以下に記載の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものです。
(1) 経営の基本方針
① 経営の基本方針
当社は、取締役会で策定する「経営の基本方針」の中で下記のとおり定めております。
[経営目標] 野村グループは、社会からの信頼および株主・顧客をはじめとしたステークホルダーの満足度の向上を通じて企業価値を高めることを経営目標とする。 『グローバル金融サービス・グループ』として国内外の顧客に付加価値の高いソリューションを提供するとともに、当グループに課せられた社会的使命を踏まえて経済の成長や社会の発展に貢献していく。 企業価値の向上にあたっては、経営指標として自己資本利益率(ROE)を用い、ビジネスの持続的な変革を図るものとする。
[グループ経営の基本観] ⑴新たな事業領域におけるビジネスの拡大をいち早く実現することにより、自ら新しい成長モデルを構築する。また、的確なコスト・コントロールおよびリスク・マネジメントにより、市場環境に左右されにくい収益構造を実現する。 ⑵顧客やマーケットの声に真摯に耳を傾け、ビジネスの可能性を広く捉えながら、金融・資本市場を通じた付加価値の高い問題解決策を顧客に提供し、あらゆる投資に関して最高のサービスを提供する会社を目指す。 ⑶法令・諸規則の遵守と適正な企業行動を重視し、日々の業務執行においてコンプライアンスおよびコンダクト・リスク管理を実践する。野村グループ各社は、顧客の利益を尊重し、業務に関する諸規制を遵守する。 ⑷経営に対する実効性の高い監督機能の確保および経営の透明性の向上に努める。 ⑸事業活動を通じて証券市場の拡大に貢献するとともに、企業市民として、経済・証券に関する教育機会の提供を中心とした社会貢献活動に積極的に取り組む。 |
当社は、この経営目標を基礎としつつ、下記の経営ビジョンを定めています。
② 経営ビジョン
当社がグループとして取り組んでいる多様なビジネスは、お客様をはじめとしたすべてのステークホルダーの皆様からの信頼の上になりたっており、当社の企業価値の向上と社会全体の持続可能な成長は同じ道の上にあると考えております。このことから、当社は、「社会課題の解決を通じた持続的成長の実現」を経営ビジョンとしています。
(2) 経営環境
当期においては、ウクライナ紛争勃発などを背景とする一次産品市況高騰、米欧先進地域経済が感染症禍から経済活動を再開するにつれて生じた半導体不足などの供給制約に端を発し、世界的なインフレ加速が生じました。インフレ加速とその長期化に対し、米FRB(連邦準備制度理事会)を中心に主要中央銀行は、急速な金融政策の引き締めを実施しました。主要先進国の国債利回りは、インフレ予想の広がりと金融引き締め継続を織り込んで上昇しました。また、市場金利の急激な上昇に伴うバリュエーション(株式価値評価)の悪化や、金融引き締めによる経済成長抑制懸念などを背景に、主要先進地域株式市場では株価の調整が生じました。
当期の後半には、主要先進地域においてインフレの頭打ち感が生じるとともに、米国の政策金利引き上げ局面が終了するとの期待が生じ、株式市場が持ち直す動きもみられました。「ゼロコロナ政策」といわれる厳格な感染対策を継続してきた中国政府が、2022年末には制限の緩和へと政策を転換し、中国を起点とした世界経済成長の持ち直しに対する期待感も高まりました。
日本では、世界的なインフレ加速と連動してインフレ率が高まる下、海外金利の上昇が国債利回りにも上昇圧力を及ぼし、10年国債利回りに誘導目標と許容変動レンジを設定している日本銀行の長短金利操作(YCC)政策の持続が困難になるとの懸念が高まりました。2022年12月に日銀が10年国債利回りの許容変動レンジを+/-0.25%ポイントから同0.50%ポイントに拡大したことを更なる政策修正に向けた予兆と一部の市場関係者が解釈したこと、日本国債市場では、2023年4月の日銀総裁交代が政策修正に結び付くとの思惑が根強く、日銀の政策期待を背景とした利回り上昇圧力が継続しました。
国内外におけるインフレ格差と、それを反映した金融政策の乖離は、為替レートの大幅な円安化をもたらし、2022年10月にかけドル円レートは一時1ドル=151円台に達しました。
(3) 対処すべき課題
野村グループを取り巻く経営環境は大きな変化の只中にあります。引き続き、適正な財務基盤の維持と、資本効率の改善等を通じた経営資源の有効活用を図りながら、機動的に対応してまいります。また、現状に満足せず、既存ビジネスの拡大とお客様へのさらなる付加価値の提供を目指し、常に新たな取組みも実践します。
① 中長期の優先課題
「野村を今立っている場所とは違うところ、次のステージに進める」という考えのもと、その実現に向けた戦略の1つとして「パブリックに加え、プライベート領域への拡大・強化」を打ち出しました。「顧客基盤の拡大」「商品・サービスの拡充」および「デジタルを活用したデリバリー」、これら3つの軸に関連したさまざまな施策を通して、一人ひとりのお客様にカスタマイズされた「プライベート、あなただけのため」のサービス・ソリューションの提供を強化していきます。この戦略に基づき、たとえば、下記のような取組みで成果が見え始めています。なお、ビジネスの各部門の取組みについては、各部門の課題、取組みもご参照ください。
ⅰ 資産コンサルティング業への転換
国内の個人のお客様に対しては、資産コンサルティング業への転換を進めています。中長期的な観点でお客様にベストと思われる資産コンサルティングをご提供し、お客様が資産を増やすサポートをさせていただき、預り残高を増やすことで結果として私たちがいただくフィー収入を増やすことを目指しています。
お預かりした資産に対し運用管理費用等の手数料を頂戴する投資信託などのストック資産に基づく収入が着実に拡大することで、収益構造の安定化に寄与しています。
多様化するお客様のニーズに的確にお応えするため、お客様の属性やニーズに沿ったセグメンテーションの下、お客様の属性に合わせてパートナー(営業担当者)を配置し、各領域におけるソリューションを提供する領域別のアプローチを強化しています。
加えて、職域ビジネスの強化や地域金融機関との包括提携によるアライアンスを通じたビジネスの広がりにより、顧客基盤の拡大を図っていきます。
ⅱ インベストメント・マネジメントの強化
経営戦略として掲げている「パブリックに加え、プライベート領域への拡大・強化」の一環として、多様化するお客様の運用ニーズに応えることを目的に、2021年4月インベストメント・マネジメント(IM)部門を設立しました。同部門では、伝統的な運用商品を強化・拡大すると同時に、オルタナティブ資産などプライベート領域への投資機会の提供を目指しています。
部門設立以来、国内では未上場株に投資する投資法人や事業承継のための株式取得ファンド(サーチファンド)、私募不動産ファンド、海外ではプライベート・クレジットファンドや森林資源ファンドなど、プライベート領域での投資機会を拡張してきました。また、米国非上場REIT(不動産投資信託)に投資する公募投資信託を設定し、国内の個人投資家にも投資いただいています。幅広いプライベート資産の領域に挑戦し、投資家の方々が投資しやすい環境を整えることが野村の使命と考えています。
ⅲ ホールセールビジネスにおける業績の安定化と成長
ホールセールビジネスでは、コア・プロダクトでは高いマーケットシェアを維持しつつ、収益源の多様化を図っています。また、流動性の供給やお客様へのソリューション提供を行っていきます。
M&Aアドバイザリー等の資本負荷の低いオリジネーション・ビジネスについては、米州を起点にグローバルにビジネスを拡大しています。特に、米州では、サステナブル・テクノロジーとインフラストラクチャーの分野において高いプレゼンスを持つ「グリーンテック・キャピタル」を買収し、2020年4月より「ノムラ・グリーンテック」として運営しています。野村が持つグローバルな顧客基盤に対してファイナンス等のソリューションをシームレスに提供していきます。
また、市場変動の影響を受けにくいソリューションビジネスについては、インフラ・ファイナンスやファンド向けファイナンス等のストラクチャード・ファイナンスで実績を積み上げています。
ⅳ デジタル金融サービスの強化
デジタル化への取組みは、今後の金融機関の競争力に直結するものであり、お客様へ利便性の高いサービスを提供し、多様化するニーズにお応えするため、引き続きグループ戦略に基づき幅広い取組みを推進していきます。また、デジタル化が進展した世界においても、人材は野村グループの生み出す付加価値の源泉であると捉え、対面と非対面を駆使したコンサルティング能力など、これからの時代に求められる資質を備えた人材の育成を強化していきます。加えて、2022年4月には、海外を含む野村グループ内におけるデジタル分野の協業を一層強化するとともに、注力領域のさらなる取組み強化を企図し、「デジタル・カンパニー」を設立しました。デジタル化の推進における個別の取組み状況は下記のとおりです。
・業務の効率化・高度化
デジタル化による社内業務の自動化・効率化により、より付加価値の高い分析・アドバイザリー業務に注力することができるよう取り組んでいます。また既存サービスを改善することにより、満足度の高いコミュニケーション手法を活用した、当社のサービスの提供を目指しています。加えて、当社では、「デジタルIQ」という社員のデジタルに関する知識習得をサポートするオンラインプログラムを実施しており、グループ全体の基礎となるデジタル知識の向上を目指しています。なお、人材育成におけるデジタル化の取組みについては、「第2[事業の状況] 2[サステナビリティに関する考え方及び取組](5)野村の人的資本に関する戦略」の項目もご参照ください。
・顧客接点のデジタル化
営業部門においては、独自の営業支援システム「リモート相談」を活用しています。また資産管理アプリ「OneStock」、投資情報アプリ「FiNTOS!」などの活用を拡充することで従来十分なアプローチができていなかった若年層や働く世代のお客様に野村のサービスをお届けするためのプラットフォームを構築していきます。
・デジタルアセット・ビジネスへの参画
新領域におけるビジネス創出にも取り組んでいます。2022年9月にデジタル・アセット関連のサービスを行う子会社、Laser Digital Holdings AGをスイス連邦に設立しました。セカンダリー・トレーディング、ベンチャー・キャピタル、投資商品の3つの分野にフォーカスし、今後新しいサービスや商品群を段階的にローンチしていくことを目指します。
ⅴ サステナビリティへの取組み
「第2[事業の状況]2[サステナビリティに関する考え方及び取組]」の項目をご参照ください。
② 部門別の課題
各部門の課題、取組みは以下のとおりです。
[営業部門]
営業部門においては、「お客様の資産の悩みに応えて、お客様を豊かにする」という基本観のもと、多くの人々に必要とされる金融機関を目指しております。今後は、資産承継や老後資金の不足に対する不安など、多様化する資産の悩みに的確に応えるため、パートナー(営業担当者)のスキルアップを継続して図るとともに、幅広い商品・サービスの充実に努めます。また多くのお客様にご利用いただけるオンラインサービスの拡充と、コンタクトセンター等を通じたリモートコンサルティング体制の強化を進めてまいります。
[インベストメント・マネジメント部門]
インベストメント・マネジメント部門は、広義のアセット・マネジメント・ビジネスにおいて、多様化するお客様の運用ニーズに応える商品・サービスの提供を担っています。株式・債券などの伝統的資産からプライベート・エクイティなどのオルタナティブ資産まで、グループ内の専門性を融合し付加価値を向上させることで、お客様の多様なニーズに対応する高度なサービスとソリューションを提供します。パブリック領域においては、運用能力の強化を通じた運用パフォーマンスの改善や運用戦略の拡張、運用ソリューション提供の高度化を目指します。プライベート領域においては、運用ビジネスのスケール化、不動産やインフラなどリアルアセット運用への進出、日本国外におけるプライベート・アセット運用事業の本格化に取り組んでいます。運用報酬率に下方圧力が継続する中、ビジネスの高付加価値化と適切なコスト管理を追求するとともに、プライベート領域を中心とした成長分野への投資を拡大しています。
[ホールセール部門]
ホールセール部門においては、お客様のニーズのさらなる高度化やテクノロジーの発展に加えて、不透明なマーケットおよびマクロ環境などが我々のビジネスに影響を及ぼす可能性があります。引き続きお客様へ高度なサービスと付加価値を提供し続けるために、各ビジネスライン、国内外および他部門との連携を強化し、しっかりとリスクコントロールを行ってまいります。ビジネスの領域を広げるとともに成長の見込まれる分野に効率的に財務リソースを活用していきます。
グローバル・マーケッツでは、リスク管理の強化を図りながらお客様に流動性の提供を継続してまいります。また、ビジネス・ポートフォリオの多角化とグローバル連携の強化を行い、ストラクチャード・ファイナンスやソリューションビジネス、およびインターナショナルウェルスマネジメントなどの成長分野における収益機会の追求、そしてエクイティビジネスの拡大、フローマクロビジネスの強化をさらに推し進めてまいります。
一方、インベストメント・バンキングでは、事業環境の変化にともないお客様のビジネス活動やニーズが変化する中、国内外で業界再編・事業再編に関するアドバイザリーや資金調達、またそれらの取引に付随する金利・為替ビジネスなどのソリューションビジネスの提供に努めてまいります。グローバルにアドバイザリー・ビジネスの拡大に注力するとともに、ノムラ・グリーンテックの知見のさらなる活用、サステナブル・ファイナンスの体制拡充などにより、ESG関連ビジネスへの取組みを強化していきます。
[リスク・マネジメント、コンプライアンスなど]
野村グループでは、経営戦略の目的と事業計画を達成するために許容するリスクの種類と水準をリスク・アペタイトとして定め、それをリスク・アペタイト・ステートメントとして文書化しています。その上で、事業戦略に合致し、適切な経営判断に資するリスク管理体制を継続的に拡充していくことにより、財務の健全性の確保および企業価値の向上に努めています。
野村グループでは、リスク・アペタイト・ステートメントにおいて、3つの防衛線による管理体制の下、すべての役職員が自らの役割を認識し、能動的にリスク管理に取り組むことを明記しています。またグループ会社を含む役職員への継続的な研修の実施等を通じ、金融のプロフェッショナルとしてリスクに関する知識を深め、リスクを正しく認識・評価し、管理する企業文化、すなわちリスク・カルチャーの醸成に努めています。詳細は「第4[提出会社の状況]4[コーポレート・ガバナンスの状況等](1)[コーポレート・ガバナンスの概要]リスク管理体制の整備」をご参照ください。
コンプライアンスの観点からは、野村グループがビジネスを展開している各国の法令諸規則を遵守するための管理体制の整備に引き続き取り組むとともに、すべての役職員がより高い倫理観を持って自律的に業務に取り組めるよう社内の制度やルールの見直しを継続的に実施しております。
また野村グループでは、法令諸規則の遵守にとどまらず、すべての役職員が社会規範に沿った行動ができるよう、野村グループの一員として取るべき行動の指針として「野村グループ行動規範」を策定し、研修その他の施策を通して、行動規範に基づく適正な行為(以下「コンダクト」)を推進する取組みを日々進めております。毎年8月の「野村『創業理念と企業倫理』の日」では、全社で過去の不祥事からの教訓を再認識し、再発防止と社会およびお客様からの信頼の維持・獲得に向けて決意を新たにする取組みとして、過去の不祥事を振り返ったうえでの適正なコンダクトの在り方に関するディスカッション、行動規範を遵守することへの宣誓を行っております。行動規範は、刻々と変化する社会の要請に継続して応えていくため、私たちの考え方が社会の常識からずれていないか常に見つめ直し、定期的に見直すこととしています。
以上の課題に対処し、解決することを通じて、金融・資本市場の安定とさらなる発展とともに、野村グループの持続的な成長に尽力してまいります。
(1)野村におけるサステナビリティに関する考え方(戦略)
野村では、「金融資本市場を通じて、真に豊かな社会の創造に貢献する」という企業理念を掲げています。この考えは、野村の存在価値かつ社会的責任というべきものとして創業以来受け継がれ、大切にしている価値観です。この価値観のもと、野村では、サステナビリティを我々の事業活動そのものと捉え、経営戦略に組み込んだ運営を行っています。
具体的には、サステナビリティを、事業活動を通じ、お客様や多様なステークホルダーのサステナビリティへの取り組みをサポートするということ、当社自身がサステナブルな存在であるために環境負荷低減やガバナンスの高度化といった活動を推進していくこと、という2つの観点で捉え、取組みを進めています。
・事業活動を通じ、お客様や多様なステークホルダーのサステナビリティへの取組みをサポートする取組み
金融サービスグループとして核となるのは、資金や資本の流れを通じたお客様のサポートです。事業会社や金融機関が発行するグリーンボンドやソーシャルボンドなどの引受けや、M&Aなどの戦略的アドバイザリーサービスの提供、投資対象としてのESG関連ファンドの開発や個人投資家への提供を通じたサステナブルな資金循環の促進といった機能を強化することは、お客様に選んでいただくために重要であると考えています。加えて、野村が長年培ってきた事業承継のサポート機能や、地方創生や農業・医療分野でのイノベーション推進機能、調査分析の分野における専門性や知見も活かしながら、社会課題解決のためのソリューション提供に、グループとしての総合力、強みを発揮してまいります。また、野村では、1990年代から20年以上にわたり、小学生から大人まで幅広い世代に金融・経済教育を提供してきました。2022年4月にはその機能を集約・強化し、幅広い世代に一気通貫で金融・経済教育機会を提供することを目的とした「ファイナンシャル・ウェルビーイング室」を新設しています。野村はこれからも社会全体の金融リテラシーの向上に貢献していきます。
・野村自身がサステナブルな存在であるための取組み
野村は、2030年までに野村の拠点で排出する温室効果ガス排出量を実質ゼロとする「ネットゼロ」を達成すること、および2050年までに投融資ポートフォリオの温室効果ガス排出量のネットゼロ達成を目指すことを表明しています。また、当社は国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)が発足させた国際的枠組みであるネット・ゼロ・バンキング・アライアンス(Net-Zero Banking Alliance、以下「NZBA」)に加盟しております。野村では、そのほかにも多くのイニシアティブに参画しており、今後も引き続き持続可能な環境・社会の実現のための取組みを一層推進してまいります。
また、社会課題の解決を通じた持続的成長と企業価値向上の実現においては人材マネジメント戦略の進化が不可欠です。そのため、野村では人材マネジメントサイクルの差別化、DEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)、社員の働き方、ウェルビーイングおよび帰属意識の高度化に向けたさまざまな取組みを進めています。(詳細は、「
(2)サステナビリティに関するガバナンス
当社は指名委員会等設置会社として、経営の監督と業務執行を切り離し、コーポレート・ガバナンスの高度化を図っています。気候変動を含むサステナビリティに関するリスクや機会の認識、種々の施策の推進、リスク管理についても、監督と執行がそれぞれの役割を果たすことで、適切に取り組んでいます。
① 取締役会
取締役会は、「野村グループ企業理念に則り、さまざまな事業活動を通じて金融資本市場の発展に貢献するとともに、当社の持続的成長、社会課題の解決および持続可能な社会の実現に向けた活動に積極的に取り組む」というサステナビリティに関する基本的な方針のもと、当社のサステナビリティへの取組みに係る執行からの報告に対し、助言を行っています。また、社外取締役が当社の事業およびコーポレート・ガバナンスに関する事項について定期的に議論するための社外取締役会議、複数の取締役および執行役から構成される内部統制委員会、監査委員会においても、サステナビリティに関する意見交換が行われています。
② サステナビリティ委員会
サステナビリティ推進に係る戦略等について審議・決定する場として、経営会議メンバーを含むグループCEOが指名するメンバーから構成されるサステナビリティ委員会を設置しています。チーフ・サステナビリティ・オフィサーは、サステナビリティ委員会における議論をリードし、当社のサステナビリティに関する知見の集約、戦略策定・推進の加速を図っています。
③ サステナビリティ・フォーラム
サステナビリティについてより機動的かつ実質的な議論の機会を確保するため、部門や地域を横断した役員による議論の場として2021年8月より運営してきた「サステナビリティ・カウンシル」を、サステナビリティを取り巻く環境の変化や、それに伴って取り扱うテーマが拡大したことを受け、より事業活動との関連性の強いテーマを取り扱う「ビジネス・サステナビリティ・フォーラム」と、情報開示や各種方針策定等を取り扱う「コーポレート・サステナビリティ・フォーラム」に分割し、2023年度より運営を開始しております。これら各フォーラムは適宜サステナビリティ委員会と連携し、サステナビリティについて機動的な取組みを進めてまいります。
(3)サステナビリティに関するリスク管理
サステナビリティの分野に注目が高まる中、野村はこれらの領域における指針および業務能力を継続的に発展させ、株主、顧客、および社会全体を含むステークホルダーに対して積極的にその態勢を示すことが必要となっています。サステナビリティを取り巻く環境の変化は速く、事業活動において環境政策、人権、DEIを含むサステナビリティへの配慮が充分でない場合、レピュテーション、経営成績や財政状態に影響が及ぶ可能性があると考えています。
特に、気候変動リスクについては、中長期的に影響を及ぼす可能性のあるリスクとして認識しており、適切な管理体制のもとそのリスクを管理しています。
① 気候変動に伴うリスクに対する当社の認識
当社は、気候変動問題の顕在化による環境の変化について、関連するリスクを特定し、ビジネスに与える影響を想定しています。気候変動に起因するリスクには、大型の台風、干ばつ、酷暑といった異常気象によって人的被害や財産上の損害が生じるリスク(物理的リスク)と、脱炭素社会への移行に向けた各国政府の政策変更や急速な技術革新に伴う変化に対応できず取り残されるリスク(移行リスク)があります。当社は、気候変動に伴う物理的リスク、移行リスクとして、例えば、以下のリスクを特定しています。
・取引先の気候変動への対応が不十分なために財務が棄損し、信用力の低下につながるリスク、または義務を履行できないリスク
・気候変動が市場の変動要因として顕在化した際に、保有する金融資産の市場価格の変動によって、当社が損失を被るリスク
・野村および取引先の気候変動への対応が不十分な場合に、野村のレピュテーションが棄損するリスク
・気候変動に関する内部プロセス・システム・役職員の行動が不適切であること、機能しないことにより、当社が財務上の損失を被るリスクもしくは野村のレピュテーションが棄損するリスク
・競合他社と比較した際に、戦略が不十分であること、あるいはその戦略の遂行の失敗に関連するリスク、戦略とリソースとの乖離を含む戦略遂行リスク
② 気候変動リスクに関するアプローチ
気候変動リスクは、実現した場合に悪影響を及ぼす可能性があるリスクの一つとして位置づけ、特定の独立したリスク分野ではなく、多様なリスク分野に影響を及ぼす要因として認識しています。そのため、それぞれのリスク分野における既存の管理フレームワークに、気候変動の要素を考慮した新たな対応を追加することで、包括的なリスク管理フレームワークを構築しています。
(4)指標および目標
当社では、サステナビリティに関する取組みのうち、気候変動にかかるリスクならびに機会を測定・管理するため、また、パリ協定への整合やネットゼロ達成に向けた取組みを着実に進めていくため、温室効果ガス排出量等に関して、サステナビリティ委員会の承認を得て以下の指標と目標を設定し、その進捗を管理します。
# |
指標 |
目標 |
実績値 |
1 |
自社温室効果ガスの排出量 (Scope1、2) |
2030年ネットゼロ(注1) |
Scope1:1,924t-CO2 (前年度比11%減) Scope2:31,710t-CO2 (前年度比19%減)
(2022年3月期基準) |
2 |
投融資ポートフォリオの温室効果ガスの排出量(Scope3 Category15)(NZBAの枠組みに基づく) |
2050年ネットゼロ(注2) |
電力セクター 温室効果ガス:790 ktCO2e 経済的排出原単位:635 tCO2e/$m
(2021年3月期基準) |
3 |
サステナブル・ファイナンス関与額(※) |
2021年から2026年3月までの5年間で合計1,250億米ドル(注3) |
214億米ドル
(2022年3月期基準) |
※サステナブル・ファイナンス関与額の目標には、公募・私募による株式・債券・メザニン債などを通じた資金調達案件、インフラストラクチャー・プロジェクト・ファイナンス案件などを含みます。
(注:各目標設定における考慮要素)
1:省エネルギーへの取り組み実績、再生可能エネルギーの普及、導入比率等を総合的に考慮勘案して目標を設定。
2:対象資産を特定したうえで、NZBAの枠組みに基づき、国際エネルギー機関の“Net Zero Emissions by 2050 Scenario”、Partnership for Carbon Accounting Financials(PCAF)が提供する排出係数データベース等を参照して目標を設定。
3:外部ベンダーが提供するサステナブル・ファイナンスの想定市場規模等を参照して目標を設定。
(5)野村の人的資本に関する戦略
① 人材マネジメント戦略の進化と持続的成長
野村グループが社会課題の解決を通じた持続的成長と企業価値向上を実現するためには、戦略的な成長投資による自己資本利益率(ROE)の向上が求められます。そのためには、野村グループの人材(人的資本)が、組織に対するエンゲージメントを高い水準に維持しながら、社会課題に対する最適解を追求するプロフェッショナル集団として付加価値を最大限に生み出し、生産性の向上、新たな価値の創造、リスク管理の高度化を追求し続けることが不可欠と考えます。
野村グループは、長期的な視点で人材マネジメント戦略を進化させることにより人材のエンゲージメントが向上し、人的資本がチームとしてもたらす知的資本の差別化を図り、野村グループが提供する付加価値を更に強化していくことを目指します。
(注)当社における知的資本とは、組織力、ノウハウ、顧客とのネットワーク、ブランド等、野村グループの競争力の源泉となるあらゆる無形資産を指します。
② 野村グループの人材マネジメント戦略
野村グループの人材マネジメント戦略は、野村グループの企業理念に掲げる「挑戦」「協働」「誠実」という価値観を基礎として、採用・育成・評価・配置という人材マネジメントサイクルの差別化と、DEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)、社員の働き方、ウェルビーイングおよび帰属意識の高度化を追求することを目的としています。
ⅰ 採用
採用に関しては、野村グループの「挑戦」「協働」「誠実」という価値観に賛同し、リスク管理の基礎となるリスクカルチャーを有する人材を獲得することを前提としています。その上で、入社後に高度な専門性を発揮できる人材を獲得・育成するために、日本を含むすべての地域、ならびに新卒採用およびキャリア採用の双方において、部門または職種別の採用を実践しています。
最も多くの社員数を要する日本においては、2021年度に続き2022年度もまたキャリア採用数が新卒採用数を上回り、人材の多様化が更に進展しています。
また、日本およびインドにおいては、野村グループの退職者(アルムナイ)をネットワーク化し、野村グループ外で活躍するアルムナイとの交流を深めながら、アルムナイの再雇用を積極的に促す仕組みを導入しています。
ⅱ 育成
野村グループは、以下に掲げる人材育成方針のもと、社員の成長を支援しています。
<人材育成方針> 野村グループは、社会課題の解決を通じた持続的成長と企業価値向上を実現するため、社員一人ひとりが社会課題に対する最適解を追求するプロフェッショナルとして付加価値を生み出し、生産性の向上、新たな価値の創造、リスク管理の高度化を追求し続ける人材を輩出するよう、人材育成に取り組みます。 |
育成に関しては、人材が付加価値の源泉となる高度な専門性を加速度的に習得できるよう、各地域・部門において多様な自己研鑽プログラムを充実させています。グループワイドな自己研鑽プログラムの一例として、2021年度に「デジタルIQ」というプログラムを開始し、世界中のすべての社員に対してデジタル・トランスフォーメーション(DX)に資する啓蒙活動を行うと同時に、基礎から高度なレベルに至るまで多様なデジタルスキルの自主的な学習機会を提供しています。日本においては、ノムラ・ビジネス・アカデミー(NBA)という自己研鑽プラットフォームを提供し、社員が証券アナリストやファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士等の資格を取得することの他、語学、財務会計などの各種ビジネススキルを習得することをサポートしています。
