第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 経営方針

 当社グループは社是に「技術立社」を掲げ、研究・技術開発力の向上を図り、高品質・高付加価値製品を生み出すことを常に最優先の課題としております。

 また、厳しい経済環境のもと、香料業界における国際競争は激化し、多様化・高度化する顧客の要望への即応が求められる中、当社は以下の事項を経営の基本方針としております。

 

①企業価値の向上と株主利益の増大を目標とし、安定的で適正な利益還元を実施する。

②コンプライアンス(法令遵守)を徹底し、企業の社会的責任を全うする。

③従業員の働きやすい環境を整備する。

④社会的課題の解決に取り組み、サステナブルな社会の構築に貢献する。

 

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループでは、持続的・安定的な発展を通じて中長期的な企業価値の向上を実現していくために、必要かつ可能な範囲を意識して、連結売上高伸長率5.0%以上、2025年9月期に連結売上高営業利益率13.0%、連結売上高経常利益率14.0%を目標としております。

 当連結会計年度におきましては、連結売上高伸長率11.9%、連結売上高営業利益率12.9%、連結売上高経常利益率14.5%となりました。

 

(3) 経営環境、経営戦略及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 2022年9月15日に当社深谷事業所板倉工場において当社社員1名が死亡し、2名が負傷する重大な事故が発生しました。このような事故が発生したことは、誠に遺憾であり、亡くなられた社員のご冥福を心よりお祈りいたします。また、株主の皆様、お客様、関係当局をはじめとする多くの方々に多大なるご迷惑、ご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。

 本事故の発生を受け、当社は事故調査委員会を設置し、事故原因の究明及び再発防止対策の策定を行いました。事故調査委員会における事故原因の調査内容及び再発防止対策の提言につきましては、2022年11月11日に「当社社員死亡事故について(事故原因、再発防止対策及び稼働状況)」として公表いたしました。

 当社は、人的被害を発生させた本事故を真摯に受け止め、このような事故を二度と起こさないように、事故調査委員会が提言した再発防止対策を確実に実施するとともに、実効性のある管理体制の構築に向けて、着実な活動を進めてまいります。

 

 今後のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の収束時期が見通せない中、ウクライナ情勢の長期化、原材料価格や資源価格の高騰、急速な円安の進行や物価の上昇等の影響が懸念され、先行きが不透明な状況が続くことが見込まれます。

 香料業界におきましても、各社のシェア獲得競争の一層の激化、品質保証に関する要求増加など厳しい状況が続くことが予想されます。

 このような状況の中で、当社グループは、「技術立社」の社是のもと、研究・技術開発力の一層の向上により、特長のある差別化された製品開発を行うとともに、生産性の向上や業務全般の効率化によるコスト削減に努めてまいります。

 また、経営環境の変化や不測の事態に柔軟に対応し、今後の当社グループの成長を追求するためには、少子高齢化に伴う成熟化が進行する国内市場でのシェア拡大に努める一方で、グローバル展開を更に強化していくことが不可欠です。当社が重点地域と位置付ける米国、並びに中国、東南アジアを中心としたアジア地域に経営資源を効率的に投入し、市場の成長性や消費者の嗜好等を的確に捉え、経営環境の変化に応じた事業戦略を立案・推進してまいります。また、将来にわたる持続的成長の実現に向けた投資を行い、海外市場での業績拡大を目指してまいります。

 国内におきましては、営業、研究及びマーケティングを統括するビジネスソリューション本部のもと、研究面では、戦略的な研究開発を推進するため、重点分野を明確化した上で既存技術のブラッシュアップ、新規技術の開発等に注力し、当社グループの持続的な成長に貢献する技術開発力の向上を目指してまいります。また、営業、マーケティングとの連携を活かし市場感覚と競争意識を高め、当社独自の特長のある製品の開発により競合他社との差別化を図ってまいります。さらに、香料事業で培った技術を活かして社会が抱える課題の解決に貢献できるよう努めてまいります。

 食品部門では、安全・安心の確保を第一に、引き続き健康志向に根ざした低糖・低塩・低脂肪の食品に美味しさをもたらす香料、及び安定性・持続性に優れた香料の開発に取り組みます。また、食資源不足をはじめとする社会的課題の解決に向け、食品原料を代替する香料の開発等に注力いたします。

 フレグランス部門では、基礎研究を徹底し、安全性・安定性に優れた新しい香り創りにより、国内での更なるシェア拡大に注力いたします。海外におきましても市場調査及び嗜好性調査の結果を踏まえて現地の消費者に好まれる香り創りに努めてまいります。

