第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。

(経営方針)

多くの従業員が働きがいを持てば、その企業は安定的に高い顧客満足度と業績成果を生み出せます。その結果、従業員の更なる成長に向けた教育や福利厚生の充実等に投資が回り、より一層の働きがい(従業員満足)に繋がる好循環サイクル、SPCが形成されます。

当社グループは、顧客企業において、このSPC経営を実現することで、従業員と消費者、消費者と企業、企業と従業員を最適に結び付けるサービス提供を通じ、「精神的に豊かな社会の創造」に貢献することをミッションとしております。

その実践のために「社員第一主義」、「顧客中心主義」、「社会的に価値ある事業を行う」という3つの経営指針を設けており、これらの指針に基づき顧客企業に対して調査からコンサルまでの各種サービスを提供してまいります。

 

(経営環境)

当社グループの顧客であるサービス業を取り巻く経営環境は、新型コロナウィルス感染症によって大きく経営基盤が揺らぎました。その後、5類感染症への移行によって回復基調となったものの、原材料価格の高騰と高止まり、長引く実質賃金の下落による家計消費の低迷、人手不足と人件費の上昇などの新たな要因によって依然として厳しい環境が続きましたが、価格転嫁がある程度許容され始めたことで、ようやく持ち直しの方向に進みつつあります。当社グループにおいても業績回復に向けては、相応の努力を要する状態が続いておりますが、所与の環境を踏まえ対応を続けてまいります。

一方、日本の人口構造上人手不足は長期にわたると考えられるため、「お店のファンを増やすためのCS」に加え、人材の確保・定着に資する従業員エンゲージメント(ES)の面からも、当社グループに期待される使命や役割は、より一層大きなものとなるとの認識に立って、当社グループが掲げる経営理念「精神的に豊かな社会の創造」の実現に向けて、顧客企業の経営課題解決に繋がる効果的な支援を行ってまいる所存であります。

 

(経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)

当社グループは、企業価値と株主価値の向上を目指し、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標を、「営業利益率」、「親会社の所有者に帰属する当期利益」及び「親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)」としております。

当連結会計年度を含む直近5年間の各指標は以下のとおりとなり、当連結会計年度においては、前連結会計年度と比較し、売上収益は8.0%増となったものの、物価高に伴うモニター謝礼の上昇、人員増及び昇給に伴う労務費の増加などによって営業利益率が低下し、親会社の所有者に帰属する当期利益は減益となりました。

 

 

 

 

2020年2月

2021年2月

2022年2月

2023年2月

2024年2月

営業利益率

(%)

12.7

16.4

14.7

7.5

親会社の所有者に帰属
する当期利益(△損失)

(千円)

223,182

△244,554

206,510

219,691

114,366

ROE

(%)

6.9

7.3

7.5

3.9

 

(注) 1.2020年2月期は、決算期変更の経過期間にあたるため、11カ月の変則決算となっております。

   2.2021年2月期の営業利益率及びROEについては、親会社の所有者に帰属する当期損失であるため記載しておりません。

 

 

(対処すべき課題)

当社グループは、様々な業種への拡大と浸透、従来よりも難度の高い調査への対応力強化によって、基幹サービスである一般消費者(モニター)による顧客満足度覆面調査「ミステリーショッピングリサーチ(以下「MSR」という。)」の新型コロナウィルス感染症の感染拡大以前の状態への回復と着実な成長を目指しております。

また、コロナ禍に伴って生じた在宅勤務等の大きな労働環境の変化や、人手不足問題によって、従業員エンゲージメントやモチベーション管理、さらには業務の効率化という課題を抱えている顧客企業が数多く存在します。そのような顧客企業の問題解決に資するべく、今後も引き続き従業員満足度調査「tenpoket チームアンケート」を中心としたSaaSサービス群(以下「tenpoket」という。(注))の成長とともに、採用支援サービスも開始しております。加えて、コロナ禍及びその後のコストプッシュインフレなどによって新たに生まれたニーズへの対応も加速させてまいります。

それらの取り組みにより、顧客企業におけるサービスプロフィットチェーン(以下「SPC」という。)経営の実現を支援するとともに、当社グループが掲げる経営理念「精神的に豊かな社会の創造」の実現に向け、更なる経営の安定化を進めるべく、以下の6項目について重点的に取り組んでまいります。

(注)tenpoketに含まれる主なSaaSサービスは、tenpoket チームアンケート、tenpoket トーク、MSナビ、SVナビです。

 

(1) サービスの顧客ニーズへの適合度向上

顧客ニーズの多様化や海外企業からの調査依頼の増加を背景として、覆面調査に対する要望もさらに複雑化しております。高いレポート品質や高難度調査への対応が可能であることが、覆面調査市場における当社グループの優位性になっております。今後もミステリーショッピングリサーチ及びその他、当社グループが提供する各種サービスを、各顧客企業にとって不可欠な存在にしていくことが課題と認識しております。

そのため、tenpoketが顧客企業の業務により密接に連携するよう、その中に含まれる各種ソフトウエアへの開発投資を継続してまいります。

また、コロナ禍によって財務体質が悪化している顧客企業に対して、政府等の補助金・助成金の活用を促すコンサルティングサービスを開始し、2024年2月期には2億円弱の売上収益を生んでおります。政策や採択方針に左右される分野ではありますが、今後も支援可能な制度の幅の拡大と各企業に適した補助金の情報提供機能を強化してまいります。

2024年2月期において、より高頻度に多数の顧客の声を収集する「カスタマーリサーチ」のリニューアルを実施、電気代の高騰などに伴い各種コストダウン商材の提供開始、採用支援サービスのトライアルなどを行ってまいりました。これらの新サービスに関するノウハウの構築に努め、新たな収益源泉を拡大してまいります。

 

