当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、「日本を世界一豊かに。その未来へ心を尽くす一期一会の『いちご』」という理念の実現を最大の目標とし、不動産の保有期間の賃料収入を享受しつつ、いちごの不動産技術、ノウハウを最大限に活かすことで心築(しんちく)による資産価値の向上を図ります。オフィス、ホテル、商業施設等不動産以外にも、遊休地の有効活用策として地球に優しく安全性に優れた太陽光発電所および風力発電所の開発と運営を北海道から沖縄まで全国で行っております。不動産の価値向上が完了後、売却益の獲得等による高い収益を実現しております。
<心築(しんちく)>
いちごでは、「心で築く、心を築く」を信条に、私たちの創造する新たな不動産価値に「心築」という言葉を使用しております。いちごの不動産技術とノウハウを活用し、一つ一つの不動産に心を込めた丁寧な価値向上を図り、現存不動産に新しい価値を創造するとともに、日本における「100年不動産」の実現を目指しております。
私たちの行動指針
・プロフェッショナル
私たちは、どんな場面においても、お客様との永続的な信頼関係を築き、高品質なサービスを提供することに
集中します。そのために、私たちは、誠実かつフェアな精神、高潔で謙虚な態度、高度かつ柔軟な専門知識を
備えるための自己研鑽を惜しみません。
・ベンチャー・スピリット&ダイバーシティ
私たちは、創造性と多様性を大切にし、積極的な姿勢で、革新的な経営を目指します。
・チームワーク
私たちは、チームワークを通じ、お客様へ貢献します。経営幹部は、この行動指針を常に実践し範を示すとと
もに、最適なチームワークを形成します。
(2)経営環境及び対処すべき課題等
当社は、サステナブルな社会を実現するための「サステナブルインフラ企業」として、将来を見据えた戦略的な事業展開を通じて事業優位性のさらなる拡充を図り、株主価値の最大化に向けて全力を尽くしております。長期VISION「いちご2030」は、より中長期的な価値創造に向けたビジネスモデルへの進化を推進すべく策定いたしました。既存事業の継続的な成長に加え、当社が心築事業を通じて培ってきたコア・コンピタンスを活かし、不動産市況に左右されにくい、持続性と安定性の高い新たな収益基盤の構築を目指しております。
当社は従前より、キャッシュの創出を最重要指標としてまいりました。キャッシュの創出力は収益力の実態であり、創出したキャッシュにより、株主価値の最大化に資する成長投資と株主様への還元の両面を追求しております。こうした考えのもと、徹底的なキャッシュ・フロー経営を推進しております。また、2024年2月期においては過去最高のストック収益を実現し、持続性と安定性の高い新たな収益基盤の構築が進んでおります。
これらの事業の状況を踏まえ、キャッシュ指標をKPIとするとともに、持続性と安定性の指標として当社が重要視しているストック収益による固定費のカバー率を目標として新設いたしました。また、ストック収益が拡大していること、今後も拡大の継続が見込まれることから、株主様への還元を強化し、累進的配当政策とともに設定しているDOE目標を引き上げることといたしました。
さらに、当社は、企業の存在意義は社会貢献であると考えております。地球温暖化等が深刻化しているなか、環境課題解決に向けて役職員一同が一丸となって取り組んでおり、この度、サステナブルな社会の達成への環境課題解決KPIを新設することといたしました。
「いちご2030」 サステナブルインフラの「いちご」
従来の心築を軸とした事業モデルをさらに進化させ、既存事業の継続的な成長に加え、不動産市況に左右されにくい、持続性と安定性の高い新たな収益基盤を構築いたします。サステナブルな社会を実現するための「サステナブルインフラ企業」として大きな成長を目指してまいります。
① サステナブル
サステナブルとは、「持続可能な」という意味であり、人類最大の課題である「人間・社会・地球環境の持続可能な発展」を目指すうえで、重要な命題となります。当社の心築は、現存不動産に新たな価値を創造する事業であり、高効率で省資源の持続性の高い、サステナブルな事業モデルです。「いちご2030」を通じて当社の事業活動をさらに進化させ、サステナブル経営、環境保全、100年不動産等、この重要な命題の解決に真摯に向き合ってまいります。
② インフラ
当社が取組んでいる不動産事業、また不動産事業から発展したクリーンエネルギー事業は人々の暮らしに密接に関わっており、人々の生活を支える社会インフラであり、生活インフラでもあります。当社は、経営理念である「日本を世界一豊かに」するとともに、サステナブルな社会を実現するため、「不動産」と「クリーンエネルギー」の事業領域においてさらなる進展を図り、その他の生活基盤となる新たなインフラへの参入を通し、豊かな生活や経済活動を支えることを目指してまいります。
また、不動産は従来、「ハード」として捉えられますが、当社は、入居されるテナント様、利用する人々の生活に目を向け、人々の健康や快適性を向上させ、暮らしをより豊かなものにするためのインフラとして捉えてまいります。徹底した心築とITの融合により、「ハード・インフラ」と「ソフト・インフラ」のさらなる融合を図り、「ハード」だけでは対応できない顧客ニーズを発掘し、それらのニーズにオンリーワンとして的確に対応することで、顧客価値・社会価値を飛躍的に向上していけるものと考えております。
■ 取組み期間
2030年2月期まで
■ 資本生産性およびキャッシュ創出力
① 自己資本利益率(ROE)
・キャッシュROE : 18%以上(新設)
・ROE : 15%以上
※ キャッシュROE = キャッシュ純利益(*) / 期中平均自己資本
(*) キャッシュ純利益 = 親会社株主に帰属する当期純利益 + 減価償却費 + のれん償却費 ± 評価損益等
② エコノミック営業キャッシュフロー
・当期純利益超過の維持
※ エコノミック営業キャッシュフロー
営業活動によるキャッシュ・フローから販売用不動産および販売用発電設備の増減額(仕入・売却)の影響を控除し、かつ、特別損益に計上される心築資産の売却損益を加味したキャッシュ・フロー(税引後)
※「JPX日経インデックス400」への11年間継続組み入れ(廃止)
当社は、徹底したキャッシュ・フロー経営のもと、キャッシュ利益(経済利益)を重視しており、その取り組みを強化しております。よって、会計利益をスコア要素とする本インデックスとの相違があり、本インデックスへの組み入れをKPIから取り下げることといたしました。
■ 安定収益
① ストック収益比率
・60%以上(2030年2月期)
② ストック収益固定費カバー率(新設)
・200%以上
※ ストック収益:賃貸収益、売電収益、AMのベース運用フィー等
※ 固定費:固定販売費及び一般管理費、支払利息
■ 株主還元策
① 「安心安定配当」の累進的配当政策(Progressive Dividend Policy)
・2017年2月期より導入した「累進的配当政策」の維持
② DOE(株主資本配当率)
・4%以上(強化)(強化前 3%)
③ 機動的な自社株買い
・株主価値向上に資する最適資本構成を目指し、機動的な自社株買いを実施
■ サステナブルな社会に向けた環境課題解決(新設)
① いちごのクライメート・ポジティブ
当社および当社が運用するインフラ投資法人であるいちごグリーン(9282)がクリーンエネルギー創出により削減するCO2量が、当社および当社が運用する投資法人(いちごオフィス(8975)、いちごホテル(3463)およびいちごグリーン)が消費するCO2量(Scope1・Scope2)を上回る、クライメート・ポジティブの維持
② RE100
2025年までに事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーに
③ CDP リーダーシップレベル
気候変動プログラム「Aリスト」企業の維持
水セキュリティプログラム「Aリスト」企業の達成(現在はリーダーシップレベルA-)
当社は、企業の存在意義は社会貢献であると考えており、サステナブル(持続可能)な社会を実現するための「サステナブルインフラ企業」として大きな成長を図るとともに、事業活動を通じて社会的責任を果たすことを最大の目標としております。
当社の「心築」(しんちく)事業では「100年不動産」に向け、いちごの不動産技術とノウハウを活用し、一つ一つの不動産に心を込めた丁寧な価値向上を図り、現存不動産に新しい価値を創造いたします。
そして、クリーンエネルギー事業では、当社が運営する太陽光発電所および風力発電所は64発電所・約188MWまで成長しております。今後も、太陽光発電に加え、国内の間伐材を利用したグリーンバイオマス発電を計画しており、引き続き、再生可能エネルギーの創出に注力してまいります。
こうした事業活動を通じた社会貢献への取り組みをさらに拡充し、当社の経営理念「日本を世界一豊かに」の実現に向け、全力を尽くしてまいります。
■ サステナビリティ共通
(1)ガバナンス
