文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
教育業界では、あらゆる生活コストが上昇しているのに伴い、教育費を抑制する家庭が増えています。業界各社においても、原材料費や人件費等の増加分を価格転嫁する流れが加速しています。
こうした経済環境に加え、急速に進行する少子化という逆風を受けながらも、共働き世帯の増加や人材流動性拡大など社会情勢の変化に伴い、足もとでは新しい3つのトレンドが勢いを増しています。政府の「骨太の方針」や「次元の異なる少子化対策」とも関連し、市場拡大の後押しになることが期待されています。
一つ目は、首都圏を中心とした高所得家庭向け市場の成長です。物価高騰が進むなかでも高所得家庭では教育投資を増やしており、小学校受験を見据えた幼児教室や中学校受験の進学塾、高価格の私費学童ニーズが伸張しています。
二つ目は、教育DXの流れです。学校ではGIGAスクール構想で配布されたタブレット端末内のコンテンツ改良が進み、学校外では塾などの民間事業者が、オンラインコースやデジタル教材の開発に注力しています。
三つ目は、リスキリング需要の拡大です。多くの業界が人手不足に苦しむなか、企業向け・個人向けの社会人教育需要が高まっています。今年度の「骨太の方針」にもリスキリング促進が織り込まれ、1人あたり最大24万円を助成する新制度の開始が発表されました。新たな成長領域を創出し、教育市場全体を活性化する起爆剤として期待されています。
介護業界では、2023年推計で65歳以上の高齢者人口の割合が29.1%と過去最高を更新し、80歳以上の割合は初めて10%を突破しました。介護費用の総額も2022年度には過去最高の11兆1,912億円、介護保険制度開始当初の約2.5倍の規模となっており、急速な高齢化に伴いさらなる市場拡大が見込まれています。
9月には、本年6月に可決・成立した「認知症基本法」に基づき、内閣総理大臣を議長とした新会議「認知症と向き合う『幸齢社会』実現会議」が開催されました。今後、認知症への対応は、高齢者のみならず広く国民全体の課題として国をあげて取り組まれていくこととなり、介護事業者が担う役割もより一層大きくなることが予測されます。
一方、事業環境については、電気・ガス価格の激変緩和措置等により、光熱費の上昇は一定程度落ち着きを見せているものの、食材や生活必需品の価格高騰は継続しており、各事業者の経営環境に引き続き影響を及ぼしています。
また、2024年4月には次期介護報酬改定を控えており、厚生労働省をはじめとする各関係省庁、組織において本格的な検討が行われています。サービスの担い手である介護従事者は依然として業界全体で不足しており、人員配置基準の緩和や業務負担軽減に焦点を当てた議論や、ロボット・ICTの活用を推し進める動きが見受けられます。
新中期経営計画「Gakken2025」では、『SHIFT』を中核テーマに掲げています。
少子高齢化が進行し、教育業界においてはデジタルを活用した新しい学習方法や、非認知教育などの需要が拡大しているなか、各事業の戦略やリソース配分の明確な転換、さらに意思決定の迅速化を推し進め、事業環境の変化を見据えた事業ポートフォリオ構築と収益力回復を実現してまいります。
まずは「Gakken2023」の積み残し課題への対応として、より抜本的なポートフォリオの入れ替えと重点領域へのリソース集中を行い、教育事業の立て直しを進めながら、事業分野ごとの管理体制を最適化することで収益力回復を図ります。
また「Gakken2023」期間中の取組みを土台として、教育分野のリカレント・リスキリング領域、医療福祉分野の周辺領域及びグローバル領域において新たな柱につながる事業開発を推進し、M&Aを含むグループの変革と成長に資する投資を戦略的に実施します。「Gakken2025」の最終年度にあたる2025年9月期には売上高2,000億円、営業利益70億円、親会社株主に帰属する当期純利益35億円を目指します。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループの理念である「すべての人が心ゆたかに生きることを願い 今日の感動・満足・安心と明日への夢・希望を提供します」で掲げる社会・環境に対する配慮や人権尊重の精神は、誰一人取り残さない持続可能な社会の実現に向け努力すること、すなわちサステナビリティそのものです。当社グループは、教育・医療福祉事業を通じて価値を提供し、社会や環境の諸課題を解決することで、事業創出や持続可能な成長につなげます。
グループ理念をもとに、重点課題(マテリアリティ)を3年ぶりに見直し、「価値創造プロセス」も更新し開示しています。
(価値創造プロセス図)
