第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社の経営理念

「私たちは、美味しい料理を真心込めて提供します。」

「私たちは、夢に向かって挑戦し、進化し続けます。」

「私たちは、常に感謝の心を持ち、人間形成に努めます。」

 この基本理念に基づき、駅前に「日高屋」がある、そんな当たり前の風景を夢見て、お客様においしい料理を、低価格で提供し、ハッピーな一日(ハイデイ)を過ごしていただきたく、そして、このことを通じて、会社の発展、従業員の幸せと社会への貢献を実現するのが、当社の経営ビジョンであります。

 

(2)経営戦略と対処すべき課題

 今後のわが国経済は、少子高齢化社会となり大幅な成長は期待できないものと思われます。また、エネルギー価格や原材料価格の高騰、為替相場の円安に伴う物価上昇、その影響による個人消費の冷え込み懸念など、厳しい環境が続くものと思われます。

 かかる中、当社は、2023年2月に創業50周年の節目を迎え、今後の更なる飛躍と将来の成長を確固たるものにし、社会インフラとして地域活性化に貢献することを目的として、中期経営計画「Hiday500」を策定し、6つの重点施策をはじめとした各種施策に取り組んでまいりました。2024年4月に経営環境の変化に柔軟に対応するため、ローリング方式により中期経営計画を見直し2026年2月期を中間期とする5か年計画に変更いたしました。また、新たな重点施策として「海外マーケット進出、アライアンス・M&A」を追加いたしました。

 お客様と従業員の幸せ、会社の発展、地域社会への貢献、地球環境との共生を基本方針として、以下の重点課題・施策に対応し、更なる企業価値向上を目指してまいります。なお、事業環境の変化に迅速に対応するため、1年毎に計画を見直し、ローリングしていくことを方針としております。

①店舗戦略

 行田工場を中心に首都圏に加えて、北関東や国内未開拓マーケットである隣接県に出店拡大、収益基盤の強化を目指してまいります。未出店駅前・エリアにおいて、人が多く集まる繁華街、ショッピングモール内や駅商業施設、乗降客が比較的少ない駅前への出店を拡充するとともに、ロードサイドへの出店を加速します。

 経年店舗の改装・リニューアルによりお客様に快適な空間を提供いたします。また、立地や業績不振などに応じてリロケーションや業態転換による収益性改善を図ります。

 更なる店舗拡大、従業員のモチベーション向上を目的としてFC展開も検討してまいります。

 幅広いお客様のニーズにお応えして地域社会の皆様に喜んでいただけるお店作りを目指します。

②海外マーケット進出、アライアンス・M&A

 マザーマーケットである日本に加えて国境を越えた人財の更なる獲得・育成、外国人フレンド社員との共生・価値創造を目的として海外進出を実現いたします。

 新しい価値の創造、収益拡大・更なる成長を目指して、アライアンス・M&Aについても積極的に検討してまいります。

③採用の強化・人財育成

 従業員の成長と活躍を支え、活き活きと働ける環境を充実させて、生活をより豊かにする処遇も実現いたします。

 社員採用活動を強化するためリニューアルしたホームページ採用サイト、SNSやYouTubeなどを積極的に活用いたします。

 また、賃金ベースアップ、年間休日の増加、福利厚生制度の見直しなどにより、継続的に処遇を改善いたします。フレンド社員(パート・アルバイト社員の当社における呼称)においても店舗環境に合わせた時給設定などの処遇を改善いたします。店舗運営においては定着した店長自主管理経営を継続し、ハイデイユニバーシティ(社内教育育成制度)にてSMDP研修(※)をはじめとした各種研修・資格制度、オンラインe-ランニングをブラッシュアップし、社員の調理・接客の技術をより一層強化いたします。「Q(味)、S(サービス)、C(清潔・安全)」の向上により、お客様にご満足いただけるお店作りを継続します。

 女性従業員が将来のキャリアプランを思い描きながら生き生きと働ける環境・風土を目指して、2029年までに女性管理職比率を10%まで引上げ、女性の職場での活躍を支援・促進いたします。また、フレンド社員から正社員への登用を継続的に実施いたします。特定技能外国人の採用も意欲的に実施し、多様な人財の能力を生かして、従業員とともに成長してまいります。

(※)SMDP研修(ストアマネージャー・ディベロップメント・プログラム)

