当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、2030年に向けた「長期ビジョンCCC2030」において、サステナブルな長期視点での経営をおこなっていくための経営モデルとして「森林経営モデル」を掲げ、「自律協働社会」の実現に向けた自らの役割を「WORK & LIFE STYLE Company」と定め、「働く」「学ぶ・暮らす」の領域で、豊かな生き方を創造する企業となるべく取り組んでおります。
これまで当社グループでは、社会の変化を捉え、「共感共創」という強みを生かして、顧客やパートナーと共に新しい体験をデザインし、家具から多様な「働き方」を支える「オフィス空間」、文具から「学び方と暮らし方」を支える「道具・サービス」など、「モノだけでないコトのニーズ」に対応する事業に発展させてまいりました。
これからは、未来の自律協働社会に向けた社会課題や顧客ニーズの解決のために、「モノからコトへ」提供価値の拡大を進め、「働く」「学ぶ・暮らす」領域における新しい顧客体験価値を創出していきます。既存事業のブラッシュアップに加え、事業領域の拡張や新規ニーズの事業化を通じて事業領域の拡大を進め、様々な顧客ニーズに応えながら持続的に成長する売上高5,000億円規模の多様な事業の集合体(森林)へと変化することを目指してまいります。
2022年12月期からは、「長期ビジョンCCC2030」達成に向けた第3次中期経営計画「Field Expansion 2024」を推進しており、既存事業のブラッシュアップに加え、事業領域の拡大を目指しております。
(価値創造ストーリー全体像)
(2)目標とする経営指標
第3次中期経営計画の最終年度にあたる2024年度の目標数値は、下記の図のとおりです。
財務目標
(単位:億円)
|
2021年12月期 |
2023年12月期 |
2024年12月期 |
|
実績 (注)1 |
実績 |
第3次中計当初目標 |
業績予想 (注)2 |
|
売上高 |
2,926 |
3,287 |
3,600 |
3,550 |
売上総利益 (率) |
1,135 (38.8%) |
1,273 (38.8%) |
1,437 (39.9%) |
1,401 (39.5%) |
営業利益 (率) |
199 (6.8%) |
238 (7.2%) |
275 (7.6%) |
245 (6.9%) |
ROE(率) |
(6.0%) |
(7.8%) |
(8.0%) |
(8.3%) |
(注)1 新収益認識基準を適用した、補正後の数値です。
(注)2 2024年2月13日に公表された2024年12月期の業績予想です。
(非財務目標 2024年コミット目標)
(3)経営環境
当社グループの経営環境については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績」をご参照ください。
(4)中長期的な会社の経営戦略並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
・経営戦略
第3次中期経営計画「Field Expansion 2024」で取り組む重要な4つの全社テーマは下記のとおりです。
4つの重要課題
①「ダイナミックな成長投資」:投資・研究開発の枠を決定し、検討、意思決定、責任者の設定などPDCAのルールと体制など投資ガバナンスを設計し実行する。
②「人材の活躍と成長」:社内の人材の流動性を高め、多様な人材の活躍の機会を増やす。
③「イノベーションの活性化」:インキュベーションの場としくみを構築する。
④「社会価値と経済価値の両立」:社員が社会課題を体験する機会を増やす。
・事業戦略
当社グループは、「長期ビジョンCCC2030」の達成に向けて、自らの社会における役割を「WORK & LIFE STYLE Company」と再定義し、「働く」「学ぶ・暮らす」のドメインで、文具や家具だけにとらわれない豊かな生き方を創造する企業となることを目指します。
①ワークスタイル領域
新型コロナウイルス感染拡大によって定着した働く場の分散と働き方の多様化により定着したハイブリッドワークにおける新しいニーズに着目します。
ファニチャー事業は、働き方の変化に伴う旺盛なオフィス需要の獲得と、Kokuyo Hong Kong Limitedを活用した海外事業の成長により、コクヨ全社の業績を牽引することを目指しております。
ビジネスサプライ流通事業は、カウネットと卸の機能統合による事業効率化を推進するほか、UI/UXの改善等の顧客体験価値向上に向けたシステム投資を行い、事業拡大を目指してまいります。
これによりワークスタイル領域全体として働き方の変化を捉え大幅な増収増益を目指してまいります。
②ライフスタイル領域
学びや生活の道具におけるライフスタイルツールにおいて、より自分らしく生きることへのこだわりのニーズの高まりに着目します。
ステーショナリー事業は、SNSなどを通じた自己表現ニーズの高まりにより付加価値文具市場が拡大する中で、本格的なグローバル展開を見据えた体制変革を実施し、グローバル成長による増収増益を目指してまいります。
インテリアリテール事業のアクタスは、住空間への新たなニーズを取り込むために、店舗とECを統合したマーケティング戦略に取り組んでまいります。
これによりライフスタイル領域全体として、自分らしい生き方の探求と社会の共生のニーズへの対応で増収増益を目指してまいります。
・資本政策
これらの計画を進める上で、投資及び株主還元等との間で適切な資源配分を実施致します。そのために、事業資産の効率向上に向けた取り組みを推進するとともに、資本コストを明確に意識した投資決定と事業評価を推進してまいります。
また、持続的な企業価値向上に向けた戦略投資として、定常投資200億円に加え、事業領域拡大に向けた成長投資300億円を実施致します。社会価値向上に向けて社会貢献目的の寄付枠(経常利益の1%=約2億円)とESG活動費枠を設定し、投資推進部門とサステナブル推進部門が全社横串でクライテリアを明確にしながら推進してまいります。
なお、従来は、配当性向40%及び安定的な増配を達成すべく株主還元を実施することとしておりましたが、足元では、今期の業績予想、キャッシュ・フローの見通し及び財務状況などが当初の想定以上に進捗していることを踏まえ、いつもご支援いただいている株主様に報いるという観点から、2024年度までの第3次中期経営計画における株主還元の方針を一部見直し、新たに総還元性向を指標として導入し、その目標値を50%以上とします。自己株式については、その用途が株式報酬等に限定されていることから、発行済株式総数の5%を超える部分については原則として随時消却を実行して残高を調整することとします。
以上のような取り組みを通じて2024年度ROE8%を実現してまいります。
今後も株主様との積極的な対話を通じて、中長期の成長ストーリーに関して説明責任を果たしてまいります。
以上の経営方針に基づき、当社グループにおける持続的成長の獲得を目指してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般に関する「ガバナンス」と「リスク管理」
①ガバナンス
