この経営方針、経営環境、対処すべき課題等には、将来に関する記述が含まれています。こうした記述は、現時点で当社が入手している情報を踏まえた仮定、予期及び見解に基づくものであり、既知及び未知のリスクや不確実性及びその他の要素を内包するものです。3「事業等のリスク」などに記載された事項及びその他の要素によって、当社の実際の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況が、こうした将来に関する記述とは大きく異なる可能性があります。
(1)中期経営計画の進捗状況
2023年5月に公表した中期経営計画2026「Creating Sustainable Futures」の初年度となった2024年3月期においては、依然として先行き不透明なビジネス環境下でもリスク管理を徹底しました。同計画で掲げているグローバル・産業横断的取組み、ポートフォリオ経営の深化、基礎収益力向上に向けた取組み、サステナビリティ経営の更なる深化、グループ経営力の強化が着実に進捗しました。主な進捗は以下のとおりです。
1)グローバル・産業横断的取組み
中期経営計画で定めた3つの攻め筋に沿って、厳選した成長投資を着実に実行しました。
(a)Industrial Business Solutions
FPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)の順調な立上げや稼働に加え、デジタルインフラの領域に進捗がありました。りらいあコミュニケーションズの公開買付け及びKDDIエボルバとの経営統合により、アルティウスリンクが発足しました。同社は、国内最大規模のコンタクトセンター事業者となり、生成系AIの活用等デジタル化によるサービスの高度化を進め、デジタル業務アウトソーシング(デジタルBPO)のリーディングカンパニーを目指します。また、当社が知見を有する領域とその周辺領域における事業群の形成・強化を推進しました。モビリティ分野では、ペルーの鉱山機械販売・サービス会社への出資を実行、建機・鉱山ソリューション事業群を形成しました。北米では、展開する自動車事業との相乗効果が見込める米国トラックオークション会社への出資を通じ、北米モビリティ・バリューチェーンの強化と事業群の形成に取り組んでいます。
(b)Global Energy Transition
タイのガス火力発電の順調な立上げや、台湾洋上風力発電、ベトナムBlock B天然ガス田開発における最終投資決断の実行等、将来の安定収益基盤拡充に向けた取組みを進めました。また、デンマークにおける、再生可能エネルギー電力等を活用するe-メタノール製造販売事業、ポルトガルにおける再生可能ディーゼル及び持続可能な航空燃料(SAF)の製造事業、米国における再生可能天然ガスの製造事業等に参画しました。引き続き、脱炭素社会の実現に向け、さまざまな分野でパートナー各社と協働し、先進国・新興国のバランスを兼ね備えた事業ポートフォリオの構築を進めていきます。
(c)Wellness Ecosystem Creation
タンパク質・ニュートリション・ウェルネス領域で積極的な成長投資を実行しました。タンパク質領域では、市場成長を背景に継続的な需要増が見込まれ、飼料効率が良いこと、育成期間が短く市況耐性を有していること、比較的安価に提供できることから、鶏とエビに注力し事業群形成を推進していきます。当連結会計年度においては、世界最大のエビ養殖事業者であるエクアドルIndustrial Pesquera Santa Priscila、飼料原料調達からブロイラーの生産・加工・販売まで一貫して展開するエジプトWadi Poultryに参画しました。また、米国Celaneseとの長年のパートナーシップに基づき、機能性食品素材を製造販売するNutrinovaに参画しました。さらに、ウェルネス領域では、国内大手給食事業者エームサービスを完全子会社化し、フードサービス事業の強化に取り組みました。
2)ポートフォリオ経営の深化
欧州機関車リース事業会社Mitsui Rail Capital Europe、豪州電力事業会社International Power(Australia) Holdings、米国Kaikias油田等、資産リサイクルを推進しました。他方で、全社ポートフォリオマネジメントの視点から投資案件を厳選し、3つの攻め筋に沿った成長投資を実行しました。
3)基礎収益力向上への取組み
既存事業の収益力強化や効率化、ターンアラウンドの推進及び新規事業の収益貢献により、中期経営計画では1,700億円の基礎収益力向上を目指しています。2024年3月期時点では、既存事業強化により200億円、ターンアラウンドと赤字事業からの撤退により250億円、新規事業の収益貢献により100億円、合計で550億円まで基礎収益力拡大が進捗しています。
4)サステナビリティ経営の更なる深化
脱炭素社会の実現に向けた事業ポートフォリオ変革を進める中、当連結会計年度は発電事業ポートフォリオにおいて、再生可能エネルギー事業の最終投資決断や、石炭火力発電事業の売却に進捗がありました。また、自然資本の分野において、社会の関心が高まる中、自然への依存・影響の把握と分析を進め、10事業を重要な領域と特定し、当社ポートフォリオの良質化につなげるべくリスク審査機能強化や、自然資本を機会とする案件の推進につなげています。同時に、事業活動における人権尊重の取組みを強化すべく、取引実施にあたっての人権に関連する詳細調査の実行主体をコーポレートスタッフ部門から事業現場に一部移管するなど、実効性向上に向けた取組みを進めることで、将来リスクの低減につなげています。
5)グループ経営力の強化
デジタルや知的資本等の三井物産グループアセットの活用を促し、1人当たりの生産性向上を加速させています。現場での主体的なDX推進を加速させるため、全役職員のデジタルスキルを向上させ、ビジネスモデルの変革を担うDX人材を育成しました。全社での更なる生産性向上に向け、既存業務の棚卸等、定型業務の効率化を加速させています。また、当社がさまざまな国や産業における事業を通じて培ったビジネスナレッジ・ノウハウ等を知的資本と位置づけ、その活用を促進しています。
6)グローバルでの多様な個の活躍推進
社員一人ひとりがより自分らしく活躍するために、幅広いフィールドの中で自身のキャリアを自律的に形成できる仕組みづくりを目指し、2024年7月1日より新たな人事制度を導入します。新人事制度では、旧来の「担当職」と「業務職」を廃止し、「総合職」として統合した上で、自身のキャリア・ライフプランに応じて勤務地限定の有無を定期的に選択できるようにします。また、グローバルでの適材配置を支えるタレントマネジメントシステム「Bloom」の全世界での展開に向け、海外拠点にて先行導入しています。人は、三井物産にとって最大の資産であり、さまざまなバックグラウンドと強みを持つ多様な「個」が協働し、経営資源を最大限活用しながら、自らビジネスを創り、育て、展(ひろ)げ、新たな価値を世界中で生み出しています。
7)進化を続けるガバナンス体制
2024年3月期は、ガバナンス委員会、経営会議、取締役会等において当社の執行体制及び機関設計に関する議論を実施し、監査役会設置会社の機関設計を維持しつつ、社外取締役比率を上げ、社内外取締役人数を同数とするなど、ガバナンス体制を変更することを決定しました。
また、取締役会では、経営課題への対応の進捗状況を検証するため、個別案件のみならず、全社的な課題に関する付議・報告を行っています。2024年3月期は、コンプライアンス体制、サステナビリティ経営、労働安全衛生管理体制及びウェルビーイング経営、資産ポートフォリオ、リスクエクスポージャーとコントロール、サイバーセキュリティ対応等の全社的な課題について付議・報告が行われました。個別案件審議においては事前説明をより一層丁寧に行うなど、取締役会の審議の更なる充実化と効率化に進展がありました。
(2)経営環境
1)全般
注:本項目は、2024年5月の決算公表時点の経営環境認識を掲載したものであり、当社の現在の経営環境認識と異なる記載が含まれている場合があります。
当連結会計年度の世界経済は、米国が堅調に推移しましたが、欧州は停滞が続き、中国の回復も低調であったことから全体として減速局面が続きました。
米国経済は、良好な雇用環境のもとで底堅い個人消費に支えられ、堅調に推移しました。先行きはインフレがさらに落ち着いていく中で、FRBによる利下げも見込まれることから、景気拡大が続くものとみられます。欧州では、金融引き締めの影響や輸出の不振などから景気の停滞が続きました。先行きは物価の上昇が落ち着く中で個人消費の回復が期待され、ECBによる利下げも見込まれることから、緩やかに回復に向かうものとみられます。日本では、企業収益が好調であることに加え、インバウンド需要も回復しましたが、物価高の影響などにより個人消費が低調だったことや年初に一部自動車メーカーの出荷停止などがあったことから景気回復の勢いは弱まりました。先行きは昨年を上回る賃上げや所得税減税により個人消費の持ち直しが期待されることから景気は回復基調に戻るとみられます。中国は、輸出は昨年の不振から脱しつつありますが、不動産市場の低迷が長引く中で、消費が伸びず、経済成長は減速しました。先行きは政府の政策対応によって持ち直していくことが期待されます。ブラジルは、昨年、農産物の輸出が伸び、消費も底堅く推移しましたが、今後は昨年夏からの利下げが景気を支えることが期待されます。ロシアは、国際社会から課された経済制裁による経済活動への下押しが続く一方で、軍需品の生産が伸びており、プラス成長は維持するとみられます。
世界経済の先行きは、米欧先進国のインフレの落ち着きに加え、米欧の利下げなど金融引き締め局面からの転換が期待されることから、2024年後半以降、減速局面を脱する道筋に移行していくものとみられます。ただし、中東情勢の不安定化など地政学的リスクは懸念されます。
2)事業セグメント
上記経営環境を踏まえた各事業セグメントにおける環境認識並びにリスクと機会は、以下のとおりです。
(a) 金属資源セグメント |
||
環境認識 |
・人口増加・世界経済の成長に伴う素材・資源需要の継続的増加 ・EV化・電動化をはじめとする脱炭素社会に向けたEnergy Transitionと、地域偏在性ある重要鉱物の必要性 ・鉱山操業やサプライチェーンにおける気候変動・自然資本・人権関連対応の拡大 |
|
リスク |
機会 |
|
・中国経済減速による資源需要への影響 ・インフレ・高金利による事業コスト影響 ・技術革新による商品の需給や価格への影響 |
・リサイクルを含むグリーン鉄源・素材の需要増加 ・金属資源需要地としてのインド・東南アジアの継続的成長、資源供給地としてのアフリカの将来的可能性 |
(b) エネルギーセグメント |
||
環境認識 |
・ 人口増加・世界経済の成長に伴い、エネルギー需要は増加する見込み ・ エネルギーの安定供給と脱炭素化の両立に対する社会ニーズの高まり |
|
リスク |
機会 |
|
・世界的な地政学的リスクの高まりや、主要国の選挙結果を受けた政策変更等に起因するエネルギー価格の大幅な変動 ・流動的なEnergy Transition進捗の時間軸 |
・エネルギー安全保障・安定供給ニーズに伴う底堅い化石燃料需要、及び現実解としての天然ガス・LNG需要の増加 ・脱炭素化の進展による、クリーンエネルギーや次世代エネルギー需要の増加、またそれに伴うエネルギーソリューション事業機会の拡大 |
(c) 機械・インフラセグメント |
||
環境認識 |
・脱炭素社会に向けたEnergy Transitionニーズの高まり、デジタル化に伴う電力需要増、国・地域ごとの電源多様化 ・半導体不足による自動車供給不足は今後正常化の見込み ・環境負荷の低いモビリティへのシフトが進む見込み ・ばら積み船需要は安定的に推移、またタンカー需要増は継続見込み |
|
リスク |
機会 |
|
・世界的なインフレ傾向と金融マーケットの変化 ・社会ニーズの変化を受けた新規資源開発の減少など産業構造の変化 |
・DX活用の進展、デジタルインフラ需要増加 ・気候変動対応に伴う再エネ電源や、次世代燃料・電動化など輸送インフラのサービス需要拡大・多様化 |
(d) 化学品セグメント |
||
環境認識 |
・気候変動対応に伴う環境配慮型事業に対する社会からの要請の高まり ・人口増加や経済成長に伴う食料やエネルギー由来の化学品需要の増大 ・健康意識の高まりによる食の高付加価値化ニーズの増大 |
|
リスク |
機会 |
|
・気候変動対応に伴う石油化学産業の構造変化の加速 ・地政学的リスクの高まりによるサプライチェーンの再編と地産地消化 ・エネルギー価格高騰、金利高や人手不足によるコスト上昇や商品需要の低迷 |
・サプライチェーンの変化による安定供給ニーズの増大 ・次世代燃料・リサイクル素材をはじめとする環境配慮型素材・製品・事業の需要増加 ・健康・ウェルネス、Quality of Life向上への関心の高まり |
(e) 鉄鋼製品セグメント |
||
環境認識 |
・脱炭素社会に向けた技術革新による段階的なグリーン化の進展 ・地政学的リスクの顕在化継続による地産地消の重要性増加 ・中期的な世界鉄鋼需要はインド・東南アジアを牽引役として増加見込み |
|
リスク |
機会 |
|
・国内粗鋼生産減少を背景とした流通構造の変化 ・地政学的リスクの高まりによるサプライチェーンの影響 ・人件費高騰・労働力不足 |
・脱炭素化、地産地消ニーズに伴う新たなサプライチェーン構築需要の拡大 ・循環型経済の加速によるインフラ長寿命化・メンテナンス需要の高まり |
(f) 生活産業セグメント |
||
環境認識 |
・先進国でのライフスタイル多様化と健康志向、サステナビリティなど社会価値への関心の高まり ・新興国での人口増・経済成長・所得増・高齢化によるヘルスケアニーズの高まり ・原材料費・労務費等の上昇が継続する見通し |
|
リスク |
機会 |
|
・気候変動による伝統的産地の移動 ・地政学的リスクによる貿易構造の変化 ・医療規制動向及び人手不足、GAFA等異業種参入に伴う医療業界パラダイムシフト |
・価値観の多様化・細分化、及び消費行動の多様化 ・未病・予防、健康への行動様式や価値観の変化 ・アジア等新興国における医療需給ギャップ拡大、先進国における未病・予防市場の拡大 |
(g) 次世代・機能推進セグメント |
||
環境認識 |
・生成AIを用いたサービスや、サイバーセキュリティ対応に関するニーズの高まり ・環境意識の高まりなどの市場環境・ニーズの変化を捉えた投資判断の重要性増大 |
|
リスク |
機会 |
|
・株価変動などの市場価格変動リスク ・金利上昇、インフレに伴う景況感、企業業績の悪化 |
・技術進化に伴うICTソリューションニーズの高まり ・ライフスタイルの多様化に伴うデジタルサービスの普及 ・気候変動対応に伴う金融商品組成機会、ボラティリティ上昇によるヘッジニーズ増加 |
(3)2025年3月期事業計画
2025年3月期は、「Creating Sustainable Futures」をテーマとする中期経営計画の2年目となります。「挑戦と創造」の精神で、当社の強みを活かし、グループ全体でグローバル・産業横断的なビジネスを展開し、価値を提供することで、基礎営業キャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローから運転資本の増減に係るキャッシュ・フローを除き、リース負債の返済による支出額を減算したもの)1兆円、当期利益9,000億円を計画します。また、コア事業の強化、赤字事業の削減、厳選した成長投資及び戦略的リサイクルの加速からなる重点施策を実行し、一層の企業価値向上に取り組みます。
1)5つのCorporate Strategy
中期経営計画2026の実現に向けて着実にCorporate Strategyを推進します。
2)ポートフォリオ経営の深化
当社の強みである、先進国と新興国の双方においてバランスよく分散されたグローバルなポートフォリオを継続的に見直し、組み替えます。厳選した成長投資や事業群戦略を踏まえたボルトオン投資を実行し、早期収益貢献と長期収益基盤の構築を両立させることで、当社の収益基盤をより強固なものとしていきます。同時に、世界中の各業界を代表するパートナーとの関係性を深化させ、それぞれの機能を組み合わせたプロジェクトを実行していきます。さらに、資本効率を意識することで資産の入替えを加速し、戦略的リサイクルと以下の3つの攻め筋に沿った成長投資(中期経営計画2026の3年累計で1兆8,000億円を予定)を推進します。
(a)Industrial Business Solutions(中期経営計画2026の3年累計で8,000億円の成長投資を予定)
グローバルかつ産業横断的なプレゼンスや事業ポートフォリオを通じ、資源開発、機械・モビリティ、インフラ・デジタルインフラ等のコア領域でさまざまな産業における課題解決に向けた取組みを強化します。資源開発事業においては、優良資源の積増しを通じ、長期収益基盤を盤石なものとします。また、機械・モビリティ領域においては、船舶事業のバリューチェーン強化、モビリティ事業群の形成・強化を実行します。デジタルインフラにおいては、デジタルBPOの提供を通じ、持続可能な社会の実現に貢献します。
(b)Global Energy Transition(中期経営計画2026の3年累計で6,000億円の成長投資を予定)
天然ガス及びLNGをコア事業として安定収益基盤を拡充し、エネルギー安定供給と気候変動対応の双方の観点か
ら、事業を通じて社会課題であるエネルギートランジションの実現に貢献します。また、長年培った知見やパートナーシップを通じ、厳選した良質な案件を獲得し、多様な低炭素メタノールの製造・販売、クリーンアンモニア等の次世代燃料安定供給への取組み、再生可能エネルギー事業の着実な立上げ、低炭素鉄源事業の推進等、脱炭素社会の実現に向けた取組みを進めます。
(c)Wellness Ecosystem Creation(中期経営計画2026の3年累計で4,000億円の成長投資を予定)
コア事業の競争力強化、市場成長・ニーズを捉えた事業群戦略を推進します。食・ニュートリション領域におい
ては、新たな事業獲得による鶏・エビを核とするタンパク質事業群の形成及びバリューチェーンの高度化、事業間シナジーの実現を推進していきます。また、ウェルネス領域では、未病・予防ソリューションの強化のほか、IHH Healthcareを中核とするヘルスケア事業を通じたアジア市場の成長の取込み、完全子会社化したエームサービスの収益力強化を目指します。
3)キャッシュ・フロー・アロケーションの最新見通し(中期経営計画3年累計)
2024年3月期の実績と今後の見通しを踏まえて、昨年5月に公表した中期経営計画3年累計のキャッシュ・フロー・アロケーションをアップデートしました。基礎営業キャッシュ・フロー及び資産リサイクルの増加を反映しキャッシュ・インの増加を見込みます。これに伴い、マネジメント・アロケーションは中期経営計画2026の3年累計で1兆1,300億円から1兆7,500億円までの拡大を見込み、厳選した成長投資及び株主還元へのバランスの取れた配分を予定しています。引き続き、投資機会と事業環境を総合的に勘案し、成長投資と株主還元へ柔軟で戦略的な資金配分を実行します。
(4)利益配分に関する基本方針
株主還元策については第 4 提出会社の状況 3 配当政策をご参照ください。
(5)2025年3月期連結業績予想
①2025年3月期連結業績予想
[業績予想の前提条件] |
25年3月期 予想 |
24年3月期 実績 |
期中平均米ドル為替レート |
145.00 |
145.31 |
原油価格(JCC) |
81ドル |
86ドル |
期ずれを考慮した当社連結決算に反映される原油価格 |
86ドル |
91ドル |
単位:億円 |
2025年3月期 業績予想 |
2024年3月期 実績 |
増減 |
増減要因 |
売上総利益 |
13,200 |
13,197 |
+3 |
|
販売費及び一般管理費 |
△8,300 |
△7,943 |
△357 |
退職給付制度改定 |
有価証券・固定資産 関係損益等 |
1,500 |
1,785 |
△285 |
資産リサイクル |
利息収支 |
△1,100 |
△1,038 |
△62 |
|
受取配当金 |
1,500 |
2,107 |
△607 |
エネルギー、金属資源 |
持分法による投資損益 |
4,700 |
4,916 |
△216 |
商品価格下落 |
法人所得税前利益 |
11,500 |
13,024 |
△1,524 |
|
法人所得税 |
△2,200 |
△2,219 |
+19 |
|
非支配持分 |
△300 |
△168 |
△132 |
|
当期利益 (親会社の所有者に帰属) |
9,000 |
10,637 |
△1,637 |
|
|
|
|
|
|
減価償却費・無形資産等償却費 |
2,900 |
2,936 |
△36 |
|
|
|
|
|
|
基礎営業キャッシュ・フロー |
10,000 |
9,958 |
+42 |
|
・為替レートは2024年3月期の145.31円/米ドル及び95.32円/豪ドルに対し、2025年3月期はそれぞれ145.00円/米ドル及び95.00円/豪ドルを想定します。また、2025年3月期の原油価格(JCC)を81米ドル/バレルと仮定し、期ずれを考慮した当社の連結決算に適用される原油価格の平均を86米ドル/バレル(2024年3月期比5米ドル/バレル下落)と想定します。
オペレーティング・セグメント別での業績予想(当期利益(親会社の所有者に帰属))は以下のとおりです。
(単位:億円) |
2025年3月期 業績予想 |
2024年3月期 実績 |
増減 |
増減要因 |
金属資源 |
2,900 |
3,351 |
△451 |
鉄鉱石価格 |
エネルギー |
1,400 |
2,817 |
△1,417 |
前期一過性利益反動、LNG物流 |
機械・インフラ |
2,300 |
2,487 |
△187 |
自動車・船舶事業 |
化学品 |
700 |
392 |
+308 |
関係会社業績改善 トレーディング |
鉄鋼製品 |
250 |
112 |
+138 |
関係会社業績改善 |
生活産業 |
750 |
941 |
△191 |
前期一過性利益反動 |
次世代・機能推進 |
650 |
538 |
+112 |
FVTPL益、国内中核関係会社伸長 |
その他/調整・消去 |
50 |
△1 |
+51 |
|
連結合計 |
9,000 |
10,637 |
△1,637 |
|
オペレーティング・セグメント別での基礎営業キャッシュ・フロー予想は以下のとおりです。
(単位:億円) |
2025年3月期 業績予想 |
2024年3月期 実績 |
増減 |
増減要因 |
金属資源 |
3,600 |
4,091 |
△491 |
鉄鉱石価格、関連会社配当 |
エネルギー |
2,900 |
2,478 |
+422 |
LNG配当入金 |
機械・インフラ |
1,500 |
1,769 |
△269 |
子会社の関連会社化 関連会社配当 |
化学品 |
800 |
634 |
+166 |
関係会社業績改善 トレーディング |
鉄鋼製品 |
150 |
85 |
+65 |
関連会社配当 関係会社業績改善 |
生活産業 |
500 |
402 |
+98 |
トレーディング 関係会社業績改善 |
次世代・機能推進 |
500 |
454 |
+46 |
|
その他/調整・消去 |
50 |
45 |
+5 |
|
連結合計 |
10,000 |
9,958 |
+42 |
|
② 2025年3月期連結業績予想における前提条件
2025年3月期連結業績予想における商品市況及び為替の前提と価格及び為替変動による当期利益(親会社の所有者に帰属)への影響額は以下のとおりです。
価格変動の2025年3月期 当期利益(親会社の所有者に帰属)への影響額 |
2025年3月期 前提 |
|
2024年3月期 実績 |
|||
市況商品 |
原油/JCC |
- |
81 |
|
86 |
|
