第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものになります。

(1)経営の基本方針

当社は、2005年9月1日に設立された純粋持株会社です。流通業を中心として傘下に160の連結子会社を擁する当社は、創業時より重んじる「信頼と誠実」の社是を不変の礎として、「変化への対応と基本の徹底」を基本方針に掲げ、お客様ニーズ、マーケット、そして急速な社会の変化に迅速に対応し、業務改革、事業構造の改革を不断に進め、流通サービスにおけるイノベーションの推進と新たな体験価値の提供に努めてまいります。また、グローバルに展開するグループのネットワーク、情報力とともに、「食」の強みを軸としコンビニエンスストア事業を中心に、スーパーストア事業、金融関連事業などお客様の様々な生活シーンのニーズに応える世界に類を見ないグローバルリテールグループとして、総合的にシナジーを追求してまいります。加えて、当社は、ガバナンスの強化とグループシナジーの追求によりグループ企業価値の最大化に努めるとともに、グループを代表する上場会社としてステークホルダーに対する説明責任を果たしてまいります。合わせて、サステナビリティの取り組みを経営の根幹に据えて、2019年に環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』を策定し、CO₂排出量削減、プラスチック対策、食品ロス・食品リサイクル対策、持続可能な調達の4つのテーマで、2050年をゴールとする目標を設定し、その達成に向けて環境課題や外部不経済の解決に向けた行動を推進しています。

また、各事業会社は与えられた事業範囲における責任を全うし、各々の自立性を発揮しながら、利益の成長及び資産効率の向上を追求してまいります。

 

(2)目標とする経営指標

当社は、持続的に企業価値を向上させるため、資本コストを上回るリターン(利益)を拡大するとともに、キャッシュ・フローの創出力を高めることを基本方針として財務目標を設定しております。当社では2021年7月1日に発表いたしました「中期経営計画2021-2025」の目標値について、2023年3月9日「中期経営計画のアップデート並びにグループ戦略再評価の結果について」(以下、「グループ戦略再評価」という)を公表し、以下のとおりアップデートいたしました。

 

(2025年度 主要連結財務数値目標)

 

2025年度

当初目標

2025年度

アップデート目標

当初差

EBITDA

1

兆円以上

1.1

兆円以上

+1,000

億円

営業キャッシュ・フロー(除く金融)

8,000

億円以上

9,000

億円以上

+1,000

億円

フリーキャッシュ・フロー水準(除く金融)

4,000

億円以上

5,000

億円以上

+1,000

億円

ROE

10

%以上

11.5

%以上

+1.5

ROIC(除く金融)

7

%以上

8.0

%以上

+1.0

Debt/EBITDA倍率

2.0

倍未満

1.8

倍未満

△0.2

調整後Debt/EBITDA倍率

2.2

倍未満

2.0

倍未満

△0.2

EPS成長率(CAGR)

15

%以上

18

%以上

+3

※営業キャッシュ・フロー(除く金融)は、金融事業を除くNOPATをベースとした管理会計数値。

 フリーキャッシュ・フロー水準(除く金融)は、金融事業を除く管理会計ベース数値。

 なお、M&Aは戦略投資として投資キャッシュ・フローからは除外して算出。

 ROIC(除く金融)は、{純利益+支払利息×(1-実効税率)}/{自己資本+有利子負債(ともに期首期末平均)}にて算出。

 調整後Debt/EBITDA倍率は、金融事業を除く管理会計ベース数値。

 Net Debt / EBITDAR (Net Debt:有利子負債+オンバランスリース-現預金等調整)

 EPS成長率(CAGR)は、2020年度に対してのCAGR(年平均成長率)にて試算。

 

(3)中長期的な経営戦略

当社は、2021年7月に公表した「中期経営計画2021-2025」において、すべてのステークホルダーから信頼される誠実な企業でありたいという創業以来の社是、「常にお客様の立場に立って、新たな体験価値を提供することで、国内外の地域社会に貢献したい」という基本姿勢と2030年の目指すグループ像として、「セブン‐イレブン事業を核としたグローバル成長戦略と、テクノロジーの積極活用を通じて流通革新を主導する世界トップクラスのグローバル流通グループ」を掲げ、様々な社会構造の変化を背景としたお客様の購買行動の変化に着実かつスピーディーに対応してまいりましたが、2022年度に実施したグループ戦略の再評価を踏まえて、2030年に目指すグループ像を「セブン‐イレブン事業を核としたグローバル成長戦略と、テクノロジーの積極活用を通じて流通革新を主導する、「食」を中心とした世界トップクラスのリテールグループ」といたしました。今後もこの新たな2030年に目指すグループ像の達成に向けて、各種施策を着実に遂行してまいります。

 

(4)経営環境及び経営課題

当社グループを取り巻く環境は、大きく変化しており、またその変化のスピードも加速しております。現下、日本国内においては、高齢化・単身化・共働き化等の社会構造の変化の加速により、ご自宅の近くでの生鮮食品・惣菜等の購買ニーズが更に高まっており、また、世界的なパンデミックを経て、お客様の行動様式・価値観が変化し食品に対するニーズも一層多様化しております。一方、最低賃金の上昇や社会保険加入の拡大を受け、雇用環境は引き続き厳しい状況が続くことも想定されます。

米国においては、新鮮で健康的な美味しい食品ニーズを満たすことのできるコンビニエンスストアへの期待が高まっており、世界全体においても、各地域の特性に合わせた安全・安心で高い品質の日常の「食」を提供する領域には大きなチャンスがあり、これを可能とするための事業インフラの構築が重要な状況になってきております。加えて、国内外を問わず、気候変動、海洋汚染、フードロス、持続可能な調達等、社会課題が深刻化しており、企業も社会を構成する一員として、その解決に対してこれまで以上に真剣に向き合う時代を迎えております。

当社スーパーストア事業は、食品の品揃え・調達力・サプライヤーネットワーク・イノベーティブな商品開発力・プライベートブランド(セブンプレミアム)といったグループの競争力を支える「食」の強みを有しておりますが、上記のような今後のマクロトレンド・マーケットトレンドの予測の観点からも、この「食」の強みが当社グループにおける国内外コンビニエンスストア事業の成長を支える競争力の源泉としてますます重要になってくるものと考えられます。なお、グループ食品戦略を推進するにあたり、プロセスセンターやセントラルキッチンなどグループ共通インフラの整備・稼働の取り組みを推進する具体的施策として、セブン&アイグループ初の共通インフラとして、惣菜・ミールキット等の製造を行うセントラルキッチンと精肉の加工を行うプロセスセンターの機能を併せ持つ食品製造工場「Peace Deli千葉キッチン」の稼働を開始しております。

 

戦略委員会による提言と当社の中長期的な企業価値・株主価値の最大化を実現するためのアクションプラン

 

当社は、2023年3月9日に「グループ戦略再評価」を公表し、当社の中長期的な企業価値・株主価値の最大化を目的に独立社外取締役のみで構成される戦略委員会を設立いたしました。この度、戦略委員会から当社取締役会に対して、戦略委員会における討議の内容を纏めた提言が提出されたことを受け、当社取締役会において真摯に検討してまいりました。その結果、当社グループの今後の具体的なアクションプランについて以下のとおり公表することを決定し、これらのアクションプランの実行に向け、明確なタイムラインの策定を既に開始しております。

 

・当社の戦略委員会は、発足以来、委員会前の膨大な分析、13回にわたる委員会及び数多くの非公式討議を通じ、多大な時間と労力を費やして運営されてきました。

・戦略委員会からの提言は、取締役会においても十分に議論され、今回公表されたアクションプランに反映されております。なお、取締役会は、戦略委員会からこれまでも継続的に助言を受け、既に多くの戦略的施策を実行してまいりました。下記の各項目についても、具体的な計画及び明確なアクションプランに沿って着実に実行されるように監督してまいります。

 

〈成長加速に向けた具体的アクションプラン〉

当社グループ全体の成長戦略を推進するために、より機動的且つ柔軟な財務規律をもって(財務レバレッジのターゲット:Debt/EBITDA倍率1.8~2.5倍を目安に)コンビニエンスストア事業における積極的な戦略投資を実行すると同時に、グループ資本効率の改善に取り組みます。

 

・成長余地の大きな北米コンビニエンスストア市場における成長加速と収益性・資本効率の改善

・グローバルコンビニエンスストア事業におけるより意欲的な事業計画の策定・投資の実行

・グローバル成長の礎となるIT/DX戦略とコスト競争力を高めるIT/DXガバナンス構築

・首都圏スーパーストア(以下、「首都圏SST」という)事業(注)1の変革完遂と成長に向けたモニタリングと実行支援

・グループにおける小売×金融のシナジー最大化

 

〈長期的成長と企業価値を高めるグループ構造への移行〉

戦略委員会の提言を受け、当社取締役会では、コンビニエンスストア事業を含めた当社各事業の事業価値、各事業に携わる従業員、当社株主の長期的な利益の最大化を実現し得るグループ構造について、主要事業会社と連携を図りつつ、更に議論を重ねました。

その結果、コンビニエンスストア事業においては、日本・北米を含むグローバルコンビニエンスストア事業の一体運営を実現するために、今後、コンビニエンスストア事業のリーダーシップ体制・マネジメント体制の統合に取り組んでまいります。スーパーストア(以下、「SST」という)事業(注)2においては、変革を通じて、自立的な再成長フェーズが見渡し得る経営体制の確立、独立した企業体として独自の財務規律をもって成長の方向性を自ら定め、従業員が事業の成長に強く関与できるグループ事業構造の実現を目指します。具体的には、当社によるSST事業の一部持分の継続保持及びコンビニエンスストア事業とSST事業の間の食品開発領域における協働体制の維持を前提に、抜本的変革の先にあるSST事業の持続的成長のための有力な選択肢の一つとして、現実的に最速のタイミングでのSST事業のIPO実現に向けた検討を開始します。

 

〈投資家エンゲージメントの強化〉

当社のミッションひいては株主価値の向上に向けた取り組みが明快かつ透明性をもってお伝えできるよう、投資家 を重視し、エンゲージメントを行ってまいります。当社の具体的な戦略、成長の道筋、進捗状況に関する投資家とのコミュニケーション体制について、課題の検証や強化に向けた取り組みを継続してまいります。

 

当社は、引き続き当社株主をはじめステークホルダーの皆様の声に傾聴しつつ、「セブン‐イレブン事業を核としたグローバル成長戦略と、テクノロジーの積極活用を通じて流通革新を主導する、『食』を中心とした世界トップクラスのリテールグループ」の構築を通じたグループの持続的な成長と企業価値向上を実現すべく、この3つの領域におけるアクションプランを速やかに推進し、次期中期経営計画においてもその進捗を適切に反映してまいります。

 

(注) 1.首都圏SST事業:株式会社イトーヨーカ堂、株式会社シェルガーデン

2.SST事業 :SST事業セグメントに含まれるすべての事業会社を含む

 

戦略を支える確かな経営基盤

 

① 持続可能な社会の実現に向けて

当社グループでは、これまでも社会課題解決と企業価値向上の両立を経営の基本におき、積極的に取り組んでまいりました。当社グループの事業領域と特に親和性の高い社会課題を「7つの重点課題(マテリアリティ)」と特定し、SDGs(国連「持続可能な開発目標」)の17の目標と関連づけながら、課題解決に向けて取り組みを進めております。これらにより、本業を通じての社会課題及び重点課題を起点とした新たなビジネスモデルの創出に取り組んでおります。

 

「7つの重点課題(マテリアリティ)」

・お客様とのあらゆる接点を通じて、地域・コミュニティとともに住みやすい社会を実現する

・安全・安心で健康に配慮した商品・サービスを提供する

・地球環境に配慮し、脱炭素・循環経済・自然と共生する社会を実現する

・多様な人々が活躍できる社会を実現する

・グループ事業を担う人々の働きがい・働きやすさを向上する

・お客様との対話と協働を通じてエシカルな社会を実現する

・パートナーシップを通じて持続可能な社会を実現する

 

2019年5月に公表した環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』の達成に向け、CO₂排出量削減、プラスチック対策、食品ロス・食品リサイクル対策、持続可能な調達の4つのテーマで、お客様・地域社会・お取引先様等のステークホルダーとも連携しながら、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでおります。グローバル展開の強化に合わせ、世界のセブン‐イレブンライセンシーとの共同によるCO₂の排出削減、プラスチック対策なども推進しております。

また、企業活動のグローバル化が進み、企業の人権への取り組みに対して、社会からの関心が高まっております。当社グループでは企業行動指針をベースに人権を守る活動を行っており、国際人権章典(世界人権宣言と国際人権規約)、労働における基本的原則及び権利に関する国際労働機関の宣言、国連グローバル・コンパクトの10原則、及び「国連ビジネスと人権に関する指導原則」などをもとに、「セブン&アイグループ人権方針」を定めております。これからも従業員やサプライチェーン、地域社会に対する働きかけを行うなど、人権尊重の取り組みを一層強化してまいります。

 

② コーポレートガバナンスの更なる強化

当社グループでは、これまでも、コーポレートガバナンスについて、すべてのステークホルダーの皆様との対話に基づき、常にその改善と拡充に努めてまいりました。2030年の目指すグループ像としてグローバルリテールグループを目指すにあたり、これにふさわしいガバナンス体制を構築すべく、取締役会の多様性を更に向上させるとともに、2022年度より独立社外取締役を増員し、過半数とする体制に変更いたしました。

更に2023年度には、ガバナンス体制の強化・安定化を図るために当社の代表取締役を追加選任し計3名とするとともに、各コーポレート機能には最高責任者(CxO)を任命し、各事業セグメント・事業領域には統括責任者を任命いたしました。また、当社グループの中長期的な企業価値向上のための助言を取締役会に対して行うことを目的として、独立社外取締役のみで構成される戦略委員会を設置し、グループ重点戦略に関する進捗状況のモニタリング及び戦略実現のための最適なグループ事業構造等に関する包括的かつ客観的な分析・検証を行ってまいりました。

今後も、グローバルマーケットにおける持続的な成長と中長期的なグループ企業価値向上を実現すべく、適切な意思決定を行うとともに実効性の高い監督を実施し、取締役会としての役割・責務を適切に果たし、コーポレートガバナンスの更なる強化を図ってまいります。

 

③ 経営戦略と連動した人財政策

当社の成長力の源泉は人財です。とりわけ、DX及びグローバル戦略の推進や社会価値と企業価値の両立を追求するうえで、経営戦略と人財戦略は不可分であると考えております。当社では経営戦略の推進と一体となった人財戦略に取り組み、専門的な知見や技能を有する人財を社外から求めるだけでなく、グループ内でも積極的に育成してまいります。人財育成にあたっては、「人財とともに成長する企業」という考え方に立ち、積極的に社員に成長機会を提供することで、自ら学び続け、常にスキルアップを図り続ける人財の育成を図り、社員と会社の相互成長を目指してまいります。

また、働き方改革や生産性の向上を図ることで、誰もが働きやすい職場づくりを推進してまいります。働く人々の多様性や違いを認め合う環境づくりや柔軟な働き方を支援する体制を整え、多様な人財が活躍できる組織・企業文化の育成に注力してまいります。

更に当社グループでは各社社長のもと「エンゲージメント向上委員会」を設置し、従業員エンゲージメント向上に向けた行動計画の策定とモニタリングを実施しております。従業員のエンゲージメントや貢献意欲が高まることが組織の活性化につながり、企業の競争力強化につながると考え、今後も活動を推進してまいります。

 

中長期的な企業価値向上による持続的成長に向け、今後とも当社グループでは、グループシナジーを強化して当社グループの強みを一層拡大し、すべてのステークホルダーの皆様の声を真摯に受け止めながら、更なる価値提供と適正な利益還元を進めてまいります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 当社グループは、お客様をはじめとして、お取引先様、株主・投資家、地域社会、加盟店、そして社員を含めたすべてのステークホルダーの皆様から「信頼される、誠実な企業でありたい。」という社是にもとづき、SDGs(持続可能な開発目標)が掲げる持続可能な社会の実現を目指しております。

 お客様の暮らしに寄り添い、お客様の生活様式から発想した新たな顧客体験価値を提供し続けることが、私たちの事業活動の原点であり、サステナビリティ(持続可能性)を追求するうえでの基本であると考えております。

 そのため、ステークホルダーの皆様との対話を通じて重点課題 (マテリアリティ)を特定し、社会と当社グループにとって重要性の高い社会課題に対し、本業を通じた解決に取り組んでおります。

