当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものです。
(1)経営方針
当社は、「さあ、自由に生きよう。働きがいをすべての人へ」というコーポレートスローガンのもと、「ひとりひとりが輝く、ジョブマーケットを創る。」ことをミッションとして掲げ、創業より、働く個人の声を蓄積、公開することで、ジョブマーケットの透明性向上を目指してまいりました。
社名・サービス名である「OpenWork」には、「より透明性(Open)の高い、仕事(Work)選びを提供する」という想いを込めています。働きがいがある「良い会社」の基準を社員クチコミや評価スコアなどのワーキングデータで提示し、良い会社に人が集まる健全なジョブマーケットの発展に貢献するため、ワーキングデータプラットフォームを展開していく方針です。
(2)経営戦略等
ワーキングデータプラットフォームの拡充を基軸とし、「OpenWork」の安定運用と「OpenWorkリクルーティング」の成長を加速させることを経営戦略の基本方針としています。具体的な当社の経営戦略の現状と見通しは以下のとおりです。
①ワーキングデータプラットフォームの拡充
当社では、投稿されたすべての社員クチコミに対して、AIを活用した機械審査と専任のスタッフによる目視審査を実施し、法令違反や誹謗中傷に該当する投稿をサービスに掲載しないための運用、審査体制を構築しており、データの「量」だけでなく、掲載する社員クチコミ等の「質」の向上にも努めています。
今後は社員クチコミの量と質の維持と、ワーキングデータを活かした求職者と求人企業のマッチングの最適化の推進、さらには新規サービス展開に向けて、年収、残業時間、企業業績、選考データ、求人、履歴書、個人の性格特性や価値観など、転職・就職に関わる様々な情報を網羅的に蓄積し、ワーキングデータプラットフォームとしてのデータ基盤を強化してまいります。
②採用市場のリストラクチャリング
従来の採用市場では、企業が投じる広告予算の規模に比例して企業の認知度や人気が変動し、大きな広告予算を投じた企業が採用に成功していましたが、企業の実態を知る方法が限られていたことから、入社後の求職者と企業のミスマッチが多く発生することに繋がっていたと考えています。
このような従来の採用市場のリストラクチャリングを実現するため、「OpenWorkリクルーティング」は「OpenWork」の強みの一つである情報の透明性を活かし、求職者には自身の働きがいにマッチした企業を見つけることができる場を、採用を考える求人企業には自社の働きがいにマッチした求職者との接点を提供することで、入社後の求職者と企業のミスマッチの発生を抑制し、求職者と企業双方の満足度向上を目指してまいります。
③ワーキングデータプラットフォームを基盤とした新規サービスの展開
当社は、ワーキングデータプラットフォームとして蓄積したデータを活用し、新規サービスの展開及び収益の多角化を目指しています。
「FIS(Financial Indicator Service)」サービスはその一例で、「OpenWork」の強みである社員クチコミを投資判断のためのオルタナティブデータとして、国内外のヘッジファンド等に販売しています。
「FIS」の利用企業が増えることで社員クチコミデータの信頼性を訴求でき、「OpenWork」「OpenWorkリクルーティング」サービスのブランディング向上にもつながると考えています。
(3)経営環境
当社の主力サービスである「OpenWork」「OpenWorkリクルーティング」が対象とする市場は、職業紹介事業などの人材ビジネス市場です。2021年度の職業紹介事業における手数料収入は約6,315億円となりました(注1)。
転職者数は、2023年7~9月の転職者数は前年同期比103%に(注2)、転職希望者は新型コロナウイルス感染症の流行前である2019年の水準を超えています。また、個人のキャリア観の変化や終身雇用の構造的限界により、今後雇用の流動化は一層加速し、働き方改革やリモートワークの普及により、多様な働き方が広がる中で、求職者の会社選びの基準も多様化していくと考えています。
(注1)厚生労働省「令和3年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」
(注2)総務省「労働力調査 年齢階級別転職者数及び転職者比率」調査によると、7~9月期の転職者数は2019年
364万人、2020年325万人、2021年285万人、2022年313万人、2023年325万人
このような経営環境の中で、当社のワーキングデータプラットフォームを基盤としたサービス「OpenWork」は、会社に関する社員クチコミと評価スコアなどのデータを用いて社員の働きがいを視覚化し、企業と求職者との採用時における情報の非対称性の解消を進めています。2023年12月末には、累計登録ユーザー数が2022年12月末から約80万人増の約605万人、ワーキングデータである社員クチコミと評価スコアが2022年12月末から約210万件増の約1,620万件となり、コロナ禍で大きく変化した働き方や価値観が反映されたワーキングデータの蓄積が進んでいます。今後も当社の強みであるワーキングデータを充実させ、求職者が、多様化する働き方や自分の働きがいにあった会社を見つけられるようサービスを運営していくことで、一層のシェア拡大を実現できると考えています。
加えて企業が「OpenWork」上で採用活動を行える「OpenWorkリクルーティング」では、ユーザーの求職活動を促す仕組みと、企業の求人掲載を促す活動を通して、求職者と求人企業のマッチングの活性化を進めています。
また、「OpenWorkリクルーティング」では社員クチコミだけでなく、企業からの情報発信も支援しています。求職者が、社員クチコミと企業からの情報により、企業のことをよく理解したうえで求職活動を行うことができる環境を提供し、求職者と企業のミスマッチの少ない健全な労働市場を作ることを目指しています。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①安定したユーザー集客とワーキングデータプラットフォームの成長
当社は2007年の創業以来長い時間をかけて社員クチコミサイトを運営してきた優位性と、質の高い多くの社員クチコミデータがサービス上に掲載されている特徴があり、検索サイトからの自然検索経由で順調にユーザー数と社員クチコミと評価スコアの件数を増加させてきました。今後もさらにワーキングデータを蓄積し、事業を拡大させ、新規事業の早期展開を図るためには、基盤となるユーザー数と社員クチコミと評価スコアの件数の安定的な増加を推進する必要があると考えています。
自然検索に加え、Webマーケティング強化により安定的なユーザー流入を確保し、さらに転職・就職サービスとしての認知度向上のための広告宣伝等のプロモーション活動を強化することで、ワーキングデータプラットフォームの成長を図ってまいります。
②「OpenWorkリクルーティング」の価値向上
成長過程にある「OpenWorkリクルーティング」の拡大は、今後の当社の成長に不可欠です。そのためには、Web履歴書登録数、求人数、契約社数を増加させていく必要があると考えています。また、社員クチコミデータや企業情報などの蓄積データを解析し、求職者と求人企業のマッチングの最適化を推進させることも重要だと考えています。
