第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

今後、相次ぐ大規模自然災害からの復旧・復興、防災・減災、国土強靭化、インフラの老朽化対策等に政府の予算が重点配分されることが予想されておりますが、厳しい受注競争等が継続する中で、2024年以降の受注環境は、予断を許さない状況が続くと想定されます。

このような状況の中、安定的な経営を行うためには、一歩先を見据えた積極的な技術開発と新規事業分野・新市場の開拓、技術の総合化・多様化・差別化によるコア・コンピタンスの創出、価格競争力の向上と営業力強化、官公需の受注シェア向上と民間分野への積極的な営業展開等の事業戦略を推し進めるとともに、サステナビリティ経営の推進など社会ニーズや社会構造にマッチした組織、事業構造、事業領域への転換を図っていくことが重要であると考えております。

当社グループは、2022年から2024年までの第5次中期経営計画において、「イノベーションの加速と総合力の結集による事業領域の拡大と経営基盤の強化」をスローガンに掲げ、以下の重要な経営課題に取り組むことにより、強い経営基盤の構築と安定的な成長を目指す所存であります。

 

① 新規事業創出・新市場開拓の加速と技術開発の推進

社会情勢や市場環境、顧客ニーズの変化を踏まえ、前中期経営計画で具現化した技術開発の成果を事業化することにより、新規事業創出・新市場開拓を加速し、新たな収益基盤を構築してまいります。そのための社内体制のさらなる強化、グループ企業の活用、業務提携やM&A等を必要に応じて積極的に進めてまいります。さらに、部門横断的な連携による戦略的な取り組みについても強化してまいります。

また、新規技術開発の推進に加え、事業化を指向した技術開発テーマの重点化を図り、早期収益化を目指してまいります。

 

② 基幹事業分野の強化

各セグメントにおいて、外部環境、内部環境の分析結果を踏まえ、基幹事業分野の中で強化すべき分野を抽出し、そのための戦略を立案・実行してまいります。

 

③ 海外事業の拡大と海外展開の推進

連結子会社の㈱Idesと連携し、一体となった事業展開を強化するとともに、国内事業部門との連携を推進することにより受注拡大を図ります。また、気候変動や防災対策、海洋環境保全等の地球規模の課題への対応を進め、海外展開を推進してまいります。

 

④ 民間・個人市場への展開、ものづくりの推進

人の健康や生活環境の安全・安心を支える個人向けサービスとして、民間企業等の健康経営の支援や、「お部屋の健康診断」、「健康・防災情報サービス」等の個人向けサービスの商品ラインナップを整備し、BtoC、BtoBtoCビジネスを展開・拡充してまいります。

また、脱炭素社会・ネイチャーポジティブ(自然再興)の実現に向けて民間企業の環境面の経営課題を解決するコンサルティング事業を強化してまいります。ものづくりの推進では、AUV等の最先端の海洋観測機器を開発し、市場投入する事業の確立を目指します。

 

⑤ DXの推進、IoT・ロボット・AI等の先端技術の利活用

デジタル化・スマート化の進展が著しい社会において、DXの推進、IoT、ロボット、AI、ビッグデータといった社会のあり方に影響を及ぼす新たな先端技術を積極的に取り入れてまいります。

また、最新のAI技術を取り入れながら、独自の開発を加えた研究開発を行うとともに、社内のAI人材の増強を図り、これらの先端技術を活用した新規事業の展開・技術開発、業務の効率化・省力化並びにコミュニケーションの深化への活用を図ります。

 

⑥ 次世代を担う多様な人材の確保・育成

企業の持続的な成長を図るため、職員の教育・研修をさらに充実・強化することにより、知識・スキルの向上に加え、社員の意識改革、コミュニケーションの醸成を促し、イノベーションや次世代を担う多様な人材を育成します。また、言語、国境、文化の壁を越えて、グローバルなビジネス環境で業務を遂行できる人材の確保・育成を図ります。

 

⑦ 魅力と活力のある働きやすい企業づくり

社員が情熱をもって、自発的・積極的に業務に取り組むことで組織が成長し、また、組織が成長することにより、さらに社員の働きがいを高めていくことのできる魅力と活力のある企業づくりに取り組んでまいります。

 

⑧ 組織の一体化・効率化とガバナンスの強化

当社グループの強みを活かし、総合力を発揮できる体制を強化していくために、より一層の組織の一体化・効率化を図ります。また、ステークホルダーに対し経営の透明性、健全性、遵法性をより一層高めていくとともに、内部統制システムの充実を図ることにより、コンプライアンス、情報管理、リスク管理、財務管理を徹底してまいります。

 

また、当社グループは、社会基盤整備や環境保全に関わる「企画、調査、分析・解析、予測・評価から計画・設計、対策・管理」にいたる全ての段階において、ワンストップでお客様のニーズに合わせたサービスを迅速に提供できる特色を強みに、技術力の総合化・多様化・差別化を図り、社会の要請にこたえてまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) サステナビリティに関する考え方

当社グループの経営ビジョン「安全・安心で快適な社会の持続的発展と健全で恵み豊かな環境の保全と継承を支えることを通じて社会に貢献する」は、日々の事業活動を通じて「自然と社会とが調和した未来」を目指すという、企業としての使命や将来に向けての意思を表現しており、当社グループが考えるサステナビリティは、この経営ビジョンそのものと考えています。

当社グループでは実効性・透明性の高いガバナンスをもとに、中長期的な視点で社会や環境に関わる課題に向き合い、様々な課題を解決していくことにより、持続可能な社会や自然環境のもたらす恵みを将来世代に引き継ぐことが責務であり、その取り組みがSDGs達成にも貢献すると考えています。

 

(2) ガバナンス

当社グループでは、気候変動や人的資本をはじめとするサステナビリティに関する課題に取り組むため、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」を設置しています。同委員会では、サステナビリティに関する基本方針や施策などについて議論し、その結果は取締役会に報告がなされ、優先的に取り組むべき事項などの議論を行います。特に気候変動に関するリスクと機会、財務への影響、対応策については当委員会におけるTCFD情報開示検討ワーキンググループで検討することとしています。さらに、特定されたリスクと機会は中期経営計画の重点課題と連動し、各部門と一体となって取り組みを推進します。

※気候関連財務情報開示タスクフォース

 