 限りある地球環境や資源を活かし、未来世代につなげていくために、2019年には環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』を発表しました。2030年、2050年の目指す姿と具体的な目標を掲げ、その達成に向けて4つのテーマごとにイノベーションチームを立ち上げております。それぞれのチームが多様な新技術の導入や、お客様、お取引先様、地域社会の皆様と連携した循環型社会の構築などを進め、グループ一丸となって環境負荷の低減に取り組んでおります。

 また、すべての人の人権を理解し、人権尊重の責任を果たすため、国際的な原則、基準を踏まえて「セブン&アイグループ人権方針」を定めております。本方針はすべての役員・従業員に適用し、すべてのビジネスパートナーに対しても継続的な支持をお願いすることで、ともに人権デュー・ディリジェンスの推進、人権の尊重に取り組んでおります。

 これらのサステナビリティの施策を通じて、中長期のリスクを軽減し、機会を積極的に活用することが、事業活動のレジリエンスと持続可能性を高め、国内外のお客様の暮らしになくてはならない存在として、当社グループの社会的・経済的価値の向上につながると認識しております。

 以降、(1)サステナビリティ共通、(2)気候変動、(3)人的資本・多様性について、それぞれ①ガバナンス、②戦略、③リスク管理、④指標及び目標の4項目を記載します。

 

(1) サステナビリティ共通

① ガバナンス

 当社は、社会課題の解決に貢献し、社会と当社グループの持続的成長を目指すため、事業活動を通じたサステナビリティ活動の推進・管理・統括を目的として、年2回開催する代表取締役社長を委員長とした「CSR統括委員会」をCSR基本規程に基づき設置しております。また、ステークホルダーの期待や要請に対応するために特定した重点課題(マテリアリティ)の解決及びコンプライアンスのさらなる徹底に資する事業活動を推進するために、同委員会傘下に具体的な施策の検討・推進を担う下部組織として5つの部会(コンプライアンス部会、企業行動部会、サプライチェーン部会、環境部会、社会価値創造部会)を設け、課題の解決並びに未然防止に取り組んでおります。

 傘下の5部会の活動状況は、「CSR統括委員会」において報告を受けて指導・改善を図るとともに、持株会社と事業会社の連携の強化を図っております。

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●コンプライアンス部会

 グループ会社の社員が法令及び社会的規範を遵守し、お客様やお取引先様との間の公正取引を含むコンプライアンスを実践することは、当社グループの社是「信頼と誠実」の実現のために欠くことができない重要な基盤です。持株会社である当社は、グループ各社のコンプライアンス体制強化のサポート及び監督の実効性を確保し、グループ各社レベルでのコンプライアンスの徹底に努めております。コンプライアンス部会は、当社の執行役員総務法務本部長を部会長とし、当社の法務主管部門が部会運営を行うことで、具体的な施策の推進を図っております。

 

●企業行動部会

 グループ会社の社員が当社グループの社是を理解し、企業行動指針を遵守することは、当社グループの社是「信頼と誠実」の実現のために欠くことができない重要な基盤です。企業行動部会では、グループ会社の社員を対象に、社是や企業行動指針の周知、教育による意識向上など、企業行動指針の徹底を基軸とした活動を行っております。また、働きがいのある職場づくりを目指すため、従業員エンゲージメント調査を実施するほか、女性や障がい者など多様な人財の活躍推進、介護と仕事の両立支援、長時間労働の是正をはじめとした労働環境の改善、休日・休暇の取得促進など、すべての社員が安心して働ける環境づくりを進めております。企業行動部会は、当社の執行役員最高人財責任者(CHRO)兼人財本部長を部会長とし、当社の人事主管部門が部会運営を行うことで、具体的な施策の推進を図っております。

 

●サプライチェーン部会

 国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」や「持続可能な開発目標(SDGs)」へ迅速に対応し、人権や環境に配慮した健全なサプライチェーンを構築することは、企業の重要な社会的責任の一つであると同時に、ステークホルダーからも強く求められております。サプライチェーン部会では、商品・サービスにおけるサプライチェーン全体での社会的責任を果たすため、お取引先様に「セブン&アイグループお取引先サステナブル行動指針」のご理解と実行をお願いしております。その遵守状況をCSR監査などを通じて定期的に検証・共有し、教育・啓発・是正を進めております。また、グループ各社ごとの品質向上と安全性の確保のため、当社グループの「品質方針」に基づいて、グループ各社の品質基準や管理体制の整備・強化を図ります。サプライチェーン部会は、当社の執行役員最高商品戦略責任者(CMDO)兼グループ商品戦略本部長を部会長とし、当社の商品戦略の主管部門が部会運営を行うことで、具体的な施策の推進を図っております。

 

●環境部会

 気候変動や資源の枯渇などの問題に対して、商品や原材料、エネルギーを無駄なく利用するとともに、お客様やお取引先様にもご協力いただきながらサプライチェーン全体で環境負荷低減に取り組むことは、社会の持続的な発展に資するとともに当社グループの持続的な成長につながる重要な要素です。そのため、環境部会では、2019年4月に取締役会で決議し、同年5月に公表した環境宣言「GREEN CHALLENGE 2050」に基づき、「脱炭素社会」、「循環経済社会」、「自然共生社会」の実現を目指した取り組みを推進しております。気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言も踏まえ、気候変動のリスクと機会について分析し、対応策の進化を図っております。環境部会は、当社の執行役員ESG推進本部長を部会長とし、当社の環境施策の主管部門が部会運営を行うことで、具体的な施策の推進を図っております。

 

●社会価値創造部会

 社会価値創造部会では、事業領域が拡大し、関係する社会課題が多様化するなか、社会課題の解決に取り組むことが新しいビジネス機会につながるという認識のもと、社会的価値と経済的価値の双方を生み出す事業の創出(CSV=共通価値の創造)を目的とした活動を行っております。持続可能な社会の実現に向けて、さまざまなステークホルダーとの対話を通じて特定した取り組むべき「7つの重点課題」に対して、これまで培ってきた事業インフラやノウハウなど、事業特性・経営資源を活かして本業を通じた社会課題起点の新規事業の企画・立案・実行に取り組むほか、お取引先様や社会起業家、NPOといった外部との連携も視野に入れて、取り組みの深化に努めます。社会価値創造部会は、当社の取締役執行役員最高戦略責任者(CSO)兼経営企画本部長を部会長とし、当社の経営企画主管部門が部会運営を行うことで、具体的な施策の推進を図っております。

 

② 戦略

 当社グループは社会課題解決と企業価値向上の両立を経営の根幹に据えて、サステナビリティの推進に積極的に取り組んでいます。事業と関係する社会課題や社会要請が多様化する中、特に重視すべき課題に集中して適切に対応するために、当社グループの事業領域と特に親和性の高い「7つの重点課題(マテリアリティ)」を特定し、課題解決に向けて取り組みを進めております。これらにより、本業を通じての社会課題及び重点課題を起点とした新たなビジネスモデルの創出に取り組んでおります。

<7つの重点課題(マテリアリティ)>

重点課題1:お客様とのあらゆる接点を通じて、地域・コミュニティとともに住みやすい社会を実現する

重点課題2:安全・安心で健康に配慮した商品・サービスを提供する

重点課題3:地球環境に配慮し、脱炭素・循環経済・自然と共生する社会を実現する

重点課題4:多様な人々が活躍できる社会を実現する

重点課題5:グループ事業を担う人々の働きがい・働きやすさを向上する

重点課題6:お客様との対話と協働を通じてエシカルな社会を実現する

重点課題7:パートナーシップを通じて持続可能な社会を実現する

 

重点課題のリスク及び機会

7つの重点課題

(マテリアリティ)

リスク

機会

①お客様とのあらゆる接点を通じて、地域・コミュニティとともに住みやすい社会を実現する

・生活拠点の減少により人口減少・過疎化・高齢化が進行し、販売機会が減少

・地域との連携不足に伴い計画どおりに新規出店が進まず、新たな価値の提供機会の損失

・生活インフラとしての社会的役割の拡大によるステークホルダーからの信頼獲得

・地域活性化による販売機会の拡大

②安全・安心で健康に配慮した商品・サービスを提供する

・商品事故及び店頭事故の発生による顧客の離反

・品質管理、表示等の法令違反による信用低下

・健康商品開発の遅れによる顧客の離反

・徹底した安全・品質管理による顧客ロイヤリティの向上

・健康配慮商品、お客様ニーズに即した新しい商品提供による販売機会の拡大

③地球環境に配慮し、脱炭素・循環経済・自然と共生する社会を実現する

・気候変動がもたらす自然災害の増加による店舗・物流網への物理的損害

・異常気象がもたらす需給の変化や原油等原材料価格変動による、仕入価格の高騰

・食品廃棄・温暖化ガス排出などの環境負荷の高い企業イメージの定着による顧客の離反

・省エネや廃棄物削減、リサイクル、エネルギー供給源の見直しによるコスト削減

・環境対策先進企業としてのブランド価値の創出

④多様な人々が活躍できる社会を実現する

・差別・偏見などの放置による企業イメージの棄損、顧客の離反、従業員エンゲージメントの低下

・人財の確保困難や人財の社外流出

・次世代や若者世代、さまざまな価値観を持つ人々との対話・育成による将来の顧客の獲得、新たなサービスの開発

⑤グループ事業を担う人々の働きがい・働きやすさを向上する

・労働環境が改善しないことによる従業員エンゲージメントの低下

・人財の確保困難や人財の社外流出

・ダイバーシティ経営推進による競争力の強化

・従業員の能力・自律性を高めることによる生産性の向上

・新規事業の開発と優秀な人財の獲得

⑥お客様との対話と協働を通じてエシカルな社会を実現する

・生活者のライフスタイルの変化や価値観の多様化への対応の遅れにより、商品とサービスを通じた新たな価値の提供機会の損失

・エシカル消費に対応した商品・サービスの提供による販売機会の拡大

・顧客協働による顧客ロイヤリティの向上

⑦パートナーシップを通じて持続可能な社会を実現する

・サプライチェーン上の労働環境・人権問題やコンプライアンス違反による商品供給の停止や品質の劣化及び、それらに伴う不買運動による社会的評価の低下

・持続可能な原材料調達によるレジリエンスの向上

・取引先・同業種・他業種協働による新たな商品・サービスの提供

・重点課題のリスク及び機会については、当社サステナビリティデータブック2023(2023年2月期実績)内「サステナビリティを巡るリスク・機会」を以下のURLからご参照ください。

https://www.7andi.com/library/dbps_data/_template_/_res/sustainability/pdf/2023_09_01.pdf

 

重点課題に資する事業を通じた具体的な施策

7つの重点課題

(マテリアリティ)

具体的な施策

①お客様とのあらゆる接点を通じて、地域・コミュニティとともに住みやすい社会を実現する

1.地域社会に根差した経営

 お買物に不便を感じる方へのお届けサービスの拡大

(7NOW、イトーヨーカドーとくし丸、セブンあんしんお届け便、ネットスーパー)

 食事に不便や困難を感じる方への家事を軽減する商品の開発・販売

②安全・安心で健康に配慮した商品・サービスを提供する

2.安全・安心で豊かな社会への支援

 栄養や健康に配慮した商品の開発と販売

 さらなる品質管理体制の強化

③地球環境に配慮し、脱炭素・循環経済・自然と共生する社会を実現する

3.環境に配慮した経営

 プラスチック使用量削減やPETボトルの循環型リサイクル、再生可能エネルギーの利用

 食品ロスの削減、持続可能性が担保された商品の調達

④多様な人々が活躍できる社会を実現する

4.色々な価値観・ライフスタイルを認める社会の実現

 マタニティ・育児相談・保育園の運営

 出前授業の提供、障がい者支援

⑤グループ事業を担う人々の働きがい・働きやすさを向上する

5.従業員がやりがいと達成感を得られる会社づくり

 ダイバーシティ&インクルージョンの推進

 人財育成・対話によるエンゲージメントの向上

 DXによる労働環境の改善

⑥お客様との対話と協働を通じてエシカルな社会を実現する

6.お客様と一緒に豊かな地域の実現

 余剰食品の寄付活動や環境保全イベントの開催

 お客様参加型の社会課題解決に資する取り組み

⑦パートナーシップを通じて持続可能な社会を実現する

7.お取引先様と一緒に豊かな社会の実現

 人権や地球環境に配慮したお取引先様との協業

 NPO・NGO、異業種・同業種企業との協働

・重点課題については、当社サステナビリティデータブック2023(2023年2月期実績)内「7つの重点課題」を以下のURLからご参照ください。

https://www.7andi.com/library/dbps_data/_template_/_res/sustainability/pdf/2023_11_01.pdf

 

③ リスク管理

 当社は、コーポレートガバナンスに係る各種委員会の一つとして、リスクマネジメント委員会を設置し、事業活動におけるリスクを定期的に洗い出し、重要リスクの特定とその管理体制の強化を行っております。

 本リスク管理体制の中に、サステナビリティに関するリスクも含まれています。個別のリスクを含むリスク管理の詳細は、後記「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

④ 指標及び目標

 当社グループの事業を通じた「7つの重点課題(マテリアリティ)」の解決に資する活動目標については、各事業会社が重点課題ごとに設定しています。目標と実績の詳細は、当社サステナビリティデータブック2023(2023年2月期実績)内「データ集」に記載しています。以下のURLからご参照ください。

https://www.7andi.com/library/dbps_data/_template_/_res/sustainability/pdf/2023_24_01.pdf

 

(2) 気候変動

 当社グループでは、重点課題の一つとして、前記「3.地球環境に配慮し、脱炭素・循環経済・自然と共生する社会を実現する」を定め、経営戦略においても気候変動への対応を経営課題の1つとして取り組んでおります。気候変動対応を加速するため、2019年、環境宣言「GREEN CHALLENGE 2050」を発表し、これを、2030年・2050年への目指すべき社会へのロードマップとして位置付けています。環境宣言では、脱炭素社会、循環経済社会、自然共生社会の3つの社会への移行に向けて、「CO₂排出量削減」、「プラスチック対策」、「食品ロス・食品リサイクル対策」、「持続可能な調達」の4分野にて、中長期の目標を立て、各分野でグループ横断の推進体制を構築し、取り組みを進めております。TCFD提言に沿ったシナリオ分析では、環境宣言実現に関わるリスク及び機会を事業体ごとに特定し、リスク低減と機会最大化を図る対応策を推進しております。

 

 

① ガバナンス

 サステナビリティ全体に関する推進体制については、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)サステナビリティ共通 ①ガバナンス」をご覧ください。下表は、気候変動対応に関する体制となります。また、2020年度より役員報酬において、2019年5月に策定した環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』におけるCO₂排出量の削減目標を非財務指標として、株式報酬の業績評価指標(KPI)に追加しております。

体制

役割

メンバー

取締役会

・気候変動問題に関する進捗・目標達成状況に関して年1回以上報告を受け、取り組みを監督

・方針・重要事項の見直し・決定

・取締役

・監査役

サステナビリティについて幅広い知見と経験を有する社内取締役及び社外取締役をメンバーとして構成

CSR統括
委員会

・年2回開催・気候変動問題にかかわる指標(CO₂排出量など)の推移や緩和・適応策の共有

・環境部会やグループ会社で実施される取り組みの承認と助言

・委員長:株式会社セブン&アイ・ホールディングス 代表取締役社長

・委員 :グループ会社のサステナビリティ推進責任者(代表取締役社長等)、株式会社セブン&アイ・ホールディングスのサステナビリティ推進部門の責任者

環境部会

・CSR統括委員会下部組織

・年2回開催

・気候変動問題への対応推進

・TCFD提言への対応推進

・部会長 :株式会社セブン&アイ・ホールディングス 執行役員ESG推進本部長

・メンバー:グループ会社のサステナビリティ推進部門責任者、気候変動対応実務部門責任者

 

② 戦略

1.TCFD提言に基づいたシナリオ分析

<経緯>

 当社グループは、2019年度~2021年度、営業利益の6割を占める(2019年当時)国内コンビニエンスストア事業を対象としたシナリオ分析を実施、コンビニエンスストア事業の固有リスクにつき一定の示唆を得ることができました。2022年度、地理的条件を同じくする国内事業として、スーパーストア事業のシナリオ分析を実施しました。2023年度、国内事業におけるシナリオ分析の結果を海外事業の分析に有効活用し、より効果的・効率的に7-Eleven, Inc. のシナリオ分析を実施しております。

*金融関連事業の株式会社セブン銀行においては、2022年より同社のウェブサイト及び有価証券報告書にて気候変動への取り組みを開示しています。

 

<分析の前提>

シナリオ

脱炭素シナリオ(1.5℃~2℃)・温暖化進行シナリオ(2.7℃~4℃)

*IEA(国際エネルギー機関)「World Energy Outlook」で示されているSTEPS、APS、NZE2050などのシナリオをはじめとして、政府や国際機関が発行した将来予測に関するレポートを参考に2つのシナリオを設定。

分析手法

店舗が直接受ける物理的な影響に加え、店舗運営に伴って発生するコスト、店舗運営に大きな影響を与える商品のサプライチェーン(原材料・商品製造工場・商品配送)やお客様の行動について分析

対象年

国内コンビニエンスストア事業、スーパーストア事業:2030年時点の影響
海外コンビニエンスストア事業:短期(0~5年)・中期(5~10年)・長期(10~30年)

<対象の事業体>

・国内コンビニエンスストア事業:株式会社セブン‐イレブン・ジャパン

・スーパーストア事業:株式会社イトーヨーカ堂、株式会社ヨークベニマル

・海外コンビニエンスストア事業:7-Eleven, Inc.

