第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社グループは、『空室のない元気な街を創る』の経営理念のもと、不動産販売事業、不動産賃貸事業及び不動産管理事業を展開しております。当社グループの最大の強みは空室の改善力であり、今後も、①不動産販売事業においては、その力を活かして収益力の落ちた不動産を生まれ変わらせて不動産投資家へ販売するビジネスを深化させていきます。東京本社開設以来、大きな収益源へと成長しており、今後も不動産販売事業を中心に、会社全体の事業規模を拡大してまいります。また、②不動産賃貸・管理事業については、営業活動の強化と、ITを活用した管理業務の効率化により、スケール(受託戸数)の拡大を行うことで安定収益源を確保するとともに、空室・遊休地に対する多様なソリューションについても深化させていきます。

 

(2)経営環境

 当社グループを取り巻く事業環境は、継続する金融緩和を背景に堅調に推移してまいりました。また、新型コロナウイルス感染症による行動制限が無くなったことになどにより社会活動も正常化し、日本経済全体も回復基調です。但し、ウクライナ情勢の長期化に伴うエネルギー価格や原材料価格の高騰、欧米における金融不安などから先行きの不透明感も増しており、国内においては物価高や日本銀行による金融緩和の縮小懸念から慎重な動きとなっています。

 不動産業界においては、金融緩和が継続したことや円安、地政学上の観点から、日本不動産の割安感が増し、特に海外投資家からの関心が高く、需要は底堅く推移いたしました。国内の不動産マーケットは、国内外問わず不動産投資家の関心は高く、取引価格も高く推移していることから、今後もこの傾向は継続するものと考えております。当社グループとしましても、主要事業である不動産販売事業において、引き続き優良な収益不動産を選定し、取扱う限り、環境は良好であると想定しております。

一方で、働き方改革法案による2024年問題から物流価格や建築価格の上昇が見込まれると同時に、長年続いた日本銀行による異次元の金融緩和が解除されたことなど、徐々にインフレが進むものと考えており、引き続き金融動向には注視してまいります。

 

(3)経営戦略等

 当社グループの事業別の戦略は、以下のとおりであります。

(不動産販売事業)

①仕入競争力の確立

 上記環境のとおり収益不動産の売買に関しては底堅い需要があり、安定的な取引が見込まれますが、仕入価格目線としては依然として高止まり感があります。当社グループでは、空室等により収益性が低下し価格競争力が落ちている収益不動産について、バリューアップ後を想定した価格で購入できるため、価格優位性があると認識しております。この強みを活かし仕入競争力を高めてまいります。

 

②取扱物件の大型化と多様化

 一部の不動産投資家に対する厳格な金融姿勢は続いている状況です。当社グループにおいては、取扱物件の大型化と多様化を進めています。大型化については、5億円以上の収益不動産の取扱いを中心にするのと同時に、10~20億円規模の取扱いも増やしていくことで、融資のつきやすい投資家層へのアプローチを進めています。多様化については、従前は取扱いの中心はレジデンスでしたが、直近はオフィスビルや店舗ビルといった不動産の取扱いを増やすことで、不動産投資家からの様々なニーズに応える体制を整えてきました。また、区分所有不動産の取扱いも推進しています。

 

(不動産賃貸事業・不動産管理事業)

 不動産賃貸事業、不動産管理事業からの収益は、安定収益として位置付けており、その安定収益で固定費を賄える規模まで成長を図ってまいります。具体的には、管理受託件数の増大が想定されますが、不動産販売事業において保有する販売用不動産を増やすことによる保有期間中の賃料収入の拡大や、販売用不動産を販売した後の管理受託の獲得に努めるなど、安定収益の拡充を図ってまいります。また、不動産賃貸事業の宿泊事業領域で行っている東北ビジネスホテルは、当初想定していた復興支援について一定の貢献ができたこともあり、移設できる特徴を活かし、高校寮としての再活用や、自社で利用される企業への譲渡などにより、再度安定収益化しております。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社の事業別の課題は、以下のとおりであります。

①不動産販売事業

 付加価値を生み出す開発力を高めることが当面の課題であると認識しております。物件の付加価値を向上させて収益力を高めるには、難易度の高いバリューアップが必要となるため、ノウハウの蓄積及び人材育成、組織力強化を進めてまいります。また、当該事業においては資金需要が旺盛であり、かつ機動的な資金も必要であるため、多様な資金調達手段を確保し、更なる財務基盤の強化を進めてまいります。

