第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

I.経営方針

2023年度中期経営計画(2023年2月公表)

 当社グループは、創業以来、当社のビジュアルコミュニケーション技術を基に、新たな価値を創出・提供し続けてきました。2019年に始まった新型コロナウイルスの世界的な流行により社会構造は大きく変化し、リモートワークは急速に普及し、2023年の現在、ポストコロナの時代に入ってからも社会環境は引き続き大きく変わっており、人々の働き方に関する新たな課題が生まれています。このような環境の下、当社グループのミッションである「Evenな社会の実現 ~すべての人が平等に機会を得られる社会の実現~」を達成すべく、変化しつづける社会に対してこれからも新たな価値を発見し、ビジネスを創出することで社会課題を解決していきます。

 

<定性目標>

1. コミュニケーションDXを活用した「選べる」働き方の創出と普及

 新型コロナウイルスの世界的な流行は、テレワークやコミュニケーションのリモート化による社会環境の大きな変化をもたらしました。当社グループは今後のポストコロナの時代における環境変化の認識を踏まえ、これまで培ってきたビジュアルコミュニケーション技術・製品・サービスを組み合わせ、時間や場所にとらわれない働き方を「選べる」ソリューションを提供することで働く人びとと企業 双方の課題を解決してまいります。

・コロナ禍期間中にリモートワークを経験したことによる働く人びとの意識の変化

・企業の競争力に直結する高度人材や若手人材の不足によるタレント獲得競争の熾烈化

・「フレキシブルな働き方」への注目と期待

2. ESG課題へのさらなる取り組みと貢献

 上述の働き方を選べるソリューションの提供を通じて、物理的な移動に伴って発生する移動コストやエネルギー削減を行うとともに、機会均等・情報格差是正・地方創生といった社会課題の解決にも貢献してまいります。また、先端データセンター活用による二酸化炭素排出量の削減や事業所再生可能エネルギーの利用促進に取り組んでまいります。

 さらに、社外取締役の比率を高めるとともにダイバーシティを推進することで、社会課題を解決する企業としてのガバナンス及びコンプライアンスを強化するとともに、多様な人財によるアイディア・ノウハウの集結に取り組んでまいります。

3. 人財への投資と育成

 当社グループでは「新たな価値を共創しつづける人財の育成」を方針とし、以下の具体的施策を中心により社会に貢献できるビジネスを創出できる人財づくりを目指して、人的資本経営に取り組んでいます。

・新規事業コンテストなど挑戦を生む環境づくり・仕組みづくり

・エンゲージメントスコアによる人財施策の定量評価と課題改善のサイクル

・市場競争力のある報酬の実現と人材育成に対しての積極的な投資

 

<定量目標>

 中期経営計画における経営目標(連結ベース)は以下のとおりです。

 

主要経営目標

(連結ベース)

2022年12月期

(実績)

2023年12月期

(計画)

2024年12月期

(計画)

2025年12月期

(計画)

売上高

12,229百万円

12,500百万円

14,520百万円

16,260百万円

営業利益

675

700

1,200

1,800

当期純利益 (注)1

84

350

700

1,050

ROE

2%

6%

11%

14%

配当性向 (注)2

20%

20%をベースとし30%を目指す

(注)1.この表における「当期純利益」とは、「親会社株主に帰属する当期純利益」を指します。

2.NOPLAT(みなし税引後利益)及び実効税率34%をベースに算出しております。

Ⅱ.経営環境及び対処すべき課題

(1)当連結会計年度の実績数値と振り返り

 2023年12月期は、米国子会社において急激なリアル回帰からの復調が遅れたことにより、のれんの減損損失の計上及び繰延税金資産の取崩を行ったことで親会社株主に帰属する当期純損失5,623百万円を計上することとなりました。

 

 当連結会計年度の当初計画と実績数値

主要経営目標(連結ベース)

2023年12月期

(当初計画)

2023年12月期

(実績)

売上高

12,500百万円

11,084百万円

営業利益又は営業損失(△)

700

△156

当期純利益又は当期純損失(△)

(注)1

350

△5,623

ROE

6%

配当性向 (注)2

20%をベースとし30%を目指す

(注)1.この表における「当期純利益又は当期純損失」とは、「親会社株主に帰属する当期純利益又は親会社株主に帰属する当期純損失」を指します。

2.NOPLAT(みなし税引後利益)及び実効税率34%をベースに算出しております。

 

(2)対処すべき課題

① 来期以降の定量目標

 2024年12月期以降の定量目標につきましては、2024年12月期を再成長の発射台とし、コストコントロール等収益性改善の取り組みを徹底しながら2026年12月期に向けて事業の拡大により増益を目指す所存です。

 2025年12月期及び2026年12月期においては営業利益10億円以上を到達目標として設定しております。

② 重要事象等に関するリスクへの対応

 当該事象及び対応策につきましては、「3 事業等のリスク 1.重要事象等に関するリスク」をご参照ください。

 

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

 当社グループは「Evenな社会の実現」をMissionに掲げ、豊かな社会づくりに向けて様々な事業活動に取り組んでいます。当社は社会を構成する一員として企業が果たす役割の重要度はますます高まっていると考える中で、特に「社会の持続的な成長」と「中長期的な企業価値の向上」の実現のため、環境(Environment)、社会(Society)、ガバナンス(Governance)への取り組みが経営の重要事項と認識しております。

 当社の展開する事業は、映像技術を活用して物理的な距離の壁を取り払うことにより、移動による環境負荷の軽減のみならず、社会課題となる「東京一極集中」「雇用機会の不均等」「雇用継続の課題」「情報格差」「医療や教育などをはじめとした地域格差」などの是正につながる事業となっております。これらの技術・事業を通じて、新たな価値創造・社会課題の解決とともに、社会的課題に「誠実」かつ「真面目」に取り組み、ステークホルダーとの対話を通じて深化させていきます。