加えて、日本の社員を対象とする自己応募・選抜型研修として、MBA(経営学修士)やLLM(法学修士)の修得を目標とする海外留学研修プログラムを60年以上にわたり提供してきた他、2022年度には新たに日本国内においてベンチャー企業研修プログラムも開始し、これらのプログラムを通じて外部経験を経た社員による多様な価値観の醸成を促進しています。
この他、ホールセール部門およびコーポレートにおいては、地域を超えてグローバルな人材による専門知識の習得を促すための仕組みを導入しています。例えば、インベストメント・バンキングはM&Aユニバーシティというナレッジマネジメント基盤を設立し、社員がM&Aアドバイザリー業務における専門知識を学び、実務に活かすことを可能としています。また、ITオペレーションおよびファイナンスは、テクノロジーとデジタルに関する専門知識に注力し、社員がこれらの知識を主体的に学び、付加価値と生産性の向上に活かすことを可能としています。
ⅲ 評価
評価に関しては、日本を含むすべての地域、すべての部門・職種において、各社員の業務内容に期待される生産性の水準に対する外部評価も参考に、適正な評価に基づく「ペイ・フォー・パフォーマンス」の更なる徹底を図っています。
同時に、「挑戦」「協働」「誠実」の価値観が人材により発揮されていることも評価対象としています。2020年度より、グローバルにすべての社員を対象に「未来への挑戦」を共通の評価課題とするとともに、「職業倫理、リスク管理、コンプライアンス及びコンダクト」も世界共通の評価課題としており、2022年度からは、リスクカルチャーの醸成に関しても組み込んでいます。
ⅳ 配置および登用
配置に関しては、社員の挑戦マインドを尊重し、社員による自律的なキャリア形成を尊重しています。以前よりグローバルに社内公募制度を有していましたが、日本において2020年度より同制度の適用範囲を大幅に拡大しています。さまざまなコーポレートタイトルを有する多くの社員が部門の垣根を超えて同制度に応募し、2022年度は合計200人超の社員が新たなキャリアにチャレンジするための異動を能動的に実現しています。
また、グループ内の重要なポジションへの人材の登用とそのための後継者育成という観点から、こうした重要なポジションを担う可能性を有する人材プールをグローバルに管理しています。これらの人材プールに対してアセスメントを実施し、各社員のリーダーシップ適性に応じて、「野村経営塾」という社内独自のプログラムの他、「野村マネジメント・スクール」など国内外の外部機関が提供するリーダーシップ開発プログラムを該当社員に提供しています。
ⅴ DEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)
約90の国籍の社員が働く野村グループでは、多様な人材こそが競争力、イノベーション、高度なリスク管理の源泉と考え、2016年7月に「グループ・ダイバーシティ&インクルージョン推進宣言」を採択し、すべての社員が自分の持つ独自の強みを最大限発揮できる職場環境づくりに取り組んでいます。また、2019年9月にはダイバーシティ経営の更なる推進を目指して、「ダイバーシティ&インクルージョン ステートメント」を制定し、2022年10月には「エクイティ=公平性」を追加して「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン ステートメント」に改定しました。エクイティ(Equity)とは、すべての人に同じ支援や機会を提供する(=平等、Equality)のではなく、個人ごとに異なる状況やニーズに応じて最適なリソースや機会を提供することで、一人ひとりが目標を達成するための公平な環境を作ることを意味します。多様な人材に公平な機会を提供し、社員一人ひとりが帰属意識を持って活躍できる職場づくりを野村グループは目指しています。
また、グループ各社、グローバル各地域の代表で構成されるDEI推進ワーキングにおいてトップダウンでグループ全体の環境づくりを進めるとともに、DEI社員ネットワークを通じてボトムアップによる取り組みも行われています。
ⅵ 働き方
働き方に関しては、2022年より時間や場所の制約に縛られることなくパフォーマンスを最大限発揮できる環境を整えることを目的として、グループ・グローバルのプロジェクト「Nomura Ways of Working」を開始しています。カルチャー、ピープル、ワークプレイス、テクノロジーの4つの軸から地域横断的にアプローチしグループ全体での変化を促進させていきます。
ⅶ ウェルビーイング
野村グループは、以下に掲げる社内環境整備方針のもと、社員のウェルビーイングの実現に取り組んでいます。
<社内環境整備方針> 野村グループの最大の財産は、人材です。社員一人ひとりがもつ独自の強みを十分に発揮し、活躍するためには、心身ともに健康であることが重要です。 野村グループは、適正な労働条件と快適な職場環境の整備をはじめ、社員が意欲をもって働き続けられるよう、育児・介護支援等の福利厚生諸制度の充実や、社員の健康保持・増進に力を入れています。 |
ウェルビーイングに関しては、まずは社員自身が肉体的にも精神的にも、社会的にも満たされた状態になるために「アブセンティーイズムの低減」「プレゼンティーイズムの低減」「ワークエンゲージメントの向上」が必要との認識に基づき、これらを社員の健康保持・増進に取り組むうえでの指標とし、下記のとおり目標を定めています。
(指標および目標)
指標 |
実績値 |
目標値 (2025年度) |
|
2021年度 |
2022年度 |
||
アブセンティーイズム(百万円) |
1109.7 |
794.7 |
- |
プレゼンティーイズム(%) |
15.2 |
16.1 |
10 |
ワークエンゲージメント |
53.4 |
53.7 |
60 |
(注)1 アブセンティーイズム:傷病による欠勤にともなう損失額をいい、当該年度の平均年収に社員数と年間傷病休暇利用率を乗じて算出。ウェルビーイングの取組みを推進することにより低減させることが目標ではありますが、体調不良時に休みやすい環境整備も必要であるため、現時点では目標値は出さずモニタリングに努めます。
2 プレゼンティーイズム:出勤はしているものの、健康上の問題によって完全な業務パフォーマンスが出せない状況をいい、数値はSPQ(Single-Item Presenteeism Question 東大1項目版)の回答により算出された、プレゼンティーイズムによる生産性損失割合になります。
3 ワークエンゲージメント:仕事に対してポジティブで充実した心理状態を示す値。全国平均を50とした偏差値で、ストレスチェックの回答により算出しています。
4 上記の目標値は野村グループ、実績値は主要な連結子会社である野村證券株式会社の数値になります。
また、社員が経済的に健全な状態(ファイナンシャル・ウェルネス)を保つため、従業員持株会や確定拠出年金制度など社員に対して資産形成に資する制度を提供しています。これらの制度をより効果的に活用できるよう、社員に対して資産形成に関する情報を提供しています。
ⅷ エンゲージメントサーベイ
以上の人材マネジメント戦略の効果を常に検証・改善するために、2013年度より「野村グループ従業員サーベイ」を実施しています。2022年度の同サーベイにおける「私は、当社で働くことを誇りに思う」という設問に対して、野村グループ従業員の回答者のうち85%が好意的回答を行っています。また、同サーベイの結果を受けて、マネジメントから従業員に対するメッセージを発信しています。
ⅸ リテンション
2022年は、金融業界に限らず多くの産業において世界的に人材の流動性が高まり、野村グループにおいても人材の離職率が高まりました。こうした離職率の上昇に対しては、組織に対するエンゲージメントを高めることが重要です。上記の取組みを行うとともに、「野村グループ従業員サーベイ」の結果を受けて、部門や組織ごとに職場環境の改善や労働生産性の向上などの具体的アクションに繋げています。
投資判断をされる前に以下に述べるリスクについて十分にご検討ください。以下に述べるリスクのいずれかが実際に生じた場合、野村のビジネスや財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。その場合、野村の株式の市場価格が下落し、投資家の皆さまが投資額の全部または一部を失う可能性があります。また、以下に述べられたリスク以外にも、現時点では確認できていない追加的なリスクや現在は重要でないと考えられているリスクも野村に影響を与え、皆さまの投資に影響を与える可能性があります。本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は、別段の記載のない限り、本有価証券報告書提出日現在において判断したものです。
目次
経営環境に関するリスク |
||
1.
|
野村のビジネスは日本経済および世界経済の情勢ならびに金融市場の動向により重大な影響を受ける可能性があります |
|
|
(1)
|
野村がビジネスを行う国・地域における政府・金融当局による政策の変更が、野村のビジネス、財政状態または経営成績に影響を与える可能性があります |
|
(2) |
市場低迷の長期化や市場参加者の減少が流動性を低下させ、大きな損失が生じる可能性があります |
|
(3) |
自然災害、テロ、武力紛争、感染症等により野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります |
|
(4) |
新型コロナウイルスの流行により、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります |
|
(5)
|
米ドルLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)から代替金利指標への移行等が、野村のビジネスに不利に影響する可能性があります |
2. |
金融業界は激しい競争に晒されています |
|
|
(1) |
他の金融機関や非金融企業の金融サービス等との競争が激化しています |
|
(2) |
金融グループの統合・再編、各種業務提携や連携の進展により競争が激化しています |
|
(3)
|
野村の海外ビジネスは激しい競争に晒されており、ビジネス・モデルの更なる見直しが必要となる可能性があります |
3.
|
市場リスクや資金流動性リスクだけではなく、イベント・リスクも野村のトレーディング資産や投資資産に損失を生じさせる可能性があります |
|
4.
|
気候変動やそれに関わる各国の政策変更などを含む、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の要素が野村の事業に影響を及ぼす可能性があります |
|
事業に関するリスク |
||
5. |
野村のビジネスは業務遂行にあたってさまざまな要因により損失を被る可能性があります |
|
|
(1) |
トレーディングや投資活動から大きな損失を被る可能性があります |
|
(2)
|
証券やその他の資産に大口かつ集中的なポジションを保有することによって、野村は大きな損失を被る可能性があります |
|
(3) |
ヘッジ戦略により損失を回避できない場合があります |
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(4) |
野村のリスク管理方針や手続きがリスクの管理において十分に効果を発揮しない場合があります |
|
(5) |
市場リスクによって、その他のリスクが増加する可能性があります |
|
(6) |
野村の仲介手数料やアセット・マネジメント業務からの収入が減少する可能性があります |
|
(7) |
野村の投資銀行業務からの収入が減少する可能性があります |
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(8) |
野村の電子取引業務からの収入が減少する可能性があります |
6. |
野村に債務を負担する第三者がその債務を履行しない結果、損失を被る可能性があります |
|
|
(1) |
大手金融機関の破綻が金融市場全般に影響を与え、野村に影響を及ぼす可能性があります |
|
(2)
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野村の信用リスクに関する情報の正確性、また信用リスク削減のために受け入れている担保の十分性については、必ずしも保証されたものではありません |
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(3) |
野村の顧客や取引相手が政治的・経済的理由から野村に対する債務を履行できない可能性があります |
7.
|
モデルに誤りがある場合、またはモデルを不正確若しくは不適切に使用した場合、意思決定を誤り、財務的損失を被る可能性や、顧客からの信頼低下を招く可能性があります |
|
8. |
野村は持株会社であり、野村の子会社からの支払に依存しています |
|
9. |
投資持分証券・トレーディング目的以外の負債証券について野村が期待する収益を実現できない可能性があります |
|
10.
|
野村が提供したキャッシュ・リザーブ・ファンドや債券に損失が生じることで顧客資産が流出する可能性があります |
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財務に関するリスク |
||
11. |
連結財務諸表に計上されているのれんおよび有形・無形資産にかかる減損が認識される可能性があります |
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12. |
資金流動性リスクの顕在化によって野村の資金調達能力が損なわれ、野村の財政状態が悪化する可能性があります |
|
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(1) |
野村が無担保あるいは有担保での資金調達ができなくなる場合があります |
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(2) |
野村が資産を売却できなくなる可能性があります |
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(3) |
信用格付の低下により、野村の資金調達能力が損なわれる可能性があります |
13.
|
連結財務諸表に計上されている関連会社およびその他の持分法投資先の株価が一定期間以上大幅に下落した場合には減損が認識される可能性があります |
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非財務リスク |
||
14. |
オペレーショナル・リスクの顕在化により、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります |
|
15. |
野村の財務報告に関する内部統制に開示すべき重要な不備が特定されました。当社は改善策を策定し取り組んでおりますが、今後も重要な不備が特定される可能性があります |
|
16. |
役職員または第三者による不正行為や詐欺により、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります |
|
17. |
利益相反を特定し適切に対処することができないことにより、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります |
|
18. |
野村のビジネスは、重大なリーガル・リスク、レギュラトリー・リスクおよびレピュテーショナル・リスクに影響される可能性があります |
|
|
(1)
|
市場低迷等を原因とした法的責任の可能性が発生し、野村のビジネス、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります |
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(2)
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規制による業務制限や、行政処分等による損失が発生し、野村のビジネス、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります |
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(3)
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金融システム・金融セクターに対する規制強化の進行が、野村のビジネス、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります |
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(4)
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経営状況、法的規制の変更などにより、繰延税金資産の計上額の見直しが行われ、野村の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります |
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(5)
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マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与に適切に対処できなかった場合には、行政処分や罰金等の対象となる可能性があります |
19. |
野村の保有する個人情報の漏洩により、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります |
|
20.
|
野村の情報システムが適切に稼働しないこと、外部からのサイバー攻撃による情報漏洩または十分なサイバーセキュリティを維持するために必要な費用負担により、野村のビジネス、財政状態および経営成績に悪影響が及ぶ可能性があります |
|
21. |
人材の確保・育成ができないことにより、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります |
経営環境に関するリスク
1.野村のビジネスは日本経済および世界経済の情勢ならびに金融市場の動向により重大な影響を受ける可能性があります
野村のビジネスや収益は、日本経済および世界経済の情勢ならびに金融市場の動向により影響を受ける可能性があります。また、各国の経済情勢や金融市場の動向は、経済的要因だけではなく、戦争、テロ行為、経済・政治制裁、世界的流行病、地政学的リスクの見通しまたは実際に発生した地政学的イベント、あるいは自然災害などによっても影響を受ける可能性があります。仮に、このような事象が生じた場合、金融市場や経済の低迷が長期化し、野村のビジネスに影響が及ぶとともに、大きな損失が発生する可能性があります。あるいは金融市場に限らず、例えば日本が直面する人口高齢化や人口減少の長期的傾向等の社会情勢は、野村の事業分野、特にリテールビジネスの分野において、需要を継続的に圧迫する可能性があります。なお、野村のビジネス・業務運営に影響を与える金融市場や経済情勢に関するリスクには以下のものが含まれます。
(1)野村がビジネスを行う国・地域における政府・金融当局による政策の変更が、野村のビジネス、財政状態または経営成績に影響を与える可能性があります
野村は、国内外の拠点網を通じて、グローバルにビジネスを展開しています。したがって、野村がビジネスを行う国・地域において、政府・金融当局が財政および金融その他の政策を変更した場合、野村のビジネス、財政状態または経営成績に影響を与える可能性があります。また、日本を含む多くの主要各国の中央銀行による金融政策が変更され、それにともなう金利や利回りの変動等が進んだ場合、顧客向け運用商品の提供やトレーディング活動または投資活動等に影響を及ぼす可能性があります。例えば、2023年3月期において、米国連邦公開市場委員会が、インフレ対策の一環としてフェデラル・ファンド・レートを複数回引き上げたことにより、米ドル金利が大幅に上昇したほか、米国をはじめとする各国の銀行セクターが混乱し、市場の大きな変動が野村のビジネスや金融業界に広く影響を及ぼしました。
(2)市場低迷の長期化や市場参加者の減少が流動性を低下させ、大きな損失が生じる可能性があります
市場低迷が長期化すると、野村の業務に関連する市場において取引量が減少し、流動性が低下します。また、規制強化を背景とする金融機関の市場関連業務の縮小も市場の流動性に影響を与えます。この結果、市場において、野村は、自己の保有する資産を売却またはヘッジすることが困難になるほか、当該資産の市場価格が形成されず、自己の保有する資産の時価を認識できない可能性があります。特に店頭デリバティブ等においてはポジションのすべてを適切に解消し、またはヘッジすることができない場合に大きな損失を被る可能性があります。さらに、市場の流動性が低下し、自己の保有するポジションの市場価格が形成されない場合、予期しない損失を生じることがあります。
野村は、これらの市場リスクおよび市場流動性リスク等を日々計測し、事前に設定したリミットを超過する場合は即座の対応をとる等のリスク管理体制を整備しています。
(3)自然災害、テロ、武力紛争、感染症等により野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります
野村は、不測の事態に備えたコンティンジェンシープランの策定や役職員の安否確認訓練などの危機管理訓練を行っております。また実際に不測の事態が生じた際には、対策本部を設置し、役職員やその家族の安否確認、安全確保、被害拡大の防止、および業務継続態勢を維持するために適切な措置を講じる体制を整えることで、オペレーショナル・レジリエンス(システム障害、サイバー攻撃、自然災害等が発生しても、重要な業務を最低限維持すべき水準において提供し続ける能力)の確保に向けて取り組んでいます。しかしながら、想定を上回る規模の災害、テロ行為または武力紛争、広範囲の感染症の感染拡大等により、必ずしもあらゆる事態に対応できるとは限らず、野村の役職員、施設やシステムが被災し、業務の継続が困難になる可能性があります。また、新型コロナウイルス以外の未知の感染症等により役職員による業務遂行に支障が生じる可能性があります。
(4)新型コロナウイルスの流行により、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります
2020年から続く新型コロナウイルス感染症の世界的流行とそれにともなう各国政府による感染拡大防止策により、株価の急落・金利の乱高下・ボラティリティの高まり・クレジット・スプレッドの急拡大等の混乱などのリスクが顕在化しました。そのような状況の中、野村では従業員が在宅勤務を行うための環境整備等を通じて、業務継続態勢を整備してまいりました。ワクチン接種の進捗にともない、感染拡大や影響は徐々に収束しておりますが、市場や経済活動、事業環境等への悪影響が継続する場合、野村のビジネス、業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。野村は、今後も社内の危機管理とともに経営環境における関連リスク動向を監視・管理していきます。
(5)米ドルLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)から代替金利指標への移行等が、野村のビジネスに不利に影響する可能性があります
2021年3月5日に英国Financial Conduct Authorityが公表した声明によって、米ドルLIBORは2023年6月末をもって公表停止となる予定です。米ドルLIBORを参照する契約のうち公表停止以降も継続するものは、代替金利指標を参照するよう置き換えるか、フォールバック条項を契約当事者間で公表停止前に予め合意しておくか、いずれかが求められます。これにともなって適用される金利指標の計算方法の変更や、締結される契約や適用される会計処理の変更等により、システムの改修やオペレーションの変更、顧客への情報開示等への対応にかかる追加的な費用やリスクの発生、米ドルLIBORを変動金利として参照するデリバティブ取引や債券等の価格や価格変動性、市場流動性に影響を与える可能性があり、その結果、野村のビジネス、財政状態および経営成績に重大な影響を与える可能性または取引の相手方や取引関係者との紛争や訴訟等が発生する可能性があります。
2.金融業界は激しい競争に晒されています
野村のビジネスは激しい競争に晒されており、この状況は今後も続くことが予想されます。野村は、取引執行能力や商品・サービス、イノベーション、評判(レピュテーション)、価格など多くの要因において競争しており、特に、仲介業務、引受業務などで激しい価格競争に直面しています。
(1)他の金融機関や非金融企業の金融サービス等との競争が激化しています
金融業界において、野村は多種多様な競合企業との激しい競争に直面しています。日本においては、独立系証券会社や、商業銀行系の証券会社、海外の証券会社と競合しております。その結果、特に、セールス・トレーディング、投資銀行業務、リテールビジネスの分野において、野村のシェアに影響を及ぼしています。上記に加え、近年はオンライン証券会社の台頭の他、デジタライゼーションやデジタル・トランスフォーメーション(DX)と呼ばれる潮流によりフィンテック企業の台頭や非金融企業の金融サービス参入など、従来の業界領域を超え、競争が一層激化の様相を呈しています。野村はこうした競争環境の変化に対応するべく、既に多角的な取組みを始動させています。しかしながら、激化する競争環境において、このような取組みが野村のシェアの維持拡大に効果を発揮できない場合、ビジネス獲得の競争力が低下し、野村のビジネスおよび経営成績に影響が及ぶ可能性があります。
(2)金融グループの統合・再編、各種業務提携や連携の進展により競争が激化しています
金融業界において、金融機関同士の統合・再編が進んでいます。特に、大手の商業銀行、その他幅広い業容を持つ大手金融グループは、その傘下における証券業の設置および獲得ならびに他金融機関との連携に取り組んでいます。これら大手金融グループが、総合的な金融サービスをワンストップで顧客に提供すべく、グループ内での事業連携を引き続き強化しています。具体的には、ローン、預金、保険、証券ブローカレッジ業務、資産運用業務、投資銀行業務など、グループ内での幅広い種類の商品・サービスの提供を進めており、この結果として金融グループの競争力が野村に対し相対的に高まる可能性があります。また、金融グループは、市場シェアを獲得するために、商業銀行業務その他金融サービスの収入により投資銀行業務や証券ブローカレッジ業務を補う可能性があります。また、グループの垣根を越えた商業銀行と証券業との提携や、昨今では新興企業を含む事業会社との提携等、業態・業界を超えた連携へと広がる傾向も見られ、これらの大手金融グループの事業拡大や提携等による収益力の向上などにより、野村の市場シェアが低下する可能性があります。野村においても戦略的提携や出資、新規事業の立ち上げなど行っていますが、事業戦略の構築・実施が想定通りにいかない場合等には、期待したとおりのシナジーその他の効果を得られない可能性があります。また新たな事業活動、より広範な顧客や取引先との取引、新たな資産クラスや新たな市場に関わることによりリスクが増加する可能性があります。
(3)野村の海外ビジネスは激しい競争に晒されており、ビジネス・モデルの更なる見直しが必要となる可能性があります
海外には多くのビジネスの機会およびそれにともなう競争が存在します。野村は、これらのビジネス機会を有効に活用するため、米国、欧州、アジアなどの重要な海外市場において他金融機関と競合しています。野村は、このような厳しい競争環境に対応するべく取り組んでいますが、2019年3月期においては過去の海外での買収に関連して、81,372百万円ののれん減損を計上しました。野村は、2019年4月以降、ビジネスポートフォリオの見直し、および顧客ビジネスと成長地域への注力を行うべく、ビジネスプラットフォームの再構築に取り組んでおり、2020年にGreentech Capital, LLC(以下「グリーンテック」)を買収したほか、2023年にはCapital Nomura Securities Public Company Limitedの持分売却を行うなど、オーガニックだけでなくインオーガニックにもビジネスプラットフォームを適宜見直してきました。今後も、競争環境を俯瞰しながらビジネスポートフォリオ全体の見直しは継続し、各種リスクを考慮のうえで戦略を実行していきますが、スピードも意識する必要がある中で想定以上の費用がかさんだり、財務、経営その他の資源を想定以上に投じたりすることとなった場合などには、野村のビジネスおよび経営成績に悪影響が及ぶ可能性があります。また、戦略の土台となる想定が正しくなかった場合、得られる利益が想定以上に落ち込むなど、結果として野村のビジネスおよび経営成績に影響を与える可能性があります。さらに、戦略の実行にともなう人員数や報酬の削減により、野村のビジネスの成功に必要な従業員の獲得および維持に悪影響が及ぶ可能性があります。また、経営体制の合理化が適切に行われなかった場合、野村がグローバルに展開するビジネスを適切に管理監督するための機能に影響を及ぼす可能性があります。
