第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社は、2022年12月に制定した「きれいな空気で、未来を支える。」とのパーパスのもと、当社のクリーンエアーシステム技術は自らの研究・実験に基づくことを主とし、創業以来蓄積された技術力により顧客ニーズに合致した製品を連続的に創造する専業メーカーとして、収益性を維持しつつ企業規模の拡大を図ります。従業員の創造性を第一とし自主性を重んじております。また、ESG・SDGs関連施策に取組み環境側面・社会側面の双方から持続可能な社会と当社の持続的成長の実現を目指し、情報開示を充実させ企業価値を継続的に向上させてまいります。

 

(2)経営戦略等

 当社は、クリーンエアーシステムの専業メーカーとして、半導体・電子工業分野及びバイオロジカル分野の双方に多数の製品及び設計・施工技術を有しております。現在、微粒子・菌・ウイルス等を必要とされるレベルまで除去又は制御する設備機器は、分野を問わず幅広く導入されており今後益々その需要と必要分野は拡大しております。

 そのような状況において当社では2024年度から2028年度における中期経営方針を以下のように定めております。

 

 方針1は、標準・準標準品の売上比率の向上であります。2028年までの目標を60%から80%に引き上げました。従来は45%前後でありましたが、2023年度は55%となりました。本方針に沿って製品開発・改良を進め、販売に注力しております。

 方針2は、差別化であります。単なる価格競争に陥らないよう競合他社との差別化をハード面、ソフト面共に創造性を追求することにより脱価格競争に取組み、ブランド価値の向上も図ります。

 方針3は、グローバル化であります。東南アジアの各グループ会社との連携強化を図り、その後欧米への展開を目標としております。

 方針4は、新市場進出への積極的な取組みであります。クリーンエアーシステム(空気清浄化)を必要とする市場が電子分野・バイオロジカル分野共に年々拡大中ですので、B to Bを原則とし各方面の代理店と関係を深め、拡販してまいります。

 方針5は、株主還元及び配当に関する基本方針の変更であります。従来は配当性向30%を基本としておりましたが、株主還元を重要課題と捉え、PBRの向上を視野に本計画期間中の総還元性向を65%以上といたしました。

 方針6は、サステナビリティ経営への取組みであります。「きれいな空気で、未来を支える。」とのパーパスのもと、各種産業及び技術開発に必要なクリーンエアーシステム技術やノウハウを生かした事業活動によって、環境、従業員、取引先、社会、株主・投資家に関する社会課題の解決に貢献し、持続可能な社会と当社の持続的成長の実現を目指すものです。人的資本向上に注力し、人材育成と環境整備を実施すると共に、SDGs の各目標への具体的な貢献及び温室効果ガス削減に取組んでおります。

 

0102010_001.png

 

(3)経営環境

 当事業年度における我が国の経済は、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への変更を契機として、社会経済活動の正常化がより一層進んだことから、内需が回復基調となり設備投資の増加等の動きがみられ、緩やかに回復しました。世界経済におきましては、インフレの抑制に向けた各国の金融引き締め政策の継続やウクライナ情勢の長期化、中東情勢緊迫化等の地政学的リスクにより不安定な情勢が継続しました。

 2026年に向けて半導体増産計画による半導体及び関連する材料・電子部品産業の工場新設及び製造設備への投資等の計画が継続しております。一方で、原材料価格の高止まり及び燃料費・人件費高騰等によるコスト増加により、先行きにつきましては引き続き動向を注視する必要があります。電子工業分野では、半導体関連の製造装置メーカー、電子材料関連及び電子部品メーカーのクリーンエアーシステムの設備導入計画が活発であり、受注残は高水準で維持しております。一方、バイオロジカル分野においては、感染症研究用及び再生医療分野の細胞加工用クリーンルーム、製薬分野では工場及び研究施設への設備投資が拡大しております。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社における事業環境は、電子工業分野では半導体製造能力増強を図る政府方針を受けた新規半導体工場設立及び既存設備の改造等による関連投資が、高い水準にて継続することが見込まれております。さらに、脱炭素化の流れを受け、当社の省電力(脱炭素対応)製品の競争力及び優位性の向上も見込まれます。また、バイオロジカル分野では、製薬工業分野及び感染症研究分野の設備投資及び再生医療や一般医療、食品分野等への設備投資が堅調に推移しており、今後も継続すると見込まれます。好調な市場環境を背景に、社内においては人的資本を向上させ企業基盤を強化し、2023年12月22日公表の「中期経営計画(2024年~2028年)」を達成するよう、営業利益の増加に取組んでまいります。

 そのような状況において当社のパーパスである「きれいな空気で、未来を支える。」をあらゆる場面で実現するよう、クリーンエアーシステム事業を通じ以下の課題に取組んでまいります。

 

① 研究・新製品開発においては、省エネルギー化の推進及び特徴付けと金型への投資による原価低減を推進し、「送風機の研究」「HEPAフィルターの基礎研究」「エアーシャワーの開発」「サーマルクリーンチャンバーの開発」等を継続してまいります。

② 製造部門では、2022年10月に契約し2023年1月に取得した草加工場近隣の用地(約1,750㎡)に、倉庫や事務所等を有する草加多目的センター(仮称、2024年12月竣工予定)の建設を開始しました。今後、草加工場の機能を一部移転することで、草加工場の建替え等により生産能力を更に向上させる計画です。さらに、伊勢崎工場の板金加工設備及び越谷工場への太陽光発電・蓄電池設備等への投資を計画しております。

③ サービスセンターは、全国のサービスセンター(全5カ所)の強化及び空白地域の据付・保守体制の充実を図るための新拠点開設を検討し、顧客満足度を高めてまいります。

 

(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社の、継続的な成長への戦略は、以下の3点です。① 継続成長が見込まれる半導体を主とした電子工業分野需要の取込み。② CO2削減を目指すEV等への投資及び省エネルギー化推進需要の取込み。③ 顧客ニーズを捉えた潜在的需要の開拓(フィルター交換、定期検査等)。具体的には、市場に必要とされる新製品の開発に注力するとともに、生産性の向上やサービス業務の拡大に取組んでおります。客観的な指標として、「営業利益」及び「経常利益」を重要な経営指標として位置付けており、2028年12月期の「売上高」の目標180億円に対する、「営業利益」については14億円(売上高比7.8%)以上を目標とし、「経常利益」については18億円(売上高比10.0%)以上を目標としております。さらに、2024年末までにROEの目標値を定め公表する予定です。また、当社は2023年10月20日に株式会社東京証券取引所のプライム市場よりスタンダード市場に移行しましたが、選択市場にかかわらずクリーンエアーシステム分野において、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に取組むという当社方針が変わるものではございません。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)サステナビリティ共通

