当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営環境
当社グループを取り巻く経営環境は今後も不透明な状況が続くものと考えております。また、「気候変動問題への世界的対応」、「サーキュラーエコノミーの台頭」、「超スマート社会へ進展加速」、「人はより健康により衛生的に」など価値観が大きく変化してきており、この変化を捉えて社会の期待に応えていくこと、すなわち「規模」よりも「質」的成長を優先することが当社グループの大きな経営課題となっていると認識しています。
(2)経営方針
当社グループは、企業パーパスを「Activate Your Life」と定義し、全社基本ビジョンである「世界中のお客様から最も信頼されるイノベーション・カンパニー」実現に向け、激変する経営環境をビジネスチャンスへと昇華し、社会からますます必要とされる価値を提供する事業に注力することで更なる収益性向上に向けて邁進してまいります。
また、2025年に向けた中期経営計画『INNOVATION25』(2023-2025)の達成に向けて、次の課題に取り組んでまいります。
(3)全社基本戦略
全社基本戦略① 事業構造の大転換:「環境」「健康・衛生」「先端材料」領域への注力
当社グループは、「環境(Environment)」「健康・衛生(Health)」「先端材料(Digital)」の3つの領域を注力事業領域と定め(以下、「EHD事業」といいます。)、事業ポートフォリオを大きく転換し、持続可能な社会と循環型経済の実現、人々の健康促進や衛生環境の進化、先端情報技術分野での先駆的な技術や材料提供によるスマート社会の実現に貢献する、個性ある化学メーカーを目指してまいります。
全社基本戦略② メリハリのある投資:注力事業への投資、投下資本収益性向上
当社グループは、不確実性の高い経営環境にあっても、成長投資を機動的かつ安定的に実施するために、継続的に財務体質の強化に取り組み、成長事業かつ社会価値の高い事業に集中した投資を実施してまいります。また、運転資金の適正化や厳選した投資の実行などにより投下資本収益性を高めることで、企業価値の向上に努めてまいります。
全社基本戦略③ 生産性改革:デジタルトランスフォーメーションの積極推進
当社グループは、デジタル技術を積極的に企業活動に取り込むことで、デジタルトランスフォーメーションを強力に推進し、生産活動、研究開発及び営業活動を飛躍的に効率化し、一人当たりの生産性を大きく向上させてまいります。また、効率化によって生み出された経営資源を、EHD事業の推進及びお客様とのコミュニケーション頻度と質の向上に振り向けていくことで、最重要課題であるイノベーションの創出を加速してまいります。
全社基本戦略④ サステナブル経営の推進:持続可能な社会への貢献
当社グループは、「持続可能な開発目標(SDGs)」が示す世界的な優先課題及び世界のあるべき姿に対し、企業活動を通じて貢献してまいります。また、地球環境、人々のくらし、社会をより豊かにすることを重要課題と捉え、サステナブル経営の取り組みを加速させてまいります。気候変動対策としては、「2030年にグループ全体のCO₂実質排出量30%削減(2018年度比)」を経営目標とし、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
全社基本戦略⑤ 大家族主義の進化:社員エンゲージメント向上とダイバーシティの推進
当社グループは、多様な人材が世界中から集い、高いモチベーションで持てる能力を最大限発揮しグローバルに活躍できる企業集団を目指して、「人材」と「働き方」の多様性を高めると同時に、全グループ社員の仕事のやりがいと、貢献度の高い社員の満足度を向上させていくことで、当社グループの重要な経営フィロソフィーである「大家族主義」を進化させてまいります。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、中期経営計画「INNOVATION25」において、2023年度から2025年度までの3か年を「事業構造の転換」「収益性改善」「成長分野への積極投資」を推し進めることで新しい成長スパイラルを固める期間と位置づけ、さらなる持続的成長に向けて邁進してまいります。
経営目標数値(2025年度連結)
・売上高:570億円
・営業利益:40億円
・ROS:7.0%
・ROE:8.0%
・ROIC:7.0%
※ 想定為替レート:132円/USD
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ
当社グループは、当社グループの象徴である「Activate」という言葉に、2つの想いをこめています。
ひとつめは、当社グループが製造・販売している界面活性剤は surface active agent といい、その技術で、人々のくらし、社会を豊かにし、輝く未来を作っていきたい、という想い。
ふたつめは「活性化する」「輝かせる」という意味から、お客様やビジネスパートナー、社員、一人ひとりの暮らしや人生(Your Life)が活き活きと輝くものにしていける、activateな存在でありたい、という想い。
当社グループはこの想いを実現し続けることで、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
①ガバナンス
当社グループでは経営軸の一つにサステナビリティを定め、「EHD (Environment:環境・Health:健康/衛生・Digital:先端材料)」の3つの領域を軸足に、社会課題の解決に貢献することを目指しておりますが、当社グループにおける環境に関する重要課題の審議検討を行う組織として、サステナビリティ委員会(委員長:代表取締役社長、委員:経営会議メンバー)を設置しております。
当委員会では気候変動への対応を含む環境課題をはじめ持続可能な社会の実現に係る諸課題を総合的に評価し、その審議内容は定期的に取締役会へ報告の上、決議を得ることとしています。また、全社的な取り組みの進捗管理をはじめとした気候変動に関する計画立案等を行う事務局として、当委員会下にサステナビリティ統括部会を設け、当部会が取締役会での決議事項等をグループ各社へ伝達・管理を行うことで、全社的なサステナビリティ経営への統合を図ることとしています。
(体制図)
②戦略
