第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社は、当社を取り巻く経営環境の変化のスピードが加速し、不確実性がさらに高まっていくと考えられる中で、更なる持続的な成長を実現するために、当社の目指すべき方向性及び具体的な方針として、ミッション、ビジョン、ポリシーを定めております。

・ミッション

「人と人の未来を繋ぐ先駆者となる」

当社グループは創業以来、不動産の既成概念を打ち破って成長してきました。その中で培ったノウハウを最大限に活用し、世界中と繋がりを持ち、生み出される不均衡を解消します。様々な社会課題と真摯に向き合い、社会に潤いや豊かさを提供する企業であり続けることを誓います。

・ビジョン

「自立自走」

強い意志と主体性を持ち、未来を見据えた思考・行動をとり、機動力のある会社を目指します。

「プロフェッショナル思考」

責務を全うするために、専門性を高め、あらゆる期待に応え、誇り高く仕事に取り組みます。全てのステークホルダーの安心安全を大切に、WIN/WIN/WINを実現します。

「変化を楽しもう」

どのような環境にも適応できる柔軟な感性を育み、現状を否定する勇気とポジティブな挑戦を賞賛します。あらゆる多様性を認め、時代の一歩先を進む会社を目指します。

・ポリシー

これまで社訓としてきた「中庸」「質実」「不断」を、新たにポリシーとして位置付けます。

「中庸」

世の中の動きに対応し、バランスのとれた経営を維持する。

「質実」

華美を排し、スリムな会社創りに徹する。

「不断」

永久に存続する為、八分の力で邁進する。

 

(2) 目標とする経営指標

次期(2024年12月期)の定量目標

・連結売上高 :23,700百万円

・連結営業利益: 1,800百万円

・連結経常利益: 1,500百万円

次期の見通しにつきましては、新型コロナウイルス感染症による行動制限の緩和により内需・インバウンド需要等の正常化が進み、緩やかな景気の回復が期待される一方、ウクライナ情勢の長期化、中東地域をめぐる地政学リスクの高まりから、エネルギー価格や資源価格の高止まりが予想され、また、物価高による実質賃金のマイナス継続要因に加え、日銀の金融政策転換による金利上昇リスクも予想されることから、先行き不透明な状況が続くものと見込まれ、不動産市況の動向についても注視していく必要があります。

このような状況のもと、当社グループは、2024年度を最終年度とした3カ年の中期経営計画を推進し、当連結会計年度において想定以上に販売物件の前倒しが進捗したことから、定量目標の連結営業利益18.0億円、連結経常利益16.5億円、ROE9.0%を1年前倒しで達成することができました。2024年以降の新中期経営計画につきましては、現在策定中であり、2024年中旬以降に公表予定であります。

好調な市況を背景として当連結会計年度の業績が想定以上に好調であったことに加えて、2024年通期連結業績見通しにおいて不動産市況の変化を見据えて一部の居抜き物件の利益率を保守的に見込んでいることから、営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益は当連結会計年度を下回ることを見込んでおります。但し、当該物件を除いた底地、居抜き及び所有権物件の利益率は概ね仕入時の想定通りに推移することを見込んでおります。また、これまで物件の仕入から販売まで1年内で回転していた販売用不動産は、好調な仕入を背景として、翌期または翌々期を見据えて仕入を行うことができるようになっております。回転期間1年内のフロービジネスから中期の事業期間に徐々に転換しつつあり、これまで以上に丁寧な権利調整を進めて利益の最大化を図ることができるため、今後の安定的な成長に寄与するものと考えております。このように、次期は増収減益の見通しでありますが、次期以降に販売を予定している販売用不動産は十分に積み上がっており、一過性の要因を除けば、当社グループとしては着実に成長路線を歩んでいると考えております。

なお、このような事業環境の中で、当社グループは市場動向を注視しながら、引き続き慎重な目線での仕入と積極的な販売活動を行ってまいります。また、販売用不動産の増加に伴い有利子負債も増加していることから、財務基盤の強化に向けて資金調達の多様化、販売用不動産の管理及び販売スケジュールの徹底を図ってまいります。

