文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、私たちの技術や時代の先端をいく技術を広くお客様に届け、世の中を変えていく「テクノロジーの解放(Liberation of Technology)」を経営理念に掲げております。ITは急速なスピードで変化しています。ITはこれまでも、そしてこれからも世界を変え続けていきます。しかしながら、テクノロジーは時として人々の手に入りにくい形で出現します。ITの力を享受するためには、誰かが理想と現実のギャップを埋める必要があります。
当社グループは、テクノロジーにおけるこのギャップの橋渡し役として、お客様に新しい価値を提供し続け、世界の発展に貢献していきます。
当社グループは「テクノロジーの解放(Liberation of Technology)」を実現するための最適なビジネスモデルの1つとして、クラウドサービスを提供しております。クラウドサービスは、お客様ごとにカスタマイズし提供する受託開発型のソフトウエアサービスとは異なり、より多くのお客様に当社グループのサービスを届けることを可能にしております。
ITはめまぐるしい勢いで進化しており、日々新技術が世の中に生まれております。しかし、実際の世の中で活用される新技術は数少ないという現実があります。当社グループはこのような経営環境の中、日々生まれてくる新技術に向き合い、失敗と成功を繰り返すことで、最適なクラウドサービスをお客様に提供いたします。そのためにも、当社グループは新技術に対する挑戦を継続し、絶え間ない努力を重ねる体制を整え、日々新技術を活用した新機能・新サービスの開発を行っております。
当社グループは重要な経営指標として、現在の当社グループの成長ドライバーであるHENNGE One事業のLTV(注)を重視しております。LTVは、ARR、売上総利益率、平均契約年数で算出されますが、この3つの要素の中では、現在特にARRに着目し、今後の更なる成長に向けて積極的に将来ARRの最大化を目指し、日々の事業活動を行ってまいります。
①契約企業数の最大化
営業人員の更なる増員、広告宣伝活動によるブランド力や知名度の向上、当社グループのブランチオフィスがある東海、関西、九州、そして子会社のある海外を中心とした地域カバレッジの拡大、販売パートナーとの連携強化等の施策を継続し、契約企業数の最大化を図ります。
②ユーザあたり単価(ARPU)の向上
営業活動やカスタマー・サクセス活動を通じて顧客の要望に耳を傾け、需要を探り、その需要に繋がる機能改善や、新機能・新サービス等の開発をとおし、ユーザに提供できる付加価値を増やし続けることで、今後もユーザあたり単価の向上を目指します。
③平均ユーザ数の最大化
現在は、契約企業数の最大化を目指すべく、販売パートナーとの連携強化施策の中で、大企業だけでなく比較的小規模な企業へのアプローチも行っております。様々な規模の潜在顧客にアプローチしていることからも、獲得する顧客規模が多岐にわたり、ボラティリティが高くコントロールすることが困難な係数であると認識しておりますが、営業体制の強化等による比較的大きめの企業の獲得や、カスタマー・サクセス活動を通した顧客企業のクラウドアダプションやデジタルトランスフォーメーションの推進による顧客企業の成長支援等により、顧客企業内での利用アカウント数の増加を穏やかに図ってまいります。
また同時に、当社グループは、提供サービスの基盤システムの効率化と、そこから生まれる利益の研究開発等への再投資が、提供サービスの価値向上の源泉であると考えております。そのため、研究開発部門を中心に、基盤システムの効率化や費用削減に積極的に取り組んでおります。
さらに、お客様にとっての当社グループのサービスの価値を継続的に向上すべく新機能・新サービスの研究開発に注力するとともに、当社グループのサービスの認知度向上のための広告宣伝や営業活動にも先行投資しております。そのため、財政状態についても、現金及び預金残高や契約負債残高の推移を重視しております。「HENNGE One」は年単位で契約いただくサブスクリプション型のサービスです。年間費用は、原則としてサービス開始時に一括でお支払いいただいております。このビジネスモデルにより、営業や開発への先行投資ができる健全な財務状況となっております。
(注) LTV (Life Time Value)
顧客が顧客ライフサイクルの最初から最後までの間に当社の商品やサービスを購入した(する)金額の合計です。
当社グループが属するIT業界は技術進歩がめまぐるしく、新規企業の参入や新サービスの提供が頻繁に起こっております。このように業界における経営環境の変化が速いことが、探求心を持ち続ける当社グループにとって最大のビジネスチャンスであると捉え、新技術への挑戦を続け、新サービスを提供できる体制を構築しております。
当事業年度内においては、前事業年度に引き続き新型コロナウイルス感染症の影響により、海外渡航制限や対面活動の制約がありましたが、2022年3月以降、入国制限が徐々に緩和されたことで長らく遅延していたグローバル人材の入社が進み、リアルイベントの開催、出展も再開しました。今後、パンデミックを経た新しい生活様式が定着していく中で、中長期的には、事業継続のための多様な働き方や生産性向上に関連する需要がより一層加速するとみております。
当社グループが対処すべき主な課題は以下のとおりであります。
① 技術革新への対応
IT業界における日進月歩の技術革新に留まらず、多くの企業においてデジタル変革(DX化)が進んでおり、当社グループが継続的に事業を拡大していくためには、様々な新技術をサービスに適切に取り入れていくこと及び市場やユーザのニーズを適時、的確に捉えることが重要であると認識しております。当社グループでは、2022年11月に新サービスとして「tadrill」(年々リスクが高まっている標的型攻撃への実践的な訓練と報告制度を兼ね備えた新サービス)を、また、2023年6月に「HENNGE Secure Download for Box」(「PPAP」と呼ばれる従来のメール経由のファイル送信方法の代替ソリューション)と「HENNGE Access Control API」(働き方の多様化や企業が利用するクラウドサービスの増加に伴い複雑化する各サービスのID管理業務を効率化するソリューション)を「HENNGE One」の新機能として開発し、販売を開始いたしました。このような社内開発活動に加え、HENNGE Oneに続く新規事業開発、事業投資や事業提携等も推進していくことで、市場のニーズに合致した技術力を向上させてまいります。