 

(1)ガバナンス

 経営理念、Missionのもと、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するよう、取締役及び全従業員が法令を遵守し、健全な社会規範のもとにその職務を遂行するとともに、コーポレート・ガバナンスの充実に継続的に取り組んでおります。

 サステナビリティに関する基本方針、リスク・機会認識に基づく対応方針・施策等については取締役会にて監督し、社内各部署で検討されている対応方針・施策の進捗状況等は定期的に取締役会に報告され、最終決定されます。

 また、社外取締役の比率を3分の1以上とすることや取締役のダイバーシティ(創業メンバーの他、会社経営経験者、女性、専門家)を保つことで、企業倫理や経営の健全性向上、企業価値向上に資する方針決定が行える構成としております。

 サステナビリティに対するガバナンスを含むコーポレート・ガバナンスの詳細は、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

 

(2)リスク管理

 サステナビリティに関する事業への影響を把握・評価し、認識したリスクと機会について、必要に応じ取締役会に報告・協議してまいります。

 なお、気候変動に係るリスクにおいて、気候パターンの変化や異常気象は我々の社会に大きな影響を及ぼすリスクがありますが、当社グループはリモート・オンラインを活用した映像コミュニケーションサービスを展開しており、気候変動に係るリスクによる影響は少ないと認識しております。

 

(3)気候変動に関する考え方及び取組

① 戦略

 当社グループはWeb会議サービス、イベント配信サービス、テレワークを支援する個室ブース「テレキューブ」といった情報通信技術を活用した映像コミュニケーションサービスを提供しており、前述のとおり、現時点においては気候変動が顧客のサービスご利用シーンやご利用頻度等のニーズに直接的に影響を与えるリスクは少ないと考えております。

 また、当社グループの事業展開自体が物理的な移動機会や物理的なモノの利用機会を減少させることにつながっており、気候変動への対応という観点では、当社グループの持続的な成長とともに社会全体の環境負荷低減を実現できる機会と捉えております。

 

 

② 指標及び目標

 当社グループは気候変動対策として温室効果ガス排出量の測定・開示・削減に取り組んでおります。また、再生可能エネルギーの活用として、2025年までに事業活動に伴う電力の100%再生可能エネルギー化に取り組んでおります。

・再生可能エネルギーの比率が高い先端データセンター活用によるCO2の削減

・本社オフィスにおける利用電力(電灯・コンセント電源)において、非化石証書付電力を利用

 

 当社グループの温室効果ガス排出量は以下のとおりです。Scope1(事業による直接排出)は0であり、Scope2(電力消費による間接排出)はオフィスにおいて使用する電力消費に伴うものであります。

環境負荷抑制のため、更なる電力消費の削減や再生エネルギーの活用を進めるとともに、今後の目標設定等に向けて取り組みを進めてまいります。

 

 当社における温室効果ガス排出量

                (単位:t-CO2)

 

2022年12月期

2023年12月期

Scope1

0

0

Scope2

205

176

(注)集計対象は本社(東京)及び大阪営業所

 

(4)人的資本に関する考え方及び取組

 当社グループの中で主要な事業を展開する株式会社ブイキューブ単体について記載しております。

 

①人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

 当社は人財方針「ピープル・サクセスポリシー」を基に、人財育成方針「新たな価値を共創しつづける人財の育成」を定め、社会に貢献できるビジネスを創出できる人財育成を目指して、挑戦を生む環境づくり・仕組づくりを行っております。

ⅰ)中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方

 当社の人財における基本方針として「ピープル・サクセスポリシー」を掲げ、当社ミッションである「Evenな社会の実現」を社内外問わず推進しております。そのため、中核人財の登用の前提として、性別、国籍、新卒既卒という区分は関係なくEvenな機会を提供しております。

ⅱ)多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針とその実施状況

 当社は人財方針「ピープル・サクセスポリシー」を基に、社員の成長こそが会社の成長と考え「新たな価値を共創しつづける人財の育成」を人財育成方針と定め、評価報酬制度を含むブイキューブ独自の人財開発総合施策「The GOLD」を通じて、自らの成長を志し挑戦する社員に対しキャリア開発や成長・学習機会の提供といった総合的支援を行っています。さらに「ブイキューブ・マネジメントポリシー」を策定し、マネジメント人財の育成も含め、次世代を担う人財への投資も積極的に行っています。

 具体的な人財育成施策として、階層別研修、全社員向けe-ラーニング、対話力向上のためのコーチング体験プログラム、スキルマップ構築、キャリア自律のための対話による支援「キャリアドック」などを行っております。

 また、社会に貢献できるビジネスを創出できる人財育成を目指して、挑戦を生む環境づくり・仕組みづくりを推進しており、部署や役職を越えたチームによる新規事業立案コンテスト「Next ATARIMAE Challenge」を開催しております。誰もが当たり前に感じ利用できる仕組み、「次のあたりまえ」をつくることをテーマとしており、入賞者・グループには事業開発のサポートを各専門部署から提供し、事業化に向けて準備しております。前述の人財施策の定量評価としてエンゲージメントスコアを2018年より導入しており、職場環境や評価への納得感、挑戦する文化の定着等について効果測定と改善のサイクルを継続しております。

 また、子どもを育みたいという選択肢への支援や、育児や介護といったライフステージの変化等、多様な状況下にある社員が働きやすい職場環境づくりを行うための施策を実施しております。

 詳細は、当社ピープル・サクセスサイトにて公開している「人的資本経営レポート」をご参照ください。

 

