第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の基本的な経営方針

当社グループは、以下の企業理念に基づき、持続的な成長及び企業価値の向上に取り組んでおります。

<企業理念>

オープンハウスグループは、「お客さまが求める住まい」を愚直に追求し続けます

オープンハウスグループは、やる気のある人を広く受け入れ、結果に報いる組織を作ります

オープンハウスグループは、業績をあげ規模を拡大し、社会に必要とされる不動産会社となります

 

(2) 経営環境

わが国経済の先行きにつきましては、雇用、所得環境が改善するなか、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待されております。ただし、更なる円安の進行及び地政学リスクによるエネルギー価格の高騰を背景とする国内物価の上昇に加え、世界的な金融引き締めによる景気の下押しリスクには注意が必要であります。

当社グループの属する不動産業界につきましては、緩やかな景気回復のもとで、政府による金融緩和政策が継続されるなか、収益不動産等の投資用不動産に対する高い需要が見込まれております。また、利便性の高い都心部において、手頃な価格の住宅に対するニーズは、高水準で推移することが想定されております。一方で、建設資材の価格が上昇していることに加えて、戸建住宅における市中在庫が滞留している状況を踏まえ、分譲住宅の着工数は当面弱含みで推移していくことが予想されるなど、今後の見通しにつきましては不透明な状況が続いております。

このような事業環境のもと、当社グループにつきましては、戸建及びマンションによって構成される実需不動産並びに収益不動産及びアメリカ不動産によって構成される投資不動産によるポートフォリオ経営により、事業の拡大を図ってまいります。

 

(3) 中期的な経営方針及び対処すべき課題

① 3カ年の基本方針

当社グループは、2023年11月に3カ年の基本方針(2024年9月期~2026年9月期)を発表いたしました。今後の見通しにつきましては不透明な状況が続くことが想定されることから、3カ年における一定の利益前提を設定し、そのもとでの財務方針、投資方針、株主還元方針を策定したものであります。

利益前提につきましては、3ヵ年累計の当期純利益を2,500億円と設定いたしました。2024年9月期の業績予想において当期純利益は925億円を掲げております。株式会社三栄建築設計(以下「三栄建築設計」という)の買収(詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(重要な後発事象)(株式会社三栄建築設計の連結子会社化)に記載のとおりであります。)に伴う一時的な負ののれん発生益を除いた事業に起因する当期純利益である800億円が、2026年まで継続すると想定し、累計2,500億円と設定したものであります。そのため、三栄建築設計以降に今後実施するM&Aに伴う当期純利益の増加分は含んでおりません。

始めに、財務方針につきましては、重視する指標として、自己資本比率をこれまでの30%以上から35%以上に引き上げます。ネットD/Eレシオは1.0倍以下を継続いたします。ROEは、2024年9月期は20%以上、2025年9月期以降は15%以上を想定しております。いずれも、不透明な経済環境の中で、より安全性の高い財務体質を維持するとともに、引き続き資本効率は重視しつつ、M&A等の成長投資にも機動的に対応できる資金調達力を保持することを目的としております。

次に、成長投資方針につきましては、3ヵ年で5,000億円の成長投資を想定しております。内訳としましては、国内、海外を合わせたM&Aに3,500億円(2023年11月の三栄建築設計の完全子会社化に伴う投資額約1,000億円を含んでおります。)、棚卸資産の増加並びに米国開発事業、DX、サステナビリティ等の既存事業への投資に1,500億円となります。

最後に、株主還元方針につきましては、3ヵ年で1,000億円を想定しております。内訳につきましては、配当金に600億円及び自己株式の取得に400億円(2023年11月14日発表の自己株式の取得(取得し得る株式の総数2,200千株、取得する株式の総額100億円、取得期間2023年11月15日から2024年4月30日)を含んでおります。)となります。引き続き、配当性向20%以上の安定的な配当及び機動的な自己株式の取得を実施してまいります。

以上の通り、財務の健全性維持、成長投資及び株主還元の3点について経営資源の適切な配分を重視した企業運営を行ってまいります。

 

② 2024年9月期の課題

イ.三栄建築設計の経営の正常化

 当社グループは、三栄建築設計を当社の完全子会社とすることにより、役員体制等の経営体制の整備に取り組み、同社の信用力の回復ひいては経営の正常化を推進してまいります。また、三栄建築設計の物件供給力と当社グループの販売力を活用した戸建事業全体の底上げ等を通じて、当社グループ及び三栄建築設計のシナジー効果を実現し、両者の企業価値の向上に取り組んでまいります。

 

ロ.重要課題(マテリアリティ)

  当社グループは、3ヵ年の基本方針の策定にあたり、新たにマテリアリティを設定いたしました。

<重要課題(マテリアリティ)>

(ⅰ) ガバナンス、コンプライアンスの改革

(ⅱ) 顧客満足の向上

(ⅲ) 人材採用の強化

(ⅳ) サステナビリティの推進(サステナブルな社会および企業の成長)

  (イ) 人的資本の価値最大化

  (ロ) 健康および安全な暮らしの実現

  (ハ) 脱炭素への貢献

 

なお、その他の事業推進にかかる対処すべき課題につきましては、以下の通りであります。

 

③ 戸建関連事業を中心とする継続的な成長
イ.戸建を主軸とする既存事業の成長

当社グループは、戸建関連事業を主力事業と位置付けており、土地の仕入れから、設計・施工、販売までの業務をグループ内で行う製販一体体制を特徴としています。同事業においては、好立地の用地を適正価格で仕入れる仕入力、良質な住宅を低コストで建設し、マーケットインの発想でお客様のニーズにあった商品をリーズナブルな価格で提供する商品力、現住居の徒歩圏内で購入されるお客様の比率が高いという特性に合致した多店舗展開に支えられた営業力の全てが当社グループ独自の経営資源として重要であります。今後も、仕入力、商品力、営業力を更に強化し、戸建を主軸とする既存事業の成長を図ってまいります。

 

