文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、グローバルヘルスケア企業として、アンメット・メディカル・ニーズ(有効な治療法がない疾患に対する医療ニーズ)を満たす技術・製品の開発、市場開拓・上市、製造・販売を通して、世界中の患者の皆様に希望をお届けすることをミッションとしております。当社グループの経営における基本方針は、革新的な創薬への継続的な投資及び当社グループ全体の収益性拡大です。これらの基本方針の下で、当社グループは外部環境の変化に対応し、来るべき機会を的確に捉え、株主の皆様に対し利益を還元できるようになるものと考えております。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、医薬品及び医療機器(生体材料)の研究開発投資を効率よく管理しながら、収益源を多様化させることに重点を置いて、持続的な成長を続けることを目指しております。この観点から目標とする経営指標を売上収益の伸びと研究開発費の売上収益対比としております。当社グループでは医薬品事業と医療機器(生体材料)事業という事業特性も成長ステージも異なる事業を展開しており、目標とする経営指標はそれぞれ異なります。
医薬品事業: |
(a)新薬の導入及び適応症の拡大等による20-40%の売上収益の伸びを目指します。 (b)医薬品候補のパイプラインを拡充することにより医薬品開発への投資を拡大いたします。 (c)研究開発費を売上収益対比20%以内とするように管理し、収益性を維持いたします。 |
医療機器(生体材料)事業: |
新製品導入及び美容領域の手術等への事業展開により適正な売上収益の伸びを実現し、適正な利益の確保を維持いたします。 |
(3)経営戦略等
当社グループは、医薬品事業における革新的な創薬活動への投資と製造販売の強化、医療機器(生体材料)事業の拡大を軸に、上記経営方針を満たしてまいります。
医薬品や医療機器の開発は、その多くの開発候補が各国の規制当局からの承認を受けることができないため、開発のリスクが高いという特徴を持っています。また、医薬品及び医療機器の開発には多額のコストと長い期間が必要であると同時に、厳しい競争と当局の監督管理にも直面します。このような状況と、当社グループの人員・資金・設備が比較的小規模である点を考慮し、競争の厳しい当業界におけるリスクの軽減と成功確率の向上のために、以下の戦略を着実に実行いたします。
① 基本戦略
中国において、垂直統合により一貫して事業展開を行っていることによるコスト優位性を基に、米国における事業拡大も目指します。医薬品及び医療機器(生体材料)事業を通じ、地理的・事業的に分散された収益を確保することで、リスクを軽減し、クロスボーダー・ライセンス・アウト、提携及び共同開発契約を通じて相乗効果を実現させ、グローバルに収益源の更なる拡大を図ります。グローバル化においては、サプライチェーンの寸断リスクや地政学的リスクが存在しますが(「3 事業等のリスク」参照)、グローバルに多様化されたビジネスのメリットは数多くあります。当社グループのように、世界最大の経済圏一つだけでなく上位の経済圏で複数の事業をグローバルに展開することにより、サプライチェーンの回復力が向上する、多様な人財を惹きつけ、更にそれらの人財間で様々なアイデアを交換する機会が生じる、異なる通貨間のやり取りが自然とヘッジの役割を果たす等の効果が見込めます。そのおかげで、たった一つの国又は地域で事業を展開している企業に比べ、その一か所での障害が全事業に影響を与えるリスクを軽減することができます。
② 新薬開発戦略
患者のニーズが最も緊急である分野における画期的医薬品の開発に焦点を当て、「ファストトラック」制度(新薬優先審査制度)と小規模臨床試験制度を活用しつつ、より適切なコストでこのような緊急の医療ニーズを充足することを目指します。当社グループは(a)中国における研究開発基盤を活用し、アンメット・メディカルニーズの存在する疾患向けに新薬開発を目指す、(b)より多くの患者の方々を治療するために当該医薬品の適応症拡大を図ると同時に、当該疾患の治療方法について中国の大手病院や重要なオピニオン・リーダーの間で強力なネットワークを構築する、(c)直接販売、ライセンス・アウト、提携等を通して、当該医薬品の世界市場への拡大を図る、という3つのステップを研究開発における戦略に据えております。更に、2023年度に取引を完了した米国ナスダック市場上場企業であるCBIO(現GYRE)を拠点に、米国での線維症関連薬品の製品開発も加速してまいります。
③ 持続的な収益の確保
当社グループは、連結子会社の中国の北京コンチネント薬業有限公司(以下「北京コンチネント」)の主力医薬品アイスーリュイの製造・販売・マーケティングを強化するとともに、その適応症の更なる拡大を通じて、売上収益の継続的な拡大を目指しております。また、北京コンチネント及び米国のCullgenにおける創薬活動を基に、その核となる知的財産権を当社グループ内に確保しつつ、成果物である新規化合物や創薬技術を販売又はライセンス・アウトすることにより、創薬事業の収益化を図ります。更に、米国のBerkeley Advanced Biomaterials LLC(以下「BAB」)及び2023年度に新たに米国に設立し、ナスダック市場上場企業であるElutia Inc.からそのオーソバイオロジクス事業の一部を買収したBerkeley Biologics LLC(以下「BB」)の医療機器(生体材料)事業を引き続き推進するとともに、蓄積した生体材料技術とブランドを美容分野へ応用することで、医療機器事業の収益拡大を目指します。これらの施策を通じ、当社グループ全体の連結売上収益の増大及び多様化を目指します。
