文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、世の中の物理鍵とそれに伴う様々な制約から人々を解放し、扉で分断されたあらゆる場所や空間に人々が自由にアクセスできるキーレス社会の実現を目指しております。この物理空間におけるシングルサインオン(SSO)ともいえる世界の実現を通じて、誰もが利用する鍵や扉を起点とした様々なサービスや価値を提供することで事業拡大を目指すとともに、キーレス社会の構築を通じて少子高齢化に伴う人手不足等の様々な社会課題の解決に向けて取り組んでおります。
具体的な経営方針は以下の通りであります。
近年、日本ではキャッシュレス社会が大きく進展しております。このキャッシュレスの仕組みは、スマートフォンやICカード等の個人を証明する支払用ハードウエア、POSやカードリーダー等のキャッシュレス決済受入のための認証ハードウエアインフラ、そしてそれらハードウエア機器やインフラのためのソフトウエアや決済トランザクションを支える認証システム等によって構成されており、従来の非デジタルな手段としての現金を置き換えております。
当社グループでは、この急速に進展したキャッシュレス社会と同様の産業構造を持ち、ユーザーのさらなる利便性や価値実現をもたらすキーレス社会が今後急速に進展すると考えております。実際に、社会インフラとしてのキーレス社会はキャッシュレス社会と同様に、スマートフォンやICカード等の鍵を開閉する個人を証明するハードウエア、スマートロックやカードリーダー等の鍵に付帯する認証ハードウエアインフラ、そしてそれらハードウエア機器やインフラを支えるソフトウエアや認証のためのシステムによって構成されており、従来の非デジタルな手段としての物理鍵を置き換えております。キャッシュレス社会が急速に立ち上がったように、新たな社会インフラとして、誰もが利用する鍵や扉を起点としたキーレス社会を新たに創出し、セキュリティや生産性・業務効率、利便性の向上に加え、ビジネスや生活にこれまでにない価値を提供することで、ハードウエア及びソフトウエア、そしてクラウド上のアクセス認証基盤「Akerun Access Intelligence」をトータルで提供する社会インフラの企業としてのポジションを確立、拡大していく方針であります。これにより、セキュリティや生産性・業務効率の向上だけに留まらない、IoTにより取得するビッグデータの利活用やアクセス認証基盤を通じた利便性や生産性・業務効率の向上等の新たな価値を提供することで、企業や個人ユーザー、ひいては社会に貢献し、企業価値の拡大と事業成長を実現できると考えております。また、このキーレス社会の創出を通じて、少子高齢化やそれに伴う生産年齢人口の減少、またビジネスにおける生産性の向上等の社会課題を背景とした、人手不足の解決や業務効率化に向けた企業等の取り組みを支援してまいります。
現在、当社グループはこのキーレス社会の実現に向けて、オフィス領域を中心に事業活動を行っております。そして、美和ロックとの合弁会社であるMIWA Akerun Technologiesを通じて、住宅領域における事業拡大に積極的に取り組んでおります。
前述の通り、当社グループでは社会インフラとしてのキーレス社会を実現するためのハードウエアインフラ及び認証基盤を有しており、今後はオフィス領域で培った実績をベースに、住宅領域にもインフラとなるハードウエア機器及びソフトウエアを広く提案し、導入を拡大することで、リカーリングビジネスによる売上の拡大を目指しております。
また、当社グループの推進するキーレス社会は、あらゆる場所に存在する扉における認証を起点としているため汎用性が高いと考えており、今後はオフィス領域や住宅領域に加えて、医療機関や行政施設等の非商業施設、そしてホテル等の宿泊施設やレジャー施設等の商業施設、さらには自動車や交通機関等、扉の存在するあらゆる場所へとその対象を拡大していく計画であります。さらに、扉を起点に展開されるインフラを拡大していくことで、その認証を担うアクセス認証基盤「Akerun Access Intelligence」のプラットフォームとしての価値も同時に向上すると考えております。この認証プラットフォームとしての価値の向上により、将来的には当社グループだけでなく外部のサービス提供事業者も共通認証プラットフォームとして利用できるサービス提供モデルを目指しております。
これらの取り組みによって、サブスクリプションモデルによるARRの増加を目指しております。
当社グループのさらなる事業成長のための源泉は、アクセス認証基盤「Akerun Access Intelligence」であります。この認証基盤を中核とした既存のAkerun事業の拡大を通じて、認証のためのエッジ端末の導入の増加、ユーザー数のさらなる増加、1ユーザーあたりの利用可能・開閉可能な扉の増加により事業拡大を図る考えであります。さらに、Flywheel効果(注)として、このAkerun事業の拡大をベースにユーザー体験の向上や新規事業を含めた周辺領域へのサービス展開等のシナジーにより、ユーザーへの提供価値を継続的に向上させることで、成長及び社会課題の解決のための好循環モデルを推進していく考えであります。
前述の通り、現契約社数5,400社超という相当数のユーザーを擁するアクセス認証基盤は、すでに社会インフラ、ひいてはキーレス社会の実現に向けたインフラとして一定レベルの規模を有していると考えており、今後もAkerun事業及び新規事業を通じてさらにこの規模を拡大し、事業成長を果たしていくとともに、ビジネスの世界だけにとどまらない社会課題の解決に向けた取り組みを推進する考えであります。
(注) Flywheel効果とは、機械設備の用語として回転エネルギーを効率的に蓄え、持続的に回転が維持されるように設計された機械装置のことを指す「Flywheel」が転じて、企業における効率的かつ持続的な事業成長をもたらす仕組みやビジネスモデルのことであります。
当社グループの事業が対象とする市場は、セキュリティ関連市場及び個人認証・アクセス管理型セキュリティソリューション市場であります。当社グループは、当社が主要ターゲットとしている従業員10名以上のオフィス領域における市場規模を4,100億円(注1)と推計しております。また、これに住宅領域における市場を加えた市場規模を7,600億円(注2)、さらに従業員数を問わないすべての企業と住宅領域における市場を加えたTAM(注3)を1兆2,000億円(注4)と推計しております。これらは巨大な市場規模を有しておりますが、オフィス領域及び住宅領域における事業を両輪に、物理的な扉や錠前のセキュリティ及び認証のプラットフォーム化による社会インフラとしての地位拡大により、さらなる顧客基盤の拡大と事業成長を図る考えであります。
