文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において、当社グループが判断したものであります。
(1) 当社の経営の基本方針
当社グループは、1984年の設立以来、独立系の研究開発型ソフトウェア企業として、「すべての機器をネットにつなぐ」を目標に掲げ、それを実現するためのコア技術を世界中の通信事業者や通信機器メーカー、家電メーカー等に提供し、急速に進展するICT化・スマート化を技術面から支えてまいりました。現時点においては既に携帯電話や情報家電をはじめとする様々な情報端末のネットワーク化による連携はもはや一般化しており、現在は遍在化したスマートセンサーとあらゆるモノがネットワーク化し、その基盤上に新たな製品やサービスが次々と創出され続けております。
そのような中、当社グループは「CONNECT YOUR DREAMS TO THE FUTURE.」をスローガンに掲げ、すべての機器をネットにつないできた先駆的存在として、これからも当社グループの「つなぐ」技術により新たな価値創造に資する技術・製品を開発・提供し続けあらゆるステークホルダーに貢献することが当社グループの使命であることを明示するとともに、それらの取り組みを通じて企業価値の向上に取り組んでおります。
また、意思決定の軸として、以下のとおり企業理念を定めております。
Vision Statement:『技術』『知恵』『創造性』と『勇気』で世界を革新し続ける独立系、企画・研究型企業
Core Value : Unique、Fair、Open-minded
(2) 目標とする経営指標
主な経営指標として、連結ベースでの売上高及び営業利益並びにそれらの成長性を重視し、当社グループ全体の収益性及び成長性の中長期的な向上を図ってまいります。
(3) 経営環境及び中長期的な会社の成長戦略
2023年は、インフレと金融引き締めによる影響や、円安に伴う物価上昇等、国内外の景気の先行きに不透明な状況があったものの、生成AIをはじめとしたDX化への対応や、通信ネットワークの高速化・大容量化への対応による戦略的なシステム投資需要は拡大しました。このような環境下において、当社グループはネットワーク事業を注力分野に据え、IoT事業・Webプラットフォーム事業の安定化に取り組んでまいりました。
当連結会計年度につきましては、当社の注力事業である、ネットワーク事業のホワイトボックス向け統合Network OS「OcNOS®」において前年に引き続き大きな事業成長を実現し、セグメントとして黒字転換することができた節目の年度であったと考えております。これまでの開発投資及び、Tier2/3通信キャリアへの営業フォーカス等の推進が功を奏したことが売上に貢献し、また昨今のAI需要におけるデータセンター等での活用もあり、市場における注目もより大きなものとなったと確信しています。一方、IoT事業やWebプラットフォーム事業については、注力分野においては順調に拡大している部分がありつつ、一部分野におけるコストの増大等もあり当初想定よりも売上高及び営業損益において落ち込む部分もありました。これらを受け、今後の安定化に向けて事業ごとの選択と集中を含む経営判断を実施いたしました。
その結果、IoT事業及びWebプラットフォーム事業において減収減益となったものの、ネットワーク事業の売上高及び営業損益において大幅な成長を達成し過去最高の売上高及びセグメント黒字を実現する等、当連結会計年度の売上高は前年に続き大幅な増収となり、赤字幅も大きく減少することができ、概ね順調な事業進捗となりました。
2025年1月期(2024年2月~2025年1月)は、当連結会計年度の事業成果をさらに発展させIoT事業・Webプラットフォーム事業の両セグメントが黒字化するとともに、ネットワーク事業は引き続き成長を維持して収益拡大に貢献し、これらを通じて連結営業損益の黒字化を実現することを計画しております。また、中長期的にはネットワーク事業を中心とした高い売上成長が牽引する形で連結営業利益が成長し、営業利益率も急改善すると考えております。一方、足元ではネットワーク機器業界において市場競争の激化や設備投資への慎重姿勢といった不安定要素も見られることから、市場動向に注視してまいります。
なお、セグメント別の事業環境については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
(4) 会社の対処すべき課題
前述の中長期的な会社の成長戦略を実現するにあたり、以下を当社グループの優先的に対処すべき課題と認識し、その遂行に向けて取り組んでおります。
① 成長分野への積極投資とグローバルで通用する製品力・技術力及びサービス創出機能の強化並びに注力事業分野の売上拡大
当社グループが事業成長を実現するにあたっては、技術力を継続的に強化するとともに、絶え間ない技術革新から生み出される先進的な技術をいち早く獲得・事業化し、また、社会動向の変化に適応した顧客価値を創出していくことが重要課題であると認識しております。具体的な取り組みとして、当社グループ内での製品開発投資を拡大し製品力・技術力及びサービス創出機能の強化を図るとともに、M&Aを積極活用し当社技術・事業を補完できるパートナー企業の開拓に取り組んでまいります。また投資継続している注力事業分野につきましては、販売チャネルの拡充や顧客サポート体制の強化を通じて売上拡大を図るとともに、市場動向及び事業状況を注視しながら投資規模を都度見直し、収益性の維持・改善に努めてまいります。
② 多様性のある優秀な人材の確保・育成と生産性向上のための環境整備
当社グループの事業推進を下支えする基盤となる人材の確保と組織力強化、企業風土の醸成・ダイバーシティの推進に取り組んでまいります。人材確保においては、個々のスキルの卓越性に加えて、高い当事者意識・目的意識を持ち、部署等の垣根を越えた適切なリーダーシップやチームワークを発揮できる優秀な人材の採用・育成に努めてまいります。環境整備の面では、働き方、業務内容やキャリアプランの多様性を考慮した人事施策の導入や労働環境の整備を推進し、生産性の向上に取り組んでまいります。
③ 管理体制・ガバナンスの強化
当社グループの事業成長の基盤として、事業管理体制の精緻化・効率化と経営レベルでの意思決定の効率化の双方が必要不可欠であると認識しております。国内外の各分野・事業それぞれに担当取締役と執行役員又は拠点長を配し、事業責任を分担・明確化するとともに適切な連携を図っております。また、事業管理面では、開発案件の不採算化の防止に向けた管理徹底及び状況の早期把握に努めるとともに、国内外を問わないM&Aやソフトウェア開発投資をさらに強化・規模拡大していく方針を踏まえ、買収先企業・買収先事業の速やかな当社事業との統合やシナジー創出、グローバル経営管理体制やソフトウェア開発投資に対する回収状況モニタリングの強化に取り組んでまいります。加えて、経営全体でのガバナンス強化という観点では、業務執行と管理監督の機能分離と適切な権限委譲を通じ、経営の意思決定と業務執行のスピードアップを図ってまいります。
