第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

 当社グループは社是に「技術立社」を掲げ、研究・技術開発力の向上を図り、高品質・高付加価値製品を生み出すことを常に最優先の課題としております。

 また、厳しい経済環境のもと、香料業界における国際競争は激化し、多様化・高度化する顧客の要望への即応が求められる中、当社は以下の事項を経営の基本方針としております。

 

①企業価値の向上と株主利益の増大を目標とし、安定的で適正な利益還元を実施する。

②コンプライアンス(法令遵守)を徹底し、企業の社会的責任を全うする。

③従業員の働きやすい環境を整備する。

④社会的課題の解決に取り組み、サステナブルな社会の構築に貢献する。

 

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループでは、持続的・安定的な発展を通じて中長期的な企業価値の向上を実現していくために、必要かつ可能な範囲を意識して、連結売上高伸長率4.0%以上、2026年9月期に連結売上高営業利益率14.0%、連結売上高経常利益率15.0%を目標としております。

 当連結会計年度におきましては、連結売上高伸長率4.0%、連結売上高営業利益率11.6%、連結売上高経常利益率12.6%となりました。

 

(3) 経営環境、経営戦略及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 今後のわが国経済は、社会経済活動の正常化が進み、景気が持ち直していくことが期待されるものの、国際情勢の動向、原材料価格や資源価格の高騰、為替の大幅な変動、物価の上昇等が国内外の経済活動に与える影響が懸念され、先行きが不透明な状況が続くことが見込まれます。

 香料業界におきましても、各社のシェア獲得競争の一層の激化、品質保証に関する要求増加など厳しい状況が続くことが予想されます。

 このような状況の中で、当社グループは、「技術立社」の社是のもと、研究・技術開発力の一層の向上により、特長のある差別化された製品開発を行うとともに、生産性の向上や業務全般の効率化によるコスト削減に努めてまいります。

 また、今後の当社グループの成長を追求するためには、経営環境の変化や不測の事態に柔軟に対応できるレジリエントな組織を構築し、少子高齢化に伴う成熟化が進行する国内市場においてシェア拡大に努める一方で、グローバル展開を更に強化していくことが不可欠です。当社が重点地域と位置付ける米国、並びに中国、東南アジアを中心としたアジア地域に経営資源を効率的に投入し、市場の成長性や消費者の嗜好等を的確に捉え、経営環境の変化に応じた事業戦略を立案、推進してまいります。また、将来にわたる持続的成長の実現に向けた投資を行い、海外市場での業績拡大を目指してまいります。

 国内におきましては、営業、研究及びマーケティングを統括するビジネスソリューション本部のもと、研究面では、戦略的な研究開発を推進するため、重点分野を明確化した上で、既存技術のブラッシュアップ、新規技術の開発等に注力し、当社グループの持続的な成長に貢献する技術開発力の向上を目指してまいります。また、営業、マーケティングとの連携を活かし市場感覚と競争意識を高め、当社独自の特長のある製品の開発により競合他社との差別化を図るとともに、外部の知見を活用した新しい価値の創造、知的資産の共有、融合による技術革新の推進に注力してまいります。さらに、香料事業で培った技術を活かして社会が抱える課題の解決に貢献できるよう努めてまいります。

 食品部門では、安全・安心の確保を第一に、引き続き健康志向に根ざした低糖・低塩・低脂肪の食品に美味しさをもたらす香料、及び安定性・持続性に優れた香料の開発に取り組みます。また、食資源不足をはじめとする社会的課題の解決に向け、食品原料を代替する香料の開発等に注力いたします。

 フレグランス部門では、基礎研究を徹底し、安全性・安定性に優れた新しい香り創りにより、国内での更なるシェア拡大に注力いたします。海外におきましても市場調査及び嗜好性調査の結果を踏まえて現地の消費者に好まれる香り創りに努めてまいります。

 営業面におきましては、研究及びマーケティングと連携し、マーケット調査・分析等の活用により顧客の潜在的欲求の把握に努め、当社の総合力を活かした的確なソリューションを提供することで、顧客に信頼されるパートナーとしての地位確立、カスタマーサクセスへの貢献を通じた売上拡大及び販売シェアアップを目指してまいります。また、新規顧客の探索と開拓を強化し、将来の成長を支える営業基盤の拡充を図ってまいります。

 生産面におきましては、更なる安全対策を推進し、労働安全衛生に関する環境整備を進めてまいります。また、生産品目の変化に対応するため、工場の再構築、生産設備の統合を図ってまいります。さらに、工場周辺への臭気の拡散防止による地域住民との共生、長期的な温室効果ガス削減を推進してまいります。製造方法の改良や物流体制の見直し、在庫の適正化の取り組みも継続し、製造原価低減に努めてまいります。

 海外におきましては、経営資源を効率的に投入し、着実なグローバル展開を図る戦略のもと、米国では、T. HASEGAWA U.S.A., INC.とMISSION FLAVORS & FRAGRANCES, INC. のシナジー効果を実現しており、引き続き現地顧客向けの積極的な営業活動を推進し、米国市場での業績拡大を図ってまいります。また、昨年稼働したカリフォルニア州ランチョ・クカモンガ第2工場の第二期工事を推進し、米国における生産能力の増強及び生産効率化を図ってまいります。

 中国では、マーケティング機能を活用した戦略的な営業活動により、新規顧客開拓・既存顧客深耕に注力するとともに、利益管理を徹底し、売上、利益の両面から業績拡大を目指してまいります。また、研究機能の強化、業務の効率化を目的に、2024年2月の稼働に向けて新研究棟建設プロジェクトを推進してまいります。

 東南アジアでは、同地域全体の営業戦略のもと、マレーシア、タイ、インドネシアの各拠点及び周辺地域の営業員との連携、アプリケーションラボラトリーの活用により営業活動を強化し、業績拡大を目指してまいります。また、今後の業績拡大及び香料需要の増大を見据え、マレーシアにおける新工場建設計画を推進してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティに関する考え方

