独立監査人の監査報告書
2024年4月15日
東京産業株式会社
取締役会 御中
指定有限責任社員 業務執行社員
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公認会計士
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永 井 勝
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指定有限責任社員 業務執行社員
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公認会計士
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鈴 木 哲 彦
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監査意見
当監査法人は、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査証明を行うため、「経理の状況」に掲げられている東京産業株式会社の2022年4月1日から2023年3月31日までの連結会計年度の訂正後の連結財務諸表、すなわち、連結貸借対照表、連結損益計算書、連結包括利益計算書、連結株主資本等変動計算書、連結キャッシュ・フロー計算書、連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項、その他の注記及び連結附属明細表について監査を行った。
当監査法人は、上記の連結財務諸表が、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、東京産業株式会社及び連結子会社の2023年3月31日現在の財政状態並びに同日をもって終了する連結会計年度の経営成績及びキャッシュ・フローの状況を、全ての重要な点において適正に表示しているものと認める。
監査意見の根拠
当監査法人は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を行った。監査の基準における当監査法人の責任は、「連結財務諸表監査における監査人の責任」に記載されている。当監査法人は、我が国における職業倫理に関する規定に従って、会社及び連結子会社から独立しており、また、監査人としてのその他の倫理上の責任を果たしている。当監査法人は、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手したと判断している。
監査上の主要な検討事項
監査上の主要な検討事項とは、当連結会計年度の連結財務諸表の監査において、監査人が職業的専門家として特に重要であると判断した事項である。監査上の主要な検討事項は、連結財務諸表全体に対する監査の実施過程及び監査意見の形成において対応した事項であり、当監査法人は、当該事項に対して個別に意見を表明するものではない。
訂正前の連結財務諸表に対する修正処理の妥当性
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監査上の主要な検討事項の内容及び決定理由
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監査上の対応
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東京産業株式会社(以下「東京産業」という。)は、2023年3月31日に終了する連結会計年度に係る有価証券報告書の訂正報告書を提出している。訂正報告に至った経緯は、以下のとおりである。 注記事項(追加情報)に記載のとおり、東京産業は、当連結会計年度末の連結貸借対照表に計上された特定の仕入先に対する太陽光発電案件に係る長期未収入金4,453百万円を保全するため、連帯保証及び担保権を要求している。東京産業は、再生可能エネルギー事業を営む連帯保証人から太陽光発電案件を購入し、第三者に売却しており、これらの取引には、太陽光発電所の建設請負工事において、連帯保証人が下請業者となった案件もある。当連結会計年度末の連結貸借対照表には、東京産業が連帯保証人から仕入れた特定の太陽光発電案件に係る仕掛品6,000百万円が計上されている。 東京産業は、複数の受入担保資産が東京産業の承諾なく連帯保証人によって第三者に譲渡されていたことを2023年9月に把握したため、長期未収入金及び仕掛品の評価が適切に行われていない疑義(以下「当初事案」という。)があると判断した。このため、連帯保証人が関与する東京産業の太陽光発電案件について、取引に関する事実関係の把握及び連結財務諸表に対する影響を検討するため、2023年11月8日に外部の弁護士及び公認会計士によって構成される外部調査委員会を設置し、当初事案についての調査を依頼した。 