文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 当社グループを取り巻く経営環境
長期化するウクライナ情勢に加え、中東情勢の緊迫化などによるエネルギー価格および原材料価格の高止まり、世界的な物価上昇や中国の景気減速など、国際情勢における不確実性は高まっています。また、国内においてもコロナ禍後の社会・経済活動の正常化が進み、景気は緩やかに持ち直しの動きが見られるものの、資源・資材価格の高騰、労働市場における需給の逼迫など引き続き不安定要素を抱える状況が続いています。
こうした中で当社グループを取り巻く市場環境を見ると、国内においては、政府による「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」(2021年度から2025年度までの5年間で約15兆円程度の事業規模を想定)策定後も、改正国土強靱化基本法が成立(2023年6月)する等、公共事業分野において引き続き安定的な市場機会が見込まれます。また、国内外でのグリーンエコノミーへの政策転換の動き等が活発化しており、資源循環や生物多様性ビジネス市場の拡大も期待されます。更には、2050年までにカーボン・ニュートラルを目指す政府方針のもと、洋上風力発電等の再生可能エネルギー分野の市場拡大も予想されます。こうした点を踏まえ、当社グループの各事業の市場環境を概観すると以下のようになります。
《インフラ・メンテナンス事業》
国内においては、国土強靭化計画の進展や高度成長期に建設された各種社会インフラの老朽化を背景に、公共部門を中心にインフラの補修・維持管理や建替え等に関する需要が今後も継続することが予想されます。また、海外においても先進国を中心に同様な需要増が期待されます。
《防災・減災事業》
近年は、台風や豪雨等による自然災害が毎年のように発生・激甚化しており、そうした災害からの復旧工事の需要や災害防止のための需要、災害発生の予兆把握に関する需要などが高まる傾向があります。こうした、国土強靭化計画の進展や防災・減災意識の高まりを背景に、同事業関連の需要は今後も拡大していくことが期待されます。
《環境事業》
環境に関する社会的関心・意識は近年大きく高まってきており、当社グループが実施する環境アセスメントやアスベスト対策サービスなどに加え、脱炭素社会や資源循環型社会の形成に繋がる業務への需要が高まっていくことが期待されます。また、自然災害の多発化や資源循環という観点からも、当社グループが提供する災害廃棄物処理支援関連サービスへの需要が堅調に推移することが期待されます。
《資源・エネルギー事業》
世界的な脱炭素化の流れや政府による「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」策定に伴い、再生可能エネルギーへの関心が高まっており、当社グループの洋上風力発電関連支援サービス等に対する需要も高まっていくことが期待されます。また、政府の原子力政策の見直しに伴い、原子力発電所関連の地質調査などの需要も高まることが期待されます。
② 経営方針並びに対処すべき課題
当社グループは、こうした経営環境を踏まえ、長期ビジョン『OYOサステナビリティビジョン2030』および中期経営計画『OYO中期経営計画2026』を策定しました。『OYOサステナビリティビジョン2030』のアクションプランとして策定しました『OYO中期経営計画2026』の遂行により、社会・環境価値と事業収益を向上させ、持続可能な社会の実現への貢献を目指します。
(1)『OYO Advance 2023』の振返り
応用地質グループは、サステナブル経営の推進を基本方針とする中期経営計画『OYO Advance 2023』を通して、4つのセグメント(インフラ・メンテナンス、防災・減災、環境、資源・エネルギー)にて「社会価値」「環境価値」「顧客価値」の最大化に取り組んでまいりました。また、デジタルトランスフォーメーション(DX)を主軸としたイノベーション戦略にも注力してまいりました。加えて、政府のカーボン・ニュートラル方針や第6次エネルギー基本計画の策定などを背景に、再生可能エネルギー市場拡大の動きが加速するなかで、洋上風力発電関連業務を伸長させる等、着実に業容拡大を図ってまいりました。
一方で、事業環境の変化・複雑化への対応、事業活動の重複・効率性の低下等により事業収益性の向上には課題を残す結果となりました。こうした課題を踏まえた上で、『OYO Advance 2023』で得られた成果を拡大し、当社グループの持続的な成長に向けて事業収益性の向上と資本コストや株価を意識した経営のさらなる強化の必要性を認識しています。
(2)長期ビジョン:『OYOサステナビリティビジョン2030』
応用地質グループは、人と地球の課題を解決し、持続可能な社会を実現するために、これまで、培ってきた技術資産に新たな創造的技術を加え、安全・安心を技術で支えるサービスを展開してまいりました。これからも「サステナブル経営」を推進し、当社グループの多様な経営資源を最大限に活用することで、近年ますます多様化する地球規模の社会課題に対応いたします。
そこでSDGs最終年の2030年における人と地球の未来に対する社会課題を抽出し、当社グループが取り組むべきことを明確にするために『OYOサステナビリティビジョン2030』を策定いたしました。
ありたい姿を①100年企業に向けた持続的成長、②社会課題の解決に貢献する企業、③「働きやすさ」と「働きがい」を実現する企業として定め、その実現に向けてマテリアリティごとに当社グループが対応できる社会課題や貢献できることを整理しました。
(3)中期経営計画:『OYO中期経営計画2026』の位置づけ
応用地質グループは、『OYOサステナビリティビジョン2030』のアクションプランとして中期経営計画『OYO中期経営計画2026』を策定しました。
この中期経営計画では、①セグメント戦略の推進、②バランスシートの最適化、③サステナブル経営の強化を3つの基本方針とし、社会・環境価値と事業収益性を向上させ、持続可能な社会実現への貢献を目指してまいります。
(4)『OYO 中期経営計画2026』基本方針等
A.セグメント戦略の推進
a. セグメントの再編
・市場特性に即した組織・セグメントの再編による事業の効率化と収益性向上
(新セグメント:①防災・インフラ、②環境・エネルギー、③国際)