 世界的な気候変動や自然災害により、貧困、食料不足、格差の拡大など、様々な社会的課題が深刻化しています。また、国内における少子高齢化や生活者のニーズの変化などは、香料業界にも大きな影響を及ぼします。具体的には、気候変動による異常気象や生物多様性の喪失は、動植物由来の天然原料の収量や品質に大きな影響を及ぼすだけでなく、気温上昇によりもたらされる顧客ニーズや消費者動向の変化なども想定されます。

 当社グループは創業以来、食料不足をはじめとする現代社会が抱える社会的課題の解決に寄与することを目指し、枯渇する食品原料を代替する香料の開発や健康志向への対応を進めてきました。

 また、自社の成長を追求するだけでなく、従来以上にステークホルダーを重視した持続可能な社会を実現するための取り組みが求められているなか、2020年には、国連グローバル・コンパクトに署名するとともに、私たちが取り組むべきこととして6つのCSR方針(マテリアリティ)を策定しました。2021年には、事業戦略と一体となったサステナビリティの取り組みを組織的に推進することを目的として、サステナビリティ委員会を設置しました。また2022年には、気候変動対応のさらなる推進に向けてTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同しています。さらに、天然原料の安定した調達を考慮し、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)に基づく開示に向け、生物多様性への取り組みについて検討を開始しています。

 当社グループは、「目指す姿」として「香りを通じて豊かな社会づくりに貢献する」を掲げています。これからも、イノベーションにより新しい価値を創造し、社会が抱える課題を香りの技術を使って解決することで、「目指す姿」の実現に努めるとともに、当社グループの持続的成長と企業価値向上を目指してまいります。

 

①ガバナンス・リスク管理

 当社グループは、香りを通じて豊かな社会づくりに貢献するために、イノベーションで事業機会を捉えつつ、サステナビリティへの取り組みを強化し、リスク管理を徹底しています。

 当社のサステナビリティに関する責任者は代表取締役社長です。その中で、CSR方針に掲げる事項やESGを含めたサステナビリティへの取り組みをグループ全体で戦略的に推進していくため、サステナビリティ委員会を設置しています。同委員会は、管理部門管掌役員を委員長とし、各部門の管掌役員の推薦により委員長が任命した委員で構成しております。同委員会では、グループ全体のサステナビリティに関する事業戦略の立案、取り組み内容等の重要事項についての審議・決議を行います。サステナビリティ委員会の審議事項は、必要に応じて代表取締役及び代表取締役が指名した執行役員で構成する戦略会議及び取締役会に付議・報告します。

 また、内容に応じて関係各部に権限移譲を行っています。事業に影響をもたらすリスクについては、サステナビリティ委員会のみならず、代表取締役社長を委員長とするリスク管理委員会において、報告されています。

 

 

 CSR方針とリスク・機会、事業戦略との関係性を確認し、以下に整理しています。

CSR方針(マテリアリティ)

事業戦略、アプローチ

調達

バリューチェーン全体において責任ある調達を推進します。

事業機会の増大

・海外での現地調達・現地生産

リスクの低減

・原料在庫管理の徹底、購買ルートの多様化

・海外での現地調達・現地生産におけるリスク分散

・代替原料の調査、開発

・サプライヤーへのサステナビリティ調査と支援

環境

環境負荷軽減の重要性を理解し、積極的に環境保全・向上活動に取り組みます。

事業機会の増大

・気候変動によって生じる社会的ニーズへの対応

リスクの低減

・環境に配慮した製品設計・製造、環境安全監査

・廃棄物の有効利用、脱臭設備の充実

人権労働

人権と多様性を尊重し、従業員の福利向上と安全で働きやすい職場を実現します。

事業機会の増大

・生産効率の向上

リスクの低減

・人財の確保

・人権侵害の予防、救済

・労働災害の防止

品質安全

製品の安全性に関して先端的な担い手となります。

事業機会の増大

・安全・安心で嗜好性の高い、多様なフレーバー、

 フレグランス等を提供できる仕組みづくり

リスクの低減

・効率的な生産体制の整備、製品の安定供給

・検査体制の充実と厳格な規格設定による信頼性の高い品質保証体制

・高品質な製品を製造する技能者の育成

ガバナンス

公正な

企業活動

経営の健全性・公正性・透明性を確保し、社会にとって信頼できるパートナーになります。

リスクの低減

・透明性の高い経営

イノベーション

香料事業を通じて社会課題の解決に貢献します。

事業機会の増大

・研究開発への投資維持

・スピーディーな開発:顧客の要望や潜在的欲求を

 的確に捉え、迅速に対応

・顧客へのきめ細やかな対応

・気候変動を機とした代替原料の需要増への対応

 

②戦略

 当社が以前から行ってきたCSR活動と、IFRA-IOFI サステナビリティ憲章や、国連グローバル・コンパクトへの賛同を踏まえ、社会課題解決に対する「事業プロセスを通じた貢献」と「製品を通じた貢献」の2つの側面から当社のマテリアリティを検討し、6つのCSR方針(調達、環境、人権労働、品質安全、ガバナンス 公正な企業活動、イノベーション)を定めました。

 CSR方針の策定プロセスと定期的なレビューにつきましては以下のとおりです。

 当社及びステークホルダーの視点に立って重要性について検討し、代表取締役及び代表取締役が指名した執行役員で構成する戦略会議の承認を得て、CSR方針を策定しています。また、今後CSR方針を変更する場合も戦略会議の承認のもと、変更することとしています。

 なお、当社のサステナビリティに関する戦略につきましては、当社ウェブサイトのサステナビリティページの「サステナビリティレポート」に記載しております。

 

 

 

③指標及び目標

 当社は、CSR方針(マテリアリティ)に実効的に取り組んでいくために、KPIを設定し、進捗を確認しています。

CSR方針(マテリアリティ)

KPI

調達

バリューチェーン全体において責任ある調達を推進します。

・サプライヤーアセスメント実施率

  2023年度:実施率70%

  2024年度:実施率80%

環境

環境負荷軽減の重要性を理解し、積極的に環境保全・向上活動に取り組みます。

・ISO14001の認証継続

・CO2排出量(スコープ1,2)

