文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営方針
当社グループは、サイエンスとテクノロジーに立脚し、医薬品の研究(創薬)から開発、さらには販売までを手掛けるバイオ医薬品企業です。世界をリードするサイエンスで、人生を変える医薬品をお届けすることをミッションとしています。
(2)経営環境
医薬品開発は、国際的な巨大企業を含む国内外の数多くの企業や研究機関等により激しい競争が行われている分野であり、開発には多額の先行投資と、長期に亘る開発期間が必要となりますが、成功確率は高くありません。しかしながら、世界には、アンメットメディカルニーズが存在し、患者様に価値をもたらす新薬が待ち望まれています。
(3)経営戦略等
創薬においては、Gタンパク質共役受容体(以下「GPCR」)を標的とする新規の低分子、ペプチド並びに抗体医薬品など、重要なアンメットメディカルニーズに応える新薬の創製に注力しています。独自のStaR®(Stabilized Receptor)技術及び構造ベース創薬(以下「SBDD」)プラットフォームにより、GPCRをターゲットとする新薬の創薬における世界的リーダーとなり、神経疾患、消化器疾患、免疫疾患、炎症性疾患などの重要な治療領域において、自社開発あるいは提携中の創薬・開発プログラムを含め30品目を超える幅広いパイプラインを有しています。
後期開発・販売においては、日本及びAPAC(中国除く)でピヴラッツ®(日本では2022年に脳血管攣縮治療薬として発売済)及びダリドレキサント(日本では2023年に不眠症治療薬として申請済)のライセンスと、Idorsia Pharmaceuticals Ltdが保有する第Ⅲ相臨床開発段階にあるCenerimod(自己免疫疾患)、Lucerastat(ファブリー病)の同地域でのライセンスの独占的オプション権を保有しています。
また上記に加えて、Novartis International AG(以下「ノバルティス社」)の呼吸器疾患製品シーブリ® ブリーズヘラー®、ウルティブロ® ブリーズヘラー®及びエナジア® ブリーズヘラー®のグローバルでの販売からのロイヤリティ収入を受領しています。ロイヤリティ収入は、当社グループの戦略的目標達成のために必要な投資を支える資本の源泉となっています。
2023年に当社グループは、独自の創薬プラットフォーム及びパイプラインをより効果的に活用し、日本・全世界の事業を成長させるために、従来よりも進化した戦略の実行に注力しました。この戦略では、最先端のサイエンスを応用してパイプラインを創出し、患者さまの人生を変える医薬品をお届けすることを目的としており、以下の4つを戦略的な柱としました。
① 継続的な投資や社内でのイノベーションと、それを補完する優れた先進テクノロジーを持つ他社との提携を通じ、世界をリードするStaR®/SBDDに基づく創薬プラットフォームの競争優位性を、さらに拡大・強化する。
② 研究開発体制のプログラム重視型モデルへの転換、ターゲットの機能への深い理解、トランスレーショナルメディシンへの注力を通じて迅速に臨床POCを確立することで、自社開発品の品質と投資対効果を向上させ、より収益性の高いライセンス契約の推進と、重厚な自社開発パイプライン構築を目指す。
③ グローバル製薬企業との既存の提携を前進させ、加えて価値の高い新規提携を行うことで、契約一時金、開発マイルストン、上市品の売上から得られるロイヤリティなどから、継続的な売上を確保する。また、これらの提携契約では、日本及びAPACでの候補化合物の開発及び商業化の権利保持を目指す。
④ 日本及びAPACでの臨床開発~販売体制をアジャイルかつ拡大可能な形で構築し、大きく魅力的な日本市場で、見逃されている市場の発掘に取り組む。そのため外部から開発リスクの低い承認済あるいは後期臨床開発段階の開発品を導入し、中長期的には自社品の開発によりパイプラインの拡充を図る。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 事業の進捗と戦略
当社グループは、サイエンスとテクノロジーに立脚し、医薬品の研究(創薬)から開発、さらには販売までを手掛けるバイオ医薬品企業として、日本・全世界の事業を成長させる戦略を打ち出しています。
日本以外の地域では、創薬からトランスレーショナルメディシンを通じた初期臨床開発までの研究開発を自社で行い、その後はこれら自社品の主に日本以外の権利を提携先へ導出することを目指しています。日本においては、外部から開発リスクの低い承認済あるいは後期臨床開発段階の開発品を導入するとともに、中長期的には自社品の開発によりパイプラインの拡充を図る方針です。
② 当社グループの認識するリスクへの対応
当社グループは、自らが事業を展開している製薬業界特有のさまざまなリスクを負っており、当社グループの事業、財政状態及び業績は、これらのリスクにより悪影響を受ける可能性があります。当社グループは、「3.事業等のリスク」に記載のとおり、当社グループの財政状態及び経営成績に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を認識しており、これらのリスクに対する必要な対策を講じています。
③ 価値創造
医薬品業界では、特許の失効、承認の負担増大、継続的なコストの増加など、大手企業は多くの困難に直面し、急速な変化が起こっています。これにより、医薬品開発における財務上・商業上のリスクを取って研究開発を目指す事業者の数が減少しています。業界全体を通じて、効率よく外部のイノベーションを確保することが新しい戦略として重視されています。さらに、多くの先進国での高齢化の進行により、差別化されたより良い治療法の必要性が高まっています。その結果、大手製薬・バイオ医薬品企業は、研究、創薬及び開発活動全体にわたり、技術に立脚した比較的小規模な企業との提携により、研究開発における課題への革新的ソリューションを見出そうとする傾向が強くなっており、当社グループは有利な立場にあります。
このように業界の状況が変化する中で、当社グループは、事業拡大と価値創造の機会を定期的に認識、評価し、持続的にビジネス機会を創出する資本効率の良いビジネスモデルを追求しています。
④ コーポレート・ガバナンス
当社グループは複数の地域において事業活動を行っており、コーポレート・ガバナンス体制の重要性を認識しています。各国の規制に対応するため、体制やプロセス強化の方策について継続的に検討しています。さらに、最高水準の透明性、完全性、説明責任にコミットする企業文化の強化に引き続き取り組みます。
当社の取締役会は、規範と説明責任を維持するために、経営の監督とリスク管理及びコンプライアンス活動に責任を有しており、取締役の過半数は独立社外取締役です。執行役は、当社の長期的かつ持続可能な成長を達成し、株主価値を創出するために、取締役会との緊密な連携のもと、取締役会の委任を受けて会社の戦略と重要な業務執行について決定し、執行します。
本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものであり、実際の結果とは異なる可能性があります。
(1)ガバナンス
当社グループでは、取締役会のもとESG委員会を設置し、当社グループのESG活動に対する管理、指導及び監督を行っており、当社の独立社外取締役の一人で、日本においてESG活動の豊富な知見と経験を持つ、関美和氏が委員長を務めています。その他の委員会メンバーは、ロルフ・ソダストロム(独立社外取締役)、永井智亮(独立社外取締役)、クリストファー・カーギル(CEO)、野村広之進(CFO)です。ESG委員会は、ESG活動のパフォーマンス向上が、当社グループの長期的な成長と成功に不可欠だと確信しており、そのために、環境、社会、ガバナンスの観点での目標が当社の企業文化、バリューそして事業運営の基礎となるよう、当社グループのESGへの取り組みを組織全体へ浸透させるよう努めています。ESGの取組は、当社取締役及び執行役にとって優先事項であり、ESG委員会のリーダーシップのもと、チャリティ・コミッティー、ソーシャル・コミッティー、環境サステナビリティ・グループ、ワーキング・グループを通じて、組織全体で推進・実行されています。
(2)戦略
① 気候変動に関する戦略
当社グループは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に基づく気候変動のシナリオ分析を実施し、気候変動リスクと機会の特定、財務インパクトの評価を行い、その対応策を検討しました。シナリオ分析では、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によるRCP2.6(2℃未満シナリオ)、RCP8.5(4℃シナリオ)(注)1、2、国際エネルギー機関(IEA)によるシナリオを参照し、主要なグローバル拠点である日本、英国、韓国等を総合してそのインパクトを分析しました。シナリオ分析の結果、気候変動における自社事業における影響は、現時点では限定的ですが、評価・特定されたリスク対策については、取締役会及びESG委員会でグループ全体の進捗管理を行なっていきます。当社グループの気候変動に関するリスク及び機会が事業に及ぼす影響、ならびに当社グループの対応は以下の通りです。
(注)1 RCP(Representative Concentration Pathways):代表的濃度経路
2 RCPには、1つの厳しい緩和シナリオ(RCP2.6シナリオ)、2つの中間的シナリオ(RCP4.5シナリオ及びRCP6.0シナリオ)、1つの非常に高い温室効果ガス排出となるシナリオ(RCP8.5シナリオ)が含まれる。排出を抑制する追加的努力のないシナリオ(「ベースラインシナリオ」)は、RCP6.0シナリオからRCP8.5シナリオの範囲にわたる経路となる。RCP2.6シナリオは、工業化以前に対する世界平均の気温上昇を2℃未満に維持する可能性が高くなることを目指すシナリオを代表するものである。
シナリオ |
事象 |
影響 |
当社グループの対応 |
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物理的シナリオ (4℃) |
リスク |
急性 |
極端な気象現象(台風や集中豪雨、洪水など)の増加と激化 |
当社グループの拠点に直接的な物理的リスクが高い地域はありません。しかし、急性的な水害等の被害リスクが大きくなり、創薬、研究開発、臨床試験、販売事業の一部の操業に影響を与える可能性があります。 |
本社及び各拠点の事業継続計画(BCP)を策定し、被害発生時の操業の影響を最小限に抑えます。 |
慢性 |
年平均気温の上昇 |
使用電力量の増加による電気コスト増加のリスクがあります。 |
各拠点の省エネ対策を徹底します。 |
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水資源不足 |
中長期的な水資源枯渇により、水の使用制限による操業の中断が発生するリスクがあります。 |
事業への影響を把握するため、世界資源研究所(World Resources Institute)が提供する「AQUEDUCT Water Risk Atlas」を使用し、水資源取得リスク調査を実施しています。 |
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機会 |
製品・ サービス |
医薬品・創薬需要の拡大 |
地球温暖化による疾病動向の変化による既存薬に対する需要の増加、あるいは新薬の開発・商業化により収益が増加する可能性があります。 |