当社グループは、サステナビリティ(持続可能性)を巡る課題を重要な経営課題の一つとして認識しています。2021年に、事業を通じた社会的課題解決に向けた取組みを加速させていくため、サステナビリティ活動において特に注力すべきマテリアリティ(重要課題)を特定しました。2022年には、特定したマテリアリティを経営課題として捉えなおし、当社の目指す社会像である「自律協働社会」を起点として再定義しました。再定義したマテリアリティに基づき、目標(マテリアリティ目標)を設定しています。
■経営課題として捉えなおしたうえで再定義したマテリアリティ(重要課題)
1.Well-beingの向上
2.社会価値創出に向けたマネジメントシステム変革
3.気候危機への対応
4.循環型社会への貢献
5.自然共生社会への貢献
当社グループでは、設定したマテリアリティを踏まえてサステナビリティに関する経営判断を下し、業務執行を行う体制を構築しています。具体的には、執行側での経営体制の確立及び取締役会との連携強化を目的とした「サステナブル経営会議」を2022年に新設しました。同会議では、外部環境等の変化に柔軟に対応できるよう、サステナビリティに関する課題を特定し、その実行計画の検討や予算への反映を行うための審議を行っています。また、同会議にて議論された内容は、取締役会に定期的に報告され、サステナビリティに関する経営課題への取り組みについて、取締役の監督が適切に図られるよう体制を整えております。さらに、経営上重要な事項については取締役会にて意思決定を行っております。同会議の議長は、サステナビリティに関する取り組みを継続的に行うために2021年度より新設されたCSV本部の本部長が務め、全ての執行役員で構成されており、その下部組織として、環境部会、Well-being部会、調達部会、森林経営部会を設置しております。
■サステナブル経営体制
②リスク管理
当社が留意すべきサステナビリティ関連のリスクに関しては、定期的に行う従業員のエンゲージメントやストレスの状態を確認するためのストレスチェック、サプライヤーへのコクヨグループサステナブル調達方針アンケート等の調査結果で把握しております。
把握されたリスクは、サステナブル経営会議の傘下の4部会において、全ての事業部門の責任者が参画の下、特定・評価しております。特定・評価されたリスクに関しては、サステナブル経営会議を通じて事業部門に共有され、対応する個別の戦略は執行を担う各事業部門にて管理しております。
また、当社グループ全体にかかるサステナビリティ関連のリスクに関しては、サステナブル経営会議と、グループ経営を取り巻く様々なリスクを取り扱うリスク委員会との連携体制を構築することで、全社的なリスクマネジメントに統合しております。サステナブル経営会議にはリスク委員会の委員長を務める執行役員も参加しております。
(2)気候変動に関する「戦略」と「指標と目標」
当社グループは、気候変動を重要な経営課題の一つとして認識しております。
具体的には、2050年カーボンニュートラル実現に向けた取り組みとして、パリ協定が求める水準と整合した、企業が設定する温室効果ガス排出削減目標「SBT(Science Based Targets ※科学的根拠に基づいた排出削減目標)」のNear-term 目標を申請しました。
■SBTイニシアティブへの申請目標
○Scope1-2のGreen House Gas(以下、GHG)排出量を2022年から2030年までに総量で42%削減する
○Scope3の“購入した製品・サービス”によるGHG排出量を2022年から2030年までに総量で25%削減する
○2028年までに“購入した製品・サービス”による GHG排出量の17.4%に相当するサプライヤーにSBT目標を設定させる
上記目標は審査前の数値であります。
■2024年コミット目標
また、従来取り組んでいる温室効果ガスの排出削減活動に、当社グループのマテリアリティの一つ「気候危機への対応」の2024年コミット目標の取り組みがあります。
日本国内で自社が排出するCO2(Scope1-2)を2024年までに2013年比で50%削減することを掲げ、2022年は21.4%の排出削減となりました。2022年より工場の電力の非化石化を進めており、2024年には日本国内の主要4工場の対応が完了する見込みであります。
■リスクと機会分析
コクヨグループでは、2022年5月にTCFDへの提言に賛同を表明しました。シナリオ分析の手法を用い、気候変動に関連するリスク・機会の特定、財務への影響分析、及びリスク・機会への対応策の検討を行っております。分析の時間軸については、長期ビジョンを踏まえ、2030年における社会やステークホルダーの変化を想定しております。
< ワークスタイル領域 >
シナリオ |
ファニチャー事業 |
1.5℃ シナリオ |
脱炭素に向けた政策は日本国内外において強化され、顧客やサプライヤー、社会一般における脱炭素や廃棄物削減に対する取り組みが進展します。財務影響として、リスクの面ではCO2排出コスト増、設備投資等によるコスト増、原材料コストの増加、顧客ニーズの変化による売上高の減少といった影響が想定される一方で、顧客のニーズや行動の変化に対応した新製品・サービスの開発や、低排出型の事業開発によるドメイン拡張の機会も生じます。かかる状況下、新製品・サービスや新事業開発といった機会を活用する取り組みも実施していくことで、顧客や社会の変化に対応した価値創造を実現していきます。 |
4℃ シナリオ |
世界的な消費活動の拡大や気候変動の影響により、木材調達価格の高騰や、災害等による製造活動・輸送への影響への懸念があり、財務影響としては調達価格の大幅の高騰、木製家具製品の価格上昇に伴う需要の減退、物理的リスクの顕在化による機会損失、事業停止、対応コストの発生が想定されます。かかる状況下、自社のレジリエンス向上に取り組む他、顧客オフィスにおける災害対策や、働き方の変化等、市場のトレンド変化を機会と捉え、新たなソリューションの展開を行うことで価値創造を実現していきます。 |
シナリオ |
ビジネスサプライ流通事業 |
1.5℃ シナリオ |
脱炭素社会への移行が進んでいく中で、顧客や輸送業者、社会一般においても脱炭素や廃棄物削減に対する取り組みが進展します。財務影響として、リスクの面では炭素税によるコスト増、輸送コストの増加、顧客ニーズの変化による売上高の減少といった影響が想定される一方で、顧客のニーズの変化に対応した製品ラインナップの変更等により売上高を増加させる機会も生じます。かかる状況下、商品ラインナップ変更やデジタル施策の拡大など、機会を活用するための活動を行っていくことで気候変動に対するレジリエンスの向上、及び顧客や社会の変化に対応した価値創造を実現します。 |
4℃ シナリオ |
世界的な消費活動の拡大や気候変動の影響により、製品調達価格の高騰や、物理的リスクの顕在化により、輸送を始めとするサプライチェーンの途絶が起こり、ビジネスモデル上重大な問題が発生する可能性があり、財務影響としては調達価格の上昇、輸送コストの上昇、物理的リスクによる機会損失、対策コストの発生等が想定されます。かかる状況下、製品調達の見直しや、デジタル施策の拡大などにより、事業のレジリエンスを高めていきます。 |
< ライフスタイル領域 >
シナリオ |
ステーショナリー事業 |
1.5℃ シナリオ |