連結油価*1 |
24 |
億円(US$1/バレル) |
86 |
|
91 |
|
米国ガス*2 |
13 |
億円(US$0.1/mmBtu) |
2.46 |
|
2.66*3 |
|
鉄鉱石*4 |
27 |
億円(US$1/トン) |
*5 |
|
119*6 |
|
原料炭 |
3 |
億円(US$1/トン) |
*5 |
|
294*7 |
|
銅*8 |
7 |
億円(US$100/トン) |
8,700 |
|
8,483*9 |
|
為替*10 |
米ドル |
34 |
億円(1円変動あたり) |
145.00 |
|
145.31 |
豪ドル |
25 |
億円(1円変動あたり) |
95.00 |
|
95.32 |
*1 原油価格は期ずれで当社連結業績に反映されるため、それを考慮した連結業績に反映される原油価格を連結油価として推計している。2025年3月期には約35%が4~6カ月遅れ、約30%が1~3カ月遅れ、約30%が1年超遅れ、約5%が遅れ無しで反映されると想定される。上記感応度は、連結油価に対する年間インパクト。
*2 当社が米国で取り扱う天然ガスはその多くがHenry Hub(HH)に連動しない為、上記感応度はHH価格の変動に対するものではなく、加重平均ガス販売価格に対するインパクト。
*3 米国ガスの2024年3月期実績には、2023年1月~12月のNYMEXにて取引されるHenry Hub Natural Gas Futuresの直近限月終値のdaily平均値を記載。
*4 Valeからの受取配当金に対する影響は含まない。
*5 鉄鉱石・原料炭の前提価格は非開示。
*6 鉄鉱石の2024年3月期実績欄には、2023年4月~2024年3月の複数業界紙によるスポット価格指標Fe 62% CFR North Chinaのdaily平均値(参考値)を記載。
*7 原料炭の2024年3月期実績欄には、対日代表銘柄石炭価格(US$/MT)の四半期価格の平均値を記載。
*8 銅価格の価格感応度は、2024年1月~12月のLME cash settlement price平均価格がUS$100/トン変動した場合に対するインパクト。
*9 銅の2024年3月期実績欄には、2023年1~12月のLME cash settlement priceのmonthly averageの平均値を記載。
*10 上記感応度は、各国所在の関係会社が報告する機能通貨建て当期利益に対するインパクト及び一部海外出資先からの受取配当金の影響。円安は機能通貨建て当期利益の円貨換算を通じて増益要因となる。関係会社における販売契約上の通貨である米ドルと機能通貨の豪ドルの為替変動、及び為替ヘッジによる影響を含まない。
注) 経営成績に対する外国為替相場の影響について
2023年3月期及び2024年3月期の海外の連結子会社及び持分法適用会社の当期利益(親会社の所有者に帰属)の合計はそれぞれ8,946億円及び7,429億円です。これらの海外所在の連結子会社及び持分法適用会社の機能通貨は、主として米ドル及び豪ドルです。2025年3月期連結業績予想の当期利益(親会社の所有者に帰属)に対する為替変動の影響について、当社は簡便的な推定を行っています。
(a)具体的には、業績予想策定の過程で、海外関係会社の予想当期利益(親会社の所有者に帰属)を各社の機能通貨別に集計し、まず米ドル及び豪ドル建ての予想当期利益(親会社の所有者に帰属)の合計額を算出しました。これら2つの通貨別に表示された海外関係会社の予想当期利益(親会社の所有者に帰属)に一部の海外出資先からの通貨別の配当金を合計した金額に対して為替変動の影響を評価しました。これによれば米ドルに対する円高/円安は、1円あたり34億円程度、豪ドルに対する円高/円安の影響は、1円あたり25億円程度、当期利益(親会社の所有者に帰属)の減少/増加をもたらすと試算されます。
(b)なお、豪ドルを機能通貨とする資源・エネルギー関連生産会社の当期利益(親会社の所有者に帰属)は、両通貨と契約上の建値通貨である米ドルとの間での為替変動の影響を大きく受けます。この影響額は、(a)に述べた3つの通貨毎の当期利益(親会社の所有者に帰属)合計の円相当評価による感応度と別に勘案する必要があります。
(c)ただし、資源・エネルギー関連生産会社などでは、一部において、販売契約の契約通貨である米ドルと機能通貨の為替ヘッジを行っているほか、外貨建の当期利益(親会社の所有者に帰属)の円貨相当評価に係る為替ヘッジを行っている場合があります。これらの影響額についても、(a)に述べた2つの通貨毎の当期利益(親会社の所有者に帰属)合計の円相当評価による感応度と別に勘案する必要があります。
(1)サステナビリティ基本方針
三井物産は、大切な地球と人びとの豊かで夢あふれる明日を実現し、「世界中の未来をつくる」ことを経営理念に掲げています。この理念の下、本方針においてサステナビリティへの取組みを重要な経営課題と位置付け、三井物産グループ行動指針—With Integrityや本方針、サステナビリティ関連方針等に従い、サステナビリティを重視した経営を行います。三井物産グループは事業活動を通じ、地球規模の課題解決に挑み、持続可能な社会と経済成長の実現に寄与していきます。
-マテリアリティの特定と取組推進-
当社は、社会と当社の持続的な発展のために、当社及びステークホルダーに影響を与える重要な課題をマテリアリティとして特定します。マテリアリティは中長期的にリスクまたは機会となる事項であることから、中期経営計画や事業計画等、当社の事業方針・戦略策定の基軸とし、本方針を実践します。
-取締役会の役割-
取締役会は、当社のサステナビリティへの取組みを適切に監督し、中長期的な企業価値向上に努めます。サステナビリティに関する重要な事項はサステナビリティ委員会、経営会議を経て、取締役会に付議または報告の上決定します。
-ステークホルダーエンゲージメントと情報開示-
当社は、ステークホルダーとの対話を重視し、適切な情報開示に努め、信頼と期待に真摯にそして誠実に応えます。
(2)三井物産のマテリアリティ
当社グループは、サステナビリティを重視した経営を行っており、さまざまなステークホルダーの期待と信頼に応え、当社が企業使命に掲げている「世界中の未来をつくる」に貢献すべく、社会と当社が持続的に成長するための重要な経営課題として以下のとおり、5つのマテリアリティを特定しています。各マテリアリティと組織ごとの具体的な方針、目標、取組み、進捗状況に関してはマテリアリティアクションプランとして整理のうえ、進捗を管理し、開示しています。
サステナビリティレポート2023:
https://www.mitsui.com/jp/ja/sustainability/sustainabilityreport/2023/pdf/ja_sustainability_2023.pdf
また、国連「持続可能な開発目標(SDGs)」の17目標に取り組んでいくために、三井物産のマテリアリティとSDGsを関連付けて事業・活動を推進しています。
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(3) サステナビリティ情報
当社グループを取り巻くサステナビリティの課題は上記のとおり、多岐にわたります。その中でも、気候変動対応、人権、情報セキュリティ並びに人材戦略については、当連結会計年度末において発生頻度と想定損害規模及び全社リスク許容度に鑑み特定した重要なリスクとして、
サステナビリティレポート2023:
https://www.mitsui.com/jp/ja/sustainability/sustainabilityreport/2023/pdf/ja_sustainability_2023.pdf
なお、当社は2023年5月に公表した中期経営計画2026において5つのCorporate Strategyを設定しています。「サステナビリティ経営の更なる深化」と「グローバルでの多様な個の活躍推進」がCorporate Strategyに含まれており、3か年の重点取組項目として特定しています。「サステナビリティ経営の更なる深化」においては「気候変動」、「自然資本」、「ビジネスと人権」といった社会課題に対して、サプライチェーン全体を通じた対応を進めます。また、「グローバルでの多様な個の活躍推進」においては自律的なキャリア形成を後押しするべく、人への投資を加速していきます。
中期経営計画2026:
https://www.mitsui.com/jp/ja/ir/library/meeting/pdf/ja_233_4q_chukei.pdf
(4) 気候変動対応
当社が特定したマテリアリティには、「安定供給の基盤をつくる」、「豊かな暮らしをつくる」や「環境と調和する社会をつくる」が含まれ、環境方針においては、GHGの削減や気候変動の緩和と適応に貢献する事業の推進に努めることを掲げています。また、中期経営計画2026においては、気候変動をサステナビリティ経営における課題の一つに特定しています。当社グループは国際的な枠組みであるパリ協定や日本の中長期的な削減目標に寄与するべく、世界のさまざまな国・地域の経済・社会の発展と、気候変動の緩和及び適応といった地球規模の課題の解決の両方に、幅広い事業活動を通じて貢献していきます。
気候変動対応に係る具体的な、①ガバナンス、②戦略、③リスク管理、④指標及び目標は以下のとおりです。
①ガバナンス
・気候変動に関わる経営の基本方針、事業活動やコーポレートの方針・戦略は、経営会議の下部組織であるサステナビリティ委員会が企画・立案・提言を行っており、2024年3月期(計7回開催)は気候変動目標、Scope3全カテゴリーの排出量開示、非財務情報の制度開示に関する対応方針、シナリオ分析等の主要課題について審議を行いました。
・経営上の重要課題の一つである気候変動対応に関する基本方針や重要事項は、サステナビリティ委員会での審議を経て、定期的に経営会議及び取締役会に付議・報告しています。2024年3月期は取締役会での年2回のサステナビリティ推進活動に関する定例報告に加えて、「気候変動対応」をテーマに、社外役員も含めた取締役・監査役がフリーディスカッションを行いました。また、社外役員会議ではScope3全カテゴリーの排出量開示に関する活発な議論を行いました。
・また、外部有識者から構成されるサステナビリティアドバイザリーボードを設置し、メンバーからの情報や助言をサステナビリティ委員会の審議に活用しています。2024年3月期には、サステナビリティ経営体制・基盤強化やビジネスと人権といったサステナビリティ経営上の重要テーマに関して9回の諮問・意見交換を実施しました。
・サステナビリティ経営を推進するにあたり、さまざまなステークホルダーとの対話を行い、外部からの意見を尊重した事業活動を実践することが重要と考え、毎年ステークホルダーダイアログを開催しています。2024年3月期の内容については、(5)サプライチェーンと人権 をご参照ください。
②戦略
・当社グループでは、短期、中期、長期の時間軸に分けて、最長2050年までのシナリオ分析を実施しています。シナリオ分析に際しては、IEA(国際エネルギー機関)が発行するWorld Energy Outlook(WEO)に記載のあるシナリオ等を参照して、移行リスク・機会の分析を行っています。
・移行リスク分析は連結業績予想策定を含む事業計画プロセスにおいて定期的に実施しており、分析結果は事業ポートフォリオ戦略にも反映しています。事業規模と気候変動インパクト(GHG排出量または削減・吸収量)を勘案し、シナリオ分析の対象として、石油・ガス開発事業及びLNG事業、原料炭事業、火力発電事業、鉄鉱石事業、海洋油・ガス田生産設備事業、ガス配給事業、LNG船事業、再生可能エネルギー事業、次世代エネルギー事業、森林資源事業を優先度の高い10事業としてシナリオ分析の対象事業に選定しています。
・シナリオ分析の対象事業の内、特に重要度が高いと判断した石油・ガス開発事業及びLNG事業、原料炭事業、火力発電事業の3事業については、事業環境認識や各種シナリオを踏まえた当社が想定するベースケースを基にした既存事業への2030年3月期、2040年3月期、2050年3月期における当期利益への影響額を分析し3段階で表示しています。
・一方、物理的リスクに関しては、現状のリスク対応の妥当性を検証するために、物理的リスクの影響が高い投資先65社の主要資産所在地をマッピングし、洪水(内水氾濫、外水氾濫、高潮浸水)、厳寒、猛暑、熱帯低気圧、地滑り、山火事、水ストレス(渇水)・干ばつを対象に、2030年及び2050年での2℃及び4℃シナリオ下の物理的リスクの影響を分析しました。
・総合商社である当社は、各産業において、バリューチェーンの上流から下流まで幅広く事業を推進しており、パートナーや顧客と共に、社会の排出量削減に資する取組みを進めています。バリューチェーン全体のGHG排出量を把握することを目的に、2023年3月期を対象に、Scope3排出量を算定しました。
・移行リスク分析結果及び物理的リスク分析結果の詳細、バリューチェーン上のGHG削減取組については以下、
https://www.mitsui.com/jp/ja/sustainability/environment/climate_change/pdf/ja_202312tcfd.pdf
(参考)2023年3月期 GHG Scope3排出量
カテゴリー |
排出量(百万t-CO2e) |
1. 購入した製品・サービス |
35.3 |
2. 資本財 |
0.8 |
3. Scope1、2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 |
1.5 |
4. 輸送、配送(上流) |
3.2 |
5. 事業から出る廃棄物 |
0.0 |
6. 出張 |
0.1 |
7. 雇用者の通勤 |
0.0 |
8. リース資産(上流) |
対象外 |
9. 輸送、配送(下流) |
カテゴリー4に含む |
10. 販売した製品の加工 |
32.2 |
11. 販売した製品の使用 |
83.5 |
12. 販売した製品の廃棄 |
0.2 |
13. リース資産(下流) |
1.2 |
14. フランチャイズ |
対象外 |
15. 投資 |
33.6 |
合計 |
|
③リスク管理
・気候変動によるリスク(移行・物理的)を、当社の重要なリスクにおいて事業投資に関わるリスクや地政学的リスク、カントリーリスクに次ぐ重要度と位置づけ、対応策を講じています。詳細については、
④指標及び目標
・当社では気候変動に係る各種目標を設定、モニタリングを継続して実施していますが、特に重要なものは以下の通りです。
(a) 親会社+連結子会社(含むUn-inco JV*)のScope1+2及びScope3カテゴリー15(投資):
2050年の「あり姿」としてのNet-zero emissions(図1)を掲げ、その道筋として2030年に2020年3月期比GHGインパクト半減(目標値:17百万トン以下)を目指す。(図2)
(b) 親会社+連結子会社(除くUn-inco JV*)のScope1+2:
2030年のGHG排出量を2020年3月期比半減させる。
(c) 発電事業における再生可能エネルギー比率:
2030年までに30%超に引き上げる。
* Un-inco JV: Un-incorporated Joint Venture(共同支配事業)
なお、中期経営計画2026において、上記目標達成に向けたマイルストーンとして、2026年3月期時点のGHGインパクトを27百万トンに削減すること、発電事業における再生可能エネルギー比率を27%に引き上げることをそれぞれ設定しています。2024年3月期の発電事業における再生可能エネルギー比率は29%(2023年3月末比+6%)となりました。
・GHGを多く排出する事業の中長期的なレジリエンスの向上、また当社及び社会のGHG排出削減に貢献する事業の促進を目的に、2020年4月から社内カーボンプライシング制度を導入しています。
当社グループのGHG排出量の推移並びに主な変動要因は以下のとおりです。
単位:千t-CO2e |
|||
|
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
Scope1+2 |
|
|
|
Scope3カテゴリー15(投資) |
36,000 |
33,576 |
*1 |
・2024年3月期におけるGHG Scope1+2排出量は、豪州原料炭事業における採掘エリア移行の影響及び石油・ガス生産事業における生産数量減少を主因に、2023年3月期から357千トン減少しました。
なお、2022年3月期、2023年3月期のGHG排出量におけるScope1及び2、一部のScope3(カテゴリー4(輸送)の内、国内輸送*2)については、それぞれサステナビリティレポート2022及び2023において第三者保証を受けています。
https://www.mitsui.com/jp/ja/sustainability/sustainabilityreport/2023/pdf/ja_sustainability_2023.pdf
*1 2024年3月期のGHG Scope3排出量関連データについては、2024年8月頃にサステナビリティウェブサイトにおいて公表予定
*2 親会社(単体)が第三者保証の対象
https://www.mitsui.com/jp/ja/sustainability/index.html
(図1)GHG削減目標達成イメージ
(図2)GHGインパクト半減に向けたロードマップ
*本数値は2023年11月末時点での想定です
*本グラフにおける削減貢献量には、吸収除去・オフセット量に該当する数値を含みます
*Net-zero emissionsには、削減貢献量は含みません
(5) サプライチェーンと人権
当社は、世界中の国や地域でグローバルに事業を展開していることから、自社のみならずサプライチェーンも含めた人権の尊重への取組みが求められていることを認識しています。このため、国際基準に則った人権に対する配慮はサステナビリティ経営の基盤であると考え、これまでも三井物産グループ行動指針や三井物産役職員行動規範に人権の尊重を謳い、取組みを推進してきました。
企業の人権尊重への取組みの重要性は年々増しており、当社の人権に関する考え方をより明確にした上で取組みを推進すべく、2020年8月に人権方針を策定しました(2022年2月改定)。本方針策定にあたっては、経営会議に付議・承認され、取締役会でも報告されています。
サプライチェーンと人権の対応に係る具体的な、①ガバナンス、②戦略、③リスク管理、④指標及び目標は以下のとおりです。
①ガバナンス
・人権に関わる経営の基本方針、事業活動やコーポレートの方針・戦略は、経営会議の下部組織であるサステナビリティ委員会が企画・立案・提言を行っており、2024年3月期(計7回開催)は人権デューデリジェンス(人権DD)の実施範囲の拡大や社内プロセスの拡充を通じた人権リスク管理の実効性向上に向けた審議を行いました。
・経営上の重要課題の一つである人権に関する基本方針の遵守や重要事項は取締役会が監督しており、サステナビリティ委員会での審議を経て、必要に応じて適宜経営会議及び取締役会に付議・報告されています。
・また、外部有識者から構成されるサステナビリティアドバイザリーボードを設置し、メンバーからの情報や助言をサステナビリティ委員会の審議に活用しています。2024年3月期には、ビジネスと人権をテーマとして、国連開発計画ビジネスと人権リエゾンオフィサーの佐藤暁子氏、真和総合法律事務所弁護士/当社サステナビリティアドバイザリーボードメンバーでもある高橋大祐氏を招致し、サステナビリティ委員会メンバー間で、ステークホルダーダイアログを開催しました。
②戦略
・当社グループでは、サステナビリティ基本方針及び人権方針に沿い、世界中の国や地域における三井物産グループの事業活動を通じて人権の尊重に取り組みます。また、ビジネスパートナーを含むさまざまな関係者に対し、各方針に沿った人権尊重への理解と実践を期待し、協働して人権の尊重を推進することを目指します。
・当社では、事業活動において、自らが人権侵害をしないことに加え、サプライチェーン等の取引関係を通じて人権侵害を助長しないよう努めます。また「世界人権宣言」を含む国際人権章典、「労働における基本的原則及び権利に関するILO(国際労働機関)宣言」 の中核的労働基準に表明されている人権を尊重し、「ビジネスと人権に関する指導原則」及び「国連グローバル・コンパクトの10原則」を支持し、これらの国際規範を踏まえて、人権方針、環境方針、持続可能なサプライチェーン取組方針を定めています。
・私たちは、ビジネスとサステナビリティの融合を掲げる中期経営計画2026の中で、ビジネスと人権をサステナビリティ経営の更なる深化に向けた重要テーマの一つに位置付け、人権デューデリジェンスの実効性向上、サプライヤーとの協働、社内プロセス拡充を掲げており、当社事業のリスク低減と企業価値の向上に繋がるビジネスと人権への取組みを進めていきます。
③リスク管理
・当社は、上記の通り各種国際規範を踏まえて、2020年3月期に外部専門家を起用し、当社及び海外現地法人の取扱商品、連結子会社の主要事業を対象にサプライチェーン上の人権について、人権リスク評価を行いました。その結果、当社のサプライチェーン上において、主に食料・衣服・建材・鉱物の商品で、東南アジア、アフリカ、南米等の新興国を中心とした原産地が一般的に強制労働や児童労働等の人権問題が生じる可能性が高い分野と評価し(「高リスク分野」)、人権DDを開始しました。
・具体的には以下の図のとおり「周知」「特定」「調査」「開示・改善」の取組みを行うことで、サプライチェーンにおける課題の把握と解決を目指しています。
・2020年3月期に特定した高リスク分野におけるすべての主要サプライヤーについて、2023年3月期までにサプライヤーアンケートを実施しました。実施したアンケート結果や現地訪問においては重大な人権問題は確認されませんでしたが、人権方針を策定していないサプライヤーや法令等の理解が不十分なサプライヤーに対してあらためて当社取組みの説明を行う等、サプライヤーとともに、サプライチェーン全体での人権尊重の理解促進と実践を進めることで、人権問題リスクの低減に努めています。
・2024年3月期も引き続き新規取引先に持続可能なサプライチェーン取組方針を送付し内容を理解いただくとともに、人権課題に精通する弁護士を講師として取引先向けに研修を実施しました。当社及び子会社のサプライヤーにアンケートを送付し回答を得ました。また、当社子会社の三井農林株式会社が、販売先である食品製造会社と共にスリランカ紅茶農園のフォローアップ監査に同行し、農園、紅茶葉製造工場と対話を実施しました。食品製造会社起用の外部専門家による事前の現地訪問調査時には、マネジメント、HSE、応急処置等において良い取組みが実施されていることが確認出来た一方、就業規則・労働契約、賃金等の項目の一部において改善すべき事項を発見。食品製造会社と共に農園経営者との対話を重ね対応を行いました。結果、現地にて改善されていることを確認しました。
・苦情処理メカニズムも当社ウェブサイトに掲載しています。2024年3月期は人権に関する苦情はありませんでした。また、苦情受領後の対応期間の見通し等、記載内容の改善を行いました。
・なお、人権DDの対象とする高リスク分野につきましても、実効性の向上を目指し、2024年3月期に社外アドバイザーのアドバイスを得つつ見直しを行い、2025年3月期から従来の食品原料・食料品・建材等の商品に加え、鉱業・金属・石油・ガス・化学品といった業種も対象とし、東南アジア・アフリカ・南米等の新興国を中心とした原産地対象取引が高リスク分野に該当すると判断し人権DDの対象とすることとしました。
・また、アンケート項目の改善、サプライヤーの回答率向上を狙った調査回答プロセスのウェブシステム導入、調査結果の評価のプロセス化等、取組強化と効率化に努めています。