 営業面におきましては、研究及びマーケティングと連携し、マーケット調査・分析等の活用により顧客の潜在的欲求の把握に努め、提案力強化に注力してまいります。また、当社の総合力を活かした的確なソリューションを提供することで、顧客に信頼されるパートナーとしての地位確立、カスタマーサクセスへの貢献を通じた売上拡大及び販売シェアアップを目指してまいります。

 生産面におきましては、安全対策を徹底し、生産設備の老朽化に対して予防保全を強化するとともに計画的な設備更新を推進してまいります。また、工場周辺への臭気の拡散防止による地域住民との共生、長期的な温室効果ガス削減に向けた体制整備を進めてまいります。さらに、製造方法の改良、物流体制の見直し、廃棄ロスの削減などの取り組みも継続して実施し、製造原価低減に努めてまいります。

 海外におきましては、経営資源を効率的に投入し、着実なグローバル展開を図る戦略のもと、米国では、T. HASEGAWA U.S.A., INC.と2020年12月に連結子会社としたMISSION FLAVORS & FRAGRANCES, INC. の強みを最大限に発揮し、シナジー効果の更なる実現を目指すとともに、引き続き現地顧客向けの積極的な営業活動を推進し、米国市場での業績拡大を図ってまいります。また、米国での新たな生産体制構築に向け、カリフォルニア州ランチョ・クカモンガにおいて第2工場建設計画を推進してまいりました。2022年6月に第1期工事が完了し、第2工場が稼働を開始いたしました。第2工場の稼働により米国の生産能力の増強及び生産効率化を推進してまいります。

 中国では、マーケティング機能を活用した戦略的な営業活動により、新規顧客開拓・既存顧客深耕に注力するとともに、利益管理を徹底し、売上、利益の両面から業績拡大を目指してまいります。また、研究機能の強化、業務の効率化を目的に、新研究棟建設プロジェクトを推進してまいります。

 東南アジアでは、同地域全体の営業戦略のもと、マレーシア、タイ、インドネシアの各拠点及び周辺地域の営業員との連携、アプリケーションラボラトリーの活用により営業活動を強化し、今後も拡大が見込まれる香料需要を取り込み、業績拡大を目指してまいります。

 

2【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 当社グループは、毎年全社的なリスク調査を実施し、リスクの洗い出しを行っております。リスク調査の分析結果につきましては、代表取締役社長を委員長とし、取締役をメンバーに含むグループ会社の横断的な組織であるリスク管理委員会に報告しております。分析結果の報告を受け、リスク管理委員会において重点リスクとして選定したより重要なリスクは、「災害等に係るリスク」、「子会社管理に係るリスク」、「情報セキュリティに係るリスク」及び「減損損失に係るリスク」であります。

 なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

リスク項目

リスクの内容

リスクが顕在化した場合に経営成績等の状況に与える影響の内容

リスクが顕在化する可能性の程度や時期

当該リスクへの対応策

天候に係るリスク

天候不順により顧客業界(飲料業界、食品業界、トイレタリー業界等)の最終商品の販売が低迷し、当社グループの業績に影響を与える。

・当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識している。

・天候不順による影響を最も大きく受ける飲料向け以外のカテゴリーの売上高構成比率向上を目指す。

原材料調達に係る

リスク

生産地における異常気象(サイクロン、ハリケーンの発生等)による被害、社会不安(テロ、戦争、感染症等)、調達先における事故等により原材料の調達が困難になり、当社グループの業績に影響を与える。

・市場動向によるため、顕在化する可能性は翌期以降においても常にあるものと認識している。

・世界各国の複数の取引先からの原材料調達に努め、調達先の分散、調達手段の多様化を推進する。

・当社グループの国内外各拠点の連携によるグローバル購買を実施する。

災害等に係る

リスク

当社グループの生産拠点に、自然災害(地震、台風等)や社会不安(テロ、戦争、感染症等)による被害が発生し、当社グループの業績に影響を与える。

・当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識している。

・災害等の不測の事態や危機の発生時に事業の継続を図るため、事業継続規程及びその下位規程である事業継続要領を定め、運用する。また、大規模災害を想定した消防訓練及び安否確認訓練を実施し、実効性を高める。

品質に係るリスク

製品の欠陥に起因する損害が発生し、当社グループの業績に影響を与える。

・当該リスクが顕在化する可能性は低いものの、翌期以降においても常にあるものと認識している。

・「食の安全性」に関わるメーカーとして、安全性を第一に、顧客に満足いただける品質の製品供給に努める。

・代表取締役社長直轄の品質保証部を中心として、研究開発、原材料調達、生産、販売を含めた総合的な品質保証体制を構築し、製品の安全性確保に万全を期す。

・万一に備え、製造物賠償責任保険を付保する。

経済情勢等に係る

リスク

当社グループが事業を展開する各国の経済情勢や景気動向、金融情勢、並びにこれらの影響を受ける個人消費の動向等により、顧客の最終商品の販売が低迷し、当社グループの業績に影響を与える。

