文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において、当社が判断したものです。
当社は、創業理念「孫の代まで豊かな社会を創る一翼を担う」を事業活動の最上位概念に置き、これを目指すための当社のあり方を示した企業理念と、当社が社会にもたらす価値や行動指針を示した使命を定めています。当社は、これらの経営の基本方針を高いレベルで実践することを通じて中長期的に企業価値を高めるとともに、全てのステークホルダーから信頼される企業となることを目指しています。
孫の代まで豊かな社会を創る一翼を担う
② 企業理念
ご満足いただけるソリューションを提供、社会の一隅を照らす存在でありたい
・社会に新たな価値を創出し続ける
・お客さまと社会に感謝される仕事を
・社員が仕事を通じて成長するのを支援し社員とその家族を幸せに
③ 使命
「お客さまの一員として、時代のその先に」
私たちは、お客さまの経営・業務課題の解決に、お客さまの一員として道しるべを示し、発想・技術・実現方法に限界を設けることなく、サービス・製品を想像し創造することで、世の中を変え、時代を切り拓きます。
そして、私たちの取り組みにより、お客さまをはじめ社会の人々の笑顔を増やし、社会の発展に貢献します。
(2) 経営環境
コンサルティング事業は主に地域銀行、クレジットカード会社、投資運用会社及び保険会社等の金融業界に属する企業を主要な得意先としています。金融業界においては経済を支えるインフラとしての機能を発揮するために、安定性と安全性が極めて高いITシステムの開発と維持に多大なコストを投じるとともに、金融商品やサービスの開発と並行して、これらに対応したシステムの開発が行われています。すなわち、金融業界におけるITシステムへの投資は、各金融機関の経営戦略の一部であるとともに、差別化や競争力の源泉となるものであります。また、政府や日本銀行からも地域銀行の競争力強化の一環として再編やITインフラに対する投資を支援する方針が示されており、今後、ますますシステム投資は拡大していくものと思われます。このような環境下、金融業界におけるIT部門の重要性が高まっている一方で、十分な知識や経験を有するIT人材の不足が、システム開発プロジェクトを推進する上でのボトルネックになっています。
イノベーション事業は小売事業者を主要な販売先としています。小売事業者においては少子高齢化や人口減少等を要因に、店員の成り手の不足や売上の減少等によって店舗の維持が困難になりつつある中、販売機会を拡大し、店舗運営の省人化を図れる技術やソリューションに注目が集まっています。
DX・地方共創事業は地域経済の生産性の向上と発展、また持続可能な社会の実現への貢献等、同じ目的意識を持つ企業とのオープンイノベーションを通じて、顧客開拓に取り組んでいます。今日、日本全体で、デジタルトランスフォーメーション(DX)の活用、少子高齢化による生産年齢人口の減少及びカーボンニュートラルへの貢献等サステナビリティに関する様々な課題への関心が高まり続けており、同時にこれらに対応するソリューションも日々新たなものが生み出されています。一方で、これらのソリューションの情報や提供元が一部に偏在する等しており、需要と供給のマッチングが期待されていると認識しています。
(3) 経営戦略と優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① コンサルティング事業の態勢強化
a. マーケットの拡大
従来から、地域銀行、投資運用会社及びクレジットカード会社を中心にコンサルティングサービスを提供しております。これらに加えて、2022年3月から保険会社系の投資運用会社やデジタルバンクの新設等の上流工程のプロジェクトマネジメント支援もサービスの範囲としており、これらに関する実績をさらに積み上げてノウハウを蓄積していく方針です。また、金融以外の業界の事業会社においてもデジタルを活用した業務改善とその推進する業務にニーズがあり、これに応える態勢を整えてまいります。
b.人材採用と育成の強化
コンサルティング事業は有能なコンサルタントが主に得意先の事業所内に常駐しながらコンサルティングサービスを提供しており、売上高と従業員数の連動性が高いことが特徴です。そのため、コンサルティング事業の伸長には、コンサルティング業務やIT関連業務について十分な経験を有した人物やこれらの素養を備えた若手の採用活動及び育成に強力に取り組み続けて、顧客のニーズに応える人材を増やす必要があります。同時に、流出を防止する取り組みも一層強化していく必要があります。
c.収益源の多様化
コンサルティングサービスの一環として、ソリューションの提案と実装にも取り組むことで、従業員数に依らないビジネスを育てていく方針です。