3.市場リスクや資金流動性リスクだけではなく、イベント・リスクも野村のトレーディング資産や投資資産に損失を生じさせる可能性があります
イベント・リスクとは、事前に予測が困難な出来事(例えば、自然災害、人災、流行病、テロ行為、武力紛争、政情不安、その他野村のビジネスや取引相手等に影響を与える出来事)によりマーケットに急激な変動がもたらされた場合に発生する潜在的な損失をいいます。これらには、2011年3月の東日本大震災、2017年の北朝鮮による核実験実施等にともなう朝鮮半島情勢の緊張の高まり、2018年以降の米中通商摩擦やアジア全体の地政学的緊張、2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大、2022年のロシアによるウクライナへの侵攻のような突然かつ想定外の貿易環境や安全保障政策の急変などの社会的に重大な事象のほか、より個別具体的に野村のトレーディング資産や投資資産に損失を生じさせるおそれのある、次のような出来事が含まれます。
・主要格付機関による、野村が保有するトレーディング資産や投資資産に関する信用格付の突然かつ大幅な格下げ
・野村のトレーディング戦略を陳腐化させ、競争力を低下させ、または実行不能にするような、トレーディング、税務、会計、金融規制、法律その他関連規則の突然の変更
・野村が関与する取引が予測不能な事由により遂行されないために野村が受取るべき対価を受取れないこと、または野村がトレーディングもしくは投資資産として保有する有価証券の発行会社の倒産や詐欺的行為もしくはこれらに対する行政処分等
4.気候変動やそれに関わる各国の政策変更などを含む、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の要素が野村の事業に影響を及ぼす可能性があります
企業経営における環境、社会、ガバナンス(以下「ESG」)の分野に注目が高まる中、野村はこれらの領域における指針および業務能力を継続的に発展させ、株主、顧客、および社会全体を含むステークホルダーに対して積極的にその態勢を示すことが必要となっています。ESGを取り巻く環境の変化は速く、事業活動において環境政策、人権を含むESGへの配慮が充分でない場合、脱炭素化やその他ESG関連の取り組みなどを進めていく顧客に対して十分なサービス提供ができない可能性があるほか、レピュテーション、経営成績や財政状態に影響が及ぶ可能性があります。レピュテーショナル・リスクには、環境配慮に関する表示に対して実態をともなわないことにかかるリスク(いわゆる「グリーン・ウォッシュ」と呼ばれるリスク)も含まれます。
野村は、気候変動を主要なグローバル課題の1つであると認識しています。気候変動がもたらす直接的な影響と、それにともなうビジネス環境の変化により野村は損失を被る可能性があります。気候変動に起因するリスクは、大型の台風、干ばつ、酷暑、霜といった異常気象や気候パターンの長期的変化、海面上昇などによって人的被害や財産上の損害が生じるリスク(物理的リスク)と、脱炭素社会への移行に向けた各国政府の政策変更や急速な技術革新、消費需要の変化に対応できず取り残されるリスク(移行リスク)があるといわれています。
事業に関するリスク
5.野村のビジネスは業務遂行にあたってさまざまな要因により損失を被る可能性があります
(1)トレーディングや投資活動から大きな損失を被る可能性があります
野村は自己売買および顧客取引のために、債券市場や株式市場等でトレーディング・ポジションと投資ポジションを保有しております。野村のポジションはさまざまな種類の資産によって構成されており、その中には株式、金利、通貨、クレジットなどのデリバティブ取引、さらに貸付債権、リバース・レポも含まれます。これらの資産が取引される市場の変動は、当該資産のポジションの価値に影響を与える場合があり、それぞれ下落はロング・ポジションに、上昇はショート・ポジションに影響を及ぼす可能性があります。そのため、野村はさまざまなヘッジ手法を用いてポジションリスクの軽減に努めていますが、それでも資産価格が大きく変動した場合、もしくは、金融システムに過大な負荷がかかることで市場が野村の予測していない動きをした場合、野村は損失を被る可能性があります。また暗号資産の価格については、業界の動向や暗号資産の規制などさまざまな要因により大きく変動する可能性があります。
野村のビジネスは市場のボラティリティ水準の変化に影響を受けており、今後も継続して影響を受ける可能性があります。トレーディングや裁定取引の機会は市場のボラティリティに依存しており、ボラティリティが低下した場合は取引機会が減少し、これらのビジネスの結果に影響を与える可能性があります。一方、ボラティリティが上昇した場合は取引量が増加し、バリュー・アット・リスク(以下「VaR」)で計測されるリスク量が増大することがあります。またボラティリティの上昇や価格スプレッドの拡大が生じた場合、野村はマーケットメイキングや自己勘定投資においてより高いリスクに晒されます。そのため、ボラティリティ上昇時は、必要に応じてこれらのビジネスの既存ポジションまたは取引量を減らすことがあります。
例えば、2021年3月には、米国顧客とのプライム・ブローカレッジ取引において顧客にマージンコールを要請するも入金がなく債務不履行を通知して契約解消を行い、当該顧客との取引のヘッジとして保有していたポジションの処理を実施しました。その結果、ポジションの処理にともなう巨額のトレーディング損失を計上するとともに、顧客が担保として差し入れていた有価証券の貸付金に対する価値が減少したことにともない、予想信用損失にかかる貸倒引当金を計上しました。詳細は「第4[提出会社の状況]4[コーポレート・ガバナンスの状況等](1)[コーポレート・ガバナンスの概要]リスク管理体制の整備」をご参照ください。当社は、米国顧客とのプライム・ブローカレッジ取引に関する損失への対応として、リスク管理活動の改善を含めて取り組んでおりますが、当社のビジネス・モデルには必然的に重要なトレーディング活動が含まれており、その結果、将来的に再び大きな損失を計上する可能性があります。
資本市場における取引を円滑に進めるために、引受業務やトレーディング業務にともない比較的大きなポジションを保有することがあります。また、野村が投資商品の開発を目的としてパイロット・ファンドを設定してポジションを保有し、投資商品の設定・維持を目的としてシード・マネーを出資することがあります。野村は市場価格の変動によりこれらのポジションから大きな損失を被る可能性があります。
加えて、野村が担保を提供する取引においては、担保資産価値の大幅な下落や、野村の信用格付の引き下げ等によって信用力低下にともなう追加担保の提供義務が生じた場合は、取引コストの上昇および収益性の低下を招く可能性があります。一方、担保の提供を受ける取引においては、担保資産価値や信用力の下落が顧客取引の減少につながり、それにともなう収益性の低下を招く可能性があります。信用格付の低下に関しては「財務に関するリスク - 12.資金流動性リスクの顕在化によって野村の資金調達能力が損なわれ、野村の財政状態が悪化する可能性があります - (3)信用格付の低下により、野村の資金調達能力が損なわれる可能性があります」をご参照ください。
(2)証券やその他の資産に大口かつ集中的なポジションを保有することによって、野村は大きな損失を被る可能性があります
野村は、マーケット・メイク、ブロック取引、引受業務、証券化商品の組成、プライム・ブローカレッジ取引、第三者割当による新株予約権付社債等の買い取り業務、または、顧客ニーズに対応した各種ファイナンシングおよびソリューションビジネス等においては、特定の資産を大口かつ集中的に保有することがあり、多額の資金をこれらのビジネスに投じています。その結果、しばしば特定の発行者または特定の業界、国もしくは地域の発行者が発行する証券または資産に大口のポジションを保有することがあります。これらの有価証券の価格の変動は、必要に応じてそれらを処理・換金できる価格に重大な影響を与える可能性があり、その結果、米国顧客取引に関する損失に関連して発生したような、巨額のトレーディング損失を計上することがあります。詳細は「第4[提出会社の状況]4[コーポレート・ガバナンスの状況等](1)[コーポレート・ガバナンスの概要]リスク管理体制の整備」をご参照ください。なお、一般に、商業銀行、ブローカー・ディーラー、清算機関、取引所および投資会社といった金融サービス業に携わる者に対するエクスポージャーが大きくなる傾向があります。また、顧客や取引先とのビジネスに起因して、特定の国や地域において発行される証券を比較的大きく保有する場合があります。加えて、住宅および商業用不動産ローン担保証券などの資産担保証券についても、市場価格が変動すると、野村は損失を被る可能性があります。
(3)ヘッジ戦略により損失を回避できない場合があります
野村はさまざまな金融商品や戦略を用いて、当社が自己または顧客のために行う金融取引から生じるリスク・エクスポージャーをヘッジしています。ヘッジ戦略が効果的に機能しない場合、野村は損失を被る可能性があります。野村のヘッジ戦略の多くは過去の取引パターンや相関性に根拠を置いています。例えば、ある資産を保有する場合は、それまでその資産の価値の変化を相殺する方向に価格が動いていた資産を保有することでヘッジを行っています。しかし野村は、さまざまな市場環境においてあらゆる種類のリスクに晒されており、過去の金融危機の際に見られたように、過去の取引パターンや相関性が維持されず、これらのヘッジ戦略が必ずしも十分に効果を発揮しない可能性があります。さらに、すべてのヘッジ戦略がすべての種類のリスクに対して有効であるわけではなく、リスクが適切に管理されていない場合には、特定の戦略がリスクを増加させる可能性があります。例えば、米国顧客取引に関する損失に至る取引の多くは、顧客に特定の株式に対する 「トータル・リターン・スワップ」と呼ばれるデリバティブ取引のエクスポージャーを増大させていました。詳細は「第4[提出会社の状況]4[コーポレート・ガバナンスの状況等](1)[コーポレート・ガバナンスの概要]リスク管理体制の整備」をご参照ください。野村は、顧客へのトータル・リターン・スワップをヘッジするために、原資産を保有していました。しかしながら、この特定のヘッジ戦略は、顧客によるデフォルトのリスクや、変動の激しい市場環境において当該ポジションを処理する必要が出る場面のリスクをヘッジすることを意図したものではありませんでした。このようなリスクが顕在化した際、原資産を保有するというヘッジ戦略において市場の変動に晒され、損失を計上するに至りました。
(4)野村のリスク管理方針や手続きがリスクの管理において十分に効果を発揮しない場合があります
リスクの特定、モニターおよび管理を行うための野村の方針や手続きが十分な効果を発揮しない場合があります。例えば、野村のリスク管理方法の一部は過去の金融市場におけるデータの動きに基づいて設計、構築されていますが、将来の金融市場における個々のデータの振る舞いは、過去に観察されたものと同じであるとは限りません。その結果、将来のリスク・エクスポージャーが想定を超えて、大きな損失を被る可能性があります。また、野村が使用しているリスク管理方法は、市場、顧客等に関する公表情報または野村が入手可能な情報の評価をよりどころとしています。これらの情報が正確、完全、最新でない、または正しく評価されていない場合には、野村は、リスクを適切に評価できず、大きな損失を被る可能性があります。加えて、市場のボラティリティ等を要因として野村のリスク評価モデルが市場と整合しなくなり、適正な評価やリスク管理が行えなくなる可能性があります。さらに、リスク管理の方針や手続きが定められていたとしても、それらが実際に有効に機能するためには、適切に遵守される必要があります。また、組織の構造やガバナンスの枠組みに潜在的な問題がある場合、リスク管理に係る役割や責任などについて意見の相違が生じる可能性があります。
例えば、米国顧客取引に関する損失においては、顧客のカウンターパーティ・リスクや、顧客とのプライム・ブローカレッジ取引の原資産である有価証券に関する市場リスクのエクスポージャーにより巨額の損失が生じました。野村は、リスク管理の方針・手続きおよびその実施状況を総合的に見直し、改定したほか、それらの運用を強化するための数多くの諸施策を検討し、実施しております。詳細は「第4[提出会社の状況]4[コーポレート・ガバナンスの状況等](1)[コーポレート・ガバナンスの概要]リスク管理体制の整備」をご参照ください。しかしながら、これらの諸施策が完了したとしても、同種またはその他多くのビジネスにおいて、将来の損失を回避するための方針や手続きの効力を損なうリスク管理上の弱みを特定し、是正することができず、将来のリスクの回避に十分ではない可能性があります。
(5)市場リスクによって、その他のリスクが増加する可能性があります
前述の野村のビジネスに影響を与えうる可能性に加え、市場リスクがその他のリスクを増幅させる可能性があります。例えば、金融工学や金融イノベーションを用いて開発された金融商品に内在する諸リスクは市場リスクによって増幅されることがあります。
また、野村が市場リスクによりトレーディングで大きな損失を被った場合、野村の流動性ニーズが急激に高まる可能性があり、一方で、野村の信用リスクが市場で警戒され、資金の調達が困難になる可能性があります。
さらに、市場環境が悪化している場合に、野村の顧客や取引相手が大きな損失を被り、その財政状態が悪化した場合には、先だっての米国顧客取引に関する損失に見られるように顧客や取引相手に対する信用リスクが増加する可能性があります。
(6)野村の仲介手数料やアセット・マネジメント業務からの収入が減少する可能性があります
金融市場や経済情勢が低迷すると、野村が顧客のために仲介する証券取引の取扱高が減少するため、仲介業務にかかる収入が減少する可能性があります。また、アセット・マネジメント業務については、多くの場合、野村は顧客のポートフォリオを管理することで報酬を得ており、その報酬額はポートフォリオの価値に基づいています。したがって、市場の低迷によって、顧客のポートフォリオの価値が下がり、解約等の増加や新規投資の減少が生じることによって、野村がアセット・マネジメント業務から得ている収入も減少する可能性があります。また、顧客の資産運用の趣向が変化し、預金などの安定運用や、相対的に低報酬率であるパッシブファンドなどへシフトすることで、これらの収入は減少する可能性があります。
(7)野村の投資銀行業務からの収入が減少する可能性があります
金融市場や経済情勢の変動によって、野村の行う引受業務や財務アドバイザリー業務などの投資銀行業務における案件の数や規模が変化する可能性があります。これらの業務の手数料をはじめとして、投資銀行業務からの収入は、野村が取り扱う案件の数や規模により直接影響を受けるため、野村の投資銀行業務および当該業務における顧客等に好ましくない形で経済または市場が変動した場合には、これらの収入が減少する可能性があります。
例えば2021年3月期および2022年3月期との比較において、2023年3月期は地政学リスクの高まりや経済見通しの不透明感により、収入が低迷しており、今後においても、M&A案件やその他の投資銀行ビジネスの減少により収入が減少する可能性があります。
(8)野村の電子取引業務からの収入が減少する可能性があります
電子取引システムは、少ないリソースで効率的に迅速な取引を執行するために、野村にとっては必要不可欠なシステムです。野村はこれらのシステムを利用しながら、取引所またはその他の電子取引市場を介して効率的な執行プラットフォームおよびオンライン・コンテンツやツールを顧客に提供しております。電子取引における競争は激化しており、競合他社における大幅な手数料の引き下げや無手数料取引の導入は、野村の電子取引収益と旧来型の取引の両方にかかる収入を圧迫する可能性があります。取引手数料やスプレッド等を含むこれらの電子取引業務に付随する収入は、野村が扱う取引の数や規模により直接影響を受けるため、金融市場や経済情勢変動によって顧客の取引頻度の低下または取引額の低下が生じた場合には、これらの収入が減少することが予想されます。電子取引による利便性向上によって取引量は今後も増加する可能性がありますが、取引手数料の低下を補填するほど十分でない場合は、野村の収入が減少する可能性があります。野村は今後も効率的な取引プラットフォームの提供に関する技術開発投資を続けていく予定ですが、電子取引の手数料の値下げ圧力が高まった場合には、当該投資から生み出される収入を最大限に確保できない可能性があります。
6.野村に債務を負担する第三者がその債務を履行しない結果、損失を被る可能性があります
野村の取引先は、ローンやローン・コミットメントに加え、その他偶発債務、デリバティブなどの取引や契約により、野村に対して債務あるいは担保差入れ等の一定の義務を負うことがあります。これら取引先が法的整理手続きの申請、信用力の低下、流動性の欠如、人為的な事務手続き上の過誤、政治的・経済的事象による制約など、さまざまな理由で債務不履行に陥った場合、野村は大きな損失を被る可能性があります。米国顧客取引に関する損失では、米国のプライム・ブローカレッジ取引の顧客が、トレーディング業務に関して追加証拠金を差し入れる義務と、当社が保有する担保に対して貸し付けた金額を返済する債務を履行しませんでした。詳細は「第4[提出会社の状況]4[コーポレート・ガバナンスの状況等](1)[コーポレート・ガバナンスの概要]リスク管理体制の整備」をご参照ください。貸倒引当金の積立と維持は行っていますが、当該引当金は、入手可能な限りの情報に基づく経営者の判断および仮定に基づいています。しかしながら、それらの情報が不正確または不完全であり、さらにそれらの情報に基づく判断および仮定が、場合によっては重大な誤りであると判明する可能性があります。
信用リスクは、次のような場合からも生じます。
・第三者が発行する証券の保有
・証券、先物、通貨またはデリバティブの取引の取引相手である金融機関やヘッジファンドなど野村の取引相手に債務不履行が生じた場合や、決済機関、取引所、清算機関その他金融インフラストラクチャーのシステム障害により所定の期日に決済ができない場合
第三者の信用リスクに関連した問題には次のものが含まれます。
(1)大手金融機関の破綻が金融市場全般に影響を与え、野村に影響を及ぼす可能性があります
多くの金融機関の経営健全性は、与信、トレーディング、清算・決済など、金融機関間の取引を通じて密接に連関しています。その結果、ある特定の金融機関に関する信用懸念や債務不履行が、他の金融機関の重大な流動性問題や損失、債務不履行を引き起こし、決済・清算機関、銀行、証券会社、取引所といった、野村が日々取引を行っている金融仲介機関にも影響を及ぼす可能性があります。また将来発生しうる債務不履行や債務不履行懸念の高まり、その他類似の事象が、金融市場や野村に影響を及ぼす可能性があります。国内外を問わず、主要な金融機関が流動性の問題や支払能力の危機に直面した場合、野村の資金調達にも影響を及ぼす可能性があります。
(2)野村の信用リスクに関する情報の正確性、また信用リスク削減のために受け入れている担保の十分性については、必ずしも保証されたものではありません
野村は信用に懸念のある顧客や取引相手、特定の国や地域に対するクレジットエクスポージャーを定期的に見直しています。しかし、債務不履行が発生するリスクは、粉飾決算や詐欺行為のように発見が難しい事象や状況から生じる場合があります。また、野村が取引相手のリスクに関し、すべての情報を手に入れることができない、あるいは情報を正確に管理・評価できない可能性があります。例えば、米国顧客取引に関する損失の原因となった債務不履行に陥った顧客に関する信用リスク評価では、顧客の取引活動の全容が十分に反映されていませんでした。さらに、野村が担保提供を条件として与信をしている場合に、米国顧客取引に関する損失の場合において当該顧客に対して行った融資のように、当該担保の市場価格が急激に下落して担保価値が減少した場合、担保不足に陥る可能性があります。詳細は「第4[提出会社の状況]4[コーポレート・ガバナンスの状況等](1)[コーポレート・ガバナンスの概要]リスク管理体制の整備」をご参照ください。
(3)野村の顧客や取引相手が政治的・経済的理由から野村に対する債務を履行できない可能性があります
カントリー・リスクや地域特有のリスク、政治的リスクは、市場リスクのみならず、信用リスクに影響を与える可能性があります。現地市場における混乱や通貨危機のように、ある国または地域における政治的・経済的問題はその国や地域の顧客・取引相手の信用力や外貨調達力に影響を与え、結果として野村に対する債務の履行に影響を与える可能性があります。
7.モデルに誤りがある場合、またはモデルを不正確若しくは不適切に使用した場合、意思決定を誤り、財務的損失を被る可能性や、顧客からの信頼低下を招く可能性があります
野村では、流動性の低いデリバティブ取引の評価や債務者の信用力の評価等を目的として、さまざまな業務でモデルを使用しています。しかし、モデルは常に完璧とは限らず、モデルを使用することで、モデル・リスクが生じる可能性があります。モデルに誤りがある場合、またはモデルを不正確若しくは不適切に使用した場合、意思決定の誤り、財務的損失、または顧客からの信頼低下を招く可能性があります。野村は、モデルの開発、実装およびや使用に加え、有効なモデル検証プロセスやモデル・リスクを管理し、軽減するための体制を含むモデル・リスクの管理の枠組みを設置しています。それにより、モデル・リスクの軽減に努めていますが、それでも損失が出る可能性があります。
8.野村は持株会社であり、野村の子会社からの支払に依存しています
野村は持株会社であり、配当金の支払や負債の支払の資金について、野村の子会社から受領する配当金、分配金およびその他の支払に依存しています。会社法などの法規制により、子会社への資金移動または子会社からの資金移動が制限される可能性があります。特に、ブローカー・ディーラー業務を行う子会社を含め、多くの子会社は、親会社である持株会社への資金の移動を停止または減少させる、あるいは一定の状況においてそのような資金の移動を禁止するような、自己資本規制を含む法規制の適用を受けています。例えば、野村の主要なブローカー・ディーラー子会社である野村證券、ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナルInc、ノムラ・インターナショナルPLCおよびノムラ・インターナショナル(ホンコン)LIMITEDは、自己資本規制の適用を受けており、自己資本規制の変更や要求水準によっては、野村への資金移動が制限される可能性があります。野村は、関連する法規制に基づき野村グループ間における資金移動について日々確認し管理しておりますが、これらの法規制は野村の債務履行に必要となる資金調達の方法を制限する可能性があります。
9.投資持分証券・トレーディング目的以外の負債証券について野村が期待する収益を実現できない可能性があります
野村は、プライベート・エクイティ投資を含む、多額の投資持分証券・トレーディング目的以外の負債証券を保有しています。米国会計原則では、市場環境によって投資持分証券・負債証券にかかる多額の未実現損益が計上されることがあり、このことが野村の損益に大きな影響を与えます。例えば、2020年3月期においては、新型コロナウイルスの感染拡大による市場の混乱により、アメリカン・センチュリー・インベストメンツ関連損失164億円および投資持分証券の評価損166億円を認識しました。また、野村はこれらの投資持分証券・負債証券の売却を決定する可能性がありますが、市場の環境によっては、これらの投資持分証券・負債証券を売却したい場合に、期待どおり迅速には、また望ましい水準では売却できない可能性があります。
10.野村が提供したキャッシュ・リザーブ・ファンドや債券に損失が生じることで顧客資産が流出する可能性があります
マネー・マーケット・ファンド(MMF)やマネー・リザーブ・ファンド(MRF)といったキャッシュ・リザーブ・ファンドは低リスク商品と位置づけられています。しかし急激な金利上昇にともなうポートフォリオに組み込まれた債券価格の下落による損失の発生、ファンドのポートフォリオに組み込まれた債券のデフォルト、マイナス金利の適用によるファンドへの手数料チャージにより、元本割れを起こす場合があります。また、野村は運用による安定的な利回りが見込めないと判断した場合、これらのキャッシュ・リザーブ・ファンドに対し繰上償還や入金制限を行う可能性があります。
また、野村が提供した債券が債務不履行に陥り、利息や元本の支払が遅延する場合があります。
上記事象の結果、野村は顧客の信頼を失う可能性があり、ひいては野村が保管する顧客からの預かり資産の流出もしくは預かり資産増加の妨げとなる可能性があります。
財務に関するリスク
11.連結財務諸表に計上されているのれんおよび有形・無形資産にかかる減損が認識される可能性があります
野村は、事業の拡大等のため、企業の株式などを取得し、または企業グループの一部の事業を承継しており、野村が適切と判断した場合にはこれらを継続して行う見込みです。このような取得や承継は、米国会計原則に基づき、野村の連結財務諸表において、企業結合として認識され、取得価額は資産と負債に配分され、差額はのれんとしています。例えば、野村は2020年4月1日にグリーンテックの全持分を取得し12,480百万円を連結貸借対照表に計上しております。また、その他にも有形・無形資産を所有しております。
これらの企業結合などにより認識されたのれんおよび有形・無形資産に対して減損損失やその後の取引にともなう損益が認識される可能性があり、野村の経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。例えば、野村は2019年3月期において、ホールセール部門での過去の海外での買収に関連して、81,372百万円ののれんの減損を認識しております。
12.資金流動性リスクの顕在化によって野村の資金調達能力が損なわれ、野村の財政状態が悪化する可能性があります
資金流動性、すなわち必要な資金の確保は、野村のビジネスにとって極めて重要です。野村では、資金流動性リスクを野村グループの信用力の低下または市場環境の悪化により必要な資金の確保が困難になる、または通常より著しく高い金利での資金調達を余儀なくされることにより損失を被るリスクと定義しております。即時に利用できるキャッシュ・ポジションを確保しておくことに加え、野村は、レポ取引や有価証券貸借取引、長期借入金の利用や長期社債の発行、コマーシャル・ペーパーのような短期資金調達先の分散、流動性の高いポートフォリオの構築などの方法によって十分な資金流動性の確保に努めています。しかし、野村は一定の環境の下で資金流動性の低下に晒されるリスクを負っています。その内容は以下のとおりです。
(1)野村が無担保あるいは有担保での資金調達ができなくなる場合があります
野村は、借り換えも含めた日常の資金調達において、短期金融市場や債券発行市場での債券発行、銀行からの借入といった無担保資金調達を継続的に行っています。また、トレーディング業務のための資金調達活動として、レポ取引や有価証券貸借取引といった有担保資金調達を行っています。これらの資金調達ができない場合、あるいは通常よりも著しく高い金利での資金調達を余儀なくされる場合、野村の資金流動性は大きく損なわれる可能性があります。例えば、野村の短期または中長期の財政状態に対する評価を理由に、資金の出し手が資金提供を拒絶する可能性があるのは、次のような場合です。
・多額のトレーディング損失
・市場の低迷にともなう野村の営業活動水準の低下
・規制当局による行政処分
・信用格付の低下
上記に加え、市場金利の上昇、資金の出し手側の貸付余力の低下、金融市場やクレジット市場における混乱、投資銀行業や証券ブローカレッジ業、その他広く金融サービス業全般に対する否定的な見通し、日本の国家財政の健全性に対する市場の否定的な見方など、野村に固有でない要因によって、野村の資金調達が困難になることもあります。
(2)野村が資産を売却できなくなる可能性があります
野村が資金を調達できない、もしくは資金流動性残高が大幅に減少するなどの場合、野村は期限が到来する債務を履行するために資産を売却するなどの手段を講じなければなりません。市場環境が不安定で不透明な場合には、市場全体の流動性が低下している可能性があります。このような場合、野村は資産を売却することができなくなる可能性や資産を低い価格で売却しなければならなくなる可能性があり、結果的に野村の経営成績や財政状態に影響を与える場合があります。また、他の市場参加者が同種の資産を同時期に市場で売却しようとしている場合には、野村の資産売却に影響を及ぼすことがあります。
(3)信用格付の低下により、野村の資金調達能力が損なわれる可能性があります