サービス上での求職活動を活性化させること、マッチングの最適化を進めること、入社後の求職者と企業のミスマッチの発生を抑制し、企業・求職者双方の満足度を向上させることで「OpenWorkリクルーティング」の価値を向上させてまいります。
③事業の多角化
長期的な企業成長を維持するには、複数のサービスを発展・拡大させると共に早期の収益化を実現し、特定サービスに依存しない事業基盤を構築することが重要だと考えています。
ワーキングデータプラットフォームをベースにした新規サービスを軌道に乗せ、事業の多角化を進めてまいります。
④情報管理体制の強化
当社の事業はユーザーが投稿した社員クチコミを基盤としており、多くのユーザーの個人情報を保持しています。
個人情報の保護と適正管理は当社における最も重要な課題の一つと認識しており、個人情報保護に関する社内規程の整備と運用、定期的な社内教育の実施やセキュリティシステムの構築を行っています。
個人情報の保護と適正管理を更に強化するため、2021年1月に一般財団法人日本情報経済社会推進協会が運営するプライバシーマークを取得しました。今後も個人情報の保護と適正管理を最も重要な課題として捉え、「JIS Q 15001:2017 個人情報保護マネジメントシステム-要求事項」に基づく個人情報保護マネジメントシステムの運用を徹底してまいります。
⑤財務上の課題
「OpenWork」については、安定的に営業収益を上げられており、財務基盤は安定していると考えています。また、「OpenWorkリクルーティング」については、2023年12月期の営業収益成長率が前期比103%となり、サービス別営業収益構成比率が63.9%となりました。今後も継続して成長するためには、「OpenWorkリクルーティング」の価値向上が必要であると考えています。今後も、「OpenWorkリクルーティング」などの新たな事業価値創出に必要な投資と財務基盤の安定性との適切なバランスを維持することを、財務上の課題として認識しています。このため、今後も事業計画と財務状況の継続的なモニタリングを徹底し、投資の意思決定を適切に行ってまいります。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク (2)当社事業内容及びサービスに係るリスク①サービス別営業収益構成比率の変化について」に記載のとおり、「OpenWorkリクルーティング」の収益拡大と、事業拡大のための採用費及び人件費、当社の認知度向上及び収益拡大のためのマーケティング費用等「OpenWorkリクルーティング」の拡大に必要な投資を行いながらも、経営を効率化することで一定の利益率を保持することを重視しています。
「OpenWorkリクルーティング」の収益拡大については、「OpenWorkリクルーティング」の営業収益を重要な経営指標と位置付けています。重要な指標は、「OpenWorkリクルーティング」において求職者が積極的に求職活動を行っている目安となるWeb履歴書登録数としています。
当社は「ひとりひとりが輝く、ジョブマーケットを創る。」をミッションとしています。
それは、社会の構成要素は「人」であり、全体の60%を占める生産年齢人口が関わる就労市場(ジョブマーケット)においてひとりひとりが、自身の能力を最大限に発揮できる環境を発見し、選択し、活躍することで働きがいを得ることで社会全体の生産性や幸福度を向上し、結果として持続可能性の向上につながるものです。
従って、当社のサステナビリティを維持し、ジョブマーケットを価値あるものとし続けていくことが、社会全体のサステナビリティの実現にも繋がるものと考え事業の成長を維持することでこれに貢献するものです。
当社のサステナビリティに対する考え方及び取り組みは以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものです。
(1)ガバナンス
当社は、「さあ、自由に生きよう。働きがいをすべての人へ」というコーポレートスローガンのもと、転職・就職のためのワーキングデータプラットフォーム「OpenWork」を運営しています。
当社では、ユーザーをはじめ、株主、クライアントなどのステークホルダーの期待に応え、企業価値を向上させるため、コーポレート・ガバナンスの強化が重要な課題であると認識し、経営の透明性及び効率性を確保し、コーポレート・ガバナンスの継続的な拡充を図ってまいります。
また、当社の筆頭株主かつ親会社である株式会社リンクアンドモチベーションは、その持株比率が、過半数を超えていることから、支配株主に該当します。当社は支配株主と取引を行う場合、「関連当事者取引管理規程」に則り、少数株主の利益を損なうことのないよう、取引理由及びその必要性、取引条件及びその決定方法の妥当性等について、取締役会において十分に審議したうえで意思決定を行うこととしています。
(2)リスク管理
当社のリスク管理体制は、「リスクマネジメント・コンプライアンス管理規程」を制定し、リスクマネジメント及びコンプライアンスの取り組みに関する基本的な事項及びリスクマネジメントの体制維持、並びにコンプライアンス活動を一元的に管理・運用しています。同規程に基づき、リスクマネジメント委員会を設置し、四半期に一度、リスクとコンプライアンス評価及び具体的な対策検討を行う定常委員会のほか、緊急的な情報共有・対策検討を行う臨時委員会を設けることとしています。
同委員会は取締役を中心とした、迅速な情報伝達と意思決定が可能なメンバーで構成しており、また必要に応じて弁護士・公認会計士・税理士・社会保険労務士などの外部の専門家と連携した対応が可能な体制を整えています。
(3)戦略
当社の主たる提供価値は、「OpenWork」で蓄積した社員クチコミをはじめとするワーキングデータプラットフォームを活用した、社会全体の人的資本の充実です。同時に、グロース市場上場企業に要求される高い成長性を確保することも当社の責務であり、その実現のためには、当社自身の人的資本の充実とそれによるサステナビリティの確保が最重要の経営課題と認識しています。
当社では具体的に、①人材の確保、②人材の育成、③組織力の向上の3点に力点を置いています。
①ミッションへ共感し、共に実現を目指すことのできる人材の確保(採用)
当社は、ミッションである「ひとりひとりが輝く、ジョブマーケットを創る。」を実現するため、ミッションに共感し、共に実現する意欲と行動力を持ったメンバーを厳選した採用活動を行っています。また、働きがいに関する情報発信やメディアへの出演等を通じて、当社の社会的な貢献価値を訴求する採用ブランディング活動も積極的に行っています。
終身雇用などの伝統的な雇用形態からの変化、コロナ禍を経て定着した新しい働き方等、働くことの価値観の多様化に伴い、「OpenWork」の社員クチコミの記載や閲覧の観点もまた多様化しており、当社の社員も多様な視点を理解することが、高いサービスの品質を維持することにつながると考えています。従って、出身や性別は勿論、スキルやバックグラウンド、ライフスタイル、ライフステージにおいても多様性のある人材の確保と定着に向けて、フレックスタイム制度、短時間勤務制度、リモートワーク等の制度を整備しています。
②プロフェッショナル人材の育成
当社では、ミッションの実現に向け、役職員ひとりひとりがプロフェッショナル人材として成長し成果を上げるために必要と考える価値観や行動指針を定めた「Action Style」を導入しています。「Action Style」は、「Act for All」「Be Honest」「Create the Next」「Direct Yourself」の4つの要素から構成されており、役職員ひとりひとりが経営や業務上の判断時に依拠する基準としているほか、四半期単位の個人・チームの目標設定と評価の指針としても活用されています。