(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理
当社グループにとって、サステナビリティの推進は、教育・医療福祉事業を持続的に発展させていくために不可欠です。そのため、経営における意思決定を行う取締役会が、推進の責任を負っています。また、社会・環境の重点課題に取り組むため、取締役会は監視・監督機能を果たし、経済的価値と社会的価値両方の創出を視野に入れた企業経営を行っています。
当社グループは、サステナビリティを推進するために、2021年10月、最高レベルの意思決定機関である取締役会の直下に、「サステナビリティ委員会」を設置しました。同委員会は、学研ホールディングスの代表取締役を委員長とし、同常勤取締役で構成され、年2回以上開催するなかで、グループ全体のサステナビリティの方針、行動指針の決定、戦略の決定、取組のモニタリング・評価と監督を行っています。
2022年10月からは、サステナビリティをより一層推進するために、同委員会の下部組織である3つの部会を改編するとともに、サステナビリティ推進室を新設し、事務局機能を持たせました。
下図に示すように、統合ディスクロージャー部会は、各部署の横のつながりを強化し、サステナビリティを加速させる役割を果たしています。情報を開示し、各ステークホルダーとの対話・連携も進めます。
サプライチェーンマネジメント(SCM)部会は、持続可能なサプライチェーン構築のための第一歩として、温室効果ガス排出量の正確な把握と削減、責任ある調達に着手しました。
人的資本部会では、人材が最も重要な経営資本であるとの認識のもと、グループ全社の人事データ分析による課題の抽出、パフォーマンス最大化のための施策立案、推進を行います。
グループ各社には、サステナビリティ担当取締役を配置しました。その責任のもとで、サステナビリティ委員会・取締役会での決定事項を受けて、社会・環境に配慮した事業活動を行動する体制となっています。
(サステナビリティ委員会組織図)
(2)重要なサステナビリティ項目
上記、ガバナンス及びリスク管理を通して識別された当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は以下のとおりであります。
①気候変動への対応
②人的資本への対応
それぞれの項目に係る当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
①気候変動への対応
当社グループは、2022年8月「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」に賛同しました。当社グループは、株主・投資家などのステークホルダーとの気候変動対応に関する積極的な対話を実施し、TCFD提言の4つの項目に沿った情報開示を行っていきます。
・ガバナンス
気候変動対応の最高責任者として、代表取締役は、気候変動に伴うリスク管理方針や、戦略のレビュー及び指導、対応策の評価・監督、重大施策の最終判断などに責任を負っています。「2050年までの温室効果ガス排出量の実質ゼロに向けて、排出量を把握し、削減に向けた行動計画を策定すること」というトップコミットメントを発し、グループ全体の温室効果ガス排出量の把握と、その削減に向けた行動計画の策定も進めています。
・リスク管理(2つのリスクについてシナリオ分析をおこなっている)
リスクを「当社グループにおける一切の損失発生の危険をいい、以下のもの(ア~ウ)を含むがこれらに限定されない」と定義しています。
ア.当社グループに直接または間接に経済的損失をもたらす可能性
イ.当社グループの事業の継続を中断・停止させる可能性
ウ.当社グループの信用を棄損し、ブランドイメージを失墜させる可能性
また、発生頻度によるリスクと損失想定規模によるリスクに分けて評価し、ランクごとに点数化して管理をしています。ビジネスに重大な財務的または戦略的な影響度合いは事業によって異なるので、点数化したリスクを優先的に対応すべきものと、維持する項目に分けて管理しています。気候変動は、ビジネスに重大な影響を与えるリスクとして、内部統制委員会と連携し、サステナビリティ委員会で統合的に管理されています。
・戦略
当社グループは、TCFD提言で求められている2℃以下シナリオを含む複数の気候関連シナリオに基づく戦略を検討しました。シナリオ分析においては、移行面で影響が顕在化する1.5℃シナリオと物理面での影響が顕在化する4℃シナリオの2つのシナリオを選択しました。また、当社グループの事業を「教育分野」と「医療福祉分野」に大別し、「教育分野」においてはさらに「教室・塾事業」と「出版コンテンツおよび園・学校向け物販事業」に分け、それぞれで気候変動に伴う影響を確認しました。