② イノベーション事業の収益力強化
a. 無人レジの新製品開発と拡販
書籍販売用「ワンダーレジ-BOOK」とコンパクトPOSセルフレジ「EZレジ」の拡販に注力してまいります。
b. 保有技術を活用した新ソリューションの考案
人追跡技術を応用した「店舗可視化ソリューション」をはじめ、無人レジ開発で培った技術力を応用して、お客さまが抱える課題の解決に資するソリューションの開発に取り組んでまいります。
c.小売事業者へのコンサルティングサービスの提供
無人レジの開発と設置の経験を通じて得たノウハウや技術を活用し、セルフ化の推進と売上を高める支援業務に取り組んでまいります。
d. 株式会社TOUCH TO GOの業容拡大
当社が開発したレジ無しスルー型決済システム「スーパーワンダー」の技術を応用して、TTGが開発した無人決済システム「TTG-SENSE」及び狭小店舗向け無人決済システム「TTG-SENSE MICRO」を中心に、小売店等の省人化ソリューションの拡販に取り組んでまいります。
③ DX・地方共創事業の推進
a.地域金融機関との協業の拡大
2024年4月から、特定の地域において中堅・中小企業のDXプロジェクトの推進を支援するサービスを当該地域を管轄する地域銀行と協働して開始しました。今後、同様の取り組みを日本全国に展開することを目指しています。
b. 地方共創プラットフォームの推進
当社が培ってきた地域銀行や事業会社とのネットワークを活用して、地域の課題に合わせた解決策を提供する取り組みを推進してまいります。
c. オープンイノベーションの推進
当社が保有する技術やノウハウを幅広く活用する方法を模索するとともに、様々な企業とのオープンイノベーションを通じて、より付加価値の高いソリューションの具現化を目指してまいります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) サステナビリティ全般に対する考え方
サステナビリティを巡る課題に対応することは、当社の基本的な価値観に合致するものと考えています。当社は、事業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献する取り組みや持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献する施策を加速するため、サステナビリティ推進の基本方針を次のように定めています。
この方針の下、環境・社会・ガバナンスの視点からの課題を、経営上の重要な課題の一つと捉え、持続的な企業価値の向上と持続可能な社会の実現に資する取り組みを積極的に推進しております。
当社はサステナビリティに関する諸施策は、経営会議で審議しています。施策の内容が当社の基本的な理念に合致したものであり、かつ中長期的に社会の持続可能性と当社の企業価値を高めるものであるか検討した後、適宜、業務執行部門に実行を指示しています。
② リスク管理
サステナビリティを含む各種施策は業務執行取締役がその推進及びリスク回避に責任を持ち役職員に実行を指示しており、進捗状況について取締役会に定期的に報告しています。
また、リスク管理委員会はサステナビリティを含む経営上の重要な課題やリスクについて検討しており、顕在化した場合の影響を評価し、取締役会に報告しております。取締役会はリスク管理委員会からの報告を受け、適宜、業務執行部門に重要課題やリスクへの対応を指示しています。
(2) 人的資本に関する取り組み
① 人材の確保及び育成並びに働き方の方針
当社は企業理念に定める「社員が仕事を通じて成長するのを支援し社員とその家族を幸せに」及びサステナビリティ推進の基本方針に定める「全てのステークホルダーの笑顔を増やし笑顔であり続けるために、一人ひとりの権利と価値観を尊重し、人の成長を通じて社会に付加価値をもたらすことを誇りと喜びにします。」の当社の基本的な価値観の下、従業員が当社の最も重要な資産の一つと認識して、その価値を最大限に高めて活用することを目指す3カ年計画を策定しています。
2025年2月期から2027年2月期までの計画においては、以下の課題に対応することとしております。
・個人の意欲・モチベーションの多様化
・ダイバーシティ推進
・社員のウェルビーイングの向上
・社員のヨコのつながりの強化
・社員エンゲージメントの向上
・採用活動の強化
・イノベーションを発揮しやすい社内環境の醸成
これらの課題に対応する施策を実行することを通じて、多様な経験や価値観を持つ従業員が、それぞれにありたい姿を描きながら協働することで社会課題を解決し、企業価値を高めることを目指してまいります。
② 目標
上記の課題に対応して社員の成長と企業価値向上の促進を実現することをねらい、2025年2月期から2027年2月期までの3カ年において以下の施策の実行を検討してまいります。