また、報酬制度と行動指針の明確な紐付けを行い、その内容を社内外へ共有することで、透明性のある人事評価と育成の根幹を形成しています。
③個々が能力を最大限に発揮し、成果を最大化するための組織力の向上
厳選した採用と、育成により成長したメンバーが一丸となり、高い目標を達成していくため、それぞれが能力を最大限発揮できる環境・組織作りに向けた取り組みを行っています。
「OpenWork」のスコアや社員クチコミの分析、エンゲージメントサーベイによるモニタリングと組織課題の抽出を行い、月に一度、役員及び管理職による議論を実施・施策の決定を行っているほか、月次での全社集会(オープンブリーフィング)における会社方針や事業の進捗、市場トレンドの共有を行っています。また、リモートワークを中心とするワークスタイルに起因するコミュニケーションの品質低下を防止するために、当社オフィスで社員同士のカジュアルな交流会を実施するなど、組織力の向上に向け、様々な取り組みを行っています。
(4)指標及び目標
当社は、近年の事業成長及び上場に伴う組織の拡大に伴い、継続的に人員が増加しています。特に、2023年12月期においては、持続的な成長の実現に向けた、経営と現場の結節点となるグループマネジャー(課長職相当)を大幅に増員しました。
一方で、エンゲージメントサーベイにおけるグループマネジャーのスコアは全社平均よりも低いスコアであり(スコア「A」、11段階中3番目)、その改善を課題と捉えています。そのため、2024年12月期においてはグループマネジャーのエンゲージメントスコア「AA」(11段階中2番目)を目標と設定し、新任グループマネジャー向けのオンボーティング研修、全管理職向けのマネジメント力向上支援施策などに取り組みます。
当社の事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項は以下のとおりです。必ずしもリスク要因に該当しないと考えられる事項についても、投資判断上重要であると考えられる事項は、投資家に対する積極的な情報開示の観点から、開示しています。
なお、文中の将来に関する事項は当事業年度末現在において当社が判断したものであり、将来において発生可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
(1)外部要因に関するリスク
①ユーザー獲得数の動向について(発生可能性:中、時期:中期、影響度:大)
インターネットにおいては、ユーザーは検索エンジンを利用することが一般的であり、「OpenWork」においてもユーザー獲得は検索エンジンサイトからの自然検索流入が主たる経路になっています。
検索エンジンサイトから当社サービスへの流入は、検索結果の表示内容によって左右されますが、検索結果の表示に関する仕様は各検索エンジンの運営者によって異なります。
当社でも、検索エンジンの検索結果の表示内容が適切になるよう必要な対策を講じていますが、各検索エンジンの運営者側の仕様変更によるサイト訪問者数の減少や競合他社の認知度向上により、ユーザー獲得数の増加ペースに影響が発生した場合、当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社が事業を展開する人材サービス業界は多数の競合他社が存在し、競合他社の中には、資金力、価格競争力、認知度、顧客との関係性、人材の確保、営業力、マーケティング力、技術力等の点において、当社より優位に立つ企業も存在します。
加えて、ユーザーがサービスを切り替えることが容易で、新規参入障壁が低いという特徴があるため、競争は激しい状況にあります。
「OpenWork」は、2007年12月より社員クチコミサイトを運営しており、2023年12月末時点で約605万人の登録ユーザーと約1,620万件の社員クチコミと評価スコアデータを有していますが、認知度が高く資金力のある総合人材サービス企業が大規模なプロモーションを展開した場合や、当社より低い価格で同水準のサービスを提供した場合は、新規ユーザー、顧客の獲得効率の低下や、既存ユーザー、顧客の離脱を招く可能性があり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
②技術革新について(発生可能性:中、時期:中期、影響度:中)
インターネット業界は技術革新や顧客ニーズの変化のサイクルが極めて早いことから、当社が競争力を維持するためには、急速な技術革新に適時に対応していく必要があります。当社でもAIによるクチコミ審査機能の実装などの新規技術の開発を積極的に進めていますが、
・当社が採用又は開発する新技術等が、想定した効果を発揮しない、使用可能となった時点では陳腐化、競争力低下等が生じる
・高度の専門性を有する技術者を確保又は育成できない、係る技術者の確保又は育成に多額の費用が発生する
・端末や業界標準技術の多様化及び進化に対応した改良が行えない、既存のシステム又は設備等の改良や新たな開発等により多額の費用が発生する
・新技術を適用したサービスに、想定していない障害、欠陥又は不備がある
・新技術をいち早く導入した企業や、新技術をより効果的に利用する企業との間で新たな競争が生じる
等のリスクが顕在化し、当社が技術革新に適切かつ迅速に対応することが困難となる場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)当社事業内容及びサービスに係るリスク
①サービス別営業収益構成比率の変化について(発生可能性:小、時期:長期、影響度:小)
2023年12月期におけるサービス別営業収益構成比率は、「OpenWork」が34.8%、「OpenWorkリクルーティング」が63.9%、「その他」が1.2%です。
今後の経営戦略においては、「OpenWork」サービスの収益を安定的に維持しながら、より成長可能性が高い「OpenWorkリクルーティング」の収益拡大に注力するため、サービス別営業収益構成比率の変化が想定されます。
当社は、投資家の投資判断において重要であると考えられる事項については、財務情報だけでなく経営方針などの非財務情報もIR情報として積極的に開示していく方針ですが、過去の業績トレンドを活用して当社の将来の業績を予想することは、その有用性が限定的となる可能性があります。
なお、2022年12月期及び2023年12月期の営業収益は以下のとおりです。
(2022年12月期)
(単位:千円)
サービスの名称 |
第1四半期会計期間 (自2022年1月1日 至2022年3月31日) |
第2四半期会計期間 (自2022年4月1日 至2022年6月30日) |
第3四半期会計期間 (自2022年7月1日 至2022年9月30日) |
第4四半期会計期間 (自2022年10月1日 至2022年12月31日) |
OpenWork |
272,676 |
293,144 |
280,414 |
255,706 |
OpenWorkリクルーティング |
172,970 |
189,302 |
243,897 |
312,600 |
その他 |
1,350 |
1,844 |
4,831 |
8,348 |
合計 |
446,997 |
484,291 |
529,143 |
576,654 |
(2023年12月期)
(単位:千円)
サービスの名称 |