上記により、次期の連結業績見通しにつきましては、売上高23,700百万円(前年同期比1.9%増)、営業利益1,800百万円(前年同期比16.5%減)、経常利益1,500百万円(前年同期比15.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益1,000百万円(前年同期比15.5%減)を見込んでおります。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題

当社は、2024年度を最終年度とした3カ年の中期経営計画を推進し、当連結会計年度において想定以上に販売物件の権利調整等が進捗したことから、定量目標の連結営業利益18.0億円、連結経常利益16.5億円、ROE9.0%を1年前倒しで達成することができました。2024年以降の新中期経営計画につきましては、現在策定中であります。

ウクライナ情勢の長期化、中東地域をめぐる地政学リスクの高まりから、エネルギー価格や資源価格の高止まりが予想されます。また、物価高による実質賃金のマイナス継続要因に加え、日銀の金融政策転換による金利上昇リスクも予想されることから、不動産市況の動向についても注視していく必要があります。このような状況の中、中長期で安定的な成長を実現できる事業基盤を構築するため、既存事業の拡大、事業領域の拡張及び経営基盤の強化を推進するとともに、利益還元の拡大を図ってまいります。

① 既存事業の拡大

当社の事業において継続的に安定した成長を実現させていくためには、全社において個人主体から組織主体の体制への転換、人員の増加だけに頼らない規模の拡大を推進させていく必要があります。その中で、プロジェクトの事例共有の仕組みを導入したナレッジマネジメントの強化、居抜きに特化したランディングページの開設・運営によるオンラインマーケティングの強化、既存事業から派生した新たなビジネススキームの策定、営業活動に集中できる環境構築等を推進してまいりました。今後もこの取組みを加速させていくとともに、パート社員も活用した営業生産性の向上や人事戦略の策定・実施を進めていくことで、より一層の組織力の強化を図ってまいります。

② 事業領域の拡張

当社では、底地・居抜きに次ぐ新規事業の検討・検証を進めております。

地域活性化事業においては、八幡平温泉郷(岩手県八幡平市)での宿泊施設の運営を開始しており、さらなる拠点施設拡張に向けて準備を進めております。また、長崎県平戸市と「歴史的資源を活用した地域活性化推進の包括連携協定」を締結し、地域の課題となっている空き家の利活用等に着手しております。さらに、同市に「企業版ふるさと納税」による寄付を行い観光振興の推進を支援します。今後も不動産権利調整のノウハウを活かし、地域の活性化に貢献するとともに、当プロジェクトをモデルケースとして他地域への事業拡大も引き続き検討してまいります。

女性向けライダーハウスにおいては、宿泊設備のトレーラーハウスが完成間近となっており、今夏の開業を目指して準備を進めております。

③ 経営基盤の強化

上記の既存事業の拡大及び事業領域の拡張を推進していくため、ガバナンス体制の強化、バックオフィス体制の見直し、財務基盤の強化及び人事制度改革を推進しております。

ガバナンス体制の強化については、危機管理体制の整備、事業継続計画(BCP)の策定・実施及び情報管理体制も含めたリスクマネジメント体制の強化を進めてまいります。

バックオフィス体制の見直しについては、全社横断的に業務効率化プロジェクトを継続して推進しており、今後はAIも含めたITを積極的に検討・導入して、営業本部と管理本部の生産性の改善を図ってまいります。

財務基盤の強化については、仕入・販売物件のリスク管理・スケジュール管理を徹底していくとともに、不動産特定共同事業法(不特法)やクラウドファンディングも活用した資金調達先の多様化を検討してまいります。

人事制度改革については、人事組織戦略の策定に着手しております。より働きがいのある職場環境の実現を目指し、評価制度や教育制度の見直しに加え、優秀な人材の採用強化を図ってまいります。

