億円製造コスト上昇の影響があると試算しました(2022年時分析)。しかし、「アサヒカーボンゼロ」に取り組むことで、2030年に62億円、2050年に153億円の削減効果があると見込んでいます(2022年時分析)。さらに、アサヒグループがバリューチェーン全体のCO2排出量を削減することで、気候変動の緩和に貢献します。

 気候変動への対応は、アサヒグループにとって製造方法の抜本的な見直しや新技術の実証試験を加速させ、コスト競争力向上とさらなる効率化を推進させる機会になるとも捉えています。また、「ラベルレス商品」等を販売することで、脱炭素社会への移行に貢献し、新たな事業機会を生み出すことができると考えています。

 アサヒグループは、今後、事業に関わるすべての活動(Scope1,2,3)において脱炭素を実現し、さらにCO2排出量削減、吸収、回収などの技術を開発・展開することで「アサヒグループ環境ビジョン2050」で定めた2050年の世界のありたい姿である「事業の枠を超えた社会全体におけるカーボン排出量が削減され、生物多様性が保全された世界」を目指し、取り組みを加速させていきます。

 

①ガバナンス

 アサヒグループは、アサヒグループホールディングス(株)の代表取締役社長兼Group CEOが委員長を務めるグローバルサステナビリティ委員会で、グループ全体の環境を含むサステナビリティ課題に対して取り組む体制を構築しています。環境マネジメントの対象は、アサヒグループジャパン(株)、アサヒヨーロッパアンドインターナショナル、アサヒホールディングスオーストラリア、アサヒホールディングスサウスイーストアジアです。日本では、アサヒグループジャパン(株)社長をトップマネジメントとした「グループ環境会議」やISO 14001グループ統合認証「ISO事務局連絡会」を組織し、「アサヒグループ環境ビジョン2050」達成に向けた目標策定及び環境活動の進捗把握・評価を行っています。

 

②戦略

 アサヒグループは、2040年までにCO2排出量ネットゼロを目指す中長期目標「アサヒカーボンゼロ」を設定しています。また、バリューチェーンを越えて社会全体のカーボン排出量削減に貢献できるよう「Beyondカーボンニュートラル」の目標を掲げています。この2つの目標実現のため、多岐にわたる取り組みを積極的に進めています。また、2019年に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明し、シナリオ分析を通じて、気候変動へ対応した事業戦略の策定も進めています。

 

<「アサヒカーボンゼロ」への取り組み>

 アサヒグループは、気候変動への中長期目標「アサヒカーボンゼロ」を設定しています。「アサヒカーボンゼロ」は、2040年にScope1,2及びScope3にてCO2排出量ネットゼロを目指すものであり、2030年にScope1,2において70%削減、Scope3において30%削減を目標とするものです。さらに、Scope1,2は2025年までに40%削減する中間目標を設定しました。また、「Beyondカーボンニュートラル」では、バリューチェーンを超えた社会全体のカーボン排出量削減を目指します。

 

 Scope1,2におけるCO2排出量削減のため、事業場の設備を中心に省エネ化と電化を進め、使用するエネルギー全体における熱および燃料の利用割合を削減します。また2030年までに脱炭素関連施策に500億円以上を投資し、自社内での再エネ化の早期導入完了を目指します。さらに、再生可能エネルギーの活用については、2020年10月に日本国内飲料業界としては初となるRE100に加盟し、2040年までに使用する電力全てを再生可能エネルギーにすることを目指しています。Scope3におけるCO2排出量削減については、全体の80%以上を占める「原料・資材」「輸送(上流・下流)」由来のCO2排出を優先領域と定めて削減を進めます。具体的には、原料・資材においてはアルミ缶・PETボトルなどの容器包装の軽量化やリサイクル素材の活用を推進し、量と質の両面から取り組みを進めます。輸送においては、実証実験中の燃料電池トラックなどCO2排出量の少ない輸送手段を導入します。また、サプライヤーの皆様やパートナーと協働し、バリューチェーンのCO2削減と生態系保全の両立を目指します。

 アサヒグループとして、科学的な根拠に基づく脱炭素目標設定の重要性を認識しています。そのため、「アサヒカーボンゼロ」は、SBT(Science Based Targets)イニシアチブと呼ばれる、脱炭素目標が科学的な根拠と整合しているかを認定する国際的なイニシアチブに認定を申請しました。その結果、2030年のScope1,2目標において「1.5℃目標」、Scope3目標において「2℃目標」の認定を取得しています。2040年までにCO2排出量ネットゼロを目指す中長期目標についてもSBTイニシアチブからの認証取得に向けて取り組んでいます。

 

<TCFD提言への取り組み>

 アサヒグループは、気候変動によるリスクと機会に関連する事業インパクトの評価及び対応策の立案が、持続可能な社会の実現及び事業の持続可能性に不可欠であると認識し、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明しています。

 

③リスク管理

 アサヒグループは、地球温暖化により、気候の変化や、異常気象が起こることによって、アサヒグループの事業継続が難しくなるとともに社会へさまざまな悪影響を及ぼすことをリスクと捉えています。

 これらのリスクについては、グループ全体で実施しているエンタープライズリスクマネジメント(ERM)体制下において代表取締役社長兼Group CEOが委員長を務めるリスクマネジメント委員会が管理すべき主要リスクと位置付け、リスク評価、対応計画の策定・実行・モニタリングを継続的に実施しています。

 

④指標及び目標

 「(1)サステナビリティ ④指標及び目標」をご参照ください。

 

b.持続可能な容器包装

 容器包装は、お客様に価値ある商品を提供する上で重要な役割を担っています。品質保持や輸送強度を担保するとともに、デザインや表示によりコミュニケーション手段としての機能を果たすほか、使用段階での使いやすさ、原料資源の持続可能性が求められています。一方で、不適切に廃棄されたプラスチック製の容器包装による、海洋汚染や生態系への影響が、喫緊の社会課題となっています。

 アサヒグループは、「アサヒグループ環境ビジョン2050」において、容器包装の領域における2050年の世界のありたい姿を「容器包装廃棄物のない社会」と定義しました。具体的には、「使用される容器包装の資源利用最小化と、使用後の容器包装再利用化による循環型社会の構築への貢献によって、海洋生態系が保全された世界」を目指しています。

 アサヒグループは、環境に配慮されていない容器包装への規制や、リサイクル素材やバイオ由来の素材に対する需要増加による調達やコストへの影響を想定しています。炭素税が導入された場合、PETボトルをはじめとする代表的な容器への価格転嫁による影響は、2030年が376億円、2050年が728億円と試算しています(2022年時分析)。また、プラスチックを消費者が敬遠することによって売上が減少するリスクがある一方、リサイクル素材やバイオ由来の素材の積極的な使用は、環境に配慮された商品を買いたいというお客様のニーズに応え、売上が拡大することにもつながります。

 容器包装にリサイクル素材やバイオ由来の素材を使用することは、化石由来原料の使用量とCO2排出量の削減につながり、気候変動問題への対応にも寄与します。また、リサイクルのバリューチェーンの一端を担い、リサイクル素材の導入や品質の向上、需給の安定化に努めることで、長期的には廃棄物発生をなくし、資源が循環する社会の構築に貢献します。

 

①ガバナンス

 「(2)その他の項目 a.気候変動への対応 ①ガバナンス」をご参照ください。

 

②戦略

 アサヒグループは、環境に配慮されていない容器包装への規制や、リサイクル素材やバイオ由来の素材に対する需要増加による調達やコストへの影響を想定しており、そのリスク軽減に取り組む重要性を認識しています。一方、容器包装において環境に配慮した素材を使用することは、循環型社会の構築及び化石由来原料の使用量とCO2排出量の削減につながると考えています。

 アサヒグループは、「アサヒグループ環境ビジョン2050」において2050年の世界のありたい姿として掲げた「容器包装廃棄物のない社会」の実現に向けて、アサヒググループの全ての容器包装(三次包装まで)の資源を循環させて、容器包装廃棄物を出さないことを目指します。「3R+Innovation」目標のもと推進してきたプラスチックの課題への対応を継続し、2030年までにPETボトルを100%リサイクル素材、バイオ由来の素材等に切り替えることを目標とします。また、リデュースの取り組みや、環境に配慮した新容器の開発にも取り組んでいきます。

 上記に加えて、缶、びん、樽、紙などその他の容器包装資材についても、3Rの観点から省資源・軽量化・リサイクル性向上に努めます。

 

③リスク管理

 アサヒグループは、不適切に廃棄された容器包装により、海洋汚染や生態系への影響が出てくることによって、アサヒグループの事業継続が難しくなるとともに社会へさまざまな悪影響を及ぼすことをリスクと捉えています。

 これらのリスクについては、グループ全体で実施しているエンタープライズリスクマネジメント(ERM)体制下において代表取締役社長兼Group CEOが委員長を務めるリスクマネジメント委員会が管理すべき主要リスクと位置付け、リスク評価、対応計画の策定・実行・モニタリングを継続的に実施しています。

 

④指標及び目標

 「(1)サステナビリティ ④指標及び目標」をご参照ください。

 

c.持続可能な農産物原料

 「自然の恵み」を享受して事業活動を行う企業として、持続可能な農産物原料調達を実現することはアサヒグループの事業の根幹を成しています。

 一方で、農産物原料のバリューチェーンでは、人権、コミュニティ、環境の観点からさまざまな課題が起こりえます。人権やコミュニティの観点からは、関係しているさまざまなステークホルダー(農産地から生産拠点、市場に至るまでの農産物生産者、加工業者、輸出入業者、サプライヤーなど)に対して、人権配慮やコミュニティへの貢献が欠かせません。また、環境の面では、農産物の生産、収穫、加工、物流の工程を通じてCO2を排出し、水・土壌を利用しています。このようなバリューチェーン上の営みは、農産物生産地の近隣生態系維持に必要な水の不足、土壌汚染等の理由による生物の生息へのインパクトといった生態系への悪影響を引き起こす可能性があります。また気候変動により収量や品質が大きな影響を受ける作物もあります。

 アサヒグループは、気候変動により農産物収量が減少することによる調達コストの増加をリスクとして想定しており、各事業の主要原料の将来の収量影響とともにアサヒグループへの財務影響を試算しています。21世紀末までの平均気温が4℃程度上昇するシナリオのもとでは、コーヒー関連で26億円、トウモロコシ関連で19億円のコスト上昇の可能性があることを特定しています(2022年時分析)。さらに、農産物原料を生産する地域が活性化し、生産者が心身ともに健康で地域社会との繋がりを持ちつつ豊かな生活を送り、次世代に誇りをもって事業を継承していけるよう、生産者のWell-being向上に貢献することも重要だと考えています。

 アサヒグループは「アサヒグループ環境ビジョン2050」において、農産物原料の領域における2050年の世界のありたい姿を「命を育む持続可能な農産物原料」とし、「環境配慮、人権尊重、地域活性化が実現された農業が行われ、安定的な生産と生態系の維持が両立した世界」と定義しました。

 この実現を目指すため、環境・人権に配慮した農産物原料の調達を推進し、生産地までのトレーサビリティを確保することを目指します。また、ビール製造工程で発生する副産物やアサヒグループの環境関連技術を活用し、農業・酪農における環境負荷低減に貢献していきます。これからも将来にわたって農産物原料を枯渇させずに安定して確保する取り組みを各地で進めるとともに、ステークホルダーとの共創を通じて大切な「自然の恵み」を次世代につなげることができる「持続可能な農産物原料」の実現を目指していきます。

 

①ガバナンス

 「(2)その他の項目 a.気候変動への対応 ①ガバナンス」をご参照ください。

 

②戦略

 2023年2月に改定した「アサヒグループ環境ビジョン2050」において、農産物原料における2050年の世界のありたい姿を「命を育む持続可能な農産物原料」とし、「環境配慮、人権尊重、地域活性化が実現された農業が行われ、安定的な生産と生態系の維持が両立した世界」と定義しました。この実現に向けて、2023年に「環境」「コミュニティ」「人権」のマテリアリティを横断した検討チームを立ち上げ、アサヒグループホールディングス(株)と各Regional Headquartersのサステナビリティ・調達部門が共に戦略・中期目標・取り組みを検討し、目標達成に向けたロードマップを策定しました。

 このロードマップにおいて、アサヒグループとして初めて、グローバル全体で推進する農産物原料に関する2030年目標を策定しました。具体的には、第一に、2030年までに大麦とコーヒーについて認証を活用して100%持続可能に生産された原料調達を実現することです。活用する認証の選択基準や詳細なルールを2024年中に整理し、活動を具体化します。第二に、2030年までにコーヒー、サトウキビ、パーム油、カカオ、茶の5原料について、農園に対する人権デューデリジェンスを実施することで原料生産地の人権リスクを低減し、持続可能な原料調達を進めることです。

 加えて、2030年までに農産物生産者のWell-being向上を実現することを検討しています。これを実現するため、農産物生産者の地域コミュニティとのつながり、安定的な収量・品質などの指標について、2024年中に具体化することを目指しています。

 そのため、アサヒグループは、気候変動、水リスク、生物多様性などの環境リスクへの評価のほか、地域社会や農園における人権リスクに対しても評価を行い、サプライヤーのリスクの現状を確認し、明らかになったリスクへの対策を進めていきます。同時に産地のコミュニティ課題解決の支援、特に農業支援の取り組みを進めていきます。

 また今後は2030年目標の達成に向けて、サプライヤーやより上流の農産物生産者との連携が欠かせません。グローバルの調達戦略機能を集約する目的で新たに立ち上げたアサヒグローバルプロキュアメントを中心に、計画と実行を進めていきます。そして、より長期の2050年のめざす姿の実現に向けて、継続的に戦略と目標を刷新していきます。

 

③リスク管理

 アサヒグループは、気候変動などの環境影響により、農産物原料の収量や品質に大きな影響が出ることによって、アサヒグループの事業継続が難しくなるとともに、大切な「自然の恵み」としての農産物を次世代につなげることができなくなることをリスクと捉えています。