(2) 成長に伴う人材の確保・教育

当社グループは、今後もミステリーショッピングリサーチ事業を中心事業として拡大していくことを志向しており、その支えとなっているものが、主にSPC経営の実現に向けて、MSRやtenpoketを仕組みの中心に据えた経営システムのインフラ構築と定着化に関するコンサルティング・研修(以下「コンサル」という。)であると捉えております。また上記のとおり、並行して積極的にサービスラインアップの拡充を進めております。

しかしながら、経営システムのインフラ構築と定着化をトータルコーディネートできる人材の育成には相応の時間がかかる上、新たなビジネスチャンスを生み出し、成長させていくことは簡単ではありません。そうした業務遂行が可能な人材を確保・育成することが重要課題と認識しております。

また、MSRの成長に合わせてレポート生産管理を行う人材、サービス提供の礎である自社開発システムを支える人材、調査データの高度な統計解析を担う人材の確保・育成も課題となるであろうことが想定されます。

そのため、以上のような人材の確保・育成が成長のボトルネックとならないよう、採用の強化に着手しておりますが、今後も顧客ニーズの動向を注視しながら、それに見合った人材確保と適正配置、並びに早期の成長を促す教育及びOJT機会の充実に努めてまいります。

 

 

(3) モニターの囲い込みと拡充

当社グループは、日本全国に57万人のモニターを保有し、幅広いエリアや属性をカバーしておりますが、一方で顧客ニーズも徐々に多様化しており、それらを満たす将来的なモニターの量の十分性には課題があると考えております。例えば、モニターの少ないエリアに出店しているナショナルチェーン等の調査や、同一モニターが複数回来店できない業種の調査など、以前にはない難度の調査が求められるケースもあります。加えて、モニターからの調査応募数がコロナ禍前のレベルに戻っていないという課題もあります。

そのため、今後は効果的な広告宣伝等の実施により当社グループの認知度・信用力向上を図り、登録モニター数の拡大を進める一方、モニターサイトのリニューアル等も含め、調査に応募していただけるモニターの拡充・活性化を進めることで、より多様化が進むであろう顧客ニーズを満たすモニター基盤の形成に努めてまいります。

 

(4) レポートの品質向上

当社グループでは、標準的に1レポート当たり7問程度のフリーアンサー設問を設けており、1問当たり200~300字程度のコメントが記載されるため、全体で1,400~2,100字程度の「お客様の生の声」が届けられますが、自店のサービス向上を念頭に、顧客企業の店舗スタッフが自発的な改善アクションを検討・実行するには、何より正しい評価とその評価理由が明確に伝わるレポートが求められています。今後もより一層有効にレポートを活用いただく上で、レポート品質の向上並びにその担保が引き続いての課題と認識しております。

そのため、今後もレポート評価結果に関するモニターへのフィードバック内容の充実、モニター向けレポート作成方法やレポートチェッカー向けレポートメンテナンス方法の周知・教育など、レポート品質の向上並びにその担保に資する仕組みの充実に努めてまいります。

 

(5) モニター謝礼及びレポート生産コストの適正化

物価の上昇に伴って調査に必要な利用金額が増加していることにより、モニターに支払う謝礼が上昇しております。加えて、インフレと人手不足に伴う労務費の上昇でレポート生産にかかるコストも増加しております。

それらの課題に対応し、利益率をコロナ禍以前の状態に回復させていくために、顧客企業との価格転嫁交渉を進めており、許容していただくケースが増加しつつあります。適正化を図るために各企業の店舗での利用金額やレポート生産コストの上昇データを示しつつ価格改定を進めるとともに、モニター活性化及び生産性向上のために調査設問数や調査条件の緩和に向けた協議を進めております。

加えて、社内でも生産コストの抑制に向けてモニターサイトの改正や新たなKPIの設定及び教育の充実等、各種生産性向上策を実施してまいります。

 

(6) 海外事業における顧客基盤の拡大と収益のストック化

アジアを中心に海外展開を図る顧客企業からMSRを現地にて実施したいとのニーズに応えるために、2016年に日系企業の進出が著しいタイと台湾にて、各国に進出している日系企業や現地企業からのオーダーに基づき、MSRやコンサルを提供しておりますが、両国での事業展開においては、継続的にMSRを実施できる顧客基盤の拡大と収益のストック化を図っていくことが当面の課題と認識しております。

そのため、MSR実施企業に対するコンサルの導入、発掘ルートの多様化による新規案件の増加や人的資源の投下などに取り組んでおります。2021年2月期において設立以来初の通期黒字を達成することができた台湾では、2023年2月期から2期連続黒字及び増収増益を実現しております。

また、MSR業界のグローバルネットワークであるMSPAへの参画や引き合いの増加などによって、海外事業の成長と合わせ、海外企業からの日本国内における調査依頼案件も拡大しております。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループは事業活動を通し顧客企業の従業員教育並びに労働環境DXを支援することで、

SDGs目標4.4『2030年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。』

並びに目標8.2『高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。』

の実現に貢献してまいります。

また、当社事業は直接環境負荷を発生するものではなく、TCFDで参照される指標の内温室効果ガス排出量Scope1はゼロと考えております。

なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

(1) ガバナンス

当社グループは、経営指針として「社会的に価値ある事業を行う」ことを定めた上で、自社の成長を両立させるべく持続可能性を経営の中心に据えております。

ガバナンスの詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。

 

(2) 戦略

当社グループの顧客である外食・小売業を中心としたサービス産業においては、コロナ禍における「営業自粛要請」による財務体質の急激な悪化に加え、エネルギーや原材料価格の上昇、労働力不足とそれに伴う人件費の上昇といった新たな課題を抱えております。

