第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1) 経営の基本方針

当社グループでは、以下を経営方針とし、基本理念である「心と技術をこめたモノづくりにより幸せと豊かさに貢献します」の実現を目指しております。

・技術の先端に挑戦し、新しい価値を創り出す
 ・独自の領域を切り拓き、事業の広がりを追求する
 ・人を大切にし、人を磨き、人が活躍する場をつくる
 ・社会に対する公正さと、環境との調和を大切にする

 

(2) 目標とする経営指標

 当社グループでは、2026年度までの中期経営計画において以下の財務目標の達成に向けて取り組んで参ります。

売上収益

1兆1,500億円

事業利益

1,300億円

事業利益率

11%

自己資本比率

50%を目安

ROE

10%超

営業キャッシュフロー

3,850億円(3年間累計)

設備投資

減価償却費以内 (除く戦略投資)

 

 

(3) 経営環境及び経営戦略・対処すべき課題

当社グループは、2021年度から2023年度までの中期経営計画「Yokohama Transformation 2023(YX2023)」(ヨコハマ・トランスフォーメーション・ニーゼロニーサン)の終了を受け、2024年度から2026年度までの新中期経営計画「Yokohama Transformation 2026(YX2026)」(ヨコハマ・トランスフォーメーション・ニーゼロニーロク)を発表しました。

新中期経営計画「YX2026」では「YX2023」から推進してきた既存事業における強みの「深化」と新しい価値の「探索」をさらに推し進め、次世代に負の遺産を残さないという強い意志を持って変革の「総仕上げ」を行います。こうした考えの下、各事業で定めた成長戦略を断行し、「YX2026」中または2027年度に「Hockey Stick Growth」(「うなぎ昇り」の成長)を果たすことを目指します。現在見込んでいる2026年度の経営目標は、売上収益1兆1,500億円、事業利益1,300億円、事業利益率11%、ROE (自己資本利益率)10%超を掲げています。

 

各分野での戦略は、次の通りです。

 

■タイヤ消費財

タイヤ消費財では近年、低コスト・低価格な新興タイヤメーカーが生産能力を拡大し、市場シェアを伸ばしています。これに対し「YX2026」では高付加価値品比率の最大化を積極的に推進し、収益率の向上を目指します。これに加え「Hockey Stick Growth」を果たすため、新興タイヤメーカーのコスト競争力に対抗すべく低コスト・高効率化を目指し、1年で工場を立ち上げる「1年工場」に挑戦します。高付加価値品比率の最大化では、プレミアムカーへの新車装着の推進およびグローバルでのモータースポーツへの参戦を継続しブランド価値向上に取り組みます。また、各地域の市場動向に沿った開発・供給・販売体制などを強化する「商品・地域事業戦略」を引き続き推進します。

 

■タイヤ生産財

OHT事業

OHTの市場規模は約4兆円、市場成長率は年6%と予測されており、消費財タイヤ市場の年2%と比較し高い成長が期待できます。OHT市場の約40%を占めると予測される農業・林業用機械向けタイヤでは、横浜ゴムグループがトップシェアを誇っており、Tier(ティア)1~Tier3までティアごとに持つ生・販・技の強みを活かした「マルチブランド戦略」でさらに市場地位を強化します。市場の25%と予測され、当社が市場2位のシェアを持つ産業・港湾用車両向けタイヤでは、専門スタッフによるタイヤメンテナンスサービス「Interfit」のさらなる展開地域の拡充を図ります。また、当社が僅かなシェアに留まっている建設・鉱山用車両向けタイヤ、そしてOHT事業全体で「Hockey Stick Growth」に向けて「Programmatic M&A」(プログラマティックM&A)を検討し、さらなる成長を目指します。さらに生産能力のさらなる拡大に加え、2023年5月に買収したTrelleborg Wheel Systems Holding AB(現Yokohama-TWS=Y-TWS)とのシナジー創出を横浜ゴムグループ全体で本格化します。

 

TBR事業

TBR(トラック・バス用)タイヤにおいても新興タイヤメーカーが生産量や市場への供給量を拡大しており、これに対し、欧米政府はアンチダンピングや相殺関税といった保護政策を実施しています。当社はこうした措置により適正な価格が維持された国や地域での販売強化を図り、収益を伴った成長を目指します。

 

■MB事業

MB(マルチプル・ビジネス)事業は「YX2023」における事業再編や収益改善策の実行により、収益を生み出す事業基盤を整えました。「YX2026」ではホース配管事業を「成長ドライバー」と位置づけ、バリューチェーンの再構築や北米での生産構造の改革を行います。工業資材事業は、コンベヤベルトでは国内における確固たる市場地位の確立、マリンホースでは高収益体制の安定化に向けた内部改善を推進します。MB事業全体では2026年度に事業利益率10%を目指し、MB事業の存在感を高めていきます。

 

■技術・生産

「YX2026」では「よいものを、安く、スピーディーに」をモットーに横浜ゴムグループ全体の基盤強化に取り組みます。「よいもの」では次世代プレミアムカーへの新車装着の強化を、「安く」では他社に負けない抜本的コストダウンを、そして「スピーディー」ではタイヤ消費財戦略で目指す「Hockey Stick Growth」の目玉である「1年工場」への挑戦とタイヤ開発のスピードアップを図ります。

 

■サステナビリティ

横浜ゴムでは、サステナビリティ活動は企業活動である以上、企業の成長に資するものであるべきと考えています。そのため、環境投資も十分な検討を重ね、企業収益と両立していくことを目指します。その一部として、温室効果ガス排出量の削減ではY-TWSを含め、2019年比で2026年に30%、2030年に40%削減を新たな目標とし、コストを下げながら目標を達成する計画を策定しました。サステナブル原料使用の促進では新たにScope3の削減目標を追加し、2026年に28%、2030年に30%を設定しましたが、「YX2026」中にコストアップなく2030年に40%を達成できる方法を検討していきます。

 

財務

「YX2026」でも引き続き「Hockey Stick Growth」を目指す積極的な戦略投資によって企業価値を高めていきます。資産効率化では政策保有株式売却をさらに推進し、資本構成では事業構造に合った最適な資本バランスの実現(自己資本比率50%を目安)に取り組みます。また、PER(株価収益率)向上では、経営陣によるIRイベントを拡充し、情報発信と対話の強化を通じて資本コスト低減や期待成長率の向上に努めます。キャピタルアロケーションでは、3年間累計のキャッシュイン約4,500億円のうち、約3,200億円を戦略投資および経常投資に充てる予定です。株主還元については、こうした持続的な利益成長に向けた投資を積極的に実施する中においても、当社の「将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を図りつつ、安定した配当を継続する」といった基本方針に則り、安定的かつ継続的に増配していくことを目指します。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 

(1)サステナビリティ共通

当社グループは「心と技術をこめたモノづくりにより幸せと豊かさに貢献します」を基本理念とし、世界各地のステークホルダーと協調しながら事業活動を展開しています。またサステナビリティ・スローガンとして「未来への思いやり」を掲げ、事業活動を通じた社会課題への貢献を持続的な企業価値向上につなげるべく、マテリアリティ(重要課題)に沿った取り組みを推進してきました。

今般、2024年度に開始した新中期経営計画「Yokohama Transformation 2026(YX2026)」の策定に合わせ、当社グループを取り巻く事業環境や社会課題の変化をふまえてマテリアリティの見直しを行い、事業活動が社会や環境に与える影響と社会や環境が事業活動にもたらす影響の双方を考慮して新たなマテリアリティを特定しました。これらのマテリアリティに沿った取り組みを進めることにより、サステナビリティ経営の実現を目指してまいります。

 

<横浜ゴムグループのマテリアリティ>

製品・サービス

 

持続可能な社会に貢献する製品・サービスの提供

 

 

・独自技術による品質と性能の向上を通じた安全で快適なモビリティ社会の実現

高付加価値オフハイウェイタイヤの提供を通じた経済・社会の発展への貢献

・DXを活用したサービスによる顧客の利便性・効率性の向上

環境

 

脱炭素社会・循環型経済への貢献

 

 