また、東京産業は、自社が元請けとして受注した複数の太陽光発電所の建設請負工事に係る下請業者について、特定の太陽光発電所の建設請負工事で生じた追加の工事原価の負担等から、二次下請業者へ工事代金を支払えず、工事の遂行が困難になっていることを2023年11月に把握した。これを受けて、東京産業は、工事原価総額の見積りが適時に見直されていなかった疑義(以下「追加事案」という。)があると判断し、この下請業者が関与する太陽光発電所の建設請負工事に関する事実関係の把握及び連結財務諸表に対する影響を検討するため、外部調査委員会に対して追加事案の調査を依頼した。 外部調査委員会は、2024年1月15日に中間調査報告書を、2024年3月29日に最終調査報告書を東京産業に提出しており、主に以下の調査結果が報告されている。 (1) 当初事案について ●長期未収入金の計上に至る経緯及び計上後の管理状況 ●長期未収入金の回収可能性の検討状況 ●仕掛品の計上に至る経緯及び計上後の管理状況 ●仕掛品の資産性及び収益性の検討状況 (2) 追加事案について ●特定の太陽光発電所の建設請負工事において追加の工事原価が発生した経緯 ●追加の工事原価が発生した時点以降における工事原価総額の見積りの変更要否に関する検討状況 ●前渡金の会計処理の妥当性 ●工事原価発生額の実在性及び正確性 (3) 当初事案及び追加事案に類似する事案の有無 東京産業は、外部調査委員会の中間調査報告書及び最終調査報告書の内容に基づき、訂正前の当連結会計年度の連結財務諸表に対して関連する会計処理を修正している。修正処理の内容は、訂正前の当連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を及ぼしており、当初事案及び追加事案に類似する事案の網羅的な検討には、高度な会計上の判断が必要である。 以上から、当監査法人は、訂正前の連結財務諸表に対する修正処理の妥当性が、当連結会計年度の連結財務諸表監査において特に重要であり、監査上の主要な検討事項の一つに該当すると判断した。
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当監査法人は、訂正前の連結財務諸表に対する修正処理の妥当性を検討するため、主に以下の手続を実施した。 (1) 外部調査委員会による調査の適切性 外部調査委員会による調査の範囲及び外部調査委員会が実施した手続が、外部調査委員会の設置目的に照らして適切か否かを評価するため、調査の進捗に応じて適時に外部調査委員会との意見交換を行うとともに、以下の手続を実施した。 ●外部調査委員会を構成する外部の弁護士及び公認会計士が、専門性及び客観性を有しているか否かを評価した。 ●調査報告書を通読し、調査の過程で把握した事象及び認定した事実が訂正前の連結財務諸表へ及ぼす影響について、最終的な調査結果と相違がないことを確認した。 (2) 当初事案及び追加事案の検討 当初事案及び追加事案について、訂正前の連結財務諸表に対する修正処理の妥当性を検討するため、以下の手続を実施した。 ●当初事案について、監査上の主要な検討事項の「特定の仕入先に対する長期未収入金の回収可能額の見積りの合理性」及び「特定の太陽光発電案件に係る仕掛品の正味売却価額の見積りの合理性」の監査上の対応に記載の手続を実施した。 ●追加事案について、監査上の主要な検討事項の「太陽光発電所の建設請負工事に係る工事原価総額の見積りの合理性」の監査上の対応に記載の手続を実施した。 (3) 当初事案及び追加事案に類似する事案の検討 当初事案及び追加事案に類似する事案が網羅的に把握されているか否かを検討するため、以下の資料を閲覧した。 ●取締役会議事録及び本部長会議事録 ●外部調査委員会による関係者へのヒアリングメモ、従業員及び下請業者に対するアンケートの結果、スクリーニングされた関係者の電子メール ●外部調査委員会の調査報告書
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特定の仕入先に対する長期未収入金の回収可能額の見積りの合理性
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監査上の主要な検討事項の内容及び決定理由
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監査上の対応