 これらのリスクについては、グループ全体で実施しているエンタープライズリスクマネジメント(ERM)体制下において代表取締役社長兼Group CEOが委員長を務めるリスクマネジメント委員会が管理すべき主要リスクと位置付け、リスク評価、対応計画の策定・実行・モニタリングを継続的に実施しています。

 

④指標及び目標

 「(1)サステナビリティ ④指標及び目標」をご参照ください。

 

d.持続可能な水資源

 世界人口の増加や開発途上国の経済成長、気候変動などにより、世界規模での水資源問題が発生しています。世界の水需要は年々増加し、今後、さらに水不足の状態となるエリアが拡大するだけでなく、降水量の変動により洪水や干ばつが増加する恐れがあります。

 水は、「自然の恵み」を享受して事業を行うアサヒグループにとって、欠かすことのできない大切な資源であり、地球環境にとっても大切な資源です。

 アサヒグループは、主要原料の生産地域について、事業への影響が大きいサプライヤー・生産地を特定し、干ばつリスク、洪水リスク、評判リスクなどをそれぞれ特定しています。また、水害による生産拠点の操業停止をリスクとして想定し、床上浸水による固定資産・棚卸資産(在庫)の毀損リスクの可能性のある生産拠点を5ヵ所、毀損額が19億円と試算しています。一方、操業停止の可能性が高い生産拠点を10ヵ所と特定し、機会損失額を67億円と試算しました(2022年時分析)。また生産工程で水資源を利用する際、水不足地域において水を過剰に消費することは、地域住民の水アクセスの悪化や水を利用する生態系が水を得られない、生息する場所がないなどの悪影響につながる可能性があります。

 水に対する課題は自社だけでは解決できませんが、共創によって各地域の水資源に起因する問題の解決に寄与することができると考えています。

 

 「アサヒグループ環境ビジョン2050」で定めた2050年の世界のありたい姿である「健康、生活環境、生物多様性が保たれる適切な水質・水量、土壌の機能が維持されており、自然災害へのレジリエンスが向上した世界」を実現するため、各地域の水課題に対する取り組みを通じて、水リスクの大きいアサヒグループのサプライチェーン上(特に農産物原料の生産)で使用する水の総量以上のポジティブインパクトを地球に与えることを目指します。

 

①ガバナンス

 「(2)その他の項目 a.気候変動への対応 ①ガバナンス」をご参照ください。

 

②戦略

 アサヒグループは、人と自然のための健全な水環境の実現のため、グローバル共通で「水使用量の削減」「水リスクが大きい流域における課題改善への貢献」という目標を掲げ、取り組みを行っています。

 水使用量の削減では、酒類・飲料を製造するグループ自社工場での水使用量原単位ではグローバル全体で3.2m³/kl以下、また、優先流域の主要な生産拠点の水使用量原単位では平均で2.7m³/kl以下を目指し、水使用量の削減のためにさまざまな取り組みを実施しています。水を扱うすべての拠点において、製造設備の洗浄工程における水使用の適正化や用途に応じて同じ水を多段的に利用するカスケード利用など、効率性の向上を追求し、取水・排水においては環境への負荷をできる限り小さくできるよう適切な対応・管理に努め、水使用量原単位目標の達成を目指す生産拠点では水管理計画を策定し、水使用量の削減に取り組んでいます。また生態系保全を考慮し、今後もより環境負荷を低減できる排水方法を検討していきます。

 水リスクが大きい流域の課題改善への貢献に向けて、生産拠点とその流域のリスク調査を実施し、リスク低減の対応策を実施しています。水リスクが大きい流域以外の生産拠点においても、今後、現在実施している水源地保全活動の拡大や、ほかの組織との協働などにより、流域課題の改善に貢献していきます。また、アサヒグループの商品は世界中で生産される多種多様な農産物原料を用いているため、それらの水リスクを把握することも不可欠と考え、農産物原料の水リスクの把握と低減に努めています。

 

③リスク管理

 アサヒグループは、世界的な水需要の高まりによる水不足が引き起こされることによって、アサヒグループの事業継続が難しくなるとともに、大切な「自然の恵み」としての水を次世代につなげることができなくなることをリスクと捉えています。これらのリスクについては、グループ全体で実施しているエンタープライズリスクマネジメント(ERM)体制下においてアサヒグループホールディングス(株)Sustainability部門やRegional Headquartersが管理すべきリスクと位置付け、リスク評価、対応計画の策定・実行・モニタリングを継続的に実施しています。

 

④指標及び目標

 「(1)サステナビリティ ④指標及び目標」をご参照ください。

 

e.人と人とのつながりの創出による持続可能なコミュニティの実現

 経済発展とともに人口の流動化が加速し、世界各地で都市部への一極集中や過疎化などの人口分布の偏りが発生することで、地縁的な「つながり」や共通の価値観を持った「つながり」が希薄化しています。このような「つながり」の希薄化は社会的孤立、治安の悪化、地域愛着度の低下、地域社会の担い手不足などのさまざまな社会課題を生み出し、コミュニティ活力低下の要因の1つになっています。

 調達・生産・販売などの事業活動を通じてさまざまなコミュニティに支えられてきたアサヒグループは、改めて「つながり」を見直して進化させることが重要だと考え、マテリアリティ「コミュニティ」の活動スローガンを「RE:CONNECTION」と定めて取り組みを推進しています。

 

①ガバナンス

 アサヒグループは、グループ全体で「コミュニティ」の活動を強化することを目的に、2021年に「コミュニティタスクフォース」を立ち上げてグローバルでの推進体制を構築しました。年に4回実施するコミュニティタスクフォースでは、アサヒグループホールディングス(株)とRHQが、施策の協議やベストプラクティスの共有を通じてグループ全体の活動レベルを向上させることを目指しています。

 2022年には、新たにコミュニティ戦略を構築しました。その構築プロセスとして、コミュニティタスクフォースで各RHQの実務担当者と議論をした後に、サステナビリティリーダー会議、サステナビリティ実行会議で担当役員による討議を経て、グローバルサステナビリティ委員会で決議しました。

 

②戦略

 アサヒグループはコミュニティ活動をより強化するため、2022年にコミュニティ戦略を策定し、重点活動を「持続可能な農産業」、基本活動を「従業員が参画するコミュニティ支援活動」と定めました。

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●重点活動「持続可能な農産業」

 アサヒグループは、「自然の恵み」である農産物を活用して商品・サービスを生み出しており、農産業と深い関わりを持っています。その農産業は、雇用創出や特産・伝統の継承など、コミュニティにおいて人の「つながり」を産む場としての大切な役割を果たしてきました。そこで、アサヒグループの事業、及び社会に与えるインパクトが大きいコミュニティとして、事業の根幹を担う農産物原料への取り組みを強化することを定めました。

 持続的な事業成長を目的とした原料の安定調達とともに、アサヒの独自技術を活用して、農産業を通じた「地域活性化」「環境負荷低減」「人権尊重」などに取り組み、“ステークホルダーとの「つながり(共創)」による農産物生産者のWell-being向上”に貢献します。

 

●基本活動「従業員が参画するコミュニティ支援活動」

 コミュニティの「つながり」を見直し、進化させるためには、従業員自らが地域の抱える課題を考え、その解決に向け行動することが重要であると考えています。基本活動として、従業員がコミュニティ支援活動に参画することを定め、事業との関連性の高い「食」「地域環境」「災害支援」の領域で積極的に活動することで、コミュニティとのつながりを強化することを目指しています。

食:アサヒグループの主要事業領域は酒類・飲料・食品であり、「食」はこれらと密接なつながりがある

地域環境:アサヒグループの商品は「自然の恵み」を享受して事業を展開しており、「地域環境」への配慮は事業継続の要である

災害支援:災害が発生した場合、「災害支援」はその地域で事業を展開する企業として当然の行動と考えている

 

③リスク管理

 アサヒグループは、事業展開地域や原料産地などの地域コミュニティが脆弱化することによってグループの事業の安定操業や安定調達に影響を及ぼすことをリスクと捉えています。これらのリスクについては、アサヒグループホールディングス(株)のSustainability部門が、年に4回各RHQから持続可能な農産業の取り組みやコミュニティ支援活動などの進捗報告を受けるなど、グループ全体の地域社会における活動を管理しています。

 アサヒグループは地域社会から信頼を獲得することで事業の安定操業や安定調達を継続しており、これからも持続可能なコミュニティ活動を推進していきます。

 

④指標及び目標

 「(1)サステナビリティ ④指標及び目標」をご参照ください。

 

 

f.不適切飲酒の撲滅

 酒類は、長い人類の歴史の中で、日々の暮らしに喜びと潤いをもたらすとともに、冠婚葬祭など人生の節目においても、大きな役割を果たしてきました。私たちは、そのような酒類の生産や販売に携わっていることを、大変誇りに思います。一方、不適切な飲酒によって、個人や家庭そして社会にさまざまな問題を起こすこともあります。

 そこでアサヒグループは、グループ飲酒基本方針のもと、不適切な飲酒を撲滅し、アルコールが起因の社会課題の解決を目指していきます。

 

①ガバナンス

 アサヒグループでは、アサヒグループホールディングス(株)のSustainability部門が事務局を担い、各Regional Headquarters(以下、RHQ)の担当役員や担当者が参加するグローバルアルコールポリシー会議を隔月で開催しています。同会議がサステナビリティタスクフォースの役割を担い、グループ全体における酒類関連の課題対応の協議や成功事例の共有などを実施するとともに、同体制の中で、責任ある飲酒の目標達成に向けた協議を行っています。また、2022年には、責任ある飲酒の中長期的な方向性や目標について経営戦略会議(現 Corporate Management Board)やグローバルサステナビリティ委員会で複数回に渡って討議し、将来に向けた具体的な活動を明らかにしました。

 具体的なグローバルKPIやRHQレベルのKPIは、グローバルアルコールポリシー会議で議論を進め、合意されたKPIは四半期ごとの業績報告の中で各RHQのCEOから経営戦略会議(現 Corporate Management Board)に進捗を報告し、必要であれば詳細を議論します。

 また、各事業会社は、中長期の方向性や目標、さらにはグループ飲酒基本方針に基づき、各国・各地域のアルコール関連課題や消費者ニーズを捉えながら具体的な施策を展開しています。

 

②戦略

 アサヒグループは、グループ飲酒基本方針に基づき、不適切な飲酒の撲滅を目指し、従来から各地域の課題を考慮しながらさまざまな活動に取り組んできました。

 2022年には、世界保健機関(WHO)が採択したグローバルアクションプラン2022-2030の内容を踏まえて、その

中で設定されたグローバル目標の指標となる2030年までに「大量飲酒者の削減」や「一人当たりの純アルコール摂取量の削減」の実現に貢献する取り組みを強化する方針を定めました。

 政府によるアルコールに関するマーケティング・営業活動の規制や課税以外の対策で不適切飲酒の課題を解決できることを実証し、その取り組みを進めることでアルコール業界の健全な成長を目指します。そのためにも多くのステークホルダーとともに有害なアルコール使用の削減を社会全体で実現すべく、多様なステークホルダーとの対話を重ねながら具体的な課題解決への貢献を目指します。

 こうした活動を通じて、リスクの低減と機会創出につなげていきます。

 

③リスク管理

 不適切な飲酒は、人々の健康や社会に悪影響を及ぼす可能性があります。また、アサヒグループが予想する以上に、世界的な規模で酒類販売に関する規制が強化されることも考えられます。これらの影響で、アルコールを製造・販売する当社グループのレピュテーション及びブランド価値が毀損されたり、アルコールに対する消費者需要の縮小などにより、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があることをリスクと捉えています。

 これらのリスクについては、グループ全体で実施しているエンタープライズリスクマネジメント(ERM)体制下において、代表取締役社長兼Group CEOが委員長を務めるリスクマネジメント委員会が管理すべき主要リスクと位置付け、リスク評価、対応計画の策定・実行・モニタリングを継続的に実施しています。同時に、Sustainability部門においても、International Alliance for Responsible Drinking(IARD)など業界団体と連携しながら、幅広く業界やアサヒグループにとって今後起こりうるリスクに関する情報を収集し、常にリスクの見直しを行っています。

 

④指標及び目標

 「(1)サステナビリティ ④指標及び目標」をご参照ください。

 

g.新たな飲用機会の創出によるアルコール関連問題の解決

 アサヒグループは「酒類を取り扱う企業グループとしての飲酒に関する基本方針」のもと、アサヒグループの知見と技術を結集して新たな革新的な商品を展開し、新たな飲用機会を創出していきます。

 人と酒類の関係の革新に挑戦し、人々の豊かな生活の一翼を担う酒類文化の健全な発展に寄与しながら、不適切な飲酒による社会課題に取り組み、アルコールが起因の課題が減少している社会の実現を目指していきます。

①ガバナンス

 「(2)その他の項目 f.不適切飲酒の撲滅 ①ガバナンス」をご参照ください。

 

②戦略

 アサヒグループは、グループ飲酒基本方針に基づき、不適切な飲酒の撲滅を目指し、従来から各地域の課題を考慮しながらさまざまな活動に取り組んできました。

 2022年には、世界保健機関(WHO)が採択したグローバルアクションプラン2022-2030の内容を踏まえて、その中で設定されたグローバル目標の指標となる「大量飲酒者の削減」や「一人当たりの純アルコール摂取量の削減」の実現に貢献する取り組みを強化する方針を定めました。

 政府によるアルコールに関するマーケティング・営業活動の規制や課税の対策だけではなく、自主的な取り組みを進めることで不適切飲酒の課題を解決できることを実証し、アルコール業界の健全な成長を目指します。そのためにもアサヒグループの知見と技術を結集して、ノンアルコール・低アルコール商品の開発と展開に努めることで、新たな選択肢の提案を進めていきます。新たな飲用機会の拡大によって不適切な飲酒の削減を実現し、具体的な課題解決への貢献を目指します。

 こうした活動を通じて、リスクの低減と機会創出につなげていきます。

 

③リスク管理

 「(2)その他の項目 f.不適切飲酒の撲滅 ③リスク管理」をご参照ください。

 

