第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社は、「もっと、面白く」を企業理念に掲げ、女性向けエンターテインメント市場をリードする、IPクリエイター&ディベロッパーです。

オリジナルIPのモバイルオンラインゲームの企画・開発や運営及び各種メディア展開を軸に、IP創出とそのエンターテインメント周辺事業を包括的に展開しております。

上記理念のもと、エンターテインメントで溢れる世の中を「より一層」豊かにするために、当社は、「ユーザー様ファースト」を徹底しながら、活動の可能性を制限せず、社員とともにあらゆる「面白いもの」の可能性を信じて模索し、魅力的なエンターテインメントをお客様にお届けする企業を目指しております。

 

(2) 経営環境

当事業年度における我が国経済は、雇用・所得環境が改善する中、各種政策が奏功し緩やかな回復が続きました。一方で、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念等、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクは継続しており、景気の先行きは不透明な状況が続いております。

当社が主に事業を展開する日本のモバイルオンラインゲーム市場は、2012年より市場が拡大し2022年には1兆2,129億円となり、成長は鈍化傾向にあるものの(注)、安定した市場規模を維持しております。しかし、海外ディベロッパーのモバイルオンラインゲームをはじめとした高品質な商品の台頭や、開発の長期化や開発費の高騰等、市場環境は厳しさを増しています。一方で、2023年のキャラクタービジネスの推定市場規模については前年を上回る見込であり、底堅く推移しております。

(注)出典:株式会社角川アスキー総合研究所「ファミ通モバイルゲーム白書2023」

 

(3) 経営戦略等

当社は、2024年1月期より、「ゲーム事業」「メディア事業」「AI活用」の3軸を成長戦略として取り組んでまいりました。2025年1月期においても、引き続きこの3軸を成長戦略とし、各戦略を組み合わせ相乗効果を狙いながら、当社IPの最大化を図ってまいります。

 

ゲーム事業

メディア事業

AI活用

IPの信頼を高める・IP数の増加

「体験」を重視するEX展開の加速

AIを活用したエンタメ事業の開始

・運営中のゲームでの信頼獲得

・新作ゲームでのヒット創出

・既存IPのマルチメディア展開

・ヒット商品創出と販路拡大

・新規事業の創造/育成/展開

・他社様IPを活用した商品展開

・AI技術の社内活用研究

・最新技術へのキャッチアップ

・AI技術/ツールのtoB販売

 

 

(注)EXは当社独自の造語で、Entertainment Transformationの略であります。あらゆる産業において「感情」に結びつくような体験の提供が求められる状態を指し、ゲーム業界やエンタメ業界以外の業態においても、今後エンターテインメントの持つ力が重視される時代が来ることを想定しております。

 

(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社は、企業価値を向上させ株主価値を高めることが重要であると考えており、そのためには、事業規模を拡大し収益性を向上させることが経営上重要であると認識し、客観的な経営指標として、売上高及び営業利益を重視しております。

 

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① ターゲット層の拡大

 当社は「ユーザー様ファースト」を徹底した魅力的なコンテンツを継続して提供し、ターゲット層を拡大することが重要な課題であり、事業の安定的な成長につながると考えております。モバイルオンラインゲームの企画、開発及び運営により培ったノウハウを活用し、クオリティの高い自社作品を創出するとともに、他社様との協業により新規作品を拡充することで安定的なポートフォリオの構築に努めます。

 

② ユーザー獲得の強化

 当社は、提供するコンテンツのユーザー数の増加がコンテンツ自体の長期運営及び更なる業績拡大のための重要な課題であると考えております。今後ユーザー獲得のため、SNS等の新規広告媒体やメディア媒体への露出強化に加え、アニメ化・舞台化・コミカライズなどを通じたメディアミックスの積極的な展開により、ユーザー獲得の強化を図ってまいります。

 

③ 適正な配信プラットフォームの選択

 当社は、コンテンツをターゲット層に届けるためのプラットフォームを適正に選択することが、事業の安定的な成長につながると考えております。昨今、モバイル業界では、端末、OS、プラットフォーム、課金システム等の分野で多数の事業者が世界規模の競争を行っており、著しい環境変化を引き起こしております。これに伴い、ターゲット層のメディア利用状況も刻々と変化しています。当社は、ターゲット層のメディア利用状況について日々情報収集を行うことで、その変化に的確に対応し、ビジネス効率を最大化すべく、適正な配信プラットフォームの選択に努めてまいります。