(5) その他、会社の経営上重要な事項
該当事項はございません。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において、当社グループが判断したものであります。
企業が継続的に活動していく上で、サステナビリティは重要な課題であると認識しております。私たちの製品・サービスが顧客の課題を解決することを通じて、様々な社会課題の解決に資する新たな価値を創造し、社会の発展に貢献していくことで、当社の企業価値向上につなげてまいります。
当社グループは、「技術」「知恵」「創造性」と「勇気」で世界を革新し続ける独立系、企画・研究型企業というVision Statementのもと、IoT化を支える技術・製品を開発・提供し続けることにより社会の変革と新たな価値創造に貢献するとともに、ガラパゴス化に陥ることなくグローバルにスケールするビジネスモデルを構築し、企業価値の向上を目指してまいりました。引き続きこれらの実現に取り組むとともに、持続的な開発目標(SDGs)やESGを経営に取り入れ、サスティナブルな社会の実現に向けた取り組みを推進してまいります。
(1)サステナビリティに関する取組
①ガバナンス
当社は、代表取締役社長執行役員を議長とするサステナビリティワーキンググループを設置し、気候変動を含むサステナビリティに関連する事項に関し、リスクの発生頻度と事業への影響度合いを考慮しながら特定・分析・評価をしております。評価の結果、自社の事業活動に大きな影響を及ぼすと判断した事項については、対応策の立案・実行その他必要な事項の実施に関してモニタリングを行い、管理しております。サステナビリティワーキンググループで検討、決定された気候変動を含めたサステナビリティに関連する事項は、取締役会と経営会議に年1回以上報告されるものとし、コンプライアンス・リスク管理委員会で特定された他のリスクと共に取締役会で審議し、必要に応じて指示を行う等、取締役会を主体として全社的なリスク管理体制を構築し適切に監督しております。
当社のサステナビリティに関する取り組みは、以下のサイトをご覧ください。
当社ウェブページ:https://www.access-company.com/esg/
②戦略
当社グループは「CONNECT YOUR DREAMS TO THE FUTURE.」をスローガンに掲げており、すべての機器をネットにつないできた先駆的存在として、「つなぐ」技術により、新たな価値創造に資する技術・製品を開発・提供し続け、あらゆるステークホルダーに貢献していくことを当社グループの使命としております。これらの実現に向けて、当社で特定したサステナビリティ課題への対応策の立案・実行その他必要な事項のモニタリングを継続的に行うとともに、具体的な指標・目標を設定し、中長期的な事業戦略と連携して、企業価値向上に取り組んでまいります。事業戦略に関する詳細は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
③リスク管理
当社グループのリスク管理の詳細については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。また、気候変動に関するリスク・機会の概要については、以下のサイトをご覧ください。
当社ウェブページ:https://www.access-company.com/esg/environment/
④指標及び目標
当社グループは、環境負荷の低減を含めた気候変動に対する取り組みを評価・管理するため、温室効果ガス(GHG)排出量を算定しており、世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃以下に、可能な限り1.5℃に抑える努力をするというパリ協定で示された世界共通の長期目標に寄与するべく、気候変動に対する対応を推進してまいります。
当社におけるScope1及びScope2のGHG排出量の実績は以下のとおりです。今後、当社連結子会社のScope1及びScope2のGHG排出量と、サプライチェーン全体の排出量を把握するため、Scope3の排出量算定を検討してまいります。
温室効果ガス(GHG)排出量
(注) 1.算定範囲は提出会社単体となります。
2.Scope1はオフィスにおけるガス直接使用にかかる温室効果ガス排出量となります。
3.Scope2はオフィスにおける電気使用にかかる温室効果ガス排出量となります。
4.GHG排出量原単位は、GHG排出量を単体売上高(百万円)で除して算定しております。
(2)人的資本に関する取組
①ガバナンス
当社グループは、上場企業として透明性と公正性を重視したコーポレート・ガバナンスを整備し、企業価値向上とステークホルダーからの信頼確保、そして事業の持続的な成長を目指しております。具体的には取締役の指名・報酬については、過半数が社外取締役から成る指名・報酬委員会に諮問し、組織の透明性と公正性を担保しています。また、採用や育成等の重要な人材施策、人員・人件費に関する計画、組織の改定等の人材戦略に関しては、代表取締役社長執行役員を議長とする経営会議にて、具体的な課題や施策について審議し、決議しております。
②戦略
当社グループにおける「人事に関する基本方針」として、人材を最も重要な経営資本として定義しており、従業員一人ひとりの価値観や独創性、プロフェッショナリズムを重んじ、国籍、性別、年齢等を問わず、多様な人材の確保、育成、管理職への登用、従業員が健康で生き生きと働ける環境整備等を行い、個の能力が最大限に発揮できるよう、従業員の成長を支援するとともに、イノベーション創出につながる風土の醸成を目指すものとなっております。人材の多様性を含む人材育成及び社内環境整備に関する方針については、以下のとおり取り組んでまいります。
[人的資本に関する投資方針]
当社の人的資本に関する投資方針は以下のとおりであり、人材戦略として3つの観点で人的資本投資を行い、中期経営計画達成に向け経営戦略の実現を図ってまいります。
1.人への投資:人の能力・人材の最大化
・価値観・独創性・プロフェッショナルを重んじた多様な人材を確保・育成する。
・国籍・性別・年齢等を問わず、管理職への登用、成長の支援を行う。