・グループシナジーの最大化と製品・サービスの見直しによる企画開発・販売力の強化
b. 未来創造・成長投資
・市場ニーズに即したイノベーション開発投資
B.バランスシートの最適化
a. キャッシュアロケーション
・ノンコア資産の売却、売上債権回転期間の短縮化推進、グループ内余剰資金の活用等による資本効
率性の向上
b. 株主還元施策
・営業キャッシュフローと余剰資金活用による株主還元施策の実施
連結配当性向50%以上、且つDOE2%以上を原則とした配当実施
機動的な自己株式取得の継続
C. サステナブル経営の強化
a. 人材戦略・働き方改革
・セグメント戦略に沿った人材ポートフォリオの拡充
・「働きやすさ」と「働きがい」の実現
b. 気候変動リスク対応
・組織活動ならびに事業活動による脱炭素(GHG排出量削減)の取組み
c. ガバナンス・コンプライアンス
・グループガバナンスの強化
・株主とのエンゲージメントの強化
・コンプライアンスの徹底
D.「資本コストや株価を意識した経営」の実現に向けた対応
a. 2026年度目標:ROE6%以上、営業利益率8%以上とする。
・セグメント戦略の推進を通した事業収益性の向上
・バランスシートの最適化を通した資産/資本効率性の向上、資本構成の最適化
・株主エンゲージメント強化やESG開示情報拡充を通した資本コストの低減
当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みは、以下の通りです。
当社グループは、経営理念として、「人と自然の調和を図るとともに、安全と安心を技術で支え、社業の発展を通じて社会に貢献する」を掲げて、事業活動※、組織活動※を行っています。当社グループが展開する4つの事業セグメント(インフラ・メンテナンス、防災・減災、環境、資源・エネルギー)のすべてが、サステナビリティに深く関わっています。事業活動を通じてお客様にソリューションを提供することで、持続可能な社会の形成に貢献し、「社会価値」「環境価値」「顧客価値」の3つの価値を最大化していくことを目指しています。
※事業活動:お客様、取引先・協力企業など当社グループ外部に向けた活動
※組織活動:当社グループ組織内の活動
なお、2024年2月に、2030年を見据えた長期ビジョンである「OYOサステナビリティビジョン2030」および、2024年から2026年までのアクションプランである「OYO中期経営計画2026」を策定しており、当社ホームページに掲載しております。
本項では、始めにサステナビリティ全般について、「ガバナンス」および「リスク管理」としての経営管理の枠組み、「戦略」としてマテリアリティの取り組み概要を説明し、次に個別テーマである「気候変動」および「人的資本」についての具体的な「戦略」および「指標・目標」を概説いたします。
当社グループは、当社社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置し、その事務局およびグループ全体のサステナビリティ経営推進の調整を行うサステナビリティ推進部を設置しています。サステナビリティ推進委員会は、当社グループのサステナビリティに係わるリスクと機会についての事業方針や活動方針と施策、情報開示などの審議・決定を行っています。重要事項については、年2回以上の頻度で取締役会に報告を行います。
当社社長を全社リスク統括責任者とするリスク管理体制を構築しています。全社リスク統括責任者が、リスク管理規程に従い、当社グループを統括して、グループ全体の経営成績、株価および財政状態などに影響を及ぼすリスクを抽出、共有、監視するとともに、取締役会に適宜報告を行っています。リスク発生の可能性を認識した上で、可能な限り発生の防止に努め、また発生した場合には的確な対応を行います。
リスク管理体制の枠組みの下、サステナビリティ推進委員会を中心にサステナビリティに係わるリスクの管理に取り組んでいます。
当社グループの主要なリスクおよびリスク最小化への対応については、以下のとおりです。
<事業等のリスクと主な対応>
当社グループの経営成績、株価及び財政状態などに影響を及ぼす主要なリスクは以下のようなものがあります。当社グループはこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、可能な限り発生の防止に努め、また発生した場合の的確な対応に努めていく方針です。以下、将来に関する事項は、2023年12月末現在において当社グループが判断したものです。
当社グループでは、SDGsや社会課題への貢献、経営ビジョンの実現に向けて、2021年にマテリアリティを特定しました。社会環境の変化、事業特性等を考慮し、当社グループのサステナブル経営におけるマテリアリティを「事業活動」と「経営基盤となる組織活動」に分けて、合計で8つ特定しています。
<当社グループのマテリアリティ>
なお、上記に示した長期ビジョン「OYOサステナビリティビジョン2030」の策定に合わせ、2024年2月に「マテリアリティ」の一部を変更しています。新しい「マテリアリティ」については、当社ホームページの「マテリアリティ」に掲載しております。
当社グループは、気候変動を含む環境の課題や、気候変動に伴う自然災害の激甚化への対応を重要な経営課題の一つと認識しています。2019年12月、金融安定理事会(FSB)「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同を表明し、TCFDのフレームワークに基づいた重要情報を開示しています。
「気候変動への取り組み (TCFD提言に基づく情報開示)」の詳細については、当社ホームページの「気候変動への対応」に掲載しております。
当社では、1.5℃、2℃、4℃の気候変動関連の3つシナリオにおいて、2030年および2050年に発生する事象、当社に影響のあるリスクおよび機会を検討、想定しました。
応用地質単体における気候変動関連のリスクおよび機会についての影響評価を行いました。リスク管理を通じて、多様化、広域化、激甚化する気候変動に関するリスクや機会に対応していきます。特に、機会については、当社のすべての事業活動が深く関わっており、事業活動を通じてお客様にソリューションを提供することが、持続可能な社会の形成に貢献し、社会・環境価値を高めることになります。
国内グループ会社、国際グループ会社についての影響評価を、引き続き行う予定です。