当社は、経営理念(Mission Vision Values)を「日本を世界一豊かに。その未来へ心を尽くす一期一会の『いちご』」とし、定款に定めております。私たちは、人類、社会そして地球の一員として、商号の由来である「一期一会」の心得のもと、この実現を最大の目標としております。当社は、人々の豊かな暮らしを支える「サステナブルインフラ企業」です。現存不動産に新しい価値を創造する「心築(しんちく)事業」、いちごオフィス(8975)、いちごホテル(3463)、いちごグリーン(9282)の運用をはじめとした「アセットマネジメント事業」、および太陽光発電や風力発電の「クリーンエネルギー事業」をコア事業としており、経営の効率性、健全性を高め、長期的に企業価値を向上させるための手段として積極的にコーポレート・ガバナンスに取り組んでおります。また、同時に「サステナビリティ方針」を定め、環境負荷の低減や環境貢献活動に積極的に参加しております。具体的には、組織・体制を整備する取り組みと役職員個人へ働きかける取り組みとを組み合わせ、積極的にコーポレート・ガバナンスの有効性の向上を図り、サステナビリティ・マネジメントシステムを推進しております。
当社のすべての取締役は、株主に対する受託者責任を負っていることを認識しているとともに、当該責任に基づきすべてのステークホルダーとの適切な協働を確保しつつ会社と株主の共同の利益のために行動しております。取締役会は長期的な展望に立つ経営の基本方針の制定や業務執行の監督に徹し、それぞれの責任範囲を明確化したうえで業務執行に関する決定と執行の権限を執行役へ委任し、経営の透明性と機動性を追求しております。
取締役会は、実質的な議論を活発化させるため、当社の事業領域における専門性に優れた執行役を兼ねる4名の取締役と、東証上場企業の社長経験者や金融・会計分野での高い専門性を有する5名の社外取締役にて構成しております。指名委員会は、取締役の選任および解任に関する株主総会への議案の内容を決定するほか、執行役の選任および解任に係る取締役会提出議案の内容の決定ならびにグループ各社の役員の選任および解任に関する意見の勧告的提出を行っております。当社は、取締役会の下部機関として業務執行組織から独立したコンプライアンス委員会を設置しており、コンプライアンスに係る重要な問題を審議しております。
(2)リスク管理
当社は、当社および子会社に予想外の損失または不利益を生じさせるすべての可能性を「ISO31000リスクマネジメント指針」を参考に管理しております。リスク管理体制の整備をグループとして組織的に行うため、リスク管理を管掌する役員を執行役コーポレート本部長としております。新規事業およびプロジェクトを含むいちごグループ全体のリスクを特定し、半年に1回の頻度でリスク評価および分析を取りまとめ、管掌執行役コーポレート本部長が監査委員会および監督権を有する取締役会へ報告しており、取締役会はリスク管理プロセスの有効性を定期的にレビューしております。
「気候変動」「労働問題」「健康・安全衛生」その他「行動規範」「コンプライアンス基本規程」および、その細則である「コンプライアンス・マニュアル」に定める「贈答・接待等」「インサイダー取引」「反社会的勢力の排除」などの腐敗リスク等、多岐にわたるリスクについて、その頻度や影響度を分類のうえ評価しております。
■ 気候変動
(1)ガバナンス
当社では、取締役会が決議し監督する企業倫理綱領において、「地球環境の保全に真剣に取り組み、持続可能な社会の形成に貢献します。」と規定し、人類、社会そして地球の一員として「サステナブル経営」の実現を重要な経営課題としています。そして、サステナビリティの推進に主体的に取り組むことを目的に、いちごサステナビリティ方針に基づく業務執行における環境負荷の軽減活動を取締役会は監督しています。
気候変動対策取組体制として、代表執行役社長(CEO)を責任者として定め、執行役副社長兼COOの補佐のもと、代表執行役社長所轄部署としてReジェネレーション推進部を設置しています。Reジェネレーション推進部は、環境課題への取り組みをいちご全社で推進するための横断的な役割を担い、当社および当社子会社と連携し、事業により排出する温室効果ガスの削減に向けて取り組む方針としています。主要会社で年に4回サステナビリティ会議を開催し、気候変動の重要課題についての対処計画の立案実績確認を行っております。その活動状況は、内部統制システム構築基本方針で定める気候変動対策取組体制に則り、執行役副社長兼COO、Reジェネレーション推進部を通じて、代表執行役社長監督機関である取締役会へ報告する体制となっております。
(2)戦略
当社では、2030年を想定し、2つの異なるシナリオにおける財務影響度および事業インパクトを評価するとともに、気候関連リスク・機会に対する当社戦略のレジリエンス評価をすることを目的として、以下のステップに沿ってシナリオ分析を実施しております。
(3)リスク管理
当社は、気候変動に関するリスクと機会を抽出するにあたり、いちごのコア事業である「心築事業」・「アセットマネジメント事業」・「クリーンエネルギー事業」の3つの事業を対象とし、事業内容から「心築事業」と「クリーンエネルギー事業」の2つの観点でリスクと機会を分析しました。「アセットマネジメント事業」については、アセットの属性に応じて、それぞれ「心築事業」と「クリーンエネルギー事業」に包含して分析を行っています。リスクと機会の抽出にあたっては、担当部署と協議し、各事業の特性や外部環境を考慮することで、より具体的なリスクと機会を抽出しています。それらについて、自社とステークホルダーにとっての重要性を定量的、定性的に評価し、いちごにとってのリスクと機会を特定しました。
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(4)指標と目標
当社は、当社および当社が運用する投資法人(いちごオフィス、いちごホテル、いちごグリーン)の温室効果ガス(以下「GHG」という。)排出量削減目標について、Science Based Targets(以下、「SBT」という。)認定を取得しております。SBTとは、パリ協定(世界の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準(Well Below 2℃:WB2℃)に抑え、また1.5℃に抑えることを目指すもの)が求める水準と整合した、5年~15年先を目標年として企業が設定する温室効果ガス排出削減目標です。当社の目標においては、気候変動による世界の平均気温上昇を産業革命前と比べ1.5℃未満に抑えるという「1.5℃目標」であると認められております。
当社は、現存不動産を活かし「100年不動産」の実現を目指す省資源・高効率な心築事業や、クリーンエネルギー事業による再生可能エネルギーの創出と温室効果ガスの削減等、本業による環境負荷低減を推進しております。企業の存在意義は社会貢献であると考えており、サステナブル(持続可能)な社会を実現するための「サステナブルインフラ企業」として大きな成長を図るとともに、事業活動を通じて社会的責任を果たすことを最大の目標としております。環境課題への取り組みは、当社の長期的成長と事業継続基盤の強化に寄与するものと考えており、脱炭素社会に向けた野心的な目標を立てるとともに、引き続き、脱炭素社会に向けた取り組みを推進し、サステナブルな社会実現への貢献を果たしてまいります。
■ 人的資本・多様性
(1) 人財戦略
ⅰ.人財ポリシー
当社およびグループ会社の人員構成は多様な職歴をもつ中途採用者が 9 割以上を占めており、中核人材の登用においては、期待する役割に応じた能力と実績により判断するものとし、性別、年齢、国籍に囚われないことを人財ポリシーとしております。
また、当社では、すべてがプロの集団でありたいという想いから一人一人がプロフェッショナルとして、ベンチャー・スピリットとチャレンジ精神を大切に、様々なバックグラウンドを持つメンバーが認め合いながら集まる「日本一チャンス溢れる会社」を目指し、3つの行動指針を定めています。
私たちの行動指針
・プロフェッショナル
私たちは、どんな場面においても、お客様との永続的な信頼関係を築き、高品質なサービスを提供することに集中します。そのために、私たちは、誠実かつフェアな精神、高潔で謙虚な態度、高度かつ柔軟な専門知識を備えるための自己研鑽を惜しみません。
・ベンチャー・スピリット&ダイバーシティ
私たちは、創造性と多様性を大切にし、積極的な姿勢で、革新的な経営を目指します。
・チームワーク
私たちは、チームワークを通じお客様へ貢献します。経営幹部は、この行動指針を常に実践し範を示すとともに、最適なチームワークを形成します。
ⅱ.人財育成方針
当社の事業においては、役職員のノウハウは重要な要素であり、役職員を人財と捉えて社内研修等の成長機会の充実を図っております。
当社では、役職員一人ひとりが学び続けられる場「いちご大学」を、2013年5月より企業内大学として開校しています。いちご大学で開催する講座では、専門性の高い役職員が自ら講師となり、経験談や実績を踏まえた講義内容を展開しています。また、その道のプロと言える外部講師を迎えた質の高い講座も開催しています。担当する業務と直接関係がなくても自由に講座に申し込みが出来るため、多方面での知識、技能の学習が可能です。役職員同士での知識共有や社内外での活発な意見交換を自由に行う環境が生まれ、役職員への新たな刺激となっています。受講した時間は全て業務時間扱いとしており、自ら学ぶ場として役職員に浸透しています。