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注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおり、東京産業株式会社(以下「東京産業」という。)は、債権の評価に当たり、債務者の財政状態及び経営成績等に応じて分類した債務者区分に応じて貸倒引当金を算定している。このうち、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権(以下「貸倒懸念債権」という。)については、個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を貸倒引当金として計上している。 当連結会計年度の連結貸借対照表に計上された長期未収入金4,453百万円は、東京産業が仕入れた太陽光発電案件の事業認定を含む事業上の地位を、仕入先との合意に基づき返品したことにより生じた債権である。この長期未収入金は、仕入先との合意に基づく当初の決済期限を超過しているため、貸倒懸念債権に分類されている。 東京産業は、長期未収入金の回収を保全するため、連帯保証を要求するとともに、連帯保証人から担保資産を受け入れている。しかし、監査上の主要な検討事項の「訂正前の連結財務諸表に対する修正処理の妥当性」の内容及び決定理由に記載のとおり、東京産業は、複数の受入担保資産が東京産業の承諾なく連帯保証人によって第三者に譲渡されていたことを2023年9月に把握した。東京産業は、外部調査委員会の調査結果を踏まえ、長期未収入金の回収可能額を評価し、長期未収入金4,453百万円のうち回収不能と見込まれる3,916百万円を貸倒引当金として計上している。 長期未収入金の回収可能額の見積りには、連帯保証人の財務内容及び担保権の評価に係る経営者による判断又は仮定が含まれていることから、高い不確実性を伴う。東京産業は、特定の太陽光発電案件の売却に当たり、連帯保証人に各種許認可に係る地方自治体との折衝を含む営業活動を実質的に委託するとともに、連帯保証人を太陽光発電所の建設工事の下請業者として関与させる計画であった。そのため、連帯保証人の財務内容は、この太陽光発電所の建設請負工事の下請業者として獲得が見込まれる資金の影響を受ける。また、連帯保証人が保有する太陽光発電事業用の土地に関して設定した抵当権を含む担保権は、その実行可能性及び評価の妥当性を踏まえた回収可能額の検討が必要となる。 以上から、当監査法人は、特定の仕入先に対する長期未収入金の回収可能額の見積りの合理性が当連結会計年度の連結財務諸表監査において特に重要であり、監査上の主要な検討事項の一つに該当すると判断した。
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当監査法人は、特定の仕入先に対する長期未収入金の回収可能額の見積りの合理性を評価するため、主に以下の監査手続を実施した。 (1) 連帯保証人の財務内容の検討 連帯保証人の財務内容を評価するため、以下の手続を実施した。 ●外部の信用機関が発行する調査報告書を閲覧し、連帯保証人の財務内容に係る客観的な評価を把握した。 ●外部調査委員会による関係者へのヒアリングメモ及びスクリーニングされた関係者の電子メールを閲覧し、連帯保証人の財務内容、特に、資金繰りの悪化に伴い東京産業に対する担保提供資産を無断で第三者に譲渡した経緯を把握した。 (2) 連帯保証による回収可能額の検討 連帯保証による回収可能額の見積りに関して、連帯保証人が特定の太陽光発電案件の建設請負工事に係る下請業者となる可能性を検討するため、以下の手続を実施した。 ●地方自治体が公表した環境影響評価情報及び林地開発許可証、経済産業省が発行した進捗状況確認結果を閲覧し、太陽光発電所の建設に必要な許認可の取得見込みを検討した。 ●外部調査委員会による関係者へのヒアリングメモ及びスクリーニングされた関係者の電子メールを閲覧し、連帯保証人が下請業者として関与する可能性を検討した。 (3) 担保権の評価の検討 担保権の実行可能性及び評価の妥当性を検討するため、以下の手続を実施した。 ●登記簿謄本又は担保設定契約書を閲覧し、担保権の権利関係を把握した。 ●外部調査委員会による関係者へのヒアリングメモ及びスクリーニングされた関係者の電子メールを閲覧し、担保権の実行に影響を及ぼし得る事象の有無を検討した。 ●抵当権の評価基礎となる地代収入について、連帯保証人から入手した地上権設定契約書及び関連する合意書と照合するとともに、連帯保証人の銀行口座情報を閲覧し、地代の入金実績を確認した。
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特定の太陽光発電案件に係る仕掛品の正味売却価額の見積りの合理性
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監査上の主要な検討事項の内容及び決定理由