日本・海外ともに脱炭素社会への移行が進む中で、文具をはじめとする消耗品の消費に関する考え方や、働き方・学び方の変化が生じ、消費行動や市場が変化することが想定され、財務影響としてリスクの面ではCO2排出コスト増、原材料コスト増加、追加的な投資の発生、及びデジタル化の進展による文具市場の縮小等が想定される一方、新たなトレンドに応じた価値提案や商品・サービス展開を日本国内・海外市場に対して行うことで、価値創造機会を実現していきます。 |
4℃ シナリオ |
世界的な消費活動の拡大によるコスト圧力や、気候変動からの物理的なインパクトが懸念され、財務影響としてリスクの面では資源・エネルギー価格の高騰、物理的リスクの顕在化による機会損失、対策コストの発生が想定される一方、海外市場においては文具へのニーズが拡大することが想定され、レジリエンスを高める取り組みを促進し、グローバルなサプライチェーンの実現、市場展開を進めることで機会を捉えていきます。 |
シナリオ |
インテリアリテール事業 |
1.5℃ シナリオ |
脱炭素社会への移行が進んでいく中で、生産から廃棄までの家具のライフサイクルを通じてのCO2排出削減、環境配慮の実現が求められると想定され、財務影響としては、CO2排出コスト増、原材料コスト増加、追加的な投資の発生、及び環境への配慮からの家具購入頻度の低下、レンタル・サブスクとの競合などが想定される一方、環境の変化を機会と捉え、カーボンフットプリント表示への対応や、修理のような家具の廃棄を減らすサービスの展開等、環境への配慮とビジネスの両立できる取り組みを推進していきます。 |
4℃ シナリオ |
世界的な消費活動の拡大や気候変動の影響により、木製品をはじめとする製品調達価格へのリスクや、災害等によるサプライチェーンや店舗活動への影響への懸念があり、財務影響としては調達価格の大幅な高騰、木製家具製品の価格上昇に伴う需要の減退、物理的リスクの顕在化による機会損失、対応コストの発生が想定されますが、製品調達の見直しやECサービスの展開等により、レジリエンスを高め、安定的な価値提供を行っていきます。 |
(3)人的資本に関する「戦略」と「指標と目標」
「ワクワクする未来のワークとライフをヨコクする。」というパーパスのとおり、当社の価値創出の強みは、顧客が抱える様々な課題に誠実に向き合い、その解決のために従業員一人ひとりが意志・ヨコクを持ち、創造的なアプローチをするところに源泉があります。この強みを最大化させるために、意志・ヨコクを持つ多様な人材が挑戦しやすい組織文化の構築と成長の機会を提供し、個々人の能力発揮を促していくことを人的資本経営の根幹に据えております。
2023年に当社は人材マネジメントポリシーを策定し、従業員のキャリア・能力発揮のために会社として大切にする思想とアクションを宣言しました。そこでは、「人材を社会の財産と捉え、一人ひとりの可能性に伴走しながら、事業成長と社会に貢献できる人材を輩出する」ことを経営陣・従業員全員の共通認識としております。
このポリシーに基づき、2023年に全事業部門で「人材育成会議」を開催し、一人ひとりのキャリア・ポテンシャルについて役職者が複眼で討議することを開始するとともに、OJTだけではない育成のために人材育成機関「コクヨアカデミア」の設置のほか、下記の取り組みにより人材育成への投資を加速させております。
■人材マネジメントポリシーに基づくアクション
1.一人ひとりに光を当て活躍できる機会の提供 |
・組織長と人事部門による人材育成会議を開催し、女性リーダー 、 ビジネスリーダー育成等をテーマに育成議論を開始
・キャリア面談や人材育成会議を通じて、従業員一人ひとりのキャリアを考えた育成計画の立案と、挑戦機会の提供を検討
|
2.能力・意欲がある従業員の成長スピードの 最大化 |
・2024年1月より人材育成機関「コクヨアカデミア」を設置し、採用や評価、配置など他の人事プロセスと強固に連携しながら成長スピードを速める施策を展開
・能力の発揮を評価し、年齢や経験年数にとらわれず早期にステップアップできる人事制度への改正
|
3.チームで価値を創造するリーダーの育成 |
・リーダーに求めるコンピテンシーとしてコクヨリーダーシップ2024を策定し、基幹職全員に対して360°アセスメントの実施とリーダーシップ研修を実施
・主体的に新しい経験を積む社内複業「20%チャレンジ」 (2020年開始、累計参加者266名)
・事業創出や戦略策定を実践するプログラム 「マーケティング大学」(2017年に開始、累計卒業生168名) 「マーケティング大学院」(2019年に開始、累計卒業生113名)
|
4.多様で豊かなキャリア形成支援 |
・育児や介護によるキャリアの中断をボトルネックにしないための取り組みを実施
・産休育休者の評価運用を見直し、評価の空白期間が生じることを解消し、継続的な能力の蓄積度の把握とフィードバックの実施
・育児世代の働きやすさ向上を目指したワークルールへの改正 (子の看護休暇の対象年齢を小6まで拡大)
・ベビーシッターの利用補助
|
当社では、多様な人材の活躍を測定する指標として、マテリアリティ目標の1つに「2024年 指導的地位の女性比率12%」を設定しています。一人ひとりの人材の価値を引き出す取り組みを通じて、管理職やプロジェクトをリードする役割を担う社員を育成し、事業と人材の同時成長を目指しております。
当社グループは、グループ経営を取り巻く様々なリスクを網羅的に把握・評価し、経営への影響を適切にコントロール(回避・低減・移転・受容)するリスクマネジメントの推進のため、代表執行役社長の諮問機関として「リスク委員会」を設置し、リスクマネジメントに関わるテーマについて全社的な立場から審議し、代表執行役社長に答申するとともに重要性や緊急性の高いリスクが認められた場合には、取締役会及び監査委員会に報告することとしております。
また、グループ全体のリスクマネジメント体制を強化するために、2023年2月より新たにリスクマネジメント本部を設置し、グループ全体のインシデント情報の集約化や発生事象別のリスクレベルに応じた適切な対応方針の策定と実行体制の構築を図っております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
また、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 外部環境に関連するリスク
1)経済状況
当社グループの売上は概ね日本国内向けであり、日本国内の景気変動に伴う企業収益や設備投資、公共投資の動向、また国内人口動態の変化が、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの販売生産、仕入の一部はアジアをはじめとした世界各地で行っておりますが、当社の主要な海外市場のひとつである中国では、景気の持ち直しの動きに足踏みがみられ、今後の先行きに不透明感がある等、各地域の政治経済・社会情勢の変化や各種規制、ESGを巡る潮流等の影響が増大した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
これに対し当社グループは、持続的成長に向けて事業領域を拡大していく方針であり、国内においては「モノからコトへの」事業モデルの変革に取り組むことで、既存事業の領域拡大や新規事業の創出を図っております。