・また、2024年3月期は、事業本部による関係会社自主監査や内部監査における人権要素の監査の仕組みの導入や、商品の売買契約において人権条項を追加することを原則とするなど、サプライチェーンも含む人権リスクの低減に資する施策に取り組みました。また、意識浸透策としてキャリア段階別研修(新人/ラインマネージャー)にビジネスと人権の内容を追加しました。
④指標及び目標
・中期経営計画2026では、事業活動における人権尊重取組をさらに強化することを掲げ、人権デューデリジェンスの範囲拡大、サプライヤーとの協働、社内プロセスの拡充を図ります。
・当社は特に森林破壊や環境負荷、人権リスク等の高い分野の以下4種の原材料・商品については、NGO等ステークホルダーとも協議し、各方針に加えて個別に調達方針を策定し、トレーサビリティや認証品調達率の目標と実績を開示すると共に、取引先に方針を送付・周知し、持続可能な原材料・商品の調達に努めています。本方針は定期的に見直し、必要に応じて改定していきます。
・2024年3月期には連結子会社の三井物産シーフーズにおいて水産物の個別調達方針を策定しました。環境負荷の範囲は、気候変動、水資源、生物多様性など多岐にわたるため、今後も個別調達方針対象商品の拡充を図るとともに、サプライヤーと協働しサプライチェーン上の環境、人権リスク評価を進めていきます。
商品 |
内容 |
2021年3月期 |
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
2030年目標 |
天然ゴム |
原産地までのトレーサビリティ |
100% |
100% |
100% |
100% |
100% |
パーム油 |
ミルレベルまでのトレーサビリティ |
99.1% |
100% |
100% |
100% |
100% |
RSPOを始めとする持続可能認証品取扱比率 |
6.9% |
11.2% |
12.2% |
18.6% |
100% |
|
木材 |
国際的に認められた認証材・または準じる材の取扱比率 [製材] |
100% |
100% |
77% |
0%* |
100% |
同上 [製紙用ウッドチップ] |
100% |
100% |
100% |
100% |
100% |
|
紙製品 |
違法性のない原料で製造された製品であることのトレーサビリティ |
91% |
93% |
100% |
100% |
100% |
* 認証団体のFSCが特定産地国材に対する認証付与を取りやめたことによるもの。認証付与が取りやめになった当該製材については2024年4月時点で新規受注を終了しており、2024年6月に履行完了見込み。
(6) 情報セキュリティ
当社グループでは、以下の情報セキュリティ方針を掲げ、情報セキュリティに関するリスクマネジメントに取り組んでいます。
・情報セキュリティ方針
(a) 情報セキュリティへの取組み
当社は、情報セキュリティの重要性を認識し、「三井物産コーポレート・ガバナンス及び内部統制原則」に則り情報の適時・有効な活用を図るため、関連規程の整備・実施を通じて、連結グローバル・グループベースで情報資産(情報及びITシステム)に対する適切な管理を行い、これを継続的に改善してまいります。
(b) 法令等の遵守(コンプライアンスの確立)
当社は、情報セキュリティに関連する法令、確立された規格、その他の規範を遵守し、これらに準拠・適合した情報セキュリティの構築・確保に向け取り組みます。
(c) 情報資産の保護
当社は、情報資産の機密性、完全性及び可用性を確保するための適切な管理を行い、これらを脅かす全ての脅威から情報資産を保護することに努めます。
(d) 事故への対応
当社は、情報セキュリティに関する事故の発生予防に努めるとともに、万一事故が発生した場合は、事故対応のみならず再発防止策を含む適切な対策を速やかに講じます。
情報セキュリティに係る具体的な、①ガバナンス、②戦略、③リスク管理、④指標及び目標は以下のとおりです。
①ガバナンス
当社のグローバル・グループ情報戦略に係る重要方針は、経営会議の諮問機関である「情報戦略委員会規程」に基づいて設置されたCDIO(チーフ・デジタル・インフォメーション・オフィサー)を委員長とする情報戦略委員会の審議を経て経営方針に沿い策定されています。
2024年3月期は、情報戦略委員会を合計8回開催しました。2021年3月期に策定したDX事業戦略・Data Driven(DD)経営戦略・DX人材戦略からなる「DX総合戦略」の進捗をモニタリングしたほか、当社グローバル・グループシステムのあるべき姿を具体化する「グランドデザイン」、サイバー攻撃に対応するための体制拡充・点検・訓練方針、グローバルネットワーク、次世代人事システム、アジャイル開発内製化、生成AIの活用、IT/DX R&D、戦略的DX支援制度等に関する討議を行いました。
同委員会を中心とした体制のもと、情報システムの構築運営や情報セキュリティ面で必要となる以下の各規程の整備を通じて、情報漏洩やサイバー攻撃等の想定される各リスクの管理を含む内部統制体制の強化を進めています。
・「情報システム管理規程」:情報資産の調達・導入からその運用方法を規定
・「ITセキュリティ規程」:ITセキュリティの面でのシステム主管部の行動原則を規定
・「情報管理規程」:情報リスク管理体制、情報管理に関する基本事項を規定
・「個人情報保護規程」:事業遂行上必要となる個人情報の取扱に関する規程(国内のみが対象)
・「サイバーセキュリティ対策に関する規程」:サイバー攻撃等への予防及び事件発生時の緊急対策に関する規程
・「三井物産グループサイバーセキュリティ原則」:当社グループ各社が共通的に実施することを目指す、基本的サイバーセキュリティ対策
また、特定の企業・組織を狙い撃ちする標的型攻撃、ランサムウェア(ファイルが暗号化され復号と引き換えに身代金を要求)、BEC(Business Email Compromise:ビジネスメール詐欺)、及び不特定多数を狙ったばらまき型メール攻撃など、日々発生するサイバー攻撃は巧妙化・高度化・深刻化する中、当社グループでのサイバーセキュリティ対策は重要性を増しており、年1回、情報戦略委員会並びに経営会議での審議を経た後、取締役会に報告しています。
②戦略
当社では、米国国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology)のサイバーセキュリティフレームワークに沿って対策を立案・実行し、サイバーセキュリティ専門子会社である三井物産セキュアディレクションの知見を活用しながら、「予防」「鍛錬」「処置」の3つのステップに分けて対策を講じています。
(a) 予防
当社ではサイバーハイジーン(IT公衆衛生)が重要と考えており、IT環境を健全な状態に保つと共に、役職員のセキュリティ意識醸成を目指しています。システムの観点では、IT資産の状態把握のためのインベントリの適切な管理や、攻撃の糸口になる箇所を掌握する脆弱性管理などに取り組んでいます。また、人に焦点を当てた啓発活動では、サイバーセキュリティに関する意識向上、攻撃被害拡大防止を目的として、関係会社を含む役職員に「サイバーセキュリティポータル」を公開し、サイバーセキュリティに関する最近の動向、事例や役職員が取るべき対策等の各種情報を発信しています。また、一般役職員向けとセキュリティ担当者向け夫々の「サイバーセキュリティe-Learning」を作成、活用しています。
(b) 鍛錬
当社は、従来の「境界型セキュリティ」(「社内は安全だが、外部は危険」という考えに基づき、社内ネットワークと社外ネットワークの境界線を中心としたセキュリティ対策)から「ゼロトラスト」(ネットワークの内部と外部を区別することなく、守るべき情報資産やシステムにアクセスするものは全て信用せずに検証するセキュリティ対策)に転換し、デバイス、データ、ネットワーク、クラウド等の各IT領域でのセキュリティ対策を強化しています。また、グローバルでの24時間365日のセキュリティ監視、及び有事の際の対応体制を構築・維持・拡充しています。
(c) 処置
当社は、サイバーセキュリティ対策の中心として「MBK-CSIRT(Computer Security Incident Response Team)」を構築し、各部門のサイバーセキュリティ担当と連携し、報告・支援する仕組を確立、組織的・継続的なインシデント対応、再発防止を実現しています。また、被害の規模や深刻度に応じたセキュリティインシデント発生時の対応を定め、必要に応じた有効性確認のための訓練を定期的に実施しています。
③リスク管理
情報システム及び情報セキュリティに関するリスクは、「3.事業等のリスク」において重要なリスクの一つと位置づけ、以下の対応策を講じています。
・情報システムの安全性及び情報セキュリティ強化のため、関連規程を整備し、当社及び連結子会社が保有する情報及び情報システムにおける機密性、完全性及び可用性を適切に確保し、またリスク管理水準を改善するための指針を継続的に示して情報漏洩等のリスクを管理しています。
・当社グローバル・グループでのサイバーセキュリティ対策強化のため、当社グループ各社が準拠すべき「三井物産グループサイバーセキュリティ原則」を定めています。また、関係会社各社にて年1回実施する「サイバーセキュリティベースライン調査」にて準拠状況をセルフチェックすると共に、「サイバーセキュリティリスクアセスメント」による第三者評価も実施しています。
・当社では、サイバーBCP(事業継続計画)として、被害の規模や深刻度に応じたセキュリティインシデント発生時の対応を予め定めています。
④指標及び目標
2023年3月期に、当社グループ各社が共通的に実施することを目指す基本的サイバーセキュリティ対策として、「三井物産グループサイバーセキュリティ原則」を策定しました。当社では、サイバーセキュリティ上の重要な関係会社を毎年指定し、当該原則への準拠状況をモニタリングしています。
(7) 人材戦略
人材戦略に係る具体的な、①ガバナンス、②戦略、③リスク管理、④指標及び目標は以下のとおりです。なお、本項目において記載のある「海外採用社員」は、海外現地法人及び海外事務所において採用する社員を示し、海外連結子会社において採用する社員は含みません。
①ガバナンス
当社のコーポレート・ガバナンスの基本方針及び全社のコーポレート・ガバナンス体制の概要については、第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等をご参照ください。
(a)人的資本に関するガバナンス体制
当社はCHRO(チーフ・ヒューマン・リソース・オフィサー)を人的資本経営の実行・実現を担う責任者として設置し、ダイバーシティ経営・ウェルビーイング経営の推進、人材の確保、育成、評価、報酬などの領域を管掌する一方、人材の離職や定着率の管理など人的資本に関わるリスクを把握し、適切なリスクマネジメントを行います。
人的資本に関わる経営の基本方針・計画・制度及び事業活動方針・戦略については、その重要性に応じ、経営会議の諮問委員会において議論された後、社長及びCHROを含む経営会議に付議・報告されます。重要事項については個別に取締役会にも付議・報告され、全体の活動については、定期的な取締役会報告を通じて取締役会による監督が適切に図られる体制となっています。
ダイバーシティ推進委員会
当社では、経営会議の諮問委員会として、CHROを委員長とし、人事総務部長、経営企画部長に加え、委員長が別途指名する委員から構成されるダイバーシティ推進委員会を設置しています。2024年3月期は「別途指名する委員」として、海外現地法人取締役や事業本部長を含む5名(内、女性3名、外国籍1名)が指名され、計8名の多様なバックグラウンドを有するメンバーで以下記載のテーマについて討議を行いました。各議事録はイントラネットを通じて従業員に公開しています。
|
日程 |
主要なテーマ |
第1回 |
2023年5月31日 |
年間活動計画、(前期までの)ダイバーシティ指標進捗確認 |
第2回 |
2023年12月1日 |
インクルージョンに関する討議 |
第3回 |
2024年2月27日 |
女性活躍推進に向けた目標値及びアクション案協議 |
(b)業務執行体制
人的資本に関する取組みの基盤として、CHROが中心となり、16事業本部・コーポレートスタッフ部門の人事管理担当者、海外ユニットのCHRO、及び各グループ会社の人事総務担当者が連携するグローバル・グループ人事体制を構築しています。グローバル・グループ人事体制は、以下の図のとおり、CoE(Center of Excellence)とHRBP(HR Business Partners)、OPE(Operational Excellence)からなり、これら組織機能が三位一体となって、価値創造を担う世界中の多様な社員の育成や活用を推進する戦略や施策・環境整備に取り組んでいます。日本に拠点を置く各事業本部、コーポレート部署及び海外拠点を司る地域本部や地域ブロックは、COE、HRBP、OPEと連携し、当該専門領域(HRコード)で活躍する人材をプロフェッショナルに育てる役割を担っています。これらのグローバルマトリクス体制での人材マネジメントの取組みは、CHROを通して経営層に定期的にレポートされ、人材戦略や人事体制の改善・決定につながっています。このグローバル・グループ人事体制のもと、人材戦略の策定や、多様性とインクルージョンの推進など、グローバル・グループ全体で取組みを行っています。
②戦略
当社グループは、「挑戦と創造」のDNAを継承し、常に時代の潮流を先取りしてさまざまな分野や国で新たな事業を創出してきました。当社グループの最大の資産は人材であり、「人」こそが持続的な価値創造の源泉です。社会課題の解決を通じ新たな価値創造を続けるために、変化に即応し未来の戦略をつくることができる人材を社員に求め、その人材像を以下に定義しています。
・自律的な成長:自身の実現したいことを明確にし、ゴールの実現に向けた具体的なロードマップを自ら描き、それを実現するために必要な経験やスキルを自律的に積み上げる人材
・強い「個」:グローバルで幅広く自分の担当する領域に精通し、他者と協働を通じて更なる高みを目指し、主体的にビジネスを創り、育て、展(ひろ)げ、世界中で新たな価値を生み出す人材
・インクルーシブ:自由に発想し、異なる考えを受け入れ、周囲の仲間と共に多様性を活かし、違いを受け入れ共創できる環境で新たなイノベーションを生み出す人材
これらの多様なバックグラウンドを持つ人材が、多様な現場でグローバルに活躍する姿を後押しすることが当社グループの人材戦略の根幹であり、中期経営計画2026*の重点施策の1つとして位置づけられています。自律的なキャリア形成(挑戦・経験・学び)を支援し、従業員一人ひとりの活躍を支える諸施策・環境整備のために更なる投資を推進します。上記の取組みを通じた、社員の成長とより付加価値の高い業務へのシフトが、事業ポートフォリオの変革を支えると考えています。
* 中期経営計画の詳細は、当社ウェブサイトに掲載している説明会資料をご参照ください。
https://www.mitsui.com/jp/ja/ir/library/meeting/pdf/ja_233_4q_chukei.pdf
経営戦略と人材戦略の着実な実行を進めるにあたっては、社員一人ひとりが各自の取り組んでいる業務と関連付けてその目的を理解し、持続的な企業価値の向上につなげていくサイクルが重要と考えています。このサイクルを適切に実行していくため、社員エンゲージメントを人材戦略の成果を測る重要な経営指標の一つと位置付け、定点観測を行い、組織の課題と向き合うツールとして、三井物産グループ全体を対象にMitsui Engagement Survey(MES)を毎年実施しています(関係会社の実施は任意)。
本サーベイは客観性・透明性を担保するため、社外の業務委託先へ対象者が匿名で直接回答する形式で年1回実施しています。MESの結果は各地域・組織単位での分析とアクションプランを通じて、社員が当事者となって現場での組織開発に活用しています。また同時に経営メンバーも、経営会議での結果の分析・討議を通じた人材戦略の策定や施策の見直しなどの重要な役割を担うことから、「社員エンゲージメント」及び「社員を活かす環境」の肯定的回答率の前期対比での増減は、取締役(除く社外取締役)を対象とした報酬制度の一要素としています。
取締役の報酬の詳細は、「第4 提出会社の状況 4. コーポレート・ガバナンスの状況等 (4) 役員の報酬等」をご参照ください。
当社(単体)及び海外現地法人の結果は以下のとおりです。また、サーベイ対象者数などの詳細については、④指標及び目標をご参照ください。
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2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
社員エンゲージメント*1 |
71% |
72% |
73% |
社員を活かす環境*2 |
69% |
69% |
69% |
戦略・方向性の理解・共感*3 |
78% |
80% |
81% |
スキル・能力の発揮機会*3 |
74% |
76% |
76% |
リーダーシップに対する信頼*3 |
70% |
71% |
73% |
*1 「会社に対して貢献意欲やロイヤルティがあり、自発的努力をしようという気持ち」についての複数の関連設問における肯定的回答率
*2 「自分のスキルや能力を活かす機会があり、働きやすい環境が整備されているか」についての複数の関連設問における肯定的回答率
*3 各項目における関連設問についての肯定的回答率
(a) 強い「個」の育成
当社グループの「世界中の未来をつくる」というMissionの達成に向けては、従業員一人ひとりが変革をリードし、自らの強みを活かして世界標準で成果を積み上げることが重要です。各現場でのOJT(On the job training:業務を通じて知識などを身に着ける教育方法)を軸としつつ、それを補完する体系的な人材育成プログラムや、従業員の志向を起点にしたグローバルなキャリア開発のための各種制度や基盤を提供し、強い「個」を育成します。
(i) グローバル・グループでの人材育成
当社グループは新入社員からリーダー層に至るまで、役割期待別研修、選択型研修、選抜型研修等、豊富な人材育成プログラムを実施しています。
当社では、若手社員を対象とした各地域のエキスパートを育成する海外修業生や専門性を高める部門研修員制度、中堅層社員対象のビジネススクールへの派遣制度を実施すると共に、国内グループ社員を対象とした節目研修や「物産アカデミー」等の選択研修の実施等を通じて、人材の育成・人的ネットワークの構築を支援しています。
海外採用社員に対しても、現地事情に合わせたリーダーシッププログラムやスキル系研修を実施しているほか、日本への派遣プログラムとして、短期でのJapan Trainee Programや、1~2年間の長期にわたるJapanese Language & Business Program及びJapan Business Integration Programを設けています。
その他、重要パートナー企業までに対象を広げ、社会課題を解決するビジネスを創出し、事業において困難な局面を乗り越えるためのリーダーシップを発揮するグローバルリーダーの育成を目的とするHarvard Business Schoolの協力を得て開発した当社独自のGlobal Management Academy Programを設けています。2023年は日本を含む計16カ国から合計43名が参加し、過去11回の開催で累計398名が参加しました。
(ii)自律的なキャリア形成
当社は、社員の意欲や志向を起点にしたキャリアプラン実現の基盤として、所定の任用・昇格要件や年齢に関わらず、適任者が上位ポジションでより大きな役割・職務にチャレンジできるキャリアチャレンジ制度を導入しています。挑戦意欲ある社員が、より早く、その能力と適性に応じてストレッチできる環境で経験を積むことを後押しし、事業経営人材を含む次世代リーダーの早期育成につなげることを狙いとしています。
当社グループは、管理職を対象に、360°多面観察であるMitsui Management Review(MMR)を毎年実施しています。部下や協働する同僚からのフィードバックを受け、自身のマネジメント力の振り返りとリーダーシップの強化のほか、組織の多様な個の力を活かす組織づくりにも活用し、時代に即したリーダーの育成につなげています。MMRの結果は上司にも提供し、職制を通じた人材育成や、ラインマネージャー任用の参考としても活用しています。また同時に所属組織のMESの結果とも連携させ、組織開発への課題取組みへの実行サイクルを強化する取組みも行っています。
当社グループは、DXケイパビリティ開発に向けてMitsui DX Academyを開講しています。全役職員対象の基礎編から高度DX人材養成のための応用編までを含む「DXスキル研修」、DXプロジェクトの実践を通じたOJTにてDXビジネス人材を育成する「ブートキャンプ」、最先端のDXスキルや知見の獲得と高度DX専門人材とのネットワーキング構築を目的に海外大学コースへ派遣する「Executive Education」など、目的やレベルに応じた研修体系を整備しています。また高度なDX技術を持つなど、一定の基準を満たす人材をDX人材として認定する制度を設けています。認定後は社内外の各フィールドでDXの専門家として活躍しています。
(b) インクルージョン
当社グループは、多様な個性を有する従業員が、自分らしく社会や組織に属し、最大限に力を活かすことができる会社を目指します。インクルージョンの推進を加速させる環境を整えると共に、無意識のうちに暗黙的な排他や区別を行うことがないよう、従業員一人ひとりの意識醸成を支援し、グローバル・グループでのインクルージョンを実現します。採用地や性別によらず、社員一人ひとりがお互いを認め合い、恒常的に異なる考えや新しい考え方が入ることで刺激を受け合いながら能力を最大限に発揮し、イノベーションを生み出すことでビジネスに新たな価値をもたらし、当社グループの価値向上に繋げます。
(i) 女性の活躍推進
当社グループではさまざまな場で女性社員が活躍しており、女性管理職比率は連結ベースで18.8%、現地法人及び海外事務所における海外採用社員ではグローバルスタンダードである約4割となっています。一方で当社の女性管理職比率は9.2%に留まるため改善に向けた取組みを強化しています。2025年3月末の女性管理職比率10%の目標については、2024年7月に10.6%となり達成することが見込まれることから、2031年3月期の20%を新たな目標値として設定しました。また、2020年3月期から管理職の女性を対象にしたWomen Leadership Initiativeプログラムを実施し、ライン長候補の育成を強化しています。加えて、2022年3月期からは経営会議メンバーがスポンサーとなり、シニアリーダー候補の女性社員に対しキャリアに関する助言や指導を行い、ストレッチアサインメント(一段目線の高いチャレンジとなる業務機会の提供)に繋げるSponsorship Programを実施しています。これら取組みを通じて女性管理職におけるラインマネージャーやシニアマネージャーへの登用を着実に進めています。
(ii) 海外採用社員の管理職登用
当社グループでは、各国や地域に根を深く張ったビジネスを展開するため、当社グループの海外拠点(現地法人・海外事務所)において人材の活躍推進に力を入れています。世界各国から選抜された社員を対象に、2019年3月期から変革を積極的に推し進める先導者を育成するChange Leader Programを実施しています。2024年3月期はこれまで開催した計4回の参加者の活躍状況や進捗確認の場として、日本での経営会議メンバーを交えた対面型セッションを開催しました。このプログラム参加者の中から、現地法人の役員や部長クラスのポジションに任用されるなど、更なる活躍推進に向けた取組みになっています。また、三井物産人材開発(株)では、当社グループの海外拠点だけではなく、グループ各社で働く世界中の社員を対象とした教育・研修の企画運営の提供も行っています。
(iii) 両立支援(ワークライフマネジメント)
