第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、「創造・奉仕・協力」の経営理念のもと、企業価値の最大化と持続可能な事業活動を行うことで、地球環境の保全と持続可能な社会の実現に貢献し、世界にそして未来に誇れる企業を目指します。

(「タダノグループサステナビリティ憲章」より)

 

(2) 経営環境

当連結会計年度におけるわが国経済は、各種経済政策効果もあり、緩やかに回復しました。海外においても、一部地域に弱さがみられるものの、景気は緩やかに回復しました。

一方で、ロシア・ウクライナ問題の長期化やイスラエル・パレスチナ情勢、インフレ・円安進行などにより、原材料・エネルギー価格は高止まりし、調達・物流環境は厳しい状況が続きました。

私どもの業界は、日本では、大規模工事が実施・計画されており、需要は堅調に推移しました。海外においては、欧州・アフリカを除く全ての地域で需要は大幅な増加となりました。

 

次期の見通しについて、世界経済全体としては、長期化するロシア・ウクライナ問題やイスラエル・パレスチナ情勢等の地政学リスクの高まりに加え、米国はじめ各国で総選挙が予定されるなど、より一層先行き不透明感が増しております。

当社グループを取り巻く市場環境につきましては、日本では、インフラ投資や災害対策などの大型工事を中心に建設用クレーンの高稼働が続くものと見込まれます。海外では、世界経済の減速により一部地域で需要減少が見込まれるものの、原油をはじめとした資源関連プロジェクトに加え、インフラ関連プロジェクトやクリーンエネルギー関連工事等による下支えもあり、建設用クレーンの稼働は全体として横ばいで推移する見込みです。

コスト上昇の傾向は続くものと予想され、製品価格の見直し等による利益確保に努めます。また、将来の持続的成長に向け、電動化などの環境対応をはじめとした新製品開発や、生産体制の再構築に向けた投資を計画しております。

 

なお、2023年(暦年)での建設用クレーンの地域別需要台数について、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前からの推移を示すと、以下のような状況になっております。

世界の総需要台数を見ると、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前(2019年)の水準を大きく上回るまで回復してきておりますが、一方で、当社グループの主要な市場である、日本・欧州・北米では、まだその水準までの回復には至っておりません。

(建設用クレーン地域別需要台数推移)

 

2019年

2020年

2021年

2022年

2023年

対2019年比

欧州

1,650

1,390

1,360

1,470

1,470

89%

北米

1,650

980

1,090

1,150

1,480

90%

中南米

270

200

370

590

880

326%

アジア

1,290

1,020

1,360

2,020

2,720

211%

中東

650

480

520

910

1,840

283%

オセアニア

240

160

300

440

470

196%

その他

1,000

1,010

1,780

3,320

4,270

427%

海外計

6,750

5,240

6,780

9,900

13,130

195%

日本

1,870

1,520

1,420

1,380

1,450

78%

合計

8,620

6,760

8,200

11,280

14,580

169%

 

※上の表に中国国産の中国市場向け、ロシア国産のクレーンは含んでおりません。

※その他は、アフリカ、CISを含んでおります。

 

また、2022年3月よりロシアほか関係各国向けの製品・部品の出荷を停止しておりますが、連結売上高に占める影響は軽微であります。この出荷停止については、国際的な対ロシア制裁が解除されるまで継続する予定としております。

今後も、この問題に端を発する各国のエネルギー政策や経済安全保障政策の転換、それらが需要や調達に与える影響について、引き続き注視してまいります。

 

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略、目標とする経営指標と対処すべき課題

当社グループは、2008年度以降、事業領域を「抗重力・空間作業機械=Lifting Equipment(LE)」と定めております。企業価値の最大化と持続可能な事業活動を行い、長期目標である「LE世界No.1」の実現に向けて、3年毎に中期経営計画を策定しております。

2024年初めに「中期経営計画(24-26)」を策定し、新たな3か年の中期経営計画をスタートしました。

「Reaching new heights ~新たなステージへ~」をスローガンに、業界のリーディングカンパニーとして、お客様の安全と地球環境に配慮した新たな価値を提供するための戦略を推進します。

成長戦略の骨子として、(1)脱炭素化を加速、(2)新たな領域への挑戦、(3)強みを活かしたものづくり改革、(4)変革を支える足場固め、を掲げると同時に、持続的な成長に向けた「資本コストや株価を意識した経営」と「サステナビリティ課題への対応」を重視し、「世界にそして未来に誇れる企業」を目指します。

 

中期経営計画(24-26) 基本方針:

 


 

(1)脱炭素化を加速

当社グループは2023年に世界初のフル電動ラフテレーンクレーン「EVOLT eGR-250N」の販売を開始しました。これまで走行、クレーン作業で発生していたCO2排出をゼロにし、当社が掲げる製品における長期環境目標の実現へ近づけます。環境負荷の無い製品を「Tadano Green Solutions」として積極的に社会へ届け、環境対応をリードしてまいります。

 

(2)新たな領域への挑戦

これまで日本での販売が中心であった高所作業車の海外展開を加速させてまいります。2024年2月に長野工業株式会社が当社グループに加わりました。製品ラインナップの拡充と、開発・生産面でのシナジー発揮による新たな製品づくりを進め、当社グループが築いてきた世界中の販売網を活用して拡販に努めます。

また、安全で効率的な建設現場の実現に向け、自動操縦や遠隔操作など新技術への取り組みを進めます。

 

(3)強みを活かしたものづくり改革

当社グループ事業は多品種少量生産であり、ボリュームに頼らない生産効率の改善やコスト低減は、当社だけでなくサプライヤーにおいても大きな課題です。開発生産拠点がある日・独・米それぞれの強みを活かした最適なものづくり体制を構築し、収益力の最大化と安定供給に努めます。