・当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識している。

・米国、並びに中国、東南アジアを中心としたアジア地域においてグローバル展開を推進し、進出地域を分散する。

・当社グループが進出する各国・各地域において市場の成長性や消費者の嗜好等を的確に捉え、変化の著しい経営環境に迅速かつ柔軟に対応可能な事業戦略を立案・推進する。

 

 

リスク項目

リスクの内容

リスクが顕在化した場合に経営成績等の状況に与える影響の内容

リスクが顕在化する可能性の程度や時期

当該リスクへの対応策

環境に係るリスク

国内外で環境関連法令等が厳格化された場合、費用負担の増大、事業活動の制限等により当社グループの業績に影響を与える。

・当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識している。

・環境問題に対して、事業を展開している各国・各地域の環境関連法令等の遵守を徹底する。

・CSR方針及び「長谷川香料企業行動規範」に、環境保全及び環境問題の改善に積極的に取り組む旨を定め、環境に配慮した事業活動を行う。

減損損失に係る

リスク

当社グループの資産の時価が著しく下落した場合、又は事業の収益性が悪化した場合には、減損会計の適用により固定資産の減損損失が発生し、当社グループの業績に影響を与える。

・当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識している。

・保有する固定資産の収益性について適宜評価を実施し、その評価に基づく保有の継続可否、活用策の立案等を検討する。また、固定資産の安定的な維持管理のための設備投資を行い、資産価値の向上に努める。

・M&Aを実施する際は、事業計画の策定、将来価値の測定について十分な検討を行う。また、M&A実施後は、想定したシナジー効果を最大限に発揮するため、PMI(買収後統合)を計画的に推進する。

子会社管理に係る

リスク

当社グループは、日本国内のほか、海外市場を成長ドライバーと位置付け、中国、東南アジアを中心としたアジア地域及び米国においてグローバル展開を強化している。しかしながら、国内外の子会社管理(企業統治)が不十分であることにより、不正・不祥事等が発生した場合、企業イメージの悪化、信用失墜等により、当社グループの業績に影響を与える。

・当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識している。

・当社グループは、信頼性・透明性の高い経営体制の基盤となるコーポレート・ガバナンスを重要な課題と位置付け、子会社を含め、実効性あるガバナンス体制の強化に努める。

・「長谷川香料企業行動規範」とコンプライアンス規程を子会社にも適用し、当社グループ全体のコンプライアンス体制の構築に努める。また、子会社において違法行為の通報の受け皿として社内通報制度を設ける。

・海外子会社において重要基本規程を整備し、海外子会社のガバナンス体制を強化した。

・海外子会社の運営リスクを当社グループの重点リスクと位置付け、整備した重要基本規程の運用等を含め、策定した海外子会社に対する業務監査の実施要領・計画に基づき、定期的に海外子会社に対する業務監査を実施する。

為替レートの変動に係るリスク

海外現地法人の現地通貨建ての財務諸表項目は、連結財務諸表の作成のため円貨換算されており、換算時の為替レートによって、当社グループの業績に影響を与える。

・市場動向によるため、顕在化する可能性は翌期以降においても常にあるものと認識している。

・米国、並びに中国、東南アジアを中心としたアジア地域におけるグローバル展開を推進し、海外で現地生産、現地販売を行うことにより為替レートの変動リスクの低減を図る。

・為替レートの変動を織り込んだ経営計画を策定する。

・当社単体では、日本国内からの輸出額と海外からの原材料の輸入額がほぼ同額であるため、為替レートの変動による影響はほとんど受けない。

 

 

 

リスク項目

リスクの内容

リスクが顕在化した場合に経営成績等の状況に与える影響の内容

リスクが顕在化する可能性の程度や時期

当該リスクへの対応策

情報セキュリティに係るリスク

当社グループの事業活動に係る情報資産が、サイバー攻撃、コンピューターウイルスへの感染、システム障害等により、逸失、棄損あるいは外部に漏洩した場合、業務停止や当社グループの社会的信用の失墜につながり、業績に影響を与える。