  2030年度までに2013年度比46%削減

人権労働

人権と多様性を尊重し、従業員の福利向上と安全で働きやすい職場を実現します。

・女性管理職比率

  2024年度までに18%以上

・キャリア採用者管理職比率

  2024年度までに18%以上

・外国人従業員に占める管理職比率

  30%以上の維持

・新人事制度を踏まえた面談実施率

  100%

品質安全

製品の安全性に関して先端的な担い手となります。

・ISO9001、FSSC22000の認証継続

ガバナンス

公正な

企業活動

経営の健全性・公正性・透明性を確保し、社会にとって信頼できるパートナーになります。

・取締役会実効性評価実施

  年1回

・コンプライアンス理解度テスト受験率

  100%

・ハラスメント予防研修受験率(新任管理職対象)

  100%

・内部統制に関する研修実施

 (新入社員向け、新任管理職向け)

  各年1回以上

・重点リスク対応の経過報告(フォローアップ)実施

  年2回以上

イノベーション

香料事業を通じて社会課題の解決に貢献します。

・売上高に対する研究開発費比率

  連結ベースで8%程度

・オープンイノベーションの継続実施

 KPIに対する実績値及び進捗に対する評価や今後の方針につきましては、当社ウェブサイトのサステナビリティページの「サステナビリティレポート」及び「ESGデータブック」に記載しております。

 

(2)気候変動への対応(TCFD提言への取り組み)

①ガバナンス・リスク管理

 当社の気候変動への対応に関して、代表取締役社長が任命するCSR部管掌役員を委員長とする全社環境安全委員会を設置しています。全社環境安全委員会にて、気候変動を含む環境保全及び安全対策に関する全社的な方針、活動計画などを審議・決定しています。さらに、本社、総合研究所、深谷工場、板倉工場という事業所ごとの環境安全委員会を設置し、全社的な活動方針に則り、具体的な活動方針・目標を定めて、環境及び安全に関する活動を推進しています。

 また、当社では、気候変動に関して、事業に影響をもたらすリスク・機会を洗い出し、評価しております。具体的には、自然災害の増加等の物理リスクや機会については、気候変動が進行するシナリオ(4℃シナリオ)をもとに、脱炭素社会への移行に伴う移行リスクや機会については、脱炭素が実現するシナリオ(1.5℃・2℃未満シナリオ)をもとにシナリオ分析を行い、2030年に向けたリスクや機会の影響度を評価しています。事業に影響をもたらすリスクについては、代表取締役社長を委員長とするリスク管理委員会及び戦略会議において報告されています。

 

 

②戦略

 当社では、TCFDの要請事項を踏まえ、シナリオ分析を行っています。当社を取り巻く「メガトレンド・事業環境の変化」「長谷川香料に与える影響」のうち、環境関連のものを対象に、環境関連のリスク・事業機会が当社に与える影響を評価しました。自然災害の増加等の物理的リスクや機会については、気候変動が進行するシナリオ(4℃シナリオ)を参照し、脱炭素社会への移行に伴うリスクや機会については、脱炭素が実現するシナリオ(1.5℃・2℃未満シナリオ)を参照し、2030年に向けたリスクや機会の影響度を評価しています。気候変動は企業経営に様々な影響を与えますが、「創香力」によるイノベーションで事業機会を捉えつつ、リスク管理を徹底することで、豊かな社会づくりへの貢献と、持続的成長の実現を目指します。

 なお、当社の気候変動への対応に関する戦略につきましては、当社ウェブサイトのサステナビリティページの「TCFD提言に基づく開示」に記載しております。

 

③指標と目標

 当社は、「CO2排出量2030年度46%削減(2013年度比)」に向けて取り組みを進めています。スコープ3排出量について算出可能なカテゴリより算出しています。また、CO2排出量算定について第三者検証を受けることで、環境負荷の実態把握を一層進めるとともに、長期的なCO2排出量の削減に取り組んでいます。

 なお、当社のCO2排出量及び進捗に対する評価や今後の方針につきましては、当社ウェブサイトのサステナビリティページの「サステナビリティレポート」及び「ESGデータブック」に記載しております。

 

(3)人的資本

①戦略

 当社は、CSR方針(マテリアリティ)に「人権労働」を掲げ、人権と多様性を尊重し、従業員の福利向上と安全で働きやすい職場の実現を目指しています。

 

a.人財育成戦略

 「従業員の働きやすい環境を整備する」という経営方針に則り、「人財が成長し、働く意欲・モチベーションを維持できる活気あふれる企業風土」を目指すとともに、キャリアアップの機会を人種、国籍、性別、宗教、障がいの有無などに関わらず平等に提供することを定めています。

 

b.中核人財の登用等における多様性の確保

 当社は、社員一人ひとりの多様性を尊重し、性別・国籍・キャリア採用者に関わりなく優秀な人財を積極的に管理職として登用してきました。管理職登用後も、組織力向上研修をはじめ継続的に教育を実施しスキルアップを図ります。当社は女性管理職比率についてさらなる向上を目指し、今後も変化する経営環境に対応すべく、女性・キャリア採用者の管理職登用を進めてまいります。また、成長戦略における海外事業の拡大を進めるべく、優秀な外国人の登用も継続していきます。

 

c.安全で働きがいのある職場づくり

 「従業員の働きやすい環境を整備する」という経営方針に則り、「人財が成長し、働く意欲・モチベーションを維持できる活気あふれる企業風土」を目指しています。

 

働きやすい職場環境のための制度

制度

内容

自己申告制度

職場の活性化、適正かつ有効な人員配置、人財の有効活用を目的として、従業員が自身の仕事のみならず個人の事情などを会社に伝えることができる制度を設置しています。

ノー残業デー

毎週水曜日はノー残業デーとし仕事のやり方を見直して業務効率化を図っています。併せて所定外労働を削減することによりプライベートの時間を充実させ健康的な生活を促します。

育児・介護のための休暇制度

該当する家族がいる従業員が1年間につき5日間(2名以上の場合は10日間)を有給にて休暇を取得できる制度を設置しています。1日単位及び時間単位で利用することができます。

育児・介護のための短時間勤務制度

該当する家族がいる従業員は1日の所定時間を5時間または6時間とする制度を設置しています。

育児・介護による離職者の求職登録制度

育児・介護等の事由で退職し、中途採用情報の提供を希望する従業員に対し、該当する求人があった際に情報提供を行う制度を設置しています。

時間単位有休制度(全社員対象)