2.働く環境整備への投資:エンゲージメント向上
・従業員が健康で生き生きと働ける多様な働き方の環境整備を行う。
・社員一人ひとりが能力を最大限発揮できる人事制度の基盤整理を行う。
3.カルチャー・組織風土への投資:新たな価値を共創する「挑戦」や「D&I」の風土を醸成
・人権の尊重、心理的安全性を確保し、イノベーションを創出する風土を醸成する。
・多様な人材が価値創造を生み出せるようダイバーシティ&インクルージョンを実践する。
[人材育成及び社内環境整備に関する方針]
人材の多様性を含む人材育成及び社内環境整備に関する方針については、以下のとおり取り組んでまいります。
1.人材育成方針
ACCESSの源泉は「人材」であり、従業員一人ひとりの能力を活かし、持続的な学習意欲・成長意欲を向上させることがACCESSの成長エンジンとなります。一人ひとりがプロフェッショナルとして能力を最大限に発揮できるよう、人材育成体系を整備し、自発的な成長を促す育成、挑戦機会を提供します。
・一人ひとりが経験から学び、成長につなげることを推進
・従業員の目指すキャリアと会社が期待する役割を共有し、評価とフィードバックを重ねることで従業員の成長を支援
・自らが得た技術、知識、経験を仲間と共有し合い、共に成長していくことを推奨
・グローバル視点で物事を考える志向性を重んじ、自らのチャレンジによって、海外での業務経験を積める環境を支援
(人材育成体系)
人材育成体系は、「全社共通」と「専門職種」の大きく2つの育成体系から構成されており、従業員一人ひとりの個性、多様性、キャリアに合わせた、教育や挑戦の機会を提供しています。研修については、会社が参加者を指名し受講するほか、研修ラインナップの中から本人希望もしくは上司推薦により受講することができます。また、自らのキャリアを実現したいという従業員の挑戦を支援する「自己啓発支援」制度があります。
(社内での学びの場)
ACCESSでは、オープンな学び場として「技術勉強会」や「プレゼン大会」が定期的に開催されています。自らが得た技術、知識、経験を共有することで知見を広げ、学ぶきっかけを得る場でもあり、従業員同士の交流の場にもなっています。また、定期的な上司との「1on1コミュニケーション」や組織ごとの「人材育成会議」等を通じて、従業員一人ひとりのキャリアや成長度合いと向き合い、評価とフィードバックを重ねることで成長支援を行います。
(グローバル人材育成)
グローバル人材育成としては、ACCESSグループ各国の多様な人材との交流、海外での業務経験を通じて、技術・知識・勇気・創造性を得るとともに、各国の文化の多様性を理解し、異文化ネットワークを構築することで、ACCESSグループ全体の一体感を醸成していきます。多様な個性をもった従業員が各国で活躍することを通して、グローバルでの連携を強化し、製品開発や事業創造、組織力強化に活かしていきます。
2.社内環境整備方針
ACCESSは、従業員一人ひとりのパフォーマンスを最大限発揮できるよう、それぞれのライフステージに合わせて安心して働き続けられるよう労働環境の整備を進めています。ワークライフバランスの充実に向けて、多様な勤務体系を可能とするフレックスタイム制や裁量労働制・リモートワーク勤務制度等を整備するほか、従業員の希望に応じた兼業・副業が行える環境整備も進めております。従業員が健康を維持・増進し、仕事へのモチベーションや成長意欲を向上させるため、従業員の健康管理に関する取り組み、育児・介護・看護といったライフイベントを支えるための休暇・休職や短時間勤務、積立有給制度等、福利厚生を整備しています。
組織風土を把握し従業員エンゲージメント向上を図るため、定期的なエンゲージメントサーベイを実施し、調査結果の確認・分析を行うとともに、課題解決に向けた各種施策の導入検討を行う等、組織的な改善活動に取り組んでいます。
(福利厚生の取組)
確定拠出企業年金、確定給付企業年金、株式報酬制度(J-ESOP)、積立有給休暇、誕生日休暇、リモートワーク勤務制度
(心身の健康状況把握の取組)
定期健康診断、婦人科検診、ストレスチェック
(メンタルヘルス対策の取組)
社内相談窓口の設置、産業医や外部専門医師による面談、衛生委員会からの定期的な情報発信、1on1コミュニケーション、メンタルヘルス研修等、さまざまな支援施策を推進
③リスク管理
当社グループが継続的に事業の発展を遂げるためには、専門技術に精通した人材や経営・組織運営といったマネジメント能力に優れた人材の確保、育成を継続的に推進していくことが必要と考えております。少子高齢化に伴い、必要な人材を継続的に獲得する為、国内では新卒採用の充足に加えキャリア採用の強化に向け、BPO等の活用も含め、採用体制の強化を進めております。また、就業場所の柔軟性を確保するため、リモートワークを前提とした就業体系とする制度導入など、働き方の柔軟性を高めた人材採用も行っております。人材育成面におきましては、上司との定期的な1on1や年2回の人材育成会議による年間育成計画の策定・見直しを通して、一人ひとりのキャリア形成や育成方針に沿った、能力向上の機会の提供に努めております。また、従業員一人ひとりの能力を最大限に引き出す為の社内環境整備に努めるほか、定期的なエンゲージメントサーベイを実施し、従業員の働きがいをモニタリングする仕組みを構築し、その結果をコンプライアンス・リスク管理委員会に報告しております。詳細は「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。
④指標及び目標
当社グループはVisionに則り「世界を革新し続ける」企業を目指す上で、ダイバーシティ&インクルージョンを重要な経営課題の一つと位置付けて推進しております。現在当社では、従業員ならびに新規採用者に占める女性割合が低水準で推移しており、女性管理職の確保に繋がっていないことが課題と認識しております。2027年1月期までには、管理職に占める女性管理職比率については、連結会社で15.5%以上、提出会社に関しては新規採用者に占める女性割合25%を目標とし、積極的な女性管理職登用、女性雇用および女性が安心して就業・成長できる環境を整備・構築するとともに女性活躍に関する情報発信に努めてまいります。また、当社の源泉である人材の育成については、人材育成方針に基づき、持続的な学習意欲、成長意欲の向上を引き出すための教育機会を提供し、一人ひとりの個性、多様性、キャリアを踏まえつつ、専門性やマネジメント育成に努めてまいります。