  研修体系のベースは人間形成という、一人の人間としての成長です。そのうえで、調理、接客、マネジメントな

 どの業務に必要なスキルを身につけ、人間的にもビジネスパーソンとしても成長することを目標としております。

④DX推進戦略

 デジタル化を推進することで、省人化を実現するとともに、もっと便利に、ご来店いただくことが楽しい店舗運営を実現いたします。

タッチパネル式オーダーシステムを拡充することでお客様の利便性を高めるとともに、配膳ロボット、ライスロボットの導入推進により店舗オペレーションの見直し・改善のうえ効率化を図ります。また、店舗食材の自動発注支援システムの高度化により店舗・工場社員の負担を軽減いたします。店舗シフト管理システムを全店に拡充することで店長の業務負担を軽減、デジタル化により業務効率化・生産性向上に繋げてまいります。

 dポイント、PayPay期間限定スタンプカード/期間限定クーポンなどの各種キャンペーンによりご来店いただくことが楽しい店舗運営を実現いたします。

⑤事業拡大・新商品開発・販路戦略

 お客様の多様なニーズにお応えするため、新業態開発・育成、新商品開発、販売チャネルを拡充いたします。

 当社の主力業態である「日高屋」「焼鳥日高」ブランドの維持向上を図るとともに、ラーメン専門店、高家賃、長時間営業でも採算良好な業態を開発いたします。新商品・季節限定メニューのタイムリーな投入、既存商品のブラッシュアップにより、いつご来店頂いても新しい発見のある商品開発を進めてまいります。また、時代の流れに合わせて販売チャネルを拡充し、より多くのお客様に満足していただけるように努めてまいります。

⑥ブランディングの強化

 積極的な広報活動(メディア各社へのプレスリリース等)や提携先と連携したキャンペーンに取り組んでまいります。

 魅力的な商品やサービスを積極的にプロモーションすることで、お客様に日高屋での楽しい食事をご想像いただけるように取り組みます。

⑦サステナビリティの取り組み推進

 次世代への繋げて行くため地球にやさしいお店作り、地域コミュニティに密着した社会インフラとして地域活性化に貢献いたします。

 当社は今後もESGの取り組みを推進し、環境、社会、企業統治の観点から企業価値を高めるとともに、持続可能な未来のために活動してまいります。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、事業の拡大・成長性と収益力、株主の皆様からお預かりした株主資本を効率的に活用することを優先事項に考えております。このため、中期経営計画では、売上高、売上高営業利益率、ROE(株主資本当期純利益率)、期末店舗数を重要指標としております。

 2024年2月期はコロナ禍からのV字回復を実現し、「Hiday500」初年度で売上高、営業利益率、ROEは当初計画を上回ったことから、2026年2月期の計画値を引上げました。一方、店舗展開については人財採用・育成の強化が必要なことから計画値を引下げさせていただきました。修正後の2026年2月期、2029年2月期の計画値は以下のとおりです。なお、ROE、売上高営業利益率につきましては計画値を達成後、10%以上を長期安定的に維持したいと考えております。また、店舗展開については計画値を達成後、600店を目指してまいります。

 

 

2026年2月期当初計画

 

2026年2月期

修正計画

2029年2月期

計画

成長性・収益力

売上高

480億円

 

540億円

600億円

売上高営業利益率

7.5%

 

10%

10%

投資収益性

ROE

8.5%

 

12%以上

12%以上

店舗展開

期末店舗数

500(6)

 

485

550

 ※1.上記計画は、当社が現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいて作成しており

   実際の業績は様々な要因により異なる可能性があります。

 ※2.期末店舗数はFC店舗を含み、()内の数字はFC店舗数です。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社は、経営理念に掲げる「使命」「挑戦」「感謝」を企業の行動方針としております。経営ビジョン・営業方針に則り、働く社員の幸せを第一の目的とし、『食』を通じて、お客様に満足して頂き、地域社会に必要とされる店作り、「社会インフラとして地域活性化に貢献」するため事業を遂行しております。サステナビリティは、当社の目指すべき姿を具現化するための中期経営計画の重点施策の一つであります。サステナビリティ委員会を設置し、サステナビリティ基本方針を取締役会で決議し、持続可能な環境や社会の実現への貢献と持続的な企業価値の向上のために、以下の通り「マテリアリティ」(重要課題)を特定し、積極的に取り組んでおります。

 

①環境への貢献

 企業活動が自然環境に与える影響の社会的責任を認識し、省資源・省エネルギー・リサイクルの推進により、持続可能な環境の実現への貢献に努めます。

 