・製品を通じた脱炭素社会への貢献

・温室効果ガス排出量、エネルギー使用量の削減

・再生可能・リサイクル原料の利用拡大によるサーキュラーエコノミーへの貢献

 

 

自然との共生

 

 

・ネイチャーポジティブに向けた取り組みの推進

・環境マネジメントの強化

地域社会

 

地域社会との共生

 

 

・地域社会の課題解決への貢献

人的資本

 

持続的な企業価値向上を実現する人材力

 

 

・ダイバーシティー&インクルージョンの推進

・従業員の能力開発によるイノベーションの創出と生産性の向上

・安全で健康的な職場環境

・従業員の人権の尊重

サプライチェーン

 

持続可能なサプライチェーンの構築

 

 

・持続可能な天然ゴム調達

・サプライチェーンにおける人権の尊重

ガバナンス

 

コーポレートガバナンス強化による経営のレジリエンス向上

 

 

・ステークホルダーエンゲージメントの強化

・サステナビリティ課題のガバナンスの強化

 

 

①ガバナンス

代表取締役社長が議長を務め、社内取締役(社内取締役監査等委員を含む)全員が出席する「CSR会議」を年に2回(5月および11月)開催し、横浜ゴムグループが取り組むべきサステナビリティ課題(環境、労働安全衛生、防災、品質、社会貢献等)について立案・検討する体制を整えています。個別のサステナビリティ課題について立案・検討する会議体としては、環境推進会議、中央安全衛生委員会、中央防災会議が設置され、より詳細な計画、施策を立案し、実行しています。また、サステナビリティ課題のうち、重大かつ緊急性の高い事案については、リスクマネジメント委員会と連携して対処しています。

 

②リスク管理

当社グループを取り巻くさまざまなリスクからの防衛体制を強固にするため、経営管理本部長を議長とする「リスクマネジメント委員会」を設置し、経営に重大な影響を及ぼすリスクを横断的に管理し、適切に評価対応しています。

また、環境、労働安全衛生、防災・BCP、品質管理、コンプライアンスなどの重要度の高いリスクに関しては、それぞれを専門に統括する部門と会議体を設置して重点的に管理する体制を取っており、事業活動におけるリスク管理体制の強化を図っています。

「リスクマネジメント委員会」「コンプライアンス委員会」等の活動状況は取締役会に定期的に報告され、その他の会議体の活動状況についても経営会議に適宜報告され、必要と判断されたものは取締役会に報告されます。


 

③戦略

当社グループは、2008年、CSR・サステナビリティ経営を進捗させるために、「CSR経営ビジョン」および「CSR行動指針」を定め、責任部門としてCSR本部を設置しました。さらに2014年には、国連グローバル・コンパクト分野10原則などの国際規範をもとに「横浜ゴムグループ行動指針」を制定、自社とステークホルダーの双方にとって影響が大きく、関心の高いテーマをマテリアリティとして特定し、その達成のためにPDCAサイクルを回して、継続的改善を図ってきました。創立100周年にあたる2017年にはCSRスローガン(現サステナビリティ・スローガン)を制定し、次の100年に向けてさらなる持続的な成長の実現を目指しています。

また、新中期経営計画「YX2026」に合わせて、社会・環境と当社の持続的成長に必要なマテリアリティを新たに特定し、中長期的視点で達成すべき具体的な指標を非財務目標として設定しています。

 

 

④指標及び目標

「YX2026」においては、それぞれのマテリアリティにおける目指す姿を実現するためのサステナビリティ指標(KPI)とリスクと機会の両面からサステナビリティ目標を設定し、企業価値向上と持続的な社会・環境への貢献を目指しています。

 

 製品・サービス:「持続可能な社会に貢献する製品・サービスの提供」

目指す姿

・独自技術による品質と性能の向上を通じた安全で快適なモビリティ社会の実現

高付加価値オフハイウェイタイヤの提供を通じた経済・社会の発展への貢献

・DXを活用したサービスによる顧客の利便性・効率性の向上

指標(KPI)

及び目標

指標(KPI)

目標

①E+マーク(電動車対応)タイヤの商品数

2026年度:10商品

②VF(Very High Flexion)規格及びPFO(Pressure Field Operation)規格(注)に適合したタイヤサイズ数

2026年度:合計384サイズ

③DXを活用したタイヤのマネジメント/メンテナンスサービス(T.M.S)の利用数

・車両登録台数

・タイヤ点検本数

 

2026年度:

・5万台

・年間45万本

 

(注)農作物の根への影響を最小限に抑える低圧走行可能なタイヤの規格

 

 環境:「脱炭素社会・循環型経済への貢献」

目指す姿

・製品を通じた脱炭素社会への貢献

・温室効果ガス排出量、エネルギー使用量の削減

・再生可能・リサイクル原料の利用拡大によるサーキュラーエコノミーへの貢献

指標(KPI)

及び目標

指標(KPI)

目標

①温室効果ガス排出量(Scope1+2)削減

2026年度:2019年度比30%削減

2030年度:同40%削減
2050年度:カーボンニュートラル達成

②再生可能エネルギーの割合

2050年度:100%達成

③再生可能原料・リサイクル原料使用率

2026年度:28%

2030年度:30%

2050年度:サステナブル原料100%達成

 

 

 環境:「自然との共生」

目指す姿

・ネイチャーポジティブに向けた取り組みの推進

・環境マネジメントの強化

指標(KPI

及び目標

指標(KPI)

目標

①「YOKOHAMA千年の杜」活動における植樹・苗木提供本数

2030年度:植樹・苗木提供本数累計150万本

②事業拠点の環境省「自然共生サイト」認定件数

2026年度:累計5拠点

③重大環境事故件数(大気、水、土壌)

0件の継続

 

 

 地域社会:「地域社会との共生」

目指す姿

地域社会の課題解決への貢献

指標(KPI)

及び目標

指標(KPI)

目標

従業員社会貢献基金「YOKOHAMAまごころ基金」による社会貢献団体支援

年間10件以上

 

 

 

 人的資本:「持続的な企業価値向上を実現する人材力」

目指す姿

・ダイバーシティー&インクルージョンの推進

・従業員の能力開発によるイノベーションの創出と生産性の向上

・安全で健康的な職場環境

・従業員の人権の尊重

指標(KPI)

及び目標

指標(KPI)

目標

①女性管理職(課長以上)比率(単体)

2026年度:5%

2030年度:10%

②男性育児休業取得率(単体)

2026年度:100%

2030年度:100%(取得期間の拡充)

③社員の65歳到達後の継続雇用率(単体)

2024~2026年度:期間平均65%以上

2027~2030年度:期間平均70%以上

④能力開発研修受講者数

・MBA等経営教育受講率(単体)

・DXリーダー育成教育受講率(単体)

2026年度:

・部門長の15%(累計)

事務・技術系職員の10%(累計)

⑤従業員エンゲージメントスコア

2024年度より従業員エンゲージメント調査を継続的に実施し、2026年度までに目標値を設定

 

 

 サプライチェーン:「持続可能なサプライチェーンの構築」

目指す姿

・持続可能な天然ゴム調達

・サプライチェーンにおける人権の尊重

指標(KPI)

及び目標

指標(KPI)

目標

①天然ゴム農園の調査件数

2030年度:累計1,200件

②天然ゴム農家向けセミナーイベントの実施件数

年間2件以上

③サプライチェーンにおける人権デューデリジェンス(インパクト・アセスメント)実施件数

年間1件

 

 

 ガバナンス:「コーポレートガバナンス強化による経営のレジリエンス向上」

目指す姿

・ステークホルダーエンゲージメントの強化

・サステナビリティ課題のガバナンスの強化

指標(KPI)

及び目標

指標(KPI)

目標

取締役会におけるサステナビリティ関連事案の報告・審議件数

年間4件(四半期に1回)以上

 

 

 

 

(2)気候変動

近年、世界中で気候変動の影響は深刻化しており、企業にも脱炭素など気候変動への積極的な対応が求められています。当社グループでは、「気候変動の緩和と適応」を持続可能な社会への貢献と企業の持続的な成長のための重要な経営課題の一つとして位置づけ、2022年1月には「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)※」の提言に賛同を表明しました。今後もTCFD提言に沿って気候変動への取り組みに関する情報開示を進め、ステークホルダーの皆様との信頼関係の構築を図ってまいります。