 

④ システム技術・インフラの強化・新技術への対応

 当社は、システム開発及びサーバー構築・保守にあたって、他社様のサーバー等に関するサービスを機動的に利用しながら行っております。当社のコンテンツは、スマートフォン等のモバイル端末を通じたインターネット上で提供していることから、システムの安定的な稼働及びモバイル端末の技術革新への対応が重要な課題と考えております。これに対して、当社はサーバー等のシステムインフラについて、継続的な基盤強化を進めるとともに、システム開発につきましても、開発プログラムのユニット化や標準化を進めることで生産性を向上させ、技術革新にも迅速に対応できる体制作りに努めてまいります。

 

⑤ コンテンツ事業における領域拡大

 当社は、更なる事業拡大のため、コンテンツ事業における収益源の多様化が重要な課題と考えております。そのため、当社がこれまで培ってきたノウハウを活かしつつ、専門企業との連携も含めて、当社コンテンツとシナジーのあるアニメーション・出版物の制作や舞台・イベントの実施、飲食事業、グッズの販売等に展開し各IPの成長の最大化を目指します。ゲーム以外のコンテンツ事業を新たな軸として確立し、ゲームと連動させることで、より豊かで新しい体験をユーザー様に提供してまいります。

 

⑥ 優秀な人材の確保と組織体制の強化

 当社は、今後の成長のために、優秀な人材の確保及び当社の成長フェーズに沿った組織体制の強化が不可欠であると認識しております。人材の確保については福利厚生の充実、人事評価制度の整備等に努めております。 また、組織体制につきましては、個々のチーム・従業員が最大限のパフォーマンスを出せるよう計数指標管理に基づいた組織マネジメントを図るとともに、事業環境に適応した組織体制・内部管理体制の強化を実施してまいります。

 

⑦ コスト管理の徹底

 開発期間の長期化及び開発体制の大規模化に伴い、開発コストが高騰傾向にある中、安定的に利益を創出するためには、コスト管理の徹底が重要と考えています。適正な人員配置と業務委託等を組み合わせながら開発コストをコントロールしてまいります。また広告宣伝におきましても、精密にKPI分析及び広告の効果測定を行うことで費用対効果を高めていきます。

 

⑧ 新規事業投資

 当社の主力事業であるモバイルオンラインゲームは、開発費の高騰や競争激化により、事業リスクは年々増加傾向にあります。このような事業環境の中、当社の強みやノウハウを活かし、新規事業へ挑戦していくことは、企業の持続的な成長及び安定的な収益基盤確立のためには重要であると認識していることから、中長期を見据え積極的に取り組んでいきます。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社は、「もっと、面白く」を経営理念とし、IPを通じて人の心と人生をより豊かにするサービスの提供を目指しております。

また、継続的なサービス提供及び持続的な成長を目指すにあたり、サステナビリティへの取り組みは重要な経営課題であると認識しております。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般のガバナンス及びリスク管理

(ガバナンス)

当社は、中長期的な企業価値向上のため、今後、サステナビリティに関する取り組みを拡充する必要があると考えており、その具体的対応については、検討・実施へと進めます。当社のガバナンスに関しては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。

 

  (リスク管理)   

当社は、リスクの未然防止を図るべく、代表取締役社長を委員長とし、取締役をメンバーに含む横断的な組織であるリスク・コンプライアンス委員会を設置し、四半期毎にリスクマネジメント活動全般を適宜確認し、対応方針及び対応策の検討・策定を行い、リスク対応主管部門と連携し、対応を実施しております。個別のリスクを含むリスクマネジメントの詳細に関しては「3 事業等のリスク」を、詳細な体制に関しては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」を、ご参照ください。

 

(2)人的資本に関する戦略、指標及び目標

(戦略)