野村の資金調達は、信用格付に大きく左右されます。格付機関は野村の格付の引下げや取消しを行い、または格下げの可能性ありとして「クレジット・ウォッチ」に掲載することがあります。例えば、2021年3月の米国顧客取引に関する損失の後、フィッチ・レーティングス社は当社の信用格付をネガティブ・ウォッチに設定し、ムーディーズ・インベスターズ・サービス社は当社の信用格付の見通しをネガティブに変更しましたが、いずれも将来的に当社の信用格付を格下げする可能性があります。詳細は「第4[提出会社の状況]4[コーポレート・ガバナンスの状況等](1)[コーポレート・ガバナンスの概要]リスク管理体制の整備」をご参照ください。将来格下げがあった場合、野村の資金調達コストが上昇する可能性や、資金調達自体が制約される可能性があります。その結果、野村の経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
さらに、日本の国家財政の健全性に対する市場の否定的な見方といった、野村に固有でない要因によっても、野村の資金調達が困難になることもあります。
13.連結財務諸表に計上されている関連会社およびその他の持分法投資先の株価が一定期間以上大幅に下落した場合には減損が認識される可能性があります
野村は上場している関連会社およびその他の持分法投資先の株式に投資しており、この投資は持分法で連結財務諸表に計上されています。野村が保有する関連会社の株式の市場価格が一定期間を超えて下落した場合において、価格の下落が一時的ではないと野村が判断したときには、野村は対応する会計年度に減損を認識しなければなりません。このことは、野村の経営成績および財政状態に重要な影響を与える可能性があります。例えば、野村は2021年3月期に野村不動産ホールディングスに対する投資にかかる減損損失47,661百万円を計上しました。
非財務リスク
14.オペレーショナル・リスクの顕在化により、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります
オペレーショナル・リスクとは、内部プロセス・システム・役職員の行動が不適切であること、機能しないこと、もしくは外生的事象から生じる財務上の損失、または非財務的影響を被るリスクをいいます。また、オペレーショナル・リスクには、コンプライアンス、リーガル、ITおよびサイバーセキュリティ、不正、外部委託先に関わるリスク、その他の非財務リスクが含まれます。かかるリスクが顕在化した場合には、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります。
なお、オペレーショナル・リスクに関連する事項には、以下に記載したものも含まれます。
15.野村の財務報告に関する内部統制に開示すべき重要な不備が特定されました。当社は改善策を策定し取り組んでおりますが、今後も重要な不備が特定される可能性があります
2024年3月期の第4四半期において、野村は提出済みの有価証券報告書に含まれる連結財務諸表に記載された連結キャッシュ・フロー計算書の一部の区分および表示に関する内部統制に重要な不備を特定しました。これにより、野村は当該連結財務諸表および四半期連結財務諸表に含まれる連結キャッシュ・フロー計算書を訂正する必要が生じました。野村は、これらの重要な不備に対処するための多くの改善策を策定し、将来開示する有価証券報告書に含まれる連結キャッシュ・フロー計算書およびその他の連結財務諸表で同様の不備の発生の防止に取り組んでいます。しかしながら、それらの対策にもかかわらず開示すべき重要な不備または問題が将来発生する可能性はあり、それにより野村が連結財務諸表およびその他財務情報において当社が正確、迅速かつ信頼性のある方法で財務情報を提供することができない可能性や、連結財務諸表や他の定期的に行う開示において追加的な訂正が発生する可能性があります。これは、公表された財務諸表その他の情報に対する株主を含めた利用者の信頼を失わせることで、米国預託証券の価格を含めた株価を下落させる可能性だけでなく、資本市場へのアクセスが制限される可能性、顧客が当社との取引を控える可能性、潜在的な規制当局の調査や制裁を受ける可能性があります。それが結果として当社の事業、業績、財務状況に対して重大で不利な影響を与える可能性があります。連結キャッシュ・フロー計算書の訂正の詳細については、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 1 会計処理の原則および会計方針の要旨」をご参照ください。訂正に伴い特定された財務報告に関する内部統制の不備、および不備への対処のために取られる措置についての詳細は内部統制報告書をご参照ください。
16.役職員または第三者による不正行為や詐欺により、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります
野村の役職員が、上限額を超えた取引、限度を超えたリスクの負担、権限外の取引や損失の生じた取引の隠蔽等の不正行為を行うことにより、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります。また、不正行為には、インサイダー取引、情報伝達行為や取引推奨行為等の役職員または第三者による野村やその顧客の非公開情報の不適切な使用・漏洩その他の犯罪も含まれ、その結果、野村が行政処分を受け、もしくは法的責任を負う可能性、または野村のレピュテーションや財政状態に重大な悪影響が及ぶ可能性があります。
例えば、2019年3月5日、東京証券取引所(以下「東証」)が設置した「市場構造の在り方等に関する懇談会」の委員を務める、株式会社野村総合研究所の研究員から、野村證券のリサーチ部門に所属するチーフストラテジスト(以下「ストラテジスト」)に対し、東証で議論されている市場区分の見直しについて、上位市場の指定基準および退出基準が時価総額250億円以上とされる可能性が高くなっている旨の情報が伝達され、さらに、当該情報は、同日および翌日に、ストラテジストから、野村證券およびノムラ・インターナショナル(ホンコン)LIMITEDの日本株営業担当の社員等に伝達されました。また、当該情報を受領した一部の社員は、顧客である一部の機関投資家に対して当該情報を提供しました。当該情報提供は、法令違反ではありませんでしたが、野村および野村證券やその役職員に対する市場参加者からの信頼を損なう行為で不適切な情報伝達であったといえます。外部有識者による特別調査を経て、2019年5月24日、野村は、上記の不適切な情報伝達が発生したことを踏まえ、再発防止策ならびに野村および野村證券の関係役員の役員報酬の一部返上を公表しました。さらに、2019年5月28日、野村および野村證券は、上記の不適切な情報伝達事案が発生したことにより、金融庁から、責任の所在の明確化、詳細な改善計画策定およびその提出、再発防止策の実施状況の定期的報告ならびにその実効性を定期的に検証して検証結果の報告を求めること等を内容とする業務改善命令を受け、2019年8月28日には、東証より過怠金1,000万円の処分を受けました。
また、野村は、第三者が行う詐欺的行為に直接または間接に巻き込まれる可能性があります。野村は、投資、融資、保証、その他あらゆる種類のコミットメントを含め、幅広いビジネス分野で多くの第三者と日々取引を行っているため、こうした第三者による詐欺や不正行為を防止し、発見することが困難な場合があり、こうした行為に巻き込まれることにより、野村の将来のレピュテーションや財政状態に影響が及び、野村が被る損失が多額になり、また野村に対する信頼が損なわれる等の悪影響を受けるおそれがあります。
野村は、「野村グループ行動規範」を策定するとともに、コンプライアンス研修等の実施、内部通報制度での対応の充実等を通じて、その浸透と遵守を徹底することをはじめとする役職員や第三者による不正行為や詐欺的行為を防止または発見するための対策を講じていますが、これらの実装済の対策または今後追加する対策により役職員や第三者による不正行為や詐欺的行為を常に防止または発見できるとは限らず、また、不正行為や詐欺的行為の防止・発見のために取っている予防措置がすべての場合に効果を発揮するとは限りません。そのような不正行為や詐欺的行為の結果として野村に対する行政上の処分または司法上の決定・判決等が行われれば、野村はビジネスの機会を喪失する可能性があり、また、顧客、特に公的機関が野村との取引を行わない決定をした場合は、たとえ処分等が解除された後であっても、ビジネスの機会を喪失し、将来の収益や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
17.利益相反を特定し適切に対処することができないことにより、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります
野村は、多様な商品およびサービスを個人、企業、他の金融機関および政府機関を含む幅広い顧客に対して提供するグローバルな金融機関です。それにともない、野村の日々の業務において利益相反が発生するおそれがあります。利益相反は、特定の顧客へのサービスの提供が野村の利益と競合・対立する、または競合・対立するとみなされることにより発生します。また、適切な非公開情報の遮断措置または共有がされていない場合、特定の顧客との取引とグループ各社の取引または他の顧客との取引が競合・対立する、または競合・対立するとみなされることにより利益相反が発生するおそれがあります。野村は利益相反を特定し対処するための野村グループ利益相反管理方針に基づく利益相反管理体制を整備していますが、利益相反を特定、開示し、適切に対処することができなかった場合、またはできていないとみなされた場合には、野村のレピュテーションが悪化し、現在または将来の顧客を失い、収益や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、利益相反の発生により行政処分、または訴訟の提起を受ける可能性があります。
18.野村のビジネスは、重大なリーガル・リスク、レギュラトリー・リスクおよびレピュテーショナル・リスクに影響される可能性があります
野村が重大な法的責任を負うことまたは野村に対する行政処分がなされることにより、重大な財務上の影響を受け、または野村のレピュテーションが低下し、その結果、ビジネスの見通し、財務状況や経営成績に悪影響を与える可能性があります。また、野村や野村が業務を行う市場に適用される規制に重大な変更がなされた場合、これが野村のビジネスに悪影響を与える可能性があります。野村に対する主な訴訟その他の法的手続きについては、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 19 コミットメント、偶発事象および債務保証」をご参照ください。
野村は、ビジネスにおいてさまざまなリーガル・リスクに晒されています。これらのリスクには、金融商品取引法およびその他の法令における有価証券の引受けおよび勧誘に関する責任、有価証券その他金融商品の売買から生じる責任、複雑な取引条件に関する紛争、野村との取引にかかる契約の有効性をめぐる紛争、業務提携先との間の紛争ならびにその他の業務に関する法的賠償請求等が含まれます。野村は、重大な法的責任が発生した場合、専門家や第三者機関等にも助言を求め、適切な方針を策定の上、これらへの対応を行っておりますが、紛争等の動向によっては、野村のレピュテーションや財政状態に影響が及び、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(1)市場低迷等を原因とした法的責任の可能性が発生し、野村のビジネス、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります
市場の低迷の長期化または市場に重大な影響を与えるイベントの発生により、野村に対する賠償請求等が増加することが予想され、また、重大な訴訟を提起される可能性があります。これらの訴訟費用は高額にのぼる可能性もあり、訴訟を提起されることにより野村のレピュテーションが悪化する可能性もあります。例えば、2022年3月期においては、米国における世界金融危機(2007~2008年)以前の取引に関連して、約620億円の法的費用(将来的な損失発生の軽減を目的とした一定の取引を含みます。)が認識されました。さらに、適法な取引であったとしても、その取引手法によっては社会的非難の対象となってしまう場合もあります。これらのリスクの査定や数量化は困難であり、リスクの存在およびその規模が認識されない状況が相当期間続く可能性もあります。
(2)規制による業務制限や、行政処分等による損失が発生し、野村のビジネス、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります
金融業界は広範な規制を受けています。野村は、国内において政府機関や自主規制機関の規制を受けるとともに、海外においては業務を行っているそれぞれの国の規制を受けています。また、野村のビジネスの拡大とともに、適用される政府機関や自主規制機関の規制も増加する可能性や、法改正によって、これらの規制が強化される可能性があります。さらに、金融規制の体系の複雑化が進み、ある一国の規制が、当該国以外の活動に域外適用される可能性も増加しています。これらの規制は、広く金融システムの安定や金融市場・金融機関の健全性の確保、野村の顧客および野村と取引を行う第三者の保護等を目的としており、自己資本規制、顧客保護規制、市場行動規範などを通じて野村の活動を制限し、野村の収益に影響を与えることがあります。この他、従来の金融関連法制に加え、広く国際的な政治経済環境や政府当局の規制・法執行方針等によっても、野村のビジネスに適用・影響する法令諸規制の範囲が拡大する可能性があります。とりわけ、金融業界に対する各国の政府機関や自主規制機関による調査手続きや執行については、近年件数が増加し、また、それらによる影響はより重大なものになっており、野村もそのような調査手続きや執行の対象となるリスクに晒されています。例えば、米国司法省は、2009年以前に野村の米国子会社の一部が取り扱った住宅ローン担保証券について調査を実施しました。2018年10月15日、これらの当社米国子会社は、調査に関して米国司法省と和解し、480百万ドルを支払うことに同意しました。この点、野村は、法令諸規制を遵守するため、随時モニタリングや社内管理体制の構築といった対策を講じてはおりますが、法令諸規制に抵触することを完全には防ぐことができない可能性があり、仮に法令違反等が発生した場合には、罰金、一部の業務の停止、社内管理体制の改善等にかかる命令、もしくは営業認可の取消しなどの処分を受ける可能性があります。野村が行政上の処分または司法上の決定・判決等を受けた場合、野村のレピュテーションが悪化し、ビジネス機会の喪失や人材確保が困難になるといった悪影響を受ける可能性があります。また、それらの処分により、顧客(とりわけ公的機関)が野村との金融取引を行わない決定をした場合は、たとえ命令等の処分が解除された後であっても、一定期間、野村がビジネスの機会を喪失する可能性があります。さらに、野村が国際的な制裁の対象地域で事業活動を行う場合には、当該事業活動が制裁規制に違反していなくても、一部の市場関係者が野村への投資や野村との取引を控える可能性があります。
(3)金融システム・金融セクターに対する規制強化の進行が、野村のビジネス、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります
野村のビジネスに適用される規制が導入・改正・撤廃される場合、野村は、直接またはその結果生じる市場環境の変化を通じて悪影響を受けることがあります。規制の導入・改正・撤廃により、野村の全部または一部の事業を継続することの経済合理性がなくなる可能性、もしくは規制の対応に膨大な費用が生じる可能性があります。
加えて、野村に適用される会計基準や自己資本比率・流動性比率・レバレッジ比率等に関する規制の変更が、野村のビジネス、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そうした新たな規制の導入または既存の規制の改正には、バーゼル銀行監督委員会(以下「バーゼル委員会」)によるいわゆるバーゼルⅢと呼ばれる規制パッケージが含まれ、2017年12月には、バーゼルⅢの最終規則文書が公表されました。また、2012年10月、バーゼル委員会は、国内のシステム上重要な銀行(以下「D-SIBs」)に関する評価手法およびより高い損失吸収力の要件に関する一連の原則を策定し、公表しました。2015年12月、金融庁は野村をD-SIBsに指定し、2016年3月以降の追加的な資本賦課水準を3年間の経過措置はありますが0.5%といたしました。さらに、金融安定理事会(以下「FSB」)は、2015年11月にグローバルにシステム上重要な銀行(以下「G-SIBs」)に対して破綻時の総損失吸収力(以下「TLAC」)を一定水準以上保有することを求める最終文書を公表しました。これを受けて、金融庁は、2018年4月に、本邦G-SIBsに加え、本邦D-SIBsのうち、国際的な破綻処理対応の必要性が高く、かつ破綻の際に我が国の金融システムに与える影響が特に大きいと認められる金融機関についても本邦TLAC規制の適用対象とする方針とし、2019年3月に当該方針に基づきTLAC規制にかかる告示等を公表しました。野村は、現時点ではG-SIBsに選定されてはおりませんが、これにより、2021年3月末より本邦TLAC規制の適用対象に加えられることになりました。これらの規制により、野村の資金調達コストが上昇する、あるいは野村のビジネス、資金調達活動や野村の株主の利益に影響を及ぼすような資産売却、資本増強もしくは野村のビジネスの制限を行わなければならない可能性があります。
(4)経営状況、法的規制の変更などにより、繰延税金資産の計上額の見直しが行われ、野村の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります
野村は、一定の条件の下で、将来における税金負担額の軽減効果を有すると見込まれる額を繰延税金資産として連結貸借対照表に計上しております。今後、経営状況の悪化、法人税率の引下げ等の税制改正、会計原則の変更などその回収可能性に変動が生じる場合には、野村の連結貸借対照表に計上する繰延税金資産を減額する可能性があります。その結果、野村の経営成績および財政状態に影響が生じる可能性があります。繰延税金資産の内訳につきましては「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 14 法人所得税等」をご参照ください。
(5)マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与に適切に対処できなかった場合には、行政処分や罰金等の対象となる可能性があります
近年、金融犯罪の手口は複雑化・高度化・多様化してきています。国際的にも戦争、テロ犯罪やサイバー攻撃の脅威が増す中、犯罪者やテロリスト等につながる資金を断つことの重要性は極めて高く、世界的に金融業界は対応の強化が求められています。野村ではこのような状況に適切に対応するため、金融活動作業部会(FATF)の勧告や金融庁「マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与対策に関するガイドライン」等をはじめ各国の規制等に基づき、グループ全体で一貫したマネー・ローンダリングおよびテロ資金供与対策の態勢整備および強化に継続的に取り組んでおります。しかしながら、かかる対策が有効に機能せず、適用される規制に反する取引を未然に防ぐことができなかった場合またはそのような取引に適切に対処できなかった場合には、行政処分や罰金等の対象となる可能性があります。関連する処分等やその影響については「非財務リスク 17.野村のビジネスは、重大なリーガル・リスク、レギュラトリー・リスクおよびレピュテーショナル・リスクに影響される可能性があります -(2)規制による業務制限や、行政処分等による損失が発生し、野村のビジネス、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります」をご参照ください。
19.野村の保有する個人情報の漏洩により、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります
野村は業務に関連して顧客から取得する個人情報を保管、管理しています。近年、企業が保有する個人情報および記録への不正アクセスや漏洩にかかる事件や不正利用の事件が多数発生していると報じられています。
野村は個人情報の保護に関する法令諸規則に基づき、個人情報の保護に留意し、適用されるポリシーや手続きを定め、セキュリティ対策を講じておりますが、仮に個人情報の重大な不正漏洩または不正利用が生じた場合には、野村のビジネスにさまざまな点で悪影響が及ぶ可能性があります。例えば、野村は、これらの法令諸規則を万が一違反した場合、規制当局から行政処分や罰則を受ける可能性があるほか、個人情報の漏洩(業務委託先による漏洩を含む)または不正利用により顧客に損失が生じた場合には、顧客から苦情や損害賠償請求を受ける可能性があります。また、自主的に、もしくは行政上の命令その他の規制上の措置の対応として行うセキュリティ・システムの変更により、追加的な費用が発生する可能性があります。また、顧客からお預かりした個人情報の利用が制限されることにより、既存事業や新規事業に悪影響を及ぼす可能性があります。更に、不正漏洩または不正利用の結果、野村に対するレピュテーションが悪化することによって、新規顧客が減少したり既存顧客を喪失したりするとともに、野村のブランド・イメージやレピュテーションの悪化の防止・抑制のために行う広報活動のために追加的な費用が発生する可能性があります。
20.野村の情報システムが適切に稼働しないこと、外部からのサイバー攻撃による情報漏洩または十分なサイバーセキュリティを維持するために必要な費用負担により、野村のビジネス、財政状態および経営成績に悪影響が及ぶ可能性があります
野村のビジネスは、個人情報および機密情報を野村のシステムにおいて安全に処理、保存、送受信できる環境に依拠しています。野村は、過去において、野村のシステム上にある情報にアクセスしこれを入手することを企図した、または野村のサービスにシステム障害その他の損害をもたらすことを企図した不正アクセス、コンピューターウイルスもしくは破壊工作ソフトその他のサイバー攻撃の標的になってきましたが、今後も再び標的になる可能性があります。例えば、2018年6月に、海外子会社において、当該子会社のデスクトップ・ネットワークにマルウェア(不正・有害な動作を行う目的で作成されたソフトウエア)による不正なアクセスがあったことが判明しました。それを受けて、野村は、直ちに内部調査を開始し、是正措置を講じるとともに、当該事案の発生を関係当局に対して報告し、また、顧客その他の個人に対してその情報が影響を受ける可能性があることを伝えております。また、新型コロナウイルス感染症の影響により、従業員の多くがネットワーク技術を利用してリモートワークを行っています。これにより、サイバー攻撃その他の情報セキュリティ侵害の対象となる可能性が高まる恐れがあります。これらの脅威は、人為的なミスまたは技術的不具合から発生する場合もありますが、従業員などの内部関係者または海外の非国家主体および過激派組織などの第三者の悪意もしくは不正行為により発生する場合もあります。また、野村のシステムが相互接続している外部事業者、証券取引所、決済機関またはその他の金融機関のいずれかがサイバー攻撃その他の情報セキュリティ侵害の対象となった場合、野村にもその悪影響が及ぶ可能性があります。当該事象により、野村のシステム障害、信用の失墜、顧客の不満、法的責任、行政処分または追加費用が生じる可能性があり、上記事象のいずれかまたはその全部の発生により、野村の財政状態および事業運営が悪影響を受ける可能性があります。
野村は、システムのモニタリングおよびアップデートを行うため多大な経営資源を継続的に投入し、かつシステム保護のため情報セキュリティ対策を講じていますが、実施しているそれらの管理手段や手続きが、将来のセキュリティ侵害から野村を十分に保護できる保証はありません。サイバー上の脅威は日々進化しているため、将来的には、現在の管理手段や手続きが不十分となる可能性があり、また、システム修正または強化のため、更なる経営資源を投入しなければならなくなる可能性があります。
21.人材の確保・育成ができないことにより、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります
野村は、人材こそが野村グループの最大の財産であるとの理念のもと、人材の採用・育成・評価・登用および配置について1つのサイクルとしてとらえ、総合的な観点から各種のタレントマネジメント施策に取り組んでおります。適切な人材の確保や育成が想定どおりに進まない場合、野村のビジネスや業務運営に悪影響を及ぼす可能性があります。報酬、労働環境、利用できる研修や福利厚生、雇用者としての評判などの要因により、人材確保において厳しい競争が起きています。また、当該人材確保のための支出は、野村の収益性を損なう可能性があります。加えて、人材育成や企業文化の定着には継続的かつ徹底的な取り組みが必要であり、成功しない可能性もあります。
(1)業績の概況
以下の業績の概況は、「第1[企業の概況] 1[主要な経営指標等の推移]」および「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表]」の部とあわせてご覧ください。また、以下の内容には、一部、将来に対する予測が含まれており、その内容にはリスク、不確実性、仮定が含まれています。野村の実際の経営成績はここに記載されている将来に対する予測と大きく異なる可能性があります。
エグゼクティブ・サマリー
《全体の業績について》
当期の収益合計(金融費用控除後)は、前期比2.1%減の1兆3,356億円、金融費用以外の費用は同4.3%増の1兆1,861億円となりました。税引前当期純利益は1,495億円、当社株主に帰属する当期純利益は928億円となりました。自己資本利益率は3.1%となり、また、当期のEPS(注)は前期の45.23円から29.74円となっております。なお、2023年3月末を基準日とする配当金は、1株当たり12円とし、年間での配当は1株につき17円といたしました。
(注)希薄化後1株当たり当社株主に帰属する当期純利益
《当期の業績に特に影響を与えた事象の経営者評価》
当期は、地政学リスクの高まりや、世界的なインフレ、米国をはじめとした主要中央銀行による積極的な金融引き締めの動きなどを受け、世界経済の先行き不安が高まったことなどから、マーケットが大きく変動する局面が多く見られました。このような環境のなか、お客様一人ひとりのニーズにお応えするための体制整備および既存ビジネスの強化、新たな分野への挑戦に取り組んできました。
営業部門では、特に上半期は不透明な市場環境を受けお客様の投資マインドが低下し、フロー収入等(ブローカレッジ収入やコンサルティング関連収入など取引に付随して発生する収入、ローン関連以外の金融収益等)が低調となりました。一方、市場環境を踏まえた丁寧なコンサルティングと残高拡大の取組みが浸透し、ストック資産純増を継続することでストック収入(投資信託、投資一任、保険、ローン、レベルフィーなどの残高から発生する収入や継続的に発生する収入)は前期比2%の増加となりました。ストック収入費用カバー率(金融費用以外の費用に対するストック収入の比率)は2022年3月期の49%から2023年3月期は51%に伸長しています。
インベストメント・マネジメント部門では、成功報酬等の減収を、航空機リースを手掛ける野村バブコックアンドブラウン株式会社の業績改善で相殺し、事業収益は前年並みの水準を維持しました。コア投信やオルタナティブ運用資産への資金流入も継続しています。一方で、投資損益の減少により部門利益は前期比減益となりました。
ホールセール部門では、マクロ・プロダクト中心にフィクスト・インカムが増収、エクイティも米国顧客取引に起因する損失がなくなり、収益が回復しました。インベストメント・バンキングでは、株式発行やM&Aを中心にグローバル・フィープールが大幅に減少するという難しい環境のなか、エクイティ・プライベート・プレイスメント案件の貢献により、アドバイザリー収益は底堅く推移しています。一方で円安進行による影響およびインフレによる固定費の上昇により部門費用が増加し、利益を押し下げる要因となりました。
《資本政策と株主還元の考え方》
当社は、適正な資本比率を確保しつつ、最適な資本配分を通じて持続可能な成長を実現したいと考えております。経営ビジョン達成に向けた布石として、コスト水準は抑制しながらも、パブリックに加え、プライベート領域のビジネスを拡大する為の成長投資も行うことで、投資と株主還元のバランスを図るとともに、当社の生産性向上と収益源の拡大を通じた株主価値の最大化を目指しています。
配当については、半期毎の連結業績を基準として、連結配当性向30%を重要な指標の1つとして設定しており、また、自己株式取得による株主還元分を含めた総還元性向を50%以上とすることを、株主還元上の目処といたします。各期の株主還元の総額は、バーゼル規制強化をはじめとする国内外の規制環境の動向、連結業績をあわせて総合的に勘案し、決定することとしています。なお、2024年3月期以降の配当については、半期毎の連結業績を基準として、連結配当性向40%以上とすることを重要な指標の1つとする方針に変更いたしました。
詳細は「第4[提出会社の状況] 3[配当政策]」をご参照ください。
各部門の状況については以下のとおりです。
