(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「共に育つ」の経営理念のもと、基本的な経営方針として以下の3点を定め、事業活動を行っております。
① 堅実な経営
取引の安心と安全を支えるエスクローの基盤を構築し、合理的な利便性のある専門サービスの創出を目指す。
② 健全な経営
自己資本向上を経営指標として健全な経営体質を目指す。
③ 革新な経営
時流を的確に捉え、変化に対応できる革新的な経営と挑戦的な事業展開を目指す。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、設立時より経営の基本方針として自己資本の向上に注力してまいりました。今後も事業拡大を視野にいれた上で十分な自己資本を維持しつつ、売上高営業利益率やROE(自己資本利益率)等を主要な経営指標として位置づけ、事業生産性並びに収益性の向上による企業価値の最大化を追求します。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、金融、不動産、建築に関する取引の手続き・決済分野における取引支援の知見を活かし、取引関係者の業務を一貫してサポート可能なワンパッケージサービスを提供しております。
昨今、様々な分野の取引でデジタル化やキャッシュレス化が進んでおり、金融、不動産、建築分野でも関連する法規制の改正を伴いつつ同様のひろがりがみられます。また、従来よりも早く、簡易なサービスへ変化を遂げている一方、その手続き・決済分野においては、不動産取引プロセスの変化等に伴う新たなリスクの発生により一層の堅確さが求められております。さらに、日本政府が2050年までに掲げるカーボンニュートラル戦略を合言葉に、あらゆる分野でデジタルトランスフォーメーションが進み、非対面化・デジタル化・自動化が前提となる社会が今後は一層進展していくものとみられます。
当社グループは、こうした環境変化をビジネスチャンスと捉え、持続的な価値を提供する企業グループとして変革を続けていくために、2022年2月に「中期経営ビジョン2022-2024」を策定致しました。これまで創り上げてきたトランザクション・マネジメント(取引管理)のサービス領域において、時間や場所の制限がなく、いつでも、どこでも、安心・安全に不動産に関する手続きや取引決済を可能とする「24時間365日化」を目指すべきビジョンとし、戦略的かつ重点的に投資を拡大してまいります。これにより、住宅ローン、不動産売買、住宅建築及び相続等の様々なカテゴリーにおいて非対面化・デジタル化・自動化を推進することで、不動産取引に関わる取引関係者にとって利便性が高く安全な環境を提供し、顧客の期待に応えてまいります。
具体的には、重要施策として以下の3つの施策に取り組んでまいります。
① サービスのDX化
手続きと決済の非対面化と書類のデジタル化を実現し、顧客の利便性・効率性を向上させ、サービス利用件数の増加を図ります。
② オペレーションセンターの共同利用化
大量業務の集約により業務プロセスの標準化・共通化を実現し、ローコスト化を加速させることで競争力強化を図ります。
③ 業務プロセスの堅確化
取引リスクの分析と事務過誤の原因となる業務を自動化し、確実に手続きと決済を行う業務プロセスを構築することで不動産取引保証®の標準化を図ります。
(4)会社の対処すべき課題
当社グループは、時間や場所の制限がなく、いつでも、どこでも、安心・安全に不動産に関する手続きや取引決済を可能とする「24時間365日化」を目指すべきビジョンとし、住宅ローン、不動産売買、住宅建築及び相続等の様々なカテゴリーにおいて非対面化、デジタル化、自動化を推進することで、不動産取引に関わる取引関係者向けに利便性が高く安全な環境へ変革し、顧客の期待に応えてまいります。具体的には以下を対処すべき課題として、各施策を実行してまいります。
① 事業規模の拡大
「24時間365日化」を広く実現するためには、当社グループのサービス実績を着実に積み上げ、知名度を向上させ、更なる信用・信頼を獲得する必要があります。そのために、手続きと決済の非対面化と書類のデジタル化の実現により顧客の利便性を向上させるサービスのDX化を推進します。具体的には、取引に関連する契約の非対面化や不動産登記に関する書類のデジタル化、不動産登記の完全オンライン申請、AIを活用した建築業務のデジタル化等の支援により、サービスの利用件数増加に取り組んでまいります。
② 労働集約型ビジネスモデルからの脱却
顧客ごとに分散した従来の労働集約型のビジネスモデルでは、人財の採用、教育や研修のプロセスに一定の時間を要し、迅速な事業規模の拡大に対応できない可能性があります。事業規模の拡大により発生する大量業務に対応し、ローコストオペレーションにより競争力を一層強化するためには、大量業務を集約し、業務プロセスの標準化・共通化を実現する必要があります。そのために、住宅ローンの貸出時から完済時(相続や担保権抹消等)へ業務領域を拡大し、複数顧客業務が利用可能なオペレーションセンターの増設や、金融機関向けサービスに止まらず不動産事業者、建築事業者及び士業専門家等複数の業務に対応できるオペレーションセンターの構築(マルチユース化)に取り組んでまいります。
③ 不動産取引に関するリスクへの対応
