第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社は「知を創集し道具にする」をミッションに掲げております。世界に遍在する知(データ)を創集し、その集合知を誰にでも使える道具(ツール)へと変え、顧客に届けることで顧客ビジネスの生産性向上及び収益成長に貢献してまいります。

 

(2)経営戦略等

 デジタル化の加速により、DXに取り組む企業は今後増加が見込まれます。そうした企業の課題に応えられるよう、当社の保有するナレッジを強化しつつ、それらを顧客獲得から既存のソリューションの強化及び新規のソリューション開発まで最大限に活かします。当社はこうした取り組みを通じて、顧客基盤の拡大と顧客ごとの収益性の向上を図り、長期的な企業価値向上を実現します。

 

 現在、当社を取り巻く環境は大きく変化しております。3rd Party Cookieの利用禁止や個人情報保護規制強化の流れ、さらにインフルエンサーマーケティングなどの広告規制、フリーランス新法の成立などの政策/規制動向、DX市場の拡大や各種マーケティング手法のROIの変化、コストプッシュでのインフレーションなどの経済動向、さらに生成AIの急速な進化やGoogleアナリティクス4の登場などの技術動向、マスから個への流れといった社会動向などです。

 

 こうした環境変化を捉え、当社は①DX市場、特に成長の見込める領域への積極投資、②テクノロジーの進化への対応と投資、③ユーザー中心として、全体最適を実現する広範な範囲を一気通貫で行える体制構築と商材の拡充により、継続的成長を実現します。

 

①DX市場、特に成長の見込める領域への積極投資

 拡大するDX市場の中でも、特に成長性若しくは収益性の高い領域に投資を行うことで、投資リターンの最大化を目指します。具体的には、成長率及び収益性がともに高いDXコンサルティング、成長性が高い人材マッチング事業やクリエイティブ事業、そして新規に立ち上げを行っているCRM/インサイドセールス事業、そして収益性の高いAIアナリストです。

 

②テクノロジーの進化への対応と投資

 テクノロジーの進化に素早く対応していくことは、事業成長に直結します。GoogleアナリティクスのGoogleアナリティクス4へのメジャーアップデートにもしっかりと対応することで、これまでの顧客を引き止められるだけでなく、対応の遅れた他サービスの顧客の誘引も可能となっております。また、生成AIの急速な進化はマーケティング業界を変化させつつありますが、当社でも活用することが最もできる分野から導入を進めております。具体的にはAIアナリストSEOのコンテンツ制作プロセスにChatGPTの活用を始めております。

 

③一気通貫で支援を行える体制構築と商材の拡充

 規制強化が進むマーケティング業界において、全体最適を実現することの重要性は増しております。顧客のマーケティング活動の全体最適を実現するには、全体を一気通貫で当社が支援できていることが必要になります。そのために、当社の支援領域において欠けているものを獲得・強化していくことが必要となります。現在提供している集客~商談の領域については手法の拡充を、また、集客以前の広報や集客後のセールスなどの分野への領域染み出しを進め、一気通貫での支援範囲を充実させてまいります。

 

 上記の3点を実行することで、当社の顧客数増や単価・LTV(顧客生涯価値)増につながり、こうした事業KPIの伸長が当社の中長期的に継続可能な事業成長を実現するものと考えております。

 

 また、当社が今後更なる成長と発展を遂げるためには、「(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載の事項へ対応していくことも経営戦略上、重要と認識しております。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は事業進捗の客観的な指標として、売上高、売上高総利益率、EBITDA(=営業利益+減価償却費)及び営業利益に加え、1顧客から得る売上高である1社当たり理論LTV(顧客生涯価値、1社当たり理論LTV=1社当たりの12ヶ月平均初期売上+1社当たり平均リカーリングレベニュー/社数ベース12ヶ月平均解約率)を重要な経営指標とし、成長性や収益性を向上させてまいります。

 

(4)経営環境

 当社が属する国内DX市場の規模は、経済産業省が2018年に「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」や「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」を発表したことを受け、国内においてデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が加速していることを背景に、拡大を続けています。株式会社富士キメラ総研が2022年1月に公表した「2022 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望」によると、2020年に1兆3,821億円となりました。また、当該市場は企業のDXやそれに伴うアナリティクス及びAI活用の取り組みがすでに当たり前の技術として広く活用が進んでいるとして、DXへの取り組みは活発化しています。昨今、多くの企業において、データを収集するだけでなく、その利活用を可能とするDXやAIの活用を通じて、その企業活動の生産性を向上させ、競争力を増すことが重要な経営課題となってきているためです。当該市場は、2024年までの間に3兆4,223億円まで拡大し、その年間平均成長率は+25.4%という成長率が見込まれております。

 また、その中でも当社が提供する「AIアナリスト」のカバーする業界共通DX領域の営業・マーケティングDX市場は、2020年に1,564億円を占めます。なお、「DXコンサルティング」のカバーする戦略/基盤DX市場を含む市場は、2020年に4,064億円でしたが、2022年には約1.5倍となる6,072億円まで拡大していたと見込まれております。