2023年3月期の営業部門の収益合計(金融費用控除後)は、前期比8.5%減の3,002億円、金融費用以外の費用は同0.8%減の2,667億円となりました。その結果、税引前当期純利益は同43.5%減の335億円となりました。営業部門では、「お客様の資産の悩みに応えて、お客様を豊かにする」という基本観のもと、お客様一人ひとりに寄り添い、「最も信頼できるパートナー」を目指して資産コンサルティング業への進化に取り組んでまいりました。当期は不透明な市場環境が継続し、株式・投資信託の買付が低水準に留まるなど、フロー収入等は低調でしたが、お客様の資産全体に対するコンサルティングが奏功し、ストック資産拡大に向けた取り組みが進捗しています。また、職域サービスによる接点拡大を通じて、持続的な顧客基盤の構築、部門の中長期的なサービス拡大を目指していますが、現役世代を含め、順調に職域サービスを提供するお客様を拡大することができております。今後は領域別アプローチを強化しながら、資産運用に加え、不動産・相続・資産承継といった多様な悩みの解決に向けた商品・サービスの充実を図ってまいります。
2023年3月期のインベストメント・マネジメント部門の収益合計(金融費用控除後)は、前期比13.1%減の1,286億円、金融費用以外の費用は同11.2%増の851億円となりました。その結果、税引前当期純利益は同39.2%減の435億円となりました。インベストメント・マネジメント部門では、多様化するお客様の運用ニーズに応える商品ラインナップの拡充やサービスの向上を目的に、広義のアセット・マネジメント・ビジネスに取り組んでまいりました。運用資産残高が全体として微減となったものの、航空機リースを手掛ける野村バブコックアンドブラウン株式会社の業績の改善等が貢献し、事業収益は前年並みを維持しました。一方、アメリカン・センチュリー・インベストメンツ関連損益と野村キャピタル・パートナーズ株式会社の投資先企業の評価益・売却益の減少により、投資損益は前期比で減少しました。当期は、プライベート領域への拡大の一環として、不動産やインフラへの投資運用を行う野村リアルアセット・インベストメント株式会社を野村不動産ホールディングス株式会社との合弁で新設しました。また、世界有数の森林アセットマネジメント事業者であるニューフォレスト Pty Limited.の株式を取得しました。さらに、ノムラ・プライベート・キャピタル LLCを設立し、米国でのプライベート資産運用ビジネスに着手しました。
2023年3月期のホールセール部門の収益合計(金融費用控除後)は、前期比9.9%増の7,724億円、金融費用以外の費用は、同18.2%増の7,430億円となりました。その結果、税引前当期純利益は60.6%減の294億円となりました。グローバル・マーケッツは、リスク管理を強化しながら引き続きそれぞれの地域で強みのあるコアビジネスに注力するとともに、マクロ環境のパラダイムシフトによるマーケットの不透明感とボラティリティの高まりの中で投資家のポートフォリオのリバランス取引やヘッジ取引などに対して丁寧に流動性を提供しました。フロービジネスに加えて、ストラクチャード・ファイナンスやソリューションビジネスなど顧客ニーズへの適切な対応を通じて、収益を積み上げました。インベストメント・バンキングは、地政学リスクや金融政策をめぐる市場環境の不透明感から顧客の慎重姿勢が強まり、顧客アクティビティは前期比で低調となりました。これらの結果、エクイティファイナンスや買収ファイナンスに加えM&Aにおいても案件が減少し通期では減益となりましたが、顧客との丁寧な対話を行いながらニーズの把握に努め、エクイティ・プライベート・プレイスメントやプライベート型のファイナンスの他、顧客のヘッジやリスク管理ニーズに対応したソリューションビジネス等に注力しました。
主要なパフォーマンス指標の進捗
《経営指標》
自己資本利益率(ROE)
当社は、「社会課題の解決を通じた持続的成長の実現」を経営ビジョンとして掲げ、2025年3月期に向け自己資本利益率(ROE)を最も重視する指標の1つとして設定しています。国内でコーポレートガバナンス・コードが導入された後、日本企業においては資本コストを意識した経営の重要性が高まっております。加えて、金融業界においては、世界的な金融規制の枠組みのもとで、さらなる資本の有効活用が求められています。そのため、当社では、経営資源の最適配分という観点がより一層重要になるということに鑑み、2020年5月に開催された取締役会での決定を踏まえ「経営の基本方針」を改定するとともに、2021年3月期より、重要な経営指標として自己資本利益率(ROE)を用い、ビジネスの持続的な変革を図ることとしました。
ROEは当社株主に帰属する当期純利益を前期末当社株主資本合計および当期末当社株主資本合計の平均で除した値と定義しています。ROEの開示は、企業価値の向上や、投資家の皆様が当社の経営状況や資本の有効活用の状況を把握するためにも有益だと考えています。
ROEの目標水準としては、当社に求められる資本コストを意識し、2025年3月期において8~10%の水準を掲げております。一方で、ROEは必ずしも財務の健全性を反映するものではないと考えられることから、ROE向上を企図した過度な資本効率の追求を行うことのないよう、財務健全性に十分に配慮した上での企業価値の創造を重視し、ROEの向上に努めております。なお、2023年3月期のROEは、2022年3月期の5.1%から減少し、3.1%となりました。
普通株式等Tier1比率
野村グループが遵守しなくてはならないグローバル金融規制は複数ありますが、なかでもバーゼル委員会および金融庁が定める自己資本規制は、当社のビジネスの在り方に、直接影響を及ぼすものです。そのため当社は、連結普通株式等Tier1比率を11%以上に維持することを掲げ、厳しいマーケットストレス等がかかった際のバッファーを含む財務健全性についても考慮しております。なお、2023年3月期の連結普通株式等Tier1比率は、2022年3月期の17.22%から減少し、16.32%となりました。当社の普通株式等Tier1比率の詳細と算定方法については、「第2[事業の状況] 4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析] (5)流動性資金調達と資本の管理」の「連結自己資本規制」の項目をご参照ください。
《事業セグメント別の指標》
営業部門
営業部門の事業活動の成果を定量的に示す指標として、ストック資産、ストック資産純増、フロービジネス顧客数、職域サービス提供数の4項目を設定し、ビジネスの持続的な推進と発展を目指しています。これらの指標の開示は、営業部門のお客様との接点における進捗とともに持続可能な成長性を投資家の皆様が把握するに際して有益だと考えています。
(単位:兆円)
|
2021年3月期 |
|
2022年3月期 |
|
増減率 |
|
2023年3月期 |
|
増減率 |
|||||
ストック資産 ……………………… |
|
18.2 |
|
|
19.6 |
|
7.7 |
% |
|
|
18.7 |
|
△4.6 |
% |
(単位:十億円)
|
2021年3月期 |
|
2022年3月期 |
|
増減率 |
|
2023年3月期 |
|
増減率 |
|||||
ストック資産純増 ………………… |
|
△191.3 |
|
|
477.2 |
|
- |
% |
|
|
333.7 |
|
△30.1 |
% |
(単位:千件)
|
2021年3月期 |
|
2022年3月期 |
|
増減率 |
|
2023年3月期 |
|
増減率 |
|||||
フロービジネス顧客数 …………… |
|
1,534 |
|
|
1,505 |
|
△1.9 |
% |
|
|
1,446 |
|
△3.9 |
% |
職域サービス提供数 ……………… |
|
3,242 |
|
|
3,357 |
|
3.5 |
% |
|
|
3,489 |
|
3.9 |
% |
ストック資産は、投資信託や投資一任など、お預り資産に対し運用管理費用等の手数料を頂戴する資産の総額に関連ローンを加算して算出しています。当該ローン金額は2023年3月期の連結財務諸表の貸付金として報告されているうちの約7,219億円です。2023年3月末時点のストック資産残高は18.7兆円であり、市場要因により2022年3月末より減少しています。
ストック資産純増は、ストック資産の買付・流入金額から売却・流出金額を差引した金額であり、時価変動を除いたストック資産の拡大を測るための指標です。2023年3月期においてストック資産純増の年度累計は3,337億円であり、投資信託、投資一任などを中心にストック資産の純増を実現しています。
フロービジネス顧客数は、フロービジネス(フロー収入が発生するビジネス)を提供している顧客数の合計であり、フロー収入の拡大を実現するために重要な顧客基盤の拡大を測るための指標です。2023年3月末時点のフロービジネス顧客数は144.6万件と2022年3月期を下回っており、顧客基盤の拡大が課題となっています。
職域サービス提供数は、持株会会員数、持株会由来口座数(現会員除く)、企業型DC加入者など、職域に関連するサービスの提供数を合算した数字であり、職域ビジネスを通じた顧客基盤の拡大を測るための指標です。2023年3月末時点の職域サービス提供数は348.9万件です。持株会会員数の増加を中心に、目標を上回る水準で拡大を実現しており、持続的な成長に繋がる顧客基盤の拡大を実現しています。
インベストメント・マネジメント部門
インベストメント・マネジメント部門の事業活動の成果を定量的に示す指標として、運用資産残高を設定しております。運用資産残高は、インベストメント・マネジメント部門における運用ビジネスの収益源であり、運用ビジネスの進捗状況を把握する上で有効であると考えております。また、運用プロダクトがどの程度投資家の皆様に受け入れられたか把握する上で、重要な指標になります。2022年3月期から資金純流入についてもインベストメント・マネジメント部門の成果を定量的に示す指標としております。資金純流入は、運用資産残高の増減から市場要因等を除いた運用ビジネスの進捗動向を把握する上で有効であると考えております。運用資産の拡大、それによる部門収益拡大目標の達成における施策の効果を確認する上で、重要な指標になります。
(単位:兆円)
|
2021年3月期 |
|
2022年3月期 |
|
増減率 |
|
2023年3月期 |
|
増減率 |
|||||
運用資産残高 ……………………… |
|
64.7 |
|
|
67.9 |
|
4.9 |
% |
|
|
67.3 |
|
△0.9 |
% |
(単位:十億円)
|
2022年3月期 |
|
2023年3月期 |
|
増減率 |
||
資金純流入 ………………………… |
|
2,066 |
|
△760 |
|
- |
% |
運用資産残高は、野村アセットマネジメント、ノムラ・コーポレート・リサーチ・アンド・アセット・マネジメント、ウエルス・スクエアの運用資産の単純合計(グロス)から重複資産を控除したものに加えて、野村スパークス・インベストメント、野村メザニン・パートナーズ、野村キャピタル・パートナーズおよび野村リサーチ・アンド・アドバイザリーに対する第三者による投資額を含むものとなります。資金純流入は、資金流入額から資金流出額を差し引いた額となります。なお当該資金流出額は、分配金による流出額を含まない額となります。
当期は、投資信託ビジネスでは、ETFから資金が流出したものの、日本株ファンドや安定的な資産形成に資するバランスファンド、確定拠出年金向けファンド等への資金流入により、ETF以外の公募投資信託の残高が増加しました。投資顧問・海外ビジネス他では、国内年金からまとまった資金流出があったほか、世界的な金融引き締めを受け、国内外の投資家によるリスク回避的な動きからの資金流出がありました。これらの資金増減や市場要因等により、全体の運用資産残高は微減となりました。
ホールセール部門
ホールセール部門では経費率と収益/調整リスクアセットを主要なパフォーマンス指標として採用しています。これらKPIの開示は投資家に対してコストおよびリソース運用の効率性を示すうえで有効であり、マネジメントはビジネスにおけるコスト削減と収益力の評価に活用しています。
|
2021年3月期 |
|
2022年3月期 |
|
増減 |
|
2023年3月期 |
|
増減 |
|||||
経費率 ……………………………… |
|
91 |
% |
|
89 |
% |
△2 |
% |
|
|
96 |
% |
7 |
% |
収益/調整リスクアセット ……… |
|
6.4 |
% |
|
7.0 |
% |
0.6 |
% |
|
|
6.5 |
% |
△0.5 |
% |
経費率は、対象期間の金融費用以外の費用を同期間の収益合計(金融費用控除後、年換算)で除して算出しており、部門運営の効率性を確認するために使用しています。2023年3月期は、フィクスト・インカムの増収やエクイティの米国顧客取引に起因する損失が剥落したことで収益が増加した一方、マーケット環境の悪化によるインベストメント・バンキングの収益減収や円安の進行、インフレによる費用の増加により前期に比べて比率は増加しました。2022年3月期は、米国顧客取引に関する影響の減少により前期に比べて比率は減少しましたが、当社の採用に関する戦略および市場要因により費用が増加しています。
収益/調整リスクアセットは、対象期間の収益合計(金融費用控除後、年換算)を部門が使用する同期間の調整リスクアセット(各会計期間の日次平均)で除して算出しており、使用リソースに対する収益率をそれぞれ確認するために使用しています。調整リスクアセットは、(1)バーゼルⅢ規制のリスクアセットと、(2)バーゼルⅢ規制の資本調整項目を当社が内部で設定する最低資本比率で除したリスクアセット相当額の合計です。各部門の活動に起因する控除額は内部の最低資本比率(12.5%)で除したうえで各部門のリソース使用額にチャージしたものを、調整リスクアセットとしています。当社の収益/調整リスクアセットは、計算手法等の違いにより他社の提示している同様の指標とは定義が異なる可能性があります。当社の信用リスク・アセットおよびオペレーショナル・リスク相当額は金融庁の承認を経て基礎的内部格付手法および標準的手法によりそれぞれ算出しています。市場リスク相当額については、内部モデル方式により算出しています。ホールセール部門のリスクアセット(RWA)の調整RWAへの換算は、社内の最低自己資本比率目標を反映して調整しています。また、収益/調整リスクアセットは、RWAに適用される調整が当社の事業部門に帰属するRWAの適切な金額を(規制上の資本として計算されるRWAとは対照的に)把握することを目的としたものであり、当社内部でのリスク許容度を反映した推定値であるという点で、その有用性が制限される可能性があり、当該調整は実際のリソースの用途については正確に反映していない可能性もあります。2023年3月期の収益/調整リスクアセットの減少は、全体の収益は増加したものの、円安による調整リスクアセットが増加したことが主な要因です。2022年3月期の収益/調整リスクアセットの増加は、主に前述の米国顧客取引に関する損失の影響が減少したことおよび、投資銀行業務手数料が増加したことによるものです。
経営成績
損益概況
野村の主要な連結損益計算書情報は以下のとおりであります。
|
2021年3月期 (百万円) |
2022年3月期 (百万円) |
2023年3月期 (百万円) |
||
金融収益以外の収益: |
|
|
増減率 |
|
増減率 |
委託・投信募集手数料 |
376,897 |
332,344 |
△11.8% |
279,857 |
△15.8% |
投資銀行業務手数料 |
108,681 |
149,603 |
37.7% |
113,208 |
△24.3% |
アセットマネジメント業務手数料 |
230,047 |
269,985 |
17.4% |
271,684 |
0.6% |
トレーディング損益 |
310,040 |
368,799 |
19.0% |
563,269 |
52.7% |
プライベートエクイティ・デット 投資関連損益 |
12,734 |
30,768 |
141.6% |
14,504 |
△52.9% |
投資持分証券関連損益 |
14,053 |
5,446 |
△61.2% |
△1,426 |
- |
その他 |
208,317 |
152,832 |
△26.6% |
130,940 |
△14.3% |
金融収益以外の収益合計 |
1,260,769 |
1,309,777 |
3.9% |
1,372,036 |
4.8% |
純金融収益 |
141,103 |
54,113 |
△61.7% |
△36,459 |
- |
収益合計 (金融費用控除後) |
1,401,872 |
1,363,890 |
△2.7% |
1,335,577 |
△2.1% |
金融費用以外の費用 |
1,171,201 |
1,137,267 |
△2.9% |
1,186,103 |
4.3% |
税引前当期純利益 |
230,671 |
226,623 |
△1.8% |
149,474 |
△34.0% |
法人所得税等 |
70,274 |
80,090 |
14.0% |
57,798 |
△27.8% |
当期純利益 |
160,397 |
146,533 |
△8.6% |
91,676 |
△37.4% |
差引:非支配持分に帰属する当期純利益(△損失) |
7,281 |
3,537 |
△51.4% |
△1,110 |
- |
当社株主に帰属する当期純利益 |
153,116 |
142,996 |
△6.6% |
92,786 |
△35.1% |
自己資本利益率(ROE) |
5.7% |
5.1% |
|
3.1% |
|
2023年3月期の収益合計(金融費用控除後)は減少しました。この減少は、主に営業部門において委託・投信募集手数料が減少したことおよび純金融収益が減少したことによります。委託・投信募集手数料は、株式買付や投資信託募集買付にかかる手数料が減少しました。投資銀行業務手数料は引受・売出手数料の減少が収益減少に寄与しました。アセットマネジメント業務手数料は若干増加したものの全体として横ばいに推移しました。トレーディング損益は、主に米国顧客との取引に起因する損失の剥落により増収となりました。またトレーディング損益には、デリバティブ負債に対して認識する自社クレジットの変化による損失額34億円が含まれております。この損失は主にクレジット・スプレッドが縮小したことによるものであります。投資持分証券関連損益は、株価の上昇が限定的で減収となりました。また投資持分証券関連損益には、野村が営業目的で保有する株式等の評価損益と売買損益が含まれます。これらの投資は、取引促進の目的で長期保有する関連会社以外の投資持分証券です。その他は、関連会社売却益が減少しております。
2022年3月期の収益合計(金融費用控除後)は減少しました。この減少は、主に営業部門において委託・投信募集手数料が減少したことによります。委託・投信募集手数料は、株式買付や投資信託募集買付にかかる手数料が減少しました。投資銀行業務手数料はアドバイザリー・ビジネスが収益増加に貢献しました。アセットマネジメント業務手数料は営業部門におけるストック収入の増加やインベストメント・マネジメント部門における運用資産残高の増加による手数料の増加等を受けて増加しました。トレーディング損益は、主に米国顧客との取引に起因する損失の縮小により増収となりました。またトレーディング損益には、デリバティブ負債に対して認識する自社クレジットの変化による収益82億円が含まれております。この収益は主にクレジット・スプレッドが拡大したことによるものであります。投資持分証券関連損益は、株価の上昇が限定的で減収となりました。また投資持分証券関連損益には、野村が営業目的で保有する株式等の評価損益と売買損益が含まれます。これらの投資は、取引促進の目的で長期保有する関連会社以外の投資持分証券です。その他は、アメリカン・センチュリー・インベストメンツ関連損益などにより減少しております。
2021年3月期の収益合計(金融費用控除後)は、ホールセール部門において米国顧客との取引に起因する損失を計
上したものの増加しました。この増加は、主に営業部門において委託・投信募集手数料が増加したことによります。
委託・投信募集手数料は、株式買付や投資信託募集買付にかかる手数料が増加しました。投資銀行業務手数料はМ&
Aやファイナンスに付随するソリューションビジネスが収益増加に貢献しました。アセットマネジメント業務手数
料は手数料率の低下等を受けて減少しました。トレーディング損益は、主に米国顧客との取引に起因する損失により
減収となりました。またトレーディング損益には、デリバティブ負債に対して認識する自社クレジットの変化による
損失額134億円が含まれております。この損失は主に新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年3月末に一時的に
拡大したクレジット・スプレッドが縮小したことによるものであります。投資持分証券関連損益は、2021年3月期中の株価の上昇を受け増収となりました。また投資持分証券関連損益には、野村が営業目的で保有する株式等の評価損益と売買損益が含まれます。これらの投資は、取引促進の目的で長期保有する関連会社以外の投資持分証券です。その他は、日本橋一丁目中地区第一種市街地再開発事業の権利変換にともなう一時的な利益711億円を計上したことなどにより増加しております。
純金融収益は、トレーディング資産およびレポ・リバースレポ取引を含む総資産・負債の水準と構成、ならびに、金利の期間構造とボラティリティに左右されます。純金融収益は、トレーディング業務と不可分な1つの要素であり、野村は、特にグローバル・マーケッツについて、純金融収益と金融収益以外の収益との合計額で、ビジネス全体の収益性を評価しております。2023年3月期においては、アメリカン・センチュリー・インベストメンツ社からの配当を含む金融収益は前期比292%増加、また、金融費用も前期比400%増加し、その結果、2023年3月期の純金融収益は2022年3月期から減少しました。2022年3月期においては、アメリカン・センチュリー・インベストメンツ社からの配当を含む金融収益は前期比20%減少、また、金融費用も前期比7%増加し、その結果、2022年3月期の純金融収益は2021年3月期から減少しました。
2023年3月期の金融費用以外の費用は、米国顧客との取引に起因する貸倒引当金の追加計上による損失の剥落があったものの人件費の増加により前年度比で増加しました。
2022年3月期の金融費用以外の費用は、米国顧客との取引に起因する貸倒引当金の追加計上による損失があったものの前年度比で減少、および前期に計上した当社の持分法適用関連会社である野村不動産ホールディングス株式会社に対する投資にかかる減損損失477億円の剥落などにより減少しました。
野村は、日本においてさまざまな税金を課されており、2022年4月1日より日本にて連結納税制度からグループ通算制度へ移行しております。このグループ通算制度は、国税だけを対象としています。国内の法定実効税率は、2021年3月期、2022年3月期、2023年3月期において、31%となっております。海外子会社は現地で課税を受けており、通常国内より低い税率が適用されています。そのため野村の各期の実効税率は、各地域での損益状況や、各地域で適用される特有の税務上の取扱いにも影響を受けています。
2023年3月期の実効税率は38.7%となりました。この実効税率38.7%と法定実効税率31%の差異の重要な要因は、益金に算入されない収益項目の影響により4.7%実効税率が引き下げられた一方で、評価性引当金の増減により11.3%実効税率が引き上げられたことがあげられます。
2022年3月期の実効税率は35.3%となりました。この実効税率35.3%と法定実効税率31%の差異の重要な要因は、海外の税制改正の影響により14.4%実効税率が引き下げられた一方で、評価性引当金の増減により18.0%実効税率が引き上げられたことがあげられます。
2021年3月期の実効税率は30.5%となりました。この実効税率30.5%と法定実効税率31%の差異の重要な要因は、
子会社・関連会社株式等の評価減の税務上の認容見込みにより8.7%実効税率が引き下げられた一方で、評価性引当
金の増減により8.7%実効税率が引き上げられたことがあげられます。
事業セグメント別経営成績
2021年4月1日に、アセット・マネジメント部門およびマーチャント・バンキング部門を廃止し、インベストメント・マネジメント部門を新設いたしました。これにより、野村の業務運営および経営成績の報告は、営業部門、インベストメント・マネジメント部門、ホールセール部門の区分で行われており、この部門体制に基づき、事業別セグメント情報を開示しております。経済的ヘッジ取引に関連する損益、一部の営業目的で保有する投資持分証券の実現損益、関連会社利益(損失)の持分額、本社勘定、その他財務調整項目等は、事業セグメント別情報においては、“その他”として表示されています。
営業目的で保有する投資持分証券評価損益の一部は、セグメント情報には含まれておりません。なお、事業セグメント別経営成績については、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 20 セグメントおよび地域別情報」にも記載がございます。また、そこでは、連結財務諸表数値と事業セグメント別数値の調整計算についても説明がありますのでご参照ください。
営業部門
営業部門の経営成績
|
|
|
|
|
|
(単位:百万円) |
|
|
2021年3月期 |
|
2022年3月期 |
増減率(%) |
|
2023年3月期 |
増減率(%) |
金融収益以外の収益 |
366,271 |
|
324,642 |
△11.4 |
|
297,496 |
△8.4 |
純金融収益 |
2,538 |
|
3,343 |
31.7 |
|
2,695 |
△19.4 |
収益合計(金融費用控除後) |
368,809 |
|
327,985 |
△11.1 |
|
300,191 |
△8.5 |
金融費用以外の費用 |
276,480 |
|
268,745 |
△2.8 |
|
266,695 |
△0.8 |
税引前当期純利益 |
92,329 |
|
59,240 |
△35.8 |
|
33,496 |
△43.5 |
2023年3月期の営業部門の収益合計(金融費用控除後)は、主に委託・投信手数料の減少により、全体として減少しました。
2022年3月期の営業部門の収益合計(金融費用控除後)は、主に委託・投信手数料の減少により、全体として減少しました。
2023年3月期の金融費用以外の費用は、収益減少にともなう賞与の減少により、減少しました。
2022年3月期の金融費用以外の費用は、収益減少にともなう賞与の減少により、減少しました。
下の表は、2022年3月期、2023年3月期の商品別の金融収益以外の収益構成の内訳を示しています。
|
|
|
|
(単位:百万円) |
|
2022年3月期 |
|
2023年3月期 |
増減率(%) |
委託・投信募集手数料 |
138,525 |
|
112,455 |
△18.8 |
株式委託手数料 |
67,419 |
|
50,901 |
△24.5 |
投資信託募集手数料 |
43,537 |
|
30,183 |
△30.7 |
その他手数料 |
27,569 |
|
31,371 |
13.8 |
トレーディング損益 |
43,981 |
|
44,171 |
0.4 |
投資銀行業務手数料 |
19,003 |
|
16,184 |
△14.8 |
投資信託残高報酬 |
109,300 |
|
108,085 |
△1.1 |
その他 |
13,833 |
|
16,601 |
20.0 |
金融収益以外の収益 |
324,642 |
|
297,496 |
△8.4 |
2023年3月期の委託・投信募集手数料は、主に株式委託手数料、投資信託募集手数料の減少により減少しました。2023年3月期のトレーディング損益は、若干増加しましたが前期から横ばいに推移しました。
営業部門顧客資産残高
下の表は、2022年3月末、2023年3月末の営業部門顧客資産残高と、その内訳を示しています。営業部門顧客資産には営業部門の顧客の預かり資産および変額年金保険商品に関連する資産が含まれています。
|
(単位:兆円) |
||||||||
|
2022年3月31日 |
||||||||
期首顧客資産残高 |
|
資金流入額 |
|
資金流出額 |
|
時価評価損益 |
|
期末顧客資産残高 |
|
株式 |
82.3 |
|
19.5 |
|
△19.8 |
|
△4.5 |
|
77.5 |
債券 |
18.1 |
|
15.5 |
|
△13.3 |
|
△2.6 |
|
17.7 |
株式型投資信託 |
10.2 |
|
2.4 |
|
△2.1 |
|
0.3 |
|
10.8 |
債券型投資信託 |
8.0 |
|
0.3 |
|
△0.6 |
|
△0.2 |
|
7.5 |
外国投資信託 |
1.1 |
|
0.2 |
|
0.0 |
|
0.0 |
|
1.3 |
その他 |
6.9 |
|
1.1 |
|
△0.5 |
|
△0.2 |
|
7.3 |
合計 |
126.6 |
|
39.0 |
|
△36.3 |
|
△7.2 |
|
122.1 |
|
(単位:兆円) |
||||||||
|