取引関係者の高齢化やデジタルシフトによる不動産取引プロセスの変化等から発生する新たなリスクに対し、従来以上に適切なリスクコントロールが必要となります。その実現に向け、不動産取引に関するリスクの分析と事務過誤の原因となる業務を自動化することにより、確実に手続きと決済を行う業務プロセスを構築し、当社グループが提供する不動産取引保証®の標準化を推進します。具体的には、事業会社の業務系システムとの連携による業務の自動化を進めること等により事務過誤の原因となる手作業による業務を削減し、重要書類のデジタルストレージ化により、紛失・漏洩リスクを排除いたします。また、不動産登記情報の解析により潜在リスクが判定できるよう取り組んでまいります。
④ 人財採用・育成及び従業員の意欲・能力・満足度の向上
当社グループの持続的な成長のためには人財の採用・育成は重要課題のひとつであります。重要施策を推進するためには、業務に関する十分な知見を有することはもとより、国籍や性別等に関係なく多様な人財を採用し、その人財が活躍できる機会・環境を提供していく必要があります。当社グループでは、「人事基本方針」を定め、従業員にとって一層働きがいのある会社であり続けるよう積極的に取り組んでまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。なお、記載事項の中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社グループは持続的な成長と中期的な企業価値の向上を目的とし、公正で透明性の高い健全な経営体制を維持するために、法令遵守の徹底、組織体制の定期的な見直し、職務権限の明確化、監査機能の充実等内部統制の強化を図っております。今後も公正で透明性の高い健全な経営体制維持のために必要なコーポレート・ガバナンス体制を強化し、適時情報開示体制の充実を進めてまいります。
(2)戦略
①「人財の育成に関する方針」
当社グループは、当社が有する社会的使命と責任を認識し、従業員一人ひとりが、高い専門性、協調性を持ち、自律し、変化を恐れず挑戦し続け、共に成長できる人間力豊かな人財となることで、社会情勢の変化や様々な価値観に対応し、新しい価値の創造に取り組み、当社の持続的成長を通じて社会に貢献していきます。また、すべての従業員が、人財の多様性(ダイバーシティ)を受け入れ、高い倫理観と信頼関係により、従業員同士が互いを理解し、感謝し、高め合い、尊重する風通しの良い企業風土を醸成し、誇りを持って働くことができる企業を目指します。
また、高い倫理観を持ち、社会情勢の変化や様々な価値観に対応し、当社の目指す姿を共有した上で、担当する業務について、高い専門性をもって自律的に取り組み、協調し、チャレンジすることで、期待された成果を出せる人財を育成します。そのために、個々の能力が最大限に発揮できるよう、従業員のキャリア志向、経験、適性等により適切な人財配置を行います。また、業務研修やコンプライアンス研修に加え、海外研修など、チャレンジ意欲旺盛で、協調性、高い倫理観を持って業務に従事できる人財に対しては、更に挑戦できる機会を提供していきます。
②「社内環境の整備に関する方針」
当社グループは、経営理念を実現し当社が持続的な成長を行っていく基盤は、従業員とその家族が心身ともに健康であることと認識し、時間外労働の縮減や有給休暇の計画的取得、就業環境の整備や諸制度拡充等により、従業員のワーク・ライフ・バランス確保・充実を行います。そのために管理職のマネジメント力の向上、業務の合理化・効率化を進める等、従業員が能力を十分に発揮し、安心して働くことができる環境を提供します。
(3)リスク管理
当社グループでは、企業価値向上のためにはコンプライアンスの徹底が必要不可欠であると認識しており、コンプライアンス規程を制定し、これに従い全役職員が法令等を遵守し高い倫理観をもった行動をとることを周知徹底しております。
また、市場、情報セキュリティ、環境、労務等事業運営上のリスクについて、リスク管理規程を制定しており、これらのリスクには取締役副会長を委員長とし、代表取締役(子会社を含む)をはじめ、常勤取締役等によって構成されるコンプライアンス・リスク管理委員会が中心となって対応しております。委員長が選任した各委員は担当部署のリスク管理責任者として日常の業務活動におけるリスク管理を行うとともに、不測の事態が発生した場合にはコンプライアンス・リスク管理委員会へ報告し、その内容を取締役会に報告する体制を整えております。
(4)指標及び目標
当社グループでは、人財の育成および社内環境の整備に関する方針について、次の指標を用いており、当該指標に関する目標及び実績は次の通りであります。
指標 |
目標 |
実績(当連結会計年度) |
育児休業からの復職率(注)2. |
2025年2月期 100.0%を維持 |
100.0% |
男女間の賃金差異(注)2. |
2025年2月期 80.0%以上を目標 |
74.4% |
女性管理職比率(注)3. |
2025年2月期 40.0%以上を維持 |
43.2% |
(注)1.数値は株式会社エスクロー・エージェント・ジャパンのみ。
2.男性及び女性の正規雇用者(臨時雇用者を除く)を母数として割合を算出しています。
3.管理職に占める女性労働者の割合について、管理職は担当マネージャー以上の者を指します。