②食の安全・安心

 お客様にご満足いただける安全・安心な商品・サービスを誠実に提供することで、新しい社会価値を創造し続け持続可能な社会の実現への貢献に努めます。

 

③人権の尊重

 人権尊重を事業継続の基盤の一つと捉え、事業活動のあらゆる場面において信頼と思いやりをもって接し、持続可能な社会の実現への貢献に努めます。

 

④従業員の健康と労働環境への配慮

 多様な価値観の尊重と人的資本の活用により、従業員が健康で働きがいを実感できる労働環境となるよう配慮し持続可能な社会の実現への貢献に努めます。

 

⑤公正で健全な事業活動の推進

 実効性・透明性・信頼性が高く公平で公正な企業統治を実現し、正義を貫き倫理意識を向上させ、持続的な企業価値の向上に努めます。

 

(1)ガバナンス

 当社は、環境・社会・ガバナンスへの取組みをより一層強化するため、2023年3月よりサステナビリティ委員会を設置いたしました。委員会は四半期に1回開催され、代表取締役社長を委員長とした取締役、執行役員を含む各部門長から構成されており、サステナビリティに関する方針、目標、実行計画の策定、リスク・機会の特定とそれらへの対応策の検討、サステナビリティ目標に対する推進管理や評価、個別施策の審議を担っております。

 また、その内容を四半期に1回の頻度で取締役会に報告しており、取締役会は委員会で検討した重要なリスク・機会についての審議内容を監督しております。

 

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(2)戦略

①環境への貢献:気候変動

 TCFD提言で示された各リスク・機会の項目を参考に、気候変動問題が当社事業に及ぼすリスク・機会に関して、以下のステップで検討いたしました。また、1.5℃~2℃シナリオと4℃シナリオを用いて、政策や市場動向の移行(移行リスク・機会)に関する分析と、災害などによる物理的変化(物理リスク・機会)に関する分析を実施しました。

 

a 気候変動シナリオ

(1.5℃~2℃シナリオ)

 気候変動の影響を抑制するためにカーボンニュートラル実現を目指した取り組みが活発化し、世界の平均気温を産業革命期以前と比較して1.5~2℃未満に抑えることを目指したシナリオ。1.5℃シナリオでは、移行リスクの中でも政策・法規制リスクの影響が2℃シナリオに比べて大きくなると想定されています。

 

(4℃シナリオ)

 気候変動対策が現状から進展せず、世界の平均気温が産業革命期以前と比較して今世紀末頃に約4℃上昇するとされるシナリオ。物理リスクにおける異常気象の激甚化や海面上昇リスクによる影響が大きくなると想定されています。

 

b リスク/機会のインパクトと対応策

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②人権の尊重、従業員の健康と労働環境への配慮

 当社は、従業員の成長と活躍を支え、活き活きと働ける環境を充実させて、生活をより豊かにする処遇を実現いたします。

a 人財の育成に関する方針

 ハイデイユニバシティ(社内教育育成制度)にてSMDP研修(※)をはじめとした各種研修・資格制度、オンラインe-ランニングをブラッシュアップし、社員の調理・接客の技術をより一層強化しております。新入社員や中途入社者向け研修プログラムも実施しており、人財育成への投資を継続的に実施しております。

 処遇面においては、コロナ禍からの業績回復に貢献した従業員に報いるとともに、一人一人が安心して働ける環境を整えるため、2023年4月に5%弱のベースアップと初任給15千円引上げ(大卒の初任給は250千円)を実施いたしました。

 また、2024年2月には、当社の創業者であり代表取締役の神田正の想いである「分かち合う資本主義」を実現するため、「成長分配金」177百万円を支給致しました。こうした取り組みにより、人的資本への投資を積極的に実施しております。

 

b 社内環境整備に関する方針

 当社は性別、年齢、国籍、新卒・中途に関係なく、多様な人財を採用しております。2023年度に採用した全従業員に占める女性の割合は51.8%であり、今後も引き続き女性の採用を積極的に実施するため、地域保育施設との連携を促進し、育児世代の仕事と子育ての両立を支援するなど、働きやすい環境づくりに努めております。また、外国人については、特定技能外国人の採用を意欲的に実施しており、「特定技能」の在留資格に基づく活動を円滑に行えるようにするため職業・日常生活における支援を実施しております。障がい者についても、個々の能力を存分に発揮して頂くために、より働きやすい環境を整備し雇用を進めてまいります。

