文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは社是に「技術立社」を掲げ、研究・技術開発力の向上を図り、高品質・高付加価値製品を生み出すことを常に最優先の課題としております。
また、厳しい経済環境のもと、香料業界における国際競争は激化し、多様化・高度化する顧客の要望への即応が求められる中、当社は以下の事項を経営の基本方針としております。
①企業価値の向上と株主利益の増大を目標とし、安定的で適正な利益還元を実施する。
②コンプライアンス(法令順守)を徹底し、企業の社会的責任を全うする。
③従業員の働きやすい環境を整備する。
(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、持続的・安定的な発展を通じて中長期的な企業価値の向上を実現していくために、必要かつ可能な範囲を意識して、連結売上高伸長率5.0%以上、連結売上高営業利益率14.0%以上、連結売上高経常利益率15.0%以上を目標としております。
当連結会計年度におきましては、連結売上高伸長率1.5%、連結売上高営業利益率9.3%、連結売上高経常利益率10.3%となりました。
(3) 経営環境、経営戦略及び対処すべき課題
今後のわが国経済は、緩やかに回復していくことが期待されるものの、消費税率引き上げの影響や海外経済の動向等が懸念され、先行きが不透明な状況が続くことが見込まれます。
香料業界におきましても、各社のシェア獲得競争の一層の激化、品質保証に関する要求増加など厳しい状況が続くことが予想されます。
このような状況の中で、当社グループは、「技術立社」の社是のもと、研究・技術開発力の一層の向上により、特長のある差別化された製品開発を行うとともに、生産性の向上や業務全般の効率化によるコスト削減に努めてまいります。
また、少子高齢化に伴う成熟化が進行する国内市場でのシェア拡大に努める一方で、今後の当社の成長を追求するためには、グローバル展開を更に強化していくことが不可欠です。当社が注力する中国、東南アジアを中心としたアジア地域及び米国において、市場の成長性や消費者の嗜好等を的確に捉え、経営環境の変化に迅速かつ柔軟に対応可能な事業戦略を立案・推進してまいります。また、将来にわたる持続的成長の実現に向けた投資や国内外での業務提携等の必要な施策を行い、海外市場での業績拡大を目指してまいります。
研究面におきましては、研究開発活動の更なるスピードアップを目的に組織体制の見直しを行いました。新たな体制のもと、戦略的な研究開発の推進に向け、重点分野を策定し、技術研究所、フレーバー研究所及びフレグランス研究所の連携を活かした研究開発活動に一層注力してまいります。また、各研究所において専門分野の深化による研究開発力の強化、並びに知見と感性の融合による新しい価値の創造を目指し、社会が抱える課題に対しても技術力で貢献できるよう努めてまいります。
食品部門では、安心・安全の確保を第一に、引き続き健康志向に根ざした低糖・低塩・低脂肪の食品に美味しさをもたらす香料、安定性・持続性に優れた香料及び機能性のある香料の開発に取り組みます。また、天然志向とサステナビリティを重視したナチュラルフレーバー素材の開発、並びに食品原料を代替する香料の開発等にも注力いたします。
フレグランス部門では、基礎研究を徹底し、安全性・安定性に優れた新しい香り創りにより、国内での更なるシェア拡大に注力いたします。海外におきましても市場調査及び嗜好性調査の結果を踏まえて現地の消費者に好まれる香り創りに努めてまいります。
営業面におきましては、マーケティング戦略を立案・推進し、マーケット調査・分析等の活用による潜在的欲求の把握、提案力強化に注力するとともに、組織的かつ効率的な営業活動の実現に向けた体制構築に取り組んでまいります。全社一丸となって顧客の多様化・高度化する要望に的確なソリューションを提供することで、カスタマーサクセスへの貢献を通じた売上拡大及び販売シェアアップを目指してまいります。
生産面におきましては、合理的かつ効率的な生産体制の確立を目標に、生産設備の統合と更新・新設を進める一方で、生産技術の向上、製造方法の改良、物流体制の見直し、在庫水準の適正化や廃棄ロスの抑制等により一層のコスト削減に努めてまいります。
海外におきましては、経営資源を効率的に投入し、着実なグローバル展開を図る戦略のもと、中国では、営業体制の強化、営業戦略の見直し等により新規顧客開拓・既存顧客深耕に注力するとともに、製造原価圧縮にプロジェクトで取り組み、売上及び利益の両面から業績回復を目指してまいります。
東南アジアでは、今後も拡大が見込まれる香料需要を取り込むため、同地域全体の営業戦略のもと、販売拠点の営業体制強化、ベトナム、フィリピン、ミャンマー等の周辺地域の開拓等に注力してまいります。東南アジアのハブ拠点であるマレーシア子会社を中心とした各拠点間の連携、顧客への迅速な対応を目的に開設したアプリケーションラボラトリーの機能を活かした営業活動を推進し、売上拡大を目指してまいります。