 人的資本経営レポート

 URL: https://ps.vcube.com/human_capital/

 

② 指標及び目標

<中核人材の多様性確保のための測定可能な目標とその状況>

(女性) 2022年4月1日より、2025年までに女性管理職を10名(管理職のうち約30%)輩出する目標を掲げております。なお、2023年12月末時点で女性従業員数139名(37.9%)、女性管理職は6名(17.6%)です。また、2018年から女性の育休取得率は100%であり、男性の育休取得率は50%の目標に対して2023年は68.4%となりました。今後も男性の育休取得率向上に向けて取り組んでまいります。

(外国人) 現時点で目標設定及び現況は開示しておりませんが、国籍、バックグラウンドを問わず採用・管理職の登用を行っております。また、取締役会に社内取締役のDavidKovalcik(米国)がおり、マネジメントの国際化も進んでおります。

(中途) 管理職の登用において採用時期によって特段の差が生じているとは認識していないため、現時点では目標設定は行っておりません。なお、管理職のうち中途採用者は2023年12月末時点で24名(70.6%)です。

 詳細は、当社ピープル・サクセスサイトにて公開している「人的資本経営レポート」をご参照ください。

 

 人的資本経営レポート

 URL: https://ps.vcube.com/human_capital/

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

1.重要事象等に関するリスク

 当社グループは、当連結会計年度において連結子会社Xyvid, Inc.ののれんの減損等により、親会社株主に帰属する当期純損失を計上いたしました。これにより純資産が減少し、金融機関と締結した借入契約における財務制限条項に抵触する見込みとなりました。当該財務制限条項が適用された場合、資金繰りに影響が生じ、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象が存在しております。

 このような事象又は状況を解消するために、主に下記の施策を推進し、収益性をより一層改善した経営基盤の再構築を目指してまいります。

・主にイベントDX事業における外注費の削減を中心とした原価改善

・自社開発プロダクトの選択と集中による開発投資の適正化

・2023年に実施した経営合理化施策の延長として更なる全社費用の削減

 また、財務体質の改善施策の一環として、第三者割当による新株式及び第19回の新株予約権の発行を行っております。詳細につきましては、連結財務諸表「注記事項 (重要な後発事象)」をご参照ください。

 更に、当社は金融機関との連携を強めており、上記の施策に加えて、金融機関と協議の上で財務体質の改善に向けた施策を実行してまいります。これにより、今回の財務制限条項への抵触に関しても、期限の利益の喪失の権利行使をしない旨の同意を得ております。以上により、当面の資金繰りには問題なく、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。

 

2.当社の事業及び業界固有の重要なリスク

項目名

影響度

評価

前年

比較

2.当社の事業及び業界固有の重要なリスク

(1)新型コロナウイルス感染症流行の収束が当社事業に与える影響について

重要

(2)クラウド型サービスに関するリスク

重要

(3)イベント配信サービスのオペレーションに関するリスク

重要

(4)イベント配信サービスのキャパシティに関するリスク

注視

(注) 上記リスクはいずれも年間を通じて常時発生する可能性があると認識しております。

 

(1) 新型コロナウイルス感染症流行の収束が当社事業に与える影響について

 新型コロナウイルスの流行は、ワクチン接種の浸透とオミクロン株等の弱毒性ウイルスへ移行したことにより、収束に向かいつつあります。当該感染症収束により、当社のオンラインソリューションビジネスがコロナ禍以前の状態に縮小する可能性に関する見解がありましたが、実際には移動時間削減による生産性向上や遠隔地との商談による商圏の拡大の他、オンラインイベント配信では開催コストの大幅な削減や集客力の上昇等、多くの顧客企業にその有用性が認識され、現在でも継続してサービスを利用いただいております。

 当社グループの事業規模は新型コロナウイルスの流行期の急激な拡大傾向にはないものの、現在も引き続き安定的な成長を継続しておりますが、日本及び米国での今後のポストコロナの社会環境において、リアル回帰等の影響によりオンラインソリューションの成長が継続しない場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(2) クラウド型サービスに関するリスク

 当社グループが提供しているクラウド型サービスは、その根幹となる自社開発及び運用するシステムを安定的かつ継続的に運用していくことが要求されます。しかしながら、アクセスの予期せぬ急激な増加やIaaS/PaaSベンダー※の保証範囲内での障害等により、当社グループのシステムが動作不能となる場合、あるいは火災・震災・台風等の自然災害による予期せぬ事象により、システム及びサーバーの障害、機器破損やデータ消失等が生じた場合は、当社グループのサービスを適切に提供できない可能性があり、当社グループの信用、事業及び業績に影響を与える可能性があります。

※ 当社のITインフラに係るサービスを提供している事業者(Amazon Web Services等)を指す。IaaSとはInfurastructure as a serviceの略、PaaSとはPlatform as a serviceの略。

 当社グループにおいては、安全性・セキュリティ・負荷の分散を考慮した構成での運用の上、24時間365日体制の監視等に取り組んでおり、加えて日本国内の複数拠点及びシンガポールをはじめとする複数の海外拠点にサーバーを分散して設置する対応を進めております。

 