※ Task Force on Climate-related Financial Disclosures の略称。TCFDは、G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示および金融機関が採るべき対応を検討するために2015年に設立されました。企業などに対して、気候変動によるリスクおよび機会が経営に与える財務的な影響を評価し、開示することを推奨しています。

 

 ①ガバナンス

代表取締役社長が議長を務めるCSR会議を年に2回(5月・11月)開催し、当社グループが取り組むべきCSR課題について立案・検討する体制を整えています。「気候変動の緩和と適応」に関しては、「環境推進会議」が設置され、環境推進会議の下部組織として4つの委員会、2つの部会、2つの会議を設け、環境活動を推進しています。「環境推進会議」はCSR本部長が議長として各課題を審議・決定し、当社グループの環境活動を統括しています

 


 

 ②リスク管理

気候変動にかかわるリスクについては、「環境推進会議」の下部組織である「カーボンニュートラル推進委員会」をはじめとする委員会、部会、会議が、それぞれリスクの特定・評価を実施し、その低減活動を行っています。委員会、部会、会議にて特定された重要なリスクについては、「環境推進会議」において対策を審議・決定しています。また、自然災害等の物理リスクについては、「中央防災会議」において防災、BCPに取り組み、リスク低減を推進しています。 重大かつ緊急性の高い事案については、当社を取り巻くさまざまなリスクからの防衛体制を強固にするために設置された「リスクマネジメント委員会」(議長:経営管理本部長)において審議され、適切に評価対応しています。「リスクマネジメント委員会」の活動状況は、取締役会に定期的に報告されています。

 

③戦略

当社グループは、気候関連のリスクについて、低炭素経済への移行に関連するリスク(移行リスク)と気候変動の物理的影響に関連するリスク(物理的リスク)の二つに分類、影響を受ける財務影響の大きさを評価し、事業に及ぼすリスクと機会を整理しました。さらに、気温上昇につきIEA(国際エネルギー機関)およびIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が示すシナリオを用いてシナリオ分析を実施し、1.5℃シナリオ、4℃シナリオそれぞれのリスクと機会を踏まえた適応策・財務影響等について検証しました。今後も引き続き、リスクと機会の検討やシナリオ分析の精緻化を進めていきます。

 

 

<気候変動に関する主なリスクと機会>

 

重要な要因

区分

潜在的な財務的影響

財務影響

今後の対応策

スク

移行リスク

脱炭素社会への移行

政策・

法規制

カーボンプライシングの導入・上昇

・カーボンニュートラルのロードマップの策定と実践

・エネルギー使用量の「年1%削減活動」の推進(設備の効率化、運転の最適化、加工仕様の見直し等)

・再生可能エネルギーの利用拡大

・エネルギー新技術の導入

市場

資源(原料)価格の高騰・供給の不安定化

再生可能エネルギー・燃料価格(原油、天然ガス)の上昇

技術

製造プロセス効率の改善のための設備投資

評判

排出量削減の取り組みや取り組み姿勢に対する顧客評価、株価への影響

再生可能エネルギー利用を推進する世界的な動きへの対応(ステークホルダーからの評判)

製品・サービス需要の変化

市場

製造時CO2排出量評価による製品選別(同一製品内の競争)

製造時のCO2排出ゼロに向けた製造拠点のカーボンニュートラル化の推進

自動車業界の変革への対応

市場

MaaSによる自動車販売台数の低下

生産財タイヤの強化、コスト、サービス、DXの探索

物理的リスク

気温上昇に伴う気象災害の

激甚化

急性

サプライチェーンの寸断による原材料調達困難化、調達コストの上昇

・サプライヤー、原料産地の分散化

・風 水害や地震等に対応した生産拠点の補強、BCP策定

異常気象による設備損壊、運転停止

気候変動の激甚化

慢性

気候変動による天然ゴム(天然資源)の枯渇、調達困難化

サステナブル原料の研究開発強化

降雪の減少等による冬用タイヤ需要の低下

オールシーズンタイヤの開発・販売

製品性能向上に必要な研究開発投資の増加

ビジネスパートナーとの共同研究開発の推進

 

脱炭素社会への移行

エネルギ

ー源

製造プロセス効率の改善によるエネルギーコスト削減

エネルギー使用量の「年1%削減活動」の推進(設備の効率化、運転の最適化、加工仕様の見直し等)

製品・

サービス

需要の変化(カーボンニュートラル対応・電動車(EV)装着の性能要求)や規制強化への早期対応によるシェアの拡大

・EV対応タイヤの新車装着強化

・E+マークのEV対応タイヤの販売拡大

製品・サービス需要の変化

製品・

サービス

再生可能/リサイクル原料を使用した環境負荷低減製品や低燃費、低炭素化製品の提供による競争力・収益力の向上

・再生可能/リサイクル原料を使用したタイヤ、ゴム製品の販売拡大

・環境性能に優れた低燃費タイヤの販売拡大

・製造時のCO2排出ゼロのタイヤ、ゴム製品の販売

自動車業界の変革への対応

製品・

サービス

次世代モビリティを支える製品・サービスの需要増

・センサータイヤ(IoTタイヤ)の販売

・タイヤソリューションサービスの強化

気候変動

製品・

サービス

防災・復旧・気温変動や食料・自然に資する製品・サービスの需要増

・オフハイウェイタイヤ(OHT)の販売拡大

・耐衝撃性、耐熱性の高いコンベヤベルト等のゴム製品の販売拡大

 

 

 

<シナリオ分析の結果概要>

シナリオ条件

1.5℃シナリオ

4℃シナリオ

シナリオの概要

持続可能な発展のため、厳しい気候政策や技術革新により、2100年までの世界の平均気温の上昇を産業革命前に比して1.5℃に抑えるシナリオ

厳しい気候政策や技術革新が進まず、気候変動の物理的影響が急速に強まり、2100年までの平均気温が産業革命前に比して4℃上昇することを想定するシナリオ

参照

シナリオ

移行リスク

IEA Net Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE)

IEA World Energy Outlook 2021(WEO2021)

物理リスク

IPCC第6次報告書SSP1-1.9

IPCC第6次報告書SSP5-8.5

分析結果

主に移行リスク・機会が顕在化。

(リスク)

厳格な気候変動規制への対応が求められ、再生可能エネルギーの調達やカーボンプライシング導入などによりエネルギーコスト負担や製造プロセス効率改善のための設備投資が増加。

環境負荷低減製品の増加に伴い、再生可能/リサイクル原料の研究開発費や調達コスト負担が増加。

(機会)

カーボンニュートラル対応、EV装着の性能要求への早期対応、環境負荷低減製品や低燃費、低炭素化製品の提供により、競争力・収益力が向上。

主に物理リスク・機会が顕在化。

(リスク)

拠点やサプライチェーンにおける甚大な自然災害の発生が増加。また、異常気象により天然資源が枯渇し、原料供給が不安定化。

降雪の減少等による冬用タイヤ需要の低下など、慢性的な気候変動により製品需要が変化。

(機会)

防災・復旧・気候変動などに対応する製品・サービスの需要が増加。

 

 

④指標及び目標

当社グループでは、環境関連のマテリアリティとして「脱炭素社会・循環型経済への貢献」「自然との共生」を掲げ、気候変動にかかわるリスクの最小化のため、以下の指標及び目標を設定しています

指標(KPI)

目標

温室効果ガス排出量(Scope1+2)削減

2026年度:2019年度比30%削減

2030年度:同40%削減
2050年度:カーボンニュートラル達成

再生可能エネルギーの割合

2050年度:100%達成

再生可能原料・リサイクル原料使用率

2026年度:28%

2030年度:30%

2050年度:100%達成

「YOKOHAMA千年の杜」活動における植樹・苗木提供本数

2030年度:植樹・苗木提供本数累計150万本

 

 

■温室効果ガス排出量実績(Scope1、2)(連結)

Scope(単位:千トン)

2019年度

(基準年)

2020年度

2021年度

2022年度

Scope1

656

605

699

648

Scope2

614

550

601

593

Scope1、2合計

1,270

1,155

1,300

1,241

Scope1、2合計の削減率

(基準年:2019年度)