また、上記の取組みに加え、IR・PR活動の強化を課題として認識しており、投資家を含めたステークホルダーに当社の事業内容及び魅力を発信してまいります。

④ 利益の還元

ⅰ 株主還元

当社は、株主の皆さまへの利益還元を重要な経営課題の一つとして位置付けております。株主の皆さまへの利益還元につきましては、収益力の向上を図り配当原資を確保することにより、継続的かつ安定的な配当の実施及び経営成績に応じた積極的な利益還元を配当の基本方針としております。株主利益の最大化を目指した経営戦略の推進によって、収益力の向上と事業基盤の拡大に努めてまいります。

2024年12月期の期末配当につきましては、中間配当金1株につき15円、期末配当金1株につき25円(年間配当金は1株につき40円、当期から7円の増額)の配当を予定しております。

引き続き、株主の皆さまに対する還元を重要な経営課題として位置付け、業績の拡大に応じて株主還元の拡大に努めてまいります。

ⅱ 社会還元

当社は、サステナビリティが経営の重要課題の一つであると認識しており、事業活動を通じて、様々な社会問題の解決に貢献することで、持続的な成長が実現できるものと考えております。当社にとって重要な社会課題をマテリアリティとして特定し、各マテリアリティについて個別課題の設定及び基本方針の策定を進めてまいりました。2024年2月にはサステナビリティ委員会を発足しており、今後のサステナビリティに関する活動の方針策定、促進及び管理を行ってまいります。

また、従来から取組んでおりました底地応援プロジェクトを中心とした子供支援活動と寄付・購買・勤労による支援を中心とした社会福祉支援活動につきましては、今後も引き続き進めてまいります。それに加えて、これまで子育てサポートなど女性社員が働きやすい社内体制を整備してきており、今後も女性社員が活躍できる環境整備をさらに拡充させていく方針であります。

ⅲ  社員還元

当社の今後の業容の拡大及び業務内容の多様化に対応するためには、優秀な人材の確保が重要となります。そのため、多様な働き方の環境整備をはじめとした職場環境のさらなる改善・整備のため、会社休日の増設及び物価上昇に対応するためのベースアップの実施をはじめとした給与・賞与などの処遇の充実を継続して行っております。また、広い業務スペースを確保し、従業員が働きやすい環境を整備するため、京都支店を移転いたしました。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1) サステナビリティ全般

当社グループは、企業理念に基づき、事業活動を通じて持続可能な社会の実現を目指すサステナビリティ経営を実践してまいります。会社のミッションとして掲げている「人と人の未来を繋ぐ先駆者となる」を実現し、当社グループの存在意義を高めてまいります。サステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 

① ガバナンス

当社グループは、サステナビリティに関する活動を促進・管理するため、2024年2月に「サステナビリティ委員会」を設置いたしました。サステナビリティ委員会では、変化する世の中のニーズに応えるべく組織の方針策定と実施、ステークホルダーとのコミュニケーション、リスク管理、社内教育と文化の醸成、透明性の向上などを目的として、各部署への戦略立案や指示を行っております。

 

 

サステナビリティ推進体制


② 戦略

当社グループの経営戦略において重要なサステナビリティ関連のリスク・機会に適切に対処するため、マテリアリティを特定いたしました。透明性を確保するため、定期的に内容を見直し、変化する状況へ柔軟に対応してまいります。

 

カテゴリー

マテリアリティ

個別課題

環境(E)

環境への負荷、災害リスクの低減を目指す活動の推進

廃棄物削減とリサイクル

自然災害からステークホルダーを守る取組の推進

社会(S)

取引に関わる全ての関係者のWin-Win-Winの実現

安心安全な社会への貢献

権利調整による不動産の再生

地域活性化

社会(S)

多様な価値観の人材育成と働きやすい職場環境

事業成長・顧客満足度を高めていくための人材獲得・育成

従業員の健康

働き方の多様化・ワークライフバランス

ガバナンス(G)

ガバナンスをより重視した経営による持続的な成長

法的コンプライアンスの遵守

BCPを重視したリスク管理

 

 

③ リスク管理

当社グループでは、組織目標を達成する上で潜在的な障害や損失を最小限に抑え、持続可能な成長を促進するため、リスクマネジメント委員会、コンプライアンス委員会及びサステナビリティ委員会にてリスク評価と分析を行っております。

