文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものです。
(1)経営方針
当社グループは、「多様性を活かし、テクノロジーで世界を変える」をミッションとしております。
世界の課題を解決するようなプロダクトやサービス、エコシステムをデジタルパートナーとしてクライアントと共に作り上げると同時に、世界中の多様で素晴らしい才能に満ち溢れた人々に、国境を越えて「働く機会」「成長する機会」「世界の問題を解決するようなプロジェクトに参画する機会」などの「機会」を提供することで、より良い世界を実現したいと考えております。
(2)経営戦略
今後のデジタルコンサルティング事業の中長期的な方向性としてはクライアントの「デジタルトランスフォーメーションのパートナー」になることを目指しております。また、プロダクト事業に関しては既存プロダクトを成長させながら、デジタルコンサルティング事業で成功したプロジェクトにおいて、プロダクトマーケットフィット(注1)や市場規模、競争環境などを勘案した上で市場の共通課題を解決できると判断すれば新たなプロダクトの開発を行っていく予定です。
今後の経営戦略の基本方針は、①大口顧客育成によるオーガニック成長、②成長の源泉地域におけるM&A、③高成長を支える人材及びオペレーション強化、の3つの柱で構成されております。
①大口顧客育成によるオーガニック成長
クライアントのコア事業の顧客体験やビジネスモデルを変革するデジタルトランスフォーメーションの需要が大企業を中心に高まっております。具体的には、デジタルビジネスのコンサルティング、ユーザーエクスペリエンスの設計、テック企業やスタートアップに伍する開発チームの組成及びプロダクト開発、事業成長のサポート、データ設計及び分析、組織設計や人材育成、コア事業のデジタルトランスフォーメーションによってできる他事業のデジタルトランスフォーメーションや業務プロセスのデジタルトランスフォーメーション等と多種多様かつ連続的な需要が想定されます。したがって、一度クライアントのコア事業のデジタルトランスフォーメーションに関わることができれば、当該クライアントからデジタルトランスフォーメーションの依頼を継続的に受けることが可能となり、1顧客からの売上が継続的に上昇していくことが期待できます。この、1顧客からの売上の拡大成長のモデルを再現性高く複数クライアントに展開していくことを目指しております。
クライアントのコア事業のデジタルトランスフォーメーション及び他事業や業務プロセスのデジタルトランスフォーメーションを担うにあたり、デジタルコンサルティングやデータ分析、チェンジマネジメント(注2)、人材育成など、クライアントの真のデジタルトランスフォーメーションパートナーになるべくサービスラインを拡大、強化していく予定です。特に、従来の当社グループの強みである新規事業創出や事業モデル及び顧客体験変革の領域を基盤として、データ領域やそれらに関連する基盤システム領域を強化することで、よりクライアントの包括的なデジタルトランスフォーメーションを実現していきます。さらに、当社グループの注力領域(テクノロジー・メディア・テレコム、金融、ライフサイエンス等)に関して、グローバルのプロジェクト経験からもたらされる社内知見や、独自市場調査からの知見を集積することで、サービス高度化による単価アップを継続的に進め、もって継続的かつ健全な大口顧客育成を実現したいと考えております。
これらの経営戦略の進捗状況を適切に管理するために、当期既存顧客売上の対前期売上割合(当期開始時点で過去にプロジェクトを実施したことがある顧客の当期売上に対する前期売上の割合)、年間売上5,000万円以上及び1億円以上の顧客数、年間売上5,000万円以上及び1億円以上の顧客群からの売上成長率を指標として管理しております。
②成長の源泉地域におけるM&A
当社グループは、グローバル戦略において、APAC及び中東地域を「成長の源泉」地域と位置づけております。成長の源泉地域で高い成長率を実現するためには、当社グループの強みである新規事業創出や事業モデル及び顧客体験変革に関する領域のサービス高度化に加えて、データ領域や基盤システム領域等のケイパビリティ増強も不可欠と考えております。これらをスピーディーに実現するためにも、オーガニックでの人材獲得に加え、M&Aを積極的に行っていく方針です。
③高成長を支える人材及びオペレーション強化
人員採用、サービスライン拡大、M&A等の施策をグローバルで展開するにあたり、クライアントへのサービスレベルを高く保つ必要があります。そのため、グローバルコンサルティングチームやグローバルデザインチーム、グローバルテックチーム等の機能軸のチームを編成しており、グローバルレベルでの人材育成やサービス提供のプロセスの統一やベストプラクティスの共有などにさらなる投資を行うことで、高付加価値人材の育成及びオペレーショナルエクセレンスの実現を図ってまいります。
また、このグローバルでのオペレーショナルエクセレンスの実現はファイナンスや総務などのグループ管理部門でも行っており、低コスト国にバックオフィス人員を配置しながらも高いクオリティでグループ管理を行う体制を進めており、将来的なコスト削減効果を見込んでおります。
これらのグローバルチームでのオペレーショナルエクセレンスの実現は、サービス提供により世界やクライアントに貢献するだけでなく、新興国での雇用や人材育成、産業の発展につながる、当社グループのミッションを達成するものであると考えております。
グローバルで協働している現行活動例
(注1)プロダクトマーケットフィット:提供しているプロダクトやサービスが顧客が満足する形で顧客の課題を解決し、市場にフィットしている状態のこと。
(注2)チェンジマネジメント:組織において、組織体制や業務、文化など様々な事柄を変革することを推進、加速させ、経営を成功に導くというマネジメントの手法。
(3)経営環境
世界のデジタルトランスフォーメーション市場は2023年時点で約132兆円という巨大市場でありながら、2030年まで年率26.7%で成長し、約692兆円の市場になるとされております(上記「3 事業の内容 (注)6」参照)。一方、日本の人口は2008年をピークに今後100年で約4,300万人にまで減少していくというデータ(注1)も出ており、2030年には約79万人のIT人材が不足すると経済産業省が発表しております(注2)。この様に、デジタルトランスフォーメーションのニーズが高まる一方、デジタルトランスフォーメーションの担い手が不足するという環境に日本を含め多くの先進国が置かれており(注3)、デジタルトランスフォーメーションに関連するサービスへのニーズは今後も底堅く推移するものと考えております。
特に、当社グループが得意とする領域である、新規事業創出や事業モデル及び顧客体験変革に関する領域は、デジタルをいかに活用することで差別化できるかが競争力(市場シェアや価格プレミアム等)に直結するものと考えております。そのため、新たなテクノロジーをどう取り入れるか、いかに優れたUXやUIをデザインできるのか、それをどう一連のプロセスに組み込むことができるのか、といった専門的サービスに対するニーズは、今後も一層高まっていくものと予想しております。
デジタルトランスフォーメーション市場は、クライアントの属する業界、成長ステージ、競争上のポジション等に応じて求められるサービスニーズが大きく異なるため、同様の特徴を有するシステムインテグレーションやコンサルティング市場と同様、極めて細分化された競争環境であると捉えております。そのため、地域やサービスによって、多くの会社と競合することになる一方、少数の大企業による寡占が生じにくい市場であることから、当社グループの強み(上記「3 事業の内容 (3)事業の特徴」参照)を強化していくことで、高い成長率を今後も維持できるものと考えております。
(注1)データソース:内閣府“選択する未来-人口推計から見えてくる未来像–“
(注2)データソース:経済産業省“IT人材需給に関する調査”
(注3)データソース:Capgemini Digital Transformation Institute “The Digital Talent Gap”
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは高い粗利率を維持した売上成長を重視して経営を行っております。
当社グループのメイン事業であるデジタルコンサルティング事業において、クライアントのコア事業のデジタルトランスフォーメーションをパートナーとして担うことで、同一クライアントからの売上が年々継続的に上昇することが重要であり、クライアントに対して提供している価値を図るものであると考えております。したがって、売上成長において、当期既存顧客売上の対前期売上割合(当期開始時点で過去にプロジェクトを実施したことがある顧客の当期売上に対する前期売上の割合)、年間売上5,000万円以上及び1億円以上のクライアント数並びにこれらのクライアント群からの売上の増加率を重要指標としております。