当社は、今後の成長のために、優秀な人材の確保及び当社の成長フェーズに沿った組織体制の強化が不可欠であると認識しております。人材の確保については福利厚生の充実、人事評価制度の整備等に努めております。 また、組織体制につきましては、個々のチーム・従業員が最大限のパフォーマンスを出せるよう計数指標管理に基づいた組織マネジメントを図るとともに、事業環境に適応した組織体制・内部管理体制の強化を実施してまいります。

 

(指標及び目標)

当社は、現時点ではサステナビリティ関連の具体的な指標や目標等は定めておりません。当社では人材が重要な資本の一つと捉え、性別は問わず能力や実績に応じた採用・登用を進めるというスタンスであります。当社の足元の従業員構成比では女性71.4%、女性管理職比率について42.9%と、日本政府が掲げる「2030年までに女性管理職比率30%」という数値目標を達成しております。引き続き性別を問わず能力や実績に応じた採用・登用を進めるとともに女性が活躍しやすい環境を整備すること等を通じて、女性管理職比率が維持・向上するように取り組んでまいります。また、男性の育児休業取得率については、日本政府が掲げる「2025年までに男性育児休業取得率50%」という数値目標に対して取得率が75%とすでに高い取得率にて達成をできております。日本政府が最終目標と掲げる「2030年までに男性育児休業取得率85%」も早期に達成し高い水準を維持することで、男性従業員の育児休業取得の後押しやワークライフバランスの向上に取組んでまいります。

具体的な指標や目標につきましては、今後検討してまいります。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもそのようなリスク要因には該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に記載しております。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、将来において発生する可能性のあるリスクを全て網羅するものではありません。

 

(1) 事業環境に関するリスク

① 競合について

当社は、「もっと、面白く」を企業理念に、主に女性向けゲームの開発・運営に注力しております。当社は、これまで培ってきたモバイルオンラインゲーム開発・運営のノウハウを活かして、ユーザーのニーズに合致し、他社のモバイルオンラインゲームと差別化したタイトルを継続して提供してまいりました。しかしながら、今後、競合他社との競争が激化した場合或いは競合会社が提供するタイトルとの差別化が図られない場合には、当社の提供するモバイルオンラインゲームの利用者数が減少し、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

② ユーザー嗜好について

当社が事業を展開するモバイルオンラインゲーム市場においては、基本料金を無料とし、アイテム等に対して課金するアイテム課金制のモバイルオンラインゲームのニーズが高くなっており、当社は、このアイテム課金制のモバイルオンラインゲームを主に開発・提供しております。しかしながら、ユーザーの嗜好が変化し、アイテム課金制のモバイルオンラインゲームに対するニーズが低下した場合は、想定していた課金アイテムの販売による収益が得られない可能性があり、この結果、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

③ 主要な事業活動の前提となるプラットフォームについて

当社コンテンツは、各プラットフォーム運営会社(Apple Inc.、Google LLC等)とのコンテンツ提供に関する契約に基づき、プラットフォーム運営会社を介してユーザーに提供しております。このため、プラットフォーム運営会社の事業方針の変更や手数料率の変動等があった場合、また、当社のコンテンツがプラットフォーム運営会社側の要件を十分に満たさない等の理由により、不適当であると判断され、コンテンツ提供に関する契約を締結または継続できない場合、及びプラットフォーム運営会社において不測の事態が発生した場合など、プラットフォーム運営会社を介してユーザーに当社コンテンツを提供できなくなる場合には、当社の業績及び事業展開に重大な影響を与える可能性があります。なお、本書提出日現在において契約継続等に影響を及ぼす事態は発生しておりません。

 

④ サービス及びシステムの障害並びにインターネット接続環境の不具合について

当社は、サービス及びそれを支えるシステム、並びにインターネット接続環境の安定した稼働が、事業運営の前提であると認識しております。従って、常時データバックアップやセキュリティ強化を実施しているほか、信頼性の高いクラウドサービスへシステムを委託することで、安定的なシステム運用体制の構築に努めております。しかしながら、予期せぬ自然災害や事故、ユーザー数及びトラフィックの急増やソフトウエアの不具合、ネットワーク経由の不正アクセスやコンピュータウイルスの感染などの障害や不具合が発生した場合にはサービスの安定的な提供が困難となり、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑤ 技術革新について