・指標と目標
当社グループでは、気候リスク・機会を管理するための指標として、温室効果ガス排出量(Scope1・2・3)を定めています。
Scope1・2については、「2030年までに、売上高あたりの温室効果ガス排出量を2022年度比50%削減」という目標を定めました。排出量の8割を占める医療福祉事業では、今後も積極的な拠点開設を計画していますが、炭素効率性を高めた事業所の設計・運営に取り組むことで、成長戦略と同時に排出量を増やさない計画を立てています。
また、Scope3については、今まで部分的にとどまっていた算定範囲を拡大し、2022年9月期より網羅的把握を行いました。算定結果をふまえ、削減活動を強化していきます。
(温室効果ガス排出量の推移)
②人的資本への対応
教育・医療福祉事業を営む当社グループの従業員は、社会的使命感を持って、日々の業務に邁進しております。多様なバックグラウンドを持つからこそ生まれる、特長のある商品・サービス群。専門的な技能・知識を有する人材が、現状に満足することなく学び続け、情熱とスピードを持って事業に挑んでいます。最も重要な経営資本である従業員が最高のパフォーマンスを発揮できるよう、健康経営、多様な働き方に取り組み、働きがい、働きやすさを追求してまいります。
・戦略
当社グループでは、企業価値創造の源泉である人材に輝いてもらうために、中期経営計画「Gakken2023」の人材戦略として、〝一人ひとりの働きがい″と〝一人ひとりの働きやすさ″の追求に向けた以下の取り組みを推進してまいりました。
この取り組みは中期経営計画(Gakken2025)においてさらに強化拡大してまいります。
・指標・目標
上記施策の推進により、当社および連結子会社における女性管理職比率は32.0%、男性育児休業取得率は41.3%、男女間賃金格差は80.1%となっており、いずれも統計調査*の平均値を超えております。それぞれの指標の向上は、当社グループの持続的成長にとって重要であると認識しており、ひきつづき、平均値以上の実績を維持・伸長してまいります。
さらに数値目標を定める重点施策は次のとおりです。
●女性役員比率
人材の多様性こそが当社グループの競争力の源泉と認識しており、2030年までに当社女性役員比率30%以上を目標と掲げることで、当社グループ全社での人材育成をさらに推進してまいります。
●男性育児休業取得率
教育、医療福祉事業を営む当社グループにおいては、若い世代が安心して子育てができる社会の実現に率先して取り組む必要があると認識しており、こども未来戦略方針に掲げられる男性育児休業取得率2030年85%を目指して、環境整備をすすめてまいります。
*厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」、「令和4年度雇用均等基本調査」を参照。
当社グループの事業その他に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は以下のようなものがあります。なお、記載内容のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものです。
①法的規制等に関するリスク
当社グループは教育・医療福祉に関する事業を中心に様々な事業を展開し、それぞれの事業分野において各種法令・諸規則等の適用を受けており、これら法令・諸規則の改正もしくは解釈の変更、法的規制の新設によっては当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、コンプライアンス経営の確立に努め、全従業員への定期的な研修をはじめ、法的規制の順守および取り組み強化を進めております。
②自然災害や感染症に関するリスク
当社グループの本社および主要な事業所は東京を中心とした都市部に、高齢者住宅事業や認知症グループホーム事業、教室・塾事業では全国で事業所や施設等の運営をしており、当該地域において、地震、津波、台風、洪水等の自然災害、火災、停電、感染症の蔓延等、予測の範囲を超える事態の発生により、事業活動の停止や事業運営への重大な支障が生じた場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの設備やシステムが被害を免れた場合においても、取引先の被害状況によっては、上記同様のリスクが発生する可能性があります。そのため、地震や風水害等の自然災害や火災などの災害発生に備え、対策マニュアルや事業継続計画(BCP)を整備し、緊急時の被災状況等の情報収集体制の確立、お客様や従業員等の安全確保と事業継続に向けた体制の構築に努めております。
③個人情報の管理に関するリスク