③ 実績
2023年2月期において取り組んだ実績は以下のとおりです。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。
当社がコンサルティングサービスを提供する主要得意先である金融機関が、国内外の景気動向等の影響を受けIT投資を抑制した場合、受注案件に対応する職員の稼働率低下が生じ、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社では、金融・公共ソリューション事業部長が適宜、各プロジェクトの責任者から既存得意先及び営業先の状況についてヒアリングし、提供及び提案するコンサルティングサービスの内容について指示しております。これによりニーズとのミスマッチを防止し、職員の稼働率低下に対処しております。また、取締役を含む管理職によって構成される経営部長連絡会において各案件の状況について活発な議論が行われ、組織的なモニタリングがなされています。
労働市場における人材獲得の競争激化による人材採用の失敗や人材流出、人材育成計画の未達成等が生じた場合、当社の競争力の低下や事業拡大に対する制約、得意先に提供するサービスレベルの低下をもたらし、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、優秀な人材の採用、確保及び育成を全社的な重要な経営課題の一つと定め、コーポレート本部が主管となり採用活動、従業員の定着及び育成に対して優先的に経営資源の投下を行うことで、人材に関するリスクに対処しています。
当社の業務遂行にあたり、得意先の機密情報や個人情報を取り扱うことがあります。これらの情報が外部に漏洩した場合には、当社の社会的信用に重大な影響を与えるとともに、多額の対応費用が発生することにより、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社では、情報セキュリティマネジメントの国際標準であるISO27001の認証及びプライバシーマークを取得するとともに、役職員、協力会社(ビジネス・パートナー)等に対し、守秘義務の順守、機密情報や個人情報の厳重な管理を指導するとともに、情報管理を効率的に行うための環境構築を進めることで情報セキュリティリスクに対処しています。
当社が受注する業務の一部では、人的資源の制約から協力会社(ビジネス・パートナー)に対し、業務を再委託することがあります。委託先の選定に当たっては、プロジェクト遂行能力等を勘案して選定するとともに優秀な人材の確保を依頼しておりますが、委託先のプロジェクト管理及び人材確保が適切になされない場合には、コストの増加や納期遅延、品質の低下等を招く可能性があり、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社では、各部長や現場責任者等が委託先の業務につき、業務進捗のみならず個々の人材の体調面に至るまでレビューし、適宜情報の共有と問題の明確化及びそれらへの具体的対処にあたることで委託先業務の品質管理を行い、委託先管理に関するリスクに対処しています。
当社の代表取締役社長である蒲原寧は、当社の設立以来、当社の経営方針や戦略決定をはじめ、事業開発、ブランド力向上等において重要な役割を担っております。また、本報告書提出日の前月末現在の当社発行済株式総数の22.53%を所有する筆頭株主でもあります。何らかの理由により蒲原寧に不測の事態が生じて当社の業務を継続することが困難となった場合、または代表取締役社長を退任するような事態が生じた場合には、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
現時点では、このようなリスクが顕在化する可能性は低いと認識しておりますが、当社では、取締役会及び経営会議等において経営情報の共有を図るとともに、各事業を統轄する取締役、執行役員及び事業部長等へ職務執行の権限委譲を進めています。また、重要な経営方針及び施策等の立案においては、蒲原寧を含めた主要な経営幹部で審議しています。
当社のコンサルティング事業において「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下「労働者派遣法」という。)」で定められた労働者派遣事業に該当するものがあります。労働者派遣法に定める派遣元事業主としての欠格事由に該当した場合や、法令に違反した場合には当該事業の停止を命じられる可能性があります。また、新たに法規制の緩和や改正等が行われた場合、当社の経営環境に変化をもたらすものであれば、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社では、コンプライアンス委員会及びリスク管理委員会が、各事業のコンプライアンスに関してモニタリングすることで、労働者派遣法を含めたコンプライアンス遵守に努めています。また、広く社内のコンプライアンス違反に関して役職員が相談できる窓口として外部通報窓口を設置、運用し、法的規制に関するリスクに対処しています。