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組みに関しては、以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものです。

 当社は、「きれいな空気で、未来を支える。」とのパーパスのもと、「サステナビリティ基本方針」を2022年に制定しました。この方針に従って中期経営計画における目標及び方針を設定し、戦略的なサステナビリティの推進を図ります。また、進捗のモニタリングを行い、PDCAサイクルを回していくことで、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指します。

 

「サステナビリティ基本方針」

 当社は、「きれいな空気で、未来を支える。」とのパーパスのもと、各種産業及び技術開発に必要なクリーンエアーシステム技術やノウハウを生かした事業活動によって社会課題の解決に貢献し、持続可能な社会と当社の持続的成長の実現を目指します。

 

環境

・地球温暖化防止に向けた技術開発、製品の省エネルギー化、省資源化を進めると共に、サプライチェーン全体を通じた環境負荷の低減を図ります。

従業員

・従業員の健康と安全を企業成長の基盤と考え、従業員の多様性を尊重し、労働環境の整備に努め、創造と飛躍の実現が可能な働き甲斐のある職場環境を実現します。

取引先

・顧客と協力会社(サプライヤー)などを尊重した適正な取引を通じて、当社の技術力を活用した良質な製品生産と安定的な供給を継続し、取引先との信頼関係を構築します。

社会

・個人の人権と多様性を尊重し、人権侵害の加担への回避に取組みます。

・法令、社会規範、企業倫理を遵守します。

・顧客ニーズに合致する良い製品を継続的に開発し、顧客事業に貢献すると共に得られた利益により雇用も守りつつ納税義務を果たし、永続的な会社を目指し社会へ貢献します。

株主、投資家

・対話と情報開示を通じて公正かつ透明性の高い企業経営を実践し、企業価値の継続的な向上を目指します。

(ガバナンス)

 当社では、代表取締役社長を委員長とし、外部有識者及び社内・社外取締役から構成されるサステナビリティ委員会を設置し、サステナビリティ課題への取組み方針や重要課題の策定、目標の設定や達成に向けた活動の実施、活動状況の確認及び結果等を審議し、取締役会へ報告する体制としております。サステナビリティ委員会を含むコーポレート・ガバナンス体制の概要については、「第4 提出会社の状況」の「4.コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」を参照ください。

(リスク管理)

 当社のリスク管理体制は、「リスク管理規程」を基本とし、取締役・従業員の行動指針として「企業行動基準」及び「コンプライアンス基準」を設け、さらに「内部通報制度」を制定し、企業のリスク発生時に的確かつ迅速に対処することを可能にし、違法行為や不法行為等発生の未然防止を図っており、各拠点、事業部門単位で事業リスクの把握と管理を実施し、これを取締役会が監督する体制としております。

(戦略)

 当社では、サステナビリティに関する全社的に重要な事項(課題)を、経営における重要な課題の一つと位置付けております。サステナビリティ経営への取組みは当社の成長と同期させることが重要であると考えており、中期経営計画の中でも、特に重点的に取組む領域として、「気候変動対策」及び「人的資本の強化」を設定しております。

 

(2)気候変動対策

(ガバナンス)

 サステナビリティ委員会では、気候変動を含む、サステナビリティに関する基本方針や重要課題の策定、目標の設定や達成に向けた活動の実施、活動状況の確認を行い、適宜取締役会への報告等を行っております。

 また、サステナビリティ委員会は、当事業年度においてサステナビリティ委員会を計9回開催し、2023年2月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)による提言(TCFD提言)への賛同を表明し、TCFD提言に準拠した気候関連財務情報開示を行っております。

(戦略)

 当社ではサステナビリティに関する全社的に重要な経営課題の中から、特に重点的に取組む領域として「気候変動対策」を設定し、重要な「リスク」と「機会」を特定しました。

 

・当社における気候関連のリスクと機会

(リスク)

項目

要因

事業活動、戦略、財務への潜在的影響

期間

重要度

移行リスク

政策

炭素税等、GHG排出抑制のための

価格制度導入

調達価格が上昇し、また、顧客からは当社が脱炭素にさらに積極的に取組むことを要求される

短期

 

GHG排出量測定及び削減の規制導入

あるいは顧客等からの要求の拡大

Scope3も含めたGHG排出量報告の対応コスト、及び削減のための設備投資費用がかさむ

長期

その他、政府方針等に起因した原材料の価格上昇や供給逼迫

調達価格上昇及び安定供給が困難となるため、原価上昇及び納品遅れの原因となる

中期

 

技術

脱炭素社会実現に向けた技術開発競争の激化

他社の破壊的イノベーション技術により、当社製品へのニーズが激減する

中期

市場

顧客の求める低炭素・省エネ性能基準の拡大

既製品の改良コスト、新製品の開発費が増加する

また、製品ごとの炭素排出量算定コストがかさむ

短期

脱炭素社会実現に向けた市場の変化の中で、顧客が求める取引条件やニーズ(取引形態、保証等)の変化

変化に追従できず、商機を喪失するだけでなく、新規参入者に市場を奪われる

中期

 

脱炭素社会への移行に必要な原材料や部品等の需給逼迫

低炭素、省エネ製品製造のための部品等の安定調達が困難となり、また、原価が上昇する

短期

 

評判

顧客/最終ユーザーの取引先選定基準の変化

脱炭素化に向けた取組みと開示に消極的であると顧客を喪失するおそれがある

短期

 

脱炭素化に向けた取組みが投融資判断基準に含められることによる、証券市場、投資家及び銀行からの関連するエンゲージメントの強化

対応できないと資本コストが増加し、対応に要する管理コストが増加する

短期

 

会社と社員との関係の変化

脱炭素社会実現に向けた取組みが消極的であると、社員が会社の将来性に不安を持ち、離職率が増える

中期

 