ロ.戸建関連事業の関西圏への進出

当社グループの戸建関連事業を今後も拡大させるためには、新築一戸建住宅の販売拠点となる営業センターの出店を継続することが重要であります。これまで、東京都23区、神奈川県川崎市及び横浜市から周辺エリアに加え、愛知県名古屋市並びに福岡県福岡市等への出店に取り組んでまいりました。加えて、前連結会計年度より関西圏においても販売を開始いたしました。今後も、4大都市圏における市場シェアの拡大を目指してまいります。

 

ハ.マンション事業の着実な成長

当社グループは、利便性の高い都心立地でコンパクトタイプの居室を中心としたマンション事業を展開しており、お客様から立地と価格に関しての高いご支持をいただいております。これまで、首都圏、名古屋圏、福岡圏の都心部において事業を展開してまいりました。引き続き、マンション事業の拡大を視野に入れつつ、物件ごとの採算も重視し着実な成長を目指してまいります。

 

 

ニ.収益不動産事業の持続的成長

金融緩和政策の継続により、引き続き投資用不動産に対する需要は高水準で推移することが見込まれております。今後も、当社グループが展開する収益不動産事業においては、規模が小さく、事業期間の短い物件を中心として展開することにより、事業リスクをコントロールし、短期的には金融機関の融資姿勢等に鑑み慎重に事業を運営しつつ、収益不動産事業の持続的成長を図ってまいります。

 

④ プレサンス社とのグループシナジーの追求

首都圏での新築投資用マンション事業の展開

当社グループが持つ首都圏での膨大な土地情報とプレサンス社が持つ投資用マンション事業のノウハウ及び強力な販売力を活用するために、両者が協力して首都圏での投資用マンション事業の展開に向け、取組みを進めております。引き続き、プレサンス社との資本業務提携によるシナジー効果の実現を追求してまいります。

 

⑤ M&Aの推進
イ.M&Aの進捗状況

当社は、更なる成長に向けて、事業シナジーを発現できるM&Aに積極的に取り組んでおります。例えば、2015年1月にはOHAを、2018年10月にはホーク・ワンを、それぞれ完全子会社化いたしました。OHAについては、引渡棟数が2,173棟から5,359棟へ3,186棟(注1)増加し、ホーク・ワンについては、引渡棟数に占めるOH仲介件数が25棟から1,489棟へ1,464棟(注1)増加するなど、いずれも、当社の連結子会社となって以降、受注棟数の大幅な増加等による売上高の増加を実現しています。また、当社グループとしてのスケールメリットの実現による調達コストの低減や仕入れの効率化を通じた営業利益の大幅な伸長も実現しており、更に、当社グループの採用ノウハウ、リソースを相互に活用することで、より多くの人材採用にも成功しております。このように、当社は、M&Aを通じた当社グループ全体としての着実な業績拡大及び経営効率の改善を実現してまいりました。加えて、当社は、地域補完及び商品補完関係の構築等を目指し、当社とプレサンス社の経営資源や経営ノウハウを融合することによる事業シナジーを発現させること等により、両者並びに両者のお客様、株主、従業員、取引先及び関係者の皆様にとっての利益の最大化を図るべく、2020年4月にプレサンス社との間で資本業務提携契約を締結し、その後、2020年5月にはプレサンス社の総議決権数(2020年3月31日現在)の31.9%の取得を完了し、プレサンス社を当社の持分法適用関連会社といたしました。しかしながら、2020年9月、プレサンス社の足許の事業環境については、取引金融機関のプレサンス社に対する融資姿勢は依然として慎重になっており、加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大は沈静化するに至っておらず、今後更なる感染の流行により、コロナ禍の影響がより深刻化するおそれもあることが改めて認識されました。かかる状況を受け、当社はプレサンス社の信用補完及び資金調達の安定化、並びにシナジーの実現可能性の更なる向上のために、プレサンス社を連結子会社とすることの検討を開始し、2021年1月には第三者割当増資及び金融商品取引法に基づく公開買付により、2020年5月の取得分と合わせてプレサンス社の総議決権数(2020年9月30日現在)の64.45%を取得し、プレサンス社を当社の連結子会社といたしました。当社は、かかる連結子会社化が実現したことを受けて、独立系総合不動産会社として、当社グループの連結売上高を競合の大手不動産会社に迫る規模とすること及び業界におけるポジショニングの更なる向上を目指してまいります。

(注1)それぞれ、OHAにおける、株式取得完了日(2015年1月15日)の直前決算期(2014年12月期)から当社の直近決算期(2023年9月期)までの引渡棟数の増加数、ホーク・ワンにおける、株式取得完了日(2018年10月1日)の直前決算期(2018年9月期)から当社直近決算期(2023年9月期)までの当社仲介件数の増加数を記載しております。

 

ロ.既存領域及び新領域への積極的な投資

当社グループは、戸建関連事業を主力事業と位置付けるとともに、外部環境の変化を踏まえた成長分野への新規参入を図ることにより、効率的な事業ポートフォリオを構築することを目指しております。今後も、既存領域での規模の拡大並びに収益力の改善に加え、新領域への進出等により成長スピードの加速を目的とするM&Aに取り組んでまいります。

 

 

⑥ 住居系を中心とする私募リート事業の展開

当社グループ及びプレサンス社の投資用不動産の開発力及び情報収集力を活用し、株式会社オープンハウス不動産投資顧問が資産運用委託を受けるオープンハウスリート投資法人(私募REIT)のスポンサー企業として、賃貸マンション並びにホスピタリティアセット等の投資用不動産を継続して供給することにより成長をサポートする事業を展開しております。前連結会計年度に投資法人を設立し、当連結会計年度末は資産規模約247億円にて運用しております。今後は、中期的に上場REITへ成長させることも視野に、更に取組みを推進してまいります。

 

⑦ ゼロコロナからウィズコロナに向けた環境の変化に伴う新たな事業機会の獲得

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、当社が属する不動産業界においては賃料の低下及び不動産売買市場の状況悪化が散見され、当社においても2020年4月の戸建の仲介契約件数は前年同月比で相当程度減少するなど、一定の影響がみられました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の拡大による環境の変化をきっかけとして、家族が揃って自宅で過ごす時間が増えたこと並びにテレワークの機会が増えたことにより、住まいに対する新たなニーズが発生し、戸建に対する需要は一気に高まりました。このように、新型コロナウイルス感染症が拡大する環境下においても、当社グループの主要事業である戸建関連事業が牽引する形で、中期経営計画における取組み事項は、順調に進捗いたしました。