また、売上成長の中、粗利率を維持することは、高クオリティのサービスをクライアントに提供できているという指標となると同時に、財務的観点では営業利益率の上昇に大きく寄与すると考えております。
デジタルコンサルティング事業の販管費については、売上が成長する一方で、グループ内シェアードサービス化などによりグローバル経営効率が上がることで、売上に占める販管費率が年々低減していくことにつながり、売上成長率と粗利率を維持することで年々営業利益率が増加するという構造を目指しております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
1.人材獲得競争
昨今のデジタルトランスフォーメーション市場の成長は、人材獲得競争を熾烈なものにしています。当社のビジネスは売上の成長のために優秀な人材の獲得が至上命題となっております。当社は、以下に記載する当社の強みを生かした取り組みにより、優秀な人材の獲得を目指しております。
(ⅰ)人材獲得における競争優位性の確立
当社の求めるコンサルタントやデザイナー、エンジニアの採用はスタートアップ企業からテック企業、コンサルティングファームなど様々な企業と競合します。
当社は採用における以下の点において採用の競争優位性を有していると考えております。
・大手企業のコア事業や新規事業に企画から開発、グロースまで一貫して複数関わることができる(事業会社であれば、多くの場合一つのプロダクトにしか関われない)
・最先端の技術や新規領域に関わる案件が大半を占めるのでスキルアップの機会が多い(コンサルティングファームやSIerでは依然として業務システムの導入などの案件が大半を占める)
・ほぼ全ての案件でグローバルなチームを組成するため、グローバルな環境で働くことができる(コンサルティングファームやSIer、テック企業などほとんどの企業は国内で完結したチームでプロジェクトを行うことが多い)
・スタートアップ企業やテック企業の様な、自由で多様なカルチャーで働くことができる
(コンサルティングファームやSIerや事業会社は保守的なカルチャーである企業が多い)
結果、幅広い業種から人材採用することで、基幹システム連携のノウハウや業界知見などの獲得にも繋がっております。
(ⅱ)19の国と地域での採用によるスケーラブルかつスピーディーな採用
当社は19の国と地域、33都市で展開しているため、各国に採用担当を配置し、最適な人材を最適な場所でスピーディーに採用することに取り組んでいます。拠点の世界展開が世界中のタレントプールへのアクセスを可能としております。
(ⅲ)大学との連携
より優秀な学生を獲得するため、ベトナムのハノイ工科大学などの大学と連携し、毎年インターン生を受け入れ、その中から優秀だと判断した学生の採用を行っております。
(ⅳ)M&A
オーガニックでの採用に加えて、積極的にM&Aを行うことにより、スピーディーかつスケーラブルな人員獲得に取り組んでいます。M&A対象企業に関しては、自社でのM&A対象企業のソーシングを行っており、1,000社以上のリストを社内で保有しております。また、これまで10社以上のM&A及びPMIを内部で行ってきたため、ソーシングリストの全社戦略視点での絞り込み、ターゲットとの戦略的関係性の構築、デューデリジェンス、交渉・妥結という、M&Aに関する一連のプロセスを自社で確立しており、M&Aマーケットにおいて当社の競争優位性となっています。
(ⅴ)パートナー企業やフリーランサーとの協業
人材確保の緊急度が高い場合は、グローバルでパートナー企業やフリーランサーのリストを共有しており、パートナー企業やフリーランサーと協業することで対応しております。
2.M&AにおけるPMI
M&A後のPMIについては、グローバルで営業・マーケティング、コンサルティング、デザイン、開発など機能軸のチームを組成しており、戦略やプロセス、トレーニングを統一することでグローバルでのオペレーショナルエクセレンスの実現を実行しています。今後も、当社のこれまでのPMIのノウハウを生かし、M&AにおけるPMIに取り組んでまいります。
(注) PMIはPost Merger Integrationの略称で、M&A成立後の経営統合プロセスを指しております。
3.営業利益の創出及び営業利益率の改善並びに純利益率の改善
当社グループはこれまで売上成長と粗利率を最重要KPIとして経営を行ってきております。売上収益については2016年から過去6年間で40%のCAGR(注)を達成しており、拠点数は2023年12月末時点では19の国と地域まで拡大いたしました。この拡大に伴い、拠点管理、新規拠点開発コストのほか、迅速な意思決定とマネジメント及びオペレーションの最適化を実現するグループ経営チームの組成やグループ全体の統一基盤システムへの投資が先行し、販管費が高い構造になり営業利益を圧迫してきました。
しかしながら、直近では成長のための先行投資が完了し、今後は売上成長率に対する販管費の増加率が低くなることで、売上成長に伴って営業利益率が改善していくことを見込んでおります。さらに、純利益につきましても、先行投資を行っていた赤字拠点を黒字に転換していくことにより、法人税等負担率が連結全体として下がることから、純利益率の改善を見込んでおります。また、以下の取り組みによって、営業利益の創出及び営業利益率の改善並びに純利益率の改善を図ってまいります。
(注) CAGRとは、“Compound Annual Growth Rate”の略で、企業の複数年にわたる成長率から1年当たりの幾何平均を求めたものです。
(注) 記載の数値は過去の実績・状況であり、将来の成長性を保証するものではありません。
デジタルコンサルティング事業の地域別業績推移及び当社グループ連結業績推移
(単位:百万円)
|
2023年12月期 |
||||
第1四半期 |
第2四半期 |
第3四半期 |
第4四半期 |
||
APAC |
売上収益 |
1,913 |
1,694 |
1,741 |
1,806 |
売上総利益 |
570 |
583 |
603 |
709 |
|
構造改革費用を除いた営業利益 |
65 |
22 |
117 |
434 |
|
当期利益 |
38 |
221 |
△44 |
△44 |
|
EMEA |
売上収益 |
1,367 |
1,137 |
1,349 |
1,192 |
売上総利益 |
352 |
130 |
△9 |
△51 |
|
構造改革費用を除いた営業利益 |
△89 |
△629 |
△394 |
△486 |
|
当期利益 |
△141 |
△46 |
△888 |
△1,332 |
|
AMER |
売上収益 |
233 |
190 |
153 |
134 |
売上総利益 |
89 |
41 |
△4 |
△32 |
|
構造改革費用を除いた営業利益 |
△47 |
△48 |
△127 |
△83 |
|
当期利益 |
△53 |
△49 |
△179 |
△160 |
|
連結 |
売上収益 |
3,638 |
3,121 |
3,350 |
3,236 |
売上総利益 |
1,084 |
828 |
731 |
695 |
|
構造改革費用を除いた営業利益 |
353 |
△822 |
△1,025 |
△562 |
|
親会社の所有者に帰属する当期利益 |
197 |
△189 |
△1,098 |
△1,264 |
(注) APACとは、日本国内及びアジア・パシフィック地域を指しております。
(注) EMEAとは、ヨーロッパ、中東及びアフリカ地域を指しております。
(注) AMERとは、北米、中米及び南米地域を指しております。
(注) APAC、EMEA、AMERの業績数値の合計値は、その他事業を含まないこと及び本社費用(株式会社モンスターラボホールディングス・Monstarlab Enterprise Solutions Ltd.)、連結修正仕訳を配賦していないことから、連結業績数値と一致しておりません。
(ⅰ)販管費のモニタリング
売上に対する販管費率に関しては、戦略的コスト(営業&マーケティング費用、育成及びR&D費用)と、運用コスト(経営陣の人件費やバックオフィス人件費、グローバルチームの人件費など戦略的コスト以外の販管費)という2つの大項目にわけて管理しております。
戦略的コストである営業&マーケティング、育成及びR&D費用は売上に対する比率がある程度一定の比率で推移する様に管理し、運用コストは先行投資が完了しており売上成長率よりも低い増加率で年々増加するため、売上に対する比率が年々減少する様に管理しております。
(ⅱ)グローバルシェアードサービス