<応用地質単体の事業に与える影響度が「大」となる主な要因と対応>
短期:3年以内、中期:3年超~10年以内(2030年を含む)、長期:10年超(2050年を含む)
当社グループは、気候変動の関連リスクが経営に及ぼす影響を評価・管理するため、GHG(温室効果ガス:CO2)排出量総量を指標とし、中長期のGHG排出量の削減目標を設定しています。
<GHG(CO2)排出量の削減目標と実績(2023年)> (単位:t-CO2)
※Scope3のCategory8、10、14および15については、該当はありません。
当社グループは、ESGの取り組みにおいて、人的資本、すなわち人こそが価値向上の源泉であると考えています。社員の力を結集することでお客様と社会に価値を提供し、サステナブルな社会の実現に貢献することを目指しています。また、多様な人材は当社グループの成長やイノベーションの源泉として極めて重要な要素であると認識しています。そうした人材重視の観点から、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を含め、人材の多様性の確保や、安全で働きがいのある職場づくりなどを推進しています。
当社グループは、ダイバーシティはイノベーションの源泉であり、多様な人材を受け入れ、社員一人ひとりが持つ個性を活かしながら事業活動を行っていくことが、企業価値向上のために必要不可欠と考えます。こうした考えに基づき、D&Iに関する様々な取り組みを継続的に進めています。2023年では、主に次の2つの取り組みを行っています。
・多様性を重視した採用活動と職場環境づくり
性別や国籍、障がいの有無によらない採用活動を続けるとともに、多様性を有する社員が様々な分野、職位で活躍できるよう職場環境づくりを進めています。また、中途採用者の管理職への登用にも取り組んでいます。
・カジュアルオンラインミーティング
毎月1回、お昼休みにランチを食べながらおしゃべりをするオンラインミーティングです。子育て中の社員が、テーマを決めて雑談をしたり、悩み相談をしたりしています。2023年4月以降9回開催し、女性社員だけでなく男性社員も参加しています。
当社は、2021年に健康経営宣言を表明し、経営理念である「人と自然の調和を図るとともに安全と安心を技術で支え社業の発展を通じて社会に貢献する」を実現するために、健康経営に取り組んでいます。健康経営の取り組みは、「健康経営戦略マップ」をもとに、健康投資と健康投資効果を定量的に把握し、PDCAサイクルを回すことで効果的に進めています。「健康経営戦略マップ」の詳細については、当社ホームページの「健康経営戦略マップ」に掲載しております。
また、2023年4月に当社グループの健康管理センターを設置しました。健康管理センターには、常勤の看護師と非常勤の産業医が所属しており、グループの健康経営推進、健康課題の解決に取組んでいます。
当社グループは、「社員の安全は最優先」と考えています。2021年に策定した「安全方針」に基づき、グループの全社員並びに協力会社を含めた共に働くすべての関係者が一体となって、「労働災害ゼロ」を目指して安全活動を進めています。「安全方針」の詳細については、当社ホームページの「安全方針」に掲載しております。
<応用地質グループ 安全方針の概要>
当社グループの人材マネジメントに関する基本的な考え方を「人材育成方針」として制定しています。詳細については、当社ホームページの「人材育成方針」に掲載しております。
当社では、社員が能力を高め、現場で力を発揮できるように、キャリア教育、テーマ別教育、専門教育などを実施しています。キャリア教育では、社員がキャリアアップを実現できるように、行動原則や業務遂行に必要なスキル、マネジメントについて学ぶ研修を実施しています。
※参加者数は、グループ会社の参加者を含む。
当社は、社員のワークライフ・インテグレーションの向上、生産性の向上を目指し、新たな働き方の創造に取り組んでいます。社内各部署から選出された社員で構成された「働き方革命実行委員会」が推進役となり、社員にとって働きがいのある職場、働きやすい職場の実現に向けた施策を提言しています。2017年に活動を開始し、2023年よりグループ会社の株式会社OXと協働し、AI技術による働き方革命に取り組んでおります。
※女性社員割合および女性管理職割合とも執行役員を除く正社員
※1 第3期(2018~2023年度)特定健康診査等実施計画期間における所属する保険者の種別目標
※2 厚労省「ストレスチェック制度実施マニュアル (2021)」より
※3 厚労省「過労死等防止対策白書 (2021)」より
※4 株式会社アトラエが提供するエンゲージメント解析ツール「Wevox」に参加している企業の平均値
④人的資本投資
働き方革命の取り組みについて、具体的な数値目標を策定するに至っていませんが、今後目標値を策定してまいります。
当社グループの経営成績、株価及び財政状態等に影響を及ぼす主要なリスクは以下のようなものがあります。
当社グループにはこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、可能な限り発生の防止に努め、また発生した場合の的確な対応に努めていく方針であります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの各事業において、公共事業領域は依然として当社の主要市場の一つであり、国及び地方公共団体等は主要顧客になります。国及び地方公共団体等の財政状況の悪化や事業量の縮小に伴う発注量の減少、調達方式の変更、並びに不測の事態に伴う指名停止措置等により、当社グループの営業成績に影響を及ぼす可能性があります。当社は、公共事業に依存した従来型のビジネスモデルからの脱却を進めることで、そうしたリスクの抑制に努めています。
当社グループの各事業は、国内外で事業を展開しています。各事業における海外での事業は、主に北米地区やシンガポールを拠点とした海外グループ会社が、現地通貨建てで取引しているため、為替変動により財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。当社は、必要に応じて為替予約等の措置を検討することで、そうしたリスクの抑制に努めています。
(3) 気候変動や自然災害等に関するリスク