(3) イベント配信サービスのオペレーションに関するリスク

 当社が提供しているイベント配信サービス(オンラインセミナー配信サービス)は、SaaS+Serviceのコンセプトの下、システムの提供のみならず、当社スタッフによるイベントの企画から当日の運営までをワンストップソリューションにて提供しております。その活用シーンは製薬業界における講演会、就職説明会やバーチャル株主総会等、顧客企業にとって重要性の高いイベントであるため、配信事故が許されないプロフェッショナルサービスが求められています。このため、イベント開催中のネットワークの切断やオペレーションのミス等により、イベント配信サービスが適切に提供できなかった場合、顧客企業からの賠償請求を受けるのみならず、信用失墜により顧客を喪失する場合等、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 当社においては、ネットワークや配信機材の徹底した冗長化を行っているほか、イベントの企画や運営にあたる当社スタッフ並びにパートナー企業の研修を継続的に行っており、2020年度以降に実施した24,000回以上のイベント配信から得られた経験やノウハウを共有することでイベント配信の品質の向上に努めております。また、外部企業のコンサルティングを活用し、イベント配信のオペレーションの効率化に継続的に取り組んでおります。

 

(4) イベント配信サービスのキャパシティに関するリスク

 当社が提供しているイベント配信サービスは(3)で述べたとおり、イベントの企画から当日の運営までのサービスを当社スタッフにより提供しております。当社のイベント開催実績は2020年度の約4,700回に対して、2021年度及び2022年度は約7,000回前後と実績が伸長し、2023年度は件数的には約5,200回と落ち着いたものの、2020年度に比べて大規模案件もしくは高難易度案件の割合が増加しております。今後もイベント配信サービス拡大のためにはスタッフやパートナー企業の人員や、配信のための機材のキャパシティの拡大、及び高難易度案件に対応できる人材の育成が必要と考えております。このため、スタッフの採用やパートナー企業の確保や機材調達が難航した場合は、機会損失が発生し当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、イベント開催数が当社の想定より縮小した場合もしくは季節性に伴う閑散期においては、当該キャパシティ維持のための固定費負担増加による収益性の悪化により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 当社においては、中期経営計画達成に向けて必要不可欠な積極的な採用力を推進していくため、人事部門の増員による体制強化、ITツールの活用による採用活動の効率化を進めております。さらに今後はイベント関連企業のM&Aによるキャパシティの増加も検討してまいります。また(3)で述べたとおりイベント配信のオペレーションの効率化に継続して取り組んでおり、人員や機材の効率的なアサインメントの最適化を図ってまいります。

 

3.その他の重要なリスク

項目名

影響度

評価

前年

比較

3.その他の重要なリスク

 

 

 

(1)事業環境に関するリスク

注視

(2)人的資源に関するリスク

注視

(3)コンプライアンスに関するリスク

 ①顧客の機密情報の保護について

注視

 ②コンプライアンスの遵守体制について

注視

(4)企業買収によるのれんに関するリスク

注視

(注) 上記リスクはいずれも年間を通じて常時発生する可能性があると認識しております。

(1) 事業環境に関するリスク

 当社グループにおける強みは、国内外で使用されている優れたSaaSに合わせて、長年業界に特化したシステム構築により社内に蓄積したノウハウによるサービス提供ができることにあります。インターネット関連分野は、新技術の開発及びそれに基づく新サービスの導入が相次いで行われており、非常に変化の激しい業界となっております。新規事業や新サービスの投入が遅延した場合、当社グループの競争力が低下する可能性があることに加え、急速な技術革新に対応するためにシステム投資や人件費等の支出が増大する可能性があります。

 当社グループでは、変化の激しい業界で持続的に成長する企業であるために、国内外における最新のインターネット関連技術について日々モニタリングを行い、顧客ニーズを取り入れながら最新技術を取り入れた独自性のある新規事業や新サービスの構築に注力しております。

 

(2) 人的資源に関するリスク

 当社グループは2023年12月末現在において、従業員約470名の比較的小規模な組織であり、内部管理体制もこれに応じたものになっております。今後の事業拡大に伴い積極的な採用及び人材育成に努めるとともに、内部管理体制の一層の強化を図る方針であります。しかし、事業規模に応じた採用や人材育成が円滑に進まず、適正な人員配置が困難となる場合には、競争力の低下や事業拡大の制約をもたらし、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 特に開発の分野において十分な知識と技術を有する人材が不可欠であり、優秀な人材を確保するため、あるいは現在在籍している人材が流出するケースを最小限に抑えるため、福利厚生の充実を図っております。

 

(3) コンプライアンスに関するリスク

① 顧客の機密情報の保護について

 当社グループでは、顧客の会議の録画情報をはじめとした各種の機密情報を取得しております。これらの機密情報の流出や外部からの不正アクセスによる被害の防止は、当社グループの事業にとって極めて重要であります。何らかの原因により機密情報の流出等があった場合、当社グループの信用低下や取引停止等のほか、法的責任を問われる可能性もあり、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

 当社グループでは、顧客の機密情報の流出等の被害を未然に防止するよう、2006年2月に社団法人日本能率協会審査登録センター(現 一般社団法人日本能率協会審査登録センター)より「ISO/IEC27001※」の認定を受ける等、情報セキュリティ対策を講じております。

※ 情報セキュリティ・マネジメントシステムの国際規格。情報資産の喪失、流出、外部からの不正アクセス等の脅威から企業や自治体といった組織を守り、情報の機密性、可用性、完全性等を社内で継続的に確保・維持するシステムを確立するために定められたもので、情報セキュリティ対策の国際標準とも言えるものです。

 

② コンプライアンスの遵守体制について

 当社グループでは、企業価値を高めていくためにはコンプライアンス体制が有効に機能することが重要であると考えておりますが、役員及び従業員の事業運営や業務遂行において法令等に抵触する事態が発生した場合、当社グループの信用及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、全役員及び全従業員を対象に「ブイキューブ行動規範」を策定し、その周知徹底を図っております。併せて、代表取締役社長を委員長とするコンプライアンス・リスク管理委員会を設置し、コンプライアンス体制の強化に取り組んでおります。

 