 近年取組んでいる不動産開発事業では、工期管理と高騰する建築価格への対応が課題であると認識しております。物件の竣工時期が想定どおりにならない場合、業績に影響を与える可能性もあるため、当初見込んだスケジュールどおりの建設が進むようにする必要があります。また、働き方改革法案による2024年問題から建築価格の上昇が見込まれ、当初想定した物件の収益が変わってしまう場合、業績に影響を与える可能性があります。それぞれ対処するために、当社グループ内での管理能力の向上と協力会社との連携をはかってまいります。

 

②不動産賃貸事業

イ.不動産賃貸領域

 中古物件を借り上げ、又は取得し、リニューアルにより高収益が得られる不動産に再生する力を継続的に高めることが当面の課題であります。そのためには、企画力・開発力・デザイン力を強化し、バリューアップできる対象物件・手法の拡大をしてまいります。

ロ.空間再生領域

 賃貸住宅の空室率が増加する中で、他物件と差別化できるリノベーション提案力、物件の選定力を高めることが当面の課題であります。そのためには、取引先との関係を強化しリノベーション提案力を高めることと、物件選定力を高めるための人材育成を進め、長期不稼働になっている建物や遊休地を保有する不動産所有者から所有不動産の再生利用を受託できる能力の強化を進めてまいります。

 また、民泊事業では、インバウンド需要が戻ってきている中、当社グループの施設を選んでいただけることが課題だと認識しております。その為にも、一般的な宿泊施設としてだけでなく、他社とは異なる明確なコンセプトを持った宿泊施設とするべく企画力を強化してまいります。

 

③不動産管理事業

 顧客である不動産所有者より信頼して不動産管理を任せて頂けるよう、不動産関連知識のさらなる向上に努めてまいります。また、金融や税務といった専門的な知識・知見も不可欠であり、専門家との連携も強化してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(サステナビリティに関する考え方)

当社グループは、『空室のない元気な街を創る』を企業理念として、不動産ビジネスを展開しておりますが、特にその主軸となっている不動産販売事業においては、リフォームやリノベーション、コンバージョンにより“住み続けられる”不動産づくりを行い、中古不動産の寿命を延長する取組みを行っているため、事業の推進により持続可能な社会実現へ貢献が可能と考えております。

一方で、サステナビリティに対して社会的要請が高まっていることを踏まえ、上場企業として応えていきたいという想いから、2021年11月に「サステナビリティ基本方針」を策定いたしました。

 

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(サステナビリティへの取組)

(1)ガバナンス

 当社グループのサステナビリティに関する重要な課題の特定、見直し、進捗管理については、人事や総務・経営企画・IRなどの職務を担う管理部で検討・審議され、取締役管理部長を通じて取締役会に報告・提言を行っています。取締役会での審議結果は経営戦略やリスク管理・評価に反映され、各部門に周知されてサステナビリティ経営を推し進めています。

 

 

 

(2)戦略

 当社グループの戦略上重要なサステナビリティに関する課題は以下のとおりです。

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(人材の育成に関する方針)

 当社グループの発展を実現させるには人材が最も重要なもののひとつであると考えております。実績を出せる人材の採用と育成こそが重要であり、積極的な採用活動や、法改正等に伴う全社研修の実施と若年時向けの専門研修の実施による育成を行っています。また、資格手当の充実や、資格取得に向けた学習支援による社員からの自発的な成長促進も積極的に行っています。

 

(社内環境整備に関する方針)

 多様な人材が定着するために、人種や性別・年齢・宗教・信条・経歴・価値観など関係なく様々な人材が活躍できる環境づくりを行っています。働きやすい社内環境の整備に向けた労働時間の管理や男性社員を含めた育休制度の周知、有給休暇取得の促進をしています。また、活躍している人材をより評価できる人事制度の不断の見直しを行う一方、健康促進にも配慮するなど多面的な取組みを実施しています。

 なお、当社グループでは不動産エージェント制度を採り入れており、当社グループと業務提携を締結したフリーランスの営業社員を多く抱えています。この制度により、副業を含めた多様な働き方を許容できる体制となっています。

 

