第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

 

(1) 経営方針

当社グループは創業以来、各取引先からの「信頼」を得て、企業活動を通じ社会に「貢献」することを企業理念として掲げ経営に取り組んでまいりました。今後も、創立80周年に向けて、環境・エネルギーに強い機械総合商社としての地位確立を目指してまいります。

長年にわたり培ってきた機械商社の経験・実績を活かして、エネルギー・グローバルビジネスを伸ばし、新規事業との相乗効果で、環境の変化に柔軟に対応し得る企業として更なる成長を実現してまいります。

 

(2) 経営環境と事業上および財務上の対処すべき課題

当社グループにおいては、一部販売活動が制限されるなどの影響が出ているものの、新型コロナウイルス禍が2022年3月期の業績に与える影響は軽微でありました。

(電力事業)

当社グループの事業の中心である電力業界は、国際的な脱石炭・脱CO2の流れに沿い、火力発電の高効率化など低炭素化と電力の安定供給に総力を挙げて対応してまいります。加えて、政府の電源構成計画や2050年カーボンニュートラル宣言を踏まえ、バイオマス等再生可能エネルギー分野への展開を積極的に進め、新たな収益の柱として引き続き注力してまいります。

 

(環境・化学・機械事業)

環境分野への取組みの一環として、自社売電・発電所建設工事請負、また、FIT後に向けた発電所の保守メンテナンスやPPAをはじめとした取引先への再エネ活用提案など、太陽光発電関連ビジネスを積極的に推進します。また、化学業界や自動車業界をはじめとした製造業のユーザーに対し、労働人口の減少やコロナ禍の影響で高まっている省人化やDXに関連するニーズの取り込みに努めてまいります。加えて、中国、アセアン地域、北中米、欧州といった海外拠点を積極的に活用し、国内外における生産拠点設立・設備投資の需要に応えてまいります。

 

(生活産業事業)

植物由来ポリエチレンを含有した包装資材などの環境にやさしい原料を用いた商品のラインナップ強化および節水型トイレ自動流水器の拡販等、SDGsの達成を意識した活動に取り組んでまいります。

上記事業と並行して、企業買収による商圏や取扱商品の拡大等、今までの事業領域にとらわれない新規事業を開拓してまいります。

 

(財務上の対処すべき課題)

各事業の持続的な成長と競争力強化には株主資本の有効活用等資本効率の向上が不可欠であり、2020年4月よりスタートした中期経営計画において設定した資本効率の目標値達成に向けて取り組んでまいります。

これらの課題につきましては、中期経営計画を推進するプロセスにおいて対処してまいります。

 

(3) 中期経営計画

当社グループは2020年3月期において2017年に策定した長期計画の第一フェーズである3ヵ年計画を完了し、第二フェーズとして新たに策定した3ヵ年中期経営計画を公表いたしました。

なお、中期経営計画の最終年度にあたる2023年3月期における各経営指標の目標値は、①売上高1,350億円(注)、②営業利益37億円、③親会社株主に帰属する当期純利益27億円、④ROE9.0%以上であります。

今後は、新中期経営計画第二フェーズの達成に向け、以下の5つの成長戦略

 

① 地球環境とエネルギーミックスへの対応拡大

SDGs達成も意識しつつ、エネルギーミックスを通じた電力の安定供給に資するべく、一気通貫的なエネルギー事業に積極的に取組む

② モノづくり・デジタルイノベーションへの取組強化

IoT・ロボット活用・5Gなど製造業の技術革新やスマートファクトリーへの対応、次世代モビリティ技術への積極的関与ならびにデジタル技術を使用したビジネスの創出と強化

③ 新規事業創出の継続

機械商社の強みは残しつつ、M&Aによるメーカーの取込みなど川上からコントロールする体制を構築するなどし、新規事業の発掘・開拓に取組む

④ グローバルビジネスの更なる展開

海外顧客基盤の更なる拡充と、良質な海外製品の展開力強化、ならびにODA(政府開発援助)等海外インフラ案件にも引き続き参画

⑤ 働き方改革への対応と人財の育成

採用の強化・OJTの充実を通じた人材の早期戦力化・グローバル化・マルチタレント化を推進すると同時に業務の電子化・効率化を図り、働き方の多様化への対応

を着実に実行することにより、業績の拡大を推進するSDGsを意識した持続的な発展と企業価値のさらなる向上を図るべく、今後ともコーポレートガバナンスの強化に努めてまいります。