・当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識している。

・「情報セキュリティ基本方針および対策基準」をはじめとした情報セキュリティに関する規程を整備し、当社グループが保有する情報資産の適切な運用・管理を徹底する。

・情報セキュリティソフトの導入等により、早期検知・防御・対応が可能な環境を整備する。

・全役員及び全従業員に対し、情報セキュリティに関する定期的な教育を実施するほか、通達等による啓蒙活動を行い、情報セキュリティに対する意識の向上を図る。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大に係るリスク

新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、国内外の経済活動に影響が生じるなど、今後の経過によっては、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性がある。

・新型コロナウイルス感染症の今後の収束時期を正確に予測することは困難な状況であり、感染の動向は依然として不透明である。今後の経過によっては、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があり、引き続き状況を注視する。

・当社グループでは、事業継続規程及び事業継続要領(パンデミック編)に基づき設置した全社非常対策本部において、事業継続に向け国内外の情報収集を行い、対応策を立案・推進した。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は、次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

a.経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が継続する中、ウクライナ情勢の長期化、原材料価格や資源価格の高騰、急速な円安の進行等が国内外の経済活動に与える影響が懸念され、依然として先行きは不透明な状況で推移いたしました。

 香料業界は、国内市場の成熟化、同業者間での競争激化、品質保証に関する要求増加など、依然として厳しい状況にありました。

 このような環境の中で、当社グループは製品の品質管理と安全性の確保を第一に、研究・技術開発力の一層の向上に努め、当社独自の高品質・高付加価値製品の開発に注力してまいりました。

 また、2020年12月に新たに連結子会社となった米国のMISSION FLAVORS & FRAGRANCES, INC.(以下、MISSION社)の業績が当社グループの連結経営成績に通期で寄与いたしました(前連結会計年度は2021年1月から9月までの9ヵ月分の業績)。

 なお、非連結子会社としておりましたタイ子会社であるT. HASEGAWA (SOUTHEAST ASIA) CO., LTD. 及び台湾子会社である台灣長谷川香料股份有限公司の当社グループにおける重要性が増したため、当連結会計年度より新たに連結の範囲に含めております。

 当連結会計年度におきましては、売上高は62,398百万円(前連結会計年度比11.9%増)と増収となりました。なお、当社単体の売上高は前連結会計年度比4.9%の増収、主要な海外連結子会社の売上高は、米国子会社(MISSION社を含む)が前連結会計年度比32.3%の増収(現地通貨ベースでは同14.3%の増収)、中国子会社が前連結会計年度比13.0%の増収(現地通貨ベースでは同1.4%の減収)、マレーシア子会社が前連結会計年度比36.0%の増収(現地通貨ベースでは同22.7%の増収)となりました。

 部門別に見ますと、食品部門は、当社単体及び米国子会社(MISSION社を含む)の売上増加、並びにタイ子会社及び台湾子会社を新たに連結の範囲に含めたことを主因に前連結会計年度比13.0%増加し、54,359百万円となりました。

 フレグランス部門は、当社単体の売上が増加したことを主因に前連結会計年度比5.2%増加し、8,039百万円となりました。

 利益につきましては、営業利益は、人件費及びMISSION社ののれん等の償却額の増加等に伴い、販売費及び一般管理費が増加したものの、売上増による売上総利益の増加を主因に前連結会計年度に比べ1,192百万円(17.4%)増加し、8,051百万円となりました。経常利益は営業利益の増加並びに為替差益の増加を主因に、前連結会計年度に比べ1,609百万円(21.6%)増加し、9,075百万円となりました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ1,243百万円(18.4%)増加し、8,007百万円となりました。

 

 セグメントの経営成績は次のとおりであります。なお、セグメントごとの経営成績については、セグメント間の内部売上高等を含めて表示しております。

(日本)

 売上高は、食品部門及びフレグランス部門の売上増加を主因に39,183百万円(前連結会計年度比4.9%増)となりました。セグメント利益は、売上高の増加、売上原価率の改善、並びに売上高販管費率の改善を主因に5,164百万円(前連結会計年度比31.4%増)となりました。

(アジア)

 売上高は、円安の影響による中国子会社の売上増加、マレーシア子会社の売上増加、並びに当連結会計年度よりタイ子会社及び台湾子会社を新たに連結の範囲に加えたことを主因に13,697百万円(前連結会計年度比36.7%増)となりました。セグメント利益は、中国子会社は減益となったものの、マレーシア子会社が増益となったこと、並びに当連結会計年度よりタイ子会社及び台湾子会社を新たに連結の範囲に加えたことを主因に2,431百万円(前連結会計年度比9.6%増)となりました。

(米国)