開発パイプラインを継続的に強化し、地球温暖化に関連して、当社パイプラインが新たに貢献し得る疾患領域における医薬品の研究・開発の機会を模索します。 |
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移行シナリオ (1.5℃) |
レジリエンス |
エネルギー効率向上 |
脱炭素社会の実現推進により、エネルギー効率を向上させる製品やサービスが新たに開発されます。 |
環境性能が高いオフィスビルに入居することにより、エネルギー効率を高め、エネルギー消費量と温室効果ガス(GHG)排出量を減少させます。 |
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リスク |
政策・ 法規制 |
炭素税や二酸化炭素排出規制 |
拠点がある日本やイギリス、韓国、アイルランド、米国、スイス等に、炭素価格メカニズムが導入され、特にエネルギー使用に対する規制が増える可能性があり、エネルギーコストの増加が見込まれますが、全社の操業コストに対する影響は限定的です。 |
本社及び各拠点のGHG排出量算定を実施し、炭素価格メカニズムが各市場で導入された場合の財務的影響を分析しました。また、GHG排出量削減に向けた取組の検討を開始しています。 |
② 人的資本に関する戦略
当社グループが掲げる、世界をリードするサイエンスで、人生を変える医薬品を届けるというビジョンにおいて、ダイバーシティ&インクルージョンの推進とコラボレーション型の職場環境は、当社の大きな柱となっています。
ダイバーシティとペイ・エクイティ
当社グループは、多様でインクルーシブな組織づくりのために、ペイ・エクイティ(同一労働同一賃金)に取り組んでいます。2021年から、各従業員の役割と経験に基づいた市場ベンチマークに照らして、毎年、グローバルでの従業員給与の精査を行っています。また、組織全体で等級制度による各従業員の役割を明確にすることによって、評価と処遇の一貫性と公平性を確保しています。
当社グループはダイバーシティとペイ・エクイティの推進について、今後も全社で取り組みを進めていきます。
株式報酬
当社グループでは、従業員が自社の株式を保有することで、会社に対する自らの貢献から利益を得ることができるという観点から、長期インセンティブ・プラン(LTIP)のもと、2022年4月以降、すべての社員が、毎年、事後交付型株式報酬(リストリクテッド・ストック・ユニット(RSU))制度に基づく当社株式割当の権利を有しています。従業員に対する割当及び実際の株式付与は、LTIP制度に基づき適正に行われます。株式報酬により、長期的に当社で活躍が期待できる優秀な人材を積極的に採用するため、また、従業員の業績と会社への貢献を評価する制度の一つとして、年次での割当を継続する方針です。
福利厚生、ワーク・ライフ・バランス
当社グループは、従業員の健康や成長を軸にして福利厚生を整えています。また、育児を行っている従業員の支援を行っており、産休・育休の復職率は83%となっています。さらに、リモートワークの導入や、フレキシブルな勤務時間の設定等、業務状況と従業員の生活スタイルに合わせた柔軟な働き方ができるようサポートしています。
能力開発研修
当社グループでは、従業員に成長と能力開発の機会を提供し、従業員が潜在能力を最大限に発揮できるよう様々な取り組みを行っています。インサイダー研修やコンプライアンス研修などの必須研修に加え、管理職研修、非管理職研修、女性活躍推進研修など、対象者を分け、能力や必要性に応じたテーマ別の研修も行っています。さらに、E-Learningや資格支援制度を導入しており、マイクロラーニングや専門分野での資格取得等をサポートしております。様々なスキル開発の機会を提供することによって従業員の成長を促し、個々の能力と組織力の向上を図っております。
当社グループは、「従業員満足度調査」を毎年実施しています。この調査結果をもとに、従業員満足度の向上や人財育成のための施策をさらに進めていく考えです。
(3)リスク管理
2022年、当社グループはESGへの取り組み推進のための体制構築と、ESG目標を達成するための明確なロードマップ策定に注力しました。これは2022年10月に開催された第1回ESG委員会で、当社グループがESGの課題にどう向き合うべきかを検討するところからスタートし、その後、取締役会・従業員・外部のステークホルダーとの対話を通じ、当社グループにとっての「重要課題」(マテリアリティ)の特定、マテリアリティに対応する取り組み、及びその進捗を評価する重要業績評価指標(KPI)の設定を、ESG委員会において行いました。ESG委員会が特定したマテリアリティとKPI(以下に記載)は2023年3月の当社取締役会により承認され、今後数年間のESG活動でこれらを達成すべく取り組んでまいります。ESG委員会は、これらのESG目標を組織全体に浸透させ、社内外のステークホルダーと協力し、これらの優先事項が当社の企業文化、バリューそして事業運営の基礎となるよう努めてまいります。
(4)指標及び目標
当社グループは、上記(3)の通り、ESG委員会が特定したマテリアリティとKPIが、長期的に企業価値を高めるという目標に合致していると認識しており、継続的な取り組みとしてこれらを定着させ実行してまいります。
気候変動に関しては、当社グループのScope 1及びScope 2の温室効果ガス(GHG)排出量は、2023年度実績で800.66 t-CO2(注)でした。GHG排出量削減目標については、今後、協議を行う予定です。
(注) 2023年度実績にはIPJ/IPKの2023年7月20日以降のGHG排出量を含む。
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マテリアリティ |
取り組み |
KPI |
Environment(環境) |
環境マネジメントの推進 |
英国の研究開発施設における環境マネジメントシステム(EMS)とエネルギー削減計画に基づき、排出量と廃棄物を適切に管理する。 |
英国の研究開発施設で5年以内にグリーンラボの認証を取得する。 |
Social(社会) |
ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DEI) |
ジェンダーギャップの解消に努める。 |
女性上級管理職比率 (グローバル)を中期的に30%以上に維持する。 |
患者さまのための革新的な医薬品の創出 |
患者さまの人生を変える医薬品を生み出すため、研究開発の効率化を推進する。 |
研究開発の効率化の推進 - 自社開発パイプラインから今後3年間、前臨床候補化合物と臨床候補化合物をそれぞれ年間1品目平均的に創出する。 |
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Governance(ガバナンス) |
全てのステークホルダーに対する公平性及び透明性 |
株主との対話を強化・拡充する。 |
全ての株主が参加し、当社経営陣とオープンかつ率直に議論できる機会を提供する。 |
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。当社グループの事業等はこれら以外にも様々なリスクを伴っており、以下に記載したものがリスクのすべてではありません。
当社グループではCEO及びCAOがグループ全体のリスク管理を行っており、各部門の責任者から、主要なリスクを適宜報告される体制を整えています。個別のリスクの程度と内容に応じた対応策に基づき、リスクの回避措置、リスクが顕在化した際の影響の低減措置を行っています。
なお、文中における将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)医薬品の研究開発事業一般に関する事項
① 研究開発の不確実性に関する事項
・リスク
当社グループは、医薬品の研究開発を主な業務としています。一般的に、医薬品の研究開発は、基礎研究段階から承認取得に至るまで長期間を要し、多額の投資が必要となる反面、その成功の可能性は、他産業に比べて極めて低いものです。従って、研究開発活動は不確実性を伴っており、この不確実性は当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
・対応策
当社グループは、比類のないプラットフォーム技術による複数の新規治療薬候補品を継続的に創出し、さらに臨床開発及び商業化を行うための費用の負担とリスクを引き受けることを前提に他の製薬会社との共同研究や開発品の導入も行うことで、開発パイプラインを拡充してきました。多種多様な提携を通じて、開発資金を提供いただくパートナーの分散を図り、また、臨床開発という不確実なリスクのバランスをとることによって、業績への影響を最小限にしております。
② 提携先の事業戦略見直しに関する事項
・リスク
医薬品業界は、国際的な巨大企業を含む国内外の数多くの企業や研究機関等による競争が激しい状態にあります。また、その技術革新は急速に進歩しています。そのため、大手製薬・バイオ医薬品企業は、業界での競争力を維持するために定期的に事業戦略の見直しを行っており、その見直しの影響により当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
また、研究、開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動における競争相手との競争の結果、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループは、提携先との良好な関係を維持、発展させるとともに、適切な契約の締結に努める等、当該リスクの低減に努めております。また、収益性のある品目を複数研究開発することで、提携関係の解消等があった場合の業績への影響を最小限にするようにしてまいります。
③ 副作用等に関する事項
・リスク
医薬品は、臨床試験段階から市販後に至るまで、副作用等が発現するリスクがあります。当社は発売後の医薬品について製造販売業としての医薬品安全性監視(ファーマコビジランス)を行うことで患者様の健康被害リスクを最小化する活動を継続して実施し、これにより医薬品使用に関連するリスクの回避と受けうる影響の低減に最大限努めております。副作用等が発現し、製品の回収、製造販売の中止、薬害訴訟の提起等に発展した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループでは、提携会社または販売委託会社等と連携し、国内外の安全管理情報(副作用情報等)を収集しております。また、収集された安全管理情報は適切に評価・検討・分析し、各国・地域の規制に応じ適切に当局に報告するとともに、提携会社または販売委託会社等と連携して情報提供することで医薬品の適正使用を推進しております。
④ 薬事法制その他の規制に関する事項
・リスク
医薬品業界は、研究、開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動において、各国の薬事法及び薬事行政指導その他関係法令等により、様々な規制を受けています。
医薬品は、創薬から製造販売承認を取得するまでに、多額の研究開発コストと長い年月を必要としますが、安全性及び有効性に関する十分なデータが得られず、医薬品としての安全性及び有用性を示すことができない場合には、規制当局の承認が計画どおり取得できず上市が困難になる可能性があります。これは開発品を他社に導出する場合も同様であり、当初計画した条件での導出もしくは導出そのものが困難になる可能性があります。