 

(注)2022年3月期の期首より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)等を適用し、顧客への商品の提供における当社の役割が代理人に該当する取引について、従来は顧客から受け取る対価の総額を収益として認識しておりましたが、顧客から受け取る額から商品の仕入先に支払う額を控除した純額で収益を認識する方法に変更いたします。
 上記の2023年3月期の連結売上高の目標値は、当該基準適用前の金額となっており、適用前後で比較しますと、以下の通りとなります。なお、営業利益・親会社株主に帰属する当期純利益への影響はございません。

 

連結売上高の目標値

2023年3月期(適用前)

1,350億円

2023年3月期(適用後)

900億円

 

 

(4) 中期経営計画における資本政策

(基本方針)

・当社は、中長期的な株主価値の向上のために、「持続的成長に向けた投資の継続」と「株主への安定的な利益還元」をテーマに資本政策を進めてまいります。

・株主資本の有効活用を図る経営指標のひとつとして、株主資本当期純利益率(ROE)の目標値を設定します。

・安定配当は、当社を取り巻く事業環境の見通し、業績見込み、財務状況等を総合的に勘案の上、配当性向30%超の継続に努めます。

・今後も株主への利益還元と会社の成長のバランスを最適化し、中長期的な株主価値の向上を目指してまいります。

 

(目標数値)

・中期経営計画最終年度となる2022年度にROE9.0%以上。

・2026年度までにROE10.0%。

 

(投資方針について)

・当社事業ポートフォリオにおいて、電力事業の大きな割合を占める火力発電設備の保守・メンテ需要は、世界的な温室効果ガス削減の潮流から今後減少していくことが見込まれます。それを補完するため、国の定める長期エネルギー需給見通しに沿った、太陽光発電・バイオマス発電等再生可能エネルギー関連への投資を注力してまいります。具体的には、自社での太陽光発電所運営やバイオマス関連事業への出資等がこれにあたります。

・このほか、廃プラスチック問題への対応として、環境配慮型包装資材の拡販や、循環社会に適応した廃プラの資源化へも積極的に関与していきます。これら事業を通じ、SDGsへの取り組みを加速させます。

・また、販売・製造業問わず、時代に合った商品のラインアップ・顧客基盤・ビジネスエリアの拡充を図るため、資本提携やM&Aなども積極的に進めてまいります。

・これら新事業への投資については適切にリスクをコントロールしながら、持続的成長に向け継続的に行ってまいります。既存ビジネスの成長を組み合わせることにより、更なる収益率の向上を図ります。

 

(政策保有株式について)

・資本効率の向上を図るため、政策保有株式の縮減にも引き続き取り組んでまいります。

2022年3月期においては、相互保有株式の一部縮減を実施しております。また2021年7月から2022年1月にかけて10億円の自己株買いを実施しております。引き続き持ち合い解消による当社株式の受け皿として個人投資家および外国人投資家への訴求を高めるため、政策保有株式の売却を原資とした自己株買いなどについて検討してまいります。

 

(5) サステナビリティへの取り組み

 当社は、サステナビリティ経営を推進することにより、当社グループの持続的成長と企業価値の向上を図るため、取締役会において「サステナブル行動指針」と「人材方針」を策定・決議しています。

 

(東京産業株式会社 サステナブル行動指針)

 東京産業グループはサステナビリティ経営を実行することにより、持続的な成長と企業理念である「信頼と貢献」を実践してまいります。

 その中で、SDGs達成に向けた取り組みを積極的に推進し、変化の激しいビジネス環境へ柔軟に対応することにより「環境・エネルギーに強い機械総合商社」という地位の確立を目指します。

 

具体的には、サステナビリティ経営に向け取締役会にで特定したマテリアリティ(重要課題)への対応策を実行してまいります。また、このような当社のサステナビリティ経営に関する目標や取り組みについて適切に開示し、様々なステークホルダーに対して説明責任を果たしてまいります。

 