経理や人事などの管理部門機能に関しては、高コスト地域には管理部門の戦略や方向性を決める人材のみを配置し、オペレーションチーム機能は低コスト地域に配置することで、グループでの管理コストの低減を目指した組織を構築しております。
具体的にはバングラディシュに本社直轄のMonstarlab Enterprise Solutions Ltd.を設立し、グループの経理業務をまとめて行って、グループの経理業務のコスト及びオペレーションの効率化を行っております。
4.新たな技術領域のスキル獲得
IT業界は常に新しい技術が生まれ続ける上、クライアントのデジタルトランスフォーメーションのニーズも多様化していることから、当社も常に新しい技術やこれまで当社が強みとしていなかった技術にキャッチアップしていく必要があります。近年はAI、data、IoTなどのニーズが増えてきておりますが、以下の取り組みによって、新たな技術領域のスキル獲得を目指してまいります。
(ⅰ)グローバルCTOチームによるR&D及び教育
グローバルでCTOチームを組織しており、市場のトレンド、クライアントのニーズを勘案し、必要な技術を特定し、グローバルレベルでR&Dや教育などを実行しております。
(注) R&DはResearch and Developmentの略称で研究開発活動を指しております。
(ⅱ)グローバルで最適な場所での採用及び拠点設立
技術によっては、ある地域にハイスキルな人材が集まっていることがあります。そういった場合は、国や都市を限定して採用や拠点設立を行います。
(ⅲ)M&A
クライアントのニーズが高く、スケーラブルなチームが必要な技術領域に関しては積極的にM&Aを行うことで技術の獲得を行っています。
5.デリバリーセンターのコスト上昇
当社はベトナムやフィリピン、バングラデシュ、チェコ、ウクライナ、コロンビアといった国にデリバリーセンターを抱えております。現在、これらの国のインフレによる賃金等のコスト上昇が起こっており、この上昇は長期化すると考えております。
過去においては、レベニューセンターにおいてインフレに応じてマーケット全体が単価を上昇させるということが起こっており、当社グループもマーケット同様インフレ上昇に応じて販売単価を上昇させることで対応してまいりました。そのため、デリバリーセンターのコスト上昇についても販売単価の上昇により対処していく方針です。
6.情報管理体制の更なる強化
当社グループでは、国内外問わず多様な事業者様との案件を通じ、機微な情報を扱う事業内容であることを鑑み、情報セキュリティの国際規格であるISO/IEC 27001:2013の認証を取得しています。19の国と地域に事業展開、グローバル市場における多言語対応案件の増加と共に、より多様な顧客へのサービス提供の機会拡大が予測されます。情報資産の漏洩や不正アクセスの脅威に対し、業界や国境を問わず対策強化が求められる今、スピード感を持ってグローバル市場を広げている当社にとっても、対策の強化は最優先課題であり責務であると捉え、この度ISMS認証取得の運びとなりました。
ISO/IEC 27001認証取得により、情報リスクの低減や回避、業務効率の改善や組織体制の強化、海外企業を含む取引要件の達成等の効果が見込まれます。今後もより一層、万一の緊急事態に際した対処を含む情報管理体制の維持、改善等のリスクマネジメントの実現により、組織内外両面の安心・安全の確保・提供に努めてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社グループが持続的に成長し、長期的に企業価値を向上させるためには、経営の透明性を確保し、コンプライアンス遵守の経営を徹底させることが重要であると考えています。
そのような考えのもと、当社では重要な経営課題について、事業に精通した取締役で構成される取締役会にて意思決定を行うほか、事業責任者等が参加する経営諮問会議及びコンプライアンス委員会を月次で開催しており、迅速な情報共有、課題及びリスクの検討・評価、業務意思決定を行っております。
業務執行の監督に関しましては、取締役会において各取締役から業務執行状況の報告を適時に受け、取締役の業務執行を監督しております。また、監査役はこれらの会議に出席し議事の内容や手続き等を確認し、議論に参加することで、重要な意思決定に関わるプロセスの透明性と監督機能の強化を図っております。また、監査役会において監査役間での意見交換・情報共有を行い、また、会計監査人及び内部監査責任者とも定期的な情報交換を行うなど相互に緊密に連携しております。
当社のコーポレート・ガバナンスの詳細は、「
(2)戦略
当社グループは、「多様性を活かし、テクノロジーで世界を変える」をミッションとして掲げ、メイン事業であるデジタルコンサルティングを通して社会課題の解決を目指すと同時に、世界中の多様で素晴らしい才能に満ち溢れた人々に、国境を超えて「働く機会」「成長する機会」「世界の問題を解決するようなプロジェクトに参画する機会」を提供することにより、サステナブルな社会への貢献を目指しております。
これらのミッションは、テクノロジーにより社会課題を解決するプロジェクトの積極的推進と、プロジェクトデリバリーを可能とする人的資本への投資の両輪により実現できると考えております。
<テクノロジーにより社会課題を解決するプロジェクトの積極的推進>
当社グループは、売上向上や新規事業創出に関するDXを実現する「エクスペリエンス・トランスフォーメーション・パートナー」として、世界中の何百、何千というプロジェクトに携わっています。プロジェクトで生まれる革新的なプロダクトを通してイノベーションを生み出し、ステークホルダーの体験を変革することで、より良い世界の実現を目指しております(プロジェクトの一例として下図参照)。
また、複数のNPOに対して、社会課題を解決可能なテクノロジーソリューションをアイディエーションするワークショップを無償で提供するなど、プロボノ活動を定期的に実施し、社会課題解決への貢献にも積極的に取り組んでおります。
<人的資本への投資>
①多様性を活かす労働環境の整備
当社グループは、多様性の持つ可能性を信じており、多様なバックグラウンドを持った社員が輝ける場を作ることを目指し、以下のような取り組みを実施しております。
1.多様性推進プログラムの実施:
多様性に関するプログラムなどを実施し、社員全体が多様性を理解し、尊重できる環境を醸成しています。また、差別や偏見の撤廃、異なるバックグラウンドや文化への理解を深めています。トレーニングではリーダーシップ、コミュニケーション、フィードバックのスキル向上にも焦点を当て、多様な視点を尊重する意識を高めています。
例:DE&Iに関するグループ方針の啓蒙、コンプライアンス研修、多様性理解推進ワークショップの開催など
2.採用プロセス:
採用プロセスにおいて、候補者のバックグラウンドや多様な視点を考慮した選考を行っています。これにより、様々な視点からのアプローチがチームに組み込まれ、イノベーションを促進しています。
例:多様なスキルや経験の評価基準の導入、グループディスカッションの導入など
3.キャリア開発の機会提供:
社員が多様なスキルや専門知識を磨くための機会を提供しています。異なるバックグラウンドを持つ社員が自身の強みを最大限に活かし、キャリアを発展させるサポートを行っています。
例:キャリアカウンセリング、スキル向上のためのトレーニングプログラム、異動やローテーションの機会、学習リソースのアクセス促進、メンターシッププログラムの実施など
4.フレキシブルワーク環境の整備:
多様性を尊重し、柔軟な働き方を推進しています。柔軟な勤務時間やリモートワークのオプションを提供することで、社員が自ら仕事とプライベートのバランスを調整できる環境を提供しております。
例:リモートワークの導入、フレックスタイム制度や裁量労働制等のフレキシブルな勤務時間を導入、ホットデスク環境の導入など
これらの取り組みを通じて、当社は多様なバックグラウンドを持つ社員が力を発揮しやすい環境を築き上げ、企業全体の成長とイノベーションを促進しています。
②共創を支える労働環境の整備
1.育休や有給取得の推進:
育休や有給休暇の取得を奨励するために、従業員に対してその権利や利用方法に関する情報を提供しています。また、管理層は積極的に取得を推奨し、実際の取得率や理由を分析することで、より働きやすい環境を整備しています。なお、2023年度において重要な子会社である株式会社モンスターラボの女性の育休取得率は100%、男性の育休取得率は78%、女性及び男性の育休後の復職率は100%となっております。
2.健康管理プログラムの充実:
健康経営方針のもとに、疾病管理に留まらない健康増進・発病予防のプログラムを提供しています。健康診断やストレスチェック、メンタルヘルス相談窓口の設置だけでなく、医師による健康相談サービス(first call)の提供、健康推進を目的としたコンテンツ提供やイベントの開催、セルフケア・ラインケアに関する勉強会の開催等を通じ、従業員の健康保持と増進、生産性向上を目指しております。