② 開発体制の効率化と強化
ITや先進技術分野への需要は拡大しており、IT技術者不足が、企業の開発力の維持、強化を阻む要因の一つとなっております。当社グループでは、優秀なIT技術者の採用と育成強化に取り組むとともに、国外も含めた幅広い層にアプローチすることで、より優秀な人材を確保するため、グローバルインターンシッププログラムの実施や、英語の社内公用語化等の取り組みをしております。今後も国籍を問わない採用に注力するなど、体制の強化を図ってまいります。
③ 認知度の向上及び販売力の強化
HENNGE OneのARRにつきまして、当連結会計年度は前連結会計年度末23.7%増と堅調に伸長しておりますが、更なる収益拡大を図るためには、当該サービスの認知度向上と営業力の強化が重要であると認識しております。当連結会計年度は、新規顧客獲得体制強化のため、特にIT営業経験者を重点的に増強するだけでなく、大手企業、販売パートナー、新規顧客、既存顧客など様々なアプローチ先に焦点を当てた各種イベントの開催など、多層的な顧客アプローチを実施いたしました。今後も状況に応じた戦略的かつ効果的な広告宣伝活動を実施するとともに、優秀な営業人材の採用や育成、また、販売パートナーとの連携強化を図ってまいります。
④ 海外への展開
HENNGE Oneはクラウドサービスであるため、国境を越えた展開の可能性を有しております。当社グループでは、中長期的にSaaSの利用拡大が特に見込まれるアジア市場を引き続きターゲットとして捉え、販売拡大を図るとともに、アジア市場以外の海外市場への進出可能性につきましても、継続して検討してまいります。
⑤ 人材の採用・育成とダイバーシティの推進
変化の激しい環境において、常に変化と挑戦が必要だと考えており、そのために多種多様なバックグラウンドを持つ優秀な人材の採用及び育成が重要であると認識しております。当社グループでは、英語を社内公用語とし、ダイバーシティを尊重するカルチャーを醸成するとともに、当社グループのカルチャーに共感した優秀な人材が中長期に亘って高い意欲を持って働ける環境の整備に取り組んでおります。また、オンサイト・リモートワーク環境それぞれの特性を生かしたハイブリッド型の研修プログラムを構築、改善するなど、人材の育成にも努めております。
⑥ 顧客満足度の向上
LTV最大化のためには顧客満足度の向上が必要であると考えております。当社グループでは、前連結会計年度に引き続き、HENNGE Oneに顧客ニーズを捉えた新機能を順々に追加しておりますが、今後も積極的にユーザとのコミュニケーションを図り、当社グループのサービスに対する要望・意見を収集・分析し、既存サービスの改善及び新サービスの開発に反映させてまいります。
⑦ コーポレート・ガバナンスの強化
コーポレート・ガバナンスを企業経営の透明性・公正性を確保し、継続的な成長を図るために必要不可欠な機能と位置付けております。当社グループでは、株主をはじめ、ステークホルダーとの信頼関係に基づく経営を実現できるようガバナンスの強化に努めるとともに、企業経営のリスクに対応するための内部統制システムの運用についても、監督・監査を強化し、充実を図ってまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは「テクノロジーの解放」の経営理念のもと事業を推進しております。テクノロジーの恩恵が拡がることで、地域・年齢・ジェンダー・人種・民族に関わらず多くの人々が、より創造的に活動できる社会に近づいていくものと信じております。私たちはまず自らの変革を起点とし、それを元にお客様に価値提供をしていくことで、広くテクノロジーの解放を追求します。さらに、100年単位での長期をイメージし、「SUSTAINABLE HENNGE」として、こうした社会変革活動を推進し続けます。この活動を、私たちのサステナビリティ活動と位置付け、持続的な人類の発展を支える地球環境や社会の実現に向けて推進してまいります。
当社グループでは、サステナビリティに関する方針及び重要事項について、リスクと機会の両側面を踏まえ、取締役、執行役員から構成される会議体において協議のうえ、取締役会にて審議・決議し、当該決議事項を周知するとともに、対応指示を行う体制を構築、運用しております。加えて、サステナビリティに係る取り組みに関し、IR、広報、人事及び管理等のコーポレート部門を中心とするメンバーで協議、検討を行い、その実施について、上位機関に報告または上申する体制も、併せて構築しております。
当社グループの経営理念「テクノロジーの解放」は、すなわちサステナビリティに関する基本方針そのものであると認識しております。「テクノロジーの解放」を永続的に実現し続けるため、つまり中長期に渡り事業を成長させるために行う私たちの継続的な各種取り組みは、持続的な人類の発展を支える地球環境や社会の実現に繋がると考えております。
私たちはテクノロジーを愛し、テクノロジーの力が世の中を良くすると信じています。常に進化し続けるテクノロジーは、個人の生活を豊かにし続けている一方で、企業の活動においては新しいテクノロジーの活用は遅れをとっており、非生産的な活動が多く残っています。私たちはそのギャップを埋め、企業におけるテクノロジーの活用を後押しするべく「テクノロジーの解放」を経営理念に掲げ、事業を推進しております。
特に日本においては、少子高齢化による労働人口の減少が社会課題となっています。企業における非生産的な業務を削減し、より効率的かつ生産的な活動に従業員が注力できるよう、私たちはテクノロジーによって企業の変化、進化を後押ししていきます。
さらに、テクノロジーによる企業の変化を後押しすることによって、従業員が高い意欲と情熱を持って働くことができるような環境を作り出すことが可能となると私たちは考えています。同時に、テクノロジーを活用し時間や距離の制約を仕事から切り離すことで、より多くの人々が労働するチャンスを享受できるようになるとも考えています。