④ 事業投資
当社グループは、医薬品及び医療機器(生体材料)事業を通じて培ったノウハウを基に、当社グループと相乗効果が期待できる革新的な企業に対して、適切な時期に戦略的な投資を行います。
⑤ 日本における事業の拡大
当社グループは、これまで米国と中国という経済規模がそれぞれ世界第1位と第2位の国で事業を着実に拡大してまいりました。これまで当社グループ本社は日本で上場しているものの、持株会社としての機能のみを保持しておりました。今後、当社グループ事業の第3の柱を経済規模が世界第3位の日本で確立すべく、M&Aや事業提携を含めた事業拡大の方策を積極的に模索いたします。
⑥ ESGに代表される非財務価値の向上
当社グループは世界のアンメット・メディカル・ニーズ(有効な治療方法がない疾患に対する医療ニーズ)を満たし、患者の皆様に新たな希望をお届けすることをミッションとして日々事業に励んでおります。従いまして、当社グループの事業活動そのものがESG(環境、社会、ガバナンス)に関する課題を解決することに直結していると考えております。中国におきましては、北京コンチネントがアイスーリュイをNPOに寄付する等、社会面での貢献も積極的に推進し、また、環境面でも、中国の規制に従い、工場の有害排出物を抑制するための環境保護向け支出を継続的に行っております。更に、当社グループ全体で、ダイバーシティを高めるべく、取締役、経営幹部、管理職、実務レベルの各層において、女性の登用を積極的に進めております。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 研究開発への持続的投資による成長の実現
バイオ創薬企業として、当社グループは創薬及び臨床開発活動に継続的に投資を行わなければなりません。新規化合物の探索や臨床開発を常に推進していかなければ、将来の収益機会や市場シェアを失う恐れがあります。当社グループは、研究開発プロジェクトを厳選して投資決定することにより、安定的成長を目指してまいります。
② 資金調達の多様化と安定化
当社グループは、有望な新規開発化合物の研究開発への投資を続け、着実な企業価値の向上を図ります。ビジネス基盤と研究開発活動を強化するため、新たな資金調達先との関係構築、グループ会社の上場やCBIOとの取引のような新たなストラクチャーの模索等を通じ、資金調達手段をグローバルに多様化・安定化させることを目指してまいります。
③ グループ会社の連携による企業価値の向上
当社グループは、日本の東京に本社を置き、世界2大医薬品市場である中国及び米国の子会社を通じて、収益源及び研究開発活動の多様化を実現しています。このグローバル戦略は、財務の安定性と研究開発業務全般にわたるシナジー効果をもたらします。当社グループは、研究開発における主要子会社間の連携強化による生産性の向上とコスト削減に注力していくことで、企業価値の更なる向上を目指してまいります。
④ 内部管理体制の強化
効率性、透明性に富み、説明責任を全うしうる健全な当社グループ運営を行うにあたっては、内部管理体制の強化が必須であると認識しております。このため、有能な人材の確保・育成や情報システムの高度化等ひいてはコーポレート・ガバナンスの強化を通じて、更なる健全な当社グループ運営を目指し、内部管理体制の強化を図ってまいります。
⑤ データ管理について
当社グループは、常に変化し続けるデータローカライゼーション及び国境を越えたデータ転送の規制に関して、日本の親会社レベル及び子会社レベルの両方で、特許及びその他の知的財産のデータが確実に保護されるように注意を払っています。更に、子会社レベルでは、事業を行うそれぞれの国の関連規則及び規制の下で求められる、絶えず変化するローカルデータ管理及び情報共有プロトコルに準拠するよう努めています。現在日本では従業員以外の個人情報を取り扱っていませんが、知的財産データ及びその他のリスク管理の目的でMaterial Information Manager(MIM)を任命し、個人情報保護法(APPI、2020年6月に改正され、2022年4月に発効)の第28条等の重要な規制の変更を注意深く見守り、定期的に手順や業務の更新を図っております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社は指名委員会等設置会社制度を採用しており、サステナビリティに係る対応を含む経営上の重要な課題について、取締役会が経営の監督を行い、事業運営に関する意思決定・執行を執行役へ委任することで、業務執行と監督機能を分離しております。また、執行の重要案件については、経営会議にて審議、決定を行っております。
(2)戦略
当社グループはバイオ医薬品企業として、世界中の患者の皆様に希望をお届けすることをミッションとし、アンメット・メディカル・ニーズ(有効な治療法がない疾患に対する医療ニーズ)に応え事業活動において社会的責任を果たすことにより、サステナビリティの向上に貢献することが、当社グループの持続的な成長及び企業価値の向上に寄与すると考えております。
その実現に向け、事業を牽引する人材の確保と育成は重要な課題であり、当社グループ全体で、取締役、経営幹部、管理職、実務レベルの各層において女性登用をはじめとする人材の多様性を確保し、従業員の個々の能力を最大限に活用する継続的な学習と成長を奨励します。従業員が仕事と私生活をバランスさせることができるように、安全で健康的な働きやすい職場環境、育児や介護のための休暇、短時間勤務に関する制度等、さまざまな支援策を提供し、個々が活躍する場を拡充します。
(3)リスク管理