(4) 企業買収によるのれんに関するリスク

 また、当社グループは企業買収に伴うのれんを連結貸借対照表に計上しており、当連結会計年度末現在ののれん金額は連結総資産の6.8%(844,062千円)を占めております。当連結会計年度において、米国連結子会社であるXyvid, Inc.に係るのれんの全額を減損損失として計上いたしました。この結果、当社グループにおけるのれんに関するリスクは従前より低下したものの、事業環境の変化等により期待する成果が得られないと判断された場合等は、減損損失の発生により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、判断したものであります。

 

① 経営成績の状況

 当連結会計年度における我が国経済は、ロシア・ウクライナ戦争の長期化や日米間金利格差に伴う持続的な円安進行などの影響を受け、物価上昇及びそれに伴う個人消費の停滞や設備投資の遅れなどの課題に直面した年でありました。一方で、コロナ対策として導入していた入出国制限が各国において完全に解除されたことでインバウンド需要の増加が見られ、日本全体として見ればコロナ禍前の経済状態に回復した年となりました。

 行動制限の緩和と経済活動の正常化により、米国では急激なリアル回帰が進み、オンラインイベントからリアルイベントへの揺り戻しが生じました。他方、日本ではリアル回帰が生じたものの、米国ほどの急激な揺り戻しは起こらず、リアルとオンラインの両方を組み合わせたハイブリッド形態が標準になりつつあります。

 当社グループにおいては、アフターコロナにおけるリアル回帰が緩やかに進んだ日本においては業績が堅調に推移したものの、米国地域においてはコロナ後に獲得した新規顧客との案件開始が遅れたことで、業績が大幅な未達となりました。

 一方で、コロナ禍における急激な需要増加に対応するために拡大した、人件費を中心とする固定費がアフターコロナにおいて利益率を低下させる要因となったため、適正水準に戻すべく、当連結会計年度第3四半期において希望退職者募集等を中心とした経営合理化策を実施いたしました。

 2024年以降は、このような人件費や開発費におけるコストコントロールを徹底させることで、コロナ以前の固定費水準に回復させるとともに、当連結会計年度に開始した新規事業の展開と新製品の投入、及び米国市場における新たな顧客基盤の確立により売上高の堅実な成長を見込んでおります。そして、これらの取り組みを行うことにより来期以降の事業の拡大及び収益の改善を目指してまいります。

 また、テレワークの定着及びリモートを活用したコミュニケーションDXによる生産性・生活の質の向上の実現に向けて、当連結会計年度において以下の項目を実施いたしました。

(ⅰ)Web会議ツールの継続的提供と市場拡大への貢献

 緊急事態宣言下における必須ツールとしてWeb会議ツールを導入する企業が増加し、当社のWeb会議サービスである「V-CUBEミーティング」のほか、当社が代理店として販売する「Zoom」も堅調に推移しました。新型コロナウイルスの感染が拡大した前年度のような大幅な増収はないものの、テレワークの定着によりサービス利用数や利用時間は依然としてコロナ禍以前よりも高水準で推移しております。Web会議ツールは今や企業活動に欠かせない社会インフラとなったため、今後も提供サービスの安定運用ができるよう機能開発・品質改善活動を継続してまいります。

(ⅱ)イベント配信サービス事業の拡大

 様々な業界でイベント及びセミナーがオンライン開催にシフトしていく中、前年に引き続き当社におけるオンラインイベント配信件数は急増いたしました。オンラインイベントの需要は今後も引き続き増加していく見込みであることから、人材や機材等のキャパシティ拡大とともに、他社サービスとの差別化となる高付加価値のオンラインイベントを提供するための開発投資を積極的に実施いたしました。

(ⅲ)テレワークを支援するセキュアな個室ブース「テレキューブ」の提供

 企業においてテレワークが普及した一方でオフィスへ出社する機会も戻りつつある中で、在宅勤務者とのWeb会議を開催するための場所の需要が拡大した結果、企業におけるテレキューブの設置台数も大幅に増加いたしました。また、コロナ禍により自宅でも職場でもない「第三の場所」を求める傾向を踏まえ、前年度に引き続き駅やオフィスビルなど公共向けのテレキューブ設置台数を積極的に拡大いたしました。

 これらのミッション実現施策とともに、企業として持続的成長を実現していくための新規事業領域の創出や、株式会社としての使命たる企業価値最大化のための業績向上と株主還元も併せて実施いたしております。

 

 当連結会計年度の業績は以下のとおりです。

(単位:千円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

増減率
(%)

売上高

12,229,135

11,084,673

△1,144,462

△9.4

営業利益又は営業損失(△)

675,093

△156,098

△831,191

経常利益又は経常損失(△)

612,898

△275,470

△888,368

親会社株主に帰属する当期純利益又は親会社株主に帰属する当期純損失(△)

84,594

△5,623,183

△5,707,777

 

 当連結会計年度において、売上高は前年同期比で9.4%減少いたしました。これは、主に国内の製薬業界の講演会の市場縮小の影響のほか、北米におけるリアル回帰の影響及びコロナ後に獲得した新規顧客との案件開始が遅れたことによるものです。北米地域でのリアル回帰による売上減少と案件開始時期の遅れは営業利益にも影響し、営業利益は△156,098千円(前年同期は675,093千円)となりました。

 営業外損益においては、シンジケートローンの組成に伴う支払手数料を計上したほか、持分法適用会社であるテレキューブサービス株式会社における収益性が増加したことで持分法による投資損失が縮小し9,919千円を計上いたしました。

 特別損益においては、主に北米地域の連結子会社であるXyvid, Inc.について収益性の低下を認識したことから減損損失3,779,758千円を計上いたしました。また経営合理化策実施のための費用として133,444千円を計上いたしております。