米国では、マーケティング体制を強化し、市場動向の分析等をふまえた営業戦略の立案、及び現地顧客向けの積極的な営業活動の推進により、当社が注力するセイボリー、健康、飲料の各分野における業績拡大を目指してまいります。
有価証券報告書に記載した事業の概況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 天候に係るリスク
当社グループの顧客業界(食品業界、トイレタリー業界等)の最終製品の販売が、天候不順等により低迷した場合、当社グループの業績に影響を与える場合があります。
(2) 原材料調達に係るリスク
当社グループは、世界各国の複数の取引先から、多くの種類の原材料を調達しておりますが、生産地における異常気象(サイクロン、ハリケーンの発生等)による被害、社会不安(テロ、戦争、伝染病等)、調達先における事故等により調達が困難になった場合、当社グループの業績に影響を与える場合があります。
(3) 災害等に係るリスク
当社グループの生産拠点に、自然災害(地震、台風等)や社会不安(テロ、戦争、伝染病等)による被害が発生した場合、当社グループの業績に影響を与える場合があります。
(4) 品質に係るリスク
当社グループは、製品の品質保証体制を確立し、製品の安全性確保に万全を期しております。また、万一に備え、製造物賠償責任保険も付保しております。しかし、製造物賠償責任保険で充分に填補できない製品の欠陥に起因する損害が発生した場合には、当社グループの業績に影響を与える場合があります。
(5) 経済情勢等に係るリスク
当社グループの製品は、食品業界やトイレタリー業界等の顧客の最終商品に使用されております。そのため、当社グループが事業を展開する各国の経済情勢や景気動向、金融情勢、並びにこれらの影響を受ける個人消費の動向等により、顧客の最終商品の販売が低迷した場合、当社グループの業績に影響を与える場合があります。
(6) 環境に係るリスク
当社グループは、環境問題に対して、事業を展開している各国の環境関連法令等を遵守するとともに、「長谷川香料企業行動規範」に環境問題の改善に積極的に取り組み、環境保全に努める旨を定め、環境に配慮した事業活動を行っております。しかしながら、国内外で環境関連法令等が厳格化された場合、費用負担の増大、事業活動の制限等により当社グループの業績に影響を与える場合があります。
(7) 減損損失に係るリスク
当社グループの資産の時価が著しく下落した場合、又は事業の収益性が悪化した場合には、減損会計の適用により固定資産の減損損失が発生し、当社グループの業績に影響を与える場合があります。
(8) 為替レートの変動に係るリスク
当社グループは、中国、東南アジアを中心としたアジア地域及び米国において、グローバル展開を推進しております。当社グループの海外現地法人の現地通貨建ての財務諸表項目は、連結財務諸表の作成のため円貨換算されており、換算時の為替レートによって、当社グループの業績に影響を与える場合があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は、次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
a.経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境や企業収益等の改善が続き、景気は緩やかな回復基調にあったものの、通商問題の動向が世界経済に与える影響や中国経済の減速等が懸念され、依然として先行きは不透明な状況で推移いたしました。
香料業界は、国内市場の成熟化、同業者間での競争激化、品質保証に関する要求増加など依然として厳しい状況にありました。
このような環境の中で、当社グループは製品の品質管理と安全性の確保を第一に、研究・技術開発力の一層の向上に努め、当社独自の高品質・高付加価値製品の開発に注力してまいりました。
この結果、当連結会計年度の経営成績は以下のとおりとなりました。なお、当連結会計年度より、米国を除く海外連結子会社において、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」を適用しております。比較を容易にするため、前連結会計年度の売上高を同様の基準で算定した場合の前連結会計年度比を、以下「実質」として記載しております。
当連結会計年度におきましては、売上高は50,493百万円(前連結会計年度比1.5%増)と増収となりました。なお、当社単体の売上高は前連結会計年度比2.0%の増収、海外連結子会社の売上高は、中国子会社連結が前連結会計年度比実質5.4%の減収(現地通貨ベースでは実質前連結会計年度並み)、米国子会社連結が前連結会計年度比1.8%の増収(現地通貨ベースでは同2.1%の増収)、マレーシア子会社(2019年4月1日にPeresscol Sdn. Bhd.からT HASEGAWA FLAVOURS (KUALA LUMPUR) SDN. BHD.に社名変更)が前連結会計年度比5.6%の増収(現地通貨ベースでは同9.0%の増収)となりました。