(3) リスク管理

サステナビリティ推進委員会では、当社グループが持続的成長と中長期的な企業価値向上を図っていくために、サステナビリティに関する課題(①気候変動、②生物多様性など環境関連、③人材の育成・確保、ダイバーシティ、人権などの人的資本など)への対応について検討します。これらのテーマに関するリスクや機会の検討を含む同委員会の活動の内容は、中期経営計画や長期的な経営戦略に反映するために取締役会において報告することとしています。

なお、組織横断的リスク状況の監視及び全社的対応は、内部統制本部の組織下に常設しているリスク管理委員会が行っており、重要なリスク情報については内部統制本部長である取締役がリスク管理委員長より報告を受け、その内容について取締役会に報告しています。

 

(4) 重要なサステナビリティ項目

本項目における、「1)気候変動」及び「2)人的資本 ②戦略 b社内環境整備 <健康経営>、④指標及び目標」については、提出会社の取り組み内容を記載しております。

 

1)  気候変動

① ガバナンス

上記「(2)ガバナンス」において記載した体制に基づき、気候変動への対応に関わるサステナビリティの取り組みを推進します。

 

② 戦略

気候変動に伴い将来生じる可能性があるリスク・機会について、確からしさと影響の大きさの2つの視点から、重要度の高い項目について整理しました。

このうち、「炭素税導入」と「自然災害(洪水・高潮被害)」に対しては、公的機関の将来予測結果をもとに1.5℃・2℃・4℃上昇を想定したシナリオ分析を行い、財務影響を試算しました。

 

 

a 気候変動に伴うリスクと対応

特定されたリスクについては、中期経営計画の重点課題の具体的施策として、影響を受ける部門・拠点において、リスクを低減・回避するための対応を行っています。

b 気候変動に伴う機会と対応

特定された機会については、中期経営計画の重点事業分野と連動し、各事業部門が一体となって取り組みを実施しています。とくに、機会をとらえるための対応策として、関連技術の開発や実装を進めるとともに、人材の確保・育成及び営業部門・技術部門が一体となった受注活動の強化を推進しています。

c インパクト評価

重要度の高いリスクのうち「炭素税導入」と「洪水・高潮被害」に対しては、公的機関の将来予測結果をもとに財務影響を算定し、影響が最大になるシナリオにおいても、当社の財務に与える影響は軽微と判断しました。

 

③ リスク管理

当社では、各部門が参加するワークショップを実施し、気候変動に関するリスクと機会の特定を行いました。特定した事項は、サステナビリティ推進委員会のTCFD情報開示検討ワーキンググループで毎年1回見直しを図ります。さらに、リスクと機会の重要度を確からしさと影響の大きさの視点で評価し、重要度が高い項目は中期経営計画の重点課題として取り入れる等の対応を行っています。また、重要度の高いリスクに対しては、管理本部、各拠点、各事業部門、リスク管理委員会が対応を行っています。

 

④ 指標及び目標

温室効果ガス排出量の算定対象範囲を、事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(Scope1)と他社から供給された電気の使用に伴う間接排出(Scope2)とし、国際基準である温室効果ガス(GHG)プロトコルに準拠して算定した結果、2022年度の温室効果ガス排出量は、3,239t-CO(ロケーション基準)、3,205t-CO(マーケット基準)となり、事業所・研究所における電気使用が約80%を占めました。

当社は研究所や化学分析室を複数所有するコンサルタント業であり、売上や従業員の増加に伴う研究施設や機器・設備の増設により排出量も増加しやすい特徴がありますが、省エネ設備(LED照明、高効率エアコン等)の導入等により2022年度は2013年度と比較して約14%削減しました。(Scope2の電気はマーケット基準)

今後についても、省エネ設備の導入による電力の使用削減、事業所屋上への太陽光発電設備導入による再生可能エネルギーへの切り替え、電気自動車及びハイブリッド車導入による燃料の使用削減等に取り組みます。

さらに、当社の事業特性を踏まえた上で、温室効果ガス排出量の削減目標について検討を進めていきます。

TCFD提言に基づく情報開示の詳細については、当社のウェブサイトをご参照ください。

(https://www.ideacon.co.jp/sustainability/esg/environment/climate/)

 

2)  人的資本

① ガバナンス

上記「(2)ガバナンス」において記載した体制に基づき、人的資本への対応に関わるサステナビリティの取り組みを推進します。

 

② 戦略

当社グループでは「人材」を「人財」と考え、事業を行う上での重要な経営資本の一つとして位置付けています。そして、企業が持続的に成長していくためには、企業を構成する「人」の成長が欠かせないと考えています。このため、専門知識・技術の習得やイノベーションを創造するための課題発見力・解決力、実行力の向上、さらには、自己啓発意欲の醸成等の「技術者としての成長」に加え、論理的思考力や倫理観・責任感、コミュニケーション能力、リーダーシップなどを基礎とした人間力の向上等の「人としての成長」を目指して、公正な人事考課制度と研修制度により人材育成を行っています。

また、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値向上の実現に向けて、社員一人ひとりが情熱とやりがいをもって仕事に取り組み、組織と社員が共に成長し続けられることを目指して、社内の環境整備を推進しています。

 

a 人材育成

当社グループは、第5次中期経営計画(2022~2024)の重点課題の一つである「次世代を担う多様な人材の確保・育成」を念頭に、人事考課をはじめとした各種制度と成長段階や専門分野に応じた各種研修、AI、BIM/CIM、DX等に関するリスキリング、業務知識や経験をさらに深く研究し、社会貢献に繋げるための社会人大学院制度等のリカレント教育を実施し、人材育成を行っています。

これらの人材育成は、山中湖にある富士研修所(Fuji Innovation Center)を活用した研修、時間や場所に捉われないeラーニング等、目的や状況に適した受講体制を整えています。

また、人事考課制度と連動して、年1回、社員自身が仕事の現状認識や将来的なキャリア希望、その他会社に対する要望等を申告する機会を設け、その内容をもとに年2回の面談を上長と実施することで、人事異動や職場環境の向上等に活用しています。

※Building/Construction Information Modeling, Management:建設生産プロセスのあらゆる段階で3次元モデルを活用し、全体的な生産性向上や品質向上を目指す取り組み

 

人材育成に関する主な制度・研修

区分

内容

制度

人事考課制度

新入社員指導員制度

資格取得支援制度

自己啓発支援制度

社会人大学院制度

青年海外協力隊参加制度

研修

(階層別研修)

新入社員研修

新人フォローアップ研修

3年目研修

新管理職研修

(技術研修)

スタートアップカレッジ

DX Open Academy

専門技術研修

技術発表会

技術士取得者研修

資格取得支援研修

(その他の研修)