▲9.1%

2.3%

▲2.3%

 

(注)各年度の温室効果ガス排出量実績(Scope1、2)には、合併前のYokohama TWSの排出量実績を含みます。

 

 

■温室効果ガス排出量実績(Scope3)(連結)

カテゴリ(単位:千トン)

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

購入した製品・サービス

2,628

2,317

4,031

4,022

資本財

58

52

152

175

Scope1、2に含まれない燃料及びエネルギー活動

106

135

147

129

輸送、配送(上流)

141

167

154

125

事業から出る廃棄物

2

16

50

27

出張

11

3

5

5

雇用者の通勤

25

20

21

19

リース資産(上流)

輸送・配送(下流)

54

59

72

59

10

販売した製品の加工

10

10

10

14

11

販売した製品の使用

18,394

16,776

19,940

21,087

12

販売した製品の廃棄

1,179

1,132

875

906

13

リース資産(下流)

14

フランチャイズ

15

投資

135

112

246

92

上記の合計

22,745

20,799

25,702

26,661

 

(注)各年度の温室効果ガス排出量実績(Scope3)には、合併前のYokohama TWSの排出量実績を含みません。また、カテゴリ8、13、14に分類される排出量実績はありません。

(3)人的資本(人材の多様性を含む)

①戦略

■ 求める人材像

経営戦略を実現し、企業価値を持続的に向上するため、当社グループでは、基本理念、経営方針、行動指針及び企業スローガンからなる企業理念の浸透と、長期ビジョンに定めた事業の方向性の共有をベースとし、求める人材像として「世代・性別・国籍に関わらず、厳しくとも結果にコミットし、自らの成長をもって会社の成長に貢献できる人材」を掲げ、その育成と社内環境整備に取り組んでいきます。

 

■ 人材育成方針

<プロ人材の育成と「適所」適材の人員配置>

グローバルに事業展開する当社グループでは、高い達成意欲と幅広い視野を持ち、周囲に影響を及ぼしながら力を発揮していく「プロの人材」の配置が必須であり、そのための育成・選抜や「『適所』適材」の人員配置等の施策を進めています。一人ひとりが育成の場を積極的に活用し成長していくことが、会社の発展をもたらすとの考えに基づき、それを全面的にバックアップしています。また、グローバルな競争に勝ち抜いていくために、会社を背負って立つ経営人材の確保と育成にも取り組んでいきます。

 

<人材育成プログラム>

グローバルな事業環境の変化に対応するため、人材育成プログラムを通じて人的資本の強化に取り組んでいます。的確に物事を判断・実行するのに必要なマインド、能力、スキルの開発や、階層別のリーダーシップ、職場に密着した問題の解決能力、プレゼンテーションや交渉といった個別スキルの開発を目指して、体感・体験から学ぶ三現教育を実施しています。また、将来の経営人材育成のための管理職層の国内MBA派遣や事務・技術系職員のDX人材化促進のためのDXリーダー育成教育などにより、求める人材像の育成に取り組んでいきます。

 

<コア人材の育成>

新中期経営計画「YX2026」の実現を人材面で支えるため、管理職層については、ポスト(ジョブ)と成果・報酬の連動性を高めるとともに、一般層については、階層ごとに求められる付加価値(期待成果や期待行動)を明示し、育成体系ともリンクさせることで、コア人材として必要となる能力を段階的に身につけられる人事制度としています。管理職層においては、2020年にポスト(ジョブ)と報酬の連動性をさらに高める改定を行いました。また一般層については、2021年に最速30歳から管理職への配置を可能とする早期登用制度を導入し、年齢にとらわれない適材適所の仕組みとしています。


 

■ 社内環境整備方針

<多様な働き方を認める組織風土の醸成>

環境変化の激しい中で持続的な成長を果たしていくためには、人的資本の価値向上が不可欠です。当社グループでは、多様な人材がそれぞれの分野で能力を最大限に発揮できるよう、これまでのルールや考え方にとらわれない働き方や、共に明るく生き生きと仕事ができる職場環境の整備などを通じて働き方改革を推進しています。ワークライフバランスを尊重し、多様な働き方を認め合うことで、すべての社員が成長を続け、仕事と生活を両立しながらキャリアの形成を実現できるよう支援しています。

 

<場所・時間にとらわれない働き方の推進>

当社グループは、機能集約による業務効率化および働き方改革を目的として、2023年3月に本社機能を東京都港区から神奈川県平塚市の平塚製造所に移転・統合しました。在宅勤務制度などの諸制度の適用を拡大して、さまざまな状況に対応できる勤務体制を整えるとともに、企画・生産・販売・技術・物流の一体運営ならびにスピーディな意思決定を実現していきます。

 

<ホームオフィス制度の導入>

2023年3月、本社・平塚製造所の統合後の遠距離通勤者および配偶者の転勤に同行する社員を対象に、オフィスに固定デスクを持たず、会社負担で自宅をオフィス化して基本的な就業場所とする「ホームオフィス制度」を導入しました。2023年12月末現在では108名がこの制度を利用して業務を行っています。場所にとらわれない働き方を推進し、多様な人材が活躍できる基盤をつくっていきます

 

<東京事務所、サテライトオフィスの設置>

本社・平塚製造所の統合に伴い、東京都・品川インターシティに東京事務所およびサテライトオフィスを設置しました。東京事務所には株式会社ヨコハマタイヤジャパン、横浜ゴムMBジャパン株式会社の本社および横浜ゴムの販売部門の一部が移転しました。フリーアドレスのサテライトオフィスは、組織の壁を越えた社員間のコミュニケーション促進に役立っています。

 

<在宅/フレックス勤務の拡充>

仕事と育児・介護などの家庭の両立支援の推進、業務効率化の向上並びに長時間拘束防止(健康への配慮)を目的として2018年より在宅勤務制度を導入し、2023年からは通勤負担軽減目的でも利用できるよう要件を拡大しました。併せて利用上限を撤廃し、仕事(成果と効率)に合わせて各職場で最も適した在宅勤務の運用へ移行しました。また、事務・技術系職員については、原則としてすべてフレックスタイム制の適用対象とし、コアタイムを撤廃、短時間勤務フレックスタイム制度なども拡充し、場所や時間を問わず仕事の成果を出せる仕組みを整えています。

 

<労働安全衛生>

当社グループでは、事業の特性上、生産工場で大型機械を取り扱う必要があるため、設備仕様の不具合や誤操作が大きな事故につながる可能性があり、安全面での対策が必要です。そのため、すべての設備や作業に対しリスクアセスメントを計画的かつ継続的に実施し、設備面から未然防止の安全対策を実施しています。また、国内外35拠点が労働安全衛生マネジメントシステム(JISHA/OSHMS・ISO45001)認証を取得しており、グループで働くすべての人が安全・安心して働けるよう職場の安全衛生環境のさらなる向上を目指した取り組みを行っています。さらに、健康で長く働くことのできる職場づくりのため、健康保険組合と連携した「コラボヘルス※」による健康経営に取り組み、健康・体力向上を推進しています。

※ 保険者と事業者が積極的に連携し、明確な役割分担と良好な職場環境のもと、加入者の予防・健康づくりを効率的・効果的に実行すること

 

<従業員エンゲージメント>

自らの成長をもって会社の成長に貢献できる多様な人材が生き生きと働ける職場環境と企業風土を目指して、「従業員意識調査」を継続的に実施し、組織の目指すべき姿と現状のギャップを把握し、組織風土の改革と生産性の向上による企業価値向上への取り組みを進めていきます。

 

■ 人材の多様性の確保

<目指すべき姿>

当社グループでは、多様な人材が多様な働き方を認め合い、これまでのルールや考え方にとらわれない働き方や、共に明るく生き生きと仕事ができる職場環境の整備など、人材の多様性をさらに推進していくことが重要な課題と認識しています。そのため、国籍、性別やLGBTQ+といった属性や学歴、経験にとらわれない採用を行い、YX2026の事業戦略、技術戦略の実現に向けて最適な人材の配置がなされている状態を継続していきます。また、ワークライフバランスを尊重し、多様な人材、多様な働き方を認め合うことで、すべての社員が成長を続け、キャリアを形成できる職場を目指します