当社ではこれらの領域に継続的に取り組むとともに、指標及び目標を継続して検討してまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクを記載しております。ただし、現時点では予見できない又は重要な影響とみなされていない等、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は、別段の記載のない限り、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性がある全てのリスクを網羅するものではありません。なお、当社はこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容も合わせて慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
(1)オペレーショナルリスク
当社グループにとってのオペレーショナルリスクは、内部プロセス、人員体制、システム等が不適切もしくは機能しないことにより業務に支障が発生し、結果、経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性を想定しています。具体的には①事務リスク、②システム・情報セキュリティリスク、③人的リスク、④法務リスクを掲げています。
①事務リスク
当社の業務は、DX化を進めているものの労働集約型の業務に依存する面も多く、その従事する従業員が正確な事務を怠り、あるいは事故、不正等を起こしてしまった場合、履行補償等の責を負い、結果、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。よって、当該リスク管理については、業務プロセス・マニュアル等の改善による単純化、システム化への移行による標準化に努めており、また、万が一、リスクが発生した場合の受入れ体制として事務過誤報告態勢のアクションプランを構築しております。さらに、事務事故が起きてしまった場合、事故の発生状況の原因を詳細に把握し、事務リスクの所在及び原因・性質を総合的に分析することにより、再発防止並びに軽減策に活かしております。
②システム・情報セキュリティリスク
当社グループの事業は、事務の合理化を図るため、多岐に渡るクラウドシステムを利用してサービス提供を行っています。そのため、そのクラウドシステムをはじめ社内業務における業務システム等のシステム障害、誤作動や不正使用等を起こしてしまった場合、賠償責任等の責を負い、結果、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。よって、当該リスク管理については、情報セキュリティ基本方針に基づく情報セキュリティ管理規程等を整備し、常に法改正等のメンテナンスを怠らず、適正な運営管理を行っております。
③人的リスク
当社グループにとって、人財は極めて重要な経営資源であり、今後の事業発展を支える人財の安定的な確保は経営存続に不可欠な課題の一つです。当社が求める人財を十分に確保、育成できない場合、または多数の従業員が一時に流出した場合、業務処理に支障をきたし、結果、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。よって、当該リスク管理については、人事基本方針に基づき、人事評価制度に基づく適正な評価を実施するとともに、優秀な人財を確保するために働きがいのある環境整備、従業員のモチベーション向上及び従業員向けに譲渡制限付株式報酬制度を導入して、長期的な勤続を促す施策を実施しております。
④法務リスク
当社グループの各法人、役員及び従業員の故意又は過失による法令違反やそれらに起因する監督当局からの業務停止等の行政措置並びに当社グループに対する訴訟の提起等により、顧客に対して当社グループのサービスが提供できなくなった場合、業務処理に支障をきたし、結果、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
よって、当該リスク管理については、事業遂行にあたり関係法令及び免許・許認可要件等を遵守すべく、教育研修による役員及び従業員に対する法令等遵守の徹底やコンプライアンス規程及びリスク管理規程等の社内規程の整備等を行うとともにコンプライアンス・リスク管理委員会を定期的に開催し、全社的なコンプライアンス意識の向上と管理体制の強化に努めております。なお、個人情報の取扱いについては、「プライバシーマーク」認証の取得、「個人情報の保護に関する法律」等関連法規の遵守を図るとともに社内規程の整備を行い適切な運営を実施しております。
(2)災害等リスク
当社グループの事業は、金融機関、不動産事業者、建築事業者、士業専門家に対し、各種サービスの提供を行っていることから、大規模地震、台風、暴風雨等の自然災害、または戦争、テロ、火災等の人災、大規模な疫病(新型コロナウイルスを含む)の蔓延等が発生した場合、正常な営業活動を行うことができなくなり、結果、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。よって、当該リスク管理については、当社グループの事業用サーバーシステム等を耐障害性のある施設への設置及び分散配置等を実施し、災害発生時には障害の発生を最小限に抑えるための方策等を講じております。
(3)住宅ローン市況、不動産市況等のリスク