BCPを重視したリスク管理をマテリアリティにも掲げており、事業の安定継続のため、自然災害、感染症、サイバー攻撃などのリスクに備えております。

 

 

(2) マテリアリティに関する事項

① 環境への負荷、災害リスクの低減を目指す活動の推進

地球温暖化による近年の異常気象に対し、環境負荷を減らす企業活動が求められている中で、当社グループは事業活動の中で環境負荷の低減に取組んでおります。また、従業員や借家人等のステークホルダーの安全・安心を確保するためのシステムや仕組みの導入を行っております。

 

② 取引に関わる全ての関係者のWin-Win-Winの実現

当社グループは、権利調整業務を通じて、不動産に関する諸問題を解決し、ステークホルダーへ住まいの安全を提供できるよう取り組みます。適切な問題解決を継続することで、持続可能で快適な住環境づくりに貢献することに加えて、権利調整のリーディングカンパニーとして、顧客満足度を重視した企業活動にも注力してまいります。

地域活性化事業は、人口流出による過疎化等で空き家の増加が課題となっている現状に対し、特に観光資源を有する地域に点在する空き家を利活用する(歴史的建造物・別荘等の遊休資産を再生しながら不動産の魅力を引き出す)ことにより、地方自治体が抱える問題解決の一翼を担ってまいります。

 

③ 多様な価値観の人材育成と働きやすい職場環境の実現

当社グループにおいて、人的資本は会社の中核をなし、競争力や持続可能な成長基盤を築くものと考えており、従業員のスキルやモチベーション向上に投資し、人的資本を最大限に活用することを目指しております。

当社グループは、日本の高齢化社会と人口減少が加速する中、多様な人材や働き方を受け入れ、人材の確保に努めてまいります。従業員の声に耳を傾け、従業員の意見を尊重しながらフレキシブルに対応しております。それに加えて、人材育成が、今後の事業成長や顧客満足度の向上に繋がると認識しており、従業員教育に積極的に投資しております。

また、従業員の心身の健康を大切にし、やりがいのある仕事を提供できるよう環境づくりに力を入れます。従業員満足度の向上が、生産性向上に寄与するものと考え、快適な職場環境構築に向けた様々な取り組みを実施してまいります。

女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく指標・数値に関しては、「5 従業員の状況(4)管理職に占める女性労働者の割合」に記載しております。本指標につきましては、今後向上させていくことを目標としております。(参考:管理職に占める女性労働者の割合 2022年 9.3%、2023年 22.2%)

なお、中期経営計画の中で人事戦略を策定しており、今後、当社グループの人的資本に関する方針が確定しましたら開示する予定であります。

 

④ ガバナンスをより重視した経営による持続的な成長

コンプライアンス委員会を定期的に開催し、テーマに沿った社内コンプライアンス研修を企画、全社でコンプライアンス意識を醸成しております。想定される重大なコンプライアンス違反を社内研修で事前に共有することで未然に防止しております。また、内部通報窓口を通常用、匿名用及び女性専用の3種類を設置し、実効性を高めております。

リスクマネジメント委員会を定期的に開始し、社内で報告されたリスクに関して評価分析し、社内周知することでリスクに関する意識の浸透を図っております。また、自然災害、感染症及び情報漏洩等に関するBCPを策定し、有事の際に備えております。

 

 

3 【事業等のリスク】

以下には、当社グループの事業及び経理の状況等に関して、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしもリスク要因に該当しない事項についても、投資判断上重要と考えられる事項について、投資家に対する積極的情報開示の観点から以下に記載しております。なお、当社グループは、これらのリスク発生が考えられる事項に対し、十分な認識をした上で、リスク回避あるいは発生後の迅速な対応に努める所存でありますが、当社株式に対する投資判断は、本項記載内容等を慎重に検討した上で行われる必要があると考えます。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経済情勢の変動について