物理的リスク

急性

極端な気温の上昇または低下

酷暑時には、屋外据え付け作業が停止する

空調設備が未整備の取引先の工場の操業停止のおそれがある

製品の運送中に樹脂材料が変形するおそれがある

短期

 

極端な大雨や強風等、浸水、河川の氾濫等

大雨等異常気象による、主力工場の浸水による製造停止、停電による生産停止、落雷によるサージによる当社製品の故障、及び雹による輸送中の当社製品の損傷のおそれがある

短期

慢性

平均気温の上昇など気候の変化

熱中症対策費用が増加し、また、工場や倉庫の冷房費が増加する
気温や湿度上昇等により当社が納入した設備の性能が出なくなるおそれがある

短期

 

 

 

(機会)

項目

要因

事業活動、戦略、財務への潜在的影響

期間

重要度

気候関連機会

資源

より効率的な在庫管理と輸送手段の使用

GHG削減効果とともに、製品の輸送コストが削減され、BCPの観点からの安定供給が実現できる

短期

 

製品

省エネ性能製品開発と拡販

Scope3の削減に寄与し、顧客・当社ともにGHG削減、これによる差別化によって業績向上や売上増加が実現できる

短期

感染症リスクの拡大に対応した製品開発と拡販

製品差別化による業績向上や売上増加が実現できる

短期

市場

新たな市場への参入機会

様々な産業が脱炭素化の取組みを進めることによる、当社製品のニーズ及び市場が拡大する

中期

 

レジリエンス

事業継続マネジメントへの取組と重要な部品の代替/多様化

サプライチェーン全体のマネジメント整備による、製品供給の安定化と他社との差別化が実現できる

短期

(注)「期間」については、短期:2025年/中期:2030年/長期:2050年をそれぞれ想定しております。

 

(リスク管理)

 気候変動は当社経営に重大な影響(リスクと機会)を及ぼすものであることに加え、現在のみならず将来のリスクであり、不確実性を伴い、また、外部環境の変化にも影響を受けます。従って、気候変動に係るリスクと機会はサステナビリティ委員会において適宜見直しを行うこととしております。なお、サステナビリティ委員会の委員には、気候変動対策を専門とする外部有識者と社外取締役が含まれることから、気候変動の現状及び関連する外部環境の変化に関する最新の情報と知見に基づくリスク管理が可能と考えております。

 

(指標及び目標)

 当社では、移行リスクの評価指標としてGHG排出量(t-CO)を設定し、評価を進めております。具体的には、グローバルな温室効果ガス(GHG)排出量の算定基準であるGHGプロトコルに従い、2021年分からGHG排出量(Scope1・2・3)の算定を開始しております。

 今後、GHG排出量の算定をより精緻なものとするための取組を進めるとともに、この結果に基づき、2024年にはGHG排出量削減に関する指標と目標を設定する予定です。

 

 自社における活動においては 、Scope1・2のネットゼロを目指し再生可能エネルギーの導入等を推進しており、新設工場には太陽光発電システム及び蓄電設備を導入しております。また既存の工場にも随時同様の対応をする計画でおります。また、販売する自社製品の省エネルギー化の目標値や売上高に占めるGHG排出量の目標などを策定するとともに、省エネ効果の可視化を主目的とした製造におけるカーボンフットプリント(CFP)算出に向けて着手し、年内に主力製品の算出を行う予定です。

 

2021年度実績

2022年度実績

Scope1排出量

287 t-CO

297 t-CO

Scope2排出量

736 t-CO

784 t-CO

Scope3排出量

179,277 t-CO

279,086 t-CO

合計排出量

180,300 t-CO

280,167 t-CO

(注)上記排出量の算定に当たっては、2022年より株式会社日本能率協会コンサルティングの助言を受けております。

 

(3)人的資本の強化

(戦略)

 当社では、「きれいな空気で、未来を支える。」とのパーパスのもと、各種産業及び技術開発に必要なクリーンエアーシステム技術やノウハウを生かした事業活動によって、環境、従業員、取引先、社会、株主・投資家に関する社会課題の解決に貢献し、持続可能な社会と当社の持続的成長の実現を目指しております。本パーパスの持続的な達成に向け、人材育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針を定めております。

 

人材育成に関する方針(一部抜粋)

・「きれいな空気で、未来を支える。」というパーパスのもと、社員一人ひとりの創造性に重点をおいた人材育成を目指し、能力発揮と成長の機会を提供します。

・自ら学び、考え、行動する人材の育成と、社員の一人ひとりのありたい姿を実現するため、成長の機会を提供します。

・社員の経営参画意識を高め、社員と会社が成長する『成長と還元』への取組みを推進します。

 

社内環境整備に関する方針(一部抜粋)

・多様な人材の多様な働き方と、新しい発想をもつ人材の挑戦を支援します。

・人材の健康管理や健康増進に取組み、安全かつ安心して働くことができる職場環境を整備し推進します。

 

(取組み)

 当社における当事業年度の取組みは以下のとおりです。

人材育成に関する施策

(A)人材育成及びスキルアップ

・マネジメントスキル研修導入

e-learning等を活用し、個々の経験・知識に応じた学習機会設定

・ビジネススキル研修等の外部講習会への参加

(B)従業員待遇向上

・昇給率を一般的な上場企業平均以上に設定

・決算賞与制度の導入

(C)働き方改革

・夏季休暇として年間休日を2日追加

・有給休暇計画的付与の導入による連続した休日の設定

(D)福利厚生拡充

・従業員持株会向け譲渡制限付株式インセンティブ付与(2023年までの3年間発行総額70百万円)

・福利厚生アウトソーシングサービス加入

・団体3大疾病保障保険加入

 

社内環境整備に関する施策

・事務所拡張及び移転

・フリーワークエリアの設定

・工場暑熱対策及び安全対策

 

(指標及び目標)

 当社は、サステナビリティを巡る課題への対応を行うことは持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するものであると認識しております。人的資本に関する「指標と実績」は以下のとおりですが、「目標」については現時点では設定しておりません。今後は目標を設定の上、達成に向けて取組みます。

指標

実績(当事業年度)

管理職に占める女性労働者の割合

1.4%

男性労働者の育児休業取得率

33.3%

労働者の男女の賃金差異

67.4%

 