このような事象が生じた場合又は将来各国の薬事法等の諸規制に大きな変化が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループは、提携先と協力しながら、薬事関連規制の改正動向を早期に把握し、対応の要否を分析する体制を取っております。また、リスクを最小限にするための対応について、迅速に判断するガバナンス体制を取っております。
⑤ 製造物責任に関する事項
・リスク
当社グループは、医薬品の臨床試験を含む開発、製造、販売を行っております。それらの製品が必要な品質及び安全性の基準を満たしておらず、これを原因とした製造物責任を負う場合、当社グループの財政状態及び経営成績に深刻な影響を与える可能性があります。
・対応策
当社グループは、製品の安全、品質への取り組みを最優先事項としており、社内教育等を通じて、常に従業員の意識向上に努めております。また、適切な保険に加入することで製造物責任によるリスクを軽減しております。
(2)当社グループの戦略に関する事項
① 事業戦略の実行に関する事項
・リスク
当社グループは、新薬開発候補品を創製するための自社プラットフォームの活用と、新たな導出あるいは共同投資を可能にする重要な価値の転換を生み出すためのパイプラインの強化、ならびに日本及び一部のAPAC市場における自社開発・商業化の機会創出に注力しています。さらに、日本及びAPAC市場における事業の構築に向け、外部から開発リスクの低い承認済あるいは後期臨床開発段階の開発品の導入に注力していますが、他の新薬開発を行う企業同様、開発が成功しない新薬開発候補品、または機能しないテクノロジーに対して投資が行われる可能性があります。このような事象が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループは、投資の検討に当たっては、社内外の意見を集約し、研究開発プログラムや技術への投資機会を、その商業的実行可能性を含めて総合的に評価しております。投資に対しては、リスクとリターンのバランスが適切なものになるようなアプローチを取っています。
② 投資戦略に関する事項
・リスク
過去において、当社グループは、非常に有望ではあるものの、実証されていないテクノロジーを有する企業に出資を行ってきました。これらの投資により、重要な価値の転換点への到達につながり、ビジネスモデルを加速できる可能性があります。しかし、そのような出資は減損につながる可能性のある失敗のリスクを伴うため、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループにおいては、戦略的投資の評価に責任を有し、係る投資の承認に責任を負う当社の取締役会に対して助言を行う投資委員会を設置しています。また過度な資本リスクに晒されないよう、投資に対しては、リスクとリターンのバランスが適切なものになるようなアプローチを取っています。
(3)当社グループの事業活動に関する事項
① 提携関係に関する事項
・リスク
当社グループは、研究開発の各段階において最先端技術の取り込みを含めた広範な提携関係を構築し、それによって固定費の増加回避を図っています。しかし、現在の提携関係に変化が生じた場合や今後の提携関係が期待どおりに構築できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループは、契約締結においては、発生しうるリスクを想定し、これを低減するための戦略に関する協議と合意形成に努め、必要に応じてその内容を契約書に定めております。さらに、提携先との間で様々な機能・階層を通じた強固なガバナンス体制を構築し、提携におけるリスクの把握と解決策の協議を密に行い、必要な打ち手を講じることで、業績への影響を最小化するよう努めております。
② 人材の確保及び育成に関する事項
・リスク
当社グループの事業活動は、現在の経営陣、事業を推進する各部門の責任者や構成員等に依存しているところがあります。そのため、常に適材適所に優秀な人材を確保することと将来を見据えた人材育成に努めています。労働市場の逼迫により人材確保や人材育成が計画どおりに行えない場合は、当社グループの事業活動や経営成績に影響を及ぼす能性があります。
・対応策
当社グループは、社員が会社の理念や目標を理解し、進むべき方向性を共有することで一体感を高めるとともに、会社に愛着を持ち安心して働けるように、働く環境の整備と社員教育の充実を図ることが人材リスクを回避するうえで重要と考えています。そのため、快適なオフィス環境の維持、社員それぞれのライフスタイルに合わせた柔軟な働き方(スーパーフレックス制度の導入やリモートワーク等)、社内外のさまざまな分野の専門家との交流や研修の実施、健康維持を目的とした食育等を実施しています。
③ 知的財産権に関する事項
・リスク
当社グループは、研究開発活動等において当社グループが所有し又は使用許諾を受けた様々な知的財産を使用しています。当社グループの事業運営に必要な知的財産について継続して使用許諾を受けることができない場合や第三者の知的財産の侵害による係争が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループは、保有する知的財産の管理につき、専門弁護士・弁理士事務所を起用しながら、第三者侵害の有無を監視しながら、適切に管理する体制を整えております。
④ 資金調達に関する事項
・リスク
医薬品事業においては、多額の研究開発費を要し、その額は研究開発の進捗に応じて増加する傾向にあります。当社グループに資金需要が生じた場合に、市場環境の悪化等により機動的な資金調達を行うことができない可能性があり、その場合には、当社グループの研究開発に係る体制及び計画の見直しを余儀なくされるなど、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループは、適時資金繰り計画を作成・更新し、十分な手元流動性(当連結会計年度末の現金及び現金同等物残高49,065百万円)を維持することで当該リスクの低減に努めています。また、新株発行、社債発行、コミットメントラインの設定、タームローンへの借り換えオプション、及び他の借り換え手段の選択肢を定期的に見直すことで、資金調達市場の状況に応じた資金確保を可能としています。当社グループは、流動性強化のために、当連結会計年度においては、海外募集による新株の発行(2,053百万円)、第三者割当増資による新株の発行(8,000百万円)、転換社債型新株予約権付社債の買入消却と再発行(32,000百万円)、及び銀行からタームローン(当連結会計年度末38,550百万円)の借り入れを行っております。また、コミットメントラインの契約を締結しております(総額5,000百万円。当連結会計年度末における借入実行残高なし)。
⑤ 外国為替変動に関する事項
・リスク
当社グループは、事業活動をグローバルに展開しており、海外企業とのライセンス取引、海外での研究開発活動等において外貨建取引が存在します。為替変動リスクはヘッジ活動によっても完全に取り除くことはできないため、急激な為替変動によって為替リスクが顕在化した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループは、通貨保有による外国為替変動リスクを定期的にモニタリングするために、毎月取締役会に通貨毎の預金残高や為替差損益の分析を報告しております。さらに、決済通貨を適宜購入または為替予約を締結することで外国為替変動が軽減するよう管理しています。
⑥ 契約に基づく支払義務の負担に関する事項
・リスク
当社グループは、開発パイプラインに関する提携企業との契約において、販売に至る前の開発段階及び販売開始後に提携先に対する支払義務を負っている場合があります。また、開発費の共同負担や販売開始後一定額の販売活動経費の投入を行う義務を負う場合もあります。これらの対価の支払形態は、製品開発型バイオベンチャーとしての事業の性質上当然のものと認識していますが、当社グループの資本力に比べ支払額が高額となる場合には、当社グループにとって大きな財務的負担となる可能性があり、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループは、契約締結においては、発生しうるリスクを想定し、これを低減するための協議と合意形成に努め、その内容を契約書に定めております。さらに、提携中も提携先との間で様々な機能・階層を通じた強固なガバナンス体制を構築し、提携におけるリスクの把握と解決策の協議を密に行い、必要な打ち手を講じることで、業績への影響を最小化するよう努めております。
⑦ 国内及び海外市場における販売体制の構築及び技術導出に関する事項
(a)国内市場における自社製品の販売
・リスク
当社グループは、国内外において、医薬品製造販売業の許可を取得しております。自社製品が医薬品製造販売承認を取得した場合、製造販売元として、製品の市場価値を最大化することを目標とし、適切な販売委託先と提携し、自社製品の安定供給を行います。国内外において、適切な販売委託先との提携が進まない場合、自然災害、火災等により当社又は委託先の製造・物流施設等の損壊又は事業活動の停滞等が生じた場合、原材料の仕入れが遅延又は停止した場合、販売委託先による自社製品の販売成果が期待通り得られない場合、又は販売委託先にて法令遵守等の問題が発生した場合は、自社製品の安定供給に支障が生じ、医薬品製造販売業としての信頼及び売上収益の低下により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループは、自社製品の品質及び安全性の確保のため、医薬品製造販売業として必要な社内体制を整備しており、法令遵守を最優先事項としております。また、製造販売元として、委託先に対して、法令遵守状況の把握を含めた適切な能力評価を行い、健全な提携関係の維持と発展に努めております。
(b)自社又は子会社の開発品の技術導出
・リスク
開発品を開発の途中段階で他社に導出することにより、一時金や導出先の販売高に連動した収益を受領することが可能となります。しかし、開発の遅延その他の理由により計画どおりの時期に技術導出ができない場合や技術導出を予定している開発品に関して導出そのものが困難になる場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループは、想定外の外部要因による遅延やその他の悪影響を及ぼす問題に対処してまいります。開発の遅延リスクを回避するため、外部の専門家を適宜活用するとともに、社内の人材の能力及び専門性の育成にも努めております。
⑧ M&A等(買収、合併、営業の譲渡・譲受、出資)による事業拡大に関する事項
・リスク
当社グループは、保有する経営資源の効率的運用と企業価値の最大化のため、M&A等を活用して事業規模の拡大を図ることを経営方針の一つとしています。その施策により想定どおりの効果が得られない場合は、最大でのれん24,623百万円及び無形資産52,291百万円の減損損失の計上等により、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループは、M&Aの実施に際しては、外部専門家を起用しながら、詳細なデューディリジェンスを実施した上で、中期事業戦略との整合性、事業価値、シナジー等を総合的に検証しております。
⑨ 取得事業の統合に関する事項
・リスク