労働力不足に関しては各企業が様々な対策は行っているものの、日本の人口構造上、今後も深刻な状況が続くことが想定されます。

当社グループでは、顧客企業が労働力不足に対応するためにも、SPC経営を軸としたご支援を展開しております。MSRやtenpoketを活用した従業員エンゲージメントの向上や離職率の低下、労働生産性の向上に向けた従業員研修や労働環境DXに加え、採用コンサルティングや有料職業紹介事業などの採用関連のご支援も開始することで、人材の確保・定着支援に取り組んでまいります。

また、資金面に関してはコロナ禍において政府や自治体の補助金・助成金の採択支援を開始して成果を上げております。その他にも電気料金をはじめとするコストダウン商材販売に関しても徐々に顧客拡大が進んでいるほか、いち早く行動制限が解除された海外企業からのMSRの受注増に伴い、ミステリーショッピングリサーチの国際的な団体であるMSPAでの活動を積極化させるなど、顧客企業群の多様化並びに顧客の新たな課題の解決に資するサービス、環境変化に伴うビジネスチャンスへの対応など、様々な取り組みを進めております。

 

 


 

(3) リスク管理・モニタリング

当社は、人的資本経営に関する様々なリスクを把握するため、主要なリスクの状況について定期的にモニタリング、評価・分析を行い、必要な指示、監督を行うとともに、その内容を定期的に取締役会に報告する体制を整えております。

モニタリングの仕組みの一つとして、2015年以降、自社商材でもある従業員満足度(ES)調査(現在の「tenpoketチームアンケート」(注1))を定期的に行い、組織課題を定点観測するとともに、その他の指標(該当者ヒアリングや労務情報等)も合わせて、課題抽出・改善のプロセスを繰り返してきました。

 

2023年6月に実施をしたチームアンケート結果(正社員データ、個票より一部抜粋)はこちらです。


(注1)tenpoket チームアンケートとは、従業員エンゲージメントに影響を及ぼす要素を36項目の設問に組み込み、「上司(リーダーシップ)」「所属組織の環境」「スタッフ自身」の3区分にてチーム力を総合的に診断し、改善テーマを明確化する当社サービスです。国内最大級の研究機関である、国立研究開発法人産業技術総合研究所との共同研究にて開発いたしました。

 

この中でも特に「上司(リーダーシップ)」区分は、組織や所属スタッフに与える影響力が大きい事が研究成果で分かっており、当社では、リーダーやマネージャーが自身のリーダーシップやマネジメントを振り返るツールとして活用をしています。

 


 

※全社(正社員スタッフ)のtenpoket チームアンケート推移

 


 

全社の結果とあわせて、職種別や職務領域別の結果を確認することで、その時々の組織の課題を明らかにし、改善を進めてまいりました。

MSRの調査件数が急増し、多様な業種で調査の導入が進んだ2015年頃には、MSR運用チームのES低下が課題となりましたが、処遇改善やマネジメントの強化(部門方針の共有機会、定期的な1on1による成長支援)を推進する事でこれを解消してまいりました。

2018~2019年頃にはサービスラインナップの増加により、コンサルタントスタッフの業務負荷増が顕著な課題となりましたが、間接部門(専門職、サポートスタッフ)の増強や業務フローの整理により、コンサルタントスタッフ業務負荷の軽減を推進してまいりました。

2020~2022年頃には、中堅層の離職が重なり、離職率が一時的に7.6%まで上昇するに至りました。

事業方針や戦略方針の共有など全社コミュニケーションの方法や機会の見直し、採用強化による増員に加えて、ミドルマネージャーの抜擢や育成支援を重ねる事で、直近の離職率は4.2%に落ち着いています。

 

 

(4) 人材育成方針

当社は、消費者と店舗、現場と経営を結ぶ企業活動を通じ、「精神的に豊かな社会の創造」に貢献することを理念とし、「企業の目的は理念の実現である」と考え、「社員第一主義」「顧客中心主義」「社会的に価値ある事業を行う」を経営指針としています。

 

――――――――――――――――――――

[1]社員第一主義

従業員感動満足なくして顧客感動満足なし。社員の気づき・成長意欲に基づく実行力が顧客満足を生むと信じ、社員第一主義を掲げる。創造性と情熱を掻き立てるべく、サーバントリーダーシップを実践する。オープンブック経営を実践し、全員の企業家精神・オーナーシップを高めると共に、全員で利益や痛みを分かち合う。

 

[2]顧客中心主義

従業員感動満足が顧客感動満足を生むという連鎖を信じ、社員第一主義と並行して顧客中心主義を掲げる。顧客の利益を中心に考え、様々なパートナー間とのWin-Winの実現に向けて行動する。「顧」客であると判断出来れば、当社の利益と相反する事が起こった場合でも、それは変わらない。

 

[3]社会的に価値ある事業を行う

『利益とは明日優れた事業を行っていくための条件であり、仕事ぶりを測る尺度である』(ドラッカー):当指針は利益を度外視するという意味ではない。但し、我々は社会的に価値があるか否かを事業を行う上での判断基準とする。例え、高収益であっても社会的に価値が低く、自社にとって価値があるというだけでは、その事業を継続させない。

 

これら3つの指針と自社の成長を両立させるべく、バランスの適した経営を行うため、マネジメントチームを機能させ続ける。

――――――――――――――――――――

 

昨今の当社を取り巻く環境は、コロナ禍以降激変を続けておりますが、その中で機会を見出し、様々なステークホルダーの皆様に価値を生み出すため、以下のように組織の課題を捉え、また取り組み事項を整理しています。

 

(5) 組織の特徴と課題

当社は分社化により創業しており、創業メンバーを中心としたハイコンテクスト文化による高生産性を背景として事業成長を実現してまいりました。また、創業以来の離職率の低さ(注2)が裏付ける通り、この文化は安定した組織運営にも寄与しておりました。