(当社のサステナビリティ経営に向けたマテリアリティ(重要課題))

「サステナブル行動指針」にもとづき、当社のサステナビリティ経営に向けたマテリアリティ(重要課題)を以下のとおり取締役で特定しております。

 (重要課題)

 ・「事業を通じたグリーン社会」実現への取り組み

 ・「社会と調和する多様な働き方」への積極的な対応

 ・「コーポレートガバナンスの強化」

 

(サステナビリティ経営の具体的取り組み)

 当社は上記マテリアリティ(重要課題)に対する具体的な取り組みについて、中期経営計画にて掲げる5つの成長戦略を通じ実施しております。また、サステナビリティ課題への取り組みを推進・監督するため、サステナビリティ推進担当役員およびサステナビリティ推進チームを設置しております。サステナビリティ推進担当役員は、取締役会へ当社のサステナビリティ経営の状況を定期的に報告しております。

 

(人財方針)

 東京産業グループは人が財産との認識の下、成長を続ける強固な組織を目標に掲げ、人財の「早期戦力化」、「グローバル化」、「マルチタレント化」を3つの柱とする人的投資を積極的に実行してまいります。

 

「ダイバーシティ」と「働き方改革」対応を人財にかかわる重要課題と定め、企業理念に基づき、従業員の多様性と人権を尊重することで、イノベーションの創出、ひいては企業価値向上を目指してまいります。また、多様な働き方を提供できる環境整備、社内DXおよび健康的な職場作りを強力に推進してまいります。

 

(6) TCFDに基づく情報開示

(ガバナンス)

(a) 気候変動のリスクと機会に関する取締役会の監督

取締役会はサステナブル行動指針に基づいたサステナビリティ経営の推進状況について、サステナビリティ推進担当役員から定期的に報告を受けることとなっており、気候変動のリスクと機会に関しても、サステナビリティ推進担当役員から、その内容や対応策について適宜報告を受け、必要に応じて取締役会は当社の経営会議である本部長会と連携して対応策を講じる体制となっております。

(b) 気候変動リスクをマネジメントするための組織のプロセス

気候変動のリスクと機会のうち、特に移行リスクへの対応は当社の中期経営計画の達成に密接に関連することから、本部長会の中からサステナビリティ推進担当役員を選任し、その責任において気候変動のリスクと機会の特定作業や対応策の策定・実行を行っています。

 

(リスクマネジメント)

(a+b) 気候変動リスクの識別・評価・マネジメントに関する組織プロセス

気候変動のリスクと機会はサステナビリティ推進チームメンバーを中心に識別・評価を実施しております。

サステナビリティ推進チームは当社の各本部毎に主管部長と選抜された社員で構成されており、全社的な気候変動のリスクと機会を適切に識別・評価できる体制を整えています。

識別・評価された気候変動のリスクと機会は、サステナビリティ推進担当役員とサステナビリティ推進チームの協議の中で、中期経営計画との関連性の精査・対応策の検討を行い、本部長会を経て取締役会へ報告し、全社においてその対応策を実施してまいります。

 

(戦略)

(a) 組織が特定した、短期・中期・長期の気候変動のリスクと機会

当社が識別している気候変動のリスクと機会は以下の通りです。


 

 

2 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避に努める仕組み作りを行っております。そのため、「内部統制システム整備の基本方針」を定め、コンプライアンス委員会を中心にコンプライアンス・環境、品質、情報セキュリティおよび輸出管理等に関するリスクの発生の未然防止に努める他、取締役会および取締役会から移譲された権限の範囲内で業務の執行および施策の実施等について審議、意思決定を行う本部長会が「職務決裁基準表」に基づき適切なリスク管理に努めております。また災害等の緊急事態が発生した場合には、社長指揮下の災害対策本部を設け迅速かつ適切に対応する所存であります。

本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

なお、以下は、当社グループの全てのリスクを網羅したものではなく、事業等のリスクはこれらに限定されるものではありません。

 