当社が取り組む事業分野においては、コンテンツを供給するプラットフォームの変遷や多様化が進むとともに、ARやVR、またAI等を活用したコンテンツが登場し、今後もさらなる技術の進化が見込まれるなど、技術環境が著しく変化しております。当社は、これらの変化に柔軟に対応するために、先進的で高度な技術やノウハウの蓄積に取り組んでおります。しかしながら、そうした急速な技術革新への対応に時間がかかる場合は、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

⑥ AI活用について

当社では、AIを活用することでの業務の効率化や、AIの事業化を推進しておりますが、その特性を見極めつつ、適切に活用することで当社の価値を高めることが期待されます。しかしながら、出力結果の信憑性や著作権侵害可能性に関する懸念、秘密情報の入力による情報漏洩の懸念等、利用方法を誤ると当社の信頼性を毀損する可能性があります。当該リスクに対応するため、当社では「AIガイドライン」を定め、これに基づくAIの効果的な利用を推進しております。また、最新のAIの普及状況や技術の進展を注視し、適切に活用するプロジェクトをお客様にご提案・ご提供することで、競争優位を維持するよう努めております。

 

(2) 事業展開に関するリスク

① 特定コンテンツへの依存について

当社の総売上高に対する「スタンドマイヒーローズ」(繁体字版を含む)及び「魔法使いの約束」のモバイルオンラインゲームに係る売上高の割合は、2023年1月期において71.3%(「スタンドマイヒーローズ」(繁体字版を含む)が20.0%、「魔法使いの約束」が51.3%)、2024年1月期において63.7%(「スタンドマイヒーローズ」(繁体字版を含む)が19.8%、「魔法使いの約束」が43.8%)となり、総売上高の大部分を占めております。当該状況に関しましては、新規コンテンツのリリース及びそれらの底上げ、グッズやイベント、飲食など各種メディア展開により、売上を分散し、当該コンテンツへの依存度を低減していく方針ですが、市場環境の変化やユーザーの動向等により当該コンテンツの売上高が急速に悪化する場合、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

② 開発費及び広告費の負担について

当社のゲームコンテンツの開発方針として、ターゲット層を設定し、高品質なタイトルをリリースする方針であります。また、広告宣伝に関して現在はインターネット広告が中心でありますが、今後も新規ユーザーの獲得等を目的に様々なメディアへの露出を行っていく方針であります。当社では、ゲームコンテンツ単位での開発費の予実管理及び費用対効果を見極めた広告宣伝の実行により、コストの最適化に努めております。しかしながら、不測の事態、例えばユーザーの嗜好の急激な変化等により投資に見合った効果がみられない場合や広告媒体の出稿枠獲得競争の激化等により想定を上回るコストが生じた場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

③ コンテンツ制作におけるクリエイターへの依存について

当社は、当社が立案した企画に基づくイラストやシナリオの制作等に関して、業務の一部を外部クリエイターに委託し、コンテンツを制作しております。当社では、特定の外部クリエイターへの依存度を低下させるために、複数のクリエイターに分散して委託するとともに、委託するクリエイターを新たに開拓し、クリエイターとの良好な関係の継続に努めることにより、リスクの軽減を図っております。しかしながら、当社の想定どおりにクリエイターを開拓できない場合、契約内容の見直しや解除がなされた場合、制作委託費用が上昇した場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

④ 新たな事業展開について

当社は、今後新たなモバイルオンラインゲームを開発及び提供していくとともに、モバイルオンラインゲームの企画、開発及び運営、各種メディア展開で得たノウハウを応用し、将来の収益源となる新たなコンテンツやエンターテインメントの創出を行う方針であります。新規事業を開始する場合には、新たな人材の確保、システム投資等のための追加的な支出が発生する可能性があります。また、新たな事業展開が想定どおりに進捗しなかった場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑤ 在庫リスクについて

当社の取扱うグッズ商品は、消費者の嗜好性が強く、そのライフサイクルの長短も予測しがたいのが実情であります。当社では、販売管理システムを活用し在庫の適正化を図っておりますが、販売見込の相違やマーケットの変化による予期せぬ余剰在庫や滞留在庫の発生により、評価損等が計上される可能性があります。また、当該在庫について多額の評価損等が生じた場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