当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のある主要なリスクとしては、次に挙げるものが考えられます。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、その発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ですが、投資家による投資判断は本項及び本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
<特に重要なリスク>
顕在化の可能性が比較的高く、顕在化した時の影響が非常に大きいと考えるリスクは以下のとおりとなります。
① 製品開発・事業投資について
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループが属するソフトウェア業界は、技術開発競争が激しく、常に市場ニーズが変化し続けているため、技術や製品のライフサイクルが短期化しております。当社グループが適時かつ的確に市場ニーズを捉えた新製品や新技術を開発できなかった場合や、当社製品を上回る革新的な技術・製品が他社によって開発された場合には、当社製品の市場優位性の低下を招き、研究開発活動やソフトウェア資産への投資額が回収できず、当社グループの成長戦略、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
当社グループの成長戦略については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営環境及び中長期的な会社の成長戦略」に記載のとおりでありますが、当社グループは、これまでに培った顧客基盤と技術領域を活かすことができ、競争優位性を有する分野に製品開発・事業投資を行っております。また、当該製品・事業に対し市場環境やポジショニングに関する分析を行い、営業戦略や開発計画の精度向上に努めております。さらに、投資前においては客観的な視点における事業計画の評価・分析を徹底し、投資後においては事業進捗のモニタリング強化や正確な計数管理を実施することにより、適時適切な経営判断が行えるよう努めております。
② プロジェクト管理について
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
受託開発工程において、顧客からの仕様変更や当初見積を超過する作業の発生等により、プロジェクトの進捗が開発計画から大きく逸脱した場合、計画外の追加開発コストや、納期遅延に伴う違約金及び顧客の信用失墜による機会損失が発生し、財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
[リスクへの対応策]
受託開発の実施に際しては、顧客との契約において当社と顧客との責任範囲及び要件定義を明確にした上で、引き合い・見積り・受注段階から、プロジェクトマネージャーを中心とした期限管理、コスト管理等のプロジェクト管理の徹底に努めております。またその前提として、これらの取り組みの中心となるプロジェクトマネージャーやプロダクトマネージャーのポジションに質・量ともに十分な人員を配置できるよう、組織体制の継続的な見直しや積極的な採用活動にも取り組んでおります。さらに、担当執行役員によるモニタリングや技術スペシャリストによる勉強会を実施するなど、不採算案件や案件遅延等の発生防止に努めております。
③ 人材確保及び労務管理について
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
ソフトウェア業界における世界的な人材獲得競争の激化により、当社グループが必要とする専門技術や販売・マーケティング、経営戦略・グローバルな組織マネジメントといった能力を有する人材を確保できなかった場合及び人材獲得後の育成が適切になされなかった場合には、事業計画の達成に支障が生じ、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、過重労働や不適切な労務管理、ハラスメントの発生等によって当社グループの信用が著しく低下した場合には、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
様々な採用チャネルを活用した多様な人材の確保、教育制度の充実等による適切な人材育成に努めております。また、魅力的な報酬制度や公正な人事評価制度の構築、定期的なエンゲージメントサーベイ、リモートワークの推進をはじめとした働きやすい労働環境の整備等、従業員の働きがいを維持・向上させるための取り組みを実施しております。
また、当社製品(Linkit勤怠)を活用した従業員の勤怠状況の把握、ハラスメントに関する社内規程の整備及び社内教育の実施、外部窓口の設置を含めた内部通報制度の充実により、不適切な労務管理やハラスメントの発生防止及び早期発見に努めております。
<重要なリスク>
顕在化の可能性の高さにかかわらず、顕在化した時の影響が大きいと考えるリスクは以下のとおりとなります。
① 当社製品の品質について
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
製品開発における欠陥や瑕疵等、とりわけソフトウェアにおけるバグが発生する可能性は、完全には排除できません。当社グループが販売した製品において、欠陥や瑕疵が発生した場合、追加的に発生する対応作業、顧客への補償や機会損失等が発生し、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
当社グループは、品質管理部門を中心として、ソフトウェア開発における開発プロセスや品質マニュアルを定義し、社員向け教育やそれらの継続的な改善に取り組んでおります。また、各技術領域に精通した技術スペシャリスト及び品質管理部門によるレビューを通じ、品質の徹底管理に取り組んでおります。
② 情報セキュリティについて
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループは、顧客情報、個人情報を含む重要な機密情報を取り扱っておりますが、悪意を持った第三者によるサイバー攻撃や情報事故等を含む予期せぬ事象によりこれらの情報の漏洩が発生した場合、信用失墜や顧客等からの損害賠償請求等のほか、当社技術の流出に伴う競合他社に対する競争力の低下等により、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループが顧客に提供する製品・サービスにおいて情報セキュリティ上の問題が生じた場合においても、顧客から損害賠償請求を受ける可能性があります。
[リスクへの対応策]