 売上高は、T. HASEGAWA U.S.A., INC.の健康分野向けの売上増加、及びMISSION社の業績が当社グループの連結経営成績に通期で寄与したこと(前連結会計年度は2021年1月から9月までの9ヵ月分の業績)を主因に12,267百万円(前連結会計年度比32.1%増)となりました。セグメント利益は、売上原価率の悪化、並びに販売費及び一般管理費の増加を主因に511百万円(前連結会計年度比22.8%減)となりました。

b.財政状態の状況

 資産、負債及び純資産の状況

(流動資産)

 前連結会計年度に比べ、有価証券が4,999百万円、原材料及び貯蔵品が2,568百万円、それぞれ増加したことを主因として、流動資産は前連結会計年度に比べ10,747百万円増加し、65,989百万円となりました。

 

(固定資産)

 有形固定資産は、建物及び構築物(純額)が3,615百万円、機械装置及び運搬具(純額)が757百万円、それぞれ増加した一方で、建設仮勘定が1,370百万円減少したことを主因として、前連結会計年度に比べ3,657百万円増加し、33,752百万円となりました。

 無形固定資産は、外貨建てでの償却は進んだものの、円安の影響によりのれんが771百万円、顧客関連資産が2,165百万円、それぞれ増加したことを主因として、前連結会計年度に比べ3,481百万円増加し、20,194百万円となりました。

 投資その他の資産は、投資有価証券を売却したことを主因として、前連結会計年度に比べ5,278百万円減少し、13,616百万円となりました。

 

(流動負債)

 前連結会計年度に比べ、支払手形及び買掛金が1,211百万円増加したことを主因として、流動負債は1,727百万円増加し、13,331百万円となりました。

 

(固定負債)

 前連結会計年度に比べ、投資有価証券が売却により減少したことに連れて、繰延税金負債が1,541百万円減少したことを主因に、固定負債は1,835百万円減少し、9,204百万円となりました。

 

(純資産の部)

 前連結会計年度に比べ、利益剰余金が5,790百万円、為替換算調整勘定が10,246百万円、それぞれ増加した一方で、その他有価証券評価差額金が3,615百万円減少したことを主因として、純資産合計は前連結会計年度に比べ12,715百万円増加し、111,017百万円となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末に比べ8,562百万円増加(前連結会計年度は6,497百万円減少)し、27,425百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果増加した資金は8,001百万円(前連結会計年度は9,980百万円増加)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益が11,267百万円、減価償却費が3,406百万円であった一方で、法人税等の支払額が3,228百万円、投資有価証券売却及び評価損益が2,230百万円、棚卸資産の増加額が1,795百万円であったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果増加した資金は1,208百万円(前連結会計年度は14,130百万円減少)となりました。これは主に定期預金の預入が1,156百万円、同払戻が3,934百万円であったことと、有形固定資産の取得による支出3,602百万円、投資有価証券の売却による収入2,599百万円が、それぞれあったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果減少した資金は2,721百万円(前連結会計年度は2,733百万円減少)となりました。これは主に配当金の支払額が2,548百万円であったことによるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年10月1日

至 2022年9月30日)

前年同期比(%)

日本  (百万円)

36,717

104.3

アジア (百万円)

11,180

113.7

米国  (百万円)

12,915

144.0

合計  (百万円)

60,814

112.6

 (注) 金額は販売価格によっており、セグメント間取引の相殺消去前の数値によっております。

 

b.商品仕入実績

 当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年10月1日

至 2022年9月30日)

前年同期比(%)

日本  (百万円)

2,510

103.8

アジア (百万円)

1,327

685.1

米国  (百万円)

合計  (百万円)

3,838

146.9

 (注) 金額は仕入価格によっており、セグメント間取引の相殺消去前の数値によっております。

 

c.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

(百万円)

前年同期比(%)

受注残高

(百万円)

前年同期比(%)

日本

36,843

99.7

2,076

104.8

アジア

13,759

139.6

912

199.1

米国

12,240

129.8

922

111.0

合計

62,842

111.7

3,911

119.6

 (注) 金額は販売価格で表示しております。

 

d.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年10月1日

至 2022年9月30日)

前年同期比(%)

日本  (百万円)

36,748

100.1

アジア (百万円)

13,501

136.9

米国  (百万円)

12,148

132.3

合計  (百万円)

62,398

111.9

  (注) セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであり、原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容であります。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。

 

①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績

(売上高)

 「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 a.経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

(営業利益)

 売上原価は前連結会計年度に比べ3,669百万円増加し、36,776百万円となりました。また、販売費及び一般管理費は前連結会計年度に比べ1,781百万円増加し、17,570百万円となりました。