当社グループでは、多様な価値観・バックグラウンドを持つ社員が働いており、一人ひとりの生活(ライフ)に対する考え方や果たすべき責任もさまざまです。それぞれに抱える事情は異なりますが、仕事(ワーク)ではプロフェッショナルとしての自律性と責任をもって最大限の力を発揮して活躍しながら、ライフとの両立を可能とする取組みを行っています。
自らの「ワーク」と「ライフ」のマネジャーとなって両立を可能とする「ワークライフマネジメント」の考え方をベースに、特に大きなライフイベントである育児・介護について、当社では法定基準を上回る各種制度・支援策を導入しています。また両立を支える働き方については、リモートワークやフレックスタイムの導入など、育児・介護などの特定の事情に限定せず、全社員が自律的に最適な形で組み合わせて仕事とプライベートの両立を可能とする各種施策を整備しています。
男性育児休業については、各自の自律的な選択に基づく働き方推進がベースとなり、休業を取得する男性社員の半数以上が4週間以上の休業を取得するなど、各自・各家庭の育児に関する考え方を尊重し、必要な期間しっかりと休業が取れる環境を整えています。
(iv) 採用
当社グループでは、「世界中の未来をつくる」というミッションを実現すべく、インクルーシブな風土を根底で支える高い志とフェアネスをもった人材の多様性を重視しています。そのため、国籍・性別・年齢・出身大学・宗教・人種等は問わず、多様な価値観・知見・能力を重視する人物本位の採用選考を行っており、公正な採用活動を基本方針としています。その一環として当社は国内でのキャリア採用をいち早く導入しました。2024年3月期に当社(単体)へ入社した総合職社員209名(新卒・キャリア採用合計)の内、キャリア採用は85名(41%)となります。
(単位:名) |
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
新卒(内、女性) |
128(57) |
111(44) |
124(54) |
キャリア(同上) |
63(20) |
92(31) |
85(36)* |
新卒・キャリア合計(同上) |
191(77) |
203(75) |
209(90) |
キャリア採用比率 |
33% |
45% |
41% |
*配偶者転勤による再雇用入社8名を含む
(c) 戦略的適材配置
当社グループは、16事業本部を中心としてグローバル展開をしており、国や地域毎に強みを発揮していくために、事業と地域を2軸としたグローバルマトリクス制を採用しています。事業戦略に連動した活躍の場を用意し、従業員は新しい仕事への挑戦を通じてスキルや専門性を身に付け、会社と共に成長します。このような戦略的適材配置と自律的なキャリア形成をグローバル規模で推進します。
(i)グローバルベースの後継者育成計画
社長とCHRO、人事総務部長、各事業本部長・コーポレートスタッフ部門各部長が参加し、毎年Human Resources Strategy Meeting(人材戦略会議)を開催しています。本会議では、当社グループの重要ポジションのサクセッションプラン(後継者育成計画)についての議論や、女性や海外採用社員等の活躍状況と育成方針の確認を行っています。多様な社内人材から形成される後継者人材プールの状況を継続的に把握し、戦略的な適材配置 による組織パフォーマンスの最大化を図る狙いです。 また、想定外の事態への備えとしてのBCP(事業継続計画)策定により組織マネジメントの連続性も担保しています。
(ii)グローバルタレントマネジメントの深化
採用地を問わず、社員一人ひとりの経験・能力・知識やキャリアの志向といった人材データを活用し、適所で適材が活躍するフィールドの醸成と、社員の自律的なキャリア形成を支えるグローバルデータプラットフォームとして、Bloomを2022年10月にアジア・大洋州本部、東アジアブロック、韓国物産で導入しました。2024年4月に米州本部、欧州ブロック、中東・アフリカブロック、CISブロックで導入し、2025年3月期までに全世界で導入される予定です。
(iii)グローバルベースでの転勤プロセスの標準化
事業を牽引する人材を戦略的に配置するため、海外採用社員の転勤プロセスを標準化すべくグローバルモビリティプログラムを2022年10月に策定し、2023年4月の転勤者から全世界で導入しました。導入以前は転勤時の諸条件が転勤者ごとに個別決定となっておりプロセスが煩雑且つ調整に時間を要していましたが、統一ルールを導入することで海外採用社員の国を超える異動の難易度を低減し、グローバルベースでの戦略的配置を実践します。
(iv)スキル・専門性を活用した適材配置
当社は、機動的で実効性の高い全社最適の適材適所と、社員の自律的キャリア選択の両方をマッチングさせる仕組みとして、社員のキャリア志向と適正を踏まえ、従来のラインマネージャーを前提とした職群に加えて、高度な専門性を蓄えた人材のための複線型キャリアパスであるExpertバンドを設定しています。
当社は、上司を経由せず、意欲ある社員が自らの意思で能力・スキル・専門性を最大限に発揮できる職務に挑戦できる人事ブリテンボード制度を導入しています。組織の壁を越えた「会社のニーズ」と「社員の意思」のマッチングのプラットフォームとして、より機動的で実効性の高い全社最適の適材適所と、社員の自律的なキャリア選択と挑戦を後押しします。
(d) ウェルビーイング・健康と安全
(i) 健康経営からウェルビーイング経営へ
当社は2017年に「健康宣言」を策定し、社員の健康管理を重要な経営課題と位置付け、健康経営に取り組んできました。近年、身体の健康だけではなく、精神的にも社会的にも満たされている状態がウェルビーイングとして大切にされるように世の中の価値観も変わってきました。当社では、このような変化を踏まえ“一人ひとりが活力にあふれ「挑戦と創造」を実践できる状態”をウェルビーイングと定義し、前述の「健康宣言」を2023年7月に「ウェルビーイング経営宣言」へ刷新しました。本宣言に基づき、治療と仕事の両立支援やメンタルヘルス予防施策、女性社員を対象としたアンケートに基づいた診療所への婦人科設置やその他施策など、社員が自分らしく互いの価値観を尊重しつつやりがいを持って活き活きと働けるような職場環境を整備する具体的施策をCHROを責任者とする推進体制のもとで、一層充実させていきます。
(ii) ウェルビーイング推進会議
ウェルビーイング経営の推進にあたっては、CHROを責任者とし、人事総務部長、産業医、保健師、三井物産健康保険組合をメンバーに、ウェルビーイング推進会議を審議機関として、生活習慣病予防やがん対策等、社員の健康維持・増進に向けた施策の企画・決定・実行に取り組んでいます。各議事録はイントラネットを通じて従業員に公開しています。
(iii) 労働災害のない安心・安全な職場づくり
当社は、その事業活動において、三井物産グループ役職員と事業に関わる仲間の健康と安全を常に最優先します。そのために全ての関係者とより高いレベルで価値創造ができるよう、各々の法令に基づく施策はもとより、さまざまな健康維持・増進に向けた取組みを進めていきます。また、私たちが事業を展開する各国・地域社会において労働災害のない、全従業員と、共働するさまざまな仲間が安全に働ける職場や作業環境づくりを推進するために、現地の法律・規制の遵守はもちろん、それぞれの業界特有のベストプラクティスを取り入れながら継続的な改善を図り、必要とされるリソースとトレーニングを提供していきます。
全てのビジネスにおいて安全衛生を高め、当社グループ及びコントラクターの従業員の労働災害を未然に防ぐことを目指し、CHROを責任者とする労働安全衛生推進体制のもとで、全社各ユニットの事業特性に合わせた施策を推進していきます。2023年11月にはコントラクター選定における取組指針となる三井物産グローバル・グループコントラクター選定方針を策定しました。
2024年3月期は、2回の取締役会にてウェルビーイング経営・労働安全衛生に関する報告、改善に向けた審議が行われました。
③リスク管理
・人的資源の制約に関するリスクを当社は認識しており、対応策を講じています。詳細については、「3. 事業等のリスク」をご参照ください。また以下の点についてもリスクを識別し、対応策を講じています。
リスクタイプ |
リスクマネジメント(対応策) |
リスク全般 |
・CCO(チーフ・コンプライアンス・オフィサー)の指揮・監督の下、コンプライアンス・プログラム統括部署である法務統括部コンプライアンス・インテグリティ推進室が中心となって、人事総務部や国内外の各本部及び支社等のコンプライアンス統括責任者(事業本部長、支社長等)と連携しながら、グローバル・グループベースで「三井物産グループ行動指針-With Integrity」を浸透させ、コンプライアンスの徹底、コンプライアンス・プログラムの整備・強化、コンプライアンス関連案件への対応を行っています。 ・コンプライアンスに関する職制ライン及び職制外の報告・相談ルートとして、社外弁護士や第三者機関(匿名可)も含めた8つのルートを設置しています。当社役職員のほか、派遣社員、業務委託先の役職員のうち、当社の委託した業務に従事した、または、している役職員を対象としており、電話、メール、ウェブフォーム、書簡等を通じて受け付けています(電話を除き、24時間受付可)。 |
雇用プロセスに関する リスク |
・能力・人物本位の採用選考を行い、公正な採用活動を基本方針としています。国籍・性別・年齢・出身大学・宗教・人種等、本人の能力・適性に関連のない事項に関しては不問として、グローバルで応募の機会を提供しています。 ・適任者を採用するために、幅広い候補者の中から適任な者を採用しています。公正な採用選考のため、面接に当たる関係者に対してトレーニングを実施しています。 |
業務承継に関するリスク |
・事業継続に必要な人員計画の見直しを年次で行い、適切な採用人数を維持しています。 ・Human Resources Strategy Meetingにおいて、重要ポジションの後継者候補となる人材プールを確認し、重要ポジションの後継者育成計画を年1回確認しています。 ・当社グループのビジネスモデルを支える多様な人材確保のため、キャリア採用に積極的に取り組んでいます。 |
報酬の公平・公正性に |
・従業員各自のパフォーマンスに対する適切な評価制度・報酬制度を導入しています。 ・評価は設定した目標に対するPerformance Reviewを期中に3回実施し、事業年度終了時点で上司との評価面談を行います。評価面談及び評価フィードバックが適切に実施されたことをサーベイにて確認しています。 ・報酬は社員一人ひとりの貢献ならびに事業を展開する各国の法律などに即しながら、競争力ある水準を保ちつつ、発揮した能力、成し遂げた成果と貢献に報いるPay for Performanceの考え方を採用しています。 |
労働法に関するリスク |
・労働基準法・労働安全衛生法に準拠した適正な労働時間管理により、過重な長時間労働を回避します。 ・社員の安全・健康をしっかりと保持し安心して働き続けられる職場環境の整備として、安全衛生委員会で議論を行っています。 |
差別またはハラスメントに関するリスク |
・事業活動推進にあたっては、「三井物産役職員行動規範」に基づき、人権を尊重し、差別やハラスメントを行わないことを規定しています。 ・性別・国籍・年齢・障がい等を問わず多様な人材のさらなる活躍を引き出す制度・支援策を導入しています。 ・社内告知や各種イベントを通じ、多様性を受け入れ、尊重するダイバーシティ&インクルージョンを実現する風土・文化の醸成に取り組んでいます。 |
健康及び安全に |
・世界中の国や地域で当社グループの事業活動を行う上で、従業員が自らの持てる力を最大限発揮し、一人ひとりが活き活きと健康に、そして安全に働き続けられる職場環境の整備をしています。また、自主的に事業活動における健康と安全の推進に取り組むべく、自己と周囲の安全と健康への責任を果たせる文化を醸成します。 ・当社グループ及びコントラクターの従業員の労働災害を未然に防ぐことを目指し、CHROを責任者とする労働安全衛生推進体制のもとで、全社各ユニットの事業特性に合わせた施策を推進しています。また取締役会にて健康と労働安全衛生に関する報告を行っています。 ・当社グループで事業を展開する各国・地域社会において各地の法律・規制を把握し遵守することはもちろん、それぞれの業界特有のベストプラクティスを取り入れながら継続的な改善を図っています。また労働災害のない、全従業員と、共働するさまざまな仲間が安全に働ける職場や作業環境づくりを推進するために必要とされるリソースとトレーニングを提供しています。 ・2023年11月にはコントラクター選定における取組指針となる三井物産グローバル・グループコントラクター選定方針を策定しました。 |
④指標及び目標
当社グループでは以下のとおり各種環境指標や目標を設定、モニタリングを継続して実施しています。なお、第1 企業の概況 5. 従業員の状況において国内連結子会社における多様性に関する指標を記載しています。
(a) 社員エンゲージメント強化
(i) Mitsui Engagement Survey(MES)実施状況
サーベイ対象 |
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
目標 |
対象者総数 |
11,693名 |
12,218名 |
15,247名 |
エンゲージメント強化 ・年1回実施 ・回答率90%以上 ・分析+組織開発の着実な実行 ・連結グループでの対象拡大 |
単体社員*1 |
100% |
100% |
100% |
|
海外採用社員*2 |
100% |
100% |
100% |
|
参加関係会社数*3 |
22社 |
20社 |
29社 |
|
サーベイ結果*4 |
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
|
回答率 |
89% |
92% |
91% |
|
社員エンゲージメント*5 |
71% |
72% |
73% |
|
社員を活かす環境*6 |
69% |
69% |
69% |
|
戦略・方向性の理解・ |
78% |
80% |
81% |
|
スキル・能力の発揮機会*7 |
74% |
76% |
76% |
|
リーダーシップに対する |
70% |
71% |
73% |
*1 休職中の従業員及び海外研修員・修業生は除く
*2 海外現地法人及び海外事務所において採用する社員
*3 国内関係会社でサーベイを実施した会社数
*4 当社(単体)及び海外現地法人・海外事務所の結果
*5 「会社に対して貢献意欲やロイヤルティがあり、自発的努力をしようという気持ち」についての複数の関連設問における肯定的回答率
*6 「自分のスキルや能力を活かす機会があり、働きやすい環境が整備されているか」についての複数の関連設問における肯定的回答率
*7 各項目における関連設問についての肯定的回答率
(ii) 自発的離職率
|
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
目標 |
|
1.69% |
1.41% |
|
- |
(b) 人材戦略
(i) 強い「個」の育成
|
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
目標 |
|
- |
27.5億円 |
|
- |
|
105名 |
159名 |
|
- |
|
3名 |
15名 |
|
- |
|
- |
82名 |
|
2026年3月期:1,000名 |
*1 当社(単体)及び海外現地法人・海外事務所の社員
(ii) インクルージョン
|
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
目標 |
キャリア採用比率*1 |
33% |
45% |
41% |
女性管理職比率 2025年3月期:10% 2031年3月期:20% |
女性採用比率*1 |
40% |
37% |
43% |
|
女性従業員比率*1 |
29% |
30% |
30% |
|
女性管理職比率*1 |
8.0% |
8.5% |
9.2% |
|
|
17% |
17% |
|
- |
男性育児休業取得率*1*2 |
54% |
65% |
70% |
男性育児休業取得率 100% |
男性育児休業取得日数*1 |
48.1日 |
36.5日 |
45.0日 |
*1 当社(単体)数値
*2 海外勤務中・出向中の者を含む。国内勤務中の労働者に限定した場合の2024年3月期実績は93%
(iii) 戦略的適材配置
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2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
目標 |
|
- |
20% |
|
Bloom全世界導入 2025年3月期:100% (単体+海外採用社員全員) |
|
41名 |
75名 |
|
(c) ウェルビーイング
(i)健康
|
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
目標 |
健康診断受診率*1 |
100% |
100% |
100% |
健康診断受診率 100% |
プレゼンティーズム*1*2 |
12.5% |
12.6% |
12.3% |
*1 当社(単体)数値
*2 健康問題による出勤時の生産性低下率
(ii)労働安全衛生
|
|
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
目標 |
当社 (単体) |
労働災害件数*1 |
0件 |
0件 |
0件*2 |
労働災害件数: 0件 死亡災害件数:0件 |
死亡災害件数*1 |
0件 |
0件 |
0件 |
||
連結*3 |
死亡災害件数*4 |
- |
自社従業員:1件 コントラクター従業員:5件 |
自社従業員:1件 コントラクター従業員:1件 |
死亡災害件数: 0件 重傷災害件数:前年度 対比減少 |
重傷災害件数*5 |
- |
自社従業員:5件 コントラクター従業員:3件 |
自社従業員:4件 コントラクター従業員:0件 |
*1 厚生労働省の定義に基づく
*2 提出日現在
*3 連結グループ(当社(単体)、現地法人、議決権50%超で労働者雇用のある子会社)数値
*4 2024年3月期の死亡事故(2件)は交通事故
*5 死亡には至らぬも6カ月以内に回復しない負傷事故
(iii)働き方(単体)
|
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
目標 |
|
12.5日 |
13.8日 |
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有給休暇年間平均取得率
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当社及び連結子会社を取り巻く多種多様な定量・定性リスクに対し、関係のコーポレートスタッフ部門各部がそれぞれの職掌に定めるリスク管理分野において各種社内規程等の制定を行うと共に、事前審査もしくは事後モニタリングを通じ、相互連携して対応しています。また、経営会議及び経営会議の諮問機関であるポートフォリオ管理委員会を核として、全社一元的に管理する統合リスク管理体制を構築し、全社リスクを横断的に見て、発生頻度と想定損害規模及び全社リスク許容度に鑑み、重要なリスクを特定、対策を講じています。当連結会計年度末における重要なリスクは以下のとおりです。
なお、サステナビリティ取組みへの関心の高まりに伴い、中長期的な企業価値向上と持続的成長の観点から当社及び連結子会社が責任を果たす重要性がますます高まっています。こうした事業環境の変化に適切に対応できない場合、事業継続に支障をきたし、今後の事業への影響が多岐にわたる可能性が想定されるため、当連結会計年度より新たに「(13)人的資本の制約に関するリスク」及び「(14)人権に関するリスク」を追加しています。
(1)事業投資リスク
当社及び連結子会社は、持分・株式取得を通じ、さまざまな事業に対する投資活動を行っていますが、この事業投資に関連して投下資金が回収不能となるリスク、撤退の場合に追加損失が発生するリスク、及び計画した利益が上がらないなどのリスクを負っています。
また、当社及び連結子会社は第三者との合弁事業、あるいは、第三者に対する戦略的投資を通じて多様な事業分野に参入しています。しかしながら、その結果の予測は困難なことがあります。すなわち、
・これらの事業の成否は、合弁事業のパートナーや戦略的投資先企業の業績や財政状態といった当社及び連結子会社が制御しえない事象が決定的な要因となる場合があります。
・更に、持分法適用会社での事業において、経営、業務運営、資産処分に関する適切な統制ができない、あるいはパートナーと事業目的及び戦略的課題を共有できないために重要な決定ができなくなる可能性があります。
こうした事態の発生は、当社及び連結子会社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
また、当社及び連結子会社の経営成績及び財政状態において重要な割合を占める金属資源や石油・ガスの探鉱・開発・生産事業の一部において、当社及び連結子会社はノンオペレーターの立場で参画しています。この場合、当社及び連結子会社はオペレーターである事業参加者が作成した情報に基づき事業性を検討しますが、開発及び生産に係る意思決定を含めた事業の運営はオペレーターの定める方針に影響を受けます。オペレーターによる事業運営が適切に行われない場合、当社及び連結子会社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
そのため、新規投資の実行については必要収益率などの定量基準や定性評価に基づき意思決定するとともに、全事業の保有意義を定期的にモニタリングし、不振事業や撤退アラート基準に抵触する事業の改善計画や撤退方針を擦り合わせ、効率的な資産の入替えを行っています。また、連結財政状態計算書上の資産に内在するリスクに加えて、マーケットリスクや保証債務などのオフバランスのリスクを一定の基準で評価し、リスクアセット*として定期的にモニタリングしています。また、一定の前提の下にストレステストを定期的に実施し、ストレステスト下におけるリスクアセットと株主資本の比率への影響も検証しています。
* 営業債権や投資、固定資産などの連結財政状態計算書上の残高及び保証債務などのオフバランスシート・ポジションに、その潜在的な損失リスクに応じ当社が独自に設定したリスクウェイトを乗じることにより算出している想定損失の最大額。
(2)地政学的リスク
ロシア・ウクライナ情勢や米中関係等、国・地域間の政治的・社会的緊張の高まりにより、当社及び連結子会社が当該国・地域に展開する事業の業績が悪化、または継続が困難となるリスクを負っています。
地政学的な不確実性により、当社及び連結子会社の事業を取り巻く環境が大きく変わる中、難易度の高い組織運営と責任のある主体的な行動が一層求められており、各事業に関わるステークホルダーとの緊密なコミュニケーションも必須となっています。こうした地政学的リスクの高まりによる不確実な情勢の中で機動的に対応するために、当社では以下のようなリスクヘッジ策を講じていますが、全ての地政学的リスクを回避することは困難であり、当社業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
・事業を展開する国・地域の政治・経済情勢等の動向を定期的にモニタリングし、その国や地域に存在するリスクや事業環境の変化について慎重に判断を行っています。
・地政学的リスクが高いとされる地域へ事業を展開する際は、保険・各国輸出信用機関によるファイナンス等の金融的手段によりリスクを低減しています。
・有事の際の対応についてのノウハウを蓄積し、国・地域をまたぎ複数の現地法人が連携、従業員の安全を図り、日本国内または海外で事業を継続する体制を構築しています。