3.内部通報制度の整備:
不正行為や不適切な業務の報告を促進するために、明確な内部通報制度を整備しています。匿名通報の仕組みや報告者の保護措置を含め、従業員が安心して問題を報告できる仕組みを構築しています。報告に対する適切な対応も確保します。
4.ワークライフバランスのサポート
ワークライフバランスを重視し、従業員が仕事とプライベートを両立させやすい環境を整備します。リモートワークの許容、柔軟な労働時間の提供を導入するなど、働き方に対するサポートを提供します。
5.オープンなコミュニケーションの醸成:
従業員間及び管理層とのコミュニケーションを重視し、意見交換が活発な環境を整備します。リアルタイムでのフィードバックやアイディア共有の場を設けるなど、情報の透明性を確保します。
6.スキル開発プログラムの提供:
共創力を向上させるために、従業員に対して必要なスキルを習得できるトレーニングやワークショップを提供します。
7.社内イノベーションプラットフォームの構築:
社内のアイディアを促進するために、社内で使用しているコミュニケーションツール上にてイノベーションプラットフォームを構築します。従業員は自由にアイディアを投稿し、評価やフィードバックを得ることができます。
8.ダイバーシティとインクルージョンの促進
異なるバックグラウンドや経験を持つ従業員が共創しやすい環境を構築するために、ダイバーシティとインクルージョンのプログラムを推進します。これにより、多様な視点からのアイディアが創出できる環境を構築しております。
これらの取り組みにより、従業員はより良い労働環境で働くことができ、生産性向上や共創力の向上に寄与することが期待されます。
③先進テクノロジー提供を実現する社員教育
当社では、先進テクノロジー提供を実現するために、以下の具体的な社員教育取り組みを実施しています。
1.先進テクノロジーのナレッジ共有
テック部門ではクラウドコンピューティング、人工知能、データサイエンスなどの先進テクノロジーに焦点を当てた勉強会やナレッジシェアの場を用意しています。社員はこれらを通じ、最新の技術トレンドやベストプラクティスを学び、業務に活かすことができます。
2.実践的なプロジェクト体験
社員が理論だけでなく実践的なスキルを身につけるために、先進テクノロジーを活用した実際のプロジェクトに参加する機会を提供しています。チーム単位でプロジェクトに参画することで、チームワークや実務スキルの向上が期待できます。
3.外部トレーナーとの協力
専門的なトピックにおいて、外部のトレーナーや業界専門家を招聘し、ワークショップやセミナーを開催しています。社員は外部の専門家から直接知識を吸収し、業界の最新動向を把握できるようになります。
4.情報共有とコミュニケーション
社内コミュニケーションツールを活用し、社員同士の情報共有を促進しています。先進テクノロジーに関する知識やプロジェクトの進捗について、オープンなコミュニケーションを通じて学び合う環境を構築しています。
これらの取り組みにより、社員は最新かつ実践的なテクノロジースキルを習得し、企業全体が先進テクノロジーの提供に成功しています。
④未来を担う子供たちへのテクノロジー教育
ダッカのストリートチルドレン、農村で生活する子ども達を対象に、コンピュータ・実践英語・映像技術・デザインなどの授業を行う全寮制リーダー育成センターであるエクマットラ・アカデミーで、プログラミング授業などを通じて運営を支援しております。
(3)リスク管理
当社では、経営理念及び経営方針を侵害する様々なリスク(事象)に対して、その防止及び会社損失の最小化を図るため「リスク管理規程」を定めており、全社的な管理体制を構築しています。
リスクの特定・抽出・改善策の立案等は、リスクが発生する業務を所管している各部門責任者において行うこととする一方で、リスク管理事務局を法務グループに設置し、各部門と連携しリスクの回避及び軽減に必要な措置を講じています。また、必要に応じて弁護士、公認会計士、税理士、弁理士、社会保険労務士等の外部専門家の助言を仰ぎながら、リスクの未然防止と早期発見に努めております。こうしたリスクマネジメントに取り組み、また社会情勢や事業環境の変化を捉え、リスク事項そのものの見直しを定期的に実施することで、持続的な成長を実現して参ります。
(4)指標及び目標
前述の戦略を実現するために、以下の指標を重視しております。なお、当社においては関連する指標のデータ管理とともに具体的な取り組みが行われているものの、当社グループに属するすべての会社では行われていないため、当社グループにおける記載が困難であります。このため次の指標に関する実績は、株式会社モンスターラボホールディングス及び株式会社モンスターラボの内容を記載しております。また本報告書提出日現在においては、当該指標についての目標は設定しておりません。
指標 |
実績(2023年12月現在) |
||
株式会社モンスターラボホールディングス |
株式会社モンスターラボ |
||
男女の賃金の差異 |
全労働者のうち女性※1 |
62.8% |
63.8% |
うち正規雇用労働者 |
62.8% |
77.4% |
|
うち非正規雇用労働者※2 |
- |
35.8% |
|
労働者に占める女性労働者の割合 |
43.5% |
28.7% |
|
従業員の国籍数(日本国内) |
27ヶ国 |
||
管理職に占める女性労働者の割合 |
25.0% |
22.0% |
|
男女の平均継続勤務年数の差異※3 |
全体 |
4.2年 |
3.0年 |
男性 |
5.4年 |
3.1年 |
|
女性 |
2.7年 |
2.8年 |
|
一月当たりの労働者の 平均残業時間※4 |
22時間 |
14時間 |
|
年次有給休暇の取得率 |
67.2% |
66.5% |
|
男性育児休業の取得率 |
0.0% |
78.0% |
※1 女性労働者には時短勤務者を含み、事務担当者の割合が多いため差異が大きくなっております。また、役割やスキルに対して賃金を決定しているため同一職種、同一役職や勤続年数による男女の賃金差異はないものの、管理職に占める女性労働者の割合が低いことも要因となっております。
※2 株式会社モンスターラボの非正規雇用労働者については1名のみ、かつ、短時間勤務者のため差異が大きくなっております。
※3 旧株式会社モンスター・ラボからの勤続年数を含みます。
※4 裁量労働制適用者・管理監督者は含みません。
当社グループの事業その他に関するリスクとして、投資判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる事項には以下のようなものがあります。当社グループでは、これらのリスクを把握し、発生の可能性を認識した上で、可能な限り発生の防止に努め、また、発生した場合の的確な対応に努めていく方針であります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)事業環境に関わるリスクについて
① デジタルトランスフォーメーション市場について
デジタルトランスフォーメーション市場は今後高い成長率で成長すると予測されるものの、当社グループの予想を上回るほどの景気悪化や経済情勢の変化に伴い、企業のデジタルトランスフォーメーションへの投資が抑制される等、事業環境が悪化した場合、あるいは既存顧客の継続、新規顧客の獲得が想定通りとならない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
② 競合について
当社グループは、新規事業や顧客体験の変革、ビジネスモデルの変革などクライアントの売上向上に関わる部分のデジタルトランスフォーメーションに強みを持ち、さらにグローバルでスケーラブルなサービスが提供できるというユニークなポジショニングを作り上げてきました。
しかしながら、当社グループを取り巻く市場の競争環境が激化し、コスト面や技術力等で競合他社に対し、競争優位性を確保することが困難となる場合、あるいは既存顧客の継続、新規顧客の獲得が想定通りとならない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
(2)事業内容に関わるリスクについて
① 人材の確保について
当社グループは、デジタルトランスフォーメーションを担う人材の確保が重要な事業となっております。そのため人材採用やM&Aといった手段でグローバルに人材を確保できるよう取り組んでおります。しかしながら、当社の想定を超える人材市場の逼迫や何かしらの組織的要因により人材が確保できなくなった場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクに対し、当社グループでは人材育成プログラムの強化、人事評価の適正性の確保、ワークライフバランスの実現等により、優秀な人材の確保・育成及び流出防止に努めております。