当社グループは、
(4)指標及び目標
当社グループにおいて、事業展開に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項は以下のとおりです。なお、リスク要因に該当しないと思われる事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。また、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努める責任がございますが、投資家の皆様におかれましては、本株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項目以外の記載内容も併せて、慎重に検討した上で行われますようお願いいたします。以下の記載は、本株式への投資に関連するリスクすべてを網羅するものではありませんのでご留意下さい。
本項中の記載内容については、特に断りがない限り2023年12月31日現在の事項であり、将来に関する事項は本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)医薬品の開発リスク
当社グループが売上収益を創出し、継続して黒字を達成出来るかどうかは、臨床試験段階にある当社グループの医薬品候補化合物の開発が成功裏に完了し、必要な政府機関の承認を取得し、かつ、上市できるかどうかに左右されます。当社グループは、既存の医薬品候補化合物の開発に相当の人的・財務的資源を投入しておりますが、これらの候補化合物が医薬品として上市されるまでには今後も多額の投資が必要と考えております。しかしながら、当社グループの既存の医薬品候補化合物及び当社グループが今後発見、又はライセンス・イン或いは買収により導入する新規化合物が政府機関の承認を得られる保証はなく、更には政府機関の政策、規制又は承認を取得するために必要な臨床試験データの内容等が当該臨床開発期間中に変更となったり、申請対象国によって異なったりする可能性があります。
(2)グローバルな事業展開に伴うリスク
当社グループの収益の大半を占める連結子会社であるGYRE、北京コンチネント、Cullgen、BAB及びBB等は、それぞれ中国及び米国に拠点があるため、当社グループの事業活動は、グローバル展開に伴うカントリーリスク、為替リスク又は政治的リスクの影響を受ける可能性があります。中国及び米国の医薬品産業は政府の厳格な管理監督下での規制を受けており、当社グループの活動は両政府が公布する法律等に従います。これら両国の政策、規制、法律等に変化が生じた場合には、当社グループの経営戦略や事業活動に制約が加えられる可能性があります。また、種々の理由による国際的なサプライ・チェーンの混乱等により、医薬品や医療機器(生体材料)の製造、販売、流通、医療行為に制約が加えられる可能性があります。
(3)競合に関するリスク
当社グループは市場競争環境の下で事業を行っておりますが、将来の技術発展や製薬業界における継続的な新薬開発により当社グループの既存製品の陳腐化或いは競争力低下を招いた結果、現在或いは将来の競合他社と有効に競争できなくなる可能性があります。当社グループの創薬の研究開発が競合他社に劣後していると判明した場合、売上収益の減少、販売価格の低迷及びシェアの低下等が起こり、それらが当社グループの経営成績と利益率に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。従って、当社グループの今後の発展は、既存製品の改良及び新規性がありかつ価格競争力のある製品を開発し、それらが絶えず変化する市場において受け入れられるかどうかに大きく左右されます。
(4)法的規制に関するリスク
①訴訟リスク
当連結会計年度末時点では、当社グループは訴訟の対象となっておりませんが、将来、当社グループが訴訟、その他の法的手続き、又は、当局による調査の対象となる可能性があります。多額の金銭的補償が命じられた場合や当社グループに不利な決定がなされた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。
②規制リスク
当社グループの医薬品の研究開発活動は、それらを行っている各国の薬事行政により様々な規制を受けております。例えば、当社グループの研究及び製造施設は中国にあり、このことは当社グループの中国における開発、販売並びに承認申請等において利点となっていると考えておりますが、中国の製薬産業は政府の厳格な管理監督下にあり、また、様々な監督官庁による監理監督を受けます。加えて、中国における医薬品の製造、流通、販売、医療行為や医療機器産業も刻々と変化する制度の下で政府の厳格な監理監督を受けており、制度が変化した場合に、当社グループの事業活動に制約が加えられる可能性があります。
(5)知的財産権に関するリスク
当社グループの製品に関して、特許その他の知的財産権を保護するための措置を取ったにもかかわらず、当該知的財産権に関し異議を申し立てられたり無効とされたりする可能性があります。特許侵害や、企業機密の漏洩、その他の知的財産権の侵害に関して係争することは、結果の良し悪しに限らず非常に費用がかかります。従って、当社グループでは、誠実義務に従って、細心の注意を払いながら特許出願を行います。しかしながら、訴訟を提起され、それらが法的に無効或いは実施不能であるという主張がなされる可能性は予測不可能であります。当社の知的財産権が侵害された場合、当社の個別製品、製品群或いは事業全体に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
(6)製造物責任のリスク