 人財登用については、性別、年齢、国籍、新卒・中途に関係なく、能力と適性に応じて実施し、挑戦する意欲と人間力のある社員については、積極的に管理職に登用しております。フレンド社員については研修・教育の機会を充実させて積極的に正社員へ登用しております。各自のライフプランに合わせて勤務時間や雇用形態などを柔軟に選択できるキャリア制度もあり、キャリアアップしながら安心して働ける環境を整備しております。

 

(3)リスク管理

 当社は、全社のリスクを網羅的、総括的に管理するとともに、個々のリスクの担当部署において定期的にリスクの洗い出しおよび当該リスクの予防対策と軽減に取り組むため「リスク管理規程」を定め、取締役会の直下にリスク管理委員会を設置しております。気候変動リスク等のサステナビリティ関連項目に関しては、主にサステナビリティ委員会によって当社事業への影響を考慮し、年に一度の頻度でリスクの抽出・影響度評価を行った後、取締役会に報告しております。

 サステナビリティ委員会において識別・評価されたリスクに関しては、リスクの軽減のためにリスク管理委員会にて予防策、対応方針を決定いたします。リスク管理委員会では、リスクの影響度と発生頻度の2軸にてリスク評価を実施し、優先的に取組むべきリスクを特定しております。特定された優先度の高いリスクに関しては取締役会に報告された後、取締役会からリスク管理委員会を経て、関連する対応組織を定めて、リスク対応を行います。

 全社のリスクを管理するリスク管理委員会は原則として半期に一回開催され、各リスク項目への対応状況に関する報告内容を管理しております。

 特定されたリスクおよび機会については、以下の通り取り組んでおります。

①リスク・機会の特定と評価

②シナリオ群の定義

③財務インパクト評価

④予防策、対応策の検討

⑤予防策、対応策の進捗管理

 

(4)指標及び目標

①環境への貢献:気候変動

 当社は、気候関連問題が自社事業に及ぼす影響を評価するため、GHGプロトコルの基準に基づき温室効果ガス排出量の算定(Scope1、2)を実施しております。Scope1、2は2018年を基準年度として2030年に30%削減を目標としております。また、2023年度よりScope3の算定にも取り組み、サプライチェーン全体における温室効果ガスの排出量を把握いたします。

 2023年度の温室効果ガス排出量は以下の通りです。

 

 

2018年度

2021年度

2022年度

2023年度

 

2030年度

CO2排出量

(Scope1+2)

43.9千t-CO2

30.8千t-CO2

36.7千t-CO2

39.5千t-CO2

 

30.7千t-CO2

CO2削減量

(2018年度比)

 4.3千t-CO2

 

13.2千t-CO2

 

 2023年度のScope3の温室効果ガス排出量は79.7千t-CO2となりました。

 日本の2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に向け、当社は省エネルギー活動を推進するとともに再生可能エネルギーの活用検討を進め、継続的な低・脱炭素活動を推進してまいります。

 

 

②人権の尊重、従業員の健康と労働環境への配慮

 管理職に占める女性の割合目標は、2029年までに10%以上としております。当事業年度末では2.5%となりました。女性の職場での活躍をさらに促進し目標達成に向けて注力いたします。

 障がい者雇用については、同雇用率が法定雇用率を上回る水準を維持しております。

 なお、当社では、定期的に全従業員を対象としたストレスチェックを実施しており、業務への意識、職場の雰囲気、モチベーション、会社への信頼感などについて調査を行っております。調査結果は組織単位で統計的に処理分析され、取締役会にて報告されるとともに、職場改善の参考指標として活用されるとともに、活き活きと働ける環境づくりに役立てております。

指標

目標

実績

管理職に占める女性従業員の割合

2029年2月時点で10%以上

2.5%

 

 

3【事業等のリスク】

当社の経営成績及び財政状態等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主な事項については、以下のようなものがあります。

なお、当社の事業においてはこれら以外にも様々なリスクを伴っており、ここに記載されたものがリスクの全てではありません。また、文中において将来について記載した事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

