第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社、連結子会社および持分法適用会社(以下「当社グループ」という。)が判断したものであり、将来生じうる実際の結果と大きく異なる可能性もあります。詳細は「3 事業等のリスク」を参照ください。

 

(1) 経営方針・経営戦略等

当社グループは、「人間尊重」と「三つの喜び」(買う喜び、売る喜び、創る喜び)を基本理念としています。「人間尊重」とは、自立した個性を尊重しあい、平等な関係に立ち、信頼し、持てる力を尽くすことで、共に喜びをわかちあうという理念であり、「三つの喜び」とは、この「人間尊重」に基づき、お客様の喜びを源として、企業活動に関わりをもつすべての人々と、共に喜びを実現していくという信念であります。

こうした基本理念に基づき、「わたしたちは、地球的視野に立ち、世界中の顧客の満足のために、質の高い商品を適正な価格で供給することに全力を尽くす」という社是を実践し、株主の皆様をはじめとするすべての人々と喜びを分かち合い、企業価値の向上に努めていきます。

当社グループは、モビリティカンパニーとして、「環境負荷ゼロ」「絶対安全」という大きな課題に真摯に向き合い、当社グループのめざす未来のモビリティや魅力的なモビリティ社会を、「環境・安全」という社会的価値を携えて実現することで、企業としての新たな成長軌道を描いていきたいと考えています。

こうした想いのもと、この大きな変革の時代を「第二の創業期」と位置づけてさまざまな取り組みを進めてきましたが、さらにスピードを上げ、Hondaで働くすべての仲間が共通の目的に向かって一丸となって取り組んでいくためには、「我々がめざす方向」、そして「提供価値」をより明確にしていく必要があると考え、グローバルブランドスローガンである「The Power of Dreams」の再定義を行いました。

 


 

<グローバルブランドスローガンの再定義>

当社グループがこれからも提供し続けたい価値は、「時間や空間の制約からの解放」と、「人のあらゆる可能性の拡張」です。この2つの価値を徹底的に追求し続けた先に、当社グループが夢見るこれからのモビリティと、魅力的なモビリティ社会があると考え、2つの提供価値を「Transcend」と「Augment」としました。

 

「Transcend(解放)」

モビリティを通じた「時間的制約」と「空間的制約」からの解放という大きな価値の創出をめざしていきます。

 

「Augment(拡張)」

さまざまなモビリティによって、「これまでできなかったことができるようになる」という、「人の可能性を拡張する」ことをめざしていきます。

 

そして、「これらの提供価値を生み出し、実現していくカギとなるのが一人ひとりの創造力」であり、全社一丸となって高い目標を掲げ、変化を恐れず、新しい価値を生み出していくための「Create(創造)」に取り組んでいきます。

 

モビリティカンパニーとして「物理的にひとを動かす」「ひとの心を動かす」(How we move       you.)ことで、「意志を持って動き出そうとしている世界中のすべての人を支えるパワー」となり、世の中から「存在を期待される企業」であり続けることをめざします。

 

 

(2) 経営環境

当社グループを取り巻く経営環境は、大きな転換期を迎えています。価値観の多様化や、高齢化の進展、都市化の加速、気候変動の深刻化、さらに電動化、自動運転化、IoTといった技術の進化による産業構造の変化が、グローバルレベルで進んでいます。また、ウクライナおよび中東などにおいて、国際情勢の見通しが不透明な状況が続くなど、地政学的リスクも顕在化しています。さらには、企業活動に関わるすべてのステークホルダーと、長期的な社会課題を解決するための、積極的な関係構築も求められています。将来の成長に向けては、提供価値の質の向上に取り組むことが不可欠です。

四輪事業においては、EV(電気自動車)市場に多種多様な製品が投入され、これまでHondaが強みとしてきたエンジン等のデバイス性能による差別化が難しくなっています。今後は、電動化の加速により、バッテリーに用いられるニッケル、リチウム、コバルトの需要が急拡大するとともに、鉱物など原材料の供給不足によるバッテリー価格の高騰が懸念されます。バッテリーをはじめとする部品調達のあらゆるリスクに備え、リサイクルやリユースなどの再資源化やサステナブルマテリアルの活用を推進することで、リソースサーキュレーションの実現をめざしていきます。