このような考えのもと、当社グループは、「テクノロジーの解放」を実践していきます。
「テクノロジーの解放」のためには、継続的に需要を捉え、高付加価値サービスを作り、さらにそれらをより多くの企業に届ける必要がありますが、そのためには、優秀な人材の獲得・育成が必須と私たちは考えています。
また、時代の変化が激しいIT業界で継続的に成長し続けるには、変革と進化を継続させる必要があり、地域・年齢・ジェンダーのみならず、人種・民族を含めたダイバーシティのある企業文化の構築が重要だと私たちは考えています。ダイバーシティは、企業文化や戦略に客観的な視点を与え、企業の本質的な強みを育みながら、より速く前進することにつながると信じているからです。
また、ダイバーシティは、より広い労働市場や顧客市場にリーチする力を企業に与え、より多くの機会や人材獲得力をもたらすと考えています。今後も世界中の優秀な人材にキャリアの機会を提供すると共に、インクルーシブな組織の先例として、デジタル変革の力で課題を乗り越える力となりたいと考えております。
このような考えのもと、当社グループでは、「ダイバーシティ&インクルージョン」を推進していきます。
当社グループは、事業を推進するうえでリスクが伴うことを認識し、これを適切に評価、コントロールすることに努めております。また、当社グループにおいては、リスクを単に回避すべき負の影響だけを生じさせる性質のものではなく、事業成長を促す機会であると捉え、リスクと機会の両側面を適切に評価したうえでコントロールしていくことが重要であると考えており、業務分掌規程、組織規程及び権限規程等の社内規程で定めるプロセスに従い、各事案のリスク及び機会を識別・評価しております。
① 「テクノロジーの解放」
当社グループが獲得する契約の総価値、すなわちLTV (Life Time Value)で表せると考えております。LTVは、ARR、売上総利益率、平均契約年数、これら3つの値の積で算出することができます。2023年9月期末現在、売上総利益率は83.8%と高い水準を維持しており、HENNGE Oneの直近12か月の平均月次解約率0.27%から算出する理論上の平均契約年数も高い水準を維持しております。そのため、現在はARRの最大化に努めることで、LTV最大化を目指しております。2023年9月期末のARRl及び各種KPIにつきましては、本書
② ダイバーシティ&インクルージョン
変革と進化の原動力として、ダイバーシティ&インクルージョンを重要視しており、多様な人材の継続的な獲得と、それら人材が活躍できる企業文化および環境の構築を推進してまいります。本書提出日現在において、ダイバーシティ&インクルージョンの状態を包括的に表す指標と目標については検討中ですが、指標の一つとして、日本国籍以外の従業員の比率に着目しております。2023年9月期末現在、当社グループの従業員 (アルバイトを含む) は、25以上の国と地域で構成されており、日本以外の国籍をもつ者の比率は21.86%となっております。今後も世界中の優秀な人材にキャリアの機会を提供すると共に、インクルーシブな組織の先例として、デジタル変革の力で課題を乗り越える力となりたいと考えております。
また、人材の育成の観点においても、ダイバーシティ&インクルージョンの促進は、従業員が異なる視点に触れることで、問題解決やイノベーションに対する多彩なアプローチを学び実践する機会を増大させるとともに、変化に対する柔軟性と適応力を高めるといった、従業員の成長を促すための社内環境の構築であるとも捉えております。さらに、当社グループの経営理念や文化に共感した優秀な人材が中長期に亘って高い意欲を持って働ける環境の整備にも取り組んでおり、人材育成や定着化に関しても有用な研修プログラムの構築、改善や人事制度の改訂等を通した人材の定着施策を実行し続けております。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしも事業上のリスクに該当しない事項についても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する情報開示の観点から積極的に開示しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社グループ株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内在しているため実際の結果と異なる可能性があるとともに、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
また、ここで記載する各リスクの発生頻度及びそれらが顕在化した場合の影響度については、合理的に算出することができないため、記載しておりません。
1.事業環境に関するリスク
(1) 経営環境の変化について
(発生可能性:中、影響度:中、リスクレベル増減傾向:同水準)
(リスクの内容)
当社グループが事業展開をしているIT業界においては、事業継続の観点や業務効率化による自社競争力向上の観点から大企業から中小企業までIT投資を進めております。その中でも、当社グループが現在注力し、売上の大部分を構成するクラウドサービス市場は、その利便性や初期投資を抑制できるといった特徴により急速な成長を続けております。当社グループの発展にはクラウドサービス市場の成長が必要不可欠でありますが、当社グループが将来的に事業環境の変化に適応できなかった場合、経済情勢や景気動向等の変化によってクラウドサービス市場の成長が鈍化した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また急速に成長するクラウドサービス市場において、今後国内外の大手資本や競合他社の参入などにより競争が過熱した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(対応策)