当社グループの製品及びその製造プロセスは、所定の品質基準を満たすことが求められます。当社グループは、製品に関する品質問題発生を予防するため、品質管理マネジメント体制及び標準手順書を確立しております。しかしながら、そのような品質管理体制をもってしても、間違い、不具合、故障といった事象を完全に取り除くことは困難であります。品質上の不具合は、幾つもの要因の結果、検知も是正もされない可能性がありますが、それらの多くは当社の管理不能な要因です(製造設備の故障、品質管理担当者によるヒューマンエラー又は不正行為、第三者の不正行為、原料の品質問題等)。加えて、当社グループにおいて将来製造能力を拡大した場合、当社グループの既存の設備と新設備とで製品の品質を等しく保つことを保証できない可能性があり、当該品質問題解決のために相当の費用が発生する可能性があります。
(7) 等感染症等の発生に関するリスク
① 創薬の研究開発における影響
当社グループは、パンデミック発生時に限らず、在宅勤務も極力可能にするための情報インフラを構築し、維持しておりますが、創薬の研究開発の多くは研究所にて行う必要があり、感染症が蔓延して出勤が困難になることにより、研究開発に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 臨床試験における影響
パンデミックが発生した場合、臨床試験を行う医療機関や医師がパンデミック対応にリソースが優先的に割かれるため、パンデミックに直接関係ない新薬の臨床試験のスケジュールに悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 通常の事業活動に与える影響
パンデミックが発生した場合、パンデミックを引き起こしている感染症以外の病気のための通院や治療が抑制され、パンデミック以外の病気向けの薬の処方が減ることにより、当社の医薬品の売上収益に悪影響を及ぼす可能性があります。また、生体材料事業においては、生体材料を使用する手術のキャンセルや延期等により、生体材料の売上収益の目標の達成に悪影響を及ぼす可能性があります。
(8) 人的資本に関するリスク
① キーパーソンへの依存
当社グループは、最高経営責任者(CEO)のイン・ルオ博士ほか経営陣のリーダーシップによって率いられております。特にルオ博士は、当社の企業戦略及び研究開発戦略の考案と実行において重要な役割を果たしております。更に、グループの東京本社は小規模であり、日常業務を少数の主要な従業員に依存しております。ルオ博士をはじめとする経営陣や主要な人員の貢献・サービスが失われると、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
② 人財の獲得と保持
当社グループは、事業を展開している主要な地域において、他の製薬会社や大学・研究機関と人財採用の面で競合しております。有能な人財の数が限られているため、損失が発生した場合、当社グループは上級スタッフ及び主要な研究者を十分に置き換えることができない可能性があります。過度な人財獲得競争により、当社グループの人件費が上昇した場合、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。こうした人財の継続的な貢献と、優秀な人財の更なる獲得が、事業の成長と成功の要因の一つであると考えております。適切な人財を確保できない場合、当社の事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
(9) その他のリスク
① サイバーセキュリティ
当社グループは事業をグローバルに展開しており、ハッカー、マルウェア、ウイルス及びその他のサイバー脅威を含む悪意のある攻撃者からの脅威に直面しております。その結果、当社グループ及びお客様、従業員、取引先の様々な機密情報が違法に公開・収集・監視・悪用・消去されると、当社の業務の中断、財務上の損失、評判の低下、法的及び規制上の罰則等の悪影響をもたらす可能性があります。ファイアウォールや多要素認証等、サイバー攻撃から保護するためのさまざまな対策を実施していますが、これらの対策はすべてのサイバー攻撃を防ぐのに効果的ではない可能性があり、将来、システムがそのような攻撃を受けないことを保証することはできません。更に、サイバーセキュリティ違反やその他のセキュリティインシデントを是正するために多大なリソースを費やす必要が生じる場合があります。サイバー脅威が進化し続けるにつれて、セキュリティ対策を強化したり、新しい脅威や新たな脅威から保護するために追加のコストを負担したりする必要が出て来る可能性があります。
② データ管理
当社グループは、研究・開発において多大なデータを取り扱っています。このデータが不正確であったり、完全性に欠けていると、誤った判断や誤った結論を導くリスクがあります。また、多数の人々の個人情報を保有しているため、不正なアクセスや攻撃を受けるリスクがあります。それらのデータの保全には万全の注意を払っておりますが、データの漏洩や盗難、サイバー攻撃等によるデータの改ざんや破壊が発生する可能性があります。更に、当社グループはグローバルに事業を展開しているため、事業基盤のある各地域のデータ管理に関する様々な規制に対応する必要がありますが、これらの規制は流動的であるため、規制が変更された場合等に、対応するための体制整備が間に合わない可能性があります。
③ 根拠のない噂と虚偽の情報