ⅲ.女性活躍推進に関する取り組み
当社およびグループ会社は、女性管理職の比率を、役職員の男女構成比率と同水準にすることを目標とし、専門性の向上とキャリアアップの促進、仕事と家庭の両立支援に取り組んでまいります。特に、女性活躍推進の基盤となる人事諸制度の充実化に注力しており、その成果として、当社の出産後の復職率は100%を維持しております。また、女性活躍及び役職員の働き方改革の一環として、男性の育児休業取得の推進にも取り組んでいます。
(2) 社内環境整備方針
ⅰ.健康経営への取り組み
当社では、「働きがい」向上を掲げ、健康経営の推進を明言しており、長時間労働の削減への取り組み、全役職員を対象とするメンタルヘルスケア研修とメンタルヘルスチェックの実施、定期健康診断項目の充実化や再検査費用の補助に取り組んでおります。また、ライフスタイルの変化に応じた勤務形態の選択ができるよう、フレックスタイム制やリモートワーク制度、性別や事由を問わない短時間勤務制度、70歳定年制などを導入しております。
当社は、地域の健康課題に即した取り組みや日本健康会議が進める健康増進の取り組みをもとに、特に優良な健康経営を実践している法人として、健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)に認定されました。
ⅱ.役職員エンゲージメント
当社では、上記人財ポリシーに基づき、多様な役職員一人ひとりが自立・自律し、やりがいと成長意欲を持って生き生きと働ける組織風土を目指し、「エンゲージメントサーベイ」を実施しています。2023年度実施のエンゲージメントサーベイは、回答率が100%となりました。今後も同サーベイを継続的に実施し、役職員のエンゲージメントと生産性の向上を図ってまいります。
(3) 指標及び目標
当社で定めている指標及び目標は以下の通りです。
(注)1.実績および目標は、当社グループ(当社および当社雇用による子会社への出向者)の集計値
2.法定の有給休暇に加えて、連続で5営業日付与される有給休暇の取得率
3.健康診断受診率の実績は、2023年2月期実績
以下において、当社の事業の展開上、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しております。なお、必ずしも事業上のリスクとは捉えていない事項についても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する情報開示の観点から積極的に開示しております。
ここに記載したリスク以外にも、当社を取り巻く環境には様々なリスクを伴っており、ここに記載したものが全てではありません。
また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであり、実際は見通しと乖離する可能性があります。
① 不動産市況の動向 |
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発生可能性:中 |
発生可能性のある時期:中期的 |
影響度:大 |
●リスク 経済環境が悪化した場合、賃貸需要の低下により不動産市場の流動性が低下する可能性があり、当社が保有する不動産を想定の時期および価格で売却できなくなる可能性があり、また、業績連動賃料を含む賃料の低下により、収益が低下する可能性があります。
○機会 資産価値の観点から潜在力のある不動産を、安価に取得することが可能な機会と捉え、株主価値向上の観点から効果のある資産取得を行っていく方針です。 |
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★対応策 不動産投資の際に、様々な想定のもと市場変動への耐性を検証し、長期的かつ安定的な運用が可能な物件を取得しております。また、市場環境の変化に応じて定期的に必要な再構成を行っており、不動産市場の動向が当社の財政状態および経営成績に及ぼす影響を少なくするよう細心の注意を払っております。 |
② 災害等の影響 |
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発生可能性:低 |
発生可能性のある時期:特定時期なし |
影響度:大 |
●リスク 当社が運用する不動産または発電設備が所在する地域において、地震、台風、豪雨、テロ、火災等の災害が発生した場合、当該資産の価値が毀損する可能性があり、その結果、賃料収入や手数料収入等が減少する可能性があります。 |
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★対応策 当社は、不動産の取得にPML値の基準を設け、取得時にハザードマップの確認と併せ、技術部門が防災設備の検証を行っており、自然災害の発生に一定の耐性を持つ資産の取得を行っております。 また、ITを用いた災害情報ネットワークを構築しており、災害発生時には速やかに被害状況の把握を行い、現地協力会社との提携による即時対応フローを運用しております。本社被災時には事業継続計画に基づき、段階的に事業復旧が可能となる体制および災害備蓄を整備しております。 |
③ 感染症拡大によるリスク |
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発生可能性:中 |
発生可能性のある時期:特定時期なし |
影響度:中 |
●リスク 感染症の拡大により、当社が属する不動産業界においても、ホテル宿泊需要の大幅な減少や各種テナントの業況悪化が予想されます。また、感染症拡大に伴う影響の想定以上の長期化により、賃料の未収や減免が多数発生した場合、当社の保有する不動産の収益性低下による評価損または減損損失の発生により、当社の財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
〇機会 業務のIT化の推進により、就業場所を選ばず、効率性が確保された業務推進体制を整備する機会と捉えております。 |
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★対応策 資金調達については、テナントの状況を注視し、金融機関との情報共有および連携を強化し、必要な場合には事前の対応を行ってまいります。 |
④ 有利子負債への依存および金利の動向 |
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発生可能性:低 |
発生可能性のある時期:長期的 |
影響度:中 |
●リスク 心築事業およびクリーンエネルギー事業においては、自己資金によるエクイティ投資のほか、個別案件毎に金融機関からの借入金により資金を調達しております。このため、金利水準が上昇した場合、資金調達コストの増加、不動産価格の下落等の事象が生じる可能性があり、当社の財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
●リスク アセットマネジメント事業において、顧客である投資家の期待利回りの上昇により、新規ファンドの組成が困難となる可能性があります。 |
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★対応策 金利の上昇リスクに対しては、借入のうち一定の割合について、金利スワップおよび金利キャップ取引を利用し、金利上昇リスクをヘッジしております。また、アセットマネジメント事業において、複数のJ-REITおよび私募不動産ファンドの組成、運用実績として、数多くのトラックレコードを有しており、心築事業と連動した事業運営を行うことにより、投資家の要求する期待利回りに合致した競争力のあるファンド組成、運用体制を構築しております。 |
⑤ 財務制限条項について |
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発生可能性:低 |
発生可能性のある時期:中期的 |
影響度:大 |
●リスク 借入の一部において、財務制限条項が付されており、これらの条項に抵触した場合、追加の担保設定または借入金の一部弁済を求められる可能性があります。また、期限の利益を喪失し、当該借入金を一括返済する必要が生じる等の可能性があり、当社の財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 |
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★対応策 当社は、借入時に財務制限条項の当社に与える影響について、細心の注意を払って貸付人と交渉を行い、リスクが抑制された水準での合意を行っております。また、投資不動産に変動が生じた場合、速やかに財務制限条項への抵触可能性についてシミュレーションを行い、適切な判断と対応を行うとともに、貸付人とは緊密に情報を共有し、良好な関係を継続し、協議可能な関係の維持に努めております。 |
⑥ その他新規事業について |
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発生可能性:中 |
発生可能性のある時期:中期的 |
影響度:中 |