幹部研修

経営リーダー育成研修

コンプライアンス研修

情報管理研修

システム研修

ITスキルアップ研修

 

 

b 社内環境整備

当社グループは、多様な人材の活用によるシナジー効果が企業を活性化し、社業の発展につながるものと考えています。性別や年齢に関係なく社員の能力を発揮できる「働きやすい労働環境」の整備を推進しています。

また、社員が自己の能力を十分に発揮できるよう、社員の健康保持・増進活動を組織で支える「健康経営」に取り組んでいます。

 

<働きやすい労働環境の整備>

当社グループは、環境コンサルタント事業、建設コンサルタント事業、情報システム事業、海外事業、不動産事業の5事業で構成され、不動産事業を除く12部門に多様な専門分野の社員を配置し、多様な働き方をしています。

これらの多様な専門分野の人材の定着・活躍に向けた働き方改革の施策として、業務実施体制の見直し、DXの推進等による労働生産性の向上、時差出勤や時間単位有給休暇制度の運用、在宅勤務やサテライトオフィスの活用、育児・介護・傷病等に関する休暇制度の新設・見直し、独自の育児休業制度等、柔軟な働き方がしやすい環境の整備を進めています。

また、経営トップが全国の研究所・支社・支店において、若手から中堅の社員と会社の方針や現在の状況・課題等について共有し、意見交換を行う「職場懇談会」を年1回実施し、その結果を組織の成長や社員の成長、職場環境の向上等に活用しています。

なお、これらの取り組みにより当社では以下の認定を受けています。

・子育て支援に関する「くるみん」認定(厚生労働省)

・女性活躍推進に関する「えるぼし」認定(厚生労働省)

 

 

<健康経営>

当社では、「いであ健康経営宣言」を制定し、社員一人ひとりが健康で、安心して長く働ける職場づくりを通して、生産性の向上を図るため健康経営に取り組んでいます。

健康経営責任者のもと、健康経営事務局を主体として産業医を含む各事業所の安全衛生委員会と社内連携を図り、また、健康保険組合とも連携を取りながら健康経営活動を実施しています。

定期健康診断受診の徹底やストレスチェック実施に基づく社員の健康管理を中心に、受診後のフォローとして再検査や特定保健指導の受診促進、ストレスチェック集団分析結果の活用等の施策を展開しています。また、これらの施策に加え、社員の健康管理・増進のための様々な取り組みを実施しています。

健康経営に関するその他の取り組みや実績については、当社のウェブサイトをご参照ください。

(https://www.ideacon.co.jp/sustainability/esg/social/employees/kenkokeiei/)

なお、これらの取り組みにより2020年から継続して健康経営優良法人認定を受けています。

 

③ リスク管理

上記「(3)リスク管理」において記載のとおり、対応を行っています。

 

④ 指標及び目標

上記「②戦略」の記載について、人的資本に係る当社の指標及び目標は次のとおりです。

指標

実績

2024年目標

業務受注に有効な

資格取得者数(注1)

        981名    (2023年6月)

前年を上回る

女性管理職比率

        7.8%    (2023年3月)

女性活躍推進法に基づく

産業毎の平均値以上を維持

育児休業取得率

女性:100.0%

男性: 81.8%

(2023年)

前年を上回る

若手社員の3年以内離職率

        8.9%    (2021年入社)

前年を下回る

ストレスチェック受検率

       87.0%    (2023年6月)

前年を上回る

 

(注)1 技術士、博士、RCCM、港湾海洋調査士、土木施工管理技士(1級・2級)、環境計量士、気象予報士、環境アセスメント士、生物分類技能検定(1級・2級)の取得者数(延べ)

   2 実績値はそれぞれの指標の最新の集計値

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの事業の状況、経理状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主なリスクには、以下のようなものがあります。あわせて、必ずしもそのようなリスクと考えていない事項につきましても、投資家の判断にとって重要であると当社が考える事項につきましては、積極的な情報開示の観点から記載しております。

当社グループはこれらリスクの発生の可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容もあわせて慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。また、以下の記載は当社株式への投資に関する全てのリスクを網羅するものではないことにご留意ください。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

①  官公庁及び公益法人への高い受注依存

当社グループは主として社会基盤整備の形成と環境保全の総合コンサルタントとして、環境コンサルタント事業、建設コンサルタント事業、情報システム事業、海外事業、不動産事業を営んでおります。

売上高を顧客で分類した場合、官公庁及び公益法人からの受注によるものが8割以上を占めることから、公共事業関係費全体や当社グループ関連技術分野に係る予算の増減もしくは予算執行の制約により、受注額、ひいては売上額が増減し、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

②  主要拠点の災害による事業活動への影響

当社グループの主要拠点(札幌、仙台、福島、高崎、東京、横浜、新潟、静岡、名古屋、大阪、広島、高知、福岡、那覇)の中には、大規模地震到来の危険性が指摘されている地域が含まれております。当社グループはこのような自然災害に備えて防災管理体制を強化しておりますが、災害の規模によっては、主要設備、試料、データの損傷等により、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③  成果品に関する瑕疵(契約不適合)

当社グループでは、品質保証システムISO9001を導入するとともに定期的かつ厳格な照査等を実施することにより、常に品質の確保と向上に努めております。また、万が一瑕疵(契約不適合)が発生した場合に備えて、建設コンサルタント損害賠償責任保険に加入しております。しかしながら、当社グループの成果品に瑕疵(契約不適合)が発生し、多額の賠償請求を受けた場合や指名停止等となった場合には、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④  法的規制

当社グループは事業活動を行う上で、独占禁止法、下請法、個人情報保護法等の様々な法規制の適用を受けております。これらの法規制の遵守を徹底するため、すべての役員及び従業員が、企業行動規範の基本原則である「法令の遵守」の精神を理解し、公正で透明な企業風土の構築に努めております。また、取締役を委員長とするコンプライアンス委員会を常設して、社内規程・マニュアルや運用体制を整備し、当社グループ全体での厳格な運用に努めております。しかしながら、万が一これらの法規制を遵守できなかった場合には、社会的な信用や評価等が低下することにより、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、主務官庁から建設コンサルタント登録や計量証明事業所登録をはじめとして、様々な許認可を受けて事業を行っていることから、許認可の根拠となる各法令等を遵守し、許認可等の更新に支障が出ないよう、役職員の教育等に努めております。しかしながら、役員が罰金以上の刑に処されることその他何らかの理由により許認可が取消されるもしくは更新ができない状態が発生した場合または関連法規が改廃されるもしくは新たな法的規制が設けられる場合には、当社グループの事業展開に制約が生じ、経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。なお、現時点において、当社グループは以下の登録取消事由に抵触しておりません。