当社の設計思想である「TKN: T=作りやすい K=壊れにくい N=直しやすい」をグローバルに展開し、設計段階から当社だけでなくサプライヤーの作りやすさ・コスト低減を意識したものづくりを推し進めます。

欧州で生産しているオールテレーンクレーンについては、ドイツの工場集約を進め生産効率を改善します。小型モデルについては日本生産へ移管することで、コスト競争力と品質・納期の安定性を改善してまいります。

 

(4)変革を支える足場固め

各種戦略を強く推し進めるための足場固めも重要な取り組みとなります。

サービス力の強化では、資源循環型ビジネスの実現に向けて再生事業の拡充に取り組みます。また、既納製品の価値を維持・向上させるレトロフィット(後付け改造・強化部品)についても強化してまいります。

また、当社グループにとって人財は競争力の源泉であり、「持続可能な経営」を実現する重要な要素のひとつと捉えております。中期経営計画に連動した人財基盤の強化を進めてまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

当社グループは、「創造・奉仕・協力」の経営理念のもと、企業価値の最大化と持続可能な事業活動を行うことで、地球環境の保全と持続可能な社会の実現に貢献し、世界にそして未来に誇れる企業を目指します。

当社グループではサステナビリティ課題全般及びテーマごとに「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」の観点から考え方を整理し、取り組みを強化しております。

 

(1) ガバナンス

経営におけるサステナビリティの重要課題を定め、方針と目標、進捗を管理するため、社長を委員長とし、全執行役員を委員とするCSR委員会・SDGs推進委員会を設置しております(2024年1月に両委員会を統合し「サステナビリティ委員会」と改称しました)。同委員会のメンバーは、定例の経営報告会、経営会議・取締役会等の各会議において、部門のサステナビリティ課題や重要事項について逐次報告・議論をしております。

また各部門における取り組み支援等の専任部署としてSDGs推進グループを総務部に設置しております(2024年1月「サステナビリティ推進グループ」と改称しました)。さらに「サステナビリティ委員会」の下部組織として「リスク委員会」「コンプライアンス委員会」「環境委員会」「人財委員会」の専門委員会があり、全社的なテーマについて取り組んでおります。

なお、人的資本については人財委員会、気候変動については環境委員会にてそれぞれ対応しております。また2021年には、環境委員会の下部組織として「CO2・エネルギー削減部会」「廃棄物・化学物質削減部会」を設置し、具体的な施策検討や各部門の情報共有、長期目標達成に向けた改善継続に取り組んでおります。

 

テーマ

委員会もしくは主管部門

関連方針・規程・ガイドライン類

全般

サステナビリティ委員会

タダノグループサステナビリティ憲章

リスク

リスク委員会

事業リスクマネジメント規程

人権・法令

コンプライアンス委員会

タダノグループ人権方針

タダノグループコンプライアンス規程

環境保全

環境委員会

タダノグループ環境方針

人的資本経営

・労働環境

人財委員会

タダノグループ人財育成基本方針

タダノグループ社内環境整備方針

コーポレート

ガバナンス

管理部門

内部統制システム構築の基本方針

コーポレートガバナンス・ガイドライン

サプライヤー

(取引先)

購買部門

タダノグループ
サステナブル調達ガイドライン

 

 

(2) 戦略

当社グループは、「中期経営計画(24-26)」のもと、お客様の安全と地球環境に配慮した新たな価値を提供するための戦略を推進してまいります。「中期経営計画(24-26)」の内容については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 中長期的な会社の経営戦略、目標とする経営指標と対処すべき課題」をご参照ください。

サステナビリティ推進の基本方針として、「人権の尊重」「公正・誠実な事業活動」「社員の尊重と働きがいの確保」「取引先(サプライヤー)と共に成長」「社会貢献」「地球環境の保全」「適切なコミュニケーション活動」の7項目から成る「タダノグループサステナビリティ憲章」を制定しております。上図のとおり関連方針・規程・ガイドライン類を整備し、各部門・グループ会社の年度方針・事業計画から具体的施策へとつなげております。サプライヤー(取引先)におけるサステナビリティ推進については「タダノグループサステナブル調達ガイドライン」を2024年1月に新規制定しております。

また、人的資本活用については、「タダノの人財に対する考え方」を次に定め、変革を支える足場固めとして「人財育成基本方針」「社内環境整備方針」を2024年3月に新規制定しております。

 

(タダノの人財に対する考え方)

・当社グループは、環境変化に柔軟且つスピーディーに対応し、社会に新しい価値を提供することで世界にそして未来に誇れる企業を目指します。

・人財は競争力の源泉であり、「持続可能な経営」を実現する重要な要素のひとつと捉えています。人種、宗教、性別、性的指向・性自認、年齢、障がい、国籍、出身地、社会的出身、経歴等のあらゆる違いを尊重し、多様な人財の雇用と育成を強化・継続します。

・多様な人財一人ひとりが、自らの能力や個性を活かした組織パフォーマンスの最大化を実現するため、公平な成長機会の提供と組織文化を醸成します。

 


 

①人財育成基本方針

当社グループは、社員一人ひとりのパフォーマンスの最大化と更なる価値創造に向けた「組織マネジメント力」と「ソリューション力」に資する人財育成を推進しています。多様な人財が集まり、個の潜在能力を発掘/開発し、高い専門的な発揮能力に変える機会を通じて、変化を捉え、チームでイノベーションを起こし続ける社風「学習し、成長し続ける組織文化」を醸成します。

 


 

 

②社内環境整備方針

当社グループは、タダノで働くことが、生活全般の満足度(Well-being)につながるという考え方の下、安全を第一に、心身ともに健康で活力に満ちた職場環境を築き、仕事と生活のバランスのとれた働き方を推進します。

 


 