●リスク ノンアセットの新たな事業の立ち上げに取り組んでおりますが、これら事業への参入には様々な不確実性を伴うため、既存事業と比較し損失の発生可能性は高く、損失発生時には、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
〇機会 新規事業の構築により、新たな安定的収益基盤の構築が達成されるとともに、新たな事業パートナーとの協働によるイノベーションが期待されます。 |
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★対応策 当社では、新規事業にかかる初期コストおよび人的リソースの上限を、当期の経営状況から許容できる範囲に限定しており、社内におけるモニタリング体制および内部管理体制の充実、人財の採用教育、必要に応じて保険の付保等を行うなど、リスク顕在時の影響を限定する施策を講じております。新しい事業分野においては、当該分野の専門家の雇用または提携を前提とし、既存の事業とのシナジーが見込まれる範囲に留めております。本社にはこれら新規事業の進捗状況を確認、監督する部門を設け、その情報分析のもと、撤退の判断を迅速に行える体制を整備しております。 |
⑦ 競合について |
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発生可能性:中 |
発生可能性のある時期:中期的 |
影響度:中 |
●リスク 当社の営む事業は、不動産投資に関する高い専門能力と知識、経験が不可欠であります。しかしながら、競合他社との間で投資対象となる収益不動産案件の獲得競争が厳しくなっていることから、当該収益不動産案件の確保が出来なかった場合には、当社の財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 |
||
★対応策 当社は、不動産技術とノウハウを活用し、一つ一つの不動産に心をこめた丁寧な価値向上を図り、現存不動産に新しい価値を創造し、日本における100年不動産を目指す「心築」を行っております。当社は保有する心築の総合力を最大限発揮させ、独自の顧客の広範囲なネットワークを構築しており、潜在的な案件の確保に取り組んでおります。 |
⑧ 人材の確保について |
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発生可能性:中 |
発生可能性のある時期:中期的 |
影響度:中 |
●リスク 当社の事業は、高度な知識と経験に基づく人的資本により成り立っております。しかしながら、役員もしくは重要な使用人が退職した場合、疾病等により業務遂行の支障が生じた場合、または、必要な能力を有する人材が確保できなかった場合、収益の低下および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 |
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★対応策 当社は、健康経営をスローガンに、役職員の健康管理を重視し、法定以上の健康診断、予防接種、社内の衛生管理を徹底しております。また、内部通報制度の構築やコミュニケーションの重視、適正な人事評価制度の運用を重視しており、働きやすい環境の整備に努めております。 |
⑨ 特有の法的規制について |
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発生可能性:低 |
発生可能性のある時期:特定時期なし |
影響度:小 |
●リスク 当社は、現時点の各種規制に従って、業務を遂行しておりますが、将来において各種規制が変更された場合や、何らかの理由により、当社が業務を遂行するために必要な許認可および登録(以下、「許認可等」という。)の取消などの行政処分を受けた場合には、当社の事業活動に支障をきたし、財政状態および経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社が規制を受ける主なものは、金融商品取引法、宅地建物取引業法、各税法、資産の流動化に関する法律、投資事業有限責任組合契約に関する法律、貸金業法、建築士法等があります。 |
||
★対応策 当社では、各種規制変更の決定前からその動向を注視し、状況に応じた対応を取り、影響を最小限とするよう対策を行うとともに、許認可等を受けるための諸条件および関係法令の遵守に努めております。なお、現時点において当該許認可等が取消となる事由は発生しておりません。 |
当社および当社子会社では、上記の法令等に基づき、主たる事業において以下の許認可等を受けております。
(いちご株式会社)
許認可等の名称 |
所管官庁等 |
登録番号 |
有効期間 |
取消、解約その他の事由 |
宅地建物取引業免許 |
東京都 |
東京都知事(4) 第90527号 |
2029年5月22日まで |
不正な手段による免許の取得や役員等の欠格条項に該当する場合は免許の取消 (宅地建物取引業法第66条) |
(いちご投資顧問株式会社)
許認可等の名称 |
所管官庁等 |
登録番号 |
有効期間 |
取消、解約その他の事由 |
宅地建物取引業免許 |
東京都 |
東京都知事(2) 第99098号 |
2026年4月28日まで |
不正な手段による免許の取得や役員等の欠格条項に該当する場合は免許の取消 (宅地建物取引業法第66条) |
取引一任代理等認可 |
国土交通省 |
国土交通大臣認可第42号 |
有効期間の定めはありません。 |
不正な手段による認可の取得や業務に関し取引の相手に損害を与えた場合は認可の取消 (宅地建物取引業法第67条の2) |
金融商品取引業登録 (投資運用業、投資助言・代理業、第二種金融商品取引業) |
金融庁 |
関東財務局長 (金商)第318号 |
有効期間の定めはありません。 |
不正な手段による登録や資本金不足、業務または財産の状況に照らし支払不能に陥る恐れがある場合は登録の取消 (金融商品取引法第52条) |
不動産特定 共同事業者許可 |
金融庁、 国土交通省 |
金融庁長官・ 国土交通大臣 第69号 |
有効期間の定めはあり |
役員や法人としての欠格条項に該当する場合や不正な手段による登録がある場合は登録の取消 (不動産特定共同事業法第36 |
(いちご地所株式会社)
許認可等の名称 |
所管官庁等 |
登録番号 |
有効期間 |
取消、解約その他の事由 |
宅地建物取引業免許 |
東京都 |
東京都知事(3) 第93181号 |
2026年7月15日まで |
不正な手段による免許の取得や役員等の欠格条項に該当する場合は免許の取消 (宅地建物取引業法第66条) |
金融商品取引業登録 (投資助言・代理業、第二種金融商品取引業) |
金融庁 |
関東財務局長 (金商)第18号 |
有効期間の定めはありません。 |
不正な手段による登録や資本金不足、業務または財産の状況に照らし支払不能に陥る恐れがある場合は登録の取消 (金融商品取引法第52条) |
(いちごオーナーズ株式会社)
許認可等の名称 |
所管官庁等 |
登録番号 |
有効期間 |
取消、解約その他の事由 |
宅地建物取引業免許 |
東京都 |
東京都知事(2) 第100428号 |
2027年4月7日まで |
不正な手段による免許の取得や役員等の欠格条項に該当する場合は免許の取消 (宅地建物取引業法第66条) |
不動産特定 共同事業者許可 |
東京都 |
東京都知事 第153号 |
有効期間の定めはあり |
役員や法人としての欠格条項に該当する場合や不正な手段による登録がある場合は登録の取消 (不動産特定共同事業法第36 |
⑩ 連結の範囲決定に関する事項 |
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発生可能性:低 |
発生可能性のある時期:長期的 |
影響度:中 |
●リスク 当社は、「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」(企業会計基準委員会 実務対応報告第20号 2011年3月25日改正)に基づき、各投資事業組合等毎に個別に支配力および影響力の有無を判定した上で連結子会社および関連会社を判定し、連結の範囲を決定しております。 |
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★対応策 当社は、新たな会計基準の設定や実務指針等の決定前からその動向を注視し、状況に応じた対応を取り、影響を最小限とするよう対策を行っております。 |
⑪ 大株主について |
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発生可能性:低 |
発生可能性のある時期:長期的 |
影響度:小 |