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監査上の対応
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注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおり、東京産業株式会社(以下「東京産業」という。)は、仕掛品の評価方法として個別法による原価法(収益性の低下による簿価切下げの方法)を採用しており、仕掛品は取得原価と連結会計年度末における正味売却価額のいずれか低い金額で評価される。 当連結会計年度の連結貸借対照表に計上された仕掛品6,000百万円は、監査上の主要な検討事項の「訂正前の連結財務諸表に対する修正処理の妥当性」に記載の連帯保証人から東京産業が仕入れた特定の太陽光発電案件の事業認定に係る権利である。この権利には、発電した電力を固定価格で電力会社に売却することが保証される再生可能エネルギーの固定価格買取制度の認証が含まれている。東京産業は、この認証を用いて太陽光発電所を建設し、売却することを予定している。 当連結会計年度末において、東京産業は仕掛品の正味売却価額が取得原価を上回っていると判断し、棚卸資産評価損を計上していない。東京産業は、太陽光発電案件を売却する場合の正味売却価額を検討した上で、太陽光発電案件の収益性も検討している。 仕掛品の正味売却価額の見積りには、太陽光発電案件に係る以下の経営者による判断又は仮定が含まれていることから、高い不確実性を伴う。 ●太陽光発電案件の実現可能性 ・売電開始に向けたスケジュール ・太陽光発電所が立地する地方自治体等による各種許認可 ●太陽光発電案件の売却可能額 ・売却候補先との交渉妥結見込み ●太陽光発電案件の収益性 ・売電収入の基礎となる売電量 ・太陽光発電所の建設コスト 以上から、当監査法人は、特定の太陽光発電案件に係る仕掛品の正味売却価額の見積りの合理性が当連結会計年度の連結財務諸表監査において特に重要であり、監査上の主要な検討事項の一つに該当すると判断した。
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当監査法人は、特定の太陽光発電案件に係る仕掛品の正味売却価額の見積りの合理性を評価するため、主に以下の監査手続を実施した。 (1) 太陽光発電案件の実現可能性の検討 太陽光発電案件の実現可能性を検討するため、経営者に売電開始へ向けたスケジュール及び実現可能性を質問するとともに、以下の手続を実施した。 ●地方自治体が公表した環境影響評価情報及び林地開発許可証、経済産業省が発行した進捗状況確認結果を閲覧し、太陽光発電所の建設に必要な許認可の取得見込みを検討した。 ●外部調査委員会による関係者へのヒアリングメモ及びスクリーニングされた関係者の電子メールを閲覧し、経営者が仮定した売電開始に向けたスケジュール及び各種許認可の取得見込みに影響を及ぼし得る事象の有無を検討した。 (2) 太陽光発電案件の売却可能額の合理性の検討 太陽光発電案件の売却可能額の合理性を検討するため、以下の手続を実施した。 ●特定の売却候補先が発行した買付価額が明らかとなる意向表明書を閲覧した。 ●外部調査委員会による関係者へのヒアリングメモ及びスクリーニングされた関係者の電子メールを閲覧し、売却候補先との交渉状況を把握した。 (3) 太陽光発電案件の収益性の検討 太陽光発電案件の収益性の見積りの基礎となる太陽光発電案件の事業計画について、その合理性を検討するため、以下の手続を実施した。 ●売電収入の計算基礎となった売電量について、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が公表する日射量データに基づき監査人が試算した売電量と比較した。 ●太陽光発電所の建設コストについて、kW当たり工事費用と経済産業省が公表する太陽光発電の調達価格情報とを比較した。 また、売電開始に向けたスケジュール及び売電量に一定の不確実性を織り込んだ場合に太陽光発電案件の収益性の見積りに与える影響を検討した。
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太陽光発電所の建設請負工事に係る工事原価総額の見積りの合理性
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監査上の主要な検討事項の内容及び決定理由
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監査上の対応