その後、ゼロコロナからウィズコロナに向けた環境の変化に伴い、戸建に対する極めて高い需要は平準化する傾向を示したものの、都心部の利便性の高い戸建に対する需要は堅調に推移しております。かかる環境下においても当社グループにとっての新たな事業機会を獲得するべく、引き続き、当社グループの主要事業である戸建関連事業を推進してまいります。

 

(4) 目標とする経営指標

当社グループは、安全性において自己資本比率30.0%以上を維持することを、目標とする経営指標として定めております。当連結会計年度においては、自己資本比率は34.7%となりました。なお、今後につきましてはより安全性の高い財務体質を保持するため、自己資本比率は35.0%以上を維持することといたします。

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

当社グループは、持続可能な社会の実現に事業活動を通じて貢献するとともに、企業の持続的成長を目指す「サステナビリティ」を推進しております。当社グループでは、企業理念に掲げる「お客さまが求める住まいを愚直に追求」し続けるとともに、「都心部で手の届く価格の住宅を提供する」ことをミッションとして事業に取り組んでまいりました。当社グループのミッションを時代の変化の中で実現し続けることで、社会価値と事業価値の両立を目指す共有価値の創造を実践しております。また、当社グループは、事業活動に伴う社会的責任やSDGs達成に向けた貢献を強く意識し、環境・社会・ガバナンス(ESG)に関連する課題に対して、事業活動を通じた取組みを推進しております。

 

(1) サステナビリティ

① ガバナンス(推進体制)

当社グループでは、取締役・執行役員等から構成されるサステナビリティ委員会を設置しています。取締役会の監督のもとに運営される当委員会においては、サステナビリティに関するリスク及び機会について識別・評価するとともに、各事業部門及びグループ各社における対応について情報を収集し、管理しております。進捗状況及び結果についてはサステナビリティ委員会に報告され、議論されます。議論された重要事項については、取締役会に報告されています。

 


 

② リスク管理

前項のとおり、サステナビリティ委員会を中心とするガバナンスにおいてリスク管理を実行しておりますが、3ヵ年の基本方針において新たに設定した重要課題(マテリアリティ)におけるサステナビリティに関する重要課題のうち、「ガバナンス・コンプライアンスの改革」及び「脱炭素への貢献」に関して、リスク管理を含む取組みを進めております。

 

(2) 人的資本の価値最大化

当社グループは、持続的成長の実現にあたり、「人材」を企業における最も重要な資本と位置付け、優秀な人材採用を強化するとともに、従業員の能力開発へ向けた教育研修を継続的に実施しています。企業理念に掲げる通り、「やる気のある人を広く受け入れ、結果に報いる組織」を実現するべく、経歴等に捉われず人材登用を行い、事業成長の原動力となる人材並びに将来の経営を担う人材の育成に努めております。

 

① 戦略

(ⅰ) 能力の発揮及び賃上げ

当社グループでは、適切な人材登用を行うために、年4回の昇格査定を実施しております。スピーディーに成果が反映される制度設計により、迅速に昇進昇格の機会を与え、各自が能力を最大限に発揮できる制度の整備に努めております。

 

 

(ⅱ) 健康経営

当社グループでは、従業員の健康保持および増進が、組織の活性化と生産性の向上に寄与すると考え、代表取締役を健康経営責任者として、健康経営の推進体制を構築し、健康に関する目標設定や施策を実施しています。法令で定められている衛生管理に加え、健康経営に資する福利厚生の拡充への取組みを行い、また、長時間労働の是正等、働き方改革の施策を企画・実施するなど、社員が健康に過ごし高いパフォーマンスを継続して発揮できる環境づくりに努めております。

 

(ⅲ) ダイバーシティの推進

当社グループでは、従業員一人一人の人権を尊重し、性別、年齢、国籍、障がいの有無等の属性にとらわれない多様性を活かした組織づくり・働きやすい職場環境づくりに努めています。当社グループは、ダイバーシティの推進に向けて以下の取組みを実施しております。

 

(イ) 女性活躍推進

代表取締役のコミットメントの下、「女性活躍推進グループ」を設立し、女性社員向けの福利厚生企画や研修を通じて女性の長期的なキャリア形成を促進しています。当社グループでは、女性社員が持続可能なキャリアを築くためには、出産、育児等によりライフステージの変化が生じた「ママ社員」への支援に注力する必要があると考え、経済的側面と働き方の側面の両方に焦点を当て、休職前から復帰後に至るまで、それぞれの局面にあったサポートをするための支援制度の設計を行っております。

 

(ロ) 障がい者雇用と活躍の推進

当社グループでは、障がいのある人もない人も共に働きやすい職場づくりを目指し、「オペレーションセンター」という障がいのある人の活躍支援に特化した部署を設置しており、2023年6月時点の雇用率については、法定雇用率の2.3%を0.6ポイント上回る2.9%となっております。人材の獲得や活躍をしていただくための主要な取組みとして、バリアフリー設計の事務所を3拠点開設しており、月1回の通院有給制度を設けているほか、4名の専任支援者を配置するなど、障がいのある人でも安定したパフォーマンスを発揮できる環境や制度の整備に取り組んでおります。

 

(ⅳ)子育て支援

当社グループでは、次世代を担う子どもたちこそが、持続的社会の実現において最も重要な宝であると考えております。また、当社グループ従業員の大多数が子育て世代であることから、「子育て支援」に特に注力しております。最大100万円の出産祝金等、複数の経済的支援策を行っておりましたが、本年はさらなる充実を図り、「ひとり親世帯に対する手当」及び「企業主導型保育園の共同利用」を開始いたしました。今後も、従業員の生活や働きやすさの向上を支援することで能力の発揮を促し、持続的な企業価値の向上を目指してまいります。

 