第1四半期会計期間 (自2023年1月1日 至2023年3月31日) |
第2四半期会計期間 (自2023年4月1日 至2023年6月30日) |
第3四半期会計期間 (自2023年7月1日 至2023年9月30日) |
第4四半期会計期間 (自2023年10月1日 至2023年12月31日) |
OpenWork |
272,958 |
270,889 |
247,583 |
226,900 |
OpenWorkリクルーティング |
396,013 |
491,302 |
494,490 |
485,807 |
その他 |
5,259 |
12,533 |
7,044 |
11,644 |
合計 |
674,231 |
774,726 |
749,118 |
724,352 |
②特定の取引先への依存について(発生可能性:小、時期:長期、影響度:小)
「OpenWork」では、ユーザーを送客している特定の提携顧客(送客先サービスサイトの運営会社)との取引金額が高い割合を占めています。2023年12月期においては、株式会社リクルートとの取引金額が当社営業収益の9.26%を占めており、特定の取引先への依存度が高い状態にあります。特定の取引先への依存を解消するため、「OpenWorkリクルーティング」の事業規模の拡大を進めています。
しかしながら、「OpenWorkリクルーティング」の収益拡大が達成できなかった場合、高い割合を占める特定の取引先との関係が当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
③「OpenWorkリクルーティング」の市場動向による業績推移について(発生可能性:中、時期:中期、影響度:大)
「OpenWorkリクルーティング」では、雇用環境の変化や求人企業の人員計画の変更により、大きく業績が変動する可能性があり、不確実性の高い市場環境において、将来の業績や市場環境の正確な予測及び有効な戦略の策定は困難な状態にあります。
当社では、雇用環境や市場環境の変化に対応するため、「OpenWorkリクルーティング」の顧客企業・販路の拡大を進めていますが、予測とは異なる状況が発生した場合や各種施策の効果が想定を下回った場合、当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
④新規事業の開発について(発生可能性:中、時期:中期、影響度:小)
ワーキングデータプラットフォームの拡充を基軸とし、主力サービスである「OpenWorkリクルーティング」の成長の加速と、新規サービスの拡大を経営戦略の基本方針として、新規サービス、事業の拡大に取り組んでいます。
これらを推進するための広告宣伝費、人件費などの先行投資は、回収可能性を検討したうえで実施していますが、安定的な事業基盤の構築と収益化にはある程度の期間を要することが見込まれるため、この期間においては、先行投資によって一時的に利益率が低下する可能性があります。
事業基盤の構築と収益化までの期間が長期化した場合や、想定していた成果を上げることができず撤退コストが発生した場合には、当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤「OpenWork」サイトにおける社員クチコミ投稿について(発生可能性:小、時期:長期、影響度:小)
「OpenWork」サイトにおいて、ユーザーによって投稿された社員クチコミが、第三者の名誉、プライバシー、その他の権利の侵害行為や法律違反行為など、不適切な投稿が生じる可能性があります。
社員クチコミはユーザーが自らの体験に基づいて会社に対する主観的な意見として投稿されたものです。当社が掲載内容の正確性、最新性、有益性など、あらゆる点に関して内容を保証できるものではありません。
当社としては、ユーザー向けの利用規約に第三者を誹謗中傷する内容の投稿を行うこと等を禁止行為として規定し、投稿時の画面に注意事項として明示のうえ、レポート回答ガイドラインに明示する等の対応を行うことで、ユーザーへの注意喚起に取り組んでいます。加えて、すべての投稿内容に対してAIを活用した機械審査と専任スタッフによる目視審査を行い、法令違反や誹謗中傷に該当する投稿を発見した場合は、速やかに当該投稿を非公開とする措置を取っています。
しかしながら、ユーザーの投稿に起因するトラブルが生じた場合は、当社が法的責任を問われる可能性がある他、サイトに対するレピュテーションが低下し、当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥「OpenWorkリクルーティング」における採用決定報告に関する不正行為について(発生可能性:中、時期:中期、影響度:小)
「OpenWorkリクルーティング」は、ダイレクトリクルーティングサービスであり、当社は選考活動に直接関与しないため、採用決定事実は利用企業からの報告によって把握していますが、採用決定の事実を報告せず採用決定時報酬の支払いを回避しようとする不正行為が発生する可能性があります。
当社は、利用企業に対する進捗確認の徹底や、利用規約に不正行為が発生した場合の違約金の設定、入社後アンケートを活用したユーザーからの入社報告の促進等の不正行為の発生を防止するための対策を講じていますが、悪質な利用企業の不正行為が発生した場合には、当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)システムに関するリスク(発生可能性:小、時期:特定時期無し、影響度:中)
当社のサービスはインターネットを介して提供しているため、自然災害、事故等による通信ネットワークの障害、ハードウエアやソフトウエアの欠陥や事故によるシステム障害、第三者による不正アクセス等が生じる可能性があります。
当社は、定期的なバックアップや稼働状況の監視、システム開発・運用に関する各種規程、マニュアルの整備や不正アクセス対策を講じていますが、これらの対策を講じているにも関わらず、システム障害等が発生し、サービス提供に障害が生じた場合、当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)法的規制に関するリスク
①当社の事業及びサービスに関連する法的規制について(発生可能性:小、時期:特定時期無し、影響度:中)
当社の事業及びサービスに関連する法律として「個人情報の保護に関する法律」、「職業安定法」、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」といいます)」、「電気通信事業法」、「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」、「特定商取引に関する法律」、及び「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」等があります。
当社では、これらの法律で要求される事項を遵守し、適法な事業及びサービス運営を行うため、顧問弁護士等とも連携のうえ、最新の法規則に関する情報の取得及びモニタリングを行い、その結果を「リスクマネジメント委員会」で検証し対応を実施する等の管理体制を構築しています。
また、コンプライアンス研修等を通じて、社内のコンプライアンス意識向上を図ると共に、「内部監査規程」に基づき内部監査で法令遵守状況の監査も実施し、継続的な法令遵守体制の強化に努めています。