④指標及び目標

 「(1)サステナビリティ ④指標及び目標」をご参照ください。

 

h.健康価値の創造

 消費者の健康意識の高まりとともに、食に対する健康志向が高まっています。

 アサヒグループはこれまでに培ったさまざまな技術や知見を活用し、商品・サービスを通じて人々の健康に貢献していくことを目指します。具体的には、酵母、乳酸菌や微生物などの知見を活かした付加価値を高めていくほか、砂糖の過剰摂取による健康面での負の影響を抑制するなど、健康に配慮した商品・サービスの展開を進めていきます。

 

①ガバナンス

 飲料と食品を扱うアサヒグループにとって「健康」は欠かせないテーマであり、健康価値の創造は、アサヒグループの事業の成長に中心的な役割を担っています。

 マテリアリティ「健康」で取り組む主な領域は、特定原料の過剰摂取による健康被害の減少や、酵母や乳酸菌などの研究による新たな健康価値の創造です。なお、アルコールに関わる健康課題はマテリアリティ「責任ある飲酒」で管理しており、また品質に関わる健康課題はサステナビリティからは切り離し、グループの品質保証体制で管理しています。

 グループ全体の戦略は、アサヒグループホールディングス(株)のマネジメント体制で決定しています。具体的な取り組みは、事業会社の事業そのものとなるため、事業会社における通常の事業管理プロセスの中でマネジメントしています。

 

②戦略

 消費者の健康意識の高まりによって、商品に対する選択眼も厳しくなっています。また、特定原料の過剰摂取による健康被害を懸念する各国政府が、砂糖などの原料を使用した商品への課税や、マーケティング規制を始めています。アサヒグループは、常に社会の動向の兆しを見極め、商品開発やマーケティング活動において、必要なリスクと機会への対策を講じていきます。

 さらに、グループが持つ酵母や乳酸菌などの独自素材の健康機能について研究を進め、発酵技術の知見と消費者の新たなニーズとを結び付けた商品開発を行うことで、新たな健康価値を提供できる商品の拡充を目指していきます。

 

 

③リスク管理

 アサヒグループは、砂糖の過剰摂取による健康被害や世界的な砂糖に関する規制強化への対応の遅れによってグループの経営面に悪影響を及ぼすことをリスクとして捉えています。これらのリスクについては、グループ全体で実施しているエンタープライズリスクマネジメント(ERM)体制下においてアサヒグループホールディングス(株)Sustainability部門やRegional Headquartersが管理すべきリスクと位置付け、リスク評価、対応計画の策定・実行・モニタリングを継続的に実施しています。

 

④指標及び目標

 「(1)サステナビリティ ④指標及び目標」をご参照ください。

 

i.人権の尊重

 コロナウイルスや紛争の勃発、気候変動などの環境問題の深刻化により、脆弱な立場の人々における人権に対しての負の影響がさらに深刻化し、企業の人権尊重への取り組みが注目されています。アサヒグループはグローバルに事業を展開する企業として、自らの事業活動によって影響を受ける人々の人権を尊重することを責務として認識しています。事業を行ううえで、個人の人権と多様性(ダイバーシティ)を尊重し、差別や個人の尊厳を損なう行為を行わないこと、強制労働や児童労働を行わないことを「アサヒグループ人権方針」(以下、人権方針)の中で明示しています。

 現在、人権デューデリジェンスの実施、従業員・ビジネスパートナーなどへの人権尊重の教育の徹底、人権侵害の被害者への救済の仕組みを構築しています。

 

①ガバナンス

 事業活動全体の人権侵害リスク低減に向け、サステナビリティの推進体制における「サステナビリティタスクフォース」のひとつとして、「アサヒグループ人権会議」を設置しました。ここで議論された人権課題は、責任者であるGroup CSOに報告され、経営戦略会議(現 Corporate Management Board)で議論をしています。

 人権方針、人権尊重に対する取り組みはアサヒグループホールディングス(株)の取締役会が監督責任を負い、同方針の遵守状況や取り組みの進捗を取締役会で定期的に確認することを定めており、毎年報告しています。最終の意思決定責任は代表取締役社長兼Group CEOが担っています。人権方針は定期的に見直しを行っており、2023年12月には、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」への準拠を強化すること、脆弱なステークホルダーを具体的に明示すること、そして2022年に国連総会の中で普遍的人権と決議した新たな領域も包括することを目的に人権方針を改訂しました。

 具体的な取り組みについては、「アサヒグループ人権会議」の構成メンバーであるアサヒグループホールディングス(株)の各部門が連携して実行しています。また、各部門の機能軸でRegional Headquartersと連携し、取り組みを強化しています。

 

②戦略

 アサヒグループでは2019年に人権方針を策定した際、方針内で定めた重要な人権課題への対応状況についてベストプラクティス事例とのギャップ分析を行いました。その結果とバリューチェーンにおける人権課題をもとに優先度が高い取り組み項目を特定し、各部門の行動計画を策定しています。これらの取り組みは国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいて進めています。2023年にはアサヒグループの主要事業である3カテゴリー(酒類・飲料・食品)を対象にバリューチェーン全体の包括的な人権リスクの見直しを行い、結果的にこれらの取り組み項目に変更の必要が無いことを確認しました。

〈優先度が高い取り組み項目〉

●サプライチェーン

●自社の従業員

●人権侵害の被害者への救済の仕組みの構築・運用

 また2023年の見直しにおいては、業務に従事する労働者などのステークホルダーと、ステークホルダーに紐づく人権課題をより具体的に洗い出し、アサヒグループが取り組むべきリスクをバリューチェーン上にマッピングしました。今後このマップをもとに、人権方針の改正と、新たに高リスクと判断した事象に対する取り組みを検討していきます。

 

バリューチェーンにおける主な潜在的人権リスク

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③リスク管理

 アサヒグループは、人権関連法規制の強化や、人権リスクの高い国・地域での企業活動に対する社会の関心の高まりにより、事業活動に関連した人権侵害が発生した場合の当社グループへの影響は大きいと認識しています。人権尊重に関するリスクについては、グループ全体で実施しているエンタープライズリスクマネジメント(ERM)体制下において代表取締役社長兼Group CEOが委員長を務めるリスクマネジメント委員会が管理すべき主要リスクと位置付け、リスク評価、対応計画の策定・実行・モニタリングを継続的に実施しています。

 また、「アサヒグループリスクアペタイトステートメント」においても、「『アサヒグループ行動規範』、『アサヒグループ人権方針』を遵守することはもちろん、これらの遵守を妨げうるリスクもとらない」と宣言しています。

 

④指標及び目標

 「(1)サステナビリティ ④指標及び目標」をご参照ください。

 

(3)人的資本

■人的資本の高度化

 アサヒグループは『中長期経営方針』において戦略基盤強化に向けた人的資本の高度化を掲げており、これを通じて事業ポートフォリオとコア戦略の実効性を高めることを目指しています。

①ガバナンス

 アサヒグループでは、人材戦略を経営課題として捉え、執行側の経営戦略会議(現 Corporate Management Board)で、中長期戦略遂行の中で議論し、かつ、取締役会への報告を行っています。また、世界各地のRegional Headquarters (以下、RHQ)と連携し、様々な人材マネジメント策を推進し、経営課題対応としての土台を構築しています。毎月グローバルHRミーティングを開催し、組織と従業員一人ひとりの成長に向けて、ノウハウの共有やグループ横断の課題に取り組んでいます。また、各RHQでは、経営層の任命、サクセッションプラン、報酬制度などを決議する人事委員会を設置し、アサヒグループホールディングス(株)の経営層が議長もしくは委員として参画しています。

 

②戦略

 アサヒグループでは「人的資本の高度化」について3つのアプローチで人材戦略を策定しています。「ありたい企業風土の醸成」、「継続的な経営者人材の育成」及び「必要となるケイパビリティの獲得」。この3つの取り組みを通して経営基盤を支え、競争優位の源泉となる「人的資本の高度化」を通して、社員の成長と会社の成長を両立し、企業価値の向上を推進していきます。

※ 戦略を実現するために必要な組織的能力

 

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■ありたい企業風土の醸成

 アサヒグループを取り巻く複雑化・多様化するさまざまな課題の解決に向けて、これまでとは異なる多様な経験や発想が不可欠になっています。そうした状況なども踏まえ、「ピープルステートメント」を基に、“学び、成長し、そして共にやり遂げる”風土醸成の具現化を図っています。

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 なお、詳細につきましては、以下の当社ウェブサイトに掲載しています。

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https://www.asahigroup-holdings.com/company/policy/key_hr_principles.html

 

 「セーフティ&ウェルビーイング(S&W)」では、「グローバルS&Wカウンシル」において、グローバルビジョンに関する討議や従業員の健康増進、コミュニケーションの活性化に向けた取り組みを推進しています。「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)」では、コアメッセージとして「shine AS YOU ARE」を掲げ、全世界の従業員への浸透を図っています。また、「グローバルDE&Iカウンシル」を中心に、アサヒグループの多様な文化を尊重し、インクルーシブな文化を醸成するため、「多文化性(Multiculturalism)」の取り組みをグローバル全体で開始しました。さらに、2030年までに経営層の女性比率を40%以上とするべく、人事制度の見直しや昇格、研修、採用等のガイドラインの整備に取り組み、経営層の女性比率向上を推進しています。

 「学習する組織」、「コラボレーション」では、新たに発足した「CHROラーニングコミュニティ」において、「Storytelling」、「Workshop」、「Mentoring」の3つのコミュニティで活動を開始し、さまざまな知識や経験、スキル、能力、資質を有する従業員が講師やメンターとなり、グローバルに地域を超えて、学び合い、成長する場の構築に取り組んでいます。

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■継続的な経営者人材の育成

 事業環境の変化するスピードがさらに増すことが想定されるなか持続的な成長を実現するべく、経営力の安定的充実に向け、グローバルで次世代経営者育成プログラムを実施するなど、持続的に経営者人材を輩出できる仕組みの強化に取り組んでいます。

また、リーダーに求められるコンピテンシーを示した「グローバルリーダーシップコンピテンシーモデル(GLCM)」を策定しました。本モデルに基づき、特にキーポジションに就いている人材を対象に、パフォーマンスの発揮度合いや開発ポイントを共有するグローバルタレントレビューを実施しています。グループ全体の有能な人材の可視化を進め、最適な人材を選抜し、適材適所の配置や人材育成などを通じて、これまで以上に層の厚いリーダー人材のパイプライン形成に取り組んでいます。

さらに、グループ全体と各地域の両面からリーダーシッププログラムの更なる拡充などを進め、中長期にわたって安定した人材を確保できる体制を強化しています。

 

■必要となるケイパビリティの獲得

 人的資本の高度化の実現に向け、『中長期経営方針』における事業ポートフォリオ戦略、コア戦略及び戦略基盤強化の観点から必要なケイパビリティの獲得に向けたグループ内人材の活用や、専門性に秀でた外部人材の獲得に加え、パートナーシップやアライアンスなどによる社外リソースの活用を進めています。また、ケイパビリティの獲得とその獲得したケイパビリティを発揮できる土台づくりのため、新報酬制度を導入し、グループ内人材の育成や地域を超えた人材配置、採用競争力の強化を推進しています。

 

③リスク管理

 アサヒグループは、中長期人材戦略の柱である「ありたい企業風土の醸成」「継続的な経営者人材の育成」「必要となるケイパビリティの獲得」それぞれについて、これらが毀損されて人的資本の高度化が実現できずに戦略の実行と目標達成が困難になることをリスクと捉えています。これらのリスクについては、グループ全体で実施しているエンタープライズリスクマネジメント(ERM)体制下において代表取締役社長兼Group CEOが委員長を務めるリスクマネジメント委員会が管理すべき主要リスクと位置付け、リスク評価、対応計画の策定・実行・モニタリングを継続的に実施しています。

 

④指標及び目標

テーマ

対象組織

指標・目標(2022年現在)

2022年実績

ありたい企業風土の醸成(エンゲージメント)

グループ全体(共通)

グローバルエンゲージメントサーベイにおける「持続可能なエンゲージメント」スコア目標

2025年に82とする(グローバル食品・飲料企業並み)

2029年に89とする(グローバル高業績企業並み)

「持続可能なエンゲージメント」スコア 78

ありたい企業風土の醸成(DE&I)

グループ全体(共通)

2030年までに経営層の女性比率を40%以上とする

「経営層の女性比率」26.8%

 

※なお、その他の取り組みや最新の実績については、2024年5月に発行予定の当社統合報告書及び2024年6月に発行予定のサステナビリティレポートをご参照ください。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。

 なお、文中における将来に関する事項は、当年度末現在においてアサヒグループが判断したものであります。

 

1.アサヒグループのリスクマネジメント体制

 アサヒグループは、グループ全体を対象に、エンタープライズリスクマネジメント(ERM)を導入しております。この取り組みの中で、グループ理念「Asahi Group Philosophy」の具現化、並びに「中長期経営方針」の戦略遂行及び目標達成を阻害しうる重大リスクを、戦略、オペレーション、財務、コンプライアンス等全ての領域から特定及び評価し、対応計画を策定、その実行及びモニタリングを継続的に実施することで、効果的かつ効率的にアサヒグループのリスク総量をコントロールします。

 ERMを推進するにあたり、代表取締役社長兼Group CEO以下の業務執行取締役、Group CxO及び委員長が指名するFunctionのHeadで構成される、リスクマネジメント委員会を設置しています。ERMはグループ全体を対象とし、リスクマネジメント委員会の委員長である代表取締役社長兼Group CEOが実行責任を負います。

 

 アサヒグループ各社は、事業単位毎にERMを実施し、リスクマネジメント委員会に取組内容を報告します。同委員会はそれらをモニタリングするとともに、委員自らがグループ全体の重大リスクを特定、評価、対応計画を策定、その実行及びモニタリングを実施します。これらの取り組みは取締役会に報告され、取締役会はこれらをモニタリングすることで、ERMの実効性を確認します。

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2.アサヒグループ リスクアペタイト

 アサヒグループは、ERMを推進するとともに、「中長期経営方針」の目標達成のために、「とるべきリスク」と「回避すべきリスク」を明確化する、「アサヒグループ リスクアペタイト」を制定しております。