育児や介護のみならず、全社員が時間単位で有給休暇を取得できる制度を設置しています。

永年勤続表彰

勤続15、25、35周年を迎えた従業員にリフレッシュ休暇及び副賞を授与しています。

文化体育行事

従業員の自主的な参加により、仕事以外でも相互の親睦を図るとともに仕事に対する意欲を高めることを目的として、スポーツ大会等の全社行事、観劇等の事業所行事、各種クラブ活動等を実施しています。

(有価証券報告書提出日時点)

 

②指標と目標

多様性の確保の自主的かつ測定可能な目標及び状況

項目

現状

目標

達成時期

女性管理職比率

15.1%

18%以上

2024年9月末

キャリア採用者管理職比率

17.7%

18%以上

2024年9月末

外国人従業員に占める管理職比率

33.3%

30%以上

現状維持

(2023年9月末時点の実績)

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 当社グループは、毎年全社的なリスク調査を実施し、リスクの洗い出しを行っております。リスク調査の分析結果につきましては、代表取締役社長を委員長とし、取締役をメンバーに含むグループ会社の横断的な組織であるリスク管理委員会に報告しております。分析結果の報告を受け、リスク管理委員会において重点リスクとして選定したより重要なリスクは、「人権に係るリスク」、「災害等に係るリスク」、「子会社管理に係るリスク」、「情報セキュリティに係るリスク」及び「減損損失に係るリスク」であります。

 なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

リスク項目

リスクの内容

リスクが顕在化した場合に経営成績等の状況に与える影響の内容

リスクが顕在化する可能性の程度や時期

当該リスクへの対応策

人権に係るリスク

当社グループに関わる事業領域全体で人権を侵害する行為が発生した場合、当社グループの社会的信用の失墜につながり、業績に影響を与える。

・当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識している。

・「人権の尊重」の項目を含む「長谷川香料企業行動規範」、「人権基本方針」、国連グローバル・コンパクト10原則に基づき、人権を尊重した事業活動を推進する。

・事業活動による人権への負の影響を予防・軽減するために、毎年実施している全社的なリスク調査を通じて対応すべき人権リスクを特定する。特定したリスクへの対策を行うとともに定期的にモニタリング・情報開示を実施し、取り組みの改善を図る。

・サプライチェーン全体で持続可能な成長を実現できるよう資源・環境・人権に配慮した調達活動を推進する。人権に対しては、「人権への配慮」の項目を含む「長谷川香料グループ調達方針」、「人権の尊重」の項目を含む「長谷川香料グループ・サプライヤーガイドライン」を制定し、サプライヤーに対して周知徹底する。また、サプライヤーアセスメントを実施し、調査結果に基づく課題を抽出し、サプライヤーとともに課題解決に向けて協調することでサステナビリティ調達を推進する。

天候に係るリスク

天候不順により顧客業界(飲料業界、食品業界、トイレタリー業界等)の最終商品の販売が低迷し、当社グループの業績に影響を与える。

・当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識している。

・天候不順による影響を最も大きく受ける飲料向け以外のカテゴリーの売上高構成比率向上を目指す。

原材料調達に係る

リスク

生産地における異常気象(サイクロン、ハリケーンの発生等)による被害、社会不安(テロ、戦争、感染症等)、調達先における事故等により原材料の調達が困難になり、当社グループの業績に影響を与える。

・市場動向によるため、顕在化する可能性は翌期以降においても常にあるものと認識している。

・世界各国の複数の取引先からの原材料調達に努め、調達先の分散、調達手段の多様化を推進する。

・当社グループの国内外各拠点の連携によるグローバル購買を実施する。

 

 

リスク項目

リスクの内容

リスクが顕在化した場合に経営成績等の状況に与える影響の内容

リスクが顕在化する可能性の程度や時期

当該リスクへの対応策

災害等に係る

リスク

当社グループの生産拠点に、自然災害(地震、台風等)や社会不安(テロ、戦争、感染症等)による被害が発生し、当社グループの業績に影響を与える。

・当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識している。

・災害等の不測の事態や危機の発生時に事業の継続を図るため、事業継続規程及びその下位規程である事業継続要領を定め、運用する。また、大規模災害を想定した消防訓練及び安否確認訓練を実施し、実効性を高める。

品質に係るリスク

製品の欠陥に起因する損害が発生し、当社グループの業績に影響を与える。

・当該リスクが顕在化する可能性は低いものの、翌期以降においても常にあるものと認識している。

・「食の安全性」に関わるメーカーとして、安全性を第一に、顧客に満足いただける品質の製品供給に努める。

・代表取締役社長直轄の品質保証部を中心として、研究開発、原材料調達、生産、販売を含めた総合的な品質保証体制を構築し、製品の安全性確保に万全を期す。

・万一に備え、製造物賠償責任保険を付保する。

経済情勢等に係る

リスク

当社グループが事業を展開する各国の経済情勢や景気動向、金融情勢、並びにこれらの影響を受ける個人消費の動向等により、顧客の最終商品の販売が低迷し、当社グループの業績に影響を与える。

・当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識している。

・米国、並びに中国、東南アジアを中心としたアジア地域においてグローバル展開を推進し、進出地域を分散する。

・当社グループが進出する各国・各地域において市場の成長性や消費者の嗜好等を的確に捉え、変化の著しい経営環境に迅速かつ柔軟に対応可能な事業戦略を立案、推進する。

環境に係るリスク

国内外で環境関連法令等が厳格化された場合、費用負担の増大、事業活動の制限等により当社グループの業績に影響を与える。

・当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識している。

・環境問題に対して、事業を展開している各国・各地域の環境関連法令等の遵守を徹底する。

・CSR方針及び「長谷川香料企業行動規範」に、環境保全及び環境問題の改善に積極的に取り組む旨を定め、環境に配慮した事業活動を行う。

減損損失に係る

リスク

当社グループの資産の時価が著しく下落した場合、又は事業の収益性が悪化した場合には、減損会計の適用により固定資産の減損損失が発生し、当社グループの業績に影響を与える。