当社グループの各事業は、地震や気候変動に伴う台風・豪雨・河川氾濫等の自然災害、火災等の不測の災害に見舞われた場合には、生産設備やデータの損傷・喪失、人的リソースの喪失等による事業活動の縮退、生産能力の低下などの影響を受ける可能性があります。また、炭素税の導入や環境負荷の少ない設備導入等により事業運営コストが増加する可能性もあります。当社は、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロとするカーボン・ニュートラルを掲げながら気候変動対策に取り組むと同時に、災害等の発生を想定した事業継続計画(BCP)の作成とその定期的な点検・訓練の実施や、気候変動が事業遂行に与える影響を継続的に評価・モニタリングすることで、そうしたリスクを最小限に抑制するよう努めています。
感染症の世界的流行(パンデミック)により、当社グループの事業に対する需要減少、サプライチェーンにおける納品遅延や部材不足、調達コスト増加などにより業績に影響を及ぼす可能性があります。当社は、各種リスクシナリオを想定しながら、そうした影響を最小限に抑える対応を取っております。
(5) 国際紛争・テロ行為に関するリスク
当社グループにおける海外での事業は、新興国や途上国における社会資本整備事業、開発事業を主要な市場と位置付けておりますが、これらの国では、国際紛争やテロ行為が発生する場合があり、紛争活動や武装行為に巻き込まれた場合には、事業の中止もしくは停止など、業務遂行に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、長期化するウクライナ情勢により、エネルギー価格や原材料価格の高騰など、世界経済への影響も継続しています。当社は、随時、諸外国の治安関連情報や最新の経済関連情報の収集を行うことで、そうしたリスクの抑制に努めています。
(6) 知的財産等に関するリスク
当社グループの各事業は、専門技術を用いた各種サービスや製品を提供するとともに、事業を展開する各国において商標登録等も実施していますが、将来的に知的所有権などの使用差し止めや、商標の使用停止、あるいは損害賠償を請求された場合には業績等に影響を及ぼす可能性があります。当社は、適切な知財管理を行うための組織を設置することにより、そうしたリスクの低減に努めています。
(7) 資源価格変動に関するリスク
当社グループの海外子会社の中には、資源探査用の機器やシステムを販売している会社があります。資源価格の低迷や、資源開発市場の縮小などが発生した場合には、子会社の業績等に影響を及ぼす可能性があります。こうしたリスクを低減するため、新しい市場開拓を通して資源依存度の低減を図るなど、事業ポートフォリオの見直しに努めています。
(8) データの偽装・改ざん・流用に関するリスク
当社グループの各事業の遂行過程において、社内ルールに反して各種データの偽装や改ざん、及び過去データ等の流用が発生した場合には、信用失墜や損害賠償請求などが発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。当社は、コンプライアンス教育の徹底や業務監査室による業務プロセスの検証や、業務マニュアルの見直しなどを進めることで、こうしたリスクの顕在化の抑制に努めています。
(9) ITシステムのセキュリティー管理に関するリスク
当社グループの各企業は、ITシステムを活用した業務処理並びに情報管理を行っています。コンピュータウイルスや悪意ある第三者の不正侵入により、ITシステムの停止やランサムウェア攻撃、情報漏洩等が発生した場合には、業務遂行に大きな影響を及ぼす可能性があります。当社は、ITシステムの安全性及び情報セキュリティの強化に努めるとともに、関連する諸規定を整備し、ランサムウェア攻撃に対する防御策強化や外部からの不審メールに対する定期的な訓練を行うなどリスクの低減に努めています。
当社グループの安定的成長を持続させるためには、高度な専門性を有する優秀な人材の確保・育成が必要不可欠です。しかしながら、少子高齢化による労働人口の減少が進む中で、こうした優秀な人材の確保・育成が進まない場合には、業務遂行や業績等に影響を及ぼす可能性があります。当社は、社員の健康保持・増進活動を組織で支える健康経営に取り組むと同時に、働きやすい職場の形成や従業員のエンゲージメント向上、教育制度の充実、安定的な新卒者採用並びに優秀な中途採用者の確保等を推進することにより、そうしたリスクの低減に努めています。
(11) 法的規制に関するリスク
当社グループは、会社法、金融商品取引法、税法、労働法、独占禁止法及び建設業法等の法規制を始め、品質に関する基準、環境に関する基準、会計基準等、事業展開している国内外のさまざまな法規制の適用を受けており、社会情勢の変化等により、将来において、改正や新たな法的規制が設けられる可能性があります。その場合には当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。さらに、当社グループが直接的または間接的に関係する取引の一部が法規制等に違反していると規制当局が判断した場合には、課徴金等の行政処分や社会的な信用の失墜等の影響を受ける可能性があります。当社は、随時、関連する法規制の最新情報や改正動向に関する情報収集に努めるとともに、社内での法令順守教育を徹底することでリスクの抑制に努めています。
(12) 保有資産の減損リスク
当社グループは、長期的な取引関係の維持などを目的として株式等の有価証券を保有しており、保有する有価証券の大幅な市場価格の下落、当該企業の財政状態の悪化等があった場合、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは国内外の事業拠点の不動産を所有していますが、不動産価格の下落等があった場合、「固定資産の減損に係る会計基準」を適用し、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
繰延税金資産は、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を判断して計上しています。将来の課税所得の見積り等に大きな変動が生じた場合、あるいは制度面の変更等があった場合には繰延税金資産が減少し、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
売上高は、656億2百万円(前年同期比111.2%)と前連結会計年度から65億9千1百万円増加いたしました。