ウクライナ情勢に関して、当社は国際社会が協調し制裁措置を取る中で、それらを遵守しつつ各事業に取り組んでいます。ロシア向けの投融資保証残高は2024年3月末時点で3,030億円となり、当社及び連結子会社の投融資保証残高の約4%となりますが、将来の不確実なロシア・ウクライナ情勢によって影響を受ける可能性があります。また、ウクライナ向けの投融資保証残高は僅少です。なお、2024年3月期決算における影響については、連結財務諸表注記事項31.「ロシア・ウクライナ情勢のロシアLNG事業への影響」をご参照ください。
(3)カントリーリスク
当社及び連結子会社が世界各地で展開する事業は、各国の政治・経済・社会状況の変化により、当該国に所在する取引先等に対する債権や、出資先もしくは進行中のプロジェクトに関する投融資等の回収が不能になる、もしくは在庫・固定資産等の価値が毀損するリスクを負っています。
さらに、当社及び連結子会社の事業活動は、特定の国または地域の特定の分野に一定程度集中しています。例えば、当社及び連結子会社は、
・ブラジル、チリ、ロシアにおいて金属資源・エネルギーの探鉱・開発・採掘・液化に係る投融資残高があります。
・マレーシアにおいて、アジア広域のヘルスケア事業に係る投融資残高があります。
・モザンビークにおいて、エネルギーの開発・生産・液化に係る投融資残高があります。
・インドネシアにおいて、消費者関連事業等に係る投融資残高があります。
そのため、カントリーリスクについては、保険・各国輸出信用機関によるファイナンス等、案件の内容に応じて適切なリスクヘッジ策を講じています。
また、ポジションを有するすべての国について債権、投融資、保証等のエクスポージャーを国別に定期的に把握するとともに、原則として先進国を除く国を対象に、カントリーリスク状況の定性・定量的なモニタリングを行い、年1回及び必要と判断する都度、カントリーリスク管理上の対応方針を策定しています。全社ポートフォリオの定期的なモニタリングにおいては、事業分野別だけでなく国別のアセットサイズが適切なレベルかどうかも検証しています。
(4)気候変動に関するリスク
気候変動による将来影響を把握し、また成長機会として取り込むことで、より事業ポートフォリオを良質化すべく、2050年の「あり姿」としてNet-zero emissionsを掲げ、2030年はその「あり姿」に向けた道筋として、2020年比GHGインパクト半減を目指しています。
グローバルな経営環境の変化に対して柔軟に対応し、戦略のレジリエンスを高めるため、中長期なシナリオ分析を実施しています。シナリオ分析に際しては国際エネルギー機関(IEA)のシナリオ等を参照して移行リスクの分析を行い、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)にて採用される代表的濃度経路(RCP)も参考に物理的リスクの分析を行いました。
中長期的に発現する可能性がある移行リスクとしては、主に以下を認識しており、既存ポートフォリオを維持する前提では、長期的には保有権益・資産の価値毀損により当社及び連結子会社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
・政策・法規制リスク:各国・地域の政策によるエネルギー・電源構成の変更や、炭素税の賦課などの排出規制は、当社及び連結子会社が出資するGHG排出量が多い事業の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
・技術リスク:気候変動に適応した新技術の導入による既存商材・サービスの需給の変化や既存製造設備の陳腐化が生じる可能性があります。
・資金調達リスク:金融機関・保険会社の低・脱炭素方針により資金調達上のリスクが発生する可能性があります。
現在から2050年までの4℃シナリオ下において、猛暑、山火事、水ストレス・干ばつ、熱帯低気圧の四つが当社への影響が大きい物理的リスクと認識しています。分析対象企業65社のうち、2050年にリスクが高い企業数は、猛暑に関しては約8割、山火事、水ストレス・干ばつ、熱帯低気圧に関しては、半数近くになります。中でも、山火事のリスクが高い企業は現在から約2倍に増加します。また、熱帯低気圧は、現在もリスクが高い企業が多く、新たにリスクが高まる企業は少ないものの、その発生頻度や巨大化により、被害の深刻化が懸念されます。当社及び連結子会社各社において、保険付保、複数サプライヤーの確保、危機管理方針策定、設備増強等の対策は取っていますが、物理的リスクを完全に回避できるものではなく、将来の当社及び連結子会社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社では、レジリエンスの向上とGHG排出削減効果のある取組みの促進を目的に社内カーボンプライシング制度を導入し、案件審査の一要素としています。
リスクの対応策を含めた気候変動に関する当社及び連結子会社の取組みについては「2. サステナビリティに関する考え方及び取組 (4)気候変動対応」をご参照ください。
(5)商品価格リスク
鉄鉱石、原料炭、銅、原油、天然ガス・LNGなどをはじめとする各種市況商品の生産及び売買は、当社及び連結子会社の重要な事業分野です。これらの商品価格は、需給の不均衡、景気変動、在庫調整、為替変動などの当社及び連結子会社にとって制御不能な要因により、短期的に乱高下あるいは周期的に変動します。
価格変動は、連結子会社及び持分法適用会社が保有する権益持分相当の生産量からの販売収入に直接的な影響を及ぼします。2025年3月期において、連結損益計算書における当期利益(親会社の所有者に帰属)への影響額は、原油価格でUS$1/バレルあたりの価格変動により24億円、鉄鉱石でUS$1/トンあたりの価格変動により27億円と推定しています。詳細は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)2025年3月期連結業績予想」及び「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (4)経営成績に係る検討と分析」をご参照ください。
そのため、当社及び連結子会社は、商品価格リスクを含む市場リスク管理方針を策定し、さまざまな階層において管理体制を構築しています。特に商品価格リスクに関しては、各事業本部長及び海外地域本部長は、各本部におけるポジション限度及び損失限度の設定、管理体制等を定めたリスク管理方針を策定し、担当役員の承認を受け、その承認内容に従って管理・報告を行う一義的な責任を負っています。また、取引部署から独立したリスク管理部署において、市場リスクの状況を管理、評価及び分析し、その結果を定期的に担当役員に報告しています。
また、当社及び連結子会社は、市況商品に係る営業活動を行うにあたり、約定残高のキャッシュ・フローを固定化することを目的として、主に商品スワップなどのデリバティブを用いてヘッジを行っており、その一部についてはヘッジ会計を適用しています。
詳細は、連結財務諸表注記事項9.「金融商品及び関連する開示 (6)リスク関連、(7)デリバティブ取引及びヘッジ会計」をご参照ください。
また、予想外の相場変動は、以下に示すように当社及び連結子会社の事業、経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
・多額の投資を行ってきた金属資源・エネルギー生産事業等で、販売価格の下落により、生産した商品の販売を通じた投下資金の回収が困難になる、あるいは許容しうる価額での当社出資持分の売却が困難になることがあります。
・評価差額をその他の包括利益に認識する資本性金融資産(以下、FVTOCI)に区分するLNGプロジェクト等に対する投資の価値の下落により、当社及び連結子会社の包括利益に影響を及ぼす可能性があります。
(6)為替リスク
当社及び連結子会社は外国通貨で表示された資産及び負債の換算リスクを負います。また、海外の関係会社に対する投資やFVTOCIに区分する投資は、為替変動によりその価値を減じ、当社の包括利益及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
2025年3月期において、連結損益計算書における当期利益(親会社の所有者に帰属)への影響額は、米ドル/円で1円の変動により34億円、豪ドル/円で1円の変動により25億円と推定しています。詳細は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)2025年3月期連結業績予想」及び「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (4)経営成績に係る検討と分析」をご参照ください。
当社及び連結子会社は、為替リスクを含む市場リスク管理方針を策定し、さまざまな階層において管理体制を構築しています。特に為替リスクに関しては、各事業本部長及び海外地域本部長は、各本部におけるポジション限度及び損失限度の設定、管理体制等を定めたリスク管理方針を策定し、担当役員の承認を受け、その承認内容に従って管理・報告を行う一義的な責任を負っています。また、取引部署から独立したリスク管理部署において、為替リスクの状況を管理、評価及び分析し、その結果を定期的に担当役員に報告しています。
当社及び連結子会社は、世界各国で多種多様な営業活動を行っており、所在国通貨以外での売買取引より生じる外貨建金銭債権債務及びファイナンス取引より生じる外貨建長期金銭債権債務などのキャッシュ・フローを固定化することを目的として、主に為替予約や通貨スワップなどのデリバティブ取引を用いてヘッジを行っており、その一部についてはヘッジ会計を適用しています。さらに、当社及び連結子会社は、主に在外営業活動体に対する純投資の為替変動リスクを回避することを目的として、主に外貨建借入金を用いてヘッジを行うとともにヘッジ会計を適用しています。
詳細は、連結財務諸表注記事項9.「金融商品及び関連する開示 (6)リスク関連、(7)デリバティブ取引及びヘッジ会計」をご参照ください。
(7)保有上場株式の株価リスク
当社及び連結子会社は、事業機会の創出や取引・協業関係の構築・維持・強化を図るため、市場性ある資本性金融資産への投資を行っており、株価リスクを有しています。当連結会計年度末において、当社及び連結子会社はFVTOCIに区分する市場性のある資本性金融資産を1兆1,582億円保有しており、総資産の6.9%に相当します。当社及び連結子会社は、全銘柄を対象に株式ポートフォリオの見直しを定期的に行っていますが、株式市場の価格変動や相場の下落は投資ポートフォリオを毀損し、その他の包括利益の悪化により、当社及び連結子会社の財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社及び連結子会社は、株価リスクを含む市場リスク管理方針を策定し、さまざまな階層において管理体制を構築しています。特に株価リスクに関しては、時価総額の増減要因の把握を行うことにより管理しています。
詳細は、連結財務諸表注記事項9.「金融商品及び関連する開示(6)リスク関連」をご参照ください。
(8)与信リスク
当社及び連結子会社は商取引や融資取引のあるさまざまな顧客や事業に係る多額の与信リスクにさらされています。
当社及び連結子会社は、多数の取引先に後払い条件で商品・サービスを販売し、あるいは販売契約に付随する融資プログラムや顧客の借入に係る支払保証を供与することがあります。当連結会計年度末において当社及び連結子会社の損失評価引当金控除後の流動売上債権等は2兆2,167億円であり、総資産の13.1%を占めています。控除した損失評価引当金残高(流動)は173億円となっています。
さまざまなプロジェクトにおけるファイナンスのため、回収リスクを伴う多額の貸付や保証を行っています。
そのため、定期的に取引先の状況を確認し、適切な決裁者により承認されたクレジットライン管理を行うと共に、債権等の回収期日経過状況をモニタリングしています。また、必要に応じて取引先に担保などの提供を要求しています。詳細は、連結財務諸表注記事項9.「金融商品及び関連する開示 (6)リスク関連」をご参照ください。
しかしながら、こうした管理を行ったとしても、当社及び連結子会社における与信管理政策は、与信先の財政状態悪化により発生しうるリスクを完全に排除することはできません。加えて、流動性危機の発生、不動産や株式などの市場価格急落による取引先の支払不能、あるいは企業倒産の増加などによって、当社及び連結子会社の債権回収が困難となる可能性があり、将来の当社及び連結子会社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(9)資金調達に関するリスク
金融市場の混乱や当社格付けの引下げ、あるいは金融機関及び機関投資家の融資及び投資方針の変更は、当社及び連結子会社の資金調達に制約を課すとともに、調達コストを増大させ、当社及び連結子会社の財政状態や流動性に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、10年程度の長期資金を中心とした資金調達を行うと同時に、長期資金の年度別償還額の集中を避けることで借換えリスクの低減を図っています。また、事業展開に伴う資金需要に対する機動的な対応と、当社の有利子負債返済における金融情勢悪化の影響を最小限に抑えるためにも、十分な現金及び現金同等物を保有しています。
資金調達及び格付けについては、4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析「(5)流動性と資金調達の源泉」をご参照ください。
(10)オペレーショナルリスク
当社及び連結子会社は、金属資源、エネルギー、機械・インフラ、化学品、鉄鋼製品、生活産業、次世代・機能推進の各セグメントにおいて、全世界に広がる事業拠点とその情報力を活用し、多種多様な商品の売買、製造、輸送、ファイナンスなど各種事業を多角的に行っており、さらには資源・インフラ開発プロジェクトの構築、環境・新技術・次世代燃料やウェルネスに関連する事業投資やデジタルを活用した価値創出などの幅広い取組みを展開しています。これらの事業は、火災、爆発、事故、輸出入制限、自然災害等のさまざまな操業上のリスクを伴っており、これらの事故・災害等が発生した場合には、当社及び連結子会社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
環境事故が生じると、当社及び連結子会社は資源・エネルギー権益の所有者として、またノンオペレーターとして操業に全く関与していない場合であっても、当該事故への寄与度や過失の有無に拘らず、清掃費用、環境破壊への賠償、事故被害者への健康・財産被害や休業補償・逸失利益補填等のための損害賠償費用、環境当局からの罰金や補償金等の負担を強いられることで、当社及び連結子会社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社及び連結子会社は、リスク軽減策・損害防止策を検討するほか、可能かつ妥当な範囲において、事故、災害等に関する保険を付していますが、それらによってもすべての損害を填補し得ない可能性があります。
(11)役職員による法令及び社内規定の遵守違反に関するリスク
当社及び連結子会社は、その規模、業務範囲及び活動領域が広範にわたっていることから、日常業務は自ずと分権的に運営されており、従業員が全ての法令や社内規定を遵守しているとの確証を得ることはできません。例えば、従業員が必要な社内許可を取得しないまま社外との取引を行うこと、投融資案件において許可されたリスク・エクスポージャー限度額を超過することや、与信限度枠を超えて取引を拡大することもあり得、それらはどのケースにおいても予測不能な損失や管理不能なリスクに繋がります。また、従業員が日本あるいは外国における輸出貿易規制、汚職防止法、独占禁止法、税法などの法令を犯すこともあり得ます。
当社及び連結子会社では、グローバル・グループベースでのコンプライアンス体制を強化、経営幹部が継続的にメッセージを発信し、コンプライアンスに関する職制ライン及び職制外の報告・相談ルートを設置すると共に、スピークアップ文化を醸成し、コンプライアンス違反に対して厳正に対処する等、さまざまな取組みを行っています。詳細は、第4 提出会社の状況 4. コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要「③内部統制システムの整備状況 (d)コンプライアンス体制」をご参照ください。
しかしながら、このような取組みをもってしても、従業員の全ての不正行為を完全に排除することはできず、従業員の不正行為はその内容次第で当社及び連結子会社の事業、社会的信用、経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(12)情報システム及び情報セキュリティに関するリスク
通信ネットワークのグローバル規模での運用が進展、またサイバー攻撃が全世界的に増加する中、ITシステムの適切な運用と情報価値の把握並びに適切な取扱いが重要です。当社は、情報システムの安全性及び情報セキュリティ強化のため、関連規程を整備し、当社及び連結子会社が保有する情報及び情報システムにおける機密性、完全性及び可用性を適切に確保し、またリスク管理水準を改善するための指針を継続的に示して情報漏洩等のリスクを管理し、通信ネットワーク監視等を通じた外部からの攻撃への対応や非常時を想定した定期的な訓練に努めています。
しかしながら、予期できない水準の情報システム基盤や通信回線の重大な障害、あるいは経営に関わる機密情報の破壊・窃取が発生する可能性を完全に排除することはできず、この様な場合、業務効率の著しい低下が避けられず、事業継続あるいはビジネスの伸長に困難をきたすことから、当社及び連結子会社の事業、経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、可能かつ妥当な範囲において、外部からの攻撃に伴う被害等に関する保険を付していますが、それらによってもすべての損害を填補し得ない可能性があります。
なお、情報セキュリティに関する当社の取組みについては、「2. サステナビリティに関する考え方及び取組 (6)情報セキュリティ」をご参照ください。
(13)人的資本の制約に関するリスク
当社及び連結子会社は、「人」こそが持続的な価値創造の源泉であるとの考えのもと、人材の確保と育成、評価、報酬等の人材マネジメントに取り組み、事業の立案・評価及び実行や人員の指揮・監督などにあたる人的資本を投入しています。しかしながら、事業分野や国・地域によっては求められる人材が不足し、事業価値創出機会の逸失や、安定的なオペレーションに支障をきたす可能性があります。事業に対するこうした人的資本の制約は、当社及び連結子会社の事業展開と経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。なお、リスクの対応策を含めた人材戦略に関する当社の状況については「2. サステナビリティに関する考え方及び取組 (7) 人材戦略」をご参照ください。
(14)人権に関するリスク
当社及び連結子会社は、川上から川下まであらゆる機能・サービスを提供しており、世界中で多岐にわたる事業を展開する中で、さまざまなステークホルダーに影響をもたらします。当社及び連結子会社の事業活動が人権への負の影響を引き起こしている、あるいはサプライチェーン等の取引関係を通じて人権侵害を助長していることが明らかになった場合は、レピュテーションリスクに加え、その影響の解消・緩和による追加的費用の発生等によって、経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性や、信用毀損等の影響を受ける可能性があります。
そのため、自社のみならずサプライチェーンも含めた人権の尊重への取組みが求められていることを認識し、「三井物産グループ行動指針 -With Integrity」においても改めてこれを明確化し、グループ各社の経営理念や役職員行動規範にも反映すべく推進していきます。当社及び連結子会社の事業活動に関わる人権への負の影響を特定、評価、防止、軽減するために人権デューデリジェンスを実施すると共に、課題発生時には適切な手続きを通じてその是正・救済に取り組みます。また、サプライヤー等の取引先との協働による人権尊重の取組みや、社内プロセスへの人権リスク管理の組み込み等を通じた、事業活動における人権尊重取組みの一層の強化に取り組んでいます。なお、リスクの対応策を含めた人権に関する当社の状況については「2. サステナビリティに関する考え方及び取組 (5) サプライチェーンと人権」をご参照ください。
(15)自然災害、テロ・暴動遭遇、感染症等によるリスク
当社及び連結子会社が事業活動を展開する国や地域において、地震や水害、テロ、感染症、電力不足等が発生した場合には、当社及び連結子会社の事業に影響を及ぼす可能性があります。
当社及び連結子会社では、災害時事業継続計画(BCP)や災害対策マニュアルをあらかじめ策定するとともに、社員安否確認システムの構築、耐震対策、防災訓練などの対策を講じていますが、全ての被害や影響を完全に排除できるものではなく、当社及び連結子会社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
なお、当連結会計年度末に重要なリスクとして特定したもの以外で、当社及び連結子会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があると認識している主要なリスクには、以下のようなものがあります。ただし、これらは全てのリスクを網羅したものではありません。
・当社固有のリスクではない、一般的なリスク
- 世界マクロ経済環境の変化によるリスク
世界的なあるいは特定の地域における経済情勢、景気減速は、製品・素材の流通量の減少、個人消費や設備投資の低下をもたらしえます。その結果、当社及び連結子会社の商品及びサービスに対する需要が減少し、当社及び連結子会社の事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
- 法的規制に関するリスク
当社及び連結子会社は内外の広範な法令に従い事業活動を展開しています。当社及び連結子会社の事業は、具体的には、各種の商品規制、消費者保護規制、事業及び投資に対する許認可、環境保護規制、外国為替規制、安全保障目的を含む輸出入貿易規制、投資規制、制裁関連法令、各種税法、独占禁止法などの制約の下にあります。例えば当社及び連結子会社による新興国でのインフラ開発プロジェクトは、十分に整備されていない法基盤の下で遂行されることがあり、包括的な法令体系の欠如や、一貫性のない法令の適用及び解釈、監督当局による規制措置の一方的変更などに対応する費用負担が増大することがあります。また、これらの事業が供給する製品あるいはサービスに賦課される税率、環境規制に係る技術的要件、所得税及び関税、投資元本及び配当の還流に関する為替規制などの諸法令などについて、予想外の変更が行われることがあります。
当社及び連結子会社は、豪州、ブラジル、チリ、ロシア、中東等において一連の環境規制の制約を受けていますが、これらの地域における法令は、事業区域の浄化、操業停止あるいは事業終了、重大な環境破壊に対する罰金及び補償金、高額な汚染防止設備の設置、操業方法の変更などを課すことがあります。
当社及び連結子会社が行う探鉱・開発・採掘事業について、必ずしも事業権に係る契約の相手方による義務の履行がなされる保証や契約期限到来時に事業権の存続期間が延長される保証はありません。また、これら事業に係る規制当局が、金属資源や石油・ガス生産事業における生産量、価格体系、ロイヤリティ、環境保護費用及び借地権等に関する契約条件に関し、一方的な介入あるいは変更を行わない保証はありません。規制当局が一方的に契約条件を変更した場合、あるいは、変更・新設された法令について遵守に対応する費用が増大する場合、当社及び連結子会社の事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、技術・資材調達・資金調達・環境面を含む当局による規制などの変更により、当初の想定より工期が遅延する可能性があります。