② 外注先について
当社グループは、自社の人材の確保及び育成に注力していますが、一方でプロジェクトを成功させるためには、プロジェクトの各局面に応じてタイムリーに適切な外注先を確保することも必要と考えています。そのため、パートナー・外注先との関係を強化し、柔軟に事業規模の拡大が図れるような仕組み作りに取り組んでいます。しかしながら、プロジェクトに対するパートナー・外注先の関与割合が高まった場合には、顧客が要求する品質水準に達するまでに、契約時点では予見不能な追加コストが発生する可能性があるほか、当社グループの品質水準を満たすパートナー・外注先を選定できない可能性や、パートナー・外注先の経営不振等によりプロジェクトが遅延し又は遂行できなくなったり、パートナー・外注先の提供するサービスの瑕疵により当社が顧客に対して責任を負担することとなったものの当該パートナー・外注先からの当社の損害の回復が困難となったりする可能性があります。
かかるリスクに対し、当社グループでは外注先に委託する比率を低減するほか、国内・海外拠点のリソースをグローバルで管理するチームを組成し、外注先の選定について与信等も含めて十分な検討を行っております。さらに、プロジェクトの遅延や外注先の納品物の品質水準に懸念が生じる可能性がある場合には、早い段階で顧客に相談して調整を図ることで、リスクの低減に努めております。しかしながら、これらの取り組みによってもリスクを回避できない場合、プロジェクト業績の採算の低下等により、当社グループの事業展開、経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
③ 開発プロジェクトの採算性について
当社グループでは、プロジェクト管理者が品質・納期・コスト・リスク等の管理を行うとともに、プロジェクト管理システム等で工期や費用の費消の状況をモニタリングしております。しかしながら、システム開発においては、契約の受注時に採算性が見込まれるプロジェクトであっても、開発中の大幅な仕様変更等が発生し、作業工数が当初の見積り以上に増加することにより、最終的に案件が不採算化することがあります。また、長期のプロジェクトは環境や技術の変化に応じた諸要件の変更が生ずる可能性があると考えられます。
かかるリスクに対して、当社グループではプロジェクトのフェーズを顧客と合意の上で細分化し、各フェーズにおいて追加の対応やスケジュールの調整などの必要性を顧客と都度整理しております。また、追加の見積等が発生する可能性が見えた段階で顧客ときめ細かいコミュニケーションを取ることにより、不採算化のリスク低減に努めております。しかしながら、突発的で大幅な仕様変更や諸要件の変更あるいは品質上のトラブルが発生した場合、プロジェクトの採算の低下等により当社グループの経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
④ 技術革新等について
IT業界では、技術革新や顧客ニーズの変化のスピードが非常に速く、それに伴い、常に新しい技術やサービスが生み出されております。当社グループのデジタルコンサルティング事業においては技術力が競争力の源泉であるため、技術革新への対応が遅れることは当社グループにとって重大なリスクになると考えております。従いまして、技術革新に迅速に対応できるよう、グローバルで優秀なエンジニアを確保し、世界の各地域ごとの市場動向を注視し情報を共有することやクライアントのニーズや他社状況を把握することで技術革新への対応を講じることにより、今後も競争力のあるサービスを提供できるように取り組んでおります。
しかしながら、予想以上の急速な技術革新や代替技術・汎用的な競合商品の出現等により、当社グループのサービスが十分な競争力や付加価値を確保できない場合には、新規受注の減少や既存顧客の離反を招来し、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 売掛債権等の貸倒れについて
当社グループは、受注時には信用リスクの回避のために与信枠を設定し、かつ貸倒れリスクに対して適正な会計処理を行っていますが、景気の悪化等により当社グループが計上している貸倒引当金を上回る予想し得ない貸倒れリスクが顕在化し、追加的な損失や引当の計上が必要となる場合には、当社グループの今後の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 海外での事業展開について
当社グループは、日本国内のほか、アジア、欧州、北米及び中東に事業拠点を設置し、事業を展開しております。海外での事業展開において適用を受ける関連法令・税制・政策の制定、改正又は廃止、並びに解釈の相違、政治経済情勢・外交関係の変化、法令・規制・商慣習の実務上の取扱いの変更、人件費の上昇、著しい為替レートの変動等が発生した場合や、一般的に売掛債権の回収期間が長期となることなど日本との商習慣との違いから生じる取引先等との潜在的リスクが顕在化し、現地での事業活動に悪影響が生じる場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当社グループでは海外で事業展開する各子会社と本社(日本)との連携を通じてグローバルな政治・経済情勢や各国法規制動向等を定常的に把握しております。また、地域毎に弁護士等の専門家と連携し、当社の事業運営に影響を及ぼすリスクが顕在化した場合には、対応策を早急に講じることができる体制を整えています。為替レートの変動リスクについては、海外拠点において日本から包括的に外貨建て預金残高の調整を行い、海外子会社でも必要に応じて外貨建て預金残高を増減させることにより、為替変動リスクの低減に努めております。また、当社グループは収益を実現する拠点及び原価の発生する拠点が世界各国に分散していることから、為替変動の影響を自然とヘッジできる収益構造となっております。インフレに関連した人件費の上昇につきましては、顧客へ理解を求めつつ、同時に海外拠点の従業員のスキル向上も推進することで、顧客が売価上昇の要因を許容しやすくなるよう努め、売価上昇を実現することで収益性を維持しております。
⑦ 自然災害や事故、新型コロナウイルス感染症等について
当社グループは、日本国内のほか、アジア、欧州、北米及び中東において事業を展開しており、拠点がある国において様々な自然災害、伝染病、テロ、戦争、電力・輸送・通信等のインフラの停止や遅延等の影響を受ける可能性があります。当社グループでは地域毎に想定されるこれら事象に対して、各拠点との月次の報告会議を通じて、現地情勢を迅速に把握し対応策を早急に検討できる体制を整えているほか、各拠点の関係部門と常に連携し、情報の錯綜を防ぐ有事発生の際のレポートラインの強化に努めております。また、状況によっては事業継続計画(BCP)を検討し、情勢の変化に応じて適宜見直しを行っております。しかしながら、当社グループが甚大な人的または物的被害を受けた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
また、新型コロナウイルス感染症等の感染症拡大によるリスクについては、当社グループはリモートワーク環境下においてもオンラインでサービス提供できる体制・ノウハウを構築しており、サービス提供への影響の最小化を図っています。今後も、感染の状況等を注視しながら事業運営を行っていきますが、感染拡大の長期化により経済活動が停滞した場合には、顧客企業のIT投資の抑制によるプロジェクト数の減少やプロジェクト規模の縮小を招き、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3)事業運営体制に関わるリスクについて
① 特定人物への依存について
当社グループの代表取締役社長である鮄川宏樹は、創業以来当社グループの事業に深く関与しており、また、当社事業に関する豊富な経験と知識を有していることから、経営戦略の構築やその実行に際して極めて重要な役割を担っております。当社グループは、特定の人物に依存しない経営体制の強化を図り、同氏に過度に依存しない体制の整備を進めておりますが、何らかの理由により同氏の当社グループにおける業務執行が困難になった場合、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 訴訟等の可能性について