 当社は、現在提供するソリューションの範囲を近接市場から順次拡大してまいりますが、それにより業界共通DX市場へとアクセスしようとしております。この業界共通DX市場は2020年には5,234億円でしたが、2024年には1兆733億円まで倍増すると、非常に好調な推移が見込まれております。

 当社は、アナリティクスソフトウェアをSaaSという形で提供することで、顧客と継続的な接点をもっております。これにより、当社は顧客ロイヤルティを高めつつ、顧客のデータを長く蓄積することで、他社に対して参入障壁を築いております。また同時に、先行して多くの企業の利用データを集めているため、その集合知によるソフトウェアの改善が可能であることが、提供価値の点においても先行優位性を活かした参入障壁の構築に活きております。こうした当社のサービス形態の強みを活かし、上記のように順調に拡大する市場を着実に獲得してまいります。

 なお、DXを社会に促した新型コロナウイルス感染症の沈静化やウクライナ・ロシア問題、量的緩和から量的引き締めへ移る金融政策の転換、ChatGPTを中心とした生成AIの技術的進展など、当社を取り巻く環境は劇的に変化しております。当社はそうした環境変化に機敏かつ柔軟に対応すべく、継続して注視してまいりますが、その急速な変化に機会を見出した際には、経営方針・経営戦略等を見直す可能性があります。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

①新規事業の立ち上げ・新規機能の開発

 当社が提供する既存サービスは継続的な取引を行う顧客基盤を確立しており、安定的な月額利用料収益を得ております。

 近年のAIやデータアナリティクス、SaaSに対する関心の高まりに象徴されるように、当社の提供するサービスが属する各市場は今後ますます市場成長が見込まれており、市場のニーズにあった機能及びサービスをいち早く投入し、新規事業を立ち上げ続けることが重要な課題と認識しております。

 特に「AIアナリスト」をプラットフォームとしたストック型の収益を安定的に獲得することができるサービスの開発を継続的に行い、更なるステップアップを視野に入れた事業の収益性向上を目指してまいります。

 当社は、大企業を中心にWACULコンサルティングのサービス提供や、アカデミア及びビジネスの先端をいく人材を顧問とする社内研究所である「WACUL テクノロジー&マーケティングラボ」を通じて、PoC(Proof of Concept:新規アイディアの検証・実証)を積極的に行い、そこで得られたナレッジをソリューションに落とし込む形で新規事業の立ち上げ及び「AIアナリスト」の新規機能開発をより一層推進し、社会に普及させていきます。

 

②優秀な人材の確保

 当社は専門性の高い優秀な人材の確保及び在籍する人員の育成に注力し、少人数での効率的な事業運営を意識しつつ、事業規模に応じた組織体制の整備を進めてまいりました。

 今後のDX市場の拡大に伴う事業拡大及び収益基盤の強化を図るにあたり、引き続き優秀な人材を確保・育成することは当社の事業展開を図る上で重要と認識しておりますが、優秀な能力を持つ人材獲得は、他社とも競合し、安定した人材確保が容易ではない状況が今後も継続すると考えております。これまで同様、効率的な事業運営を意識しつつ、事業規模に応じた優秀な人材の組織体制の整備を進めることが課題であると認識しております。

 開発部門においては、サービスの利便性及び機能の向上並びに新規サービス開発のため、優秀なエンジニアの継続的な採用を継続的に行ってまいります。また、営業・マーケティング部門においては、収益基盤の強化と合わせて適時に採用を行ってまいります。

 

③認知度の向上

 当社は、これまで広告宣伝活動に頼らず、当社が持つWebマーケティング技術及び提供サービスの機能優位性に拠る形での顧客の獲得を図ってまいりました。その結果として、現在、幅広い業種の企業に当社サービスを導入いただき、継続的な取引による顧客基盤の構築を実現することができていると考えております。

 しかしながら、事業の更なる拡大を図るにあたり、当社ブランド及びサービスのより一層の確立が重要となるため、広告宣伝及びプロモーション活動による認知度の向上が重要な課題であると認識しております。

 

④開発体制の強化

 当社のサービスは高度な処理能力などが求められるため、専門性の高い優秀な開発部門の人材の確保及び育成をすることで、サービスの品質向上に取り組んでまいりました。

 しかしながら先進的な技術開発力を継続して持ち続けることは容易ではなく、継続的な人材の確保及び開発プロセスの改善、社内におけるノウハウの共有や教育訓練等が重要な課題と認識しております。

 

⑤ビッグデータの蓄積・解析体制の強化

 当社のサービスに連携された顧客のGoogleアナリティクスのデータは日々データベースに蓄積され、それらを解析することで顧客へ高品質なサービスを提供しております。

 顧客へ更なる付加価値及び新たなサービスを提供するためには、それらのビッグデータに基づき、AI技術を駆使したより高度なデータ活用を行っていくことが重要な課題と認識しております。

 引き続き、有識者と顧問契約を締結し、適宜情報交換を行うことでビッグデータの蓄積・解析体制の強化に努めてまいります。

 