 

<女性の活躍推進>

種制度の拡充や施策の実施、ならびに管理職における女性比率向上などの取り組みを通じて、女性にとって働きやすい環境づくりに取り組んでいます。当社の2023年12月末現在の女性管理職(課長以上)比率(単体)は2.0%ですが、次期管理職候補である係長は14.2%、早期登用で管理職配置が可能な主任は42.8%の女性比率となっており、今後はさらに女性管理職が増加していく見込みです。女性活躍推進を目的としたキャリア開発支援セミナーの実施や仕事と生活の両立支援制度の整備を行うとともに早期登用制度も活用し、より一層の女性管理職比率の向上を目指します

 

<障がい者の雇用>

障がい者の雇用の場を創出する目的の子会社として、ヨコハマピアサポート株式会社を2012年に設立し、知的障がい者を中心に31名(2023年12月末現在)を雇用しています。横浜ゴム、ヨコハマピアサポート、ヨコハマタイヤジャパン、横浜ゴムMBジャパンの4社で障がい者雇用率制度および障がい者雇用納付金制度上の関係会社特例認定を受け、4社合算しての雇用率は、2023年申告(2022年4月~2023年3月実績)で2.58%となりました。今後も、障がい者雇用の幅を広げるにあたり、新たな業務の開発を進めていきます。

 

<シニア人材の活用>

60歳以降の労働意欲の高い人材に対して、豊富な知識や経験を活かした活躍の場を提供するため、定年退職した社員を再雇用(事務・技術系社員は、100%出資子会社ヨコハマビジネスアソシエーション株式会社が再雇用して当社に派遣)し、最長70歳まで活躍できる制度を導入しています。

 

<性的マイノリティに関する取り組み>

LGBTQ+と総称される性的マイノリティを含む多様な人材の活躍を支援するため、同性パートナー、事実婚のパートナーを配偶者と認め、パートナーの家族も配偶者の家族として認める「パートナー&ファミリーシップ制度」を2023年10月に導入しました。また、外部有識者を招いた「LGBTQ+セミナー」を開催して社員の理解を深めるとともに、社内外にLGBTQ+に関する相談窓口を設置し、制度や悩みごとの相談に対応できる体制を整備しています。

 

②指標及び目標

当社グループでは、人的資本関連のマテリアリティとして「持続的な企業価値向上を実現する人材力」を掲げ、主要な施策について、以下の指標(KPI)及び目標を設定しています。

指標(KPI)

実績

目標

2021年度

2022年度

2023年度

①女性管理職(課長以上)比率(単体)

1.6%

1.7%

2.0%

2026年度:5%

2030年度:10%

 

参考

係長クラス女性比率(単体)

10.7%

11.0%

14.2%

主任クラス女性比率(単体)

38.5%

40.9%

42.8%

②男性育児休業取得率(単体)

66.3%

59.5%

86.2%

2026年度:100%

2030年度:100%(取得期間の拡充)

③社員の65歳到達後継続雇用率(単体)

(注2)

期間平均63.6%

2024~2026年度平均:65%以上

2027~2030年度平均:70%以上

④能力開発研修受講率

・MBA等経営教育受講率(単体)

・DXリーダー育成教育受講率(単体)

 

 

 

6.0%

2026年度:

・部門長の15%(累計)

・事務・技術系職員の10%(累計)

⑤従業員エンゲージメントスコア

2024年度より従業員エンゲージメント調査を継続的に実施し、2026年度までに目標値を設定

 

(注)1 「―」表示は実績なしを示しております。

   2 65歳に到達した事務職、技術職および技能職の社員のうち、当社又は子会社にて65歳以降も継続雇用された社員の割合を示しております。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクは下記のようなものがあります。なお、文中における将来等に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経済状況
 当社グループの全世界における営業収入のうち、重要な部分を占める自動車用タイヤの需要は当社グループが製品を販売している国または地域の経済状況の影響を受けます。従って、日本、北米、欧州、アジアなどの主要市場における景気後退及びそれに伴う需要の減少は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、競業他社との販売競争激化による市場シェアダウン及び価格競争の熾烈化による販売価格の下落も、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 為替レートの影響
 当社グループは主として円建で一般商取引、投融資活動等を行っておりますが、米ドルその他の外国通貨建でもこれらの活動を行っております。今後一層の事業のグローバル化の進行に伴い、海外事業のウエイトが高まることが予想されます。したがって、従来以上に外国通貨建の一般商取引、投融資活動等が増加し、外国為替の変動により当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける度合いが大きくなります。為替予約の実施等、為替レートの変動によるリスクを最小限にとどめる努力を行っておりますが、当該リスクを完全に回避することはきわめて困難であります。

 

(3) 季節変動の影響
 当社グループの業績は上半期と下半期を比較した場合、下半期の業績がよくなる傾向にあります。特に、寒冷地域で冬場の降雪時に使用する自動車用タイヤ(スタッドレスタイヤ)の販売が下半期に集中することが主な理由であります。従って、降雪時期の遅れや降雪量の減少等が、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 原材料価格の影響
 当社グループの製品の主要な原材料は、天然ゴム及び石油化学製品であります。従って、天然ゴム相場の大幅な上昇及び国際的な原油価格の高騰があった場合、当社製品の製造コストが影響を受ける可能性があります。これらの影響を最小限にとどめるべく各種対策を実施しておりますが、吸収できる範囲を超えた場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 資金調達力及びコストの影響
 当社グループは資金調達の安定性及び流動性の保持を重視した財務運営を行っておりますが、日本を含めた世界の主要な金融市場で混乱が発生した場合、計画通りに資金調達を行うことができない可能性があります。また、格付会社より当社グループの信用格付けが大幅に下げられた場合、資金調達が制約されるとともに調達コストが増加し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 有利子負債の影響
 当社グループの総資産に占める有利子負債の割合は、約29.3%(2023年12月31日現在)であります。グループファイナンスの実施によりグループ資金の効率化を行うことで財務体質の改善に取り組んでおりますが、今後の金利動向によっては当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社グループの一部の借入契約には財務制限条項が付されております。

 

(7) 保有有価証券の影響
 当社グループが保有する市場性のある有価証券のうち日本株式への投資が大きな割合を占めております。従って、日本の株式市場の変動及び低迷等による有価証券評価損の計上等で、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 投資等に係る影響
 当社グループは世界的な自動車用タイヤの需要に対応すべく、アジアを中心に生産拠点の拡大及び生産能力の増強のための投資を行っております。この投資により製品の品質向上を図るとともに需要増にも対応でき、当社グループの信頼を高め、シェアアップが期待できます。しかしながら、現地の法的規制や慣習等に起因する予測不能な事態が生じた場合、期待した成果を得ることができなくなるため、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) M&A、資本・業務提携による影響
 当社グループは、さらなる成長の実現に向けた競争力強化の為、他社の買収や他社との資本・業務提携を行うことがあります。2023年5月2日付にてグローバルに農業機械用や産業車両用タイヤなどを生産販売するTrelleborg Wheel Systems Holding ABの買収(連結子会社化)を行っております。万一対象会社の業績が買収時の想定を下回る場合、または事業環境の変化や競合状況等により期待する成果が得られないと判断された場合にはのれんの減損損失が発生し、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 退職給付債務
 当社グループの退職給付債務及び退職給付費用は割引率、年金資産の期待運用収益率等の一定の前提条件に基づいて数理計算を行っております。実際の割引率、運用収益率等が前提条件と異なる場合、つまり、金利低下、年金資産の時価の下落、運用利回りの低下等があった場合や退職金制度、年金制度を変更した場合、将来の退職給付債務の増加により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 災害等の影響
 当社グループは地震等の自然災害、疾病、戦争、テロに直接又は間接的に影響を受ける可能性があるため、各種対応策を検討し、計画的に実施しております。しかしながら、生産拠点及び原材料の主要な仕入先が所在する地域でこれら事象が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11-2)  感染症の大流行