当社は、底地及び居抜きを主な対象とした権利調整を伴う不動産販売事業を行っております。当社グループの属する不動産業界におきましては、景気動向及び金利動向等の影響を受けやすいため、景気見通しの悪化や金利の大幅な上昇等が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、経済情勢の変化により土地の公示価格の下落等が発生した場合には、当社の収益が圧迫され、業績に影響を及ぼす可能性があります。特に、権利調整におきましては、売買対象となる底地及び居抜きの買取価格及び賃料収入は、土地の実勢価格に基づいて算定されており、不動産価格と事業損益は密接に関係しているため、景気動向の影響を受ける傾向にあります。従いまして、当社の想定を超える国内外の社会情勢や経済情勢の変動が起こった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(2) 所有不動産の価格下落リスクについて

当社は、在庫として保有する販売用不動産や収益性のある賃貸不動産を所有しており、当該不動産の販売価格や稼働率、賃料等は、景気動向や不動産市況、不動産税制の変更、近隣の賃貸需給関係等の影響を受けやすい傾向があります。

当社グループにおきましては、販売用不動産については、上記のリスクを注視しながら計画に基づいた販売を推進するとともに、賃貸不動産については、稼働率を高めて安定した賃料収入を確保するため、テナントの入退居状況や賃料の未収状況を常にチェックし、また不動産そのものの価値を高めるよう努力してまいります。しかしながら、上記理由等により、販売価格が下落した場合や稼働率や賃料が低下し、保有する収益不動産から得られる賃料収入が減少した場合、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

また、首都圏直下型の大地震等の自然災害、火災、事故等により、保有している不動産が毀損及び滅失する可能性があります。当社グループでは原則として、所有する不動産に対しては、火災保険や賠償責任保険等を付保しておりますが、保険金の限度額を上回る損害が発生する可能性や、保険でカバーできない災害や事故が発生する可能性を否定することはできません。また、保険金が支払われた場合におきましても、災害発生前の状態に回復させることができない可能性があります。この場合、当社グループの財政状態及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(3) 不動産に関する権利関係の複雑性及び不動産登記に公信力がないことについて

不動産については様々な権利義務が存在します。日本の不動産登記には公信力(公示を信頼して取引した者には、公示どおりの権利状態があったのと同様の保護を与える力)がないことから、登記を信頼して取引した場合でも保護されない場合があります。特に当社が主に取り扱う底地については、権利関係が不動産登記に正確に反映されていないために登記から事前に正確な権利関係を完全に把握できない場合や、権利関係の発生時期が古く度々相続が発生し権利が複雑化しているために、正確な権利関係の把握に時間を要する場合があります。従いまして、当社が取得した権利が第三者の権利や行政法規等により制限を受け、あるいは第三者の権利を侵害していること、当社が借地権者等の権利者と判断した相手先以外に権利者が存在すること等が後になって判明する可能性があります。当社は、仕入に際して登記内容を確認することに加えて不動産仲介業者・税理士等の物件情報提供者を通じ、土地所有者より権利関係に関する情報を可能な限り入手しており、また物件取得後において新たな権利関係等が判明した場合はそれに応じた権利調整方法を再度立案することにより対応を行っておりますが、対応困難な事態が現実に発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(4) 不動産に係る権利調整の成否による業績の変動について

当社の不動産販売事業においては、収益化するにあたり権利調整を行う場合が大半を占めております。従いまして、底地において借地権者が底地の販売交渉に応じないことから販売交渉が進展しない場合、居抜きにおいて借家権者が明渡し交渉に応じないために売却に至らない場合など、権利調整における交渉が順調に進捗せず収益化に至らない場合には、当社グループの業績に変動が生じる可能性があります。

 

(5) 不動産物件の仕入について

当社の不動産販売事業においては、物件の仕入の成否が販売に直結するため、情報収集先の拡大等により物件仕入の確保に努める方針であります。しかしながら、不動産市況の変化、物件の取得競争の激化等により優良な物件を仕入れることが困難となった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 不動産物件の引渡し時期及び決済条件の変更等による業績の変動について