当社グループは、様々なクラウドサービスに対する横断的なアクセスコントロールを実現するSaaS認証基盤(IDaaS)に加えて、誤送信対策や標的型攻撃対策などのメールセキュリティにも対応した、クラウド型のワークスタイルに移行する企業をサポートするための総合的なサービスを提供しております。今後、時代の変化とともに変わりゆく顧客のニーズに合わせ、新しい認証技術を用いたアクセスコントロール機能の改善や新機能の開発などを進めていくとともに、カスタマー・サクセスの向上をより一層図っていくことで、クラウドサービス市場を盛り上げると同時に、参入する競業他社との差別化を図り、本リスクの低減に努めております。
(2) 技術革新やサービス提供環境への対応について
(発生可能性:低、影響度:高、リスクレベル増減傾向:同水準)
(リスクの内容)
当社グループは、技術革新の活発なIT業界において事業活動を行っております。そのため、当社グループ内に最先端の技術を研究開発する部門を設け、日々、既存製品・サービスの改善改良及び新規サービスの開発に絶え間ない努力を重ねております。しかしながら、IT業界の常識を覆すような技術革新が行われた場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの主要サービスである「HENNGE One」は、顧客企業が利用するクラウド型グループウエアと連動して、サービス提供を行っております。クラウド型グループウエアの提供ベンダーが自社で「HENNGE One」に酷似したサービスのみを提供する環境に変更した場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(対応策)
当社グループでは、研究開発部門にて最先端技術の研究開発の努力を重ねるとともに、自ら積極的に新技術を試用、検証及び応用するだけでなく、SaaS企業への投資、事業提携等により、新技術に係る情報の収集、知見の獲得、事業上のシナジーの実現等を図り、市場のニーズに適時に応えることができる技術力を保持しております。これらの知見を活かし、提供サービスの改良・改善及び新サービスの開発・提供を続けることで、競合他社が提供するサービスとの差別化を図り、サービスの優位性を築くことにより、本リスクの低減に努めております。
2.事業内容に関するリスク
(1) 特定の事業者サービスへの依存について
(発生可能性:低、影響度:高、リスクレベル増減傾向:同水準)
(リスクの内容)
当社グループの主要サービスである「HENNGE One」は、安全性、安定性、拡張性及び価格等を総合的に勘案し、Amazon Web Services, Inc.が提供しているクラウドコンピューティングサービスAmazon Web Services(以下「AWS」)を主な基盤として運営しております。そのため、AWSの安定的な稼働が当社グループの事業運営上、重要であり、AWSのデータセンターの処理能力が、当社グループの求める処理能力を満たさない場合や、AWSに障害が生じた場合等には、「HENNGE One」へのアクセスが中断又は遅延するなど、ユーザの「HENNGE One」利用が滞り、ユーザからの当社サービスへの信頼が損なわれ、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、Amazon Web Services, Inc.による経営戦略の変更、価格改定等が行われた場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(対応策)
当社グループでは、お客様における「HENNGE One」のご利用にあたって、利用規約を締結しており、当該規約において、当社グループの賠償責任に制限をかけることで、リスク低減を行っております。また、AWSに障害が生じた場合のリスクにつきましては、AWSはFISC安全対策基準(注)を満たす安全性を備えておりますが、当社グループでは、AWSが継続的に稼働しているか、随時モニタリングしており、障害の発生またはその予兆を検知した場合には、当社グループの担当部門に連絡が入り、早急に対応するための体制を整備しております。なお、Amazon Web Services, Inc.の戦略変更及び価格改定が行なわれるリスクにつきましては、AWS以外の代替サービスへの分散や移行ができるよう、代替サービスの調査、検討、試験的導入等を適宜行なうことにより、本リスクの低減に努めてまいります。
(注)FISCとは、金融庁が金融機関のシステム管理体制を検査する際に使用する基準のことを指します。
(2) 特定の当社グループサービスへの依存について
(発生可能性:低、影響度:高、リスクレベル増減傾向:同水準)
(リスクの内容)
当社グループの売上高のうち、主要サービスであるHENNGE One事業の売上高が大部分を占めております。当社グループは、IDaaSを中心に多様なサービスを提供する企業ではありますが、市場環境等の変化により、HENNGE One事業の売上高が著しく減少した場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(対応策)
当社グループでは、引き続きHENNGE One事業の売上拡大を図る方針に変わりはありませんが、将来的には当社グループ業績に対するその依存度を下げるべく、また、企業価値の更なる向上を図るべく、社内ピッチイベントによる新規事業開発を積極的に行なうとともに、シナジーのある事業投資等による業容の拡大も視野に入れております。このようにHENNGE One事業だけに依存しない取り組みを行なっていくことで、本リスクの低減に努めております。
(3) システムトラブルの発生について
(発生可能性:低、影響度:高、リスクレベル増減傾向:同水準)
(リスクの内容)
当社グループが主に提供している製品・サービスは顧客にセキュアな環境を提供することを目的の一つとしてプログラムされております。このプログラムされた製品・サービスが意図したこととは異なる動作をするなどといった重大なシステムトラブルが発生した場合、当社グループが提供している製品・サービスへの信用度が著しく低下し、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(対応策)