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東京産業株式会社(以下「東京産業」という。)は、連結財務諸表注記「(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)4.会計方針に関する事項(6)重要な収益及び費用の計上基準」に記載のとおり、建設請負工事の履行義務は一定の期間にわたり充足されると判断し、履行義務の充足に係る進捗度に基づき建設請負工事の収益を認識している。この進捗度の見積りは、発生した工事原価の累計額が工事原価総額に占める割合として算定される。ただし、工事進捗度を合理的に見積ることができないが、履行義務を充足する際に発生する原価を回収することが見込まれる場合には、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができる時まで、履行義務を充足する際に発生する費用のうち、回収することが見込まれる費用の金額で収益を認識している(以下「原価回収基準」という。)。 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおり、東京産業は、当連結会計年度において、東京産業が受注した特定の太陽光発電所の建設請負工事(受注総額48,668百万円)に係る売上高15,494百万円及び見合いの売上原価17,257百万円を計上している。この建設請負工事は、監査上の主要な検討事項の「訂正前の連結財務諸表に対する修正処理の妥当性」に記載の追加事案の対象となった建設請負工事であり、工事原価総額の見積りが適時に見直されていなかった疑義があることから、外部調査委員会の調査対象となっている。 注記事項(追加情報)に記載のとおり、外部調査委員会の調査の結果、特定の太陽光発電所の建設請負工事について、以下の事象が判明した。 ●下請業者に対する発注内容に明記されていなかった追加の工事原価が、下請業者において発生していたこと ●下請業者において発生した追加の工事原価の一部を、東京産業が負担すべき可能性(以下、東京産業の負担すべき工事原価を「追加工事原価」という。) ●下請業者に対する前渡金の一部が追加工事原価に対応した支払であった可能性 ●追加工事原価について、見積工事原価総額への反映が適時かつ適切に行われていなかった可能性 ●工事原価発生額に未発生の工事原価を算入していたこと 外部調査委員会の調査結果を受けた東京産業は、当連結会計年度において、本件工事に係る工事進捗度は合理的に見積ることができないが、履行義務を充足する際に発生する費用を回収することが見込まれると判断し、この工事に係る収益認識基準を原価回収基準に改めている。また、訂正前の連結貸借対照表に計上された前渡金の一部を実質的な追加工事原価として売上原価に計上している。加えて、過年度に計上されていた未発生の工事原価を、当連結会計年度に発生した工事原価として計上したため、訂正前の連結損益計算書の工事原価及び見合いの売上高を増額している。これらの会計処理の修正により、訂正前の連結損益計算書に計上されていた売上高及び売上原価は、それぞれ1,480百万円及び3,882百万円増額している。 太陽光発電所の建設請負工事は、一件当たりの見積工事原価総額が多額かつ工期が長期にわたる場合が多い。このため、以下についての経営者の判断が、工事原価総額の見積りに重要な影響を及ぼし、高い不確実性を伴う。 ●当初の見積工事原価総額に、全ての作業内容に係る工事原価が含まれているか否か ●下請業者における作業内容の変更により追加で発生した工事原価を適時に把握しているか否か ●下請業者において追加で発生した工事原価について、東京産業が負担すべきか否か ●当初の見積工事原価総額に含まれていなかった追加の工事原価相当額について、施主から対価を受け取ることができるか否か また、工事原価発生額は工事進捗度及び原価回収基準の計算基礎であり、工事原価発生額が正確に把握されているか否かは、太陽光発電所の建設請負工事に係る会計処理に重要な影響を及ぼす。 以上から、当監査法人は、太陽光発電所の建設請負工事に係る工事原価総額の見積りの合理性が、当連結会計年度の連結財務諸表監査において特に重要であり、監査上の主要な検討事項の一つに該当すると判断した。