・当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識している。

・保有する固定資産の収益性について適宜評価を実施し、その評価に基づく保有の継続可否、活用策の立案等を検討する。また、固定資産の安定的な維持管理のための設備投資を行い、資産価値の向上に努める。

・M&Aを実施する際は、事業計画の策定、将来価値の測定について十分な検討を行う。また、M&A実施後は、想定したシナジー効果を最大限に発揮するため、PMI(買収後統合)を計画的に推進する。

 

 

 

リスク項目

リスクの内容

リスクが顕在化した場合に経営成績等の状況に与える影響の内容

リスクが顕在化する可能性の程度や時期

当該リスクへの対応策

子会社管理に係る

リスク

当社グループは、日本国内のほか、海外市場を成長ドライバーと位置付け、中国、東南アジアを中心としたアジア地域及び米国においてグローバル展開を強化している。しかしながら、国内外の子会社管理(企業統治)が不十分であることにより、不正・不祥事等が発生した場合、企業イメージの悪化、信用失墜等により、当社グループの業績に影響を与える。

・当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識している。

・当社グループは、信頼性・透明性の高い経営体制の基盤となるコーポレート・ガバナンスを重要な課題と位置付け、子会社を含め、実効性あるガバナンス体制の強化に努める。

・「長谷川香料企業行動規範」とコンプライアンス規程を子会社にも適用し、当社グループ全体のコンプライアンス体制の構築に努める。また、子会社において違法行為の通報の受け皿として社内通報制度を設ける。

・海外子会社において重要基本規程を整備し、海外子会社のガバナンス体制を強化した。

・海外子会社の運営リスクを当社グループの重点リスクと位置付け、整備した重要基本規程の運用等を含め、策定した海外子会社に対する業務監査の実施要領・計画に基づき、定期的に海外子会社に対する業務監査を実施する。

為替レートの変動に係るリスク

海外現地法人の現地通貨建ての財務諸表項目は、連結財務諸表の作成のため円貨換算されており、換算時の為替レートによって、当社グループの業績に影響を与える。

・市場動向によるため、顕在化する可能性は翌期以降においても常にあるものと認識している。

・米国、並びに中国、東南アジアを中心としたアジア地域におけるグローバル展開を推進し、海外で現地生産、現地販売を行うことにより為替レートの変動リスクの低減を図る。

・為替レートの変動を織り込んだ経営計画を策定する。

・当社単体では、日本国内からの輸出額と海外からの原材料の輸入額がほぼ均衡しているため、為替レートの変動による影響はほとんど受けない。

情報セキュリティに係るリスク

当社グループの事業活動に係る情報資産が、サイバー攻撃、コンピューターウイルスへの感染、システム障害等により、逸失、棄損あるいは外部に漏洩した場合、業務停止や当社グループの社会的信用の失墜につながり、業績に影響を与える。

・当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識している。

・「情報セキュリティ基本方針および対策基準」をはじめとした情報セキュリティに関する規程を整備し、当社グループが保有する情報資産の適切な運用・管理を徹底する。

・情報セキュリティソフトの導入等により、早期検知・防御・対応が可能な環境を整備する。

・全役員及び全従業員に対し、情報セキュリティに関する定期的な教育を実施するほか、通達等による啓蒙活動を行い、情報セキュリティに対する意識の向上を図る。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は、次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

a.経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の位置づけが5類感染症に移行したことに伴い行動制限が緩和され、社会経済活動が正常化に向かい、景気は緩やかな回復が見られました。一方で、ウクライナ情勢の長期化、原材料価格や資源価格の高騰、円安の進行等が国内外の経済活動に与える影響が懸念され、依然として先行きは不透明な状況で推移いたしました。

 香料業界は、国内市場の成熟化、同業者間での競争激化、品質保証に関する要求増加など、依然として厳しい状況にありました。

 このような環境の中で、当社グループは製品の品質管理と安全性の確保を第一に、研究・技術開発力の一層の向上に努め、当社独自の高品質・高付加価値製品の開発に注力してまいりました。

 当連結会計年度におきましては、売上高は前連結会計年度に比べ2,476百万円(4.0%)増加し、64,874百万円となりました。なお、当社単体の売上高は前連結会計年度比1.4%の増収、主要な海外連結子会社の売上高は、米国子会社が円安の影響により前連結会計年度比4.6%の増収(現地通貨ベースでは同6.3%の減収)、中国子会社が前連結会計年度比8.6%の増収(現地通貨ベースでは同4.6%の増収)、マレーシア子会社が前連結会計年度比24.2%の増収(現地通貨ベースでは同16.9%の増収)となりました。

 部門別に見ますと、食品部門は、当社単体、中国子会社、及び円安の影響による米国子会社の売上増加を主因に前連結会計年度比5.0%増加し、57,075百万円となりました。

 フレグランス部門は、当社単体の売上が減少したことを主因に前連結会計年度比3.0%減少し、7,799百万円となりました。

 利益につきましては、営業利益は原料費等の増加に伴う売上原価率の悪化、並びに販売費及び一般管理費の増加を主因に前連結会計年度に比べ544百万円(6.8%)減少し、7,507百万円となりました。経常利益は営業利益の減少並びに為替差益の減少を主因に、前連結会計年度に比べ890百万円(9.8%)減少し、8,185百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益の減少並びに投資有価証券売却益の減少を主因に、前連結会計年度に比べ1,335百万円(16.7%)減少し、6,671百万円となりました。

 なお、当連結会計年度おける損益計算書の換算に適用する主要通貨の日本円への換算レート(期中平均レート)は、下記のとおりです。

  1米ドル=138.98円(前年同期124.46円、前年同期比11.7%円安)

  1人民元=19.68円(前年同期18.96円、前年同期比3.8%円安)

  1マレーシアリンギット=30.71円(前年同期28.90円、前年同期比6.3%円安)

 

 セグメントの経営成績は次のとおりであります。なお、セグメントごとの経営成績については、セグメント間の内部売上高等を含めて表示しております。

(日本)