(注2)一時的に離職率が上がった時期(2013~14年:11%、2020~2022年:7%前後)があるものの、概ね4%以下を推移しております。

 

しかし、2024年2月末現在、社員に占める創業メンバーの比率は2割を下回っており、先述の2020~2022年頃に重なった中堅層の離職やその後の採用強化・増員により、経験年次の二極化が顕著です。これは、世代間ギャップを生み出す温床になりかねないと認識しており、ハイコンテクスト文化からの脱却を重要課題として認識しております。

 

 

(6) 社内環境整備方針及び強化すべき取り組み

① 新人の定着・成長支援

社会課題として労働力不足が叫ばれる中、当社にとっても労働力不足は取り組むべき課題として捉えており、優秀な人材の確保に向けた投資を継続しております。

当社の事業成長に欠かせないコンサルタントの確保については、特に育成に時間を要する背景もあり、人材の獲得と合わせて、定着支援・成長支援が必須条件となっております。

コンサルタントとしての在り方や保有すべきスキルの可視化や細かなフィードバック体制、ミドルマネージャーによる細やかな成長支援環境の整備により、成長スピードの加速に努めております。

また、中途採用の受入が最も多いMSR運営チームにおいては、MSRの運営管理を習得していく中で培われる職業倫理や業務管理能力が新規事業の運営体制構築の基盤となると確信しており、人材輩出部門としての役割を有しております。従業員にとっては、多様な活躍の機会、キャリアアップ支援策としても認識されており、今後もより強化をしていく予定です。

 

② ミドルマネジメントの抜擢・成長支援

採用強化による組織拡大、そして、単一事業のリスク解消に向けて新しい取り組みを推進する当社にとって、ミドルマネジメントの抜擢と育成は、事業成長にとって必須の条件であると同時に、先述した課題(構造的な世代間ギャップ、ハイコンテクスト文化からの脱却)の解消に向けても重要な取り組みであると認識しております。

その実現に向けて、昨年から、管理職の疑似体験機会としてアソシエイトマネージャー制度を導入、任命した9名を対象に管理職として必要な知識の習得機会やマネジメント支援機会を提供して参りました。2024年3月からは、さらに一歩進めて新サービス比率の大小などの部門特性を考慮して、柔軟にマネージャー登用できる人事制度に改定、加えて複数部門にまたがる商材のノウハウを蓄積・共有するためのプロダクトマネージャー制度を開始いたしました。

 

③ 熟練スタッフの活躍推進

・MSR活用ノウハウ(コンサルティング事例)の蓄積と活用

・経験に裏付けされた、調査設計力・リスク検知能力

・大量の調査を高品質かつローコストで運営するオペレーションエクセレンス

 

これらは、それぞれの社員の気づきや意欲、創造性や情熱に基づいて磨かれてきた当社独自の優位性であると考えており、安定した組織環境(離職率の低さ、定着率の高さ)を背景に実現してきた優位性であると考えています。

事業の成長と各社員の人生の幸せの双方を実現すべく、2022年12月には「異動希望制度」を導入しました。個人のキャリアアップを支援する仕組みであるとともに、ライフイベントや環境変化に柔軟に対応し多様な働き方を受容していくための対話の機会として機能しております。

 

(7) 当該方針に関する指標の内容や当該指標による目標・実績

① 女性管理職比率

2020年2月期

2021年2月期

2022年2月期

2023年2月期

2024年2月期

2025年2月期

(2024年4月末)

8.3%

8.3%

8.3%

11.8%

16.7%

20.8%

 

 

2024年2月期の女性管理職比率は16.7%でした。長く、10%未満であった女性管理職比率は改善傾向にありますが、現状でも高い水準とは言えません。これは、総合職社員の男女比率が女性管理職比率にも直結している結果であると考えております。

先述したミドルマネージャーの抜擢や成長支援の効果もあり、2024年4月末時点における女性管理職比率は20%を超えるに至りました。また、一般職として入社した社員が総合職へと職種変更する事例も増えており、今後より改善していくものと考えております。

今後も、性別に関わらず管理職登用をしていく考えであり、公平な登用を実現していきたいと考えています。

 

 

② 男女の賃金格差

 

全従業員

正社員

総合職

一般職

アルバイト

賃金格差

(%)

53.6%

73.2%

80.1%

110.0%

59.3%

女性構成比

(%)

60.0%

50.0%

27.0%

75.8%

81.5%

男性:年次

8.6

9.5

10.9

5.1

2.1

女性:年次

5.9

8.8

9.7

8.4

2.1

 

※創業メンバーについては当社の前身となった(株)日本エル・シー・エー入社からの年次にてカウント

 

当社の男女の賃金格差は、アルバイトを含む全従業員の数値にて、大変低い数字となっております。これは、全従業員の25%を超えるアルバイトの80%が女性従業員であることが大きな要因です。また、アルバイトの賃金格差につきましては、所定労働日数・時間による影響であり、アルバイトの時給平均における賃金格差は96.7%です。

正社員の賃金格差については、特に年次の高い従業員における男女比が顕著であることが主な要因と考えており、先述の女性管理職比率と同様に、今後解消をしていけるものと考えています。

 


 

③ 男性の育休取得

 

2022年2月期

2023年2月期

2024年2月期

3年平均

取得率

(%)

33.3%

0.0%

25.0%

25.0%

 

 

直近3年度の男性の育休取得率は25.0%です。当社の正社員数は、直近3年では120~130名程度であり、配偶者の出産という機会そのものが多くはない状況のため、取得率によって状況把握をすることは難しい状況です。とはいえ、2024年2月期には長期(半年)の育児休業を取得する事例もあり、制度に関しての社内認知度は確実に上がっております。引き続き、適切に制度説明を行い選択しやすい環境の整備に努めて参ります。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの業績、株価及び財政状態等に影響を及ぼす可能性がある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしも事業等のリスクに該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する情報開示の観点から積極的に開示しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努力する方針でありますが、当社の株式に関する投資判断は、以下の記載事項及び本項以外の記載内容も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではなく、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1) モニターの確保について