このような取組みを重ね、持続的な成長と企業価値向上を図ってまいります。

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 当事業年度に新たに発生した事業等のリスクとして「気候変動」があります。そのため前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクに、「気候変動について」を(17)として追加いたしました。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)事業内容及び特定の業界への依存度が高いことについて

 当社は、半導体、液晶等の電子工業分野及び医薬品工業、医療機関、食品工業等のバイオロジカル分野を対象に、空気中の汚染制御に関する機器の製造、設置、販売並びにシステムのエンジニアリングを単一セグメントに属する事業として行っております。それぞれの分野に占める割合は下表に記載のとおりであります。当社の業績は電子工業分野及びバイオロジカル分野の国内外の設備投資動向に影響を受ける場合があります。

販売分野

2021年12月期

2022年12月期

2023年12月期

売上金額

構成比

売上金額

構成比

売上金額

構成比

(百万円)

(%)

(百万円)

(%)

(百万円)

(%)

電子工業分野

4,475

31.3

5,395

41.0

6,516

47.7

バイオロジカル分野

8,299

58.1

6,264

47.5

5,890

43.2

そ の 他

1,514

10.6

1,513

11.5

1,239

9.1

合   計

14,289

100.0

13,172

100.0

13,646

100.0

 (注)「その他」は最終顧客の分野が捕捉不能な物件の売上金額及び構成比を記載しております。

(2)競合について

 当社製品については、他社との競合が発生します。当社としては基幹部品の内製化、代理店との関係強化、効率的な資材調達や生産性の向上を図ること等で利益を確保する方針ですが、競合による当社製品の販売価格の下落等が当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

(3)品質管理・製造責任について

 当社は、クリーンエアーシステムに関してはクリーンルームからクリーンルーム機器及びクリーンサプライ商品に至るまで、幅広い製品を取扱っております。製造部門ではISO-9001による厳格な品質管理を実行し、顧客に納得して頂ける製品作りを継続しております。

 しかし、装置の不具合や使用部品の不良等が原因で、顧客の生産や実験に支障をきたす等、顧客に損害が発生する可能性があります。現時点までに製造物責任及び瑕疵担保責任に関する訴訟は生じておりませんが、そのような事態が発生した場合、製品への信頼性低下や損害賠償請求等により業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)災害等について

 地震等の自然災害や新興感染症の流行、事故、テロ等により、当社の生産拠点や設備等が損害を受ける可能性及び営業及び生産活動が中断する可能性があります。さらに原材料等の供給不足が生じた場合、電力・物流・人の移動をはじめとする社会機能が低下した場合等には、当社の操業が中断し売上高が減少する可能性、生産拠点等の修復又は代替のために多額な費用と時間を要する可能性があります。

 

(5)大口案件について

 電子工業や医薬品工業の生産施設等に係る大口案件については、仕様の複雑さ、頻繁な仕様変更及び強い値下げ圧力等が予想されることから、受注に際しての可否判断から受注後の採算管理に至るまで、慎重に対応しております。

 受注に際しては、過去の類似案件を調査の上、取締役が会議において、想定される仕様、受注の可否及び提出する見積り等について検討を行います。

 また、受注した大口案件については、リストアップの上、取締役会において原価、工事の進捗、売上計上時期等を適宜共有しています。しかしながら、当社の想定を超えて費用が発生し、それに見合う値上げが困難な場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

 

(6)標準品と特殊品について

 当社は創業以来、特殊品の製造に注力してまいりました。様々な顧客からの要望に応える中で、新製品を開発し、技術力を高めてきた一方で、生産効率の低さや、不良の発生のしやすさ等が問題点として認識されてきました。

 当社では、顧客要望に基づき頻繁に改良を実施することで標準品比率の向上を目指すと同時に、特殊品に関しては、技術向上等の観点から選別受注を行うことにより利益率の確保を目指していますが、当社の計画どおりに標準品の比率が高まらない場合や、特殊品の受注に際して想定どおりに選別できない場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

(7)協力会社について

 当社製品の製造においては、受注量の変動への柔軟な対応や効率的な人員体制の維持の観点から、適宜協力会社を活用しております。特に板金と塗装の工程については、大部分を協力会社に依頼していますが、当該工程の約1割を社内で製作することにより、原価・工数・技術を把握すると同時に、品質の維持・向上を図っております。また、協力会社に対しては、定期的に品質の確認を行い、情報の共有に努めています。さらには、内製化の増強や新規の協力会社の開拓に絶えず注力することにより、不測の事態による製造への影響の抑制を図っております。

 しかしながら、資材コストの急騰や労務費の上昇、また協力工場の人手不足による生産減少等の発生により外注費が増加し、これらを製品販売価格に転嫁することが困難な場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

(8)人員体制について

 当社では、小規模な組織による効率的かつ柔軟な運営を基本として、要員計画を策定・実施しています。現在のところ、特殊品への対応のため、技術部及びサービスセンター(搬入据付、保守サービス等)では、生産量に見合った人員を確保していますが、特殊品の選択受注、標準品の販売促進、新製品の開発による市場占有率の向上及び生産性の向上等により、人員増加を抑制していく方針です。

 今後、当社の要員計画の想定を超えて特殊品の受注量が変動し、人員数に過不足が生じた場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

(9)取引先の信用リスクについて

 当社の販売は、ルートセールスを基本とし、建築設備会社、装置メーカー等への直接販売する場合があります。当社では、与信管理を徹底することにより、不良債権の発生を極力減らしていますが、これらの販売先で急激な収益状況や財政状況の悪化等が発生し、売掛債権等の回収が困難となった場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

(10) 保有資産について

 保有する有価証券、不動産等について、時価の下落により減損処理が必要になった場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

(11) 退職給付制度について

 当社の退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の期待収益率に基づいて算出されておりますが、国内外の株式市場や債券市場が低迷した場合、年金資産の価値が減少し、年金に関する費用の増加や追加的な年金資産の積み増し等が必要となります。このような状況となった場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

(12) 施工中における人的災害及び工事災害について

 工事の安全衛生や品質管理には万全を期しておりますが、施工中の災害又は事故により損害賠償等が発生する可能性があります。不測の事故に備えて保険に加入しておりますが、多額の損害賠償金が発生した場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