 売上高は、食品部門の売上増加を主因に39,718百万円(前連結会計年度比1.4%増)となりました。セグメント利益は、原料費等の増加に伴う売上原価率の悪化を主因に4,518百万円(前連結会計年度比12.5%減)となりました。

(アジア)

 売上高は、中国子会社及びマレーシア子会社の売上増加を主因に15,077百万円(前連結会計年度比10.1%増)となりました。セグメント利益は、中国子会社が売上高の増加及び売上原価率の改善により増益となったことを主因に3,094百万円(前連結会計年度比27.3%増)となりました。

(米国)

 売上高は、米国景気の先行き不透明感への懸念を背景に、フレーバー業界全体が落ち込んだ影響を受けるも、円安の影響により12,861百万円(前連結会計年度比4.8%増)となりました。セグメント損失は、売上原価率の悪化、並びに円安の影響による販売費及び一般管理費の増加を主因に166百万円(前連結会計年度は511百万円のセグメント利益)となりました。

b.財政状態の状況

 資産、負債及び純資産の状況

(流動資産)

 前連結会計年度に比べ、現金及び預金が5,348百万円、売掛金が1,073百万円、それぞれ増加した一方で、有価証券が1,999百万円減少したことを主因として、流動資産は前連結会計年度に比べ4,675百万円増加し、70,665百万円となりました。

 

(固定資産)

 有形固定資産は、前連結会計年度に比べ、建物及び構築物(純額)が449百万円、建設仮勘定が1,049百万円、それぞれ増加したことを主因として、前連結会計年度に比べ1,562百万円増加し、35,314百万円となりました。

 無形固定資産は、償却が進んだことによりのれんが755百万円、顧客関連資産が320百万円、それぞれ減少した一方で、その他に含まれるソフトウエアとソフトウエア仮勘定が合わせて511百万円増加したことを主因として、前連結会計年度に比べ、570百万円減少し、19,624百万円となりました。

 投資その他の資産は、投資有価証券を売却したことを主因として、前連結会計年度に比べ94百万円減少し、13,521百万円となりました。

 

(流動負債)

 前連結会計年度に比べ、買掛金が786百万円、未払法人税等が874百万円それぞれ減少したことを主因として、流動負債は前連結会計年度に比べ1,202百万円減少し、12,129百万円となりました。

 

(固定負債)

 前連結会計年度に比べ、繰延税金負債が253百万円、その他に含まれる長期リース債務が1,107百万円それぞれ増加したことを主因に、固定負債は前連結会計年度に比べ1,473百万円増加し、10,677百万円となりました。

 

(純資産の部)

 前連結会計年度に比べ、利益剰余金が4,120百万円,為替換算調整勘定が1,253百万円それぞれ増加した一方で、その他有価証券評価差額金が103百万円減少しました。これらを主因として、純資産合計は前連結会計年度に比べ5,301百万円増加し、116,319百万円となりました。

  1米ドル=149.58円(前連結会計年度末144.81円、前連結会計年度末比3.3%円安)

  1人民元=20.46円(前連結会計年度末20.37円、前連結会計年度末比0.4%円安)

  1マレーシアリンギット=31.88円(前連結会計年度末31.24円、前連結会計年度末比2.0%円安)

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末に比べ2,531百万円増加(前連結会計年度は8,562百万円増加)し、29,957百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果増加した資金は8,012百万円(前連結会計年度は8,001百万円増加)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益が9,322百万円、減価償却費が3,700百万円であった一方で、法人税等の支払額が3,226百万円、投資有価証券売却及び評価損益が1,203百万円、売上債権の増加額が1,042百万円であったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果減少した資金は3,092百万円(前連結会計年度は1,208百万円増加)となりました。これは主に定期預金の預入が2,283百万円、同払戻が1,511百万円であったことと、有形固定資産の取得による支出2,805百万円、投資有価証券の売却による収入1,270百万円が、それぞれあったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果減少した資金は2,657百万円(前連結会計年度は2,721百万円減少)となりました。これは主に配当金の支払額が2,552百万円であったことによるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年10月1日

至 2023年9月30日)

前年同期比(%)

日本  (百万円)

37,719

102.7

アジア (百万円)

12,108

108.3

米国  (百万円)

13,873

107.4

合計  (百万円)

63,701

104.7

 (注) 金額は販売価格によっており、セグメント間取引の相殺消去前の数値によっております。

 

b.商品仕入実績

 当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年10月1日

至 2023年9月30日)

前年同期比(%)

日本  (百万円)

2,254

89.8

アジア (百万円)

1,882

141.9

米国  (百万円)

合計  (百万円)

4,136

107.8

 (注) 金額は仕入価格によっており、セグメント間取引の相殺消去前の数値によっております。

 

c.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

(百万円)

前年同期比(%)

受注残高

(百万円)

前年同期比(%)

日本

37,063

100.6

1,896

91.4

アジア

13,489

98.0

900

98.7

米国

12,980

106.0

1,753

190.2

合計

63,533

101.1

4,551

116.4

 (注) 金額は販売価格で表示しております。

 

d.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年10月1日

至 2023年9月30日)

前年同期比(%)

日本  (百万円)

37,243

101.3

アジア (百万円)

14,920

110.5

米国  (百万円)

12,710

104.6

合計  (百万円)

64,874

104.0

  (注) セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであり、原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容であります。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。

 

①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績

(売上高)

 「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 a.経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

(営業利益)

 売上原価は前連結会計年度に比べ2,409百万円増加し、39,185百万円となりました。また、販売費及び一般管理費は前連結会計年度に比べ611百万円増加し、18,181百万円となりました。

 これらの結果、営業利益は前連結会計年度に比べ544百万円(6.8%)減少し、7,507百万円となりました。

 

(経常利益)

 経常利益は、営業利益並びに為替差益の減少を主因に前連結会計年度に比べ890百万円(9.8%)減少し、8,185百万円となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 特別利益は、投資有価証券の売却益が前連結会計年度より減少したことを主因として、1,027百万円減少し、1,203百万円となりました。特別損失は、前連結会計年度に比べ27百万円増加し、65百万円となりました。

 税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度に比べ1,944百万円減少し、9,322百万円となりました。税金費用は、前連結会計年度に比べ556百万円減少し、2,650百万円となりました。