いちごトラスト・ピーティーイー・リミテッド(以下、「いちごトラストPTE」という。)は、当社株式を長期安定株主として保有する方針のもと、2024年2月29日現在、当社の総議決権の51.11%を保有する当社の筆頭株主であります。 いちごトラストPTEは、投資を事業目的とする、法人格を有さない外国籍のユニット・トラストである、いちごトラストから100%の出資を受けております。 いちごトラストおよびいちごトラストPTEはIchigo Asset Management International, Pte. Ltd.(以下、「Ichigo Asset International」という。)に投資を一任しており、Ichigo Asset Internationalに対しては、いちごアセットマネジメント株式会社が投資助言を行っております。Ichigo Asset Internationalおよびいちごアセットマネジメント株式会社は当社との間に資本関係はございませんが、当社の取締役および代表執行役会長であるスコット キャロンはいちごアセットマネジメント株式会社の代表者を兼任しており、Ichigo Asset Internationalの大株主であります。 なお、スコット キャロンは、Ichigo Asset Internationalの業務執行を行っておらず、Ichigo Asset Internationalの当社株式の売買に関する投資判断には関与しておりません。 さらに、Ichigo Asset Internationalは、日本国の法令規則等を遵守するとともに、コンプライアンス等に係る社内規則を定め、未公表の重要事実の入手時における売買停止を実施する等、必要とする情報統制の体制を整備し運用しております。
●リスク 現時点で、いちごトラストPTEは当社の長期安定株主として一定数を保有する方針でありますが、今後の経済情勢および国際情勢が著しく変動した場合、保有方針が変更される可能性があり、当社の経営体制に影響を及ぼす可能性があります。また、当社の商号に含まれる「いちご」の商標権は、Ichigo Asset International が保有し、当社はその使用許諾を受けていることから、継続的な使用許諾または商号変更等の対応が必要となる可能性があります。 |
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★対応策 当社は、事業の意思決定に際し、いちごトラストおよびいちごトラストPTEから制約を受けることはなく、当社の意思決定は当社の責任のもとで行われ、独立性を確保しているものと考えております。また、事業においても、いちごトラスト、いちごトラストPTE、Ichigo Asset Internationalおよびいちごアセットマネジメント株式会社に依存しておらず、独立した事業を行っており、仮に大株主の保有方針が変更となった場合においても、事業に影響はありません。また、商標権の使用許諾が停止された場合でも、影響は軽微であります。 |
⑫ クリーンエネルギー特有のリスク |
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発生可能性:低 |
発生可能性のある時期:長期的 |
影響度:中 |
当社は、環境と地域社会に配慮した発電事業の社会的意義のもと、クリーンエネルギー(太陽光発電等)事業を展開しております。 当社のクリーンエネルギー事業は、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法により定められた全量固定価格買取制度に基づき、電力会社との契約により売電価格が20年間保証されております。 当該事業における発電量は気象条件に大きく左右されるほか、天災・火災等の災害に見舞われた場合には、設備の損傷等により発電量が大幅に低下する可能性があり、当社の財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 |
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★対応策 当社は、固定価格買取制度の制度変更にかかる行政、電力会社の動向を常に把握し、採算ラインを意識して事業の検証を行っております。また、電力会社以外の電力卸先、小売事業の検討も行っており、販売先の多様化にも取り組むほか、風力やバイオマスなど、太陽光発電以外の再生可能エネルギーの多様化を進め、事業の安定化を図っております。 |
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、「コロナ」という。)による制限が解除され、社会的活動の正常化により緩やかな回復が継続しました。物価上昇により個人の節約志向が高まる反面、宿泊・飲食などのサービス需要は旺盛であり、訪日外国人数もコロナ前を上回る水準まで回復しております。また、堅調な企業業績を背景に投資意欲が高まり、設備投資も増加しました。一方、地政学リスクや海外主要各国の景気減速、欧米の金融政策に伴う長期金利上昇の影響等については、引き続き注視が必要な状況です。
当社が属する不動産業界においては、海外との金利差や不動産運用利回りが主要各国より高い水準にある点等を踏まえ、わが国の不動産投資への意欲は旺盛な状況です。また、宿泊需要の継続的な力強い回復により、ホテル売上が好調に推移しました。当期における当社保有ホテルのRevPAR(販売可能な客室1室あたりの売上)は、当社の事業活動においてコロナの影響をほぼ受けていない2020年2月期比で+37%と大幅に増加し、ストック収益の拡大をけん引しました。ストック収益全体では過去最高益となり、より安定性の高い収益構造となっております。今後もホテル業界は、国内およびインバウンドともに力強い需要が見込まれ、一層の収益向上が期待されます。オフィスビルにおいては、緩やかながら空室率が低下しており、当社が保有する中規模オフィスにおいても、底堅い需要が継続しております。コロナで加速した働き方の変化に合わせ、選ばれるオフィスビルの提供に向けて、引き続き、テナント様のニーズを捉えてまいります。なお、安定性が高い賃貸住宅の需要は堅調さを維持しており、投資需要も底堅い状況が続いております。物流施設においても、コロナ拡大により需要が一層高まり、経済活動の再開後も安定性の高いアセットとして、引き続き底堅い投資ニーズが見込まれます。
また、世界的に環境課題への取り組みが急務であるなか、わが国でもカーボンニュートラルに向けたエネルギー政策の整備が進んでおり、さらなる政策の強化が期待されます。こうした環境下、クリーンエネルギー事業の重要性は増しており、当社では、地域および地球に優しい再生可能エネルギーのさらなる創出と、太陽光や風力に加えて、計画中の国内間伐材を活用した地域一体型バイオマス発電など、電源の多様化に注力しております。
主な取り組み
当社では急激な環境の変化に対応し、より信頼性の高い財務基盤の確保と徹底的なキャッシュ・フロー経営を実行しております。創出した資金は、将来の成長投資として、不動産の取得、新規事業への投資に加え、当期は、総額60億円の自社株買いを決定いたしました。これに加え、当社が運用するいちごオフィスリート投資法人(証券コード8975、以下、「いちごオフィス」という。)およびいちごホテルリート投資法人(証券コード3463、以下、「いちごホテル」という。)の成長支援へのコミットメント強化として両投資法人の投資口取得を実施いたしました。いちごホテルに対しては、これに併せて、投資主価値の最大化に資する優良ホテルの提供を行っております。
また、当社は、長期VISION「いちご2030」に沿い、サステナブル(持続可能)な社会を実現するための「サステナブルインフラ企業」として、将来を見据えた戦略的な事業展開を通じて、事業優位性のさらなる強化を図っております。具体的には、不動産の保有・運営や心築(しんちく)(注)ノウハウといった強みを軸とし、ノンアセット事業によるストック収益の獲得機会を拡大しております。既存事業の深化とともに、新規事業の創出と成長により、今後とも、株主価値の最大化に向け、株主重視経営をさらに向上し具現化すべく、全力を尽くしてまいります。
(注)心築(しんちく)について
心築とは、いちごの不動産技術とノウハウを活用し、一つ一つの不動産に心を込めた丁寧な価値向上を図り、現存不動産に新しい価値を創造することをいい、日本における「100年不動産」の実現を目指しており
ます。
「既存事業の成長と深化」
・ 「心築(しんちく)事業」
大きく落ち込んでいた宿泊需要は、すでにコロナ前の水準を上回っており、引き続き力強く伸長しております。当社で保有するホテルのRevPARが、当社の事業活動においてコロナの影響をほぼ受けていない2020年2月期比で+37%となったことや、2020年2月期設立の100%子会社であるホテルオペレーター「ワンファイブホテルズ株式会社」のオペレーション収益が寄与し、ストック収益の拡大をけん引しました。特に、当社ブランドホテルである福岡市所在の「HOTEL IL PALAZZO(2023年10月リニューアルオープン)」、「The OneFive Villa Fukuoka」および「The OneFive Terrace Fukuoka」がRevPARの向上をけん引しました。宿泊業界では、この需要の取り込みに際して人手不足が深刻化するなか、当社では、当社開発のAIレベニューマネジメント(売上管理)システム「PROPERA」の導入により、コロナの影響を受けた期間中においても高稼働を維持し、従業員の確保とスキルアップを実施してまいりました。また、「PROPERA」の導入により、最適な室料の自動設定による収益最大化および運営の高効率化を進めており、今後の需要増に十分に対応が可能な態勢を備えております。