⑥事業上のパートナー企業との提携の強化

 当社は、提供サービス「AIアナリスト」を自社の販売部門から直販することで顧客基盤を構築してまいりました。

 今後「AIアナリスト」及びその周辺サービスをさらに拡販・成長するためには、事業パートナーとの提携の強化が重要な課題と認識しております。具体的には、当社がまだリーチできていない顧客層をすでに保有している販売パートナーや、「AIアナリスト」の機能で提案されるサイトの改善提案を基に実装・実行等を行うソリューションやサービスを持つパートナーとの提携強化に努めてまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社においては、サステナビリティ関連のリスク及び機会を監視し、管理するためのガバナンスに関しては、コーポレート・ガバナンス体制と同様となります。

 当社のガバナンスに関する詳細は、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況」に記載のとおりであります。

 

(2)戦略

 当社は「知を創集し道具にする」をミッションに掲げ、機械に「データ」と「成功事例・失敗事例」を学ばせることで、成功確率の高い勝ちパターンを生み出すとともに、機械が得意なことは機械に任せ、人は人がやるべき本質的な施策に集中できる仕組みを提供することで、企業の生産性最大化を実現しております。

 このミッション実現のためには、当社の支出の大宗を占めるのは人件費であることからも「人材」が最も重要であると考え、人材の「フライホイール(はずみ車)」というモデルを採用し、重要テーマとして積極的に取り組んでまいります。

 フライホイールは、Attract(惹きつける)、Engage(信頼関係を築く)、Delight(楽しむ)の3つの段階で構成されます。この3つは円環図として表現でき、優秀な人材が新たな人材を呼び込み、育て、優秀な人材となっていく姿を表しております。

フライホイールモデル

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1.Attract(惹きつける)

 Attractの段階では、有益なコンテンツで訪問者を呼び込み、転職者がスムーズに当社の情報を収集できるよう妨げとなる要因を取り除きます。当社では、代表取締役による積極的な登壇などによる認知の獲得はもちろん、当社を認知して当社のWebサイトを閲覧する転職者が当社をスムーズに理解できるようコンテンツを用意しております。当社のミッション/ビジョンへの共感が高い状態で採用面接に進むことで、人材の獲得効率が高まり、人材獲得コストの低減につながります。採用コストを下げることは、その後の段階において人材への投資を行う原資を生み出せることにもつながります。

 

2.Engage(信頼関係を築く)

 入社をした従業員については、次のEngageの段階では「個人の成長が会社の成長につながる」という基本ポリシーのもと、ウェルカムランチの設定や社内ナレッジを詰め込んだ研修プログラムを組み、上司と従業員の対話の場である1on1の運用を徹底することで、従業員個々人の成長スピードを押し上げております。また、縦横斜めのコミュニケーション活性化をサポートする施策として、部活動制度や全社ランチの実施などを行っております。こうした活動を通じてオンボーディングのスピードが上がることで、社員の戦力化が早まれば、事業貢献のタイミングの前倒しとなることから、この戦力化までのスピードを注視しております。

3.Delight(楽しむ)

 そして最後のDelightの段階では、従業員が個人の成長と会社の成長を楽しみ、自らのまわりにいる優秀な人材に当社を紹介することを支援します。具体的には以下のようなものがあります。

 

・正当な評価:取締役・執行役員が全社員の評価を行う評価会議設計、過程と結果を分けて評価する評価制度など、従業員のモチベーションを高める環境を構築しております。

・個人の事情によらない働きやすさ:ハイブリッド型、フレックスタイム制度、一親等の家族の病気・介護等の支援に使える病気休暇など、自由を与えるかわりに成果へのコミットを引き出します。

・基盤となる健康維持:インフルエンザワクチンの接種負担や婦人科検診補助、産業医との連携の強化を通じて、従業員が健康に働き続けられる基盤づくりを支援しております。

・リファラル制度:従業員が友人に当社を紹介することで紹介者及び被紹介者にお祝い金を贈ります。また、友人に当社を紹介するための会食費についても支援しております。

 

 フライホイールモデルに則ることで、個人の成長が会社の成長につながることでトップライングロースにつながるのはもちろん、採用コストの削減といったコストカットにもつながるため、従業員と会社の両者にとってポジティブなサイクルを生み出すことができます。

 

(3)リスク管理

 当社は、リスク管理を経営の重要課題と認識し、必要なリスク管理体制及び手法を整備しております。具体的には、「リスク・コンプライアンス管理規程」を定め、代表取締役社長を委員長とするリスク・コンプライアンス委員会を設置し、原則3ヶ月に1回開催するとともに、経営上の重大なリスクへの対応方針、その他リスク管理の観点における重要な事項について審議を行い、その結果を取締役会に報告する体制を構築しております。

 また必要に応じて、弁護士、公認会計士、税理士、社会保険労務士等の外部専門家の助言を受けられる体制を整えており、リスクの未然防止と早期発見、発生時の被害の最小化、再発防止に関して議論するとともに、必要に応じて取締役会に報告しております。