登録の種類

有効期限

取消事由

建設コンサルタント登録

2024年9月30日

建設コンサルタント登録規程第13条

計量証明事業所登録

計量法第113条

 

 

⑤  情報セキュリティ

当社グループは公共性の高い事業活動を行っているため、個人情報等様々な機密情報を取り扱っております。当社グループでは「情報管理規程」を制定するとともに「情報管理委員会」を設置し、全社的な情報管理体制を構築しておりますが、情報漏洩等の事故が生じた場合には、当社グループの社会的な信用や評価等が低下することにより、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 専門性の高い人材の確保

当社グループは技術部門において専門性の高い優秀な人材を採用し、養成することにより、競争優位性を確保することができると考えております。しかしながら、専門性の高い優秀な人材は限られていることから、人材の採用及び確保の競争は激化しております。当社グループの技術力や生産性の維持・向上には、このような人材の採用・養成・維持が不可欠であり、この状況によっては、技術力や生産性の低下により、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループから、専門性の高い優秀な人材が競合他社に移籍した場合には、加えてその者が有する当社グループの知識やノウハウの流出により、当社の競争力が相対的に低くなるおそれがあり、当社グループの事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 感染症のパンデミックによる事業活動への影響

感染症等のパンデミックが想定を超える規模で発生し、国や地方公共団体の予算編成・執行において公共事業費の配分変更または規模縮小がなされる場合や、感染症拡大により行政機関から事業活動の一時停止等の要請がなされる場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(業績等の概要)

(1) 業績

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響による行動制限が緩和され、社会経済活動の正常化が進みました。一方で、ロシアのウクライナ侵攻の影響等による資源価格や物価の上昇、金融資本市場の変動等により、景気の先行きは不透明な状況で推移いたしました。

当社グループを取り巻く市場環境は、令和4年度の政府補正予算と令和5年度の政府予算において、新技術の活用による効率的なインフラ老朽化対策、ハード・ソフト一体となった流域治水対策、防災・減災、国土強靭化が推進されるとともに、地域・社会インフラ・くらしの脱炭素トランジションの推進、生物多様性国家戦略に基づく30by30目標等の実現、健康被害対策と生活環境保全、外来生物対策や鳥獣保護管理の強化等の当社グループが強みを活かせる分野に重点配分されており、比較的堅調に推移いたしました。

このような状況の中、当社グループは、安全・安心で持続可能な社会の実現、コンサルタントとしての技術力の総合化・多様化・高度化、さらにはサステナビリティ経営の実現や企業価値の向上を目標に事業を推進してまいりました。

また、当社グループは、2022年から3か年の第5次中期経営計画を策定し、「イノベーションの加速と総合力の結集による事業領域の拡大と経営基盤の強化」をスローガンに掲げ、①新規事業創出・新市場開拓の加速と技術開発の推進、②基幹事業分野の強化、③海外事業の拡大と海外展開の推進、④民間・個人市場への展開、ものづくりの推進、⑤DXの推進、IoT・ロボット・AI等の先端技術の利活用、⑥次世代を担う多様な人材の確保・育成、⑦魅力と活力のある働きやすい企業づくり、⑧組織の一体化・効率化とガバナンスの強化、の8つの重要な経営課題に取り組むことにより、強い経営基盤の構築と安定的な成長を目指しております。

さらに、本中期経営計画では、これまでの社会基盤整備と環境保全のコンサルタント事業の強化・拡大に加え、コーポレートスローガン「人と地球の未来のために」における「人=人の安全・安心、健康生活の支援」と「地球=地球環境の保全等」に対し、より直接的にコミットすることで事業領域の拡大に取り組んでおります。

当連結会計年度における連結業績は、受注高は前年に比べ大規模な海洋環境調査やインフラ施設の設計・維持管理関連業務の減少、大型の海外関連業務の発注時期の遅れにより、前年同期比3億3百万円減少の227億1千5百万円(前年同期比1.3%減)となりました。また、売上高はインフラ施設の設計・維持管理関連業務等の売上が減少したことにより、同3億3千6百万円減少の226億9千8百万円(同1.5%減)となりました。

営業利益は売上高の減少、今後の成長に向けた研究開発やDX推進に関する投資により、前年同期比3億6千3百万円減少の27億9千1百万円(前年同期比11.5%減)となりました。また、経常利益は同2億8千7百万円減少の29億9千1百万円(同8.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は同1億5千9百万円減少の19億8千9百万円(同7.4%減)となりました。なお、目標である営業利益率10%以上、当期純利益率5%以上は達成いたしました。

 

セグメントの業績は、次のとおりであります。(セグメント間取引を含んでおります。)

なお、当連結会計年度より、従来「建設コンサルタント事業」に含めておりました「海外事業」について将来の量的重要性及び質的重要性を考慮し、報告セグメントとして記載する方法に変更しております。このため、前連結会計年度との比較については、セグメント変更後の数値に組み替えて比較を行っております。

 

(環境コンサルタント事業)

同事業では、国・地方自治体等において厳しい受注競争が続いているものの、大規模な海洋環境調査や再生可能エネルギー関連の環境調査、東日本大震災等からの復興に関する調査や中間貯蔵施設関連業務等、当社グループの強みを活かせる業務を受注することができました。

売上高は前年同期比2億9百万円増加の142億6百万円(前年同期比1.5%増)となり、セグメント利益は同8千7百万円減少の15億8千万円(同5.2%減)となりました。

 

 

同事業の部門別業績は次のとおりであります。(外部売上高を記載しております。)

 

環境アセスメント及び環境計画部門におきましては、環境アセスメント分野では、ダム・河川・空港・道路・風力発電等の建設に関する環境アセスメント業務を実施いたしました。また、脱炭素社会や再生可能エネルギー事業の推進に関する業務、海洋開発に関する業務、海域環境保全等の業務、閉鎖性海域の健全化を評価するための新しい環境基準に関する検討業務等を実施いたしました。

環境計画分野では、自然地域・都市地域における環境保全・水辺利用計画の策定、河川・湖沼・海域・湿地・森林等の自然再生に関する調査・検討、地域循環共生圏の構築支援、良好な水循環・水環境創出活動推進事業に関する業務を実施いたしました。また、TCFD・水リスク等の民間向けのコンサルティングサービスを提供いたしました。