(3)リスク管理

 当社グループのリスク管理は、「リスク管理規程」においてリスクマネジメントに関する基本的な事項を定めています。

 具体的には、代表取締役を委員長とする「リスク・コンプライアンス管理委員会」を設置し、3ヶ月ごとに委員会を開催してリスクの認識・評価、対応策の検討を行っております。リスク・コンプライアンス管理委員会には取締役全員(社外取締役含む)も参加しており、常時監督を受けます。サステナビリティに関するリスクも同様に管理することで、総合的な管理体制を敷いています。

 

(4)指標及び目標

 当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、指標や目標は定めておりませんが、具体的な状況開示については「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率」に記載のとおりです。

 また、当社グループでは上記「(2)戦略」のとおり重要性を認識しており、当社の考え方にマッチした人材が活躍することこそが重要であるとの考えのもと、そのような人材を女性・外国人・中途採用者等の垣根を越えて活用しております。その中で、測定可能な数値目標を持ってしまうと柔軟な人材活用を制限してしまう可能性があるため、指標や目標の作成・開示をしておりません。

 

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経済動向及び不動産市況について

 当社グループの属する不動産業界は、景気動向、地価動向、空室率の推移、不動産販売価格動向、各種税制や、金利の上昇等の影響を受けやすく、当社グループにおいてもこれらの影響を受けやすいため、諸情勢にともなう変化や税制においては見解の相違等があった場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、一都三県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)を主要エリアとして不動産販売事業を行っており、このエリアにおいて、これまで培ってきたノウハウを活かし動向の変化に素早く対応できる体制を整えております。また、当社グループの収益不動産の収益アップ力を活かし、特定の種別や規模に依存せず多様な販売用不動産の仕入販売を実現することでリスク低減に取り組んでおります。

 

(2)資金調達について

① 有利子負債への依存について

 当社グループは、不動産販売事業における不動産の取得資金を主に金融機関からの借入金によって調達しており、2024年2月期末時点において、有利子負債比率は274.54%となっております。そのため、市場金利が上昇する局面や、当社グループの財務状態が著しく悪化し、信用力が低下して金融機関からの融資が受けられない場合には、支払利息等の増加や事業計画が変更となり、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、特定の金融機関に依存することなく、個別物件毎に金融機関に融資を受けております。また新たな金融機関との新規取引や資金調達手段の多様化を進めております。

 

② 借入金にかかる確約条項について

 当社グループの一部の借入契約には財務制限条項が付されております。当該条項に抵触した場合には、期限の利益を喪失し、当該借入金の一括返済を求められること等により当社グループの財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 資金繰りリスクについて

 当社グループでは、販売用不動産購入資金として金融機関から融資を受ける際、返済期限を1年以内に設定する場合がありますが、当該不動産が販売計画通りに売却できず返済期限を迎えた場合、当社グループの資金繰りが著しく悪化する可能性があります。また、販売用不動産購入資金としての融資の返済原資は販売用不動産売却代金としており、計画よりも販売価格が大きく下落した場合、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、長年培ってきた収益不動産の目利き力やマーケット動向の情報収集力、賃貸リーシング力を活かし、当初計画通りの販売を実現していくことに努めております。

 

(3)棚卸資産の評価及び固定資産の減損損失に関する会計処理の適用等について

 当社グループの不動産販売事業における販売用不動産について、経済情勢や不動産市況の悪化等により当初計画通り販売が進まず販売用不動産としての価値が帳簿価額を下回った場合には、棚卸資産の簿価切下げ処理に伴う損失が発生し、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループの不動産賃貸事業に供する資産等について、当該保有不動産の生み出す割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回った場合は、減損損失が発生し、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、不動産市況動向を常に確認し事業活動を行っております。動向に合わせた仕入を適切に行うことにより、当初販売計画に支障が出ないよう努めております。

 

(4)物件の売却時期による業績の変動について

 当社グループは、保有物件のバリューアップ完了後に不動産投資家に対して売却を行いますが、当該事業の売上高及び売上原価は物件の引渡時に計上されます。一取引当たりの金額が非常に高額なものもあることから、売却時期による業績の変動が大きくなる場合があります。高額物件の売却時期により、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 このリスクに対応するために、販売用不動産在庫数の拡充を行い、販売計画に見込んでいた物件の販売ができなくなった場合に、代替物件を確保できる体制構築ができるよう努めてまいります。