部門別に見ますと、食品部門は、当社単体の売上が増加したことを主因に前連結会計年度比2.0%増加し、43,018百万円となりました。
フレグランス部門は、中国子会社連結の売上が減少したことを主因に前連結会計年度比1.2%減少し、7,474百万円となりました。
利益につきましては、営業利益は、売上高は増加したものの、売上原価率の悪化、並びに販売費及び一般管理費の増加を主因に前連結会計年度に比べ379百万円(7.5%)減少し、4,678百万円となりました。経常利益は営業利益の減少を主因に前連結会計年度に比べ337百万円(6.1%)減少し、5,175百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、米国子会社FLAVOR INGREDIENT HOLDINGS, LLCに係るのれん等に関する減損損失を特別損失として計上した一方で、投資有価証券の売却益を特別利益に計上したことから、前連結会計年度に比べ20百万円(0.5%)増加し、4,121百万円となりました。
セグメントの経営成績は次のとおりであります。なお、セグメントごとの経営成績については、セグメント間の内部売上高等を含めて表示しております。
(日本)
売上高は、食品部門の売上増を主因に37,657百万円(前連結会計年度比2.0%増)となった一方で、セグメント利益は、売上原価率の悪化や販売費及び一般管理費の増加を主因に3,872百万円(前連結会計年度比3.4%減)となりました。
(アジア)
売上高は、当連結会計年度よりアジアセグメントの連結子会社において、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」を適用したこと、また中国子会社について、円高の影響により円ベースでの売上が減少したことを主因に8,039百万円(前連結会計年度比5.3%減)となりました。セグメント利益は、中国子会社の売上構成の変化に伴う売上原価率の悪化を主因に540百万円(前連結会計年度比28.4%減)となりました。
(米国)
売上高は、T. HASEGAWA U.S.A., INC.の現地企業向けの売上が増えたことを主因に5,838百万円(前連結会計年度比2.3%増)となりました。セグメント利益は、販売費及び一般管理費の増加を主因に149百万円(前連結会計年度比42.3%減)となりました。
b.財政状態の状況
資産、負債及び純資産の状況
(流動資産)
前連結会計年度に比べ、現金及び預金が3,608百万円、有価証券が999百万円、投資有価証券の売却にかかる未収入金を主とした流動資産その他が1,488百万円、それぞれ増加しました。これらを主因に、流動資産は前連結会計年度に比べ4,879百万円増加し、56,620百万円となりました。
(固定資産)
有形固定資産は、減価償却が進んだことを主因として、前連結会計年度に比べ1,797百万円減少し、28,817百万円となりました。
無形固定資産は、のれん、顧客関連資産の減価償却が進んだこと及びのれんの減損損失を計上したことを主因として、前連結会計年度に比べ、3,105百万円減少し、4,177百万円となりました。
投資その他の資産は、投資有価証券を売却したことを主因として、前連結会計年度に比べ4,803百万円減少し、24,248百万円となりました。
(流動負債)
前連結会計年度に比べ、未払法人税等が984百万円増加したことを主因として、流動負債は前連結会計年度に比べ1,045百万円増加し、11,709百万円となりました。
(固定負債)
前連結会計年度に比べ、投資有価証券を売却したことを主因として繰延税金負債が1,765百万円減少しました。これにより、固定負債は前連結会計年度に比べ1,634百万円減少し、11,809百万円となりました。
(純資産の部)
前連結会計年度に比べ、利益剰余金が2,653百万円増加し、その他有価証券評価差額金が3,712百万円、為替換算調整勘定が1,721百万円それぞれ減少しました。これらを主因として、純資産合計は前連結会計年度に比べ4,237百万円減少し、90,344百万円となりました。
なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態については遡及処理後の前連結会計年度末の数値で比較を行っております。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末に比べ3,677百万円増加(前連結会計年度は709百万円増加)し、20,898百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果増加した資金は9,230百万円(前連結会計年度は5,894百万円増加)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益が5,464百万円、減価償却費が3,019百万円、減損損失が2,317百万円、売上債権の増減額が1,118百万円であった一方で、法人税等の支払額が1,203百万円、投資有価証券売却及び評価損益が2,665百万円であったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果減少した資金は2,275百万円(前連結会計年度は3,624百万円減少)となりました。