(3) リスク管理

当社グループは、開発・製造の拠点を日本・ドイツ・米国に、販売・サービスの拠点を世界各国に有しており、グローバルに事業を展開しております。

当社グループの業務には、事業戦略リスク、法的リスク、製品安全リスク、情報セキュリティリスク、環境リスク、自然災害リスク等様々なリスクがあります。当社グループは、リスク管理について「タダノグループ事業リスクマネジメント規程」に基づき、リスク委員会を通じて、定期的に社内のリスクの洗い出しと評価を行い、リスク毎に対応部署を定めて対応策を講じることにより、リスクマネジメントの強化を図っております。リスク委員会における評価結果については、原則年2回、取締役会に報告しております。

 

(4) 指標及び目標

製造業である当社グループにとって特に重要となる指標及び目標として、2021年に「タダノグループ長期環境目標」を制定しました。「2030年までに事業活動におけるCO2排出量25%削減、製品におけるCO2排出量35%削減、並びに事業活動における産業廃棄物排出量50%削減(いずれも2019年度比)」と目標を定め、地球環境の保全・貢献に取り組んでおります。

また、気候変動対応については、CO2・エネルギー削減部会で、いわゆる2℃シナリオに伴う移行リスク・機会、4℃シナリオに伴う物理リスク・機会を検討し、当社グループのリスクと機会について以下のとおり分析しております。

電動化など製品の気候変動

対応が生み出す変化と影響

(移行リスク&機会)

・電動化製品の開発・製造・販売においてLE業界で遅れを取る/業界をリードする

・電動化製品の製造・サプライチェーンにおいてハード面・ソフト面での備えが必要となる

気候変動がもたらす社会・

経済構造の変化と影響

(移行リスク&機会)

・当社グループ製品が使われている市場・お客様に大きな社会・経済構造の変化が訪れる(化石燃料市場の縮小や各国CO2排出規制の強化/風力発電などGX投資の増加)

・気候変動対応でLE業界において遅れを取る(レピュテーション・リスク)/業界をリードする

気温上昇・災害増加による

現場への影響

(物理リスク&機会)

・建設現場や製造現場での労働環境悪化、当社グループ工場・サプライチェーンの被災リスク増加(AIやロボット活用による自動化・作業容易化、災害増加による製品需要増加の可能性も)

 

 

 

①事業活動におけるCO2削減

志度工場では2008年に最大出力260kWの太陽光パネルを設置し、生産及びエネルギー使用量のさらなる効率化に向けた再編に取り組んでおります。また、「Next Generation Smart Plant ~人と機械が調和し、次世代につながるスマート工場~」をコンセプトに掲げる香西工場では、エネルギー使用量をリアルタイムで把握できるEMS(エネルギーマネジメントシステム)を導入し、2021年に最大出力1,182kWの太陽光パネルを設置しました。両工場においては、エネルギー効率が良くCO2排出の少ないバージ船を利用した製品輸送にも取り組んでおり、モーダルシフトも積極的に推進しております。2023年1月には多度津工場に最大出力606kWの太陽光パネルを設置し、取り組みをさらに加速させております。

国内外におけるその他の事業所でも、太陽光パネルの設置やエアコンや照明の節電、社有車のEV化・HV化等、環境負荷低減に取り組んでおります。

 

CO2排出量の推移(SCOPE 1・2)

項目

2019年度

(2020年3月期)

2023年度

(2023年12月期)

CO2総排出量(t)

31,436

28,723

(内訳) 日本(注)1

20,211

17,846

海外(注)2

11,225

10,877

(参考値)売上高原単位(注)3

13.79

10.24

 

(注)1 日本国内全拠点(グループ会社・工場などを含む)が対象。

2 海外生産拠点が対象。今後、算定範囲をその他海外拠点にも拡大予定。

3 グループ売上高を分母とした原単位を表記

(CO2:トン/売上高:億円)。

 

②製品におけるCO2削減

建設機械のライフサイクルにおけるCO2排出量は、製品の稼働・走行における排出が大部分を占めております。このような背景もあって、未来の地球を守るために、製品におけるCO2排出量の削減は大きな課題であります。

ラフテレーンクレーン CREVO G5 シリーズでは環境に配慮した新世代エンジン、無駄なエンジン回転を抑制する「オートアクセル」、クレーン非操作時にPTOポンプを停止する「ポンプオートストップ」を搭載しております。また、エンジンを起動せずにクレーン作業を可能にする電動パワーユニット「e-PACK」を欧州、そして日本に市場投入する等、CO2排出量の削減や、燃料消費量の改善、低騒音作業など作業効率と環境に配慮した操作をサポートしております。その他にも従来のディーゼル燃料(軽油)から環境負荷の少ない水素化植物油(HVO)へ変更する等の対応も積極的に取り組んでおります。

2023年12月には、世界初となる「電動ラフテレーンクレーン」を日本で発売しました。電動ラフテレーンクレーンは、電気の力でクレーン作業・走行を行うことができ、製品からのCO2排出量をゼロにすることができます。2024年にはアメリカ、カナダでの発売も予定しております。

また、当社グループの製品は、今後GXで増加するとみられる風力発電等の建設現場でも大きな活躍が期待されております。社会のお役に立てるよう、今後も環境保全に貢献する製品開発を進めてまいります。

 

 

③事業活動における産業廃棄物削減

当社グループでは、2008年の環境マネジメントシステムISO14001の認証取得を契機に、事業活動における産業廃棄物の削減に取り組んでおります。

当社グループにおける産業廃棄物のおよそ9割は生産拠点から排出されています。分別の徹底、有価物化の推進、部品梱包材の脱プラ推進、余剰部品の有効活用等により、産業廃棄物の削減を図っています。2021年には、有価物化の推進として「廃油のリサイクル化」に取り組み、これまで焼却処分されていた廃油が再利用できるようになりました。2022年には「プラスチック資源循環促進法」の施行を受け、廃棄物分別ルールの改訂(香川県内にて先行実施)、ビニール系プラスチックの有価物取引を導入し、廃プラスチック廃棄物削減に向けて取り組みました。また、部品の納品時に使用する通い箱等の再利用やリサイクルを促進することで、事業活動の中で排出される産業廃棄物の資源化もさらに推進しております。