また、海外においては各現地法人と国内関連部門が連携してそれぞれの国、地域の政治、経済情勢等を的確に把握し、適切に対応する体制を構築しておりますが、海外展開の更なる拡大に伴い、一層の対応強化を図ってまいります。
2)市場環境
当社グループは、顧客にとって付加価値の高い商品開発や提案活動を進めておりますが、事業を展開する市場は景気変動や顧客の購買チャネルの変化等の影響を受けており、分散化やデジタル化の潮流の中にあって、競争はますます激しさを増していることから、当社グループの優位性の維持又は獲得が滞り、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループにおいては、原材料の調達から開発、生産、販売、物流、納品施工までを含めたサプライチェーン全体の最適化が競争力確保のための重要な要素となっておりますが、近年特にドライバー不足による輸送能力の低下や働き手不足による工期の遅延が懸念されております。この影響により当社サービスの品質が低下し、競争力の低下を招いた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
これに対し当社グループは、ますます激化する競争環境に係るリスクをしっかりと認識する一方で、それらのリスクをむしろチャンスと捉え、前例に固執することなく常に顧客満足を高めながら、より長期目線での経営を推進することによって、更なる成長に向けて取り組んでおります。
また、物流業界や建設業界における働き方改革の推進等の社会課題への解決に向けては、事業の持続性の確保においても避けて通れない課題として認識し、物流現場や建設現場の負荷の軽減と事業の維持・成長の両立を目指してまいります。
3)有価証券の時価変動
当社グループは、投資有価証券を保有しております。金融市場等の変動により投資有価証券の時価が悪化し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
これに対し当社グループは、投資有価証券の四半期ごとの時価評価以外に、定期的な検証を行い、売却や購入の検討をしております。特に政策保有株式については、個別銘柄ごとに定量的及び定性的な観点を踏まえた検証結果を取締役会に報告し、保有の意義が乏しいと判断される銘柄については売却又は縮減を検討しております。
(2) 事業運営に関連するリスク
当社グループを取り巻く事業環境は急激に変化してきており、これを受けて、当社グループでは事業領域の拡大とグローバル成長を目指しておりますが、このような事業環境の変化を受けて、当初想定していなかった組織内外の環境の変化や非定型的な取引等が生じる場合があります。既存の内部統制がこのような状況には、必ずしも対応しない場合があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
これに対し、当社グループでは内部統制強化の一環として、業務プロセスの可視化、標準化及び適正化を図ることで、業務の有効性と効率化を高めてまいります。
1)法規制の遵守
当社グループは、商品の品質、取引関連、環境、労務、安全衛生、会計基準や税務など様々な法規制の適用を受けており、当社グループは、法規制を遵守し、社会倫理に従って企業活動を行うためのコンプライアンス体制の構築とその遵守に努めております。しかしながら、これら法規制等への違反が発見又は認定された場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。特に販売部門は業績目標達成のプレッシャーを感じる可能性があるほか、一部の事業においては、顧客ニーズにあわせて納入物品や施工内容が随時変更され、売上計上時期や金額、外部パートナーへの発注内容や金額が当初契約時から変更となることが多いことから、意図的な売上計上の前倒しや架空売上の計上、不正取引がなされるリスクが存在します。また、当社グループは製造委託、工事発注を含め外部パートナーとの取引が多数ありますが、特定の人物が同一業務を長期間担当する場合には、外部パートナーとの取引関係が歪められ、不正取引を誘発するリスクがあります。
また、現行の法規制の変更や新たな法規制、今後の事業のグローバル化、事業領域の拡大により、遵守すべき法規制が追加された場合には、その対応のための投資や費用が必要になるなど、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
これに対し当社グループは、法規制を遵守し、社会倫理に従って企業活動を行うための「コクヨグループ行動基準」を制定し、誠実性に対する経営層からの継続的なメッセージ発信やe-ラーニングをはじめとする教育・研修による啓発活動及び自身の行動の振り返りを通じ、その遵守に努めております。また、法規制の改廃制定などに対して、その対応及び遵守状況の定期的な確認により、法令遵守を図っております。また、談合等の反競争的行為、贈賄の防止や反社会的勢力の排除等については、国内・海外子会社に対して定期的に教育・啓発活動を行っております。コンプライアンス推進体制としては、代表執行役社長の諮問機関である「リスク委員会」を設置して全社的な推進状況の把握を行っております。また、「J-SOX委員会」により財務報告に係る内部統制の評価及び監査を実施、モニタリングしております。
2)品質保証
当社グループの製品において、想定が難しい多様な環境での製品の使用などにより、リコールが発生する可能性があります。その結果、当社グループの経営成績及び財政状態、さらに当社グループの社会的評価に悪影響を及ぼす可能性があります。
これに対し当社グループは国際規格であるISO9001に基づいた品質マネジメントシステムを構築し、それに従った製品及びサービスの設計・開発や製造及びサービス提供の管理を行い、品質チェック体制の整備を図り、品質監査を行うなど、製品・サービスの企画・開発からアフターサービスに至るまでバリューチェーン全体で品質の向上に努めております。リコールが発生した場合のリコール費用及び製造物責任賠償については、保険に加入しておりますが、損失額を全て賄える保証はなく、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
3)購買調達及び環境への配慮
当社グループが主に使用する原材料は原紙、樹脂、鋼材等であり、これらは国内外の調達先から購入しております。当社が調達先から購入する原材料や仕入商品の価格は、世界的な需給動向や為替変動による影響を受けており、需給動向や為替レートの変動が長期に及んだ場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、ESG観点に基づく社会的要請により、サプライチェーン上の人権状況のチェックや環境への配慮について、より高度な対応が求められており、調達先に対応の不備があれば、原材料の調達停止による当社グループの経営成績及び財政状態への影響だけでなく、社会的評価に悪影響を及ぼす可能性もあります。
これに対し当社グループは需給動向や為替レートの変動に関しては、短期的には海外調達先との外貨建取引の一部について為替予約を行うとともに、中期的には原材料の現地調達比率の適正化や調達先の複数化などにより、需給動向や為替レートの変動リスクの低減に取り組んでおります。また、原材料や仕入商品の調達に関しては、調達先との信頼関係を構築し相互発展を目指すために、「サステナブル調達方針」を制定し、人権尊重や環境保全などの社会的責任を果たし、社会の発展に寄与することに努めております。