当社グループの事業は、特にソーシャルメディアやその他のインターネットベースのプラットフォームを通じて広まった噂、虚偽の情報及び誤解を招く発言から生じるリスクにさらされています。これらの噂や虚偽の情報は、根拠のないものや真実でないものであっても、急速に広まり、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。このような風説や虚偽の情報が広まると、株価の下落、評判の失墜、顧客の信頼の喪失等の悪影響が生じる可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
2023年の世界経済は新型コロナウイルス感染症の厳戒態勢が和らぎ落ち着きを取り戻す一方で、中東情勢の緊迫化等、地政学的リスクが高まり予断を許さない状況が続いております。
わが国経済も新型コロナウイルス感染症の影響が一定の落ち着きを見せ、年末にかけて日経平均株価がバブル後の最高値に迫る等、明るい材料がみられる一方で、円安による物価インフレが起こり、収入上昇とのギャップ解消への対応が大きな課題として取り上げられております。
一方、当社の属するバイオテクノロジー・セクター及び東証グロース市場におきましては、将来的な国内の金利上昇懸念の高まりから、総じて厳しい状況が続いております。
このような状況下ではありますが、当社グループは、大幅な増収増益を達成し、売上収益及び営業利益、当期利益のすべてにおいて過去最高を記録いたしました。また、将来の事業発展の布石として当社グループを挙げて従前取り組んできた幾つかのプロジェクトにおいて、重要な成果を挙げることができました。
医薬品事業におきましては、当社グループ主要子会社である北京コンチネントは、引き続き主力製品であるアイスーリュイの販売が堅調に推移し、売上収益の増加に大きく寄与しました。また、2023年10月26日に開示いたしましたとおり、同社は、次期主力製品の有力候補であるF351(一般名:ヒドロニドン)の中国における第3相臨床試験において、2023年内としていた予定を大幅に前倒しして被験者登録を完了し、現在、鋭意データの収集を進めております。そして、2023年10月31日に開示いたしましたとおり、米国ナスダック市場に上場するCatalyst Biosciences, Inc.(以下「CBIO」)との取引を成功裏に完了いたしました。CBIOは、Gyre Therapeutics, Inc.(以下「GYRE」)と名称を変更し、代謝障害関連脂肪肝炎(MASH:Metabolic Dysfunction Associated Steatohepatitis、以前はNASH:非アルコール性脂肪肝炎と呼ばれていた疾患の病名が変更されたもので、上記日本語訳は仮称)向けの第2相臨床試験を2024年中に米国で提出すべく、鋭意準備を進めております。更に、北京コンチネントは、中国で築き上げた販売網を有効活用するため、ジェネリックのオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の開発販売を始めております。
米国及び中国において独自の標的タンパク質分解誘導技術を活用した研究開発を推進している米国子会社Cullgenは、2023年5月9日に開示いたしましたとおり、アストラゼネカ-CICCファンドをリード・インベスターとするシリーズC資金調達ラウンドで3,500万米ドルを調達いたしました。更に、2023年6月15日に開示いたしましたとおり、アステラス製薬とは革新的なタンパク質分解誘導剤創出に向けて提携し、鋭意研究を進めております。この提携により、3,500万米ドルの契約一時金のみならず、毎月の安定的な収益源を獲得したため、Cullgenも黒字化を達成いたしました。この提携から、Cullgenは最大19億米ドルをアステラス製薬から受領する可能性があります。加えて、同社は、2023年7月31日に開示いたしましたとおり、抗がん剤候補であるTRK分解剤の第1/2相臨床試験を中国にて進めております。他の複数プログラムについても、臨床試験申請を目指して研究開発を推進しております。
医療機器事業につきましては、米国で生体材料事業に携わるBerkeley Advanced Biomaterials LLC(以下「BAB」を筆頭に、業績は堅調に推移しております。2023年9月19日及び11月10日に開示いたしましたとおり、当社グループは、米国ナスダック市場上場のElutia Inc.からオーソバイオロジクス事業の一部を譲り受け、当該事業の拡大に努めております。
その他、2023年11月20日に開示いたしましたとおり、CVI Investments, Inc.(以下「CVI」)が第46回、47回新株予約権を全て行使し、またCVIに割り当てていた第48回新株予約権を当社が買い戻し、消却いたしました。その結果、当社は更なる成長に投資するための資金を確保すると共に、当社発行済株式の約9%に及ぶ潜在的な株式希薄懸念は全て払拭されております。
② 販売費及び一般管理費ならびに研究開発費
(単位:千円)
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
差額 |
販売費及び一般管理費 |
△10,965,656 |
△15,292,839 |
△4,327,182 |
人件費 |
△3,636,074 |
△5,318,748 |
△1,682,673 |
研究開発費 |
△2,545,455 |
△2,557,803 |
△12,347 |
販売費及び一般管理費
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、15,292,839千円となり、前連結会計年度比39.5%増となりました。主に北京コンチネントにおける拡販体制の強化による販売・マーケティング費用の増加、CBIOとの取引に関連する法務費用及び取引完了後のGYREにおける諸経費の増加等によるものです。