 これらの結果、営業利益は前連結会計年度に比べ1,192百万円(17.4%)増加し、8,051百万円となりました。

 

(経常利益)

 経常利益は、営業利益の増加を主因に前連結会計年度に比べ1,609百万円(21.6%)増加し、9,075百万円となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 特別利益は、投資有価証券の売却益が前連結会計年度より減少したことを主因として、34百万円減少し、2,230百万円となりました。特別損失は、前連結会計年度に比べ0百万円減少し、38百万円となりました。

 税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度に比べ1,574百万円増加し、11,267百万円となりました。税金費用は、前連結会計年度に比べ277百万円増加し、3,207百万円となりました。

 これらの結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ1,243百万円(18.4%)増加し、8,007百万円となりました。

 

b.財政状態

 「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 b.財政状態の状況」に記載のとおりであります。

 

c.キャッシュ・フローの状況

 「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

d.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループでは、中期3ヵ年経営計画(連結)(毎期見直しを行うローリング方式)を定め、会社として達成すべき目標を明確にしております。2022年9月期は、売上高59,200百万円、営業利益7,630百万円、経常利益8,090百万円、親会社株主に帰属する当期純利益7,290百万円の計画(2021年11月12日公表)を掲げ、その実現に取り組んでまいりました。

 その後、売上高については、日本国内において、2022年9月期第2四半期時点で業績が想定を上回って推移し、2022年5月11日に当社単体の通期計画を上方修正したこと、並びに為替レートが当初想定レートよりも円安に推移し、海外子会社の円貨建て売上高が想定を上回る見込みであることから、連結の通期計画を61,800百万円に上方修正しました。利益につきましては、原料費の高騰、ユーティリティ費の増加等により売上原価が想定よりも増加し、売上総利益率が悪化する見込みであることから、営業利益、経常利益の連結の通期計画を下方修正(営業利益7,290百万円、経常利益8,000百万円)しました。親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、経常利益を下方修正したことに伴い、法人税等が減少する見込みであることから当初の連結の通期計画(2021年11月12日公表)並み(親会社株主に帰属する当期純利益7,300百万円)としました。

 当連結会計年度は、日本国内において、食品部門は飲料向け、フレグランス部門はハウスホールド製品向け及びトイレタリー製品向けの売上が増加し、堅調に推移いたしました。海外では、中国子会社において、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴うロックダウンの影響があったものの、米国子会社(MISSION社を含む)が好調に推移いたしました。以上の要因により、売上高は修正計画を上回る結果となりました。また、売上高が修正計画を上回ったこと、並びに売上原価、販売費及び一般管理費が修正計画を下回ったことを主因に、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益も修正計画を上回る結果となりました。

 

 セグメントごとの状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 日本は、食品部門では飲料向け、フレグランス部門ではハウスホールド製品向け及びトイレタリー製品向けの売上増加を主因に前連結会計年度比増収となりました。セグメント利益は、売上高の増加、売上原価率の改善、並びに売上高販管費率の改善を主因に前連結会計年度比増益となりました。

 アジアは、中国において、食品部門の売上が増加したものの、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴うロックダウンの影響により、フレグランス部門の売上が減少しました。しかしながら、円安の影響により円ベースでの売上は増加しました。東南アジアは、マレーシアにおいてシーズニング向け及びスナック向けの売上が増加しました。上記の他、非連結子会社としておりましたタイ子会社であるT. HASEGAWA (SOUTHEAST ASIA) CO., LTD. 及び台湾子会社である台灣長谷川香料股份有限公司の当社グループにおける重要性が増したため、当連結会計年度より新たに連結の範囲に加え、当該2社を報告セグメント「アジア」に含めております。この結果、売上高は前連結会計年度比増収となりました。セグメント利益は、中国子会社が売上原価率の悪化、並びに販売費及び一般管理費の増加により減益となったものの、マレーシア子会社が売上高の増加及び売上原価率の改善により増益となったこと、また、タイ子会社及び台湾子会社を連結の範囲に加えたことを主因に前連結会計年度比増益となりました。

 米国は、T. HASEGAWA U.S.A., INC.の健康分野向けの売上が増加したこと、及びMISSION社の業績が当社グループの連結経営成績に通期で寄与したこと(前連結会計年度は2021年1月から9月までの9ヵ月分の業績)を主因に前連結会計年度比増収となりました。セグメント利益は、売上原価率の悪化、並びに販売費及び一般管理費の増加を主因に前連結会計年度比減益となりました。