② 目標及び指標

当社グループにおける人的資本に関する目標及び指標については、「オープンハウスグループ女性活躍推進宣言」において、2025年9月期までに主要3社(*1)の女性管理職比率を10%迄引き上げることとしています。2023年9月末時点では、7.14%の状況となっています。

 (*1)株式会社オープンハウスグループ、OH、OHD

なお、実績につきましては、「第1 企業の概況 5従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、(5)男性労働者の育児休業取得率、(6)労働者の男女の賃金の差異」に記載の通りであります。

 

 

(3) ガバナンス・コンプライアンスの改革

当社グループは、創業から26年となる2023年9月期に売上高1兆円を超えるなど急成長を遂げております。その企業規模の拡大に合わせてガバナンス・コンプライアンス体制についても強化を図るべく、社外の専門家の助言や検証を受けつつ潜在的な課題を洗い出し、継続的に体制の強化に取り組んでいくことが、これまでにも増して重要な経営課題であると認識し、2023年9月よりガバナンス・コンプライアンスの改革の取組みを開始いたしました。なお、本件取組みは、OH、OHD、OHA、ホーク・ワンを対象としております。

 

① ガバナンス

グループ改革推進本部は代表取締役社長直属の組織として設立し、代表取締役社長が務める本部長の下、関係部署の担当により構成され、会社の枠にとらわれず組織横断的な視点で活動いたします。

 

② リスク管理

当社グループは、ガバナンス上及びコンプライアンス上の課題を洗い出すため、コンプライアンスリスクアセスメントを実施いたします。なお、同アセスメントは、リスクアセスメントグループが、社外の専門家である法律事務所と協力して実施するものです。

 

③ 戦略

リスクアセスメントグループが、社外の専門家の支援を受けつつ当社グループの組織統治上の課題、法令上の課題を洗い出し、当該課題認識をグループ改革推進本部長に報告・具申し、変革推進グループがその指示に基づいて、改革方針立案、制度・プロセスの見直しと改善策の提示を行い、グループ全体への浸透徹底を図ります。顧客対応一元窓口は、グループ全体の問い合わせ及びクレームの窓口として、お客様が把握された問題の解決を主導するとともに、それを通して得られた知見を事業部門に還元し、顧客満足向上のための施策を実施いたします。

 

④ 目標

当社グループは、ガバナンス体制及びコンプライアンス体制の強化に関する施策として、既に着手している施策も含め、以下の項目を実施いたします。

(ⅰ)長期的な顧客満足の追求

(ⅱ)戸建ての施工における品質管理体制の強化

(ⅲ)組織風土の改革

(ⅳ)ハラスメント防止のための研修

(ⅴ)内部通報体制の拡充

(ⅵ)子会社のガバナンス強化のための体制整備

 

 

(4) 脱炭素への貢献(TCFDの低減に沿った開示)

当社は、気候変動への対応が急務であると認識し、2021年1月に「TCFD」(*2)提言への賛同を表明し、「TCFDコンソーシアム」(*3)に参加して以降、気候変動が当社グループの主力事業である戸建関連事業(*4)に及ぼす影響についてシナリオ分析を実施いたしました。

(*2)「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)

Task Force on Climate-related Financial Disclosures」

G20財務大臣及び中央銀行総裁の意向を受け、金融安定理事会(FSB)により設立されたイニシアチブ。気候変動によるリスク及び機会が及ぼす財務的影響を評価、開示することを推奨。

(*3)「TCFDコンソーシアム」

TCFD提言に賛同を表明する企業、金融機関等が一体となって取り組みを推進し、企業の効果的な情報開示、開示された情報を金融機関等の適切な投資判断につなげるための取り組みを議論する目的で設立された組織。

(*4)戸建関連事業

OH及びOHDにおいて展開する戸建関連事業を対象としてシナリオ分析を実施。

 

① ガバナンス

当社グループは、サステナビリティ委員会を、気候変動課題を検討する機関と位置づけ、気候変動に係る様々な課題に対する対応について検討しています。また、取締役会はサステナビリティ委員会を監督しており、重要な方針並びに事項については、報告及び審議を実施しています。

 

② リスク管理

当社グループは、サステナビリティ委員会において、環境問題に関する基本的な方針の策定及び気候変動に伴うリスク管理を行っています。サステナビリティ委員会では、社外有識者との情報交換を行う等、気候変動対応の日本及び世界の動向等を通じて当社グループにとっての課題を把握するとともに、必要な施策についてグループ会社や各事業部と協議し、その進捗をモニタリングしています。GHG排出削減目標についても、サステナビリティ委員会において、進捗を管理するとともに、更なる目標の引き上げに向けての検討を継続いたします。当社は、サステナビリティ委員会より気候変動に関する課題並びに取り組みの進捗状況を取締役会に報告し、今後多様化・広域化・激甚化する気候変動に伴うリスク及び機会に適切に対処する体制を整備しています。

 

③ 戦略

当社グループは、主力事業である戸建関連事業を対象として、2030年を想定した気候変動によるリスクと機会の抽出、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が想定した二つのシナリオに基づく財務影響の分析、並びに今後の対応策について以下のとおり検討しました。

 

(ⅰ)シナリオ分析の前提(定義)

 

 

①1.5℃シナリオ

②4℃シナリオ

低炭素社会への移行期において、政策、規制、技術、市場及び顧客の嗜好等の変化に伴うリスク及び機会。

世界中で気候変動に対する厳格な対策が徹底され、地球温暖化を抑えることに成功する。

その結果、2050年の平均気温は、18世紀の産業革命前に比べて、1.5℃上昇にとどまる。

温暖化に関する様々な注意喚起にも関わらず、各国の足並みが揃わず、厳格な対策は導入されない。

その結果、温暖化はさらに進行し、平均気温は4℃上昇、自然災害が激甚化、頻発化する。

気候変動に伴う自然災害の頻発、激甚化等の急性的なリスク、平均気温の上昇、異常気象等の慢性的なリスク。

 

 