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当監査法人は、太陽光発電所の建設請負工事に係る工事原価総額の見積りの合理性を検討するため、主に以下の監査手続を実施した。 (1) 特定の太陽光発電所の建設請負工事に係る検討 ①当初の工事原価総額の見積りの合理性 ●外部調査委員会による関係者へのヒアリングメモ、従業員及び下請業者に対するアンケートの結果、スクリーニングされた関係者の電子メールを閲覧し、工事原価総額の見積りに影響を与える事象の有無を検討した。 ●見積工事原価総額に含まれる下請業者への発注作業について、工事請負契約書と照合し、全ての発注作業の内容が特定されているか否かを検討した。 ●過去に下請業者に発注した工事に係る見積工事原価と実績額とを比較し、下請業者が合理的に工事原価を見積ることができるか否かを検討した。 ②追加工事原価の見積りの合理性 ●外部調査委員会による関係者へのヒアリングメモ、従業員及び下請業者に対するアンケートの結果、スクリーニングされた関係者の電子メールを閲覧し、施主との増額受注に関する交渉状況及び下請業者との増額発注に関する交渉状況を含む追加工事原価の見積りに影響を与える事象の有無を検討した。 ●下請業者が作成した出来高報告書を閲覧し、当初の見積工事原価総額に含まれていない下請業者における作業内容の変更による追加の工事原価が生じているか否かを検討した。 ●建設請負工事の進捗状況が報告される本部長会議事録を閲覧し、下請業者において発生した追加の工事原価を東京産業が負担すべきか否か及び見積工事原価総額に反映すべきか否かを検討した。 ●本部長会議事録及び本部長会出席者への月次報告資料を閲覧し、追加工事原価の発生を踏まえた施主との増額受注に関する交渉状況及び下請業者との増額発注に関する交渉状況を把握した。 ●追加工事原価を見積ることができず、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができない場合、収益認識の基準を原価回収基準へ変更しているか否かを検討した。 ③前渡金の会計処理の妥当性 ●本部長会議事録、外部調査委員会による関係者へのヒアリングメモ及びスクリーニングされた関係者の電子メールを閲覧し、下請業者における前渡金の使途を検討した。 ●実質的に追加工事原価に対応した支払であった前渡金が適時に売上原価に計上されているか否かを検討した。 ④工事原価発生額の実在性及び正確性 ●東京産業が計上した工事原価発生額について、下請業者が作成した出来高報告書と照合した。 ●下請業者の会計記録を入手し、下請業者が自社で計上した工事原価と東京産業が計上した工事原価とを比較し、その関係性を検討した。 ●下請業者が作成した出来高報告書と工事現場の進捗管理資料との整合性を検討した。 ●工事現場の進捗管理資料に記載された工事進捗度の妥当性を検討するため、本件太陽光発電所の建設現場を視察した。 (2) 特定の太陽光発電所の建設請負工事以外の工事に係る検討 特定の太陽光発電所の建設請負工事以外の工事に係る工事原価総額の見積りの合理性を検討するため、特定の太陽光発電所の建設請負工事と同じ下請業者であるなど、類似の特性を有する工事を抽出した。 その上で、抽出した工事に対して、(1)に記載の手続のうち各工事の特性に応じて必要性が高いと判断した手続を実施した。
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その他の事項
有価証券報告書の訂正報告書の提出理由に記載されているとおり、会社は、連結財務諸表を訂正している。なお、当監査法人は、訂正前の連結財務諸表に対して2023年6月28日に監査報告書を提出しているが、当該訂正に伴い、訂正後の連結財務諸表に対して本監査報告書を提出する。
その他の記載内容
その他の記載内容は、有価証券報告書の訂正報告書に含まれる情報のうち、連結財務諸表及び財務諸表並びにこれらの監査報告書以外の情報である。経営者の責任は、その他の記載内容を作成し開示することにある。また、監査等委員会の責任は、その他の記載内容の報告プロセスの整備及び運用における取締役の職務の執行を監視することにある。
当監査法人の訂正後の連結財務諸表に対する監査意見の対象にはその他の記載内容は含まれておらず、当監査法人はその他の記載内容に対して意見を表明するものではない。
連結財務諸表監査における当監査法人の責任は、その他の記載内容を通読し、通読の過程において、その他の記載内容と連結財務諸表又は当監査法人が監査の過程で得た知識との間に重要な相違があるかどうか検討すること、また、そのような重要な相違以外にその他の記載内容に重要な誤りの兆候があるかどうか注意を払うことにある。
当監査法人は、実施した作業に基づき、その他の記載内容に重要な誤りがあると判断した場合には、その事実を報告することが求められている。
その他の記載内容に関して、当監査法人が報告すべき事項はない。
連結財務諸表に対する経営者及び監査等委員会の責任
経営者の責任は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して連結財務諸表を作成し適正に表示することにある。これには、不正又は誤謬による重要な虚偽表示のない連結財務諸表を作成し適正に表示するために経営者が必要と判断した内部統制を整備及び運用することが含まれる。