当社グループは2023年7月にイドルシア社より同社の日本及びAPAC(中国を除く)地域における子会社を買収しました。その結果、当社グループの事業活動の規模及び範囲が拡大し、新たな価値創造の機会がもたらされた一方で、当該新たな事業等に起因するリスクが発生する可能性を認識しております。移行措置や統合活動及び当該子会社の事業計画の遂行に不具合が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループは、当社の執行役複数名を子会社の取締役に任命することにより、子会社管理体制を構築するとともに、当社取締役会や監査委員会による当該子会社の経営状況の定常的な監視、指導、助言を行うことにより、新たなリスクの監視、未然予防など管理を強化しております。
⑩ 重要な契約に関する事項
・リスク
「第一部 企業情報、第2 事業の状況、5.経営上の重要な契約等」に記載した、当社グループの経営上の重要な契約が期間満了、解除その他の理由により終了した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループは、重要な契約作成時において、必要に応じ外部弁護士を活用し、適切な解除条項を設けるなどリスク低減措置を講じております。また、経営戦略検討時に重要契約の終了時期を考慮するとともに、重要契約パートナーとの活動を注視し状況に応じた対応を実施するなどのリスク軽減策を講じております。
⑪ 訴訟等に関する事項
・リスク
当社グループは、当連結会計年度において訴訟の提起を受けていませんが、訴訟その他の法的手続や当局による調査を受ける可能性があります。多額の支払を命じられた場合や当社グループにとって不利益な決定がなされた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループは、コンプライアンス体制や品質マネジメントその他必要な社内体制の整備により問題発生の未然防止に努めるとともに、事業活動においては必要に応じて法務部門による審査や外部弁護士等の専門家の助言を得るなど、訴訟に関するリスクの低減に努めております。
⑫ 内部統制の整備に関する事項
・リスク
当社グループは、金融商品取引法に基づく財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに実施基準に準拠し、財務報告に係る有効な内部統制システムを整備し、その適正な運用に努めています。内部統制が有効に機能せず、あるいは予期しない内部統制上の問題により、多額の損失が発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループは、財務報告に係る有効な内部統制システムの構築を行い、適切な運用に努めております。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)財政状態及び経営成績の状況
世界をリードするStaR®/SBDD創薬力の拡大・強化について、当期も順調に進捗しました。Verily社との提携では、炎症性腸疾患(IBD)を適応症とした最初のGPCRターゲットの検証と選定に成功しました。また、PharmEnable社との間で、両社の優れたプラットフォーム技術を融合し、神経疾患をターゲットとした二番目の新規リード化合物創出に向けて提携を拡大しました。加えて、Kallyope社との提携では、消化器疾患領域における創薬プログラム創出のための、最初のGPCRターゲットの同定、検証及び選定に成功しました。
新たな研究開発、研究開発体制の構築では、2023年に2つ以上の自社開発プログラムの臨床試験を開始するという目標を達成しました。統合失調症を対象にしたGPR52受容体作動薬(HTL0048149)と、進行性固形がんへの効果が期待されるがん免疫療法候補薬として開発中のEP4受容体拮抗薬(HTL0039732)の第Ⅰ相臨床試験を開始しました。EP4受容体拮抗薬(HTL0039732)は、世界最大の民間がん研究基金であるCancer Research UK(英国王立がん研究基金)との提携により開発中です。
当社グループは、大手製薬企業との広範な提携を通じて、特に代謝性疾患や精神神経疾患など世界の医薬品市場において最も有望で急成長している治療領域に取り組んでいます。糖尿病や肥満症などの代謝性疾患では、ファイザー社と経口GLP-1受容体作動薬の開発で提携していることに加え、イーライリリー社との提携ではGLP-1受容体作動薬以外の取り組みを検討するとともに、これらの領域における次世代候補品を選定するために自社パイプラインの開発を推進しています。
11月には、ファイザー社が当社グループとの研究開発提携でファイザー社が見出した新規GLP-1受容体作動薬候補(PF-06954522)の第Ⅰ相臨床試験を開始しました。これは、ファイザー社が6月に第Ⅱ相臨床試験を中止した1日1回投与のGLP-1受容体作動薬候補であるLotiglipronに続くものです。
精神神経疾患では、ニューロクライン社との提携が大きく進展し、同社は業界最大級のムスカリン受容体作動薬候補のポートフォリオを保有しています。ニューロクライン社は、現在進行中の統合失調症に対するNBI-1117568(ムスカリンM4受容体作動薬)の第Ⅱ相臨床試験に加えて、新たに複数のムスカリン受容体作動薬の第Ⅰ相臨床試験について発表を行いました。ニューロクライン社はNBI-1117569(M4-preferring agonist)及びNBI-1117570(選択的M1/M4デュアル受容体作動薬)の第Ⅰ相臨床試験を既に開始しており、NBI-1117567(M1-preferring agonist)の第Ⅰ相臨床試験を2024年に開始する予定です。
また当期末以降に発生した事象として、2024年3月、当社グループは、Boehringer Ingelheim International GmbHと、新規グローバル提携及びライセンスの独占的オプション契約を締結しました。当社グループが創出したファーストインクラスの治療薬候補であるGPR52受容体作動薬ポートフォリオの開発及び商業化を両社共通の目的としています。GPR52受容体は新規GPCRの一つで、GPR52受容体作動薬は統合失調症の陽性症状、陰性症状及び認知機能障害を同時に改善し、患者さまの予後を向上できることが期待されています。
日本及びAPACでのトップレベルの販売プラットフォーム構築においても重要な進展があり、スイスに本拠を置くイドルシア社の日本及び韓国における医薬事業の買収を行いました。この変革につながる買収により、経験豊富な開発・商業化チーム、日本で発売され成長中の製品であるピヴラッツ®、後期臨床開発候補品であるダリドレキサント、さらにイドルシア社のパイプラインから臨床段階にある複数の候補品に対し、日本及びAPAC(中国を除く)におけるライセンス契約のオプション権を獲得しました。
これにより、日本及びAPACという重要な市場で臨床開発~販売体制をアジャイルかつ拡大可能な形で構築するというミッションと、フルセットの機能を持ち製品販売も行う製薬企業へのシフトを加速しました。
当社グループは、今後数年間で日本・全世界の事業を成長させることに注力します。同時に、事業全体にわたって選択と集中を重視した投資戦略を維持し、あらゆる価値創造の機会に柔軟に対応する一方、引き続きコスト管理を強化してまいります。
2023年12月31日現在、当社グループの従業員数は350人(2022年12月31日時点比148名増)です。これは主に、当連結会計年度において、IPJ及びIPKの株式を取得し、連結の範囲に含めたことによるものです。
以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上収益12,766百万円(前連結会計年度比2,803百万円減少)、営業損失△9,526百万円(前連結会計年度比12,962百万円減少)、税引前当期損失△10,680百万円(前連結会計年度比11,758百万円減少)、当期損失△7,193百万円(前連結会計年度比7,575百万円減少)となりました。なお、下記の業績には、IPJ及びIPKの株式取得日(2023年7月20日)以降の業績が含まれています。
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(単位:百万円) |
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当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
前連結会計年度 (自 2022年1月1日 至 2022年12月31日) |
増減 |
売上収益 |
12,766 |
15,569 |
△2,803 |
売上原価 |
△3,102 |
△926 |
△2,176 |
研究開発費 |
△10,075 |
△7,454 |
△2,621 |
販売費及び一般管理費 |
△9,965 |
△4,377 |
△5,588 |
営業費用合計 |
△23,142 |
△12,757 |
△10,385 |
その他の収益及びその他の費用 |
850 |
624 |
226 |
営業利益又は損失(△) |
△9,526 |
3,436 |
△12,962 |
金融収益及び金融費用 |
△1,154 |
△93 |
△1,061 |
持分法による投資損益 |
- |
△429 |
429 |
持分法で会計処理されている投資の減損損失 |
- |
△1,836 |
1,836 |
税引前当期利益又は損失(△) |
△10,680 |
1,078 |
△11,758 |
法人所得税費用 |
3,487 |
△696 |
4,183 |
当期利益又は損失(△) |
△7,193 |
382 |
△7,575 |
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|
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|
代替業績評価指標 |
|
|
|
(コア営業損益) |
|
|
|
営業利益又は損失(△) |
△9,526 |
3,436 |
△12,962 |
調整額 |
|
|
|
有形固定資産の減価償却費 |
983 |
563 |
420 |
無形資産の償却費 |
1,495 |
782 |
713 |
株式報酬費用 (注)2 |
844 |
542 |
302 |
構造改革費用 (注)2 |
53 |
533 |
△480 |
企業買収関連費用 |
1,263 |
- |
1,263 |
売上原価調整額 (注)3 |
1,812 |
- |
1,812 |
コア営業利益又は損失(△) |
△3,076 |
5,856 |
△8,932 |
|
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|
|
USD:JPY(期中平均為替レート) |
140.53 |
131.30 |
9.23 |
GBP:JPY(期中平均為替レート) |
174.81 |
161.76 |
13.05 |
(注)1 コア営業損益は営業損益(IFRS)+重要な非現金支出費用+重要な一時的支出費用で定義され、事業の潜在的な経常キャッシュ創出能力を表しております。
2 構造改革に係る株式報酬費用の加速償却による影響額は構造改革費用に含まれております。
3 売上原価調整額は、企業結合により取得した棚卸資産の会計上の調整額のうち当連結会計年度の売上原価に対応する額です。
当社グループは、医薬品事業の単一セグメントであるため、報告セグメント別の記載は省略しています。
当連結会計年度の経営成績の分析は以下のとおりです。
(売上収益)
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|
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(単位:百万円) |