当社グループでは、商品・サービスの企画、制作、販売のあらゆる過程において多くの個人情報を有しており、今後不測の事態により個人情報が流出する事態になった場合、当社グループの信用失墜は免れず、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、個人情報の適正な取り扱いをすることは、事業活動の基本であり、社会的責務であるとの認識のもと、これらの個人情報の取得、保存、利用、処分等にあたっては、関連法令の順守はもとより、社内規程、ガイドライン、マニュアル等を制定し、外部からの不正アクセスには防止対策を強化するなど必要な措置を講じるよう努めております。
④情報システムの障害に関するリスク
当社グループは事業の多くにおいて、情報システム・通信ネットワークに依存しておりますが、予測の範囲を超える停電、災害、ソフトウエアや機器の欠陥、コンピュータウイルスの感染、不正アクセスなどにより、情報システムの停止、情報の消失、漏洩、改ざんなどの事態が発生した場合には営業活動に支障をきたし、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、システムトラブルの発生可能性を低減させるために、安定的運用に向けたシステム強化、セキュリティ強化及び安全性の高いデータセンターでのサーバー運用、クラウドサービス利用によるサーバーの分散化等の対策に努めております。
⑤医療福祉分野に関するリスク
高齢者住宅事業や認知症グループホーム事業では、「サービス付き高齢者向け住宅」および「認知症グループホーム」などの事業を展開し、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最期まで続けることができる社会を支える仕組みづくりに取り組んでおります。また、子育て支援事業では、認定こども園や保育所、学童保育などの運営を行い、子どもを安心して預けられる環境整備と待機児童問題の改善に向けた取り組みを推進しておりますが、利用者の安全・健康管理という側面において、ご利用者が高齢者や乳幼児等であることから、生命に関わる重大な問題(事故、食中毒、集団感染等)が生じる可能性があるため、これらの問題に基づき、訴訟が提起された場合や風評被害が生じた場合は、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、高齢者福祉事業、子育て支援事業共に各事業所、施設等の運営において、ガイドラインやマニュアルの制定や研修などを通し、安全・安心な環境の整備などに努めております。なお、高齢者福祉事業は、介護保険法、高齢者住まい法、老人福祉法などの関係法令に従い展開しておりますが、今後の社会保障制度や法令の改正によっては、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥教育分野に関するリスク
教室・塾事業では、主に幼児から高校生を対象として全国で教室や塾を運営しており、利用者の安全を脅かす事態が発生した場合は、信頼性が低下する可能性があり、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、利用者が安全に通っていただくために交通・防犯指導や緊急時対策等、体制の整備に努めております。
出版コンテンツ事業では、子どもの知的好奇心を満たす図鑑や知育教材、学習ニーズに対応した学習参考書や辞典をはじめ、医療者向け等の専門書のほか、料理・健康・教養など様々なライフスタイルに向けた出版物を提供しており、電子書籍等、更なるコンテンツの充実に努めておりますが、出版市場では、書籍及び雑誌等の販売減少傾向が続いており、また、広告収入においても景気変動の影響を受けやすい状況にあるため、急激な市場変化によっては、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。製作・販売している出版物などのコンテンツには、著作権・肖像権など様々な無体財産権が存在しており、今後権利者からの出版差し止め、損害賠償などの係争に発展するリスクを完全に回避することは困難であり、係争に発展した場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、公正取引委員会の2001年3月23日公表「著作物再販制度の取扱いについて」において、著作物再販制度の廃止の考えがコメントされておりますが、同制度の廃止に反対する意見も多く、当面廃止が見送られております。将来において同制度が廃止された場合、出版業界全体への影響、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。なお、出版業界の慣行として委託販売(返品条件付販売)制度がありますが、想定以上の返品の増加となった場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、市場予測の精度の向上や、返品率の改善などに取り組むとともに、電子書籍や出版物以外の事業拡大など、収益の最大化を目指してまいります。