港湾インフラマネジメント分野では、岸壁、防波堤等の港湾施設や海岸保全施設における耐震及び津波・高潮高波対策の機能強化を目的とした基本設計・実施設計・耐震照査に関する業務を実施いたしました。

農業環境資源分野では、有明海・諫早湾等の再生に関する業務、東日本大震災関連のため池の放射性物質に関する調査業務、農業農村整備事業に係る環境調査業務、農業水利施設等の調査・計画・設計業務等を実施いたしました。

ライフケア事業分野では、「お部屋の健康診断」ビジネスを軸に、個人顧客を中心としたサービスを提供いたしました。

売上高は前年同期比3億4千2百万円減少の35億9千1百万円(前年同期比8.7%減)となりました。

 

環境生物部門におきましては、水域生物分野では、河川、湖沼等の陸水域から、干潟、藻場、サンゴ礁、沿岸・外洋域を対象に、魚類、底生動物、サンゴ、海草・藻類等の分布状況や生息環境の特性、生態系の構造に関する調査・解析業務を実施いたしました。環境アセスメントに関する業務として、ダムの調査・影響予測を実施いたしました。自然再生関連業務として河川における重要な生物種の生息ポテンシャルや保全対策を踏まえた多自然川づくり等、漁業関連業務として水産資源調査、漁業影響調査、漁業補償関連調査を実施いたしました。また、海底鉱物資源開発に係る外洋域の生物分析、環境アセスメントを実施いたしました。

陸域生物分野では、里山から山地帯、河川・海岸さらには離島を対象に、植物、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、昆虫類等の分布状況や生息環境の特性、生態系の構造に関する調査・解析業務を実施いたしました。希少生物・生態系の保全業務として、クマタカ等の希少猛禽類の調査・保全対策を実施いたしました。外来種の駆除業務として、外来水草や外来アリの調査・駆除を実施いたしました。環境アセスメントに関する業務として、陸上風力発電の調査・影響予測を実施いたしました。また、衛星画像を活用した生物生息環境の調査・解析、AIを使った画像解析やゲームエンジン等の新しい技術を取り入れることにより、成果品の品質向上と業務の効率化を図りました。

生物飼育実験分野では、希少魚類の繁殖業務、アオコ抑制実験、環境DNA技術を用いた生物調査・分析業務等を実施いたしました。

売上高は前年同期比3千3百万円増加の32億4千万円(前年同期比1.0%増)となりました。

 

数値解析部門におきましては、海域分野では、数値モデリングを用いて、閉鎖性海域に加えて、離島沿岸域における、流動や水質に関する環境アセスメントや水質・底質・生態系の物質循環や水産資源に関する予測・解析業務を実施いたしました。瀬戸内海においては、栄養塩管理計画を支援するための水質予測業務を行いました。データ解析としては、港湾の検潮所等における海象観測データの整理・解析業務を実施いたしました。また、沿岸漁業におけるスマート化推進のための漁場データ解析業務や、海況予報システムの構築に関する業務を実施いたしました。

河川・湖沼分野では、指定湖沼及び各自治体が管理している主な湖沼において、湖流、水質・底質、生物に関する数値モデリングを実施し、湖沼における水質保全計画策定に資する検討業務を実施いたしました。

気象解析分野では、レーダ雨量計を用いた検討業務、気候変動に伴う河川計画見直しに関する検討として、気候予測データセットの解析業務を実施いたしました。

その他ICT分野として、立体計測データや自治体所有のデジタル情報を対象に、AI技術を用いて、3次元形態解析システムの構築や、水道水質の最適管理支援に関する解析業務を実施いたしました。

売上高は前年同期比5千7百万円減少の3億3千万円(前年同期比14.8%減)となりました。

 

調査部門におきましては、水域調査分野では、港湾・空港・土砂処分場の整備に係る海域環境調査や海域環境モニタリング施設の保守点検、水産基盤整備に係る海域環境調査、防衛施設整備に伴う海域環境アセスメント、河川等の定期水質調査やダム湖の希少魚類に係る環境調査等を実施いたしました。

海洋・水中ロボティクス分野では、AUVを用いた深海底状況の把握や海底鉱物資源開発計画に伴う賦存量調査、水中音響技術等を活用した緊急調査、さらに水中ロボティクスに係る研究開発業務も実施いたしました。

陸域調査分野では、道路に係る大気常時監視調査、洋上風力発電事業に関連した事前風況観測の調査等を実施いたしました。

廃棄物・土壌調査分野では、国や自治体、民間の事業計画に伴う土壌汚染、廃棄物の調査や対策、環境リスクコンサルタントを実施いたしました。

航空調査分野では、自社保有航空機を用いた大型海生生物の生態調査、洋上鳥類調査を実施いたしました。

震災復興関連では、中間貯蔵施設に係る水底質監視調査や帰宅困難区域内の復興拠点区域における同意取得支援等を実施いたしました。このほか、港湾区域におけるインフラ施設の老朽化対応点検調査等を実施いたしました。

売上高は前年同期比5億7千1百万円増加の37億5千2百万円(前年同期比18.0%増)となりました。

 

環境化学部門におきましては、環境化学分野では、水質・底質・土壌等の環境媒体、大気中有害金属、ダイオキシン類・残留性有機汚染物質(POPs)等の極微量化学物質、絶縁油・塗膜中のPCBの測定分析を実施いたしました。また、震災復興関連では、ため池等の放射性物質モニタリングに関する測定分析を実施いたしました。さらに、水銀に関する水俣条約に関わる国内モニタリング、国際支援(モニタリング技術の移転・能力強化)に関する業務を実施いたしました。

食品・生命科学分野では、従来の食品の機能性評価や成分分析、遺伝子解析、タンパク質の解析(プロテオーム解析)に加えて、医薬品承認のための医師主導型治験支援業務を実施いたしました。また、海産特産物の安全性確認のための食中毒菌の検査等を実施いたしました。

環境リスク分野では、子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)等の業務において、血液・尿等の生体試料中の有機フッ素化合物、重金属類、難燃剤及び代謝物等の測定分析を実施するとともに、化学物質による人や生物への影響評価調査を実施いたしました。また、水生生物を用いた化学物質の内分泌かく乱作用のリスク評価及び試験法の開発や生態毒性試験等を実施いたしました。

売上高は前年同期比3千2百万円減少の28億1千4百万円(前年同期比1.1%減)となりました。

 