新規事業である「いちご・レジデンス・トークン」においては、当期2案件に取り組み、売上総額158.4億円のレジデンスを販売しております。セキュリティ・トークン市場では、大阪デジタルエクスチェンジにおいてセキュリティ・トークンの流通を企図した新取引システム「START」が開設され、当社案件が取り扱い第1号銘柄となりました。セカンダリー市場の開設により、不動産セキュリティ・トークン市場は透明性や流動性が向上し、J-REITや私募リートに次ぐ成長が期待されております。当社では本分野でのプレゼンスを発揮すべく、今後も事業の推進と市場拡大を目指してまいります。また、「いちご オーナーズ ビルシェア」を含めた個人および事業主の方でもプロの目利きと簡素な手続きで優良なレジデンス(住宅)へ投資いただける新たな商品の展開は、顧客層の拡大と運用受託によるストック収益の拡大に寄与するほか、不動産の販売チャネルが拡充したことで積極的な取得に繋がっております。当期は、マルチアセットの売買市場もコロナによる停滞から回復し、当社の当期における不動産取得額は695億円、売却額は696億円となりました。
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The OneFive Terrace Fukuoka |
The OneFive Villa Fukuoka |
・ 「アセットマネジメント事業」
いちごオフィス、いちごホテル、いちごグリーンインフラ投資法人(証券コード9282、以下、「いちごグリーン」という。)および私募ファンド事業への業務支援に注力いたしました。
宿泊需要の高まりは、いちごホテルにおいても保有するホテルの売上向上に繋がり、投資主様と資産運用会社の利益が一致する完全成果報酬制度を採用している当社の運用報酬も、これに伴い増加しました。このホテル需要の拡大を成長機会と捉えたいちごホテルに対し、当社は第2四半期にいちごブランドのライフスタイルホテルを含む5ホテルの提供を行い、これに併せて約15億円の新投資口の第三者割当を引き受けました。
また、当社では、運用する投資法人のさらなる成長および投資主価値の向上に対するスポンサーのコミットメント強化の一環として、いちごオフィスおよびいちごホテルの投資口を取得いたしました。前期より継続しておりました約30億円を含め、いちごオフィスについては、総額約130億円の投資口取得を完了し、いちごホテルについても約10億円の投資口取得を行いました。
当社は今後もスポンサーとして、優良物件の提供やブリッジファンドの活用、心築による投資法人の保有資産の価値向上といった施策により積極的に運用投資法人をサポートし、投資主目線の運用を行うことで、投資主価値のさらなる向上を図ってまいります。
・ 「クリーンエネルギー事業」
当期は、当社として2番目に大きな太陽光発電所(13.99MW)である「いちごえびの末永ECO発電所(FIT価格40円)」が2024年1月2日付で発電を開始いたしました。当期は、期末からの稼働となりましたが、来期以降は、「いちごえびの末永ECO発電所」の収益が通期で貢献し、市況の変化に左右されない、より安定性の高い事業として成長が見込まれます。なお、当期末において、当社が開発・運営する発電開始済み発電所の合計は、64発電所(発電出力188.2MW)まで成長しております。今後さらなる太陽光発電所への投資を行うとともに、電力供給の安定性向上に寄与する第3のエネルギーとして、森林の高齢化等の課題に対応し、治山対策、地域経済の活性化に貢献する地方自治体や地域と一体となった「地域一体型バイオマス発電」を計画しております。世界的な環境課題の解決に対応する本事業は、今後も社会的意義が一層高まっていくものと考えております。
いちごえびの末永ECO発電所
「急激な環境変化に対応した成長戦略」
・ 信頼性の高い財務基盤の確保
当社は、リーマンショック以降、借入期間の長期化と借入コスト削減、包括的な金利ヘッジによる金利上昇リスクの低減、無担保資金の調達等の幅広い財務施策の推進により、収益基盤と財務基盤を強化してまいりました。また、当社のESGへの取り組みや貢献等に対する評価を受け、その活動を支援するESGローンを拡充させており、当期においては累計で約277億円をESGローンにより調達しております。今後もこの方針を継続し、当社の事業をよりサステナブルな事業へ進展させてまいります。
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・ 徹底的なキャッシュ・フロー経営
当社は、これまでも高いキャッシュの創出力を維持してまいりましたが、この急激な環境の変化に対応し、さらなるキャッシュの創出を図っております。具体的には、当社の心築事業に属する不動産を固定資産化することで、減価償却の税効果によりキャッシュを創出し、将来の成長投資に備えております。なお、当期末における固定資産比率は72.4%(注)です。
(注)当社の心築事業に属する不動産のうち、子会社であるいちごオーナーズ株式会社、株式会社セントロの資産を除く不動産を対象としております。
「株主還元」
・ 機動的な自社株買い(7期連続)
当社は、長期VISION「いちご2030」で掲げた「機動的な自社株買い」のとおり、当社株式の市場価格および財務状況等を総合的に勘案のうえ、株主価値の向上を図るため7期連続で自社株買いを実施しております。当期は総額60億円の自社株買いを決定いたしました。
当社は、株主価値の根幹である1株利益(EPS)の向上を通じた株主価値の最大化を目指しており、今後も大幅な利益成長の実現に向けた事業の推進に併せ、機動的な自社株買いを実施してまいります。
・ 配当政策(当期増配)
当社は、徹底的なキャッシュ・フロー経営のもと、キャッシュの創出に注力しております。創出したキャッシュは、将来の利益に繋がる成長投資と株主の皆さまへの還元の原資であり、2024年2月期においては配当予想から増配とし、1株当たり9円とする方針を取締役会にて決議し、定時株主総会にて原案どおり承認可決されました。
なお、当社は、2017年2月期より株主還元の基本方針として「累進的配当政策」を導入しております。各年度の1株当たり配当金の下限を前年度1株当たり配当金とし、原則として「減配しない」ことにより、配当の成長を図るとともに、配当の安定性と透明性を高めております。
また、当社は「長期VISION いちご2030」の経営目標(KPI)を刷新しており、「株主資本配当率(DOE)」を3%から4%に引き上げることといたしました。この株主還元策に基づき、2025年2月期の配当予想を10円とし、引き続き増配といたします。今後もこの強化した株主還元策のもと、株主価値の最大化を目指してまいります。
・ 株主優待制度
当社は、2019シーズンよりJリーグの「トップパートナー」に就任し、Jリーグとともに豊かさ溢れる地域社会に取り組むとともに、当社およびいちごオフィス、いちごホテル、いちごグリーンの株主・投資主様を対象とした「いちごJリーグ株主・投資主優待」制度を導入しております。
2023シーズンもトップパートナーとしてJリーグから提供いただく試合チケットを株主・投資主様にお届けすることで、地域創生への貢献を目指すとともに、日頃よりご支援いただいている株主・投資主様への感謝をお伝えしております。
また、いちごJリーグ株主・投資主優待の拡充として、Jリーグ30周年記念イベントに株主・投資主様をご招待させていただきました。
「サステナブルインフラ企業としての取り組み」
当社は、企業の存在意義は社会貢献であると考えており、サステナブルな社会を実現するための「サステナブルインフラ企業」として大きな成長を図るとともに、事業活動を通じて社会的責任を果たすことを最大の目標としております。
当社は、現存不動産に新たな価値を創造する「心築(しんちく)」を軸とした事業モデルをさらに進化させ「100年不動産」にチャレンジしております。
当社は、保有・運営する発電所により、クリーンエネルギーの創出を通じてCO2を削減し、サステナブルな社会の形成に向けた貢献に努めております。また、当社では、クリーンエネルギー事業で削減するCO2が、当社および当社が運用する投資法人(いちごオフィス、いちごホテルおよびいちごグリーン)が消費するCO2量(Scope1・Scope2)を上回る「クライメート・ポジティブ」を実現しており、これを継続することを目指しております。同時に、事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーとすることを目指す国際的なイニシアティブである「RE100」の目標達成年限を2025年とし、当社に加え、当社グループが運用するいちごオフィス、いちごホテルが保有する不動産も対象とし、環境循環型社会を目指す取り組みを加速しております。当期末時点において、90%まで再生可能エネルギーへの切り替えが進んでおります。
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言にも賛同し、気候変動におけるリスクの認識とそのリスクの適切な管理を行うとともに、環境課題への取り組みを事業機会と捉え、豊かさと環境が共存する未来のために取り組んでおります。