上述のリスクや昨今の社会情勢も踏まえ、当社グループは情報管理を経営の重要事項と位置付けており、当社において、2019年4月に情報セキュリティマネジメントシステムに関する国際規格「ISO/1EC 27001:2013」及び「JIS Q 27001:2014」の認証を取得し、各種法令等や個人情報の管理に係るプライバシーポリシーに沿った情報管理体制の運用・強化及び社員の意識向上を目的とした社内教育・啓発活動を行っております。さらにサイバー攻撃対策、ネットワーク管理、入退館におけるセキュリティシステムの導入等、外部からの侵入・攻撃等にも様々な対策を講じ、運用監視体制を強化した上で、これらの見直しも継続的に行っております。また、当社製品の開発にあたっては、開発プロセスや品質マニュアルを定義及び運用し、かつセキュリティ領域における技術スペシャリストによるレビューを行った上で、第三者による脆弱性診断を適時適切に実施するなどの対策を講じることにより情報セキュリティの強化に取り組んでおります。
③ 知的財産権について
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
第三者が、特許権、商標権、ソフトウェアに係る著作権等の当社グループの知的財産権の侵害が発生した場合には、結果的に競合他社に対する競争力の低下を招くおそれがあり、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、侵害事実等の有無にかかわらず、当社グループの技術が第三者の知的財産権を侵害している旨の申立てを受けたり、当社グループが意図せず第三者の知的財産権を侵害してしまったりした場合等には、高額の費用を要する訴訟又はライセンス契約の締結、関連する当社製品の販売停止等に至る場合があり、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
当社グループは、自社開発又は第三者との共同開発によって蓄積する技術や、製品の販売に必要な名称やロゴについて、日本及び主要国において積極的に特許出願や商標出願を行い、当社グループの知的財産権の保護に努めております。
また、製品開発時や新たなビジネスモデルの検討時には、事前に適切な調査を実施し、さらに顧客等との契約においては、知的財産権に関する責任の所在・範囲を明確に規定し、過大な責任を負うことのないようする等、第三者の知的財産権の侵害防止に努めております。また、知的財産権に関する社内教育を定期的に実施し、自社の知的財産権の保護と第三者の知的財産権の侵害防止に向けたリテラシーの向上に努めております。
④ 法的規制やコンプライアンスについて
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループの事業は、関連する各国の各種法的規制の適用を受けております。そのため、当社グループの事業に関連する法的規制等が新設、改正、又は解釈の変更がなされた場合、当社グループの現在又は将来における事業活動が大きく制約される可能性やコストの増加を招く可能性があり、その規模によっては財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの取締役や従業員による不正行為・コンプライアンス違反が生じた場合には、当社グループの社会的な信用が低下し、顧客から取引を停止されたり、多額の課徴金や損害賠償を請求されたりするなど、財政状態及び経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
当社グループは、企業理念に加え、当社グループ役職員全員が実践すべき行動の基準・規範を定めた「企業行動基準」及び「コンプライアンス・リスク管理規程」を制定し、実践しております。また、代表取締役社長執行役員及び管理関係部門の責任者をメンバーとし、常勤監査役2名をオブザーバーとするコンプライアンス・リスク管理委員会を設置しており、各部門のリスク状況の区分・把握・報告、規程の立案・制定を含むリスク管理体制の整備を行うとともに、未然防止策・対応策の立案・実行その他必要な事項の実施に関し、モニタリングを行い、これらの活動状況に関し、適時取締役会に対し、報告を行っております。加えて、当社グループにおける業務及び内部統制の有効性、効率性及びコンプライアンスの観点から内部監査を実施し、必要に応じて改善に向けた提案を行うとともに、結果については代表取締役社長執行役員及び経営会議に報告しております。
さらに、取締役及び従業員によるコンプライアンスの徹底に向けて、法令・ガイドライン・社内規程等の遵守に向けた継続的な社内教育を実施するとともに、外部窓口の設置を含めた内部通報制度の充実を図っております。
⑤ 訴訟等について
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
取引先又はその他の第三者との間において、予期せぬトラブル、訴訟等が発生する可能性があります。訴訟の内容及び結果によっては、多大な訴訟対応費用の発生や企業イメージの悪化等により、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
当社グループは、顧客を中心とした取引先等とのトラブルを未然に防ぐため、当社製品の品質、プロジェクト管理及び知的財産権について対応策を実施するとともに、複雑なライセンス契約や受託開発をはじめとした取引先等との契約においては、責任の所在・範囲を明確に規定し、過大な責任や履行義務を負うことのないよう努めております。また、国内外の事業活動の遂行に際し、内部統制の充実やコンプライアンスの強化にも継続的に努めております。さらに、訴訟等が生じた場合にも迅速で的確な対応がとれるよう、弁護士をはじめとした外部専門家に適時適切に相談できる体制を整えております。
⑥ 災害および感染症の流行等について
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
大地震・台風等の自然災害、予期せぬ事故・テロ・紛争等あるいは感染症の流行等、国内外の拠点所在地において想定を超える大災害等が発生した場合において、当社グループの施設等の損壊や閉鎖、交通・通信・物流といった社会インフラの混乱、顧客を含む取引先への被害が発生した場合等、その状況によっては、当社グループの事業活動・営業活動が阻害され、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、今後新型コロナの再流行が起こった場合や別の感染症の流行が発生した場合には、経済活動の世界的な低調化、顧客との接点の減少、各企業における投資の抑制や案件の延期、当社製品の試験評価の遅延や中断等が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