(13) 情報セキュリティについて

 自社にて利用する社内システム等においては、個人情報、顧客情報等を取り扱いますが、コンピュータウイルスの侵入や技術的、人為的な要因により情報の漏洩、破壊等を引き起こす可能性があり、これらの事象が発生した場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

(14) コンプライアンス、内部統制について

 当社では、法令遵守の徹底を図り内部統制システムの強化に努めております。しかしながら、法令違反が発生したり、構築した内部統制システムが十分でなかった場合には、当社の社会的な信用の著しい低下、法令に基づく処罰ないし、法令遵守のための追加的な費用の発生等により、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

 

(15) 知的財産権について

 当社は、研究開発に力を入れており、知的財産権の申請取得に注力しております。しかし、申請は日本国内が主であり海外への申請は多くはありません。従って、海外において当社の知的財産を用いて類似した製品を製造することを効果的に阻止できない可能性があります。一方、当社が認識し得ない知的財産が存在し、当社が当該知的財産を無断で使用した場合には、当社が訴訟において当事者となりうる可能性があります。

 これらの状況が生じた場合には、権利を侵害されたことによる損害や逸失利益、訴訟に係る費用等を通じて、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

(16) 使用部品の調達について

 当社は、製品を構成する鋼板材・送風機・フィルター類・半導体制御基板等の電気部品及び樹脂製部品等すべての部品及び原材料を外部供給者から調達しており、採用する部品の選定や仕入先の決定は、安定供給能力や事業継続計画の有無等の総合的な評価により行っております。また、仕入先との長期的な信頼関係の構築、顧客への安定的な製品供給を実現するための戦略的な在庫の積み増し、部品選定において仕入先を複数にすることにより置換え可能とする等、部品の調達問題に起因する影響を最小限に抑える管理体制を構築しております。しかしながら、部品の市場需給の逼迫、仕入先の事業の統合や売却等による業界再編や生産撤退、又は事故や自然災害等の影響により供給が逼迫した場合、一定期間において当社における生産の停止、販売の遅延等が生じ、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(17) 気候変動について

 気候変動は、国・地域を超えてグローバルに影響を与える問題であり、政策・技術・市場及びステークホルダーからの要請・評判等の「移行リスク」及び極端な気温変化や大雨等の異常気象に伴う「物理的リスク」が想定されます。このようなリスクに対して、迅速な事業再開及び被害の最小化を図るため事業継続マネジメント(BCP)の構築に取組んでおりますが、それらのリスクの顕在化により当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社における事業環境は、2026年に向けて半導体増産計画による半導体及び関連する材料・電子部品産業の工場新設及び製造設備への投資等の計画が継続しております。一方で、原材料価格の高止まり及び燃料費・人件費高騰等によるコスト増加により、先行きにつきましては引き続き動向を注視する必要があります。電子工業分野では、半導体関連の製造装置メーカー、電子材料関連及び電子部品メーカーのクリーンエアーシステムの設備導入計画が活発であり、受注残高はコロナ禍における先行発注分の調整が進み前年より減少したものの、高水準で維持しております。一方、バイオロジカル分野においては、感染症研究用及び再生医療分野の細胞加工用クリーンルーム、製薬分野では工場及び研究施設への設備投資が拡大しております。

 営業面におきましては、2023年1月に熊本県熊本市東区に開所した「熊本出張所」は、熊本地区の営業及び物流倉庫の拠点として順調に稼働しております。さらに、2023年4月に静岡県富士市に開所した「静岡出張所」及び「静岡サービスセンター」につきましても、地元へ密着した活動を本格的に進めております。また、販売代理店向けの製品説明会をウェビナー方式にて6月21日に実施し、全国の電子及びバイオロジカル各分野の代理店へ配信し多くの方々に視聴していただきました。展示会についても積極的に取組み、「第9回 インターフェックスWeek 大阪(3月)」、「FOOMA JAPAN 2023(6月)」、「第25回 インターフェックスWeek 東京(7月)」、「第8回 オーガニックライフスタイルEXPO2023(9月)」、「SEMICON JAPAN2023(12月)」にて、低消費電力を特徴とした新製品及びスマートクリーンルーム等を拡販しました。

 当社の脱炭素社会実現への総合的な取組みにつきましては、サステナビリティ委員会にて「TCFD提言」に基づいた気候関連財務情報を2023年2月14日に開示しておりますが、今後、GHG排出量の算定をより精緻なものとするための取組みを進めており、GHG排出量削減に関する指標と目標を設定する予定です。加えて、重要なリスクと機会に示した7つの事項についても、指標と目標の検討を進め、適宜開示する予定です。

 なお、当社は2023年8月14日に開示しました「プライム市場の上場維持基準への適合状況並びにスタンダード市場への選択申請及び適合状況のお知らせ」に記載のとおり、スタンダード市場へ2023年10月20日に移行いたしました。その理由といたしましては、プライム市場の上場維持基準を充たしていないままプライム市場への上場を維持した場合に起こりうる経過措置終了後の上場廃止リスクを回避すること及び現状の体制基盤を充実させ今後より一層の企業価値拡大を図ることが、すべてのステークホルダーの皆様への還元が可能になると総合的に判断したことによるものです。また、2021年12月16日に公表した「新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書」の内容を踏襲しつつ、新たな経営方針、戦略を加味した「新中期経営計画(2024年度〜2028年度)」を、2023年12月22日に公表いたしました。今後も高いガバナンス水準の維持や積極的な情報開示に努めるとともに、持続的な成長と企業価値の向上に取組んでまいります。

 また、2023年3月30日の発行決議による従業員持株会向け譲渡制限付株式インセンティブとしての新株式の発行に伴い、6月23日に13,740株の発行を完了しております。

 収益面におきましては、原価率の高い「クリーンルーム」等の販売が増加したことに加え、当社の基盤を固め、かつ人的資本への投資を強化する目的で社外より多様な人材を採用したこと、及び社員の待遇改善に取組み、社内設備の拡充等に要する各種経費の増加もあり営業利益が減少しました。海外からの配当金等を加えた経常利益、当期純利益いずれも前期比減少となりました。

 以上の結果、当事業年度における業績は、売上高136億46百万円(前期比3.6%増)、営業利益7億7百万円(同36.0%減)、経常利益10億10百万円(同27.7%減)、当期純利益は7億31百万円(同28.0%減)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前事業年度末に比べ9億80百万円減少し、46億92百万円となりました。