(1)国内外の経済環境の変化によるリスク

当社グループの取扱商品は、国内外の経済情勢や景気動向により、需要の減退や需給バランス悪化による価格の騰落等を受ける可能性があります。当社グループでは、これら経済環境の変化による影響を最小限にとどめるため、常に高い技術力を持つメーカーやオンリーワンの商品・サービスの発掘、資本提携やM&Aなど中期経営計画に従い商品のラインアップ、顧客基盤・ビジネスエリアの拡充や補完などに努めておりますが、これら商品の需要減退、価格騰落は当社の業績と財務状況に悪影響を与える可能性があります。

 

(2)同一仕入先あるいは少数の販売先への取引の依存によるリスク

当社グループは創業以来三菱グループの一員として、グループ各社、とりわけ三菱重工業㈱、三菱電機㈱の製品を国内外の産業界に納入、販売してまいりました。特に、電力事業セグメントでは電力業界向けに代理店的立場で発電プラントの納入、修繕業務に携わってまいりました。また、三菱重工業㈱向けに産業設備、機器の販売を行っております。電力事業セグメントにおける売上高の比率は収益認識基準適用により低下したものの、事業の実態は変わらず、依然として依存度の高い事業であります。したがって、今後の電力業界の設備投資動向、また、メーカーの販売政策によっては当社グループの業績に大きな影響を与える可能性があります。

今後もこれら事業は当社グループの中核を担うと考えておりますが、特定の取引先への依存を解消するために、中期経営計画に従い商品のラインアップ、顧客基盤・ビジネスエリアの拡充や補完などに努めてまいります。

 

(3)取引先への信用供与に関するリスク

当社グループは取引先に対し売上債権、前渡金、未収入金、貸付金、保証その他の信用供与を行っており、取引上の与信については「商品取引規定」を設け、段階的な裁量区分を明確化し、経理部が運用関知をするほか、その他の信用供与についても「職務決裁基準表」に基づき適切なリスク管理を行っております。長期未収入金は返済計画や担保資産に基づき、回収可能性を検討しております。しかしながら、これら取引先が支払不能に陥るリスクは完全に排除することはできません。これらリスクが顕在化した場合は当社グループの業績と財務状況に悪影響を与える可能性があります。

 

(4)売上計上予定時期の変更及び業績の期末偏重に関するリスク

当社グループの売上高の計上時期は、顧客の検収時期等により変動するため、当初の予定時期から変更される場合があります。特に大口の機械又は設備の納入案件及び工事案件については、中間期末である9月もしくは年度末となる3月に納入時期が集中する傾向にあります。当該期末に納入を予定していた案件の納入時期や顧客の検収時期が、何らかの理由により翌期以降に変更となった場合は、計画未達など当社グループの当該期の業績に悪影響を与える可能性があります。

 

(5)製品およびサービスの品質管理に関するリスク

当社グループの提供する製品およびサービスはその欠陥が原因で生じた損失に対する責任を追及される可能性があります。当社グループは仕入先との連携を密に行い品質管理の徹底を図るとともに、必要に応じPL保険の付保や新たに締結する契約書について責任範囲を明確化するなどの対策を行っておりますが、その欠陥が販売先に深刻な損失をもたらす場合など、製品またはサービスの欠陥が原因で生じた損失に対する責任を当社グループに対し追及された場合、さらに製品またはサービスに欠陥が生じたことにより当社グループの社会的評価が低下した場合は、当社グループの販売製品およびサービスに対する顧客の購買意欲が低減する可能性があります。これらの場合、当社グループの業績と財務状況に悪影響を与える可能性があります。

 

(6)自然災害などに関するリスク

当社グループは、大規模な地震やその他の自然災害、感染症のパンデミック、テロ・暴動その他予期せぬ事態が発生した場合、当社グループの事業および販売活動の継続が困難となる可能性があります。当社グループでは社員安否確認システムの導入、事業用設備に対する保険加入、バックアップオフィスの設置、防災訓練および必要物資の備蓄など、災害に備える対策を講じておりますが、災害の種類や被害の規模によっては当社グループの業績と財務状況に悪影響を与える可能性があります。

なお、当社グループの気候変動リスクについては「第2 事業の状況  1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (6) TCFDに基づく情報開示」欄に記載しております。

 