当社グループは、上述のような災害や感染症の流行等が発生した場合の事業への影響を最小限に留めるため、事業継続計画(BCP)を策定しております。当該BCPの社内周知徹底や運用テストの実施に継続的に取り組むとともに、オンライン会議を活用した商談の実施、リモートでの製品開発体制の整備を含むリモートワーク環境の活用などにより、有事の際の影響を最小限に留めるよう努めております。
⑦ 経済状況の変動について
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループは、製品・サービスをグローバルの顧客に提供しており、その売上収益は、世界における需要、景気、物価変動、産業・業界動向に影響を受けます。特に、当社グループの製品を搭載した半導体・最終製品の出荷減少は、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
当社製品を搭載した半導体・最終製品の出荷減少の兆候がみとめられ、それに伴い当社グループの売上収益減少のおそれがある場合、リカバリー策を速やかに講じられるよう市場動向や顧客状況を注視し、適時に情報を把握するよう努めております。
⑧ 地政学リスクについて
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループは、米国、ドイツをはじめとして海外にも拠点を持ち、製品・サービスをグローバルで開発・提供しています。そのため、国際情勢の変化に伴う関係国の政策や法的規制の変更は、企業活動にも大きく影響します。特に、各国の輸出規制、技術移転の制限、関税の引き上げ等により事業活動が制限を受け、グローバルでの製品・サービスの開発・提供に支障をきたす場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
各拠点所在国における現地弁護士を含む外部専門家とも連携し、国際情勢、法的規制変更及び政策変更等を定期的にモニタリングすることにより、地政学リスク顕在化の兆候、事業環境の変化及びこれらの業績への影響を早期に把握し、速やかに対応策を講じられるよう努めております。
⑨ M&Aについて
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループは、事業戦略の推進にあたってM&A取引を継続的に検討・実行しておりますが、適切な条件でM&A取引が実行されなかった場合や、取引時に想定したシナジー効果が達成されなかった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
さらに、これらのM&A取引の結果として、のれんを含む各種無形固定資産を有しております。事業環境の変化等の事由によりこれらの資産の経済価値が低下し、減損処理や想定外の償却に至った場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループが取引関係の維持・強化を目的とした出資や、資金運用を目的とした投資を行った場合、投資先の経営状況や時価等の変動状況により、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
M&Aや投資に係る具体的な案件の検討の前段階において、関連部門が定期的に情報交換や議論を実施することにより各事業戦略に合致する案件をスクリーニングし、当社グループに損失が発生する可能性が高い案件を早期に回避できるよう努めております。具体的なM&Aや投資案件の実行プロセスにおいては、対象となる企業の十分な事前調査(各種デューデリジェンス等)を実施しており、その際には弁護士をはじめとした外部専門家を活用することで、当社グループへの損失が発生するリスクの低減を図っております。
M&Aや投資案件の完了後、子会社となった対象企業については、当社関連部門が毎月の実績を確認して異常値の早期把握に努め、適宜子会社のCEOや経理責任者にヒアリングを行うなどの対応を行っております。さらに、当該子会社の取締役会等の会議体に当社の経営企画部門が参加するなど、適宜経営支援も実施しております。持分法適用会社については、当社経営企画部門が関連部門や担当取締役・執行役員と適時適切な情報交換を行い、財務情報や事業状況の把握に努めております。
⑩ 為替変動について
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループの海外における業績や外貨建ての資産・負債は連結財務諸表作成時に円換算されることから、為替相場に大幅な変動が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
為替リスクを伴う資金運用を行わないほか、外貨建ての資産の保有額を必要最小限とすることにより、為替変動による財政状態及び経営成績に対する影響を最小限とするよう努めております。
⑪ 気候変動について
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
気候変動を原因とした集中豪雨や大型台風など自然災害の増加・激甚化により、自社拠点や関連施設の被災、サプライチェーンの寸断が生じた場合に、サービス供給の停止や普及コストの発生などが想定されるほか、気候変動に関る各種政策・規制への対応や、調達コスト、事業運営コストの上昇等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
当社グループは、気候変動に関する対応を重要な経営課題と認識し、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言への賛同を表明しております。TCFDのフレームワーク(「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」)に沿った評価・分析に関しては、気候変動を含むサステナビリティに関する事項について、代表取締役社長執行役員を議長とするサステナビリティワーキンググループを設置し、リスクの発生頻度や事業の影響度等について特定・分析・評価・対応策の検討を実施し、これらの取組状況については定期的にモニタリングを実施し、取締役会に報告を行うこととしております。また、環境負荷の軽減を含めた気候変動に対する取組みを評価・管理するため、温室効果ガス(GHG)排出量を算定し、世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃以下に、可能な限り1.5℃に抑える努力をするというパリ協定で示された世界共通の長期目標及び、日本政府が掲げるカーボンニュートラル宣言に寄与すべく対応を推進してまいります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度(2023年2月1日~2024年1月31日)における世界経済は、インフレと金融引き締めによる影響や中国経済の先行き懸念が増し、国内では円安に伴う物価上昇が消費に影響を及ぼす等、国内外の景気の先行きは不透明な状況が続いております。他方、生成AIをはじめとしたDX化への対応や、通信ネットワークの高速化・大容量化への対応による戦略的なシステム投資需要は拡大基調が続いております。