 

(4)指標及び目標

 当社は、多様性の確保の重要性を認識し、年齢、国籍、性別、入社時期等に関わらず、能力を本位とする人材登用を行い、人材の多様性の確保に努めております。当事業年度末現在において、具体的な数値目標は設定しておりませんが、定量的な数値指標や目標の設定可否について、取締役会にて引き続き検討してまいります。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、将来において発生する可能性がある全てのリスクを網羅するものではありません。また当社のコントロールできない外部要因や必ずしもリスク要因に該当しない事項についても記載しております。当社はこれらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、リスク回避あるいは発生時に迅速に対応する所存ですが、当社の経営状況、将来の事業についての判断及び当社株式に対する投資判断は、本項記載内容を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

 

(1)市場など自社を取り巻く環境に関するリスク

①業界市場について

 当社が事業を展開する国内DX市場及び国内AIシステム市場は成長を続けております。当社はこの市場成長傾向は継続するものと見込んでおり、その中で一定のシェアを獲得するべく、サービスの提供・拡販を図っております。

 しかしながら、市場の成長ペースが大きく鈍化した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、市場の拡大が進んだ場合であっても、当社が同様のペースで順調に成長しない可能性があります。さらに、市場が成熟していないため、今後、大手企業による新規参入等により市場シェアの構成が急激に変化した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

②競争環境の激化について

 当社は、新規参入や新製品の普及など競争環境の激化を重要な課題として認識しております。DX市場の拡大に伴い、当社の属する市場に新規参入者が増えた場合には当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。当社は独自データの蓄積などを通じて、こうした脅威の軽減を図っています。具体的には、Googleアナリティクスを通じたアクセス解析データ等のビッグデータと、その分析から生まれる改善施策の成否といったノウハウを蓄積しております。

 

③Google LLCの動向について

 当社の「AIアナリスト」等はGoogle LLCが提供するGoogleアナリティクスと連携してサイトデータを取得し、データ解析をするサービスとなっております。当社は、継続的により良好な関係の維持に努めておりますがGoogle LLCの事業戦略の転換並びに動向によっては、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④法的規制について

 現在のところ当社の事業継続に著しく重要な影響を及ぼす法的規制はありませんが、近年インターネット関連事業を規制する法令は徐々に整備されてきております。今後、Cookieの使用の制限など、インターネットの利用や関連するサービス及びインターネット広告を含むインターネット関連事業を営む事業者を規制対象とする新たな法令等の規制や既存法令等の解釈変更がなされた場合には、事業運営に制約を受けることで、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社はユーザー企業からGoogleアナリティクス等による統計情報を取得しているにとどまり、個別の利用者端末に紐づくCookie情報等は受領していないため、近時の国内法の改正による当社事業への直接的な影響はないと考えられますが、海外動向も含め引き続き情報収集を継続してまいります。

 

⑤技術革新等について

 当社が事業展開しているインターネット関連市場では、情報技術の進化とそれに伴う市場ニーズの変化に迅速に対応することが求められております。当社としても、技術革新に応じたシステムの拡充・改善及び事業戦略の修正などを迅速に行う必要があるものと考えております。そのため、当社はアジャイル開発(*)を行うことで、迅速にシステム開発を行い機能の追加及びユーザビリティを強化する体制を敷いております。

 しかしながら、予期しない技術革新等があった場合、その対応に係る追加のシステム開発費用が発生する可能性がありますが、システム開発等の適切な対応に支障が生じた場合には、各サービスにおける競争力の低下及び顧客の流出等を招く可能性があり、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(*)アジャイル開発とは、少人数の開発チームが特定機能の開発といった小さく切り分けたゴールの達成のために作業を進める体制をとり、納品を繰り返す開発スタイル。これまでのウォーターフォール型の開発では、最初に仕様を事細かに決めるので、開発を開始したのちの仕様変更には柔軟に対応できなかった。

 

⑥システム障害・不具合について

 当社の事業はインターネットを利用しているため、自然災害、事故、不正アクセスなどによって通信ネットワークの切断、サーバー等ネットワーク機器に作動不能などのシステム障害が発生する可能性があります。当社は、システム障害の発生防止のために、システムの冗長化、脆弱性検査、不正アクセス防御等の対策を講じておりますが、これらの対策を講じているにも拘らず、障害が発生した場合には、当社に直接的損害が生じるほか、当社のサーバーの作動不能や欠陥等に起因する取引の停止等については、当社のシステム自体への信頼性の低下を招きかねず、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)ビジネスモデル等の自社の事業に起因するリスク

①特定経営者への依存について

 当社の代表取締役社長である大淵亮平は、当社設立以来、当社の事業に深く関与し、デジタルマーケティングに関する豊富な知識と経験を有しており、経営戦略の構築やその実行に際して重要な役割を担っております。当社は、特定の人物に依存しない体制を構築すべく組織体制の強化を図り、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めておりますが、何らかの理由により同氏の当社における業務執行が困難になった場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 同様に当社の代表取締役である垣内勇威は、創業初期から当社の事業に深く関与し、デジタルマーケティングに関する豊富な知識と経験を有しており、研究開発及び新規事業の立案やその実行に際して重要な役割を担っております。当社は、特定の人物に依存しない体制を構築すべく組織体制の強化を図り、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めておりますが、何らかの理由により同氏の当社における業務執行が困難になった場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