 「アサヒグループ リスクアペタイト」は、アサヒグループのリスクマネジメントに関する「方針」です。ERMの運用指針及び意思決定の際のリスクテイクの指針となるものであり、リスクに対する基本姿勢を示す「リスクアペタイト ステートメント」と、実務的な活用を想定した、事業遂行に大きく影響する主要なリスク領域に対する姿勢(アペタイト)を示す「領域別リスクアペタイト」で構成されます。グループ戦略、リスク文化とリスク状況、及びステークホルダーの期待をもとに検討し、取締役会にて決定、グループ全体に適用され、実施状況はリスクマネジメント委員会でモニタリング、取締役会へ報告されます。本取り組みを通じて、アサヒグループ全体で適切なリスクテイクを促進してまいります。

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3.アサヒグループのクライシスマネジメント体制

 アサヒグループでは、ERMにおけるグループ全体の重大リスクの中でも、人・モノ・カネ・情報等の経営資源遮断の危機があり「即時対応」する領域を「クライシスマネジメント」の対象としております。

 クライシスマネジメントの実効性を上げるため、平時から「事前の想定」を行い、クライシス時に混乱なく速やかに対応できるよう「緊急時の即応体制」を構築しております。事前の想定については、経営資源遮断の危機を想定した「リスクシナリオ」を作成し対応を準備しております。

 また、緊急時の即応体制については、クライシス類型に応じた対応主体を予め明確にし、危機発生時の初動における事実確認と重大性の評価を迅速・的確に実施し対応する体制を構築しております。

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4.主要リスク

 当社グループでは、「1.アサヒグループのリスクマネジメント体制」に記載の通り、代表取締役社長兼Group CEO以下の業務執行取締役、Group CxO及び委員長が指名するFunctionのHeadで構成されるリスクマネジメント委員会で、中長期経営方針の事業遂行及び目標達成を阻害しうる特に重大なリスクを特定及び評価し、以下の「(2)個別戦略リスク」として認識しております。

 加えて、それ以外に考えられる当社グループの事業等のリスクについても、「(1)全体リスク」及び「(3)その他リスク」に記載しております。但し、以下に記載したリスクは当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。かかるリスク要因のいずれによっても、投資者の判断に影響を及ぼす可能性があります。

 また、前述の、当社グループリスクマネジメントの取り組みの中で、以下に記載する各リスクに対する対応策を含む種々の対応策をとりますが、それらの対策が有効に機能しない等によりリスクが解消できず、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(1)全体リスク

1)中長期経営方針について

 当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指して、2019年に「Asahi Group Philosophy(AGP)」を制定し、2022年、それに基づいて、また、その後のグループ内外の環境変化も踏まえて中長期経営方針を更新しました。「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通り、本方針では、3年程度を想定した主要指標のガイドラインや、財務・キャッシュ・フロー方針を示しておりますが、これらのガイドライン・方針は、策定時に当社グループが入手可能な情報や適切と考えられる一定の前提に基づき、将来の事象に関する仮定及び予想に依拠して策定されたものです。そのため、本「3 事業等のリスク」に記載の各リスク等を含む様々な要因により変更を余儀なくされるものであり、当社グループの事業や業績が中期経営方針内の同ガイドライン・方針等を達成できない可能性があります。

 

2)事業環境について

 当社グループの売上収益において日本の占める割合は約49.2%(2023年12月期決算)となっております。今後の日本国内での景気の動向によって、酒類・飲料・食品の消費量に大きな影響を与える可能性があり、人口の減少、少子高齢化が進んでいくと、酒類・飲料・食品の消費量が減少する可能性があります。また、原材料・エネルギー価格の高騰やインフレの影響などにより、国内での競争環境がさらに激化することで当社売上数量・金額が低下するとともに、コスト構造の悪化を招き、当社グループ事業の収益性が想定より損なわれる可能性があります。

 日本の売上収益のうち、ビール類は4割を超えます。このような状況は、当社グループのビール類商品に対するお客様の信頼を反映したものであり、当社グループ国内酒類事業での効率的な利益創出に寄与しておりますが、消費者の嗜好性の変化、世代交代等により、お客様の支持を失ってしまうと、本商品群の売上が低下し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループは海外での事業領域を拡大しており、2023年12月期決算での売上収益における欧州、オセアニア、東南アジアの占める割合は、約50.5%となっております。今後、欧州、オセアニア地域を中心とする当社グループが事業を展開する各国における景気の悪化、当該各国での競争環境の激化、消費者の嗜好の変化等、市場の需要動向が変化すること等により、当該地域における当社グループの売上収益の低下、利益率の悪化が生じる可能性があります。

 当社グループは、中長期経営方針に『ビールを中心とした既存事業の成長と新規領域の拡大』を掲げ、『アサヒスーパードライ』や『Peroni Nastro Azzurro』などのグローバルブランドをはじめとした高付加価値ブランドの価値向上や新市場の創造を目指すとともに、今後の環境変化も見据えた収益構造改革を加速することで、本リスクが顕在化した場合の業績及び財政状態への影響の低減を図っていきます。また、ビール類以外にも酒類全般における商品のラインアップを充実させることで売上収益を増加させるとともに、飲料、食品事業において、消費者の健康志向の高まり及び高齢化社会に対応する領域へ挑戦することで、事業拡大を図っていきます。

 当社グループは、テクノロジーの発展が、人類に新たな技術力と自由な時間を与え、気候変動・資源不足といった地球規模の課題を抱える中、社会・経済だけではなく人類の幸福(Well-being)のあり方も変化していくものと想定しています。そうしたメガトレンドを踏まえて更新した「おいしさと楽しさで“変化するWell-being”に応え、持続可能な社会の実現に貢献する」という方針のもと、変化しつつあるWell-beingへの迅速な対応、市場環境の変化を先取りした事業戦略の立案と展開、ならびに新たなオペレーティングモデルの構築を通じて、当社グループの戦略及び事業の競争力を強化してまいります。

 

(2)個別戦略リスク

 当社リスクマネジメント委員会は、中長期経営方針の事業遂行及び目標達成を阻害しうる特に重大なリスクを以下の通り認識しております。その中で、中長期的に顕在化が懸念されるリスクを①、短中期的に顕在化が懸念されるリスクを②、及び継続的に顕在化を留意すべきリスクを③、とそれぞれ分類し記載しました。

 

① 中長期的に顕在化が懸念されるリスク

1)事業拡大について

 当社グループは、Schweppes Australia社の買収(2009年、買収額1,185百万豪ドル(適時開示の際に公表した金額、以下同じ))、カルピス社の買収(2012年、買収額920億円)、旧SAB Miller社の西欧ビール事業の取得(2016年、買収額2,550百万ユーロ)、中東欧ビール事業の取得(2017年、買収額7,300百万ユーロ)及びCUB事業の買収(2020年、買収額160億豪ドル)をはじめとして、国内外での事業領域拡大のため、積極的に外部の経営資源を獲得してきました。2020年6月には、CUB事業を取得する手続きを完了することで、日本、欧州に加え、オセアニア地域での事業を盤石にし、日本、欧州、オセアニアの3極を核としたグローバルプラットフォームを構築、成長基盤の拡大を実現しました。ここ数年は財務基盤の強化を優先し大型の買収は控えておりましたが、今後条件が揃えば、成長のために、外部の経営資源を活用していきます。

 外部の経営資源獲得にあたっては、慎重に検討を行い、一定の社内基準をもとに、将来の当社グループの業績に貢献すると判断した場合のみ実行します。しかしながら、営業、人員、技術及び組織の統合ができずコスト削減等の期待したシナジー効果が創出できなかった場合、アルコールや砂糖の摂取に対する社会の価値観の変化や人口動態の変化等により、買収した事業における製品に対する継続的な需要を維持できない場合、買収した事業における優秀な人材を保持し又は従業員の士気を維持することができない場合、高付加価値ブランドの育成不振等、効果的なブランド及び製品ポートフォリオを構築することができない場合、並びに異なる製品ラインにおける販売及び市場戦略の連携(クロスセルの拡大)ができない場合等により、当社グループの期待する成果が得られない可能性があります。

 当社グループは、買収に伴い、相当額ののれん及び無形資産を連結財政状態計算書に計上しており、2023年12月末現在、のれん及び無形資産の金額はそれぞれ、連結総資産の40.6%(21,471億円)及び21.5%(11,368億円)を占めております。

 当社グループは、当該のれん及び無形資産につきまして、それぞれの事業価値及び将来の収益力を適切に反映したものと考えておりますが、事業環境や競合状況の変化等により期待する成果が将来にわたって大きく損なわれると判断された場合、又はカントリーリスクの顕在化による金利高騰や市場縮小等により適用される割引率や長期成長率が大きく変動した場合等は、減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、AGP及び中長期経営方針に基づいた価値創造経営により、事業の持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指しており、『ビールを中心とした既存事業の成長と新規領域の拡大』、や『持続的成長を実現するためのコア戦略の推進』とともに、『長期戦略を支える経営基盤の強化』の一環としてグループガバナンスの更なる実効性向上に向けた取り組みを実施することで、グループ戦略の実行と期待成果をより確実なものとします。

 

2)アルコール摂取に対する社会の価値観

 アルコールの摂取は人々の生活を豊かにしてきた一方で、その不適切な摂取は健康面あるいは社会的悪影響が指摘されています。世界保健機関(WHO)においては世界的な規模での酒類販売に関する規制が推奨されており、当社グループの予想を上回る規制強化が行われる可能性があります。新型コロナウイルス感染症の拡大時には、アルコールの製造販売の禁止や制限を含む行動規制が世界各国で布かれ、このような規制が消費者のライフスタイルの見直しに直結することを体験しました。将来、不適切な飲酒による酒類業界や当社グループのレピュテーション及びブランド価値を毀損する可能性や、行政による行動規制が重なると、アルコールに対する消費者の需要が縮小する可能性もあります。その結果、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、アルコール飲料を製造・販売する企業としての社会的責任を果たすため、WHOが2022年5月に新たに採択したグローバルアルコールアクションプラン2022-2030の中で掲げたグローバル目標「有害なアルコール使用20%低減」の達成に貢献する戦略の方向性を経営の中で議論し、地域ごとに具体的なアクションプランの策定に取り組んできています。責任ある飲酒の取り組み促進のためにグループスローガン「Responsible Drinking Ambassador」を打ち出し、不適切な飲酒の撲滅に向けた活動を強化するとともに、社員に対する「責任ある飲酒」の研修の取り組みを推進してきました。今後更に社会インパクトを創出する取り組みを強化していきます。更に、新しい飲用機会の創出に向けた取り組みとして、2030年までにアサヒグループにおけるノンアルコール・低アルコールの販売構成比20%を新たな目標に掲げ、アルコール起因の課題解決にも取り組んでいます。アサヒビール株式会社は2020年に「スマートドリンキング宣言」を発表し、商品ごとの純アルコール量の積極的な開示を開始。多様な飲み方に対応すべく、様々な度数の低アルコール飲料による飲み方提案や、ノンアルコール飲料の強化などを進めています。2022年にはノンアルコールや低アルコール飲料のメニューを100種提供し、飲む人も飲まない人も楽しめる『SUMADORI-BAR SHIBUYA(スマドリバー シブヤ)』を、2023年には、酔わなくても楽しめる新しい大人の嗜好品を提供するバー『THE 5th by SUMADORI-BAR』を展開するなど、新たな飲食店のカタチを提案しています。

 アルコールの有害な使用の低減による健康被害の予防を更に推進するためには産業界が協力し合って課題解決に取り組むことも重要になります。酒類事業を行う各地の関連法令遵守のほか、IARDをはじめとする業界団体や他業種の業界と協力・連携して販売や広告に関する自主基準を設け、責任あるマーケティングに取り組んでいます。2020年1月に、IARDに加盟する企業のCEOによる未成年飲酒防止に向けた取り組みを推進する共同声明を公表しました。2021年にはIARDとしてeコマースのプラットフォームなどと共にeコマースにおける世界基準を策定し実践を開始したほか、インフルエンサーマーケティングの世界基準を新たに策定し広告代理店やPR代理店などと共に取り組むことを宣言しています。

※ IARD=International Alliance for Responsible Drinking(責任ある飲酒国際連盟)の略称。不適切な飲酒の撲滅と、責任ある飲酒を促進するという共通の目的のもとに、世界のビール、ワイン、スピリッツの製造業者である大手企業15社の加盟企業で構成される非営利団体。

 

3)技術革新による新たなビジネスモデルの出現

 当社グループが国内外で事業を展開する、酒類・飲料・食品業界は、その製造販売に関して、技術革新による競争環境の変化が比較的少ない安定した業界でしたが、最近では、低アルコール飲料、ノンアルコールビールテイスト飲料、成人向け清涼飲料などのビール隣接カテゴリー(BAC:Beer Adjacent Categories)による新たな飲用シーンの提案ができるようになり、最新デジタル技術を活用して“変化するWell-Being”に応えることで新たな価値の提供、AI活用による各種業務の効率化、あるいはアルコール代替品等、技術革新による新たなビジネスモデルの可能性も示されております。更に、2020年以降世界中へ拡大した新型コロナウイルス感染症の影響により、テレワークの急激な普及や、EC等のオンラインチャネル利用の加速等、それまで将来的に発生すると想定されていた変化が前倒しで出現しています。

 こうした環境変化や新たなビジネスモデルの出現により、当社グループ事業がコスト構造や顧客体験で劣後し、業界での主導権喪失や競争力の低下につながり、売上収益、事業利益の低下等、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。その一方で、当社グループがこのようなイノベーションを先導することによって、市場優位性獲得や、新規市場創出につなげることが期待できます。

 当社グループは、このような状況に対して、単なるリスク対応に留まることなく技術革新を先取りすることを目指して、中長期経営方針において「DX=BXと捉え、3つの領域(プロセス、組織、ビジネスモデル)でのイノベーションを推進」及び「R&D(研究開発)機能の強化による既存商品価値の向上・新たな商材や市場の創造」を掲げ、領域を特定した戦略的DX及びR&D投資を推進していきます。

 