|
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
前連結会計年度 (自 2022年1月1日 至 2022年12月31日) |
増減 |
医薬品販売 |
6,173 |
80 |
6,093 |
契約一時金及びマイルストン収入 |
3,839 |
12,063 |
△8,224 |
契約一時金収入(契約開始時認識額) |
- |
4,666 |
△4,666 |
マイルストン収入(条件達成時認識額) |
2,108 |
6,429 |
△4,321 |
前受収益取崩額(注) |
1,731 |
968 |
763 |
ロイヤリティ収入 |
2,504 |
2,564 |
△60 |
その他 |
250 |
862 |
△612 |
合計 |
12,766 |
15,569 |
△2,803 |
(注)第5 経理の状況 22.売上収益 (4) 契約残高 ② 契約負債に含まれている前受収益より取り崩したものになります。
当連結会計年度の売上収益は、前連結会計年度に比べ2,803百万円減少し、12,766百万円となりました。
当連結会計年度の医薬品販売に関する収益は、前連結会計年度比6,093百万円増加し、6,173百万円となりました。これは主に、7月にIPJを連結範囲に含めたことにより、ピヴラッツ®の販売額が加わったことによるものです。
当連結会計年度の契約一時金及びマイルストン収入に関する収益は、前連結会計年度比8,224百万円減少し、3,839百万円となりました。契約一時金及びマイルストン収入は、契約一時金収入、マイルストン収入及び前受収益振替額で構成されています。契約一時金及びマイルストン収入は、新規提携契約が締結できるかどうか、あるいはあらかじめ定められた成果(マイルストン)を達成できるかどうかによって、会計年度毎に変動する可能性があります。一部の契約において、研究開発受託収益は、契約一時金又はマイルストン収入の一部に含まれ、前受収益として受領しております。前受収益振替額は、当連結会計年度に研究開発受託業務を行ったことにより前受収益から売上収益に振り替えられた金額です。
当連結会計年度の契約一時金及びマイルストン収入の減少は、前連結会計年度において、新規提携契約により契約一時金2件、及びマイルストン5件を達成したことに対し、当連結会計年度においては新規の提携契約は無く、マイルストンの達成が4件であったことによります。
当連結会計年度のロイヤリティに関する収益は、前連結会計年度比60百万円減少し、2,504百万円となりました。これは導出先であるNovartis International AG(以下「ノバルティス社」)(注)によるウルティブロ® ブリーズヘラー®、シーブリ® ブリーズヘラー®及びエナジア® ブリーズヘラー®の売上に関連するものです。
(注) グリコピロニウム臭化物とその製剤の独占的開発・販売権は、2005年4月に、当社グループ及び共同開発パートナーであるVectura社からノバルティス社に導出しています。シーブリ®、ウルティブロ®、エナジア®及びブリーズヘラー®はノバルティス社の登録商標です。
(営業費用)
売上原価
当連結会計年度の売上原価は、前連結会計年度比2,176百万円増加し、3,102百万円となりました。なお、IPJ/IPKを連結範囲に含めたことによる影響を除く売上原価は、前連結会計年度比468百万円減少し、458百万円となりました。これは、顧客に向けた研究開発受託サービスに係る内部コストである売上原価が、研究開発受託契約に基づく収入の減少に伴い減少したことによるものです。IPJを連結範囲に含めたことによるピヴラッツ®の売上原価を2,644百万円計上しております。
研究開発費
当連結会計年度の研究開発費は、前連結会計年度比2,621百万円増加し、10,075百万円となりました。なお、IPJ/IPKを連結範囲に含めたことによる影響を除く研究開発費は、前連結会計年度比1,740百万円増加し、9,194百万円となりました。これは主に、研究開発体制の強化に伴う支出の増加、及び円安の影響によるものです。IPJ/IPKを連結範囲に含めたことによる研究開発費を881百万円計上しております。
当連結会計年度においては、研究開発費全体の90%は英国における活動によるものです。
販売費及び一般管理費
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、前連結会計年度比5,588百万円増加し、9,965百万円となりました。なお、IPJ/IPKを連結範囲に含めたことによる影響を除く販売費及び一般管理費は、前連結会計年度比1,833百万円増加し、6,210百万円となりました。これは主に、一時的支出費用である企業買収関連費用1,263百万円によるものです。IPJ/IPKを連結範囲に含めたことによる無形資産の償却費を含む販売費及び一般管理費を3,755百万円計上しております。
その他の収益及びその他の費用
当連結会計年度のその他の収益及びその他の費用の純額は、前連結会計年度比226百万円増加し、850百万円の収益となりました。これは主に、当連結会計年度において英国における研究開発税額控除が増加したことによるものです。
(営業損益)
当連結会計年度の営業損益は、9,526百万円の損失(前連結会計年度は3,436百万円の利益)となりました。これは主に、上述の複合的な影響によるものです。
金融収益及び金融費用
当連結会計年度の金融収益及び金融費用の純額は、前連結会計年度比1,061百万円悪化し、1,154百万円の費用超過となりました。これは主に、英国において金利が大幅に上昇したことに伴い、預金利息が増加した一方で、社債の買入消却を行ったことに伴い社債償還損を計上したこと、また為替の影響により為替差損が増加したことによるものです。
持分法による投資損益
2022年10月にMiNA (Holdings) Limited(以下、MiNA社)を持分法適用の関連会社から除いたことに伴い、当連結会計年度での持分法による投資損益の発生はありません。
持分法で会計処理されている投資の減損損失
前連結会計年度における持分法で会計処理されている投資の減損損失は、持分法適用の関連会社であったMiNA社の公正価値が減少したことによるものです。
(税引前当期損益)
当連結会計年度の税引前当期損益は、10,680百万円の損失(前連結会計年度は1,078百万円の利益)となりました。これは上述の複合的な影響によるものです。
法人所得税費用
当連結会計年度の法人所得税費用は△3,487百万円(前連結会計年度は696百万円)となりました。これは主に子会社であるHeptares Therapeutics Ltd.の欠損金1,289百万円、株式会社そーせいの欠損金948百万円、及びIPJの取得に関連して612百万円の繰延税金資産を計上したことによるものです。
(当期損益)
当連結会計年度の当期損益は、7,193百万円の損失(前連結会計年度は382百万円の利益)となりました。これは上述の複合的な影響によるものです。
(代替業績評価指標:コア営業損益)
コア営業損益は、中核事業の潜在的な経常キャッシュ創出能力を示すために、重要な非現金支出費用及び一時的な費用を調整した代替的な業績評価指標です。
当連結会計年度のコア営業損益は、3,076百万円の損失(前連結会計年度は5,856百万円の利益)となりました。
コア営業損益はIFRSの営業損益に対して以下の調整を行い算出しております。
・ 有形固定資産の減価償却費983百万円(前連結会計年度比420百万円増加、うちIPJ/IPKを連結範囲に含めたことによる増加額357百万円)
・ 無形資産の償却費1,495百万円(前連結会計年度比713百万円増加、うちIPJ/IPKを連結範囲に含めたことによる増加額637百万円)
・ 株式報酬費用844百万円(前連結会計年度比302百万円増加)
・ 構造改革費用53百万円(前連結会計年度比480百万円減少)
うち26百万円(前連結会計年度は158百万円)は構造改革に係る株式報酬費用の加速償却の影響によるものです。
構造改革費用は子会社の執行体制の変更に伴う費用となります。
・ 企業買収関連費用1,263百万円(前連結会計年度発生なし)
うち1,149百万円は企業結合に係る取得関連費用です。
・ 売上原価調整額1,812百万円(前連結会計年度発生なし)
売上原価調整額は企業結合により取得した棚卸資産の会計上の調整額です。
当該棚卸資産が全て払い出された以後の調整は不要となります。
当連結会計年度の財政状態の分析は以下のとおりです。
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ57,781百万円増加し、157,198百万円となりました。これは主に、IPJ/IPKを連結範囲に含めたことにより、無形資産が43,714百万円増加したことによるものです。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ48,907百万円増加し、90,388百万円となりました。これは主に、企業結合に伴うIPJ/IPK株式等の取得に必要な資金調達のために40,000百万円の借入を実行したことによるものです。
(資本)
当連結会計年度末における資本合計は、前連結会計年度末に比べ8,874百万円増加し、66,810百万円となりました。これは主に、当期損失7,193百万円を計上した一方で、海外募集による新株の発行及び第三者割当増資等により、資本金が5,472百万円及び資本剰余金が4,511百万円増加したこと、また在外営業活動体の為替換算差額の増加等によりその他の資本の構成要素が6,072百万円増加したことによるものです。
なお、現金及び現金同等物並びに有利子負債の総資産に占める比率及び親会社所有者帰属持分比率は、それぞれ31.2%、47.1%、42.5%となります。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ17,492百万円減少し、当連結会計年度末は49,065百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、5,273百万円の支出となりました。これは主に、営業に関する現金支出が売上に関する現金収入を上回ったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、63,791百万円の支出となりました。これは主に、企業結合に伴うIPJ/IPK株式等の取得による支出によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、48,329百万円の収入となりました。これは主に、企業結合に伴うIPJ/IPK株式等の取得に必要な資金調達のための長期借入を実行したこと、及び海外募集及び第三者割当増資による新株の発行を行ったことによるものです。
(3)資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、製品販売及び、共同開発やライセンス契約に基づく提携パートナー企業からの契約一時金、マイルストン収入並びにロイヤリティ収入により事業を推進するための運転資金を創出しています。また、持株会社である当社の新株発行、社債発行及び借入等により運転資金及び事業買収にかかる資金を調達しています。
当社グループは主に、導入品の販売及び、保有している候補薬の臨床開発や将来における自社開発パイプラインの研究開発を進めるための投資を継続していきます。