当社は人工知能(以下「AI」という)を利用した物体自動認識技術をはじめ、先端ICT(情報通信に関する技術)等を用いた事業の多角化に取り組んでおり、イノベーション事業部がこれらに関する研究開発活動を行っております。AIに関する技術革新のスピードは速く、また競争も激しさを増しているため、今後の研究開発活動の進捗状況や計画遅延の発生等により、当初想定した研究開発費が増加し、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、現在、イノベーション事業部において設置型AI搭載レジ「ワンダーレジ」、書店向けセルフレジ「ワンダーレジ-BOOK」及びコンパクトPOSセルフレジ「EZレジ」の拡販を推進しており、製品の性能及び機能性向上に関する開発活動を行っております。当事業年度末現在、当該製品の大口販売契約等には至っておらず、イノベーション事業の売上高に対して研究開発費を含めた営業費用が上回っております。当社はワンダーレジの将来性に期待しておりますが、今後の事業の進展に際しては、研究開発費の増加、改良の遅延、受注及び販売台数の想定からの大幅な乖離、生産体制及び保守体制構築等の計画遅延、競合製品の出現等、様々な不確実性が伴います。このため、期待どおりに事業が進展しなかった場合には、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社では、イノベーション事業の営業活動の強化や研究開発費の管理強化等を通じて、販売面とコスト管理の強化に取り組んでおります。また、研究開発から生まれた技術を活用した新製品を開発し、イノベーション事業の製品ラインナップの強化を図り、収益源の多様化に取り組んでいます。
当社は当社役員及び従業員に対するインセンティブを目的として、ストックオプションを付与しております。本報告書提出日の前月末現在、ストックオプションによる潜在株式総数は19,200株であり、発行済株式総数12,790,995株の0.15%に相当します。これらの新株予約権が行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。
当社では、毎月、取締役会において財務状態のモニタリングを行い、最適な資本構成について、適宜、検討を行っています。
(9) 棚卸資産の評価損に関するリスク
当社はワンダーレジ-BOOKやEZレジ等の製品の製造においては、受注生産を行っていますが、これらの製品の材料、部品及び仕掛品は営業状況や事業計画、調達環境を総合的に勘案して、在庫として保有しています。当社では「棚卸資産の評価に関する会計基準」を適用しており、販売目的の棚卸資産の収益性を毎四半期末に評価し、販売計画の進捗状況や急激な経営環境の変化により収益性が低下していると判断し評価損を計上する場合には、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社では、各事業を管掌する業務執行取締役は、毎月、取締役会において収益や施策の進捗、営業状況及び業績見通しについて報告しており、取締役会は、適宜、当該リスクを回避する監督をしています。また、経営会議等にてイノベーション事業の事業活動全般について検討しており、営業活動を促進する施策を迅速に決定し、実行しています。
(10) 保有株式の減損損失に関するリスク
当社は無人決済店舗システムの事業化を目的とした事業会社を設立し、関係会社株式を保有しております。また、業務提携の強化を目的に投資有価証券を保有しております。これらの株式の実質価額が著しく低下した場合には、減損損失が計上され、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社は関連会社に役員を派遣するとともに、月次で業績報告を受け関連会社の財政状態を把握し、減損の兆候を早期に認識し、適切に対処することとしております。また、資本業務提携先に対しては、シナジーの創出に取り組むとともに、株主として議決権の行使を通じて提携先企業の経営に関与することとしています。
(11) 自然災害や感染症に関するリスクについて