さらに、前述の通り、当社グループのAkerun事業におけるオフィス領域、住宅領域それぞれの特徴やサービスの強みに加え、アクセス認証基盤「Akerun Access Intelligence」によりもたらされるFlywheel効果により、これらの市場からの需要に応えていく考えであります。そして、今後はセキュリティや認証だけにとどまらず、プラットフォーム上に蓄積されたビッグデータを活用したユーザー体験の向上や新規事業を含めた周辺領域へのサービス展開等のシナジーによる提供価値の向上を図ることで、キーレス社会の実現と当社グループの提供するサービスのプラットフォーム化による顧客需要の獲得と顧客基盤の拡大、そして事業成長を加速していく考えであります。
(注) 1.10名以上の小売・飲食を除く事業所向け(約170万事務所)に加え、医療・教育・スポーツ施設等での商用利用向け(約17万事務所)。(出所:平成28年経済センサス‐活動調査の調査結果をもとに当社作成、事務所・商用利用・福祉施設向けは月額課金18,000円で試算)
2.上記(注1)に加え、福祉施設等での利用向け(約7万戸)と住宅向け(約5,500万戸)を加算。(出所:平成28年経済センサス‐活動調査の調査結果をもとに当社作成、事務所・商用利用・福祉施設向けは月額課金18,000円で試算。住宅向けは月額課金500円で試算)
3.TAMとは、Total Addressable Marketの略で、特定のサービスや製品によりアプローチ可能な最大の市場規模を示すものであります。
4.上記(注2)に加え、10名以下の小売・飲食を除く事業所向け(約210万事務所)を加算。(出所:平成28年経済センサス‐活動調査の調査結果をもとに当社作成、事務所・商用利用・福祉施設向けは月額課金18,000円で試算。住宅向けは月額課金500円で試算)
直近の数年における当社グループを含むSaaS企業やグロース企業を取り巻く市場環境は大きく変化しており、株式市場、競合環境、部品等の調達、マクロ経済環境等、今後も引き続き不確実要素が残ると当社では分析しております。この状況を受け、当社グループでは様々な変化に対応するために組織としてのレジリエンシーを高めることを目的に、早期黒字化に向けた継続的な事業成長に加え、収益性の強化や生産性の向上を目指し、2022年度を開始年度とした中期経営計画を策定しております。この中期経営計画では、Akerun導入台数の拡大と住宅領域への積極的な投資と事業成長を主軸とした事業の拡大を目指しております。具体的には、Akerun導入台数の拡大にあたり、導入社数/シェア国内No.1の実績を有する法人向けスマートロックを活用したオフィス利用、オフィス向けで培った実績や堅牢性、信頼性を基盤として住宅向けにも拡大・普及を目指す住宅利用、そしてオフィスや住宅だけにとどまらない、より広範な領域での導入拡大を目指す商用利用という3つの柱により、導入台数の増加を図ってまいります。その中でも、住宅利用においては、住宅領域の研究開発への積極的な投資に加え、事業成長も見据えた積極的な営業活動を推進し、サービスや製品の拡充を通じた需要の取り込みとさらなる事業拡大を目指しております。そして、商用利用においては、喫緊の社会課題となっている少子高齢化等に起因した人手不足への対策や業務効率・施設運営効率の向上を目的として普及が進む、商業施設や小売店舗等の無人化・省人化の潮流をインフラとして支えるAkerunの役割が拡大していることから、業種や業態を問わない商用利用におけるAkerunのユースケースの創出と拡充、そして提案機会の増加に伴う売上拡大を推進してまいります。
これらの取り組みの結果、売上成長の達成と同時に、投資効率の最適化に伴う収益性や生産性の向上を実現しており、中期経営計画の目標の1つであった2023年中の連結営業利益の単月での黒字化を同年12月に達成しております。引き続き当社グループでは、2024年12月期の連結営業利益と連結フリーキャッシュフローの通期黒字化の達成を目指し、事業成長と高い収益性を両立する経営体制の拡充に取り組んでおります。
当社グループの優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下の通りであります。
当社グループの事業の基盤となるAkerun事業のサービス導入顧客の新規獲得及びユーザー数の増加が経営方針における最重要課題であると考えております。中核事業であるAkerun事業の各サービスは、既存の扉に後付け可能という特徴から、国内の企業や住宅における導入余地は非常に大きいものと考えております。
今後も営業体制の強化や生産性の向上、販売チャネルの新規開拓と拡大、そして技術開発や外部サービスとの連携拡大を通じたサービス自体の価値のさらなる向上等を通じて新規導入や追加導入を促進することで、それに伴う新規顧客及びユーザー数の拡大を図ってまいります。
技術開発は当社グループの市場競争力の強化と持続的成長に欠かせないものであると認識しております。引き続き優秀な技術者の採用・育成を推進するとともに、研究開発への投資を通じた技術力の強化・拡充により、IoTや認証、クラウド等に関する先端技術を取り入れるなど、ハードウエア、組込み、アプリケーション、Web等の各開発分野のさらなる技術力及び開発力の強化に取り組む計画であります。
当社グループは、中長期的な利益及びキャッシュ・フローの創出を目指しておりますが、事業拡大のための先行投資を積極的に進めるなか、第10期連結会計年度(自 2023年1月1日 至 2023年12月31日)は営業損失を計上しております。
当社グループの収益の中心であるHESaaSビジネスは、サブスクリプションモデルで顧客にサービスを提供し、継続して利用されることで収益が積み上がるストック型の収益モデルである一方で、顧客獲得費用や開発費用が先行して計上される特徴があり、短期的には赤字が先行することが一般的であります。しかしながら、直近の株式市場を取り巻く環境や競合環境、及びマクロ経済環境等を鑑み、当社グループでは当初中期目標で掲げていた黒字化の計画を前倒しし、2024年度の連結営業利益と連結フリーキャッシュフローの通期黒字化を目指して取り組んでおります。
当社グループでは、事業の拡大によりストック収益を順調に積み上げるとともに、事業の収益性をより一層高めることで、今後も当社グループの提供するサービスを通じて、連結営業利益の早期黒字化と中長期的な利益及びキャッシュ・フローの最大化に努めてまいります。