当社グループでは、システムを安定運用し、継続してサービスを提供できるように、障害発生の未然防止と障害発生時の影響の極小化の両面から、関連分野の新技術、公知既存の市販製品、サービスの不具合に係る情報及びその対処方法の情報を積極的に収集、共有するとともに、当社グループで過去に発生した障害の原因分析、再発防止策を社内共有し、定期的に点検を行なうことで、本リスクの低減に努めております。
3.事業体制に関するリスク
(1) 人材の採用・育成について
(発生可能性:中、影響度:中、リスクレベル増減傾向:同水準)
(リスクの内容)
当社グループの継続的な成長のためには従業員を中心とする人材の確保が重要であると認識しております。しかし、国際情勢の変化や当社グループが属するクラウドサービス市場における人材の確保が加熱するなどの影響で今後の事業拡大にあわせて人材の採用・育成そして定着化が計画通りにいかない場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(対応策)
当社グループは、変化の激しい環境においては常に変化と挑戦が必要だと考えており、そのために多種多様なバックグラウンドを持つ優秀な人材の採用及び育成が重要であると認識しております。現在、当社グループはダイバーシティ・マネジメントをより一層推し進めるなどダイバーシティを尊重するカルチャーを醸成するとともに、国外からの優秀な人材を確保するため、英語の社内公用語化を推進しており、本リスクの低減に努めております。また、当社グループのカルチャーに共感した優秀な人材が中長期に渡って高い意欲を持って働ける環境の整備にも取り組んでおり、人材育成や定着化に関しても有用な研修プログラムの構築、改善や人事制度の改訂等を通した人材の定着施策を実行することで、本リスクの低減に努めております。
(2) 内部管理体制について
(発生可能性:低、影響度:高、リスクレベル増減傾向:同水準)
(リスクの内容)
当社グループの継続的な成長には、倫理観を共有すると同時に、時代の趨勢を捉えたうえで、内部管理体制を整えることが重要であると認識しております。しかしながら、当社グループの組織の拡大に対して内部管理体制の構築が間に合わない場合、適切な経営管理を行えず、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(対応策)
当社グループでは、業務を遂行するにあたり、「Transparency(透明性)」と「Track and Trust(追跡と信頼)」を重視する風土を醸成しております。社内業務のIT化により、一定の情報をオープンにしていくことで、不正や誤謬の発生を予防するとともに、疑わしい事案を追跡できる仕組みの構築に取り組んでおります。これらに加え、管理部門を中心とした内部管理体制を構築し、これを監視する内部監査部門を強化していくことで、本リスクの低減に努めております。
(3) 国外事業について
(発生可能性:低、影響度:低、リスクレベル増減傾向:同水準)
(リスクの内容)
当社グループは、国外の顧客に対してもIDaaSを中心としたサービスを提供しております。国外事業は、当社グループのさらなる成長に不可欠であると考え、今後もアジア諸国をはじめ、アメリカ合衆国、欧州各国に事業展開する可能性があります。現地において当社グループが対応できない規制等が生じた場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(対応策)
当社グループは、台湾子会社において、台湾を中心としたアジア諸国への事業展開を図っており、現地の専門家と連携して、市場、商慣習、規制等の情報収集に努めております。また、当社が新たに国外に事業展開を行なう場合には、事前の市場、商慣習、規制等の情報収集を行い、専門家と連携して評価を徹底することで、本リスクの低減に努めております。
4.法的規制及び知的財産権並びに情報セキュリティ等に関するリスク
(1) 法的規制について
(発生可能性:低、影響度:中、リスクレベル増減傾向:同水準)
(リスクの内容)
当社グループが現在提供している製品・サービスを対象とする特段の法的規制はありませんが、当社グループが事業活動を行っていくうえで、個人情報の保護に関する法律、不正競争防止法、電気通信事業法及び下請代金支払遅延等防止法等の法的規制があります。今後、当社グループの製品・サービスを対象とする法的規制若しくはその他の法的規制が整備されることとなった場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(対応策)
当社グループでは、現在提供している製品・サービスを対象とする新たな法的規制に対応するため、事前の情報収集を行い、収集した情報がタイムリーに経営陣を含めた関係者に共有される仕組みを構築し、当該新たな法的規制対応に必要となる方策を検討、準備する十分な期間を確保することで、本リスクの低減に努めております。
また、当社グループでは、コンプライアンス委員会やコーポレート部門を中心とした法令遵守体制を構築し、社内教育を実施する等、事業活動を行っていくうえで、法的規制に抵触することがないよう努めております。
(2) 知的財産権の侵害について
(発生可能性:低、影響度:高、リスクレベル増減傾向:同水準)
(リスクの内容)
当社グループは、研究開発部門を設け、日々、既存製品・サービスの改善改良及び新規サービスの開発に絶え間ない努力を重ねておりますが、当社グループが保有する知的財産権を侵害された場合、又は当社グループが他社の保有する知的財産権を侵害した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(対応策)
当社グループでは、当社グループが開発した知的財産については、適時適切に知的財産権の登録等を行い、当社グループの財産の保全を図っております。また、当社グループの製品・サービスが他社の保有する知的財産権を侵害しないよう、競合企業やベンダー企業の提供サービスについては、適宜モニタリングを実施するとともに、開発段階において採用したビジネスモデルや技術等について、事前に必要な調査を実施し、本リスクの低減に努めております。