売上総利益は、194億7千1百万円(前年同期比109.3%)と前連結会計年度から16億5千7百万円増加いたしました。
販売費及び一般管理費は、166億2千9百万円(前年同期比108.3%)と前連結会計年度から12億7千万円増加いたしました。
営業利益は、28億4千2百万円(前年同期比115.8%)と前連結会計年度から3億8千7百万円増加いたしました。売上高営業利益率は4.3%となり、前連結会計年度から0.1ポイント増加いたしました。
営業外損益は、7億5千3百万円の利益となり、前連結会計年度から2億3千7百万円増加いたしました。この結果、経常利益は前連結会計年度に比べ6億2千5百万円増加し、35億9千5百万円となりました。
特別損益は、5億6千8百万円の利益となり、前連結会計年度から3億7千4百万円増加いたしました。この結果、税金等調整前当期純利益は前連結会計年度に比べ9億9千9百万円増加し、41億6千3百万円となりました。
当連結会計年度における税金費用は、1億6百万円と前連結会計年度に比べ12億4千9百万円減少いたしました。また、当連結会計年度の非支配株主に帰属する当期純利益は4千9百万円(前年同期は1百万円の損失)となりました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は40億6百万円となり、前連結会計年度に比べ21億9千8百万円増加いたしました。
(インフラ・メンテナンス事業)
受注高は223億7百万円(前期比93.9%)となりました。売上高は240億3千4百万円(同121.1%)と前期を上回り、営業利益も3億9千1百万円(同115.0%)と増益となりました。
(防災・減災事業)
受注高は164億3千8百万円(前期比116.1%)となりました。売上高は141億5千7百万円(同104.5%)と増収となりましたが、営業利益は4億6千万円(同97.0%)と減益となりました。
(環境事業)
受注高は103億4千6百万円(前期比100.9%)となりました。売上高は、104億2千3百万円(同105.0%)と増収となり、営業利益も10億8千3百万円(同101.9%)と増益となりました。
(資源・エネルギー事業)
受注高は177億5千1百万円(前期比128.7%)となりました。売上高は、169億8千7百万円(同108.2%)と増収となり、営業利益も8億9千5百万円(同157.9%)と増益となりました。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ113億1百万円増加し、1,006億6千6百万円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末に比べ73億9千1百万円増加し、745億6百万円となりました。
固定資産は、前連結会計年度末に比べ39億9百万円増加し、261億5千9百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ67億5千2百万円増加し、255億7千2百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ45億4千8百万円増加し、750億9千3百万円となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ36億3千3百万円増加(前期は85億5百万円の資金減)し、187億2千7百万円(前期比124.1%)となりました
営業活動によるキャッシュ・フローは、営業活動の結果、得られた資金は8億7千万円(前期は41億3千6百万円の資金減)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資活動の結果、得られた資金は5億9千8百万円(前期は10億2千万円の資金減)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、財務活動の結果、得られた資金は19億6千1百万円(前期は39億7百万円の資金減)となりました。
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループが中期経営計画 OYO Advance 2023 で目標としている経営指標における実績値は次のとおりであります。
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度における世界経済は、長期化するウクライナ情勢に加え、中東情勢の緊迫化などによるエネルギー価格および原材料価格の高止まり、世界的な物価上昇や中国の景気減速など、引き続き先行き不透明な状況が続いています。わが国経済も、新型コロナウイルス感染症が5類感染症へと移行したことなどから、社会・経済活動の正常化が進み、景気は緩やかに持ち直しの動きが見られたものの、資源・資材価格の高騰、労働市場における需給の逼迫など、依然として厳しい状況下にあります。
当社グループを取り巻く市場環境は、インフラの老朽化や自然災害の激甚化・頻発化等が大きな社会課題となる中、国民の生命・財産・暮らしを守る国土強靭化の取組みを継続的・安定的に実施していくための「改正国土強靱化基本法」の成立等により、インフラ・メンテナンス事業分野及び防災・減災事業分野は今後も安定した市場環境の継続が期待されます。また、環境事業分野では資源循環や生物多様性確保など、国内外でのグリーンエコノミーへの政策転換の動き等が活発化していることから、市場機会の広がりが予想されます。更に、資源・エネルギー事業分野でもカーボン・ニュートラルへの貢献が期待される再生可能エネルギー市場、特に洋上風力発電市場の拡大がグループ事業の大きな成長機会となっています。
このような状況の下、当社グループは中期計画「OYO Advance 2023」に沿って、サステナブル経営の積極推進を基本方針に4つの事業セグメントを通じて「社会価値」「環境価値」「顧客価値」の3つの価値の最大化に取り組んでまいりました。
こうした取り組みの結果、当連結会計年度の業績は、受注高は668億4千4百万円(前期比107.9%)となりました。売上高は656億2百万円(同111.2%)、営業利益は、28億4千2百万円(同115.8%)と増収増益の結果となりました。これにより、経常利益は35億9千5百万円(同121.1%)、親会社株主に帰属する当期純利益は40億6百万円(同221.5%)と大幅増となりました。