2023年3月31日 |
||||||||
期首顧客資産残高 |
|
資金流入額 |
|
資金流出額 |
|
時価評価損益 |
|
期末顧客資産残高 |
|
株式 |
77.5 |
|
21.4 |
|
△18.6 |
|
△2.3 |
|
78.0 |
債券 |
17.7 |
|
15.5 |
|
△22.9 |
|
8.2 |
|
18.5 |
株式型投資信託 |
10.8 |
|
2.8 |
|
△2.6 |
|
△0.8 |
|
10.2 |
債券型投資信託 |
7.5 |
|
0.1 |
|
△0.7 |
|
△0.1 |
|
6.8 |
外国投資信託 |
1.3 |
|
0.1 |
|
△0.1 |
|
△0.1 |
|
1.2 |
その他 |
7.3 |
|
1.0 |
|
△0.5 |
|
△0.3 |
|
7.5 |
合計 |
122.1 |
|
40.9 |
|
△45.4 |
|
4.6 |
|
122.2 |
2023年3月末の営業部門顧客資産残高は、2022年3月末に比べ増加しました。2023年3月末の株式関連資産残高は、資金が流入し0.5兆円増加し、78.0兆円となりました。また、2023年3月末の投資信託残高は、2022年3月末の19.6兆円から1.4兆円減少し、18.2兆円となりました。
2022年3月末の営業部門顧客資産残高は、2021年3月末に比べ減少しました。2022年3月末の株式関連資産残高は、株価の下落により時価評価益が減少し、77.5兆円となりました。また、2022年3月末の投資信託残高は、2021年3月末の19.3兆円から0.3兆円増加し、19.6兆円となりました。
インベストメント・マネジメント部門
インベストメント・マネジメント部門の経営成績
|
|
|
|
|
|
(単位:百万円) |
|
|
2021年3月期 |
|
2022年3月期 |
増減率(%) |
|
2023年3月期 |
増減率(%) |
金融収益以外の収益 |
153,523 |
|
129,848 |
△15.4 |
|
120,096 |
△7.5 |
純金融収益 |
9,627 |
|
18,145 |
88.5 |
|
8,463 |
△53.4 |
収益合計(金融費用控除後) |
163,150 |
|
147,993 |
△9.3 |
|
128,559 |
△13.1 |
金融費用以外の費用 |
72,142 |
|
76,478 |
6.0 |
|
85,064 |
11.2 |
税引前当期純利益 |
91,008 |
|
71,515 |
△21.4 |
|
43,495 |
△39.2 |
2023年3月期の収益合計(金融費用控除後)は、アメリカン・センチュリー・インベストメンツ関連損益の減少により減少しました。
2022年3月期の収益合計(金融費用控除後)は、アメリカン・センチュリー・インベストメンツ関連損益の減少により減少しました。
2023年3月期の金融費用以外の費用は、主に為替の変動およびインフレにともなう費用の増加により増加しました。
2022年3月期の金融費用以外の費用は、主に事業収益の増加にともなう人件費の増加により増加しました。
インベストメント・マネジメント部門の収益合計(金融費用控除後)の内訳は以下のとおりです。
|
|
|
|
|
|
(単位:百万円) |
|
|
2021年3月期 |
|
2022年3月期 |
増減率(%) |
|
2023年3月期 |
増減率(%) |
事業収益(1) |
111,946 |
|
119,920 |
7.1 |
|
120,664 |
0.6 |
投資損益(2) |
51,204 |
|
28,073 |
△45.2 |
|
7,895 |
△71.9 |
収益合計(金融費用控除後) |
163,150 |
|
147,993 |
△9.3 |
|
128,559 |
△13.1 |
(注)当期の開示様式に合わせて過年度の数値を組み替えて表示しております。
(1) 投資損益を除く部門収益であり、主にアセット・マネジメント事業からの収益(アメリカン・センチュリー・インベストメンツ関連損益を除く)、野村バブコックアンドブラウン株式会社の航空機リース関連事業収益およびプライベート・エクイティ等の投資事業における管理報酬により構成
(2) 部門収益のうち投資に起因するものであり、主にアメリカン・センチュリー・インベストメンツ社への投資、プライベート・エクイティ等の投資事業における投資にかかる損益(公正価値の変動、資金調達コストおよび配当金を含む)により構成
下の表は、2022年3月末、2023年3月末のインベストメント・マネジメント部門の運用会社別の運用資産残高を示しています。
|
|
|
|
|
|
|
(単位:十億円) |
||
|
2022年3月31日 |
||||||||
|
期首運用 資産残高 |
|
資金流入額 |
|
資金流出額 |
|
時価評価 損益 |
|
期末運用 資産残高 |
野村アセットマネジメント |
66,158 |
|
26,883 |
|
△25,549 |
|
2,100 |
|
69,592 |
ノムラ・コーポレート・リサーチ・アンド・アセット・マネジメント他 |
3,300 |
|
944 |
|
△690 |
|
313 |
|
3,867 |
単純合計 |
69,458 |
|
27,827 |
|
△26,239 |
|
2,413 |
|
73,459 |
グループ運用会社間の重複資産 |
△4,792 |
|
△1,462 |
|
1,163 |
|
△455 |
|
△5,546 |
合計 |
64,666 |
|
26,365 |
|
△25,076 |
|
1,958 |
|
67,913 |
|
|
|
|
|
|
|
(単位:十億円) |
||
|
2023年3月31日 |
||||||||
|
期首運用 資産残高 |
|
資金流入額 |
|
資金流出額 |
|
時価評価 損益 |
|
期末運用 資産残高 |
野村アセットマネジメント |
69,592 |
|
23,168 |
|
△24,762 |
|
1,094 |
|
69,092 |
ノムラ・コーポレート・リサーチ・アンド・アセット・マネジメント他 |
3,867 |
|
1,040 |
|
△1,074 |
|
35 |
|
3,868 |
単純合計 |
73,459 |
|
24,208 |
|
△25,836 |
|
1,129 |
|
72,960 |
グループ運用会社間の重複資産 |
△5,546 |
|
△1,409 |
|
1,382 |
|
△115 |
|
△5,688 |
合計 |
67,913 |
|
22,799 |
|
△24,454 |
|
1,014 |
|
67,272 |
2023年3月期の運用資産残高は、対前期比横ばいでした。
下の表は、2021年、2022年、2023年それぞれの3月末時点の、野村アセットマネジメントの日本の公募投資信託市場におけるシェア(純資産残高ベース)を示しています。
|
2021年3月31日 |
|
2022年3月31日 |
|
2023年3月31日 |
公募投資信託合計 |
28% |
|
27% |
|
27% |
株式型投資信託 |
26% |
|
25% |
|
25% |
公社債型投資信託 |
44% |
|
44% |
|
44% |
(出所)一般社団法人投資信託協会の統計データを基に作成
2023年3月末における野村アセットマネジメントの運用資産残高に占める国内投資信託残高は、48.0兆円と、対前期比横ばいでした。
2022年3月末における野村アセットマネジメントの運用資産残高に占める国内投資信託残高は、47.9兆円と、対前期比1.3兆円、3%増加しました。その内訳は、1.0兆円の資金流入と0.3兆円の運用増によるものです。主に「TOPIX連動型上場投信」といった上場投資信託で残高が増加しました。
ホールセール部門
ホールセール部門の経営成績
ホールセール部門の経営成績はグローバル・マーケッツとインベストメント・バンキングにより構成されています。また、グローバル・マーケッツはフィクスト・インカムとエクイティにより構成されています。
|
|
|
|
|
|
(単位:百万円) |
|
|
2021年3月期 |
|
2022年3月期 |
増減率(%) |
|
2023年3月期 |
増減率(%) |
金融収益以外の収益 |
524,019 |
|
617,227 |
17.8 |
|
809,681 |
31.2 |
純金融収益 |
167,337 |
|
85,828 |
△48.7 |
|
△37,301 |
- |
収益合計(金融費用控除後) |
691,356 |
|
703,055 |
1.7 |
|
772,380 |
9.9 |
金融費用以外の費用 |
627,051 |
|
628,563 |
0.2 |
|
743,011 |
18.2 |
税引前当期純利益 |
64,305 |
|
74,492 |
15.8 |
|
29,369 |
△60.6 |
2023年3月期のホールセール部門の収益合計(金融費用控除後)は増加しました。グローバル・マーケッツにおけるフィクスト・インカムは、マクロ・プロダクトを中心に好調で増収となりました。グローバル・マーケッツにおけるエクイティは、米国顧客との取引に起因する損失が剥落し増収となりました。またインベストメント・バンキングは、引受・売出手数料の減少により減収となりました。
2022年3月期のホールセール部門の収益合計(金融費用控除後)は増加しました。グローバル・マーケッツにおけるフィクスト・インカムは、マクロ・プロダクトを中心に好調だった前期比で減収となりました。グローバル・マーケッツにおけるエクイティは、米国顧客との取引に起因する損失が縮小し増収となりました。またインベストメント・バンキングは、アドバイザリー・ビジネスにより増収となりました。
2023年3月期の金融費用以外の費用は、円安による海外拠点の円建て費用の増加および人件費の増加により、前期から増加しました。
2022年3月期の金融費用以外の費用は、前期の米国顧客との取引に起因する信用損失の剥落を、円安による海外拠点の円建て費用の増加が相殺し、前期からわずかに増加しました。
次の表は、ホールセール部門における収益合計(金融費用控除後)における、グローバル・マーケッツおよびインベストメント・バンキングの内訳表であります。
|
|
|
|
|
|
(単位:百万円) |
|
|
2021年3月期 |
|
2022年3月期 |
増減率(%) |
|
2023年3月期 |
増減率(%) |
ホールセール部門 収益合計 (金融費用控除後): |
|
|
|
|
|
|
|
グローバル・マーケッツ |
575,533 |
|
556,417 |
△3.3 |
|
656,298 |
18.0 |
インベストメント・バンキング |
115,823 |
|
146,638 |
26.6 |
|
116,082 |
△20.8 |
収益合計(金融費用控除後) |
691,356 |
|
703,055 |
1.7 |
|
772,380 |
9.9 |
グローバル・マーケッツ
野村は長年にわたって主に国内外の機関投資家を対象として、債券・株式や為替およびそれらのデリバティブ商品のセールスとトレーディングをグローバルに展開してきました。近年では、より多様化・複雑化するお客様からのご要望にお応えするため、トレーディング能力と商品組成能力の強化に取り組み、国内外の機関投資家のみならず、営業部門およびインベストメント・マネジメント部門にさまざまな高付加価値商品を提供すると同時に、インベストメント・バンキングとも協働し、付加価値の高いソリューションを提供しています。また、国内外の機関投資家に加えて、国内の富裕層・諸法人や地域金融機関、国内外の政府機関や金融機関・事業法人などと強固な関係を構築し、ビジネスを拡大しております。これにより、お客様がどのような商品を求めているかを把握し、そのニーズに合わせた商品を国内外のプロダクトラインにおいて迅速に開発・提供することが可能となっております。
2023年3月期のグローバル・マーケッツの収益合計(金融費用控除後)のうち、フィクスト・インカムの2023年3月期の収益合計(金融費用控除後)は、2022年3月期の3,269億円から4,024億円となりました。マクロ・プロダクトを中心に好調で前期比で増収となりました。エクイティの2023年3月期の収益合計(金融費用控除後)は2022年3月期の2,295億円から2,539億円となりました。米国顧客との取引に起因する損失の剥落を主因として増収となりました。
2022年3月期のグローバル・マーケッツの収益合計(金融費用控除後)のうち、フィクスト・インカムの2022年3月期の収益合計(金融費用控除後)は、2021年3月期の4,419億円から3,269億円となりました。マクロ・プロダクトを中心に好調だった前期比で減収となりました。エクイティの2022年3月期の収益合計(金融費用控除後)は2021年3月期の1,336億円から2,295億円となりました。米国顧客との取引に起因する損失の縮小を主因として増収となりました。
インベストメント・バンキング
野村は、引受け、アドバイザリー等、多様なインベストメント・バンキング・サービスを提供しています。アジア、欧州、米国といった世界の主要な金融市場で、債券、株式、その他の引受業務を行っており、日本国内、クロスボーダーおよび海外のM&A/財務コンサルティング業務を継続的に強化してきました。また、グローバルでのオーダーメイド型サービス提供による、顧客との強固で長期的な関係を構築することを追求しております。
2023年3月期のインベストメント・バンキングの収益合計(金融費用控除後)は、引受・売出手数料により前期比で減収となりました。
2022年3月期のインベストメント・バンキングの収益合計(金融費用控除後)は、アドバイザリー・ビジネスにより前期比で増収となりました。
その他の経営成績
その他の経営成績には、経済的ヘッジ取引に関連する損益、一部の営業目的で保有する投資持分証券の実現損益、関連会社損益の持分額、本社勘定、その他の財務調整が含まれております。詳細につきましては、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 20 セグメントおよび地域別情報」をご参照ください。
その他の経営成績における税引前当期純利益(△損失)は、2021年3月期、2022年3月期、それぞれ△285億円、158億円、2023年3月期は主に株式会社野村総合研究所普通株式の売却関連利益約280億円を認識し、前年度に計上した、米国における世界金融危機(2007~2008年)以前の取引に関連した約620億円の法的費用(将来的な損失発生の軽減を目的とした一定の取引を含みます。)の剥落もあり、734億円となりました。
2023年3月期に生じたデリバティブ負債に対する自社クレジットの変化に起因する損失54億円、カウンターパーティ・クレジット・スプレッドの変化に起因する利益47億円がその他の業績に含まれております。
2022年3月期に生じたデリバティブ負債に対する自社クレジットの変化に起因する利益67億円、カウンターパーティ・クレジット・スプレッドの変化に起因する損失12億円がその他の業績に含まれております。
2021年3月期に生じたデリバティブ負債に対する自社クレジットの変化に起因する損失121億円、カウンターパーティ・クレジット・スプレッドの変化に起因する利益120億円がその他の業績に含まれております。
地域別経営成績
地域別の収益合計(金融費用控除後)、税引前当期純利益(損失)については「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 20 セグメントおよび地域別情報」をご参照ください。
キャッシュ・フロー
「(5)流動性資金調達と資本の管理」をご参照ください。
(2)トレーディング業務の概要
トレーディング目的資産負債
トレーディング目的資産および負債の内訳については「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 2 公正価値測定 および 3 デリバティブ商品およびヘッジ活動」をご参照ください。
トレーディングのリスク管理
野村はトレーディング業務における市場リスクの測定方法として、バリュー・アット・リスク(VaR)を採用しております。
(1)VaRの前提
・信頼水準:95%
・保有期間:1日
・商品の価格変動等を考慮
野村は、開示に使用する保有期間1日のVaRの信頼水準は95%を使用しております。2023年3月31日期の保有期間1日のVaRデータは以下のとおりです。
(2)VaRの実績
|
2022年3月31日 (億円) |
2023年3月31日 (億円) |
株式関連 |
14 |
33 |
金利関連 |
23 |
47 |
為替関連 |
9 |
14 |
小計 |
46 |
94 |
分散効果 |
△19 |
△32 |
バリュー・アット・リスク(VaR) |
27 |
62 |
|
2023年3月期 |
||
最大値(億円) |
最小値(億円) |
平均値(億円) |
|
バリュー・アット・リスク(VaR) |
68 |
27 |
48 |
(3)重要な会計方針および見積もり
重要な会計方針は当社の連結財務諸表の作成に最も重要な影響を与える会計方針であり、適用にあたって経営者による会計上の見積もりに関する最も困難かつ主観的で複雑な判断を必要とするものを指します。見積もりはその性質上、経営者の判断を必要とする仮定やその時点で利用可能な情報の範囲に依拠しています。将来の実績はこれらの見積もりと乖離する可能性があり、結果として連結財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性があります。
下表は、重要な会計方針やこれらの会計方針の適用に含まれる重要な会計上の見積もり、見積もりの要素、経営者による仮定と判断、当連結会計年度における見積もりおよび仮定の変更の影響について当期特に重要なものを要約したものです。適用された重要な会計方針および重要な会計上の見積もりの詳細については「第5[経理の状況]1[連結財務諸表等](1)[連結財務諸表][連結財務諸表注記]1 会計処理の原則および会計方針の要旨」および下表に含まれる各連結財務諸表注記をご参照ください。
重要な会計方針 |
重要な会計上の 見積もり |
経営者による重要な主観的仮定または判断 |
当連結会計年度における見積もりおよび仮定の変更の影響 |
金融商品の公正価値評価
連結財務諸表 注記 2
公正価値測定 |
金融商品の公正価値の見積もり |
野村が保有する金融商品は主に公正価値で評価されております。これらの金融商品の公正価値は観察可能な市場価格のみならず、評価手法の選択や仮定といった判断をともなう要素の影響を受けます。
この判断は、特定の金融商品にかかる未実現損益の金額および計上時期に影響を与えます。
適切な評価手法の選択 ·活発な市場において観察可能な市場価格によって公正価値評価される金融商品については、野村は一般的に、当該金融商品の公正価値を決定するため、レベル1のインプットとして当該価格を使用します。
·このような観察可能な価格が入手できない金融商品については、レベル2もしくは3のインプットにより公正価値が測定されます。異なる評価手法および仮定が適用された場合、公正価値の測定結果は異なりうるため、適切な評価手法の選択と評価手法に適用される仮定の検証に重要な判断が含まれます。評価手法を選択する際には、これらの金融商品が取引される特定の状況や市場、信頼性のあるインプットの利用可能性、関連する観察可能なインプットの使用の最大化、観察不能なインプットの使用の最小化などのさまざまな要因が考慮されます。
レベル3インプットの重要性 ·市場で観察不能なインプットが用いられる、公正価値レベル3の金融商品の公正価値評価は、より多くの判断を必要とします。
·これらの金融商品の公正価値は、流動性、経済環境および特定の金融商品に影響を与えるリスクに対する認識を含む、市場参加者が価格を決定する際に使用する仮定についての経営者の判断に基づいて決定されます。
|
当社の評価手法および公正価値の階層における金融商品の分類に関する方針については、連結財務諸表注記2 「公正価値測定」を参照してください。
当連結会計年度において公正価値レベル3の金融商品(デリバティブ負債相殺後資産)の公正価値は前連結会計年度の792十億円から868十億円に増加しました。毎期経常的に公正価値評価される資産の合計に対するレベル3に分類された資産の比率は、2023年3月31日現在で5%(2022年3月31日現在で6%)となりました。
レベル3インプットに関する定性的、定量的な情報およびそれらが公正価値測定に与える影響についての詳細については連結財務諸表注記2 「公正価値測定」を参照してください。
|
重要な会計方針 |
重要な会計上の 見積もり |
経営者による重要な主観的仮定または判断 |
当連結会計年度における見積もりおよび仮定の変更の影響 |
訴訟引当金
連結財務諸表 注記 19
コミットメント、偶発事象および債務保証
|
損失の蓋然性の判定および、引当金と合理的に発生する可能性のある損失の測定 |
野村は通常の業務を行う過程で訴訟およびその他の法的手続き(以下「法的事案」)に関与することがあり、その結果、違約金や和解金等を負担し、当該損失が野村の経営成績に重要な影響を与える可能性があります。法的事案による損失の発生可能性や最終的な損失額を見積もる際には、経営者によるさまざまな判断や仮定が要求されます。
損失の蓋然性の判断 ·訴訟引当金の計上は、損失発生の蓋然性が高く、金額を合理的に見積もることができる場合に必要とされます。 ·法的事案について、損失が生じる蓋然性が高いか、損失が生じる合理的な可能性はあるがその蓋然性が高いとまではいえないか、または損失が生じる可能性がほとんどないかどうかの決定には重要な判断が要求されます。 ·このような判断には、通常、外部の弁護士の見解、裁判または類似案件に関する当社の過去の経験、規制当局による調査または訴訟手続きの進捗状況、および和解に対する当社または相手方の意向を考慮します。 ·損失発生の蓋然性が高いとまではいえないか、または可能性がほとんどない場合、引当金の計上は不要です。
蓋然性が高いまたは合理的に発生する可能性のある損失の測定 ·損失が発生する蓋然性が高いと判断された場合で、かつ当該損失の金額または範囲を合理的に見積もることができる場合に引当金を計上します。 ·損失が生じる合理的な可能性はあるものの、その蓋然性が高いとまではいえないような場合で、かつ発生し得る損失の範囲を合理的に見積もることができる場合には、既に計上している引当金を超えて合理的に発生する可能性のある最大損失額を開示しております。 ·上記の可能性や金額を決定することは難しく、とりわけ、これら法的手続き等が初期段階にある場合や、新たな法的論点が争われている場合は特に困難です。 ·損失が生じる蓋然性が高い、または損失が発生する合理的な可能性はあるものの、複雑性やその他の理由によりその金額を見積もることができない場合にはその旨を開示します。
|
引当金を計上している、または損失発生の可能性が合理的な場合を含む、野村が現在関与している法的事案の詳細については、連結財務諸表注記19「コミットメント、偶発事象および債務保証」を参照してください。
2023年6月28日現在、合理的に発生する可能性のある損失の範囲を見積もることができる法的事案において発生の蓋然性が高いと判断された場合、約510億円の追加的費用が計上されます。ただし、当該金額には損失の金額を合理的に見積もることができないものによる影響は含まれておりません。 |
一定の金融商品および取引先に対するエクスポージャー
市場環境は、野村が一定のエクスポージャーを有するさまざまな金融商品に影響を与え続けています。また、野村は通常の業務においても、特別目的事業体などの取引先に対し、一定のエクスポージャーを有しております。
レバレッジド・ファイナンス
野村は、顧客にレバレッジド・バイアウト、レバレッジド・バイインにかかる貸付金を提供しています。通常このような資金提供はコミットメントを通じて行われることが多く、野村は実行済および未実行コミットメントの双方においてエクスポージャーを有しております。次の表は、2023年3月31日現在において未実行コミットメントがあるレバレッジ・ファイナンスのエクスポージャーを実行済および未実行分に分けて、対象企業の地域別に表しております。
|
|
|
|
|
(単位:百万円) |
|
実行済残高 |
|
未実行コミットメント残高 |
|
合計 |
欧州 |
14,654 |
|
58,606 |
|
73,260 |
米州 |
24,684 |
|
187,334 |
|
212,018 |
アジア・オセアニア |
6,230 |
|
3,718 |
|
9,948 |
合計 |
45,568 |
|
249,658 |
|
295,226 |
特別目的事業体
野村が行う特別目的事業体との関与は、これらの事業体を組成すること、またマーケットの状況に応じて、これらの事業体が発行する負債証券および受益権を引受け、売出し、販売することが含まれております。また野村は通常の証券化およびエクイティデリバティブ業務の中で、これらの事業体に対する金融資産の譲渡、これらの事業体が発行したリパッケージ金融商品の引受け、売出し、販売を行っております。さらに野村は、マーケットメーク業務、投資業務、組成業務に関連し、特別目的事業体にかかる変動持分の保有、購入、販売を行っております。特別目的事業体とのそのほかの関与には、債務保証やデリバティブ契約などが含まれます。
変動持分事業体への関与に関するより詳しい説明は、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 6 証券化および変動持分事業体」をご参照ください。
新しい会計基準の公表
「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 1 会計処理の原則および会計方針の要旨:会計方針の変更および新しい会計基準の公表」をご参照ください。
(4)繰延税金資産の状況
1)繰延税金資産・負債の主な発生原因
2023年3月31日現在、連結貸借対照表上、その他の資産-その他として記載されている繰延税金資産、およびその他の負債として記載されている繰延税金負債の内訳は、以下のとおりであります。
|
(単位:百万円) |
|
2023年3月31日 |
繰延税金資産 |
|
減価償却、その他の償却、および固定資産の評価 |
38,596 |
子会社・関連会社株式投資 |
7,458 |
金融商品の評価差額 |
123,841 |
未払退職・年金費用 |
17,308 |
未払費用および引当金 |
74,043 |
繰越欠損金 |
414,084 |
リース負債 |
48,329 |
その他 |
19,645 |
繰延税金資産小計 |
743,304 |
控除:評価性引当金 |
△515,068 |
繰延税金資産合計 |
228,236 |
繰延税金負債 |
|
子会社・関連会社株式投資 |
100,335 |
金融商品の評価差額 |
118,314 |
海外子会社の未分配所得 |
2,936 |
固定資産の評価 |
22,540 |
使用権資産 |
47,775 |
その他 |
7,524 |
繰延税金負債合計 |
299,424 |
繰延税金資産(負債)の純額 |
△71,188 |
2)繰延税金資産の算入根拠
繰延税金資産は、米国会計基準に基づき、将来において実現すると予想される範囲内で認識しており、将来において実現が見込まれない場合には評価性引当金を計上しております。なお、将来の課税所得の見積期間は納税単位ごとに個別に判断し、適正な期間見積もっております。
3)過去5年間の課税所得および見積もりの前提とした税引前当期純利益、調整前課税所得の見込額
当社は、2022年4月1日より日本にて連結納税制度からグループ通算制度へ移行し、野村證券を含む主要子会社は当制度に含まれております。上記1)に記載されている繰延税金資産のうち、日本の通算グループにおける繰延税金資産(負債)の純額は△63,247百万円となっており、野村の連結財務諸表における繰延税金資産(負債)の純額の大部分を占めております。
以下の過去5年間の課税所得(繰越欠損金使用前の各年度の実績値)ではグループ通算制度への移行前の連結納税グループの合算数値を記載し、見積もりの前提とした税引前当期純利益、調整前課税所得の見込額では通算グループの合算数値を記載しております。
過去5年間の課税所得(繰越欠損金使用前の各年度の実績値)
|
|
|
|
(単位:百万円) |
|
|
2017年度 |
2018年度 |
2019年度 |
2020年度 |
2021年度 |
日本の連結納税グループ合算値 |
79,397 |
61,984 |
134,721 |
214,001 |
233,508 |
(注) 法人確定申告書上の繰越欠損金控除前の課税所得であり、その後の変動は反映しておりません。
見積もりの前提とした税引前当期純利益、調整前課税所得の見込額
日本の通算グループについては、5年を課税所得見積もり期間とし、見込み税引前当期純利益合計および見込み調整前課税所得合計はそれぞれ、569,450百万円、689,045百万円となっております。
(5)流動性資金調達と資本の管理
資金調達と流動性管理
概況