(7)新型コロナウイルス感染症蔓延によるリスク

世界的な新型コロナウイルス感染症の流行に対し、各国政府が行った措置により、当社グループの事業にかかわる国内外の物流や、取引先の生産体制へ多大な影響が出ており、当社グループにおいても一部販売活動が制限されるなどの影響が出ております。当社グループでは政府や都道府県の指針に従い、在宅勤務や時差出勤の実施など感染拡大防止策の徹底に努めております。また国内外よりマスク・消毒液等を手配し社員や取引先へ提供を行っております。しかしながら今後、事態の長期化や更なる感染拡大が進行する状況になった場合、世界的な景気の悪化による需要減退、もしくは事業の遂行、取引の継続に支障が生じるなどの要因により、当社グループの業績と財務状況に悪影響を与える可能性があります。

 

(8)競合に関するリスク

当社グループの取扱商品の市場は、競争的な環境にあります。当社グループは長年にわたり培ってきた事業に留まらず、新規事業との相乗効果で収益力を向上させ、商品販売における競争力を維持する方針ですが、新規事業者の参入や低価格競争の激化などの要因によって当社の競争力が低下し、当社グループの業績と財務状況に悪影響を与える可能性があります。

 

(9)事業投資などに関するリスク

当社グループは、持続的成長と収益率向上を図るためM&Aや関係会社設立などの事業投資を行っております。

これら事業投資の実行および投資実行後の案件管理にあたっては事業投資方針など社内規定に基づき、適正にリスクを管理しております。しかしながら、これらの事業の進展は当該事業パートナーの業績や財政状態といった当社グループが制御しえない要因による影響を受けるなど、その予測が困難なことがあります。その結果、当社が重大な損失を被る可能性があり、当社グループの業績と財務状況に悪影響を与える可能性があります。

 

(10)発電事業に関するリスク

当社グループは太陽光発電などの再生可能エネルギー発電事業を行っております。これらの事業はFIT(固定価格買取制度)や国のエネルギー政策の見直し・電力会社による出力抑制など法律・規制の大幅な改定および地震・台風などの自然災害などによる発電用事業設備の故障・損壊により事業の継続が困難になる、もしくは採算が大幅に悪化する可能性があります。風水害に強い事業用地の選定、発電用事業設備に対する保険加入、発電設備の適切な管理などの対策を講じておりますが、当社グループが制御しえない要因により発電事業の継続が困難になる、もしくは採算が大幅に悪化した場合、当社の業績と財務状況に悪影響を与える可能性があります。

 

(11)カントリーリスク

当社グループは世界各国との間で商品の輸出入などの事業を展開しており、当社グループでは担当部署を中心に現地の情報収集に努めておりますが、これらの事業はその国の政治的・経済的変動、法律・規制の大幅な改定、テロ・戦争の勃発あるいは感染症の発生などに起因するカントリーリスクの影響で当該国における事業および取引の継続が困難となり、当社グループの業績と財務状況に悪影響を与える可能性があります。

また、原油価格の上昇や資源価格の高騰により、原材料の安定的な調達が困難になったり、著しく価格が上昇した場合には、当社の経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

ロシア・ウクライナ情勢について、現時点において当社グループは同地域に拠点を有しておらず同地域における事業も行っておりませんが、今後事態の悪化や長期化などにより、ヨーロッパ及びその他地域の仕入先もしくは販売先の事業に影響を及ぼす物価の高騰、物流の混乱や為替への影響等が生じた場合、当社グループの業績と財務状況に悪影響を与える可能性があります。

 

 

(12)為替リスク

輸出入取引を行うことから生じる外貨建営業債権債務は、為替の変動リスクがあります。これらの為替の変動リスクを軽減するため先物為替予約等の通貨関連デリバティブ取引を行っておりますが全てが回避される保証はありません。

為替の急激な変動は当社の業績と財務状況に悪影響を与える可能性があります。

 

(13)訴訟等に関するリスク

当社グループが事業活動を展開するなかで、知的財産権、納入者責任、労務等様々な訴訟の対象となるリスクがあります。当社では企画本部内に法務審査部を設置するほか、コンプライアンス委員会のもとにコンプライアンス協議会を設置し、これらリスクの発生の未然防止に努めておりますが、重大な訴訟が提起された場合、当社グループの業績と財務状況に悪影響を与える可能性があります。