(3) 情報セキュリティについて
(発生可能性:低、影響度:高、リスクレベル増減傾向:増)
(リスクの内容)
当社グループが提供する製品・サービスの導入に際して、顧客企業から機密情報に該当する情報を取得することがあります。また、当社グループの事業活動において生み出される重要な情報資産を有しております。近年、ランサムウエアをはじめとする標的型攻撃メール、フィッシング攻撃に加え、昨今普及拡大しているオンライン会議の脆弱性を狙うサイバー攻撃等が増加しており、当該取得情報や情報資産をこれら外部からのサイバー攻撃、内部の作為、不作為等の理由により紛失もしくは漏えいした場合、信頼性の低下、損害賠償、訴訟費用の支出又は競争力の低下が生じる等、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(対応策)
当社グループでは、情報資産を適切に保護、管理するため、各種情報システム・セキュリティに関する規定を整備するとともに、ISMS(ISO27001_情報セキュリティマネジメントシステム)認証の取得、情報管理体制の適宜見直し及び構築、また、外部事業者による定期的なセキュリティ診断の実施等により、外部からのサイバー攻撃による情報漏洩対策に努めております。また、各種情報の取り扱いについて、適切な管理体制を構築するとともに、管理策の定着と改善のための社内教育、監視等を徹底することで、本リスクの低減に努めております。
5.その他のリスク
(1) 投融資について
(発生可能性:高、影響度:低、リスクレベル増減傾向:同水準)
(リスクの内容)
IT業界においては日進月歩の技術革新に留まらず、多くの企業においてデジタル変革(DX化)が進んでおり、当社グループが継続的に事業を拡大していくためには、様々な新技術をサービスに適切に取り入れていくこと、および市場やユーザのニーズを適時・的確に捉えることが重要であると認識しております。当社グループは、現在、市場のニーズに合致した技術力を保持するため、新規事業開発だけでなく、事業シナジーが見込まれると判断した企業に対して投資を実行しております。また、今後の事業拡大のために、国内外を問わず出資、子会社設立、合弁事業の展開、アライアンス、M&A等の投融資を実施する場合があります。投資先企業の事業が計画通りに進捗しない場合や投融資額を回収できなかった場合、減損の対象となる事象が生じた場合等においては、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(対応策)
当社グループでは、投資判断においては、投資先候補企業の事業内容を吟味し、当社グループとの事業シナジーが得られること、投資先候補企業の事業計画、当社グループの財務状況や投資先候補企業への影響等を考慮し、投資先候補企業の評価額が適切な水準であること等を慎重に検討することで、本リスクの低減に努めております。
(2) 株式価値の希薄化について
(発生可能性:中、影響度:低、リスクレベル増減傾向:同水準)
(リスクの内容)
当社グループは、インセンティブの1つとして、当社取締役及び監査役に対して譲渡制限付株式を付与しており、従業員に対しても、ストック・オプションを付与しております。また、今後も株式報酬制度やストック・オプション制度等、企業の持続的成長のためのインセンティブプランを活用していくことが考えられます。そのため、当該インセンティブプランの活用等により新規に株式が発行された場合には、既存株主が保有する株式の価値が希薄化する可能性があります。
(対応策)
当社グループでは、株式報酬制度やストック・オプション制度等のインセンティブプランを活用する場合には、既存の潜在株式の割合と希薄化率を勘案し、外部専門機関による意見等も加味したうえで、適切な規模の制度設計を行なうとともに、新規に株式を発行する方式に加え、自己株式を処分する方式を取り入れることで、本リスクの低減に努めております。
(3) 為替の変動について
(発生可能性:高、影響度:低、リスクレベル増減傾向:同水準)
(リスクの内容)
当社グループでは、クラウドインフラ利用料は主に米ドル建てで支払っており、急激に円安が進行した場合には、売上原価が増加し、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(対応策)
当社グループでは、外貨建て仕入債務等に対して為替予約等を適宜活用することで、その年の為替変動の影響をヘッジし、売上原価の変動が一定の水準に収まるようにする等、為替変動に係るリスクの低減に努めております。
当社グループ(当社及び連結子会社)の業績、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、経営成績等という。)の状況の概要は次のとおりであります。また、文中の将来に関する事項は、本書提出日時点において当社グループが判断したものであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に関する各種規制が緩和され、徐々に経済活動の正常化は進んだものの、世界的な経済環境の変化により、今後も景気は依然として不安定な状況が続くと見込まれております。
このような状況下においても、当社グループの属するソフトウエア業界を含む情報通信サービス業界では、少子高齢化により日本の労働力人口が減少しているという課題に対処するための労働生産性向上の観点だけではなく、BCP(事業継続計画)対策、あるいはデジタルトランスフォーメーションの観点からもクラウドサービスに対する需要は一層拡大傾向となっております。
こうした経営環境の中で、当社グループは、クラウドサービスを導入して業務効率化を図る企業に対し、クラウドサービスの利便性を損なうことなく、セキュリティリスクを軽減させる「HENNGE One」を成長のドライバーと位置付け、事業を推進しております。
場所や端末を選ばずにいつでもどこからでも機動的にサービスを利用できるというクラウドサービスの特性は、業務に幅広い柔軟性をもたらします。しかしながらこの特性は、たとえば意図しない場所からアクセスが可能になってしまうかもしれないといったセキュリティ上の懸念にもつながります。また、業務の基盤となるメールシステムも含めたグループウエアをクラウドに移行する場合、クラウドメール誤送信による情報漏洩対策や、年々リスクが高まっている標的型攻撃などへの対策もあわせて検討する必要があります。