さらに、当社は、社会の良き一員として行動し、持続可能な成長を実現するための世界的な枠組みである「国連グローバル・コンパクト」に署名しております。署名する企業および団体は、10の原則に賛同し、企業トップ自らのコミットメントのもと、その実現に向けて努力を継続することが求められます。
当社は、社会をより良い状態で次世代へ継承するための一員として、独自の心築技術を軸とした新しい価値創造・社会課題の解決と環境保全活動によって、社会に貢献してまいります。
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業績の詳細
当連結会計年度の業績は、売上高82,747百万円(前期比21.5%増)、営業利益12,960百万円(同3.7%増)、ALL-IN営業利益(注)21,194百万円(同25.4%増)、経常利益10,391百万円(同4.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益12,108百万円(同28.7%増)、キャッシュ純利益(注)17,878百万円(同16.6%増)となりました。
(注)ALL-IN営業利益=営業利益+特別損益に計上される心築資産(*)の売却損益
(*) 心築資産:心築事業に属する不動産及びそれらを裏付資産とする投資持分等
キャッシュ純利益
=親会社株主に帰属する当期純利益+減価償却費+のれん償却費±評価損益等
セグメントごとの業績は次のとおりであります。
・アセットマネジメント
当該セグメントの業績につきましては、スポンサーサポートによるいちごホテルでの5ホテルの取得や堅調なホテル売上による収益増加に連動して運用報酬が増加した一方、前期はいちごオフィスにおいて、価値向上を図った物件の売却により大幅な売却益を実現し、当期は物件の売却による利益の実現に連動した成果報酬が減少したことから、セグメント売上高2,907百万円(前期比31.4%減)、セグメント利益1,496百万円(同50.5%減)となりました。
・心築(しんちく)
当期においては、当社ブランドホテルを主とした好調なホテルの稼働やいちごオーナーズにおいてレジデンスの売却が堅調に推移したことにより、当該セグメントの売上高は74,389百万円(前期比26.9%増)となりました。また、会計上は特別利益に計上される心築事業に属する固定資産および投資持分等の売却益が大きく寄与し、セグメント利益は17,742百万円(同49.2%増)となりました。
・クリーンエネルギー
当該セグメントの業績につきましては、前期に竣工した発電所の売電収入が通期で寄与したことに加え、当期において新たな発電所が売電を開始し約1か月稼働した一方、設備のメンテナンスによる一時的な稼働停止があったこと等から、セグメント売上高は5,935百万円(前期比4.1%増)、セグメント利益は1,946百万円(同3.5%減)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、46,101百万円となり、前連結会計年度末の40,313百万円と比較して5,787百万円の増加となりました。各キャッシュ・フローとそれらの要因は以下のとおりであります。
・営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度において、税金等調整前当期純利益17,962百万円、減価償却費4,859百万円等を主として22,580百万円の資金が増加しました。将来収益となる先行投資を進め、物件の仕入れに伴う販売用不動産等の増加額25,660百万円によって資金が減少しました。これに加え、利息の支払額2,161百万円、法人税等の支払額3,335百万円の減少要因があった結果、営業活動によるキャッシュ・フローは△8,577百万円(前年同期は254百万円)となりました。
・投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度において、投資活動によるキャッシュ・フローは△2,524百万円(前年同期は2,635百万円)となりました。これは主に、有形固定資産の売却による収入18,384百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式等の売却による収入3,356百万円があった一方、有形固定資産の取得による支出8,203百万円、投資有価証券の取得による支出16,567百万円があったことによるものです。
・財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度において、財務活動によるキャッシュ・フローは17,791百万円(前年同期は△6,582百万円)となりました。これは主に、短期借入金の純増減額15,764百万円、長期借入れによる収入64,043百万円があった一方、長期借入金の返済による支出54,996百万円、配当金の支払額3,553百万円があったことによるものです。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社で行う事業につきましては、生産実績を定義することが困難であるため、記載を省略しております。
b.受注実績
当社は、受注生産を行っていないため、受注実績の記載はしておりません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年3月1日 至 2024年2月29日) |
前年同期比(%) |
アセットマネジメント(百万円) |
2,484 |
△33.8 |
心築(百万円) |
74,327 |
26.8 |
クリーンエネルギー(百万円) |
5,935 |
4.1 |
合計(百万円) |
82,747 |
21.5 |
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年3月1日 至 2023年2月28日) |
当連結会計年度 (自 2023年3月1日 至 2024年2月29日) |
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金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
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株式会社青山財産ネットワークス |
9,132 |
13.4 |
- |
- |
アルネア1合同会社 |
20,911 |
30.7 |
- |
- |
アルネア2合同会社 |
||||
アルネア3合同会社 |
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合同会社ISTレジデンス3 |
- |
- |
9,054 |
10.9 |
JMインダス5合同会社 |
- |
- |
23,917 |
28.9 |
JMインダス6合同会社 |
||||
JMインダス7合同会社 |
3.販売実績が総販売実績の100分の10未満の相手先については記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、当社の連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項」に記載の通りであります。この連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき見積り及び判断をおこなっておりますが、不確実性が内在しているため、将来生じる実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載の通りであります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(財政状態の分析)
(資産)
資産合計は367,015百万円となり、前連結会計年度末と比較して28,395百万円増加(前期比8.4%増加)いたしました。
ホテルやオフィスの物件取得を進めたことにより販売用不動産が24,569百万円増加したことが主な要因であります。
(負債)
負債合計は250,734百万円となり、前連結会計年度末と比較して26,507百万円増加(前期比11.8%増加)いたしました。
これは主に、不動産の取得等に伴う借入金の増加20,967百万円および社債の増加1,865百万円があったことによるものであります。
(純資産)
純資産合計は116,281百万円となり、前連結会計年度末と比較して1,887百万円増加(前期比1.7%増加)いたしました。
これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益12,108百万円の計上に対し、剰余金の配当3,627百万円、自己株式の取得等4,531百万円があったことによるものであります。なお、自己資本比率は28.5%(前期比1.9ポイント減少)となりました。
(経営成績の分析)
(売上高)
連結売上高は、レジデンスを主とした販売用不動産の順調な売却に加え、ホテルをはじめ全アセットタイプで不動産賃貸収入が大きく伸長したことから、82,747百万円(前期比21.5%増)となりました。