園・学校事業では、今後の少子化の影響は甚大ですが、「こども家庭庁」の設置に象徴されるように、保育環境設備や幼児教育の質的向上ニーズに対応すべく商品・サービスの開発に努めてまいります。学校教育では急速なDX化への対応が課題ですが、大学入試改革による入試形態の多様化で、探究学習などの非教科型・教科横断型学習が広がりを見せており、強みを生かしたコンテンツの開発をDXで進めてまいります。
⑦海外への事業展開に関するリスク
当社グループは、海外においても商品の生産・販売をはじめとして、出版・学習塾・介護・ODAコンサルタントなどの事業を行っており、当該国・地域における新型コロナウイルス感染症の感染状況に伴う渡航制限や大幅な事業制約など、事業展開する国・地域における政治的・社会的・経済的不安定要因、自然災害、感染症・伝染病、法律や規制の新設・変更などの顕在化により、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当該国・地域での法制度の改正や解釈の変更、行政の動向等に係る情報収集及び状況把握を行い、体制の強化に努めております。
⑧株式の評価損やのれんの減損損失に関するリスク
当社グループは、事業領域の拡大及び事業運営の円滑化等の目的で、有価証券を保有しておりますが、近時の経済環境、市場環境は、引き続き不透明な状況となっていることから、業績への影響も懸念され、当該株式価値の急激な下落に伴う当該株式の評価損の可能性があります。また、買収後の事業環境の変化等により、当初想定した事業計画通りに進まなかった場合、のれんの減損損失や株式の評価損が発生し、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、M&Aの実施に際しては、対象会社の財務・法務・事業等について詳細な事前調査を行い、リスクの把握や正常収益力を分析した上での決定など、リスクの顕在化の可能性の低減に努めております。
当連結会計年度の連結業績は、売上高164,116百万円(前年同期比5.2%増)、営業利益6,170百万円(前年同期より256百万円減)、経常利益6,477百万円(前年同期より452百万円減)、親会社株主に帰属する当期純利益3,194百万円(前年同期より246百万円減)となりました。
(単位:百万円)
当連結会計年度の財政状態は、次のとおりであります。
(単位:百万円)
※1 有利子負債=借入金+社債+リース債務
※2 自己資本比率=自己資本÷総資産
※3 DEレシオ=有利子負債÷自己資本
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ12,645百万円増加し、136,328百万円となりました。主な増減は、現金及び預金の減少1,683百万円、商品及び製品の減少323百万円、有形固定資産の増加888百万円、投資有価証券の増加4,524百万円などによるものです。
負債は、前連結会計年度末に比べ6,500百万円増加し、81,294百万円となりました。主な増減は、短期借入金の減少5,290百万円、1年内返済予定の長期借入金の増加6,674百万円、長期借入金の減少496百万円などによるものです。
純資産は、前連結会計年度末に比べ6,145百万円増加し、55,034百万円となりました。主な増減は、利益剰余金の増加2,120百万円、その他有価証券評価差額金の増加1,245百万円などによるものです。
② キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円)
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、19,093百万円と前連結会計年度末と比べ2,578百万円の減少となりました。各キャッシュ・フローの状況と要因は次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、5,459百万円の資金増加(前連結会計年度は5,167百万円の増加)となりました。主な増減は、税金等調整前当期純利益の計上6,705百万円、減価償却費の計上2,333百万円、のれん償却額の計上818百万円、法人税等の支払額4,871百万円などによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、4,760百万円の資金減少(前連結会計年度は5,798百万円の減少)となりました。主な増減は、有形及び無形固定資産の取得による支出2,197百万円、投資有価証券の取得による支出4,232百万円などによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、6,203百万円の資金減少(前連結会計年度は2,004百万円の増加)となりました。主な増減は、短期借入金の純減少額5,810百万円、長期借入れによる収入5,523百万円、長期借入金の返済による支出4,695百万円、配当金の支払額1,079百万円などによるものです。