このような環境下において、当社グループはとりわけネットワーク事業を注力分野に据え、ホワイトボックス(従来のソフトウェアとハードウェアが一体で提供されるネットワーク機器に対し、ソフトウェアとハードウェアが分離されたネットワーク機器)市場における更なる事業規模の拡大を図るとともに、IoT事業・Webプラットフォーム事業の安定化に取り組んでまいりました。
その結果、注力分野であるネットワーク事業の売上高は、為替相場の変動に伴う影響もあったものの過去最高を実現する等、事業面においては順調に推移し、ネットワーク事業の売上高は大幅増収となり、またセグメント利益は黒字化を達成することとなりました。
以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高165億73百万円(前年同期比26.9%増加)、営業損失1億5百万円(前連結会計年度は営業損失17億7百万円)となり、前連結会計年度との比較においては増収増益となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
○ IoT事業
通信技術、クラウド技術、アプリ開発力、センシング技術等をワンストップで提供できる強みを活かし、企業のいかなるDX(デジタルトランスフォーメーション)需要にも対応できるIoTプロフェッショナルサービスや、自社開発の各種IoTソリューションを提供するIoT分野を主軸に事業展開しております。また、アジア地域に進出する日本の通販事業者向けに、オムニチャネルでの販路拡大機能と物流等のバックオフィス機能を統合した業務支援クラウドサービス「CROS®」の提供を行っております。
当連結会計年度につきましては、主軸であるIoT分野におけるIoTプロフェッショナルサービスにおいて、旺盛なDX投資需要を背景に位置情報の利活用やエネルギーマネジメント、生成AIに関連する引き合い等が大きく増加し、売上高も順調に拡大しました。他方電子出版分野では大型開発案件の完了に伴う減収もあり、前期比で大きく減収減益となりました。
以上の結果、売上高及びセグメント損益において前期比で減収減益となりました。
なお、電子出版事業の一部について2023年11月29日付「会社分割(簡易新設分割)及び新設会社の株式譲渡に伴う特別利益計上に関するお知らせ」のとおり、2024年1月31日付にて会社分割及び株式譲渡を実施いたしました。
○ Webプラットフォーム事業
ドイツ・中国・韓国に設置している現地法人と連携し、国内外の市場においてスマートデバイス、情報家電や各種デバイス向けに豊富な搭載実績を持つ高性能・高機能ウェブブラウザ「NetFront® Browser」シリーズをはじめとした組み込みソフトウェア製品を提供しており、グローバルでのシェア拡大を推進しております。また、中長期的な成長施策としてTV・放送及び車載インフォテインメント用途向けにコンテンツや動画の配信システム・サービスプラットフォームの事業育成を図っております。
当連結会計年度につきましては、日本を含むアジア地域においては総じて当社ブラウザを搭載した最終製品の出荷台数にかかるロイヤリティ収入が堅調に推移したほか、車載インフォテインメント分野での受注も徐々に上向きになり始めました。他方、国内において一部開発案件の中止及び原価増加があり、売上高及びセグメント損益に影響を与えました。また、欧州においては市場及び事業状況を踏まえ、組織構造の最適化や事業拠点の統廃合を実施いたしました。
以上の結果、売上高及びセグメント損益において前期比で減収減益となりました。
○ ネットワーク事業
米国子会社IP Infusion Inc.を中核としてインドやカナダ等に開発拠点を設置しており、ネットワーク機器向け基盤ソフトウェア・プラットフォームの開発・提供から事業をスタートして現在はホワイトボックス向け統合Network OS「OcNOS®」の事業拡大に注力しております。ホワイトボックスは、更なる通信トラフィックの増加が見込まれる中、データセンター事業者、通信キャリア、IXP(インターネット相互接続ポイント)事業者等においてネットワークインフラ設備投資・運用コストを大幅に低減しつつ運用の自由度を高める有力な手段と目されており、世界的に市場が拡大しつつあります。このような環境の中、IP Infusion Inc.では通信事業者向けのCSR(Cell Site Router)やデータセンター、光転送システム(Routed Optical Networking)、ブロードバンドアグリゲーション等の多用途に対応可能なホワイトボックスソリューションを展開しております。また世界各地域において有力な事業基盤を有する大手ディストリビューターやグローバルSIerとの提携を通じ、通信事業者へのホワイトボックスソリューションやサポート等の安定的な提供に取り組んでおります。
当連結会計年度につきましては、引き続き「OcNOS®」の事業拡大にあたりTier2/3通信事業者からの案件獲得に傾注し、販売・技術パートナー網の更なる拡充に取り組み、ハードウェアも含めたバンドル調達を求める顧客需要にも対応しながら様々な顧客ニーズに対応してきました。これらの諸施策が奏功し、当連結会計年度においては約90社超の新規顧客を獲得し、前連結会計年度までに獲得した顧客からのリピート受注の件数も順調に増加いたしました。また、「OcNOS®」は柔軟性、信頼性、設備投資コストの低減を実現するキャリアグレードの製品として高い評価を受けており、前期に引き続き大型案件のリピート受注が実現する等の事業成果も現れております。これらの結果、前期比で売上高及びセグメント損益について増収増益となり、前年に引き続き過去最高の売上高を更新し、セグメント損益についても黒字化を達成いたしました。