「HENNGE One」は、様々なクラウドサービスに対する横断的なアクセスコントロールを実現するSaaS認証基盤(IDaaS)に加えて、誤送信対策や標的型攻撃対策などのメールセキュリティにも対応した、クラウド型のワークスタイルに移行する企業をサポートするための総合的なサービスです。
当社グループは、より多くの企業がクラウドサービスを導入することで労働生産性向上を実現し、それによって日本経済がさらに活性化するよう貢献したいと考えております。
当社グループは、中長期的な株主価値及び企業価値の向上を目指すべく、主要サービスである「HENNGE One」のLTV(注1)及びARR(注2)を重要な経営指標としております。
当連結会計年度においても、このLTV及びARRの最大化を目指すため、契約企業数とユーザあたり単価を向上させるとともに、低解約率・低原価率の維持を図ってまいりました。また、継続的な売上高の成長実現に向け、積極的なマーケティング活動や人材採用をはじめとした営業体制の強化や新機能追加によるサービスラインアップの充実に取り組んでまいりました。
この結果、新たなサービス開発やサービス内容の向上も継続的に実施しており、2022年11月には、「tadrill」(年々リスクが高まっている標的型攻撃への実践的な訓練と報告制度を兼ね備えた新サービス)をリリースいたしました。また、2023年6月には、「HENNGE Secure Download for Box」(「PPAP」と呼ばれる従来のメール経由のファイル送信方法の代替ソリューション)と、「HENNGE Access Control API」(働き方の多様化や企業が利用するクラウドサービスの増加に伴い複雑化する各サービスのID管理業務を効率化するソリューション)を、「HENNGE One」の新機能としてリリースいたしました。
そのほか、2023年8月、事業シナジーの創出、中期的な収益基盤の強化及び当社グループとしてのARRの向上を一層図るべく、株式会社kickflowとの資本業務提携にかかる基本合意を締結しております。
この結果、当連結会計年度の業績は、売上高6,776百万円(前連結会計年度比20.0%増)、営業利益708百万円(同53.1%増)、経常利益713百万円(同57.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益509百万円(同58.4%増)となりました。なお、売上高のうち6,689百万円(売上高全体のうち98.7%)は解約がされない限り翌期も継続的に売上高となる性質の売上で構成されており、当社グループの安定的な収益基盤を構築しております。また、開発人員の増加や為替変動等によるHENNGE Oneのインフラコスト増の影響等により、売上総利益率は前連結会計年度比0.7ポイント減の83.8%となりました。
当社グループの事業セグメントは単一セグメントでありますが、売上区分別の事業概況は、次のとおりであります。
1.HENNGE One事業
不正ログイン対策、スマートフォン紛失対策、メールの情報漏洩対策などを一元的にクラウドサービス上で提供する「HENNGE One」については、営業面では、大手企業、販売パートナー、新規顧客、既存顧客など様々なアプローチ先に焦点を当てた各種イベントの開催など、多層的な顧客アプローチを実施しました。また営業職とカスタマー・サクセス職の採用・教育、販売パートナーとの連携強化を進めることで、首都圏及びその他の地域での販売拡大のための体制作りにも引き続き注力いたしました。運営面では、2021年10月以降提供を開始している「HENNGE Secure Download」など新機能を加えた新たなライセンス体系を基に、新規顧客獲得体制の充実を図るとともに、既存顧客にも新ライセンス体系への移行を促しながら、ユーザ当たり単価の向上に繋げつつ低い解約率を維持するための施策を進めてまいりました。さらに開発面においては、今年度にも新機能を順次リリースいたしましたが、今後の既存機能の改善や新機能の追加開発のため、引き続き日々研究開発を重ねております。
これら活動の結果として、首都圏・名阪地域を中心とした新規受注の獲得、ユーザ当たり単価の上昇、低解約率の維持を達成いたしました。
この結果、HENNGE One事業の売上高は、6,250百万円(前連結会計年度比21.0%増)となりました。また、翌連結会計年度の収益見込みのベースとなるARRは6,929百万円(前連結会計年度末比23.7%増)、当連結会計年度末時点の契約企業数は2,610社(同17.9%増)、契約ユーザ数は2,380,770人(同2.4%増)、直近12ヶ月の平均月次解約率は0.27%(同0.06ポイント増)となりました。
2.プロフェッショナル・サービス及びその他事業
プロフェッショナル・サービス及びその他事業については、既にサポート終了を予定していた既存製品のサポートの売上減少の影響があったものの、業績は期初策定の計画通りに推移いたしました。クラウド型のメール配信システム「Customers Mail Cloud」につきましては、新規顧客獲得、既存顧客のアカウント追加等の受注、メール配信料の増加などにより堅調に推移いたしました。営業面では販路拡大に向けた取り組みを継続し、開発面ではさらなる機能の向上施策を行いました。
この結果、プロフェッショナル・サービス及びその他事業の売上高の合計は、526百万円(前連結会計年度比9.5%増)となりました。
(注1)LTV (Life Time Value)
顧客が顧客ライフサイクルの最初から最後までの間に当社の商品やサービスを購入した(する)金額の合計です。
(注2)ARR (Annual Recurring Revenue)
対象月の月末時点における契約ユーザから獲得する、翌期以降も経常的に売上高に積み上げられる可能性の高い年間契約金額の総額です。当社グループでは、以下の計算式で算出しております。
対象月末のARR = 対象月のMRR(注3) × 12(12倍することで年額に換算)