 

(5)競合等の影響について

 当社グループは、一都三県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)を中心とした営業エリアの物件を対象としていますが、当該首都圏近隣は特に大手デベロッパー等との価格競争が激しくなっております。また、宅地建物取引業免許を交付されれば、初期投資の必要はほぼなく事業を始められますので、新規参入する業者が増える可能性があります。それに伴い、当社グループが優良な物件を取得できなくなった場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、強みである収益不動産の収益アップ力を活かしたバリューアップの拡充等により競争力の向上を図り、不動産販売事業の拡大を推進することでリスク低減に取り組んでおります。

 

(6)人員体制について

① 人材の確保について

 当社グループは、経営課題の克服及び今後の事業の発展のためには、優秀な人材が必要不可欠であると認識しております。したがって、人事制度の充実を図り、当社グループの経営理念や経営方針を理解した社員の育成に努めるとともに、必要に応じて、優秀な人材を採用する方針であります。

 しかしながら、当社グループの求める人材が十分に確保できなかった場合や当社グループの優秀な人材が退職した場合、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 代表取締役への依存について

 当社の代表取締役社長である松本俊人は、当社グループの経営方針や事業戦略の立案、決定並びに事業の推進において重要な役割を果たしております。当社グループの事業拡大とともに同氏に過度に依存しない体制の構築を進めておりますが、何らかの事情により同氏の業務遂行が困難になった場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)個人情報の管理について

 当社グループは、事業を運営するにあたり、顧客や不動産所有者等の情報を保有しております。万が一、外部漏洩やデータ喪失等が発生した場合、当社グループの社会的信用の低下や損害賠償請求等による費用の発生により、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、個人情報の流出を防止するために、個人情報取扱規程を定め、関連法令及びガイドライン等を遵守し、管理体制の確立を行っております。また、社内研修も行っており上記関係規範を役員・従業員に周知・徹底しております。

 

(8)その他事業環境・事業内容について

① 法的規制等について

 当社グループは、事業を運営するにあたって、主に、借地借家法、宅地建物取引業法、建設業法、建築基準法、建築士法、住宅宿泊事業法、不動産特定共同事業法、都市計画法、国土利用計画法、金融商品取引法、個人情報の保護に関する法律、消防法、保険業法等の規制や、不動産業に関連する諸規約等の制限を受けております。

 当社グループは、上記の主要な許認可を含め関係法令の遵守に努めており、事業に必要な免許及び許認可に関して、取消や行政処分を受けたことはありません。しかしながら今後、法令等の違反や不正等により許認可の取消や行政処分等を受け、当社グループの事業範囲が制限された場合、社会的信用が低下し顧客からの解約等が発生し、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 また、法的規制の改廃及び新設等により規制が強化された場合や、法的規制の解釈・運用が変化した場合、当社グループ事業範囲の制限、費用負担の増加が生じ、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、管理部が中心となり顧問弁護士や各士業と連携し各種法規制に対応しております。また役員・従業員を対象に外部機関や弁護士等によるコンプライアンス研修等を実施しており法令順守の意識を高めております。

 なお、法規制について、その有効期限やその他の期限が法令、契約等により定められているものは下表のとおりであります。

(許認可等の状況)

会社名

許認可等の名称

許認可(登録)番号

有効期限

許認可等の取消または

更新拒否の事由

株式会社

アズ企画設計

宅地建物取引業免許

国土交通大臣(2)第8764号

2025年3月11日

宅地建物取引業法第66条

一般建設業免許

埼玉県知事(般-5)第58196号

2029年3月14日

建設業法第29条

金融商品取引業登録

(第二種金融商品取引業)

関東財務局長(金商)第3225号

金融商品取引法第52条、第54条

賃貸住宅管理業者登録

国土交通大臣(02)第003170号

2026年12月23日

賃貸住宅の管理業務等の

適正化に関する法律第23条

不動産特定共同事業登録

金融庁長官・国土交通大臣第104号

不動産特定共同事業法第36条

合同会社

アズプラン

宅地建物取引業免許

東京都知事(1)第108943号

2028年2月24日

宅地建物取引業法第66条

 