なお、営業外収益として持分法による投資利益53百万円、営業外費用として商品評価損12百万円及び解約違約金11百万円、特別利益として関係会社株式売却益1億45百万円、特別損失として特別退職金1億3百万円、法人税等調整額として税金費用1億83百万円を計上しております。
以上の結果、当連結会計年度における連結業績は、売上高165億73百万円(前年同期比26.9%増加)、営業損失1億5百万円(前連結会計年度は営業損失17億7百万円)、経常損失12百万円(前連結会計年度は経常損失13億37百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失2億80百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失26億84百万円)となり、前連結会計年度比では増収増益となりました。
当社グループの当連結会計年度末の資産は、現金及び預金が減少したものの、受取手形、売掛金及び契約資産並びにソフトウエアが増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ20億41百万円増加して272億81百万円となりました。
負債は、その他固定負債が減少したものの、買掛金やその他流動負債が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ14億88百万円増加し46億66百万円となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純損失2億80百万円、為替換算調整勘定の変動額6億67百万円等により、5億52百万円増加し226億15百万円となりました。その結果、自己資本比率は82.8%(前連結会計年度末は87.2%)となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は、前連結会計年度末に比べて12億73百万円減少し、103億10百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金は22億42百万円の増加(前連結会計年度は9億53百万円の増加)となりました。その主な要因は、減価償却費30億55百万円の計上、契約負債が6億65百万円増加した一方で、売上債権及び契約資産が23億7百万円増加したことによるものであります。前連結会計年度との比較では、売上債権及び契約資産の増加額が増加した一方で、税金等調整前当期純損失の金額が減少いたしました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金は37億17百万円の減少(前連結会計年度は29億20百万円の減少)となりました。その主な要因は、無形固定資産の取得による支出が31億42百万円であったことであります。前連結会計年度との比較では、無形固定資産の取得による支出額が増加いたしました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金は27百万円の減少(前連結会計年度は13億22百万円の減少)となりました。前連結会計年度との比較では、自己株式の取得による支出額が減少いたしました。
③ 生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.金額は販売価格によっており、ソフトウェアのうち自社開発分(資産計上分)を含んでおります。
当連結会計年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.IoT事業における受注残高の増加は、案件数の増加によるものです。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.ネットワーク事業における販売実績の増加は、顧客数の増加によるものです。
3.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき見積り及び判断をおこなっておりますが、不確実性が内在しているため、将来生じる実際の結果と異なる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項」に記載のとおりであります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当社グループの当連結会計年度の経営成績及び財政状態の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
(資本の財源及び資金の流動性についての分析)
当社グループは、自社製品・サービス提供によるストック収益を中心とし、かつグローバルにスケール可能な事業構造への変革を推進しており、特にホワイトボックスソリューションを主としたネットワーク事業での事業成長に注力しております。その実現にあたっては、通常の事業活動に加え、製品開発投資やM&A等の外部成長施策を遂行することを想定しております。なお、2025年1月期における製品開発投資は「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおり、43億25百万円を計画しております。当社グループの当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は103億10百万円であることから、これらの資金需要については手元資金及び営業活動によるキャッシュ・フローによって充当することを想定しており、また、十分な流動性を確保可能と認識しております。
業務提携契約
当連結会計年度における当社グループの研究開発費の総額は10億
また、当連結会計年度における研究開発活動のセグメントごとの状況は、次のとおりであります。
① IoT事業
IoTサービスの本格的な普及に向けて、ネットワークにつながるデバイスの種類・数量の大幅な増加が見込まれる中、当社グループのソフトウェア技術の適用範囲を拡大すべく、産業用ドローン向けの機体制御や位置情報ソリューションに関する研究開発に取り組みました。
IoT事業 連結研究開発費
② Webプラットフォーム事業
当連結会計年度におきましては、研究開発費を計上しておりません。
③ ネットワーク事業
ネットワーク機器向け基盤ソフトウェア・プラットフォーム「ZebOS®」シリーズの機能向上を継続的に推進するほか、ネットワークインフラ設備投資・運用コストの大幅な低減と運用の自由度向上を実現するホワイトボックス向け統合Network OSである「OcNOS®」の研究開発を行いました。
ネットワーク事業 連結研究開発費9億