気象・沿岸部門におきましては、気象情報サービス分野では、スマートフォン向け気象情報サイトの運営を実施するとともに、気象予報や当社で独自開発した健康天気予報(バイオウェザー)の充実のための研究開発を実施いたしました。また、国のダム管理降雨予測業務、地方自治体道路管理者向けの雪氷凍結予測、プロ野球球団やゴルフ場等の民間事業者に対する気象情報配信等を実施いたしました。

沿岸分野では、沿岸域での防災や港湾等の事業に関する解析・検討業務を実施いたしました。また、自社で開発した数値解析モデル等を用いて、波浪・海岸変形の解析や航路埋没の対策検討、津波・高潮・高波の監視・観測・解析に関する業務を実施いたしました。

売上高は前年同期比3千8百万円増加の4億6千7百万円(前年同期比9.0%増)となりました。

 

(建設コンサルタント事業)

同事業では、国・地方自治体等において厳しい受注競争が続いているものの、防災・減災関連業務や、インフラ施設の設計・維持管理関連業務等、当社グループの強みを活かせる業務を受注することができました。

売上高は前年同期比5億4百万円減少の70億9千8百万円(前年同期比6.6%減)となり、セグメント利益は同1億7千9百万円減少の9億7千4百万円(同15.5%減)となりました。

 

 

同事業の部門別業績は次のとおりであります。(外部売上高を記載しております。)

 

河川部門におきましては、河川分野では、気候変動を考慮した河川整備基本方針・整備計画の見直し等の治水計画、特定都市河川指定や流域治水対策、洪水浸水想定、水害リスクマップ、AIを活用した洪水予測高度化やダム操作・有効活用、DX関連技術を活用した河川環境の保全を考慮した川づくりや河川の維持管理関連等に関する業務を実施しました。また、河川事業評価、総合土砂管理等に関する業務を実施いたしました。

海岸分野では、気候変動予測データを用いて気候変動の影響を考慮した海岸保全施設の計画外力の見直し、維持管理の容易性や施設の長寿命化に配慮した海岸保全施設の計画、津波・高潮対策、高潮浸水想定、海岸事業評価等に関する業務を実施いたしました。また、河川の津波遡上対策に関する業務を実施いたしました。

売上高は前年同期比4千4百万円増加の18億2千5百万円(前年同期比2.5%増)となりました。

 

水工部門におきましては、河川・海岸の堤防・護岸、水門、堰、樋門・樋管、排水機場、遊水地、放水路等の河川構造物の計画・設計、河川施設の長寿命化計画や維持管理計画、耐震対策等に関する業務、砂防堰堤設計や砂防基礎調査等の土砂災害対策に関する業務を実施いたしました。また、令和元年10月東日本台風災害、令和2年7月豪雨災害や令和4年7月豪雨災害の災害復旧、緊急治水プロジェクトに関する設計業務等を実施いたしました。

売上高は前年同期比1億8千3百万円減少の16億6千4百万円(前年同期比9.9%減)となりました。

 

道路部門におきましては、自動車専用道路及び一般道路の設計、標識や排水施設等の道路付属物設計、函渠・擁壁等の道路構造物の設計業務を実施いたしました。また、交通計画関連業務として、交通事故対策、事業評価や整備効果検討等の業務を実施いたしました。さらに道路空間の安全・安心や賑わいの創出に関連する無電柱化対策、道の駅、まちづくり、バリアフリー関連業務を実施いたしました。維持管理や災害に関連した業務として、照明や標識等の道路施設点検業務、令和4年7月豪雨で被災した道路施設の復旧や事業計画に関する業務を実施いたしました。その他各種構造物の地震応答解析や、東日本大震災関連のため池対策、建設マネジメント業務等を実施いたしました。

売上高は前年同期比2千3百万円減少の14億3百万円(前年同期比1.6%減)となりました。

 

橋梁部門におきましては、鋼橋・コンクリート橋等の設計、維持管理・長寿命化計画、モニタリング、点検・診断・評価、補修・補強、耐震対策、大規模修繕工事・リニューアル工事関連の設計業務等を実施いたしました。国際園芸博覧会関連、かわまちづくり関連、高速自動車国道の4車線化関連、インフラDX推進活用関連等の設計業務及び市町村の橋梁長寿命化修繕計画、既設橋のモニタリング等の業務を実施いたしました。

また、令和4年7月豪雨及び令和5年7月豪雨で被災した橋梁の復旧に関する設計業務、東日本大震災の復興関連事業において除染関連工事に係る工事監督支援業務を実施いたしました。

売上高は前年同期比3億4千9百万円減少の21億9千9百万円(前年同期比13.7%減)となりました。

 

 

(情報システム事業)

システム構築分野では、河川の洪水予測システムや画像解析による土石流検知システム、AIによるダム管理システム、堤防変状検知システム、水中の藻類同定・計数システム等の構築や次世代スマート沿岸漁業におけるシステムサービスを実施いたしました。

システム開発分野では、これまでに開発したカメラ映像やAIによる河川水位・流量計測システムや土石流検知システムの機能改善、これらシステムのクラウド化、さらにメタバースを利用した防災システムの開発等を実施いたしました。

システム運用支援分野では、地球観測衛星の運用支援業務、通信会社のスマートフォンサービスの技術検証支援業務を実施いたしました。

このほか除染関連のデータの整理・解析や各種支援業務を実施いたしました。

売上高は前年同期比3千8百万円増加の6億9百万円(前年同期比6.6%増)となり、セグメント利益は同0百万円減少の6千4百万円(同0.9%減)となりました。

 

(海外事業)

インフラマネジメント分野では、開発途上国の水資源・洪水管理、港湾にかかるインフラ整備、防災能力強化等に関する業務を実施いたしました。

環境保全・創出分野では、開発途上国の廃棄物管理(海洋ごみ、水銀管理)、海洋・沿岸環境保全、気候変動対策、水環境管理、環境社会配慮に関する業務を実施いたしました。

売上高は前年同期比6千6百万円減少の6億4千3百万円(前年同期比9.3%減)となり、売上高の減少と原価率の上昇により、セグメント利益は同9千8百万円減少の2千9百万円(同77.0%減)となりました。

 

(不動産事業)