- 競合リスク
当社及び連結子会社が提供する商品及びサービスの市場は、概して競争的な環境にあります。他の総合商社をはじめ、各種分野において同様の事業活動を展開する競合他社は、商品によって当社及び連結子会社の内外の顧客に対してより堅固な取引関係を有している場合や、より充実した世界的ネットワーク、特定地域に係る専門知識、広範な海外顧客基盤、金融サービス機能、市場分析能力を有することがありえます。当社及び連結子会社が、顧客の求める革新的かつ総合的なサービスを競争力あるコストにより提供できない場合、市場におけるシェアや顧客との取引関係の喪失につながり、当社及び連結子会社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
- 金利リスク
当社及び連結子会社は金利変動に係るリスクを有しており、金利変動は営業費用全般、並びに金融資産・負債の価額、とりわけ資本市場及び金融機関借入により調達される負債の価額に影響を及ぼします。金利水準の上昇、特に日本及び米国における上昇は、当社及び連結子会社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社及び連結子会社の資金調達の状況については、4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析「(5)流動性と資金調達の源泉」及び連結財務諸表注記事項9.「金融商品及び関連する開示」をご参照ください。
- 確定給付費用及び確定給付債務に関するリスク
国内外の国債等の債券や上場株式の価格下落は、当社及び連結子会社の制度資産の価値を減少させます。制度資産の価値の下落あるいは確定給付制度債務の増加は、その他の包括利益及び利益剰余金の悪化により、当社及び連結子会社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
確定給付費用については、4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析「(6)重要な判断を要する会計方針及び見積り」及び連結財務諸表注記事項19.「従業員給付」をご参照ください。
- 訴訟及び紛争に関するリスク
世界各地で展開する事業活動において当社及び連結子会社は、訴訟や紛争のリスクにさらされています。また、通常の事業活動において、当社及び連結子会社に対する訴訟その他紛争が偶発的に発生し、また訴訟にはいたらないものの、クレームが提起される可能性があります。
訴訟その他の紛争には不確実性が伴うため、当社及び連結子会社が関与する訴訟その他の紛争の最終的な結果を予測することは不可能です。当社及び連結子会社が、いかなる訴訟その他の紛争にも勝つ保証はなく、また、これらの訴訟その他の紛争が、将来、当社及び連結子会社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性もあります。重要な係争事件については、連結財務諸表注記事項27.「偶発債務 (2)係争事件」をご参照ください。
・IFRSに基づく連結財務諸表の作成にあたっては、経営者の判断の下、一定の前提条件に基づく見積りが必要となる場合があります。この前提条件の置き方などにより、当社及び連結子会社の経営成績や財政状態に影響を及ぼすことがあります。詳細は、4「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(6)重要な判断を要する会計方針及び見積り」をご参照ください。
この財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、将来のリスク、不確実性及び仮定を伴う予測情報を含んでいます。こうした記述は、現時点で当社が入手している情報を踏まえた仮定、予期及び見解に基づくものであり、3「事業等のリスク」などに記載された事項及びその他の要因により、当社及び連結子会社の実際の業績は、これらの予測情報から予測された内容とは大幅に異なる可能性があります。
なお、経営上の目標の達成状況については、第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等「(1)中期経営計画の進捗状況」をご参照ください。
(1)業績等の概要
①業績
「(4)経営成績に係る検討と分析 ②オペレーティング・セグメント情報」をご参照ください。
②キャッシュ・フロー
「(5)流動性と資金調達の源泉 ⑥キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
(2)仕入、成約及び売上の状況
①仕入の状況
各オペレーティング・セグメントにおいて、仕入高と売上高との差額は売上高に比べ僅少であるため、記載は省略しています。
②成約の状況
各オペレーティング・セグメントの成約高と売上高との差額は僅少であるため、記載は省略しています。
③売上の状況
「(4)経営成績に係る検討と分析」及び連結財務諸表注記事項7.「セグメント情報」をご参照ください。
(注)当社グループは、総合商社である当社を中心とした事業活動を展開しており、受注生産形態をとらない事業が多いことから、生産、受注及び販売の状況に替え、仕入、成約及び売上の状況としています。
(3)経営者の検討における重要な指標について
当社及び連結子会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローは、3「事業等のリスク」に述べる各項目の影響を受けますが、当連結会計年度末において当社の経営者は、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの動向を検討する上で、以下の指標が有用であると考えます。
①売上総利益、持分法による投資損益及び当期利益(親会社の所有者に帰属)
当社及び連結子会社はさまざまな商品と地域にわたる幅広い事業活動を展開し、そのリスク・リターンの形態も仲介取引から金属資源・エネルギーの権益事業まで多岐にわたります。当社及び連結子会社の経営成績及び事業の進捗を把握する上で、オペレーティング・セグメント別の売上総利益、持分法による投資損益及び当期利益(親会社の所有者に帰属)の変動要因に係る分析を重視しています。
②金属資源・エネルギーの価格及び需給の動向
当社及び連結子会社の経営成績に占める金属資源・エネルギー関連事業の重要性が高いことから、金属資源・エネルギーの市況及び持分生産量は、経営成績の重要な変動要因になります。金属資源・エネルギーの価格及び需給の動向に関する詳細は、以下のとおりです。
(a)金属資源
鉄鋼や非鉄金属は産業の基幹素材であり、世界経済の成長に伴いその原料に対する需要は堅調に推移することが見込まれます。中長期的に、粗鋼生産量は中国で横ばいから減少となるも、インド等アジア地域で増加もあり、世界全体では引続き高水準を維持することが見込まれています。また、非鉄金属は産業・社会の脱炭素化に向けた電動化や電気自動車・再生可能エネルギーの普及等を背景に、需要が堅調に拡大していくことが見込まれます。供給側では、鉱山操業での資機材・人件費を始めとした開発・生産コストの上昇や、既存鉱山の鉱石の品位低下や埋蔵量の減少が進む一方で、優良未開発案件には限りがあるため、需給は逼迫していく見込みであり、引き続き原料の安定供給が求められます。
また、社会の持続可能性追求に向け、気候変動対応や人権、生物多様性、サーキュラーエコノミー、水資源や地域社会との共生といった観点を踏まえて、例えば高品位資源やリサイクル原料、低炭素/グリーン素材、バリューチェーン全体でのGHG排出量の削減に寄与する原料へのニーズの高まりなど、原料に対する価値観が変化することにより、金属資源の需給・相場へ影響を及ぼすことが予想されます。
(b)エネルギー
世界的な人口増加・経済成長に伴い、中長期的なエネルギー需要は堅調に推移する見通しです。アジアを中心に従来型エネルギーは当面不可欠との見立ては不変であり、またロシア・ウクライナ情勢に端を発して地政学的リスクが再認識される中、エネルギーの安定供給と脱炭素化の両立への社会ニーズが強まっています。
このような状況下、天然ガス・LNGは、経済合理的なクリーンエネルギーの安定供給に資する現実解として今後益々重要な役割を担っていくと考えられています。原油についても新興国における底堅い需要が見込まれる一方で、電気自動車の普及、環境規制の強化等による需要減退シナリオも考えられ、今後の市場変化を注視していく必要があります。供給側では、資機材·人件費をはじめとした開発·生産コストの上昇、ロシア・ウクライナ情勢に伴う生産量の減少が継続する見通しであることに加え、グローバルでの地政学的リスクの高まり、主要国の選挙結果を受けた政策変更、気象等が需給双方に影響を及ぼす可能性があり、エネルギー価格のボラティリティには依然として注意が必要です。
脱炭素化に向けたエネルギートランジションの方向性は不可逆的と言えますが、制度設計や市場形成において国・地域毎に進捗の濃淡があり、時間軸は依然流動的と見られています。今後、再生可能エネルギーのさらなる普及、よりクリーンな燃料への転換、モビリティの電動化や水素燃料電池自動車の普及等に伴い、総合エネルギーサービス、次世代燃料など、エネルギーソリューション分野における取組ニーズが拡大する見通しで、こうした取組みの進捗が将来的なエネルギー構成に及ぼす影響を見極めていく必要があります。
③キャッシュ・フロー水準、資本効率及び財務レバレッジ
中期経営計画2026(2023年5月公表)において、基礎営業キャッシュ・フローを、キャッシュ創出力を測定し資金再配分の原資を示す重要な経営指標としています。
当社は、資本効率と資金調達に係わる安定性の観点から、株主資本*の水準及び、親会社所有者帰属持分利益率(ROE)並びに負債・資本構成の方針を定期的に策定し、その履行状況を検証しています。同時に、個々の事業における環境の悪化に起因する想定損失の最大額に対するリスクバッファーの観点から株主資本の規模を検証しているほか、既存の有利子負債の再調達に加え、債務格付けの維持向上と資金調達上の安定性確保の観点から、財務レバレッジに留意しています。当社の資本管理については連結財務諸表注記事項9.「金融商品及び関連する開示(6)リスク関連」を、財務戦略については「(5)流動性と資金調達の源泉」をご参照ください。
*連結財政状態計算書の親会社の所有者に帰属する持分合計を指します。
(4)経営成績に係る検討と分析
① 連結損益計算書項目
(単位:億円) |
当期 |
前期 |
増減 |
|
収益 |
133,249 |
143,064 |
△9,815 |
|
売上総利益 |
13,197 |
13,962 |
△765 |
|
販売費及び一般管理費 |
△7,943 |
△7,028 |
△915 |
|
その他の 収益・費用 |
有価証券損益 |
1,981 |
595 |
+1,386 |
固定資産評価損益 |
△670 |
△300 |
△370 |
|
固定資産処分損益 |
162 |
194 |
△32 |
|
雑損益 |
313 |
92 |
+221 |
|
金融 収益・費用 |
受取利息 |
643 |
478 |
+165 |
受取配当金 |
2,107 |
1,549 |
+558 |
|
支払利息 |
△1,681 |
△1,146 |
△535 |
|
持分法による投資損益 |
4,916 |
5,555 |
△639 |
|
法人所得税 |
△2,219 |
△2,407 |
+188 |
|
当期利益 |
10,805 |
11,546 |
△741 |
|
当期利益(親会社の所有者に帰属) |
10,637 |
11,306 |
△669 |
(注)四捨五入差異により縦計・横計が合わないことがあります(以下同様)。
収益
・収益は13兆3,249億円となり前期の14兆3,064億円から9,815億円の減少となりました。
売上総利益
・主にエネルギーセグメントで減益となった一方、生活産業セグメントで増益となりました。
販売費及び一般管理費
・主に生活産業セグメント、機械・インフラセグメントで負担増加となりました。費目別に見ると以下のとおりです。
(単位:億円) |
費目別内訳 |
|
当期 |
|
前期 |
|
増減額* |
人件費 |
|
△4,371 |
|
△3,840 |
|
△531 |
福利厚生費 |
|
△159 |
|
△134 |
|
△25 |
旅費交通費 |
|
△320 |
|
△252 |
|
△68 |
交際費会議費 |
|
△75 |
|
△64 |
|
△11 |
通信情報費 |
|
△620 |
|
△553 |
|
△67 |
借地借家料 |
|
△139 |
|
△117 |
|
△22 |
減価償却費 |
|
△505 |
|
△412 |
|
△93 |
租税公課 |
|
△159 |
|
△173 |
|
+14 |
損失評価引当金繰入額 |
|
△90 |
|
△189 |
|
+99 |
諸雑費 |
|
△1,505 |
|
△1,294 |
|
△211 |
合計 |
|
△7,943 |
|
△7,028 |
|
△915 |
* △は負担増
・変動の内訳をオペレーティング・セグメント別に見ると以下のとおりです。
|
|
|
|
(単位:億円) |
オペレーティング ・セグメント |
|
当期 |
|
前期 |
|
増減額* |
金属資源 |
|
△359 |
|
△334 |
|
△25 |
エネルギー |
|
△586 |
|
△579 |
|
△7 |
機械・インフラ |
|
△1,818 |
|
△1,636 |
|
△182 |
化学品 |
|
△1,547 |
|
△1,374 |
|
△173 |
鉄鋼製品 |
|
△321 |
|
△276 |
|
△45 |
生活産業 |
|
△1,731 |
|
△1,420 |
|
△311 |
次世代・機能推進 |
|
△890 |
|
△827 |
|
△63 |
その他/調整・消去 |
|
△691 |
|
△582 |
|
△109 |
合計 |
|
△7,943 |
|
△7,028 |
|
△915 |
* △は負担増
その他の収益・費用
有価証券損益:
・当期は、主に機械・インフラセグメント、生活産業セグメント、エネルギーセグメント、次世代・機能推進セグメントで有価証券に関連する損益を計上しました。
・前期は、主に金属資源セグメント、次世代・機能推進セグメントにおいて有価証券売却益を計上しました。一方、機械・インフラセグメントにおいて、減損損失を計上しました。
固定資産評価損益:
・当期及び前期において、主にエネルギーセグメント、機械・インフラセグメントで固定資産評価損を計上しました。
固定資産処分損益:
・当期及び前期において、主に次世代・機能推進セグメントで固定資産売却益を計上しました。
雑損益:
・当期は、主にエネルギーセグメントで引当金取崩益や事業売却益を計上しました。一方、生活産業セグメントでオプション評価損を計上しました。
・前期は、主にエネルギーセグメントで引当金計上に伴う損失を計上しました。
金融収益・費用
受取配当金:
・主にエネルギーセグメント、金属資源セグメントで増益となりました。
持分法による投資損益
・主に金属資源セグメント、エネルギーセグメントで減益となった一方、機械・インフラセグメントで増益となりました。
法人所得税
・法人所得税は2,219億円の負担となり、前期の2,407億円の負担から188億円の負担減となりました。また、当期の実効税率は17.0%となり、前期の17.2%から0.2ポイント低下しました。
当期利益(親会社の所有者に帰属)
・上記の結果、前期から669億円減益の1兆637億円となりました。
② オペレーティング・セグメント情報
オペレーティング・セグメント別の経営成績に係る変動要因の分析は以下のとおりです。
なお、「その他」には、法人所得税が含まれますが、法人所得税前利益の各勘定科目の主な増減要因の説明には、法人所得税の影響は原則として含まれていません。
金属資源
(単位:億円) |
当期 |
前期 |
増減 |
主な増減要因 |
|
当期利益 (親会社の所有者に帰属) |
3,351 |
4,388 |
△1,037 |
|
|
|
売上総利益 |
3,421 |
3,558 |
△137 |
・Mitsui Resources△437(原料炭価格下落) ・豪州鉄鉱石事業+333(鉄鉱石価格上昇) |
|
持分法による投資損益 |
750 |
1,276 |
△526 |
・Stanmore SMC売却に伴う減益 ・Oriente Copper Netherlands*1△241 (減損損失*2△122、チリ新鉱業税成立△63他) ・オルドス電力冶金△95(合金鉄・化学品価格下落) ・豪州鉄鉱石事業+70 |
|
受取配当金 |
912 |
743 |
+169 |
・Vale配当金増+174(当期596、前期422) |
|
販売費及び一般管理費 |
△359 |
△334 |
△25 |
|
|
その他 |
△1,373 |
△855 |
△518 |
・前期Stanmore SMC有価証券売却益反動△367 ・Oriente Copper Netherlands*1支払利息増△58 ・豪州鉄鉱石事業利息収支増益+86 |
*1 チリ銅鉱山事業会社Anglo American Surを保有するInversiones Mineras Becruxへの投資会社
*2 Anglo American Surにおける鉱石性状変化並びに生産計画に関わる見積りの変更に伴い、持分法損失を122億円計上
鉄鉱石の価格変動による影響及び当社持分生産量
2025年3月期において、鉄鉱石価格の変動が、当社鉄鉱石事業の販売収入の変化を経由して連結損益計算書における当期利益(親会社の所有者に帰属)に及ぼす影響度は、鉄鉱石US$1/トンあたりの価格変動により27億円と概算しています。
当連結会計年度の1年間における当社鉄鉱石関連の権益見合い生産量は61.1百万トン(一般社外のVale権益見合い生産量21.2百万トン含む)です。上記の影響額は、当連結会計年度末時点で、当社が保有する権益見合いに対して、2025年3月期の出荷量の増減を織り込み、一定の米ドル及びその他関連通貨の為替相場などを前提条件とした上で算出したものです。なお、一般的に、豪ドルなどの資源産出国の通貨は、輸出商品の市況に連動する傾向があり、この変動により当社連結子会社及び持分法適用会社の現地通貨建ての売上総利益は影響を受けることがあります。
エネルギー
(単位:億円) |
当期 |
前期 |
増減 |
主な増減要因 |
|
当期利益 (親会社の所有者に帰属) |
2,817 |
3,094 |
△277 |
|
|
|
売上総利益 |
1,958 |
3,164 |
△1,206 |
・Mitsui E&P USA△477(ガス価格下落) ・Mitsui E&P Australia△405(コスト増・数量減) ・LNG物流減益 ・MEP Texas Holdings△78(原油・ガス価格下落) ・MOEX North America△76 (当期権益売却に伴う減益、原油価格下落) ・Mitsui E&P Italia B*1△61 (コスト増・原油価格下落) ・Mitsui E&P Middle East△34(原油価格下落) ・燃料供給取引関連損益+76(前期損失反動) |
|
持分法による投資損益 |
681 |
1,085 |
△404 |
・Japan Australia LNG(MIMI)減益 (原油・ガス価格下落、数量減) ・三井石油開発△34 (前期出資先リース会計処理変更の反動等) ・前期Mitsui E&P Mozambique Area 1 引当金反動+35 |
|
受取配当金 |
927 |
587 |
+340 |
・LNGプロジェクト4案件*2+353 (当期920、前期567) |
|
販売費及び一般管理費 |
△586 |
△579 |
△7 |
|
|
その他 |
△163 |
△1,163 |
+1,000 |
・資産除去債務取崩益+456(複数連結子会社) ・Mitsui LNG Nederland*3+373 (外貨換算調整勘定実現) ・Kaikias油田事業の売却益+118 ・Arctic LNG 2プロジェクト関連 ・MOEX North America+43(デリバティブ関連損益) ・前期バイオマス発電事業減損反動+33 ・Mitsui E&P Italia B減損*4△236 ・複数の本店事業部における支払利息増△210 ・Mitsui E&P South Texas減損*5△123 ・燃料供給取引為替ヘッジ損益等△32 |
*1 前期第3四半期にMitsui E&P Italia Bが吸収合併したMitsui E&P Italia Aの業績も合算した増減額
*2 サハリンⅡ、アブダビ、オマーン及びカタール
*3 2022年3月期に事業終結したカタールガス1LNG事業投資のための特別目的会社
*4 Mitsui E&P Italia Bが保有するテンパロッサ油田事業において、可採埋蔵量の減少に起因し固定資産評価損236億円を計上
*5 Mitsui E&P South Texasが保有するサウステキサスバケーロ・シェールガス事業においてガス価格の下落に起因し固定資産評価損123億円を計上
原油·ガスの価格変動による影響及び当社持分生産量
2025年3月期において、原油価格の変動が当社石油·ガス開発事業の販売収入の変化を経由して連結損益計算書における当期利益(親会社の所有者に帰属)に及ぼす影響度はUS$1/バレルあたり24億円と推定しています。
金属資源と同様に、実際の経営成績は、各石油·ガス開発事業における実際の生産量及び生産費用、為替相場の変動などにより影響を受けます。
また、当社の石油·ガスの持分生産量は、2024年3月期において日量213千バレル(ガスはバレル換算、換算係数は原油1バレル=天然ガス5,800立方フィート、当社連結子会社·持分法適用会社·非連結先の当社権益保有見合い)となりました。
機械・インフラ
(単位:億円) |
当期 |
前期 |
増減 |
主な増減要因 |
|
当期利益 (親会社の所有者に帰属) |
2,487 |
1,719 |
+768 |
|
|
|
売上総利益 |
2,211 |
1,999 |
+212 |
・中南米産機・建機関連事業会社+118 (損益取込期間調整*1、販売好調) ・船舶取扱い増 ・Hino Mexico+33(販売好調) ・Aptella*2連結化+31 ・BAF*3関連会社化△62 ・Mitsui Rail Capital Europe売却に伴う減益△45 ・ブラジル旅客鉄道事業前期利益の反動 |
|
持分法による投資損益 |
2,304 |
1,973 |
+331 |
・International Power(Australia)Holdings+110 (電力デリバティブ契約等に関わる評価益、 前期損失の反動) ・MPIC*4株式取得に伴う一過性評価益等+100 ・VLI+100(前期天候不良等による不調反動、 固定資産減損損失等減少*5+40) ・北米自動車関連会社(販売台数増、販売促進費減) ・FPSO+81(MV34他操業開始に伴う取込益増) ・前期中国賀州事業減損反動+65*6 ・タイ発電事業+60(順次完工他) ・カナダOntario火力発電事業前期損失反動+33 ・East Anglia*7+33 (投資簿価毀損解消に伴う連結取込再開) ・アジア自動車関連会社(販売好調) ・MBK USA Commercial Vehicles△192 (支払利息増、中古車売却益減少) ・Mainstream△169(固定資産減損損失*8△151、 ファイナンスリストラ関連) ・Paiton減益 |
|
受取配当金 |
71 |
42 |
+29 |
|
|
販売費及び一般管理費 |
△1,818 |
△1,636 |
△182 |