当社グループでは、気候変動が事業経営にどのような影響を与えるのかを検討し対応を経営戦略へと反映させることを目的として、シナリオ分析を通じた気候変動による影響評価を実施しています。現在実施済みのシナリオ分析では当社の化学品事業セクターを対象とし、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の公表する複数のシナリオを参考に2030年時点での影響についてリスクと機会を定量・定性の両面で評価しています。
なお、分析にあたって設定したシナリオは以下のように定義しています。
4℃シナリオ |
1.5℃シナリオ |
産業革命期と比較して21世紀末頃に世界平均気温が4℃上昇するシナリオ。経済成長を優先課題とし、気候変動政策は2021年時点で施行されている規制以上に強化されない。 |
産業革命期と比較して21世紀末頃の世界平均気温の上昇幅が2℃未満に抑制されるシナリオ。カーボンニュートラルの実現に向けて、積極的な環境政策が推進される。 |
参 IPCC:RCP8.5 |
参 IPCC:RCP2.6 |
(主なリスクと機会)
区分 |
要因と事象 |
評価 |
現在の取り組み状況 |
|||
影響種別 |
4℃ シナリオ |
1.5℃ シナリオ |
||||
脱炭素化社会への移行による影響 |
カーボン プライシング |
炭素税の導入をはじめとする事業運営コストの増加 |
リスク |
小 |
大 |
・CO2排出量削減目標の設定 ・再生可能エネルギー由来電力への切り替え ・ボイラー更新による環境負荷低減 |
エネルギー コストの変化 |
再生可能エネルギー由来発電への切り替え等による購買電力価格の高騰 |
リスク |
小 |
中 |
・太陽光発電設備の設置導入 |
|
低炭素技術の 進展 |
低炭素技術の開発及び脱炭素化を見据えたDX化の推進に伴う関連製品の需要拡大(フッ素化学品、水系ウレタン樹脂、ほか) |
機会 |
中 |
大 |
・先端情報技術分野における技術応用及び事業推進 |
|
顧客行動 変化 |
サプライチェーン全体での脱炭素化ニーズ拡大による環境負荷低減ニーズの拡大 |
機会 |
小 |
大 |
・環境系第三者認証の取得 ・環境対応型製品開発に向けた技術投資 ・Smart Dyeing Processの提案 |
|
地球温暖化に伴う物理的影響 |
異常気象の発生 |
自社拠点及び物流網の被災による被害規模の拡大 |
リスク |
大 |
大 |
・BCPの定期的見直し ・拠点別防災訓練・教育の実施 |
原材料価格への影響 |
原油価格高騰による石油由来原材料の需要変化、パーム油などの農作物系原材料の収穫不良に伴う価格高騰 |
リスク |
大 |
中 |
・RSPO対応パーム油の使用推進 ・自然由来原料、天然系素材、バイオ系原料を用いた製品開発 |
|
平均気温の上昇 |
年間を通じた気温上昇をはじめとした適応ニーズの拡大(冬物衣服需要の低下による化学繊維需要の縮小) |
リスク/機会 |
中 |
中 |
・環境衛生、高機能加工ニーズに対応した技術・製品開発 |
評価指標
大:将来の営業利益予想に対して、±3%以上の影響を試算した項目
中:将来の営業利益予想に対して、±3%未満の影響を試算した項目
小:試算した影響額が極小、もしくは影響が無いと思われる項目
※定量評価が困難な影響は定性的な考察を踏まえて評価し、当該項目はグレー塗りで示しています。
経済成長を優先課題とし、気候変動政策が推進されない4℃シナリオでは、異常気象災害の激甚化と頻発化による重大な物理的被害が予想され、洪水や高潮による各営業所や工場への直接的被害や営業停止による損失が拡大することを試算しています。一方で当社は拠点の分散化を図っており(国内:23拠点、海外:19拠点※2023年12月現在)、激甚的な気象災害の発災時にも事業継続に支障を及ぼすことの無いようリスクの分散化にも注力し、リスク低減を図っています。また社会への影響として災害発生時の避難生活時における健康被害が予測される中、当社は抗菌・防臭・抗ウイルス技術及び消毒剤等の衛生商品の開発を積極的に進めており、これらの取り組みが当該シナリオにおける社会貢献に繋がるものと評価しています。
低炭素社会の実現に向けて積極的な環境政策が推進される2℃シナリオでは、脱炭素化に伴う法規制の導入や社会の意識変革による影響が顕著となると想定しています。支出の側面では、炭素税や排出権取引制度の拡大が操業コストを増加させるだけでなく、国内外における拠点の国の政策状況や地域特性に応じた対応も迫られることが考えられるほか、エネルギー政策によるエネルギー需給の変容により、各国拠点共に購買電力の価格高騰も予想されます。収益面では社会の環境意識の高まりによる環境配慮型資材の使用に対する要請や服飾製品の循環利用及び長時間利用による販売数量の減少も懸念されますが、当社の「EHD(Environment:環境・Health:健康/衛生・Digital:先端材料)」への貢献を開発コンセプトに掲げた製品開発の推進は、そうした社会からの要請の強まりを見据えた取り組みであり、今後想定される脱炭素化を見据えた需要にも応え得る取り組みとして、事業機会となる可能性を認識しています。
当社グループでは今回想定したシナリオが双方ともに現実となる可能性を踏まえ、物理的被害の拡大にあたってはBCP対策、脱炭素化への移行へ向けては「EHD」を軸足とする事業構造の転換の推進などを進め、気候変動に対してもレジリエントな経営の実現を目指して取り組んでまいります。またカーボンニュートラルの達成に向けては、既に当社では自社の環境負荷低減に向けてCO2削減努力の推進や繊維加工におけるサプライチェーン全体での環境負荷低減も見据えたSmart Dyeing Processの提案など、事業活動全体を通して脱炭素化の推進に注力しておりますが、これらの取り組みも今回の分析を踏まえ特定したリスクの低減や緩和、企業価値向上や成長機会に繋がるものと考え、さらにその取り組みを推進してまいります。
今後は当社の化粧品事業セクターにも考察範囲を広げ分析を深化させると共に、今後も環境や社会の変化に積極的に対応し、ケミカルグリーンコンセプト「全員参加で自ら築くやさしい環境」を実践しながら、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。なお、現在実施中の個別具体的な取り組みについては、当社の環境・社会活動報告書にて報告しております。
③リスク管理