当社グループの事業には、住宅ローン市場や不動産流通等国内不動産市況の動向に大きな影響を受ける事業部門があります。このため、これらの市場が急速に悪化した場合に取扱件数が大幅に減少することが想定され、結果、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。よって、当該リスク管理については、常に市況の悪化が想定される市場動向を顧客との対話を含めて見定め、且つ、これからの時代において市場が長期的に拡大する事業分野(例:相続市場等)へのシフトを基本に新しいサービスの開拓に注力いたします。
(4)貸倒れに関するリスク
当社グループは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、貸倒引当金を計上しております。しかしながら、景気の動向等によっては、取引先の信用不安の発生により予期せぬ貸倒れリスクが顕在化し、貸倒損失の発生や追加的な貸倒引当金の積み増しを要する事態が生じ、結果、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。よって、当該リスク管理については、当社グループでは与信管理規程に則った取引先別の与信限度額を設定し、信用状態の継続的な把握、必要に応じた債権保全措置を行うことにより不良債権の発生防止に努めているほか、契約履行の過程で常に細心の注意を払い取引を行っております。
(5)特定取引先への依存度について
当社グループの当連結会計年度末における売上高総額に対する司法書士法人エスクロー・エージェント・ジャパンへの売上高実績の割合は12.4%となっております。同法人とは良好な関係を継続しておりますが、同法人の経営方針や事業戦略の変更等何らかの理由により、取引条件が大きく悪化した場合または取引が大幅に縮小した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。よって、当該リスク管理については、新規取引先の開拓並びに既存取引先との深耕等により特定の取引先に依存しない営業基盤の拡大に注力いたします。
(6)レピュテーショナルリスク
マスコミ報道、インターネット掲示板等での評判・風評・風説等により取引先との取引の縮小、停止がきっかけとなり当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼすリスクがあります。よって、当該リスク管理については、適時適切な情報発信、レピュテーショナル事案発生時には早期に対処を行う体制整備等を行っております。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度(2023年3月1日~2024年2月29日)におけるわが国経済は、コロナ禍から平時へ移行し、経済・社会活動の正常化が進む中、雇用・所得環境の改善のもと個人消費の持ち直し等を受け、景気は緩やかな回復基調で推移しました。一方で、世界的な金融引締めの影響等による海外経済の下振れが国内の景気を下押しするリスクになりうるほか、物価上昇や海外情勢、金融資本市場の変動等が経済に与える影響に十分注意する必要があります。
不動産市場については、住宅取得の支援制度の充実、金融緩和政策の維持、及びテレワークの普及等により住宅取得ニーズは高いものの、全国住宅地の価格指数の上昇等を受け、足元ではやや鈍化する状況が続いております。
このような事業環境の中、当連結会計年度においては、金融機関の積極的な住宅ローンの取り組みを背景にサービス利用件数が過去最高を記録するとともに、BPO事業における事務受託件数も好調に推移いたしました。また、不動産取引の非対面決済サービス「H'OURS(アワーズ)」の利用件数及び不動産調査・評価サービスの受注増加に加え、2022年10月より当社グループ子会社として新たに加わった株式会社サムポローニアの通期連結業績への寄与もあり、大幅な増収増益となりました。
以上の結果、当連結会計年度における当社グループの業績は、売上高は4,138,525千円(前連結会計年度比11.5%増)、営業利益は456,094千円(前連結会計年度比95.1%増)、経常利益は457,108千円(前連結会計年度比68.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は299,841千円(前連結会計年度比226.1%増)となりました。
(エスクローサービス事業)
エスクローサービス事業においては、金融機関、不動産事業者及び士業専門家に対し、不動産取引の利便性、安全性及び業務の効率化に寄与する各種サービスを提供しております。また、連結子会社の株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン信託における信託サービス、相続手続き代行サービスでは決済の安全性確保、財産保全等のニーズに対応しているほか、株式会社サムポローニアにおける不動産・商業登記申請支援サービスやマイナンバーカードを利用した本人確認及び電子署名サービスである「サムポロトラスト」を提供しております。
当連結会計年度においては、主要顧客である金融機関の住宅ローン取扱い件数が好調であったことに伴うサービス利用件数の大幅増加及び連結子会社の株式会社サムポローニアの堅調な連結業績への寄与があったほか、不動産取引の非対面決済サービス「H'OURS(アワーズ)」についても利用件数が増加いたしました。