②新規事業について

 当社では今後、市場のニーズにあったサービスをいち早く投入し、新規事業を立ち上げ続けることが重要な課題と認識しており、特に「ナレッジ」を顧客のニーズに即した形で届けるサービスの開発を継続的に行い、更なるステップアップを視野に入れた事業の収益性向上を目指してまいります。

 しかしながら、各新規事業・サービスは構想段階や市場投入から日が浅いものが多く、結果的に実現しない又は実現したとしても十分な収益が獲得できず撤退する可能性があります。当社といたしましてはテストマーケティングなどを行い、事前に十分な検証を行った上で開発等を開始する方針ではありますが、結果的に新規事業に失敗した場合、コストのみが計上されることから当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③単一事業であることについて

 当社の売上はDX事業の単一事業となっております。当社が属するDX市場の成長傾向は継続するものと見込んでおりますが、当該市場の成長が鈍化するような場合、事業環境の変化等への対応が適切でない場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④特定サービスへの依存について

 当社はDX事業の単一事業であり、プロダクト事業を中心に、インキュベーション事業、人材マッチング事業等の事業を拡大させることによって当社の業績が向上する見通しです。

 収益源の多様性を持つことにより、より安定した体制の構築を目指すべく、サービスの拡大や、新たに当社の柱となる新規サービス・事業の開発に向け積極的に取り組んでおりますが、同サービス・事業が顧客のニーズと乖離した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤LTV(顧客生涯価値)について

 当社はDXプラットフォームを提供するため、顧客が当社のプラットフォーム上で当社に対して生み出す収益が、当社がその顧客を獲得するのに費やすコストをどれだけ上回るかが投資リターンを図る上で重要であると認識しております。そのため、顧客1社当たりの累積売上高であるLTV(顧客生涯価値)が重要と認識しております。当社は、新規サービスの投入及び既存サービスの機能強化を通じて、アップセル・クロスセルによる特定期間における売上高の増大及び契約継続率などを見ながら、LTV(顧客生涯価値)の維持・向上を図っていきます。しかしながら、何らかの施策の見誤りやトラブル等で特定期間の売上高または契約継続率が著しく低下した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

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⑥プラットフォームビジネスにおける先行投資について

 当社が展開する「AIアナリスト」を中心としたプラットフォームビジネスは、開発人員及び営業人員の採用、広告宣伝活動等の先行投資を必要とする事業であり、結果として当社は創業以来2020年2月期まで営業損失を継続して計上しておりました。

 今後も、より多くの顧客の獲得を目指し、開発や営業などにおける優秀な人材の採用・育成を計画的に行うとともに、知名度と信頼度の向上のための広報・プロモーション活動、顧客獲得のためのマーケティングコスト投下などを効果的に進め、売上高拡大及び収益性の向上に向けた取り組みを行っていく方針であります。しかしながら、想定どおりの採用・育成が進まない場合、マーケティングPR等活動の効果が得られない場合等には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ストック・オプション行使による株式価値の希薄化について

 当社では、役員、従業員、社外協力者等に対するインセンティブ等を目的としたストック・オプション制度を採用しております。また、今後においてもストック・オプション制度を活用していくことを検討しており、現在付与している新株予約権に加え、今後付与される新株予約権について行使が行われた場合には、既存株主が保有する株式の価値が希薄化する可能性があります。なお、当事業年度末現在における新株予約権による潜在株式数は660,000株であり、発行済株式総数7,138,840株の9.2%に相当しております。

 

⑧情報管理体制について

 当社では、業務に関連して多数の顧客の情報資産を取り扱っております。そのため当社は、「情報セキュリティ管理規程」を制定し、コーポレート統括部の管掌のもと、情報の秘密区分指定と区分ごとの保管方法等を定めるほか、役職員に対する情報セキュリティに関する定期的な教育研修を実施するなど、情報管理体制の強化に努めております。また、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の国際規格であるISO27001の認証を取得しており、これに沿って、情報セキュリティ基本方針を策定するとともに、情報セキュリティ委員会を定期的に開催しISMSの適切な構築・運用についての審議を行っております。

 しかしながら、何らかの理由により重要な情報資産が外部に漏洩するような場合には、当社の社会的信用の失墜、損害賠償責任の発生等により、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨システム開発について

 当社は、システムに関わる投資・開発を継続的に行っております。当社の開発したサービスに不具合が生じた場合や、連携しているツールの仕様が大きく変わった場合、開発人員の獲得が進まないために開発が予定どおりに進まない場合など、利用者が損害を被った場合は、損害賠償の支払などにより、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩知的財産権について