 各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度の営業活動において得られた資金は、4億54百万円(前年同期比2億26百万円の収入増)となりました。主な内訳は、税引前当期純利益10億18百万円、利息及び配当金の受取額2億47百万円の計上、棚卸資産の増加2億50百万円、仕入債務の減少2億25百万円及び法人税等の支払額3億2百万円となります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度の投資活動において使用した資金は、7億74百万円(同1億40百万円の支出減)となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出5億71百万円及び投資有価証券の取得による支出2億3百万円となります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度の財務活動において使用した資金は、6億75百万円(同1億90百万円の支出減)となりました。主な内訳は、配当金の支払額6億16百万円となります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

区分

金額(千円)

前年同期比(%)

クリーンルーム

1,526,344

112.9

クリーンルーム機器

3,974,877

126.2

クリーンブース

2,240,748

89.0

クリーンベンチ

168,359

66.1

バイオロジカリー機器

2,182,946

124.2

据付・保守サービス

2,785,816

98.7

その他の製品

443,072

108.0

13,322,164

108.6

 (注)金額は販売価格で表示しております。

 

b.商品仕入実績

区分

金額(千円)

前年同期比(%)

クリーンサプライ商品

234,892

122.9

234,892

122.9

 

c.受注実績

区分

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

製品

 

 

 

 

クリーンルーム

1,141,732

65.5

497,644

56.8

クリーンルーム機器

3,611,317

101.9

1,605,389

84.4

クリーンブース

2,231,834

84.4

1,035,791

86.7

クリーンベンチ

195,624

82.0

54,111

135.4

バイオロジカリー機器

1,699,170

65.4

266,772

38.6

据付・保守サービス

2,700,202

89.5

913,507

92.2

その他の製品

452,373

82.7

327,066

98.0

小計

12,032,255

83.9

4,700,282

78.0

商品

 

 

 

 

クリーンサプライ商品

306,200

125.9

45,199

182.2

小計

306,200

125.9

45,199

182.2

合計

12,338,456

84.6

4,745,481

78.4

 (注)金額は販売価格で表示しております。

 

d.販売実績

区分

金額(千円)

前年同期比(%)

製品

 

 

クリーンルーム

1,520,993

108.7

クリーンルーム機器

3,907,664

114.2

クリーンブース

2,390,812

104.0

クリーンベンチ

181,487

66.8

バイオロジカリー機器

2,123,588

92.4

据付・保守サービス

2,777,181

97.5

その他の製品

459,104

117.7

小計

13,360,832

103.3

商品

 

 

クリーンサプライ商品

285,815

117.8

小計

285,815

117.8

合計

13,646,648

103.6

 (注)上記の金額には、輸出販売額68,747千円を含んでおります。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

 当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成に当たりましては、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積り及び判断を行っております。過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる様々な要因に基づき見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性により、これらと異なる場合があります。

 なお、財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、第5[経理の状況]1[財務諸表等](1)財務諸表[注記事項](重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

② 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 

売上高

(百万円)

営業利益

(百万円)

経常利益

(百万円)

当期純利益

(百万円)

1株当たり

当期純利益

(円)

自己資本

当期純利益率

(%)

 2023年12月期

13,646

707

1,010

731

70.85

5.2

 2022年12月期

13,172

1,105

1,396

1,017

99.08

7.4

 増減率(%)

3.6

△36.0

△27.7

△28.0

△28.5

△2.2pt

 

a.当事業年度の業績全般の概況

 当期の概況は、第2[事業の状況]4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容に記載のとおりであります。当期は前期末の受注残のうち、特に大口のクリーンルーム等が売上に繋がったことにより増収となりました。一方で、クリーンルームの粗利率が低かったこと及び原価高等によるコスト増加分の販売価格への転嫁が不充分であったことに加え、注力している人的資本への投資による経費が増加したため、営業利益が前期比36.0%減少しました。そのため、当期の業績は前期比増収減益となりました。

 

b.当事業年度の品目別の概況

区分

売  上  高(百万円)

売 上 総 利 益(百万円)

2022年12月期

2023年12月期

増 減

2022年12月期

2023年12月期

 増 減

クリーンルーム

1,399

1,520

121

132

126

△6

クリーンルーム機器

3,422

3,907

485

791

753

△37

クリーンブース

2,297

2,390

92

624

675

51

クリーンベンチ

271

181

△90

86

35

△50

バイオロジカリー機器

2,299

2,123

△175

604

523

△81

据付・保守サービス

2,848

2,777

△71

873

859

△13

その他の製品

389

459

69

88

77

△11

製品小計

12,929

13,360

430

3,202

3,051

△150

クリーンサプライ商品

242

285

43

33

40

6

合計

13,172

13,646

474

3,235

3,091

△143

 

クリーンルーム

 「クリーンルーム」は、感染症研究関連のクリーンルーム及び再生医療分野の細胞加工用クリーンルーム等が増加し、電子部品製造関連クリーンルーム及びメンテナンスも増加したことにより、全体での売上高は前期比8.7%の増加となりました。

 

クリーンルーム機器

 半導体・電子分野の設備投資の活発化に伴い半導体分野向け「フィルターユニット」及び電子分野向け「エアーシャワー」が増加しました。一方で、新型コロナ感染症対策として陰圧病室用の「パッケージ式クリーンユニット(簡易陰圧装置)」が減少し、全体での売上高は前期比14.2%の増加となりました。

 

クリーンブース

 半導体・電子分野の設備投資の活発化に伴い各種クリーンブースや製造装置等へ取付ける「SS-MAC」が増加し、FPD分野向け「サーマルクリーンチャンバー」は減少しました。全体での売上高は前期比4.0%の増加となりました。

 

クリーンベンチ

 標準的な「クリーンベンチ」の売上は前期並みでしたが、電子分野向けの大型装置が減少し、全体での売上高は前期比33.2%の減少となりました。

 

バイオロジカリー機器

 製薬分野向け「安全キャビネット」が増加しましたが、感染症対策用機器の需要が一巡し「クリーンパーティション」「陰圧ブース」等が減少し、全体での売上高は前期比7.6%の減少となりました。

 

据付・保守サービス

 搬入・据付作業を伴わない半導体分野の機器の売上及び協力業者が施工するクリーンルームの売上が増加したことにより、全体での売上高は前期比2.5%の減少となりました。

 