 DX領域においては、グローバル調達プラットフォーム、グローバルデータマネジメント、環境負荷の予測と見える化といった生産性を向上するグローカル基盤を構築するとともに、新たな消費者データ、多様化・細分化する顧客ニーズの把握と新しい素材や製法による新ビジネスモデルの開発、及びこれらのイノベーションを実現するためのデジタルネイティブ組織への変革、インキュベーション機能の強化、アジャイル型働き方の組み込みを推進します。

 R&Dにおいては、中長期的な社会環境や競争環境の変化を見据え、メガトレンドからバックキャストで導いた未来シナリオとこれまでの研究で蓄積してきた技術・知見・ノウハウを踏まえ、変化するアルコールに関する価値観に対応した新たな価値創造、消費者の身体と心の健康の実現、サステナビリティ実現に向けた環境・気候変動リスクの軽減、及び新規事業につながる非凡なシーズの開発を重点領域と位置づけ、新たな価値創造やリスク軽減に向けた商品・技術開発への投資を推進します。

 また、米国サンフランシスコに投資運用会社を設立し、2023年1月から運用を開始したスタートアップ投資ファンドは、低アルコール飲料やノンアルコールビールテイスト飲料、成人向け清涼飲料など、将来大きく成長する可能性のある魅力的なブランドや、新たな販売手法や製造手法に繋がるテクノロジーを持った米国のスタートアップ企業にマイノリティ出資を行い、当社グループの市場優位性獲得や、新規市場創出につながるイノベーションに貢献することが期待できます。

※ DX=BX:デジタル・トランスフォーメーション = ビジネス・トランスフォーメーション

 

4)気候変動に関わるリスク

 地球温暖化により、これまで経験したことのない気候の変化や熱波による干ばつ、台風や豪雨による洪水など異常気象が世界各地で発生し、生命や財産に大きな被害をもたらしています。この気候変動問題は、「自然の恵み」を享受して事業を行うアサヒグループにとってきわめて重要な環境課題です。

 当社グループは、「アサヒグループ環境ビジョン2050」の中で、「Beyondカーボンニュートラル」を2050年の世界のあるべき姿として掲げています。脱炭素社会に向けて、事業の枠を超えた社会全体におけるカーボン排出量が削減され、生物多様性が保全された世界を目指すため、バリューチェーンのCO2削減と生態系の保全の両立、CO2の排出量削減・吸収・回収の技術開発・展開などに取り組んでいきます。

 将来的な気候変動が業績及び財政状態に重大な影響を与える可能性がある物理リスクとして、以下の通り認識しています。海外の生産拠点における干ばつが深刻化し、水需給が逼迫、水価格の高騰による操業コストが上昇する可能性があります。気温上昇(生育環境や労働環境の変化)・天候・自然災害・CO2濃度等が需給バランスや品質に影響し、主要な原材料価格が変動する可能性があります。更に、必要な水資源が確保できない場合、操業停止による機会損失と工場移転費用が発生する可能性があります。異常気象の激甚化により、深刻な風水害及び土砂災害が発生することで生産ラインや物流が停止し、設備被害や機会損失、製品廃棄による損失が発生する可能性があります。

 また、将来的な気候変動を見据えた脱炭素社会への移行リスクを以下の通り認識しています。炭素税が導入され、特にPETボトル等の製品原材料への価格転嫁や生産拠点の操業コストが上昇する可能性があります。水ストレスの高い地域の生産拠点において取水制限を受けて操業が停止、機会損失が発生する可能性があります。エシカル志向の高まりにより、環境配慮が不十分な製品があった場合、その需要が低下し、当社グループの売上に影響を与える可能性があります。

 当社グループは、脱炭素社会の速やかな実現を目指し、CO2排出量ゼロを目指す中長期目標「アサヒカーボンゼロ」を改訂しました。「アサヒカーボンゼロ」の中期目標として、Scope1,2においては、2025年に40%削減、2030年に70%削減の脱炭素目標を設定しています。Scope3においても、2030年に30%削減(ともに2019年比)を設定しています。その上で、長期目標として掲げていたScope1,2,3におけるCO2排出量ネットゼロの目標年を2050年から2040年へ上方修正し、今後更なる省エネルギー化や再生可能エネルギーの活用を推進していきます。また、グループ全体で水使用量削減に向けた取り組みを進めて、水リスクに対応していきます。

 将来的な気候変動リスクに関連する経営のレジリエンスと持続性を高めるために、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の提言への対応を行っています。シナリオ分析によって明確化された重要なリスクと機会に対してそれぞれの対策を講じ、リスクの低減と機会の確実な獲得につなげていきます。特に、炭素税による生産コストなどへの影響を軽減するため、「アサヒカーボンゼロ」に基づくCO2排出量削減施策として、2030年までに500億円以上を投資していきます。

※ Scope1は、自社(工場・オフィス・車など)での燃料の使用によるCO2の直接排出、Scope2は、自社が購入した電気・熱・蒸気の使用によるCO2の間接排出、Scope3は、自社のバリューチェーンからのCO2の排出を指します。

 

5)プラスチック使用

 近年、廃棄プラスチックの規制強化の動きが加速しています。同時に、プラスチックを大量に使用する製品に対する社会の目は厳しくなってきており、容器包装をプラスチック素材に依存している当社グループの飲料・食品製品の需要が著しく低下し、売上に影響を与えるだけでなく、対応不十分とのことで、当社グループに対するレピュテーションが低下する可能性があります。また、リサイクル費用の負担が増加することや、バイオマス素材等の代替素材を使用した場合の材料費が増加すること等で、製造原価が増嵩する可能性があります。

 当社グループは、「アサヒグループ環境ビジョン2050」の中で、「容器包装廃棄物のない社会」を2050年の世界のあるべき姿として掲げています。容器包装の中でも海洋汚染や生態系への影響が世界的に喫緊の課題となっている海洋プラスチック問題への対応については、2020年、グループの戦略の方向性として「3R+Innovation」を定め、2022年に目標を上方修正してグローバル統一の新たな目標として2030年までにPETボトルを100%リサイクル素材、バイオ由来の素材等に切り替えることを設定しました。それに基づき、グループ各社において様々な取り組みを進めています。

 国内では、アサヒ飲料株式会社がリサイクルPET等リサイクル素材の使用、リデュースの推進、環境への配慮を前提とした新容器開発等に関する目標「容器包装2030」の達成に向けた取り組みを進めています。更なる「ラベルレスボトル」製品の拡大やリサイクル素材活用拡大のために「ボトルtoボトル」の水平リサイクルを進めています。後者の取り組みとして、再生事業者である株式会社JEPLANへの融資を行い、アサヒ飲料販売株式会社が管理・運営する首都圏エリア約3万台の自動販売機から使用済みPETボトルを回収、ケミカルリサイクルPET樹脂に再生させ、当社商品に再利用する循環システムを構築し、水平リサイクルを進めています。

 2022年4月から、一部の大型ペットボトル(「三ツ矢」「カルピス」「アサヒ 十六茶」「アサヒ おいしい水」「バヤリース」)でこのリサイクルPET樹脂を使用することにより、年間のCO2排出量は従来比で約47%削減され、約18,400tのCO2が削減される見込みです。また、業界の枠を超えた連携体制により使用済のプラスチックを再資源化する会社に共同出資を行い、中長期的なPET調達に向けた取り組みも強化しています。

 また、2023年には飲料他社と共同で、複数の地方自治体との間で使用済みペットボトルを新たなペットボトルに再生する水平リサイクル「ボトルtoボトル」事業の連携協定を締結しました。各地で2024年から取り組みを開始し、プラスチック資源循環を推進していきます。

 海外では、オーストラリアの子会社Asahi Beverages Pty Ltdが、業界の枠を超えたパートナーシップ構築を通じて、PETボトルのリサイクルを推進しています。リサイクル大手企業や容器メーカーと合弁会社を設立し、2022年にはニューサウスウェールズ州でリサイクルPET樹脂の更なる生産と供給のための工場を稼働しました。さらに2023年にビクトリア州で2拠点目のリサイクル工場の操業を開始しました。オーストラリアでは既に2019年より水ブランドの「Cool Ridge(クールリッジ)」に100%リサイクルPETボトルを使用しCO2排出量を従来の約半分に削減しました。

 当社グループ全体として、プラスチックのリサイクル素材、バイオ由来の素材等の更なる活用を推進してまいります。

 

② 短中期的に顕在化が懸念されるリスク

1)主要原材料の調達リスク

 当社がグローバルに事業展開する酒類・飲料・食品の製造においては、原材料の調達に関し、市況悪化による価格高騰、気候変動や自然災害及びパンデミック等による納期遅延や供給停止に陥るリスクがあります。このようなリスクに直面した場合、製造コストが上昇し、また製造数量が計画を下回ることで、グループの業績及び財政に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクに対し当社では、原材料毎にヘッジポリシー及びガードレールを定め、原材料商品及び為替市況をつぶさにモニタリングし、状況に応じ複数年での契約締結や、金融商品を活用することで価格高騰リスクを回避し、また必要量の安定確保に努めております。併せて、グローバル各製造拠点で原材料毎に在庫量を定め、安全在庫を確保すると共に、シナジー創出を期待できる品目については、2024年1月に運営を開始したグループグローバル調達組織であるAsahi Global Procurementが、カテゴリーマネジメントとソーシング機能を集約し、スケールメリットを活かしコスト低減に努めております。加えて、グループ間での在庫情報共有による調整機能を活用し、調達困難時でも全製造拠点で十分な在庫量を維持できるよう努めております。

 

2)地政学的リスク

 現在、当社グループは20を超える国に拠点を構え、グローバルに事業を展開しております。世界経済全体の動向に加え、当社グループが事業活動を展開する国・地域における政治、経済、社会、法規制、自然災害等の要素が、各事業に影響を与える可能性があります。

 

 さらに、近年は、地政学的な要因が事業に影響を及ぼす可能性が高まっていると認識しています。例えば、ウクライナ情勢や中東情勢、台湾を巡る緊張の高まり、米国と中国の対立関係などの要因により、当社グループが事業を展開する複数の国・地域において、輸出入制限、差別的な措置、商品不買運動、技術の分断、データに関する規制等の具体的なリスクが想定され、同時に、今後の事業の強化やエリアの拡大を進める上でも影響を与える要素となります。地政学的な要因によりこれらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの中長期経営方針の実行や業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、地政学的リスクに関する動向の情報収集と分析をもとに、リスクシナリオの策定及びリスクの把握を行い、その影響を低減するための適切な対策の検討を進めてまいります。また、事業展開国・地域のカントリーリスクの調査、情報収集、評価をもとに、リスクを早期に認識し、顕在化する前に具体的かつ適切な対処をする取り組みも継続しております。

 

3)情報セキュリティ

 当社グループは、高い市場競争力を確保するため、事業活動の多くをITシステムに依存しており、停電、災害、ソフトウェアや機器の欠陥、あるいはサイバー攻撃によって、事業活動の混乱、機密情報の喪失、個人情報の漏洩、詐欺被害、EU一般データ保護規則(GDPR)等の各国法令違反が発生する可能性があります。

 このようなリスクが顕在化した場合、事業の中断、損害賠償請求やセキュリティ対策費用の増加等によるキャッシュアウト、GDPR違反による制裁金等により、当社グループの業績及び財政状態、並びに企業ブランド価値に影響を及ぼす可能性があります。

 サイバー攻撃リスクの高まりへの対応としては2022年10月にグループ全体で遵守すべきサイバーセキュリティ基準を制定し、運用の徹底を図っています。当基準に準じて国内・海外グループ会社のサイバー攻撃対策状況を評価し、セキュリティ体制の維持、及び向上に努めており、本件リスクが顕在化しないようにセキュリティの改善に取り組んでいます。また、当基準内でインシデント発生時の報告ルールを明示することでグループ全体でのインシデント情報を集約し、リスク対応の強化を目的とした体制整備も完了しています。

 当社グループは、ビジネスの多様な分野における生成AIの活用を積極的に推進しています。我々は、この技術が企業の競争力を高める重要な要素であると認識しており、その有効な活用を通じて、業務効率の向上とイノベーションの促進を図っています。さらに、生成AIの使用に伴うリスクに対処するため、国内・海外グループ会社に適用される包括的なガイドラインを制定しました。このガイドラインは、生成AIの安全かつ責任ある使用を確実にするための運用基準と注意事項を定めており、リスクの軽減と管理に努めています。

 

4)多様で有能な人材の確保

 中長期経営方針の目標達成には、多様な価値観や専門性を持つ社員の貢献が不可欠です。そのため、当社グループは社員の多様性を尊重し、一人ひとりの成長を支援する人材育成プログラムへの投資を増やし、必要に応じて、経営幹部や一般社員を外部から採用する取り組みを進めています。しかし、グローバルな事業の成長に伴う人材需要の増加や必要なスキルの変化、高度化により、多様で有能な経営幹部や一般社員の確保、育成、定着が難しく、中長期経営方針の戦略実行に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは中長期経営方針で「目指す事業ポートフォリオの構築やコア戦略を支える高度な人的資本の確保」を掲げ、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの推進を通じて、戦略を支える経営基盤を強化し、従業員のエンゲージメントを高める企業文化を醸成しています。定期的にエンゲージメント調査を実施し、望ましい企業文化の実現度を確認しています。

 また、経営者候補の育成を計画的に進めるため、グループ全体で共通のコンピテンシーモデルを策定し、将来の経営幹部候補を育成するグローバルリーダーシッププログラムを実施し、人材パイプラインを拡充・強化しています。さらに、各地域の人材を可視化し、国籍や性別に関係なく適材適所で配置するためのタレントレビューを実施し、多様な有能な人材の活用を推進しています。新しいケイパビリティを獲得するために、社外からの人材登用も積極的に行っています。

 