  当社グループは新型コロナウイルスなどの全世界的な感染症の流行に備え、従業員の安全と社内外への感染拡大抑止を第一に対策を講じておりますが、感染症の拡大や長期化の状況によっては、当社グループが事業を展開している国・地域における活動規制や企業活動の停滞等により、当社グループ全体の事業活動、業績、及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11-3) ウクライナ・中東情勢

 現下のウクライナ情勢により、ロシアの乗用車用タイヤ生産会社の生産については、状況を注視しながら判断する方針ですが、進展状況や対応によっては今後当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 また、現下の中東情勢の今後の進展によっては、当社グループが事業を展開している国・地域における企業活動や物流の停滞等が発生し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 知的財産権の影響
 当社グループは技術ノウハウの蓄積と知的財産権の保護に努めておりますが、第三者の知的財産権の侵害を効果的に防止できないことがあります。また、当社グループの製品または技術が、第三者から知的財産権を侵害したとして訴訟を受け、それが認められた場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) 製品の品質による影響
 当社グループは、品質管理を経営の最重要課題とし、品質管理体制の万全を期しておりますが、製品の欠陥や不良を皆無にすることは困難であります。大規模なリコールや欠陥に起因する多額の損害賠償が起きた場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14) 法律・規制・訴訟の影響
 当社グループは、事業活動を行っている各国において、投資、貿易、為替管理、輸出管理、独占禁止、個人情報保護、環境保護など、当社グループが、展開している様々な事業に関連する法律や規制の適用を受けております。
 将来において、国内外における新たな法律や規制の施行又は予期せぬ法律や規則の変更などにより、事業活動の制約やコストの上昇など当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
 これらの他、当社グループは国内外の事業活動に関連して、訴訟や各国当局による捜査・調査の対象となる可能性があります。重大な訴訟が提起された場合や、各国当局による捜査・調査が開始された場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績の状況

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減率

 

百万円

百万円

売上収益

860,477

985,333

14.5

 

タイヤ

754,309

874,863

16.0

 

MB

96,248

101,885

5.9

 

その他

9,919

8,585

△13.4

事業利益

70,089

99,127

41.4

 

タイヤ

66,843

92,026

37.7

 

MB

3,965

7,155

80.5

 

その他

△758

△76

 

調整額

40

22

営業利益

68,851

100,351

45.8

税引前利益

71,622

105,975

48.0

親会社の所有者に

帰属する当期利益

45,918

67,234

46.4

 

(注)事業利益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しております。

 

当期における当社グループをとり巻く環境は、国内では、設備投資が緩やかに回復し、また、販売が堅調な自動車が全体をけん引するなど幅広い業種で景況感の改善が見られ、またインバウンド需要の回復を受けて宿泊・飲食サービスが好調を維持したほか、価格転嫁の進展などから景気は総じて改善傾向にあります。

一方、海外においては、米国は良好な雇用・所得環境から堅調な個人消費が持続しているものの、好調な非製造業とは対照的に、ハイテク産業以外の製造業は総じて減産基調で調整局面が長期化しています。また、中国は春以降一転して、不動産開発の大幅減で投資が全体として伸び悩み景気は減速しています。欧州は、ウクライナ情勢に改善の兆しがみられない中、需要の減速を背景に製造業・サービス業ともにコスト増を価格に転嫁しづらい状況が続いています。

こうした状況の中、当社グループは、既存事業における強みの「深化」と、大変革時代のニーズに応える新しい価値の「探索」を同時に推進し、次世代の成長に向けた「変革」を図ることを位置づけた中期経営計画「Yokohama Transformation 2023(YX2023)」に取り組んでおり、当期の連結売上収益は、9,853億33百万円(前期比14.5%増)、利益面では、連結事業利益は991億27百万円(前期比41.4%増)、連結営業利益は1,003億51百万円(前期比45.8%増)、また、親会社の所有者に帰属する当期利益は672億34百万円(前期比46.4%増)となりました。

 

セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。

①タイヤ

売上収益は8,748億63百万円(前期比16.0%増)で、当社グループの連結売上収益の88.8%を占めており、事業利益は920億26百万円同37.7%増)となりました。

新車用タイヤの売上収益は、中国で日系自動車メーカーの販売不振による影響が続きましたが、国内や北米では装着車種の販売が好調だったことに加え、新規納入車種が増加したことにより、前期を上回りました。

市販用タイヤの売上収益は、国内では夏用タイヤの販売が堅調に推移し、海外では中国、インドなどアジア地域で販売を伸ばしたことで前期を上回りました。

OHT(オフハイウェイタイヤの略)は、YOHT(Yokohama Off-Highway Tires、旧ATG)の販売は欧州、北米の厳しい市場環境の継続により伸び悩みましたが、5月に買収完了したY-TWS(旧Trelleborg Wheel Systems Holding AB=TWS)の業績が加わったことで、OHT全体の売上収益は前年を大きく上回りました。

 

②MB(マルチプル・ビジネスの略)

売上収益は1,018億85百万円(前期比5.9%増)で、当社グループの連結売上収益の10.3%を占めており、事業利益は71億55百万円同80.5%増)となりました。

ホース配管事業の売上収益は、建設機械向けなどの油圧ホースは需要低迷により販売は振るいませんでしたが、北米における自動車向けホースが堅調だったことなどから前年並みとなりました。

工業資材事業の売上収益は、コンベヤベルトの販売が国内で大きく伸長したほか、海洋商品や民間航空機向け補用品の販売が好調に推移し前期を大きく上回りました。

 

(2)財政状態の状況

当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べて4,493億82百万円増加し16,004億58百万円となりました。

流動資産は棚卸資産の増加等により、6,181億5百万円(前期比22.6%増)となりました。非流動資産は有形固定資産の増加、のれんの増加等により、9,823億53百万円(前期比51.8%増)となりました。これらは、主に今期に子会社を取得したことによるものです。

流動負債は仕入債務の増加、未払法人所得税の増加等により、3,478億89百万円(前期比18.1%増)となりました。非流動負債は有利子負債の増加等により、5,037億74百万円(前期比115.8%増)となりました。

資本合計は親会社の所有者に帰属する当期利益の計上等により7,487億95百万円(前期比20.2%増)となりました。

 

(3)キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて220億41百万円増加し、976億13百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動による資金の増加は、1,597億41百万円(前連結会計年度比1,205億10百万円の収入増加)となりました。

これは主として、税引前利益1,059億75百万円、減価償却費594億94百万円、棚卸資産の減少による収入増加額316億43百万円、法人税等の支払額242億84百万円の計上等であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動による資金の減少は、3,440億15百万円(前連結会計年度比2,976億58百万円の支出増加)となりました。

これは主として、有形固定資産の取得による支出582億53百万円、投資有価証券の売却による収入298億63百万円、子会社の取得による支出3,219億28百万円等であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動による資金の増加は、2,057億60百万円(前連結会計年度は351億72百万円の収入)となりました。

これは主として、長期借入金による収入3,147億円、短期借入金の減少額416億46百万円、長期借入金の返済による支出298億94百万円等であります。

 

(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)

当社グループの重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源については「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりであります。

 

(4)生産、受注及び販売の状況

①生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産金額(百万円)

前年同期比(%)

タイヤ

691,614

13.6

M B

63,814

12.4

そ の 他

273

△9.8

合  計

755,701

13.5

 

(注)1.金額は、販売価格を基礎として算出しております。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

②受注状況

当社は、ごく一部を除いてすべて見込生産であります。

 

③販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売金額(百万円)

前年同期比(%)

タイヤ

874,863

16.0

M B

101,885

5.9

そ の 他

8,585

△13.4

合  計

985,333

14.5

 

(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

 (5)重要な会計方針並びに重要な会計上の見積り及び仮定

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しております。連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の判断、見積り及び仮定は、「第5.経理の状況 連結財務諸表注記 3.重要性のある会計方針 4.重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しております。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当する事項はありません。 

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループの研究開発は、会社の基盤技術に関する研究開発活動を研究先行開発本部が、直接商品に係る研究開発活動をタイヤ、MB及びその他の技術部門が担当となり、世界的な技術の先端に挑戦し、世界初の商品を市場に提供することで、お客様に満足いただくべく努力を重ねています。