以上の結果、セグメント売上高は1,999,699千円(前連結会計年度比52.8%増)、セグメント利益は788,423千円(前連結会計年度比90.7%増)となりました。
(BPO事業)
BPO事業においては、金融機関における住宅ローンに係る事務及び不動産事業者における調査・測量業務の受託等、クライアントの業務課題を解決するための専門性の高いサービスを提供しております。また、連結子会社の株式会社中央グループでは、建築・開発設計サービス、士業専門家への業務支援サービスや建築事業者向け各種コンサル
ティングサービスを提供しております。
当連結会計年度においては、金融機関が行う住宅ローン取り組みを背景に事務受託件数が好調な推移をみせているものの、建築事業者からの敷地調査業務の受託件数の鈍化、派遣事業の一部廃止及び業容拡大に向けた積極的な人財投資等により減益となりました。
以上の結果、セグメント売上高は1,949,797千円(前連結会計年度比1.2%減)、セグメント利益は404,482千円(前連結会計年度比4.9%減)となりました。
(不動産オークション事業)
不動産オークション事業においては、連結子会社の株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン信託にて、主に税理士等の士業専門家からの相談に応じ、不動産の調査から取引決済まで安全性の高い不動産取引の機会の場を提供しております。これにより売買後のトラブルや紛争を未然に回避することができるほか、取引価格については入札方式を採用することによって透明性の高い価格形成が可能となり、不動産取引の利便性、安全性の向上に寄与しております。
当連結会計年度においては、不動産価格の高止まりにより相続不動産の仲介が停滞している中、継続案件の着実な実行と新規案件の開拓に注力し、案件確保に努めたものの、成約及び決済時期に遅れが見られました。
以上の結果、セグメント売上高は189,029千円(前連結会計年度比55.9%減)、セグメント損失は28,083千円(前連結会計年度は95,640千円のセグメント利益)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は2,709,180千円となり、前連結会計年度末と比較して189,177千円の増加となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローの収入は499,622千円(前連結会計年度は328,548千円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益が457,108千円となったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローの支出は127,047千円(前連結会計年度は299,036千円の支出)となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出103,503千円、有形固定資産の取得による支出18,984千円があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローの支出は183,238千円(前連結会計年度は176,393千円の支出)となりました。これは主に、配当金の支払額174,592千円があったことによるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社の業務は、システム提供・業務受託・人材派遣等であり、生産活動を行っていないため、生産実績については記載しておりません。
b.受注実績
当社の業務は、システム提供・業務受託・人材派遣等であり、受注生産を行っていないため、受注実績については記載しておりません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
販売高(千円) |
前年同期比(%) |
エスクローサービス |
1,999,699 |
+52.8 |
BPO |
1,949,797 |
△1.2 |
不動産オークション |
189,029 |
△55.9 |
合計 |
4,138,525 |
+11.5 |
(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年3月1日 至 2023年2月28日) |
当連結会計年度 (自 2023年3月1日 至 2024年2月29日) |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
住信SBIネット銀行株式会社 |
419,700 |
11.3 |
532,096 |
12.9 |
司法書士法人エスクロー・エージェント・ジャパン |
370,467 |
9.98 |
514,115 |
12.4 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は3,454,158千円となり、前連結会計年度末と比較して119,478千円の増加となりました。これは主に、現金及び預金が89,177千円、その他流動資産が53,624千円増加したことによるものであります。固定資産は993,628千円となり、前連結会計年度末と比較して92,725千円の増加となりました。これは主に、投資その他の資産が101,001千円増加したことによるものであります。