その他にも「気候危機への対応」「循環型社会への貢献」「自然共生社会への貢献」を当社グループにおける重要な環境課題と特定し、それぞれの課題に対し2030年チャレンジ目標及び2024年コミット目標(自然共生社会への貢献は除く)を設定しております。これらのサステナブル関連活動については全執行役員が参加する「サステナブル経営会議」にて定期的に議論が行われ、活動における進捗報告やリスクを確認しながら、推進を図っております。
4)人材及び労務
当社グループは、持続的な成長を実現するために、多様な人材の活躍が重要な経営戦略の一つであると認識し、その採用・育成に努めております。しかしながら、日本国内の労働市場における獲得競争は激化しており、事業の維持及び成長において必要な人材の獲得・育成を継続的に推進していくことができない場合は、当社グループの将来の成長が阻害される可能性があります。
また、労働環境の維持・向上が経営戦略に重要な影響を及ぼすと認識し、多様性の尊重と、働きやすい職場環境の維持・向上に努めております。しかしながら、各施策が計画通りに進捗せず、労働災害や健康被害、ハラスメント等が発生した場合には、業務パフォーマンスの悪化や労災補償、ブランド価値の毀損が発生し、当社グループの業績と財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
これに対し当社グループでは、2023年に人材マネジメントポリシーを策定し、従業員のキャリア・能力発揮のために会社として大切にする思想とアクションを宣言しました。そこでは、「人材を社会の財産と捉え、一人ひとりの可能性に伴走しながら、事業成長と社会に貢献できる人材を輩出する」ことを経営陣・従業員全員の共通認識としております。このポリシーに基づき、2023年に全事業部門で「人材育成会議」を開催し、一人ひとりのキャリア・ポテンシャルについて役職者が複眼で討議することを開始するとともに、OJTだけではない育成のための人材育成機関「コクヨアカデミア」の設置等の取り組みにより人材育成への投資を加速させております。これらの具体的な取り組みは、『2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本に関する「戦
略」と「指標と目標」』を参照ください。
また、安心・安全で快適な職場づくりや災害時の安全対策などは、社員が生き生きと働き、能力を発揮するための基盤であると考え、安全衛生のグループ統括機能である「コクヨグループ中央安全衛生委員会」が中心となり、各事業所の安全衛生委員会を結び、社員と活発な意見交換をしながら、仕組みや体制を整えております。併せて2023年10月からは新たに「グループ人事総務支援室」を設置し、グループ各社の人材採用・定着に関わる課題解決の施策について横串での共有と解決支援に取り組んでおります。一方、設備の保全に関しては、築年数が古い施設から順に、事業戦略との整合を取りながら大規模修繕・移転・改築等の対処を進めることで、予防に努めております。その他にも「リスク委員会」の下部組織として「労務分科会」を設置し、全社を挙げて残業時間の短縮に取り組むことで、従業員の健康への配慮とキャリア形成のための可処分時間の捻出に向けた施策を推進しております。
また、職場内では相談・解決し難い企業倫理・コンプライアンス違反について通報できる窓口として「コクヨグループホットライン」を設置しております。日本国内においては新たに外部の専門会社に受付窓口を委託することで通報者保護を高めるとともに、海外においては海外拠点のコクヨグループ社員も利用できる受付窓口を設置し、運用を行っております。なお、当年度における「コクヨグループホットライン」への内部通報件数は20件であります。
5)情報セキュリティ
当社グループは、事業上の機密情報や事業の過程で入手した顧客情報や個人情報を保有しております。それらの情報に関して、当社グループの想定を超えるウィルス感染やサイバー攻撃等により、重要データの破壊、改ざん、流出、システム停止等を引き起こす可能性があり、その脅威は年々高まっており、実際に2023年6月にランサムウェアによる被害を受けております。また、在宅やリモートワークなど多様な働き方により、影響の範囲は大きくなっております。その結果、これらが発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
これに対し当社グループは、高度化する社外からの脅威に備え、脆弱性診断を実施しセキュリティ強化に努めると同時に、ウィルス感染やサイバー攻撃によるシステム障害への検知及び防御の強化、定期的なバックアップの取得等の対策を行っております。また、サイバー攻撃等による情報セキュリティインシデントが発生した際に被害を最小化することを目的にCSIRT(Computer Security Incident Response Team)を構築しており、2023年度に発生したランサムウェア攻撃においても有効に機能しております。
一方で、ランサムウェアによる被害を受けたことから、「リスク委員会」の下部組織である「情報セキュリティ分科会」において、顧客情報や個人情報を適切に管理するために、情報の取扱いに関するルールを整備し、従業員に対してe-ラーニングによる情報セキュリティ意識の啓発、委託先や取引先を含む関係者への教育・啓発活動の推進に加え、個人データの取扱いの定期点検と不要なデータの削除など、安全管理措置を講じてまいります。
6)企業に対する出資等
当社グループは、持続的に企業価値を向上させていくために企業に対するM&Aや出資等を行っております。その実施にあたっては、事前に対象企業の財務内容や契約内容等の審査を行い、リスクと期待リターンのバランスを検討したうえで決定しております。また、出資後は利益計画等の達成状況や、資産価値についての定期的なモニタリングを実施しております。しかしながら、事業環境の変化等により、当初想定していた成果が得られないと判断された場合には、有形固定資産やのれん等の無形固定資産、投資有価証券の減損損失等を認識することにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
これに対し当社グループは、損失の発生リスクを低減するために、外部アドバイザーからの知見も取り入れながら、投資案件の審査プロセスやモニタリングプロセスを運用し、その継続的な改善に取り組んでおります。また、投資推進に関連する組織へのM&Aや出資に係る知見の蓄積、及び一般社員への教育・啓発活動を通じて、投資に係る能力の向上に努めております。
(3) その他リスク
1)自然災害、感染症等
当社グループは、国内外に事業所や工場を有しております。近年の気候変動に伴う自然災害の大規模化や、これまでに類を見ない感染症の発生などによる想定を超える規模の被害や、広域での社会インフラの停止なども考えられます。自然災害や感染症などが発生した場合のリスク全てを回避することは困難であるため、これらが発生した場合、事業活動の一部停止や縮小など、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