(売上高)
売上高は、656億2百万円(前年同期比111.2%)と前連結会計年度から65億9千1百万円増加いたしました。これは、洋上風力関連事業を中心に当社の売上高が増加したことに加え、当期から新たに連結対象に加わった国内子会社および昨年買収したシンガポール子会社の寄与等により、売上高が増加したことによります。
(売上総利益)
売上総利益は、194億7千1百万円(前年同期比109.3%)と前連結会計年度から16億5千7百万円増加いたしました。これは、上記のとおり売上高が増加したことによるものです。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
販売費及び一般管理費は、166億2千9百万円(前年同期比108.3%)と人件費の増加などにより前連結会計年度から12億7千万円増加いたしました。営業利益は、販売費及び一般管理費の増加はありましたが、売上高の増加により、28億4千2百万円(前年同期比115.8%)と前連結会計年度から3億8千7百万円増加いたしました。売上高営業利益率は4.3%となり、前連結会計年度から0.1ポイント増加いたしました。
(営業外損益、経常利益)
営業外損益は、7億5千3百万円の利益となり、前連結会計年度から2億3千7百万円増加いたしました。この結果、経常利益は前連結会計年度に比べ6億2千5百万円増加し、35億9千5百万円となりました。
(特別損益、税金等調整前当期純利益)
特別損益は、5億6千8百万円の利益となり、前連結会計年度から3億7千4百万円増加いたしました。これは、主に当連結会計年度において、投資有価証券の売却益5億8千5百万円があったことによります。この結果、税金等調整前当期純利益は前連結会計年度に比べ9億9千9百万円増加し、41億6千3百万円となりました。
(法人税等(法人税等調整額を含む)、非支配株主に帰属する当期純利益、親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度における税金費用は、1億6百万円と前連結会計年度に比べ12億4千9百万円減少いたしました。また、当連結会計年度の非支配株主に帰属する当期純利益は4千9百万円(前年同期は1百万円の損失)となりました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は40億6百万円となり、前連結会計年度に比べ21億9千8百万円増加いたしました。
当社グループの事業セグメント別の業績に関する分析は、以下のとおりです。
(インフラ・メンテナンス事業)
前期は第4四半期から連結に加わったシンガポール子会社の2022年9月末時点での受注残高(48億3千1百万円)が加算されるという要因で受注高が大きく増加しましたが、当期はその反動もあり受注高は223億7百万円(前期比93.9%)と前期を下回る結果となりました。売上高は、当期から新たに連結対象に加わった国内子会社および昨年買収したシンガポール子会社が寄与する形となり240億3千4百万円(同121.1%)と増収となりました。これにより、営業利益は3億9千1百万円(同115.0%)と増益となりました。
(防災・減災事業)
受注高は、国内での地震防災関連事業および海外の地震計関連事業が引き続き好調に推移し、164億3千8百万円(前期比116.1%)となり、売上高も141億5千7百万円(同104.5%)と増収となりました。一方、営業利益は、外注費・人件費増等による原価率の悪化と販管費の増加、海外子会社の販管費増加等により4億6千万円(同97.0%)と減益となりました。
(環境事業)
福島環境再生支援事業の安定推移に加え、国内グループ会社のゼロカーボン政策支援業務等も順調に推移したことから、受注高は103億4千6百万円(前期比100.9%)と前期を上回り、売上高は、104億2千3百万円(同105.0%)、営業利益は10億8千3百万円(同101.9%)と増収増益となりました。
(資源・エネルギー事業)
国内の洋上風力関連事業が引き続き堅調に推移したのに加え、海外グループ会社の業績持ち直し等も寄与し、受注高は177億5千1百万円(前期比128.7%)と増加しました。この結果、売上高は、169億8千7百万円(同108.2%)、営業利益も8億9千5百万円(同157.9%)と増収増益となりました。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ113億1百万円増加し、1,006億6千6百万円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末に比べ73億9千1百万円増加し、745億6百万円となりました。これは主として、洋上風力発電関連業務が順調に推移したこと等による売上の増加に伴い、完成業務未収入金及び契約資産が49億1千6百万円増加したこと、及び現金及び預金が20億6千7百万円増加したことによります。
固定資産は、前連結会計年度末に比べ39億9百万円増加し、261億5千9百万円となりました。これは主として、子会社の取得に伴いのれんが11億1千6百万円増加したこと及び、繰延税金資産が10億5千万円増加したことによります。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ67億5千2百万円増加し、255億7千2百万円となりました。
流動負債は、前連結会計年度末に比べ31億6千4百万円増加し、157億7千2百万円となりました。これは主として、短期借入金が4億3千9百万円増加し、1年内返済予定の長期借入金が7億3千7百万円増加したこと、業務未払金が7億9千8百万円増加したこと、及び流動負債のその他が8億4百万円増加したことによります。
固定負債は、前連結会計年度末に比べ35億8千8百万円増加し、98億円となりました。これは主として、長期借入金が28億3千2百万円増加したことによります。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ45億4千8百万円増加し、750億9千3百万円となりました。これは主として、利益剰余金が28億8千4百万円増加したこと、為替相場が大きく変動したことにより為替換算調整勘定が13億7千1百万円増加したことによります