② 偶然不測の事象及び地域偏在について

 当社グループは一都三県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)を中心とし、宮城県においても事業を展開しておりますが、それらの地域において火災、破裂爆発、落雷、風災、ひょう災、雪災、水災、地震火災、地震破裂、地震倒壊、噴火及び津波並びに電気的事故、機械的事故その他偶然不測の事故並びに戦争、暴動、騒乱、テロ等の災害により、当社グループが保有する販売用不動産や賃貸施設、その他サブリース物件について滅失、劣化又は毀損し、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。さらに、偶然不測の事故・自然災害により不動産に対する投資マインドが冷え込んだ結果、不動産需要が減り、当社グループの事業が影響を受け、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、原則として新耐震基準の物件を選定し物件を取得しております。また、物件を取得する前にハザードマップの確認や役所等へのヒアリング確認を行うことにより、リスク低減に取り組んでおります。

 

③ 契約不適合責任について

 当社グループは、不動産販売事業において当社グループが顧客に販売した物件において、通常、契約不適合責任を負っております。販売した物件において、種類、品質又は数量に関し契約の内容に適合しないもの(以下「契約不適合」といいます。)があった場合、契約不適合が原因で生じた損害に対する責任として、補修工事や損害賠償等により当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、販売用不動産の契約前に担当部署と管理部において、リスクとなり得る事項を洗い出し可能な限り契約書に明記にすることによりリスク低減に取り組んでおります。

 

④ マスターリース契約の特性について

 当社グループは、不動産賃貸事業において、不動産所有者へ一定期間一定額の賃料を支払う契約で土地・建物等を借り上げ、当社グループが貸主として当該土地・建物等をテナントに賃貸しております。これをマスターリース契約と呼びます。原則、テナントの有無にかかわらず不動産所有者へ一定額の支払が発生するため、テナントの要望による賃料減額や、テナントが退去し空室となった場合、当該物件における賃貸利益が減少するもしくはマイナスとなる可能性があり、長期間にわたる空室や賃料減額が多数において発生した場合は、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、賃料決定のプロセスにおいて、近隣の同種物件の成約情報の収集や、候補物件の現地調査を行い、契約期間における空室の発生や賃料の下落を勘案して決定しリスク低減に取り組んでおります。

 

⑤ 委託先への依存について

 当社グループは、不動産管理事業において、主に管理物件の建築設備保守点検業務や清掃業務、工事を委託会社へ発注しております。委託先や発注先の選定に際して、財務状況や経営状態、品質管理能力、技術力等を総合的に勘案して選定しておりますが、委託先や発注先を十分に確保できず納期遅延が発生した場合や、委託先や発注先の倒産や工事中の事故などが発生した場合、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 また、不動産販売事業においては、新築一棟マンションの設計施工にあたり、設計及び施工工事の一部又は全部を委託会社へ発注しております。設計事務所の選定においては設計能力や事業継続能力などを、建設会社の選定においては施工能力や事業継続能力などについて慎重な検討を行っておりますが、設計事務所や建設会社が経営不安に陥った場合、建築資材の価格上昇に伴い外注コストが上昇した場合、また建設中の事故等予期せぬ事象が発生した場合には、計画通りに物件の開発、販売をすることができなくなり、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、特定の委託先に偏らないよう、委託分野に応じて複数の委託先の確保に努めております。また委託先を選定する際には、委託先の信用調査や面談、実績、許認可等の確認を行い慎重に選定しており上記リスク低減に努めております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績の状況

 当社グループは「空室のない元気な街を創る」という企業理念のもと、入居率や賃料水準の低下等により、収益の改善が必要となった中古不動産を取得し、リノベーションやリーシング(賃貸募集活動)を実施し、収益改善による収益不動産としての資産価値を高めた上で不動産投資家へ販売するという不動産販売事業を中心に事業を展開しております。

 当連結会計年度(2023年3月1日~2024年2月29日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限が無くなったことなどにより社会活動が正常化し、回復が進んでいます。一方でウクライナ情勢の長期化に伴うエネルギー価格や原材料価格の高騰、欧米における金融不安などから先行きの不透明感が増しました。国内においては物価高や日銀による金融緩和の縮小懸念があり、先行きの不透明感に対する慎重な動きとなりました。