当連結会計年度における研究開発費の総額は、17,972百万円であります。

 

当社研究先行開発本部においては、環境貢献企業における研究部門として、精緻でかつ高度な分析・解析技術をベースに物質構造や反応機構等の解明による新素材開発やシミュレーション技術の開発を行い、環境にやさしいタイヤ材料の開発や電子材料用素材・省エネルギー関連への適用技術の開発などを中心に技術の先端に挑戦しています。

  研究先行開発本部の研究開発費の金額は、929百万円であります。

 

・信州大学と劣化なくリサイクル可能な高分子微粒子から亀裂が進みにくいゴム材料を開発

信州大学学術研究院(繊維学系)の鈴木大介准教授らの研究グループと共同で、高分子微粒子※1を活用し有機溶剤や補強剤などの添加剤を使わずに、亀裂(クラック)に対して高い耐久性を有するゴム材料を開発しました。本研究で得た知見をもとにさらに研究を進めることで、人や環境にやさしく、より安全で耐久性の高いタイヤやゴム製品の開発に繋げることが期待できます。また、開発したゴム材料は簡単に劣化なくリサイクルすることが可能であり、サーキュラーエコノミーへの貢献も期待できます。

この微粒子フィルムは超分子化合物※2として知られるロタキサン分子※3を微粒子の内部に架橋剤として導入することで、補強剤などその他の添加剤を一切使用せずに、切れ目から亀裂が広がりにくい性質を持たせることに成功しました。また、この微粒子フィルムはゴム材料としての高い伸縮性も維持しています。

さらに、微粒子フィルムは環境負荷の小さい水とエタノールの混合溶媒に浸すだけで微粒子個々に分解することができます。その後、揮発性の高いエタノールのみを蒸発させて元の微粒子と水から成る分散水溶液に戻すことができるため、同じ微粒子フィルムを簡単に劣化なく再生することが可能です。

なお、本成果は米国化学会のLangmuir誌に掲載されました。

※1:高分子微粒子とはマイクロスケール(1マイクロメートル=100万分の1メートル)より小さい高分子の粒子。

※2:複数の分子が比較的弱い相互作用によって秩序高く会合して形成される分子集合体。分子を集合させることで、分子の機能を制御したり、新機能を発現することができる。

※3:ロタキサン分子は環状分子に軸分子が貫通し、その環状分子が軸分子から抜けないようにした構造を有する分子集合体。

 

先端計測と計算科学を組み合せた化学反応可視化技術によりゴムとスチールコードの接着老化メカニズムを解明

“人とAIとの協奏”によってデジタル革新を目指すAI利活用構想「HAICoLab(ハイコラボ)」に基づき、先端計測と計算科学を組み合わせた化学反応可視化技術を開発し、タイヤ内のゴムとスチールコードの接着老化反応のメカニズムを解明しました。接着老化を抑制する研究に応用することで、耐久性を大幅に高めたタイヤなどの開発が期待できます。本研究は名古屋大学唯研究室、国立研究開発法人理化学研究所、北陸先端科学技術大学院大学ダム研究室、高輝度光科学研究センターとの共同研究により実施しました。本研究の論文はオープンアクセスの科学誌「Communications Materials」に掲載されています。

当社は2020年に「HAICoLab」を策定し、人が設定する仮説に沿ったデータの生成・収集とAIによる予測・分析・探索を繰り返すことで未踏領域での知見の発見を目指しています。これまでにも同構想に基づきゴムの配合物性値予測や配合設計、タイヤの特性値予測システムなどを開発しており、今後も全社的にAI利活用を推進していきます。

 

セグメントごとの研究開発活動を示すと、次のとおりであります。

 

(1)タイヤ

既存事業における強みの「深化」と、大変革時代のニーズに応える新しい価値の「探索」を同時に推進し「YX2023」の次世代の成長に向けた「変革」を図ることを目標とし以下のような活動をしました。

当連結会計年度における研究開発費の金額は、15,127百万円であります。

 

1)キャンピングカー専用タイヤ「BluEarth-Camper」を新発売、CP規格適合サイズをラインアップ

2023年3月に、高荷重に対応し、高い耐久性と操縦安定性を両立した当社初のキャンピングカー専用タイヤ「BluEarth-Camper(ブルーアース・キャンパー)」を日本国内で発売しました。

キャンピングカーは高荷重、高重心の車両特性による運転時のふらつきなどが発生しやすく、それに対応するタイヤ商品がキャンピングカーユーザーより求められており、「BluEarth-Camper」はその要望に応えるためキャンピングカー専用タイヤとして開発し、高い耐久性と操縦安定性を両立しています。さらに雨の日の運転にも配慮し、優れたウェット性能を実現しています。構造には専用設計を採用し、トレッド全体にベルトカバーを配置したフルカバー構造とし、ベルト部の耐久性を向上させています。ビードフィラーには低発熱のコンパウンドを採用し、負荷時の発熱を低減することにより高荷重への耐久性を高めました。トレッドパターンには実績のある、雨に強い「BluEarth-Van RY55」の技術・デザインを採用し、高硬度のキャップコンパウンドを組み合わせることで、運転時のふらつきの抑制と優れた操縦安定性を実現します。また、タイヤサイドにはキャンピングカーにふさわしく雄大な山岳をモチーフにしたデザインを施し、キャンプやアウトドアをイメージさせる外観に仕上げました。

 

2)商用ピックアップトラック向けオールテレーンタイヤ「GEOLANDAR A/T XD」を北米と豪州で発売

2023年3月に、SUV・ピックアップトラック用タイヤブランド「GEOLANDAR(ジオランダー)」の新商品として、フルサイズピックアップトラックなど商用車両向けのオールテレーンタイヤ「GEOLANDAR A/T XD(ジオランダー・エーティー・エックスディー)」を北米とオーストラリアで発売いたしました。

 「GEOLANDAR A/T XD」は鉱業や農作業などの現場で用いられる商用車両向けに、過酷な使用環境に耐える性能を備えたオールテレーンタイヤです。開発にあたっては耐久性に主眼を置きつつ、オフロードや雪上などでの悪路走破性、ロングライフ性能を追求しました。冬用タイヤとして認められた証「スノーフレークマーク」を取得しており、冬季の使用にも対応します。

 

3)EVバスでタイヤソリューションサービスの実証実験を開始

2023年3月より、当社が開発したタイヤ内面貼り付け型空気圧センサーとタイヤ空気圧遠隔監視システム(Tire air Pressure Remote access System=TPRS)のEVバスでの実証実験を神奈川中央交通㈱の協力の下、開始しました。同実験は神奈川中央交通㈱が神奈川県平塚市で運行しているEVバスを使用しています。

当社は輸送事業者向けのタイヤソリューションサービスとして、タイヤ空気圧モニタリングシステム「HiTES(ハイテス)」とタイヤ運用を総合的にサポートするタイヤマネジメントシステム「T.M.S(ティーエムエス)」を展開しています。今回、すでに乗用車向けとしてカーシェアリング事業者やタクシー事業者と行っている実証実験を初めてEVバスで行い、EV車両に求められるエネルギー消費の効率化と「TPRS」の精度向上の効果を検証します。

車両のEVシフトが世界的に本格化する中、高レベルな燃費(電費)性能、耐久性、静粛性がタイヤに求められるEVバスで実施することにより、EVバスにおいても経済性や安全性の向上、効率的なタイヤ運用に貢献できるソリューションサービスの確立を目指します。併せてEVバスに対応するタイヤ開発にも活かします。

 

4)EV 専用ウルトラハイパフォーマンスサマータイヤ「ADVAN Sport EV」を発売

2023 年秋頃より、EV 専用ウルトラハイパフォーマンスサマータイヤ「ADVAN Sport EV(アドバン・スポーツ・イーブイ)」を、欧州などで順次発売します。

 「ADVAN Sport EV」は、当社のハイパフォーマンスカー向けタイヤである「ADVAN Sport V107(アドバン・スポーツ・ブイイチマルナナ)」をベースに、EV をはじめとした電動車の代表的なニーズである「低電費」「静粛性」に応えるべく開発した、プレミアムEV 向けウルトラハイパフォーマンスサマータイヤです。当社はすでにBMW やメルセデス AMG などのプレミアムEV を含む様々な電動車向けに新車装着(OE)用タイヤを納入しており、「ADVAN Sport EV」にはそれらの開発で培った技術を惜しみなく投入しています。