 これらの結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ1,335百万円(16.7%)減少し、6,671百万円となりました。

 

b.財政状態

 「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 b.財政状態の状況」に記載のとおりであります。

 

c.キャッシュ・フローの状況

 「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

d.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループでは、中期3ヵ年経営計画(連結)(毎期見直しを行うローリング方式)を定め、会社として達成すべき目標を明確にしております。2023年9月期は、売上高66,000百万円、営業利益7,000百万円、経常利益7,450百万円、親会社株主に帰属する当期純利益6,170百万円の計画(2022年11月11日公表)を掲げ、その実現に取り組んでまいりました。

 その後、売上高については、2023年9月期第3四半期時点で日本国内は概ね想定通り推移した一方で、米国において市場の回復が当初想定よりも遅れ、米国子会社が当該影響を受け、想定を下回って推移したことから、連結の通期計画を64,600百万円に下方修正しました。利益につきましては、日本国内において、売上構成の変化により売上原価率が想定よりも改善したこと、また販売費及び一般管理費が想定を下回って推移したことから当社単体の営業利益、経常利益、当期純利益の通期計画を上方修正したこと、並びに中国子会社において売上構成の変化により売上原価率が想定よりも改善したことから、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益の連結の通期計画を上方修正(営業利益7,600百万円、経常利益8,050百万円、親会社株主に帰属する当期純利益6,600百万円)しました。

 当連結会計年度は、日本国内において、食品部門の売上が増加し堅調に推移いたしました。海外では、中国子会社において食品部門の売上が増加したこと、並びに円安の影響により米国子会社の売上が増加いたしました。以上の要因により、売上高は修正計画を上回る結果となりました。利益につきましては、売上高は修正計画を上回ったものの、日本国内において売上原価が想定よりも増加したことを主因に、営業利益は修正計画を下回る結果となりました。経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益は、為替差益等が想定よりも増加したことを主因に修正計画を上回る結果となりました。

 

 セグメントごとの状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 日本は、食品部門の売上増加を主因に前連結会計年度比増収となりました。セグメント利益は、原料費等の増加に伴う売上原価率の悪化を主因に前連結会計年度比減益となりました。

 アジアは、中国において食品部門の売上が増加したこと、及びマレーシアにおいてスナック向け等の売上が増加した結果、売上高は前連結会計年度比増収となりました。セグメント利益は、中国子会社が売上高の増加及び売上原価率の改善により増益となったことを主因に前連結会計年度比増益となりました。

 米国は、米国景気の先行き不透明感への懸念を背景に、フレーバー業界全体が落ち込んだ影響を受け、現地通貨ベースでは前連結会計年度比減収となりましたが、円安の影響により円ベースでは前連結会計年度比増収となりました。セグメント利益は、売上原価率の悪化、並びに円安の影響による販売費及び一般管理費の増加を主因に赤字となりました。

 

 今後のわが国経済は、社会経済活動の正常化が進み、景気が持ち直していくことが期待されるものの、国際情勢の動向、原材料価格や資源価格の高騰、為替の大幅な変動、物価の上昇等が国内外の経済活動に与える影響が懸念され、先行きが不透明な状況が続くことが見込まれますが、当社グループは、「技術立社」の社是のもと、研究・技術開発力の一層の向上により、特長のある差別化された製品開発を行うとともに、生産性の向上や業務全般の効率化によるコスト削減に努めてまいります。また、少子高齢化に伴う成熟化が進行する国内市場でのシェア拡大に努める一方で、グローバル展開を更に強化し、海外市場での業績拡大を目指してまいります。

 

e.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループの経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、持続的・安定的な発展を通じて中長期的な企業価値の向上を実現していくために、必要かつ可能な範囲を意識して、連結売上高伸長率4.0%以上、2026年9月期に連結売上高営業利益率14.0%、連結売上高経常利益率15.0%を目標としております。

 当連結会計年度の連結売上高伸長率は、当社単体、中国子会社、円安の影響による米国子会社の売上増加を主因に4.0%となり、連結売上高伸長率4.0%以上の目標を達成いたしました。また、連結売上高営業利益率は、原料費等の増加に伴う売上原価率の悪化、並びに販売費及び一般管理費の増加を主因に前連結会計年度比1.3ポイント悪化の11.6%、連結売上高経常利益率は、営業利益の減少並びに為替差益の減少を主因に前連結会計年度比1.9ポイント悪化の12.6%となりました。当連結会計年度は、連結売上高営業利益率及び連結売上高経常利益率が前連結会計年度比悪化いたしましたが、当社グループは、引き続きこれらの指標を向上させるべく努めてまいります。

 なお、当連結会計年度を含む、直近3連結会計年度の代表的な指標の推移は以下のとおりです。

(単位:%)

 

2021年9月期

2022年9月期

2023年9月期

連結売上高伸長率

11.1

11.9

4.0

連結売上高営業利益率

12.3

12.9

11.6

連結売上高経常利益率

13.4

14.5

12.6

 

f.経営成績に重要な影響を与える要因

 「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

g.資本の財源及び資金の流動性

 当社グループは、事業活動及び設備投資のための適切な資金確保を常に目指しており、その財源として安定的な営業キャッシュ・フローの創出を重視しております。

 当連結会計年度末の資金の流動性は十分に確保されていると認識しており、また、金融機関との間にコミットメントラインを設定することで、急な資金需要や不測の事態にも備えております。

 

 

②重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。当社グループが採用している会計方針は、以下の事項及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

 連結財務諸表の作成にあたって、当社経営陣は決算日における資産・負債の金額、並びに報告期間における収益・費用の金額のうち、見積りが必要となる事項につきましては、過去の実績・現在の状況を勘案して可能な限り正確な見積りを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これら見積りと異なる場合があります。連結財務諸表に関して、認識している特に重要な見積りを伴う会計方針は、以下のとおりです。

 

(a)繰延税金資産の回収可能性

 当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

 