 当社グループの属する不動産業界においては、金融緩和が継続したことや円安、地政学上の観点から、日本不動産の割安感が増し、特に海外投資家からの関心が高く、需要は底堅く推移いたしました。但し、前述の金融緩和の縮小が不動産マーケットに大きな影響を与える可能性があることも認識しております。

 このような事業環境下におきまして当社グループは、主力事業である不動産販売事業で23件の販売件数となりました。前会計年度よりも販売件数は1件減少した一方、1棟あたりの販売単価が向上し、営業戦略としてきた大型物件への取組みが進み、売上高が大きく伸長しています。また、期末としての販売用不動産在庫残高は前会計年度を上回る5,274,101千円となり、2025年2月期以降の販売に寄与する販売在庫を大きく抱えることができています。

 この結果、当連結会計年度の業績として、売上高は11,506,543千円、営業利益は663,957千円、経常利益は454,386千円、法人税等調整額を207,166千円計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は620,059千円となりました。

 なお、当連結会計年度は連結財務諸表作成初年度であるため、前年度との比較は行っておりません。

 

 セグメント別の経営成績は次のとおりであります。

(不動産販売事業)

 不動産販売事業におきましては、主に中古物件を購入しリノベーションやリーシング(賃貸募集業務)を行い、付加価値を高めたうえで不動産投資家への販売を手掛けてまいりました。当連結会計年度は、レジデンス10棟、店舗付きレジデンス3棟、区分マンション3件、寮3棟、ビル2棟、区分事務所1件、店舗1棟を売却いたしました。その結果、当連結会計年度における売上高は10,639,823千円、セグメント利益は760,128千円となりました。

 

(不動産賃貸事業)

 不動産賃貸事業におきましては、これまでも安定的に収益を上げていた貸しコンテナ、コインパーキング、事業用・居住用サブリースに加え、不動産販売事業において取得した販売用不動産賃料収入等の獲得にも努めてまいりました。また、インバウンド需要が回復し、民泊施設による積極的な収益獲得にも努めてまいりました。その結果、当連結会計年度における売上高は629,674千円、セグメント利益は71,615千円となりました。

 

(不動産管理事業)

 不動産管理事業におきましては、既存顧客に対する管理サービスの向上に努めるとともに、安定収入を増やすべく、新たに販売した不動産の管理受託にも取り組んでまいりました。その結果、当連結会計年度における売上高は237,045千円、セグメント利益は96,236千円となりました。

 

②財政状態の状況

 当連結会計年度末における財政状態は、総資産9,931,897千円、負債7,436,847千円、純資産2,495,050千円となりました。また、自己資本比率は25.1%となっております。

 

(流動資産)

 当連結会計年度末における流動資産の残高は9,276,601千円となりました。この主な内訳は、現金及び預金3,906,537千円、販売用不動産4,513,677千円、仕掛販売用不動産760,424千円であります。

 

(固定資産)

 当連結会計年度末における固定資産の残高は655,295千円となりました。この主な内訳は、建物470,734千円、投資有価証券30,145千円であります。

 

(流動負債)

 当連結会計年度末における流動負債の残高は4,432,978千円となりました。この主な内訳は、短期借入金2,875,600千円、1年内返済予定の長期借入金959,500千円であります。

 

(固定負債)

 当連結会計年度末における固定負債の残高は3,003,868千円となりました。この主な内訳は、長期借入金2,611,061千円、社債258,000千円であります。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は2,495,050千円となりました。この主な内訳は、資本金372,519千円、資本剰余金531,239千円、利益剰余金1,591,786千円であります。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、2,972,579千円となりました。 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

 (営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果使用した資金は214,512千円となりました。

 これは主に、税金等調整前当期純利益906,968千円を計上した一方、棚卸資産の増加額727,796千円、固定資産売却益452,725千円が生じたこと等によるものであります。

 

 (投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は564,585千円となりました。 これは主に、定期預金の預入による支出416,800千円、敷金の差入による支出68,445千円が生じたこと等によるものであります。

 

 (財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果得られた資金は713,351千円となりました。 これは主に、新株予約権の行使による株式の発行による収入398,664千円、長期借入れによる収入4,290,000千円、社債の発行による収入147,467千円、短期借入金の純増加額1,988,513千円が生じた一方、長期借入金の返済による支出5,933,669千円、社債の償還による支出178,000千円が生じたこと等によるものであります。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社グループは生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

b.受注実績

 当社グループは受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年3月1日

至 2024年2月29日)