当社グループにおける気候変動をはじめとしたサステナビリティに関するリスクの管理及び統括は、サステナビリティ委員会が担っています。サステナビリティ委員会下のサステナビリティ統括部会がリスクの識別、評価、及び管理監督の実働を担っており、気候変動リスクについてはシナリオ分析の手法を通して事業へ重大な影響を及ぼす重要リスクを評価特定しています。特定した重要課題はサステナビリティ委員会に報告し、持続可能な社会の実現に係る諸課題も含め総合的に評価した上で取締役会へ報告の上、決議を得ることとしています。
以上のプロセスを通じて特定した重大課題については、サステナビリティ統括部会が事務局となり、リスク発生の未然防止策と、問題が発生した場合の早期発見及び損失の最小化のための対策が講じられ、各部門及び各グループ会社へ指示監督、進捗管理を行うこととしています。
④指標と目標
当社グループは、SDGsへの取り組みの一環として2021年から新中期経営計画「INNOVATION25」において、「2030年にグループ全体のCO2実質排出量(Scope1,2)30%削減※2018年度比」を経営目標の1つとして設定しており、当社グループの気候変動対応の取り組み状況の評価指標として引き続きその進捗を追ってまいります。
CO2排出量削減へ向けては取り組みを開始しており、福井県内の事業所(本社・鯖江工場)では水力電源100%の電力利用に全量を切り替え、電力由来のCO2排出量ゼロを実現しております。また、化石燃料使用に伴うCO2排出量の削減についても、ボイラー老朽化による更新に際して従来の重油燃料ボイラーからLNGボイラーへ更新しております。グループ全体においても生産工程削減の検討や省エネルギータイプ設備への変換、太陽光発電システムの設置やLED化の促進などに取り組むことで、環境負荷の低減を図っております。
(CO2排出量)
|
CO2排出量 実績 |
||
2023年 |
2018年(基準年) |
||
CO2総排出量排出量 |
16,378t-CO2 |
26,738t-CO2 |
|
内訳 |
SCOPE1排出量 |
6,096t-CO2 |
8,859t-CO2 |
SCOPE2排出量 |
10,282t-CO2 |
17,879t-CO2 |
(2)人的資本
当社グループにおける人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。
①人材育成に関する方針
当社グループは、多様な人材が世界中から集い、高いモチベーションで持てる能力を最大限に発揮しグローバルに活躍出来る企業集団を目指して、「人材」と「働き方」の多様性を高めると同時に、全グループ社員の仕事のやりがいと、貢献度の高い社員の満足度を向上させていくことで、当社グループの重要な経営フィロソフィーである「大家族主義」を進化させてまいります。
②社内環境整備に関する方針
a. 人材育成への取り組み
・選抜型次世代リーダー育成研修を実施し、経営的発想と事業構想力を習得させ将来を担える中核人材の育成を図っております。
・海外語学留学、マンツーマンの英会話レッスン、e-learning等の手段を用いて従業員の語学力向上に努めております。
・若手から中堅社員を海外現地法人へ派遣することで、海外勤務の経験と経営者としての育成を図っております。
・入社から退職まで、年代や役割に応じた各ステージで階層別研修を実施しております。
・2018年4月から、管理職に対して役割等級制度を導入し、評価制度、賃金体系を一新しました。年功要素を廃し、責任の重さ、役割の達成度、能力の進展のみに焦点を当て、会社への貢献度合いによって処遇を決めることとしております。
・同じく、一般社員についても、育成視点に立った制度の見直しを図っております。会社の発展には社員一人一人の成長が必要であるということを念頭に、成長を促す制度としております。具体的には、チヤレンジングな目標を設定し果敢に挑戦する環境を整え、上司は部下の成長に責任を持つことを求めると同時に、評価と賃金にメリハリをつけて管理職と同様に能力の発揮度合いによって処遇を決めることとしました。これらの制度改革は人事面から経営目標の達成へアプローチするものであり、今後も新人事制度が確実に機能するよう定着と運用に努めてまいります。
・2023年には、全職層を対象としてキャリアプランシートを導入しております。社員一人ひとりの自身を高めたいという思いを支援する取り組みであり、ありたい自分の将来を考え具体的な目標とし、積極果敢に挑んでもらいます。職場や上司は、面談や日々の業務の中で成長の促進役となり、管理職では複線化されているマネジメント職、プロフェッショナル職の選択においても早い段階から意識し目指すことでキャリアのミスマッチの防止にも努めてまいります。
b. 働き方改革
・当社グループでは、「女性、障害者、高齢者や外国人等多様な社員一人ひとりの活躍が、会社の成長に結びつく」という経営ポリシーを基に、2021年からの中期経営計画「INNOVATION25」においてもダイバーシティ経営への取り組みを進め、その中でもとりわけ「女性の活躍」については、当社の"成長戦略"として位置づけております。
・これまでも、フレックスタイム制度や在宅勤務を含めたテレワーク制度などの導入により、時間や場所にとらわれない多様な働き方が可能となったこと、また、2020年度には出産休業・育児休業取得者を対象とした就労支援制度を導入するなど、仕事と子育てを両立しやすい風土づくり・環境整備を進めてまいりました。
・今後も多様な働き方を選択できる環境下において、社員一人ひとりが現状に満足せず、高い目標に向かってチャレンジし続けられるよう、女性活躍を経営戦略として取り組んでまいります。
③指標及び日標
当社グループでは、中期経営計画「INNOVATION25」において、人財育成の推進を掲げております。また、女性活躍推進法に則り、一般事業主行動計画に策定・届出を行っており、以下の定量目標を設けて取り組みを進めております。
a.当社社員意識調査における設問項目の1つである「管理職を希望する」女性社員の比率を3分の1まで高めること
b.出産休業・育児休業取得者に対する復職時の就労支援制度を100%実施すること
④健康経営について
a.健康経営についての考え方
当社グループのパーパス「Activate Your Life」の実現には、社員一人ひとりが活き活きと働き、イノベーションを創発し続けることが不可欠です。会社の成長を支える社員とその家族の心身の健康を重要な経営資源と捉え、健康の維持・増進を図り、個性や能力を最大限に発揮できる環境づくりを行うことが会社そして社会の持続的な発展につながると考えております。