しかしながら、今後新たな法令等が成立することで追加の規制を受ける可能性があります。また、今後の法律改正又は規制の動向によっては、当社の事業活動に支障をきたすとともに、事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性がありますが、当事業年度末現在において当社の事業活動に支障を来す要因は発生していません。
当社の事業における許認可の状況は以下のとおりです。
取得年月 |
許認可等の名称 |
所管官庁等 |
許認可等の内容 |
有効期限 |
法令違反の要件及び主な許認可取消事由 |
2016年5月 |
有料職業紹介事業 |
厚生労働省 |
13-ユ-307725 |
2024年4月30日 |
利用者の均等待遇に反し、差別的な取り扱いを行った場合や労働条件の明示義務に違反した場合などが法令違反となる。 主な許認可取消事由としては禁固以上の刑に処せられること、健康保険法等の規定により罰金の刑に処せられること等が挙げられる。 |
②個人情報の取り扱いについて(発生可能性:小、時期:特定時期無し、影響度:中)
当社では、「OpenWork」サービス会員の氏名や職務経歴書、応募情報等の個人情報を保持し、利用しているため「個人情報の保護に関する法律」に定められた個人情報の漏洩、改ざん等を防止するための措置を講じ、管理を徹底することを事業及びサービス運営上の重要課題の一つとして捉えています。
適正な個人情報管理を実現するための「個人情報保護方針」を定め、「個人情報保護基本マニュアル」や「情報システム管理規程」、「秘密情報管理規程」等の社内規程及びマニュアルを整備すると共に、日本工業規格「JIS Q 15001:個人情報保護マネジメントシステム-要求事項」に適合して、個人情報について適切な保護措置を講ずる体制を整備している事業者等を認定するプライバシーマークを取得しており、高いレベルの個人情報保護マネジメントシステムを確立及び運用しています。
また、社内の個人情報の取り扱いに関する研修を通じて、社内の個人情報管理意識の向上を図っています。
しかしながら、不正アクセス等により個人情報が流出するなどの問題が発生した場合には、損害賠償請求や信用の低下等により、当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③「OpenWorkリクルーティング」サービスについて(発生可能性:小、時期:特定時期無し、影響度:大)
当社が運営する「OpenWorkリクルーティング」サービスは、「職業安定法」が定める有料職業紹介事業に該当するため、厚生労働大臣の許可を受け事業を行っています。
当社では、法律で要求される事項を遵守し、顧問弁護士等との連携や、最新の法規則に関する情報の取得及びモニタリング等を行うことで、有料職業紹介事業においても適法な事業及びサービス運営を行うための体制を構築し、体制の強化を図ってまいります。
しかしながら、新たな法規制の制定や改正が行われ、又は既存法令等の解釈変更等がなされ、当社の事業及びサービスが新たな法規制の対象となる場合、許可の追加取得が必要となる場合、又は許可の取消し、業務停止命令若しくは業務改善命令の対象となる場合等には、当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
④「OpenWork」サービスについて(発生可能性:小、時期:特定時期無し、影響度:小)
当社は「プロバイダ責任制限法」に定める「特定電気通信役務提供者」に該当し、当社が企業又は個人から請求された発信者情報の開示請求に応じなかったことで、当該企業又は個人から損害賠償を請求される可能性があります。
また、企業又は個人から「OpenWork」に投稿された社員クチコミ等により権利が侵害されたとして、当社に対して損害賠償が請求される可能性があります。
「(2)当社事業内容及びサービスに係るリスク⑤「OpenWork」サイトにおける社員クチコミ投稿について」に記載のとおり、当社では会員への注意喚起を行うと共に、すべての投稿内容に対して審査を行い、法令違反や誹謗中傷に該当する投稿を発見した場合は速やかに当該投稿を非公開とする措置を取り、トラブルの未然防止に努めています。
しかしながら、仮処分や訴訟等でプロバイダ責任制限法に定める損害賠償責任の制限要件を満たしていないとされた場合には損害賠償義務が発生し、当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤秘密情報の取り扱いについて(発生可能性:小、時期:特定時期無し、影響度:中)
当社は「電気通信事業法」に定める「電気通信事業者」に該当するため、同法で定められた「検閲の禁止」、「秘密の保護」、「利用の公平」の義務が課せられており、総務省に対して同法に基づく届出を行っています。
当社では、前述のとおり法律で要求される事項を遵守し、顧問弁護士等との連携や、最新の法規則に関する情報の取得及びモニタリング等を行うことに加え、「情報システム管理規程」、「秘密情報管理規程」等の社内規程及びマニュアルを整備し、社内研修を実施することで社内の秘密情報管理意識の向上を図り、電気通信事業法においても適法な事業及びサービス運営を行うための体制を構築しています。
しかしながら、新たな法規制の制定や改正が行われ、又は既存法令等の解釈変更等がなされ、当社の事業及びサービスが新たな法規制の対象となる場合、許可の追加取得が必要となる場合、又は業務停止命令若しくは業務改善命令の対象となる場合等には、当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥不正アクセスについて(発生可能性:小、時期:特定時期無し、影響度:中)
当社は「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」に定める「アクセス管理者」に該当するため、「識別符号等の適正な管理」、「アクセス制御機能の検証」、「不正アクセス行為から防御するための措置を講じること」等の努力が課せられています。
当社では、「情報システム管理規程」、「秘密情報管理規程」等の社内規程及びマニュアルを制定し、外部からの不正アクセスを防止するためのファイアウォールやセキュリティソフトの導入等といった対策をとっており、また定期的なバックアップや稼働状況の監視を行うことで、不正アクセスの事前防止又は回避に努めています。
しかしながら、こうした対応にもかかわらず、不正アクセスが発生し、サービス提供に障害が生じた場合や復旧遅延が生じた場合、当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑦日本国外の法規制について(発生可能性:小、時期:特定時期無し、影響度:小)
当社が行う「FIS」サービスは国内外のヘッジファンド等向けのサービスであり、EU諸国にて施行された「一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:以下「GDPR」といいます)」など、取引先の国で適用される法律により規制が行われる可能性があります。
日本国外の顧客との契約においては、準拠法を日本法にするなど顧問弁護士と連携のうえ契約書を作成し、契約交渉も顧問弁護士関与のもと、慎重な対応を行っています。
しかしながら、取引先の国の法制度が変わり、「FIS」を含めた事業の展開に支障をきたした場合には当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)訴訟等によるリスク(発生可能性:小、時期:特定時期無し、影響度:小)