同事業においては、赤坂のオフィスビル、旧大阪支社跡地等の不動産賃貸を行いました。

売上高は前年同期比0百万円減少の2億4千7百万円(前年同期比0.3%減)となり、セグメント利益は同1百万円増加の1億4千2百万円(同1.3%増)となりました。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ16億5千1百万円減少の22億9千3百万円(前年同期比41.9%減)となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、使用した資金は1億6千万円(前年同期は42億1千9百万円の獲得)となりました。これは主として、税金等調整前当期純利益29億9千1百万円、非資金支出費用である減価償却費7億3千5百万円、売上債権及び契約資産の増加額7億6千1百万円、法人税等の支払額28億9千4百万円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果、使用した資金は16億6千4百万円(前年同期は23億1千万円の使用)となりました。これは主として、有形固定資産の取得による支出16億7千6百万円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動の結果、獲得した資金は1億6千9百万円(前年同期は5億3千5百万円の獲得)となりました。これは主として、短期借入金の純増額7億円、長期借入金の返済による支出2億円、配当金の支払額3億2千万円によるものであります。

 

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1) 受注状況

当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高
(千円)

前年同期比(%)

受注残高
(千円)

前年同期比(%)

環境コンサルタント事業

 

 

 

 

環境アセスメント及び環境計画部門

3,311,575

△25.7

3,255,459

△7.9

環境生物部門

3,369,163

15.1

1,310,832

10.9

数値解析部門

387,136

24.0

212,382

37.6

調査部門

3,971,319

2.3

2,093,493

11.7

環境化学部門

2,970,180

12.4

1,228,308

14.5

気象・沿岸部門

298,716

△5.3

134,509

△17.9

建設コンサルタント事業

 

 

 

 

河川部門

1,981,961

18.7

830,082

23.3

水工部門

1,542,043

△12.5

659,196

△15.6

道路部門

1,324,098

△0.9

706,155

△10.1

橋梁部門

2,296,982

△0.4

1,329,786

7.9

情報システム事業

636,822

6.9

233,227

13.2

海外事業

625,911

△14.4

674,412

1.9

合計

22,715,911

△1.3

12,667,848

2.8

 

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 金額は受注契約金額で表示しております。

 

 

(2) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

環境コンサルタント事業

 

 

環境アセスメント及び環境計画部門

3,591,417

△8.7

環境生物部門

3,240,295

1.0

数値解析部門

330,354

△14.8

調査部門

3,752,016

18.0

環境化学部門

2,814,723

△1.1

気象・沿岸部門

467,908

9.0

建設コンサルタント事業

 

 

河川部門

1,825,310

2.5

水工部門

1,664,162

△9.9

道路部門

1,403,357

△1.6

橋梁部門

2,199,551

△13.7

情報システム事業

609,596

6.6

海外事業

613,234

△10.8

不動産事業

186,917

△0.4

合計

22,698,846

△1.5

 

(注)1 セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

国土交通省

7,977,768

36.2

6,793,093

29.9

防衛省

2,802,816

12.7

3,331,157

14.7

環境省

1,406,944

6.4

1,519,759

6.7

 

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表作成にあたっては、資産・負債、収益・費用の計上について必要に応じて会計上の見積りを行っております。この会計上の見積りは、過去の実績や現在の状況に応じて合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性を有しているために実際の結果とは異なる可能性があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5  経理の状況 1. 連結財務諸表等(1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

新型コロナウイルス感染症拡大に伴う影響については、現時点では軽微であると考え、当期の会計上の見積りには織り込んでおりません。

 

(2) 経営成績の分析

 (売上高)

売上高については、インフラ施設の設計・維持管理関連業務等の売上が減少したことにより、前年同期比3億3千6百万円減少の226億9千8百万円(同1.5%減)となりました。

環境コンサルタント事業では、大規模な海洋環境調査や再生可能エネルギー関連の環境調査、東日本大震災等からの復興に関する調査や中間貯蔵施設関連業務等、当社グループの強みを活かせる業務を受注することができたこと等により同2億9百万円増加の142億6百万円(同1.5%増)となり、建設コンサルタント事業では、インフラ施設の設計・維持管理関連業務等の売上が減少したことにより、同5億4百万円減少の70億9千8百万円(同6.6%減)となりました。また情報システム事業では、同3千8百万円増加の6億9百万円(同6.6%増)、海外事業では、同6千6百万円減少の6億4千3百万円(同9.3%減)、不動産事業では、同0百万円減少の2億4千7百万円(同0.3%減)となりました。

 (営業利益)

営業利益については、売上高の減少、今後の成長に向けた研究開発やDX推進に関する投資により、前年同期比3億6千3百万円減少の27億9千1百万円(前年同期比11.5%減)となりました。

環境コンサルタント事業では、同8千7百万円減少の15億8千万円(同5.2%減)のセグメント利益を計上いたしました。建設コンサルタント事業では、売上高の減少により同1億7千9百万円減少の9億7千4百万円(同15.5%減)のセグメント利益を計上いたしました。情報システム事業では同0百万円減少の6千4百万円(同0.9%減)、海外事業では売上高の減少と原価率の上昇により同9千8百万円減少の2千9百万円(同77.0%減)、不動産事業では同1百万円増加の1億4千2百万円(同1.3%増)のセグメント利益を計上いたしました。

 (経常利益)

経常利益については、前年同期比2億8千7百万円減少の29億9千1百万円(同8.8%減)を計上いたしました。

 (親会社株主に帰属する当期純利益)

親会社株主に帰属する当期純利益については、前年同期比1億5千9百万円減少の19億8千9百万円(同7.4%減)となり、売上高当期純利益率は8.8%となりました。

 

当社グループの収益確保の方針は、売上高の伸長や高付加価値業務の受注及び経営の効率化による諸経費の削減を行うことであり、組織の効率化、社内ネットワークを活用した情報の有効活用、資金及び施設の有効活用を実施してまいります。

 

 

(3) 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

(4) 財政状態の分析

資産

資産合計は、前連結会計年度末と比べ5億4千8百万円増加の345億4百万円(前年同期比1.6%増)となりました。

流動資産につきましては、主に現金及び預金の減少16億5千2百万円、受取手形、営業未収入金及び契約資産が7億6千1百万円増加したことにより、前連結会計年度末と比べ7億5千1百万円減少の148億4千4百万円となりました。また、流動比率は320.9%(前年同期は271.6%)となりました。

固定資産につきましては、主に建物の増加18億2千1百万円、建設仮勘定の減少6億7百万円、投資有価証券の増加3億5百万円により、前連結会計年度末と比べ12億9千9百万円増加の196億5千9百万円となりました。また、固定比率は74.1%(前年同期は74.4%)となりました。

(負債)