当社グループが扱うサービス・商品は広範囲かつ多種多様であり、生産実績の画一的表示が困難であることから、記載を省略しております。
金額僅少のため、受注実績の記載は省略いたします。
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、当該割合が10%以上の相手先がないため、記載を省略しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択や適用、資産・負債や収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要といたします。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表において採用する重要な会計方針は、『第5「経理の状況」1「連結財務諸表等」(1)「連結財務諸表」「注記事項」(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)』に記載しております。
また、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは『第5「経理の状況」1「連結財務諸表等」(1)「連結財務諸表」「注記事項」(重要な会計上の見積り)』に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の連結業績は、売上高164,116百万円、営業利益6,170百万円、経常利益6,477百万円、親会社株主に帰属する当期純利益3,194百万円となりました。
また、重要な経営指標と位置付けている売上高営業利益率は3.8%、ROEは6.3%、配当性向34.5%でした。
教育分野は増収減益となりました。教室・塾事業は第4四半期から(株)市進ホールディングスと(株)エヌイーホールディングスを連結化した影響もあり増収増益となりました。出版コンテンツ事業では「地球の歩き方」やeラーニング事業が好調を継続しているものの、児童書、学習参考書、塾教材など主要ジャンルにおける販売不振、返品率悪化、原価高等の影響が大きく、教育分野全体の業績を押し下げました。園・学校事業も少子化に伴う新設園の減少影響等により、減収減益となりました。
医療福祉分野は、前期の不動産売却による一過性売上がなく反動減となったことや、光熱費・食材費などの価格高騰による影響がありながらも、新規拠点の積極的な開設と好調な入居が寄与し、高齢者住宅事業、認知症グループホーム事業ともに増収増益となりました。子育て支援事業は、保育所の定員充足率が高位で安定していることから、新規事業開発への先行投資を進めながらも増収増益を確保しました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
〔教育分野〕
売上高:79,485百万円(前年同期比1.7%増)営業利益:3,942百万円(前年同期より488百万円減)
(単位:百万円)
(教室・塾事業)
教室事業は、学研教室と幼児教室の新年度会員獲得や新規教室開設が伸び悩んだことから減収減益となりました。少子化の影響を受けながらも「学研教室オンライン」や「ことばパーク」などデジタルサービスの需要は拡大基調にあります。
塾事業では一般家庭の教育費抑制の影響もあり、新年度生募集や夏期講習での生徒獲得実績が前年に届かなかったものの、第4四半期に(株)市進ホールディングスと(株)エヌイーホールディングスを連結化したことにより、全体では増収増益となりました。海外在住の日本人のお子様を対象とした海外塾も堅調な業績を維持しています。
(出版コンテンツ事業)
出版事業は昨秋以降落ち込んだ児童書、学習参考書、塾教材を中心に販売が回復に至らず減収減益となりました。「地球の歩き方」が引き続き好調に推移したのに加えて、学習参考書では回復の兆しが見られたものの、返品率の悪化や児童書の伸び悩みに原価高が加わり、利益を押し下げました。