さらなる事業成長に向けて、中核事業であるAkerun事業における各サービスのより一層の導入促進とそれに伴うサービス導入顧客及びユーザー数の増加が、当社グループの市場競争力の強化に必要であると考えております。この課題に対して、営業体制の強化や生産性の向上に加え、より広範な営業網を構築するための販売パートナーの新規開拓や関係性強化を通じて潜在ユーザーへの提案機会の増加を図る専任営業チーム、大規模企業向けの専任営業チームの育成・強化を積極的に進めてまいります。
当社グループが提供するサービスのさらなる導入促進とユーザー基盤の拡大、そして既存顧客の満足度の向上のために、従来から提供する入退室管理や勤怠管理にとどまらない、提供価値のさらなる向上と新規サービスの提供が必要であると認識しております。
当社グループでは、開発体制の強化・拡充を通じた新規サービスの開発に加え、外部のパートナー企業との技術連携によるサービス拡充を積極的に進めることで、扉を起点としたユーザーへのさらなる提供価値の向上を図ってまいります。また、合弁会社を通じたAkerun事業の住宅領域への進出並びに同領域における事業拡大に加え、さらなる新規事業の開発を検討・推進してまいります。
当社グループのさらなる事業成長と収益性の強化に向けて、住宅領域におけるスマートロック及びその関連システムの普及と事業拡大に取り組む子会社の株式会社MIWA Akerun Technologiesにおける、主に不動産管理会社等のサービス導入顧客の新規獲得及び営業利益の黒字化が必要であると認識しております。
当社グループでは、住宅領域におけるIoT及びクラウド等のテクノロジーを活用した居住者の利便性の向上に加え、特に集合住宅等における不動産管理会社や不動産オーナー等の管理性の向上を目的とした旺盛な需要を取り込むとともに、共同出資会社である美和ロック株式会社の市場における信頼性や実績、販売網等も活用しながら、住宅領域におけるさらなる新規顧客の獲得と事業成長に取り組んでまいります。
当社グループの提供するサービスでは、認証に用いる個人情報等の機密情報を取り扱っております。この情報資産を保護するため、当社グループでは情報セキュリティ基本方針を策定し、最高情報セキュリティ責任者(Chief Information Security Officer、CISO)を含む専任のセキュリティ担当者を設置しております。さらに、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)に関する国際規格「JIS Q 27001:2014(ISO/IEC 27001:2013)」の認証を本社及び大阪オフィス、福岡オフィス、札幌オフィス、物流拠点の各拠点で取得しております。また、技術開発にあたっては社内に専任の品質保証エンジニアを配置し、さらに外部のセキュリティ診断等も実施することで、システムとしての安全性と堅牢性の向上を図っております。これらの取り組みにより、全社的な情報管理体制を強化するとともに、従業員への継続的な情報セキュリティ教育を実施することで、情報セキュリティ体制を強化してまいります。
当社グループは鍵や認証というセキュリティに関する事業を行う企業として、ユーザーや市場からの信頼が必要不可欠であると考えております。情報管理、財務、IT、その他の社内制度等を含めた内部統制の継続的な策定、強化、改善を実施することで信頼を獲得し、企業価値のさらなる向上に取り組んでまいります。
当社グループの将来にわたる持続的成長に向けて、優秀な人材の採用及び育成と定着が欠かせないものと認識しております。特に、サービスの開発や継続的な改善によるサービス価値の強化を担うエンジニアと、さらなるサービス導入促進のための営業人員の採用及び育成と定着が不可欠であると考えております。当社グループでは、優秀な人材の育成と定着に向けて積極的な人材の採用活動を実施するとともに、人材の育成と定着のための社内トレーニング体制の強化や企業文化の醸成等の施策を推進してまいります。
当社グループは、中長期的に安定した売上収益を拡大させることが重要であると考えております。そのため、当社グループは達成状況を判断するための経営上の指標としてARRを採用しております。また、2022年12月期を開始年度とした中期経営計画を策定するとともに、ARR、Churn Rate等の目標を設定し、この目標の達成に向けた成長を加速させることに注力する所存であります。
2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次の通りであります。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「つながるモノづくりで感動体験を未来に組み込む」という企業ミッションのもと、オフィスや施設における業務効率の向上や無人化・省人化を可能にする「キーレス社会」の実現を目指しております。そして、社会生活の様々なシーンにメリットをもたらすキーレス社会を実現することで、少子高齢化に伴う労働力人口の減少や空き家を含む不動産アセットの効率的な活用等の様々な社会課題の解決を支援すると同時に、当社グループの持続的な成長を目指しております。
当社グループでは、社会を構成する責任ある一企業として、現在、そして将来にわたって持続可能な社会の維持・発展が必要不可欠であるとの考えのもと、この企業ミッションの推進及びキーレス社会の実現が持続可能な社会の維持・発展に資するものであると考えると同時に、サステナビリティを重要な経営課題と認識し、事業活動を推進してまいります。
当社グループでは、サステナビリティに関する方針及び重要事項について、週1回開催されている経営会議及び不定期に開催される役職者の出席による会議等において協議のうえ決定しており、継続的な進捗管理やモニタリングを行っております。また、特に重要な事項については、必要に応じ取締役会にて課題管理・進捗報告を行うこととしています。経営会議及び取締役会の詳細は、
当社グループでは、新たな社会インフラとして、誰もが利用する鍵や扉を起点としたキーレス社会を新たに創出し、セキュリティや生産性・業務効率、利便性の向上に加え、ビジネスや生活にこれまでにない価値を提供することで、ハードウェア及びソフトウエア、そしてクラウド上のアクセス認証基盤「Akerun Access Intelligence」をトータルで提供する社会インフラの企業としてのポジションを確立、拡大していく方針であります。これにより、セキュリティや生産性・業務効率の向上だけに留まらない、IoTにより取得するビッグデータの利活用やアクセス認証基盤を通じた利便性や生産性・業務効率の向上などの新たな価値を提供することで、企業や個人ユーザー、ひいては社会に貢献し、同時に企業価値の拡大と事業成長を実現できると考えております。