大規模な地震、大型台風、風災、水災、津波、大雪、火災等により、当社及び得意先の建物、設備並びに従業員が被災した場合、出勤や業務遂行に支障が生じ、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。またインフルエンザや新型コロナウイルス等の感染症が流行した場合にも、従業員の出勤や業務遂行に支障が生じ、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。加えて、これらの自然災害や感染症の拡大が国内景気の動向や得意先の業績に影響する場合、得意先においてIT投資が抑制されることで、新規プロジェクトの減少や既存プロジェクトの規模の縮小等により、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社では、リスク管理委員会が、毎月、当社の事業活動全般のリスクについて検討し、災害や安全衛生について調査や対策が必要と判断したときは、コーポレート本部に対して当該リスクを低減する施策の検討と実施を指示しています。
(12) 重要事象等について
当社は2020年2月期から2023年2月期にわたり、営業損失、経常損失及び当期純損失を計上してまいりました。また、営業キャッシュ・フローも2021年2月期から3期連続でマイナスとなりました。これらを受け、2021年2月期以降、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象又は状況が存在しておりました。
このような状況を解消すべく、当社は高い手元流動性を維持するとともに、ロケーションの見直し等による固定費の削減及び研究開発活動の最適化等、支出抑制に取り組んでまいりました。また、高需要が続くコンサルティング事業の伸長に集中的に経営資源を投下し、金融業界のお客さまのニーズに応えてまいりました。これらの結果、2024年2月期は営業利益を計上するとともに、営業キャッシュ・フローもプラスとなりました。2025年2月期以降もコンサルティング事業が業績の牽引役になるとともに、DX・地方共創事業も黒字に転換し収益力が高まると見込まれることから、営業利益の計上と営業キャッシュ・フローのプラスが定着すると考えています。
これらの状況から当事業年度末において、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象又は状況は解消したと考えております。
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績・財政状態に関する概況
① 経営成績の状況
当事業年度における当社を取り巻く経営環境は、当社がコンサルティングサービスを提供する金融業界では、金利政策の変化や株式市場の上昇等を受けて銀行、証券会社及び投資運用会社等幅広い業種で収益力向上の期待が高まっています。また、グリーントランスフォーメーション(GX)融資等のサステナビリティに関する取り組みの強化及び人的資本への投資や生成AIの活用による生産性向上の試み等、中長期的な視野に立った取り組みが活発化しています。イノベーション事業が製品・サービスを提供する小売業界では、個人消費の上昇が緩慢な中、賃金・物価上昇への対応が重要な経営課題になっています。DX・地方共創事業の顧客層である中堅・中小企業では、業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)に関する関心が急速に高まっています。
このような環境の中、コンサルティング事業では、既存得意先を中心に受注が堅調に増加しました。イノベーション事業では、コンパクトPOSセルフレジ「EZレジ」(イージーレジ)を職域売店及び職域食堂等のほか、合同会社AVENDが展開する無人古着屋「SELFURUGI」に販売しました。また、書店向けセルフレジ「ワンダーレジ-BOOK」が株式会社明文堂プランナーの旗艦店「TSUTAYAレイクタウン」(埼玉県越谷市)及び「金沢ビーンズ(明文堂書店金沢駅前本店)」(石川県金沢市)に採用されました。これらのほか、昨年から続いてきた店舗ソリューションの受託開発を完了しました。DX・地方共創事業では、地域金融機関と協働して中堅・中小企業のDXプロジェクトを支援するサービスのビジネススキームを開発し、営業活動を開始しました。
関連会社の株式会社TOUCH TO GO(以下「TTG」という。)では、無人決済システム「TTG-SENSE」と「TTG-SENSE MICRO」の拡販に取り組み、これまでにファミリーマートブランドで30店舗以上で稼働しているほか、化粧品販売の無人店舗、ホテル内の小規模売店、従業員専用の職域売店及びスーパーマーケット業の新業態の試み等多様な用途で活用されています。