 

産業廃棄物排出量の推移

項目

2019年度
(2020年3月期)

2023年度
(2023年12月期)

 


産業廃棄物総排出量(t)

4,334

3,594

 

(内訳) 日本(注)1

2,313

2,667

 

海外(注)2

2,021

926

 

(参考値)売上高原単位(注)3

1.90

1.28

 

 

 

 

 

(注)1 日本国内全拠点(グループ会社・工場などを含む)が対象。

 

2 海外生産拠点(TDG・TFG)が対象。今後、算定範囲をその他海外拠点にも拡大予定。

 

3 グループ売上高を分母とした原単位を表記

(産業廃棄物:トン/売上高:億円)。

 

 

 

当社グループでは、現時点において人財育成基本方針・社内環境整備方針に直接紐づく指標及び目標は定めておりません。今後、方針に合った人事戦略を策定し、人事戦略に基づく指標及び目標の設定を検討してまいります。

なお、提出会社については、女性活躍推進法に基づく以下3点の目標を定めております。

 

人財戦略に関する目標・実績

 

2023年度実績

2026年度目標

管理職に占める

女性労働者の割合(注)1

2.5%

4.0%

男性労働者の

育児休業取得率(注)2

41.4%

62.0%

労働者の男女の

賃金差異(注)1

74.6%

76.0%

 

(注)1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

2 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループは、開発・製造の拠点を日本・ドイツ・米国に、販売・サービスの拠点を世界各国に有しており、グローバルに事業を展開しております。 

当社グループの業務には、事業戦略リスク、法的リスク、製品安全リスク、情報セキュリティリスク、環境リスク、自然災害リスク等様々なリスクがあります。当社グループは、リスク管理について「タダノグループ事業リスクマネジメント規程」に基づき、リスク委員会を通じて、定期的に社内のリスクの洗い出しと評価を行い、リスク毎に対応部署を定めて対応策を講じることにより、リスクマネジメントの強化を図っております。リスク委員会における評価結果については、原則年2回、取締役会に報告しております。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

 

(1) 業界特性、需要変動

当社グループが属する業界は、景気変動の山・谷よりも需要の振幅が大きくなる特性を有しております。当社グループ製品である建設用クレーン等LEは耐久性に優れ、製品寿命も長く、中古車としての価格が高いことが特徴です。顧客は景気が良くなると新しい製品に買い替え、景気が冷え込むと買い替えを待つ傾向があります。このため、LEは、他の建設機械と比べて景気の波に左右されやすく、需要の振幅が大きくなる特性を有しており、想定を超えた景気変動が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。なお、主要製品と需要との関連は概ね次のとおりとなっております。

・建設用クレーン

日本及び海外向けで、日本及び海外仕向地の政府建設投資及び民間建設投資やエネルギー関連投資の動向に 影響を受けます。

・車両搭載型クレーン

主に日本向けで、トラック架装用の小型のクレーンであるため、トラックの需要動向に影響を受けます。

・高所作業車

主に日本向けで、電力電工、通信向けは、主に電力電工業界及び通信業界の設備投資の動向に、レンタル、一般向けは、主に民間設備投資の動向に影響を受けます。

 

(2) 研究開発

当社グループは、IoTやAIを始めとする急速な技術的進歩により世の中が大きな変革期を迎えつつあると認識し、商品競争力の維持・強化や更なる技術革新を目的として、研究と開発要員の増員、大学との共同研究等、研究開発の強化を図っております。開発の遅れや急速な技術革新、市場ニーズとの不一致等により商品競争力が低下した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(3) 原材料等の調達

当社グループでは、SVE(スーパーバリューエンジニアリング)活動に基づき開発段階までさかのぼり、より一層のコストダウンを推進するとともに、生産性の向上に取り組んでおりますが、予測を超えた原材料の価格高騰や品不足が当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

また、取引先の供給能力の不足や供給停止、倒産、品質問題その他の理由により、生産や出荷の遅延・減少等が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

※ SVE:今までのVEを越える本格的本質的なVEで、Super(Sustainable:持続できる)Value Engineeringの略

 

(4) 製品輸送手段

当社グループの主要製品である建設用クレーンの日本国内における生産機能は香川県に集中しており、四国からの製品輸送について、法規制により本州四国連絡橋を利用できず、フェリーやバージ船を利用した海上輸送を用いております。当社グループ保有のバージ船を導入する等、輸送能力を確保しておりますが、運営会社の経営悪化等の理由によりフェリーやバージ船が利用できなくなった場合、製品の出荷量や出荷費用に変動が生じ、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(5) 貸倒れリスク

当社グループでは、顧客の信用状態を継続的に把握して、与信設定を行い、適切な債権管理に努めておりますが、顧客の信用不安により予期せぬ貸倒れリスクが顕在化し、保険等によってカバー出来ない費用が生じて、追加的な引当の計上が必要になる場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(6) 為替レートの変動

当社グループ海外事業は、為替レートの変動により影響を受けます。これに対し、輸出及び輸入の決済については、為替予約、債権債務の相殺等により為替の変動による影響を最小限に抑える措置を講じておりますが、予測を超えた為替変動が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

 

 

(7) 保有株式の価値変動

当社グループは、販売・購買・資金調達等において、安定的な取引関係の維持・強化を図ることを目的に他社の株式を保有しております。個別銘柄の保有の適否に関しては毎年1回定期的に見直しを行っており、保有目的に合致しない株式は、売却等により縮減を図っておりますが、当社グループが保有している株式の価値が変動した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(8) 買収・提携