 

 なお、2023年2月公表の当社グループ中期経営計画において、当初は、当連結会計年度の売上高125億円、営業利益7億円、親会社株主に帰属する当期純利益3.5億円と計画しておりましたが、1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 で述べたとおり、当連結会計年度においては未達となりました。

 また、ROEとNOPLAT※ベースの配当性向の目標についても、当初計画では6%、20%以上を計画しておりましたが、いずれも未達となりました。

 ※NOPLAT:Net Operating Profit Less Adjusted Tax(みなし税引後利益)

 

 セグメント別の業績は、以下のとおりです。

 

Ⅰ.エンタープライズDX事業

(単位:千円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

増減率

(%)

売上高

4,331,141

4,418,504

87,363

2.0

セグメント利益

593,166

526,493

△66,673

△11.2

 

 エンタープライズDX事業は、主に企業や官公庁等を対象に、社内外のコミュニケーションにおけるDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するサービスを提供しております。

 具体的には、自社開発の汎用Web会議システム「V-CUBE ミーティング」や「Zoom」の販売のほか、ディスカッションテーブル「V-CUBE Board」などの災害対策ソリューションやウェアラブルデバイスなど、企業向けのリモートコミュニケーションプロダクトを提供しております。また、顧客企業において映像組み込み型サービスの開発を容易にする「V-CUBE Video SDK」の提供やサービス開発及び運用支援をすることで、顧客企業におけるソリューション開発を支援しております。

 

 当連結会計年度のセグメント売上高は、前年同期比2.0%増の4,418,504千円となりました。これはシンガポールの連結子会社であるWizlearn Technologies Pte. Ltdにおいて、企業向けのLMS事業売上が増加したことによるものであります。また、セグメント利益は前年同期比11.2%減の526,493千円となりました。これは、注力事業ではなくなったことにより収益性の高い自社製品比率が緩やかに低下したこと、及び円安に伴い海外他社製品の仕入価格が上昇したことで、限界利益率が減少したためであります。

Ⅱ.イベントDX事業

(単位:千円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

増減率

(%)

売上高

5,008,155

4,115,984

△892,171

△17.8

セグメント利益又は損失(△)

140,516

△734,127

△874,643

 

 イベントDX事業は、様々な分野におけるイベント、セミナーのリモート化を支援する事業であります。

 具体的には、Webセミナー配信サービス「V-CUBE セミナー」や「EventIn」などのセミナー配信ソフトウエアを提供するほか、イベント配信に係る運用設計、当日の配信サポートや後日のイベントデータ解析などの運用支援サービスを提供しております。

 

 当連結会計年度では、国内の製薬業界の講演会市場の縮小のほか、北米地域におけるリアル回帰と新規顧客との案件開始時期のシフトが影響し、セグメント売上高は前年同期比17.8%減の4,115,984千円となりました。

 また北米地域の連結子会社において売上減少に伴い収益性が低下したことから、セグメント利益は△734,127千円(前年同期は140,516千円)となりました。

 イベントDX事業においては、当連結会計年度に実施した経営合理化策及び外注費率の見直しによるコスト適正化により、国内における収益性は今後回復する見込みであります。また当連結会計年度において収益性の低下が見られた北米地域においても新規顧客の獲得が進んでいることから、翌連結会計年度以降には利益率が回復するものと予測しております。

 

Ⅲ.サードプレイスDX事業

(単位:千円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

増減率

(%)

売上高

2,889,838

2,550,184

△339,654

△11.8

セグメント利益

646,787

737,869

91,082

14.1

 

 サードプレイスDX事業は、自宅や職場とは異なるサードプレイス(第3の場所)の提供や運用支援を行うことで、昨今日本に浸透しつつあるテレワークを1つのワークスタイルとして定着させることを目的とする事業であります。

 具体的には、企業及び公共空間への「テレキューブ」の提供、公共空間における防音型個室ブースの管理運営システムの開発、「テレキューブ」において提供する関連サービスの開発を行っております。

 当連結会計年度では、セグメント売上高は前年同期比11.8%減の2,550,184千円となりました。これは、公共空間向けの防音型個室ブースの需要が一巡したこと、及び企業向け防音型個室ブースの増加ペースが緩やかになったためであります。

 また、セグメント利益は前年同期比14.1%増の737,869千円となりました。これは、前連結会計年度において実施したテレビ及びWeb媒体を利用した広告宣伝活動について、当連結会計年度においてはその実施がなかったためであります。

 

 

 

② 財政状態の状況

(単位:千円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

資産

16,891,863

12,329,168

△4,562,695

負債

10,902,333

11,583,111

680,778

純資産

5,989,529

746,056

△5,243,473

 

a.資産

 当連結会計年度末において、資産残高は前期末比4,562,695千円減の12,329,168千円となりました。これは主に、ソフトウエア及び米国子会社ののれんについて減損損失を計上したことによる無形固定資産残高の減少、及び繰延税金資産の取崩しによるものであります。

 

b.負債

 負債残高は前期末比680,778千円増の11,583,111千円となりました。これは主に、前連結会計年度末に一時的に減少させていた借入金等のポジションを再度増額したことにより借入金残高が増加したためであります。

 

c.純資産

 純資産残高は前期末比5,243,473千円減の746,056千円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純損失5,623,183千円を計上したため利益剰余金が減少したことによるものであります。

 この純資産減少の影響により、自己資本比率は5.0%(前連結会計年度末は34.9%)に減少いたしました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

(単位:千円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

1,833,235

990,958

△842,277

投資活動によるキャッシュ・フロー

△2,395,745

△1,916,914

478,831

財務活動によるキャッシュ・フロー

290,310

562,404

272,094

現金及び現金同等物の当期末残高

1,699,697

1,389,327

△310,370

 