以上の結果、当事業年度における経営成績は売上高2,929百万円(前期比13.8%増)となりました。利益面では、コンサルティング事業の増収効果並びに固定費削減や租税公課の減少等により販売費及び一般管理費を抑制したことを主因に営業利益101百万円(前期は営業損失110百万円)、経常利益94百万円(前期は経常損失119百万円)、コスト削減を目的にした事務所移転に伴う一時的な費用等の特別損失を計上した一方で、繰延税金資産の計上により法人税等調整額が増益要因となり当期純利益128百万円(前期は当期純損失132百万円)となりました。
セグメントの業績を示すと、次のとおりです。
(コンサルティング事業)
IT部門の業務推進支援の需要が高く、従業員の増加に合わせて受注が堅調に推移しました。また、銀行の基幹システムの移行・統合プロジェクトの推進支援も堅調に推移したこと等によって売上高が増加しました。費用面では、従業員の待遇改善による人件費の上昇や一部のプロジェクトで外注が増加する等のコスト増加要因があった一方で、販売費及び一般管理費が減少しました。これらの結果、売上高は2,821百万円(前期比14.4%増)、セグメント利益は494百万円(前期比26.6%増)となりました。
(イノベーション事業)
株式会社明文堂プランナーへのワンダーレジ-BOOKやSELFURUGI等へのEZレジの販売がありました。加えて、店舗ソリューションの開発を完了したことに伴う報酬があったほか、TTGから無人決済システムに係るロイヤリティを受領しました。費用面では、研究開発テーマの絞り込みや体制の効率化、固定費の削減等により販売費及び一般管理費が減少しました。これらの結果、売上高は78百万円(前期比16.2%減)、セグメント損失は154百万円(前期はセグメント損失206百万円)となりました。
(DX・地方共創事業)
地域金融機関と協働で、当社のITスキルやプロジェクト推進のノウハウを活用して顧客のDX実現と持続的な成長を支援するサービスの開発に取り組みました。また、コンサルティング事業の得意先に対してIT部門の業務支援を行いました。これらの結果、売上高は30百万円(前期比108.3%増)、セグメント損失は2百万円(前期はセグメント損失63百万円)となりました。
② 財政状態の状況
(資産)
資産合計は2,601百万円となり、前事業年度末と比べて205百万円増加しました。
流動資産は1,958百万円となり、前事業年度末と比べて164百万円増加しました。これは主に、現金及び預金が64百万円、売掛金が34百万円及び契約資産が45百万円増加したこと等によるものであります。
固定資産は642百万円となり、前事業年度末と比べて41百万円増加しました。これは主に解約した事務所の敷金の精算があった一方で、繰延税金資産を56百万円計上したことによるものであります。
(負債)
負債合計は1,055百万円となり、前事業年度末と比べて76百万円増加しました。
流動負債は594百万円となり、前事業年度末と比べて17百万円増加しました。これは主に1年内返済予定の長期借入金が19百万円及び未払法人税等が16百万円減少した一方で、1年内償還予定の社債が30百万円及び賞与引当金が16百万円増加したこと等によるものであります。
固定負債は461百万円となり、前事業年度末と比べて59百万円増加しました。これは主に長期借入金が54百万円減少した一方で、社債が90百万円及び退職給付引当金が28百万円増加したこと等によるものであります。
(純資産)
純資産合計は1,545百万円となり、前事業年度末と比べて129百万円増加しました。これは主に当期純利益128百万円の計上により繰越利益剰余金が増加したこと等によるものであります。
なお、2024年2月27日開催の臨時株主総会において資本金及び利益準備金の額の減少並びに剰余金の処分の件が承認可決され、2月29日にその効力が発生しました。これにより資本金が1,121百万円及び利益準備金が7百万円減少し、その他資本剰余金が257百万円及び繰越利益剰余金が870百万円増加しております。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は1,380百万円(前事業年度末に比べて64百万円増加)となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは49百万円の収入(前事業年度は184百万円の支出)となりました。これは主に売上債権及び契約資産の増加79百万円等の資金の減少要因があった一方で、税引前当期純利益74百万円を計上したことに加えて、賞与引当金の増加16百万円及び退職給付引当金の増加28百万円の計上等の資金の増加要因があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは26百万円の支出(前事業年度は1百万円の支出)となりました。これは主に無形固定資産の取得による支出10百万円及び事務所移転に伴う資産除去債務の履行による支出8百万円等の資金の支出があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは41百万円の収入(前事業年度は169百万円の収入)となりました。これは主に長期借入金の返済による支出74百万円及び社債の償還による支出80百万円等の資金の支出があった一方で、第5回無担保社債を発行したことから社債の発行による収入195百万円によって資金が増加したことによるものであります。