 「低電費」については、OE タイヤ開発で実績のある低転がり抵抗のコンパウンドを採用することで航続距離の拡大に貢献します。また、ウェット性能も高い次元で両立しており、濡れた路面での安全性を提供します。「静粛性」については、専用設計のポリウレタンフォーム「SILENTFOAM(サイレントフォーム)」をタイヤの内面に貼り付けることで、走行時に路面の凹凸により発生する空洞共鳴音を低減し、不快なノイズを減らすことで快適な車内空間を作り出します。タイヤサイドには「SILENTFOAM」の刻印を施しています。

 

<YOHT>

革新、技術、低コスト生産により、商品のライフサイクルを通じて最も安いコストで最高の価値をお客様に提供するべく活動をしております。

1)各種展示会への出展

2023年1月から3月にかけては、世界最大規模の建設機械展示イベントであるCONEXPO-CON/AGG(コネクスポ-コン/アグ)への出展や各種プレスイベントの企画、開催等を通じて、製品及びサービスを理解していただく場を設けました。2023年4月から6月にかけては、スウェーデンで行われる林業博覧会SWEDISH FORESTRY EXPO2023(スウェーディッシュフォレスト―リーエクスポ2023)への出展、その他各種プレスイベントの企画、開催等を通じて、製品およびサービスを理解していただく場を設けました。2023年7月から10月にかけては、北米最大級の屋外農機展FARM PROGRESS SHOW 2023(ファームプログレスショー2023)への出展や各種プレスイベントの企画、開催等を通じて、製品およびサービスを理解していただく場を設けました。2023年10月から12月にかけては、ドイツで行われる世界有数の農業機械見本AGRITECHNICA 2023(アグリテクニカ 2023)への出展や各種プレスイベントの企画、開催等を通じて、製品およびサービスを理解していただく場を設けました。

 

2)新商品の発売

多くの商品を市場に投入し販売拡大に努めており、商品のサイズラインナップ拡充を行いました。

 

(2)MB

「成長性・安定性の高いポートフォリオへの変革」をテーマに掲げ、安定収益の確保を目指した技術開発を積極的に行いました。

当連結会計年度における研究開発費の金額は、1,593百万円であります。

 

1)耐熱性コンベヤベルトとして好評を博している「HAMAHEAT」シリーズから高温耐熱性コンベヤベルト「HAMAHEAT Super 80(ハマヒート・スーパーハチジュウ)」を発売

高温耐熱性ベルトの主要業種は鉄鋼やセメントであり、焼結鉱※1やコークス※2、焼結成品※3、クリンカー※4など高温または中温の物質を運搬する用途で使用されます。搬送物の温度や環境温度などの使用条件によりベルト表面の温度は上昇し、ベルトが劣化することで寿命が短くなるため、以前より熱によるベルトの劣化を防ぐ商品が求められていました。

「HAMAHEAT Super 80」は、高温耐熱性が非常に高く評価されている「HAMAHEAT」シリーズのハイグレード商品「HAMAHEAT Super 100」をベースに、より使用条件に合わせて性能を最適化し、コストパフォーマンスに優れた商品の提供を目指して開発したミドルグレード商品です。耐熱老化特性及び耐摩耗性能に優れ、許容ベルト表面温度180℃までの高温搬送物、特にセメントのクリンカー搬送用途に最適なコンベヤベルトです。

※1:粉状にした鉄鉱石に粉コークスと石灰石を混ぜ一定の大きさに焼き固めた物

※2:石炭を高温で蒸し焼きにして抽出した物

※3:金属やセラミックスの粉末を成形し融点より低い温度で焼き固めた物

※4:石灰石などをキルンで焼成して作るセメント原料であり、鉱物などが焼き固まった物

 

2)中温耐熱性と難燃性を兼ね備えた難燃中温耐熱性コンベヤベルト「FLAME GUARD #2110(フレイムガード・ニセンヒャクトオバン)」を発

耐熱性と難燃性を両立した難燃耐熱性ベルトとしては、2021年に発売した難燃高温耐熱性ベルト「FLAME GUARD Super 100(フレイムガード・スーパーヒャク)」に続き、第2弾商品となります。近年、焼結鉱※1やコークス※2、焼結成品※3など高温または中温の物質を運搬するコンベヤベルトは、熱によるベルトの劣化を防ぐ耐熱性に加えて、安全性をより高めるため、ベルトの燃焼を防ぐ難燃性(自己消火性)を有する商品のニーズが高まっています。横浜ゴムはこうしたニーズに応えるため、様々な耐熱性ベルトや難燃性ベルトを生み出してきたゴム配合技術を駆使し、中温域において両性能を併せ持つ「FLAME GUARD #2110」を開発しました。「FLAME GUARD #2110」は、国内外で中温耐熱性が高く評価されている耐熱性コンベヤベルト「HAMAHEAT #2110」をベースに開発した商品です。耐熱性能は「HAMAHEAT #2110」と同様の運搬物温度70~200℃(塊状:70~200℃、粉状:70~150℃)、許容ベルト表面温度60~100℃を確保しながら、日本産業規格(JIS)のJIS K6324:2013 難燃性コンベヤゴムベルト3級の難燃性を実現しています。

※1:粉上にした鉄鉱石に粉コークスと石灰石を混ぜ一定の大きさに焼き固めた物

※2:石炭を高温で蒸し焼きにして抽出した物

※3:金属やセラミックスの粉末を成形し融点より低い温度で焼き固めた物

 

3)難燃超耐摩耗性コンベヤベルト 「FLAME GUARD SWR SWR‐70 」を発売

「FLAME GUARD SWR-70」は、製鉄所での焼結鉱やコークス搬送ライン、石炭火力発電所での石炭搬送ラインでの使用を想定し開発しました。同商品は近年、安全性の面からニーズが高まっている難燃性(自己消火性)に加え、耐摩耗性の向上でベルトの交換周期を伸ばしランニングコストを削減できるほか、安定的な操業に寄与します。

特殊配合ゴムにより自己消火性を持つ「FLAME GUARD 」シリーズとして、難燃性、難燃超耐摩耗性、難燃重耐油性、難燃中温耐熱性、難燃高温耐熱性のコンベヤベルトを品揃えしています。今回、横浜ゴムの独自商品である世界トップレベルの耐摩耗性を実現したコンベヤベルト「Tuftex α」の開発で培われた技術を使用し、ゴム配合の最適化を図ることで、従来の難燃超耐摩耗性コンベヤベルト(FLAME GURAD SWR)の耐摩耗性を30% 向上させた「FLAME GUARD SWR SWR-70」を開発しました。

 

4)護衛艦向け複合アンテナの共同開発で防衛基盤整備協会賞を受賞

日本電気㈱および三波工業㈱と取り組んだ護衛艦向け複合通信空中線「NORA-50(通称:UNICORN)」の開発で、公益財団法人防衛基盤整備協会より「令和5年度防衛基盤整備協会賞」を受賞しました。同賞は防衛装備庁後援のもと、防衛装備品の開発や生産において特に優れた業績をあげた個人やグループに贈られるものです。

※UNIfied COmplex Radio aNtennaの略で、ステルス性向上を目的に、従来甲板上の柱(マスト)の複数箇所に取り付けられていた様々な空中線(アンテナ)を1本の支柱に集約したもの。優れたステルス性だけでなく、アンテナの最適配置により外部から発信された電波の最大探査距離を向上したほか、整備および取り付け工程の簡略化を実現しました。現在、海上自衛隊の「もがみ」型護衛艦に装備されています。横浜ゴムが開発を担当したのは「UNICORN」全体を覆うアンテナ用カバー(レドーム)で、これまで航空機用のレドーム開発で培ってきた技術を活かし、電波透過性を最大限高めながら、基本性能である耐候性はもちろん、落雷からアンテナを保護する耐雷性も兼ね備えています。

 

 

上記のほか、ゴルフクラブ等のスポーツ用品に係る研究開発費が 322百万円あります。