具体的には、このキーレス社会の普及・確立により、少子高齢化やそれに伴う生産年齢人口の減少、ビジネスにおける生産性の向上、そして空き家を含む不動産アセットの有効活用等の社会課題を背景とした、人手不足の解決や業務効率化、不動産アセットを含む空間活用の推進等に向けた企業等の取組を支援してまいります。
当社グループの持続的成長の実現及びキーレス社会を通じた社会課題の解決に向けては、それらを推進する多様な人材の確保と育成及び社内環境の整備が不可欠であると認識しております。
当社グループの中核事業であるAkerun事業は、従来の一般的な事業モデルとは異なり、ハードウェアとソフトウエアを組み合わせたサブスクリプションモデルであるHESaaSという新たな事業モデルを特徴としており、営業、開発、カスタマーサクセス、経営管理等の主要部門において、年齢、性別、国籍等はもとより業界や業種を問わず様々な経験・技能・属性を持った多様な人材が活躍できる事業モデルとなっております。実際に、当社グループの従業員は幅広い年齢層にわたり製造、情報通信、不動産、金融、ヘルスケア、エンターテイメント等の様々なバックグラウンドを備えた従業員が活躍しており、年齢、性別等を問わず多様性を尊重する職場環境及び文化を推進しております。特に、開発業務においては性別や国籍を問わない多様な人材が活躍するとともに、多様性を受容するための柔軟な勤務環境を整備しております。
そして、当社グループでは全従業員が安心して長く働くことができ、個々の能力を最大限に発揮できる職場環境を目指して、フレックス制度・裁量労働制等による柔軟な勤務制度、男女育児休暇取得の推進及び復職支援、能力に基づいた人事評価の実施など様々な人事施策を実施しております。また、従業員の継続的な成長やスキルアップを目的とした職階別研修の実施や、ジョブローテーションの推進を行っております。
これらの取組を通じて、全ての従業員が個性や能力を十分に発揮すると同時に、自律的な成長を促進するための組織体制や企業文化の醸成を引き続き推進してまいります。
当社グループは、ハードウェアの設計・製造を伴う事業モデルであるHESaaSを推進する企業として、製造過程及び物流における環境への配慮を意識した経営を推進しております。現在において、具体的な環境負荷に関する指標及び目標、またモニタリング対象等については検討段階ではありますが、製造過程におけるサステナビリティ推進に向けて、より環境負荷の少ない製造・生産を実践するパートナー等の選定・委託、効率的な物流網構築のための拠点計画の検討、オフィス環境における電力使用の効率化、そしてオフィス用品の効率的な活用とリサイクルの奨励等の施策を推進しております。
当社グループでは、
また、全社的なコンプライアンスの徹底とリスクへの対応を通じ社会的信用の向上を図ることを目的として「リスクマネジメント規程」を定めるとともに、近年その重要性が益々高まっている情報セキュリティ対策として本社及び各拠点で情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)に関する国際規格「JIS Q 27001:2014(ISO/IEC 27001:2013)」の認証を取得する等、全社的なリスク管理体制の強化を図っております。
当社グループでは、持続的成長の実現及び社会課題の解決に向けて、サステナビリティ推進の取り組みを積極的に行っておりますが、関連データの収集や経営状況に合わせて、具体的な指標及び目標について検討してまいります。
また、当社グループでは、「(2)戦略」において記載した、多様な人材の確保と育成、社内環境の整備、環境に配慮した事業運営等について、様々な取り組みを行っているものの、現在においては、具体的な指標及び目標を設定しておりません。今後、サステナビリティを推進するうえで当社グループが最も重要であると認識する人的資本に関する適切な指標及び目標についても検討してまいります。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を十分に認識したうえで、その発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に対する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討したうえで行われる必要があると考えております。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
当社グループはAkerun事業の単一セグメントであり、対象市場としてセキュリティ関連市場及び個人認証・アクセス管理型セキュリティソリューション市場を想定しております。デジタルトランスフォーメーションの拡大に伴い、クラウドサービスを通じた様々な場所やシーンへのアクセス管理や、多様な状況下におけるセキュリティ強化への更なる需要拡大により、同市場が今後も成長することを前提に、引き続き同市場を基盤とした事業を展開する計画であります。
しかしながら、今後の経済情勢や景気動向、社会環境の変化等により、同市場が成長しない場合や、顧客企業のセキュリティへの投資が抑制され、新規・追加受注が想定通り進まない場合又は解約率が想定を上回る場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループがサービス提供を行う市場は、競合他社が存在しており、今後の市場規模拡大に伴い新規参入が予測されます。
当社グループは、製品機能や提供サービスの拡充や品質の向上、高度なセキュリティと利便性の追求等により、競争力の維持に努めておりますが、競合企業や新規参入企業との競争激化により、当社グループが想定している事業展開が図られない場合等には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの提供するサービスや対象市場を取り巻く環境において、技術革新のスピードが早く、社会環境の変化に伴い顧客ニーズも早期に変化するなど、当社グループの優位性を維持するためには、技術革新をリード又は即座に対応する必要があります。当社グループでは、優秀なエンジニアその他人材の採用・育成による技術やノウハウの蓄積、最新の技術動向や環境変化に関する情報収集等に注力し、技術革新や顧客ニーズの変化に迅速に対応できるよう努めております。