(2) 生産、受注及び販売の状況
重要性が乏しいため、記載を省略しております。
当事業年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成していますが、この財務諸表の作成にあたっては、経営者により一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、それが資産・負債及び収益・費用の数値に反映されております。
これらの見積りについては、継続評価し、必要に応じて見直しを行っていますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらと異なる場合があります。
当社の財務諸表作成にあたって採用している重要な会計方針の詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しておりますが、財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下であります。
(固定資産の減損)
当社は保有する固定資産のうち減損の兆候がある資産または資産グループについて、当該資産または資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減額された金額を減損損失として計上しております。
減損の兆候の判定及び回収可能価額の前提となる将来キャッシュ・フローについては、一定の仮定をおいて算出しています。今後の経営環境の変化等により将来キャッシュ・フローへの重要なマイナスの影響がある場合には、翌事業年度以降の財務諸表において追加の減損損失が発生する可能性があります。
(関係会社株式の評価)
市場価格のない関係会社株式の実質価額が著しく低下した場合の減損処理の要否については、将来の事業計画に基づく回収可能性により判定しています。実質価額が著しく低下し、将来の不確実な経済条件の変動などによって将来の事業計画に基づく回復可能性がない場合には、関係会社株式評価損の計上が必要となり、翌事業年度の財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
(繰延税金資産の回収可能性)
将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に対して、将来の業績予測に基づく課税所得の発生時期及び金額を見積り、繰延税金資産の回収可能性を判断し算出しております。
b.当事業年度の財務諸表に計上した金額の算出に用いた主要な仮定
将来の課税所得の算定に際しては、取締役会で承認された翌事業年度の事業計画に対して、確度を勘案した受注見込、労働市況を勘案した採用可能性、当社の過年度の粗利率、販売費及び一般管理費推移等を勘案し、各項目にストレスを付加した上で課税所得見込みを算定しております。
c.翌事業年度の財務諸表に与える影響
将来の課税所得の見積りを算出するにあたり使用した仮定は合理的であると判断し繰延税金資産を計上しておりますが、将来予測不能な環境変化により前提条件が大きく異なる場合、翌事業年度の財務諸表において、繰延税金資産等の金額に重要な影響を与える可能性があります。
(継続企業の前提に関する重要な不確実性の有無の判断)
当社は、継続企業の前提に関する重要な不確実性の有無の判断にあたり、貸借対照表日の翌日から1年間のキャッシュ・フローを見積っております。経営環境の変化等により将来のキャッシュ・フローが大幅に変動した場合、当該不確実性の判断に影響を及ぼす可能性があります。
② 経営成績の分析
a.売上高
主にコンサルティング事業において、既存得意先からの受注が堅調に推移したこと等により売上高は前期比13.8%増加の2,929百万円となりました。
b.売上原価及び売上総利益
主にコンサルティング事業において、従業員の増加や待遇改善により人件費が増加したほか、受注増加の一部を外部に委託したこと等を主因に、売上原価は前期比13.4%増加の2,126百万円となりましたが、増収により売上総利益は前期比14.9%増加の802百万円となりました。
c.販売費及び一般管理費及び営業利益