当社では健康経営を会社経営の最重要事項の一つとして積極的に取り組み、継続的に力強く推進してまいります。
b.健康経営の推進体制について
「NICCA健康経営宣言」の達成に向けて、従業員の健康増進活動を永続的に推進していくために、経営トップを健康経営最高責任者とする推進体制を組織しております。
実務を担当する総務を中心に、ISO45001(労働安全衛生マネジメントシステム)に関連する社内組織や労働組合、医療専門職、健康保険組合などの関係者が連携の輪をつくり、定期的な労働安全衛生の会議体などで議論しながら、健康増進活動に取り組んでおります。
なお、推進体制図につきましては、当社コーポレートウェブサイトをご覧ください。
https://www.nicca.co.jp/sustainable/society/health-management.html
c.健康経営戦略マップ
健康経営で解決したい課題に対し、施策の実施により期待する効果や具体的な取組などのつながりを認識し取り組んでいます。
なお、戦略マップの詳細につきましては、当社コーポレートウェブサイトをご覧ください。
https://www.nicca.co.jp/sustainable/society/health-management.html
d.健康経営に関する指標及び目標
健康診断による疾病の早期発見と医療専門家の指導による早期治療の促進、またメンタル不調による休業・休職者数に加え、長時間労働による疲労の蓄積を重点課題と捉え、諸課題とともに取り組みを進めております。健康な職場づくり活動(健康経営)の一層の推進に向けて、具体的な指標を制定しており、年度ごとに達成状況を確認し、それぞれの指標の目標達成に向けて取り組んでまいります。
項目 |
目標値 |
2023年度実績 |
|
①法定検診受診率 |
100% |
100% |
※1 |
②産業医指導による有所見者比率 |
7%以下 |
9.3% |
※2 |
③長時間労働者数(残業45時間超/月) |
年間累計30名以下 |
年間累計34名 |
※2 |
④高ストレス者割合 |
10%以下 |
11.7% |
※3 |
⑤非喫煙率 |
90%以上 |
77.7% |
※3 |
※1.2022年度実績、※2.対象期間:2023年1月~8月、※3.2023年7月調査実績
e.今後の取り組み方針
健康経営連絡会を設置し、サイト責任者と総務グループ推進担当者との連携をより強化していくとともに、健康経営に関する指標及び目標につきましては、特定保健指導利用率の目標を追加して、生活習慣病の予防に取り組んでまいります。
当社グループの経営成績、株価及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、事業等のリスクはこれらに限られるものではありません。
(1)海外展開とカントリーリスクについて
当社グループは16社の海外拠点を持ち連結売上高に占める海外売上高は40%を超えており、高い水準で海外市場に依存しております。従って、為替相場の影響を受けやすい状況にあります。当社グループは、外貨建ての債権と債務のバランスを考慮するほか、外貨建て債権の回収サイトの短縮化に努めており、その影響を最小限に抑えることができると考えておりますが、急激な為替相場の変動が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは複数の新興国において事業を展開しており、地域を分散させることでカントリーリスクの回避に努めておりますが、政治及び経済の急激な変動や紛争、テロ、暴動等があった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。
(2)市場の経済状況について
当社グループの製品に対する需要は、ファッション・アパレル業界、自動車業界、家具ほかテキスタイル産業資材業界、美容室業界、電子・半導体業界、クリーニング業界、化学品及び化粧品業界等の市場動向や消費者の需要変化の影響を受けます。また、当社グループは日本国内を始め、アジア各国に製品を販売しており、各国・各地域における経済状況が製品販売に大きな影響を与えております。当社グループは、グローバルな事業戦略のもと、各地域特性や消費者特性なども踏まえ、事業環境の変化に影響されにくい体質づくりを目指していますが、これら関連業界の需要減少、販売地域での景気動向、社会や産業の構造変化等により、当社グループの経営成績及び財務状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。
(3)新技術・新製品の開発・事業化について
当社グループは、持続的成長を支える原動力は研究開発にあると認識し、新製品開発を行うとともに、繊維化学品事業、化粧品事業に次ぐ、第三の事業の柱として新規事業の創出に注力しております。今後においても、中長期的な視点で計画的かつ継続的に経営資源を投入してまいります。しかしながら、これらの研究開発や新規事業の創出の進捗が、目標と大きく乖離した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。
また、AIやIOTといったデジタル分野での技術革新や産業全体に劇的な変化が発生し、当社グループが適切に対応できない場合には、当社グループの競争力の低下や信頼の下落が発生する可能性があります。
(4)原材料の市場変動の影響について
当社グループの生産のために調達する原材料は石油化学品の割合が高く、石油の国際市況の影響を受けやすい状況にあります。天然物及び石油関連原材料の割合が高く、需給バランス、天候不順、為替レートの変動に伴い市況価格が変動します。当社グループでは納入業者との共存体制の強化を図るとともに、コストダウンを推進し顧客対応力及び技術革新力による高付加価値製品の上市等により利益確保を図ってまいりますが、石油市況が急激に上昇した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。
(5)製品の欠陥について