その他の製品

 半導体製造装置メーカー向けの特殊品及び「無塵クリーニング」が増加し、全体の売上高は前期比17.7%の増加となりました。

 

クリーンサプライ商品

 クリーンルーム内で使用される「棚及び作業台」「滅菌済み消耗品」等の売上が増加し、全体の売上高は前期比17.8%の増加となりました。

 

③ 目標とする経営指標の達成状況等

 当事業年度の営業利益は、2023年2月14日発表の業績予想値の9億50百万円に対し、7億7百万円(予想値増減比25.6%減)となりました。主な要因は、クリーンルームの粗利率が低かったこと及び注力している人的資本への投資関連経費が増加したことによるものです。経常利益は業績予想値の11億円に対し、10億10百万円(予想値増減比8.2%減)となりました。主な要因は、海外提携会社よりの受取配当金が予想値を上回ったものの、営業利益が減少したことによるものです。

 

 

④ 次期の見通し

 2024年度における経営環境は、地域紛争による国際情勢不安や世界各国で行われる首脳選挙及び円安基調の長期化及び原材料価格の高止まり等により、依然として不透明な状況にあります。世界的に気候変動、環境問題が年々深刻化してきており、地球環境への配慮と持続的な企業成長を両立させるようサステナビリティへの積極的な取組みが必要とされています。また国内では、賃金アップによる人件費及び採用コストの増加に加えいわゆる運送業の2024年問題等も相まって仕入コストが高騰しており、売価へ転嫁するインフレ傾向が表面化すると予想されます。

 このような状況の下、当社のパーパスである「きれいな空気で、未来を支える。」をあらゆる場面で実現するよう、クリーンエアーシステム事業を通じて以下の課題に取組んでまいります。

 次期の営業活動においては、世界的に半導体への大型投資が継続され、国内でも製造装置会社及び半導体製造関連の部品及び素材供給会社の投資は好調が見込まれます。さらに、AI、データセンター、電気自動車(EV)、自動運転等に関連して長期的な成長が見込まれ、半導体・電子部品工業への投資は継続すると予想されます。また、2050年までのカーボンニュートラル実現に向けGHG排出量に関する公表が進んでおり、各種設備及び機器の省エネルギー化対策推進を重要課題として向き合い、SDGsの達成を意識した設備投資の増加が見込まれます。このような背景により全体としては回復傾向が予想されております。

 電子工業分野では、半導体製造能力増強を図る政府方針を受けた新規半導体工場設立及び既存設備の改造等による関連投資が高い水準にて継続することが見込まれております。さらに、脱炭素化の流れを受け、当社の省電力(脱炭素対応)製品の競争力及び優位性の向上も見込まれます。また、バイオロジカル分野では、製薬工業分野及び感染症研究分野の設備投資及び再生医療や一般医療、食品分野等への設備投資が堅調に推移しており今後も継続すると見込まれます。

 好調な市場環境を背景に、社内においては人的資本を向上させ企業基盤を強化し、2023年12月22日公表の「中期経営計画(2024年~2028年)」を達成するよう、営業利益の増加に取組んでまいります。

 研究・新製品開発においては、省エネルギー化の推進及び特徴付けと金型への投資による原価低減を推進し、「送風機の研究」「HEPAフィルターの基礎研究」「エアーシャワーの開発」「サーマルクリーンチャンバーの開発」等を継続してまいります。

 製造部門では、2022年10月に契約し2023年1月に取得した草加工場近隣の用地(約1,750㎡)に、倉庫や事務所等を有する草加多目的センター(仮称、2024年12月竣工予定)の建設を開始しました。今後、草加工場の機能を一部移転することで、草加工場の建替え等により生産能力を更に向上させる計画です。さらに、伊勢崎工場の板金加工設備及び越谷工場への太陽光発電・蓄電池設備等への投資を計画しております。

 また、サービスセンターは、全国のサービスセンター(全5カ所)の強化及び空白地域の据付・保守体制の充実を図るための新拠点開設を検討し、顧客満足度を高めてまいります。

 以上により、通期の売上高は135億円(当期比1.1%減)、営業利益は9億円(当期比27.3%増)、経常利益11億円(当期比8.9%増)、当期純利益は8億円(当期比9.3%増)を見込んでおります。

 

(注)本業績見通しは、現在入手可能な情報から得られた当社経営者の判断に基づき作成しております。実際の業績は今後様々な要因により本業績見通しと異なる可能性があります。

 

(3)当事業年度の財政状態

a. 資産、負債及び純資産の状況

(資産)

  当事業年度末における総資産は195億89百万円と、前事業年度末に比べ3億87百万円(前期比1.9%)の減少となりました。

 流動資産は137億54百万円であり、前事業年度末に比べ9億90百万円(同6.7%)の減少となりました。主な内訳は、現金及び預金9億76百万円の減少、受取手形、電子記録債権、売掛金及び契約資産2億28百万円の減少及び棚卸資産2億50百万円の増加となります。

 固定資産は58億34百万円であり、前事業年度末に比べ6億3百万円(同11.5%)の増加となりました。主な内訳は、土地(埼玉県草加市)2億81百万円の増加、その他有形固定資産1億59百万円の増加及び投資その他の資産1億85百万円の増加となります。

(負債)

 当事業年度末における負債は54億81百万円と、前事業年度末に比べ5億68百万円(同9.4%)の減少となりました。

 流動負債は46億91百万円であり、前事業年度末に比べ3億91百万円(同7.7%)の減少となりました。主な内訳は、支払手形、電子記録債務及び買掛金2億25百万円の減少及び前受金75百万円の減少となります。

 固定負債は7億90百万円であり、前事業年度末に比べ1億76百万円(同18.2%)の減少となりました。主な内訳は、長期借入金1億1百万円の減少となります。

(純資産)

 純資産は141億7百万円と、前事業年度末に比べ1億81百万円(同1.3%)の増加となりました。主な内訳は、譲渡制限付株式報酬としての新株式の発行による資本金及び資本準備金各7百万円の増加、「信託型従業員持株インセンティブ・プラン(E-Ship®)」において、「日本エアーテック従業員持株会専用信託」が保有する当社株式43百万円の減少、配当金6億24百万円の支出による減少及び当期純利益7億31百万円の計上による増加となります。