①事業展開について

当社はラーメン・餃子・中華料理などを主とした飲食店チェーンを主に直営店方式により首都圏で展開しております。駅前繁華街等に出店しており、業態別では「日高屋」を中心に展開しております。今後も、引き続き従来の首都圏一都三県の駅前繁華街等への出店を中心に行う方針でありますが、出店先の立地条件、賃借条件、店舗の採算性などを勘案して出店を決定しており、当社の希望する条件に合致した物件が見つからず計画通りに出店できない場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、出店計画もしくは業態の変更等のほか、消費者の嗜好もしくはニーズの変化、競合他社との競争激化、原材料価格の上昇、原材料の安定的な確保が難しい場合、天候不順、自然災害の発生、疫病等による社会的混乱、既存店の売上高逓減、不採算店の撤退による損失の発生等があった場合において、当社の業績が影響を受ける可能性があります。

 

②人財の確保等について

当社は、業容の拡大に伴い、社員及びフレンド社員の採用数の増加及び研修制度の充実を図ってまいりましたが、雇用情勢の変化、若年層の減少などにより、人財の確保が計画通りに進捗しなかった場合、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

③敷金及び保証金について

当社は、2024年2月末現在449店舗中448店舗が賃借物件となっております。また、敷金及び保証金の総資産に占める割合は、2024年2月末現在13%となっております。当社は与信管理を慎重に行っておりますが、賃借先の経営状況により差し入れた敷金及び保証金の返還や店舗営業の継続に支障等が発生する可能性があります。

 

④固定資産の減損会計適用について

当社が保有する固定資産を使用している店舗の営業損益に悪化が見られ、回復が見込まれない場合、もしくは不動産の時価が著しく下落した場合には、当該固定資産について減損会計を適用し、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

⑤衛生管理及び製造機能の集中等について

当社は、衛生管理につきまして、店舗においては食品衛生法における飲食店営業許可、行田工場(埼玉県行田市)においては食品衛生法における麺類製造業、惣菜製造業並びに食肉販売業の許可を取得しております。営業許可の有効期限は食品衛生法第52条第3項に基づいて定められており、営業許可の更新は所定の更新手続きを行うことにより可能でありますが、食品衛生法の定める施設基準に対して不適合の場合、営業許可は更新されず、不適事項について改善のうえ再検査を行い、基準に適合する必要があります。

また、当社では、食材の購買並びに麺・餃子・調味料などの製造を行田工場に集約しております。食材の購買においては、食材の成分表及び一般生菌検査表の確認等厳正な品質管理及び衛生管理を実施しておりますが、店舗で食中毒が発生し、その原因が行田工場で製造した食材や食品衛生法上認められていない原材料等を使用したことによる場合には、営業許可が取消又は停止されることがあります。行田工場において営業許可の取消又は停止事由が生じた場合、当社の製造機能等は行田工場のみでありますので、当社の主要な事業活動に支障をきたすとともに業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、衛生問題以外の問題の発生により、工場が一時的な操業停止、又は工場稼働率が低下した場合においても、各店舗への食材供給に支障をきたすことにより、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

加えて当社における衛生問題のみならず、食品業界における異物混入や食中毒事故、国内外における食品の安全安心に係る問題が発生した場合にも、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥短時間労働者及び従業員の処遇等について

当社は、2024年2月末現在において10,146人のフレンド社員を雇用しており、業種柄多くの短時間労働者が就業しております。更に年金制度の変更や厚生年金への加入基準の拡大が実施された場合には、当社が負担する保険料の増加等により当社の業績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、短時間労働者を対象とした法令の改廃あるいは、労働市場環境等に変化があり、従業員の処遇等について大幅な変更が生じる場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦情報セキュリティについて

情報管理に関しては、随時、基幹システム及び各種インフラの改修、整備に取り組むなど万全を期しておりますが、不測の事態によりコンピュータウィルス、ソフトウェアまたはハードウェアの障害により情報システムが機能しなくなった場合、店舗運営が滞ることや対応費用が発生すること等により、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧気候変動への取り組みとTCFDへの対応

世界的にエネルギー需要が増加し、化石燃料の消費の増大が見込まれているなか、気候変動の要因となるCO2排出量の削減は地球規模で実施すべき課題と認識しております。気候変動問題は当社が目指す「次世代へとつなげていくため地球にやさしいお店作り、地域コミュニティに密着した社会インフラとして地域活性化への貢献」に影響を及ぼすリスクであると認識しております。

当社は気候変動の影響の緩和として、CO2排出量を環境経営目標として設定し、削減に向けた取り組みを進めてまいります。さらに、気候変動に係るリスク及び機会が当社の事業活動や収益等に与える影響について必要なデータの収集と分析をおこない、TCFD提言に沿った取り組みを進めてまいります。