「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 9.金融商品 (1) 資本管理」に、資本管理に関する定量的情報を記載しております。
(4)生産、受注及び販売の実績
当社グループの事業は医薬品事業の単一セグメントであります。
① 仕入実績
(単位:百万円)
|
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
前連結会計年度 (自 2022年1月1日 至 2022年12月31日) |
増減率 (%) |
仕入実績 |
111 |
62 |
77.8 |
(注)1 仕入実績の金額は仕入価格によっております。
2 前連結会計年度より仕入実績が増加した理由は、IPJを連結範囲に含めたことによりピヴラッツ®の仕入が発生したことによるものです。
② 受注実績
当社グループは販売計画に基づいた生産を行っているため、該当事項はありません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績は以下のとおりです。
(単位:百万円)
区分 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
前連結会計年度 (自 2022年1月1日 至 2022年12月31日) |
増減率 (%) |
医薬品販売 |
6,173 |
80 |
7,616.3 |
契約一時金及びマイルストン収入 |
3,839 |
12,063 |
△68.2 |
ロイヤリティ収入 |
2,504 |
2,564 |
△2.3 |
その他 |
250 |
862 |
△71.0 |
合計 |
12,766 |
15,569 |
△18.0 |
前連結会計年度及び当連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりです。
相手先 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
前連結会計年度 (自 2022年1月1日 至 2022年12月31日) |
||
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
株式会社メディパルホールディングス |
4,070 |
31.9 |
- |
- |
Novartis International AG |
2,504 |
19.6 |
2,564 |
16.5 |
Idorsia Pharmaceuticals Ltd. (注)2 |
1,500 |
11.8 |
- |
- |
AbbVie Inc. |
1,212 |
9.5 |
2,849 |
18.3 |
Eli Lilly and Company |
237 |
1.9 |
3,429 |
22.0 |
Neurocrine Biosciences, Inc. |
21 |
0.2 |
4,138 |
26.6 |
(注)1 上記には、顧客のグループ会社の金額も含めて記載しております。
2 Idorsia Pharmaceuticals Ltd.への売上収益は、持田製薬株式会社からのマイルストン収益に関するものです。
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの重要性がある会計方針、会計上の見積りにつきましては、「第5 経理の状況、1.連結財務諸表等、(1) 連結財務諸表、連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針、4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。
当連結会計年度における当社グループの経営上の重要な契約は、以下のとおりです。
(1)そーせいグループ株式会社を当事者とする契約
① Heptares Therapeutics Ltd.の100%子会社化に係る契約
契約名 |
Share Purchase Agreement |
相手方 |
Heptares Therapeutics Ltd.元株主105名 |
契約締結日 |
2015年2月20日 |
契約期間 |
期間の定めなし |
主な契約内容 |
Heptares Therapeutics Ltd.の発行済全株式を取得し、その対価として180百万米ドル及び契約に定める一定の事由の発生によりHeptares Therapeutics Ltd.がマイルストン又はロイヤリティ収入を受領した場合に支払われる最大220百万米ドルの条件付対価の合計、最大400百万米ドルを支払う。 |
② コミットメントライン契約
契約名 |
コミットメントライン契約書 |
相手方 |
株式会社みずほ銀行をアレンジャー兼エージェントとする金融機関 |
契約締結日 |
2022年12月30日 |
借入限度額 |
50億円 |
コミットメント期間 |
2022年12月30日から2023年12月29日まで。ただし、2024年12月30日または2025年12月30日まで延長することができる。 |
担保 |
無担保 |
③ イドルシアファーマシューティカルズジャパン株式会社、及びIdorsia Pharmaceuticals Korea Co.,Ltd.の100%子会社化に係る契約
契約名 |
Purchase Agreement |
相手方 |
Idorsia Ltd.及びIdorsia Pharmaceuticals Ltd. |
契約締結日 |
2023年7月20日 |
契約期間 |
期間の定めなし |
主な契約内容 |
イドルシアファーマシューティカルズジャパン株式会社、及びIdorsia Pharmaceuticals Korea Co.,Ltd.の発行済全株式並びに関連する知的財産権を取得し、その対価として400百万スイスフランを支払う。 |
④ 金銭消費貸借契約
契約名 |
金銭消費貸借契約書 |
相手方 |
株式会社みずほ銀行 |
契約締結日 |
2023年7月20日 |
最終返済日 |
2030年7月11日 |
主な契約内容 |
イドルシアファーマシューティカルズジャパン株式会社、及びIdorsia Pharmaceuticals Korea Co.,Ltd.の発行済全株式並びに関連する知的財産権を取得する資金等に充当する目的で、400億円を借り入れる。 |
(2)Heptares Therapeutics Ltd.を当事者とする契約
① ライセンスに関する契約
契約名 |
License Agreement |
相手方 |
Novartis International Pharmaceutical Ltd., Vectura Group Plc. |
契約締結日 |
2005年4月12日 |
契約期間 |
契約締結日から①Sosei R&D Ltd.及び共同ライセンサーであるVectura Group Plc.が許諾した最後の特許が満了する日、又は②Sosei R&D Ltd.又は実施権者により商業化された最後の商品の最初の発売日から10年が経過した日のいずれか遅い日まで |
主な契約内容 |
Sosei R&D Ltd.及びVectura Group Plc.はNovartis International Pharmaceutical Ltd.に対し、NVA237及びQVA149の全世界における開発及び商業化の独占的権利を許諾する。 (Sosei R&D Ltd.の契約をHeptares Therapeutics Ltd.が承継) |
契約名 |
Research and License Agreement |
相手方 |
AstraZeneca UK Limited |
契約締結日 |
2015年8月6日 |
契約期間 |
契約発効日(米国独占禁止法令による待機期間満了日)から対象製品及び対象国ごとに、①対象特許権等の特許期間満了日、②法令上の独占期間の終了日又は③市販開始から10年経過後又は後発医薬品の販売日のいずれか早い日のうち、最も遅い日まで |
主な契約内容 |
Heptares Therapeutics Ltd.は、AstraZeneca UK Limitedに対しアデノシンA2A受容体拮抗薬HTL一1O71 の全世界における独占的開発、製造販売権を許諾し、その対価として、契約一時金、マイルストン及びロイヤリティを受領。また、両社は、共同研究プログラムを実施。 |
契約名 |
Research Collaboration and License Agreement |
相手方 |
Pfizer Inc. |
契約締結日 |
2015年11月18日 |
契約期間 |
契約締結日から対象製品及び対象国ごとに、①対象特許権等の最終の特許期間満了日又は②市販開始から10年経過後のいずれか遅い日まで |
主な契約内容 |
Heptares Therapeutics Ltd.は、複数の領域における最大 10 種の GPCR ターゲットに関する新規医薬品の独占的開発・製造販売権をPfizer Inc.に許諾し、これによりPfizer Inc.から開発・販売マイルストン及び売上高に応じたロイヤリティを受領。 |
契約名 |
Research Collaboration and License Agreement |
相手方 |
Genentech, Inc. |
契約締結日 |
2019年7月12日 |
契約期間 |
契約締結日から対象製品及び対象国ごとに、①対象特許権等の特許期間満了日又は②市販開始から10年経過する日のいずれか遅い日まで |
主な契約内容 |
複数のGPCRターゲットを対象として両社は共同開発を実施し、Heptares Therapeutics Ltd.はGenentech, Inc.に対し、特定された独占的ターゲットについて、全世界における独占的開発、製造販売権を許諾し、その対価として、契約一時金、マイルストン及びロイヤリティを受領する。 |
契約名 |
Multi-Target Collaboration Agreement |
相手方 |
Millennium Pharmaceuticals, Inc.(武田薬品工業株式会社の100%子会社) |
契約締結日 |
2019年8月2日 |
契約期間 |
契約締結日から対象製品及び対象国ごとに、①対象特許権等の特許期間満了日、②市販開始から10年経過後又は③法令上の独占期間の終了日のいずれか遅い日まで |
主な契約内容 |
Heptares Therapeutics Ltd.は、提携の対象として選定された複数のGPCRターゲットについて、Millennium Pharmaceuticals, Inc.に対し全世界における独占的開発、製造販売権を許諾し、その対価として、契約一時金、マイルストン及びロイヤリティを受領。また、両社は、共同研究プログラムを実施。 |
契約名 |
Collaboration and Option to License Agreement |
相手方 |
AbbVie Ireland Unlimited Company |
契約締結日 |
2020年6月24日 |
契約期間 |
契約締結日から対象製品及び対象国ごとに、①対象特許権等の特許期間満了日、②市販開始から10年経過後又は③法令上の独占期間の終了日のいずれか遅い日まで |
主な契約内容 |
Heptares Therapeutics Ltd.とAbbVie Ireland Unlimited Companyは、共同開発により新規医薬品候補を見出し、Heptares Therapeutics Ltd.は、AbbVie Ireland Unlimited Companyに対しグローバルな開発・販売を行うことの独占的ライセンスオプションを許諾。その対価として、契約一時金と初期マイルストン、マイルストン及び販売高に応じた段階的ロイヤリティを受領。また、AbbVie Ireland Unlimited Companyは合計で最大4種までターゲットを拡大できるオプションを保持。 |