当社グループは、化学品生産拠点において品質マネジメントシステムの国際規格ISO9001の認証を取得し、また、化粧品生産拠点において化粧品製造・品質管理の国際規格ISO22716の認証を取得しており、品質の向上に努め製品の製造を行っておりますが、全ての製品について欠陥がなく、将来的にクレームが発生する可能性が全くないという保証はありません。製品の欠陥は当社グループの評価に影響を与え、経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6)知的財産について
当社グループは、自社製品の保護及び競合他社との優位性を保つため、特許権、商標権、意匠権等の知的財産権確保による自社権益の保護に努めておりますが、模倣品等による権利侵害がなされる可能性があります。
また、当社グループは第三者の知的財産権を侵害しないよう、製品開発には外部専門家への依頼を含む十分な調査を行った上で活動を行っておりますが、万が一、当社グループが第三者より権利侵害の訴えを受けた場合、その動向によっては、当社グループの信用、経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。
(7)法的規制について
現在、国内外ともに人間の健康や環境保護に対し様々な法令が制定されており、特に環境面に関しては世界的な意識の高まりを受け、より法的規制が強化されております。当社グループの事業活動においては、化学品及び化粧品の化学物質の管理関連、製品製造関連、国内外への製品輸送関連をはじめとし、内部統制関連、労務関連、取引関連の法令などの数多くの規制を受けております。当社グループでは、これら法規制を確実に遵守するのは勿論のこと、品質や環境に関するISO基準の運用により活発な改善活動を進めています。しかし、これらの関連規制に加え、諸外国における同様の規制の追加及び変更が実施される場合や、当社グループの事業活動を継続するにあたっての主要な許可の取消しを受けた場合には、当社グループの事業活動が制限され、経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(8)金利の変動等について
当社グループの資金調達は、主にグループの自己資金と金融機関からの借入で賄っており、加重平均資本コストやD/Eレシオなどを考慮して資金調達をする方針ですが、予期せぬ金利水準の急激な変動やその他の金融市場の混乱があった場合には、資金調達及び調達コストに影響を与える可能性があります。
(9)固定資産の減損について
当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用しております。将来、当社グループが保有する固定資産について、経営環境の著しい悪化等による収益性の低下や市場価格の下落等により、減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(10)生産設備の毀損等について
当社グループは、日本及び海外に多くの生産拠点を構えており、火災等の事故発生リスクを抱えております。そのため、安全衛生委員会活動等の事故防止対策に積極的に取り組んでおります。また、不慮の事故が発生した場合にも十分な生産対応能力を有しておりますが、重大な災害や大規模地震等の自然災害等が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。
(11)情報セキュリティについて
当社グループは、ITを活用して事業や業務を効率的に進めるとともに、データを活用したビジネスを進めています。研究開発、生産、マーケティング、販売等に関する機密情報を保有し、また、販売促進活動やEコマースを進める上で、多くのお客様の個人情報を保有しています。当社グループは、情報セキュリティポリシーのもと、機密情報、個人情報及びハードウェア、ソフトウェア、その他データファイル等の情報資産の保護を目的とした情報セキュリティの強化を図っています。しかしながら、サイバー攻撃を含む意図的な行為や過失等により、機密情報や個人情報が外部に流出する可能性があります。このような事態が発生した場合、当社グループに対する損害賠償請求、当社グループの信用下落、収益機会の損失等により、当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。
(12)中期経営計画に記載の将来情報について
当社グループは、2025年度を最終年度とする5か年中期経営計画『INNOVATION25』を策定しております。策定時における国内外の市場環境、競合環境、技術開発、為替相場や原材料価格等の経営環境及びその見通しに基づき策定しておりますが、経済情勢の変動等の経営環境における様々な不確定要因により、全社基本戦略に掲げた諸施策が計画通りに進まない可能性や、数値目標の達成に至らない可能性があります。
(13)自然災害について
当社グループは、地震、強風、水害等の自然災害が発生した場合の備えを強化しておりますが、想定を超える大規模な自然災害が発生した場合には、事業活動の中断、生産設備への被害、サプライチェーンの寸断による生産活動の停止、交通遮断による製品出荷の停止など、不測の事態が発生する可能性があります。これらの不測の事態が発生したことにより、一時的または長期に渡る事業活動の停止があった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績等の状況
当連結会計年度(自 2023年1月1日 至 2023年12月31日)における世界経済は、ウクライナ情勢の長期化や中東地方の紛争発生などの地政学リスクに加え、米欧の金融引き締めや中国景気の減速などから、依然として不透明な状況が続いております。また、わが国経済は、新型コロナウイルスの第5類への移行後、経済活動の正常化が進み、経済環境には持ち直しの兆候も見受けられますが、円安の進行を背景として資源及び原材料価格は高騰し、物価の上昇が継続している中で消費者マインドは停滞し、国内における経営環境は厳しい状況となっております。
このような中、当社グループは中期経営計画のスタートにあたり、この先20年、30年という長期スパンで何を目指していくのかを考え、企業パーパスを「Activate Your Life」と定めました。「Activate Your Life」とは、ステークホルダーとともに、無限に広がる界面カガクのチカラで様々な社会課題を解決し、より豊かな暮らしや輝く未来に貢献することです。この企業パーパスに基づき、中長期成長ビジョンとして『世界中のお客様から最も信頼されるイノベーション・カンパニー』を掲げ、3か年中期経営計画『INNOVATION25』(2023-2025)を策定し、現在、中期経営計画の5大戦略である「事業構造の大転換」「メリハリのある投資」「生産性改革」「サステナブル経営の推進」「大家族主義の進化」の推進に取り組んでいるところであります。