③ 継続的に顕在化を留意するリスク

1)大規模自然災害

 2024年1月に能登半島で発生した地震が甚大な被害をもたらすなど、国内外問わず世界各地で地震、津波、台風、洪水等の自然災害に関連するリスクは年々高まっており、大規模災害が現実のものとなっています。このような大規模自然災害の発生により、従業員の被害、工場損壊、設備故障及びユーティリティー(電気、ガス、水)遮断により製造が停止、倉庫損壊及び保管製品破損により出荷が停止、並びに物流機能停止により原材料資材の調達及び製品の出荷が不能になる可能性があります。更に、事務所施設の損壊、交通機関マヒによる従業員の通勤不能、及びシステム障害に伴う重要データの消失等もあわせて、事業活動が停止する可能性があります。事業活動の復旧に長期を要した場合、施設等の改修に多額の費用が発生した場合、消費マインドが落ち込んだ場合等、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

 当社グループは、大規模災害が発生した際に、いち早く従業員及びその家族の安否を確認する仕組みを導入するとともに、大規模地震を含め災害リスクが高い日本においては、早急に被災地の被害状況を把握するため、衛星携帯電話の配備をはじめとした緊急時通信体制の強化を進めています。そのうえで、定期的な訓練を実施することで、有事の対応力を強化するとともに、災害対応意識の啓発に努めています。

 また、生産工場では、建物倒壊対策のため、全建物対象に耐震診断を実施しており、対策が必要な物件については、順次計画的に補強工事を実施しています。ボイラー、冷凍機等の大型エネルギー供給設備には大地震(震度5弱相当)を検知すると、安全に自動停止する機能が付属し、大型ビール工場では電力供給が遮断した場合でも、自家発電によりタンクを冷却させることで、半製品の大量腐敗を防止する等2次災害のリスク低減対策を進めています。

 また、主要グループ会社において、過去の防災対策の実績及び自然災害の経験を踏まえた「事業継続計画(BCP)」の策定を行い、主要商品の供給を継続するための需給調整機能を早急に復旧する体制を構築するとともに、受発注処理等に関する重要なデータを処理するサーバーセンターのバックアップセンターを設置する等、大規模な自然災害が起こった場合であっても被災地以外での事業活動に支障が無いように備えています。

 なお、大規模な災害等が発生した際には、代表取締役社長兼Group CEOを本部長とした「緊急事態対策本部」を設置して対応する危機管理体制を構築しており、平常時のリスクマネジメントにおいて、顕在化した際に即時対応を要するリスクを抽出し、その影響度と必要な対応を想定することで、危機発生時にクライシスマネジメントへ寸断なく移行できるよう準備しています。あわせて、国内を含めた4つのRegional Headquarters(RHQ)体制において、危機の類型に応じてRHQと当社の役割を明確にするとともに、危機発生時の情報ラインの整流化を図り、グローバルなクライシスマネジメント体制の強化も進めています。

 これらの事前対策により災害による被害の最小化、当社グループの業績及び財政状態に対する影響の低減に努めています。

 

2)人権尊重に関わるリスク

 格差や貧困の拡大、気候変動等環境問題の深刻化、感染症や紛争の勃発、さらに欧米を中心とした人権尊重に関する法規制強化などを背景に、当社グループにとって人権尊重並びに関連法規制の遵守は特に重要と認識しています。2023年は全社の人権取り組みを強化する目的で、「アサヒグループ人権方針」を改定しました。その中で、脆弱なステークホルダー(例:子ども、女性、移住労働者、先住民族)や人権擁護者の権利尊重や、グリーバンスメカニズムへの通報者保護と救済措置の実行強化を加えました。また「清潔で健康的かつ持続可能な環境に対する権利」へのコミットメントを新たに加え、今後は気候変動や生物多様性の喪失等による人権リスクも理解し、これらを人権デューデリジェンスに組み込んで取り組みを強化していきます。

 具体的な取り組みとしては、2019年以降、サプライヤーと自社従業員への人権デューデリジェンスと教育、救済へのアクセスの構築を優先して進めています。サプライヤーについては、2024年1月からAsahi Global Procurementが本格稼働することに伴い、グローバル調達活動を一元化し人権デューデリジェンスの方針や基準整備、計画と実行を同組織の中で担い、今後取組内容を深化させます。新たに2030年までに原材料一次サプライヤー(※既存の原材料及び包装資材の年間10万ドル以上取引のある一次サプライヤー)へのリスクアセスメントを優先的に100%実施することを目標に実施する計画です。また、2021年には現代奴隷リスク分析でハイリスクとの結果が出たエチオピアとタンザニアのコーヒー豆に関わるサプライヤー等を対象とし、2022年はブラジルのサトウキビを対象にデスク・リサーチを行いました。2023年にはブラジルのサトウキビを対象に現地訪問調査を実施しています。これら調査結果を踏まえて人権リスクを特定・評価し、負の影響の是正や発生予防に取組む予定です。

 自社従業員については、2030年までに事業展開国(※ディストリビューターを通じた輸出事業を除く)へのリスクアセスメントを100%実施し、各事業会社、機能部門が継続的にPDCAをモニタリングができている状態を目指します。2024年は高リスク国の全生産拠点におけるSedexによるリスクアセスメントと、高リスクと判断した生産拠点への実態把握調査、インタビュー、指摘事項の是正を計画しています。従業員一人ひとりが人権方針を遵守するための人権教育として、2023年は国内全役員・社員を対象にした3つの「ビジネスと人権」eラーニングを実施しました。

 救済へのアクセス構築については、「クリーン・ライン制度」へのアンケート結果や人権有識者との対話等を通じて抽出した課題を基に検討を進め、2024年春に新しい通報システムの運用を開始する予定です。

 

3)法規制とソフトローのコンプライアンス

 当社グループは事業の遂行にあたって、食品衛生法、製造物責任法、労働関連規制、贈収賄規制、競争法、GDPR等の個人情報保護規則、環境関連法規等の様々な法規制の適用を受けています。これらの法令が変更される、又は予期し得ない法律、規制等が新たに導入される等の理由による法令違反や社会規範に反した行動等により、法令による処罰・訴訟の提起・社会的制裁を受け、規制遵守対応のためのコストが増加し、又はお客様をはじめとしたステークホルダーの信頼を失うことにより、レピュテーションやブランド価値が毀損し、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

 当社グループは、事業活動を行う全ての国・地域において、適用される法令・ルールを遵守することを含め、「Asahi Group Philosophy」で示したステークホルダーに対する5つのPrinciplesに基づき、企業倫理・コンプライアンスを実践するための「アサヒグループ行動規範」を制定し、グループ全体での実践を推進しています。そして、代表取締役社長兼Group CEOが委員長を務め、代表取締役社長兼Group CEO以下の業務執行取締役、Group CxO及び委員長が任命したFunctionのHeadで構成される「コンプライアンス委員会」を設置し、グループ全体の企業倫理・コンプライアンスを推進・監督するとともに、「アサヒグループ行動規範」に関する社員の研修等を通じてコンプライアンスのレベルを高め、法令違反や社会規範に反した行為等の発生可能性を低減するよう努めています。

 

④ 個別戦略リスクのヒートマップ

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[評価変更リスク]

②-1)主要原材料の調達リスク

2024年1月に運営を開始したグループグローバル調達組織であるAsahi Global Procurementへのカテゴリーマネジメントとソーシング機能の集約により、グローバルでの安定調達と更なるコストベネフィット獲得につながる体制が整備された。社外環境としては今後も予断を許さない状況が続くと認識するが、前項取り組みの進捗により、当該リスク顕在時の影響度が低減していると評価する。

 

②-4)多様で有能な人材の確保

引き続き人材獲得が難しい状況が続く国や地域がある中で、当社グループ内の多様で有能な人材を機動的に活用できる体制が整い、またグループ内人材育成の強化や競争力ある報酬制度の導入等により、当該リスク顕在化の蓋然性が低減していると評価する。

 

 

⑤ 個別戦略リスクの経営方針・戦略との関連性

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(3)その他リスク

1)品質について

 当社グループは、研究開発、調達、生産、物流、販売、お客様とのコミュニケーションに至る全てのプロセスにおいて、お客様の期待を超える商品・サービスを提供することで、お客様の満足を追求することをグループ品質基本方針とし、いずれのグループ会社も品質を通して、お客様との信頼関係を築くことに不断の努力を続けています。お客様の健康に密接に関連する事業を展開しているため、万一、不測の事態により、お客様の健康を脅かす可能性が生じたときは、お客様の安全を最優先に考え、迅速に対応します。

 しかしながら、万一、品質に問題が生じて、商品の安全性に疑義が持たれた場合には、商品の回収や製造の中止を余儀なくされ、その対応に費用や時間を要するだけでなく、お客様からの信頼を失う可能性があります。このような事象が発生した場合、中長期経営方針に掲げた「既存地域でのプレミアム化とグローバルブランドによる成長、展開エリアの拡大」の未達を含む、当社グループの業績及び財政状態、並びにレピュテーション及びブランド価値に対して影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、品質リスク低減を目的とした品質保証レベル向上の取り組みとして、サプライチェーンの全てのプロセスにおいて、品質に影響を与える業務や注意すべき事項を抽出し、その点検と是正による改善のPDCAサイクルをグローバル共通の仕組みとして展開しています。

 また、食の安全に関わる分野においては、研究開発部門を中心に微生物・農薬・カビ毒・重金属・樹脂・放射性物質等多岐にわたる最新の分析技術を開発しており、グループ内の連携によりグローバルでの品質保証活動を展開する体制・仕組みを通じて、技術面からグループ全体をサポートしています。

 さらに、各グループ会社の商品特性や製造工場の環境に応じて、国際的な品質・食品安全マネジメントシステムの考え方を取り入れ、必要に応じて外部認証取得しています。

 

2)財務リスク

為替変動:     当社グループはグローバルに事業を展開しているため為替リスクを負っています。このうち、海外子会社及び関連会社における資産や負債については円高が進行すると在外営業活動体の換算差額を通じて自己資本が減少するリスクがあります。このため、必要に応じて為替リスクのヘッジをする等の施策を実行していますが、完全にリスクが回避できるわけではありません。また、海外連結子会社等の損益の連結純利益に占める割合が比較的高く、これらの収益の多くが外貨建てであり、当社の報告通貨が円であることから、外国通貨に対して円高が進むと、連結純利益にマイナスのインパクトを与えます。一方、本国で行う輸出入、及び外国間等の貿易取引から発生する、外貨建債権及び債務等は為替レートの変動によるリスクを有しておりますが、このリスクは為替予約等と相殺されるため影響は限定されます。

金利変動:     当社グループは銀行預金や国債等の金融資産及び銀行借入金や社債、リース負債等の負債を保有しております。これらの資産及び負債に係る金利の変動は受取利息及び支払利息の増減、あるいは金融資産及び金融負債の価値に影響を与え、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、金利リスクを回避する目的で、金利を実質的に固定化する金利スワップを利用することがあります。またヘッジ会計の要件を満たす取引については、ヘッジ会計を適用しております。

格付低下:     当社グループに対する外部格付機関による格付けが引き下げとなり、当社グループの資本・資金調達の取引条件の悪化、もしくは取引そのものが制限される場合には、当社グループの業務運営や業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

保有資産の価格変動:当社グループが保有する土地や有価証券等の資産価値の下落や事業環境の変化等があった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

3)税務リスク

 当社グループはグローバルに事業を展開しており、本国をはじめとする、各国の税制による適用を受けており、予期し得ない改正や税務当局からの更正処分を受けた場合、大幅なコストの増加、競争環境の悪化、事業活動の制限等が懸念され、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4)訴訟リスク

 当社グループは、事業を遂行していくうえで、訴訟を提起される可能性があります。万一当社グループが訴訟を提起された場合、また訴訟の結果によっては、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(業績等の概要)

(1)業績

 当期における世界経済は、米国において、雇用者数の増加や個人消費の拡大を背景に景気は堅調に推移しましたが、欧州においては、インフレの進行により景気に弱さが見られました。日本経済は、原材料価格の上昇などの影響を受けたものの、経済活動の再開による内需の回復などにより、景気は緩やかに持ち直しの動きが見られました。

 こうした状況のなかアサヒグループは、グループ理念“Asahi Group Philosophy”の実践に向けて、メガトレンドからバックキャストして更新した『中長期経営方針』に基づき、持続的な成長と企業価値向上を目指した取り組みを推進しました。「目指す事業ポートフォリオ」の構築では、グローバルブランドの拡大展開やプレミアム戦略の推進による既存事業の成長に加え、周辺・新規領域の拡大と探索にも経営資源を積極的に配分しました。また、サステナビリティと経営の統合をはじめとして、持続的な成長を支えるDX(デジタル・トランスフォーメーション)やR&D(研究開発)といったコア戦略を推進するとともに、長期戦略を支える経営基盤の強化として、人的資本の高度化やグループガバナンスの進化にも取り組みました。

 その結果、アサヒグループの売上収益は、2兆7,690億9千1百万円(前期比10.3%増)となりました。また、利益については、事業利益※1は2,636億8千万円(前期比8.1%増)、営業利益は2,449億9千9百万円(前期比12.9%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,640億7千3百万円(前期比8.3%増)、調整後親会社の所有者に帰属する当期利益※2は1,656億3千2百万円(前期比0.1%増)となりました。

 なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前期比6.8%の増収、事業利益は前期比3.9%の増益となりました。※3

※1 事業利益とは、売上収益から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除した、恒常的な事業の業績を測る当社独自の利益指標です。

※2 調整後親会社の所有者に帰属する当期利益とは、親会社の所有者に帰属する当期利益から事業ポートフォリオ再構築及び減損損失など一時的な特殊要因を控除したものです。

※3 2023年の外貨金額を、2022年の為替レートで円換算して比較しています。

 

アサヒグループの実績         (単位:百万円)

 

 

実績

前期比

売上収益

2,769,091

10.3%

事業利益

263,680

8.1%

営業利益

244,999

12.9%

親会社の所有者に

帰属する当期利益

164,073

8.3%

調整後親会社の所有者

に帰属する当期利益

165,632

0.1%

 

 当年度の財政状態の状況は、連結総資産は前年度末と比較して4,555億6千9百万円増加し、5兆2,859億1千3百万円、負債は前年度末と比較して527億3千2百万円増加し、2兆8,201億3千1百万円となりました。また、資本は前年度末に比べ4,028億3千6百万円増加し、2兆4,657億8千1百万円となりました。