(注3)MRR (Monthly Recurring Revenue)
対象月の契約ユーザから獲得した月額利用料金の合計です。ここには一時的な売上高は含みません。
(資産)
当連結会計年度末における総資産は、6,295百万円(前連結会計年度末比1,089百万円の増加)となりました。主な要因としては、現金及び預金532百万円の増加、投資その他の資産459百万円の増加によるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は、3,880百万円(前連結会計年度末比766百万円の増加)となりました。主な要因としては、契約負債484百万円の増加、未払法人税等118百万円の増加、未払金59百万円の増加によるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、2,415百万円(前連結会計年度末比323百万円の増加)となりました。主な要因としては、利益剰余金508百万円の増加、自己株式251百万円の増加、その他有価証券評価差額金45百万円の増加によるものであります。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物等(以下「資金」という)は、4,585百万円と前連結会計年度末に比べ532百万円(13.1%)の増加となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は1,228百万円(前連結会計年度は777百万円の収入)となりました。これは、税金等調整前当期純利益の計上713百万円、契約負債の増加484百万円、未払金の増加60百万円、売上債権の増加55百万円が主な要因となっております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は425百万円(前連結会計年度は120百万円の支出)となりました。これは、投資有価証券取得による支出241百万円、敷金及び保証金の差入による支出98百万円、無形固定資産の取得による支出45百万円、有形固定資産の取得による支出44百万円が主な要因となっております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果支出した資金は270百万円(前連結会計年度は0百万円の支出)となりました。これは、自己株式の取得による支出270百万円が主な要因となっております。
a.生産実績
当社グループは生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
b.受注実績
当社グループは新規案件について受注残が発生するものの、受注から販売までの期間が短いため、当該記載を省略しております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績を売上区分ごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.主な相手先別の販売実績及び当該の総販売実績に対する割合
2.当社グループの事業セグメントは単一セグメントでありますので、セグメント別の記載は省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成においては、経営者による会計上の見積りを行っております。経営者による会計上の見積りは、過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、会計上の見積りには不確実性があるため、実際の結果と見積りとは異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要」に含めて記載しております。
③ 経営戦略の現状と見通し
当社グループは、「テクノロジーの解放 (Liberation of Technology)」という経営理念のもと、独自の開発サービスの提供により業績を拡大してまいりました。今後、クラウドサービスに対する需要が一層拡大し、企業規模によらず積極的なIT投資が進み、ビジネスにおいてクラウドサービスを利用する場面は多くなると考えております。このような経営環境において、当社サービスは、より積極的な機能充実と販売活動を実行することで、事業の拡大が可能であると判断しております。
また、既存サービスの概念に捉われることなく、当社グループの強みである新技術への挑戦を継続することで、新サービスの開発をあわせて実行してまいります。
④ 経営者の問題意識と今後の方針について
今後、当社グループが更なる事業拡大を図るためには、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の様々な課題に対処していくことが必要であると認識しております。それらの課題に対応するため、経営者は最新のIT技術を探求し、あわせて事業環境も把握し、当社グループの強みであるスピード感あふれる実行力を発揮し、世界に新しい価値を創造し続ける方針であります。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、人件費、広告宣伝費、業務委託費等であります。資金の源泉と流動性を安定的に確保することを目的とし、資金需要の額や使途に合わせて自己資金を投下する他、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で資金調達していくことを基本方針としております。なお、これらの資金調達方法の優先順位等に特段方針はなく、資金需要の額や使途に合わせて柔軟に検討を行う予定です。当連結会計年度末の現金及び現金同等物は4,585百万円であり、流動性を確保しております。
当社グループは、最新のITを研究し、既存製品・サービスの改善改良及び新規サービスを開発するため、各分野にわたって研究開発に取り組んでおります。
開発体制は、全世界から採用した優秀な人材を擁する当社のクラウド・プロダクト・ディベロップメント・ディビジョンが中心となり研究開発を行っております。
当連結会計年度における当社グループの研究開発費の総額は