 当社による第三者の知的財産権侵害の可能性については、専門家と連携を取り調査可能な範囲で対応を行っておりますが、当社の事業領域に関する第三者の知的財産権の完全な把握は困難であり、当社が認識せずに他社の知的財産権を侵害してしまう可能性は否定できません。この場合、損害賠償請求や使用差止請求等により、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑪内部管理体制の強化について

 当社は、今後の事業拡大に対応するため、内部管理体制をさらに強化する必要があると認識しております。今後は人材採用及び育成を行うこと等により内部管理体制の強化を図っていく方針であります。しかしながら、事業の拡大ペースに応じた内部管理体制の構築に遅れが生じた場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑫コンプライアンス体制について

 当社は、今後企業価値を高めていくためにはコンプライアンス体制が有効に機能することが重要であると考えております。そのため当社は、「リスク・コンプライアンス管理規程」を制定し、当該規程に基づきリスク・コンプライアンス委員会を定期的に開催して全社的なコンプライアンスに関する事項の審議・検討を行うほか、定期的に社内研修を実施し、コンプライアンスに関する役職員の意識向上を図っております。しかし、これらの取り組みにも関わらずコンプライアンス上のリスクを完全に解消することは困難であり、今後の当社の事業運営に関して法令等に抵触する事態が発生した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑬配当政策について

 当社は、株主に対する利益還元を重要な経営課題として認識しております。しかしながら、現在当社は成長過程にあると考えており、内部留保の充実を図り、収益基盤の多様化や収益力強化のための投資に充当することにより、更なる事業拡大を目指すことが株主に対する利益還元につながると考えております。

 将来的には、各期の経営成績及び財政状態を勘案しながら株主に対して利益還元を実施していく方針ではありますが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。

 

⑭ベンチャーキャピタル等の株式所有割合に伴うリスク

 当事業年度末現在でのベンチャーキャピタル及びベンチャーキャピタルが組成した投資事業組合(以下「ベンチャーキャピタル等」という。)の保有当社株式数は442,300株であり、発行済株式総数7,138,840株の6.2%に相当しております。

 このベンチャーキャピタル等が保有する当社株式は、キャピタルゲインを目的に市場で売却される可能性があり、当社株式の株価形成に影響を与える可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態の状況

(資産)

当事業年度末における資産合計は、前事業年度末と比較して654,538千円増加し、2,234,406千円となりました。これは、流動資産が622,112千円増加したこと、固定資産が32,426千円増加したことによるものであります。流動資産の増加は、主に立替金が39,712千円減少した一方、現金及び預金が637,830千円増加したことによるものであります。固定資産の増加は、主に繰延税金資産が24,552千円増加したことによるものであります。

 

(負債)

当事業年度末における負債合計は、前事業年度末と比較して438,022千円増加し、1,012,662千円となりました。これは、流動負債が121,722千円増加したこと、固定負債が316,300千円増加したことによるものであります。流動負債の増加は、主に借入により1年内返済予定の長期借入金が74,339千円増加したこと、業務拡大により未払金が25,202千円増加したことによるものであります。固定負債の増加は、借入により長期借入金が316,300千円増加したことによるものであります。

 

(純資産)

当事業年度末における純資産合計は、前事業年度末と比較して216,516千円増加し、1,221,744千円となりました。これは、主に当期純利益の計上により利益剰余金が200,548千円増加したことによるものであります。

 

②経営成績の状況

当事業年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症が感染症法上の5類に移行され、社会経済活動の正常化が進んでいるものの、ロシア・ウクライナ情勢の混迷やイスラエル・ガザ衝突等、引き続き不安定な状況が続いております。一方で、米連邦準備理事会(FRB)は利下げに慎重な姿勢を示すものの、世界的に広まった想定外のインフレは2024年以降鈍化するとの見方があり、また、国内では物価沈静化や賃上げ機運が持続することで消費の回復が進み、2024年後半にかけて景気回復が強まるとの見方もあります。

このような状況下、当社が属するデジタルトランスフォーメーション(以下、「DX」)市場は引き続き成長するものと見込まれており、市場規模は2030年には1兆5,038億円にまで達するものと予測されております(「2022 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望」富士キメラ総研)。また、「新・フリーランス実態調査 2021-2022年版」(ランサーズ株式会社)によると、2021年10月時点でフリーランス人口は1,577万人、経済規模は23.8兆円と、同社が調査を開始した2015年と比較すると、人口は68.3%(640万人)、経済規模は62.7%(9.2兆円)増加しております。また、フリーランスがエージェントサービスを利用して仕事を探す比率も年々増加しており、その利用率は2018年の13.4%から2023年には25.8%と大きく拡大しております(「フリーランス白書 2018」及び「フリーランス白書 2023」一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会)。

 

そうした環境下において、「知を創集し道具にする」をミッションに掲げる当社は、マーケティングのDXへの関心の高まりを捉えたソリューションの強化及び拡張、増加するフリーランスと企業を結びつける人材マッチング事業の育成を進めてまいりました。

当社は、企業のDXを強力に支えるべく、これまでコンサルティングとデータ分析・改善提案SaaSで培ったナレッジとベストプラクティスを、マーケティングDX実現に必要なサービス群に落とし込み、戦略や施策の策定から社内の組織づくり、マーケティング施策の実装と改善まで、事業推進を一気通貫で支援しております。