負債合計は、前連結会計年度末と比べ13億1千4百万円減少の79億6千5百万円(前年同期比14.2%減)となりました。

流動負債につきましては、主に短期借入金の増加7億円、未払法人税等が18億1千9百万円減少したことにより、前連結会計年度末と比べ11億1千6百万円減少の46億2千5百万円となりました。

固定負債につきましては、主に長期借入金の減少2億円により、前連結会計年度末と比べ1億9千8百万円減少の33億4千万円となりました。

(純資産)

純資産合計は、主に利益剰余金の増加16億6千8百万円により、前連結会計年度末に比べ18億6千3百万円増加の265億3千8百万円(前年同期比7.6%増)となりました。また、ROEは7.8%(前年同期は9.5%)となりました。

 

 

(5) 経営戦略の現状と見通し

当社グループに関わる市場環境においては、特に重点的に取り組むべき課題として、以下の事項が挙げられております。

「大規模災害からの復旧・復興」「自然災害に備えた防災・減災」「インフラの老朽化対策」「経済成長、地域創生、生産性向上のためのインフラ整備」といった国土強靱化や社会基盤整備に関する課題

「地球温暖化による気候変動への適応」「再生可能エネルギーの活用などの適切なエネルギーバランスの実現」「地域の資源を有効に活用した循環共生型社会の形成」などの脱炭素社会・循環型社会・自然共生社会の実現に向けた課題

「大気・水環境等の環境質の保全」「希少種保全や生物多様性の確保」「持続可能な海洋資源の利活用」などの生活環境・自然環境の保全に向けた課題

「化学物質による環境・健康リスクの低減」「感染症リスクへの対応」など人の健康リスクに関する課題

など、このような社会的課題の解決は、国際社会における持続可能な開発目標であるSDGsへの貢献や当社のサステナブルな事業の展開にもつながっていくと考えられます。

当社グループは、これらの課題を解決し、「安全・安心で快適な社会の持続的発展と健全で恵み豊かな環境の保全と継承を支えることを通じて社会に貢献する」という経営ビジョンを達成するため、長期的な経営戦略を次のように設定しております。

<事業戦略>

・一歩先を見据えた積極的な技術開発と新規事業分野・新市場への展開

技術の総合化・多様化・差別化によるコア・コンピタンスの創出

価格競争力の向上と営業力強化

・官公需の受注シェア向上と民間分野への積極的な営業展開

<人材・組織戦略>

優秀な人材の確保・育成のための基盤整備

社会ニーズや社会構造にマッチした組織・事業構造、事業領域への転換

関連企業の育成とパートナーシップの強化

<財務戦略>

財務健全性の確保と資本効率性の向上

・内部統制の強化

上記の経営戦略のもと、当社グループは、2022年から2024年までの第5次中期経営計画において、「イノベーションの加速と総合力の結集による事業領域の拡大と経営基盤の強化」をスローガンに掲げ、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の重要な経営課題に取り組むことにより、強い経営基盤の構築と安定的な成長を目指す所存であります。

 

 

(6) 資本の源泉及び資金流動性についての分析

 ① キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ16億5千1百万円減少(前年同期は24億4千8百万円の増加)し、22億9千3百万円前連結会計年度末は39億4千5百万円)となりました。

詳細につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(2)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

(キャッシュ・フロー指標の推移)

 

2021年12月

2022年12月

2023年12月

自己資本比率(%)

74.1

72.7

76.9

時価ベースの自己資本比率(%)

48.7

35.9

36.1

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(%)

6.1

21.3

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

615.5

719.2

 

(注)1.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

2.各指標は、下記の基準で算出しております。
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・ガバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

3.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式数を控除)により算出しております。

4.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。

5.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている負債を対象としております。

6.利払いは、連結損益計算書に計上されている支払利息を使用しております。

7.2023年12月期のキャッシュ・フロー対有利子負債比率とインタレスト・カバレッジ・レシオにつきましては、営業キャッシュ・フローがマイナスのため記載しておりません。

 ② 資金需要

当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金需要として外注費、労務費のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。

 ③ 財務政策

当社グループの資金調達としては、運転資金に関しては、手許流動性資金を勘案の上、不足が生じる場合には短期借入金による調達で賄っております。設備資金に関しては、手許資金(利益等の内部留保金)、長期借入金及び社債による調達を基本としております。

ただし、設備資金の不足が生じる期間が短期間である場合には、短期借入金による調達で賄っております。

長期資金の調達に際しては、金利動向並びに発行費用等の調達コストも含めて総合的に検討し、銀行借入と比較して有利な条件になる場合に限り、社債発行を行うこととしております。

資金の流動性については、経理部が適時に資金繰り計画を作成・更新するとともに、手許流動性の維持等により、流動性リスクを管理しております。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループにおける研究開発活動は、当社のみで行っております。当連結会計年度における研究開発費用は165百万円であります。

 

(環境コンサルタント事業)

同事業における主な研究開発は以下のとおりです。

環境アセスメント及び環境計画部門においては、衛星画像解析による判読技術などを、環境生物部門においては、生物多様性に関する戦略的技術や環境DNA分析による多分類群一斉検出手法の開発などを行いました。

数値解析部門においては、非構造格子海洋流動モデルを活用した流動・水質・底質・低次生態系モデルやAIを使った水質管理システムの開発などを、調査部門においては、ホバリング型AUV(自律型無人探査機)「YOUZAN」の制御機能高度化やAIドローンによる次世代調査技術の開発などを、環境化学部門においては、環境保健分野への事業展開のためのガスクロマトグラフ質量分析の高感度化装置開発や分岐鎖体を含む有機フッ素化合物(PFAS)の分析法開発などを行いました。気象・沿岸部門においては、AIを用いた過去の気象予測類似事例の自動抽出技術や3次元流体モデルによる波浪・地形変化解析技術の開発などを行いました。

同事業における研究開発費用は134百万円となりました。

 

(建設コンサルタント事業)

同事業における主な研究開発は以下のとおりです。

河川・水工部門においては、粘性土特性を踏まえた総合土砂管理手法や河川管理におけるDX推進に向けた見える化・評価手法の開発などを行いました。

道路・橋梁部門においては、ドローンやロボットを活用した災害・防災点検手法の開発や画像解析による橋梁点検の効率化などを行いました。

同事業における研究開発費用は24百万円となりました。

 

(情報システム事業)

同事業においては、AIによる画像処理技術を活用したクラウドサービスやインフラDXに関わるメタバースの開発などを行いました。

同事業における研究開発費用は6百万円となりました。