これに対し当社グループは、このような自然災害や感染症などの発生に備え、事業の継続や早期復旧を図るために必要な対策・手順について計画を立て、危機管理の徹底に取り組んでおります。また、計画内容は継続的に精査・見直しを行い、その実効性を担保するようにしております。自然災害については、施設・業務に安全対策を講じることで危機の事前回避と災害対策品の備蓄・保険等の付保により危機発生時における対応力の向上に努めております。感染症については、顧客と社員の安全を図りつつ、事業活動への影響を最小限にとどめるよう努めております。
当社グループは社員の安全確保のガイドラインを策定し、働く場所やコミュニケーション方法を柔軟に使い分けることで政府・社会からの要請に応えるとともに、引き続き顧客及び社員・パートナーの安心安全を第一に、社会インフラを提供する企業として事業継続との両立を目指し取り組んでおります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
また、2022年7月21日に行われたHNI Hong Kong Limited(現社名Kokuyo Hong Kong Limited)との企業結合において、前連結会計年度において暫定的な会計処理を行っておりましたが、当連結会計年度に確定しております。この会計処理の確定に伴って、前連結会計年度との比較・分析にあたっては、取得原価の当初配分額に重要な見直しが反映されております。
(1)経営成績
(単位:百万円)
|
2022年12月期 |
2023年12月期 |
増減率(%) |
売上高 |
300,929 |
328,753 |
+9.2 |
営業利益 |
19,128 |
23,830 |
+24.6 |
経常利益 |
21,161 |
25,989 |
+22.8 |
親会社株主に帰属する当期純利益 |
18,237 |
19,069 |
+4.6 |
当連結会計年度(2023年1月1日から2023年12月31日まで)におけるわが国経済は、行動制限の緩和等による新型コロナウイルス影響からの経済正常化の動きは続いているものの、海外景気の下振れ懸念やウクライナ情勢の長期化、資源価格及び原材料価格高騰の影響により、先行き不透明な状況で推移しております。
このような状況のもと、当社グループは、「長期ビジョンCCC2030」実現に向けて、既存事業のブラッシュアップと領域拡大による成長を目指す第3次中期経営計画「Field Expansion 2024」において、既存事業からのリソース再配分や戦略経費支出の積極化、海外展開強化といった事業領域の拡大に向けた取り組みを推進しております。
当社グループを取り巻く経営環境は激変しておりますが、事業環境や顧客ニーズの変化に柔軟に対応することで、引き続き強い競争力を発揮できているものと考えております。
売上高は、ファニチャー事業における旺盛なオフィス需要の獲得や昨年買収したKokuyo Hong Kong Limitedの連結子会社化等の影響により、前年同期比9.2%増の3,287億円となりました。売上総利益は、前年同期比9.2%増の1,273億円、売上総利益率は、前年同期並みの38.8%となりました。事業領域拡大のために積極的な戦略経費支出等を行った結果、販売費及び一般管理費は、前年同期比6.2%増の1,035億円、売上高販管費率は、前年同期比0.9ポイント低下の31.5%となりました。
以上により、営業利益は、前年同期比24.6%増の238億円となりました。経常利益は、前年同期比22.8%増の259億円、親会社株主に帰属する当期純利益は、前年同期比4.6%増の190億円となりました。
セグメントごとの経営成績は、以下のとおりであります。
当社グループは、「長期ビジョンCCC2030」の実現に向けて、自らの社会における役割を「WORK & LIFE STYLE Company」と再定義し、「働く」「学ぶ・暮らす」のドメインで、文具や家具だけにとらわれない豊かな生き方を創造する企業となることを目指しております。
ワークスタイル領域では、新型コロナウイルス感染拡大によって定着した働く場の分散と働き方の多様化により定着したハイブリッドワークにおける新しいニーズに着目しております。
ライフスタイル領域では、学びや生活の道具におけるライフスタイルツールにおいて、より自分らしく生きることへのこだわりのニーズの高まりに着目しております。
(ワークスタイル領域)
・ファニチャー事業
ファニチャー事業は、働き方の変化に伴う旺盛なオフィス需要の獲得と、Kokuyo Hong Kong Limitedを活用した海外事業の成長により、コクヨ全社の業績を牽引することを目指しております。
日本では、首都圏での大規模オフィス供給量の増加により新築移転需要と旺盛なオフィスリニューアル需要の獲得に向け、顧客の戦略課題に根差した働き方に向けたオフィスづくりの提案に注力しており、業績拡大や収益改善が進捗しております。
中国・アセアンでは、Kokuyo Hong Kong Limitedを中心としたクロスセルや生産統合への取り組みが進捗しておりますが、中国経済は先行き不透明な状況で推移しております。
このような状況のもと、売上高は、前年同期比14.5%増の1,544億円となりました。営業利益は、前年同期比35.9%増の224億円となりました。
・ビジネスサプライ流通事業
ビジネスサプライ流通事業は、カウネットと卸の機能統合による事業効率化を推進するほか、UI/UXの改善等の顧客体験価値向上に向けたシステム投資を行い、事業拡大を目指してまいります。
当連結会計年度は、顧客のオフィス出社率の回復に伴う顧客の購買単価の上昇や価格改定の浸透等により、大企業向け購買が好調に推移しました。
このような状況のもと、売上高は、前年同期比2.6%増の978億円となりました。営業利益は、前年同期比19.1%増の38億円となりました。
(ライフスタイル領域)
・ステーショナリー事業
ステーショナリー事業は、SNSなどを通じた自己表現ニーズの高まりにより付加価値文具市場が拡大する中で、本格的なグローバル展開を見据えた体制変革を実施し、グローバル成長による増収増益を目指してまいります。
日本では、需要の低迷や原材料価格高騰の影響を大きく受けておりますが、事業リソースの最適化等を通じて収益性の改善に取り組んでおります。
中国では、女子中高生をターゲットとした女子文具需要は引き続き旺盛な状況ですが、中国経済悪化影響による不透明感が継続しております。
インドでは、営業活動の変革や商品力強化に取り組むことで、営業生産性が向上し、好調に推移しております。
このような状況のもと、売上高は、前年同期比6.9%増の838億円となりました。営業利益は、前年同期比0.2%増の68億円となりました。
・インテリアリテール事業
インテリアリテール事業のアクタスは、住空間への新たなニーズを取り込むために、店舗とECを統合したマーケティング戦略に取り組んでまいります。
当連結会計年度は、イエナカ需要は収まりつつあるものの、ECを活用した販売促進活動が順調に進捗しました。一方で、円安の進行及び販管費の増加を吸収できず減益となりました。
このような状況のもと、売上高は、前年同期比3.2%増の203億円となりました。営業利益は、前年同期比35.8%減の6億円となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