 

(14)法規制に関するリスク

当社グループの事業には、建設業法・下請法、外国為替および外国貿易法、輸出貿易管理令等または環境関連法令などの各種法規制等が適用されております。当社グループでは当社の企画本部内に法務室の設置、コンプライアンス委員会のもとにコンプライアンス協議会を設置し「役職員行動規範」をもとに法令遵守に取り組むなど、これらリスクの発生の未然防止に努めております。しかしながら、これら法規制等の改正や新たな法規制が設けられた場合、またはこれらの法規制に抵触した場合は、当社グループの事業および取引の継続が困難となり、当社グループの業績と財務状況に悪影響を与える可能性があります。

 

(15)投資有価証券等の価値変動リスク

当社グループは運用目的または事業の遂行上、取引先等へ投資をすることがあります。これら投資資産の保有にあたっては有価証券運用規定、事業投資にあたっては事業投資方針などの社内規定に基づき、段階的な裁量区分を明確化するほか、その運用・投資状況について定期的に取締役会等に報告を行い、その必要性と保有のリスクを勘案し保有継続、処分の判断を行っております。しかしながら、投資先の財務状態の悪化、株式市況の下落によって当社グループの業績と財務状況に悪影響を与える可能性があります。

 

(16)退職給付債務に関するリスク

当社グループの従業員退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づいて算出されております。実際の結果が前提条件と異なる場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。当社の年金資産の運用については本部長会での決定を基に、国内の運用機関へ委託しております。また年金資産の運用に関する基本方針を作成しており、各運用受託機関はその基本方針を遵守した年金資産の運用、管理を行っております。当社は運用受託機関から運用状況に関する報告を受け財務・人事の専門性を有した当社グループ役職員がその内容を精査することで年金資産の運用を適切に管理しております。しかしながら、割引率の低下や運用利回りの悪化は当社グループの業績と財務状況に悪影響を与える可能性があります。

 

(17)金利に関するリスク

当社グループは各事業の必要資金のうち特に事業投資に関するものの一部を、金融機関からの借入により調達しており、将来的な資金需要に応じて今後も金融機関からの借入や社債発行等による資金調達を行う可能性があります。当社グループでは、資金使途や期間に応じて金利動向を踏まえた適切な調達を、取締役会の決定により行っております。今後、市場金利が上昇した場合など資金調達の条件が大幅に変動した場合、当社グループの業績と財務状況に悪影響を与える可能性があります。

 

(18)情報セキュリティに関するリスク

当社グループは日々の企業活動の収集、蓄積、処理等の情報共有や業務の効率化のため、情報システムを構築・運用しており、情報システム運営上の安全確保のため、情報管理に関する規定を定め、危機管理対応の徹底に取り組んでおりますが、外部からの予期せぬ不正アクセス、コンピューターウィルス侵入等による企業機密情報・個人情報の漏洩、さらには、自然災害、事故等による情報システム設備の損壊や通信回線のトラブルなどにより情報システムが不稼働となる可能性を完全に排除することはできません。このような場合は、システムに依存している業務の効率性の低下を招くほか、被害の規模によっては、当社グループの経営成績と財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

(19)工事案件による売上高に関するリスク

一定の期間にわたり充足される履行義務のうち、工事案件による売上高は、進捗部分について成果の確実性が認められる工事契約に適用されますが、適用にあたっては「工事収益総額」、「工事原価総額」、「決算日における工事進捗度」を合理的に見積もる必要があります。工事原価総額の見積りの基礎となる進捗管理表の作成にあたっては、完工に必要となる全ての作業内容が特定されており、原材料の高騰や仕様の変更等、工事着工後の状況の変化による作業内容の変更に係る見積原価が適時適切に反映されているか、工事の作業実績が発生実績として全て集計され、適切な工事進捗率となっているか、工事収益総額を構成する対価の定めが当事者間で実質的に合意されているか等の一定の不確実性を伴います。これらの経営者による判断が当連結会計年度末における工事収益の計上金額及び工事原価総額の見積りに影響を与える可能性があります。

 