 (営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において営業活動により得られた資金は990,958千円となりました。これは主に、非資金項目である減損損失の計上による増加があった一方で、税金等調整前当期純損失の計上によって減少となったことによるものであります。

 

 (投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において投資活動の結果支出した資金は1,916,914千円となりました。これは主に、当社グループサービスの開発投資としての無形固定資産の取得に1,734,192千円を支出したほか、公共向けテレキューブ事業の更なる推進のためのテレキューブサービス株式会社への追加出資、会社分割による事業の取得に伴う支出をしたことによるものであります。

 

 (財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において財務活動の結果得られた資金は562,404千円となりました。これは主に、前期末に一時的に減少させていた借入金等のポジションを再度増額したことによるものであります。

 

④ 資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの主な資金需要は、当社サービスの新規開発や機能拡充のための開発投資、イベント配信サービス(オンラインセミナー配信サービス)に使用する配信機材の調達、テレキューブを中心とするハードウェアの仕入調達であります。

 開発投資についてはソフトウエア償却額と同程度の水準を目安とすることにより財務健全性を維持することとしております。また、配信機材やハードウェアは自己資金またはデットファイナンスによる調達を行っておりますが、特に配信機材の調達については回収期間や機材の陳腐化を総合的に判断して、借入またはリースの期間を決定しております。

 また、得られたフリーキャッシュフローについては、上述の開発投資やイベント配信ビジネスへの投資のほか、配当性向20%を目安とし、中長期的には30%を想定した株主還元を行ってまいります。なお、株価が割安と判断された場合は手許資金及び会社法上の分配可能額を勘案しながら積極的に自社株買いを実施してまいります。
 

 

 

 なお、キャッシュ・フロー関連指標は以下のとおりです。

 

(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

2019年12月期

2020年12月期

2021年12月期

2022年12月期

2023年12月期

自己資本比率(%)

43.2

37.8

33.1

34.9

5.0

時価ベースの

自己資本比率(%)

226.9

738.8

171.5

104.7

64.2

キャッシュ・フロー対

有利子負債比率(年)

5.9

1.8

3.3

4.1

8.6

インタレスト・

カバレッジ・レシオ(倍)

17.9

88.8

58.5

40.6

21.7

(注)1.各指標の計算方法は以下のとおりであります。

自己資本比率           :自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率     :株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ :営業キャッシュ・フロー/利払い

2.いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

3.キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。

4.有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としております。

5.利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を利用しております。

 

⑤ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されておりますが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。これらの見積りについては継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は異なることがあります。

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

(2)生産、受注及び販売の実績

① 生産実績及び受注実績

 当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績及び受注状況の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

② 販売実績

 「(1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載のとおりです。

 

 

(3)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、判断したものであります。

 

Ⅰ.エンタープライズDX事業

 エンタープライズDX事業ではハイブリッドワーク(旧:汎用ウェブ等サービス)、ビジネスグロース(旧:SDK)、プロフェッショナルワーク(旧:緊急対策)、リスキリング(旧:LMS及び汎用ウェブ等サービスの一部)の4つのカテゴリでサービス提供を行っております。各サービスの売上高推移は以下のとおりです。

サービス別売上高推移                                (単位:千円)

種別

2022年

第1四半期

2022年

第2四半期

2022年

第3四半期

2022年

第4四半期

2023年

第1四半期

2023年

第2四半期

2023年

第3四半期

2023年

第4四半期

ハイブリッド

ワーク

464,777

420,960

415,306

438,139

437,919

415,884

426,658

471,399

ビジネス

グロース

404,258

316,908

295,193

284,591

328,179

279,008

283,382

268,835

プロフェッショナルワーク

192,364

83,436

73,475

138,169

179,949

124,570

83,081

241,024

リスキリング

183,725

191,985

210,646

217,201

226,120

208,934

229,446

214,110

合計

1,245,126

1,013,292

994,621

1,078,101

1,172,168

1,028,397

1,022,568

1,195,370

 

 当連結会計年度においては、官公庁や製造業を主な顧客とするプロフェッショナルワーク事業において売上高が前年比29.0%増の628,626千円に増加いたしました。プロフェッショナルワーク事業は災害現場や工場等の遠隔監視を可能とする「V-CUBE Board」やウェアラブルデバイスなどのサービスを提供しており、商材の性質上、対面での商談を必要とすることから、コロナ禍の収束によって商談活動が再開したことが売上高の増加につながりました。

 また、主にシンガポール子会社で展開しているリスキリング事業についても前年比9.3%増の878,611千円となりました。

 Web会議システムが主力商材であるハイブリッドワーク事業については、世の中にテレワークが定着したことで需要が堅調に推移しており、前年比0.7%増の1,751,860千円となりました。ハイブリッドワーク事業については、世界的な企業によるサービス提供がなされる競争の激しい分野であることから、将来的には大きな成長は見込めず、横ばいで推移すると考えております。

 一方、映像組み込み型サービスの開発を容易にするSDKを主力商材とするビジネスグロース事業については、前年比10.8%減の1,159,406千円となりました。

 

Ⅱ.イベントDX事業

 イベントDX事業においては、その後、大規模配信案件や高付加価値案件の割合の上昇により配信1回当たりの平均単価は上昇したものの、年間配信回数は減少し、売上高は前連結会計年度より減少いたしました。

イベントDX事業の連結売上高推移                          (単位:千円)