当社は当事業年度末現在において、重大な訴訟を提起されている事実はなく、前述の法令遵守体制を構築するとともに、サービスの適正な運営や情報管理に努めています。
しかしながら、当社並びに役職員の法令違反等の有無にかかわらず、取引先、その他第三者との予期せぬトラブル、訴訟等が発生する可能性があり、これらに起因した損害賠償の請求、訴訟を提起された場合、当社の社会的信用が毀損され、当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6)知的財産権に関するリスク(発生可能性:小、時期:特定時期無し、影響度:小)
当社は当事業年度末現在において、他社の知的財産権を侵害している事実は認識しておりません。しかしながら、当社の認識していない知的財産権がすでに成立していることにより、当社の事業運営が制約を受ける場合や第三者の知的財産権侵害が発覚した場合などにおいては、信用失墜や損害賠償請求等が発生し、当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7)広告宣伝活動に関するリスク(発生可能性:中、時期:中期、影響度:中)
当社及び当社サービスの認知度向上及び集客力強化を今後の事業拡大における重要課題の一つとして捉え、インターネット広告やテレビCMの出稿をはじめとした広告宣伝活動を実施しています。
出稿媒体や実施タイミング及びその内容について費用対効果を検討したうえで、広告宣伝活動を行っていますが、広告宣伝効果が十分に得られない場合、当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8)組織運営に関するリスク(発生可能性:中、時期:中期、影響度:小)
当社が競争上の優位性を確保し、事業環境の変化へ対応し継続的に成長していくためには、優秀な人材の確保、育成が重要課題の一つであると考えています。
優秀な人材を確保し育成するため、採用予算の確保や各種研修の充実等の対応を実施していますが、採用活動が想定どおりに進捗せず人材を十分に確保、育成できなかった場合や人材流出が進んだ場合には、当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9)親会社に関するリスク
①当社株式の流動性について(発生可能性:小、時期:長期、影響度:中)
当社の株主構成は株式会社リンクアンドモチベーション、当社役員及び元役員等であり、株式会社東京証券取引所の定める流通株式比率は2023年12月31日現在において33.4%にとどまっています。
今後は、流動性の向上を図っていく方針ではありますが、何らかの事情により流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。
②親会社が株主総会の決議事項に関する支配権又は重大な影響力を有することについて(発生可能性:小、時期:長期、影響度:中)
2023年12月31日現在において、当社発行済株式総数のうち51.44%は株式会社リンクアンドモチベーションが保有しており、同社は当事業年度末現在において東京証券取引所に上場しています。現時点では、今後も引き続き当社の株式の過半数を所有する方針であると聴取しています。その結果、当社取締役の選任・解任、合併その他組織再編の承認、重要な事業の譲渡、当社定款の変更及び剰余金の配当等の基本的事項決定権又は拒否権に関して、他株主の意向にかかわらず同社が影響を与える可能性があります。なお、当社が同社に対し事前承認を必要とする事項はなく、当社は独自に経営の意思決定を行っています。
③役員の兼任について(発生可能性:小、時期:長期、影響度:小)
当社の役員(取締役4名、監査役3名)のうち、監査役大野俊一は株式会社リンクアンドモチベーション及びその複数子会社の取締役を兼任しています。兼任状況は「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(2)役員の状況」に記載のとおりです。これは、当社の主力サービスである「OpenWork」「OpenWorkリクルーティング」は、人材ビジネスであり、長年人材ビジネスを営んできた株式会社リンクアンドモチベーション等における経営に係る知見を当社の経営体制強化に活かすことを目的としていることによります。
④親会社グループとの取引関係について(発生可能性:中、時期:中期、影響度:小)
2023年12月期における当社と親会社グループとの主要な取引は以下のとおりです。
取引先 |
取引内容 |
取引金額(千円) |
取引条件等の決定方法 |
株式会社リンクアンドモチベーション |
システムの利用 |
1,800 |
他の取引先に設定している条件と同条件であり、特に有利な条件は設定されていません。 |
OpenWorkリクルーティングの販売 |
2,000 |
||
株式会社リンクエージェント(現:株式会社リンク・アイ) |
OpenWorkリクルーティングの販売 |
4,717 |
他の取引先に設定している条件と同条件であり、特に有利な条件は設定していません。 |
出向社員の給与 |
4,253 |
出向契約に基づき全額当社負担としています。 |
|
株式会社リンク・アイ |
OpenWorkリクルーティングの販売 |
1,020 |
他の取引先に設定している条件と同条件であり、特に有利な条件は設定していません。 |
人材の紹介 |
2,500 |
||
株式会社リンクコーポレイトコミュニケーションズ |
業務の委託 |
1,600 |
他の取引先に設定している条件と同条件であり、特に有利な条件は設定されていません。 |
株式会社リンク・インタラック |
OpenWorkリクルーティングの販売 |
400 |
他の取引先に設定している条件と同条件であり、特に有利な条件は設定されていません。 |
当社の独立性の観点を踏まえ、親会社グループ会社との取引については、当該取引の経済合理性について社内規程に定められた承認を得ることとし、取引の健全性及び適正性を確保する体制を構築しています。
⑤人材ビジネスにおけるグループ会社内の関係について(発生可能性:小、時期:長期、影響度:小)
親会社グループでは、「組織と個人に変革の機会を提供し意味のあふれる社会を実現する」ことをミッションに掲げ、3つのセグメントにて事業を展開しており、当社はその中で成長セグメントであるマッチングディビジョンに属しています。マッチングディビジョンでは、求人ニーズのある組織とキャリアアップをしたい個人のマッチングを目的とした人材サービスを展開しています。当社はマッチングディビジョンの2023年12月期の売上収益の15%以上を占めています。
当社と同じくマッチングディビジョンに所属する株式会社リンク・アイ、株式会社リンク・インタラックと当社は、人材ビジネスという広義のビジネス領域では共通しますが、それぞれ異なる事業を展開しています。
社名 |
事業内容 |
競合関係が生じない又は軽微である理由 |
株式会社リンクエージェント(現:株式会社リンク・アイ) |
人材紹介事業 |
企業の要望に沿った求職者のあっせんや、求職者に対するキャリアアドバイスまで行う人材紹介事業者であり、ダイレクトリクルーティングサービスを展開する当社とはビジネスモデルが異なります。 |
株式会社リンク・アイ |
新卒採用を主とした人材紹介事業 |