(ⅱ)シナリオ分析結果

(イ) 1.5℃シナリオ

1.5℃シナリオにおいて、移行リスクとして炭素税導入及び太陽光パネル義務化が、主な収益圧迫要因と推定されます。一方で、環境負荷の低い住宅の提供による新たな顧客の獲得が収益機会となります。物理的リスクについても、自然災害等によるリスクは軽微です。総じて、本シナリオにおける財務影響は限定的であることが把握できました。

 

(ロ) 4℃シナリオ

4℃シナリオにおいて、大きな移行リスクはなく、物理的リスクも、当社グループが展開する戸建関連事業は事業期間の短いフローのビジネスであることから、自然災害の激甚化等の外部環境変化に対する感応度を高めることで低減可能であり、大きな財務影響を与えるものではないことを把握することができました。

<リスクと機会及び財務影響の一覧>

リスクと機会/項目

影響経路

財務影響

1.5℃

4℃

<リスク>

炭素税の導入

炭素税導入に基づく資材等の調達価格上昇
(建設委託費の増加)

-

炭素税導入に基づく営業車両の燃料コスト上昇

-

炭素税導入に基づく電気使用コスト上昇

-

<リスク>

太陽光パネルの
設置義務化

太陽光パネルの設置義務化への対応コスト上昇(販売価格への転嫁率0%)

-

<機会>

環境負荷の低い
住宅需要の高まり

環境負荷の低い住宅(ZEH Oriented)の提供による収益増加

-

<リスク>

台風や洪水の
激甚化による影響

台風や洪水の激甚化による作業停止期間の発生によるコスト増加

-

-

台風や洪水の激甚化による建設中住宅の値引きによる収益減少

<リスク>

酷暑による
健康被害の増大
(熱中症等)

酷暑による建設技能者の作業効率低下によるコスト上昇

酷暑による営業社員の営業効率低下による収益減少

 

 

<財務影響の凡例>

/:絶対値10億円以上50億円未満

該当なし:絶対値1億円以上10億円未満

↑ / ↓ :絶対値10百万円以上1億円未満

-    :財務影響なし、または絶対値10百万円未満

 

 

④ 目標及び指標

当社は、シナリオ分析結果を踏まえ、気候変動に伴うリスクの低減のため、2021年11月に初めて中長期のGHG排出削減目標を設定、2022年10月に目標にScope3を追加いたしました。今後、目標の達成に向け、「オープンハウスグループ脱炭素プロジェクト」を推進してまいります。

 


 

 

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を以下のとおり記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。なお、本文における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 事業を取り巻く経営環境について

① 景気動向、金利動向等の影響

当社グループが属する不動産業界の企業業績は、景気動向、金利水準、地価の水準、為替相場等のマクロ経済要因の変動等と密接に関係しております。そのため、不動産市況、住宅ローン金利及び消費税増税の動向、人口動向、不動産に係る税制の改正等の経済状況や政策動向並びに住宅取得希望者の心理動向等が、当社グループの業績及び事業の展開に影響を与える可能性があります。

 

② 営業エリアが首都圏に集中していること並びに競合及び災害等の影響

当社グループは、首都圏を中心として、不動産の仲介のほか、新築一戸建住宅、新築マンション並びに中古収益不動産の販売並びに建築請負等を行っております。

首都圏は、住宅及び収益不動産に対する需要が高いことから、競合他社が多く競争が今後更に激化する可能性があります。近年は名古屋圏、福岡圏及び関西圏で事業を展開しておりますが、これらの地域においても競合他社との競争に晒されています。当社グループよりも仕入力、販売力、ブランド力等において競争優位に立つ競合他社の影響等により、当社グループの土地の仕入力及び販売力の相対的な低下並びに価格変動等により急激に需要が低下する場合には、当社グループの業績及び事業の展開に影響を与える可能性があります。

また、当社グループの営業活動は首都圏を中心として都市部で展開しているため、首都圏その他の都市部の人口動向、地理的変化、平均収入の変化、地域経済、不動産市況等の影響を特に受けやすく、それにより当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

更に、当社グループが事業を展開する地域において地震、台風その他の災害が発生した場合、人的・物的被害のほか、工事の遅延、開発・販売ができなくなるおそれ、不動産の価値が減少するおそれ、修復等に費用を要するおそれなど、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

③ 新型コロナウイルス感染症等の影響について

新型コロナウイルス感染症の鎮静化に伴う行動制限の緩和を受け、長く停滞していた社会経済活動が活発化しております。当社グループは、これまで蓄積した感染予防対策を適切に実行することにより、お客様及び従業員への感染を抑えながら、事業活動を展開することができるよう努めております。

しかしながら、今後新型コロナウイルス感染症以外の治療方法が確立されていない感染症が流行した場合には、当社グループの事業、業績、流動性及び財政状態に重大な悪影響を与える可能性があります。

また、感染予防対策として、当社グループ、顧客、外注先、仕入先及び提携先において活動が制限される結果、当社グループの強みである営業活動への支障やサプライチェーンの混乱等が生じる可能性があります。加えて、感染予防対策が有効である保証はなく、当該対策が奏功しない場合には当社グループの事業活動及び事業計画の遂行に悪影響を及ぼすおそれがあります。

一方で、新たな感染症の感染拡大は、当社グループにとって新たな事業機会でもあると考えておりますが、事業機会が今後も継続する保証はありません。

なお、当該感染症が当社グループに与える最終的な全体の影響の程度は、感染症の収束時期など今後の事態の進展によるため、極めて不透明であり、予測することが困難です。その影響の程度によっては、当社グループの事業、業績、流動性及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

 

(2) 土地の仕入れ、木材・建材などの調達や人件費等について

当社グループは、首都圏その他の都市部の物件を中心に用地を仕入れており、当該仕入れのコストが開発コストの大部分を占めておりますが、首都圏その他の都市部における物件の供給不足等の当社グループがコントロールできない外部要因により、仕入価格が高騰する可能性があります。また、当社の連結子会社であるOHD、OHA及びホーク・ワンが提供している新築一戸建住宅は、木材・建材その他の原材料を使用しております。これらの原材料が、為替相場の変動並びに当該原材料の生産国におけるカントリーリスク等により価格高騰する可能性があります。更に、建築業界における人材不足等を背景として建築工事に係る人件費が高騰する可能性もあります。これらのコストの上昇を販売価格に転嫁することが難しい場合には、当社グループの業績に重大な悪影響を与える可能性があります。