 

b. キャッシュ・フローの状況

 

2022年12月期

2023年12月期

増  減

営業活動によるキャッシュ・フロー

228百万円

454百万円

226百万円

投資活動によるキャッシュ・フロー

△915百万円

△774百万円

140百万円

財務活動によるキャッシュ・フロー

△866百万円

△675百万円

190百万円

現金及び現金同等物に係る換算差額

37百万円

15百万円

△22百万円

現金及び現金同等物の増減額

△1,516百万円

△980百万円

535百万円

現金及び現金同等物期末残高

5,673百万円

4,692百万円

△980百万円

借入金期末残高

654百万円

537百万円

△116百万円

 

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況及び要因につきましては、 第2[事業の状況] 4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析] (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況の分析・検討並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報をご参照ください。

 なお、キャッシュ・フロー関連指標の推移は以下のとおりです。

 

2020年12月期

2021年12月期

2022年12月期

2023年12月期

自己資本比率(%)

64.4

67.2

69.6

72.0

時価ベースの自己資本比率(%)

87.6

61.3

55.9

64.8

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

0.7

0.4

2.9

1.2

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

356.0

643.6

111.5

284.2

(注)自己資本比率:自己資本/総資産

   時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

   キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

   インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

 ※ 各指標は、いずれも財務数値により算出しております。

 ※ 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

 ※ 有利子負債は、貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を払っている全ての負債(リース債務を除く)を対象としております。

 ※ 利払いについては、キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

 

(4)資本の財源及び資金の流動性

 当社の手元資金活用方法の基本的な考え方は、生産性向上を目的とした設備投資及び顧客ニーズに合致した製品開発投資に備えることであり、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。

 なお、当事業年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は5億41百万円となっております。また、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は46億92百万円となっております。

 

5【経営上の重要な契約等】

(1)技術供与契約

契約締結先

内容

契約発効日

有効期間

AIRTECH EQUIPMENT PTE.,LTD.

(シンガポール)

クリーンエアーシステム技術供与

1985年1月10日

1986年1月9日以後自動延長

富泰空調科技股份有限公司(台湾)

クリーンエアーシステム技術供与

1990年5月1日

1993年4月30日以後自動延長

蘇州安泰空気技術有限公司(中国)

クリーンエアーシステム技術供与

2008年12月15日

2033年12月14日以後自動延長

WOOLEE AIRTECH KOREA CO.,LTD.

(韓国)

クリーンエアーシステム技術供与

2004年3月3日

2006年12月31日以後自動延長

PYRAMID AIRTECH PVT.LTD.(インド)

クリーンエアーシステム技術供与

2007年4月10日

2007年12月31日以後3年ごとの更新

THELONG AIRTECH JOINT STOCK COMPANY(ベトナム)

クリーンエアーシステム技術供与

2016年1月29日

2018年1月31日以後自動延長

HEMAIR SYSTEMS INDIA LIMITED

(インド)

クリーンエアーシステム技術供与

2018年8月10日

2028年8月11日以後自動延長

(注)1.上記については、個別の契約に基づきロイヤリティー及び利益配当金として受取っております。

ただし、AIRTECH EQUIPMENT PTE.,LTD.、WOOLEE AIRTECH KOREA CO.,LTD.、PYRAMID AIRTECH PVT.LTD.、THELONG AIRTECH JOINT STOCK COMPANY、及びHEMAIR SYSTEMS INDIA LIMITEDにつきましては、ロイヤリティーのみの一定額としております。

2.蘇州安泰空気技術有限公司は関連会社であります。

 

(2)販売提携契約

契約締結先

内容

契約発効日

有効期間

PEA GMBH(ドイツ)

製品の相互販売提携

2015年11月23日

2016年11月30日以後自動延長

 

 

6【研究開発活動】

 当事業年度の研究開発活動は、当社の研究開発活動促進のため研究所員を3名から6名に増員しております。幅広い分野で使用される「新型アルミクリーンブース」「風量自動制御型クリーンブース」及び「新型クリーンオーブン」、医療・福祉分野を主とした「新型採痰ブース」「オゾン消臭除菌ストッカー」「コンテナ型無菌調剤室」、クリーンルーム内の機器運転管理用として「新型クリーンモニター」「微差圧モニター付HEPAフィルター」、さらにCO2吸着フィルター(レブセル社製)を搭載した「DACシステム搭載型ハイブリット空気清浄機」等を上市しました。また、更なる省エネルギー化を目標としたクリーンエアー供給用送風機の研究開発を継続しており、二酸化炭素排出量低減に寄与する省エネルギー機器の幅広い要望に対応し、より安全、より高精度、より高品質化された製品を提供してまいります。

 

 1.研究・開発

  A.送風機の研究

  B.HEPAフィルターの基礎研究

  C.DCモーターの開発

  D. 気流シミュレーションの研究

  E. サーマルクリーンチャンバーの開発

 

 2.研究論文発表

  JACA(公益社団法人日本空気清浄協会)

  ・電車用空気清浄機の性能評価

  ・HEPAフィルター付薄型空気清浄機の浄化性能検証及び清浄度モニターによる省エネ自動制御システムの検討

  Asian Symposium on Contamination Control 2023

  ・Verification of purification performance of thin air purifier with HEPA filter and energy saving effect of automatic control system by cleanliness monitor

 

 3.新製品

  A.新型アルミクリーンブース・風量自動制御型クリーンブース (MCB型シリーズ)

  B.アルミクリーンブース用ファンフィルターユニット(CB-FFU-250DC型)

  C.新型採痰ブース(ALF-903型)

  D.オゾン消臭除菌ストッカー(AGJ-800K型)

  E. コンテナ型無菌調剤室

  F.新型クリーンモニター(ACM-02型)

  G. 新型クリーンオーブン(AHO-530型)

  H. 微差圧モニター付及び差圧計ポート付HEPAフィルター

  I. DACシステム搭載型ハイブリット空気清浄機(株式会社レブセルとの共同開発品)

 

 4.特許

  ・新規申請(10件)、取得(4件)

  なお、当事業年度における研究開発費の総額は、232百万円となっております。

 

(注)当社は単一セグメントに属する事業を営んでいるため、セグメント別の研究開発活動については記載を省略しております。