当社グループのミステリーショッピングリサーチ事業を成長させていくに当たり、求められる調査地域に求められる属性のモニターを擁するためには、日本国内の各都道府県及びサービスを展開しているタイ及び台湾におけるモニターを需要とマッチした適正人数まで増加させていく必要性が生じます。そのため、効果的な広告宣伝等の実施により、適切にモニター数の拡充を図りつつ多様化する顧客ニーズへの対応に努めてまいりますが、需要の急激な増加、求められる調査地域やモニター属性の偏り等により、顧客ニーズに適合したモニターが十分に確保できない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) モニター謝礼単価及びレポート生産コストの上昇リスクについて

物価及び人手不足による労務費の上昇により、モニター謝礼単価及びレポート生産コストが増加傾向にあります。顧客企業との価格交渉による転嫁や調査条件の緩和、調査参加率及び生産性を高めるためのモニター向けサイトのリニューアルやマネジメント強化を推進することで、悪化した利益率の改善に努めてまいりますが、顧客企業における価格転嫁の許容状況や物価及び労務費上昇が当社の想定と大きく異なった場合、利益率の低下から当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) システム開発及び改善・保守について

当社グループでは、MSRならびにSaaSとして提供される商品群「tenpoket」において、自社開発による各種システムを活用しております。

今後もサービスの拡充、品質の向上及び業務の効率化等を図るため、システム開発及び改善、保守に関わる投資を積極的に行ってまいります。しかしながら、これらに想定外の遅れやトラブル等が発生した場合、関連コストが増大するなど、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(4) 情報セキュリティについて

当社グループでは、MSRを運用するにあたりモニターに係る大量の個人情報を保有しております。また、コンサルやtenpoketを提供する過程で必要となる顧客企業の機密情報等も多く保有しております。

そのため、情報管理に関する定期的な社員教育、全社的な情報管理体制の強化、システム開発及び運用におけるセキュリティ要件の厳格化、システムに対するアクセスの監視強化、ならびに第三者による定期的なシステムセキュリティ診断の実施などに取り組んでおりますが、これらの情報に対するコンピュータウィルスやハッカー攻撃、外部からの不正アクセスや、社内管理体制の瑕疵、当社グループ従業員の故意又は過失等による情報漏えいが発生した場合、当社グループのブランドイメージや社会的信用の低下、対応費用の発生、当社に対する損害賠償請求、当社グループのサービスに対する報酬の減額等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、個人情報や機密情報の保護に関する国内外の法令等が改正される場合には、これに対応するためのシステムの改修や業務方法の変更に係る費用等の発生により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性もあります。

 

(5) システム障害について

当社グループは、MSRならびにSaaSとして提供される商品群「tenpoket」において、調査の実施、レポートの生産、調査結果の納品や分析、改善活動を促すeラーニングコンテンツやビジネスチャットの提供等のために情報システムやインターネット等を利用しております。

そのため、自然災害、火災や停電等の事故、プログラムやハードの不具合、コンピュータウィルスやハッカー攻撃、外部からの不正アクセス等により、システム障害が発生した場合、当社グループの業務やサービス提供の停止、重要なデータの喪失、当社グループのブランドイメージや社会的信用の低下、対応費用の発生、当社グループのサービスに対する報酬の減額等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 人材の確保及び育成について

当社グループにおいては、コンサルティング、サービスラインナップの拡充、レポート生産、システム開発並びに統計解析業務に携わる人材の確保・育成が不可欠となっておりますが、そのような人材の確保・育成ができない場合又はそのような人材が社外に流出した場合には、当社グループの業務運営や経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 提供する情報等の正確性について

当社グループのサービスにおいて、顧客企業に対して提供する情報又は分析の真実性、合理性及び正確性は非常に重要であります。

従って、当社グループが分析のために収集した情報に誤りが含まれていたこと等に起因して顧客企業に対して不正確な情報を提供する場合や、不正確な情報を提供していると誤認される場合には、当社グループの受注案件数の減少、ブランドイメージや社会的信用の低下、当社グループに対する損害賠償請求、当社グループのサービスに対する報酬の減額等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 法的規制について

当社グループの基幹事業であるミステリーショッピングリサーチ事業においては、モニターとの間で契約書面は存在せず、全てウェブ上でのモニター会員登録を通じて業務委託契約に準ずる契約が締結されており、弁護士等の法律の専門家と相談の上、社内管理体制を構築することで法令遵守に努めております。しかしながら、今後の法改正又は新たな法令制定が行われた場合には、当社グループの事業活動が制限され、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 個人情報の管理について

当社グループは、モニターの個人情報を有し、日常業務にて個人情報に接するため、その取扱いについては個人情報保護法並びに日本工業規格「JIS Q 15001 個人情報保護マネジメントシステム―要求事項」を踏まえ、十分な管理体制を構築し、一般財団法人日本情報経済社会推進協会よりプライバシーマークを取得しております。

個人情報の保護に関する基本方針を作成し、当社グループが運営するモニター専用サイトに掲載しているほか、情報に触れる従業員に対して、個人情報保護規程及び関連マニュアルに基づき、その取扱いについて教育・研修を実施しておりますが、仮にモニター情報が外部に流失した場合には、漏えいに対する損害賠償請求がなされる、当社グループの信用が毀損しモニター確保が難しくなる等、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(10) 経済・市場環境による顧客企業の投資意欲等の影響について