野村では、資金流動性リスクを野村グループの信用力の低下または市場環境の悪化により必要な資金の確保が困難になる、または通常より著しく高い金利での資金調達を余儀なくされることにより損失を被るリスクと定義しております。このリスクは、市場において有担保あるいは無担保調達が不可能になる、野村の信用格付が低下する、予定外の資金需要の変化に対応できない、迅速かつ最小の損失での資産の流動化ができない、あるいは、グループ会社間の自由な資金移動が妨げられる規制資本上の制約に関する変化等、市場全体の事情や野村固有の事情により発生します。資金流動性リスク管理については、経営会議が定める流動性リスク・アペタイトに基づくことを基本方針としております。野村の資金流動性管理は、市場全体が流動性ストレス下にある場合において、またそれに加えて野村の信用リスクに過度なストレスを想定した場合においても、それぞれ1年間、および30日間にわたり、無担保による資金調達が困難な場合においても、保有資産を維持しつつ業務を継続することができる十分な資金流動性を常に確保することを主な目的としております。また、金融庁の定める流動性カバレッジ比率および安定調達比率(「金融商品取引法第五十七条の十七第一項の規定に基づき、最終指定親会社が当該最終指定親会社およびその子法人等の経営の健全性を判断するための基準として定める最終指定親会社およびその子法人等の経営の健全性のうち流動性にかかる健全性の状況を表示する基準」)の充足が求められております。
野村は、主な流動性維持の目的を達成可能とする、さまざまな資金流動性リスク管理フレームワークを定めております。このフレームワークには、(1)余剰資金の集中管理と流動性ポートフォリオの維持、(2)流動性ポートフォリオ以外の担保未提供資産の活用、(3)資産構成等に見合った資金調達ならびに調達手段の多様化および調達期間の分散、(4)野村グループ各社に対する与信枠の管理、(5)流動性ストレステストの実行、(6)コンティンジェンシー・ファンディング・プランに関することが含まれております。
経営会議は、野村の資金流動性に関する重要事項についての決定権を有しており、財務統括責任者(以下「CFO」)は、経営会議の決定に基づき、野村の資金流動性管理に関する業務を執行する権限と責任を有しております。
1.余剰資金の集中管理と流動性ポートフォリオの維持
野村は、野村グループ内で資金流動性を有効に活用することを可能とするため、野村グループ各社の余剰資金の集中管理を行っております。資金の使用に関しても、野村では、無担保で提供される資金を一元的に管理しており、内部で上限を設けております。この上限は、CFOによって決定され、経営会議において各部門へ配分が行われます。ファイナンス部門において、資金流動性の管理を行う組織であるグローバル・トレジャリーは、使用状況についてモニタリングを行い、経営会議へ報告しております。
また、グループ会社間の資金移動を円滑なものにするため、規制対象ブローカーあるいは銀行における資金調達は限定的にしか行っておりません。野村は、無担保による資金調達の当社あるいは主要規制外発行体への集中を積極的に行っております。このことにより、野村は調達コストを最小化し、投資家からの認知度を高め、さまざまなグループ会社間の資金供給のフレキシビリティを高めております。
潜在的な資金流動性必要額を考慮し、十分な資金流動性を確保するために、野村は、現金ならびに売却や担保提供することで流動性資金を供給することができる流動性の高い担保未提供資産等で構成される流動性ポートフォリオを維持しており、グローバル・トレジャリーにて他の資産と区別して管理をしております。流動性ポートフォリオの金額は、2023年3月31日現在、7兆6,543億円となっております。
以下の表は2022年3月31日、2023年3月31日現在の野村の流動性ポートフォリオの内訳をアセットタイプ別に表示したものです。年間平均は月末の残高を用いて算出されております。
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|
|
(単位:十億円) |
|
2022年3月31日 年間平均 |
2022年3月31日 |
2023年3月31日 年間平均 |
2023年3月31日 |
現預金(1) |
3,151.6 |
2,997.5 |
3,155.5 |
3,229.3 |
国債 |
3,629.8 |
3,674.2 |
4,073.8 |
3,984.0 |
その他(2) |
298.3 |
402.5 |
416.9 |
441.0 |
流動性ポートフォリオ |
7,079.7 |
7,074.2 |
7,646.2 |
7,654.3 |
(1)現預金には、現金、現金同等物および必要に応じて即時利用可能な中央銀行、市中銀行への預金を含みます。
(2)その他にはMMF、米国政府機関債などのアセットタイプが含まれています。
以下の表は2022年3月31日、2023年3月31日現在の野村の流動性ポートフォリオの内訳を通貨別に表示したものです。年間平均は月末の残高を用いて算出されております。
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(単位:十億円) |
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2022年3月31日 年間平均 |
2022年3月31日 |
2023年3月31日 年間平均 |
2023年3月31日 |
円 |
1,913.7 |
1,409.8 |
1,613.6 |
1,852.0 |
米ドル |
3,567.3 |
3,924.1 |
4,326.0 |
3,953.3 |
ユーロ |
792.3 |
868.5 |
869.3 |
964.5 |
英国ポンド |
578.3 |
597.5 |
505.7 |
522.4 |
その他(1) |
228.1 |
274.3 |
331.6 |
362.1 |
流動性ポートフォリオ |
7,079.7 |
7,074.2 |
7,646.2 |
7,654.3 |
(1)その他には豪ドル、カナダドル、スイスフランなどの通貨が含まれています。
野村は流動性ポートフォリオの要件をグローバル基準、および各主要オペレーティングエンティティによって評価しています。野村は、主に当社および野村證券株式会社(以下「NSC」)、他の主要なブローカーディーラーおよび銀行子会社で流動性ポートフォリオを管理しています。流動性ポートフォリオの保有量とエンティティを決定する際に、野村グループ内で自由に流動性を移す能力に影響を及ぼすかもしれない法規制、税制を考慮しています。規制の制限の詳細については、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 17 法的規制」を参照してください。
以下の表は2022年3月31日、2023年3月31日現在の野村の流動性ポートフォリオをエンティティ別に表示したものです。
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(単位:十億円) |
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2022年3月31日 |
2023年3月31日 |
当社およびNSC(1) |
1,395.4 |
1,806.4 |
他の主要なブローカーディーラー |
3,118.5 |
3,012.6 |
銀行子会社(2) |
1,008.5 |
1,178.6 |
その他の関連会社 |
1,551.8 |
1,656.7 |
流動性ポートフォリオ |
7,074.2 |
7,654.3 |
(1)NSCは日本のブローカーディーラーであり、日本銀行に口座を維持し、日本銀行のロンバード貸付制度を直接利用することにより、同日資金調達が可能です。当社における余剰流動性資金は必要な時に即時解約可能な短期社内貸付により、NSCに貸し出しております。
(2)ノムラ・バンク・インターナショナル PLC(以下「NBI」)、ノムラ・シンガポールLIMITEDおよびノムラ・バンク・ルクセンブルグ S.A.
2.流動性ポートフォリオ以外の担保未提供資産の活用
流動性ポートフォリオに加えて、主にトレーディング資産で構成される有担保資金調達の際の追加担保として使用可能な担保未提供資産を2023年3月31日現在、2兆8,425億円所有しております。グローバル・トレジャリーは、その他担保未提供資産のモニタリングを行っており、流動性ストレス下においては、当該資産を現金化し、野村グループの流動性供給のために利用することができます。なお、流動性ポートフォリオとその他担保未提供資産の合計は、10兆4,968億円となりました。これは、野村の1年以内に満期の到来する無担保債務の合計に対して、307.7%に相当します。
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(単位:十億円) |
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2022年3月31日 |
2023年3月31日 |
その他担保未提供資産 |
2,665.7 |
2,842.5 |
流動性ポートフォリオ |
7,074.2 |
7,654.3 |
合計 |
9,739.9 |
10,496.8 |
3.資産構成等に見合った資金調達ならびに調達手段の多様化および調達期間の分散
野村は、保有資産を継続して維持していくうえで必要となる長期性資金を確保するために、長期無担保債務の額、および株主資本を十分な水準に維持するように努めております。また、無担保調達資金の借換えリスクを低減させるために、資金調達を行う市場やプロダクト、投資家、通貨および返済期限の分散にも努めております。
野村は、さまざまな種類の債券を発行することによって、資金調達手段の分散を図っております。これらには、仕組ローンや仕組債が含まれ、金利・為替・株式・コモディティやこれらのインデックスにリンクしたリターンが付いております。野村は、資金調達方法の多様性が増すように仕組ローンや仕組債を発行しております。これらについて、野村は、通常、デリバティブや原資産に対する支払い義務をヘッジすることにより、無担保調達債務と同様の効果を得ております。なお、日本円以外の長期債務比率は、2022年3月31日現在51.4%から2023年3月31日現在55.9%に増加しております。
3.1 短期無担保債務
野村の短期無担保債務は、短期銀行借入(長期銀行借入のうち、満期まで1年未満のものを含む)、その他の短期借入、コマーシャル・ペーパー、銀行業務受入預金、譲渡性預金、および償還まで1年以内の社債で構成されております。銀行業務受入預金および譲渡性預金は、銀行子会社の預金および譲渡性預金を表しております。短期無担保債務には、長期無担保債務のうち残存期間が1年以内となったものを含んでおります。
以下の表は、2022年3月31日、2023年3月31日現在の野村の短期無担保債務明細を表示したものです。
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(単位:十億円) |
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2022年3月31日 |
2023年3月31日 |
|
|
短期無担保債務 |
2,932.1 |
3,411.2 |
|
短期銀行借入 |
148.0 |
203.3 |
|
その他の短期借入 |
228.1 |
256.8 |
|
コマーシャル・ペーパー |
131.9 |
300.0 |
|
銀行業務受入預金 |
1,520.7 |
1,705.0 |
|
譲渡性預金 |
127.8 |
224.2 |
|
償還まで1年以内の社債 |
775.6 |
721.9 |
3.2 長期無担保債務
野村は、常に十分な長期性資金を確保し、適切なコストでの調達および適切な長期債務償還プロファイル維持を満たすために、満期や通貨の分散を行い定期的に長期性資金の調達を行っております。
野村の長期無担保債務には、米国発行登録および登録ミディアム・ターム・ノートプログラム、ユーロ・ミディアム・ターム・ノートプログラム、国内発行登録およびさまざまな発行プログラムより発行される普通社債や劣後社債が含まれております。
日本のグローバルな金融サービスグループとして、野村は、世界中のさまざまな市場と資金調達センターへのアクセスを持っております。主として当社、NSC、ノムラ・ヨーロッパ・ファイナンスN.V.、NBI、ノムラ・インターナショナル・ファンディング Pte. Ltd.、および野村グローバル・ファイナンス株式会社が外部からの借入、債券発行その他資金調達を行っております。使用通貨や保有資産の流動性に合わせた資金調達や、必要に応じた為替スワップの使用により、調達構造の最適化を図っております。
野村は、市場や投資家のタイプごとに、効率的かつ十分に多様化された資金調達を行うために、さまざまなプロダクトや通貨による調達をしております。野村の無担保債務の大部分は、発行コストの上昇や債務償還満期を早める財務制限条項(格付、キャッシュ・フロー、決算あるいは財務レシオ)は、付されておりません。
以下の表は、2022年3月31日、2023年3月31日現在の野村の長期無担保債務明細を表示したものです。
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(単位:十億円) |
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2022年3月31日 |
2023年3月31日 |
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長期無担保債務 |
7,898.1 |
8,770.7 |
|
長期銀行業務受入預金 |
112.3 |
208.8 |
|
長期銀行借入 |
2,820.5 |
3,004.9 |
|
その他の長期借入 |
219.5 |
265.5 |
|
社債(1) |
4,745.8 |
5,291.5 |
(1)編纂書810「連結」に定義される変動持分事業体の要件を満たす“連結変動持分事業体(VIE)が発行する社債”と編纂書860「譲渡とサービシング」により、会計上担保付金融取引として取り扱われる譲渡取消にともなう担保付借入を含んでおりません。
3.3 償還プロファイル
プレーン・バニラ物(プレーン・バニラ債および長期借入金)の調達に関しては、平均残存年数が3年以上となるように努めており、2023年3月31日現在の平均残存年数(残存期間1年超のものの平均)は、3.9年となっております。また、仕組ローンや仕組債については、その大部分が、金利・為替・株式・コモディティやこれらのインデックスにリンクしており、これらの償還確率は、内部数理モデルによって継続的に評価され、グローバル・トレジャリーによりモニターされております。予定された満期日以前に償還される可能性のあるものについては、野村の内部ストレスオプション評価モデルにより、評価されております。このモデルは、ストレス市場環境下で、いつその債券が償還される可能性があるかを評価します。下図は、このモデルにおいて評価された野村の長期債券と長期借入の満期の分散状況を示したものです。
上記のモデルに基づき評価された仕組ローンや仕組債の平均残存期間(残存期間1年超のものの平均)は、2023年3月31日現在で、8.3年となっており、プレーン・バニラ物を合わせた長期債務全体の平均残存期間(残存期間1年超のものの平均)は、2023年3月31日現在で、6.2年となっております。
3.4 有担保資金調達
野村は、トレーディング業務のための資金調達活動は、担保付借入、レポ契約、日本の現先レポ取引によって、通常行っております。これらの有担保資金調達は、無担保資金調達に比べコストが低く、格付の影響を受けにくいものと考えております。有担保資金調達は、担保資産の質や市場環境の影響を受けます。流動性の高い資産を担保として用いる場合は短期の契約で資金調達を行う一方で、流動性の低い資産を担保として用いる場合は、契約期間の長期化に努めております。野村は、有担保資金調達にともなう資金流動性リスクを低減させるために、カウンターパーティのグローバルな分散、担保の種類の多様化にも努めております。また、流動性の低い資産を用いた短期有担保資金調達の借り換えが難しくなる場合のリスクに備えて、流動性ポートフォリオを保有しております。詳細は、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表注記] 5 担保付取引」をご参照ください。
4.野村グループ各社に対する与信枠の管理
野村は、資金調達の安定性を確保するために、金融機関から野村グループに対する与信枠の維持、拡大に努めております。また、資金流動性リスク管理の一環として、野村は、借入の契約満期日が一時期に集中しないように分散させております。
5.流動性ストレステストの実行
野村は、先に述べた流動性管理方針に沿うよう、一定のストレスシナリオ下でのキャッシュ流出をシミュレートする内部モデルに基づいて流動性ポートフォリオをモニターしております。
資金流動性必要額は、さまざまなストレスシナリオ下において、異なるレベルで、さまざまな時間軸に沿って見積もられております。そこでは、親会社や子会社レベルでの格下げといった野村固有および市場全体のイベント下で発生する資金流動性必要額を見積もっております。野村では、このリスク分析を「マキシマム・キュームレーティブ・アウトフロー(以下「MCO」)」と呼んでおります。
MCOフレームワークは、主たる資金流動性リスクを考慮したうえで構築し、以下の2つのシナリオに基づいて、将来のキャッシュ・フローをモデル化しております。
・ストレスシナリオ:市場全体が流動性ストレス下にある場合において、無担保による資金調達、資産の売却をすることなく1年間適切な流動性を維持すること。
・アキュートシナリオ:市場全体が流動性ストレス下にあることに加え、野村の信用リスクに過度なストレスを想定した場合において、無担保による資金調達、資産の売却をすることなく30日間適切な流動性を維持すること。
野村は、これらの各モデルで用いられている時間軸の中で、資産の流動化を行ったり、ビジネス・モデルを修正することはできないと想定しております。したがって、MCOフレームワークは、ストレス状況下においても、野村が適切と考える流動性リスク・アペタイトを満たすために必要な資金流動性額を定義するものです。
2023年3月末時点において、野村の流動性ポートフォリオは、上述のシナリオ下で想定された資金流出予想額を上回っておりました。
野村は、規制環境や市場の変化に基づいた資金流動性リスクの前提条件を継続的に評価し、調整をしております。ストレスの影響をシミュレートするために用いるモデルでは、以下のような事象を考慮、想定しております。
・資産の売却ができない状況
・追加の無担保調達を行うことができない状況
・既存の借入金の返済期日や発行済み社債の償還期日(1年以内)
・発行済み社債の買い取りの可能性
・流動性の低い資産を担保とする資金調達ラインの喪失
・通常の事業環境下での運転資金需要の変化
・ストレス時における受入銀行預金および担保の流出
・既存のレポ調達時の担保掛目の拡大
・決済銀行からの担保・預託金追加要求
・コミットメント提供先のドローダウン
・損失にともなう資金の喪失
・野村の信用格付が2ノッチ格下げされた場合のデリバティブ取引にかかる契約上の追加担保要請、および清算・決済機関からの潜在的な追加担保要請
・グループ会社間の資金や証券の移動を制限する法規制を考慮した資金流出
6.コンティンジェンシー・ファンディング・プラン
野村は、詳細にわたるコンティンジェンシー・ファンディング・プラン(以下「CFP」)を定め、包括的リスク管理の枠組みに組み込むとともに、定量的なコントロールを強化しております。この中で、リクイディティ・イベントの範囲の分析と特定方法を記載しております。そのうえで、野村固有のあるいは市場全体の影響の可能性を見積もることや、リスクを低下させるために即座にとられるべき対応を特定しております。CFPは、キーとなる内部および外部の連絡先やどの情報を知らせるかを示すプロセスの詳細をリスト化しております。また、野村が規制上、法的、あるいは税務上の制限によって、グループ会社レベルにおける資金へのアクセスができなくなったことを想定し、グループ会社レベルで、個別の資金需要に応えうるように作られております。なお、野村は、定期的にさまざまな市場や野村固有のイベントに対して本CFPの有効性をテストしております。野村は、日本銀行等中央銀行が行うさまざまな証券に対して実施する資金供給オペレーションへのアクセスも持っております。これらのオペレーションは、通常のビジネスでも利用しておりますが、市場の悪化による不測のリスクを軽減させる重要な手段のひとつです。
流動性規制
2008年にバーゼル委員会は、流動性フレームワークの基盤となる「健全な流動性リスク管理およびその監督のための諸原則」を公表しました。続いて、バーゼル委員会は資金流動性にかかる2つの最低基準を策定し、流動性管理の枠組みをさらに強化しました。これらの基準は、それぞれ独立しているものの相互補完的な2つの目的を達成するために策定されております。
第1の基準の目的は、金融機関の流動性リスク態様の短期的強靭性を高めることにあり、その手段として、金融機関が流動性の高い資産を十分に保有し、30日間継続する強いストレスシナリオに耐える力を持っていることを確保することにあります。バーゼル委員会は、この目的を達成するために流動性カバレッジ比率(以下「LCR」)を策定しました。
第2の基準の目的は、長期的な強靭性を高めることにあり、その手段として、金融機関に対し、常により安定的な資金調達源を確保したうえで、業務を行うことを促すための追加的なインセンティブを設けました。安定調達比率(以下「NSFR」)は、対象期間を1年とし、資産・負債が持続可能な満期構造を保つよう策定されました。
これら2つの基準を構成するパラメータは、主として、国際的に統一された既定の数値です。しかしながら、各国固有の状況を反映させるため、一部のパラメータには各国裁量の要素が含まれております。LCRについては、本邦においてバーゼル委員会の国際合意文書に必要な修正を加えた金融庁告示が公布され、2015年3月末から最低基準として段階導入されております。当第4四半期連結会計期間におけるLCRの平均値は203.8%となっており、上記金融庁告示の定める要件についても満たしております。また、NSFRについては金融庁より流動性比率規制に関する告示の改正が2021年3月31日付で公布され、2021年9月末から導入されております。当第4四半期連結会計期間末におけるNSFRは告示の定める要件を満たしております。
キャッシュ・フロー
野村のキャッシュ・フローは、主に顧客ビジネスフローやトレーディングからなる営業活動およびそれと密接な繋がりのある財務活動によりもたらされます。金融機関はビジネスを展開していくことにより営業活動および投資活動において現金支出となる傾向にあり、野村のキャッシュ・フローは以下に記載しておりますとおり、2022年3月期および2023年3月期は営業活動および投資活動において現金支出となり、財務活動において現金収入となりました。下の表は、野村の2022年3月期および2023年3月期の連結キャッシュ・フロー計算書の抜粋です。「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 1 会計処理の原則および会計方針の要旨」に記載しましたとおり、2022年3月期および2023年3月期の金額については、2024年3月期の第4四半期中に特定された誤りを修正して記載しております。
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(単位:十億円) |
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2022年3月期 (修正後) |
2023年3月期 (修正後) |
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営業活動に使用された現金(純額) |
△862.8 |
△694.8 |
|
当期純利益 |
146.5 |
91.7 |
|
トレーディング資産およびプライベートエクイティ・デット投資 |
1,229.6 |
△1,623.0 |
|
トレーディング負債 |
△284.7 |
467.3 |
|
売戻条件付買入有価証券および買戻条件付売却有価証券(純額) |
△2,220.5 |
△590.4 |
|
借入有価証券担保金および貸付有価証券担保金(純額) |
595.1 |
834.4 |
|
その他(純額) |
△328.8 |
125.2 |
|
投資活動に使用された現金(純額) |
△593.2 |
△233.2 |
|
定期預金の預入による支出(純額) |
△28.2 |
△59.4 |
|
貸付金の増加(純額) |
△634.5 |
△299.8 |
|
トレーディング目的以外の負債証券の減少(△増加)(純額) |
△51.1 |
159.6 |
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その他(純額) |
120.6 |
△33.6 |
|
財務活動から得た現金(純額) |
1,112.7 |
1,283.9 |
|
長期借入の実行による収入(純額) |
1,238.4 |
1,093.3 |
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短期借入の返済による支出(純額) |
△420.3 |
△64.5 |
|
受入銀行預金の増加による収入(純額) |
372.6 |
328.9 |
|
その他(純額) |
△78.0 |
△73.8 |
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現金、現金同等物、制限付き現金および制限付き現金同等物に対する為替相場変動の影響額 |
149.7 |
148.6 |
|
現金、現金同等物、制限付き現金および制限付き現金同等物の増加(△減少)額 |
△193.6 |
504.4 |
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現金、現金同等物、制限付き現金および制限付き現金同等物の期首残高 |
3,510.0 |
3,316.4 |
|
現金、現金同等物、制限付き現金および制限付き現金同等物の期末残高 |
3,316.4 |
3,820.9 |
詳細につきましては、「第5 [経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] ⑤ 連結キャッシュ・フロー計算書」をご参照ください。
2023年3月期を通じて、野村の現金、現金同等物、制限付き現金および制限付き現金同等物は5,044億円増加し3兆8,209億円となりました。長期借入の実行による収入(純額)により1兆933億円の現金収入があり、財務活動から得た現金(純額)は1兆2,839億円となりました。貸付金の増加(純額)により2,998億円の現金支出があり、投資活動に使用された現金(純額)は2,332億円となりました。トレーディングにおいては、主にトレーディング資産およびプライベートエクイティ・デット投資の増加による現金支出の結果、1兆1,557億円の現金支出となりました。一方、売戻条件付買入有価証券および買戻条件付売却有価証券や借入有価証券担保金および貸付有価証券担保金のようなレポ取引、有価証券貸借取引から2,440億円の現金収入がありました。この結果、営業活動に使用された現金(純額)は6,948億円となりました。
2022年3月期を通じて、野村の現金、現金同等物、制限付き現金および制限付き現金同等物は1,936億円減少し3兆3,164億円となりました。長期借入の実行による収入(純額)により1兆2,384億円の現金収入があり、財務活動から得た現金(純額)は1兆1,127億円となりました。貸付金の増加(純額)により6,345億円の現金支出があり、投資活動に使用された現金(純額)は5,932億円となりました。トレーディングにおいては、主にトレーディング資産およびプライベートエクイティ・デット投資の減少による現金収入の結果、9,449億円の現金収入となりました。一方、売戻条件付買入有価証券および買戻条件付売却有価証券や借入有価証券担保金および貸付有価証券担保金のようなレポ取引、有価証券貸借取引から1兆6,254億円の現金支出がありました。この結果、営業活動に使用された現金(純額)は8,628億円となりました。
貸借対照表および財務レバレッジ
2023年3月31日現在の資産合計は、2022年3月31日現在の43兆4,122億円に対し、トレーディング資産が増加したこと等により、4兆3,596億円増加し、47兆7,718億円となりました。また、2023年3月31日現在の負債は、2022年3月31日現在の40兆4,394億円に対し、買戻条件付売却有価証券が増加したこと等により、4兆1,083億円増加し、44兆5,477億円となりました。2023年3月31日現在の当社株主資本は、2022年3月31日現在の2兆9,146億円に対し、累積的その他の包括利益の増加にともない、2,340億円増加の3兆1,486億円となりました。