⑥ 海外展開について

当社は展開する事業のエリアを海外に拡大してまいりたいと考えております。海外においては国内とは異なる法規制が敷かれている場合があり、当社の提供するコンテンツや商品を海外展開する際にはその国の法令等に適切に対応する必要があります。また海外展開には政治・文化・商慣習の違い等の潜在的なリスクもあると考えております。それらへの対応に際して想定以上の工数・コストが生じた場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

(3) 法的規制・業界規制に関するリスク

① 法的規制について

当社が属するモバイルオンラインゲーム業界は、主に「有料アイテム」における過度な射幸心の誘発等の問題がたびたび提起されており、最近では「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)」における有利誤認・優良誤認や「資金決済に関する法律(資金決済法)」における前払式支払手段の取扱いについて取り上げられました。当社は一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)へ加入するとともに、顧問弁護士との協議や法改正に関する情報交換等を通じて上記各種法的規制等について積極的に対応しております。このため、当該各種法的規制等は当社のサービス提供に大きな影響を与えていないものと認識するとともに、今後も変化する可能性がある社会的要請について、サービスを提供する企業として自主的に対応し、業界の健全性・発展性を損なうことのないように努めてまいります。

しかしながら、今後社会情勢の変化によって、既存の法令等の解釈の変更や新たな法令等の制定等、法的規制が行われ、当社の事業が著しく制約を受ける場合には、当社の事業及び業績に重大な影響を与える可能性があります。

 

② コンテンツにおける表現の健全性について

当社では、ゲームコンテンツの健全性確保のため、ゲームの開発・提供過程において、各種法令やプラットフォーム運営事業者の基準を踏まえた多段階の社内チェック体制を構築しております。当該チェック体制により、青少年に対して著しく暴力的または性的な感情を刺激する描写・表現をコンテンツ内にて使用すること等を防止しております。しかしながら、今後、法的規制の強化や新たな法令の制定等に伴い、当社コンテンツの提供が規制される事態等が生じた場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

③ 個人情報の管理について

当社は、モバイルオンラインゲームサービスの利用にあたり、利用者の氏名、ユーザーネーム、生年月日の登録が必要となります。また、ゲームキャラクターに関するグッズの通信販売事業においては、購入者及び配送先の住所等の個人情報を保有しております。これらの個人情報について、当社においては守秘義務があり、個人情報の取扱いについては、データへのアクセス制限を定めるほか、外部からの侵入防止措置等の対策を実施しております。

しかしながら、何らかの理由で重要な情報が外部に漏洩した場合には、当事者への賠償と当社に対する社会的信頼の失墜、さらなる情報管理体制構築のための支出等により、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

④ リアル・マネー・トレード(以下、RMTという。)について

当社のモバイルオンラインゲームのタイトルには、ユーザー同士がゲーム内で獲得したアイテムを交換できる機能を設けておりませんが、自らのゲームアカウントをオークションサイト等において現実の通貨で売買するRMTと呼ばれる行為が一部ユーザーにより行われております。当社では、オークションサイト等の適時監視を行い、違反者に対しては強制退会させる等、厳正な対策を講じております。しかしながら、当社が提供するゲームに関して大規模なRMTが発生する等、不測の事態が生じた場合には、サービスの信頼性が低下し、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

 

 

 

(4) 経営体制に関するリスク

① 人材の確保及び育成について

当社は、事業拡大を進めていくため、スキルとセンスを持つ人材の確保及び育成が重要な課題であると考えております。特に、開発部門を中心に極めて高度な技術力・企画力を有する人材が要求されるため、当社の採用基準を満たす優秀な人材を継続的に採用するとともに、既存の人材の更なる育成のため、研修体制の充実等に努めております。しかしながら、業務上必要とされる人材を確保・育成できない場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

② 特定人物への依存について

当社の代表取締役社長である中島杏奈及び代表取締役副社長である中島瑞木は、創業者であると同時に創業以来当社の経営方針や事業戦略の決定及びその遂行において重要な役割を担ってまいりました。当社では、代表取締役社長が経営全般を統括し、代表取締役副社長が新規事業等を統括する体制をとっており、両氏に過度に依存しない経営体制の構築を進めておりますが、何らかの事情により、両氏に不測の事態が生じた場合、または、いずれかが退任するような事態が生じた場合は、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