研究開発費
当連結会計年度の円ベースの研究開発費は、中国における北京コンチネント及びCullgenの研究開発の進展により、2,557,803千円、前連結会計年度比0.5%増となりました。北京コンチネントの研究開発費には、新規パイプラインに加え、新たなジェネリックのオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の製品化に関する費用も含まれております。
③ 金融収益及び金融費用
(単位:千円)
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
差額 |
金融収益 |
259,835 |
771,527 |
511,692 |
金融費用 |
△869,887 |
△1,250,685 |
△380,798 |
金融収益
当連結会計年度の金融収益は、771,527千円(前連結会計年度比196.9%増)となりました。主に円安による為替差益によるものです。
金融費用
当連結会計年度の金融費用は、1,250,685千円(前連結会計年度比43.8%増)となりました。主にCullgenの財務活動に係る現金支出を伴わない利息費用です。
④ セグメント情報
医薬品事業
当社グループの主要子会社である北京コンチネントにおいて、その主力医薬品であるアイスーリュイの売上収益が現地通貨ベースでも引き続き最高を更新し、中国での売上収益が好調に成長した事に加え、Cullgenにおけるアステラス製薬とのタンパク質分解誘導剤創出共同開発に伴う3,500万米ドルの契約一時金及び共同開発費用売上収益が大きく寄与いたしました。当連結会計年度の医薬品事業の売上収益とセグメント利益は、それぞれ22,976,201千円(前連結会計年度比53.3%増)、12,026,795千円(前連結会計年度比2,687.3%増)となりました。
医療機器事業
医療機器セグメントにおいても、堅調な業績となりました。2023年9月19日及び11月10日に開示いたしましたとおり、米国ナスダック上場のElutia Inc.からオーソバイオロジクス事業の一部を譲り受けました。当連結会計年度の医療機器事業の売上収益とセグメント利益は、それぞれ3,058,541千円(前連結会計年度比21.3%増)、1,082,048千円(前連結会計年度比14.3%増)となりました。
⑤ 生産、受注及び販売の実績
生産実績
当社グループの業務は業務の性質上、生産として把握することが困難である為、記載を省略しております。
受注実績
当社グループは受注生産を行っておりませんので、受注状況の記載はしておりません。
販売実績
当連結会計年度の販売実績は次のとおりです。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
|
金額(千円) |
前年同期比(%) |
|
医薬品事業 |
22,976,201 |
53.3 |
医療機器事業 |
3,034,369 |
25.0 |
合計 |
26,010,571 |
49.3 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該総販売実績に対する割合は次のとおりです。
相手先 |
セグメント |
前連結会計年度 (自 2022年1月1日 至 2022年12月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
||
Sinopharm |
医薬品事業 |
4,596,597 |
26.4 |
5,365,748 |
20.6 |
Astellas Pharma Inc. |
医薬品事業 |
- |
- |
5,804,973 |
22.3 |
(注) 相手先は企業グループ毎にまとめて記載しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
当連結会計年度における経営指標の実績は次のとおりです。売上収益については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ⑤生産、受注及び販売の実績」に記載しております。
また、研究開発費については、その活動を「第2 事業の状況 6 研究開発活動」に記載しております。
(単位:千円)
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
売上収益合計 |
17,418,966 |
26,010,571 |
研究開発費 |
2,545,455 |
2,557,803 |
売上収益対比 |
14.6% |
9.8% |
① 重要性がある会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表はIFRSに準拠して作成しております。連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき会計上の見積り及び判断を行っております。また、実際の結果は見積りによる不確実性がある為、これらの見積りと異なる場合があります。当社の連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表、連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」及び「4.重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しております。
② 経営成績に重要な影響を与える要因について