しかしながら、何らかの要因により当社グループが技術革新への対応に遅れた場合や、対応できない技術革新が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの提供するサービスは、サブスクリプションモデルのHESaaSであり、先行的な広告宣伝費投資による知名度向上や営業体制強化を通じて顧客獲得を図っております。また、製品機能や提供サービスの拡充及び品質の向上が最重要であり、先行的な開発活動のためのエンジニア等の人件費や研究開発費を投下しております。このため、当社グループは創業当初より継続して赤字を計上しており、第10期連結会計年度(自 2023年1月1日 至 2023年12月31日)は営業損失を計上しております。一方で、直近の株式市場を取り巻く環境や競合環境、及びマクロ経済環境等を鑑み、当社グループでは当初中期目標で掲げていた黒字化の計画を前倒しし、2024年度の連結営業利益と連結フリーキャッシュフローの通期黒字化を目指して取り組んでおります。
しかしながら、当社グループは、今後も事業環境や競合他社の動向及び費用対効果を勘案しながら、経営判断として適宜先行的な投資を実施する場合があり、状況如何では一定期間において赤字を計上する可能性があります。事業環境の急激な変化等により、これらの先行投資が当社グループの想定する成果に繋がらなかった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの事業が成長していくためには、継続的な新規受注獲得及び顧客によるサービスの継続的な利用が重要であると考えております。これらを促進するために、製品機能や提供サービスの拡充及び品質の向上に加えて、潜在顧客及び新規受注獲得のための最適なマーケティング活動及び販売戦略の立案・遂行に注力しております。
しかしながら、需要に応じたサービスを提供できない場合や広告宣伝費投資による効果が十分に得られない場合、実行した販売戦略が十分な効果を伴わない場合には、新規受注獲得や顧客によるサービスの継続的な利用が減少する可能性があり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが顧客に提供しているアプリケーションは、クラウド型システムという特性上、インターネットを経由して利用されております。当社グループは、システムトラブルによるリスクを最小限に抑えるべく、クラウドプラットフォームとして信頼されているAmazon Web Services社が提供するクラウドプラットフォーム上にアプリケーションを構築しております。また、重要度の高いサーバーの冗長化やデータベースの定期的なバックアップ、サービス提供基盤の継続的な安定化対策等を行うことにより、システムの可用性の向上や復旧時間の短縮のための対策を講じております。
しかしながら、自然災害や事故、プログラム不良、外部からの不正アクセス等により、大規模なシステムトラブルが発生した場合には、第三者に生じた損害を賠償する責任を負うだけでなく、顧客からの信用失墜等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、クラウドサービスや顧客のネットワークに障害が発生した場合も、エッジ端末上でICカード等を認証する方式を採用しているため、ローカル環境のみで認証し、履歴を記録することが可能なシステムとなっております。また、導入サポートとして、トラブルに備えて補完的に物理鍵による運用も可能である旨の案内やトラブル発生時に緊急解錠するためのキースイッチオプションの提供等を行っております。
当社グループは、製造工場を持たず、すべての製品の製造を外部に委託しております。製造委託先に対しては、密なコミュニケーションの実施により、関係強化や過度な負担の軽減に努めるとともに、リスクヘッジのために代替先の選定にも努めております。
しかしながら、製造委託先との関係悪化による取引停止や、被災、事故又は廃業等による生産体制の崩壊等が生じ、代替先の確保が困難な状況となった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、基盤部品等の選定にあたって、可能な限り広く流通し取扱代理店の多いものを採用しており、複数の代理店から購入することにより安定調達を図り、生産に必要な原材料が十分に確保されるよう努めております。また、供給リスクの高い基板部品等の見極めと先行調達、必要に応じた設計変更による部品点数の最適化等を実施しております。
しかしながら、一部の特殊な基盤部品等については調達リードタイムが長く、流通が限定されるものを採用する場合があり、サプライヤーの被災、事故及び廃業等による原材料の供給中断、需要の急増による供給不足が発生した場合には、生産計画通りの製造が困難となり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、単一セグメントであるAkerun事業のサブスクリプション収益が当社収益の約80~90%を占めております。
当社グループでは、顧客ニーズに合ったサービスを提供するための継続的な改良に加えて、業績の拡大及び安定化を図るために、子会社を通じた住宅領域でのサービス提供を含む新規事業の開発に取り組んでおりますが、市場の変化や顧客ニーズの変化等により当社グループのサービスが競争力を失った場合や、競合他社による魅力的なサービスの出現等により顧客が減少した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、製品の品質や安全に関する法令及び規則の遵守に努めるとともに、社内の品質保証担当による十分な検証や、外部の品質保証機関による客観的な検証を行っております。
しかしながら、万が一大規模な製品の欠陥等が発生した場合、アフターサービス費用又はリコール費用が生じ、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、既存事業の継続的な成長及び規模拡大や、子会社を通じた住宅領域でのサービス提供を含む新規事業への展開に伴い、当社グループの理念に共感する優秀な人材の確保及び育成、定着が不可欠であると認識しております。