戦略フェーズでは、デジタルマーケティングに留まらないデジタル活用戦略の立案を行う「DXコンサルティング」を、戦術フェーズではデジタルマーケティングのPDCAを支える分析・改善提案ツールである「AIアナリスト」を提供しております。また、そうした設計がなされても実行・実装のできない企業向けに、実行・実装の代行を行うBPOソリューション群と実行・実装を行う人的リソースを提供する人材マッチング事業を提供しております。

このような上流から下流への一気通貫での事業推進支援をより強固なものとするべく、既存事業に存在しないサービスについてはパートナー会社やマーケターエージェント登録フリーランスと共に支援しつつ、中期的には社内育成だけでなくM&Aや出資などによるケイパビリティの拡充も含め、内製化・事業化を進めてまいります。当事業年度にはM&Aの検討として数十件のタッピングから1件のデューデリジェンスを実施しましたが、当社の基準に合致した案件はなく、3,053千円のデューデリジェンス費用を計上するに至りました。

 

新規顧客獲得のためのマーケティング活動においては、当社ナレッジをベースとしたウェビナーの継続的な開催や各種マーケティング関連メディアへの登壇、展示会への出展を行いました。

また、当社の認知獲得施策の一環として、2023年7月に代表取締役の垣内勇威が「LTV(ライフタイムバリュー)の罠」(株式会社日経BP)を出版しました。これまでの「デジタルマーケティングの定石」「BtoBマーケティングの定石」(株式会社日本実業出版社)で、問い合わせ獲得までのデジタル領域のナレッジを保有する企業としての認知を獲得してまいりましたが、「LTV(ライフタイムバリュー)の罠」で新たに当社が新規顧客の獲得だけでなく既存顧客の育成にまで、スコープを拡大した支援ができることを示すものとなっております。さらに、2024年2月にサービスサイトトップページのリニューアルも実施し、当社の多岐にわたるDXソリューションを明示しております。

これは、当社の支援領域の拡大に合わせて、当社に関する市場からの認知を、サイト改善に特化した支援会社であるというものからデジタルマーケティング全般を支援できる会社であると、アップデートするために戦略的に行ったものであります。

 

また、各事業それぞれが新規顧客の開拓と既存顧客の継続と拡大を推し進め、順調に売上拡大を実現しました。

 

プロダクト事業では2023年はGoogleアナリティクスの旧バージョンであるUA(ユニバーサルアナリティクス)から最新バージョンであるGA4(Googleアナリティクス4プロパティ)への移行年であり、当社ビジネスもGA4対応を進めてまいりました。「AIアナリスト」では、UAのデータ取得が終了する2023年7月1日を前に、GA4対応の新機能「GA4対応サイトレポート」をリリースすると同時に、UAのデータのアーカイブ機能を提供することで、旧バージョンで蓄積したデータの消失を回避しながら、最新バージョンにスムーズに移行できる点を新たなメリットとして打ち出し、プロモーションを行いました。2023年7月にはGA4のデータを自動で分析し、実施した施策の効果を検証する「効果検証(GA4)」機能を提供開始しました。また、2023年8月にはGA4のデータと検索関連データを蓄積するGoogleサーチコンソールのデータを自動的に紐づけして分析を行うGA4版の「SEOレポート(GA4)」をリリースし、2023年9月にはGA4のデータを用いて、自社のWebサイト内の各ページからのフォーム誘導率が計測できる「フォーム誘導」分析機能をリリースするなど、種々の機能強化を実施し、2024年2月末時点では「AIアナリスト」のGA4の連携数が2,000件弱まで伸長しております。

 

また、「AIアナリスト」の拡販のため、Webマーケティングとクラウドセールステックを展開する株式会社ジオコード(以下、「ジオコード」)と協業を進め、ジオコードがサービス提供するオーガニックマーケティングにおいて、顧客Webサイトのコンバージョン改善に当社の「AIアナリスト」を積極的に導入することとなりました。これによりジオコードの顧客への「AIアナリスト」導入を進めてまいります。

「AIアナリストAD」では、2023年5月にYahoo!広告の検索広告とディスプレイ広告(運用型)において高い実績を誇る正式な代理店を指す「Yahoo!マーケティングソリューション 2つ星セールスパートナー」に認定、2024年2月にはMeta社からFacebookやInstagramなどのSNS広告運用におけるパフォーマンスとサービスに対して最高レベルの基準を満たした企業に付与される「Meta Business Partners バッジ」を獲得し、これまでの着実な運用実績と事業拡大が、外部から評価されました。現在、収益性の高い大型案件への営業に注力する方針を強め、顧客の入れ替わりを意図的に発生させております。