これは主に定期預金の預入による支出が3,234百万円、同払戻が2,091百万円であったことと、有形固定資産の取得による支出2,056百万円、投資有価証券の売却による収入1,069百万円が、それぞれあったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果減少した資金は3,035百万円(前連結会計年度は1,534百万円減少)となりました。これは主に配当金の支払が1,468百万円、自己株式の取得による支出が1,565百万円であったことによるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2018年10月1日 至 2019年9月30日) |
前年同期比(%) |
日本 (百万円) |
35,471 |
102.7 |
アジア (百万円) |
7,367 |
88.8 |
米国 (百万円) |
5,462 |
103.8 |
合計 (百万円) |
48,302 |
100.4 |
(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間取引の相殺消去前の数値によっております。
b.商品仕入実績
当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2018年10月1日 至 2019年9月30日) |
前年同期比(%) |
日本 (百万円) |
2,531 |
107.9 |
アジア (百万円) |
302 |
98.3 |
米国 (百万円) |
- |
- |
合計 (百万円) |
2,833 |
106.8 |
(注) 金額は仕入価格によっており、セグメント間取引の相殺消去前の数値によっております。
c.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注高 (百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高 (百万円) |
前年同期比(%) |
日本 |
37,031 |
102.2 |
1,771 |
105.1 |
アジア |
7,945 |
99.1 |
418 |
132.9 |
米国 |
5,809 |
103.0 |
397 |
135.1 |
合計 |
50,786 |
101.8 |
2,587 |
112.8 |
(注) 金額は販売価格で表示しております。
d.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2018年10月1日 至 2019年9月30日) |
前年同期比(%) |
日本 (百万円) |
36,945 |
102.4 |
アジア (百万円) |
7,841 |
97.5 |
米国 (百万円) |
5,706 |
101.7 |
合計 (百万円) |
50,493 |
101.5 |
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであり、原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容であります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。
当社グループの連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績
(売上高)
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 a.経営成績の状況」に記載のとおりであります。
(営業利益)
売上原価は前連結会計年度に比べ754百万円増加し、31,373百万円となりました。また、販売費及び一般管理費は前連結会計年度に比べ367百万円増加し、14,441百万円となりました。
これらの結果、営業利益は前連結会計年度に比べ379百万円(7.5%)減少し、4,678百万円となりました。
(経常利益)
経常利益は、営業利益の減少を主因に前連結会計年度に比べ337百万円(6.1%)減少し、5,175百万円となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
特別利益は、投資有価証券の売却益を計上したことを主因として、前連結会計年度に比べ2,601百万円増加し、2,665百万円となりました。特別損失は、米国子会社FLAVOR INGREDIENT HOLDINGS, LLCに係るのれん等に関する減損損失を計上したことを主因として、前連結会計年度に比べ2,321百万円増加し、2,376百万円となりました。