 新型コロナウイルス感染症の収束時期が見通せない中、ウクライナ情勢の長期化、原材料価格や資源価格の高騰、急速な円安の進行や物価の上昇等の影響が懸念され、先行きが不透明な状況が続くことが見込まれますが、当社グループは、「技術立社」の社是のもと、研究・技術開発力の一層の向上により、特長のある差別化された製品開発を行うとともに、生産性の向上や業務全般の効率化によるコスト削減に努めてまいります。また、少子高齢化に伴う成熟化が進行する国内市場でのシェア拡大に努める一方で、グローバル展開を更に強化し、海外市場での業績拡大を目指してまいります。

 

e.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループの経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、持続的・安定的な発展を通じて中長期的な企業価値の向上を実現していくために、必要かつ可能な範囲を意識して、連結売上高伸長率5.0%以上、2025年9月期に連結売上高営業利益率13.0%、連結売上高経常利益率14.0%を目標としております。

 当連結会計年度の連結売上高伸長率は、当社単体及び米国子会社(MISSION社を含む)の売上増加を主因に11.9%となり、連結売上高伸長率5.0%以上の目標を達成いたしました。また、売上高の増加及び売上原価率の改善による売上総利益の増加を主因に連結売上高営業利益率は、前連結会計年度比0.6ポイント改善の12.9%、連結売上高経常利益率は、営業利益の増加並びに為替差益の増加を主因に前連結会計年度比1.1ポイント改善の14.5%となりました。当社グループは、引き続きこれらの指標をさらに向上させるべく努めてまいります。

 なお、当連結会計年度を含む、直近3連結会計年度の代表的な指標の推移は以下のとおりです。

(単位:%)

 

2020年9月期

2021年9月期

2022年9月期

連結売上高伸長率

△0.6

11.1

11.9

連結売上高営業利益率

10.7

12.3

12.9

連結売上高経常利益率

11.7

13.4

14.5

 

f.経営成績に重要な影響を与える要因

 「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

g.資本の財源及び資金の流動性

 当社グループは、事業活動及び設備投資のための適切な資金確保を常に目指しており、その財源として安定的な営業キャッシュ・フローの創出を重視しております。

 当連結会計年度末の資金の流動性は十分に確保されていると認識しており、また、金融機関との間にコミットメントラインを設定することで、急な資金需要や不測の事態にも備えております。

 

 

②重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。当社グループが採用している会計方針は、以下の事項及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

 連結財務諸表の作成にあたって、当社経営陣は決算日における資産・負債の金額、並びに報告期間における収益・費用の金額のうち、見積りが必要となる事項につきましては、過去の実績・現在の状況を勘案して可能な限り正確な見積りを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これら見積りと異なる場合があります。連結財務諸表に関して、認識している特に重要な見積りを伴う会計方針は、以下のとおりです。

 

(a)繰延税金資産の回収可能性

 当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

 

(b)退職給付債務及び退職給付費用の算定

 当社グループは、退職給付債務及び退職給付費用について、数理計算上で設定される前提条件に基づき算出されております。これらの前提条件には、割引率、発生した給付額、利息費用、年金資産の長期期待運用収益率などの要素が含まれております。実際の結果がこれらの前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来の会計期間にわたって償却されるため、将来の退職給付費用に影響を及ぼす可能性があります。

 

(c)固定資産の減損

 当社グループは、有形固定資産及び無形固定資産等について、減損の兆候を判定しており、必要に応じて減損テストを実施しております。減損テストにおける回収可能価額の算定において、将来のキャッシュ・フロー、割引率等について一定の仮定を設定しております。これらの仮定は、経営者の最善の見積りと判断により決定しておりますが、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表等において認識する金額に重要な影響を与える可能性があります。

 

4【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

5【研究開発活動】

 当社グループの研究開発活動は、営業・研究・マーケティングを統括するビジネスソリューション本部のもと、当社の総合研究所を中心に推進しております。総合研究所は、香料素材及び食品素材の開発、香料の機能や付加価値の研究を行う技術研究所、並びに製品化のための調香研究と顧客商品への応用研究を行うフレーバー研究所及びフレグランス研究所で構成され、各研究所が相互に連携することで、研究・技術開発力の一層の向上を図っております。また、米国、中国及びマレーシアの子会社研究部門とも連携を深め、日本で培った技術を海外でも応用し、多様化・高度化する顧客の要望に当社グループ全体で即応できる体制を整えております。

 当社グループは、研究開発活動においても、「香料の安全性」と「環境保全(サステナビリティ)」に十分に配慮し、コンプライアンス(法令遵守)を徹底しております。

 なお、当社グループは、各種香料の製造・販売を事業内容とする単一セグメントであるため、以下部門別に研究開発活動の概要を記載しております。

 