(20)法令等の遵守とレピュテーションリスクについて

当社グループは、「内部統制システム整備の基本方針」に基づくコンプライアンス経営の徹底を行っております。しかしながら、役職員による不正や企業不祥事等が発生した場合、顧客からの信頼喪失による事業上の影響ならびに不正等による直接的な損害が生じる等、当社グループの経営成績と財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を当連結会計年度の期首から適用しております。この結果、当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度と比較して大きく減少しており、以下の経営成績に関する説明の売上高については、増減額及び前期比(%)を記載せずに説明しております。

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の実施が長期間に亘り継続したことにより、国内消費は大きく停滞しました。年度末には重点措置の解除やワクチン接種率の上昇によって、緩やかながら回復傾向が見られましたが、米国の金利上昇に伴う円安やウクライナ情勢の緊迫化による物価上昇などから、景気の先行きは極めて厳しい状況となりました。

こうした情勢のもと、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ151億25百万円増加し、909億1百万円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ152億98百万円増加し、641億6百万円となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ1億73百万円減少し、267億95百万円となりました。

 

b.経営成績

当連結会計年度における売上高は、558億87百万円(前連結会計年度は1,130億30百万円)となりました。売上総利益は79億94百万円(前期比3.6%増)、営業利益23億28百万円(前期比22.8%増)、経常利益25億19百万円(前期比16.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は11億45百万円(前期比37.5%減)となりました。

売上高のセグメント別構成は、電力事業15.2%、環境・化学・機械事業77.5%、生活産業事業7.3%となりました。

 

セグメントごとの経営成績を示すと、次のとおりであります。

なお、前連結会計年度において「その他」に含まれていた不動産賃貸事業は、不動産の売却に伴い、当連結会計年度より「その他」の区分を廃止しております。

 

電力事業

売上高は85億17百万円(前連結会計年度は644億80百万円)となりました。また、大口の発電所向け案件の引渡しが堅調に推移し、セグメント利益は12億39百万円と、前連結会計年度に比べ4億94百万円の増加となりました。

 

環境・化学・機械事業

売上高は433億8百万円(前連結会計年度は429億円)となりました。また、大口太陽光EPC案件の引渡しや自社所有設備での売電事業が堅調に推移したため、セグメント利益は11億38百万円と、前連結会計年度に比べ1億8百万円の増加となりました。

 

生活産業事業

売上高は40億60百万円(前連結会計年度は55億54百万円)となりました。また、感染症拡大防止に伴う外出自粛やレジ袋有料化による包装資材の需要減少を受け、セグメント損失は49百万円と、前連結会計年度のセグメント利益75百万円に比べ1億24百万円の減少となりました。

    (単位:百万円)

セグメント売上高

2021年3月期

(前連結会計年度)

2022年3月期

(当連結会計年度)

電力事業

64,480

8,517

環境・化学・機械事業

42,900

43,308

生活産業事業

5,554

4,060

その他

94

113,030

55,887

 

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ5億56百万円減少し、84億81百万円となりました。

(イ)営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動の結果、減少した資金は13億5百万円となりました。主な資金の増加要因としては、契約負債の増加額126億35百万円であり、主な資金の減少要因としては、前渡金の増加額111億79百万円、売上債権の増加額34億2百万円であります。

(ロ)投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動の結果、減少した資金は10億7百万円となりました。収入の主な内訳は、投資有価証券の売却及び償還による収入12億91百万円であり、支出の主な内訳は、関係会社貸付けによる支出10億92百万円、有形固定資産の取得による支出8億56百万円であります。

(ハ)財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動の結果、増加した資金は11億84百万円であります。収入の主な内訳は、短期借入れによる収入239億円であり、支出の主な内訳は、短期借入金の返済による支出214億円であります。

 

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

該当事項はありません。

 

b.受注実績

当連結会計年度におけるセグメントごとの成約状況は、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

成約高(百万円)

前年同期比(%)

契約残高(百万円)

前年同期比(%)

電力事業

8,099

4,992

環境・化学・機械事業

27,154

72,378

生活産業事業

5,096

2,726

合計

40,349

80,097

 