当社グループの事業は、その業容上、顧客企業の教育研修に対する投資動向に一定の影響を受けます。

そのため、当社グループは市場動向を把握し、サービスのラインナップ拡大や付加価値向上ならびに顧客企業の多様化を図り、可能な限りその影響の抑制に努めてまいりますが、経済情勢の変化及び景気低迷により、顧客企業の投資意欲が減少した場合には、新規顧客開拓の低迷や既存顧客からの受注減少、中途解約の増加等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 契約が短期間となる又は利用期間が後ろ倒しされるリスクについて

MSRのサービス提供を行う際に、顧客企業との間で利用期間を設定し契約を締結しておりますが、MSRの利用規約上、3カ月前の申し入れにより、顧客企業の意思に従って中途解約がなされる又は利用期間が後ろ倒しされる場合があります。当社グループとしては、できる限り顧客企業にMSRの利用契約を継続又は契約時の利用期間どおりに実施いただけるよう、充実したカスタマーサポートの提供、顧客ニーズを反映したサービスやシステムの改善、並びに営業活動を通じた顧客ニーズの継続的な把握に取り組んでおります。しかしながら、万が一中途解約又は利用期間の後ろ倒しが急激に増加した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 知的財産権について

当社グループの事業分野における他社の知的財産権の保有や登録等の状況を把握することは困難であり、当社グループが意図せず第三者の特許権等を侵害する可能性や、今後当社グループの事業分野において第三者の特許権等が新たに成立し、当社グループを当事者とする知的財産権の帰属等に関する紛争が生じたり、当社グループが知的財産権の侵害等に関する損害賠償や使用差止等の請求を受ける等の可能性があります。

また、当社グループが第三者と提携や合併等を行うことにより、当該第三者が締結している契約に基づく知的財産権に係る制約を受けたり、第三者に対する新たな対価支払いを強いられたりする可能性もあります。

これらの結果、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) 海外事業展開について

当社グループは、海外市場の動向に細心の注意を払い、適切な対応を図るよう努めておりますが、紛争、政情不安、通関業法・税制等の法制度の変更、金融・輸出入に関する諸規制の変更、ストライキ、テロ、暴動、人材確保の難航及び社会環境における予測し得ない事態等の発生によって、事業計画に遅延が起きた場合、為替の大幅な変動が起こった場合、また、適切な対応ができず当社グループの信用及び企業イメージの悪化等により顧客企業が減少した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14) 総資産に占めるのれんの割合が高いことについて

当社グループは、非流動資産にのれんを計上しており、総資産に占める割合が高くなっております。当社グループはIFRSに基づき連結財務諸表を作成しているため、毎期の定期的な償却は発生しませんが、のれんの対象となる事業の収益力が低下し、減損損失を計上するに至った場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 13.のれん及びその他の無形資産」をご参照ください。

 

(15) 単一事業であることのリスクについて

当社グループは、ミステリーショッピングリサーチ事業の単一事業であるため、継続的にサービスのラインナップ拡大や付加価値向上ならびに顧客企業の多様化などに取り組むことで可能な限り強固な事業構造作りに努めております。しかしながら、顧客企業の業況悪化によるCSや教育研修にかかる投資の抑制など、当該市場環境が極端に冷え込んだ場合、その影響を大きく受け、他の事業分野で挽回するといった対応が取れず、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(16) 災害等による影響について

当社グループでは、地震等の自然災害や火災等の人為災害に対するBCP(事業継続計画)を策定し、その体制を整備、活動を継続しておりますが、大規模な地震・風水害・津波・大雪・新型インフルエンザ等の感染症の大流行等の自然災害や、火災・暴動・テロ・国際紛争・戦争等の人災が発生した場合、当社グループの本社の建物や設備等が被災し、従業員の出勤や業務遂行に支障が生じ、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

特に、これらの災害等により、当社グループの業務に必要なシステムやインターネット等のネットワーク環境の使用ができなくなる場合や、調査のためのモニターの確保ができなくなる場合は、当社グループの業務遂行等が極めて困難となる結果、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、災害等によって当社グループの顧客企業に被害等が生じる場合や、経済状況等の低迷が発生する場合にも、当社グループの受注案件数の減少等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(17) 内部管理体制について

当社グループは、従業員145名(2024年2月29日現在)と組織が小さく、内部管理体制も当該規模に応じたものになっております。事業の拡大に合わせ、今後も引き続き積極的に人員の増強、内部管理体制のより一層の充実を図る方針でありますが、人材の獲得及び管理体制の強化が順調に進まなかった場合には、事業等のリスクに対して適切かつ十分な組織的対応ができず、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(18) 訴訟その他の対応について

当社グループは、その事業の過程で、各種契約違反や労働問題、情報漏洩等に関する問題等に関し、顧客企業、取引先、従業員、競合他社等により提起される訴訟その他法的手続の当事者となり得るリスクを有しております。当社グループが訴訟その他の法的手続の当事者となり、当社グループに対する敗訴判決が言い渡される、又は当社グループにとって不利な内容の和解がなされる場合、当社グループの事業、経営成績及び財政状態、評判及び信用に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(19) 財務報告に係る内部統制について

当社グループでは、財務報告の信頼性に係る内部統制の整備及び運用を重要な経営課題の一つとして位置付け、グループを挙げて管理体制等の点検・改善等に継続的に取り組んでおりますが、当社グループの財務報告に重要な不備が発見される可能性は否定できず、また、将来にわたって常に有効な内部統制を整備及び運用できる保証はありません。

さらに、内部統制に本質的に内在する固有の限界があるため、今後、当社グループの財務報告に係る内部統制が有効に機能しない場合や、財務報告に係る内部統制に重要な不備が発生する場合には、当社グループの財務報告の信頼性に影響を及ぼす可能性があります。

 

(20) 新株予約権の行使による株式価値希薄化について

当社は、役員及び従業員に対する長期的なインセンティブとしてストック・オプション制度を導入しております。

今後もストック・オプション制度の活用を予定しており、現在付与している新株予約権に加えて、今後付与される新株予約権の行使が行われた場合、保有株式の株式価値が希薄化する可能性があります。