野村は、マーケットの極端な変動によってもたらされ得る大きな損失にも耐えられる規模の資本を維持することに努めております。野村の適正資本の維持にかかる基本方針は経営会議が決定し、その実践の責任を負います。適正資本の維持にかかる基本方針には、適正な総資産規模の水準やそれを維持するために必要な資本規模の決定などが含まれます。当社は、当社のビジネス・モデルに起因する経済的なリスクに耐え得る必要十分な資本を維持しているかにつき、定期的な確認を行っておりますが、こうした観点とは別に、銀行業や証券業を営む子会社は規制当局から要請される最低資本金額を満たす必要もあります。
レバレッジ・レシオは、野村と同様に他の金融機関でも、一般的に用いられており、当社のアニュアルレポートの利用者が野村のレバレッジ・レシオおよび調整後レバレッジ・レシオを他の金融機関と比較できるように、ベンチマークとする目的で、自主的に開示しております。調整後レバレッジ・レシオは、野村がレバレッジにかかる有用な補助的指標であると考える米国会計原則に基づかない指標です。
以下の表は、当社株主資本、総資産、調整後総資産と財務レバレッジの状況を示しています。
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(単位:十億円) |
|
|
2022年3月31日 |
2023年3月31日 |
||
当社株主資本 |
2,914.6 |
3,148.6 |
||
総資産 |
43,412.2 |
47,771.8 |
||
調整後総資産(1) |
26,535.8 |
29,654.3 |
||
レバレッジ・レシオ(2) |
14.9 |
倍 |
15.2 |
倍 |
調整後レバレッジ・レシオ(3) |
9.1 |
倍 |
9.4 |
倍 |
(1)調整後総資産は米国会計原則に基づかない指標であり、総資産の額から売戻条件付買入有価証券および借入有価証券担保金の額を控除したものとなり、以下のように計算されます。
(2)レバレッジ・レシオは、総資産の額を当社株主資本の額で除して得られる比率です。
(3)調整後レバレッジ・レシオは、調整後総資産の額を当社株主資本の額で除して得られる比率です。
|
|
(単位:十億円) |
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2022年3月31日 |
2023年3月31日 |
総資産 |
43,412.2 |
47,771.8 |
控除: |
|
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売戻条件付買入有価証券 |
11,879.3 |
13,834.5 |
借入有価証券担保金 |
4,997.1 |
4,283.0 |
調整後総資産 |
26,535.8 |
29,654.3 |
総資産は、主にトレーディング資産が増加したことにより、10.0%増加しました。当社株主資本は、主に累積的その他の包括利益が増加したことにより、8.0%増加しました。この結果、野村の財務レバレッジは、2022年3月31日現在14.9倍、2023年3月31日現在15.2倍となりました。
調整後総資産が増加した理由は、トレーディング資産の増加によるものです。この結果、調整後レバレッジ・レシオは、2022年3月31日現在9.1倍、2023年3月31日現在9.4倍となりました。
連結自己資本規制
金融庁は2005年6月に「金融コングロマリット監督指針」を策定し、連結自己資本規制に関する規定を設けました。この「金融コングロマリット監督指針」に基づき、2005年4月から、当社は、連結自己資本規制比率のモニタリングを開始しました。
2011年4月から、当社は、親会社に対する連結自己資本規制の適用を受ける最終指定親会社の指定を受け、「最終指定親会社及びその子法人等の保有する資産等に照らし当該最終指定親会社及びその子法人等の自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準を定める件」(平成二十二年金融庁告示第百三十号、以下「川上連結告示」といいます。)により、バーゼルⅡに基づく連結自己資本規制比率の計測を開始しました。また、2011年12月末からは、マーケット・リスク相当額の計測方法を大幅に改定したバーゼル2.5に基づく連結自己資本規制比率の計測を開始しました。さらに、2013年3月末からは、より質の高い資本を具備させることを目的とした自己資本項目の再定義や、信用リスク・アセットの計測対象の大幅な追加を主な内容とするバーゼルⅢを受けて改正された川上連結告示の内容に基づいた連結自己資本規制比率の計測を行っております。
当社は、川上連結告示第2条の算式に従い、普通株式等Tier1資本の額、Tier1資本(普通株式等Tier1資本およびその他Tier1資本)の額、総自己資本(Tier1資本およびTier2資本)の額、信用リスク・アセットの額、マーケット・リスク相当額およびオペレーショナル・リスク相当額をもとに連結自己資本規制比率を計測しております。2023年3月31日現在の野村の連結普通株式等Tier1比率は16.32%、連結Tier1比率は18.49%、連結総自己資本規制比率は18.49%となり、川上連結告示等の定める要件をそれぞれ満たしました。なお、2023年3月31日現在、川上連結告示等の定める要件は適用される最低連結資本バッファーを含み、連結普通株式等Tier1比率について7.62%、連結Tier1比率について9.12%、連結総自己資本規制比率について11.12%となっております。
また、当社は2021年3月より「金融商品取引法第五十七条の十七第一項の規定に基づき最終指定親会社が最終指定親会社及びその子法人等の経営の健全性を判断するための基準として定める総損失吸収力及び資本再構築力に係る健全性の状況を表示する基準」(以下「TLAC告示」といいます。)に基づく計測を開始しました。TLAC告示第2条の算式に従い、リスク・アセットベース外部TLAC比率を計測しております。2023年3月31日現在の野村のリスク・アセットベース外部TLAC比率は31.78%となり、TLAC告示の定める要件を満たしました。
2022年3月31日および2023年3月31日現在の連結自己資本規制比率およびリスク・アセットベース外部TLAC比率について、以下に示しております。
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(単位:億円) |
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2022年3月31日 |
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2023年3月31日 |
自己資本 |
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普通株式等Tier1資本の額 |
27,264 |
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28,288 |
Tier1資本の額 |
31,030 |
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32,037 |
総自己資本の額 |
31,034 |
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32,041 |
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リスク・アセット |
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信用リスク・アセットの額 |
83,012 |
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83,858 |
マーケット・リスク相当額を8%で除して得た値 |
48,990 |
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62,706 |
オペレーショナル・リスク相当額を8%で除して得た値 |
26,297 |
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26,675 |
リスク・アセット合計 |
158,299 |
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173,239 |
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連結自己資本比率 |
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連結普通株式等Tier1比率 |
17.22% |
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16.32% |
連結Tier1比率 |
19.60% |
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18.49% |
連結総自己資本規制比率 |
19.60% |
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18.49% |
連結レバレッジ比率 |
5.98% |
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5.63% |
外部TLAC比率 |
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リスク・アセットベース外部TLAC比率 |
30.72% |
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31.78% |
総エクスポージャーベース外部TLAC比率 |
10.30% |
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10.63% |
信用リスク・アセットおよびオペレーショナル・リスク相当額は、金融庁の承認を得て2011年3月末から基礎的内部格付手法および粗利益配分手法によりそれぞれ算出しております。また、マーケット・リスク相当額は内部モデル方式により算出しております。
また、当社は川上連結告示で定められた要件の遵守状況を示す他に、バーゼルⅢが適用される他の金融機関との比較を容易にするため、連結自己資本規制比率を開示しております。当社の経営者はこれらに関する報告を定期的に受けております。
連結レバレッジ規制
金融庁は2019年3月に「金融庁長官が定める場合において、最終指定親会社が経営の健全性の状況を記載した書面に記載すべき事項を定める件」(平成二十二年金融庁告示第百三十二号、以下「開示告示」といいます。)を改正するとともに「最終指定親会社及びその子法人等の保有する資産等に照らし当該最終指定親会社及びその子法人等の自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準の補完的指標として定めるレバレッジに係る健全性を判断するための基準」(平成三十一年金融庁告示第十三号、以下「連結レバレッジ比率告示」といいます。)を公表し、連結レバレッジ比率に関する計測ならびに開示にかかる要件、および連結レバレッジ比率3%の最低基準を定めました。2020年6月に金融庁は、新型コロナウイルス感染症の影響拡大が懸念される中、日本銀行による金融政策と銀行等への健全性規制との調和を図るため、例外的なマクロ経済環境を勘案して金融庁長官が別に定める比率を適用する場合には連結レバレッジ比率を算定するにあたって日銀預け金を除外すること等を趣旨とした連結レバレッジ比率告示の一部改正を行いました。当社は開示告示等に基づき、2015年3月末から連結レバレッジ比率の計測および開示を開始しました。さらに2019年3月末からは、開示告示、連結レバレッジ比率告示および最低比率基準を下回った場合の早期是正措置を定めたその他の告示等の内容に基づいた連結レバレッジ比率の計測を行っております。なお、2023年3月31日現在の野村の連結レバレッジ比率は、5.63%となりました。
また、当社は2021年3月よりTLAC告示に基づく計測を開始しました。TLAC告示第2条の算式に従い、総エクスポージャーベース外部TLAC比率を計測しております。2023年3月31日現在の野村の総エクスポージャーベース外部TLAC比率は、10.63%となり、TLAC告示の定める要件を満たしました。
当社をめぐる規制動向
金融危機によって明らかになった脆弱性を踏まえ、規制資本の枠組みを強化するより広範な取組みについてバーゼル銀行監督委員会(以下「バーゼル委員会」)は一連の文書を公表しました。当社にとって関連が深いと思われる事項について、以下に概要を記載しております。
金融庁は、最終指定親会社のバーゼルⅢ規制最終化にともなう改正告示の実施日をさらに一年延期し、2025年3月31日とすることを2023年3月に公表しております。また、2024年3月末までの間、日本銀行に対する預け金の額をレバレッジ比率の分母である総エクスポージャーの額から除外する措置を2022年3月に公表しております。
2010年12月16日にバーゼル委員会は銀行セクターの強靭性を高めるために、いわゆるバーゼルⅢテキスト「より強靭な銀行および銀行システムのための世界的な規制の枠組み」および「流動性リスク計測、基準、モニタリングのための国際的枠組み」を公表しました。これには、資本の質、一貫性および透明性の向上、店頭デリバティブ取引における信用評価調整(Credit Value Adjustment)の導入のような自己資本の枠組みにおけるリスク捕捉の強化、リスク・ベースの枠組みに対する補完的指標としてのレバレッジ比率の導入、現行の枠組みにおける「プロシクリカリティ(景気循環増幅効果)」に対する懸念を抑制する一連の措置、また、30日間の流動性カバレッジ比率および資金調達構造の安定性を計測する安定調達比率といった流動性基準の導入が含まれています。これらのバーゼルⅢパッケージは、2013年より段階的に適用が開始されております。加えて、2012年7月25日に、清算機関(以下「CCP」)向けエクスポージャーに対する資本賦課についての暫定規則が公表され、バーゼルⅢの一部として2013年から実施されております。さらに、上記のとおり2015年3月末より開始した連結レバレッジ比率の算出および開示、ならびに2019年3月末より開始した連結レバレッジ比率の計測に加え、現在までに、バーゼル委員会から、ファンド向けエクイティ出資にかかる資本賦課、カウンターパーティ信用リスクエクスポージャーの計測にかかる標準的手法、CCP向けエクスポージャーに対する資本賦課、大口エクスポージャーの計測と管理のための監督上の枠組み、証券化商品の資本賦課枠組みの見直し、マーケット・リスクの最低所要自己資本等に関して一連の最終規則が公表されております。
また、2011年11月のG-20サミットにおいて、金融安定理事会とバーゼル委員会は、グローバルにシステム上重要な金融機関(以下「G-SIBs」)の監督手法および破綻処理計画の策定を含むG-SIBsに対する追加的要件を公表しました。同時に、G-SIBsのリストは毎年11月に金融安定理事会とバーゼル委員会により、更新されております。なお、2011年11月の公表以来、当社はG-SIBsには指定されておりません。一方で、G-SIBsの枠組みを国内のシステム上重要な金融機関(以下「D-SIBs」)まで拡張するようにとの要請を受け、バーゼル委員会は2012年10月、D-SIBsに関する評価手法およびより高い損失吸収力の要件に関する一連の原則を策定・公表しました。2015年12月、金融庁は当社をD-SIBsに指定し、2016年3月以降の追加的な資本賦課水準を0.5%(3年間の経過措置あり)といたしました。
2015年11月、金融安定理事会は、G-SIBsに対して総損失吸収力(以下「TLAC」)にかかる最終基準を公表しました。TLAC基準は、破綻したG-SIBsが、当局の秩序ある処理を実施するため、利用可能な十分な損失吸収力および資本増強能力を確保するように設計されています。金融庁は、金融安定理事会のTLAC基準の公表を受けて、2016年4月に本邦G-SIBsに適用される本邦TLACの枠組みを整備する方針を公表しましたが、その後、2018年4月に、本邦G-SIBsのみならず、(i)国際的な破綻処理対応の必要性が高く、(ii)破綻の際に我が国の金融システムに与える影響が特に大きいと認められる金融機関である本邦D-SIBsについても適用対象とする方針とされました。改訂された方針においては、本邦G-SIBsおよび野村(以下「本邦TLAC対象SIBs」)は、本邦TLAC規制の適用対象となりました。さらに、2019年3月には「金融商品取引法第五十七条の十七第一項の規定に基づき最終指定親会社が最終指定親会社及びその子法人等の経営の健全性を判断するための基準として定める総損失吸収力及び資本再構築力に係る健全性の状況を表示する基準」(平成三十一年金融庁告示第十号)および「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」がそれぞれ公表および改訂されており、野村は現時点で本邦G-SIBsに選定されておりませんが、野村を含む本邦TLAC対象SIBsは、バーゼルⅢの枠組みに定められている最低要求水準に従ってTLACにかかる規制要件を満たすことが求められます。具体的には、野村は、2021年3月31日からリスク・アセットの16%、2024年3月31日以降は18%のTLACリスク・アセット最低基準を満たす必要があります。同様に、2021年3月31日からレバレッジエクスポージャーの6%、2024年3月31日以降は6.75%のTLACレバレッジエクスポージャー最低基準を満たす必要があります。
さらに、2018年4月に公表された金融庁の改訂後の方針によれば、将来の国際的な議論に基づき変更される可能性がありますが、本邦TLAC対象SIBsに適用される破綻処理戦略は、実際の処理は破綻時の本邦TLAC対象SIBsの実態を考慮のうえで個別事案毎に決定されるものの、金融庁のような、単一の当局が金融グループの最上位に位置する持株会社等に対して破綻処理権限を行使するシングル・ポイント・オブ・エントリー(以下「SPE」)とされました。SPE破綻処理戦略を実効的に実現するためには、金融庁は持株会社である本邦TLAC対象SIBsの国内における破綻処理対象会社(以下「国内処理対象会社」)について、(i)外部TLACの最低所要水準以上を確保すること、(ii)金融安定理事会によるTLAC合意文書による選定を踏まえて金融庁が指定した金融機関の主要子会社が調達する、損失吸収力を有すると認められる資本・負債を一定の水準以上引き受ける、即ち内部TLACの分配対象となることが求められます。
また、金融庁の改訂後の方針によれば、預金保険制度に鑑み、本邦TLAC対象SIBsの国内処理対象会社について規制導入時からリスク・アセットの2.5%相当分(野村は2021年3月31日)、規制導入後3年間以降はリスク・アセットの3.5%相当分(野村は2024年3月31日)を外部TLACとして算入することが認められる方針であります。
今後も、川上連結告示を始めとする各業態の自己資本規制、流動性規制、レバレッジ規制等の諸規制はバーゼル委員会、証券監督者国際機構または金融安定理事会等の一連の規制強化の動きに沿って改定される可能性があります。
格付会社による信用格付
無担保資金の調達コストおよび調達可能金額は一般的に格付会社による長期あるいは短期の信用格付の影響を受けます。当社および野村證券には、S&P Global Ratings、Moody's Investors Service、Fitch Ratings、格付投資情報センターおよび日本格付研究所より長期および短期の信用格付が付与されています。
2023年3月期には、重要な格付アクションはございませんでした。
2023年5月22日現在の当社および野村證券の格付会社による格付は以下のとおりです。
野村ホールディングス(株) |
短期債務 |
長期債務 |
S&P Global Ratings |
A-2 |
BBB+ |
Moody's Investors Service |
- |
Baa1 |
Fitch Ratings |
F1 |
A- |
格付投資情報センター |
a-1 |
A |
日本格付研究所 |
- |
AA- |
野村證券(株) |
短期債務 |
長期債務 |
S&P Global Ratings |
A-2 |
A- |
Moody's Investors Service |
P-2 |
A3 |
Fitch Ratings |
F1 |
A- |
格付投資情報センター |
a-1 |
A+ |
日本格付研究所 |
- |
AA- |
(6)オフ・バランス・シート取引
非連結事業体との取引
野村は通常の業務において、将来の財政状態や業績に影響を与える可能性があるさまざまなオフ・バランス・シート取引を非連結事業体と行っております。
野村が行う非連結事業体とのオフ・バランス・シート取引には、以下のものが含まれます。
・債務保証契約上の義務
・譲渡した資産に対する留保持分または偶発的な持分、もしくは、譲渡した資産に関し信用リスク、流動性リスク、市場リスクを補完するような類似の取引
・デリバティブとして会計処理される契約による一切の義務(偶発債務を含む)
・非連結事業体が資金調達リスク、流動性リスク、市場リスク、信用リスクの補完を野村に対し提供している場合、またはリース、ヘッジ、研究開発契約を野村と結んでいる場合、野村が保有しかつ野村にとって重要な非連結事業体の変動持分から発生する一切の義務(偶発債務を含む)
非連結事業体は、会社、パートナーシップ、ファンド、信託、その他法的事業体の形態をとり、限定された特定の目的を履行するために、発起人によって設立されます。野村は、これらの事業体を設立または発起したり、第三者によって設立または発起された事業体と取引を行います。
野村の非連結事業体との関与は、マーケットの状況に応じて、これらの事業体が発行する負債証券および受益権を組成し、引受け、売出し、販売することが含まれております。また野村は通常の証券化およびエクイティデリバティブ業務の中で、これらの事業体に対する金融資産の譲渡、これらの事業体が発行したリパッケージ金融商品の引受け、売出し、販売を行っております。さらに野村は、マーケットメーク業務、投資業務、組成業務に関連し、特別目的事業体にかかる変動持分の保有、購入、販売を行っております。非連結事業体とのそのほかの関与には、債務保証やデリバティブ契約などが含まれます。これらの事業体との重要な関与は、たとえ期末日における損失の可能性が低くても、取引すべてに基づいて評価されています。
変動持分事業体との取引については、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 6 証券化および変動持分事業体」をご参照ください。
(7)契約上の義務の開示
野村の業務の一部として、将来支払いが必要となるかもしれないさまざまな契約上の義務および偶発的コミットメントを有しております。これらの取引は以下のものを含んでおります。
スタンドバイ信用状およびその他の債務保証
野村は、通常の銀行もしくは金融業務の一環として、スタンドバイ信用状およびその他の債務保証の方法で取引相手とさまざまな債務保証を行っており、こうした債務保証には一般に固定満期日が設定されております。
長期借入および約定金利の支払
野村の業務に関連して、野村の資金調達政策に従い、日本円建ておよび日本円建て以外の長期借入、それにかかわる変動および固定金利の支払いを行っております。
オペレーティング・リース・コミットメント
野村は、国内外でオフィス、特定の従業員用住宅、器具備品および情報・通信関連資産を通常業務の範囲内で主にオペレーティング・リースにより貸借しております。また、野村は、不動産および器具備品をオペレーティング・リースにより転貸借しております。
ファイナンス・リース・コミットメント
野村は、国内外で特定の器具備品および施設をファイナンス・リース契約により賃借しております。
購入義務
物品およびサービスを購入する義務には、建物設備等の工事、広告宣伝、コンピュータ・IT関連の維持管理などに関する契約が該当します。
貸出コミットメント
野村は、銀行もしくは金融業務の一環として、貸出コミットメントを行っており、こうした契約義務には一般に固定満期日が設定されております。
投資銀行業務に関連して、野村は顧客により発行されうる有価証券を引き受けることを保証する契約を結んでおります。
中央清算機関の会員として、野村は他の会員が債務不履行に陥った際に、国債および政府系機関債を裏付けとしたリバース・レポの取引相手になり、流動性資金の提供を行う確約をしております。
投資コミットメント
野村は、パートナーシップ等に投資するコミットメントおよび当該投資に関連してパートナーシップに資金提供するコミットメントを行っております。
「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 8 リース」に野村のオペレーティング・リース、ファイナンス・リースにかかわる追加的情報を、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 10 借入」に野村の短期借入および長期借入にかかわる追加的情報を、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 19 コミットメント、偶発事象および債務保証」にこれらにかかわる追加的情報を記載しております。
こうした貸出コミットメントにかかる契約金額は、契約がすべて実行され、取引相手先が債務不履行の状態となり、既存担保が無価値になったと仮定した場合に想定される、野村の信用関連損失の最大値を表しております。締結された契約が実行されることなく契約義務が満期を迎える場合もあるため、こうした信用関連コミットメントの契約金額は将来の現金所要額を必ずしも表しているわけではありません。こうした契約義務にかかる信用リスクは、顧客の信用力および受入担保の価値によって異なったものになります。野村は、各顧客の信用力を個別に評価しております。信用供与に際して必要と考えられる場合に野村が取引相手から受け入れる担保の金額は、取引相手の信用力評価に基づいております。
下記の表は2023年3月31日現在での満期年限別の契約上の義務および偶発的コミットメントを表示しております。
|
(単位:百万円) |
||||
契約総額 |
満期年限 |
||||
1年以内 |
1~3年 |
3~5年 |
5年超 |
||
スタンドバイ信用状およびその他の債務保証 |
1,544,159 |
1,517,287 |
15,903 |
10,258 |
711 |
長期借入(1) |
9,985,597 |
619,672 |
3,605,633 |
1,614,747 |
4,145,545 |
約定金利の支払(2) |
1,623,599 |
238,543 |
379,912 |
245,268 |
759,876 |
オペレーティング・リース・コミットメント(3) |
203,898 |
44,455 |
64,222 |
42,474 |
52,747 |
購入義務(4) |
99,134 |
21,501 |
10,886 |
64,806 |
1,941 |
貸出コミットメント(5) |
2,634,229 |
1,823,017 |
289,991 |
338,978 |
182,243 |
投資コミットメント |
21,994 |
195 |
1,292 |
5,003 |
15,504 |
合計 |
16,112,610 |
4,264,670 |
4,367,839 |
2,321,534 |
5,158,567 |
(1)長期借入で開示されている金額は、編纂書860にしたがって金融資産の譲渡を売却取引ではなく金融取引として会計処理されている金融負債を含んでおりません。これらは野村の資金調達を目的とした借入ではなく、したがって野村が現金を返済する実際の契約上の義務を表しておりません。
(2)約定金利の支払金額は、長期借入金に関連し、その償還期日および2023年3月31日現在適用される金利に基づいて見積もられる将来の支払金利の総額であります。
(3)割引前の年限別将来支払リース料を示しております。また、ファイナンス・リースの契約額は重要な金額ではありませんでした。
(4)購入義務の金額は、重要な条件がすべて特定されている法的な強制力のある契約に基づく、契約上の義務となる最低金額が記載されています。購入義務の金額には、既に貸借対照表に負債または支払債務として計上されているものは除かれています。また、日本橋地区の再開発不動産の一部を組合から購入する義務が含まれております。
(5)中央清算機関への流動性資金の提供を行う確約を含んでおります。
上記に記載されている契約上の義務および偶発的コミットメントには、通常の場合短期の義務の性格を有する短期借入、受入銀行預金、その他の支払債務、担保付契約および担保付調達(例えば、売戻条件付買入取引および買戻条件付売却取引)およびトレーディング負債などを含んでおりません。
上記の金額に加えて、野村は担保付契約および担保付調達に関連する金額を含む売戻契約および買戻契約を結ぶ義務を負っております。これらのコミットメントは2023年3月31日現在、売戻契約に対して1,143十億円および買戻契約に対して2,146十億円となっております。
該当事項はありません。
該当事項はありません。