当社グループは、国内外に事業を展開しており、国内外の法令の適用を受けております。それら法令を遵守することに努めていますが、将来において当社グループを構成する企業及びその役職員の法令違反等の有無に関わらず、顧客や第三者との間で予期せぬトラブルが発生し、訴訟に発展する可能性があります。当社グループに対して訴訟が提起された場合には、その訴訟の内容及び結果によっては、損害賠償責任の負担その他多大な訴訟対応費用や企業ブランドイメージの悪化等により、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクについて、当社グループではコンプライアンス行動指針を定めたコンプライアンス規程を制定しております。さらに、コンプライアンス委員会を設置し、社内研修及び教育活動を通じて、各拠点の従業員1人1人が法律や社内規程等で決められたことを守り、かつ社会の常識に従って行動するよう周知徹底を図ることで、法令違反等の発生リスクの低減に努めています。また、拠点がある国において現地弁護士と契約して法務的な確認を都度実施することで、リスクの顕在化を未然に防ぐことに努めております。
(4)法的規制及び知的財産等に関するリスクについて
① 知的財産について
当社グループは、事業活動において、第三者の特許権、商標権等の知的財産権を侵害しないよう、常に注意を払うとともに、必要に応じて当社グループの知的財産権の登録を申請することで、当該リスクの回避を図っています。しかしながら、当社グループの認識していない第三者の知的財産権が既に成立している可能性や当社グループの事業分野で新たに第三者の知的財産権が成立する可能性があること等から、当社グループによる第三者の知的財産権の侵害が生じる可能性があり、その第三者より、損害賠償請求、使用差止請求及びロイヤリティの支払い要求等が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 情報セキュリティについて
当社グループでは、事業遂行にあたり、顧客の企業情報や顧客が保有する個人情報等、様々な機密情報に接する機会があります。万が一、当該機密情報が外部に漏洩した場合には、当社グループの信用低下や損害賠償責任の負担等を通じて、当社グループの経営成績や財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクについて、当該機密情報が外部漏洩のないよう従業員等と秘密保持契約を締結するとともに、それらの情報管理やセキュリティ管理に対しては個人情報保護規程や情報システム管理規程を整備するとともに、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)認証を取得し、情報の適正な取扱いと厳格な管理を的確に行うための対策を講じております。さらに、リスクへの対応を確かなものとするため、国内・海外拠点のセキュリティ部門を束ねるグループ・セキュリティ機能を設け、進化する脅威にたいしてリスク管理とセキュリティ施策を行っております。また、従業員教育を通じて情報セキュリティへの意識向上を促すことやグループ内をグローバルに横断するセキュリティ委員会の設置を通じて、セキュリティインシデントの低減に努めると共にリスクを網羅的に把握できる仕組みの構築に取り組んでおります。
(5)その他
① M&A等の投融資に関するリスクについて
当社グループでは、今後の事業拡大の過程において、サービスラインの強化、グローバル展開の加速及び新たな事業領域への展開等を目的として、出資、M&A等の投融資を実施する場合があります。投融資については、弁護士・税理士・公認会計士等の外部専門家の助言も得ながら緻密にデューディリジェンス(適正価値精査)を実施し、投資リスクを十分に検討しております。しかしながら、事業環境や競合状況の変化等に伴って当社グループが期待する利益成長やシナジー効果が当初の想定どおりに実現できない可能性があり、これが顕在化した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクの発生タイミングの予想は困難でありますが、定量的かつ明確なKPIの設定及びそれに基づく定期的なモニタリングを通じ、最重要会議体にて適宜報告・議論を行う体制をとることにより、リスクに備えております。また、当社グループとのシナジー効果を十分に発揮できず売上や利益が想定を大きく下回るなど、期待したリターンが得られないリスクについては、当社グループとのシナジー創出による買収先会社の継続的成長を重要視し、案件の規模や内容に応じてロングタームインセンティブ(一定期間の勤続に伴う報酬)やアーンアウト(買収価格の分割払い)等のスキームを活用しています。
なお、企業買収に伴い発生した相当額ののれんについて減損発生の兆候が識別された際は、適切な測定手続きを実施して、適正に財務諸表に反映する体制を構築しております。業務執行と監督の体制は「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」を、リスクが顕在化したときの影響額については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 9.のれん及び無形資産、11.非金融資産の減損」をご参照ください。
また、投融資を計画する場合において、適切な対象会社が発掘できない際には、事業成長を視野に入れた出資、M&A等が実施できないことが想定され、事業成長に悪影響を与える可能性があります。
② のれんについて
当社グループは、企業買収に伴い発生した相当額ののれんを計上しております。当該のれんにつきまして、それぞれの事業価値及び事業統合による将来のシナジー効果が発揮された結果得られる将来の収益力を適切に反映したものと考えておりますが、事業環境や競合状況の変化等により期待する成果が得られない場合、減損損失が発生し、当社グループの経営成績に悪影響を与える可能性があります。リスクの発生時期、対策、規模等については上記「① M&A等の投融資に関するリスクについて」をご参照ください。
③ 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
当社グループでは、取締役、従業員等に対するインセンティブを目的としたストック・オプション制度を採用しております。2023年12月末時点における新株予約権による潜在株式数は3,327,500株であり、発行済株式総数34,326,950株の9.69%に相当します。また、今後においてもストック・オプション制度を活用していくことを検討しており、現在付与している新株予約権に加え、今後付与される新株予約権について行使が行われた場合には、既存株主の保有する株式の価値が希薄化する可能性があります。
④ 過年度の経営成績及び税務上の繰越欠損金について
当社グループは、過年度を含め当期純損失を計上しているため、当事業年度末において税務上の繰越欠損金が1,169,172千円(国内拠点)存在しております。一般的には、繰越欠損金を課税所得から控除することにより、税額を減額することができます。しかし、今後の税制改正の内容によっては、納税額を減額できない可能性があります。また、繰越欠損金が解消された場合、通常の税率に基づく法人税等が発生し、当社グループの経営成績及びキャッシュ・フローに悪影響を与える可能性があります。
⑤ 配当政策について
当社は、利益配分につきましては、将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定した配当を継続して実施していくことを基本方針としています。しかしながら、本書提出日現在では事業の成長段階にあることから財務体質の強化及び事業拡大のための内部留保の充実を図り、事業拡大のための投資に充当していくことが株主に対する最大の利益還元につながると考えています。このことから、創業以来配当を実施しておらず、内部留保資金につきましては、財務体質の強化及び事業拡大のための財源として利用していく予定です。
なお、剰余金の配当を行う場合は、年1回の剰余金の配当を期末に行うことを基本としており、その他年1回中間配当を行うことができる旨及び上記の他に基準日を設けて剰余金の配当を行うことができる旨を定款で定めております。なお、当社は、会社法第459条第1項の規定に基づき、剰余金の配当に係る決定機関を取締役会とする旨を定款で定めております。
(1)経営成績等の状況の概要
当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という))の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済及びわが国経済は、新型コロナウイルス感染症が感染法上の5類に移行され、社会経済活動の正常化が進んでいるものの、ロシア・ウクライナ情勢の長期化や、世界的なインフレの進行に伴う金融引き締めの加速等、先行き不透明な状況が続いております。 一方で、IT業界におきましては、経営戦略に直結するデジタルトランスフォーメーション(DX)の需要が増加しており、企業のDXに対する投資意欲は引き続き旺盛な状況が続いております。