契約名 |
Collaboration and License Agreement |
相手方 |
Tempero Bio, Inc. |
契約締結日 |
2020年11月2日 |
契約期間 |
契約締結日から対象製品及び対象国ごとに、①対象特許権等の特許期間満了日又は②市販開始から10年経過後のいずれか遅い日まで |
主な契約内容 |
Heptares Therapeutics Ltd.は、Tempero Bio, Inc.に対し、開発候補品HTL0014242を含む、代謝型グルタミン酸受容体5(mGlu5)NAMのポートフォリオに関するグローバルでの独占的権利を許諾し、その対価として、契約一時金および戦略的株式持分としてTempero Bio, Inc.の株式、マイルストン及びロイヤルティを受領。 |
契約名 |
Global Collaboration and License Agreement |
相手方 |
Biohaven Pharmaceutical Holding Company Ltd.(現在はPfizer社が取得) |
契約締結日 |
2020年11月30日 |
契約期間 |
契約締結日から対象製品及び対象国ごとに、①対象特許権等の特許期間満了日、②市販開始から10年経過後又は③法令上の独占期間の終了日のいずれか遅い日まで |
主な契約内容 |
Heptares Therapeutics Ltd.は、Biohaven Pharmaceutical Holding Company Ltd.に対し、新規低分子 CGRP 受容体拮抗薬ポートフォリオの開発・製造および販売に関するグローバルな独占的権利を許諾し、その対価として、契約一時金、マイルストン及びロイヤリティを受領。 |
契約名 |
Collaboration and Licence Agreement |
相手方 |
GlaxoSmithKline Intellectual Property (No.5) Limited |
契約締結日 |
2020年12月18日 |
契約期間 |
契約締結日から対象製品及び対象国ごとに、①対象特許権等の特許期間満了日、②市販開始から10年経過後又は③法令上の独占期間の終了日のいずれか遅い日まで |
主な契約内容 |
Heptares Therapeutics Ltd.は、GlaxoSmithKline Intellectual Property (No.5) Limitedに対し、GPR35 受容体作動薬ポートフォリオに対する独占的開発、製造販売権を許諾し、その対価として、契約一時金、マイルストン及びロイヤリティを受領。 |
契約名 |
Collaboration and License Agreement |
相手方 |
Neurocrine Biosciences, Inc. |
契約締結日 |
2021年11月22日 |
契約期間 |
契約締結日から対象製品及び対象国ごとに、①対象特許権等の特許期間満了日、②市販開始から10年経過後又は③法令上の独占期間の終了日のいずれか遅い日まで |
主な契約内容 |
Heptares Therapeutics Ltd.は、アルツハイマー病等の神経系疾患を適応とする新規ムスカリン受容体サブタイプ選択的作動薬化合物群に関する独占的開発・製造販売権をNeurocrine Biosciences, Inc.に許諾し、その対価として、契約一時金、開発・販売マイルストン及び売上高に応じたロイヤリティを受領。 |
契約名 |
Amendment to Collaboration and Option to License Agreement |
相手方 |
AbbVie Global Enterprises Ltd. |
契約締結日 |
2022年8月1日 |
契約期間 |
契約締結日から対象製品及び対象国ごとに、①対象特許権等の特許期間満了日、②市販開始から10年経過後又は③法令上の独占期間の終了日のいずれか遅い日まで |
主な契約内容 |
Heptares Therapeutics Ltd.とAbbVie Global Enterprises Ltd.は、共同開発により神経疾患におけるターゲットを対象とした新規医薬候補品を見出し、Heptares Therapeutics Ltd.は、AbbVie Global Enterprises Ltd.に対しグローバルな開発・販売を行うことの独占的ライセンスオプションを許諾。その対価として、契約一時金と初期マイルストン、マイルストン及び販売高に応じた段階的ロイヤリティを受領。 |
契約名 |
Multi-Target Collaboration and License Agreement |
相手方 |
Eli Lilly and Company |
契約締結日 |
2022年12月15日 |
契約期間 |
契約締結日から対象製品及び対象国ごとに、①対象特許権等の特許期間満了日、②市販開始から10年経過後又は③法令上の独占期間の終了日のいずれか遅い日まで |
主な契約内容 |
Heptares Therapeutics Ltd.とEli Lilly and Companyは、共同開発により糖尿病・代謝性疾患における複数ターゲットを対象とした新規医薬候補品を見出し、Heptares Therapeutics Ltd.は、Eli Lilly and Companyに対し全世界における独占的開発、製造販売権を許諾し、その対価として、契約一時金、マイルストン及び段階的ロイヤリティを受領。 |
当社グループは、製品開発型のバイオ医薬品企業として、経営資源を医薬品の研究開発活動に集中しています。研究開発費は、当社グループが保有する開発品の開発費、次期開発候補品の探索及び創薬基盤技術の研究に係る費用で構成されています。
当連結会計年度における、IFRSに基づく当社グループの研究開発費は
研究開発活動の具体的な内容は、以下のとおりです。
(1)世界をリードするStaR®及びSBDD創薬力の拡大・強化
世界をリードするStaR®/SBDDの強化については、これまで行った提携を通じた取り組みを進めるとともに、新たな提携についても模索しています。当社グループは、GPCRに関する技術的優位性を強化することにより、複数のプログラムを創出し、自社開発パイプラインの強化と同時に、大手バイオ医薬品企業の創薬・開発パートナーとして選ばれ続けることを目指します。
2023年10月5日、当社グループとVerily Life Sciences LLC(以下「Verily社」)は、炎症性腸疾患(IBD)を適応症とした最初のGPCRターゲットの検証と選定に成功したことを発表しました。これはVerily社の持つ免疫プロファイリング能力と、当社グループの持つGPCR構造ベース創薬(SBDD)技術を集約した、2022年に発表した研究開発提携の成果です。両社は、遺伝子及び機能ゲノミクスのデータを用い、コンピュータ上での高度な解析と研究所での実験による実証を経て創薬ターゲットを選定することで、ターゲットと疾患との関連性を高い信頼性をもって検証し、臨床試験成功の可能性を大幅に向上させます。
2023年10月10日、当社グループは、PharmEnable Therapeutics(以下「PharmEnable社」)との間で、両社の優れたプラットフォーム技術を融合し、神経疾患をターゲットとした二番目の新規リード化合物創出に向けて提携を拡大したことを発表しました。本提携により、当社グループのSBDDプラットフォームと、人工知能(AI)・医薬品化学に基づくPharmEnable社独自の先進テクノロジー(chemUNIVERSE)を融合し、非常に特異性の高い新規リード化合物を特定し、開発を進めることが可能となります。両社は2021年の最初の技術提携契約を拡大し、創薬とその後の開発を共同で実施・費用負担します。すでに最初のターゲットに対する技術提携において、互いの技術を補完することで、新規の結合様式とケモタイプを持つ有望な低分子化合物を同定することに成功しています。
2023年11月10日、当社グループとKallyope Inc.(以下「Kallyope社」)は、消化器疾患領域における創薬プログラム創出のための、最初のGPCRターゲットの同定、検証及び選定に成功したことを発表しました。これは、両社が2022年に締結した戦略的研究開発提携による最初の科学的成果です。本提携では、当社グループのGPCRに特化した化合物ライブラリー及び専門知識と、シングルセル解析、回路マッピングに関する計算生物学、及びエンテロイド表現型スクリーニングを組み合わせたKallyope社の革新的なKlarity™プラットフォームを活用します。当社グループとKallyope社の共同研究チームは、今回選定されたターゲットを完全に裏付けがなされたSBDDプログラムに進展させるとともに、将来のプログラムのために消化器疾患に対するさらなるターゲットの同定を目指します。
(2)生産性と付加価値、そして成功確率を高めるために、研究開発体制をプログラム重視型モデルに転換
当社グループは、研究開発体制の強化に注力しており、2023年に2つ以上の自社開発プログラムの臨床試験を開始するという目標を達成しました。
2023年7月3日、当社グループは、統合失調症及び関連神経疾患の治療薬として、ファーストインクラスの治療薬候補であるGPR52受容体作動薬(HTL0048149)の第Ⅰ相臨床試験で、最初の被験者への投与を行ったことを発表しました。HTL0048149は、抗精神病及び認知機能改善作用を持ち、既存の抗精神病薬に見られる副作用がない1日1回の経口低分子治療薬として生み出されました。HTL0048149は、脳内のオーファン受容体であるGPR52受容体を標的とすることで、統合失調症に伴う陽性症状(精神病、妄想、幻覚など)、陰性症状(引きこもりなど)及び認知機能障害(注意力、作業記憶、実行機能など)の改善を目指します。このような新規の作用機序により、HTL0048149は、既存の抗精神病薬で効果がない、あるいは副作用のために服薬が継続できない多くの統合失調症の患者さまのお役に立つことを目指しています。なお、既存の医薬品は、陰性症状や認知症状において十分な治療効果を得ることができていません。本第Ⅰ相臨床試験は2つのパートから構成される、18~55歳の健常人を対象とした、HTL0048149の安全性、薬物動態、薬力学的作用を検討する、無作為化二重盲検プラセボ対照、単回及び反復投与用量漸増試験です。本試験は、英国で実施されており、最初のデータリードアウトは開始から12~18ヵ月後になる予定です。
2023年8月10日、当社グループは、Cancer Research UK(英国王立がん研究基金)との提携において、当社グループが見出した、進行性固形がんに効果が期待される経口がん免疫療法候補薬HTL0039732の第Ⅰ/Ⅱa相臨床試験で、最初の被験者への投与を行ったことを発表しました。HTL0039732は、プロスタグランジンE2(PGE2)に対する受容体の一種である、EP4受容体を介したシグナル伝達を阻害することで効果を発揮します。PGE2はがん微小環境でがん細胞の免疫回避を活性化させており、EP4受容体を標的としてPGE2の作用を阻害し、免疫系が、がん細胞を識別・抑制する機能を高めることで、マイクロサテライト安定性(MSS)大腸がん、胃食道がん、頭頸部がん、去勢抵抗性前立腺がんなど、既存の免疫療法では治療効果が十分でないがん種への効果が期待されます。本第Ⅰ/Ⅱa相臨床試験は、Cancer Research UKのCentre for Drug Developmentが資金拠出・デザイン・実施を担い、HTL0039732の毒性・忍容性・薬物動態の検討、第Ⅱ相臨床試験推奨用量の決定、単剤及びPD-L1阻害剤アテゾリズマブとの併用での抗腫瘍活性の評価、の三点を主な目的としています。Cancer Research UKのCentre for Drug Developmentが実施する本第Ⅱa相臨床試験では、特定のがん種での併用療法を対象に、最大4つのコホートで用量拡大を検討予定です。また当社グループは、その後の臨床開発・商業化に向け、HTL0039732に対する本試験の結果のライセンスを保有します。