 

(3) 事業戦略について

当社グループは、成長のための事業戦略を掲げて様々な取組みを行っておりますが、将来の業績や市場環境には不確実性が内在しており、多様な要因により事業戦略が奏功しない可能性や事業戦略を変更せざるを得ない可能性があります。

例えば、当社グループが戸建関連事業を展開する、首都圏、名古屋圏、福岡圏並びに関西圏において、出店候補地の立地条件、競合企業の動向、エリア特性及び採算性等の総合的な判断に基づき、店舗展開を行っていく方針であります。今後、当社グループの出店条件に合致する物件が見つからず、新規出店が進まない場合には、当社グループの業績及び事業の展開に影響を与える可能性があります。

 

(4) M&Aについて

当社グループは、事業拡大のため事業戦略の一環として企業買収、戦略的出資、提携等のM&Aを行っており、今後も推進してまいります。しかしながら、今後、当社グループの事業戦略に合致する適切な対象企業候補が見つかり、当該対象企業候補との間で、適切な条件でM&Aを実施することができる保証はありません。また、2023年11月に三栄建築設計を完全子会社化いたしましたが、このようにM&Aを実施した場合においても様々なリスクがあり、例えば、対象企業との事業統合が計画通り進まない可能性、想定していたシナジー効果が実現しない可能性、M&Aに必要な業務にリソースが割かれることにより当社グループの通常の事業活動に支障が生じる可能性、対象企業の優秀な人材が流出する可能性、当社グループのコンプライアンスに係る水準と同等の水準で対象企業を運営できない可能性、対象企業の価値評価等を見誤る可能性、将来の減損の対象となりうる多額ののれんを計上する可能性、M&Aに関連して当社グループの負債が増加する可能性があります。一方、当社グループが対象企業の非支配株主持分のみを取得する場合には、対象企業の経営を有効に監督、コントロールすることができず、戦略的投資の効果を実現する上で当社グループが最適と考える対象企業の経営方針、事業戦略が実行されない可能性があり、かかる場合には、当社の事業、業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。また、提携先との提携関係が存在することによって、将来における他の潜在的な提携候補先との協働に関する自由度が制限される可能性があります。加えて、2021年1月に連結子会社化したプレサンス社及び2023年10月に連結孫会社となった株式会社メルディアDCについては、上場を継続しておりますので、当社は両社の経営の独立性を尊重すべきであると同時に、親会社として、両社とのシナジーの実現を目指すとともに、両社におけるコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の改善・充実を促す必要がありますが、それらの取組みが想定通りには進まない可能性があります。以上のようなリスクにより、場合によっては当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(5) 有利子負債への依存について

当社グループは、事業用地並びに物件取得資金及び運転資金は、主として金融機関からの借入金によって賄っております。当連結会計年度末(2023年9月30日)現在、当社グループの連結有利子負債残高は575,137百万円となり、前連結会計年度末(2022年9月30日)と比較して66,176百万円増加しました。また、総資産に占める有利子負債の比率は48.0%となっております。

現在の金利水準が変動する場合には、業績に影響を与える可能性があります。また、今後金融情勢の急速な変動等何らかの理由により十分な資金が調達できない場合には、当社グループの業績、財政状態及び事業の展開に影響を与える可能性があります。

 

 

(6) 不動産開発における収益認識までの期間の長期化等について

当社グループが営む不動産の販売事業では、用地の仕入れから一般消費者への販売までに相当の期間を要し、また、当該期間中において複数回にわたり多額の投資を行う必要があります。一般消費者への販売完了までの間には、原材料の価格高騰や人材不足、顧客の需要の変化などといった当社グループがコントロールのできない外部要因によって、想定外の期間や費用を要する可能性があります。また、開発が遅延することによって、当社グループが在庫を当初の計画よりも長く抱えざるをえず、その間に市況が悪化した場合には、棚卸資産の評価損の計上にもつながりうるほか、収益の認識にも遅れが生じ、当社グループの業績及び財政状態に重大な悪影響を与える可能性があります。更に、当初の計画通りに開発を完了できない場合には、当社グループの信用毀損や顧客に対する責任が生じる可能性もあります。

 

(7) 棚卸資産について

当社グループは、不動産の販売事業を行っており、棚卸資産として販売用不動産、仕掛販売用不動産を計上しております。なお、2023年9月末現在における状況は以下のとおりであります。

 

販売用不動産及び仕掛販売用不動産の内訳

内訳

販売用不動産(百万円)

仕掛販売用不動産(百万円)

戸建関連

73,879

218,199

マンション

1,258

83,092

収益不動産

48,244

40,111

その他

16,303

27,494

プレサンスコーポレーション

8,171

124,501

総計

147,857

493,398

 

 

当社グループが保有する棚卸資産の不動産価値は様々な要因により下落する可能性があります。また、当社グループでは、想定していた価格での販売が困難な場合には、在庫リスクを軽減するため、販売価格の値引きにより販売を促進させる施策をとることがあります。それら施策の実行に伴う利益の減少並びに棚卸資産の評価損が多額となる場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(8) 外注管理について

当社グループは、新築一戸建住宅の建設に際して、施工監理業務(品質・安全・工程・コストの各監理)を除き、原則として請負業者に分離発注の上、外注をしております。また、マンション建設業務においては、施工監理業務も含め大部分を建設業者に外注をしております。

このように施工業務の大部分を外注に依存しているため、外注先を十分に確保できない場合、外注先による工事の品質に問題がある場合又は外注先の経営不振並びに工期遅延が発生する場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(9) 人材の確保について

当社グループは、今後も戸建関連事業を中心に展開してまいります。お客様のニーズに合った良質の商品及びサービスを提供していくためには、高い潜在能力を持ち、お客様にご満足いただける商品提案等のできる人材に、教育訓練を実施して戦力化していくことが経営上の重要な課題であります。