当社グループは、「LE世界No.1」に向け、事業の拡大や競争力の強化等を目的として、国内外において企業買収、事業買収、資本提携等を実施することがあります。これらを行う際には事前調査を十分に行い、リスクを検討することとしておりますが、期待していたシナジー等のメリットを享受できなかった場合や、想定していない新たな負債等の問題が生じ又は発見された場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(9) 法的規制

当社グループは、日本の法的規制のほかに事業展開している各国の法的規制、例えば事業・投資の許可、関税・輸出入規制等の適用を受けております。製品のうち、建設用クレーンは日本及び海外仕向地における自動車及びクレーンの法規制の対象となっております。この法規制は、例えば排出ガス規制のように、各国で異なり、また各国の事情で変更されることがあります。他の製品も同様に日本及び海外仕向地における法規制の対象となっております。

当社グループでは、製品に係る法的規制に関する情報収集と対応を行っておりますが、各法的規制の改正によって対応費用が発生したり、研究開発、生産、販売及びサービス等に支障をきたすことにより、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(10) 不正・不祥事

当社グループは、「タダノグループサステナビリティ憲章」を定め、ステークホルダーの権利・立場や企業倫理を尊重する企業風土の醸成に努めております。また、「タダノグループコンプライアンス規程」に基づき、コンプライアンス担当役員を設置し、コンプライアンス委員会を通じて、啓発ツール等による法令遵守の教育研修を行い、コンプライアンスを徹底すると共に、内部通報制度によりコンプライアンス体制の強化を図っておりますが、役職員等による重大な不正・不祥事が発生した場合、当社グループの信用失墜や費用の発生等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(11) 税務リスク

当社グループでは、各国の税法に準拠して税額計算し、適正に納税を行っております。グローバルな事業展開の中で、各国の税法だけでなく国際間取引に係る移転価格税制等の国際税務リスクにも注意を払っておりますが、税務当局との見解の相違等により追加の税務コストが発生し、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(12) リコール・製造物責任

当社グループでは、製品安全委員会や品質改善委員会等を設置し、安全と品質を最優先に、製品開発及び製造、サービスに努めておりますが、製品欠陥に基づく大規模なリコールや製造物責任に基づく賠償責任が生じ、保険等によってカバー出来ない費用が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(13) 情報セキュリティ

当社グループは、様々なシステムを利用し、また、業務上必要な取引先の機密情報や個人情報等を保有しております。万一に備えて、サーバを外部のデータセンタで運用し、バックアップデータを複数拠点で保管する等、最大限の保守・保全策を講じ、情報管理体制の強化に努めておりますが、停電、災害、ソフトウェアや機器の欠陥、コンピュータウイルスの感染、不正アクセス等、予測を超える事態により、システム障害や情報漏洩、改ざん等の被害が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(14) 環境規制

当社グループでは、製品及びその製造過程等について、大気汚染、水質汚濁、騒音・振動、廃棄物処理、CO2削減及びエネルギー規制等、様々な環境法令の適用を受け、それらの遵守のために必要な対応を行っておりますが、環境法令の改正による対応費用の発生や、環境事故等に基づく賠償責任が発生し、保険等によってカバー出来ない費用が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(15) 自然災害

当社グループでは、地震等の自然災害や大規模火災等に備えた事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)の策定や防災マニュアルの作成、またテロ・紛争等の発生や感染症等の世界的流行(パンデミック)等のあらゆる緊急事態に対応する情報連絡体制の整備等、事業継続に必要な対策を講じておりますが、これらの災害等によって当社グループやサプライチェーンに重大な損害が発生し、操業停止、生産及び出荷の遅延や減少、販売の減少等が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
 なお、経営方針・経営戦略等の内容については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

当社グループは、前連結会計年度より決算日を3月31日から12月31日に変更し、決算期を統一しました。従いまして、前連結会計年度は決算期変更の経過期間となるため、当社及び3月決算であった連結対象子会社は9か月間(2022年4月1日~2022年12月31日)、12月決算の連結対象子会社は12か月間(2022年1月1日~2022年12月31日)を連結対象期間とした変則的な決算となりました。このため、対前連結会計年度比を記載しておりません。

また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績

日本向け売上高は、997億1千万円となりました。海外向け売上高は、1,805億5千6百万円となりました。この結果、総売上高は2,802億6千6百万円、海外売上高比率は64.4%となりました。

営業利益は183億4千9百万円経常利益は163億6千7百万円親会社株主に帰属する当期純利益は77億7千3百万円となりました。

 

さて、2018年1月19日に公表しました米国排ガス規制の緩和措置に関する自己申告について、米国当局(環境保護庁及び司法省)との間で本件に関する民事制裁金の支払い及び環境負荷低減プロジェクトへの資金供出について合意しました。

詳細につきましては、2023年9月1日付で公表しました「米国排ガス規制の緩和措置に関する当局との民事制裁金等の合意について」をご参照下さい。

 

セグメント別の経営成績は次のとおりであります。セグメント別の売上高については、セグメント間の取引を含めて記載しております。なお、セグメント別とは、当社及び連結対象子会社の所在地別の売上高・営業利益であり、仕向地別売上高とは異なります。

また、当連結会計年度より、従来「その他」に含まれていた「オセアニア」について重要性が増したため、報告セグメントとして記載する方法に変更しております。

①日本

建設用クレーンの需要が増加する中、売上高は1,844億8千1百万円営業利益は262億2百万円となりました。

 

②欧州

建設用クレーンの需要が横ばいで推移する中、厳しい調達環境による生産制約の継続もあり、売上高は902億9千9百万円営業損失は138億3千4百万円となりました。

 