 

<事業環境>

●脱炭素シナリオ

1.5℃目標達成に向けてさまざまな法律や規制の導入が進み、その対応コストによる店舗運営コストの上昇や

ポートフォリオの多様化が求められる世界を想定しております。またこのシナリオでは、消費者のサステナブル商品やサービスへの関心、電気自動車への関心が高まり、それに応える商品を販売することが事業成長につながると見込んでおります。

●温暖化進行シナリオ

自然災害の発生増加や激甚化、気象パターンの変化が顕著に表れ、店舗などへの損害や原材料調達への影響、

また、気温上昇による店舗での冷房コストの増加が予測されるシナリオを想定しております。

<分析結果>

1. 認識した気候変動関連のリスクと機会

気候変動関連のリスクと機会及び対応策について、当社グループ共通事項と一部固有事項を認識しております。

*事業体ごとの詳細な分析結果については、当社サステナビリティデータブック2023(2023年2月期実績)内「TCFD提言への対応」を以下のURLからご参照ください。

https://www.7andi.com/library/dbps_data/_template_/_res/sustainability/pdf/2023_10_01.pdf

 

 

認識した重要なリスクと機会

対応策

脱炭素

シナリオ

<リスク>

・世界的な排出量規制や炭素税などのカーボンプライシング導入により、店舗運営にかかるCO₂排出量に対してのコスト負担や、サプライチェーンでのコスト増加による商品等への影響が発生(炭素税の財務影響予測については、後記「2.事業インパクト」をご参照ください。)

・電力小売価格上昇で電気料金支払い増加

・(海外CVS事業)消費者の嗜好の変化、新技術の採用、燃料効率の改善により、特に脱炭素シナリオにおいて

石油系燃料の需要が減少し、石油系燃料からの収益が減少(長期)

・(海外CVS事業)製品廃棄物規制による拡大生産者責任(EPR)関連コストの増加(中期)

・環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』に基づいたCO₂排出量削減の各施策推進(2013年度比で2030年50%削減、2050年に実質ゼロを目指す)

・店舗における省エネやエネルギー効率の改善に向けて、取り組みや投資の推進

・店舗での再生可能エネルギー比率の積極的な拡大

・サステナブルな商品やサービスの拡充

(低炭素商品、環境配慮型容器包装、ペットボトル回収・リサイクル、認証商品など)

・店舗でのEV充電サービスの拡大(海外CVS事業:電気自動車用急速充電ネットワーク「7Charge」のEV用急速充電ポートを、今後、米国とカナダ全土で配備拡大予定)

・環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』プラスチック対策に基づいた、製品パッケージにおける各施策推進

・環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』食品ロス・食品リサイクル対策に基づいた、食品廃棄物の発生量削減施策を推進(焼却処分量の削減)

<機会>

・消費者のサステナブル商品やサービスへの関心が増加

・規制の強化や消費者の嗜好の変化により、EV充電の需要増加

・(海外CVS事業)エネルギー効率化対策に投資することで、エネルギー使用量を全体的に削減(中期)

温暖化進行

シナリオ

<リスク>

・深刻な自然災害の発生頻度や強度が強まり、店舗被害や商品損害、サプライチェーンの混乱、店舗へのアクセス遮断、休業による売上損失、またその復旧費の発生等で損害額が増加

・降水、気象パターンの変化により、商品原材料の収穫量減少に伴う商品原価上昇や水ストレス、サプライチェーンの混乱などが発生

・世界的な高温の増加に伴う冷房運転コスト上昇

・洪水や暴風雨などの悪天候時に取るべき危機管理計画の策定

・災害時の情報収集と早期復旧の体制構築(「セブンVIEW」など)

・野菜工場や陸上養殖などの調達拡大による安定的な仕入の確保

・店舗における省エネ推進、省エネ設備の導入

・お届け事業、ECサービスの拡大

<機会>

・夏季の高温によりお客様の外出頻度が低下し、お届け事業・ECサービスの需要が増加

 

2. 事業インパクト

・炭素税の影響(2030年)

項目

事業インパクト

国内コンビニエンスストア事業

126億円

スーパーストア事業

74億円

事業インパクトの合計金額

200億円

<前提>・炭素税額 :135ドル/トン-CO₂(IEA「World Energy Outlook2022」の最大金額)

    ・為替レート:131.62円/ドル(23年2月期決算時に使用したレートに合わせています)

 

 IEA「World Energy Outlook 2022」を参考に2030年時点の炭素税額を135ドル/トン-CO₂と設定し、最大金額でインパクトを試算。環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』に掲げる目標に基づいた取り組みを進めることで2030年の炭素税額を大幅に削減でき、更に、2050年目標であるCO₂排出量実質ゼロを実現することで、最終的に炭素税の影響はなくなると見込んでおります。

③ リスク管理

 当社グループの全社的なリスク管理体制の中に、気候変動に関するリスクも含まれています。

リスク管理の詳細は、後記「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

④ 指標と目標

 環境宣言「GREEN CHALLENGE 2050」の4分野の指標・目標及び進捗は以下のとおりです。

 

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※1 株式会社セブン‐イレブン・ジャパン、株式会社イトーヨーカ堂、株式会社ヨークベニマル、旧株式会社ヨーク、株式会社シェルガーデン、アイワイフーズ株式会社、株式会社赤ちゃん本舗、株式会社セブン&アイ・フードシステムズ、株式会社ロフト、7-Eleven, Inc.の10社の合計値。

※2 オリジナル商品(セブンプレミアムを含む)で使用する容器の環境配慮型素材(バイオマス・生分解性・リサイクル素材・紙など)の使用比率。算出対象はオリジナル商品を取扱う8社(株式会社セブン‐イレブン・ジャパン、株式会社イトーヨーカ堂、株式会社ヨークベニマル、旧株式会社ヨーク、アイワイフーズ株式会社、株式会社赤ちゃん本舗、株式会社セブン&アイ・フードシステムズ、7-Eleven, Inc.)

※3 売上百万円あたりの食品廃棄物発生量。算出対象は食品関連事業会社6社(株式会社セブン‐イレブン・ジャパン、株式会社イトーヨーカ堂、株式会社ヨークベニマル、旧株式会社ヨーク、株式会社シェルガーデン、株式会社セブン&アイ・フードシステムズ)

 *7-Eleven, Inc.においては、正確な数値を算出する準備を進めています。

※4 算出対象は食品関連事業会社6社(株式会社セブン‐イレブン・ジャパン、株式会社イトーヨーカ堂、株式会社ヨークベニマル、旧株式会社ヨーク、株式会社シェルガーデン、株式会社セブン&アイ・フードシステムズ)

 *7-Eleven, Inc.においては、正確な数値を算出する準備を進めています。

 

※5 オリジナル商品(セブンプレミアムを含む)で使用する食品原材料のうち、持続可能性が担保された原材料の使用比率。算出対象は食品関連事業会社6社(株式会社セブン‐イレブン・ジャパン、株式会社イトーヨーカ堂、株式会社ヨークベニマル、旧株式会社ヨーク、アイワイフーズ株式会社、株式会社セブン&アイ・フードシステムズ)

 *7-Eleven, Inc.においては、正確な数値を算出する準備を進めています。

 

 また、パリ協定における「1.5℃目標」という世界が目指す姿に向け、当社グループの店舗運営に伴うCO₂排出量を、2013年比で2030年に50%削減、2050年には実質ゼロにすることを定めており、Scope3を含めたサプライチェーン全体でのCO₂排出量についても削減を目指しております。

 

●店舗運営に伴うCO₂排出量(Scope1、Scope2) 実績

・2022年度 2,684千t-CO₂(前年度と比較して6.8%の削減)

*株式会社セブン‐イレブン・ジャパン、株式会社イトーヨーカ堂、株式会社ヨークベニマル、旧株式会社ヨーク、株式会社シェルガーデン、アイワイフーズ株式会社、株式会社赤ちゃん本舗、株式会社ロフト、株式会社セブン&アイ・フードシステムズ、7-Eleven, Inc. の10社の合計値

*2023年度CO₂排出量は2024年8月~9月に当社ウェブサイトで公開予定です。

 

●店舗運営を除いたサプライチェーン全体のCO₂排出量(Scope3) 実績

・2022年度 16,489千t-CO₂

*株式会社セブン‐イレブン・ジャパン、株式会社イトーヨーカ堂、株式会社ヨークベニマル、旧株式会社ヨーク、株式会社シェルガーデン、アイワイフーズ株式会社、株式会社赤ちゃん本舗、株式会社ロフト、株式会社セブン&アイ・フードシステムズ、株式会社セブン銀行の10社

*7-Eleven, Inc.においては、正確な数値を算出する準備を進めています。

 

(3) 人的資本・多様性

① ガバナンス

 人的資本に関するガバナンスは、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)サステナビリティ共通 ①ガバナンス」をご参照ください。

 

② 戦略

 当社グループは「お客様、お取引先、株主、地域社会、社員に信頼される、誠実な企業でありたい」という社是を掲げ、「常にお客様の立場に立って、新たな体験価値を提供することで、国内外の地域社会に貢献する」という基本姿勢をグループ全体で共有するとともに、2030年の目指すグループ像「セブン‐イレブン事業を核としたグローバル成長戦略と、テクノロジーの積極活用を通じて流通革新を主導する、『食』を中心とした世界トップクラスのリテールグループ」に向けて、経営戦略と連動した人財政策を進めております。

 当社グループにとって社是に掲げる精神は、将来、社会環境がどれほど大きく変化しても、ゆるぐことのない理念であり、この精神を企業活動の礎としながら、絶えず変化する社会・お客様のニーズを新たな流通サービス創造の機会ととらえ、「変化への対応と基本の徹底」をスローガンに、時代の変化に対応した流通サービスの創造に邁進しています。

 そしてこの創造の主体となるのが、「人財」です。商売の基本となる、品揃え、商品の品質、清潔な売場、感じの良い接客を徹底し、一人ひとりのお客様に謙虚に、感謝の気持ちを忘れずに寄り添う人財、お客様の変化や事業を取り巻く環境の変化を捉えて果敢に挑戦して革新をもたらし、様々なステークホルダーの皆様と新しい価値を共創できる人財の育成に取り組んでおります。当社グループにとって、成長力の源泉は人財であり、多様な従業員が「働きがい」と「働きやすさ」を感じられる職場と企業文化(カルチャー)を醸成し、一人ひとりが活躍できる環境をつくることで、企業としての成長を目指しています。

 

人財育成に関する取り組み

従業員エンゲージメント

 当社グループは、多様な人財にとって、働きやすく、働きがいのある職場づくり・カルチャー醸成を進めるとともに、エンゲージメントの向上に取り組んでいます。組織の状態を可視化するものとして毎年1回「従業員エンゲージメント・カルチャーサーベイ」をグループにて実施し、企業と従業員が抱えている課題を把握し、改善活動を行っています。2023年度は国内26社67,000人を対象に実施しました。個々の人財のエンゲージメントや貢献意欲を高めることが、組織の活性化を促進し、企業としての競争力強化につながると考えており、この取り組みの実効性を高めるべく、グループ各社には「エンゲージメント向上委員会」を設置しています。委員長は主に各社の人事部門責任者が務め、メンバーには多様な人財を選出しています。同委員会が中心となって、当社及びグループ各社の経営会議などへの調査結果の報告や分析・課題整理を行うとともに、エンゲージメント向上に向けた行動施策を策定し、その実行状況を定期的にモニタリングしています。エンゲージメントの向上施策として、経営陣と従業員との対話を積極的に推進するなど、各社の状況に応じて様々な施策を実施しており、優良な活動事例を共有し、グループ内の相互理解を進めることで、さらなる活動の推進に活かしています。

 

多様な人々の活躍機会拡大

 当社グループは、さまざまな背景・経験や能力を持つ多様な人財一人ひとりが、働きがいを感じながらイキイキと活躍できるよう、ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(以下、DEI)を推進しています。DEIの推進は、生産性の向上や優秀な人財の確保、更にはお客様満足度の向上やイノベーションの創出につながります。 取り組みを着実に進めるため、2012年にダイバーシティ推進プロジェクト(現在DEI推進プロジェクトに名称変更)を設置しグループ横断の施策方針を示して各社の活動のサポートを継続しています。また、グループ主要会社で構成するDEI推進連絡会を定期的に開催し、DEIに関する方針や各社の活動の進捗・課題を共有しており、好事例のスピーディーな水平展開を図っています。これら活動内容は、企業行動部会やCSR統括委員会にて定期的に報告しています。

 現在、DEIの取り組みにおいて特に重点に置いているのが、女性の活躍推進です。2026年2月末までに女性執行役員比率、女性管理職比率(課長級・係長級)を30%とするグループ目標を設定しており、取り組みを促進するために、グループ各社では、女性管理職比率や女性従業員の採用・離職・登用などに関する数値目標とアクションプランを策定。グループ各社と、グループ全体でPDCAサイクルを回すことで、目標の達成を目指しています。また、2021年から女性管理職候補者の育成を目的としたグループ横断研修「女性エンカレッジメントセミナー」を開催しています。社長をはじめとした経営陣から、経営方針・理念や応援メッセージなどを聞き、参加者同士でディスカッションする機会を提供することで、参加者の管理職への挑戦意欲が向上する効果も見られています。2022年からは女性執行役員の登用を促進するため、「女性リーダーエンパワーメントセッション」も開始しました。 このほかにも、世代間ギャップやアンコンシャスバイアスの解消を図る啓発活動も継続して実施するなど、さまざまな活動を通じて、多様な人財が活躍できる環境づくりに取り組んでいます。

 

自律的な学びの支援と能力開発

 当社グループは、中期経営計画に基づき、会社と従業員がともに成長できる組織づくり、誰もが働きやすい職場づくりを目指しています。多様な従業員が能力を発揮し、働きがいを感じながら働いていただくため、一人ひとりの従業員の能力開発と、自律的な学びの支援を推進しています。

 創業理念である「信頼と誠実」の精神の理解を深め、次世代を担う人財を育成するグループの教育施設として活用しているのが2012年に開設した「伊藤研修センター」です。同研修センターには史料室を併設しており、グループの理念や挑戦・革新の歴史を学ぶ場として活用しています。

 また、当社グループ各社においては、管理職層へのリーダーシップ・マネジメント力の向上を図る各種階層別の研修のほか、職務に応じたスキル・技能研修や自己啓発など、事業特性に応じて研修体系を整備し、パートタイマーを含めた一人ひとりの能力開発とキャリア形成に努めています。

 

社内環境整備に関する取り組み

選択肢を増やす人事制度・支援

 当社グループは多様な従業員が安心して勤務できるよう、法定水準を超えるさまざまな支援制度を運用しています。在宅/本社/その他拠点などの勤務場所に関わらず、コミュニケーションを図れるシステムの整備の推進や、従業員の働きやすさ向上のために、長時間労働の是正や休暇の取得促進に取り組んでいます。

 また、未就学児がいる従業員を対象に、年に5日間、1日単位で有給として取得できる特別休暇を付与する育児休暇制度の導入や、男性の育児休業の取得促進、子どもが生まれる従業員へのアカチャンホンポ割引チケットの提供など、家事・育児への男性の参加促進及び子育て中の従業員のサポートとなるような取り組みを、グループ横断・各社で継続的に展開しています。

 

従業員の健康増進に関する取組み

 当社グループでは、従業員の健康は生活の質を上げるだけでなく、企業が活力を増して経営の効率を高めていくものと捉え、様々な取り組みを行っています。

 健康維持・未病、健康増進に向けて、健康保険組合との共同による、定期的なウォーキングイベントの開催や、外部専門家を講師とした定期的なオンライン健康セミナーの開催、「自宅でできる子宮頸がんリスク検査」の実施等を行っています。