・中南米産機・建機関連事業会社△33 (損益取込期間調整*1) |
|
その他 |
△281 |
△659 |
+378 |
・Mitsui Rail Capital Europe有価証券売却益+644 ・前期ブラジル旅客鉄道事業固定資産減損損失 反動*9+151 ・International Power (Australia) Holdings 有価証券売却益+87 ・Paiton配当+84 ・カナダOntario火力発電事業売却益+46 ・航空機リース事業会社+42 (機体売却益、前期評価損反動) ・BAF*3 有価証券関連損益+41 ・IPM UK連結外化に伴う外貨換算調整勘定実現+34 ・前期MT Falcon減損反動*10+31 ・ブラジル旅客鉄道事業△305*11(固定資産 減損損失△195、繰延税金資産取崩△126他) ・Mainstream暖簾減損*12△129 ・前期Lucid Group株式売却に係る法人税負担減 反動*13△72 ・豪州Hazelwood発電事業引当*14△57 |
*1 決算報告の期ずれ解消に伴い、一時的に損益取込期間を調整するもの(前期12か月、当期15か月)
*2 2024年1月にPosition Partnersから名称変更
*3 Bussan Auto Finance
*4 フィリピン総合インフラ会社Metro Pacific Investments Corporation
*5 ブラジル貨物鉄道事業における一部資産の回収可能価額見直しに伴い、前期において固定資産減損損失67億円及び繰延税金資産取崩19億円を計上。また、当期において固定資産減損損失46億円を計上
*6 前期に中国賀州石炭火力発電事業における回収可能額見直しに伴い、持分法損失を65億円計上
*7 英国における旅客輸送事業会社
*8 Mainstream事業において、主にチリ事業における固定資産の減損として、持分法損失を151億円計上
*9 前期にブラジル旅客鉄道事業における運賃収入の減少及び割引率上昇を踏まえた最新の見積りに基づく固定資産評価損を計上
*10 前期にMT Falcon Holdingsの株式売買契約の改定に伴い、減損損失31億円を計上
*11 ブラジル旅客鉄道事業において最新の見積りに基づき固定資産評価損195億円、繰延税金資産の取崩損126億円を計上
*12 Mainstream事業において、暖簾の減損に伴い有価証券評価損を129億円計上
*13 前期にFVTOCIの金融資産であるLucid Group株式の売却により、その他包括利益として認識される税金費用に関連する法人所得税の負担減少を認識
*14 炭鉱閉鎖費用見直しに伴う引当追加計上
化学品
(単位:億円) |
当期 |
前期 |
増減 |
主な増減要因 |
|
当期利益 (親会社の所有者に帰属) |
392 |
709 |
△317 |
|
|
|
売上総利益 |
2,083 |
2,093 |
△10 |
・Mitsui Agro Business減益(価格下落) ・肥料関連トレーディング減益(価格下落・数量減) ・Intercontinental Terminals Company+43 (操業好調) ・Ceva他公正価値評価益+32 |
|
持分法による投資損益 |
212 |
274 |
△62 |
・日本アラビアメタノール△30 (当期定修実施、価格下落) ・Hexagon Composites+42 (同社子会社の関連会社化に伴う公正価値評価益等) |
|
受取配当金 |
46 |
38 |
+8 |
|
|
販売費及び一般管理費 |
△1,547 |
△1,374 |
△173 |
・海外化学品事業における引当金計上△37 |
|
その他 |
△402 |
△322 |
△80 |
・Thorne HealthTech売却益+115 |
鉄鋼製品
(単位:億円) |
当期 |
前期 |
増減 |
主な増減要因 |
|
当期利益 (親会社の所有者に帰属) |
112 |
225 |
△113 |
|
|
|
売上総利益 |
435 |
407 |
+28 |
・STATS連結化+32 |
|
持分法による投資損益 |
172 |
247 |
△75 |
・Gestamp減損損失△41 |
|
受取配当金 |
36 |
30 |
+6 |
|
|
販売費及び一般管理費 |
△321 |
△276 |
△45 |
|
|
その他 |
△210 |
△183 |
△27 |
|
生活産業
(単位:億円) |
当期 |
前期 |
増減 |
主な増減要因 |
|
当期利益 (親会社の所有者に帰属) |
941 |
548 |
+393 |
|
|
|
売上総利益 |
1,853 |
1,537 |
+316 |
・エームサービス子会社化+206 ・AUSJ*1子会社化+83 ・創薬支援ファンド前期公正価値評価損の反動+38 ・国内流通関連事業会社+34(採算改善) ・食材輸出入事業為替影響△69 ・MBK HUMAN CAPITAL△37(需要・単価減少) ・United Grain Corporation△31(前期好調反動) |
|
持分法による投資損益 |
595 |
507 |
+88 |
・WILSEY FOODS+120 (加工油脂食品製造Ventura Foods一部事業売却 及び好調) |
|
受取配当金 |
72 |
62 |
+10 |
|
|
販売費及び一般管理費 |
△1,731 |
△1,420 |
△311 |
・エームサービス子会社化△164 ・AUSJ*1子会社化△72 |
|
その他 |
152 |
△138 |
+290 |
・エームサービス公正価値評価益*2+434 ・RGF Staffing Delaware売却益+113 ・コーヒートレーディング為替ヘッジ損益+76 ・食材輸出入事業為替差損益+65 ・R-Pharmプットオプション*3△194 (当期△129、前期65) ・前期FVTOCI金融資産売却に係る法人税負担減の 反動*4△122 ・前期Multigrain関連税金還付反動△50 |
*1 アラマークユニフォームサービスジャパン
*2 エームサービスの持分法適用会社から連結子会社への区分変更に伴い生じた既存持分の再評価益
*3 R-Pharmに係るプットオプションの公正価値評価損益
*4 前期にFVTOCIの金融資産の売却により、その他包括利益として認識される税金費用に関連する法人所得税の負担減少を認識
次世代・機能推進
(単位:億円) |
当期 |
前期 |
増減 |
主な増減要因 |
|
当期利益 (親会社の所有者に帰属) |
538 |
667 |
△129 |
|
|
|
売上総利益 |
1,184 |
1,126 |
+58 |
・三井物産都市開発+34(物流施設の売却益) ・本店事業部トレーディング減益(商品価格要因) ・Mitsui Bussan Commodities△41 (ボラティリティ低下) |
|
持分法による投資損益 |
197 |
189 |
+8 |
・JA三井リース+32(保有資産拡充) |
|
受取配当金 |
32 |
38 |
△6 |
|
|
販売費及び一般管理費 |
△890 |
△827 |
△63 |
|
|
その他 |
15 |
141 |
△126 |
・前期シンガポール不動産事業売却益反動*1 ・米国不動産事業物件売却益△53 (当期63、前期116) ・前期有価証券売却益反動△40 ・日比谷フォートタワー一部売却益△2 (当期57、前期59) ・当期アルティウスリンク公正価値評価益*2+89 ・本店事業部トレーディング増益(為替要因) |
*1 シンガポールにおけるオフィス開発物件保有会社Southernwood Propertyの売却益
*2 KDDIエボルバとりらいあコミュニケーションズの経営統合に伴い発生した、旧りらいあコミュニケーションズ当社持分に関わる公正価値評価益
(5)流動性と資金調達の源泉
会計基準に基づかない財務指標について
現預金差引後の有利子負債比率(ネットDER)
この流動性と資金調達の源泉の項目を含めて、本報告書では現預金差引後の有利子負債比率(ネットDER)に言及しています。当社は「ネット有利子負債」を株主資本(親会社の所有者に帰属する持分合計)で除した比率を「ネットDER」と呼んでいます。当社は「ネット有利子負債」を以下のとおり定義して、下表のとおり算出しています。
• 短期債務及び長期債務の合計よりリース負債を除外し、有利子負債を算出。
• 有利子負債から現金及び現金同等物、定期預金(3ヵ月超1年以内)を控除した金額を「ネット有利子負債」とする。
当社の経営者は、債務返済能力と株主資本利益率(ROE)向上のために有利子負債と株主資本の関係を検討する目的から、ネットDERを投資家にとって有益な指標と考えており、下表のとおり「ネット有利子負債」及び「ネットDER」を算出しています。
(単位:億円) |
当期末 |
前期末 |
短期債務 |
2,440 |
4,322 |
長期債務 |
45,321 |
46,083 |
長短債務合計 |
47,761 |
50,405 |
(控除)リース負債 |
△4,753 |
△4,310 |
有利子負債合計 |
43,008 |
46,095 |
(控除)現金及び現金同等物、定期預金(3ヵ月超1年以内) |
△9,027 |
△13,968 |
ネット有利子負債 |
33,981 |
32,127 |
株主資本(親会社の所有者に帰属する持分合計) |
75,418 |
63,678 |
ネットDER(倍) |
0.45 |
0.50 |
株主還元後のキャッシュ・フロー
当社の経営者は、財務基盤の維持・向上において、株主還元後のキャッシュ・フローを有用な指標と考えています。株主還元後のキャッシュ・フローに関しては、④「投融資と財務政策」をご参照ください。
①資金調達の基本方針
当社の経営者は、円滑な事業活動に必要なレベルの流動性の確保と財務の健全性・安定性維持を資金調達の基本方針としており、主として本邦生保、銀行等からの長期借入金や社債の発行等により10年程度の長期資金を中心とした資金調達を行っています。同時に、長期資金の年度別償還額の集中を避けることで借り換えリスクの低減を図っています。さらに、プロジェクト案件等では政府系金融機関からの借入やプロジェクトファイナンスも活用しています。
100%子会社については原則として銀行などの外部からの資金調達を行わず、金融子会社、現地法人などの資金調達拠点を通じたキャッシュ・マネジメント・サービスの活用により、資金調達の一元化と資金効率化、流動性の確保を図っています。結果として当連結会計年度末において有利子負債の5分の4程度が当社並びに資金調達拠点による調達となっています。
また、事業展開に伴う資金需要に対する機動的な対応と、当社の有利子負債返済における金融情勢悪化の影響を最小限に抑えるためにも、十分な現金及び現金同等物を保有しています。現金及び現金同等物の保有額については厳密な目標水準を定めていませんが、金融情勢などを勘案しつつ、安全性並びに流動性の高い短期金融商品で運用しています。
②資金調達手段
当社は、上記の当社資金調達の基本方針に則り、直接金融または間接金融の多様な手段の中から、その時々の市場環境も考慮したうえで当社にとって有利な手段を機動的に選択し、資金調達を行っています。
当社は、内外金融機関との間で長期間にわたって築き上げてきた幅広く良好な関係に基づき、長期借入を中心に必要資金を調達しています。また、国際協力銀行などの政府系金融機関からも資金調達を行っており、プロジェクト案件ではプロジェクトファイナンス等も活用して必要資金を調達しています。
これに加えて、当社では2,000億円の社債発行登録枠、コマーシャルペーパー発行枠、並びにユーロ・ミディアム・ターム・ノート発行プログラムという直接金融の調達手段も保有しており、市場環境に応じて有利な条件での資金調達を行っています。当連結会計年度末における(短期社債除く)国内社債及びユーロ・ミディアム・ターム・ノートと海外社債の発行残高は、それぞれ2,300億円及び1,840億円となっています。また海外での短期の資金調達手段として、米国三井物産による米国コマーシャルペーパープログラムとMitsui & Co. Financial Services(Europe)によるユーロコマーシャルペーパープログラムを保有しており、それぞれ時機をみて活用しています。なお、当社は長期かつ安定的な資金調達を一義としており、コマーシャルペーパーや短期借入金等に資金調達を依存していません。その結果として、当連結会計年度末における一年以内に返済予定の有利子負債が有利子負債全体に占める比率は、20.6%となりました。
当社及び一部の連結子会社は、流動性の確保・維持のため、金融機関に対してコミットメント・フィーを支払い、信用枠(コミットメントライン)を設定しています。当社は、国内外の主要銀行と59億米ドル相当のコミットメントラインを締結しています。
有利子負債の大半は円建て並びに米ドル建てでの調達によるものです。また、資産側の金利・通貨属性を考慮した上で、負債の金利条件や通貨を変換するために適宜、金利スワップや通貨スワップ、為替予約を締結しています。金利スワップ考慮後の有利子負債における固定金利比率は、現在の当社の資産と負債の状況に見合った水準と認識しています。
これらのデリバティブ取引に関しては、連結財務諸表注記事項9.「金融商品及び関連する開示」をご参照ください。また、デリバティブ関連の流動性分析については、連結財務諸表注記事項16.「金融債務及び営業債務等に関する開示」をご参照ください。
格付け
当社は、円滑な資金調達を行うため株式会社格付投資情報センター(R&I)、ムーディーズ・ジャパン株式会社(Moody's)、S&P グローバル・レーティング・ジャパン株式会社(S&P)の3社から格付けを取得しています。2024年5月31日現在の格付けは下記のとおりです。
|
R&I |
Moody's |
S&P |
長期(見通し) |
AA(安定的) |
A3(安定的) |
A(安定的) |
短期 |
a-1+ |
P-2 |
A-1 |
当社としては引き続き健全な財務基盤を維持し、格付けの維持・向上に尽力していく方針です。
なお、格付けは当社からの情報あるいは格付会社が信頼できるとする情報に基づく各格付会社自身の判断による信用リスクの分析です。格付けは売買・保有の推奨ではなく、また格付会社によりいつでも変更・取り消しされる可能性があります。また格付け基準も格付会社毎に異なります。
③流動性の状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、8,982億円となりました。この現金及び現金同等物の半分程度は円建てであり、当連結会計年度末の1年以内に返済予定の有利子負債(8,876億円)の返済に十分な水準であることに加え、当社は機動的な資金の引き出しが可能なコミットメントラインを確保しています。
当連結会計年度の世界経済は、米国が堅調に推移しましたが、欧州は停滞が続き、中国の回復も低調であったことから全体として減速局面が続きました。このような状況下、当社は資金調達の基本方針に則り、金融機関との長期にわたる良好な関係や公的金融機関による各種施策、社債発行登録枠等を活用して必要資金の調達を着実に実行しました。
上述資金調達実行の結果、当連結会計年度末における有利子負債は4兆3,008億円(前連結会計年度末比3,088億円減)となりました。このうち、4,200億円は劣後特約付シンジケートローンで、格付会社は、残高の50%である2,100億円を資本と同等に扱っています。また、当連結会計年度末の有利子負債の返済年限別内訳は次のとおりです。当連結会計年度末の短期債務及び長期債務の内訳と債務残高の利率については、連結財務諸表注記事項16.「金融債務及び営業債務等に関する開示」をご参照ください。
返済年限 |
1年以内 |
1年超 2年以内 |
2年超 3年以内 |
3年超 4年以内 |
4年超 5年以内 |
5年超 |
合計 |
金額(億円) |
8,876 |
5,422 |
2,605 |
3,880 |
4,479 |
17,746 |
43,008 |
当連結会計年度末の株主資本(親会社の所有者に帰属する持分合計)は7兆5,418億円となり前連結会計年度末比で1兆1,740億円増加しました。ネット有利子負債は3兆3,981億円となり同1,854億円増加、ネットDERは前連結会計年度末の0.50倍から0.45倍へ0.05ポイント低下しました。
また流動比率は、前連結会計年度末の150.7%に対し当連結会計年度末は148.2%となっています。
以上のような数値、及び資金調達環境から判断すると、当社の財務の健全性は引き続き確保されており、中期経営計画に沿った投融資を含む当社の円滑な事業活動を行う上で、現時点で大きな支障はないと認識しています。
当社及び連結子会社は、主として第三者及び関連当事者のために、各種の支払保証を行っていますが、これらの保証において当社及び連結子会社の流動性に実質的な影響を及ぼすものはありません。将来の契約履行義務並びに保証等については連結財務諸表注記事項27.「偶発債務」をご参照ください。
当社及び連結子会社は、個別プロジェクト案件等に対するノンリコースファイナンスなどを除き、金融機関との重要な金融取引において、期限の利益喪失となり得る財務比率制限、担保提供制限、追加債務負担制限、利益処分の制限等の財務制限条項を含む契約を締結しないことを基本方針としていることもあり、これらの財務制限条項において重要なものはありません。
連結子会社や持分法適用会社からの配当受取に関しては、その配当の有無が当社の流動性に大きな影響を与えるという状況にはないと認識しています。また、当該連結子会社及び持分法適用会社に適用される現地法制に照らして適切な純資産や配当可能利益がある限り、配当等による資金の受領を制限する契約または法制上の制限として重要なものはありません(一般的な源泉課税並びに現地税法に基づくその他の税金を除く)。
なお、当社及び連結子会社は、翌連結会計年度において、確定給付型年金制度に58億円拠出する見込みです。
④投融資と財務政策
当連結会計年度の基礎営業キャッシュ・フローは約9,960億円の獲得となり、これに資産リサイクルにより獲得した約5,370億円と併せて約1兆5,330億円のキャッシュ・インとなりました。一方、機能性食品素材を販売するNutrinova、次世代・機能推進セグメントにおけるアルティウスリンク、エビ養殖事業者であるエクアドルのIPSP等、投融資*1は約9,680億円となり、総額約3,770億円の株主還元を加味すると、株主還元後キャッシュ・フロー*2は約1,880億円の黒字となりました。前中期経営計画期間で強化したバランスシートの厚みも念頭に、引き続き、成長投資と株主還元、双方の向上を両立させます。なお、当連結会計年度のキャッシュ・フロー詳細については、後述の「⑥キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
*1 定期預金の増減を除外した投資キャッシュ・フローに一部非支配持分からの取得に伴う財務キャッシュ・フローを足したもの
*2 運転資本及び定期預金の増減の影響を除外したフリー・キャッシュ・フロー
既存の債務からの再調達については、前述の「①資金調達の基本方針」、及び「②資金調達手段」をご参照ください。
⑤資産及び負債並びに資本
(単位:億円) |
2024年3月末 |
2023年3月末 |
増減 |
|
総資産 |
168,995 |
153,809 |
+15,186 |
|
|
流動資産 |
57,681 |
56,748 |
+933 |
|
非流動資産 |
111,314 |
97,061 |
+14,253 |
流動負債 |
38,915 |
37,666 |
+1,249 |
|
非流動負債 |
52,380 |
50,491 |
+1,889 |
|
親会社の所有者に帰属する持分合計 |
75,418 |
63,678 |
+11,740 |
資産
流動資産:
(単位:億円) |
2024年3月末 |
2023年3月末 |
増減 |
主な増減要因 |
流動資産 |
57,681 |
56,748 |
+933 |
|
現金及び現金同等物 |
8,982 |
13,901 |
△4,919 |
|
営業債権及びその他の債権 |
22,167 |
21,912 |
+255 |
・売掛金+570 (エネルギー、化学品、生活産業) 取扱数量増加 ・貸付金△347、うちBAF*1△700 |
その他の金融資産 |
11,401 |
7,730 |
+3,671 |
・(エネルギー、化学品) 未収入金増加 ・(機械・インフラ、エネルギー、 次世代・機能推進) デリバティブ債権増加 ・(コーポレート、エネルギー) 差入証拠金増加 |
棚卸資産 |
9,657 |
9,405 |
+252 |
・(生活産業、機械・インフラ、エネル ギー) 棚卸資産増加 ・Komatsu Mining Corp. Perú子会社化 +143 |
前渡金 |
3,681 |
2,267 |
+1,414 |
・(機械・インフラ) 取扱数量増加 |
未収法人所得税 |
494 |
384 |
110 |
|
その他の流動資産 |
1,298 |
1,149 |
+149 |
|
*1 Bussan Auto Finance関連会社化
非流動資産:
(単位:億円) |
2024年3月末 |
2023年3月末 |
増減 |
主な増減要因 |
非流動資産 |
111,314 |
97,061 |
+14,253 |
|
持分法適用会社に対する投資 |
48,700 |
39,296 |
+9,404 |
・持分法による投資損益見合い+4,916 ・為替変動+4,535 ・Nutrinova+749 ・台湾洋上風力+701 (YECL*1 子会社化等) ・Industrial Pesquera Santa Priscila +542 ・アルティウスリンク*2 +466(投資実 行+607と資金回収△141の純額) ・Mit-Pacific Infrastructure Holdings*3 +324 ・RNG事業+288 ・海外不動産事業+239 ・FPSO事業(MV32)+232 ・FPSO事業(MV33)+198 ・Mitsui E&P Mozambique+185 ・Euricom+171 ・BAF*4 +143 ・Kasso MidCo+121 ・FPSO事業(MV34)+107 ・持分法適用会社からの受取配当 △3,939 ・International Power(Australia) Holdings売却△173 |
その他の投資 |
23,199 |
21,341 |
+1,858 |
・FVTOCI公正価値評価+872 ・為替変動+485 ・Alvotech転換社債取得+105 |
営業債権及びその他の債権 |
2,866 |
3,200 |
△334 |
・BAF*4 △533 |
その他の金融資産 |
2,108 |
2,080 |
+28 |
|
有形固定資産 |
24,015 |
23,006 |
+1,009 |
・豪州鉄鉱石事業+461 (うち、為替変動+412) ・South Texas Vaquero+393 (うち、為替変動+33) ・石油・ガス生産事業+311 (うち、為替変動+675) ・Intercontinental Terminals Company +202 ・Mitsui Resources+145 (うち、為替変動+103) ・Mitta+104 ・Mitsui Rail Capital Europe△818 ・M&T Aviation保有航空機売却△269 ・LNG船減価償却△158 |
投資不動産 |
2,823 |
2,825 |
△2 |
|
無形資産 |
4,582 |
2,773 |
+1,809 |
・エームサービス子会社化+1,239 ・Komatsu Mining Corp. Perú子会社化 +151 |
繰延税金資産 |
1,081 |
1,052 |
+29 |
|
その他の非流動資産 |
1,940 |
1,488 |
+452 |
・年金資産増加 |
*1 Yushan Energy Co., Ltd.