「第2 事業の状況、3 事業等のリスク」に記載のとおりとなっております。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
a.当期の財政状態の概況
連結財政状態
(単位:千円)
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
差額 |
資産合計 |
33,906,981 |
62,394,370 |
28,487,388 |
負債合計 |
14,096,013 |
26,341,592 |
12,245,578 |
資本合計 |
19,810,968 |
36,052,778 |
16,241,809 |
資産合計
当連結会計年度末における資産合計は、62,394,370千円、前連結会計年度比84.0%増となりました。主に事業活動に伴う現金及び現金同等物の増加、企業結合によるのれんの増加によるものです。
負債合計
当連結会計年度末における負債合計は、26,341,592千円、前連結会計年度比86.9%増となりました。主にCullgenの財務活動に係る現金支出を伴わない費用の計上によるものです。
資本合計
当連結会計年度末における資本合計は、36,052,778千円、前連結会計年度比82.0%増となりました。主に売上収益の伸長による利益剰余金の増加、新株予約権行使に伴う株式発行による資本金・資本剰余金の増加によるものです。
b.当期のキャッシュ・フローの概況
連結キャッシュ・フロー
(単位:千円)
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
差額 |
営業活動によるキャッシュ・フロー |
393,320 |
6,549,337 |
6,156,016 |
投資活動によるキャッシュ・フロー |
△4,116,163 |
△6,842,661 |
△2,726,498 |
財務活動によるキャッシュ・フロー |
△646,327 |
10,686,556 |
11,332,883 |
営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、6,549,337千円の収入、前連結会計年度比1565.1%増となりました。主に北京コンチネントの堅調な売上収益拡大、Cullgenのアステラス製薬との契約によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、6,842,661千円の支出、前連結会計年度比66.2%増となりました。主に事業譲受による投資支出、定期預金の取得によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の646,327千円の支出に対し、10,686,556千円の収入となりました。主に新株予約権行使による株式発行収入、CullgenのシリーズC優先株式発行収入によるものです。
c.財務政策
当社グループの核となる事業は医薬品開発であります。当社グループでは、当社グループ内にて当該医薬品候補化合物の収益化を成功させることを目指しており、中国市場においてはアイスーリュイにて実際に達成しております。これにより、当社グループは、十分なキャッシュ・フローを創出し、利益を得ることと、将来の売上収益獲得のために当社グループの医薬品開発パイプラインに継続的な投資を行うこととの両方を実現させるという経営戦略を遂行できるようになりました。このためには、研究開発費と売上利益とのバランスを慎重に保つという厳しい財務政策が必要とされます。
当社グループは主として、上記戦略遂行によって生み出された内部留保資金を当社グループの事業運営に活用しますが、当社経営陣は、医薬品開発のリスク及び将来の金融市場混乱の可能性を予見できないことを依然として認識しております。従いまして、当社グループの事業継続を確かなものにし、また、新たな事業機会が訪れた際に先手を打てるに十分な資金を保有しておくため、場合によっては外部資金調達に取り組むことがあります。そのような外部資金調達を行う場合においても、当社への出資拡大に伴う希薄化を最小限に抑えるとともに、当社グループの成長を支援して頂ける長期安定投資家の探索に努める方針であります。
当連結会計年度において予定している設備投資に係る資金需要の主なものは「第3 設備の状況、3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりです。
(1)Cullgen がアステラス製薬と革新的なタンパク質分解誘導剤創出に向け戦略的提携
契約名 |
Research Collaboration and Exclusive Option Agreement |
相手方の名称 |
Astellas Pharma Inc. |
契約締結日 |
2023年6月14日 |
契約期間 |
特に定めなし |
契約内容 |
本契約において、Cullgen社独自の技術プラットフォームuSMITETMとアステラス製薬の創薬ケイパビリティを融合し、複数のタンパク質分解誘導剤を目指します。Cullgenは契約一時金としてアステラス製薬より3,500万米ドルを受領します。また、アステラス製薬がリードプログラムを行使した場合、更に8,500万ドルを受領します。そのうえ、ライセンスオプションとプログラムの進捗に応じたマイルストーンとして最大19億米ドル及び製品の売り上げに応じたロイヤルティーをアステラス製薬から受領する可能性があります。 |