前年同期比(%)

不動産販売事業(千円)

10,639,823

不動産賃貸事業(千円)

629,674

不動産管理事業(千円)

237,045

合計(千円)

11,506,543

 (注)1.2024年2月期より連結財務諸表を作成しているため、前年同期比については記載しておりません。

2.当連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

当連結会計年度

(自 2023年3月1日

至 2024年2月29日)

金額(千円)

割合(%)

㈱ランドマン

1,405,000

12.2

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態及び経営成績の状況

 当社の当連結会計年度の財政状態に関する認識及び分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載のとおりであります。

経営成績の状況

 当社グループは当連結会計年度が連結初年度であり、前期は連結財務諸表を作成していないため、前期との比較は行っておりません。

(売上高)

 当連結会計年度の売上高は、11,506,543千円となりました。

 セグメントごとにみますと、不動産販売事業は、取扱物件の価格帯向上や大型物件の取組み強化等、平均販売金額を高める方針を進めた結果、販売単価が向上し、売上高は10,639,823千円となりました。不動産賃貸事業は、収益不動産の保有中に発生する賃料収入の増加や、民泊需要の上昇で客室平均単価が向上により、売上高は629,674千円となりました。不動産管理事業は、管理受託戸数の増加により、管理手数料が増加し、売上高は237,045千円となりました。

 

(売上原価、売上総利益)

 当連結会計年度の売上原価は、積極的な販売活動により9,884,430千円となりました。

 この結果、当連結会計年度の売上総利益は、1,622,113千円となりました。なお、売上総利益率は14.1%となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

 当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、東京本社の移転費用や、人件費の増加があったものの、居住用販売用不動産の在庫水準の影響により、居住用販売用不動産に係る控除対象外消費税等が減少した結果、958,156千円となりました。

 この結果、当連結会計年度の営業利益は663,957千円となり、売上高に対する営業利益の比率は5.8%となりました。

 

(営業外損益、経常利益)

 当連結会計年度の営業外収益は、3,761千円となりました。また、営業外費用は、販売用不動産購入資金に係る借入の融資手数料や支払利息の増加により213,331千円となりました。

 この結果、当連結会計年度の経常利益は454,386千円となり、売上高に対する経常利益の比率は3.9%となっております。

 

(特別損益、特別損失、当期純利益)

 当連結会計年度の特別利益は、東北ホテル3棟の売却による固定資産売却益を計上したことにより、452,725千円となりました。また、当連結会計年度の特別損失は、一部設備等を除却したことによる固定資産除売却損を計上したことにより、143千円となりました。また、法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額をあわせた税金費用は、286,908千円となりました。

 その結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は620,059千円となっております。

 

b.経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2事業の状況 2事業等のリスク」に記載のとおり様々なリスク要因が考えられます。

 当社グループは、それらのリスクに対しての対応策を講じ、「第2事業の状況 1経営方針、経営環境及び課題等」に記載した事項を推進し、主力事業である不動産販売事業を更に成長させるとともに、不動産賃貸事業、不動産管理事業においては安定収益の獲得に努め、成長性を取りつつ安定性も兼ね備えたバランスのよい事業構成を目指してまいります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フローの状況

 当社の当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析とそれらの要因につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

b.資本の財源及び資金の流動性についての分析

 当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金、販売用不動産購入資金、設備資金であります。

 運転資金は、原則として手許資金で賄っておりますが、金融機関からの総合的提案があった場合は調達を行い、手元流動性を高め緊急な販売用不動産の取得にも対応できる体制を整えております。

 販売用不動産購入資金は、主に金融機関からの借入れにより調達しており、物件毎の販売計画に基づいて長期借入金または短期借入金で調達しております。また、当連結会計年度末において複数の金融機関との間で合計2,450,000千円の当座貸越契約及びコミットメントライン契約を締結しております。(借入実行残高1,578,000千円、借入未実行残高872,000千円)

 設備資金は、設備投資計画に基づき、案件ごとに手持ち資金で賄えるか、不足するかの検討を行います。不足が生じる場合は、長期借入金にて調達を行っております。

 なお、当連結会計年度末における借入金及び社債を含む有利子負債の残高は6,849,976千円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は2,972,579千円となっております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りとは異なる場合があります。

 財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。