こうした経営環境の中、当社グループは世界19の国と地域において、主に企業や自治体に対して事業課題や新規事業のニーズに合わせてDXを支援するメイン事業「デジタルコンサルティング事業」およびプロダクト事業等の「その他事業」を展開しております(2023年12月31日時点)。なお、当社グループではデジタルコンサルティング事業を展開するエリアを、日本国内及びアジア・パシフィック地域を指すAPAC、ヨーロッパ、中東及びアフリカ地域を指すEMEA、北米、中米及び南米地域を指すAMERの3つのリージョンに分類しております。
当連結会計年度につきましては、上半期においてAPACの開発フェーズプロジェクト数が想定水準を下回ったことや、EMEAにおける季節性を起因としたプロジェクトの進行と営業活動の停滞が成長率の低下を招きました。売上収益は下半期から実施した戦略が奏功し、回復基調となったものの、前年同期比で6.5%減となりました。営業利益は上半期の売上減少と下半期に実施した収益改善を目的とした構造改革の費用が大きく影響し、2,056,729千円の営業損失(構造改革費用を除いた営業損失は1,179,475千円)となりました。一方で、下半期に実施した構造改革の効果は一定程度寄与し、第2四半期連結会計期間を底として構造改革費用を除いた営業損失は緩やかな回復傾向となっております。
以上の結果、当連結会計年度の当社グループの売上収益は13,346,962千円(前年同期比6.5%減)、営業損失は2,056,729千円(前年同期は389,677千円の営業損失)、税引前損失は2,156,279千円(前年同期は447,069千円の税引前損失)、親会社の所有者に帰属する当期損失は2,355,328千円(前年同期は674,767千円の親会社の所有者に帰属する当期損失)となりました。
② 当期の財政状態の概況
当連結会計年度末の資産合計は14,461,055千円(前連結会計年度末は12,983,798千円)となりました。主な内訳は、現金及び現金同等物1,783,264千円(前連結会計年度末は2,724,484千円)、営業債権及びその他の債権2,600,114千円(前連結会計年度末は3,073,532千円)、のれん3,964,762千円(前連結会計年度末は3,298,633千円)等であります。
当連結会計年度末における各項目の状況は、次のとおりです。
(流動資産)
流動資産の残高は5,836,139千円(前連結会計年度末は7,818,219千円)となりました。主な内訳は、現金及び現金同等物1,783,264千円(前連結会計年度末は2,724,484千円)、営業債権及びその他の債権2,600,114千円(前連結会計年度末は3,073,532千円)等であります。
(非流動資産)
非流動資産の残高は8,624,916千円(前連結会計年度末は5,165,579千円)となりました。主な内訳は、のれん3,964,762千円(前連結会計年度末は3,298,633千円)、無形資産651,053千円(前連結会計年度末は579,171千円)、使用権資産356,249千円(前連結会計年度末は350,821千円)等であります。
(流動負債)
流動負債の残高は7,932,462千円(前連結会計年度末は5,560,860千円)となりました。主な内訳は、営業債務及びその他の債務1,132,648千円(前連結会計年度末は1,327,415千円)、社債及び借入金4,739,564千円(前連結会計年度末は1,924,423千円)等であります。
(非流動負債)
非流動負債の残高は2,822,565千円(前連結会計年度末は3,330,513千円)となりました。主な内訳は、社債及び借入金1,493,246千円(前連結会計年度末は1,924,425千円)、リース負債549,435千円(前連結会計年度末は712,155千円)等であります。
(資本合計)
資本合計は3,706,027千円(前連結会計年度末は4,092,424千円)となりました。主な内訳は、資本金1,922,586千円(前連結会計年度末は1,065,754千円)、資本剰余金10,499,729千円(前連結会計年度末は9,708,785千円)、利益剰余金△8,558,362千円(前連結会計年度末は△6,203,033千円)等であります。
③ 当期のキャッシュ・フローの概況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、1,783,264千円(前連結会計年度末は2,724,484千円)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、資金は3,518,947千円の支出(前年同期は1,544,453千円の支出)となりました。これは主に、税引前損失(△2,156,279千円(前年同期は△447,069千円))による資金の減少、営業債権及びその他の債権の増減(532,379千円(前年同期は△1,469,468千円))、契約資産の増減(△252,512千円(前年同期は△159,423千円))、子会社株式売却損益(△938,663千円(前年同期はゼロ))、営業債務及びその他の債務の増減(△397,042千円(前年同期は△505,770千円))等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、資金は1,238,854千円の支出(前年同期は2,288,757千円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出(△121,144千円(前年同期は△291,226千円))、無形資産の取得による支出(△340,452千円(前年同期は△557,355千円))、投資有価証券の取得による支出(△428,119千円(前年同期はゼロ))、子会社株式の取得による支出(△134,528千円(前年同期は△619,575千円))、子会社株式の売却による支出(△183,772千円(前年同期はゼロ))等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、資金は3,725,517千円の収入(前年同期は2,241,103千円の収入)となりました。これは主に、長期借入による収入(680,000千円(前年同期は1,310,709千円))、長期借入金の返済による支出(△758,656千円(前年同期は△824,251千円))、社債の償還による支出(△114,500千円(前年同期は△137,000千円))、リース負債の返済による支出(△365,316千円(前年同期は△398,918千円))、増資による収入(1,713,663千円(前年同期は1,351,335千円))等によるものです。
④ 生産、受注及び販売の状況
当社グループは、デジタルコンサルティング事業、その他事業の2つのセグメントから構成されております。当社グループの提供するサービスは、受注から販売までの所要日数が短く、期中の受注高と販売実績とがほぼ一致するため、生産、受注の状況の記載を省略しています。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(単位:千円) |
セグメントの名称 |
前連結会計年度 (自 2022年1月1日 至 2022年12月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
前期比 |
デジタルコンサルティング事業 |
13,559,922 |
12,914,858 |
4.8%減 |
その他事業 |
691,188 |
411,734 |
40.4%減 |
合計 |
14,251,110 |
13,326,593 |
6.5%減 |
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 総販売実績に対する割合が10%を超える相手先はありません。
⑤ 経営方針・経営戦略等
当連結会計年度において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表は、連結財務諸表規則第1条の2に掲げる「指定国際会計基準特定会社」の要件を満たすことから、IFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、決算日における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要とされております。当社は、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。しかしながら実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の連結財務諸表を作成するにあたって採用する重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しております。