(b)退職給付債務及び退職給付費用の算定

 当社グループは、退職給付債務及び退職給付費用について、数理計算上で設定される前提条件に基づき算出されております。これらの前提条件には、割引率、発生した給付額、利息費用、年金資産の長期期待運用収益率などの要素が含まれております。実際の結果がこれらの前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来の会計期間にわたって償却されるため、将来の退職給付費用に影響を及ぼす可能性があります。

 

(c)固定資産の減損

 当社グループは、有形固定資産及び無形固定資産等について、減損の兆候を判定しており、必要に応じて減損テストを実施しております。減損テストにおける回収可能価額の算定において、将来のキャッシュ・フロー、割引率等について一定の仮定を設定しております。これらの仮定は、経営者の最善の見積りと判断により決定しておりますが、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表等において認識する金額に重要な影響を与える可能性があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループの研究開発活動は、営業・研究・マーケティングを統括するビジネスソリューション本部のもと、当社の総合研究所を中心に推進しております。総合研究所は、香料素材及び食品素材の開発、香料の機能や付加価値の研究を行う技術研究所、並びに製品化のための調香研究と顧客商品への応用研究を行うフレーバー研究所及びフレグランス研究所で構成され、各研究所が相互に連携することで、研究・技術開発力の一層の向上を図っております。また、米国、中国及びマレーシアの子会社研究部門とも連携を深め、日本で培った技術を海外でも応用し、多様化・高度化する顧客の要望に当社グループ全体で即応できる体制を整えております。

 当社グループは、研究開発活動においても、「香料の安全性」と「環境保全(サステナビリティ)」に十分に配慮し、コンプライアンス(法令遵守)を徹底しております。

 なお、当社グループは、各種香料の製造・販売を事業内容とする単一セグメントであるため、以下部門別に研究開発活動の概要を記載しております。

 

(1) フレグランス部門

 国内の香粧品香料市場は今や成熟期にあり、国内外の香料メーカー間の競争は一段と厳しさを増し、また資源環境の変化による原材料の高騰等にも直面しております。

 このような状況下において、安全、品質、環境問題を最優先しつつ調香技術の更なる向上に努め、営業、マーケティングと一体になって研究開発を行ってきました。調香技術、分析技術、合成技術を活用し、持続性、拡散性のある完成度の高い香料の開発、アプリケーション面での新しい製品形態の提案、嗜好性やマーケティング調査からの顧客ニーズの確実な把握、コスト低減に係る研究などに取り組みました。その結果、数多くの製品が国内外の顧客より採用されました。

 また、グローバル化を推進する中で、海外各国・各地域の市場調査等を踏まえた技術支援を更に強化し、新規顧客の獲得に全力をあげております。

 中国子会社の長谷川香料(上海)有限公司では、多様化する顧客ニーズに応えるため、調香研究部門に加え、官能評価、応用研究の強化を進めております。

 

(2) 食品(フレーバー)部門

 フレーバー市場では国内外の香料メーカー間の競争が一段と激しくなっております。また、顧客の商品のライフサイクルも短くなっております。

 こうした状況下において、生活様式の多様化や嗜好の変化を的確に捉えるとともに、顧客のニーズに即応すべく、顧客と一体となった研究開発を行ってきました。また、より天然に近い香りのフレーバー、あるいは各種抽出技術や加工技術を駆使した新しい香料素材やコクを付与する香味アップ素材を組み合わせたフレーバーを研究開発し、これらについて顧客へ積極的なプレゼンテーションを行い、顧客のニーズに応えてきました。更に、フレーバーの新用途に関する研究開発を行い、その結果、国内外の顧客の主要な新製品に当社製品が採用されるという成果をあげました。

 また、グローバル化を目指す中で、各国のユニークな嗜好に合ったフレーバーの開発及び顧客の商品への応用研究を行うとともに、海外子会社並びに各国代理店に対する技術支援の強化を図り、顧客からの当社製品の採用を着実に増やす成果をあげております。

 米国子会社のT. HASEGAWA U.S.A., INC.の研究部門においては、顧客の商品への応用研究を拡充し、新規顧客の獲得に成果をあげております。長谷川香料(上海)有限公司では、顧客のニーズに応えるため、調香研究部門、応用試作部門並びに基礎研究部門の強化・拡充を進めております。マレーシア子会社のT HASEGAWA FLAVOURS (KUALA LUMPUR) SDN. BHD.では、主要な商材である粉末シーズニングに加え、調合香料をアジア各国で拡販するため、引き続き研究開発体制の強化を進めております。


(3) 基礎研究部門(フレグランス部門・食品部門共通)

①合成香料の研究

 当社のフレグランス製品及びフレーバー製品の香調を特徴づける合成香料の開発並びに既存製品の製造工程の合理化を目的とした製法改良と環境保全(サステナビリティ)に配慮した香料の製法開発を行いました。

②天然物に関する研究

 種々の香気捕集方法及び最新の分析機器を駆使して、香気分析手法を開発し、微量香気成分の分析精度向上を図ることで、多くの有用な天然物の香気成分組成を明らかにし、香料開発に応用しました。また、天然の香味をそのままに活かす抽出技術によるナチュラルフレーバー素材の開発を進めるとともに、天然由来の素材として天然色素、天然抗酸化物質やその他機能性食品素材の開発を行いました。一方、フルーツ加工製法やフルーツ加工に適合したフレーバーの開発をフレーバー研究所と連携して継続しました。

③官能評価・生理応答・バイオテクノロジーの研究

 官能評価や生理応答(頭部血流、筋電位など)測定技術による、独自の評価手法の開発、提案活動への活用を行いました。また、微生物や酵素の基礎的研究、並びにその利用により香味強化素材物質等の開発を継続しております。

④その他香料開発に関する研究

 香料の用途に適した乳化、粉末化等の形態化技術による付加価値の高い香料製品の研究開発や香料製造における工程改良による合理化を継続するとともに、市場のニーズに即した安全性の高い、新しい食品素材の開発も行いました。

 

 当連結会計年度における研究開発費は総額で5,247百万円となっており、そのセグメント別の内訳は、日本 3,629百万円、アジア 796百万円、米国 820百万円であります。
 また、2023年9月30日現在における当社グループの研究員の数は358名でありますが、そのセグメント別の内訳は、日本 245名、アジア 86名、米国 27名であります。