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ36億3千3百万円増加(前期は85億5百万円の資金減)し、187億2千7百万円(前期比124.1%)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動の結果得られた資金は8億7千万円(前期は41億3千6百万円の資金減)となりました。これは主として、洋上風力関連の大型案件で売上債権が多く計上されたことから、売上債権の増加41億4千7百万円(前期は74億1千7百万円の資金減)や棚卸資産の増加10億4千2百万円(前期比115.9%)の資金減があった一方で、税金等調整前当期純利益41億6千3百万円(前期比131.6%)や、減価償却費15億8千5百万円(同122.8%)、未払消費税等の増加7億3千6百万円(同140.6%)等の資金の増加要因があったことによります。
投資活動の結果得られた資金は5億9千8百万円(前期は10億2千万円の資金減)となりました。これは主として、投資有価証券の売却による収入8億5千8百万円(前期比301.3%)等の資金の増加要因があったことによります。
財務活動の結果得られた資金は19億6千1百万円(前期は39億7百万円の資金減)となりました。これは主として、配当金の支払額12億3百万円(同87.1%)等の資金減があった一方で、長期借入れによる収入35億円(前期はなし)等の資金増加要因があったことによります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、以下の通りであります。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、外注費及び人件費並びに販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、研究開発、設備投資及びM&A等によるものであります。これらの資金につきましては、原則として自己資金で賄うこととしております。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの詳細につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報」をご参照ください。
なお、当社グループのキャッシュ・フロー関連指標の推移は次のとおりであります。
※ 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注) 1 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値によって算出しております。
2 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
3 キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
4 2023年12月期において、企業結合に係る暫定的な会計処理の確定を行っており、2022年12月期の各数値については、暫定的な会計処理の確定の内容を反映させております。
5 2022年12月期のキャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオは、営業キャッシュ・フローがマイナスであるため記載しておりません。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)のとおりです。なお、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、特に重要と考えるものは以下のとおりであります。
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 重要な会計上の見積り」に記載しております。
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、将来キャッシュ・フローの見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。
当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
該当事項はありません。
当社グループは、事業基盤となる三次元化技術やIoT技術および地盤情報データベース等の基盤技術の研究開発を推進するとともにビジネスモデルの変革や業務効率化が図れる分野に対して積極的にDXを推進しています。これらの研究開発成果をインフラ・メンテナンス事業、防災・減災事業、環境事業、資源・エネルギー事業の4つのセグメントにおいて活用し、顧客ニーズを第一優先としたソリューション創出に取り組んでいます。当社グループの核となるべき基盤技術の開発およびその開発成果をソリューションにするための開発を技術本部が主導、業務の効率化やDX技術を利用した新規事業の開発をDX推進本部が主導し、さらに両本部と事業主体部門が連携して開発を遂行しています。これにより,新規ビジネスの創出および既存ビジネスの高付加価値ソリューションの創出をスピーディーに実現でき、市場価値・環境価値・顧客価値(ESG)の向上を図ることができます。
社会課題解決に寄与する組織として、2022年に大学等の研究機関と密接に連携した共創ラボを開設いたしましたが、引き続き最新の学術的情報を吸収しながら、自然災害、気候変動、人口減少といった社会問題の解決を行っています。研究成果については、学会やメディアを通じて社会に広く発信しており、2023年は豪雨・台風などの自然災害とそれによる経済被害の推定に関する研究成果を発表いたしました。
海外グループ社を取り巻く状況は、2023年度においてさらに複雑化の様相を呈しています。新型コロナウィルスの蔓延をきっかけに発生したサプライチェーンの混乱による影響、ロシアによるウクライナ侵攻、ガザ地区によるイスラエルとハマスとの紛争、および、これに呼応した武装組織が紅海における海上輸送ルートへの攻撃は、国際物流の混乱、製造に必要なエネルギー、素材、輸送費の高騰を世界規模でもたらしており、これによるグループ社への影響も長期化の様相を呈する状況になっています。
また、中国における景気減速と中国政府による国産化政策は、中国市場の構図を大幅に変化させており、中国市場に依存をしてきた海外グループ社は大きな影響を受けています。