なお、本書提出日現在における新株予約権による潜在株式数は32,100株であり、発行済株式総数4,597,400株の0.7%に相当します。新株予約権の詳細は、「第4 提出会社の状況 1 株式等の状況 (2) 新株予約権等の状況」をご参照ください。

 

(21) 配当政策について

当社は、各期の経営成績及び財政状態を勘案しながら株主に対して安定的かつ継続的な利益還元を実施していく方針でありますが、業績が予想に届かず利益剰余金が不足する場合や重要な事業投資を優先するなどの影響でキャッシュ・フローが悪化する場合等は、配当を実施しない、あるいは予定していた配当を減ずる可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、物価上昇による実質賃金の長期低迷によって、内需の牽引役である家計消費が伸び悩み、加えて人手不足やそれに伴う人件費上昇、エネルギー・原材料価格の高止まりが企業経営を圧迫、価格転嫁によって幾分持ち直しが進んでいるものの、当社の主要顧客である外食・小売などのサービス産業においては、先行き不透明な環境が続いております。

このような環境下、基幹サービスである顧客満足度覆面調査「ミステリーショッピングリサーチ(以下「MSR」という。)」の売上収益は、前第4四半期連結会計期間と比較し10.4%増、SaaSは2.9%増、コンサルティング・その他(以下「コンサル」という。)は8.1%増となっております。以上の結果、前第4四半期連結会計期間と比較し、売上収益で8.9%増、営業利益は20.6%減となりました。営業利益減少の主な要因は、物価高に伴うモニター謝礼の上昇、労務費の上昇及び前年同四半期に計上された当社対象の事業再構築補助金の計上期間が終了したことによります。

また、2024年1月12日に開示しました通期連結業績修正予想(注)に対して、売上収益は98.5%、営業利益は80.6%、親会社の所有者に帰属する当期利益は80.9%で着地しております。こちらの主な要因は第4四半期に発表された事業再構築補助金の採択率が当社の過去実績を下回ったこと、当連結会計年度より支援を開始した業務改善助成金の採択期間が各自治体の事情等で想定より後ろ倒しになったこと、及びモニター謝礼や労務費の上昇によります。

売上面では、前連結会計年度と比較し、MSRは海外調査が47.7%増と牽引し全体で4.1%増、SaaSが3.9%増、コンサルが27.6%増と伸長いたしましたが、第1四半期におけるMSRの一部大手顧客の契約満了に伴うマイナスをカバーし切れず、加えて第4四半期における補助金・助成金の採択率低下及び遅延によって予想を下回りました。また、モニター謝礼及び1レポートの生産にかかる労務費・外注費等の生産コストが想定以上に上昇したことで営業利益を圧迫いたしました。一方、当連結会計年度のMSR以外の売上構成比はコロナ前の最後の12カ月決算期であった2019年3月期の13.7%と比較し、32.6%となっており、コロナ禍以降に取り組んだ各種新サービスが成果を上げてきております。

受注高においては、前連結会計年度と比較しMSRが9.3%増、全体でも9.4%増となっております。

生産面では、物価上昇に伴うモニター謝礼の上昇、1レポートの生産にかかる労務費・外注費の増加に対応するため、顧客企業における価格転嫁がある程度許容されたことで収益基盤が回復しつつある現状を踏まえ、顧客との価格交渉及び調査条件の緩和による生産コストの低減に向けた交渉を進め、当社の基幹サービスであるMSRレポート数のコロナ前水準への回復と同時に、利益率の回復にも努めてまいります。

管理面では、前連結会計年度と比較し、原価が19.8%増、販売費及び一般管理費が2.4%増となりました。原価は、人員増及び昇給に伴う労務費の増加、モニター謝礼の上昇に加え、IT関連投資の拡大により増加いたしました。販売費及び一般管理費の増加は、主に旅費交通費や社内業務の一部外注にかかる報酬が増加したためです。

(注) 2024年1月12日開示の「2024年2月期通期連結業績予想の修正及び配当予想の修正に関するお知らせ」をご参照ください。

 

この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末と比べ183,227千円減少し、3,549,988千円となりました。

当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べ46,407千円減少し、723,990千円となりました。

当連結会計年度末における資本は、前連結会計年度末に比べ136,820千円減少し、2,825,998千円となりました。

 

 

b.経営成績

当連結会計年度の経営成績は、売上収益2,391,172千円(前期比8.0%増)、営業利益179,661千円(同44.8%減)、税引前利益178,644千円(同44.9%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益114,366千円(同47.9%減)となりました。

なお、当社グループはミステリーショッピングリサーチ事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて336,455千円減少し、329,697千円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動による収入は、13,108千円(前期比6,685千円増)となりました。これは、税引前利益178,644千円、減価償却費及び償却費の計上87,620千円、営業債権及びその他の債権の増加額71,290千円、法人所得税の支払額156,221千円等によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動による支出は、176,535千円(前期比104,783千円増)となりました。これは、無形資産の取得による支出126,752千円等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動による支出は、173,088千円(前期比169,066千円減)となりました。これは、短期借入金の純増額150,000千円、長期借入金の返済による支出69,472千円、自己株式の取得による支出213,649千円、配当金の支払額74,140千円等によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績

当社グループでは、販売実績のほとんどが生産実績であることから、記載を省略しております。

 

b.受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメントで示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

ミステリーショッピングリサーチ事業

2,303,857

105.8

606,326

94.6

合計

2,303,857

105.8

606,326

94.6

 