当社の不動産販売事業にかかる売上計上方法は、物件の売買契約を締結した時点ではなく、物件の引渡しを行った時点で売上を計上する引渡基準によっております。そのため、顧客都合による決済日の変更や決済条件の変更等により、物件の引渡し時期、規模及び利益率等の変更が生じた場合、当社グループの業績に変動が生じる可能性があります。

 

(7) 法的規制について

当社グループの属する不動産業界には、「宅地建物取引業法」「建築基準法」「都市計画法」「国土利用計画法」「借地借家法」等の法的規制があります。当社グループは、それらの規制を受け、宅地建物取引業法に基づく免許を取得して不動産販売等の業務を行っております。これらの法的規制の大幅な改廃や新法の制定により、事業計画見直しの必要が生じる等の法的規制の強化や緩和が行われた場合、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。

なお、宅地建物取引業免許は、当社グループの主要な事業活動に必須の免許であります。現時点において、グループ各社には、宅地建物取引業法及び建築士法に定める免許または登録の取消事由・更新欠格事由に該当する事実は存在しておりません。しかしながら、今後、何らかの理由により免許及び登録の取消・更新欠格による失効等があった場合には、当社グループの主要な事業活動に支障をきたし、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループの有する免許、許可は以下のとおりであります。

会社名

法令等名

免許・許可の内容

有効期限

㈱サンセイランディック

宅地建物取引業法

宅地建物取引業者免許
(国土交通大臣(5)第6282号)

2027年5月17日

 

 

(8) 税制の変更等による業績の変動について

当社グループの属する不動産業界において、不動産関連税制の変更が生じた場合には、資産の保有・取得・売却コストの上昇、顧客の購買意欲の減退等により当社グループの業績に変動が生じる可能性があります。また、当社が主に取り扱う底地については、土地所有者における相続の発生が当社の物件仕入の要因となる場合が多いことから、相続税制において規制の強化・緩和等がなされた場合には、当社グループの業績に変動が生じる可能性があります。

 

(9) 訴訟等について

当社グループは、当連結会計年度末現在において、当社グループの業績に重要な影響を及ぼす訴訟を提起されている事実はありませんが、万が一将来において、借地権者及び借家権者との交渉に伴うトラブルが生じた場合、これらに起因する訴訟その他の請求が発生する可能性があります。これらの訴訟等の内容及び結果によっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(10)有利子負債への依存と資金調達について

当社では、不動産の取得資金を主に金融機関からの借入金により調達しているため、有利子負債への依存度が比較的高い水準にあります。今後は、資金調達手段の多様化に取り組むとともに、自己資本の充実に注力する方針でありますが、金融情勢の変化等により金利水準が変動した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社の資金調達の方法については、特定の金融機関に依存することなく個別の案件毎に融資の打診をしておりますが、金融政策の変化、当社の信用力の低下等により資金調達に制約を受けた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

《有利子負債残高の推移》

期別

項目

2021年12月

2022年12月

2023年12月

有利子負債残高    (千円)

8,107,525

16,399,010

16,878,850

総資産額       (千円)

20,050,696

28,976,914

30,976,423

有利子負債比率     (%)

40.4

56.6

54.5

 

 

(11)新型コロナウイルス感染症等の感染拡大に伴うリスク

新型コロナウイルス感染症等の感染拡大により、不動産販売事業において不動産売買の遅延及び取引の見合わせ等が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)個人情報等の管理について

当社グループは、土地所有者や借地権者の顧客情報等の多数の個人情報や、当社グループの様々な経営情報等の内部情報を保有しております。これらの情報管理については、その管理に万全を期するため、管理体制の構築、社内規程の整備、システム上のセキュリティ対策の強化など、その管理に万全を期しております。しかしながら、万が一これらの情報が外部流出した場合、あるいは不正使用された場合には、信用の失墜や損害賠償等が生じ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)人材の確保と育成について