*2 りらいあコミュニケーションズ株式を追加取得後にKDDIエボルバと経営統合し、アルティウスリンクとして発足
*3 Mit-Pacific Infrastructure Holdings経由でMetro Pacific Investments Corporationへ出資
*4 Bussan Auto Finance関連会社化
2024年3月末及び2023年3月末における持分法適用会社に対する投資をオペレーティング・セグメント別に見ると以下のとおりです。
(単位:億円) |
2024年3月末 |
2023年3月末 |
増減 |
金属資源 |
5,138 |
4,674 |
+464 |
エネルギー |
6,507 |
5,214 |
+1,293 |
機械・インフラ |
17,771 |
14,059 |
+3,712 |
化学品 |
3,295 |
2,467 |
+828 |
鉄鋼製品 |
3,564 |
3,126 |
+438 |
生活産業 |
8,883 |
7,215 |
+1,668 |
次世代・機能推進 |
3,550 |
2,559 |
+991 |
その他/調整・消去 |
△8 |
△18 |
+10 |
連結合計 |
48,700 |
39,296 |
+9,404 |
2024年3月末及び2023年3月末における有形固定資産をオペレーティング・セグメント別に見ると以下のとおりです。
(単位:億円) |
2024年3月末 |
2023年3月末 |
増減 |
金属資源 |
5,745 |
5,139 |
+606 |
エネルギー |
7,787 |
7,175 |
+612 |
機械・インフラ |
1,807 |
2,732 |
△925 |
化学品 |
2,956 |
2,558 |
+398 |
鉄鋼製品 |
200 |
99 |
+101 |
生活産業 |
2,290 |
2,126 |
+164 |
次世代・機能推進 |
1,350 |
1,332 |
+18 |
その他/調整・消去 |
1,880 |
1,845 |
+35 |
連結合計 |
24,015 |
23,006 |
+1,009 |
2024年3月末及び2023年3月末におけるオペレーティング・リースに供されている有形固定資産の内訳については、連結財務諸表注記事項10.「リース」をご参照ください。
負債
(単位:億円) |
2024年3月末 |
2023年3月末 |
増減 |
主な増減要因 |
流動負債 |
38,915 |
37,666 |
+1,249 |
|
短期債務 |
2,440 |
4,322 |
△1,882 |
・借入及び返済の他にBAF*1 △216 |
1年以内に返済予定の長期債務 |
7,231 |
8,110 |
△879 |
・1年超からの振替及び返済の他に BAF*1 △284 |
営業債務及びその他の債務 |
16,470 |
15,104 |
+1,366 |
・買掛金の増加 (主に売掛金の増加に対応) |
その他の金融負債 |
7,375 |
6,220 |
+1,155 |
・デリバティブ債務、未払金の増加 |
未払法人所得税 |
422 |
493 |
△71 |
|
前受金 |
3,188 |
2,349 |
+839 |
・前渡金の増加に対応 |
引当金 |
1,238 |
590 |
+648 |
・石油・ガス生産事業+279 |
その他の流動負債 |
552 |
478 |
+74 |
|
非流動負債 |
52,380 |
50,491 |
+1,889 |
|
長期債務(1年以内返済予定分を除く) |
38,090 |
37,973 |
+117 |
・1年以内への振替及び借入の他に BAF*1 △438 |
その他の金融負債 |
3,419 |
2,234 |
+1,185 |
・デリバティブ債務の増加 |
退職給付に係る負債 |
439 |
370 |
+69 |
|
引当金 |
2,616 |
3,105 |
△489 |
・石油・ガス生産事業△840 |
繰延税金負債 |
7,458 |
6,483 |
+975 |
|
その他の非流動負債 |
357 |
326 |
+31 |
|
*1 Bussan Auto Finance関連会社化
資本
(単位:億円) |
2024年3月末 |
2023年3月末 |
増減 |
主な増減要因 |
資本金 |
3,431 |
3,426 |
+5 |
|
資本剰余金 |
3,919 |
3,819 |
+100 |
|
利益剰余金 |
55,517 |
48,405 |
+7,112 |
|
その他の資本の構成要素 |
13,238 |
8,690 |
+4,548 |
|
(内訳) |
|
|
|
|
FVTOCIの金融資産 |
2,656 |
2,156 |
+500 |
|
外貨換算調整勘定 |
10,904 |
6,385 |
+4,519 |
・米ドル+2,190 (24/3 151.41←23/3 133.53円/USD) ・豪ドル+1,096 (24/3 98.61←23/3 89.69円/AUD) |
キャッシュ・フロー・ヘッジ |
△321 |
149 |
△470 |
|
自己株式 |
△686 |
△662 |
△24 |
・自己株式取得△1,393 ・自己株式消却+1,359 |
親会社の所有者に帰属する 持分合計 |
75,418 |
63,678 |
+11,740 |
|
非支配持分 |
2,281 |
1,974 |
+307 |
|
⑥キャッシュ・フローの状況
(単位:億円) |
当期 |
前期 |
増減 |
営業活動によるキャッシュ・フロー |
8,644 |
10,475 |
△1,831 |
投資活動によるキャッシュ・フロー |
△4,275 |
△1,783 |
△2,492 |
フリー・キャッシュ・フロー |
4,369 |
8,692 |
△4,323 |
財務活動によるキャッシュ・フロー |
△10,131 |
△6,347 |
△3,784 |
現金及び現金同等物の為替相場変動の影響額 |
843 |
278 |
+565 |
現金及び現金同等物の増減 |
△4,919 |
2,623 |
△7,542 |
営業活動によるキャッシュ・フロー
(単位:億円) |
当期 |
前期 |
増減 |
|
営業活動によるキャッシュ・フロー |
a |
8,644 |
10,475 |
△1,831 |
営業活動に係る資産・負債の増減 |
b |
△2,054 |
△2,235 |
+181 |
リース負債の返済による支出 |
c |
△740 |
△655 |
△85 |
基礎営業キャッシュ・フロー |
a-b+c |
9,958 |
12,055 |
△2,097 |
・営業活動に係る資産・負債(Working Capital)の増減によるキャッシュ・フローは2,054億円の資金支出、リース負債の返済は740億円の資金支出となり、これらを除いた基礎営業キャッシュ・フローは、9,958億円となりました。
- 持分法適用会社からの配当金を含む配当金の受取額は5,508億円となり、前期の5,742億円から234億円減少
- 減価償却費及び無形資産等償却費は2,936億円となり、前期の2,727億円から209億円増加
基礎営業キャッシュ・フローのオペレーティング・セグメント別の内訳は以下のとおりです。
(単位:億円) |
当期 |
前期 |
増減 |
金属資源 |
4,091 |
4,367 |
△276 |
エネルギー |
2,478 |
4,196 |
△1,718 |
機械・インフラ |
1,769 |
1,829 |
△60 |
化学品 |
634 |
895 |
△261 |
鉄鋼製品 |
85 |
180 |
△95 |
生活産業 |
402 |
311 |
+91 |
次世代・機能推進 |
454 |
466 |
△12 |
その他/調整・消去 |
45 |
△189 |
+234 |
連結合計 |
9,958 |
12,055 |
△2,097 |
減価償却費及び無形資産等償却費のオペレーティング・セグメント別の内訳は以下のとおりです。
(単位:億円) |
当期 |
前期 |
増減 |
金属資源 |
661 |
587 |
+74 |
エネルギー |
926 |
882 |
+44 |
機械・インフラ |
340 |
348 |
△8 |
化学品 |
329 |
316 |
+13 |
鉄鋼製品 |
26 |
15 |
+11 |
生活産業 |
301 |
232 |
+69 |
次世代・機能推進 |
175 |
188 |
△13 |
その他/調整・消去 |
178 |
159 |
+19 |
連結合計 |
2,936 |
2,727 |
+209 |
投資活動によるキャッシュ・フロー
(単位:億円) |
当期 |
前期 |
当期の内訳 |
投資活動によるキャッシュ・フロー |
△4,275 |
△1,783 |
|
持分法適用会社に対する投資 |
△3,061 |
△1,034 |
|
取得 |
△4,498 |
△2,386 |
・Nutrinova△749 ・アルティウスリンク*1 △604 ・Industrial Pesquera Santa Priscila △542 ・Mit-Pacific Infrastructure Holdings*2 △324 ・RNG事業△289 ・海外不動産事業△239 ・FPSO事業(MV32)△232 ・FPSO事業(MV33)△198 ・発電事業△192 ・Mitsui E&P Mozambique△185 ・Euricom△171 ・Kasso MidCo△121 ・FPSO事業(MV34)△107 |
売却・回収 |
1,437 |
1,352 |
・International Power (Australia) Holdings+259 ・Thorne HealthTech+240 ・RGF Staffing Delaware+190 ・アルティウスリンク投資一部回収+141 |
その他の投資 |
202 |
339 |
|
取得 |
△924 |
△1,004 |
・Komatsu Mining Corp. Perú ・Alvotech転換社債取得△105 |
売却・償還 |
1,126 |
1,343 |
・Mitsui Rail Capital Europe ・MyPower+249 ・Kaikias油田事業+174 ・海外不動産事業+114 |
有形固定資産等 |
△2,443 |
△1,900 |
|
取得 |
△2,948 |
△2,280 |
・石油・ガス生産事業△751 ・豪州鉄鉱石事業△438 ・Mitsui Resources△252 ・MyPower△213 |
売却 |
505 |
380 |
・M&T Aviation保有航空機+308 |
投資不動産 |
291 |
484 |
|
取得 |
△85 |
△123 |
|
売却 |
376 |
607 |
・米国不動産事業物件+166 ・Xingu Agri農地+109 ・日比谷フォートタワー一部売却 |
貸付金の増加及び回収 |
240 |
△42 |
・Gestamp North America貸付金回収+166 |
定期預金の増減-純額 |
30 |
370 |
|
子会社またはその他の事業の取得 |
△1,063 |
- |
・エームサービス子会社化△588 (取得対価△688、現預金+100) ・South Texas Vaquero△368 ・物産アニマルヘルス*3 △107 |
子会社またはその他の事業の売却 |
1,529 |
- |
|
*1 りらいあコミュニケーションズ株式を追加取得後にKDDIエボルバと経営統合し、アルティウスリンクとして発足
*2 Mit-Pacific Infrastructure Holdings経由でMetro Pacific Investments Corporationへ出資
*3 住友ファーマアニマルヘルスを取得後、2023年6月に名称を変更
当期及び前期における上述の投資活動によるキャッシュ・フローをオペレーティング・セグメント別に見ると以下のとおりです。
(単位:億円) |
当期 |
前期 |
金属資源 |
△731 |
△176 |
エネルギー |
△1,674 |
△1,104 |
機械・インフラ |
1,068 |
△899 |
化学品 |
△933 |
△703 |
鉄鋼製品 |
△20 |
△12 |
生活産業 |
△1,396 |
379 |
次世代・機能推進 |
△523 |
400 |
その他/調整・消去 |
△66 |
332 |
連結合計 |
△4,275 |
△1,783 |
財務活動によるキャッシュ・フロー
(単位:億円) |
当期 |
前期 |
当期の内訳 |
財務活動によるキャッシュ・フロー |
△10,131 |
△6,347 |
|
短期債務の増減-純額 |
△2,032 |
1,687 |
|
長期債務の増加及び返済 |
△3,438 |
△2,176 |
|
(長期債務の増加) |
8,608 |
10,412 |
|
(長期債務の返済) |
△12,046 |
△12,588 |
|
リース負債の返済による支出 |
△740 |
△655 |
|
自己株式の取得及び売却 |
△1,393 |
△2,702 |
・従業員向け株式報酬△192含む |
配当金支払による支出 |
△2,424 |
△1,981 |
|
非支配持分株主との取引 |
△105 |
△520 |
|
当期の資金調達状況については、前述の「②資金調達手段」をご参照ください。
(6)重要な判断を要する会計方針及び見積り
重要な判断を要する会計方針及び見積りとは、会社の財政状態や経営成績に重要な影響を及ぼす会計方針及び会計上の見積りであり、かつ本質的に不確実な事柄に関する経営者の重要な、或いは主観的な判断を反映させることを要するものです。重要性がある会計方針は、注記2.「連結財務諸表の作成基準並びに重要性がある会計方針の要約(5)重要性がある会計方針の要約」をご参照ください。
IFRSに基づく連結財務諸表の作成にあたっては、経営者の判断の下、一定の前提条件に基づく見積りが必要となる場合がありますが、この前提条件の置き方などにより、連結財政状態計算書上の資産及び負債、連結損益計算書上の収益及び費用、または開示対象となる偶発債務などに重要な影響を及ぼすことがあります。
なお、ロシア・ウクライナ情勢及びそれに伴うロシアに対する制裁措置等による影響はグローバルに及び、当社が行うさまざまな事業分野に影響を及ぼす可能性がありますが、商品や事業内容、所在地域によってその影響範囲は異なるため、見積りにおいては個々の状況を鑑み判断しています。
以下の各項目は、その認識及び測定にあたり、経営者の重要な判断及び会計上の見積りを必要とするものです。
非金融資産及び持分法適用会社に対する投資の減損損失及び減損損失の戻入
・前連結会計年度及び当連結会計年度における、有形固定資産、投資不動産、暖簾及び耐用年数を確定できない無形資産を除く無形資産の減損損失計上額は271億円及び665億円です。また、前連結会計年度及び当連結会計年度における同資産の減損損失の戻入額に重要性はありません。前連結会計年度末及び当連結会計年度末における減価償却累計額及び減損損失累計額控除後の帳簿価額は2兆7,571億円及び2兆9,319億円です。
・前連結会計年度及び当連結会計年度における、持分法適用会社に対する投資の減損損失計上額は43億円及び139億円です。また、前連結会計年度及び当連結会計年度における同資産の減損損失の戻入額は発生していません。前連結会計年度末及び当連結会計年度末における持分法適用会社に対する投資の帳簿価額は3兆9,296億円及び4兆8,700億円です。
・非金融資産の減損損失及び減損損失の戻入(持分法適用会社に対する投資を含む)は、当社の連結損益計算書上の当期利益に対し重要な影響を及ぼすことがあります。
・減損損失は主に連結子会社における事業環境の悪化に伴う収益性の低下、事業内容見直し、及び持分法適用会社に対する投資の市場価格の下落などによるものです。
・非金融資産の減損の兆候の有無の判定を行い、減損の兆候があると判断された場合には、資産または資金生成単位の回収可能価額を算定し、回収可能価額が帳簿価額を下回っている場合に、差額を減損損失として認識しています。
・回収可能価額は処分費用控除後の公正価値と使用価値のうち、いずれか高い金額としています。
・公正価値は市場性のある持分法適用会社に対する投資の場合は市場価格を、それ以外の場合は独立の第三者による評価結果を使用するなど、市場参加者間の秩序ある取引において成立し得る価格を合理的に見積り算定しています。
・使用価値の算定に使用される将来キャッシュ・フローは、経営者により承認された経営計画や、それが入手できない場合は直近の非金融資産の状況を反映した操業計画に基づいて見積っています。この将来キャッシュ・フローの見積り方法として、以下の例があげられます。
- 不動産について、直近の近隣不動産売却価額や賃料が合理的な期間継続するという前提を置く。
- 工場設備にて製造している製品の将来にわたる一定期間の販売価格を、過去における同期間の平均値やアナリストの分析資料等を勘案して見積る。
- 石炭・原油等の資源事業に関わる開発設備及び鉱業権について、直近の確認埋蔵量等に基づく生産計画に沿って当該資産を使用して生産され、減損判定時点における先物価格を基にした価格、第三者による予想価格、もしくは長期販売契約上の販売価格で売却される前提を置く。
- 顧客関係について、将来の一定期間の収益につき、過去における収益への貢献度、解約率、及びアナリストの市況予想等を勘案して見積る。
・使用価値の計算においては、割引率は、資金生成単位の固有のリスクを反映した市場平均と考えられる収益率を合理的に反映する率を使用しています。
・非金融資産は、その性質や、所在地、所有者、操業者、収益性等の操業環境が異なるため、将来キャッシュ・フローの想定や、割引率の算定において考慮すべき各種の要因は、個別の非金融資産ごとに異なります。
・過年度に認識した減損損失が、もはや存在しない又は減少している可能性を示す兆候の有無に関して、期末日に判定を行っています。こうした兆候が存在する場合、当社及び連結子会社は資産または資金生成単位の回収可能価額の見積りを行い、最後に減損損失が認識されて以降、資産の回収可能価額の決定に用いた仮定に変更がある場合にのみ、過去に認識した減損損失を連結損益計算書上の利益として戻入れています。
暖簾の減損
・前連結会計年度及び当連結会計年度における暖簾減損損失計上額は4億円及び10億円です。また、対応する前連結会計年度末及び当連結会計年度末における帳簿価額は875億円及び1,887億円です。
・暖簾は、企業結合のシナジーから便益を享受できると期待される資金生成単位または資金生成単位グループに配分し、年一回及び減損の兆候を示す事象が発生した時点で、減損テストを実施しています。
・減損テストでは、暖簾及び暖簾を配分した資金生成単位または資金生成単位グループの帳簿価額合計を回収可能価額と比較し、帳簿価額合計が回収可能価額を上回る場合に、その差額を減損損失として認識します。回収可能価額の見積りは、非金融資産の減損と同様の見積り方法を用いています。
公正価値で測定する市場性ない資本性金融資産
・公正価値で測定する市場性ない資本性金融資産については、主に評価差額をその他の包括利益に認識することを選択しています。前連結会計年度末及び当連結会計年度末における、市場性ないFVTOCIの金融資産の公正価値はそれぞれ6,343億円及び7,111億円です。
・市場性ないFVTOCIの金融資産については、主に割引キャッシュ・フロー法、類似企業比較法またはその他の適切な評価方法を用いて評価しており、経営者が金額的重要性が高いと判断する場合には、外部の評価専門家の評価を利用しています。
・重要な観察不能なインプットである原油価格の見積りについては、注記26.「公正価値測定(3)定期的に公正価値で測定される資産及び負債に係る開示」をご参照ください。
・また、割引キャッシュ・フロー法に使用される将来キャッシュ・フローは、非金融資産及び持分法に対する投資の減損と同様に、経営者により承認された経営計画などに基づいて見積っています。これらの見積りや仮定は、当社の連結包括利益計算書上のその他の包括利益に重要な影響を及ぼすことがあります。
繰延税金資産の回収可能性
・繰延税金資産の回収可能性の判断の変更に伴う繰延税金資産の減額は、当社の連結損益計算書上の当期利益及び連結包括利益計算書上のその他の包括利益に重要性がある影響を及ぼすことがあります。
・経営者は、有税償却に関する無税化の実現可能性や当社及び子会社の課税所得の予想など、現状入手可能な全ての将来情報を用いて、繰延税金資産の回収可能性を判断しています。当社は、回収可能と見込めないと判断した部分を除いて繰延税金資産を計上していますが、将来における課税所得の見積りの変更や、法定税率の変更などにより、回収可能額が変動する可能性があります。
石油・ガス産出活動及び鉱物採掘活動における埋蔵量の見積り
・埋蔵量は、当社及び連結子会社が保有している権益に対応した経済的かつ法的に採掘可能な生産物として見積られた量です。埋蔵量を算出するための見積り及び前提は以下の地質学的、技術的、経済的要因によって左右されます。
- 地質学的要因:鉱物の分量、品位等
- 技術的要因:生産技術、回収率、生産費用、輸送費用等
- 経済的要因:生産物の需要、価格、為替レート等
・埋蔵量の見積りに使用される経済的な前提は毎期変動し、かつ一連の生産活動の中で地質データの更新が行われることにより埋蔵量の見積り額は毎期変動することになります。報告された埋蔵量の変動は、当社及び連結子会社の経営成績及び財政状態に対して各種の影響を及ぼします。具体的には、
- 埋蔵量の変更に伴う将来キャッシュ・フローの見積りの変動により保有資産が減損する可能性があります。
- 生産高比例法の分母の変動または経済的耐用年数の変動に伴い、連結損益計算書上の当該事業に係る減価償却費が変動する可能性があります。
- 埋蔵量の見積りの変更が生産設備の廃棄や、原状回復義務、環境関係の資産除去債務の引当金の発生時期及び債務金額の増減に影響を与える可能性があります。
確定給付費用及び確定給付制度債務
・従業員の確定給付費用及び確定給付制度債務は、割引率などの年金数理計算上の基礎率に基づき見積られています。IFRSでは、実績と見積りとの差はその他の包括利益として認識後、即時に利益剰余金に振替えられるため、包括利益及び利益剰余金に影響を及ぼします。経営者は、この数理計算上の仮定を適切であると考えていますが、実績との差異や仮定の変動は将来の確定給付費用及び確定給付制度債務に影響します。
・当社及び連結子会社の割引率は、各年度の測定日における高格付けの固定利付社債の利回りに基づき決定しています。各測定日に決定した割引率は、測定日現在の確定給付制度債務及び翌年度の純期間費用を計算するために使用されます。
・確定給付費用及び確定給付制度債務に関する見積りや前提条件については連結財務諸表注記事項19.「従業員給付」をご参照ください。
気候変動による影響
・当社及び連結子会社において、気候変動の影響を受け、関連する資産・負債に金額的重要性があるのはエネルギーセグメントの事業であり、将来の状況が重要性のある影響を及ぼす可能性があります。当連結会計年度末における会計上の重要性がある見積り及び判断については以下のとおりです。
・エネルギーセグメントは、主に石油・ガス開発事業及びLNG事業から構成され、これらの事業は今後、低・脱炭素化の世界的潮流が強まる中で、将来的な制約・規制強化により石油・ガス及びLNGの需要が低下する場合は、既存案件から有形固定資産の減損、持分法適用会社に対する投資の減額、及びその他の投資の公正価値の低下等が生じる可能性があります。これらの評価は主に油価の影響を受け、同前提は、市況水準や複数の第三者機関の公表する中長期見通しを考慮して策定しています。第三者機関のうち、IEAの公表するシナリオについては、STEPS(Stated Policies Scenario)に重点を置いていますが、その他のシナリオも参考にしています。
・当連結会計年度末の連結財政状態計算書に計上したエネルギーセグメントにおける主要な資産及び負債の金額は以下のとおりです。
有形固定資産 |
778,685百万円 |
持分法適用会社に対する投資 |
650,685百万円 |
その他の投資 |
272,963百万円 |
引当金(非流動) |
142,032百万円 |
・なお、連結財務諸表における会計上の見積りは、各事業における固有の状況等を総合的に勘案して行っており、気候変動に関連するシナリオ分析のみによって資産及び負債の測定が決定されるものではありません。
当社において、事業上の依存度が著しく大きい、もしくは事業活動に著しい拘束を受ける契約や、ローンと社債に付される財務上の重要な特約、重要な資産の管理、処分に係る契約、当社のガバナンスや当社株式の処分・買い増しに関する合意といった経営上の重要な契約等はありません。なお、財務上の特約の詳細については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(5)流動性と資金調達の源泉③流動性の状況」をご参照ください。
特に記載すべき事項はありません。