しかしながら、人材採用及び育成、定着が計画通りに実現できなかった場合や優秀な人材の流出が進行した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、企業価値を継続的かつ安定的に高めていくためには、コーポレート・ガバナンスが有効に機能するとともに、適切な内部管理体制を整備することが必要不可欠であると認識しております。そのため、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保のための内部統制システムの適切な整備・運用、また法令・定款・社内規程等の遵守を徹底しております。
しかしながら、事業の急速な拡大等により、十分な内部管理体制の整備が追いつかない状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社の代表取締役社長である河瀬航大は、当社の創業者であり、創業以来当社グループの経営方針や事業戦略の立案及び遂行において重要な役割を果たしております。当社グループでは、特定の人物に依存しない体制を構築すべく、権限委譲や組織体制の強化を図り、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めております。
しかしながら、何らかの理由により同氏が当社グループの経営執行を継続することが困難になった場合には、現状では当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、「Akerun入退室管理システム」の利用による各種ログや入退室記録、顧客へのサービス提供のため取得する役職者の情報や認証に用いる個人情報を保有しております。個人情報の取扱いについては、外部漏えいや不正利用等の防止のため、「情報セキュリティ基本方針」を定め、この方針に従って情報資産を適切に管理するとともに、「個人情報保護管理規程」を策定し、その遵守を徹底しております。また、当社は本社及び各拠点で情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)に関する国際規格「JIS Q 27001:2014(ISO/IEC 27001:2013)」の認証を取得し、さらに最高情報セキュリティ責任者(Chief Information Security Officer、CISO)を含む専任のセキュリティ担当者を設置することで、全社的な個人情報の保護に積極的に取り組んでおります。
しかしながら、悪意あるハッキングやコンピューターウィルス等により、万が一当社グループが保有する個人情報が外部に漏えいした場合又は不正使用された場合には、第三者に生じた損害を賠償する責任を負うだけでなく、顧客からの信用失墜等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、運営する事業に関する技術・商標等の知的財産権の保護を図っております。また、当社グループの提供するサービスが第三者の知的財産権を侵害しないよう留意しており、必要に応じて顧問弁護士や弁理士等の専門家への事前調査依頼による十分な検証を行っております。
しかしながら、当社グループが保有する知的財産権について、第三者により侵害される可能性があります。また、万が一、当社グループが第三者の知的財産権を侵害した場合には、当社に対する訴訟等が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの提供するサービスでは、「個人情報保護法」、「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」等の法規制の対象となっております。当社グループは、これらの法規制を遵守した運営を行ってきており、今後も社内教育等を通じて適切な事業体制の構築等を行っていく予定であります。
しかしながら、今後新たな法令の制定や、既存法令の強化等が行われ、当社グループが運営する事業が規制の対象になるなど制約を受ける場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループにおいて、現在、事業に重大な影響を及ぼす訴訟等は存在しません。
しかしながら、関連法規や各種契約等に違反し、第三者に損害が発生した場合には訴訟を提起される可能性があります。このような場合には、訴訟の内容及び結果によっては、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、役員及び従業員等に対するインセンティブを目的として新株予約権を付与しております。これらの新株予約権が権利行使された場合、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。なお、当連結会計年度末時点でこれらの新株予約権による潜在株式数は567,800株であり、発行済株式総数15,551,500株の3.7%に相当しております。
当社は、株主に対する利益還元を経営上の重要課題の一つとして位置づけておりますが、創業して間もない頃から、持続的成長と事業拡大に向けた積極的な投資に充当していくことが株主に対する最大の利益還元につながると考え、創業以来配当は実施しておりません。
今後の配当方針については、内部留保の充実状況及び企業を取り巻く事業環境を勘案した上で、株主に対して利益還元策を実施していく方針ではありますが、現時点において配当実施の可能性及びその時期等については未定であります。
当社は、事業拡大のための積極的な人材への投資、広告宣伝等を行ってきたことから、当連結会計年度末において税務上の繰越欠損金が存在しております。今後、利益計上が継続した場合には、繰越欠損金が解消されることにより、法人税、住民税及び事業税の金額が増加することとなり、当期純損益及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
当社グループは、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、減損の要否を検討しております。将来の事業計画や市場環境の変化により、減損の兆候が認められ、減損損失を計上する場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。
(資産)