当社グループは、今後も事業の拡大に伴い、積極的に優秀な人材を数多く採用していく方針でありますが、そうした人材が十分に確保できない場合、又は現在在籍している人材が流出する場合、人材確保に関してコストが増加する場合等には、事業の展開や業績に影響を与える可能性があります。

 

 

(10) 瑕疵担保責任又は契約不適合責任について

当社グループでは、住宅の品質確保の促進等に関する法律により、新築住宅の構造上主要な部分及び雨水の浸水を防止する部分について10年間の瑕疵担保責任又は契約不適合責任を負っています。万が一、当社グループの販売した物件に重大な瑕疵があるとされた場合には、その直接的な原因が当社グループ以外の責によるものであっても、当社グループは売主としてその責任を負うことがあります。その場合には、補償工事費の増加や当社グループの信用力低下により、当社グループの業績、財政状態及び事業の展開に影響を与える可能性があります。

 

(11) 法的規制について

当社グループは、事業運営上、宅地建物取引業法、建築基準法、都市計画法、建設業法、国土利用計画法、貸金業法、環境規制等による法的規制を受けております。

当社グループは、これらの許認可等を受けるための諸条件及び関係法令の遵守に努めており、現状において当該許認可等が取り消しとなる事由は発生しておりません。今後、これらの関連法規が改廃された場合や新たな法的規制が設けられる場合、又はこれらの法令等の規制について遵守できなかった場合には、当社グループの業績及び事業の展開に影響を与える可能性があります。

 

(12) 個人情報の管理について

当社グループは、各事業において、見込顧客情報及び取引顧客情報等、当社グループ事業を通して取得した個人情報を保有しており、個人情報の保護に関する法律等による規制を受けております。

これらの個人情報については、個人情報を有する当社グループの各社にて細心の注意を払って管理しております。しかしながら、万が一、外部漏洩等の事態が発生する場合には、損害賠償や社会的信用の失墜等により、当社グループの業績及び事業の展開に影響を与える可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態及び経営成績の状況の概要は、以下のとおりです。

 

① 財政状態及び経営成績の状況
イ.財政状態

a.資産

当社グループの当連結会計年度末における総資産は1,198,668百万円となり、前連結会計年度末と比較して167,493百万円増加しました。これは主として、販売用不動産及び仕掛販売用不動産が合わせて84,151百万円増加したほか、現金及び預金が52,574百万円増加したこと等によるものであります。

 

b.負債

負債は718,251百万円となり、前連結会計年度末と比較して82,779百万円増加しました。これは主として、短期借入金、長期借入金(一年内返済予定の長期借入金を含む)及び社債(一年内償還予定の社債を含む)が合わせて66,176百万円増加したことに加えて電子記録債務が3,756百万円、営業未払金が3,708百万円増加したこと等によるものであります。

 

c.純資産

純資産は480,416百万円となり、前連結会計年度末と比較して84,714百万円増加しました。これは主として、利益剰余金が75,297百万円、非支配株主持分が6,202百万円増加したこと等によるものであります。

 

ロ.経営成績

当社グループの当連結会計年度における業績は、売上高は1,148,484百万円(前連結会計年度比20.6%増)、営業利益は142,330百万円(同19.2%増)、経常利益は136,927百万円(同13.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は92,050百万円(同18.2%増)となりました。

 

セグメント別の概況は次のとおりであります。

 

 (戸建関連事業)

戸建関連事業につきましては、前連結会計年度と比べて土地並びに資材価格の上昇による影響はありましたが、都心部の堅調な戸建需要を背景に売上高は2桁の増収となりました。

その結果、売上高は590,342百万円(前連結会計年度比14.3%増)、営業利益は63,178百万円(同0.3%増)となりました。

 

 (マンション事業)

マンション事業につきましては、首都圏、名古屋圏、福岡圏の都心部において新築分譲マンションを展開しております。販売は順調に推移しているなか、第4四半期連結会計期間に集中していた物件の引渡しも計画通り完了し、業績は好調に推移いたしました。

その結果、売上高は124,689百万円(前連結会計年度比99.9%増)、営業利益は25,139百万円(同136.0%増)となりました。

 

 (収益不動産事業)

収益不動産事業につきましては、金融機関による投資家及び物件の選別が進むなか、当社グループが顧客とする事業法人、富裕層が投資対象とする賃貸マンション、オフィスビル等に対する需要は高く、販売は好調に推移いたしました。

その結果、売上高は184,710百万円(前連結会計年度比19.9%増)、営業利益は20,222百万円(同14.4%増)となりました。

 

 (その他)

その他につきましては、資産分散を目的とするアメリカ不動産に対する投資需要が高く、販売は好調に推移いたしました。

その結果、売上高は87,459百万円(前連結会計年度比17.7%増)、営業利益は8,667百万円(同5.6%増)となりました。

 

 (プレサンスコーポレーション)

プレサンスコーポレーションにつきましては、主要販売エリアの近畿圏、東海圏及び首都圏、沖縄圏を含む地方中核都市の中心部において、好立地の投資用及びファミリーマンションの販売に注力いたしました。

その結果、売上高は161,265百万円(前連結会計年度比11.0%増)、営業利益は25,791百万円(同24.4%増)となりました。

 

② キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べて32,562百万円増加し、378,643百万円となりました。

 (営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果獲得した資金は、17,393百万円(前連結会計年度は16,353百万円の使用)となりました。これは主として、棚卸資産の増加額が85,219百万円、法人税等の支払額が40,239百万円であった一方、税金等調整前当期純利益が136,901百万円、仕入債務の増加額が7,857百万円あったこと等によるものであります。

 

 (投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、35,575百万円(前連結会計年度は4,367百万円の使用)となりました。これは主として、定期預金の預入による支出が18,527百万円、関係会社出資金の払込による支出が10,537百万円、有形固定資産の取得による支出が6,381百万円あったこと等によるものであります。

 

 (財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果獲得した資金は、49,103百万円(前連結会計年度は24,694百万円の獲得)となりました。これは主として、配当金の支払額が16,753百万円あった一方、借入れによる収入、借入金の返済による支出の純収入が66,415百万円あったこと等によるものであります。