税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度に比べ56百万円減少し、5,464百万円となりました。税金費用は、前連結会計年度に比べ77百万円減少し、1,343百万円となりました。
これらの結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ20百万円(0.5%)増加し、4,121百万円となりました。
b.財政状態
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 b.財政状態の状況」に記載のとおりであります。
c.キャッシュ・フローの状況
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
d.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループでは、中期3ヵ年経営計画(連結)(毎期見直しを行うローリング方式)を定め、会社として達成すべき目標を明確にしております。2019年9月期におきましては、売上高52,200百万円、営業利益5,500百万円、経常利益5,900百万円、親会社株主に帰属する当期純利益4,300百万円の計画を掲げ、その実現に取り組んでまいりました。
その結果、前連結会計年度比では売上高が増加しましたが、計画比では、当社製品採用商品の販売不振等により、中国子会社の売上高が想定を下回ったことを主因に、売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益が計画を下回る結果となりました。
今後も厳しい経営環境が続くことが見込まれますが、当社グループは、「技術立社」の社是のもと、研究・技術開発力の向上により特長のある差別化された製品開発を行うとともに、生産性の向上や業務全般の効率化によるコスト削減に努めてまいります。また、少子高齢化に伴う成熟化が進行する国内市場でのシェア拡大に努める一方で、中国、東南アジアを中心としたアジア地域及び米国において、グローバル展開を更に強化し、海外市場での業績拡大を目指してまいります。
e.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、持続的・安定的な発展を通じて中長期的な企業価値の向上を実現していくために、必要かつ可能な範囲を意識して、連結売上高伸長率5.0%以上、連結売上高営業利益率14.0%以上、連結売上高経常利益率15.0%以上を目標としております。
当連結会計年度の連結売上高伸長率は、当社及び米国子会社のフレーバー部門の売上が増加したことを主因に、1.5%となりました。また、売上原価率の悪化、並びに販売費及び一般管理費の増加を主因に連結売上高営業利益率は、前連結会計年度比0.9ポイント悪化の9.3%、連結売上高経常利益率は、前連結会計年度比0.8ポイント悪化の10.3%となりました。当連結会計年度は、各指標において目標未達となりましたが、引き続き、これらの指標を向上させるべく努めてまいります。
なお、当連結会計年度を含む、直近3連結会計年度の代表的な指標の推移は以下のとおりです。
(単位:%)
|
2017年9月期 |
2018年9月期 |
2019年9月期 |
連結売上高伸長率 |
0.9 |
3.6 |
1.5 |
連結売上高営業利益率 |
11.7 |
10.2 |
9.3 |
連結売上高経常利益率 |
12.7 |
11.1 |
10.3 |
f.経営成績に重要な影響を与える要因
「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
g.資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、事業活動及び設備投資のための適切な資金確保を常に目指しており、その財源として安定的な営業キャッシュ・フローの創出を重視しております。
当連結会計年度末の資金の流動性は十分に確保されていると認識しており、また、金融機関との間にコミットメントラインを設定することで、急な資金需要や不測の事態にも備えております。
該当事項はありません。
当社グループの研究開発活動は、当社の総合研究所を中心に推進しております。香料開発及び香料の機能、付加価値の研究を行う香料基盤研究所、香料素材及び食品素材の開発を行う技術研究所、並びに製品化のための調香研究と顧客商品への応用研究を行うフレーバー研究所及びフレグランス研究所の4研究所を総合研究所の傘下に配置し、各研究所が相互に連携することで、研究・技術開発力の一層の向上を図っております。また、米国、中国及びマレーシアの子会社研究部門とも連携を深め、日本で培った技術を海外でも応用し、多様化・高度化する顧客の要望に当社グループ全体で即応できる体制を整えております。