③米州

建設用クレーンの需要が増加する中、売上高は947億5千1百万円営業利益は71億1百万円となりました。

 

④オセアニア

建設用クレーンの需要が増加する中、売上高は153億1百万円、営業利益は20億9千7百万円となりました。

 

⑤その他

建設用クレーンの需要がアフリカを除き増加する中、売上高は71億8千万円営業利益は8億7千6百万円となりました。

 

 

主要品目別の状況は次のとおりです。

①建設用クレーン

日本向け売上高は、需要が増加し、492億1千8百万円となりました。海外向け売上高は、欧州・アフリカを除く全ての地域で需要が大幅に増加し、1,500億1千4百万円となりました。

この結果、建設用クレーンの売上高は1,992億3千2百万円となりました。

 

②車両搭載型クレーン

日本向け売上高は、需要が増加し、155億8千3百万円となりました。海外向け売上高は、24億1千2百万円となりました。

この結果、車両搭載型クレーンの売上高は179億9千6百万円となりました。

 

③高所作業車

高所作業車は、トラックシャシ供給制約により、需要が減少する中、売上高は162億3千万円となりました。

 

④その他

部品、修理、中古車等のその他の売上高は、468億6百万円となりました。

 

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

①生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

(提出会社)

セグメントの名称

金額(百万円)

前年比(%)

日本

179,176

合計

179,176

 

(タダノ・ファウンGmbH、タダノ・デマーグGmbH)

セグメントの名称

金額(百万円)

前年比(%)

欧州

73,928

合計

73,928

 

(タダノ・マンティスCorp.)

セグメントの名称

金額(百万円)

前年比(%)

米州

5,328

合計

5,328

 

   (注) 生産金額は販売価格で表示しております。

 

②受注実績

当社グループは、受注見込による生産方式をとっているため、該当事項はありません。

 

③販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年比(%)

日本

121,294

欧州

43,834

米州

93,874

オセアニア

15,119

その他

6,144

合計

280,266

 

   (注) セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(2) 財政状態

(資産)

総資産は、3,652億4千4百万円(前連結会計年度比85億5千万円増)となりました。主な要因は、現金及び預金の減少38億1千4百万円があったものの、棚卸資産の増加128億7千6百万円があったことによるものです。

 

(負債)

負債は、1,838億9千万円(前連結会計年度比50億3千6百万円減)となりました。主な要因は、未払法人税等の増加53億1千2百万円があったものの、短期借入金の減少56億4百万円や排ガス規制関連損失引当金の減少69億3千5百万円があったことによるものです。

 

(純資産)

純資産は、1,813億5千4百万円(前連結会計年度比135億8千7百万円増)となりました。主な要因は、利益剰余金の増加62億5千万円や為替換算調整勘定の増加45億8千5百万円があったことによるものです。

 

(3) キャッシュ・フロー

当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ38億6千3百万円減少し、941億2千6百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度の営業活動によって得られた資金は101億2千1百万円(前連結会計年度比305億4千万円増)となりました。主な要因は、減少要因として棚卸資産の増加48億4百万円や法人税等の支払額43億4百万円があったものの、増加要因として税金等調整前当期純利益の計上182億8千7百万円や減価償却費の計上60億1千3百万円があったことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度の投資活動によって使用された資金は39億8千3百万円(前連結会計年度比85億円減)となりました。主な要因は、減少要因として有形固定資産の取得による支出31億1千5百万円があったことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度の財務活動によって使用された資金は132億5千3百万円(前連結会計年度比82億5百万円減)となりました。主な要因は、短期借入金の減少43億4千7百万円や長期借入金の返済による支出59億円に加え、配当金の支払額15億2千2百万円があったことによるものです。

 

なお、キャッシュ・フロー指標のトレンドは次のとおりであります。

 

 

第72期

第73期

第74期

第75期

第76期

自己資本比率

(%)

50.5

44.5

46.2

46.9

49.6

時価ベースの自己資本比率

(%)

31.5

46.4

37.9

32.6

41.0

キャッシュ・フロー対
有利子負債比率

(年)

4.6

5.7

9.0

インタレスト・
カバレッジ・レシオ

(倍)

35.8

26.3

5.5

 

 

(注)

自己資本比率:(純資産-非支配株主持分)/総資産

 

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

 

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

 

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。

株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

第72期及び第75期の「キャッシュ・フロー対有利子負債比率」と「インタレスト・カバレッジ・レシオ」については、営業キャッシュ・フローがマイナスのため、記載しておりません。

 

 

(4) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

①重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 5.会計方針に関する事項」に記載のとおりであります。

この連結財務諸表は、収益及び費用、資産及び負債の測定にあたり、経営者の見積りや仮定を含んでおります。これらの見積りや仮定は、過去の実績や決算日において合理的であると考えられる様々な要素を勘案し、経営者が判断した結果に基づいております。加えて、継続的な見直しも行なっております。しかしながら、実際には、これらの見積りや仮定とは異なるものとなる可能性があります。

当社グループの連結財務諸表に重要な影響を与えると考えられる見積りや仮定を含む項目は以下のとおりであります。なお、重要な会計上の見積りとして、繰延税金資産を計上しております。その内容については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

(有形固定資産及び無形固定資産)

当社グループは、有形固定資産及び無形固定資産について、減損の兆候がある場合に減損の判定を行っております。減損判定の契機としては、過去の業績や事業計画と比較して業績の大幅な悪化が見込まれる場合、市場や業界トレンドに大きな変動がある場合、資産の用途やそれらを用いる事業の見直しを行う場合等があります。減損については、公正価値と帳簿価額を比較し、公正価値が帳簿価額を下回っている場合に減損損失を計上しておりますが、公正価値の評価にあたり用いる見積りや仮定が将来的に変化した場合には、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性があります。