③ コンプライアンス体制

当社では、今後企業価値を高めていくためにはコンプライアンス体制が有効に機能することが重要であると考えております。そのため、コンプライアンスに関する社内規程を策定し、社内研修、社内ポータルサイトへの掲載等の手段により周知徹底を図り、コンプライアンス体制の強化に取組んでおります。しかしながら、これらの取組みにも関わらずコンプライアンス上のリスクを完全に解消することは困難であり、今後の当社の事業運営に関してコンプライアンス上問題のある事態が発生した場合、当社の企業価値及び業績に影響を与える可能性があります。

 

④ 内部管理体制について

当社では、企業価値の持続的な増大を図るためにコーポレート・ガバナンスが有効に機能することが不可欠であると認識しております。業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、更には健全な倫理観に基づく法令遵守の徹底が必要と認識しており、内部管理体制の充実に努めております。しかしながら、事業の急速な拡大により、十分な内部管理体制の構築が追いつかない状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

(5) その他のリスク

① 知的財産の管理について

当社では、知的財産の管理において、知的財産の取扱いに関する留意事項を文書化した社内基準を制定するとともに、関係部署に所属する役員及び従業員に対して定期的な研修を実施する等、内部管理体制の強化に努めております。また、コンテンツ制作の一部を委託している外部クリエイターとの契約において、知的財産については第三者の知的財産権を侵害しないことや、当社所有の知的財産権の流出を防止する条項の設定等、細かく取り決めを行っております。しかしながら、当社の事業分野における第三者の特許権等が成立した場合、また、当該事業分野において認識していない特許等が既に成立している場合、第三者より損害賠償及び使用差止め等の訴えを起こされる可能性及び特許に関する対価(ロイヤリティ)の支払等が発生する可能性があり、その場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

② 第三者との係争について

当社は、法令遵守を基本としたコンプライアンス活動の推進により、役員、従業員の法令違反等の低減努力を実施しております。しかしながら、当社及び役員、従業員の法令違反等の有無に関わらず、ユーザー、取引先、従業員その他第三者との予期せぬトラブル、訴訟等が発生する可能性があります。これらのトラブル、訴訟が発生した場合は、臨時的な費用の発生やブランドイメージの悪化等により、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。なお、本書提出日現在において第三者との係争はございません。

 

 

③ 自然災害等について

想定外の大規模地震・津波・洪水等の自然災害や火災等の事故災害、その他の要因による社会的混乱等が発生したことにより、当社や主要取引先の事業活動の停止または事業継続に支障をきたす事態が発生した場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

④ 新型コロナウイルス等の感染症の流行について

新型コロナウイルス等の感染症が流行し外出を含む行動等に規制がかかった場合、グッズ販売やリアルイベント等の実施を中心に当社の事業運営に一定の影響を与えるものと考えておりますが、本書提出日現在において当社の事業及び業績への影響は軽微であると判断しております。しかしながら、新型インフルエンザ等をはじめとする新たな感染症が流行・蔓延した場合には、ユーザーの消費動向や取引先企業への影響が生じること等により、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は、次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当事業年度における我が国経済は、雇用・所得環境が改善する中、各種政策が奏功し緩やかな回復が続きました。一方で、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念等、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクは継続しており、景気の先行きは不透明な状況が続いております。

当社が主に事業を展開する日本のモバイルオンラインゲーム市場は、2012年より市場が拡大し2022年には1兆2,129億円となり、成長は鈍化傾向にあるものの(注)、安定した市場規模を維持しております。しかし、海外ディベロッパーのモバイルオンラインゲームをはじめとした高品質な商品の台頭や、開発の長期化や開発費の高騰等、市場環境は厳しさを増しています。一方で、2023年のキャラクタービジネスの推定市場規模については前年を上回る見込であり、底堅く推移しました。

このような市場環境を受け、当社ではゲーム・メディア(グッズ販売・イベント開催等のゲーム外展開を指す)双方からIPを盛り上げ、末永くユーザー様に楽しんでいただけるIP運営を目指しました。