企業の要望に沿った求職者のあっせんや、求職者に対するキャリアアドバイスまで行う人材紹介事業者であり、ダイレクトリクルーティングサービスを展開する当社とはビジネスモデルが異なります。 また、特定分野に特化した人材紹介事業者である点も当社ビジネスとの相違点であり、重大な競合関係は生じていません。 |
株式会社リンクジャパンキャリア(現:株式会社リンク・インタラック) |
外国籍人材の中途採用を主とした人材紹介事業 |
同上 |
上記のとおり、マッチングディビジョンに属する親会社グループ会社とは重大な競合関係は生じていませんが、今後、当社が経営方針及び事業内容を変更した場合、又はグループ会社が経営方針及び事業内容を変更した場合には、将来的に競合する可能性があり、当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)その他
①新株予約権の行使による株式価値の希薄化について(発生可能性:大、時期:短期、影響度:小)
当社では、株主価値の向上を意識した経営の推進を図るとともに、役員及び従業員の業績向上に対する意欲や士気を一層高めることを目的として、新株予約権を付与しています。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。2023年12月31日現在における新株予約権による潜在株式数は440,560株であり、発行済株式総数の2.1%に相当しています。
②配当政策について(発生可能性:小、時期:長期、影響度:小)
当社は、剰余金の配当等会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めのある場合を除き、取締役会の決議によって定めることができる旨を定款で定めています。これは、株主への機動的な利益還元を行うことを目的とするものです。
当社は、財務基盤の強化と成長過程にある事業の持続的な拡充を目指していくために、内部留保資金の充実と事業推進に必要な投資活動を積極的に行っていくことが重要と考えています。
利益配分につきましては、将来の事業展開と経営体質の強化のため必要な内部留保を確保しつつ、経営成績に応じた株主への利益還元を継続して実施していくことを基本方針としています。
現時点では、財務体質の強化及び事業拡大のための内部留保の充実を図り、事業拡大のための投資に充当していくことが株主に対する最大の利益還元に繋がると考えており、今後の経営成績及び財政状態を鑑みつつ、事業・投資計画、事業環境等を総合的に勘案し、内部留保とのバランスをとりつつ配当について検討していく方針です。このことから、当面の間、財務体質の強化及び事業拡大のための財源として利用していく予定です。
将来的には、経営成績・財政状態を勘案しながら、配当による株主への利益還元を行うことを検討してまいりますが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定です。
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の分析は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末において当社が判断したものです。
①財政状態の状況
(資産)
当事業年度末における総資産は6,389,096千円となり、前事業年度末に比べ1,259,667千円増加しました。これは主に、株式の発行等により現金及び預金が1,156,840千円、主として「OpenWorkリクルーティング」の営業収益増加により売掛金が50,742千円増加したことによるものです。
(負債)
当事業年度末における負債は665,055千円となり、前事業年度末に比べ203,202千円増加しました。これは主に、広告宣伝費の増加により未払金が131,500千円増加、「OpenWorkリクルーティング」の取引先から契約金額の全額を契約時に受領するプランの契約数が増加したこと等により契約負債が51,389千円増加したことによるものです。
(純資産)
当事業年度末における純資産は5,724,041千円となり、前事業年度末に比べ1,056,464千円増加しました。これは主に、株式の発行により資本金が268,344千円及び資本準備金が268,344千円、当期純利益の計上により利益剰余金が613,924千円増加したことによるものです。
②経営成績の状況
当事業年度(自 2023年1月1日 至 2023年12月31日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の第5類移行等による行動制限の緩和に伴い、経済活動は正常化に向かいました。世界的な物資、エネルギー価格等の上昇に伴う物価高により個人消費は大幅な回復には至りませんでしたが、雇用の拡大と賃上げが進んだことで、再成長に向けた土壌は整いつつあります。一方で、東欧や中東をはじめとする不安定な国際情勢等によるリスクは依然として高く、不透明さの残る状況が継続しています。
このような状況の中、2023年7~9月の転職者数は前年同期比103%に(注)、転職希望者は新型コロナウイルス感染症の流行前である2019年の水準を超えています。また、個人のキャリア観の変化や終身雇用の構造的限界により、今後雇用の流動化は一層加速し、働き方改革やリモートワークの普及により、多様な働き方が広がる中で、求職者の会社選びの基準も多様化していくと考えています。
「OpenWork」サービスにおいては、2023年12月末時点で約70,000社、約1,620万件の社員クチコミデータが掲載され、登録ユーザー数は約605万人となりました。また、「OpenWorkリクルーティング」サービスにおいては、2023年12月末時点で、契約社数(登録エージェント企業数含む)は約2,830社、累計Web履歴書登録数(社会人・学生)は約101万件となりました。
以上の結果、当事業年度の営業収益は2,922,428千円(前年同期比43.5%増)、一方で更なる成長に向けた採用強化により、営業費用は2,066,092千円(前年同期比44.9%増)、営業利益は856,336千円(前年同期比40.0%増)、経常利益は854,280千円(前年同期比44.7%増)、当期純利益は613,924千円(前年同期比52.3%増)となりました。
なお、当社はワーキングデータプラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしていませんが、主なサービス別の業績については、以下のとおりです。
(OpenWork)
当事業年度においては、会員課金数は増加、提携企業への送客数も概ね想定の通りに推移しました。この結果、当サービスの営業収益は1,018,332千円(前年同期比7.6%減)となりました。
(OpenWorkリクルーティング)
当事業年度においては、継続的なマーケティングへの投資などにより新規Web履歴書登録数が増加し、累計Web履歴書登録数(社会人・学生)が約101万件まで増加しました。また、既存顧客の採用活動の活性化に向けた取り組みの結果、求人企業・登録エージェント企業の採用活動が活性化し、当サービスの営業収益は1,867,613千円(前年同期比103.3%増)となりました。
(注)総務省「労働力調査 年齢階級別転職者数及び転職者比率」調査によると、7~9月期の転職者数は2019年
364万人、2020年325万人、2021年285万人、2022年313万人、2023年325万人
③キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度末に比べ1,156,840千円増加し、5,954,229千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は755,984千円(前事業年度は554,329千円の獲得)となりました。これは主に、税引前当期純利益853,476千円の計上、未払金の増加額135,511千円、契約負債の増加額51,389千円、売上債権の増加額50,742千円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は34,037千円(前事業年度は6,973千円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出20,013千円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は434,892千円(前事業年度は1,435,104千円の獲得)となりました。これは主に、株式の発行による収入452,088千円、自己株式の取得による支出94,785千円によるものです。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社の提供するサービスの性質上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しています。
b.受注実績
生産実績と同様の理由により、受注実績に関する記載はしていません。
c.販売実績
当事業年度における販売実績は次のとおりです。なお、当社はワーキングデータプラットフォーム事業の単一セグメントであるため、サービス別に記載しています。
(単位:千円)
サービスの名称 |
当事業年度 (自2023年1月1日 至2023年12月31日) |
前年同期比(%) |
OpenWork |
1,018,332 |
92.4 |
OpenWorkリクルーティング |
1,867,613 |
203.3 |
その他 |
36,482 |
222.8 |
合計 |
2,922,428 |
143.5 |
(注)1.当事業年度において、「OpenWorkリクルーティング」の販売実績に著しい変動がありました。
これは、掲載求人数及びWeb履歴書登録数の増加の結果、入社人数が増加したことによるものです。
2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、重要性が乏しいた
め、省略しています。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものです。
①重要な会計方針及び見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されています。財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、過去の実績等を勘案して合理的な見積りを行っていますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の財務諸表の作成にあたって採用する重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計方針)」に記載しています。
また、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは以下のとおりです。
(繰延税金資産の回収可能性)
当社は、将来の利益計画等から将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について、繰延税金資産を計上しています。課税所得の見積りの基礎となる将来の利益計画の主要な仮定は営業収益であり、「OpenWork」の会員課金数及び送客数の予測、「OpenWorkリクルーティング」の入社人数の予測等により算出しています。
繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産の計上額に影響を及ぼす可能性があります。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(営業収益)
求人数の拡大とWeb履歴書登録数の増加に取り組んだ結果、主に「OpenWorkリクルーティング」における求人数とWeb履歴書登録数の増加が進捗し入社人数が増加したことで「OpenWorkリクルーティング」の営業収益が1,867,613千円(前年同期比103.3%増)となったため、営業収益は2,922,428千円(前年同期比43.5%増)となりました。
(営業費用、営業利益)
「OpenWorkリクルーティング」拡大のためのビジネス職・エンジニア職の中途採用による人件費の増加、当社の認知向上のためのプロモーション施策及び「OpenWorkリクルーティング」の顧客獲得のためのマーケティング投資により、営業費用は2,066,092千円(前年同期比44.9%増)となりました。また、営業収益が増加したことから、営業利益は856,336千円(前年同期比40.0%増)と増加しました。
(営業外収益、営業外費用及び経常利益)
営業外収益は2,084千円と大きな発生はなく、営業外費用は上場関連費用が3,501千円発生したことにより、4,139千円となりました。以上の結果、経常利益は854,280千円(前年同期比44.7%増)となりました。
(特別利益、特別損失及び当期純利益)
特別利益は発生がなく、特別損失は804千円と大きな発生はなかったため、税引前当期純利益は853,476千円(前年同期比44.7%増)となりました。また、税引前当期純利益の増加に伴い法人税等合計が239,551千円(前年同期比28.1%増)となり、当期純利益は613,924千円(前年同期比52.3%増)となりました。
なお、当社の財政状態及びキャッシュ・フローの状況の分析等は「(1)経営成績等の状況の概要」に記載してい
ます。
③資本の財源及び資金の流動性
当社の運転資金需要のうち主なものは、転職サイトとしての認知度向上や「OpenWorkリクルーティング」サービスのWeb履歴書登録数増加に必要な広告宣伝費及びワーキングデータプラットフォームを基盤とした各サービスの安定的運用と持続的な成長に必要な営業、開発人件費を中心とした各種営業費用です。
当社は、運転資金につきましては「営業活動によるキャッシュ・フロー」及び内部資金にて賄う方針です。今後は、資金需要の必要性に応じて、外部も含めた資金調達等柔軟に対応する方針です。
④経営成績に重要な影響を与える要因について
「第2.事業の状況 3.事業等のリスク」をご参照ください。
⑤経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、「OpenWorkリクルーティング」の営業収益、これに関連するWeb履歴書登録数を重要な経営指標としています。
当事業年度では、継続的なマーケティングへの投資などにより社会人の新規Web履歴書登録数が増加し、累計Web履歴書登録数(社会人・学生)は101万件(前年同期比39.0%増)と順調に成長しました。
これらの結果、「OpenWorkリクルーティング」の営業収益は1,867,613千円(前年同期比103.3%増)となりました。
今後は、認知度向上のためのマーケティング投資によりWeb履歴書登録数の増加させること及び機能改善により求職者と求人企業のマッチングを活性化させることでサービスを拡大していく方針です。
該当事項はありません。
該当事項はありません。