今後も激変していく経営環境をビジネスチャンスへと昇華し、社会からますます必要とされる価値を提供する事業に注力し永続的成長を目指してまいります。
この結果、売上高50,169百万円(前年同期比0.9%減)、営業利益2,039百万円(前年同期比22.4%減)、経常利益2,528百万円(前年同期比19.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益1,691百万円(前年同期比20.0%減)となりました。
売上高につきましては、世界情勢の不安にも影響された需要停滞の影響を受け減収となりました。
営業利益、経常利益につきましては、原材料の高騰の影響を受けながらも、価格改定や新商品の上市などを進めましたが、販管費が増加したこともあり、減益となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、経常利益の減少に伴い減益となりました。
セグメントの業績は次のとおりであります。
なお、文中の各セグメントの売上高は、セグメント間の内部売上高を含んでおりません。
(化学品事業)
化学品事業には、当社グループの主力となる繊維加工用薬剤の他に情報記録紙用薬剤、樹脂原料、業務用クリーニング薬剤、医療・介護施設向け薬剤及びその他機能性化学品が含まれております。
売上高は35,605百万円(前年同期比1.8%減)、セグメント利益は1,803百万円(前年同期比3.1%減)となりました。上期は、繊維市場における欧米アパレルの在庫調整、コロナ急拡大に伴う中国の稼働率低下、半導体市場不況などの影響を大きく受けましたが、下期は、アパレル市場の一部や中国の回復、新規ビジネス獲得、価格改定・コストダウンによる収益力向上などにより、売上・利益共に半期ベースで過去最高水準となりました。
(化粧品事業)
化粧品事業はヘアケア剤、ヘアカラー剤、パーマ剤、スキャルプケア剤及びスタイリング剤が主な取扱品であります。
売上高は13,977百万円(前年同期比5.4%増)、セグメント利益は2,044百万円(前年同期比16.2%減)となりました。当社デミコスメティクスにおきましては、美容サロンの来店客数減による市況悪化の影響を受けたものの、新ブランドの拡販等により堅調に推移いたしました。連結子会社におきましては、DEMI KOREA CO.,LTD.における販売や山田製薬株式会社における受託事業が好調に推移いたしました。一方で、デミコスメティクスでの戦略的なプロモーション投資等により利益は減少しました。
(その他事業)
売上高は586百万円(前年同期比46.4%減)、セグメント利益は64百万円(前年同期比50.7%減)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動によるキャッシュ・フロー4,086百万円の獲得、投資活動によるキャッシュ・フロー876百万円の支出、財務活動によるキャッシュ・フロー1,740百万円の支出により、前連結会計年度に比べ1,714百万円増加し7,977百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られたキャッシュ・フローは4,086百万円となりました。
これは主に、税金等調整前当期純利益2,525百万円、減価償却費2,269百万円と、棚卸資産の減少による収入827百万円、仕入債務の減少による支出808百万円及び法人税等の支払額による支出807百万円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用したキャッシュ・フローは876百万円となりました。
これは主に、定期預金の払戻による収入1,240百万円、定期預金の預入による支出782百万円、有形固定資産の取得による支出1,148百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用したキャッシュ・フローは1,740百万円となりました。
これは主に、借入の返済による支出(純額)1,068百万円、配当金の支払551百万円によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
前年同期比(%) |
化学品(百万円) |
31,212 |
90.5 |
化粧品(百万円) |
3,062 |
97.2 |
報告セグメント計(百万円) |
34,274 |
91.1 |
合計(百万円) |
34,274 |
91.1 |
(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
2.報告セグメント以外のその他については、生産活動になじまないため記載しておりません。
b.製商品仕入実績
当連結会計年度の製商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
前年同期比(%) |
化学品(百万円) |
3,265 |
95.0 |
化粧品(百万円) |
1,220 |
123.4 |
報告セグメント計(百万円) |
4,485 |
101.3 |
合計(百万円) |
4,485 |
101.3 |
(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
2.報告セグメント以外のその他については、仕入実績はありませんので記載を省略しております。
c.受注実績
当社グループは、主として、販売計画、生産状況を基礎とした見込生産を行っており、記載を省略しております。
d.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
前年同期比(%) |
化学品(百万円) |
35,605 |
98.2 |
化粧品(百万円) |
13,977 |
105.4 |
報告セグメント計(百万円) |
49,582 |
100.1 |
その他 |
586 |
53.6 |
合計(百万円) |
50,169 |
99.1 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態の分析
(資産合計)