以上の結果、総資産は4,447,787千円となり、前連結会計年度末と比較して212,203千円の増加となりました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は890,742千円となり、前連結会計年度末と比較して52,084千円の増加となりました。これは主に、その他流動負債が91,370千円増加した一方、買掛金が49,893千円減少したこと等によるものであります。固定負債は91,071千円となり、前連結会計年度末と比較して26,676千円の増加となりました。
以上の結果、負債合計は981,813千円となり、前連結会計年度末と比較して78,761千円の増加となりました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は3,465,974千円となり、前連結会計年度末と比較して133,442千円の増加となりました。これは主に、利益剰余金が125,236千円増加したこと等によるものであります。
以上の結果、自己資本比率は77.9%(前連結会計年度末は78.7%)となりました。
b.経営成績等の分析
(売上高)
当連結会計年度における売上高は4,138,525千円となり、前連結会計年度と比較して427,720千円の増加(前年同期比11.5%増)となりました。
(売上総利益)
当連結会計年度における売上総利益は1,919,270千円となり、前連結会計年度と比較して268,955千円の増加(前年同期比16.3%増)となりました。これは主に、売上高の増加に伴うものです。
(販売費及び一般管理費)
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は1,463,176千円となり、前連結会計年度と比較して46,636千円の増加(前年同期比3.3%増)となりました。これは主に、貸倒引当金繰入額が減少した一方、人件費等が増加したことによるものであります。
(営業利益)
当連結会計年度における営業利益は456,094千円となり、前連結会計年度と比較して222,319千円の増加(前年同期比95.1%増)となりました。
(経常利益)
当連結会計年度における経常利益は457,108千円となり、前連結会計年度と比較して186,080千円の増加(前年同期比68.7%増)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は299,841千円となり、前連結会計年度と比較して207,883千円の増加(前年同期比226.1%増)となりました。
c.セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
事業セグメントごとの経営成績の状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
d.資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資金需要のうち主なものは、事業の維持・拡大のための人財、システム及び設備投資等であります。なお、その資金については自己資金により賄うことを基本とし、金融機関からの借入は行わない方針でおります。
e.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等を「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)目標とする経営指標」に記載のとおりとしています。
当連結会計年度におきましては、自己資本比率は77.9%、ROEは8.8%、売上高営業利益率は11.0%、連結配当性向は87.3%となりました。中長期的な企業価値向上のため、引き続き収益力の向上と強固な資本構成の維持に注力し、目標とした経営施策の実施に取り組んでまいります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
③ 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたり、当社グループが採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。
この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者が過去の実績や取引状況を勘案し、会計基準の範囲内かつ合理的と考えられる見積り及び判断を行っている部分があり、この結果は資産・負債、収益・費用の数値に反映されております。これらの見積りについては、一部過去の実績に基づく概算数値を用いるために、不確実性が伴っており実際の結果と異なる場合があります。
該当事項はありません。
当社グループの事業においては、不動産取引の非対面化や業務の合理化が急速に進んでおります。こうした動向を踏まえ、当社は2020年3月にデジタル技術を用いた業務効率化支援及び新規事業開発を推進するため、DX・システム部を新設いたしました。同部にて業務の自動化への取組みはもとより、不動産取引等の安心と安全を支える可能性のあるテクノロジーの研究を継続的に行っております。
なお、当連結会計年度において研究開発費は発生しておりません。