 

 セグメントの業績は次の通りです。各セグメントの売上収益はセグメント間の内部売上収益を含んでおります。

 

事業セグメント別の実績

(単位:百万円)

 

 

売上収益

前期比

事業利益

前期比

売上収益

事業利益率

営業利益

前期比

 

為替一定

 

為替一定

日本

1,362,850

4.7%

4.7%

119,535

9.8%

9.8%

8.8%

111,266

15.4%

欧州

688,725

20.0%

8.3%

85,078

11.9%

△1.0%

12.4%

59,437

7.7%

オセアニア

652,154

11.8%

9.1%

110,632

3.3%

0.8%

17.0%

89,673

11.8%

東南アジア

57,806

11.9%

7.8%

1,398

144.2%

134.1%

2.4%

1,009

59.4%

その他

21,542

145.8%

137.0%

5,321

278.1%

260.2%

24.7%

5,174

311.5%

調整額計

△13,988

△21,424

△21,562

無形資産

償却費

△36,862

合計

2,769,091

10.3%

6.8%

263,680

8.1%

3.9%

9.5%

244,999

12.9%

※営業利益における無形資産償却費は各事業に配賦しています。

 

[日本]

 日本においては、酒類、飲料、食品事業で主力ブランドの価値向上を軸に成長戦略を推進するとともに、環境変化を捉えた新たな価値提案の強化に取り組みました。また、各事業の収益基盤の強化に加え、事業の枠を超えた日本全体でのシナジーの創出やサステナビリティへの取り組み強化により、持続的な成長に向けた基盤構築を推進しました。

 酒類事業では、ビール類において、主力の『アサヒスーパードライ』に加え、『アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶』や『アサヒ生ビール』のラインアップを拡充するとともに、「ラグビーワールドカップ2023フランス大会」に関連した広告・販売促進活動を強化しました。また、アルコール分3.5%の『アサヒスーパードライ ドライクリスタル』を発売するなど、新たな価値提案を強化しました。さらに、『アサヒスタイルフリー<生>』や『クリアアサヒ』をリニューアルするなど、主力ブランドの価値向上を図りました。RTDにおいて、複数の新ブランドを各々エリア限定で発売し、新価値創造に向けた取り組みを強化しました。また、お酒を飲む人と飲まない人が共に楽しめる生活文化の創造を目指し、「スマートドリンキング」の推進に取り組みました。

 飲料事業では、微発酵茶葉を一部使用し華やかな香りが特長の緑茶の新ブランド『アサヒ 颯(そう)』に加え、濃厚な味わいが特長の『三ツ矢』の「特濃」シリーズから新商品を発売するなど、市場の活性化を図りました。また、健康な人の免疫機能の維持に役立つ機能性表示食品『守る働く乳酸菌W』を発売し、健康志向を踏まえた価値提案の強化に取り組みました。

 食品事業では、エチケットケアニーズの高まりに対応した『ミンティアブリーズ クリアプラスマイルド』のリニューアルに加え、人気アニメとコラボレーションした商品などを発売し、『ミンティア』のユーザー層の拡大を図りました。また、機能性表示食品『ディアナチュラゴールド L-92乳酸菌&食物繊維』を発売するなど、多様化するニーズへの対応に取り組みました。

 以上の結果、売上収益は、ビール類の売上が増加した酒類事業を中心に各事業が増収となり、1兆3,628億5千万円(前期比4.7%増)となりました。

 事業利益は、原材料関連費用の増加などの影響はあったものの、増収効果や各種コストの効率化などにより、1,195億3千5百万円(前期比9.8%増)となりました。

※ RTD:Ready To Drinkの略。購入後、そのまま飲用可能な缶チューハイなどを指します。

 

 

[欧州]

 欧州においては、欧州地域におけるブランドポートフォリオの競争優位を強化するとともに、『Asahi Super Dry』や『Peroni Nastro Azzurro』などのグローバルブランドの拡大展開を加速させることにより、プレミアム戦略を推進しました。また、サステナビリティの重点テーマである「環境」や「コミュニティ」などの取り組みを深化させることにより、持続的な成長基盤を強化しました。

 欧州の主要地域では、チェコにおいて、『Pilsner Urquell』を中心にチェコのビール文化を体験できる施設のオープンに加えて、ポーランドの『Lech』での責任ある飲酒の促進や、ルーマニアの『Ursus』での生物多様性を支援するプロモーションの展開など、ブランド価値の向上に取り組みました。また、ポーランドやイタリア、ルーマニアにおける『Kozel』のほか、英国やルーマニア、フランスでの『Peroni Nastro Azzurro』などの拡大展開により、プレミアム化を推進しました。さらに、ノンアルコールビールにおいて、チェコの『Birell』やポーランドの『Lech Free』、ルーマニアの『Ursus Cooler』など、主力ブランドを中心に新たな飲用機会の創出に向けた取り組みを強化しました。

 グローバルブランドの拡大展開では、「ラグビーワールドカップ2023フランス大会」の大会公式ビールである『Asahi Super Dry』をノンアルコールビール『Asahi Super Dry 0.0%』とともにスタジアムやファンゾーンで提供したほか、「City Football Group」とのパートナーシップを活かしたマーケティング活動により、Asahi Super Dryにおけるブランド認知度の向上を図りました。『Peroni Nastro Azzurro』において、欧米のゴルフ大会「2023 Ryder Cup」の公式ビールとして積極的なプロモーションを展開したほか、低アルコール度数の『Peroni Nastro Azzurro Stile Capri』を発売しました。また、ノンアルコールビール『Peroni Nastro Azzurro 0.0%』において、モータースポーツチーム「Aston Martin Cognizant FORMULA ONETM TEAM」とのパートナーシップによる広告を積極展開するなど、ブランド力の強化を推進しました。

 以上の結果、売上収益は、インフレ影響などにより販売数量は減少したものの、各国の主力ブランドやグローバルブランドの販売強化に加えて、価格改定の効果などにより、6,887億2千5百万円(前期比20.0%増)となりました。

 事業利益は、原材料や人件費などの費用増加はあったものの、増収効果や各種コストの効率化、為替変動の影響などにより、850億7千8百万円(前期比11.9%増)となりました。

 なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前期比8.3%の増収、事業利益は前期比1.0%の減益となりました。

 

[オセアニア]

 オセアニアにおいては、酒類、飲料事業におけるプレミアム戦略の強化に加え、各事業の強みを融合したマルチビバレッジ戦略の推進や統合シナジーの創出などにより、収益基盤の更なる強化を図りました。また、健康やウェルネスを意識した新たな商品やサービスの提案など、サステナビリティを重視した取り組みを推進しました。

 酒類事業では、主力ブランドの『Great Northern』において、積極的なマーケティング活動の推進やエクステンション商品として『GINGER BEER』を発売したほか、クラフトビールの商品ポートフォリオを拡充することなどにより、ブランド価値の向上に取り組みました。また、ノンアルコールビール『Asahi Super Dry 0.0%』を展開するとともに、RTDブランド『Vodka Cruiser』から主に若年層をターゲットにした缶商品を発売するなど、ニーズの多様化を踏まえたラインアップの拡充を図りました。

 飲料事業では、『Solo』ブランドにおいて発売50周年記念のキャンペーンを展開するなど、主力ブランドの販売促進活動を強化したほか、健康志向の高まりに対応した新しい炭酸飲料『Bubly』を発売するなど、新たな価値提案を推進しました。

 さらに、エネルギー小売企業であるFlow Power社と再生可能エネルギー由来の電力(年間40,000メガワット時)を購入する契約を新たに締結するなど、サステナビリティの取り組みを推進しました。

 以上の結果、売上収益は、物流の混乱による影響はあったものの、行動制限の解除に伴う需要回復などにより、6,521億5千4百万円(前期比11.8%増)となりました。

 事業利益は、原材料関連の費用増加などの影響はあったものの、ミックスの改善による増収効果や各種コストの効率化、為替変動の影響などにより、1,106億3千2百万円(前期比3.3%増)となりました。

 なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前期比9.1%の増収、事業利益は前期比0.8%の増益となりました。

 

[東南アジア]

 東南アジアにおいては、主力ブランドへの選択と集中の加速や各販売チャネルとの関係強化などにより、マレーシアを中心に各展開国における事業ポートフォリオの再構築を図りました。また、環境や貧困などの社会課題に対する取り組みや人材育成などの強化を通じて、持続的な成長基盤の確立を推進しました。

 マレーシアでは、主力ブランド『WONDA』における大規模なリニューアルに加え、eスポーツ関連のキャンペーンを展開したほか、『CALPIS』のエクステンション商品の発売や積極的なキャンペーンの展開など、ブランド認知度の向上を推進しました。また、再生可能エネルギー事業者との連携により、マレーシアとインドネシアにおいて太陽光発電の利用を推進したことに加え、フィリピンでは全国の教育機関に『Goodday』を寄贈するなど、気候変動への対応やコミュニティ活動への積極参加により、サステナビリティの取り組みを推進しました。

 以上の結果、売上収益は、マレーシアにおける主力ブランドの販売が好調に推移したことに加え、価格改定の効果や為替変動の影響などにより、578億6百万円(前期比11.9%増)となりました。

 事業利益は、原材料関連の費用や輸送費の増加などの影響はあったものの、固定費全般の効率化などを推進したことにより、13億9千8百万円(前期比144.2%増)となりました。

 なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前期比7.8%の増収、事業利益は前期比134.1%の増益となりました。

 

[その他]

 その他については、売上収益は、215億4千2百万円(前期比145.8%増)、事業利益は、53億2千1百万円(前期比278.1%増)となりました。

 

[『中長期経営方針』の中期的なガイドラインの進捗]

 「主要指標のガイドライン」については、各地域における原材料価格の上昇による影響に加えて、将来を見据えたブランド投資の拡大などにより、事業利益(為替一定ベース)及びEPS(調整後)がガイドラインを下回る進捗となりました。また、フリー・キャッシュ・フロー(FCF)については、有形固定資産の売却や運転資本の圧縮などのキャッシュ創出により、ガイドラインを上回る進捗となりました。

 「財務方針のガイドライン」については、FCFを金融債務の削減に充当したことなどにより、Net Debt/EBITDAもガイドラインどおりの進捗となりました。また、株主還元については、EPSの増加に伴い、当期は1株当たりの配当額を8円増配の121円とすることにより、ガイドライン並みの水準となりました。

 

主要指標のガイドライン

 

3年程度を想定したガイドライン

2022-23年進捗

事業利益

 CAGR(年平均成長率):一桁台後半※1

CAGR:5.0%

EPS(調整後※2

 CAGR(年平均成長率):一桁台後半

CAGR:3.5%

FCF※3

 年平均2,000億円以上

年平均:2,266億円

※1 為替一定ベース

※2 調整後とは、事業ポートフォリオの再構築や減損損失など一時的な特殊要因を除いたものです。

※3 FCF=営業CF-投資CF (M&A等の事業再構築を除く)

(注)「主要指標のガイドライン」におけるFCFの金額は、表示単位未満を四捨五入して表示しております。

 

財務方針のガイドライン

 

2022年以降のガイドライン

2023年実績

成長投資・債務削減

・FCFは債務削減へ優先的に充当し、成長投資への余力を高める

・Net Debt/EBITDA※1は2024年に3倍程度を目指す

(劣後債の50%はNet Debtから除いて算出)

3.08倍

株主還元

 配当性向※235%程度を目途とした安定的な増配

(配当性向は2025年までに40%を目指す)

37.0%

※1 Net Debt/EBITDA(EBITDA純有利子負債倍率)=(金融債務-現預金)/EBITDA

※2 配当性向は、親会社の所有者に帰属する当期利益から事業ポートフォリオ再構築及び減損損失などに係る一時的な損益(税金費用控除後)を控除して算出しております。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

 当年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益が2,418億7千1百万円となりましたが、法人所得税等の支払による減少があった一方で、減価償却費等の非キャッシュ項目による増加や運転資本の効率化により、3,475億4千7百万円(前期比:815億5千6百万円の収入増)の収入となりました。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産や無形資産の取得に加え条件付対価の決済による支出などにより、1,177億1千3百万円(前期比:485億2千6百万円の支出増)の支出となりました。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、主に社債発行による収入があった一方で、社債の償還や借入金の返済による支出などがあり、2,267億4千6百万円(前期比:71億8千9百万円の支出増)の支出となりました。

 以上の結果、当年度末では、前年度末と比較して現金及び現金同等物の残高は225億7百万円増加し、599億4千5百万円となりました。

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1)生産実績

 当年度におけるセグメントごとの生産実績は以下の通りであります。

セグメントの名称

金額

前期比

日本

1,270,559

百万円

4.8%

欧州

565,090

百万円

24.0%

オセアニア

555,327

百万円

10.6%

東南アジア

46,344

百万円

4.5%

(注)1 金額は、販売価額によっております。

2 IFRSに基づく金額を記載しております。

3 日本の生産高には、外部への製造委託を含めております。

 

(2)受注実績

 当社グループでは受注生産はほとんど行っておりません。

 

(3)販売実績

 当年度におけるセグメントごとの販売実績は以下の通りであります。

セグメントの名称

金額

前期比

日本

1,362,850

百万円

4.7%

欧州

688,725

百万円

20.0%

オセアニア

652,154

百万円

11.8%

東南アジア

57,806

百万円

11.9%

その他

21,542

百万円

145.8%

調整額

△13,988

百万円

合計

2,769,091

百万円

10.3%

(注)1 調整額はセグメント間取引であります。

2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、外部顧客への売上収益のうち、総販売高の10%以上を占める相手先がないため、記載を省略しております。

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

 当年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は以下の通りであります。

(1)重要性がある会計方針及び見積り

 当社の連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。

 詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 6 重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。

 