さらに、2023年10月に実行・実装支援サービスの拡充として「オウンドメディア構築プラン」をリリースいたしました。近年、オウンドメディアとして企業自身が情報を発信する重要性が増してきており、オウンドメディアを持つことで、潜在顧客から明確な顧客層まで、幅広くかつ効果的にアプローチが可能となり、より長い期間での良好な関係を築けるようになります。当社のオウンドメディアである「AIアナリストブログ」運用の知見から、オウンドメディアの構築から運用までをパッケージでサポートしております。

 

インキュベーション事業では「AIアナリスト」で培った“勝ちパターン”を基に企業のマーケティング戦略、組織設計、オペレーション構築など、マーケティングのDXコンサルティングを提供しました。近年ではインキュベーション事業とプロダクト事業での協働案件を意識的に行うことで、「AIアナリスト」の担当者のコンサルタントスキル向上を図り、コンサルタントプールの拡充を進めております。また、数ヶ月で完了する戦略立案のプロジェクトで終わらず、その実行に伴走するプロジェクトが増加しております。

 

 

「Marketer Agent」を展開する人材マッチング事業は、これまでのフリーランスマーケターのマッチングから領域を拡大すべく、マーケティングの推進には欠かせない人材である、クリエイターのマッチングサービスである「Marketer Agent クリエイティブ」のテストマーケティングを2023年6月から開始しました。また、マクロ環境では、フリーランスの労働環境の保護を目的とした「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)が成立するなど、フリーランス市場は引き続き拡大するものと思案しております。このような背景から、さらに事業のスケーラビリティを確保すべく、当事業年度にはダイレクトリクルーティングサービス等の研究開発を開始し、9,753千円を計上しております。現時点の開発範囲は、既存プロセスの効率化、マッチング精度向上を目指すものでありますが、将来的にはフリーランスプールを開放するダイレクトリクルーティングサービスへの展開も視野に入れております。

 

この結果、当事業年度の経営成績は、売上高1,817,530千円(前年同期比34.7%増)、EBITDA307,960千円(前年同期比20.5%増)、営業利益197,625千円(前年同期比7.3%増)、経常利益208,608千円(前年同期比11.4%増)、当期純利益200,548千円(前年同期比4.3%増)となりました。

なお、当社はDX事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 

また、重要な経営指標である2024年2月末の理論LTV(顧客生涯価値)は5,952千円(2023年2月末5,038千円)、クロスセル率は2024年2月末21.7%(2023年2月末26.1%)となりました。

 

(注)EBITDAの計算式は以下のとおりです。

EBITDA=営業利益+減価償却費

 

③キャッシュ・フローの状況

 当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ637,830千円増加し、当事業年度末には1,461,350千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果獲得した資金は355,448千円(前年同期は301,195千円の獲得)となりました。これは主に、税引前当期純利益が208,608千円計上されたこと、減価償却費が110,334千円計上されたこと、業務拡大により未払金の増加額が25,961千円あったこと、その他の流動資産の減少額が37,640千円あった一方で、売上高の増加に伴い売上債権の増加額が20,743千円あったこと、法人税等の支払額が28,066千円あったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は118,967千円(前年同期は160,213千円の使用)となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出が118,700千円あったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果獲得した資金は401,349千円(前年同期は72,962千円の使用)となりました。これは主に、長期借入れによる収入が500,000千円あった一方で、長期借入金の返済による支出が109,361千円あったことによるものであります。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当社が提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

b.受注実績

当社が提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

 

c.販売実績

当事業年度の販売実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2023年3月1日

至 2024年2月29日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

DX事業

1,817,530

134.7

 (注)1.当社の事業セグメントは、DX事業の単一セグメントであります。

2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 2022年3月1日

至 2023年2月28日)

当事業年度

(自 2023年3月1日

至 2024年2月29日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

三井不動産株式会社

153,730

11.4

当事業年度については、当該割合が100分の10以上の相手先がないため記載しておりません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況 ②経営成績の状況」をご参照ください。

 当社の経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 当社の資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。

 当社の資金需要として主なものは、事業の拡大に伴う人件費、プロダクトの開発費、顧客獲得や認知度向上のための広告宣伝費等であります。財政状態等や資金使途を勘案しながら、必要な資金は自己資金、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で資金調達していくことを基本方針としております。なお、これらの資金調達方法の優先順位等は、資金需要の額や用途に合わせて柔軟に検討を行う予定であります。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては過去の実績や現状等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる可能性があります。

 当社の財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

(金銭消費貸借契約)

 当社は、2023年11月22日開催の取締役会において、資金の借入について決議し、金融機関3行と金銭消費貸借契約を締結しております。借入の内容は以下のとおりであります。

(1)借入実行日    2023年11月30日

(2)金額       500,000千円

(3)金利       基準金利+スプレッド

(4)借入期間     3~5年

(5)借入先      株式会社みずほ銀行、株式会社りそな銀行、株式会社三井住友銀行

(6)資金使途     運転資金

(7)担保状況     無担保・無保証

 

6【研究開発活動】

 当社は主に人材マッチング事業におけるダイレクトリクルーティングサービス等の研究開発に取り組んでおります。

 当事業年度における研究開発費の総額は9,753千円となっております。

 なお、当社の事業はDX事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。