 また、心身ともに健康で、働きやすい職場づくりを実現するため、メンタルヘルス研修(ラインケア・セルフケア)の実施によるメンタル疾患の未然防止等に取り組んでいます。

 

DXの活用による生産性向上

 グループ各社では、店舗の生産性向上のため、デジタル技術を活かした取り組みを始めています。その一つが、AI発注による販売の予測です。AIが需要を予測し発注数を提示することで、バックルームの在庫削減や従業員の作業時間短縮を実現し、現場での働きやすさ向上につなげています。

 

③ リスク管理

 当社グループの全社的なリスク管理体制の中に、人的資本に関するリスクも含まれています。

リスク管理の詳細は、後記「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

④ 指標及び目標

当社グループでは上記に記載した、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難です。このため、次の指標に関する実績及び目標は、提出会社と一部の連結子会社を含むものを記載しています。

(a) 女性執行役員比率・女性管理職比率

指標

実績

目標

女性執行役員比率※1

20.0%

30%

課長級※2

27.3%

30%

係長級※2

35.3%

30%

※1 2024年3月現在、グループ4社(株式会社セブン&アイ・ホールディングス、株式会社セブン‐イレブン・ジャパン、株式会社イトーヨーカ堂、株式会社ヨークベニマル)合計

※2 2023年度末現在、グループ8社(株式会社セブン&アイ・ホールディングス、株式会社セブン‐イレブン・ジャパン、株式会社イトーヨーカ堂、株式会社ヨークベニマル、株式会社ロフト、株式会社赤ちゃん本舗、株式会社セブン&アイ・フードシステムズ、株式会社セブン銀行)合計

 

(b) 育児休業取得率

指標

実績

男性育児休業取得率

47.5%

※ 2023年度実績、グループ8社(株式会社セブン&アイ・ホールディングス、株式会社セブン‐イレブン・ジャパン、株式会社イトーヨーカ堂、株式会社ヨークベニマル、株式会社ロフト、株式会社赤ちゃん本舗、株式会社セブン&アイ・フードシステムズ、株式会社セブン銀行)合計

 

3【事業等のリスク】

 当社は、成長戦略の達成などを通じ企業価値を向上させ、当社グループの持続的発展を図るため、実効性を伴う効果的な手法に基づいて各種リスクの適切な管理に取り組んでいます。この取り組みにより認識されたリスクのうち、リスクが顕在化する可能性の程度や時期及び影響の程度を踏まえて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主要なリスクを以下に記載しています。ただし、これらは、当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見しがたいリスクも存在します。また、これらのリスクはそれぞれ独立したものではなく、ある事象の発生により、他の様々なリスクが増大する可能性があります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものです。

 

<グループリスク管理体制>

当社グループは、当社及び当社グループ各社において、リスクマネジメント委員会等の会議体を設置しています。リスクマネジメント委員会は、原則半期に1回開催され、各リスク管理統括部署より自社のリスク管理状況に関する報告を受け、リスクの網羅的な把握、その評価・分析及び対策について協議し、今後の方向性を定めています。

一方、各種リスクについては、当社リスク管理統括部署を主体とするグループ横断の会議体等を通じて、該当するリスクに係る対応の方向性や各社のリスク低減の取り組み、更にリスクが顕在化する兆候を示す社内外の各種事例等の共有を図っています。

 

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<リスク管理のPDCA>

当社グループでは、グループ内外の情報をもとに、「網羅的なリスクの洗い出し」「リスクの評価と改善策の立案」「優先順位付け」「改善活動とモニタリング」を実施しています。

また各社監査室は、定期的な内部監査を通じ、独立した立場で、リスク管理が効果的に実施されていることを検証し、各部署に対し、必要に応じてリスク管理向上のための助言を行っています。

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<グループ成長戦略とリスク状況>

当社グループは、中期経営計画(2021-2025年)において、「食」の強みを軸とするグループ成長戦略を策定しています。これらの成長戦略を支える基盤として全社的なリスク管理を推進し、その一環として、成長戦略との関連性を評価しています。以下に、成長戦略を構成する主要事業に関連するリスク状況を記載します。

 

① 北米コンビニエンスストア事業

7-Eleven, Inc.は、北米コンビニエンスストア事業を拡大するために、オリジナル商品の強化、デジタル化とデリバリー事業の加速、7-Eleven, Inc.とSpeedwayの統合シナジーの創出、M&Aと新規出店を推進しています。

オリジナル商品の開発では、専用工場の調理製造能力の向上を目的とした設備の近代化を進め、オリジナル商品のバリューチェーンを強化し、品質と品揃えの向上を目指していますが、物流の混乱や食品安全の問題、ファスト・フードチェーン等との競争などの問題が、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

デジタル化とデリバリー事業では、リアル店舗とデジタル・Eコマースプラットフォームのスピードと利便性を組み合わせる「7Rewards(ロイヤルティプログラム)」を通じて新たな体験価値と利便性を提供し、また、DXを活用したデリバリーサービス「7NOW」についても推進していますが、情報セキュリティ問題の発生や、お客様のニーズに応えられない場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

7-Eleven, Inc.とSpeedwayの統合は、補完的な店舗基盤や店舗提供、戦略的な機会など様々なメリットをもたらすと期待しています。事業環境の変化や競争状況の変化により、成長機会やシナジー効果が実現しない場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、ガソリン販売事業については、価格変動や環境法規制、電気自動車等の普及などにより、ガソリン需要が縮小する可能性があります。

北米コンビニエンスストア事業では、M&Aや新規出店による継続的な事業成長を目指していますが、競争の激化や環境法規制の変更、人財確保の難航化、訴訟、治安問題、気候変動・災害影響などが、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

② グローバルコンビニエンスストア事業

7-Eleven International LLCは、7-Eleven, Inc.及び株式会社セブン‐イレブン・ジャパンとの連携を強化し、2025年までに日本と北米を除く地域で5万店舗、2030年までには全世界で30の国と地域に店舗を展開することを目指しています。これは、新規国の開拓だけでなく、戦略的投融資を通じて、海外市場での事業成長性を引き出すことで利益の拡大を図ります。また、新たな市場への進出を図るために、良好な市場を特定し、信頼できるパートナーと協力してブランド価値を向上させ、グローバル成長戦略を加速していきます。しかしながら、海外でのライセンシー展開には、政治的・社会的不安定、為替・貿易等の経済変動、環境やデータ保護をはじめとする法規制の変更・強化などが想定されます。これらの要因により、当社の成長力が制限され、当初想定した効果や利益が実現されない場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 国内コンビニエンスストア事業

株式会社セブン‐イレブン・ジャパンは、「セブンプレミアム」を中心とした「食」領域の強化、社会構造や消費形態の変化に対応した新たな店舗形態の実現、店舗による商品・サービスを基盤とした新規ビジネスの強化により、事業競争力の一層の強化と利益成長を加速させています。

コンビニエンスストア事業と当社グループの食品事業で培ってきた知見やネットワークを融合し、株式会社イトーヨーカ堂が育ててきたブランドである「顔が見える野菜。」「冷凍食品EASE UP」や、「セブンプレミアム」、新ブランドの「セブン・ザ・プライス」の拡充などにより品揃えを強化するとともに、生鮮品や冷凍食品、新しいカテゴリーの品揃えの充実が可能な新しいコンセプトの店舗フォーマットを作り、変動する社会の中においても更なる食のニーズに対応していきます。また、デリバリーサービス「7NOW」や、リテールメディアの活用による広告ビジネスへの参入など、新規ビジネスの強化を進めています。

しかしながら、お客様のニーズは絶えず変化しており、新たな価値を提供できなかった場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ スーパーストア事業

スーパーストア事業について、株式会社イトーヨーカ堂では、グループ戦略の軸である「食」にフォーカスするべく、自主開発のアパレル事業からの完全撤退、首都圏へのフォーカス加速、首都圏事業の統合再編、プロセスセンターをはじめとする戦略投資インフラの整備と活用により、更なる利益成長が可能な収益構造の実現を目指しています。これらの施策については、外部変革エキスパートの起用により工程管理と完全実行を進めています。

ネットスーパー事業については、大型センター化による事業規模拡大、専用アプリを活用したお客様接点の拡充と買物体験の向上、店頭受取や店内ロッカー等の受取方法の多様化に挑戦し、お客様のライフスタイルや価値観に対応した新たな価値の提供を図っています。

しかしながら、スーパーストア事業の構造改革が計画どおりに進まない場合や、ネットスーパー事業が現在の競争力を維持できない場合、当初想定した効果が得られず、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 金融関連事業

金融関連事業について、ATMプラットフォーム事業の拡大と電子マネー事業及びクレジットカード事業に引き続き注力しています。また、当社グループの共通IDである「7iD」を基軸とした金融商品・サービスの開発・展開を通じて、小売・金融一体の事業構造改革を推進しています。金融・決済関連システムのセキュリティと情報管理には十分な対策を講じていますが、外部攻撃の多様化や内部の人為ミス、業務委託先の管理不備などによる情報流出や改ざんのリスクは完全には回避できるものではなく、被害の規模によっては、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

当社グループは、上記成長戦略を支える施策として、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しています。特に、お客様との接点を広げるためのグループ共通のIDである「7iD」を基軸に、品揃えの最適化や便利な買物体験の提供を通じ、更には金融戦略とも連携しながら、お客様のライフタイムバリュー向上につなげていきます。当社グループのお客様、ひいてはグループ全社を守るDX施策として、グループ共通のセキュリティ対策やグループ共通インフラの整備等に取り組みながら、運用の効率化やグループシナジーの発揮を目的とした基盤構築に向けた施策も実施しています。また、DX戦略を支える体制の更なる強化に向け、専門性の高い人財の獲得や既存人財に対するデジタルリテラシー向上施策等に継続的に努めています。しかしながら、競合他社も同様のサービスを強化しており、当社グループが競争力を維持できない場合、登録会員目標の未達や売上寄与率の低下などにより、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

なお、戦略委員会において、これらのグループ重点戦略に関する進捗状況のモニタリング、及び戦略実現のための最適なグループ事業構造・戦略的選択肢(IPO・スピンオフ等)に関する包括的かつ客観的な分析・検証を継続的に実施し、これらの検証結果をもとに、当社グループの中長期的な企業価値・株主価値の最大化を目的とした提言を取締役会に対して行っています。

 

<リスク評価プロセス>

当社グループの内部環境の変化に加え、地政学リスクやESG関連リスクの高まりといった世界的な潮流の変化や、消費者の価値観の変化、ネット通販の拡大など事業環境の様々な変化をとらえる必要があります。特に近年では、先行き不透明な国際情勢など、企業活動を取り巻く環境の不確実性を高める要因が増大しています。

このような環境下において、これまでのリスク管理で主に対象としていた内部環境・短期的視点のリスクだけでなく、外部環境・中長期的視点のリスクを加え、内外環境変化に対応できるようリスク分類を整備・拡充しました。更に、リスクが顕在化した場合の業績に与える影響度の評価観点として、これまでの定量的な要素に、事業継続や当社グループのブランドイメージの毀損などの定性的な要素を追加することで、各種リスクの評価・分析の多角化・高度化を図っています。

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また、各種リスクを主に重要性、共通性、顕在性、効率性の観点で総合的に判断の上、4つのリスククラスに分け、それぞれのリスククラスに応じて当社と当社グループ各社における役割と責任を明確化し、各種リスクの改善活動をその主体者が実施することで、グループ全体のリスク管理の実効性を高めています。

 

リスククラス

定義

役割・責任

改善活動

モニタリング

経営視点リスク

中長期的に当社グループへの影響度が高く、かつグループ全体で統一した考え方で対応すべき性質を持つリスク

当社

当社

グループ横断リスク

グループ全体に共通し、かつリスクが相対的に高く、効率性の観点から横断的に対応すべき性質を持つリスク

当社

当社

当社モニタリング対象リスク

リスクが相対的に高く、当社グループ各社で個別に対応すべき性質を持つリスク

各社

当社

各社PDCA対象リスク

上記以外の、当社グループ各社で個別に対応すべき性質を持つリスク

各社

各社

 

<当社グループの主要なリスク>

各種リスクの評価・分析の結果、当社グループの成長戦略、業績及び財務状況に影響を及ぼすことが想定される重要なリスク事象は以下のとおりです。

 

1. 中長期視点リスク(経営視点リスク)

中長期的に想定される外部環境の変化事象を抽出し、当社グループの成長戦略や重点課題、事業内容、ステークホルダー等の関連性に基づいて評価の上、将来発生した際に当社グループの成長戦略や持続可能性に中長期的な影響を与える変化事象を経営視点リスク(エマージングリスク)に該当する事象として特定しています。各種リスクについては、当社のリスクオーナー(主管部署)を選定の上、想定シナリオ及び対策の検討を進めています。また、これらの変化事象の推移を定期的にモニタリングし、随時更新と対策の見直しを行います。

想定するシナリオの発現をモニタリングすることで、リスクの発生を早期に検知し、リスク対策への迅速な着手と当社グループへの影響の抑制を図ります。なお、リスク対策については、当社グループの成長戦略や重点課題等を考慮に入れた経営レベルでの判断(リスクテイク/リスクヘッジ)を行っていきます。

現時点で特定している経営視点リスク(変化事象)は下表のとおりです。

 

CVS事業:コンビニエンスストア事業、SST事業:スーパーストア事業

分類

経営視点リスク

(変化事象)

想定リスクシナリオ

関連性の高い事業

北米CVS事業

グロ|バルCVS事業

国内CVS事業

SST事業

金融関連事業

1

政治

政治変化、混乱、

機能不全

出店している国において、政権交代や政策転換に伴い法規制の変更や強化が行われることで、営業許可や税制、関税、為替レートなどに影響を及ぼす可能性があります。また、政治の混乱や機能不全、経済危機などにより社会的な不安定が生じ、市場の需要や競争環境が変化する可能性があります。

2

紛争等による安全保障の崩壊

出店している国において、紛争の発生や、テロ、暴動、誘拐などの犯罪に巻き込まれることで、お客様や従業員等の安全や健康が脅かされる可能性があります。また、店舗や物流施設、商品供給網、商品在庫などの資産が破壊、略奪されることで、事業の継続や回復が困難になる可能性があります。

3

経済

ガソリン需要の

低下

ガソリン車の販売規制や電気自動車(EV)等への移行が進む各国において、将来的にガソリン販売から得られる収益が減少し、給油所が併設された店舗への来客数も減少する可能性があります。これに伴い、事業の見直しが必要となり、関連法規制への対応やEV充電設備等の増設などにかかるコストが発生する可能性があります。

 

 

 

4

社会

食料危機

パンデミック、気候変動に関連した異常気象、暴力的な紛争など、多岐にわたる原因により、世界全体又は特定の地域で原材料の供給が不足し、商品の安定的な供給が困難になる可能性があります。

 

5

人財/人手の不足

パンデミック、賃金インフレーション、労働争議、人口動態の変化などにより、人財/人手の確保に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

6

人権尊重に対する要請の高まり

あらゆるステークホルダーの人権尊重に対する適切な対応ができない場合、消費者や社会からの反発を招き、商品の供給やサービスを停止せざるを得ない状況に陥る可能性があります。

7

技術

物流・店舗運営の生産性を向上させる技術革新(AI含む)の加速

自動運転や店舗の無人化など、様々な技術が年々進化しています。これら新しい技術の導入により、業務の合理化や効率化が進む一方で、法規制の遵守、事業運営の変更への対応、設備投資に係るコスト増加などが発生する可能性があります。

 

8

環境

脱炭素化の加速

当社グループにおける脱炭素化の取り組みが進まなかった場合、事業運営に必要なエネルギーの調達に関するコスト、税金や排出権取引等の負担が増加する可能性があります。更に、消費者や社会からの信頼や評価を失い、事業収益に影響を及ぼす可能性があります。

9

食のサプライチェーンにおける環境負荷低減の要請の高まり

食のサプライチェーン全体を通じた環境負荷低減の取り組みが進まなかった場合、生産方法や配送手段、容器包装素材などの変更に伴うコストの負担が増加する可能性があります。更に、消費者や社会からの信頼や評価を失い、事業収益に影響を及ぼす可能性があります。

 

10

食品ロス削減の

要請の高まり

食品の需要予測や在庫管理が十分に機能しなかった場合、食品ロス削減の取り組みが進まないことによる廃棄・返品に係るコスト増加や環境負荷増大が発生する可能性があります。更に、消費者や社会からの信頼や評価を失い、事業収益に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