当連結会計年度末の資産につきましては、前連結会計年度末に比べ、796百万円増加し56,918百万円となりました。この主な要因は、現金及び預金が1,291百万円、受取手形、売掛金及び契約資産が593百万円増加した一方、有形固定資産が522百万円減少したことによるものであります。
(負債合計)
負債につきましては、前連結会計年度末に比べ、1,633百万円減少し24,096百万円となりました。この主な要因は、支払手形及び買掛金が648百万円、借入金が1,068百万円減少したことによるものであります。
(純資産合計)
純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ、2,429百万円増加し32,822百万円となりました。この主な要因は、利益剰余金が1,138百万円及び為替換算調整勘定が946百万円増加したことによるものであります。
b.経営成績の分析
当連結会計年度の売上高は、売上高50,169百万円(前年同期比0.9%減)となりました。売上高につきましては、世界情勢の不安にも影響された需要停滞の影響を受け減収となりました。なお、セグメントの概況につきましては「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。
営業利益は2,039百万円(前年同期比22.4%減)となりました。経常利益は2,528百万円(前年同期比19.3%減)となりました。営業利益、経常利益につきましては、原材料の高騰の影響を受けながらも、価格改定や新商品の上市などを進めましたが、販管費が増加したこともあり、減益となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益1,691百万円(前年同期比20.0%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、経常利益の減少に伴い減益となりました。
c.経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
d.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析内容・検討内容
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績等の状況」に記載のとおりであります。
e.経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当連結会計年度における売上高は50,169百万円、営業利益は2,039百万円、ROSは4.1%、ROEは5.8%、ROICは3.6%であります。引き続きこれらの指標について、改善されるよう取り組んでまいります。
各指標の推移は以下のとおりです。
|
第106期 |
第107期 |
第108期 |
第109期 |
第110期 |
売上高(百万円) |
46,191 |
41,179 |
48,474 |
50,627 |
50,169 |
営業利益(百万円) |
1,395 |
1,416 |
2,453 |
2,628 |
2,039 |
ROS(%) |
3.0 |
3.4 |
5.1 |
5.2 |
4.1 |
ROE(%) |
4.5 |
5.1 |
11.3 |
8.0 |
5.8 |
ROIC(%) |
2.4 |
2.7 |
4.6 |
4.6 |
3.6 |
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
また、当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、当社グループの運転資金・設備投資資金については、営業活動から獲得する自己資金及び金融機関からの借入による調達を基本としております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたっては、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
該当事項はありません。
当社グループは、持続的な成長と技術革新の実現をめざし、研究開発活動に注力しております。
当連結会計年度は、中長期重点領域である「EHD(E/環境、H/健康・衛生、D/先端材料)」領域における研究開発活動に注力し、全世界の共通課題であるSDGsの達成に向け、引き続きデジタルツールの積極的な導入・活用によるデータ駆動型研究開発活動の推進と、当社グループの研究開発中核拠点である「NICCA イノベーションセンター」(以下「NIC」)における当社の技術力を活かした各分野でのオープンイノベーションを推進することで、ビジネスパートナーとの距離を縮め、社内外の情報やアイデアを組み合わせることで、新しい製品と事業の創出に取り組んでまいりました。
さらに、化学品事業の界面科学研究所と化粧品事業の毛髪科学研究所が一体となり、日華化学(中国)有限公司の研究開発部門、台湾日華化学工業股份有限公司の先端研発センター、NICCA KOREA CO.,LTD. の付設研究所、PT. INDONESIA NIKKA CHEMICALSの研究開発部門など、海外子会社の研究開発部門と連携しながら相乗効果を発揮することで、既存事業の強化と新展開、新規事業の創生を進めております。
当連結会計年度における新規の特許登録件数は、国内で24件、海外で12件となりました。特許の期間満了及び不要特許の整理を実施したため、当連結会計年度末において当社の特許保有件数は、国内で8件減少により211件となり、海外で6件増加により111件となりました。
当連結会計年度の各セグメント別研究開発活動の状況は、次のとおりです。
研究開発費については、当社グループの研究開発費を各セグメントに配分したもので、当連結会計年度の総額は
(1)化学品事業
当連結会計年度における研究開発費は、
①Eの領域