 

⑨店舗における酒類提供について

店舗において、20歳未満であること、自動車等で来店されていることを知ったうえで酒類提供等が行われた場合、当社および従業員は20歳未満の者の飲酒の禁止に関する法律や道路交通法違反罪に問われ、店舗は営業停止処分等を課せられるリスクがあります。また、これらの違反が報道やSNS等で情報拡散され当社のブランドイメージが損なわれると、長期的な業績の下振れ要因になる可能性があります。

店舗において、上記リスクが顕在化する可能性は常にあることから、酒類を注文されたお客様全員に対し、20歳未満ではないこと、および自動車等を運転して来店していないことの確認を行っております。社内研修において、酒類提供時の確認事項の徹底を指導し、リスク顕在化・発生防止に努めております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

業績等の概要

(1)業績

 当事業年度におけるわが国経済は、5月に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が5類に移行、コロナによる行動制限が緩和から解除へと進み、社会経済活動が正常化する中、個人消費や設備投資などの内需は幅広い分野で緩やかに回復してきました。一方で、為替相場の円安、原材料価格の高騰、物価上昇による消費マインドの冷え込み懸念など、依然として先行き不透明な状況が続いております。

 外食産業におきましては、人流が回復するとともに、コロナ禍前以来となる各種催事の復活などで外出機会が増加し、インバウンド需要も順調に拡大して、回復基調が顕著になってきました。一方で、食材価格の高騰、人手不足、人件費関連コストの上昇基調は続いているため、厳しい経営環境にあります。

 このような環境の中ではありますが、当社は「美味しい料理を真心込めて提供します」を経営理念とし、「お客様に美味しい料理を低価格で提供し、ハッピーな一日(ハイデイ)を過ごしていただく」、このことを基本姿勢とし、より多くのお客様に美味しい料理を提供させていただくことに注力いたしました。引き続き、首都圏600店舗体制に向けて安定的な新規出店、サービス水準のさらなる向上、新商品の投入、積極的な販売施策などを推進し、業容拡大を図ってまいります。

 当社は将来への成長を確固たるものとするために2024年2月期からの3年間を対象とした中期経営計画「Hiday500」を策定して、6つの重点施策、①店舗戦略、②採用の強化・人財育成、③DX推進戦略、④事業拡大・新商品開発・販路戦略、⑤ブランディングの強化、⑥サステナビリティの取組推進を実施してきました。

〈中期経営計画「Hiday 500」の重点施策〉

①店舗戦略

 新規出店を進めるとともに利益の確保が困難な不採算店を退店して、スクラップアンドビルドを推進することで収益率の向上を図っております。

 新規出店は18店舗(東京都4店舗、神奈川県6店舗、埼玉県3店舗、千葉県3店舗、茨城県2店舗)、退店が9店舗となりましたので、当事業年度末の直営店舗数は449店舗となりました。既存店の改装・リニューアルも23店舗で実施しています。業態別店舗数は、「日高屋」(来来軒含む)が418店舗、「焼鳥日高」(大衆酒場日高含む)26店舗、その他業態が5店舗となりました。新規出店した18店舗のうち、ロードサイド店が9店舗を占めており、新規出店の立地や商圏が多様化しています。

②採用の強化・人財育成

 中長期的な成長を支えるため、新卒採用、中途採用や特定技能外国人採用を強化してきました。2024年春の新卒採用は106人、2024年2月期の中途採用は105人となり、ともに過去最高を記録しています。

 採用を強化するためにホームページ/採用サイトをリニューアルしました。動画の活用、会社・仕事・人といったキーワードに沿ったコーナーを設けるなど、当社の魅力を紹介するさまざまな情報を提供しています。2023年4月には5%弱のベースアップを実施、新卒初任給15千円引き上げ、2024年2月に正社員等への成長分配金を支給するなどの処遇改善も取り組みました。フレンド社員(パート・アルバイト)の正社員登用を積極的に実施してきたことで、中途採用者数が増加しました。また、特定技能2号の対象分野拡大にあわせて、特定技能外国人も意欲的に採用しました。在留資格申請などの事務手続きのサポートも実施しています。人財育成では、研修施設を拡充して、正社員・フレンド社員の調理・接客の技術向上を図るため教育研修の機会を増やしています。