しかし、いかなる状況においても、気候温暖化にともなう風水害や地震災害による脅威の増加、生活環境の悪化は、地球上の全ての人にとって解決するべき共通の課題です。当社グループはこれらの課題解決に向けて必要な研究開発を推進していきます。
当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費の総額は
国内のインフラ・メンテナンス事業セグメントにおいては、道路、トンネル、堤防、建築基礎などのインフラの建設と維持管理に関するソリューション開発を行っております。
老朽化するトンネルの維持管理分野では、走行型の高感度カメラで撮影した8K画像に対してAI技術を活用し、ひび割れの発生状況およびその進行性を把握する技術を開発しています。この技術は、トンネル全体ではなくどの地点で点検を行えば良いのかスクリーニングする技術であり、トンネル点検での人手不足・トンネルの老朽化進行といった社会課題に対して、点検の効率化、コスト縮減などで貢献することができます。
地盤振動を3次元かつリアルタイムで計測・解析し、地盤状況の変化(S波速度構造など)を可視化する技術「OYO Tracker 4D(仮称)」を開発しました。この技術は当社が開発した3次元常時微動トモグラフィ技術をリアルタイムでモニタリングができるように改良したものです。シールドトンネルなどの地下工事や地盤改良工事において発生する地盤の変化をモニタリングし、工事や周辺環境に与える重大な影響を未然に防ぐことで社会に貢献します。
海外グループ社のGEOPHYSICAL SURVEY SYSTEMS,INC.(米国)は、インフラ・メンテナンス用途向けの地中レーダの次世代機の開発、および、それに付随するサービス提供に関わる開発が終了し、FLEX NXシリーズとして販売を開始しました。
前期につづいてアスファルト舗装道路のアスファルト材料の材質管理、舗装工事の品質管理などに有効な装置としてPaveScanシリーズの適用拡大を図っており、米国以外の複数の国におけるアスファルト舗装道路での適用検証を行っています。
当連結会計年度における研究開発費の金額は
近年の気候変動による局所的大雨の増加により、地下鉄などの地下空間への浸水をどのように防止するかが社会課題となっており、施設および地下空間への浸水を正確に予測する技術が重要とされています。そこで建物内部と外部の点群データから精密な3次元モデルを構築し、サイバー空間上で浸水の状況をシミュレーションする技術を開発しました。モデルには止水版などの浸水対策も付与することができ、浸水対策の効果を検証することができます。当社が開発済みのIoTセンサ(冠すいっち、水位計)との連動により、センサドリブンな浸水対策および避難計画支援が可能になると考え、ソリューション開発を継続推進しています。
海外グループ社のKINEMETRICS,INC.(米国)は、地震観測機器の専門メーカーとして地震防災に必要な地震計の開発、販売、観測システムの構築およびソリューション提供を行っています。サプライチェーン問題の克服、データ収録機の小型化、低消費電力化に向けた製品開発に取り組んでいます。
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、国内では再生可能エネルギーの主力電源化などの様々な取り組みが行われています。その実現のためには、地域レベルでの脱炭素の取り組み『地域脱炭素』が必要不可欠とされています。日本は自然災害リスクが高く、また地方では少子高齢化・過疎といった課題もあり、地域脱炭素を実行していくためには、地域ごとに多面的な考察が必要となります。再生エネルギーのポテンシャルのポジティブ要因、自然災害などのハザード情報などのネガティブ要因、そこに都市の基本情報や人口の将来予測を組みあわせて評価する手法「ポジティブゾーニング」を開発しました。対象となる地域の最適な「脱炭素」を実現するための戦略策定を応用地質は支援していきます。
当連結会計年度における研究開発費の金額は
低コスト・低環境負荷型の自然由来重金属等の新たな対策方法が望まれますが、特に岩石を掘削した岩砕(ずり)の対策では、盛土内部における重金属等の溶出や吸脱着といった物質挙動は十分に解明されておらず、万が一の事態をおそれて封じ込めや吸着層工法などの安全側の過大な対策が講じられているのが現状です。そこで重金属を含む盛土中に様々なIoTセンサを配置し、盛土中の間隙水のPHと酸化還元電位をリアルタイムでモニタリングする技術「MNAD(Monitored Natural Adsorption and Desorption)工法」を開発しました。
当社つくばオフィスに作成した実験盛土に様々な最新の IoT センサを設置し、盛土の内部環境の測定と間隙水・浸出水の定期水質分析を行い、重金属等の挙動やシステムの安定性を確認しています。今後は、本工法の低コストおよび低環境負荷という利点を発信するとともに、さらなる本工法の改良開発と普及を目指していきます。
当連結会計年度における研究開発費の金額は
洋上風力発電事業で重要な建設海域の海底地盤調査においては、当社の強みである物理探査および機器開発技術を活用し、これまでに海底微動アレイ探査や3次元音波探査方法などを開発してきました。今後の洋上浮力開発の浮体式への移行やEEZ海域への展開に対応するために、継続的に手法の開発を行っております。
海外グループ社のGEOMETRICS,INC.(米国)は、地震探査、磁気探査装置などの専門メーカーとして、鉱物資源探査や土木地質調査向けの製品の開発を行っております。
再生エネルギー開発に向けて世界的に洋上風力発電所建設が世界各国でおこなわれています。これらの海域には先の大戦やその後の紛争で投下された不発弾が多くあり、これらの探索のために磁気探査装置が用いられています。この販売が好調ですが、さらに超小型磁気センサを組み込んだ製品を開発し、既存の磁気探査装置の小型化、軽量化を図ることに取り組んでいます。
ROBERTSON GEOLOGGING LTD.(英国)は、ボーリング孔を利用した調査(検層)機器の開発・製造・販売を行っています。同社も洋上風力発電所建設やインフラ整備に関わる土木地質調査への適用が増えてきたことを受けて、関連する検層機器が深い水深でも稼働するように機能の向上や専用の解析ソフト(GeoCAD)とのパッケージ化などの開発を行っています。
当連結会計年度における研究開発費の金額は