当連結会計年度末における総資産は3,596,522千円となり、前連結会計年度末に比べ124,545千円増加しました。これは主に、賃貸用資産が243,272千円、賃貸用資産仮勘定が70,099千円、ソフトウエアが275,093千円それぞれ増加した一方で、現金及び預金が278,882千円、ソフトウエア仮勘定が170,200千円それぞれ減少したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債は1,467,384千円となり、前連結会計年度末に比べ196,220千円増加しました。これは主に、契約負債が152,758千円、その他に含まれる未払消費税等が109,684千円それぞれ増加した一方で、長期借入金(1年内返済予定のものを含む)が76,440千円減少したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は2,129,137千円となり、前連結会計年度末に比べ71,675千円減少しました。これは主に、非支配株主持分が81,152千円増加した一方で、親会社株主に帰属する当期純損失175,072千円を計上したことによるものであります。
当社グループは、「つながるモノづくりで感動体験を未来に組み込む」を企業ミッションに掲げ、世の中の物理鍵とそれに伴う様々な制約から人々を解放し、扉で分断されたあらゆる場所や空間に人々が自由にアクセスできる「キーレス社会®」の実現を目指しております。そして、キーレス社会の実現を通じて様々なシーンにおける省人化や無人化を促進し、少子高齢化による労働力人口の減少等の将来にわたる社会課題の解決に向けて取り組んでおります。具体的には、スマートロック等のIoT機器及びクラウド型認証プラットフォームを活用したサービスを開発し、サブスクリプションモデルにより提供しております。
当連結会計年度における当社グループを取り巻く事業環境は、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行により日常生活やビジネスにおける様々な制約が緩和されたことに加え、特にビジネスの領域では出社を前提とした働き方への回帰を背景に、改めてオフィスや施設の役割や価値が見直され、イノベーションの創出やコミュニケーションの活性化に向けた取り組みが加速しております。また、当初は新型コロナウイルス感染症対策として注目され、最近では施設運営におけるコストの低減及び効率化を目的に、会員制施設等を中心としたデジタル化による無人化/省人化が定着してきております。さらに、当連結会計年度における顕著な外部環境として、SNS等を悪用した組織的な侵入強盗事件の継続的な発生を受けた防犯意識の高まりや体感治安の悪化によるセキュリティ需要が喚起された1年となりました。一方、マクロ経済環境では、外国為替相場における円安が進行したことで、当社グループにおいても製品の開発や生産のための部材原価や物流のコストが上昇するなど、製造業を取り巻く事業環境として引き続き厳しい状況が続いております。
このような事業環境のもと、主力サービスである「Akerun入退室管理システム」による入退室を起点としたオフィス環境や施設運営のDXを通じた、セキュリティの強化、物理鍵のデジタル化やクラウド型入退室管理による利便性や管理性の向上、そして勤怠管理や予約管理等の外部サービスとの連携を含む入退室データの利活用等の価値提供により、新規及び追加での導入が引き続き促進されました。特に、「Akerun入退室管理システム」の主要顧客である中小規模企業への導入が堅調に進捗したことに加え、引き続き大規模企業や大型ビルでの導入も加速しております。さらに、フィットネスジムやコワーキングスペース等の会員制施設や小売店舗等における無人・省人の店舗運営への旺盛なニーズ等を受けて、オフィス利用から商業利用まで様々な業種や用途における継続的な問い合わせや導入も促進されました。
当連結会計年度における当社グループの事業活動の主な進捗としては、中期経営計画として掲げる2023年度中の連結営業利益の単月での黒字化、及び2024年度の連結営業利益と連結フリーキャッシュフローの通期黒字化の達成に向けて、収益性や生産性の強化を通じた組織の強靱化、販管費等への投資効率の最適化、そして人材等の厳選された経営資源による継続的な事業成長を達成しております。
特に、「Akerun入退室管理システム」では、効率的な営業活動やマーケティング活動を通じて、セキュリティや厳格な入退室管理への堅調なニーズに応えることで全国規模での導入が促進され、現契約社数は5,400社を突破するとともに継続的なARPUの向上とChurn Rateの改善も実現しております。
また、サービスがもたらす価値の継続的な拡大に向けて、「タイムカード機能」や「ネットワーク未接続検知機能」等の新機能の提供を新たに開始したことに加え、ソフトバンク株式会社、JBアドバンスト・テクノロジー株式会社、凸版印刷株式会社(現TOPPAN株式会社)等のそれぞれ業界をリードするパートナー企業の提供するビル管理/認証等のサービスとのAPI連携も加速しました。さらに、新規事業として住宅領域におけるスマートロックの普及を担う株式会社MIWA Akerun Technologiesでは、賃貸物件の管理工数の大幅な削減と安全・安心かつスマートな居住体験を実現する「Akerun.Mキーレス賃貸システム」の営業活動が本格化するとともに不動産管理会社を中心とした新規契約の獲得も順調に推移しております。
これらの事業活動の進展や取り組みの結果、当社グループの当連結会計年度の売上高は2,493,490千円(前年同期比25.0%増)、営業損失は221,419千円(前年同期は営業損失609,129千円)、経常損失は222,177千円(前年同期は経常損失600,073千円)、親会社株主に帰属する当期純損失は175,072千円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失578,171千円)となりました。
なお、当社グループは、Akerun事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ278,882千円減少し、当連結会計年度末には1,574,922千円となりました。