(1) フレグランス部門

 国内の香粧品香料市場は今や成熟期にあり、国内外の香料メーカー間の競争は一段と厳しさを増し、また資源環境の変化による原材料の高騰等にも直面しております。

 このような状況下において、安全、品質、環境問題を最優先しつつ調香技術の更なる向上に努め、営業、マーケティングと一体になって研究開発を行ってきました。持続性、拡散性のある香りについての研究、調香技術のみならず分析技術、合成技術をも活用した完成度の高い香料の開発、アプリケーション面での新しい製品形態の提案、嗜好性やマーケティング調査からの顧客ニーズの確実な把握、コスト低減に係る研究などに取り組みました。その結果、数多くの製品が国内外の顧客より採用されました。

 また、グローバル化を推進する中で、海外各国・各地域の市場調査等を踏まえた技術支援を更に強化し、新規顧客の獲得に全力をあげております。

 中国子会社の長谷川香料(上海)有限公司では、多様化する顧客ニーズに応えるため、調香研究部門に加え、官能評価、応用研究の強化を進めております。

 

(2) 食品(フレーバー)部門

 フレーバー市場では国内外の香料メーカー間の競争が一段と激しくなっております。また、顧客の商品のライフサイクルも短くなっております。

 こうした状況下において、生活様式の多様化や嗜好の変化を的確に捉えるとともに、顧客のニーズに即応すべく、顧客と一体となった研究開発を行ってきました。また、より天然に近い香りのフレーバー、あるいは各種抽出技術や加工技術を駆使した新しい香料素材やコクを付与する香味アップ素材を組み合わせたフレーバーを研究開発し、これらについて顧客へ積極的なプレゼンテーションを行い、顧客のニーズに応えてきました。更に、フレーバーの新用途に関する研究開発を行い、その結果、国内外の顧客の主要な新製品に当社製品が採用されるという成果をあげました。

 また、グローバル化を目指す中で、各国のユニークな嗜好に合ったフレーバーの開発及び顧客の商品への応用研究を行うとともに、海外子会社並びに各国代理店に対する技術支援の強化を図り、顧客からの当社製品の採用を着実に増やす成果をあげております。

 米国子会社のT. HASEGAWA U.S.A., INC.の研究部門においては、顧客の商品への応用研究を拡充し、新規顧客の獲得に成果をあげております。長谷川香料(上海)有限公司では、顧客のニーズに応えるため、調香研究部門、応用試作部門並びに基礎研究部門の強化・拡充を進めております。マレーシア子会社のT HASEGAWA FLAVOURS (KUALA LUMPUR) SDN. BHD.では、主要な商材である粉末シーズニングに加え、調合香料をアジア各国で拡販するため、引き続き研究開発体制の強化を進めております。


(3) 基礎研究部門(フレグランス部門・食品部門共通)

①合成香料の研究

 当社のフレグランス製品及びフレーバー製品の香調を特徴づける合成香料の開発並びに既存製品の製造工程の合理化を目的とした製法改良と環境保全(サステナビリティ)に配慮した香料の製法開発を行いました。

②天然物に関する研究

 種々の香気捕集方法及び最新の分析機器を駆使して、香気分析手法を開発し、微量香気成分の分析精度向上を図ることで、多くの有用な天然物の香気成分組成を明らかにし、香料開発に応用しました。また、天然の香味をそのままに活かす抽出技術によるナチュラルフレーバー素材の開発を進めるとともに、天然由来の素材として天然色素、天然抗酸化物質やその他機能性食品素材の開発を行いました。一方、フルーツ加工製法やフルーツ加工に適合したフレーバーの開発をフレーバー研究所と連携して継続しました。

③官能評価・生理応答・バイオテクノロジーの研究

 頭部血流、筋電位、呼吸などの計測によるヒトの生理応答測定、及び官能評価による香料評価系の開発を継続しました。また、酵素の開発を含む微生物や酵素の基礎的研究、並びにその利用により香味強化素材物質等の開発を継続しております。

④その他香料開発に関する研究

 香料の用途に適した乳化、粉末化等の形態化技術による付加価値の高い香料製品の研究開発や香料製造における工程改良による合理化を継続するとともに、市場のニーズに即した安全性の高い、新しい食品素材の開発も行いました。

 

 当連結会計年度における研究開発費は総額で4,971百万円となっており、そのセグメント別の内訳は、日本 3,508百万円、アジア 717百万円、米国 746百万円であります。
 また、2022年9月30日現在における当社グループの研究員の数は363名でありますが、そのセグメント別の内訳は、日本 251名、アジア 85名、米国 27名であります。