売上高の主な内訳は、不動産販売収入51,308百万円、不動産賃貸収入22,482百万円、不動産フィー収入2,411百万円、売電収入5,789百万円であります。
(営業利益)
前述した不動産販売収入、不動産賃貸収入、売電収入が増加した一方、インフレ対策を目的とした役職員のベースアップや採用強化に伴う人件費の増加等により販売費及び一般管理費が985百万円増加したため、営業利益は12,960百万円(前期比3.7%増)となりました。
なお、当期において、特別利益に計上した心築事業に属する不動産の固定資産売却益および投資持分等の売却益が大きく貢献し、心築事業の実態を表す「ALL-IN営業利益」は21,194百万円(前期比25.4%増)となりました。
(営業外損益)
営業外収益は、前期と比較してデリバティブ評価益が減少したことから、725百万円(前期比25.9%減)となりました。
主な内訳は、受取配当金361百万円、デリバティブ評価益109百万円であります。
なお、当社では将来の金利上昇リスクに備え、金利スワップ取引および金利キャップ取引(デリバティブ取引)を行っております。
営業外費用は、デリバティブ評価損が増加したため、3,294百万円(前期比25.6%増)となりました。
主な内訳は、支払利息2,349百万円、デリバティブ評価損330百万円であります。
(特別損益)
特別利益は、8,978百万円(前期比94.3%増)となりました。
主な内訳は、心築事業に属する不動産の固定資産売却益4,376百万円、セルフストレージ事業を営む連結子会社の全株式を売却したことによる関係会社株式売却益3,960百万円であります。
特別損失は、1,406百万円(前期比13.9%増)となりました。
主な内訳は、投資案件について計上した貸倒引当金繰入額1,087百万円であります。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
法人税等は5,626百万円、非支配株主に帰属する当期純利益は227百万円となりました。
これらの結果、親会社株主に帰属する当期純利益は12,108百万円(前期比28.7%増)となりました。キャッシュ純利益は17,878百万円(前期比16.6%増)となりました。
(3)資金の源泉および流動性についての分析
「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(4)資金需要及び財務政策
当社の事業活動における資金需要の主なものは、不動産の取得およびクリーンエネルギー発電設備の建設に係る資金であります。
財務政策の状況につきましては、安定した財務体制を構築すべく、調達金利の低減、返済期日分散、借入期間の長期化、無担保借入の推進および資金調達手法の多様化に努めてまいりました。また、資金調達手法の多様化を図るため、株式会社格付投資情報センターより、発行体格付を取得いたしました。
当期においては、サステナブルな社会を実現するための「サステナブルインフラ企業」としての取り組みをご評価いただき、2023年8月2日に株式会社あおぞら銀行より「あおぞらESG フレームワークローンシンジケート方式ポジティブ・インパクト・ファイナンス」として限度額57.6億円の借入枠を設定いたしました。
ポジティブ・インパクト・ファイナンスは、グローバルな指標である「ポジティブ・インパクト金融原則」(※)に基づき、借入先企業の事業活動が与える社会的インパクトを包括的・定量的に評価し、ポジティブなインパクトを生み出す意図を持つことが確認された取り組みへ継続的な支援を行うことを目的とした融資です。
当社の取り組みは、サステナブルな社会形成の促進に資するものと考えており、こうした取り組みを通じた資金調達は、当社の財務基盤のさらなる強化につながります。
(※)ポジティブ・インパクト金融原則
SDGsの達成に向け、金融機関が積極的な投融資を行うための原則として国連環境計画・金融イニシアティブにより策定された原則で、資金提供先企業のネガティブな影響を軽減し、現実的かつ信頼性のある方法でポジティブな影響を高めるための資金提供のあり方を定めています。
その結果、当連結会計年度末において、コーポレート有利子負債の残高は191,116百万円(前期比13.9%増)、ノンリコースローンの残高は41,678百万円(前期比1.3%減)となり、当該残高に係る平均期中調達金利は、それぞれ0.89%(前期0.00ポイント増)、0.99%(前期比0.06ポイント減)となりました。当連結会計年度末のコーポレート有利子負債残高における長期借入比率は78.7%(前期比15.4ポイント減)、そのうち残存期間5年超の残高は87,391百万円、コーポレート有利子負債全体の平均借入期間は8.9年、平均借入残存期間は5.2年となりました。
また、コーポレート有利子負債残高における無担保借入の割合は30.1%(前期比4.6ポイント増)となりました。
(5)経営上の目標の達成状況について
■ 取組み期間
2030年2月期まで
■ 資本生産性およびキャッシュ創出力
① 自己資本利益率(ROE)
・キャッシュROE : 18%以上(新設)
・ROE : 15%以上
※ キャッシュROE = キャッシュ純利益(*) / 期中平均自己資本
(*) キャッシュ純利益 = 親会社株主に帰属する当期純利益 + 減価償却費 + のれん償却費 ± 評価損益等
2024年2月期におけるROEは11.7%、キャッシュROEは17.2%になりました。資本生産性の向上により当社の将来ROEを向上させ、長期にわたる資本生産性の高い収益構造の確立を図るとともに、株主価値の根幹である1株当たり当期純利益(EPS)の成長を図ってまいります。
② エコノミック営業キャッシュフロー
・当期純利益超過の維持
※ エコノミック営業キャッシュフロー
営業活動によるキャッシュ・フローから販売用不動産および販売用発電設備の増減額(仕入・売却)の影響を控除し、かつ、特別損益に計上される心築資産の売却損益を加味したキャッシュ・フロー(税引後)
当社は、エコノミック営業キャッシュフローが当期純利益を大幅に超過する状態を維持しております。2024年2月期は、エコノミック営業キャッシュフローが当期純利益の2.1倍になっております。
■ 安定収益
① ストック収益比率
・60%以上(2030年2月期)
② ストック収益固定費カバー率(新設)
・200%以上
※ ストック収益:賃貸収益、売電収益、AMのベース運用フィー等
※ 固定費:固定販売費及び一般管理費、支払利息
当社は、ストック収益比率の向上と同時に、フロー収益に関しても心築資産の売却損益中心の収益構造を分散化します。それにより不動産市況の景気循環に左右されにくく、安定性の高い収益構造の構築を実現してまいります。
2024年2月期は、ストック収益の過去最高益を更新し、ストック収益比率は57.6%、ストック収益固定費カバー率は214%となりました。
■ 株主還元策
① 「安心安定配当」の累進的配当政策(Progressive Dividend Policy)
・2017年2月期より導入した「累進的配当政策」の維持
② DOE(株主資本配当率)
・4%以上(強化)(強化前 3%)
③ 機動的な自社株買い
・株主価値向上に資する最適資本構成を目指し、機動的な自社株買いを実施
当社の株主還元策に基づき、2024年2月期の配当を前期から増配の1株当たり9円で当社取締役会にて方針を決議し、2024年5月26日開催の当社定時株主総会にて承認可決されました。なお、2024年2月期におけるDOEは、3.8%となりました。
また、2024年2月期の自社株買いにおいては、総額60億円の自社株買いを決定し、期末までに47億円の取得を完了しております。当社は、継続的に実施している自社株買いは2018年2月より7期連続で継続的に自社株買いを実施しております。
当社は、今後もこの強化した株主還元策のもと、株主価値の最大化を目指してまいります。
■ サステナブルな社会に向けた環境課題解決(新設)
① いちごのクライメート・ポジティブ
当社および当社が運用するインフラ投資法人であるいちごグリーン(9282)がクリーンエネルギー創出により削減するCO2量が、当社および当社が運用する投資法人(いちごオフィス(8975)、いちごホテル(3463)およびいちごグリーン)が消費するCO2量(Scope1・Scope2)を上回る、クライメート・ポジティブの維持
② RE100
2025年までに事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーに
③ CDP リーダーシップレベル
気候変動プログラム「Aリスト」企業の維持
水セキュリティプログラム「Aリスト」企業の達成(現在はリーダーシップレベルA-)
該当事項はありません。
当社グループは、新規事業の創出として、次世代に向けたグリーンビジネス、持続可能な環境ソリューションの提供として、事業活動を通じた社会貢献という目標の実現のため、様々な分野にて活用が期待されている植物性シリカSiO2(二酸化ケイ素)の生成、応用、提供による収益化を目指した研究開発を進めております。
なお、研究開発費については、全て心築セグメントに係る費用であり、当連結会計年度の研究開発費の総額は