当社は、底地及び居抜きを主な対象とした権利調整を伴う不動産販売事業を行っており、業務を行うためには、不動産に係る幅広い法令や業務に関する知識が求められ、また、土地所有者、借地権者と交渉を進めるにあたって高いコミュニケーション能力が求められます。したがって、今後の業容の拡大及び業務内容の多様化に対応して、優秀な人材を適切な時期に確保する必要があります。しかしながら、人材の確保・育成が計画通り進まない場合や、社外流出等何らかの事由により既存の人材が業務に就くことが困難になった場合には、当社の事業活動に支障が生じ、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態の状況

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末から1,999百万円増加し、30,976百万円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末から978百万円増加し、18,899百万円となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末から1,020百万円増加し、12,076百万円となりました。

 

② 経営成績の状況

当連結会計年度の経営成績は、売上高23,269百万円(前年同期比49.8%増)となり、営業利益2,155百万円(前年同期比46.7%増)、経常利益1,765百万円(前年同期比37.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,182百万円(前年同期比11.6%増)となりました。

当社グループは前連結会計年度において、建築事業を営む株式会社One's Life ホームの全株式を譲渡したことにより「不動産販売事業」の単一セグメントとなったため、第1四半期連結累計期間より、セグメント別の記載を省略しております。

なお、単一セグメント内の当連結累計期間における販売実績及び仕入実績は次のとおりであります。

 

ⅰ 販売実績

区分

件数

前年同期比(%)

売上高(百万円)

前年同期比(%)

底地

292

△0.7

8,253

+44.7

居抜き

89

+111.9

13,138

+56.4

所有権

20

+11.1

1,487

+88.8

その他の不動産販売事業

388

△7.8

合計

401

+13.3

23,269

+52.0

 

(注)1.「件数」については、売買契約の件数を記載しております。

2.底地・居抜き・所有権の「区分」については、仕入時の区分により記載しております。仕入後に権利調整により底地から所有権に変わった区画等に関しては、仕入時の区分に基づき底地に含めて記載しております。また、底地・居抜き・所有権が混在する物件については、底地を含む物件は「底地」に、居抜きと所有権のみが混在する物件は「居抜き」に含めて記載しております。

3.「その他の不動産販売事業」は、地代家賃収入、仲介手数料による収入、業務受託手数料収入等であります。

 

販売におきましては、底地、居抜き及び所有権の区分において販売が増加したことにより、売上高は前年同期比で増加いたしました。

 

ⅱ 仕入実績

区分

区画数

前年同期比(%)

仕入高(百万円)

前年同期比(%)

底地

439

+34.7

9,924

+36.4

居抜き

84

△23.6

7,287

△39.2

所有権

21

△50.0

1,406

+1.7

合計

544

+13.8

18,617

△9.8

 

(注)1.「区画数」については、底地の場合は借地権者の人数など、物件の仕入時に想定される販売区画の数量を記載しております。

2.底地・居抜き・所有権が混在する物件の「区分」については、底地を含む物件は「底地」に、居抜きと所有権のみが混在する物件は「居抜き」に含めて記載しております。

 

仕入におきましては、底地及び所有権の仕入が増加したものの、居抜きの仕入が減少したことにより、仕入高は前年同期比で減少いたしました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、2,714百万円(前期比14.9%減)となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において、営業活動の結果使用した資金は11百万円(前年同期99.8%減)となりました。

収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益1,756百万円であり、支出の主な内訳は、棚卸資産の増加による支出1,707百万円、法人税等の支払額82百万円であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において、投資活動の結果使用した資金は765百万円(前年同期187.0%増)となりました。

収入の主な内訳は、差入保証金の回収による収入109百万円であり、支出の主な内訳は、有形固定資産の取得による支出279百万円、差入保証金の差入による支出178百万円、拘束性預金の増加による支出391百万円であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において、財務活動の結果得られた資金は302百万円(前年同期96.2%減)となりました。

収入の主な内訳は、短期借入金の増加による収入1,117百万円、長期借入れによる収入3,000百万円であり、支出の主な内訳は、長期借入金の返済による支出3,637百万円、配当金の支払額227百万円であります。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りとは異なる場合があります。

なお、連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、以下のとおりであります。

(販売用不動産の評価)