連結財務諸表を作成するに当たり、経営者は、継続企業の前提に基づき連結財務諸表を作成することが適切であるかどうかを評価し、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて継続企業に関する事項を開示する必要がある場合には当該事項を開示する責任がある。
監査等委員会の責任は、財務報告プロセスの整備及び運用における取締役の職務の執行を監視することにある。
連結財務諸表監査における監査人の責任
監査人の責任は、監査人が実施した監査に基づいて、全体としての連結財務諸表に不正又は誤謬による重要な虚偽表示がないかどうかについて合理的な保証を得て、監査報告書において独立の立場から連結財務諸表に対する意見を表明することにある。虚偽表示は、不正又は誤謬により発生する可能性があり、個別に又は集計すると、連結財務諸表の利用者の意思決定に影響を与えると合理的に見込まれる場合に、重要性があると判断される。
監査人は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に従って、監査の過程を通じて、職業的専門家としての判断を行い、職業的懐疑心を保持して以下を実施する。
・不正又は誤謬による重要な虚偽表示リスクを識別し、評価する。また、重要な虚偽表示リスクに対応した監査手続を立案し、実施する。監査手続の選択及び適用は監査人の判断による。さらに、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手する。
・連結財務諸表監査の目的は、内部統制の有効性について意見表明するためのものではないが、監査人は、リスク評価の実施に際して、状況に応じた適切な監査手続を立案するために、監査に関連する内部統制を検討する。
・経営者が採用した会計方針及びその適用方法の適切性、並びに経営者によって行われた会計上の見積りの合理性及び関連する注記事項の妥当性を評価する。
・経営者が継続企業を前提として連結財務諸表を作成することが適切であるかどうか、また、入手した監査証拠に基づき、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に関して重要な不確実性が認められるかどうか結論付ける。継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる場合は、監査報告書において連結財務諸表の注記事項に注意を喚起すること、又は重要な不確実性に関する連結財務諸表の注記事項が適切でない場合は、連結財務諸表に対して除外事項付意見を表明することが求められている。監査人の結論は、監査報告書日までに入手した監査証拠に基づいているが、将来の事象や状況により、企業は継続企業として存続できなくなる可能性がある。
・連結財務諸表の表示及び注記事項が、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠しているかどうかとともに、関連する注記事項を含めた連結財務諸表の表示、構成及び内容、並びに連結財務諸表が基礎となる取引や会計事象を適正に表示しているかどうかを評価する。
・連結財務諸表に対する意見を表明するために、会社及び連結子会社の財務情報に関する十分かつ適切な監査証拠を入手する。監査人は、連結財務諸表の監査に関する指示、監督及び実施に関して責任がある。監査人は、単独で監査意見に対して責任を負う。
監査人は、監査等委員会に対して、計画した監査の範囲とその実施時期、監査の実施過程で識別した内部統制の重要な不備を含む監査上の重要な発見事項、及び監査の基準で求められているその他の事項について報告を行う。
監査人は、監査等委員会に対して、独立性についての我が国における職業倫理に関する規定を遵守したこと、並びに監査人の独立性に影響を与えると合理的に考えられる事項、及び阻害要因を除去又は軽減するためにセーフガードを講じている場合はその内容について報告を行う。
監査人は、監査等委員会と協議した事項のうち、当連結会計年度の連結財務諸表の監査で特に重要であると判断した事項を監査上の主要な検討事項と決定し、監査報告書において記載する。ただし、法令等により当該事項の公表が禁止されている場合や、極めて限定的ではあるが、監査報告書において報告することにより生じる不利益が公共の利益を上回ると合理的に見込まれるため、監査人が報告すべきでないと判断した場合は、当該事項を記載しない。
利害関係
会社及び連結子会社と当監査法人又は業務執行社員との間には、公認会計士法の規定により記載すべき利害関係はない。
以 上
(注) 1.上記の監査報告書の原本は当社(有価証券報告書提出会社)が保管しております。 2.XBRLデータは監査の対象には含まれていません。
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