 

(法人税等)

当社グループは、財務諸表上の資産及び負債の計上額と税務上の金額との間に生じる差異について、将来発生すると見込まれる課税所得の範囲において、その差異が解消されると見込まれる期間に適用される法定実効税率を使用し、繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の解消については、将来の課税所得の見積りによるところが大きく、その課税所得の見積りが変動する場合には、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性があります。

 

(退職給付)

当社グループでは、当社、国内子会社及び一部の海外子会社で確定給付型の退職給付制度を設けております。確定給付制度の債務について、その現在価値や関連する勤務費用等は、数理計算上の仮定に基づいて算定しており、割引率や長期期待運用収益率等、基礎率についての見積りが必要になります。当社グループでは、外部の年金数理人からの意見も踏まえ、適切な見積りと判断を行っておりますが、将来の経済状況によりその仮定が変動する場合には、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性があります。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(経営成績)

当連結会計年度の経営成績については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績」に記載のとおりであります。

 

(財政状態及びキャッシュ・フローの状況)

当連結会計年度の財政状態の状況については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)財政状態」に記載のとおりであります。

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (3)キャッシュ・フロー」に記載のとおりであります。

 

 

③資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループの事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用、金融機関からの借入及び社債の発行等により、資金調達を行うことを基本方針としております。自己資本比率やD/Eレシオ等の財務健全指標、ROEやROICなどを注視する一方で、資金調達コストの低減や金利変動のリスクも勘案した上で、最適な調達方法を選択しております。また、ミニマムキャッシュ運営を柱とする資金管理方針に基づいて統制し、グループ全体の余剰資金の管理と資金効率の向上に努めております。加えて、金融機関とはコミットメントライン契約を結んでおり、高水準な現預金と併せて、流動性を確保しております。

今後も「LE世界No.1」を目指し、持続的な成長と企業価値向上に向け、積極的な投資と安定的な経営・財務基盤の確保に努めます。また、不測の事態への備えも意識しながら、引き続き資金の流動性を確保してまいります。

 

④経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

「中期経営計画(21-23)」では、『誇れる企業を目指して、赤い矢印に集中』『「目の前の闘い」と「時代との闘い」を同時に制する』を基本方針として、5つの重点テーマ実現のために、9つの戦略に取り組んでまいりました。

なお、その進捗を計る指標として、売上高、営業利益、営業利益率、海外売上高比率、ROIC(投下資本営業利益率)を定めております。「中期経営計画(21-23)」の最終年度、2023年度(第76期)においては、売上高は2,750億円、営業利益は275億円、営業利益率は10.0%、海外売上高比率は66.9%(海外売上高1,840億円)、ROICは8.0%以上を、それぞれ数値目標として掲げておりました。

 

各指標の推移は以下のとおりです。

売上高は目標である2,750億円を達成、並びに過去最高を更新しました。欧州サプライチェーン混乱による生産制約により、オールテレーンクレーンを中心に欧州で生産する製品の売上が伸びなかったものの、円安の影響に加え、北米・日本・中東でのラフテレーンクレーン販売が好調に推移しました。

営業利益は目標である275億円に及びませんでした。ロシア・ウクライナ問題やインフレ進行によりコスト競争力の改善が難しい状況にあり欧州事業の収益化が遅れております。一方で、主力市場である日本・北米では建設用クレーンの拡販と売価改善に注力しました。

 

項目

第72期

第73期

第74期

第75期

第76期

第76期目標

売上高

2,279億円

1,860億円

2,056億円

1,929億円

2,802億円

2,750億円

内)日本

1,045億円

932億円

929億円

633億円

997億円

910億円

内)海外

1,234億円

927億円

1,126億円

1,296億円

1,805億円

1,840億円

海外売上高比率

54.1%

49.9%

54.8%

67.2%

64.4%

66.9%

営業利益

139億円

△41億円

52億円

71億円

183億円

275億円

営業利益率

6.1%

△2.3%

2.6%

3.7%

6.5%

10.0%

ROIC

(投下資本営業利益率)

4.1%

△2.1%

0.9%

0.4%

3.0%

8.0%以上

 

※ROIC:税引後営業利益/投下資本 

 投下資本:純資産+有利子負債(各年度の前年度末及び当年度末を平均して算出)

 

5 【経営上の重要な契約等】

(1) 技術提携契約

該当事項はありません。

 

(2) 業務提携契約

提出会社

相手先

契約内容

契約日

契約期間

コベルコ建機株式会社

ラフテレーンクレーンの完成車・キャリヤ部の生産受託及びクレーン部の部品の共通化・共同購買

2000年11月16日

5年間
以後2年毎の自動更新

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループ(当社及び連結子会社)の研究開発活動の大半は、当社の開発部門及び技術研究部門で行われており、両部門では国内及び海外の市場ニーズに即したクレーン車、高所作業車及びそれらの応用製品、新技術・先端技術の研究開発活動を行っております。開発部門では近年、国内外での次期排ガス規制対応と脱炭素化に向けた研究・開発に取組んでおります。一方、技術研究部門では大学や他企業との共同研究等を通じ、AI等の最新ICT技術を活用して、作業容易化、自動化、省力化等に関する技術開発に取り組むことで、より安全で迅速、効率的な作業の実現を目指しております。

なお、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発活動に要した金額は、研究材料費、人件費等、総額9,352百万円であります。

 

当連結会計年度における各セグメント別の主な研究開発活動は、次のとおりであります。

 