当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金は、219,030千円(前連結会計年度は426,205千円の使用)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失235,049千円、減価償却費183,420千円、売上債権の増加額69,815千円、契約負債の増加額152,758千円、未払費用の増加額56,057千円、その他に含まれる未払消費税等の増加額109,684千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は、582,318千円(前連結会計年度は946,774千円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出355,898千円及び無形固定資産の取得による支出187,800千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により得られた資金は、84,405千円(前連結会計年度は273,556千円の使用)となりました。これは主に、長期借入れによる収入50,000千円、長期借入金の返済による支出126,440千円、株式の発行による収入15,409千円、非支配株主からの払込による収入147,000千円によるものであります。
当社グループが営む事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
当社グループが営む事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
当連結会計年度の販売実績は次の通りであります。なお、当社グループは、Akerun事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するに当たって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表作成に当たり採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項」に記載しております。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下の通りであります。
(固定資産の減損損失の認識の要否)
「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当連結会計年度の財政状態の分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」に記載の通りであります。
(売上高、売上原価、売上総利益)
売上高は、主に新規顧客獲得及び既存顧客からの追加受注獲得等により2,493,490千円(前年同期比25.0%増)となりました。なお、当連結会計年度末時点での契約負債は、691,258千円となっております。
売上原価は、Akerun入退室管理システムの稼働台数増加等により463,037千円(前年同期比82.4%増)となりました。
この結果、当連結会計年度の売上総利益は2,030,452千円(前年同期比16.7%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業損失)
販売費及び一般管理費は2,251,871千円(前年同期比4.2%減)となりました。これは主に、採用活動費の減少によるものであります。
この結果、当連結会計年度の営業損失は221,419千円(前年同期は営業損失609,129千円)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常損失)
営業外損益については、営業外収益は9,551千円(前年同期比63.7%減)、営業外費用は10,309千円(前年同期比40.3%減)となりました。営業外収益は主に、助成金収入1,453千円及び違約金収入5,045千円によるものであります。営業外費用は主に、支払利息4,546千円、譲渡制限付株式報酬償却損4,394千円及び消費税等差額523千円によるものであります。
この結果、当連結会計年度の経常損失は222,177千円(前年同期は経常損失600,073千円)となりました。
(特別利益、特別損失、税金等調整前当期純損失)
特別利益は発生しておりません。特別損失は12,872千円(前年同期比27.7%増)となりました。これは、固定資産除却損12,872千円によるものであります。
この結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純損失は235,049千円(前年同期は税金等調整前当期純損失610,154千円)となりました。
(法人税等、親会社株主に帰属する当期純損失)
法人税等は5,870千円(前年同期比9.7%減)となりました。
以上より、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失は175,072千円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失578,171千円)となりました。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。
当社グループにおける主な資金需要は、継続的な受注獲得及び顧客による継続的なサービスの利用のための人件費や、知名度向上及び潜在顧客獲得のための広告宣伝費、製品機能や提供サービスの拡充及び品質の向上のためのエンジニア等の人件費や研究開発費であります。これらの資金需要に対しては、自己資金及び金融機関からの借入を基本としております。
経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」をご参照ください。
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通り、当社グループは、中長期的に安定した売上収益を拡大させることが重要であると考えております。そのため、当社グループは達成状況を判断するための経営上の指標としてARRを重視しております。
当該指標について、第8期連結会計年度末(2021年12月31日)は1,650百万円、第9期連結会計年度末(2022年12月31日)は2,028百万円、第10期事業年度末(2023年12月31日)は2,392百万円、となっております。
今後も、サービスの機能強化や適用領域の拡大、そしてプラットフォームとしてのさらなる価値提供を通じて、新規受注の獲得、アップセル及びクロスセル、解約率の抑制により、ARRを増加させてまいります。
当社グループは、自社において研究開発活動を行っております。なお、当社グループの事業は、Akerun事業の単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載を行っておりません。
当連結会計年度における研究開発活動は、既存サービスの機能強化や連携サービス拡大による拡張性の強化を通じた付加価値向上に加え、新サービスの開発による新たな価値創造を目指して取り組んでおり、研究開発費の総額は