上記の経営視点リスク(変化事象)の一部については、リスクオーナー(主管部署)を選定の上、各種取り組みを推進しています。

以下に取り組み内容の事例を記載します。

 

「6 人権尊重に対する要請の高まり」の主な取り組み事例(リスクオーナー:人権推進プロジェクト)

・人権方針の策定及び推進

・人権デュー・ディリジェンスの実施

・人権への影響評価(人権リスクの特定及び人権リスクマップの作成)

・予防是正措置の実施(従業員への教育研修、お取引先様への周知活動、社内環境・制度の整備)

・モニタリングの実施(従業員エンゲージメント調査、お取引先様アンケート、グループオリジナル商品の製造工場へのCSR監査)

・グリーバンスメカニズムの構築と救済措置(グループ共通の「従業員ヘルプライン」「お取引先専用ヘルプライン」「監査役ホットライン」)

 

 

「8 脱炭素化の加速」の主な取り組み事例(リスクオーナー:サステナビリティ推進部)

・従業員による省エネの推進(グループ横断の「省エネコンテスト」開催など)

・店舗における省エネ・創エネ設備の導入促進(大規模太陽光発電の導入など)

・「再エネ100%」店舗運営の実証実験など

 

「10 食品ロス削減の要請の高まり」の主な取り組み事例(リスクオーナー:サステナビリティ推進部)

・サプライチェーン全体での取り組み

・食品廃棄物削減に向けた各社の取り組み(「エシカルプロジェクト」の推進、フードバンク団体への寄付など)

・環境循環型農業の取り組み(株式会社セブンファームの設立)など

 

2. 短期視点リスク

 当社及び当社グループ各社が洗い出した各種リスクのうち、影響度や発生可能性等を考慮し、総合的な判断により、当社が管理すべき重要なリスク事象を選定し、各種リスクの状況やリスク対策の実行を定期的にモニタリングしています。

 重要なリスク事象のうち、当社グループの成長戦略への影響が大きく、その共通性、顕在性、効率性の観点から横断的に対応すべき性質を持つ「グループ横断リスク」を下表のとおり選定しました。

 

リスク内容

影響度

発生可能性

食品の品質表示、衛生管理に関するリスク

ソーシャルメディア炎上リスク、危機管理広報に関するリスク

地震・津波・噴火に関するリスク

サイバーセキュリティに関するリスク

反社会的勢力対応に関するリスク

 

 グループ横断リスクのほか、当社が主体的に管理する重要なリスク事象の主なものを以下に記載しています。

 

① グループ経営リスク

主なリスクの内容

リスククラス

グループ経営戦略・成長戦略に関するリスク

当社モニタリング対象リスク

想定リスクシナリオ

当社グループは、2023年3月公表のグループ戦略の再評価を踏まえて、2030年に目指すグループ像を「セブン‐イレブン事業を核としたグローバル成長戦略と、テクノロジーの積極活用を通じて流通革新を主導する、「食」を中心とした世界トップクラスのリテールグループ」 としています。その達成に向けた各種施策を遂行する過程において、不適当な経営資源の配分、当初想定した「食」の強みの毀損、「食」に関するシナジー効果の低下、国内外コンビニエンスストア事業戦略の停滞、スーパーストア事業変革プログラム効果の低下等が発生し、当社グループ各社における予算の未達、ひいては連結財務諸表への影響から中期経営計画の未達により株価の大幅な低下につながり、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

対策

・グループガバナンスの見直しによるグループ経営体制の安定化とモニタリング機能の強化

‐各事業セグメントに統括責任役員を配置、コーポレート部門へCxO(Chief x Officer)制度の導入

‐独立社外取締役が過半数を占める取締役会におけるグループ重点戦略の進捗モニタリング

‐独立社外取締役のみで構成される戦略委員会におけるグループ重点戦略の進捗モニタリング

 

主なリスクの内容

リスククラス

M&A、売却或いは業務提携の失敗に関するリスク(投資回収)

当社モニタリング対象リスク

想定リスクシナリオ

当社グループでは、事業の拡大のため、M&A等の戦略的投資を行っています。買収時におけるデュー・ディリジェンスの不足等により、PMI(Post Merger Integration)がうまく進まず、又は当初想定したシナジー効果を実現できず、減損損失が発生する可能性があります。また、これらに起因して、企業価値の低下や、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

対策

・買収時におけるデュー・ディリジェンスの確実な実施

・統合プロセスの定期的なモニタリング

 

 

 

主なリスクの内容

リスククラス

M&Aに関するリスク(買収防衛)

当社モニタリング対象リスク

想定リスクシナリオ

当社に対する敵対的TOB(公開株式買付)が成立した場合、新たな株主や経営陣の支配下で企業の戦略方針や企業文化が変更となり、経営陣や幹部が変更されることで従業員の不安・不満を引き起こし、業務プロセス・ITシステムの統合に多大な負荷と様々な問題が生じる可能性があります。また、これらに起因して、企業価値の低下や、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

対策

・業績の更なる向上やコーポレート・ガバナンスの強化等を通じたグループ企業価値の最大化

・「財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針」「買収防衛策」の策定

 

② 事業リスク

主なリスクの内容

リスククラス

ビジネスモデルに関するリスク

当社モニタリング対象リスク

想定リスクシナリオ

当社グループは、日本及び米国において主要な事業を行うほか、世界各地で事業を展開しています。地域の特性を重視した商品開発と品揃えを強化し、お客様のニーズに的確に対応するべく、販売戦略に基づいて様々な分野のお取引先様と共同で商品開発を行うほか、各社アプリ等を通じて様々なデータの収集・分析を行い、販促活動等を効果的に行っていますが、日本、米国及び事業を展開している国又は地域の景気や個人消費の動向などの経済状態の悪化や、お客様や市場のニーズに合わせた商品やサービスを提供できないことにより、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

対策

・独立社外取締役が過半数を占める取締役会における主要事業会社の経営状況モニタリング

・独立社外取締役のみで構成される戦略委員会における市場のモニタリング、グループ戦略再評価、グループ重点戦略の進捗モニタリング

 

③ 品質リスク

主なリスクの内容

リスククラス

食品の品質表示、衛生管理に関するリスク

グループ横断リスク

想定リスクシナリオ

当社グループでは、関係法令の規制に基づき、お客様に安全かつ安心な商品を提供し、正確な情報を伝えるよう努めており、また、「セブンプレミアム」やグループ各社のオリジナル商品を更に拡大して、新しい価値、上質の商品やサービスをお客様に提供し続けることに挑戦していますが、食品表示法違反や食品衛生管理の不備に関する事象などの重大な事故等が発生した場合には、当社グループの商品に対する信頼の低下、お客様への補償、商品回収等の対応コストの発生等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

対策

・お取引先様との共同による品質管理向上の取り組み、表示ミスや衛生管理不備等の重大事故対策を実施

・店舗の表示ミスや衛生管理不備を防止するための教育及び対策設備導入の推進

・HACCP研修、サプライヤー監査研修、各種e-ラーニング等の従業員教育・研修

 

 

④ サプライチェーンリスク

主なリスクの内容

リスククラス

安定供給の阻害に関するリスク(オペレーション要因)

当社モニタリング対象リスク

想定リスクシナリオ

当社グループの事業活動にとって、十分な品質の商品・原材料等を適時に必要なだけ調達することが不可欠であり、特定の地域・お取引先様・製品・技術等に大きく依存しないよう、その分散化を図っています。特に、気温上昇や降水・気象パターンの変化等の気候変動により、今後中長期的に農畜水産物の収量の減少や品質の低下、農産品の栽培適地や漁場の変化が生じる可能性があります。これら変化への対応として分散調達と一次生産者との収穫量向上に向けた協働等に努めていますが、気温上昇や気象パターンの変化等の気候変動などに伴う工場生産停止等により、仕入ルートの一部が寸断する可能性があります。また、物流における配送委託業者における燃料費高騰や人財不足により、サプライチェーンが寸断される可能性があります。将来的には、商品製造段階における電力をはじめとするエネルギー価格が、気候変動に伴う規制・政策・紛争などにより高騰した場合にも仕入価格が影響を被る可能性もあります。これらは、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

対策

・設備・機器の定期メンテナンスと部品の確保、代替機の手配などの生産設備の維持管理

・市場動向のモニタリング、価格改定や高値入商品の開発、固定原価での原料調達など

・お取引先様の信用情報や資金繰りのモニタリング、特定の調達先に依存しないリスク分散

・物流コストの効率改善や配送委託業者との連携による配送の安定化

 

⑤ 開示・ブランドリスク

主なリスクの内容

リスククラス

ソーシャルメディア炎上リスク、危機管理広報に関するリスク

グループ横断リスク

想定リスクシナリオ

お客様や従業員の不適切な行動や、未公表情報のSNS投稿に批判が殺到し、各種マスメディアを通じて拡散することで、当社グループの企業イメージが毀損する可能性があります。また、適切な情報開示の遅れや失敗により、当社グループの事業運営に大きな影響を及ぼす可能性があります。

対策

・SNSに対する従業員教育、危機意識強化(e-ラーニング、SNSリスク関連情報の定期発信)

・リスク管理担当者、広報担当者、SNS運用担当者向けのリスク対策研修の実施

・外部専門会社を活用した、SNS・マスメディアの情報収集・早期検知・分析・調査・評価を実行する体制整備

・危機管理広報マニュアルの整備と周知

・当社及び当社グループ各社の連携体制強化(情報共有、初動対応)

 

主なリスクの内容

リスククラス

コーポレート・ブランド管理に関するリスク

当社モニタリング対象リスク

想定リスクシナリオ

企業理念にそぐわないPRやマーケティング戦略、公式アカウントでの不適切な発信により、ブランドイメージが毀損する可能性があります。また、SNSでの炎上、各種マスメディアでの取り上げにより、お客様やお取引先様からの批判が発生し、当社グループの事業運営に大きな影響を及ぼす可能性があります。

対策

・SNS運用ガイドラインの整備、チェック部門による文書審査、コンプライアンスプログラムに基づく業務適切性の検証など、未然防止の体制を整備

・SNS炎上事例及び対策を学ぶセミナー、情報発信リスク研修の開催

 

 

⑥ 人事・労務リスク

主なリスクの内容

リスククラス

労働関連法令の違反、従業員の安全・衛生に関するリスク

当社モニタリング対象リスク

想定リスクシナリオ

当社グループは、「セブン&アイグループ企業行動指針」で定める行動基準に基づいて、労働安全衛生や労働災害防止のための対策を講じるとともに、従業員が健康に働けるための仕組みの導入や支援を行っています。しかしながら、従業員の就業管理の不備により労働基準法違反(未払い残業代、年次有給休暇の未取得等)で行政処分(業務停止命令、罰金等)が発生し、また、労働安全衛生の対策不備による怪我・疾病、過重労働等による身体・精神の健康被害が発生した場合、業務運営の適切性や効率性が失われ、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

対策

・就業管理システムによる就業時間(時間外労働)、休暇取得状況の管理

・産業医による職場巡視

・安全衛生委員会による情報周知

・従業員のストレスチェック

 

⑦ 財務・経理・会計リスク

主なリスクの内容

リスククラス

金利変動・為替変動に関するリスク

当社モニタリング対象リスク

想定リスクシナリオ

当社グループは、金利・為替等の変動リスクの軽減、資金調達コストの低減、将来のキャッシュフローを最適化するために為替予約及びスワップ等のデリバティブ取引を行っていますが、金利の変動は受払利息や金融資産・負債の価値に影響を与え、当社グループの業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

海外のグループ会社の現地通貨建ての資産・負債等は、連結財務諸表作成のために円換算されます。また、当社グループの販売商品の中には、為替変動の影響を受ける海外開発商品があるため、為替相場の変動により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

対策

・為替予約及びスワップ等のデリバティブ取引

・継続的なモニタリング

 

主なリスクの内容

リスククラス

固定資産の減損に関するリスク

当社モニタリング対象リスク

想定リスクシナリオ

当社グループは、連結総資産に占める有形固定資産やのれん等の割合が高く、店舗等の収益管理を厳格に実施しています。しかしながら、今後、店舗等の収益性が悪化したり、保有資産の市場価格が著しく下落すること等により、減損処理が必要になった場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

対策

・出店審査基準の設定、定期的なモニタリング

・資産購入基準の設定、保有資産の市場価格の定期的なモニタリング

 

⑧ 法務・コンプライアンスリスク

主なリスクの内容

リスククラス

競争法(下請法又は優越的地位濫用規制違反)に関するリスク

当社モニタリング対象リスク

想定リスクシナリオ

当社グループは、日本及び米国をはじめとする世界各地で、それぞれの国・地域における公正競争に関する法規制を遵守し、事業を遂行しています。これら法規制の遵守状況をモニタリングし、必要な対応を適切に実施するべく、体制を整えていますが、代金減額や支払い遅延、従業員派遣要請などの不適切な取引行為などの下請法違反や優越的地位濫用規制違反により、公正取引に関する行政機関による指導や勧告、公表、排除措置命令、課徴金納付命令、刑罰などの措置が取られた場合、当社グループの事業活動や業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

対策

・自主点検、モニタリング、お取引先様アンケートの実施、お取引先専用ヘルプラインの設置

・e-ラーニング、公正取引に関する研修を通じた社員教育(取引ルールの遵守と従業員の意識向上)

 

 

主なリスクの内容

リスククラス

知的財産権に関するリスク

当社モニタリング対象リスク

想定リスクシナリオ

当社グループの商品やサービスが、第三者の保有する知的財産権を侵害することにより、紛争等が発生し、使用差止に伴う収益減少や損害賠償義務などが発生する可能性があります。他方で、当社グループの商品やサービスのデザイン、技術などが第三者に模倣され、当社の知的財産権が侵害されることにより、ブランドイメージの低下や市場競争力の低下などを招く可能性があります。これらは、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

対策

・新商品や新サービスの提供に際して第三者の知的財産権を調査する体制の整備

・当社の知的財産権のパトロール(侵害行為の監視活動)の実施

・知的財産教育(e-ラーニング、勉強会等の実施)

 

主なリスクの内容

リスククラス

反社会的勢力対応に関するリスク

グループ横断リスク

想定リスクシナリオ

当社グループは、「セブン&アイグループ企業行動指針」に基づいて反社会的勢力と関わりをもたないとの方針を掲げていますが、反社会的勢力との取引が明らかになった場合、関係法令に基づく公表や罰則などの制裁や行政機関からの処分、金融機関との取引停止、信頼できるお取引先様との契約解除などが発生する可能性があります。また、対処方法を誤ると、SNSやマスメディアに取り上げられることにより、グループの企業イメージが失墜する可能性があります。これらは、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

対策

・グループ共通の反社チェック、及び定期的なモニタリングの体制構築

・反社会的勢力との取引判明時の対応マニュアル策定

 

⑨ 災害・事件・事故リスク

主なリスクの内容

リスククラス

地震・津波・噴火に関するリスク

グループ横断リスク

想定リスクシナリオ

当社グループは、日本及び米国のほか、世界各地で事業を展開しています。また、ライフラインの一翼を担う小売業を中核事業とする当社グループでは、大規模地震が、特に主要な事業の店舗等が集中している大都市圏で発生し、サプライチェーンの寸断や事業活動の停止、施設の改修に係る多額の費用の発生など、当社グループの事業運営に重大な支障が生じた場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、事業活動の復旧が長期化した場合には、災害時の地域支援活動など、当社グループの社会インフラとしての役割を果たせない可能性があります。

対策

・大規模災害対策書(BCP)の周知、及びBCPに基づき人命第一で行動できる体制の構築

・従業員教育(防災e-ラーニング、研修など)

・大規模災害演習の実施(当社グループ各社との連携)

 

主なリスクの内容

リスククラス

風水害・台風・集中豪雨・竜巻・雷・豪雪に関するリスク

当社モニタリング対象リスク

想定リスクシナリオ

台風等による暴風、集中豪雨による河川の氾濫等が発生し、サプライチェーンの寸断や事業活動の停止、施設の改修に係る多額の費用の発生など、当社グループの事業運営に重大な支障が生じた場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、事業活動の復旧が長期化した場合には、災害時の地域支援活動など、当社グループの社会インフラとしての役割を果たせない可能性があります。

対策

・事前情報収集や事前対策会議の開催

・大規模災害対策(BCP)の周知、及びBCPに基づき人命第一で行動できる体制の構築

・代替拠点の整備や防水壁・止水板の設置、防災訓練の実施など

 