①生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前年同期比(%) |
ワークスタイル領域 ファニチャー事業 |
24,013 |
131.3 |
ライフスタイル領域 ステーショナリー事業 |
30,891 |
106.6 |
合計 |
54,904 |
116.1 |
(注)1 金額の表示は製造原価による。
2 ビジネスサプライ流通事業及びインテリアリテール事業は生産活動を行っていないため、記載を省略している。
②受注実績
当社グループは、主に見込生産を行っておりますが、ファニチャー事業の一部について受注生産を行っております。
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
ワークスタイル領域 ファニチャー事業 |
14,339 |
186.7 |
2,729 |
117.1 |
(注) 金額の表示は販売価格による。
③販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
ワークスタイル領域 |
243,791 |
110.2 |
|
|
ファニチャー事業 |
152,487 |
114.9 |
|
ビジネスサプライ流通事業 |
91,303 |
103.1 |
ライフスタイル領域 |
84,731 |
106.6 |
|
|
ステーショナリー事業 |
64,428 |
107.7 |
|
インテリアリテール事業 |
20,303 |
103.2 |
その他 |
230 |
107.7 |
|
合計 |
328,753 |
109.2 |
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去している。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10以上の相手先がないため、記載を省略している。
(2)財政状態
当連結会計年度末の総資産は3,584億円となり、前連結会計年度末に比べ208億円増加しました。
流動資産は2,301億円となり、前連結会計年度末に比べ151億円増加しました。主な要因として、現金及び預金が170億円増加したためであります。
固定資産は1,282億円となり、前連結会計年度末に比べ57億円増加しました。主な要因として、投資有価証券が45億円増加したためであります。
当連結会計年度末の負債は1,049億円となり、前連結会計年度末に比べ70億円増加しました。主な要因として、未払法人税等が57億円、支払手形及び買掛金が11億円、それぞれ増加したためであります。
当連結会計年度末の純資産は2,534億円となり、前連結会計年度末に比べ138億円増加しました。主な要因として、自己株式の減少により70億円、利益剰余金が29億円、その他有価証券評価差額金が28億円、為替換算調整勘定が11億円、それぞれ増加したためであります。
(3)キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、1,151億円と前連結会計年度末に比べ168億円の資金増となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により獲得した資金は347億円(前年同期比251億円の収入増)となりました。これは、主として税金等調整前当期純利益277億円、減価償却費74億円、棚卸資産の減少9億円等による資金増加に対し、法人税等の支払額20億円、営業キャッシュ・フローに算入されない投資有価証券売却益19億円等があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により支出した資金は37億円(前年同期比4億円の支出増)となりました。これは、主として投資有価証券の売却及び償還による収入40億円、有形固定資産の売却による収入7億円等の資金収入があった一方、設備投資による支出63億円、非連結子会社株式の取得による支出6億円等の資金支出があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により支出した資金は144億円(前年同期比54億円の支出増)となりました。これは、主として配当金の支払額70億円、自己株式の取得による支出33億円、自己株式取得のための預託金の増加16億円、リース債務の返済による支出14億円の資金支出等があったことによるものであります。
(資本の財源及び資金の流動性)
運転資金及び投資資金につきましては、内部留保のほか金融機関からの借入により調達しております。また、当社グループにおいてキャッシュ・マネジメント・システムを導入し、グループ内資金の効率化を図ると共に、緊急時の資金調達手段の確保を目的として、取引銀行10行と130億円の貸出コミットメント契約を締結し、資金の流動性を確保しております。
資金需要の動向につきましては、主な使途として、事業領域拡大に向けた戦略投資、原価低減のための設備改善並びに新製品開発投資、製品の製造・販売に係る費用及び製品の品質向上等となります。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(5)経営成績に重要な影響を与える要因について
「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当連結会計年度において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。
当社グループの当連結会計年度における研究開発費の総額は、
1.ファニチャー事業
コロナ禍以降、社会や経済等の不確実さが増し、これまでとは異なるさまざまな価値観や働き方が出現しています。在宅勤務の浸透とともにオンライン会議が急増したことによる、オフィスにおける音環境への関心の高まりへの対応を進めたほか、『サステナブル』、『インクルーシブデザイン』に注力し、以下のような商品開発を行いました。
(1)多様なワークシーンを最適にサポートする高機能タスクチェアー「Duora2(デュオラ2)」
「Duora2」は、多様なワークシーンをサポートするために開発された高機能タスクチェアーです。2015年に発売した「Duora」は、独自の背もたれ調整機能によりワーカーをサポートし、好評を博しました。「Duora2」では、最新の働き方であるABW(Activity Based Working)に合わせ、レバー操作により3段階で背もたれの下部が前後に可動する「ペルビックアジャストサポート」で、腰部から背中までのサポートを改善しました。また、オートチルトメカニズムを搭載し、前傾姿勢でも快適なサポートを実現しています。体格や作業姿勢に合わせて調整できる可動肘とヘッドレストは、肩や首への負担の軽減に一役買います。座面のデザインやカラーバリエーションも改良し、多様なインテリアスタイルに対応します。
(2)ロングライフ設計のワークテーブル「WorkVistaLight(ワークヴィスタライト)」