当連結会計年度では、EHD領域の中でも特に、これまでも先駆的な環境対応型製品開発を行ってきたE領域での開発に傾注した結果、主力の繊維加工用薬剤では染色工場での使用水量を激減させるなどの環境対応処方を提案するSDP(Smart Dyeing Process)や、自然乾燥でも撥水性が回復するこれまでの常識を覆すフッ素フリー系撥水剤、自然由来原料やバイオ系原料、再生原料を積極活用した低カーボンフットプリントの分散均染剤等を開発致しました。また、有機溶剤を含まず環境と健康により優しい水系ウレタン樹脂については、高機能化と軽量化の実現が必要な次世代モビリティ用途に加え、意匠性を付与する機能性塗料・コーティング用バインダーとしての応用開発を継続して行っており、自動車内装材への採用が始まりました。循環経済実現に向けて要望が高まっている素材のリサイクル性向上においては、素材のモノマテリアル化検討や使用済みフイルムをリサイクルするための剥離剤について顧客での評価が進展致しました。
また、オープンイノベーションの取組みをBtoB企業からBtoC企業に広げ、抗ピリング・抗スナッグ・防汚加工を施したニトリ社・帝人フロンティア社との3社共同開発家具「Nシールドファブリック」シリーズへの採用、ポリエステル繊維から分散染料を脱色するネオクロマト加工の技術をアートネイチャー社の人工毛髪「レクアファントム」に応用展開するなど、新たなビジネスモデル展開に先鞭をつけました。今後も益々要望が高まる環境対応に向け、カーボンフットプリントやウォーターフットプリント低減を意識した、非石油ベース・天然由来原料等を活用した製品そのものの環境対応を継続して推進すると共に、CO₂排出量削減に貢献する製品ならびにソリューション開発に注力し、持続可能な社会と循環型経済の実現に寄与してまいります。
②Hの領域
新領域開拓において、医科用洗浄機向け薬剤や医療現場向け環境除菌剤の開発が進展し、AHP(加速化過酸化水素)系環境除菌剤「リフレシアSH-01」及び医薬品製造ライン用洗浄剤の新製品を上市致しました。核酸医薬用途での検討が進む人工核酸については、既存品の安定供給に加え、新グレードの開発を実施し、体外診断薬キット開発では、複数の医工系大学との連携強化による開発を継続しております。引き続き世界中の人々の健康と豊かな暮らしの実現に貢献してまいります。
③Dの領域
半導体、次世代通信端末、ディスプレイに関する新規デバイスおよび材料を中心に研究開発を実施しております。子会社の大智化学産業との連携強化により、環境にやさしい水系でリサイクル可能なセラミックス加工用薬剤のグローバル開発が進みました。DX・5G通信分野では、フィルムコンデンサー向けマスキングオイル、精密潤滑用途を中心に製品の工程改善を進め、品質向上と安定供給を実現しました。また、高周波領域での低誘電損失が特徴のフッ素化学品の開発につきましても、多様な開発品をお客様に提供することにより、多用途での取り組みが進展致しました。引き続き、高度化する機能要求に対応できる特殊樹脂原料、特殊ポリマー、接着剤並びにコーディング剤の開発を実施し、IoTやAIなど最新技術の活用がますます進行するスマート社会の進展に寄与してまいります。
研究開発体制は、日本、中国・台湾、韓国、インドネシアの5つの拠点を中心に約250名の研究人員を擁しており、研究基幹システムの整備によりグループにおける研究開発の効率化を進めています。研究開発効率化と技術継承の点から電子実験ノートを国内で先行導入し、国内留学とe-learningを活用した社内教育プログラムの実施により、データ駆動型研究開発推進に不可欠なデジタル人材の育成を推進しております。また、技術継承の点においては、過去から現在までに実施してきた技術開発の棚卸しを行い、当社技術の整理による新規事業創出の基盤整備を行いました。
今後もDXロードマップに基づくデータサイエンス関連強化と教育拡充による効率的な研究開発を担う人材開発を進めると共に、更なる研究・実験作業のスピードアップと省力化を目的としたロボティクス導入と積極的なデジタル活用を推進、北欧・アジア等の研究機関や大学とのオープンイノベーションによる開発品投入と新規事業創出の早期化を進め、社会課題の解決に寄与してまいります。
(2)化粧品事業
当連結会計年度における研究開発費は
美容業界は、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類へ移行したことを受け、経済の回復や外出機会の増加が進み、個人消費やインバウンド消費に緩やかな回復が見える一方で、物価上昇に伴う節約志向の高まりなど先行き不透明な状況が続いています。このような市場環境のもと業界が一体となって、美容室における来店頻度の向上、スタッフの生産性アップのための高付加価値メニュー創出と店頭販売商品の推進にデジタルを取り入れながら取り組んでおります。
国内においては、デザインカラーの人気が継続している一方で、繰り返しによる髪のダメージが増加し、ケアニーズが高まっています。また、大人世代の髪が細くなる、薄くなる、白髪が増えるなどの悩みは変わらず増加しており、安全、安心に対する意識の高まりも相まって、高付加価値の店頭販売商品の市場は伸び続けております。
このような状況に対応すべく、当社の毛髪科学研究所は、ヘアケア、スカルプケアの店頭販売商品開発及び美容室におけるヘアカラーの高付加価値商品開発にさらに注力しております。
スカルプケア分野において、国内有数の研究機関との共同研究で発見した毛根活性成分を配合したスカルプケアブランド「DEMI DO」及びメンズニーズに対応した「DEMI DO MEN」を発売致しました。お客様ひとりひとりの地肌と髪のパフォーマンスを最大限に引き出し、付加価値をさらに高めるスカルプケア商品の開発に引き続き取り組んでおります。
また、ヘアカラー分野においては、ハイトーンカラーやデザインカラーなどヘアカラーニーズが多様化しており、そのニーズに対応するべく主力ブランド「アソート アリアC」をフルリニューアルし、「トイロクション」を発売致しました。彩度の高い力強い色味から透明感のある色味まで幅広く色を表現することが可能で、水鳥ケラチンを配合することで、髪のダメージホールを整えながらカラーリングをすることが可能となり、ダメージに左右されない発色を実現しています。また、従来よりも生産時間を8.4%短縮し、CO₂の削減にも寄与しております。お客様のニーズに対応すべく付加価値の高いヘアカラー開発に引き続き取り組んでおります。
基礎研究においては、「すべての人に10代の髪を生やす」という長期ビジョンを掲げ、研究機関や大学との共同研究による毛髪と皮膚・頭皮の微細構造の解析、毛髪と皮膚のダメージの解析並びに植物抽出成分、天然成分による新たな機能性探究を進めるとともに、新規市場創造のための素材開発、用途開発に取り組んでおります。また、サステナブルな社会を実現するために、さらに環境にやさしい製品開発に取り組んでおります。