種別

2022年

第1四半期

2022年

第2四半期

2022年

第3四半期

2022年

第4四半期

2023年

第1四半期

2023年

第2四半期

2023年

第3四半期

2023年

第4四半期

配信回数

2,142回

1,783回

1,266回

1,714回

1,578回

1,313回

1,018回

1,317回

平均単価

679

790

701

734

682

913

791

786

セグメント

売上高

1,453,826

1,408,860

887,827

1,257,640

1,076,552

1,199,286

804,768

1,035,376

 

 季節的変動については大きくはないものの、配信回数については第1四半期に増加し、第3四半期に減少、平均単価については株主総会開催が集中する第2四半期に増加するという傾向が見受けられます。当連結会計年度においては、大規模配信案件や高付加価値案件の割合が増加したために1配信あたりの単価は前年比で平均7万円程度増加したものの、一方で配信回数が3ヶ月平均1,300回前後(前年比約200回減)となったために、当連結会計年度における連結売上高は前年同期比17.8%減の4,115,984千円となりました。

 来期以降については、配信回数自体は本年度と同水準であるものの、法定の議事進行を要し失敗の許されない株主総会やクオリティの高いオンラインイベントを提供する高付加価値案件など、1配信当たり単価の高い案件の需要が増加すると予測されること、また米国においては当連結会計年度に生じた急激なリアル回帰が沈静化し、再びオンライン配信への揺り戻しが起きることが見込まれることから、当該事業については今後も緩やかに成長を続けていくものと考えております。

Ⅲ.サードプレイスDX事業

 サードプレイスDX事業においては、企業及び公共空間においてWeb会議に対応したセキュアな防音型個室ブースである「テレキューブ」の需要が根強く、当連結会計年度における販売実績台数は8,019台(前年比11%減)と前連結会計年度より減少したものの、累計設置台数は24,789台に拡大いたしました。

 主要駅やオフィスビルを中心とした公共空間に設置するテレキューブを販売する公共向けについては、Web会議の定着に伴い、公共空間における会議スペース需要が増加したことから設置箇所が拡大し、累計設置台数は前年比27%増の1,030台となりました。テレワークが定着した昨今の状況を鑑みれば、来期以降においても公共空間におけるセキュアなスペースに対する需要は高まっていくと考えられ、2024年12月期においても設置数は増加する見込みであります。

 企業向けテレキューブの販売形態については、テレキューブ本体を購入いただく「販売型」に加えて、契約期間中は月額定額料金で利用することが可能な「サブスクリプション型」の2つの形態で提供しております。「サブスクリプション型」は「販売型」に比べて初期導入コストが抑えられるメリットがあるため、より幅広い顧客層へのアプローチが可能であります。

 当連結会計年度における企業向けの販売実績台数は、前年比10%減の7,797台となり、累計設置台数は23,759台となりました。これは、企業オフィスへの出社と在宅勤務のハイブリッドな勤務形態が増加した結果、企業内においてもWeb会議に対応したセキュアな会議スペースの需要が急増したことによるものと考えられます。

 今後はこのような勤務形態が主流になると見込まれることから、企業向けテレキューブの需要は今後も拡大していくものと考えております。

テレキューブ累計設置台数                                  (単位:台)

種別

2022年

第1四半期末

2022年

第2四半期末

2022年

第3四半期末

2022年期末

2023年

第1四半期末

2023年

第2四半期末

2023年

第3四半期末

2023年期末

公共向け

581

626

699

808

899

929

965

1,030

企業向け(販売型)

9,610

11,777

13,472

15,423

17,805

19,491

21,199

23,055

企業向け

(サブスクリプション型)

322

415

495

539

591

632

655

704

合計

10,513

12,818

14,666

16,770

19,295

21,052

22,819

24,789

 

(4)経営成績に重要な影響を与える要因について

 「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

(1)吸収分割契約

当社は、2023年2月20日の取締役会にて会社分割(簡易吸収分割)により、タメニーアートワークス株式会社の法人向けイベント企画運営事業である「イベモン」事業を、同社より会社分割(簡易吸収分割)の方式により承継することを決議し、2023年2月20日付で吸収分割契約を締結いたしました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

 

(2)吸収合併契約

当社は2023年6月23日開催の取締役会において、新設するV-CUBE USA Acquisition Company, Inc.を吸収合併存続会社とし、当社の連結子会社であるV-cube USA, Inc.を吸収合併消滅会社とする吸収合併について決議し、2023年7月1日付で吸収合併契約を締結し、2023年7月31日付で実施いたしました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

 

(3)財務制限条項が付された借入金契約

主な借入先

株式会社三菱UFJ銀行

株式会社みずほ銀行

株式会社三菱UFJ銀行

株式会社みずほ銀行

(アレンジャー株式会社三菱UFJ銀行)

契約形態

コミットメントライン契約

コミットメントライン契約

シンジケートローン契約

当初借入金額

900百万円

600百万円

3,649百万円

資金使途

運転資金(財務の中期的な安定及び利率低減を目的とした資金の借り換え)

運転資金(財務の中期的な安定及び利率低減を目的とした資金の借り換え)

Xyvid, Inc.の株式取得資金

借入期間

自 2021年12月30日

至 2024年12月27日

自 2021年12月30日

至 2024年12月30日

自 2023年11月30日

至 2028年11月30日

担保の有無

なし

なし

なし

保証の有無

なし

なし

なし

財務制限条項

あり(注)

あり(注)

あり(注)

(注)詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結貸借対照表関係)」に記載しております。

 

6【研究開発活動】

 当連結会計年度の研究開発費の総額は5,693千円であります。

 なお、セグメントごとの研究開発活動を示すと、以下のとおりであります。

(サードプレイスDX事業)

主として、防音型スマートワークブース「テレキューブ」に関わる研究開発であり、当連結会計年度の研究開発費は5,693千円であります。