「WorkVistaLight」は、コロナ禍を経て働き方に新たなスタイルや価値観が生まれたことに対応するため、最新のワークスタイルやデザインのトレンドを取り入れたワークテーブルです。ソロワーク環境を充実させるとともに、コミュニケーションを促進するカジュアルなデザインやセッティングを提供します。WorkVistaシリーズとの互換性があるため、スタンダードなテーブルをカジュアルにアップデートすることが可能です。豊富なバリエーションにより、オフィス空間の長期的な変化に柔軟に対応します。
(3)多目的な用途に対応できるセミクローズドタイプブース「WORKPOD TETRA(ワークポッド テトラ)」
「WORKPOD TETRA」は、オンライン会議での音対策や集中作業に適したワークスペースとして大いに好評をいただいている「WORKPOD」シリーズの新商品で、従来のフルクローズドタイプとは異なり、天井・床面のない4面体のローパーティションブースで周囲とゆるやかに繋がるセミクローズドタイプのワークスペースです。設置にあたっては消防申請が不要であり、レイアウト変更や移設をフレキシブルに行えます。高さは、従来のローパーティションよりも高く設計することで、音漏れにも配慮しています。ソロワークから8人用までさまざまなサイズのラインアップがあり、多様な用途に対応します。また、スリムなデザインとカラーバリエーションにより、多様なオフィス空間やデザインに柔軟に対応します。
(4)高い吸音率をもつ不燃仕様の壁面施工型吸音壁「ACOUSTIC WALL(アコースティック ウォール)」
「ACOUSTIC WALL」は、オフィスにおける音環境への関心の高まりや、オフィス内装のトレンドの変化に対応した、高い吸音率をもつ不燃仕様の壁面施工型吸音壁です。規定サイズで仕上げられたパネルを取り付ける施工方法により、短工期での設置が可能です。また、不燃クロスを採用しているため、内装制限を気にすることなく個室や会議室、オープン空間、柱回りなどさまざまな場所に広範囲で設置が可能で、空間の残響音の低減にも効果を発揮します。ウォールタイプと、マグネットで簡単に取り付けができるパネルタイプの2種類があります。
(5)サステナブル設計のチェアー、「jac.(ジャック)」と「Denn(デン)」の取り扱いを開始
アジア・オセアニア地域で展開している家具メーカーであるZenith社のサステナブル設計の2種類のチェアーの取り扱いを開始しました。カジュアルチェアー「jac.」は、サステナブルな家具の設計を多く手掛けてきたSchamburg + Alvisse(シャンブルク + アルヴィッセ)によるデザインです。再生材や、同社が独自に仕入れた木材を使用し、1脚の販売につき1本の樹木を植える取り組みを行っています。オフィスチェアー「Denn」は、樹脂・スチール・アルミの3種の素材について、再生材の使用率55.9%を実現しました。これは一般的なチェアーの3.5倍の再生材使用量となります。シンプルでオフィスになじむデザインは、世界的に有名なデザインスタジオ、Formway(フォームウェイ)が手掛けました。
以上の結果、当連結会計年度における研究開発費の金額は、
2.ビジネスサプライ流通事業
当連結会計年度における研究開発費の金額は、
3.ステーショナリー事業
顧客のシーンごとに未充足ニーズを見出し、当社ならではの価値ある商品、差別化された商品を世の中に出すことで、お客様に支持され続ける商品づくりを目指しております。
際立った価値を提供できる商品や、新たな着眼点で既存の商品の価値を見直すことにより顧客ニーズに応える商品として、以下の商品を開発・発売しました。
(1)開梱カッターとハサミの機能をあわせ持つ「2Way携帯ハサミ<ハコアケ>」
ECでの購買が増加傾向にあることを背景に、2017年に発売した「2Wayハサミ<ハコアケ>」は、カッターとしても使用できるハサミです。刃がスライドすることでカッターモードとハサミモードに切り替わり、カッターとハサミを持ち替えずにダンボール箱等の開梱作業ができます。「2Way携帯ハサミ<ハコアケ>」は、本体に開梱ガイドをつけ開梱時のカッターとしての使いやすさにこだわったほか、スペースが限られた玄関などにも場所をとらずに置けるコンパクトサイズが特長です。従来の「2Wayハサミ<ハコアケ>」も、お客様からの声に応えて一層使いやすくバージョンアップしています。
(2)「書く」を特別な体験にするペン「WPシリーズ」
これまで紙にこだわってきた当社が提案する、書き心地やインクの表現にまでこだわったペンです。砲弾型の樹脂製チップで、文字や図形、イラストを軽やかに書き出せるのが特長の「ファインライター」と、粘度が低いインクと自重で書ける自由な書き心地が特長の「ローラーボール」の2種類をラインアップしています。
(3)四角いスポンジヘッドで角まで塗りやすい液体のり「GLOO 液体のり」
紙の角まで塗りやすい四角いスポンジヘッドを採用することで、のりがはみ出しにくく、手や周りを汚しにくい設計を施した液体のりです。「しっかり貼る」タイプとともに、波のようなうねりのない仕上がりで、キレイに接着できるオリジナル処方ののり「シワなくキレイ」タイプも開発し、封筒の封とじや、領収書の貼り付け作業の際の使用時のストレスを軽減します。また、企業や学校、ご家庭でより多く使用されるお客様向けに、コストパフォーマンスや環境に配慮したパウチタイプの「つめ替え補充液」もラインアップに追加しています。
(4)ホッチキスで簡単に、石こうボードの壁にマグネットがつけられる「壁につけるマグネット」
水回りの「浮かせる収納」のトレンドを捉え、リビングなどでの壁の活用に注目した商品です。石こうボードの壁にホッチキスでベースとなるシートを打ち付け、その上にスチール板を貼り付けることでマグネットが使える空間を手軽につくり出すことができ、初心者でも気軽に壁のディスプレイを楽しめます。ホッチキスの針で壁に固定するので、壁の損傷を最小限に抑えられます。また、専用ホッチキスにアタッチメントが装着でき、最適な角度で打ち込め、強度を確保します。スチール板とマグネットは、居室空間になじみやすいナチュラルなカラーを採用した丸タイプとバータイプをラインアップしました。丸タイプには軽量なアクセサリーなどを吊り下げられ、バータイプは、溝にポストカードなどを立てかけて飾ることもできます。
(5)フラットに開く綴じ製法を採用した「キャンパス フラットが気持ちいいノート(ドット入り罫線)」
無線綴じノートの見開き性を追求したキャンパスノート史上最高(※)にフラットに開くノートです。真ん中のふくらみを手で押さえることなくフラットに開け、左右のページを横断して書けることが特長です。近年のノートをスマートフォンで撮影して振り返り学習に活用するなどのデジタルツールを併用した学習方法のニーズにも対応し、きれいにノートを撮影できます。また、時間に対する効率の良さを重視する傾向が強いことを背景に、学習時間を記録するという新たな学習方法に対応した「タイム記入欄」も設け、勉強時間の見える化を可能にしています。(※)当社「キャンパスノート」無線綴じ商品との比較
以上の結果、当連結会計年度における研究開発費の金額は、
4.インテリアリテール事業
当連結会計年度における研究開発費の金額は、
5.全社(共通)
次世代の働き方や学び方の研究をベースにコクヨグループの新たな商品やサービスに関しての開発を行い、当連結会計年度における研究開発費の金額は、308百万円となりました。