 

(2) 生産、受注及び販売の実績

 

① 生産実績

当社グループの生産実績は、販売実績とほぼ一致しておりますので、生産実績に関しては販売実績の項をご参照ください。

 

② 受注実績

当連結会計年度における建築請負の受注状況は次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高

(百万円)

前連結会計年度比

増減率(%)

受注残高

(百万円)

前連結会計年度比

増減率(%)

戸建関連事業

69,748

△11.2

52,225

△10.8

プレサンスコーポレーション

138,282

△2.7

75,049

△17.1

 

(注) 上記以外のセグメントについては、提供するサービスの性格上、受注状況の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

③ 販売実績

販売実績については、「(1) 経営成績等の状況の概要」におけるセグメント別の業績にて示しております。

 

 

(3) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
イ.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の鎮静化に伴う行動制限の緩和を受け、長く停滞していた社会経済活動が活発化するなか、個人消費並びに設備投資は持ち直しております。また、企業収益及び企業の業況判断は総じてみれば改善傾向を示し、雇用情勢には改善の動きがみられ、消費者物価も上昇するなど、景気は緩やかに回復しております。

当社グループが属する不動産業界につきましても、地価は景気の緩やかな回復を受け、三大都市圏を中心に上昇が拡大しております。住宅地においては、都市中心部並びに生活利便性に優れた地域における住宅需要は堅調であり、地価の上昇が続いております。商業地においては、都市部を中心に人流の回復を受け、店舗需要は上昇傾向にあり、オフィス需要も底堅く推移するなど地価の回復傾向はより進んでおります。

このような事業環境のもと、当社グループは中期経営計画「行こうぜ1兆!2023」(2021年9月期~2023年9月期)に掲げる経営目標の達成に向け、業務に取り組んでまいりました。当連結会計年度におきましては、すべてのセグメントで売上高及び営業利益において増収増益を果たしております。

 

ロ.経営成績の分析

a.売上高

当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度と比較して195,798百万円増加の1,148,484百万円(前連結会計年度比20.6%増)となりました。これは、戸建関連事業の売上高が73,840百万円増加して590,394百万円(同14.3%増)となったことに加えて、マンション事業が62,622百万円増加して124,984百万円(同100.4%増)となったこと等によるものであります。

 

b.売上原価、売上総利益

当連結会計年度の売上原価は、前連結会計年度と比較して162,009百万円増加の930,127百万円(前連結会計年度比21.1%増)となり、売上総利益は33,787百万円増加の218,356百万円(同18.3%増)となりました。売上総利益率は、0.4ポイント低下して19.0%(前連結会計年度は19.4%)となりました。これは、主として戸建関連事業において土地仕入原価が上昇したことにより、売上総利益率が、1.5ポイント低下して16.7%(前連結会計年度は18.2%)となったこと等によるものであります。

 

c.販売費及び一般管理費、営業利益

販売費及び一般管理費は、前連結会計年度と比較して、10,815百万円増加して76,026百万円(前連結会計年度比16.6%増)となり、売上高販売費及び一般管理費率は0.2ポイント低下の6.6%(前連結会計年度は6.8%)となりました。これは主として、事業拡大に伴う人員増加により人件費が2,616百万円増加して23,774百万円(前連結会計年度は21,157百万円)になったこと等により販売費及び一般管理費は増加しましたが、前連結会計年度より生産性を改善したことにより、売上高販売費及び一般管理費率が低下したものであります。

営業利益は22,972百万円増加して142,330百万円(同19.2%増)となりました。なお、売上高営業利益率は、0.1ポイント低下して12.4%(前連結会計年度は12.5%)となりました。

 

d.営業外損益、経常利益

営業外収益は、前連結会計年度と比較して5,849百万円減少の2,441百万円(前連結会計年度比70.6%減)、営業外費用は、1,361百万円増加して7,884百万円(同21.0%増)となりました。これは、主として、円安の進行が鈍化し、為替差益が4,598百万円減少の471百万円となったことによるものであります。

この結果、経常利益は、15,760百万円増加して136,927百万円(前連結会計年度比13.0%増)となりました。なお、売上高経常利益率は、0.8ポイント低下して11.9%(前連結会計年度は12.7%)となりました。

 

e.特別損益、親会社株主に帰属する当期純利益

親会社株主に帰属する当期純利益は、14,165百万円増加して92,050百万円(前連結会計年度比18.2%増)となりました。なお、売上高当期純利益率は、0.2ポイント低下して8.0%(前連結会計年度は8.2%)となりました。

 

② 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、2020年11月に中期経営計画「行こうぜ1兆!2023」(2020年10月~2023年9月)を策定いたしました。策定時に掲げた経営目標は、最終年度となる2023年9月期の売上高を8,000億円といたしましたが、当連結会計年度の好調な事業進捗を受け、4度の上方修正を経て3,300億円引き上げ、新たな経営目標を1兆1,300億円と設定いたしました。また、資本政策としては、当初よりROE20.0%、自己資本比率30.0%、配当性向20.0%以上を設定しております。なお、本中期経営計画の最終年度となる当連結会計年度の業績及び目標に対する達成状況は以下のとおりであります。

売上高は1,148,484百万円(当初目標1,000,000百万円、達成率114.8%)、営業利益は142,330百万円(同88,000百万円、161.7%)、ROEは24.4%(4.4ポイント超過)、自己資本比率は34.7%(4.7ポイント超過)、配当性向は21.5%(1.5ポイント超過)となり、全ての指標で超過達成いたしました。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性について

当社グループの主な資金需要は、各セグメントにおける事業用地、物件取得、建設資金、事業拡大のための投資資金並びに運転資金であります。それらの財源については、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、自己資本、金融機関からの借入金並びに社債の発行による有利子負債等を充当することに加え、資金使途に応じた幅広い資金調達手段の確保に努めております。

 

④ 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定の設定を行っております。当該見積りにつきましては、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる各種の要因に関して仮定設定、情報収集を行い、見積金額を算出しておりますが、実際の結果は見積り自体に不確実性があるために、これらの見積りと異なる場合があります。

なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。