(1)日本

①技術研究部門の取り組み

技術研究部門は、当社製品が使われる建設現場でのより安全な作業環境確保の要請や、少子高齢化による生産年齢人口の減少を背景に、建設施工の安全性と生産性の向上を目指し、未来を見据えた新技術開発に取り組んでおります。その取り組みの一部として、次のようなものがあります。研究開発を加速させるために、従来の構造解析に加え、油圧・空圧の流体解析、制御シミュレーションや安全解析に注力しております。対象領域も、機械自体の状態検出という内界センシングから機械周囲の外界センシング、さらに環境認識へと範囲を広げた研究開発に取り組んでおります。また、建設施工の安全性と生産性を向上させる取り組みとして、作業所におけるさらなる高効率化や省人化を目指し、建設業界全体の生産性及び魅力向上を推進するために設立された建設RXコンソーシアムに参画し、技術連携を推進しております。

大学との共同研究においては、包括連携共同研究を行っている京都大学との間で、新たな分野の共同研究を開始し、文系理系の枠にとらわれず、広く応用可能な研究・学術的視点を包括連携で得て研究を推進しております。また、ベンチャーを含め民間企業との共同開発も活発化させ、オープンイノベーションへも積極的に取り組んでおります。

 

②日本市場向け25t吊りフル電動ラフテレーンクレーン「EVOLT eGR-250N」の開発、発売

・特長

1)世界初、フル電動ラフテレーンクレーン

2)最大吊上げ性能25t、最大作業半径34m、最大地上揚程44.2m、最高速度49km/h。従来機のG5シリーズで搭載しているタダノビューシステムやセットアップラジコンなど継続搭載。

3)走行及びクレーン作業時の騒音が大きく改善

4)走行用に高出力電動モータを搭載。加速性能が飛躍的に向上し、ギア変速時のショックもなくスムーズな走行が可能

5)バッテリは容量226kWhのリチウムイオン電池を使用。満充電で平均的な1日のクレーン作業と走行が可能。

6)CHAdeMO急速充電方式と三相交流200Vの普通充電方式を採用

 

③日本市場向けオールテレーンクレーンAC 5.220-1、AC 5.140-1の開発、発売

・特長

1)従来のATF-220N-5.1、ATF-140N-5.1の高い搬送性、クレーン性能、ジブ仕様、作業の効率と快適性、安全性はそのままに、新モデルとして開発

2)現在、世界で最も厳しい排ガス規制のひとつである欧州排ガス規制EU Stage V対応エンジンを搭載

3)テレマティクスWeb情報サービス「HELLO-NET」を標準装備。「HELLO-NET」は携帯通信によるクレーンの稼働状況の掌握と、GPSによる位置情報確認、さらに保守管理のための情報をウェブサイトでサポート。

 

④日本市場向けオールテレーンクレーンAC 6.300-1の開発、発売

・特長

1)現在、世界で最も厳しい排ガス規制のひとつである欧州排ガス規制EU Stage V対応エンジンを搭載。また、クレーン部とキャリヤ部共通のシングルエンジン方式を採用し、定期メンテナンスの負担を低減。

2)200t-400t吊りクラス最長の80mロングブームを採用し、高揚程の作業とパワフルな吊り上げ性能を両立

3)スタンダード仕様の油圧チルト式ジブのほか、フルスペック仕様では8種類の豊富なジブ仕様を設定

 

⑤日本市場向け高所作業車AT-280XTGの開発、発売

・特長

1)3.5t車クラスへの架装が可能となったことで準中型免許での走行が可能。コンパクトな車両は従来機(AT-270TG)より走行燃費の向上や、CO2排出量の低減など環境改善にも貢献。

2)フルハーネス型墜落制止用器具装置の装着時でもバスケットへの乗り降りが容易な扉付きのバケットを採

 

⑥日本市場向け高架道路・橋梁点検車BT-300の開発、発売

・特長

1)デッキ本体に180°の旋回機能を追加し、デッキ作業範囲を約73%拡大(既存モデルBT-200との比較)

2)右側アウトリガの張出により、車両右側性能を確保

3)車両総重量を11t未満に抑え、中型免許で運転が可能

 

⑦日本市場向け軌道陸上兼用高所作業車AT-150DWの開発、発売

・特長

1)車両総重量を8t未満に抑え、中型免許(8t限定)で運転が可能

2)作業時でも揺動フレームを固定することで安定した状態を保ち、オンレール作業の性能を大きく向上

3)山側性能と谷側性能を自動で切り替え、カント上での作業効率を向上

4)車両中央付近の転車台により、スピーディな載線・離線が可能

 

⑧北米市場向けトラッククレーンGT-1200XL-2、GT-800XL-2の開発、発売

・特長

1)広々としたフルサイズキャビンは2人定員とし、フロント、リヤには独立したエアサスペンションを搭載、長距離の移動も快適な乗り心地を提供

2)GT-1200XL-2は51.0mのブーム長で5段ピンニング方式を採用、GT-800XL-2は47.0mのブーム長で5段同時伸縮方式の長尺ブームを採用

3)クレーン操作部にはキャブチルト、大型のモニター(AML-E)、スマートチャート性能など、ラフテレーンクレーンと共通の機能・コンポーネントを採用

 

当事業セグメントに係る研究開発費は5,365百万円であります。

 

(2)欧州

海外市場向けオールテレーンクレーンAC 4.070-2の開発、発売

・特長

1)現在、世界で最も厳しい排ガス規制のひとつである欧州排ガス規制EU Stage V対応エンジンを搭載

2)全長11.7m、全幅2.55m、全高3.8mは同クラスの4軸クレーンで最もコンパクト

3)車軸レイアウト(軸間の寸法)の変更により、米国の広いエリアで通行許可取得を容易化

4) 安全装置IC-1 Plusにより任意のアウトリガ張出長さへの対応が可能

 

当事業セグメントに係る研究開発費は3,728百万円であります。

 

(3)米州

当連結会計年度において新たな製品の発売はありませんが、テレスコピックブームクローラクレーンの開発を継続して行っております。

 

当事業セグメントに係る研究開発費は258百万円であります。