(2)当年度の経営成績の分析

① 売上収益

 アサヒグループの当年度の売上収益は、前期比10.3%増、2,579億8千2百万円増収の2兆7,690億9千1百万円となりました。日本においては、ビール類の売上が増加した酒類事業を中心に各事業が増収となり、前期比4.7%増の1兆3,628億5千万円となりました。欧州においては、インフレ影響などにより販売数量は減少したものの、各国の主力ブランドやグローバルブランドの販売強化に加えて、価格改定の効果などにより、前期比20.0%増の6,887億2千5百万円となりました。オセアニアにおいては、物流の混乱による影響はあったものの、行動制限の解除に伴う需要回復などにより、前期比11.8%増の6,521億5千4百万円となりました。東南アジアにおいては、マレーシアにおける主力ブランドの販売が好調に推移したことに加え、価格改定の効果や為替変動の影響などにより、前期比11.9%増の578億6百万円となりました。その他においては、前期比145.8%増の215億4千2百万円となりました。

 

② 事業利益

 当年度の事業利益は、前期比8.1%増、198億6千3百万円増益の2,636億8千万円となりました。日本においては、原材料関連費用の増加などの影響はあったものの、増収効果や各種コストの効率化などにより、前期比9.8%増の1,195億3千5百万円となりました。欧州においては、原材料や人件費などの費用増加はあったものの、増収効果や各種コストの効率化、為替変動の影響などにより、前期比11.9%増の850億7千8百万円となりました。オセアニアにおいては、原材料関連の費用増加などの影響はあったものの、ミックスの改善による増収効果や各種コストの効率化、為替変動の影響などにより、前期比3.3%増の1,106億3千2百万円となりました。東南アジアにおいては、原材料関連の費用や輸送費の増加などの影響はあったものの、固定費全般の効率化などを推進したことにより、前期比144.2%増の13億9千8百万円となりました。その他においては、前期比278.1%増の53億2千1百万円となりました。

 

③ 営業利益

 営業利益は、事業利益の増益などにより、前期比12.9%増、279億5千万円増益の2,449億9千9百万円となりました。

 

④ 税引前利益

 当年度の税引前利益は、営業利益の増益に加え、金融収益が前期比156.8%増、86億1千9百万円増加の141億1千8百万円となったことや、金融費用が前期比5.2%増、8億9千9百万円増加の181億2千1百万円となったことなどにより、前期比17.4%増、358億7千8百万円増益の2,418億7千1百万円となりました。

 

⑤ 親会社の所有者に帰属する当期利益

 親会社の所有者に帰属する当期利益は、税引前利益の増益などにより、前期比8.3%増、125億1千8百万円増益の1,640億7千3百万円となりました。

 また、基本的1株当たり利益は323.82円(前期299.10円)となり、親会社所有者帰属持分比率は46.5%(前期42.7%)となりました。

 また、事業ポートフォリオ再構築など一時的な特殊要因を除いた親会社の所有者に帰属する当期利益を算出に用いた調整後基本的1株当たり利益は326.90円(前期326.48円)となりました。

 

(3)財政状態の分析

① 総資産

 当年度の連結総資産は、為替相場の変動によるのれん及び無形資産を含む外貨建資産の増加等により、総資産は前年度末と比較して4,555億6千9百万円増加し、5兆2,859億1千3百万円となりました。

 

② 負債

 負債は、原材料関連の価格上昇等に伴う営業債務及びその他の債務の増加や、為替相場の変動による外貨建負債の増加、社債及び借入金の減少等により、前年度末と比較して527億3千2百万円増加し、2兆8,201億3千1百万円となりました。

 

③ 資本

 資本は、前年度末に比べ4,028億3千6百万円増加し、2兆4,657億8千1百万円となりました。これは、配当金支出により利益剰余金が減少したものの、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上により利益剰余金が増加したこと及び為替相場の変動により在外営業活動体の換算差額が増加したこと等によるものです。

 この結果、親会社所有者帰属持分比率は46.5%となりました。

 また、事業ポートフォリオ再構築や為替変動など一時的な特殊要因を除いた「親会社の所有者に帰属する当期利益」及び「親会社の所有者に帰属する持分合計」を算出に用いた調整後親会社所有者帰属持分当期利益率は10.3%(前期11.1%)となりました。

 

(4)資本の財源及び資金の流動性についての分析

① キャッシュ・フロー分析

 キャッシュ・フローの状況につきましては、「(業績等の概要) (2)キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。

 また、キャッシュ・フロー指標のトレンドは、以下の通りであります。

 

 

前年度

当年度

親会社所有者帰属持分比率(%)

42.7

46.5

時価ベースの親会社所有者帰属

持分比率(%)

43.2

50.4

キャッシュ・フロー対有利子

負債比率(年)

6.1

6.2

インタレスト・カバレッジ・

レシオ(倍)

24.5

27.5

(注)親会社所有者帰属持分比率:親会社の所有者に帰属する持分/総資産

時価ベースの親会社所有者帰属持分比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

※ 各指標はいずれも連結ベースの財務数値により算出しております。

※ 株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

※ キャッシュ・フローは営業キャッシュ・フローを使用しております。

 

② 資金の調達

 アサヒグループの資金の源泉は、主として営業活動からのキャッシュ・フローと金融機関からの借入、社債の発行からなります。当社は経営方針として、有利子負債残高の圧縮を基本として掲げておりますが、「事業基盤強化・効率化を目指した設備投資」及び「M&Aを含む戦略的事業投資」については資金需要に応じて金融債務を柔軟に活用することとしております。一方、運転資金需要については、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーでまかなうことを基本としております。

 

③ 資金の流動性

 当社及び主要な連結子会社はCMS(キャッシュマネジメントシステム)を導入しており、各社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことにより、資金効率の向上と金融費用の極小化を図っております。

 

(5)戦略的現状と見通し

 2024年度は、コスト全般の高止まりやインフレなどによる経済減速リスクが懸念されますが、引き続き『中長期経営方針』に基づいて、各地域におけるプレミアム戦略の推進などによる事業ポートフォリオの強靭化に取り組みます。更に、サステナビリティと経営の統合をはじめとしたコア戦略の一層の推進に加えて、真のグローバル化に向けた人的資本の高度化やグループガバナンスの強化により、長期戦略を支える経営基盤を強化していきます。

 日本においては、酒類、飲料、食品事業の主力ブランドに経営資源を投下するとともに、新たな価値提案の強化などにより、成長基盤の拡大に取り組みます。また、各事業の枠を超えたシナジー創出に加えて、人的資本や組織機能の高度化、サステナビリティへの取り組み推進などにより、日本全体の経営基盤を強化します。

 欧州においては、各国のプレミアム戦略に基づく競争優位性の向上に加えて、『Asahi Super Dry』や『Peroni Nastro Azzurro』を軸とした世界的なパートナーシップの活用などにより、グローバルブランドの認知度向上を図ります。また、「環境」や「コミュニティ」を中心としたサステナビリティへの取り組みを強化することなどにより、成長基盤を更に拡大します。

 オセアニアにおいては、『Great Northern』など主力ブランドを中心とした持続的な成長に加え、酒類と飲料事業の強みを活かしたマルチビバレッジ戦略により、商品ポートフォリオの強化を図ります。また、各種オペレーションの最適化などによる収益構造改革やサステナビリティを重視した新価値提案などにより、事業基盤を一層強化します。

 東南アジアにおいては、自社ブランドを中心とした主力ブランドへの投資強化や販売チャネルの最適化を推進し、マレーシアなど展開国における収益性向上を図ります。また、健康需要の取り込みやDX投資、人材育成などの強化を通じて、成長基盤の拡大を図ります。

 

(6)経営者の問題認識と今後の方針について

 経営者の問題認識と今後の方針につきましては、この文中に記載したほか、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通りであります。

 

(7)経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載の通りであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

業務提携等に関する契約

会社名

契約事項

契約締結先

締結年月

発効年月

有効期限

アサヒグループ

ホールディングス

株式会社

(提出会社)

中国における「アサヒスーパードライ」及び「アサヒビール」の製造ライセンス供与のための

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の合弁契約

伊藤忠商事株式会社

日鉄物産株式会社

1997年

10月

1998年

8月

2024年

7月

アサヒビール

株式会社

(連結子会社)

沖縄県及び鹿児島県奄美大島群島を除く日本における「アサヒ オリオンドラフト」等の販売契約

オリオンビール株式会社

2020年

7月

2020年

7月

自動更新

アサヒビール

株式会社

(連結子会社)

沖縄県における「アサヒスーパードライ」等の製造販売ライセンスの供与契約

オリオンビール株式会社

2003年

5月

2003年

5月

自動更新

アサヒグループ

ホールディングス

株式会社

(提出会社)

飲料事業、チルド事業、食品事業、海外事業、調達・物流等の機能面における業務提携契約

カゴメ株式会社

2007年

2月

2007年

2月

自動更新

アサヒ飲料

株式会社

(連結子会社)

「シャンソン十六茶」バルクの継続的売買及び商標の使用許諾に関する契約

(注)

株式会社シャンソン化粧品

1998年

12月

1998年

12月

自動更新

Asahi Europe & International Ltd

(連結子会社)

英国においてFullers, Smith & Turner社が運営するパブに対するビール等の飲料の供給契約

Fuller, Smith & Turner

plc

2019年

4月

2019年

4月

いずれの当事者も5年間の期間の延長を相手方に請求できる規定を行使し契約期間が2029年4月まで延長された。

CUB PTY LTD

(連結子会社)、

(CUBの義務履行に関する保証のみ)

アサヒグループ

ホールディングス

株式会社

(提出会社)

豪州におけるCorona・Lowenbrau等のビールの継続的供給及びブランドの使用許諾に関する契約(但し、2021年1月5日付けでHeineken社に売却された、Stella Artois及びBeck’sに関する保証債務は消滅)

ANHEUSER-BUSCH INBEV SA/NV

2020年

6月

2020年

6月

無期限

(但し一定の終了事由あり)

CUB PTY LTD

(連結子会社)

豪州におけるCUB PTY LTD等の買収事業の内、豪州競争法当局の承認を受けた問題解消措置としての一部ブランド(ビール及びサイダー)の売却に付随する買主のための製造受託。

DBG (Australia) Pty Ltd及び

SBM Beer Pty Ltd

2021年

1月

2021年

1月

2024年1月

5日終了

(注) 「シャンソン十六茶」バルクとは、アサヒ飲料社商品「十六茶」の原料茶葉であります。

 

6【研究開発活動】

 当年度におけるグループ全体の研究開発費は、17,470百万円です。そのうち日本に係る研究開発費は7,550百万円、欧州に係る研究開発費は2,779百万円、オセアニアに係る研究開発費は370百万円、東南アジアに係る研究開発費は105百万円、その他の事業又は全社(共通)の研究開発費は6,664百万円です。

 日本、欧州、オセアニア、東南アジアでは、各地域統括会社における『中期重点戦略』に基づき、研究開発活動を行いました。

 アサヒクオリティーアンドイノベーションズ㈱では、アサヒグループの先端研究の拠点として、アサヒグループにおける持続的な成長を実現するため、中長期的な社会環境や競争環境の変化を見据え、メガトレンドからバックキャストで導いた未来シナリオとこれまでの研究で蓄積してきた技術・知見・ノウハウを踏まえ、グループの研究開発の重点領域に対して、新たな価値創造やリスク軽減に向けた商品・技術開発に取り組んでいます。また、グローバルに展開している強みを活かし、最適な研究成果の導出先を見極め、各リージョンと連携を取りながら成果の最大化に努めています。

 

※『中期重点戦略』の詳細は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)対処すべき課題」をご参照ください。

 

[先端研究]

(アルコール関連)

 社会環境の変化や消費者ニーズの多様化に対応すべく、アルコール代替価値、新価値創造などBACにおける優位性構築に向けた商品・技術開発の研究強化を進めております。これまでにグループで培った技術・知見に加え、外部の先端技術も積極的に活用することで、社会の需要に対応可能な、そして既存のビジネスモデルを大きく変えるような技術の実現を目指して参ります。本年欧州で販売開始したノンアルコールビール「Kozel 0,0%」への技術提供など、海外への成果導出を見据えた各種技術開発にも取り組んでおり、得られた研究成果の最大化を図ってまいります。

 

(ヘルス&ウェルネス)

 酵母・乳酸菌をはじめとする微生物研究や、これまで培ってきた健康機能性研究に、最先端のテクノロジーを導入し磨き続けています。乳酸菌等既存素材の潜在的な健康機能を探索することに加え、新しい健康領域における素材の開発、これまで科学的に検証されてこなかった飲食がもたらす価値の深掘り、及び発酵技術を活かした天然素材の開発に取り組むことで、独自性の高い健康価値の事業化やグローバル展開に貢献しています。

 具体的には、「L-92乳酸菌」の研究によって免疫領域での機能性表示が可能となりました。「L-92乳酸菌」と免疫研究を通じて、我々は人々の生涯にわたる健康の維持増進に貢献できると考えています。また、「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」では、近年社会的に注目されているフェムテック領域において機能性表示が可能になりました。月経周期に関連した具体的な機能性表示の届出が受理された、初の事例になります。さらに、これらの素材の海外展開を見据え、各国の法規制対応やヘルスクレームの取得に向けた取り組みも開始しました。

 

(サステナビリティ)

 2023年2月に制定した新環境ビジョンのスローガン「プラネットポジティブ」の達成に向けて、農業、エネルギー、容器包装など原料製造から製品提供に至るバリューチェーン上のさまざまな工程において持続可能な社会の実現に資する技術開発に取り組んでいます。気候変動対策では、CO2排出量削減の取り組みである「ビール工場排水由来のバイオメタンガスを利用した燃料電池による発電技術」を国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)ジャパンパビリオンにて世界にPRする一方で、同技術の実装及び汎用性向上に向けた低コスト化・省スペース化に取り組んでいます。加えて事業活動で副生する副産物や熱など未利用資源・エネルギーの幅広い活用を目的とした研究も行っています。容器包装については、化石燃料を用いたプラスチック容器の使用量削減に向けて、環境配慮素材への代替検討をはじめ、使い捨て容器を使用しない社会に向けた技術として強炭酸サーバーの実用化も進めています。更に、将来的な農産物原料の調達リスク低減のため、再生型農業の検証、節水型農業の技術開発やコーヒーなどの気候変動に影響を受けやすい原料の代替技術の開発にも着手しています。