モバイルオンラインゲーム事業については、今一度ユーザー様ファーストの視点に立ち返り、IPとしての信用獲得に注力してまいりました。当期で7周年を迎えた『スタンドマイヒーローズ』につきましては、4月に大型リニューアルを実施し、UIの一新や新機能を追加したほか新章を開始し、その後も各種アップデートやイベント、コラボレーションを開催しました。『魔法使いの約束』につきましては、上期に700万ダウンロードを達成後、メインストーリー第2部の完結から各種コラボや4周年イベントにつなげ、常に盛り上がりを作る運営に注力しました。引き続き、各種キャンペーン・イベントを展開しながら、11月に発表したアニメ化プロジェクトに向けて、ゲーム内外での施策を展開しております。当期リリース目標だった『ブレイクマイケース』につきましては、よりよいものをユーザー様にお届けすべく、リリース時期を2024年5月に再設定し開発を進めているほか、出演声優による生放送配信の実施や、グッズの先行販売等、リリース前から認知を広めるべくマーケティングを展開しました。運営中のゲームは成熟期を迎えており売上に伸び悩みがみられるものの、引き続き、ユーザー様にとって魅力のある運営を実施しながら、メディアと絡めつつIPとしての成長を目指してまいります。また、同時に新たなIPの創出・新たなゲームの開発を進行し、安定成長のための準備を推進します。

メディア事業においては、「coly cafe!池袋PARCO店」や「coly more!心斎橋PARCO店」をオープンし、自社IPのグッズ販売やコラボカフェの開催等を実施したほか、リアルイベントの開催や舞台への出資、有名商品と当社IPのコラボレーションによるライセンスビジネス等、IPの魅力の最大化を図りました。また、他社様IPを活用したライセンスビジネスや「推し活」を応援する事業を展開し、メディア事業は前年売上を上回る結果となりました。

新規事業においては、AIを活用した新たなエンタメの創出及びゲーム開発等への活用による生産性の向上を目指しました。

売上につきましては、前述のとおり、メディア事業は前年を上回り好調に推移したものの、運営中ゲームの売上の伸び悩みを補うには至らず、前期比で減少しました。費用につきましては、現在開発中の『ブレイクマイケース』の開発が大詰めを迎え開発費用が増加していることや大手エンターテインメント企業との協業案件の費用が先行していること、新規施策・新規事業への先行投資をすすめたことにより前期比で増加いたしました。

 

その結果、当事業年度の業績につきましては、売上高5,064,540千円(前期比8.5%減)、営業損失813,715千円(前事業年度は営業損失207,318千円)、経常損失794,573千円(前事業年度は経常損失206,946千円)、当期純損失830,746千円(前事業年度は当期純損失320,780千円)となりました。

なお、当社はコンテンツ事業の単一セグメントであるため、セグメント情報は記載しておりません。

 

(注)出典:株式会社角川アスキー総合研究所「ファミ通モバイルゲーム白書2023」

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末と比べ1,011,443千円減少し、5,086,068千円となりました。

 営業活動の結果支出した資金は、517,623千円(前事業年度は683,381千円の支出)となりました。これは主に、税引前当期純損失827,696千円の支出があった一方で、法人税等の還付額217,780千円を計上したことによるものです。

 投資活動の結果支出した資金は、493,819千円(前事業年度は115,278千円の支出)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出772,622千円があった一方で、投資有価証券の売却による収入352,622千円を計上したことによるものです。

 財務活動の結果支出した資金は、ありませんでした。(前事業年度は3,070千円の支出)

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当社が営むコンテンツ事業は、提供するサービスの関係上、生産実績の記載になじまないため、記載しておりません。

 

b.受注実績

当社が営むコンテンツ事業は、提供するサービスの関係上、受注実績の記載になじまないため、記載しておりません。

 

c.販売実績

当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2023年2月1日

 至 2024年1月31日)

前期比(%)

コンテンツ事業(千円)

5,064,540

91.5

合計(千円)

5,064,540

91.5

 

(注) 1.当社は、報告セグメントが単一のセグメントであります。

2.最近2事業年度の主な相手先別の売上高及び当該売上高の総売上高に対する割合は、次のとおりであります。

 

相手先

前事業年度

(自 2022年2月1日

 至 2023年1月31日)

当事業年度

(自 2023年2月1日

 至 2024年1月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

Apple Inc.