当社グループは、研究開発活動においても、「香料の安全性」と「環境保全(サステナビリティ)」に十分に配慮し、コンプライアンス(法令順守)を徹底しております。
なお、当社は、研究開発活動の更なるスピードアップを目的に、2019年10月に組織体制の見直しを行い、技術研究所、フレーバー研究所及びフレグランス研究所の3研究所体制に移行しております。
当社グループは、各種香料の製造・販売を事業内容とする単一セグメントであるため、以下部門別に研究開発活動の概要を記載しております。
(1) フレグランス部門
国内の香粧品香料市場は今や成熟期にあり、国内外の香料メーカー間の競争は一段と厳しさを増し、また資源環境の変化による原材料の高騰等にも直面しております。
このような状況下において、安全、品質、環境問題を最優先しつつ調香技術の更なる向上に努め、顧客と一体になって研究開発を行ってきました。持続性、拡散性のある香りについての研究、調香技術のみならず分析技術、合成技術をも活用した完成度の高い香料の開発、アプリケーション面での新しい製品形態の提案、嗜好性やマーケティング調査からの顧客ニーズの確実な把握、コスト低減に係る研究などに取り組みました。その結果、数多くの製品が国内外の顧客より採用されました。
また、グローバル化を推進する中で、海外各国・各地域の市場調査等を踏まえた技術支援を更に強化し、新規顧客の獲得に全力をあげております。
中国子会社の長谷川香料(上海)有限公司では、多様化する顧客ニーズに応えるため、調香研究部門に加え、官能評価、応用研究の強化を進めております。
(2) 食品(フレーバー)部門
フレーバー市場では国内外の香料メーカー間の競争が一段と激しくなっております。また、顧客の商品のライフサイクルも短くなっております。
こうした状況下において、生活様式の多様化や嗜好の変化を的確に捉えるとともに、顧客のニーズに即応すべく、顧客と一体となった研究開発を行ってきました。また、より天然に近い香りのフレーバー、あるいは各種抽出技術や加工技術を駆使した新しい香料素材やコクを付与する香味アップ素材を組み合わせたフレーバーを研究開発し、これらについて顧客へ積極的なプレゼンテーションを行い、顧客のニーズに応えてきました。更に、フレーバーの新用途に関する研究開発を行い、その結果、国内外の顧客の主要な新製品に当社製品が採用されるという成果をあげました。
また、グローバル化を目指す中で、各国のユニークな嗜好に合ったフレーバーの開発及び顧客の商品への応用研究を行うとともに、海外子会社並びに各国代理店に対する技術支援の強化を図り、顧客からの当社製品の採用を着実に増やす成果をあげております。
米国子会社のT. HASEGAWA U.S.A., INC.の研究部門においては、顧客の商品への応用研究を拡充し、新規顧客の獲得に成果をあげております。長谷川香料(上海)有限公司では、顧客のニーズに応えるため、調香研究部門、応用試作部門並びに基礎研究部門の強化・拡充を進めております。マレーシア子会社のT HASEGAWA FLAVOURS (KUALA LUMPUR) SDN. BHD.では、主要な商材である粉末シーズニングに加え、調合香料をアジア各国で拡販するため、引き続き研究開発体制の強化を進めております。
(3) 基礎研究部門(フレグランス部門・食品部門共通)
①合成香料の研究
当社のフレグランス製品及びフレーバー製品の香調を特徴づける合成香料の開発並びに既存製品の製造工程の合理化を目的とした製法改良と環境保全(サステナビリティ)に配慮した香料の製法開発を行いました。
②天然物に関する研究
種々の香気捕集方法及び最新の分析機器を駆使して、香気分析手法を開発し、微量香気成分の分析精度向上を図ることで、多くの有用な天然物の香気成分組成を明らかにし、香料開発に応用しました。また、天然の香味をそのままに活かす抽出技術によるナチュラルフレーバー素材の開発を進めるとともに、天然由来の素材として天然色素、天然抗酸化物質やその他機能性食品素材の開発を行いました。一方、フルーツ加工製法やフルーツ加工に適合したフレーバーの開発をフレーバー研究所と連携して継続しました。
③ライフサイエンス・バイオテクノロジーの研究
頭部血流、筋電位、呼吸などの計測によるヒトの生理応答測定、及び官能評価による香料評価系の開発を継続しました。また、酵素の開発を含む微生物や酵素の基礎的研究、並びにその利用により香味強化素材物質等の開発を継続しております。
④その他香料開発に関する研究
香料の用途に適した乳化、粉末化等の形態化技術による付加価値の高い香料製品の研究開発や香料製造における工程改良による合理化を継続するとともに、市場のニーズに即した安全性の高い、新しい食品素材の開発も行いました。
当連結会計年度における研究開発費は総額で
また、2019年9月30日現在における当社グループの研究員の数は353名でありますが、そのセグメント別の内訳は、日本 251名、アジア 82名、米国 20名であります。