③DX推進戦略

 お客様の利便性向上、店舗オペレーションの効率化・生産性向上に向けてDX推進戦略に取り組んできました。店舗業務の効率化、キャッシュレス決済の処理能力向上を企図して、新POSシステムへの切り替えを進めており、日高屋業態では255店舗、焼鳥業態では20店舗でそれぞれ導入しました。4月中には全店舗での切り替えが完了予定です。タッチパネル式オーダーシステムの導入・切り替えは2月末で229店舗に拡充しました。同システム導入は外国人の正社員・フレンド社員がより働きやすい環境を構築できる側面を持つため、多様な人財の活躍を後押しするものです。配膳ロボットはロードサイド店を中心に27店舗28台が稼働中です。

④事業拡大・新商品開発・販路戦略

 2月に新業態「らーめん日高 エキア川越店」を出店しました。本格的な鶏白湯ラーメンを手軽に提供するラーメン専門店です。女性のお客様を意識して店内を明るい雰囲気にし、日高屋とは異なるニーズを獲得できる業態として確立を目指していきます。

 商品面では、創業50周年を記念したメニューを投入しました。3月に特別メニュー「日高ちゃんぽん」、復刻メニューとして4月に「担担麺」、10月に「温玉旨辛ラーメン」を提供して大きな支持を集めました。季節メニューでは、6月に「冷麺」、9月に「肉そば」、11月に「チゲ味噌ラーメン」などを提供しました。12月には5年ぶりのドリンク新メニュー「ドラゴンハイボール」を投入しました。「ドラゴンハイボール」は世界No.1紹興酒ブランド「古越龍山(こえつりゅうざん)」の中でも深い味わいや濃厚な甘さが特徴の「善醸仕込み」を使用した炭酸割ドリンクです。

⑤ブランディングの強化

 積極的な広報活動や提携先と連携したキャンペーンに取り組み、店舗以外の場所で「日高屋」に接する機会を増やしています。

 テレビCM、SNS、動画サイト、ホームページなど、多様なコンテンツを活用して、新商品やお得なキャンペーンなどを継続的に紹介・発信、お客様に楽しい食事を想起していただけるよう活動しております。創業50周年記念動画「50年の歩み」は、50年間の歴史を振り返り、感謝の気持ちと未来に向けたメッセージを伝えています。ブランド認知度のさらなる向上、イメージアップは採用活動にも好影響を及ぼしています。店舗以外で「日高屋」ブランドを訴求する取り組みとして、当社監修のカップ麺が5月と12月に、サンドイッチが8月にそれぞれコンビニエンスストアや量販店で発売されました。10月には、コンビニエンスストア「ローソン」と共同開発した弁当と麺類が関東甲信越で発売されました。

⑥サステナビリティの取組推進

 3月に設置したサステナビリティ委員会では、環境・社会・ガバナンスへの取り組みを強化するため、目標や実行計画の策定を進めています。環境面の計画として、温室効果ガスの排出量(Scope1、2)は2018年を基準年として2030年度に30%削減する目標を掲げています。排出量削減の対策として非化石証書付き電力の利用、20店舗分の年間電力使用量に相当するFIT非化石証書を購入する予定です。Scope3の算定にも取り組み、サプライチェーン全体での排出量を把握します。今後は2050年に向けた長期的な排出量削減目標についても策定してまいります。また、ESGに関する外部評価として、CDP2023気候変動質問書に回答して気候変動の分野で「B-」、サプライヤーエンゲージメントにおいては「D-」の評価となりました。ESG経営にもとづいた課題の抽出と施策の実施につなげます。

 

 上記施策の推進に加えて、3月に実施した価格改定後もご来店客数が伸長してご利用単価も上昇したこと、創業50周年記念感謝祭などのキャンペーン実施、コロナ禍で短縮した営業時間の延長に取り組んだことなどが奏功し、通期累計の売上高は487億72百万円(前期比27.8%増)となりました。12月度の売上高は単月として過去最高額となり、各月の売上高も12ヶ月連続で同月比過去最高額を記録し、通期累計期間としても過去最高額となりました。

 生産、原価面につきましては、豚肉、ラード、米等の各種食材購入価格上昇もありましたが、増収効果により原価率は28.1%(前期は28.1%)になりました。

 販売費及び一般管理費も増収効果によってフレンド社員の増員・時給アップに伴う人件費の増加や店舗消耗品費などのコスト上昇分を吸収して、対売上高比が62.4%(前期は70.3%)に低減しました。