(注) 1.当社グループの事業は、ミステリーショッピングリサーチ事業の単一セグメントであります。

2.IFRSに基づく金額を記載しており、千円未満は四捨五入して記載しております。

3.受注残高には、翌連結会計年度に売上収益となる見込みの金額を記載しております。

4.子会社においては、受注から納品までの期間が短いため、上記金額に含めておりません。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントで示すと、次のとおりであります。

(単位:千円)

セグメントの名称

金額(千円)

 前年同期比(%)

ミステリーショッピングリサーチ事業

2,391,172

108.0

合計

2,391,172

108.0

 

(注) 1.当社グループの事業は、ミステリーショッピングリサーチ事業の単一セグメントであります。

2.IFRSに基づく金額を記載しており、千円未満は四捨五入して記載しております。

3.主要な販売先については、いずれも100分の10未満であるため、記載を省略しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務諸表規則」という。)第93条の規則によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針及び 注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態の分析

(資産合計)

当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末と比べ183,227千円減少し、3,549,988千円となりました。

流動資産は、前連結会計年度末に比べ266,824千円減少し、952,864千円となりました。これは現金及び現金同等物が336,455千円減少、営業債権及びその他の債権が72,348千円増加したこと等によるものであります。

非流動資産は、前連結会計年度末に比べ83,597千円増加し、2,597,124千円となりました。これは有形固定資産が22,141千円、その他の無形資産が73,913千円増加したこと等によるものであります。

(負債合計)

当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べ46,407千円減少し、723,990千円となりました。

流動負債は、前連結会計年度末に比べ21,490千円減少し、705,779千円となりました。これは流動負債の借入金が80,528千円増加し、未払法人所得税等が96,712千円減少したこと等によるものであります。

非流動負債は、前連結会計年度末に比べ24,917千円減少し、18,212千円となりました。これは非流動負債のリース負債が24,917千円減少したこと等によるものであります。

(資本合計)

当連結会計年度末における資本は、前連結会計年度末に比べ136,820千円減少し、2,825,998千円となりました。

これは自己株式の取得による支出212,506千円、当期利益の計上113,924千円等によるものであります。

 

b.経営成績の分析

(売上収益)

前連結会計年度と比較し、MSRは海外調査が47.7%増と牽引し全体で4.1%増、SaaSが3.9%増、コンサルが27.6%増と伸長いたしましたが、第1四半期におけるMSRの一部大手顧客の契約満了に伴うマイナスをカバーし切れず、加えて第4四半期における補助金・助成金の採択率低下及び遅延によって予想を下回りました。

この結果、当連結会計年度の売上収益は2,391,172千円(前期比8.0%増)となりました。

(売上原価、売上総利益)

売上原価については、1,591,383千円(前期比19.8%増)となりました。人員増及び昇給に伴う労務費の増加、モニター謝礼の上昇に加え、IT関連投資の拡大により増加いたしました。

この結果、売上総利益は799,789千円(前期比9.6%減)となりました。

(販売費及び一般管理費、営業損益)

販売費及び一般管理費については、655,007千円(前期比2.4%増)となりました。旅費交通費や社内業務の一部外注にかかる報酬が増加いたしました。

その他の収益は34,879千円発生しており、この結果、営業利益は179,661千円(前期比44.8%減)となりました。

(親会社の所有者に帰属する当期利益)

金融収益は52千円、金融費用は1,068千円発生しており、法人所得税費用64,720千円等を差し引いた結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は114,366千円(前期比47.9%減)となりました。

 

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況の分析

当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

当社グループはキャッシュ・フローを重視した財務戦略を進めており、設備投資資金についても投資効率性などを分析した上で、原則として営業活動から得た収入を充当していく方針であります。

なお、キャッシュ・フロー指標のトレンドは以下のとおりであります。

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

親会社所有者帰属持分比率(%)

80.2

80.6

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

10.8

11.4

インタレスト・カバレッジ・レシオ

4.0

21.8

 

(注) 親会社所有者帰属持分比率:(親会社の所有者に帰属する持分)÷(総資産)

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:(有利子負債)÷(キャッシュ・フロー)

インタレスト・カバレッジ・レシオ:(キャッシュ・フロー)÷(利払い)

1.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

2.有利子負債は、連結財政状態計算書に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。

3.キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。

4.利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

 

b.資本の財源及び資金の流動性

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、モニターに対する謝礼原価やレポートチェックの外注委託費、労務費といった売上原価、人件費や旅費交通費、当社が提供する各種システムのデータサーバ費用等の販売費及び一般管理費であります。投資を目的とした資金需要は、什器備品や社内利用ソフトウェアの購入費用の他、当社がSaaSとして提供する商品群「tenpoket」のシステム開発費用であります。株主還元については、財務の健全性等に留意しつつ、配当政策に基づき実施してまいります。

上記運転資金及び投資資金につきましては、内部資金及び金融機関からの借入により資金調達を行っております。

当社グループは、中期の運転資金を確保する目的で、当社は2020年7月30日付けで株式会社三井住友銀行より500,000千円の借入を行っており、当連結会計年度末における借入金の残高は150,000千円であります。

また、機動的かつ安定的な資金調達手段を確保するとともに、財務基盤の一段の強化を図ることを目的として、主要取引金融機関との間で50,000千円の当座貸越契約を締結しております。この契約に基づく当連結会計年度末の借入実行残高はなく、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高329,697千円と合わせて、資金について十分な手元流動性を確保しているものと認識しております。

 

(3) 経営成績等に重要な影響を与える要因について

当社グループは、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、事業環境、事業内容、事業体制、同業他社等、様々なリスク要因が経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。そのため、当社グループは常に市場動向及び業界動向に注視しつつ、コンサル、生産管理、システム開発、統計解析業務に携わる人材並びに経営管理業務に携わる人材を確保・育成し、事業体制の強化はもとより管理体制の整備を進め、社会及び顧客のニーズに合ったサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因に適切な対応を図ってまいります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。