⑩ 情報セキュリティ・システムリスク

主なリスクの内容

リスククラス

サイバーセキュリティに関するリスク

グループ横断リスク

想定リスクシナリオ

当社グループは、小売業や金融事業をはじめとする各種事業において、お客様に新たな価値やサービスを提供するために、お客様からご提供いただいたデータや営業秘密情報などの重要情報を取り扱っています。これらの情報を守るため、サイバー攻撃を経営における重大なリスクとして位置付け、サイバーセキュリティ対策の強化に努めています。しかしながら、標的型メールやランサムウェアによる特定のターゲットへの攻撃、DDoS攻撃をはじめとするシステムに負荷をかける攻撃、テレワークやオンライン会議の脆弱性を狙う攻撃など、攻撃の手法は日々高度化・巧妙化しており、外部からのサイバー攻撃を受けて、重要情報の漏えいやデータの破壊・改ざん、お客様のアカウントの乗っ取り、システム・サービスの停止などの被害が発生し、お客様財産の損害、事業運営・サービス提供や、利用者・社会風評に著しい影響を及ぼす可能性があります。

対策

・事故対応の専門組織である7&i CSIRT(7&i Computer Security Incident Response Team)の設置

・SOC(Security Operation Center)による脅威情報の分析・対応

・外部団体と連携した攻撃情報や対策動向の共有

・情報システムのセキュリティ対策や脆弱性に関するレビュー・診断の実施

・当社グループ各社のインシデント対応担当者向けのサイバーセキュリティ教育及び訓練の実施

・サイバー攻撃に関する全従業員向けの訓練の定期実施

 

主なリスクの内容

リスククラス

システムに関するリスク

当社モニタリング対象リスク

想定リスクシナリオ

当社グループは、事業活動を遂行するために多数のシステムを保有しています。各システムの安定稼働が求められる中で、情報システムに関するリスクを、経営上重大なリスクとして位置付けて対策の強化に努めています。しかしながら、開発時の品質管理の不足、システム設定の不備、運用における人為的ミス、クラウドサービスをはじめとする外部サービスの予期せぬ停止、大規模地震や風水害などの自然災害などにより、情報システムに障害が発生して安定稼働が損なわれ、お客様財産の損害、事業運営・サービス提供や、利用者・社会風評に著しい影響を及ぼす可能性があります。

対策

・開発の各工程におけるレビューの徹底

・システム設定の不備の監視

・運用体制の整備・運用状況の監視

・外部サービスの利用可否の評価

・情報システムの冗長化

・重要設備・機器の防護

 

 

主なリスクの内容

リスククラス

個人情報に関するリスク

当社モニタリング対象リスク

想定リスクシナリオ

当社グループでは、小売業や金融事業をはじめとする各種事業において、新たな価値やサービスを提供するために、お客様やお取引先様などの個人情報を取り扱っています。個人情報管理の重要性の高まりを受けて法令に準拠した対応が求められており、個人情報に関するリスクを、経営上重大なリスクとして位置付けて対策の強化に努めています。しかしながら、内外環境の変化に対応した内部統制の整備不備、安全対策の不備、個人情報取り扱い時の人為的ミス、従業員による不正、委託先の管理監督不足などにより、個人情報の漏えい・滅失・毀損や法令違反などが発生し、お客様財産の損害、事業運営・サービス提供や、利用者・社会風評に著しい影響を及ぼす可能性があります。

対策

・「セブン&アイグループ個人情報保護方針」の策定

・個人情報保護法をはじめとする法令に準拠した手続きの整備

・ISO27001に準拠した安全対策の整備

・従業員に対する教育・訓練の実施

・委託先の管理監督の徹底

・個人情報に関する事故発生時の緊急対応体制の整備

・「7iD」をはじめとする個人情報の取扱状況の整備

 

⑪ 人権リスク

主なリスクの内容

リスククラス

人権侵害に関するリスク(従業員・お取引先様)

当社モニタリング対象リスク

想定リスクシナリオ

企業活動のグローバル化が進み、企業の人権への取り組みに対して、社会からの関心が高まっています。当社グループは、2021年10月、国際人権章典(世界人権宣言と国際人権規約)、労働における基本的原則及び権利に関する国際労働機関の宣言、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」などをもとに、「セブン&アイグループ人権方針」を定め、人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し、人権への悪影響を防止又は軽減することに努めています。また、「お取引先サステナブル行動指針」に基づいて、お取引先様の協力のもと、人権尊重の取り組みを推進しています。しかしながら、これらの方針を逸脱した行為が発生した場合には、当社グループに対するお客様及びお取引先様の信頼低下などにより、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

対策

・従業員への教育研修(e-ラーニング等)、お取引先様への周知活動

・従業員エンゲージメント調査、お取引先様アンケート、グループオリジナル商品の製造工場へのCSR監査

・内部通報制度(グループ共通の「従業員ヘルプライン」「お取引先専用ヘルプライン」「監査役ホットライン」の設置)の利用促進による人権侵害等の早期発見・是正対応

 

 

⑫ 環境リスク

主なリスクの内容

リスククラス

環境規制・環境法令対応に関するリスク

当社モニタリング対象リスク

想定リスクシナリオ

当社グループは、様々な社会環境の変化に対応し、価値ある商品やサービスの提供を通じて、お客様の豊かで便利なくらしへの貢献に努めています。一方、世界では気候変動、プラスチック問題などの様々な環境問題が顕在化しています。こうした社会の動きに対応するべく、当社グループは環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』を策定し、「脱炭素社会」「循環経済社会」「自然共生社会」を目指すべき社会の姿と定めて、取り組みを推進しています。特に喫緊の課題である気候変動に関しては、2050年のCO₂排出量ネットゼロを目指し、TCFDへの賛同と情報開示、RE100等へ参画しています。また、生物多様性の課題に対し、2023年1月にTNFDフォーラムへ参画しました。

一方で、当社グループは、エネルギー使用の削減やCO₂排出量の削減などの気候変動対策をはじめとして、食品廃棄物、プラスチック等の容器包装リサイクル、廃棄物処理などに関する様々な環境関連法令の適用を受けています。将来、これらの法規制は、例えば気候変動対策においては、温室効果ガス排出規制が強化されたり、炭素税などの新しい法規制・政策が導入される可能性があり、当社グループにとって、法令遵守に係る追加コストが生じたり、事業活動が制限される可能性があります。加えて、規制強化によって電力・ガスなどエネルギー費用が変動することで、店舗運営に係る費用が増加し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

対策

・プラスチック素材の削減と環境配慮型素材への置き換え、回収・リサイクルの推進の目標・計画の策定

・食品ロス・食品リサイクル対策として、店舗における発生抑制を第一優先に、発生させてしまった食品廃棄物についてはサーキュラエコノミーを意識した取り組みの推進

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の概要

① 経営成績

当連結会計年度における国内経済は、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが「5類感染症」に移行する等、行動制限の緩和が一層進み、経済活動の正常化が見られた一方、エネルギーコストや原材料価格の高騰に伴う物価上昇等により、個人消費の持ち直しに足踏みが見られました。また、為替変動による影響に加え、世界的な金融引締めによる景気への影響が懸念されるなど、先行き不透明な状況が続きました。

北米経済は、雇用の回復は続いたものの、インフレの進行や金融引締めの影響等による景気減速懸念が高まりました。個人消費については、中低所得者層における個人貯蓄の減少等による縮小が続きました。

このような環境の中、当社グループは「セブン‐イレブン事業を核としたグローバル成長戦略と、テクノロジーの積極活用を通じて流通革新を主導する、『食』を中心とした世界トップクラスのリテールグループ」を目指し、アップデートした中期経営計画(2023年3月9日公表)における各事業戦略及びグループ戦略を推進しております。

これらの結果、当連結会計年度における当社の連結業績は以下のとおりとなりました。

なお、2023年2月期より収益認識会計基準等を適用しております。

(連結業績)

 

 

(単位:百万円)

 

2023年2月期

2024年2月期

 

前年同期比

 

前年同期比

営業収益

11,811,303

135.0%

11,471,753

97.1%

営業利益

506,521

130.7%

534,248

105.5%

経常利益

475,887

132.7%

507,086

106.6%

親会社株主に帰属する当期純利益

280,976

133.3%

224,623

79.9%

 

(中期経営計画2021-2025 主な連結財務指標)

(単位:百万円)

 

2023年2月期

2024年2月期

 

前年同期比

 

前年同期比

EBITDA

995,319

132.4%

1,054,951

106.0%

営業キャッシュ・フロー(除く金融)

832,804

132.0%

778,398

93.5%

フリーキャッシュ・フロー水準(除く金融)

474,055

169.5%

391,694

82.6%

ROE(%)

8.7

6.2

ROIC(除く金融)(%)

5.2

4.1

Debt/EBITDA倍率(倍)

3.0

2.6

1株当たり当期純利益(EPS)(円)

106.05

133.3%

84.88

80.0%

 

為替レート(損益計算書)

U.S.$1=131.62円

U.S.$1=140.67円

1元=19.50円

1元=19.82円

為替レート(貸借対照表)

U.S.$1=132.70円

U.S.$1=141.83円

1元=19.01円

1元=19.93円

(注)1 営業キャッシュ・フロー(除く金融)は、金融事業を除くNOPATをベースとした管理会計数値。

2 フリーキャッシュ・フロー水準(除く金融)は、金融事業を除く管理会計ベース数値。

なお、M&Aは戦略投資として投資キャッシュ・フローからは除外して算出。

3 ROIC(除く金融)は、{純利益+支払利息×(1-実効税率)}/{自己資本+有利子負債(ともに期首期末平均)}にて算出。

4 当社は、2024年3月1日付で普通株式1株を3株に株式分割しております。前連結会計年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定して、「1株当たり当期純利益」を算定しております。

なお、株式会社セブン‐イレブン・ジャパン、株式会社セブン‐イレブン・沖縄及び7-Eleven, Inc.における加盟店売上を含めた「グループ売上」は、17,789,927百万円(前年同期比99.7%)となりました。また、当連結会計年度における為替レート変動に伴い、営業収益は5,480億円、営業利益は192億円増加しております。

 

当連結会計年度における事業部門別の営業概況は以下のとおりです。

なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比の数値につきましては、変更後のセグメント区分に組み替えた数値を記載しております。

 

 

(セグメント別営業収益)

 

 

(単位:百万円)

 

2023年2月期

2024年2月期

 

前年同期比

 

前年同期比

国内コンビニエンスストア事業

890,293

102.0%

921,706

103.5%

海外コンビニエンスストア事業

8,846,163

170.3%

8,516,939

96.3%

スーパーストア事業

1,449,165

80.0%

1,477,384

101.9%

金融関連事業

194,295

99.9%

207,479

106.8%

その他の事業

488,304

66.8%

411,305

84.2%

11,868,223

134.8%

11,534,814

97.2%

調整額(消去及び全社)

△56,920

△63,060

合 計

11,811,303

135.0%

11,471,753

97.1%

 

(セグメント別営業利益)

 

 

(単位:百万円)

 

2023年2月期

2024年2月期

 

前年同期比

 

前年同期比

国内コンビニエンスストア事業

232,033

103.9%

250,544

108.0%

海外コンビニエンスストア事業

289,703

181.2%

301,628

104.1%

スーパーストア事業

12,395

65.2%

13,588

109.6%

金融関連事業

37,140

98.9%

38,172

102.8%

その他の事業

2,593

2,688

103.6%

573,865

133.1%

606,622

105.7%

調整額(消去及び全社)

△67,344

△72,373

合 計

506,521

130.7%

534,248

105.5%

 

(a)国内コンビニエンスストア事業

国内コンビニエンスストア事業における営業収益は921,706百万円(前年同期比103.5%)、営業利益は250,544百万円(同108.0%)となりました。

株式会社セブン‐イレブン・ジャパンは、高齢化や単身世帯・働く女性の増加に加え、コロナ禍を通じて顕在化したお客様の変化への対応に引き続き注力すべく、「ファスト・フード等のオリジナル商品やセブンプレミアムの開発強化」「取り扱いアイテム数増加を図るための売場レイアウトの変更」「イベント感を演出する販売促進」等の取り組みを実施してまいりました。

また、デリバリーサービス「7NOW」については全国展開に向けた取扱店舗拡大及び体制構築等の取り組み強化に加え、2023年9月5日より「7NOWアプリ」を開始いたしました。

加えて、急速な環境変化の中で大きく変化するお客様の消費行動や生活に対する価値観、幅広いニーズに対応するべく、新コンセプト店舗「SIP(注)ストア」を2024年2月29日にオープンしました。

当連結会計年度は、各地でのイベント等の再開による人流回復や好天に恵まれたことに加え、地域やメニュー等のテーマを設定し様々な商品を取り揃えるフェアの積極展開やアプリを活用した販促等の各種施策が奏功したこと等により既存店売上は前年を上回り、営業利益は251,029百万円(同107.8%)となりました。また、自営店と加盟店の売上を合計したチェーン全店売上は5,345,243百万円(同103.8%)となりました。

(注) 株式会社セブン‐イレブン・ジャパン(SEJ)と株式会社イトーヨーカ堂(IY)のパートナーシップ

(通称SIP)

(b)海外コンビニエンスストア事業

海外コンビニエンスストア事業における営業収益は8,516,939百万円(前年同期比96.3%)、営業利益は301,628百万円(同104.1%)となりました。

北米の7-Eleven, Inc.は、引き続きインフレの進行と金融引締めに伴う景気減速の懸念に加え、COVID期間中の景気刺激策の終了により個人消費環境が厳しい状況にはあるものの、バリューを求めるお客様のニーズに対応し、品質及び収益性の高いオリジナル商品(フレッシュフード、専用飲料、プライベートブランド商品)の開発と販売の強化、デリバリーサービス「7NOW」の取り組み強化、デジタル技術の活用による顧客ロイヤリティの向上に努めてまいりました。また、北米におけるバリューチェーン構築による高品質なフレッシュフードの開発強化の一環として、2023年9月11日にヴァージニア工場が稼働いたしました。なお、2021年5月に取得したSpeedway事業との統合に関するプロセスは順調に進捗し、当連結会計年度では統合以来の累計で976.5百万米ドルのシナジー発現と、目標としていた800百万米ドルを達成しました。

当連結会計年度のドルベースの米国内既存店商品売上は前年を上回りました。また、自営店と加盟店の売上を合計したチェーン全店売上は、商品売上が伸長したものの、ガソリンの価格下落と販売量の減少により、10,200,414百万円(同97.7%)となりました。一方、商品荒利率の改善及び円安の影響等により、営業利益は413,966百万円(同104.4%)となりました。

また、北米市場におけるさらなる成長加速に向けて、2024年1月に米国Sunoco LP社からのコンビニエンスストア事業及びガソリン小売事業の一部の買収を公表しました。

7-Eleven International LLCでは、2025年度までに日本及び北米を除く地域で5万店の店舗網の確立、2030年度までに日本・北米を含めた全世界で30の国と地域での店舗出店を目指す方針の下、既存展開国と新規展開国の両輪で成長戦略を推し進めてまいります。既存展開国については、2023年2月に7-Eleven International LLCによるベトナム事業に対する投融資を決定、同年11月にはオーストラリアのConvenience Group Holdings Pty Ltd (SEA)の買収を公表し、2024年4月1日付にて同社の全株式を取得しました。 また、新規展開国については、2023年1月にイスラエル、9月にはラオスに出店し、これにより世界におけるセブン‐イレブンの展開エリアは20の国と地域になりました。

(c)スーパーストア事業

スーパーストア事業における営業収益は1,477,384百万円(前年同期比101.9%)、営業利益は13,588百万円(同109.6%)となりました。

株式会社イトーヨーカ堂は、収益性改善に向けた抜本的変革と成長施策の実行を進めております。その一環として、2023年9月1日付で株式会社イトーヨーカ堂を存続会社とし株式会社ヨークを消滅会社とする吸収合併を完了しました。両社のシナジー及び運営効率を最大化することで、販売力の強化とともに販管費削減や生産性改善に取り組んでおります。加えて、プロセスセンターやセントラルキッチン、ネットスーパーなどの戦略投資インフラが稼働いたしました。また、店舗網の首都圏へのフォーカス加速の一環として、2024年2月に北海道・東北・信越エリアの一部店舗について、株式会社ヨークベニマル、株式会社ダイイチ及び株式会社OICグループと事業承継等に関する契約を締結いたしました。

当連結会計年度は、株式会社ヨークとの合併に伴い売上高は前年を上回りましたが 、戦略投資インフラ整備に伴うコスト増加等により、1,205百万円の営業損失(前年同期は408百万円の営業利益)となりました。