当社グループは、販売用不動産の評価について、個別法に基づく原価法(収益性の低下による簿価切下げの方法)によっており、収益性の低下した販売用不動産については、正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。

国内経済の変化により、不動産市場が悪化したこと等により正味売却価額が下落した場合、評価損の計上が必要となる可能性があります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

ⅰ 財政状態の分析
(流動資産)

当連結会計年度末の流動資産は、前連結会計年度末から1,592百万円増加し、29,521百万円となりました。現金及び預金66百万円の減少、販売用不動産1,707百万円の増加が主な要因であります。

(固定資産)

当連結会計年度末の固定資産は、前連結会計年度末から407百万円増加し、1,454百万円となりました。建物119百万円の増加、投資その他の資産その他97百万円の増加が主な要因であります。

(流動負債)

当連結会計年度末の流動負債は、前連結会計年度末から3,139百万円増加し、15,746百万円となりました。短期借入金1,117百万円の増加、1年内返済予定の長期借入金1,490百万円の増加、未払法人税等589百万円の増加が主な要因であります。

(固定負債)

当連結会計年度末の固定負債は、前連結会計年度末から2,160百万円減少し、3,153百万円となりました。長期借入金2,127百万円の減少が主な要因であります。

(純資産)

当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末から1,020百万円増加し、12,076百万円となりました。利益剰余金954百万円の増加、資本剰余金28百万円の増加が主な要因であります。

 

ⅱ 経営成績の分析

(売上高)

当連結会計年度における売上高は23,269百万円(前年同期比7,735百万円増)となりました。

売上高が増加した主な要因は、底地、居抜き及び所有権の販売が増加したことによるものであります。

(売上総利益)

当連結会計年度における売上総利益は6,342百万円(前年同期比1,294百万円増)となりました。

(販売費及び一般管理費)

当連結会計年度における販売費及び一般管理費は4,186百万円(前年同期比608百万円増)となりました。これは、販売手数料の増加164百万円、賞与の増加113百万円によるものであります。

(営業利益)

当連結会計年度における営業利益は2,155百万円(前年同期比686百万円増)となりました。前述の売上総利益の増加によるものであります。

(経常利益)

当連結会計年度における経常利益は1,765百万円(前年同期比481百万円増)となりました。営業外収益は28百万円であります。営業外費用は418百万円であり、主な内容は支払利息271百万円、事務所移転費用92百万円によるものであります。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

税金等調整前当期純利益は1,756百万円(前年同期比486百万円増)となり、税効果会計適用後の法人税等負担額は573百万円(前年同期比363百万円増)となりました。その結果、当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は1,182百万円(前年同期比122百万円増)となりました。

 

ⅲ キャッシュ・フローの分析

当連結会計年度における現金及び現金同等物は、2,714百万円(前年同期比474百万円減)となりました。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が1,756百万円(前年同期比486百万円増)、棚卸資産の増加による支出が1,707百万円(前年同期8,649百万円減)、契約負債の減少による支出が82百万円(前年同期比403百万円減)、法人税等の支払額が82百万円(前年同期比343百万円減)となったこと等により、11百万円の資金の減少(前年同期比9,256百万円減)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出279百万円(前年同期比265百万円増)、差入保証金の差入による支出178百万円(前年同期比146百万円増)、拘束性預金増加が391百万円となったこと等により、765百万円の資金の減少(前年同期比498百万円の増加)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の増加による収入が1,117百万円(前年同期比3,531百万円減)、長期借入れによる収入3,000百万円(前年同期比2,896百万円減)、長期借入金の返済による支出が3,637百万円(前年同期比1,384百万円増)、配当金の支払額が227百万円(前年同期比13百万円増)となったこと等により、302百万円の資金の増加(前年同期比7,668百万円減)となりました。

 

当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。

当社グループの事業活動における主な資金需要は、不動産販売事業における不動産の取得資金であります。資金需要に対しては、主に金融機関からの借入金により調達しており、特定の金融機関に依存することなく個別の案件毎に調達を行うことにより、安定的な資金の確保に努めております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

  該当事項はありません。