 この結果、利益面では、営業利益は46億37百万円(前期比653.2%増)、経常利益は47億56百万円(前期比92.5%増)、当期純利益は32億33百万円(前期比112.8%増)となりました。

 なお、飲食店チェーン関連事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載はしておりません。

 

(2)財政状態の状況

 当期末の総資産は、332億64百万円となり、前期末に比べて40億83百万円増加しました。これは主に現金及び預金の増加45億37百万円(うち20億円は長期預金からの振替え)、投資有価証券の増加5億19百万円によるものです。

 負債合計は81億50百万円となり前期末に比べて19億43百万円増加しました。これは主に未払法人税等の増加7億37百万円、未払金の増加4億10百万円、資産除去債務の増加2億84百万円によるものです。純資産合計は251億13百万円となり、前期末に比べ21億39百万円増加しましたが、総資産も増加したことから、自己資本比率は75.5%(前期は78.7%)となりました。

 

(3)キャッシュ・フローの状況

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、得られた資金は59億60百万円(前期は40億99百万円)となり、前期に比べて18億60百万円の増加となりました。これは、税引前当期純利益22億57百万円の増加などによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、使用した資金は23億9百万円(前期は26億93百万円)となり、前期に比べて3億84百万円の減少となりました。これは、定期預金の預入による支出30億円の減少、定期預金の払戻による収入10億円の減少、投資有価証券の取得による支出5億円の増加、保険積立金の解約による収入4億87百万円の減少、有形固定資産の取得による支出4億18百万円の増加によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、支出した資金は11億8百万円(前期は9億17百万円)となりました。これは、配当金の支払額11億2百万円(前期は9億11百万円)などによるものであります。

 以上の結果、当期末における現金及び現金同等物の残高は、25億42百万円増加し、129億52百万円となりました。

 

生産、受注及び販売の実績

(1)生産実績

 当期における生産実績を品目別に示すと次のとおりであります。

品目

生産高(千円)

前年同期比(%)

麺類

977,075

128.1

餃子

1,014,440

109.7

調味類

1,034,425

117.8

加工品類

1,286,959

124.9

合計

4,312,900

119.9

 (注)1 金額は製造原価によって表示しております。

2 飲食店チェーン関連事業の単一セグメントであるため、品目別に記載しております。

(2)受注実績

 当社は飲食業であり、見込生産によっておりますので、受注高並びに受注残高については記載すべき事項はありません。

(3)販売実績

業態

期末店舗数

金額(千円)

前年同期比(%)

日高屋

418

46,000,052

128.6

焼鳥日高

26

2,122,974

118.6

その他業態等

5

649,197

106.0

合計

449

48,772,224

127.8

 (注)1 当社では販売品目が多岐にわたるため、品目別の販売実績を記載することは困難でありますので、業態別の販売実績を記載しております。

2 「日高屋」には、「中華食堂日高屋」「来来軒」「らーめん日高」を含めております。

3 「焼鳥日高」には「焼鳥日高」「大衆酒場日高」を含めております。

4 「その他業態等」は、「中華一番」「大衆食堂日高」「中華そば神寄」「中華食堂真心」「屋台料理 台

  南」、FC向けの売上高等を含めております。

5 飲食店チェーン関連事業の単一セグメントであるため、業態別に記載しております。

 

経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末日現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(財政状態)

 当事業年度の財政状態の状況につきましては「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(2)財政状態の状況」に記載した通りであります。

 

(経営成績)

 当事業年度の経営成績につきましては「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)業績」に記載した通りであります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(キャッシュ・フローの状況)

 当事業年度のキャッシュ・フローの状況につきましては「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(3)キャッシュ・フローの状況」に記載した通りであります。

 

 当社の資本の財源及び資金の流動性については、主として自己資金によって充当しております。

 投資資金需要の主なものは、店舗の出店・改装投資及び情報関連投資であります。

 営業活動によるキャッシュ・フローの範囲内における投資を原則としておりますが、戦略的な出店等による資金需要に対しては、必要に応じて主として金融機関からの借入金等により対処することにしております。

 中期経営計画の2029年2月期の経営指標として550店舗体制を実現するべく新規出店の投資を継続中であり、詳細は「第3 設備の状況 3設備の新設、除却等の計画 (1)重要な設備の新設等」に記載の通りであります。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

 財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

6【研究開発活動】

特記すべき事項はありません。