(3)大手グローバル製薬企業との既存の提携の推進及び継続的な収益確保への取り組み
当社グループは、大手グローバル製薬企業との広範な提携を通じて、特に代謝性疾患や精神神経疾患など、世界の医薬品市場において最も有望で急成長している治療領域におけるプログラムの開発に関わっています。
2023年1月5日、当社グループは、提携先のTempero Bio Inc.(以下「Tempero Bio社」)がFDAに対して、アルコールとその他の物質使用障害(Substance Use Disorder:SUD)を対象としたTMP-301の新薬臨床試験開始申請(IND)を行い、承認されたことを発表しました。TMP-301(旧開発コード:HTL0014242)は、当社グループが創出しTempero Bio社に導出した、新規の選択的mGluR5 NAM候補化合物です。Tempero Bio社は、米国国立薬物乱用研究所(NIDA)から交付された530万米ドルの助成金を活用し、2023年にTMP-301の健常人を対象とする第Ⅰ相臨床試験を開始しています。
2023年3月30日、Centessa Pharmaceuticals Limited(以下「Centessa社」)は、2022年12月期の事業進捗及び業績の報告において、当社グループのSBDDプラットフォームを利用して開発中の経口投与が可能なオレキシン受容体2(OX2R)の選択的作動薬であるORX750について、ナルコレプシー及びその他の睡眠障害に対するベストインクラスとなる可能性がある新薬開発候補品として選定したことを発表しました。また、Centessa社は、ORX750がNT1モデルマウスと野生型マウスにおいて覚醒時間の増加を示したことを発表しました。ORX750は、現在、前臨床開発及びINDに向けた研究開発活動を実施中です。
2023年6月27日、当社グループは、提携先であるPfizer Inc.(以下「ファイザー社」)が、糖尿病・肥満症の治療薬として臨床開発中のGLP-1受容体作動薬候補Danuglipronの開発を優先し、その結果、Lotiglipronの開発を継続しないことを決定したと発表しました。これらの新規の経口投与可能な新薬開発候補品は、いずれもファイザー社により第Ⅱ相臨床試験が行われていました。Lotiglipronは、当社グループ独自のStaR®技術を利用し、複数のターゲットを対象とした研究開発提携においてファイザー社が見出したものです。当社グループは、過去に類似の状況で他のプログラムで行ってきたのと同様に、ファイザー社とLotiglipronの今後の開発計画を含めた検討を行います。
2023年9月12日、当社グループは、Neurocrine Biosciences Inc.(以下「ニューロクライン社」)が、NBI-1117570の健常成人を対象とした第Ⅰ相臨床試験を開始したことを発表しました。NBI-1117570は、経口のムスカリンM1/M4デュアル受容体作動薬であり、神経疾患及び精神神経疾患の治療薬となることが期待されています。
2023年10月31日、当社グループは、Genentech Inc.(以下「ジェネンテック社」)より、2019年に契約を締結した複数ターゲットを対象にした創薬提携において、3.75百万米ドルのマイルストンを受領することになったと発表しました。創薬に関する本支払いは、非公開のGPCRをターゲットとした、ファーストインクラスとなり得る医薬品の開発進展によるものです。ジェネンテック社が選定した複数のGPCRに対して、当社グループのGPCR構造ベース創薬技術と、ジェネンテック社の創薬、開発及び疾患における専門知識を融合した進行中の提携において、一定のマイルストンを達成しました。
2023年11月6日、当社グループはファイザー社より、新規の経口低分子GLP-1受動体作動薬の第Ⅰ相臨床試験を開始したと通知されたことを発表しました。PF-06954522は、当社グループのStaR®技術を用いた、現在進行中の研究開発提携においてファイザー社が見出したものです。
2023年11月24日、当社グループは、GlaxoSmithKline plc.(以下「GSK社」)との研究開発提携及びライセンス契約に基づいて開発中の、ファーストインクラスの治療薬となる可能性のある選択的経口GPR35受容体作動薬(GSK4381406)の全権利の再取得に向け、GSK社と協議を開始したことを発表しました。GPR35受容体はIBDと遺伝学的な関連性が検証済みのオーファンGPCRの一つです。
GSK4381406は当社グループが設計し、2020年にGSK社にライセンスされました。以来、当社グループとGSK社による共同開発プログラムを通じて得られた基礎研究や前臨床試験及び安全性試験の結果により、潰瘍性大腸炎や過敏性腸症候群(IBS)などの消化器疾患において、GPR35受容体作動薬はバリア機能を改善し内臓痛の改善に効果がある可能性が示唆され、これらのデータに基づき、2023年半ばに英国医薬品・医療製品規制庁(MHRA)より第Ⅰ相臨床試験実施の承認を取得しました(NCT05999708)。
GSK社によるGSK4381406の優先順位の引き下げと現開発の打ち切り決定は、GSK社の免疫疾患領域の戦略変更、及び幹部交代に伴うものです。また、本決定は前臨床試験や安全性試験などの科学的データに基づくものではありません。2020年の契約に基づき、当社グループは、一時金を支払うことなく、GSK4381406の所有権を再取得する権利を有しています。GSK社は、GSK4381406が上市されれば、当社グループから純売上高に応じて、1桁台前半のロイヤリティを受領する権利を有しています。
当社グループは、GSK4381406の所有権の再取得後、英国で計画されていた第Ⅰ相臨床試験を単独で実施するとともに、本品目のさらなる臨床開発及び再提携に向けた最善の戦略を決定する予定です。
2023年12月6日、当社グループは、ニューロクライン社が、新たなムスカリン作動薬候補2品目であるNBI-1117569(M4-preferring agonist)及びNBI-1117567(M1-preferring agonist)の第Ⅰ相臨床試験について決定を行ったことを発表しました。いずれも神経・精神疾患の経口治療薬となることが期待されており、当社グループにより見出されたものです。ニューロクライン社はNBI-1117569の第Ⅰ相臨床試験を既に開始しており、加えてNBI-1117567の第Ⅰ相臨床試験を2024年に開始すると発表しました。
(4)日本における有数の販売プラットフォームの構築
2023年4月1日、当社グループは、当社社長CEOのクリストファー・カーギルが同日付で株式会社そーせいの代表取締役社長に就任することを決定し、当社グループの戦略目標達成のための日本事業の強化を見据え、当社CEOが直轄で同社の事業運営を行っていく体制に変更しました。
日本事業の確立については、臨床開発~販売体制をアジャイルかつ拡大可能な形で構築し、日本の患者さまに人生を変える医薬品を届け、この大きく魅力的な市場で、見逃されている市場の発掘に取り組むことを柱のひとつに掲げています。
2023年7月20日、当社グループは、Idorsia Ltd.及びIdorsia Pharmaceutical Ltd.(以下総称して、「イドルシア社」)より、IPJ及びIPKの全株式を取得し子会社化すること(以下「本取引」)を発表しました。
IPJとIPKの子会社化は日本における有数の販売プラットフォームを構築するという目的達成のための最良の手段であり、グローバルでの徹底的なリサーチの結果です。本取引は手元現金と低利の新規長期借入金により資金手当て済みであり、通期での初年度から、キャッシュ・フローを創出する予定です。本取引の戦略的意義は以下の通りです。
・ 日本における卓越した臨床開発機能と収益力の高い販売体制、従来にない販売・マーケティングモデル、規模拡大とさらなる価値創出力が加わることによって、当社グループのミッションを加速する。
・ 主要製品であるピヴラッツ®とダリドレキサントの獲得、及び第Ⅲ相臨床段階にあるCenerimodとLucerastatに対する独占的オプション権、そしてイドルシア社のグローバルパイプラインから最大5品目の臨床段階にある追加的プログラムに対する特定の権利により、将来のパイプラインを確保・拡大する。
・ 過去20年にわたり、日本と韓国で多くの承認取得と上市を成功させてきた田中諭氏が率いる、経験豊富で卓越した実績とサービス提供力を有するチームを獲得する。
・ 日本の高品質な臨床環境を活用し、見逃されている専門疾患領域をターゲットにするとともに、より広域なAPACへの拡大と製品上市を可能とするプラットフォームを獲得する。
また本取引によって、日本及びAPAC(中国を除く)地域において、(1)当社グループが100%保有している従来からの自社開発品、(2)イドルシア社のパイプラインから選定され当社がオプション権あるいは特定の権利を獲得した臨床候補化合物、及び(3)他社の有望な製品/開発品の導入、の3つの方法で、有望なパイプラインを獲得し開発及び販売を行うことができるようになります。
加えて、当社グループは、日本及びAPAC地域以外においては、従来通り、当社の強固な創薬プラットフォームから生まれた新規候補化合物やプログラムについて、大手製薬企業との提携を行う一方、これらの提携契約では、日本及びAPACでの権利保持を目指します。
2023年10月31日、当社グループは、IPJが、不眠症患者に対する治療薬として持田製薬株式会社(以下「持田製薬」)と共同開発してきたデュアルオレキシン受容体拮抗薬であるダリドレキサントの製造販売承認申請(NDA)を医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出したと発表しました。本申請及び持田製薬と塩野義製薬株式会社の販売提携契約に関連して、当社グループは1,500百万円のマイルストンを受領しました。本申請は、本邦におけるダリドレキサントの安全性及び有効性を検討した無作為化二重盲検プラセボ対照第Ⅲ相臨床試験の良好な試験結果に裏付けられています。ダリドレキサントは2022年1月に米国で、4月に欧州でそれぞれ承認されており、その他の承認済み地域を含めイドルシア社がQUVIVIQ™のブランド名で販売しています。
2023年12月7日、当社グループは、脳動脈瘤によるくも膜下出血(aSAH)術後の脳血管攣縮、及びこれに伴う脳梗塞及び脳虚血症状の発症抑制薬であるピヴラッツ®点滴静注液150mg(一般名:クラゾセンタンナトリウム)について、韓国食品医薬品安全処(MFDS)、より製造販売承認を取得したことを発表しました。今回の製造販売承認は、IPKが提出した、日本における第Ⅲ相臨床試験結果に基づいています。韓国では、2025年前半に販売が開始される予定です。日本では、IPJが2022年1月にピヴラッツ®の製造販売承認を取得し、2022年4月に発売しています。日本では、ピヴラッツ®は2023年11月時点で約8,900人の患者さまに使用されています。