株式会社ヨークベニマルにおいては、「地域のお客様の日常の食卓をより楽しく豊かに便利にする」というコンセプトの実現に向けて、既存店の活性化、デリカテッセン等の開発及び販売強化の取り組みを進めてまいります。

当連結会計年度では人流回復に加え、原材料価格高騰への適切な値上げ対応及び販売促進施策が奏功し、既存店売上は前年を上回りました。この結果、新店関連費用や人件費等の販管費は増加したものの、営業利益は18,701百万円(前年同期比103.8%)となりました。

(d)金融関連事業

金融関連事業における営業収益は207,479百万円(前年同期比106.8%)、営業利益は38,172百万円(同102.8%)となりました。

株式会社セブン銀行における当連結会計年度末時点の国内ATM設置台数は27,370台(前連結会計年度末差481台増)となりました。人流回復に伴う預貯金金融機関の取引件数の回復、資金需要増による消費者金融等のノンバンク取引の増加に加え、各種キャッシュレス決済に伴うATMでの現金チャージ取引が高い水準を維持したこと等により、1日1台当たりのATM平均利用件数は104.6件(前年同期差3.5件増)となり、当連結会計年度のATM総利用件数は前年を上回りました。なお、同行における現金及び預け金は、ATM装填用現金を含めて8,771億円となりました。

また、バンキング事業・ノンバンク事業の一体運営によるシナジーを追求するため、2023年7月1日付で当社の連結子会社である株式会社セブン・フィナンシャルサービスが保有する株式会社セブン・カードサービスの全株式を株式会社セブン銀行に譲渡いたしました。

(e)その他の事業

その他の事業における営業収益は411,305百万円(前年同期比84.2%)、営業利益は2,688百万円(同103.6%)となりました。

株式会社そごう・西武の譲渡等の影響により減収となったものの、人流回復に伴い株式会社ロフトをはじめとする事業会社の業績が好調に推移したため増益となりました。

 

(f)調整額(消去及び全社)

営業損失は72,373百万円(前年同期は67,344百万円の営業損失)となりました。

業務効率化やセキュリティ強化等を目的としたグループ共通基盤システム構築に係る費用等を計上しております。また、顧客接点の拡大に向けた「7iD」会員基盤の整備や、新たな体験価値を創造するデリバリーサービス「7NOW」やネットスーパーを支えるラストワンマイルDXプラットフォームの深化を通じ、2030年の目指すグループ像を実現すべく取り組んでまいります。

② 財政状態の状況

(a)資産、負債及び純資産の状況

総資産は、前連結会計年度末に比べ41,161百万円増の10,592,117百万円となりました。

流動資産は、現金及び預金の減少等により、前連結会計年度末に比べ24,987百万円減少いたしました。

固定資産は、使用権資産の増加等により、66,273百万円増加いたしました。

負債は、長期借入金の減少等により前連結会計年度末に比べ211,301百万円減の6,691,492百万円となりました。

純資産は、為替換算調整勘定の増加等により、前連結会計年度末に比べ252,462百万円増の3,900,624百万円となりました。

(b)キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ112,293百万円減少したことにより、1,562,493百万円となりました。

営業活動によるキャッシュ・フローは、673,015百万円の収入(前年同期比72.5%)となりました。これは、税金等調整前当期純利益が277,007百万円、減価償却費が400,789百万円となりましたが、法人税等の支払額が87,527百万円となったこと等によるものであります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、431,809百万円の支出(前年同期比104.5%)となりました。これは、主に店舗の新規出店や改装などに伴う有形固定資産の取得による支出が337,439百万円となったこと等によるものであります。

財務活動によるキャッシュ・フローは、377,065百万円の支出(前年同期比139.5%)となりました。これは、社債の発行による収入が220,000百万円、長期借入れによる収入が52,700百万円となったものの、長期借入金の返済による支出が150,246百万円、社債の償還による支出が325,837百万円、配当金の支払額が106,092百万円となったこと等によるものであります。

 

(2)生産、受注及び販売の実績

①生産及び受注の実績

該当事項はありません。

 

②仕入実績

当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

仕入高(百万円)

前年同期比(%)

国内コンビニエンスストア事業

55,473

82.6

海外コンビニエンスストア事業

6,654,847

93.4

スーパーストア事業

1,021,252

101.1

金融関連事業

21,651

100.6

その他の事業

210,732

88.4

7,963,956

94.1

(注)1 当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、前年同期比較につきましては、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。

2 上記国内及び海外コンビニエンスストア事業の仕入高には、自営店仕入のみが含まれております。

3 上記仕入実績は、連結会社間の取引高を消去した金額となっております。

 

③販売実績

当連結会計年度における販売実績(営業収益のうちの売上高)をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

売上高(百万円)

前年同期比(%)

国内コンビニエンスストア事業

75,950

81.6

海外コンビニエンスストア事業

8,042,817

95.5

スーパーストア事業

1,375,653

102.0

金融関連事業

21,532

102.6

その他の事業

334,516

88.5

9,850,470

96.0

(注)1 当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、前年同期比較につきましては、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。

2 上記国内及び海外コンビニエンスストア事業の売上高には、自営店売上のみが含まれております。

3 上記販売実績は、連結会社間の取引高を消去した金額となっております。

 

   4 主要な子会社の売上状況は、次のとおりであります。

    (1)国内コンビニエンスストア事業

株式会社セブン‐イレブン・ジャパン

区分

チェーン全店売上(百万円)

前年同期比(%)

構成比(%)

加工食品

1,426,539

108.8

26.6

ファスト・フード

1,565,976

102.8

29.2

日配食品

670,366

103.8

12.5

食品計

3,662,882

105.2

68.3

非食品

1,700,049

101.0

31.7

合計

5,362,931

103.8

100.0

(注) 上記金額は収益認識会計基準等を適用する前の数値であり、消費税等は含まれておりません。チェーン全店売上は、フランチャイズ・ストア(加盟店)とトレーニング・ストア(自営店)の売上の合計金額であります。

 

    (2)海外コンビニエンスストア事業

7-Eleven, Inc.

区分

チェーン全店売上(百万円)

前年同期比(%)

構成比(%)

加工食品

1,796,980

112.3

17.6

ファスト・フード

512,280

111.7

5.0

日配食品

154,070

108.2

1.5

食品計

2,463,330

111.9

24.1

非食品

1,414,258

101.6

13.9

商品計

3,877,588

107.9

38.0

ガソリン

6,322,825

92.3

62.0

合計

10,200,414

97.7

100.0

(注) チェーン全店売上は、フランチャイズ・ストア(加盟店)とトレーニング・ストア(自営店)の売上の合計金額であります。

 

    (3)スーパーストア事業

① 株式会社イトーヨーカ堂

区分

売上高(百万円)

前年同期比(%)

構成比(%)

ライフスタイル

213,308

98.1

20.5

専門店

13,250

98.5

1.3

食品

482,006

98.6

46.3

商品計

708,566

98.5

68.0

テナント

329,571

103.9

31.7

その他

3,115

138.3

0.3

合計

1,041,253

100.2

100.0

(注)1 上記金額は収益認識会計基準等を適用する前の数値であり、消費税等は含まれておりません。

2 株式会社イトーヨーカ堂は、2023年9月1日付で株式会社ヨークを吸収合併いたしましたが、上記金額には旧株式会社ヨークの数値は含まれておりません。なお、旧株式会社ヨークの数値は以下のとおりです。

 

(参考情報)旧株式会社ヨーク

区分

売上高(百万円)

前年同期比(%)

商品計

191,404

103.7

 

 

② 株式会社ヨークベニマル

区分

売上高(百万円)

前年同期比(%)

構成比(%)

生鮮食品

173,838

103.7

34.9

加工食品

121,575

104.6

24.4

デイリー食品

103,815

106.3

20.8

デリカテッセン

61,414

105.5

12.3

食品計

460,644

104.8

92.4

衣料

10,143

99.9

2.0

住居

18,402

101.9

3.7

商品計

489,190

104.5

98.2

テナント

9,119

96.4

1.8

合計

498,309

104.4

100.0

(注) 上記金額は収益認識会計基準等を適用する前の数値であり、消費税等は含まれておりません。

 

 

(3)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 経営成績の分析

(a)営業収益及び営業利益

当連結会計年度の営業収益は、前連結会計年度に比べ339,549百万円減少の11,471,753百万円(前年同期比97.1%)、営業利益は、27,727百万円増加の534,248百万円(前年同期比105.5%)となりました。

 

  前連結会計年度

(自 2022年3月 1日

 至 2023年2月28日)

  当連結会計年度

(自 2023年3月 1日

 至 2024年2月29日)

増減額

営業収益(百万円)

 

 

 

国内コンビニエンスストア事業

890,293

921,706

31,412

海外コンビニエンスストア事業

8,846,163

8,516,939

△329,223

スーパーストア事業

1,449,165

1,477,384

28,218

金融関連事業

194,295

207,479

13,183

その他の事業

488,304

411,305

△76,998

11,868,223

11,534,814

△333,408

消去及び全社

△56,920

△63,060

△6,140

 合  計

11,811,303

11,471,753

△339,549

営業利益(百万円)

 

 

 

国内コンビニエンスストア事業

232,033

250,544

18,511

海外コンビニエンスストア事業

289,703

301,628

11,925

スーパーストア事業

12,395

13,588

1,193

金融関連事業

37,140

38,172

1,032

その他の事業

2,593

2,688

94

573,865

606,622

32,756

消去及び全社

△67,344

△72,373

△5,029

 合  計

506,521

534,248

27,727

国内コンビニエンスストア事業における営業収益は921,706百万円(前年同期比103.5%)、営業利益は250,544百万円(同108.0%)となりました。

株式会社セブン‐イレブン・ジャパンは、高齢化や単身世帯・働く女性の増加に加え、コロナ禍を通じて顕在化したお客様の変化への対応に引き続き注力すべく、「ファスト・フード等のオリジナル商品やセブンプレミアムの開発強化」「取り扱いアイテム数増加を図るための売場レイアウトの変更」「イベント感を演出する販売促進」等の取り組みを実施してまいりました。

また、デリバリーサービス「7NOW」については全国展開に向けた取扱店舗拡大及び体制構築等の取り組み強化に加え、2023年9月5日より「7NOWアプリ」を開始いたしました。

加えて、急速な環境変化の中で大きく変化するお客様の消費行動や生活に対する価値観、幅広いニーズに対応するべく、新コンセプト店舗「SIPストア」を2024年2月29日にオープンしました。

当連結会計年度は、各地でのイベント等の再開による人流回復や好天に恵まれたことに加え、地域やメニュー等のテーマを設定し様々な商品を取り揃えるフェアの積極展開やアプリを活用した販促等の各種施策が奏功したこと等により既存店売上は前年を上回り、営業利益は251,029百万円(同107.8%)となりました。また、自営店と加盟店の売上を合計したチェーン全店売上は5,345,243百万円(同103.8%)となりました。

 

 

海外コンビニエンスストア事業における営業収益は8,516,939百万円(前年同期比96.3%)、営業利益は301,628百万円(同104.1%)となりました。

北米の7-Eleven, Inc.は、引き続きインフレの進行と金融引締めに伴う景気減速の懸念に加え、COVID期間中の景気刺激策の終了により個人消費環境が厳しい状況にはあるものの、バリューを求めるお客様のニーズに対応し、品質及び収益性の高いオリジナル商品(フレッシュフード、専用飲料、プライベートブランド商品)の開発と販売の強化、デリバリーサービス「7NOW」の取り組み強化、デジタル技術の活用による顧客ロイヤリティの向上に努めてまいりました。また、北米におけるバリューチェーン構築による高品質なフレッシュフードの開発強化の一環として、2023年9月11日にヴァージニア工場が稼働いたしました。なお、2021年5月に取得したSpeedway事業との統合に関するプロセスは順調に進捗し、当連結会計年度では統合以来の累計で976.5百万米ドルのシナジー発現と、目標としていた800百万米ドルを達成しました。

当連結会計年度のドルベースの米国内既存店商品売上は前年を上回りました。また、自営店と加盟店の売上を合計したチェーン全店売上は、商品売上が伸長したものの、ガソリンの価格下落と販売量の減少により、10,200,414百万円(同97.7%)となりました。一方、商品荒利率の改善及び円安の影響等により、営業利益は413,966百万円(同104.4%)となりました。

また、北米市場におけるさらなる成長加速に向けて、2024年1月に米国Sunoco LP社からのコンビニエンスストア事業及びガソリン小売事業の一部の買収を公表しました。

7-Eleven International LLCでは、2025年度までに日本及び北米を除く地域で5万店の店舗網の確立、2030年度までに日本・北米を含めた全世界で30の国と地域での店舗出店を目指す方針の下、既存展開国と新規展開国の両輪で成長戦略を推し進めてまいります。既存展開国については、2023年2月に7-Eleven International LLCによるベトナム事業に対する投融資を決定、同年11月にはオーストラリアのConvenience Group Holdings Pty Ltd (SEA)の買収を公表し、2024年4月1日付にて同社の全株式を取得しました。 また、新規展開国については、2023年1月にイスラエル、9月にはラオスに出店し、これにより世界におけるセブン‐イレブンの展開エリアは20の国と地域になりました。

スーパーストア事業における営業収益は1,477,384百万円(前年同期比101.9%)、営業利益は13,588百万円(同109.6%)となりました。

株式会社イトーヨーカ堂は、収益性改善に向けた抜本的変革と成長施策の実行を進めております。その一環として、2023年9月1日付で株式会社イトーヨーカ堂を存続会社とし株式会社ヨークを消滅会社とする吸収合併を完了しました。両社のシナジー及び運営効率を最大化することで、販売力の強化とともに販管費削減や生産性改善に取り組んでおります。加えて、プロセスセンターやセントラルキッチン、ネットスーパーなどの戦略投資インフラが稼働いたしました。また、店舗網の首都圏へのフォーカス加速の一環として、2024年2月に北海道・東北・信越エリアの一部店舗について、株式会社ヨークベニマル、株式会社ダイイチ及び株式会社OICグループと事業承継等に関する契約を締結いたしました。

当連結会計年度は、株式会社ヨークとの合併に伴い売上高は前年を上回りましたが 、戦略投資インフラ整備に伴うコスト増加等により、1,205百万円の営業損失(前年同期は408百万円の営業利益)となりました。

株式会社ヨークベニマルにおいては、「地域のお客様の日常の食卓をより楽しく豊かに便利にする」というコンセプトの実現に向けて、既存店の活性化、デリカテッセン等の開発及び販売強化の取り組みを進めてまいります。

当連結会計年度では人流回復に加え、原材料価格高騰への適切な値上げ対応及び販売促進施策が奏功し、既存店売上は前年を上回りました。この結果、新店関連費用や人件費等の販管費は増加したものの、営業利益は18,701百万円(前年同期比103.8%)となりました。

金融関連事業における営業収益は207,479百万円(前年同期比106.8%)、営業利益は38,172百万円(同102.8%)となりました。

株式会社セブン銀行における当連結会計年度末時点の国内ATM設置台数は27,370台(前連結会計年度末差481台増)となりました。人流回復に伴う預貯金金融機関の取引件数の回復、資金需要増による消費者金融等のノンバンク取引の増加に加え、各種キャッシュレス決済に伴うATMでの現金チャージ取引が高い水準を維持したこと等により、1日1台当たりのATM平均利用件数は104.6件(前年同期差3.5件増)となり、当連結会計年度のATM総利用件数は前年を上回りました。なお、同行における現金及び預け金は、ATM装填用現金を含めて8,771億円となりました。

また、バンキング事業・ノンバンク事業の一体運営によるシナジーを追求するため、2023年7月1日付で当社の連結子会社である株式会社セブン・フィナンシャルサービスが保有する株式会社セブン・カードサービスの全株式を株式会社セブン銀行に譲渡いたしました。

 

(b)営業外損益及び経常利益

営業外損益は、前連結会計年度の30,633百万円の損失(純額)から27,162百万円の損失(純額)となりました。これは7-Eleven, Inc.による受取利息が増加したこと等によるものであります。

この結果、経常利益は、前連結会計年度に比べ31,198百万円増加の507,086百万円となりました。

(c)特別損益及び税金等調整前当期純利益

特別損益は、前連結会計年度の73,126百万円の損失(純額)から230,078百万円の損失(純額)となりました。これは株式会社そごう・西武の譲渡に係る損失を計上したこと等によるものであります。

この結果、税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度に比べ125,753百万円減少の277,007百万円となりました。