2,641,285

47.7

2,096,602

41.4

Google LLC

1,408,044

25.4

1,126,026

22.2

 

3.当社の主なサービス提供先は、ゲームの利用者 (一般ユーザー) であるため、損益計算書の売上高の10%を超える主な顧客は存在いたしません。なお、Apple Inc.及びGoogle LLCは、プラットフォーム提供会社であり、同社に対する売上高は、当社が提供するゲーム利用者(一般ユーザー)に対する利用料等であります。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。財務諸表の作成にあたっては資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。

 

② 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・結果内容
(売上高、売上原価及び売上総利益)

当事業年度の売上高は5,064,540千円(前期比8.5%減)となりました。メディア事業は前年を上回り好調に推移したものの、運営中ゲームの売上の伸び悩みを補うには至らず、前期比で減少しました。

売上原価はモバイルオンラインゲームにおいては、ゲーム運営の効率化による運営費用の減少や、売上が低下したことによりプラットフォームに対する手数料が減少しました。また、メディア事業においては売上増加によるコストの増加がありました。その結果、3,226,884千円(前期比5.0%減少)となり、売上総利益は1,837,656千円(前期比14.1%減)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業損失)

当事業年度の販売費及び一般管理費は2,651,372千円(前期比13.0%増)となりました。現在開発中の『ブレイクマイケース』の開発が大詰めを迎え開発費が増加していることや大手エンターテインメント企業様との協業案件の開発費用が先行しており、研究開発費が807,802千円(前期比51.2%増)に増加したこと等により、販売費及び一般管理費が増加した結果、営業損失は813,715千円(前事業年度は営業損失207,318千円)となりました。

 

(営業外収益、営業外費用、経常損失)

営業外収益は投資有価証券売却益等の発生により19,264千円(前期比4,823.8%増)となり、また営業外費用は為替差損等の発生により122千円(前期比536.9%増)となりました。結果として、経常損失は794,573千円(前事業年度は経常損失206,946千円)となりました。

 

(特別利益、特別損失、当期純損失)

 当事業年度において特別損失として減損損失33,049千円を計上したことにより、税引前当期純損失は827,696千円(前事業年度は税引前当期純損失287,840千円)となりました。また、法人税等合計は3,050千円(前期比90.7%減)となり、その結果、当期純損失は830,746千円(前事業年度は当期純損失320,780千円)となりました。

 

上記のほか、当事業年度における経営成績の前事業年度との比較分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性
a.キャッシュ・フロー

当事業年度のキャッシュ・フロー分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。

 

b.資本の財源及び資金の流動性

当社の運転資金需要の主なものは、モバイルオンラインゲームの開発費及び広告宣伝費等の営業費用であり、営業活動によるキャッシュ・フローの枠を基本としつつ、財務安全性や調達コストを勘案の上、必要に応じて、増資や金融機関からの借入によって調達を実施いたします。

また、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は、5,086,068千円となっており、将来に対して十分な財源及び流動性を確保しております。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

 

相手方名称

契約の名称

契約内容

契約期間

Apple Inc.

iOS Developer Program

License Agreement

iOS搭載端末向けアプリケーションの配信及び販売に関する契約

1年間
(1年ごとの自動更新)

Google LLC

Androidマーケットデベロッパー販売/配布契約書

Android搭載端末向けアプリケーションの配信及び販売に関する契約

定めなし

大手エンターテインメント企業(注)

開発および配信に関するライセンス契約書

当該相手方との協業による、オリジナルオンラインゲームの企画、開発及び運営

サービス開始予定時期

2026年1月期

 

 (注) 当事者間の守秘義務により相手方の名称は非開示といたします。

 

6 【研究開発活動】

当事業年度の研究開発活動は、主に、モバイルオンラインゲームの開発費を計上しております。

当事業年度における研究開発活動に関わる費用の総額は、807,802千円です。その主な内容は新規タイトルの開発投資に係る費用であります。