会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.見積り及び判断の利用」に記載しておりますが、重要なものは以下のとおりであります。
(のれん)
のれんを含む非金融資産の減損にかかる会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 (10)非金融資産の減損」に記載しております。非金融資産の減損損失の測定に際しては、回収可能価額を見積り計算しており、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、のれんを含む非金融資産の減損損失が増減する可能性があります。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容等
(売上収益)
当連結会計年度の売上収益は、13,346,962千円(前年同期比6.5%減)となりました。
売上収益の分析・検討内容につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載のとおりであります。
(売上原価、売上総利益)
当連結会計年度の売上原価は、10,006,764千円(前年同期比7.3%増)となりました。
主な要因は、当社グループ全体での売上高増加に伴う人件費等の売上原価の増加、当連結会計年度に新規取得した子会社(GENIEOLOGY DESIGN DMCC)や事業(Pioneers Consulting)から生じた売上原価の増加が生じた一方、原価人員の成熟化や継続的な原価低減活動、加えて売上増加に伴う固定費の回収が進み、売上収益の増加率と比べ売上原価の増加率は相対的に低い水準に留まったことが要因です。
この結果、売上総利益は3,340,197千円(前年同期比32.4%減)となりました。
(販売費及び一般管理費、その他の収益、その他の費用、営業利益)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、6,196,064千円(前年同期比10.1%増)となりました。
主な要因は、企業成長に伴う販管費人員増による給料手当の増加、上場するに足る内部管理体制構築のための管理部門増員から生じた採用費と役員報酬の増加に加え、組織構造のスリム化やグループレベルでの全体最適化の一環で実施した主にEMEAグループ人員のリストラ費用の発生です。
また、その他の収益は、1,007,049千円(前年同期は306,240千円)となりました。主な要因は、米国子会社(Monstarlab LLC及びKoala Labs, Inc.)が政府から受けたPPPローンにかかる免除益合計155,973千円(前年同期は223,739千円)及びデンマーク当局より当期に認可を受けた税金等の免除益78,072千円です。
これらの結果、営業損失は、△2,056,729千円(前年同期は△389,677千円)となりました。
(税引前利益、親会社の所有者に帰属する当期利益、当期利益)
上述の事象に加え、主に金融商品の公正価値測定(FVTPL)を含む金融収益が3,320千円(前年同期は72,878千円)、主に社債及び借入金とリース負債から生じる支払利息を含む金融費用が101,933千円(前年同期は130,270千円)計上された結果、税引前損失は△2,156,279千円(前年同期は△447,069千円)となりました。また、法人所得税費用が163,640千円(前年同期は276,594千円の税金費用)が計上された結果、当期損失は△2,319,919千円(前年同期は△723,664千円)となりました。なお、第3四半期連結累計期間に生じた加速的な円安傾向は、第4四半期連結会計期間に生じた急激な円高傾向によりオフセット(相殺)され、結果的に当連結会計年度における為替変動による影響は僅少となりました。
なお、財政状態の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② 当期の財政状態の概況」に、キャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ 当期のキャッシュ・フローの概況」に記載しております。
③ 資本の財源及び資金の流動性に関する分析
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、人件費や外注費、人員獲得のための採用費、M&A資金等であります。
当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。必要な資金は自己資金及び金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で資金調達していくことを基本としております。
なお、当連結会計年度末(2023年12月31日)における社債及び借入金の残高は1,493,246千円(前連結会計年度末は1,924,425千円)となっており、現金及び現金同等物の残高は1,783,264千円(前連結会計年度末は2,724,484千円)となっております。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、様々なリスク要因が当社の経営成績に影響を与えるおそれがあることを認識しております。
これらリスク要因の発生を回避するためにも、運営する事業の強化、人員増強、財務基盤の安定化等、継続的な経営基盤の強化が必要であるものと認識し、実行に努めております。
⑤ 経営者の問題意識と今後の方針について
経営者の問題意識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
⑥ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標として、当期既存顧客売上の対前期売上割合(当期開始時点で過去にプロジェクトを実施したことがある顧客の当期売上に対する前期売上の割合)、年間売上が5,000万円以上及び1億円以上のクライアント数並びにこれらのクライアント群からの売上の増加率を重要指標としております。当連結会計年度における年間売上5,000万円以上及び1億円以上のクライアント数は64社、これらのクライアント群からの売上の増加率は0.96%減となりました。
なお、経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標」をご参照ください。
当社は、2023年5月22日に開催の取締役会において、以下の通りシンジケートローン契約を締結しております。
1.契約締結の目的
当社は、社会情勢が大きく変化する中、長期的な事業拡大及び企業価値の向上には、機動的かつ安定的な資金調達を実現することが重要と考えております。今後、当社の事業拡大に伴う運転資金の増加が見込まれることから、より強固な財務基盤の構築を目的として以下の通りシンジケートローン契約を締結しております。
今後も環境の変化に柔軟かつ機動的に対応し、取引金融機関と緊密な連携を図ってまいります。
2.シンジケートローン契約の概要
契約形態 |
コミットメントライン |
組成金額 |
28億円 |
契約締結日 |
2023年5月26日 |
借入日 |
2023年5月31日 |
返済期日 |
2025年3月31日 |
アレンジャー |
株式会社山陰合同銀行 |
エージェント |
株式会社山陰合同銀行 |
参加金融機関 |
株式会社山陰合同銀行、島根中央信用金庫、 株式会社鳥取銀行、島根信用金庫、株式会社SBI新生銀行 |
財務制限条項 |
・2023年12月期決算期以降、当該決算期の直前の決算期の末日または2022年12月に終了する決算期の末日における借入人の連結の貸借対照表における純資産の部の金額のいずれか大きい方の75%の金額以上にそれぞれ維持すること ・借入人の各年度の決算期に係る借入人の連結の損益計算上の経常損益に関して、2023年12月決算期以降、2期連続して経常損失を計上しないこと |
当社グループは、最新のITを研究し、様々な顧客ニーズに迅速に応えるとともに、既存製品・サービスの改善改良及び新規サービスを開発するため、以下の活動を実施しています。
・今後成長を続けていくにあたり、上流のDX戦略コンサルティング、データ分析などの新領域の知見をためていく必要があり、その手段としてのM&A、プロジェクトを通じて、トレーニングマテリアルや内部プロジェクト管理体制を拡充させ、知識の研鑽や社内共有・ナレッジの蓄積を行っております。
当連結会計年度において、当社グループ全体の研究開発活動の金額は、