(d)法人税等(法人税等調整額を含む)及び親会社株主に帰属する当期純利益

法人税等は、前連結会計年度に比べ68,787百万円減少の41,803百万円となりました。また、税効果会計適用後の負担率は15.1%となりました。

この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ56,353百万円減少の224,623百万円となりました。1株当たり当期純利益は、84.88円となり、前連結会計年度の106.05円に比べ21.17円減少しました。なお、当社は、2024年3月1日付で普通株式1株を3株に株式分割しております。前連結会計年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定して、1株当たり当期純利益を算定しております。

② 財政状態の分析

(a)資産、負債及び純資産の状況

 

前連結会計年度

(2023年2月28日)

当連結会計年度

(2024年2月29日)

増減額

総資産(百万円)

10,550,956

10,592,117

41,161

負 債(百万円)

6,902,794

6,691,492

△211,301

純資産(百万円)

3,648,161

3,900,624

252,462

総資産は、前連結会計年度末に比べ41,161百万円増加して10,592,117百万円となりました。

流動資産は、現金及び預金が112,133百万円減少したこと等から、前連結会計年度末に比べ24,987百万円減少し、3,035,666百万円となりました。

有形固定資産は、主に海外コンビニエンスストア事業における「Accounting Standards Updates」(以下「ASU」という。)第2016-02号「リース(Topic842)」適用による使用権資産の増加により20,749百万円の増加となりました。無形固定資産は、株式会社そごう・西武の譲渡に伴う借地権等の減少等により8,094百万円の減少となりました。また、投資その他の資産においては、株式会社セブン銀行が取得する地方債や社債が増加したこと等により53,618百万円増加しております。これらの結果、固定資産は前連結会計年度末に比べ66,273百万円増加し、7,555,469百万円となりました。

負債合計は、前連結会計年度末に比べ211,301百万円減少し、6,691,492百万円となりました。

流動負債は、コールマネーが70,000百万円、短期借入金が58,685百万円減少したこと等により、前連結会計年度末に比べ191,837百万円減少し、3,073,252百万円となりました。

固定負債は、長期借入金が111,453百万円減少した一方、海外コンビニエンスストア事業におけるASU第2016-02号「リース(Topic 842)」適用によるリース債務の増加等により、前連結会計年度末に比べ19,464百万円減少し、3,618,240百万円となりました。

純資産合計は、前連結会計年度末に比べ252,462百万円増加し、3,900,624百万円となりました。

利益剰余金は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による224,623百万円の増加、配当金の支払いによる106,152百万円の減少などにより、前連結会計年度に比べ118,083百万円増加しております。

為替換算調整勘定は、主に7-Eleven, Inc.の財務諸表の換算などにより、163,578百万円増加しております。

これらの結果、1株当たり純資産額は、前連結会計年度末に比べ105.63円増加し1,416.94円となり、自己資本比率は前連結会計年度末の32.9%から35.1%となりました。なお、当社は、2024年3月1日付で普通株式1株を3株に株式分割しております。前連結会計年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定して、1株当たり純資産額を算定しております。

 

(b)キャッシュ・フローの状況

 

  前連結会計年度

(自 2022年3月 1日

 至 2023年2月28日)

  当連結会計年度

(自 2023年3月 1日

 至 2024年2月29日)

増減額

営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円)

928,476

673,015

△255,461

投資活動によるキャッシュ・フロー(百万円)

△413,229

△431,809

△18,579

財務活動によるキャッシュ・フロー(百万円)

△270,373

△377,065

△106,692

現金及び現金同等物の期末残高(百万円)

1,674,787

1,562,493

△112,293

現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、国内及び海外コンビニエンスストア事業を中心とした高い営業収益力によりキャッシュ・フローを創出したものの、国内及び海外コンビニエンスストア事業を中心とする店舗の新規出店及び改装などに伴う支出等があったことや借入金の返済及び社債の償還等により、前連結会計年度末に比べ112,293百万円減少し、1,562,493百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によって得た資金は、673,015百万円(前年同期比72.5%)となりました。前年同期に比べ255,461百万円減少した主な要因は、百貨店譲渡関連損失が129,618百万円増加した一方、税金等調整前当期純利益が125,753百万円、銀行業におけるコールマネーの純増減が180,000百万円減少したこと等によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動に使用した資金は、431,809百万円(前年同期比104.5%)となりました。前年同期に比べ18,579百万円増加した主な要因は、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入が35,097百万円増加した一方、有形固定資産の取得による支出が32,221百万円、無形固定資産の取得による支出が14,529百万円増加したこと等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動に使用した資金は、377,065百万円(前年同期比139.5%)となりました。前年同期に比べ106,692百万円増加した主な要因は、社債の発行による収入が220,000百万円増加した一方、社債の償還による支出が265,837百万円、自己株式の取得による支出が52,377百万円増加したこと等によるものであります。

③ 戦略的現状と見通し

国内においては、継続した物価上昇による家計の節約志向の高まりや消費意欲の低下等、先行き不透明な状況が続くことが想定されます。

北米においては、個人消費環境が厳しい状況が続くことが懸念されるものの、2024年後半以降には金融緩和等による段階的な景気回復が期待されます。

このような経営環境を踏まえ、グループ戦略の軸となる「食」の強みを活かし、コンビニエンスストア事業を中心とした成長に向けてお客様の変化に対応する様々な戦略的施策を推進してまいります。

これらを踏まえた2025年2月期の連結業績予想は以下のとおりとなります。

 

(連結業績予想)

(単位:百万円)

 

2025年2月期

 

前年同期比

営業収益

11,246,000

98.0%

営業利益

545,000

102.0%

経常利益

502,000

99.0%

親会社株主に帰属する当期純利益

293,000

130.4%

(注)1 前提となる為替レート:U.S.$1=145.00円、1元=19.00円

2 株式会社セブン‐イレブン・ジャパン、株式会社セブン‐イレブン・沖縄及び7-Eleven, Inc.における加盟店売上を含めたグループ売上:17,815,000百万円

 

 

(中期経営計画2021-2025 主な連結財務指標)      (単位:百万円)

 

2025年2月期

 

前年同期比

EBITDA

1,102,000

104.5%

ROE(%)

7.8

ROIC(除く金融)(%)

5.5

Debt/EBITDA倍率(倍)

2.3

1株当たり当期純利益(EPS)(円)

112.05

132.0%

(注)1 ROIC(除く金融)は、{純利益+支払利息×(1-実効税率)}/{自己資本+有利子負債(ともに期首期末平均)}にて算出。

2 当社は、2023年11月30日開催の取締役会決議に基づき自己株式の取得を行っております。2025年2月期の連結業績予想における「1株当たり当期純利益」については、自己株式取得及び消却の影響見込みを考慮しております。

3 当社は、2024年3月1日付で普通株式1株を3株に株式分割しております。前連結会計年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定して、「1株当たり当期純利益」の前年同期比を算定しております。

 

(セグメント別営業収益・営業利益予想)

 

 

(単位:百万円)

 

2025年2月期

営業収益

営業利益

 

前年同期比

 

前年同期比

国内コンビニエンスストア事業

943,000

102.3%

260,000

103.8%

海外コンビニエンスストア事業

8,410,000

98.7%

318,700

105.7%

スーパーストア事業

1,448,000

98.0%

18,600

136.9%

金融関連事業

210,000

101.2%

36,000

94.3%

その他の事業

310,000

75.4%

1,700

63.2%

11,321,000

98.1%

635,000

104.7%

調整額(消去及び全社)

△75,000

△90,000

合計

11,246,000

98.0%

545,000

102.0%

 

(a)国内コンビニエンスストア事業

株式会社セブン‐イレブン・ジャパンは、人口減少、少子高齢化の進行、物価上昇及び実質賃金の低下等の外部経済環境変化に伴うお客様の変化に対応してまいります。

節約志向の高まったお客様のニーズに対応すべく、美味しさとリーズナブルな価格の両立を図り、お客様への価値訴求に努めてまいります。

また、中長期的視点においては新たな取り組みによる売上創出を目指し、2024年2月にオープンしたSIPストアやデリバリーサービス「7NOW」をはじめ、常にお客様の立場に立った新たな体験価値を提供することで次の「便利」の扉を開き、加盟店や取引先も含めたバリューチェーン全体での持続的な成長の実現に取り組んでまいります。

(b)海外コンビニエンスストア事業

北米の7-Eleven, Inc.は、引き続き「オリジナル商品の強化」「デジタル・デリバリー戦略促進」「SEIとSpeedwayの統合によるシナジー創出」「店舗網の拡大と強化」を主要優先事項とした成長戦略を推進してまいります。

2024年度においては、段階的な景気回復による消費の拡大に加え、上記の取り組みが奏功することによる成長が期待されます。更に、コストリーダーシップ委員会によるコスト削減の取り組みも継続することにより、売上・コスト両面での収益性向上を図ってまいります。

7-Eleven International LLCでは、引き続き既存展開国と新規展開国の両輪で成長戦略を推し進め、2025年度までに日本及び北米を除く地域で5万店の店舗網の確立、2030年度までに日本、北米を含めた全世界で30の国と地域での店舗出店を目指す方針の下、質とスピードを伴った成長の実現に取り組んでまいります。

 

(c)スーパーストア事業

スーパーストア事業については、株式会社イトーヨーカ堂において、収益性改善に向けた抜本的な変革施策を継続して実行してまいります。株式会社イトーヨーカ堂においては、2023年9月に合併した株式会社ヨークとのシナジー及び運営効率を最大限引き出すとともに、2024年2月27日に稼働開始したPeace Deli千葉キッチン活用による商品の品質向上、店舗の運営効率改善に取り組んでまいります。

これらの取り組みに対し、外部プロフェッショナルの起用による工程管理と当社の取締役会及び戦略委員会によるモニタリングにより着実に変革を遂行することで、2025年度に首都圏SST事業としてEBITDA550億円、ROIC4%以上、スーパーストア事業全体のEBITDA850億円以上の達成に向けて取り組みを進めてまいります。

(d)金融関連事業

金融関連事業におきましては、引き続きATMプラットフォーム事業の拡大に加え、電子マネー及びクレジットカード事業等に注力するとともに、グループ金融戦略として、当社グループの共通IDである「7iD」を基軸とした独自の金融サービスを開発し、新たな価値の創造を進めてまいります。

その一環として、2024年2月21日より、7iDとセブン銀行口座の紐づけを開始しました。この取り組みによって、銀行アプリと事業会社アプリの連携強化、金融サービス利用時のマイル特典付与等、さらなる連携・データ活用が期待されます。また、これらを通じ、小売業におけるお客様の来店頻度・購買単価向上と同時に購買データを活用した金融サービス提案・商品開発を図ってまいります。

(e)その他の事業

新商品開発などによる事業成長に加え、コンビニエンスストアやスーパーストアへの商品供給の拡大、7iDを通した顧客データ相互活用など、他セグメントとの連携強化により、シナジーの創出とグループの持続的な成長を目指してまいります。

 

④ 資本の財源及び資金の流動性

資金需要

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品の仕入並びに販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、新規出店、店舗改装及びソフトウエア投資等の設備投資、M&A等によるものであります。

なお、当連結会計年度中に実施した設備投資に必要な資金は、金融機関からの借入金、社債の発行及び自己資金により充当いたしました。

 

財務政策

当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用及び金融機関からの借入と社債の発行により資金調達を行っております。

長期借入金、社債等の長期資金の調達については、事業計画に基づく資金需要、金利動向等の調達環境、既存借入金の返済時期等を考慮の上、調達規模、調達手段を適宜判断して実施していくこととしております。

財務方針については、持続的に企業価値を向上させるため、資本コストを上回るリターンを拡大するとともに、キャッシュ・フローの創出力を高めることを基本方針としております。

なお、当連結会計年度末における借入金、社債及びリース債務を含む有利子負債の残高は2,814,040百万円となっております。

 

⑤ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社は、持続的に企業価値を向上させるため、資本コストを上回るリターン(利益)を拡大するとともに、キャッシュ・フローの創出力を高めることを基本方針とし、以下の財務目標を設定しております。

 

(2025年度 主要連結財務数値目標)

 

2023年度 実績

2025年度目標

(2024年4月10日公表)

EBITDA

1,054,951

百万円

1.1

兆円以上

営業キャッシュ・フロー(除く金融)

778,398

百万円

9,000

億円以上

フリーキャッシュ・フロー水準(除く金融)

391,694

百万円

5,000

億円以上

ROE

6.2

11.5

%以上

ROIC(除く金融)

4.1

8.0

%以上

Debt/EBITDA倍率

2.6

1.8~

2.5倍

EPS成長率(CAGR)

-

18

%以上

※営業キャッシュ・フロー(除く金融)は、金融事業を除くNOPATをベースとした管理会計数値。

 フリーキャッシュ・フロー水準(除く金融)は、金融事業を除く管理会計ベース数値。

 なお、M&Aは戦略投資として投資キャッシュ・フローからは除外して算出。

 ROIC(除く金融)は、{純利益+支払利息×(1-実効税率)}/{自己資本+有利子負債(ともに期首期末平均)}にて算出。

 Net Debt / EBITDAR(Net Debt:有利子負債+オンバランスリース-現預金等調整)

 EPS成長率(CAGR)は、2020年度に対してのCAGR(年平均成長率)にて試算。

 

⑥ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

なお、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

(1)グループ経営管理契約

当社は、株式会社セブン‐イレブン・ジャパン、株式会社イトーヨーカ堂、株式会社ヨークベニマル及びその他の子会社17社との間で、当社が各社に対して行う経営管理に関し、それぞれ「グループ経営サービス等の提供に関する基本契約書」を締結しております。

(2)加盟店契約

株式会社セブン‐イレブン・ジャパンとコンビニエンスストア加盟店との加盟店契約の要旨は、次のとおりであります。

① 当事者(株式会社セブン‐イレブン・ジャパンと加盟者)の間で、取り結ぶ契約

(a)契約の名称

加盟店基本契約(書)及びその付属契約(書)

(b)契約の本旨

株式会社セブン‐イレブン・ジャパンの許諾によるコンビニエンスストア経営のためのフランチャイズ契約関係を加盟者と形成すること。

② 加盟者に対する商品の販売条件に関する事項

株式会社セブン‐イレブン・ジャパンは、開業時在庫の買取りを求める以外、爾後商品の販売はせず、加盟者は株式会社セブン‐イレブン・ジャパンの推薦する仕入先その他任意の仕入先から商品を買取ります。

③ 経営の指導に関する事項

株式会社セブン‐イレブン・ジャパンは継続的に担当者を派遣して、店舗・商品・販売の状況を観察させて助言・指導を行い、又は経営上生じた諸問題の解決に協力する他、販売情報等の資料の提供、効果的な標準小売価格の開示、各種仕入援助、広告宣伝、経営相談、計数管理のための計数等の作成提供を行い、商品仕入等についての与信等のサービスを継続的に行います。

④ 使用させる商標、商号その他の表示に関する事項

コンビニエンスストア経営について“セブン‐イレブン”の商標その他営業シンボル、著作物の使用をすることが許諾されます。

⑤ 契約の期間等に関する事項

契約の期間は、加盟店として新規開店の初日から向こう15ヶ年間です。契約の更新は、協議し、合意にもとづいて行われます。

⑥ 加盟者から定期的に徴収する金銭に関する事項

月間売上総利益(月間売上高から、月間売上商品原価(商品の総売上原価から品減り、不良品各原価及び仕入値引金を差引いた純売上原価)を差引いたもの)を基に一定の計算をして算出した金額を、株式会社セブン‐イレブン・ジャパンが実施するサービスの対価として支払います。

 

(3)株式譲渡契約

当社は、当社の完全子会社である株式会社セブン‐イレブン・ジャパンと7-Eleven, Inc.の合弁会社であり当社の完全子会社である7-Eleven International LLC(以下、「7IN」という。)が、7INの完全子会社であるAR BidCo Pty Ltdを通じて、豪州R.G. Withers Unit Trustの受託者であるR.G. Withers Nominees Pty Ltdとの間で、オーストラリアにおけるライセンシーとして「7-Eleven」ブランドにてコンビニエンスストア事業及び燃料小売事業を運営する7-Eleven Stores Pty Ltdを含む複数の会社の株式を保有するConvenience Group Holdings Pty Ltdの全株式を取得する(以下、「本件取引」という。)株式譲渡契約を締結することを2023年11月30日開催の取締役会にて決定し、同日、7INがその完全子会社であるAR BidCo Pty LtdをしてR.G. Withers Nominees Pty Ltdとの間で本件取引にかかる株式譲渡契約を締結させ、2024年4月1日付で本件取引は履行されました。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」に記載のとおりであります。

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。