(注) 1.当社グループの受注実績の大半が提出会社によるものであるため、上記の金額は提出会社単独の金額を記載しております。

.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。

  成約高及び契約残高に大きな影響が生じるため前年同期比は、記載しておりません。

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

c.販売実績

当連結会計年度におけるセグメントごとの販売実績は、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

電力事業

8,517

環境・化学・機械事業

43,308

生活産業事業

4,060

合計

55,887

 

(注) 1.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。

     販売実績に大きな影響が生じるため前年同期比は、記載しておりません。

2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

東北電力㈱

29,746

26.3

113

0.2

㈱そら'p

2,935

2.6

7,115

12.7

 

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたり、連結決算日における資産・負債の報告数値、報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積りは、主に履行義務を充足するにつれて一定の期間にわたり収益を認識する工事案件に関連する工事原価総額の見積り、貸倒引当金、賞与引当金及び法人税等であり、継続して評価を行っております。なお、見積り及び判断・評価については、過去実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果とは異なる場合があります。

なお、新型コロナウイルス感染拡大防止のための各国政府が行った措置により、当社グループの事業にかかわる国内外の物流や、取引先の生産体制へ多大な影響が出ています。このような状況下で、新型コロナウイルス禍の影響等の不確実性が大きく、将来の業績予想等に反映させることが難しい要素もありますが、現時点において入手可能な情報を基に検証等を行っております。

連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目は下記の通りです。

履行義務を充足するにつれて一定の期間にわたり収益を認識する工事案件に関連する工事原価総額の見積りについては、「(重要な会計上の見積り)1.履行義務を充足するにつれて一定の期間にわたり収益を認識する工事案件に関連する工事原価総額の見積り」をご参照下さい。

特定の仕入先に対する長期未収入金の回収可能額の見積りについては、「(重要な会計上の見積り)2.特定の仕入先に対する長期未収入金の回収可能額の見積り」をご参照下さい。

特定の太陽光発電案件に係る仕掛品の正味売却価額の見積りについては、「(重要な会計上の見積り)3.特定の太陽光発電案件に係る仕掛品の正味売却価額の見積り」をご参照下さい。

 

②財政状態の分析

当連結会計年度末における総資産は、909億1百万円となり、前連結会計年度末と比較して151億25百万円(20.0%)の増加となりました。主な要因として、前渡金の増加等により流動資産が165億69百万円(34.3%)増加したことによるものであります。

負債合計は641億6百万円となり、前連結会計年度末と比較して152億98百万円(31.3%)の増加となりました。主な要因として、契約負債(前連結会計年度末は前受金として表示)の増加等により流動負債が166億60百万円(40.9%)増加したことによるものであります。

純資産合計は267億95百万円となり、前連結会計年度末と比較して1億73百万円(△0.6%)の減少となりました。この結果、自己資本比率は29.5%となりました。

 

③経営成績の分析
a.成約高・売上高の状況

当連結会計年度における成約高・売上高に関する分析は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。

b.営業利益の状況

販売費及び一般管理費につきましては、主として退職給付費用の減少等により、前連結会計年度比1億57百万円(△2.7%)減少の56億65百万円となりました。

その結果、営業利益は前連結会計年度比4億32百万円(22.8%)増加の23億28百万円となりました。

c.経常利益の状況

営業外収益につきましては、主として受取配当金の増加等により、前連結会計年度比2億34百万円(57.2%)増加の6億45百万円となりました。また営業外費用につきましては、主として支払利息の増加等により、前連結会計年度比3億11百万円(218.9%)増加の4億53百万円となりました。

その結果、経常利益は前連結会計年度比3億56百万円(16.5%)増加の25億19百万円となりました。

d.当期純利益の状況

税金等調整前当期純利益は前連結会計年度比5億25百万円(△19.6%)減少の21億59百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比6億88百万円(△37.5%)減少の11億45百万円となりました。

 

④キャッシュ・フローの状況の分析

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況の分析は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

資本の財源及び資金の流動性

当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、電力事業、環境・化学・機械事業、生活産業事業、その他の事業に関わる仕入費用及び各事業についての一般管理費等があります。また、設備資金需要としては、当社所有の太陽光発電用資産等に加え、情報処理のための無形固定資産投資等があります。当社グループは、事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用及び金融機関からの借入により資金調達を行っております。

 

4 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

5 【研究開発活動】

該当事項はありません。