減資により租税公課が減少しました。また、人員配置の見直しにより人件費等が減少しました。これらに加えて、広告宣伝費及び支払手数料をはじめ支出全般を見直し費用縮減に取り組んだ結果、販売費及び一般管理費は前期に比べて13.4%減少の701百万円となりました。加えて、売上総利益の増益により営業利益は101百万円となりました。
d.特別損失
自社利用目的のソフトウエア等の減損損失を計上しました。また、オフィスロケーションを見直したことで、これに関連する費用を事務所移転費として計上しました。これらの結果、特別損失は20百万円となりました。
e.当期純利益
繰延税金資産を56百万円計上し、この同額を法人税等調整額(益)に計上したこと等により、当期純利益は128百万円となりました。
③ キャッシュ・フローの分析
当事業年度のキャッシュ・フローの概況につきましては、「(1) 経営成績・財政状態に関する概況 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
④ 資本の財源及び資金の流動性
当社の営業活動に関する資金需要のうち主なものは、コンサルティング業務やソリューション開発に従事する役職員の人件費、パートナー企業への委託料等、販売及び営業活動によるものであります。また、当社の投資活動に関する資金需要のうち主なものは、研究開発活動、関係会社への投融資及び資本業務提携に伴う株式投資等であります。これらの資金は、主に営業活動で得られた資金及び手元資金により充当することを基本方針としておりますが、必要に応じて金融機関からの借入や社債の発行、資本市場からの調達をすることがあります。
当事業年度においては、フリー・キャッシュ・フローが22百万円のプラス、社債200百万円の発行により財務活動によるキャッシュ・フローが41百万円のプラスとなった結果、当事業年度末時点の現金及び現金同等物の残高は1,380百万円(前事業年度末比64百万円増)となりました。財政状態については、自己資本比率59.4%(前事業年度末比0.3ポイント増)、流動比率330%(前事業年度末比19ポイント増)となり、事業の円滑な運営に必要な流動性を十分に確保するとともに、経営環境が急変した場合に事業継続に必要となる支出にも機動的に対応可能な水準の手元流動性を確保していると考えております。
⑤ 次期の経営方針
2025年2月期は、成長を再加速させる転換期と位置づけています。社会のDXを加速させることを最重要テーマに各事業間の強みを伸ばすと同時に、それらのシナジーを通じてサービスの付加価値を高めていく方針です。コンサルティング事業では、金融機関からの受注は引き続き堅調に増加する見込みです。加えて、一般事業会社を中心にデジタル技術を活用して新しいユーザー体験(UX)の提供を目指すIT関連プロジェクトが増加しており、この分野での競争力を強化し事業領域拡大と顧客開拓を図ることを目的に金融・公共ソリューション事業部傘下に「デジタルUX推進部」を新設しました。イノベーション事業では、ワンダーレジ等の営業で培った知見を活かして、製品の販売に加え、小売店の生産性を改善するコンサルティングやソリューションの提供を強化してまいります。DX・地方共創事業では、地域金融機関と協働して開発した中堅・中小企業に対するDX推進コンサルティングサービスの拡大に取り組んでまいります。また、販売費及び一般管理費の増加は一定程度抑制される見込みです。
これらの結果、2025年2月期の業績見通しは、売上高3,269百万円(前期比11.6%増)、営業利益132百万円(前期比29.8%増)、経常利益130百万円(前期比37.0%増)、法人税等調整額(益)の計上により当期純利益166百万円(前期比28.9%増)を計画しています。
⑥ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当社は、お客さまの経営・業務課題の解決に、 お客さまの一員として道しるべを示し、発想・技術・実現方法に限界を設けることなく、サービス・製品を想像し創造することで、世の中を変え、時代を切り拓くことを使命に、イノベーション事業において研究開発活動を行っています。
当事業年度の研究開発費は、
当社の主要な研究開発活動のテーマは、以下の次のとおりです。
(2) 研究開発活動の成果
研究開発活動の成果として、日本国内で9件、アメリカで1件の特許を取得しています。
当社は、主要な研究開発テーマへの取り組みを通じて得た技術を応用して、製品やサービスを開発しています。現在、以下の製品を開発、販売または技術供与しています。
また、上記の製品の機能向上に継続的に取り組むとともに、お客さまからの要望や課題に応じて、当社の保有する技術を活用したソリューションの研究開発を行っています。