(2)当社連結子会社Berkeley Advanced Biomaterials Inc.の子会社Berkeley Biologics LLCが、Elutia Inc.のオーソバイオロジクス事業の一部を譲り受ける契約
契約名 |
Asset Purchase Agreement |
相手方の名称 |
Elutia Inc. |
国名 |
アメリカ合衆国 |
契約締結日 |
2023年9月17日 |
契約期間 |
特に定めなし |
契約内容 |
Elutiaのオーソバイオロジクス事業の内、受託製造に関わる部分(オーソバイオロジクス受託製造に関わる人的資本、土地、建物及び機械装置等の有形固定資産、ソフトウェア等の無形固定資産、棚卸資産等)を1,500万米ドルで前払いし、更に最大2,000万米ドルの条件付対価を、今後5年にわたり、業績達成度合いに応じてElutiaに現金で支払う。 |
(1)研究活動
当社グループの創薬研究では、Cullgenを中心に革新的な新規開発候補化合物(NCE)の開発を目指しております。Cullgenは、がん、疼痛、及び自己免疫疾患に対する酵素及び非酵素タンパク質を標的とした複数の新規化合物を含む創薬パイプラインの拡充のための研究開発を進めております。
2023年6月15日に開示いたしましたとおり、Cullgenはアステラス製薬と、革新的なタンパク質分解誘導剤創出に向けた共同研究及び独占的オプション契約を締結いたしました。本戦略的提携において、両社は新規E3リガンドを活用したCullgen独自の技術プラットフォームuSMITE™とアステラス製薬の創薬及び商業化能力を融合し、複数の標的タンパク質分解誘導剤の創出を目指します。Cullgenとアステラス製薬は臨床開発対象の化合物を見出すための共同研究を行い、アステラス製薬は見出された分解剤の開発及び商業化を担います。乳がんやその他の固形がんを対象として、アステラス製薬が同定したリードプログラムである細胞周期タンパク質に対する分解誘導剤候補化合物も含むアステラス製薬との共同研究は、順調に進展しております。
(2)開発活動
■アイスーリュイ〔中国語:艾思瑞®、英語:ETUARY®(一般名:ピルフェニドン)〕-北京コンチネント
北京コンチネントは、アイスーリュイの適応を以下の疾患に拡大する臨床試験を遂行しておりますが、F351の臨床試験を優先しております。
・糖尿病腎症(DKD):第1相完了、今後の進め方を中国当局と継続協議中
・結合組織疾患(CTD-ILD)を伴う間質性肺疾患(全身性硬化症(強皮症、SSc-ILD)と皮膚筋炎(DM-ILD)):
第3相臨床試験継続中
・じん肺治療薬(Pneumoconiosis,PD):第3相臨床試験継続中
■F351(一般名:ヒドロニドン)-北京コンチネント及びGYRE
F351は肝線維症向け治療薬候補として、当社グループの医薬品ポートフォリオにおける重要な創薬候補化合物であり、世界の主要医薬品市場へ臨床開発活動を拡大する戦略の重要な部分を占めております。F351は、アイスーリュイの誘導体である新規化合物であり、内臓の線維化に重要な役割を果たす肝星細胞の増殖及び、TGF-β伝達経路を阻害します。
2021年3月17日に開示いたしましたとおり、F351は中国当局より肝線維症の画期的治療薬として認定されました。これにより、F351について当局との協議が優先的に行われ、かつ、その協議結果を生かした臨床試験を進めることが可能となっております。
その後、2022年1月17日に開示いたしましたとおり、中国においてF351の第3相臨床試験を開始しました。更に2023年10月26日に開示いたしましたとおり、2023年内としていた予定を大幅に前倒しして第3相臨床試験の被験者登録を完了し、現在、鋭意データの収集を進めております。
米国においては、GYREが、代謝障害関連脂肪肝炎(MASH)向けの第2相臨床試験の開始申請を、2024年度中に米国当局に提出することを目標に準備を進めております。
■F573(急性肝不全(ALF)・慢性肝不全急性時(ACLF)治療薬)-北京コンチネント
F573はアイスーリュイ及びF351に次ぐ3番目の創薬候補化合物として、カスパーゼを強く阻害する可能性を持つジペプチド化合物であり、急性肝不全(ALF)や慢性肝不全の急性増悪(ACLF)に関連して発生するアポトーシスや炎症反応に効果が期待される化合物です。2023年3月28日に開示いたしましたとおり、F573は第2相臨床試験中です。
■CG001419(TRK分解剤)-Cullgen
CG001419は、神経栄養性チロシン受容体キナーゼ(NTRK)融合遺伝子陽性及びTRK過剰発現のがん(非小細胞肺がんや乳がん、膵臓がんを含む多くの固形がんに見られる)の治療に使用される、業界初の選択的かつ強力な標的タンパク質分解誘導剤を活用した経口剤です。2023年7月31日に開示いたしましたとおり、Cullgenは、TRK分解剤に対して、同社初となる臨床試験(第1/2相)を中国にて開始いたしました。
■ジェネリックのオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)-北京コンチネント
北京コンチネントは、中国において、慢性肝疾患による血小板減少症の治療薬であるアバトロンボパグマレイン酸塩(Avatrombopag Maleate)タブレットや、多発性硬化症の治療薬であるフィンゴリモド塩酸塩(Fingolimod Hydrochloride)カプセル等の薬品の権利を導入し、新たなジェネリックのオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)として発売するべく、準備を進めております。
以上の結果、当連結会計年度における当社グループの研究開発費は、全体では