医学・看護事業では、電子書籍の売上が増加しています。看護師向けeラーニングの契約病院数は2,647病院(前年同期比296病院増)となり順調に売上を伸ばしました。システム構築やコンテンツ制作などの受託売上も伸張したことから、全体では増収増益となりました。
出版以外の事業は増収増益となりました。オンライン英会話「Kimini」事業は利用者数の増加が続き、増収増益となりました。体験型英語学習施設 Tokyo Global Gatewayは新規施設開設に伴う販管費増加があるものの、学校利用が回復基調にあり業績が改善しました。なお、トイ事業を運営する(株)学研ステイフルについては、第4四半期より持分法適用関連会社となりました。
(園・学校事業)
幼児教育は減収減益となりました。新設園の減少に伴い大型遊具や備品の販売が伸び悩んだことに加え、先生向けのエプロンなど、利益率の高いアパレル商材の不調が収益を押し下げました。中核商材の一つである園向け月刊誌「つながるえほん」については増売施策を通年で推し進め、堅調に推移しています。
学校教育では、副読本や小論文模試などが堅調に推移しているものの、収益の基盤となる小中学校の教科書事業が教科書採択の端境期にあたっているため、教師用指導書の売上がなく全体では減収減益となりました。
社会人向けの教育では、採用支援事業や人的資本への投資を進める上場企業向けの研修事業などを展開しています。急速な需要増に応えるべく新コンテンツ開発を進めているものの、顧客数増に至らず売上高は前期並みに留まり、利益は減益となりました。
〔医療福祉分野〕
売上高:78,589百万円(前年同期比8.8%増)営業利益:3,820百万円(前年同期より671百万円増)
(単位:百万円)
(高齢者住宅事業)
サービス付き高齢者向け住宅は第4四半期、新規に4拠点を開設し、累計で203拠点(FC含む)、10,361居室となりました。一部工期の遅延や、建設費の高止まりなど外部環境の影響がありながらも、引き続き積極的な新規開設を進めています。入居率も高水準を維持しており、過去最高の97.1%(前年同期比3.2%ポイント増)となりました。足もとでは光熱費、食材費など物価高騰に伴う収益圧迫要素はあるものの、助成金受給やその他不急経費の削減等で補完し、通期で増収増益となりました。
(認知症グループホーム事業)
メディカル・ケア・サービス(株)が運営する認知症グループホームは第4四半期、新規に4棟を開設し、累計で307棟、5,858居室となりました。建設費の高止まりがある中、建築構造の変更や事業所承継を積極的に推し進め、通期で12~15棟の新規開設計画に対して、15棟を開設いたしました。入居率も97%程度で引き続き高位を維持しています。光熱費・食材費等の高騰影響を受けながらも、適切なコストコントロールにより利益を確保し、増収増益となりました。なお、第4四半期より連結化した(株)市進ホールディングスが運営する介護福祉サービス事業の売上高・営業利益を本事業に含んでおります。
(子育て支援事業)
子育て支援事業では9月末時点の保育園定員充足率は95.3%(前年同期比3.2%ポイント増)と、園児数は順調に推移しています。学童事業も4月に新たに受託した3拠点を含め、好調に推移しています。児童発達支援施設など新業態の開発投資を進めながらも増収増益となりました。
〔その他〕
売上高:6,042百万円(前年同期比7.3%増)営業利益:401百万円(前年同期より404百万円減)
グローバル事業では売上の大半を占める新興国向けODAの案件公示が今秋以降にずれこみ、新規案件獲得が前期好調の反動減となったものの、ベトナムなど戦略地域におけるパートナーとの協業は着実に進行しています。デジタル領域においては、(株)Gakken LEAPが社会人のリスキリング学習を支援するウェブサービス「Shikaku Pass」の販売に注力しています。その他事業全体では物流事業の受注増などにより増収となりましたが、利益面ではデジタル・グローバル関連の人件費や開発費等の増加に伴い、減益となりました。
(財政状態)
当連結会計年度の財政状態の詳細は、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
(資本の財源及び資金の流動性)
当連結会計年度のキャッシュ・フローの詳細は、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの運転資金需要の主なものは、人件費、商品の仕入、製品の製造費、販売費及び一般管理費であり、戦略的投資資金としては、拠点展開の整備等の設備投資、企業買収及び業務資本提携などがあります。また運転資金及び戦略的投資資金は、内部留保資金、金融機関からの借入、社債の発行及び新株式の発行等により資金調達することとしております。
業務・資本提携契約
特記すべき事項はありません。