二輪事業は、若年人口が増加する新興国を中心に、今後も市場の拡大が見込まれます。また、先進国だけでなく新興国でも政府による電動化目標が設定されるなど、環境意識の高まりが顕在化しています。対応策としてモビリティの電動化が期待されていますが、その一方で、新興国の電動車需要は、政府のインセンティブによる影響が大きく、かつ電力の安定供給や充電ネットワークの整備など、インフラ面での課題が残ります。電動車へのシフトは、不透明な要素を踏まえ、ICE(内燃機関)車へのニーズが継続する市場、電動化が進む市場を見極めながらリソースを最適配分し、電動新興メーカーに対しては当社グループの強みを活かし差別化をはかっていきます。

パワープロダクツ事業及びその他の事業においては、環境規制の高まりを背景に、小型建機領域やガーデン領域で比較的「小型」で「短時間運転」の商品から電動化が進んでいます。その一方、ICE商品も「高出力・長時間運転」「お求めやすい価格」といった特徴が用途に見合うことから、需要が継続しています。そのため当社グループは電動化に主軸を置きながら、ICE領域についても環境対応を進化させることで、多様化する市場ニーズへ応える必要性を認識しています。

 

(3) 優先的に対処すべき課題

経営環境を踏まえ、持続可能性の観点から網羅的に抽出した社会課題を、当社グループがめざす方向性に照らしあわせ、優先的に対処すべき課題を選定しています。従来より経営の重要テーマとして掲げてきた「環境」と「安全」に加え、当社グループの成長の原動力である「人」と「技術」、またすべての企業活動の総和ともいえる「ブランド」の5つの非財務領域を重要テーマとして選定し、財務戦略と連携させることで社会的価値・経済的価値の創出を実現していきます。

 

5つの重要テーマ>

 環境負荷ゼロ社会の実現

当社グループは、環境負荷ゼロ社会の実現をめざします。「カーボンニュートラル」「クリーンエネルギー」「リソースサーキュレーション」、この3つを1つのコンセプトにまとめた「Triple Action to ZERO」を中心にして、取り組みます。

 

1.カーボンニュートラルの取り組み

四輪事業は中長期目標として、2030年にはグローバルで年間200万台を超えるEV生産体制を構築し、2040年までにEV・FCEV(燃料電池自動車)販売比率をグローバルで100%とすることをめざしています。

この実現に向けて、当社グループは、EVラインナップの拡大、複数のバッテリー調達手法の確立、充電サービスの拡大、ソフトウェア開発の加速、グローバルHondaにおける電動車生産体制の構築に取り組んでいきます。

 

(EVラインナップの展開)

地域

投入商品

北米

・2024年にゼネラルモーターズ(GM)との共同開発モデルである「PROLOGUE」をHondaから、「ZDX」をAcuraからそれぞれ発売

・2025年にHonda独自のEV専用プラットフォームをベースとした、新たなE&Eアーキテクチャーを採用した中大型EVを発売予定

・「Honda 0シリーズ」の第1弾となるモデルを、2026年より北米市場を皮切りに、グローバル各地域にて発売予定

中国

・「e:NS2」「e:NP2」を2024年初頭に発売

・2024年4月に北京モーターショーで公開した中国における次世代EV「イエ」シリー

ズから「イエP7」「イエS7」を2024年末以降に発売予定

加えて、「イエGT CONCEPT」をベースとした量産モデルを2025年内に発売予定

・上記5モデルを含め、2027年までに10機種のEVを投入予定

日本

・2024年秋に「N-VAN」ベースの軽商用EV「N-VAN e:」を発売予定

・2025年に「N-ONE」ベースのEV、2026年にSUVタイプを含む小型EV2機種を発売予定

欧州

・「e:N」シリーズの欧州市場向けモデルとして「e:Ny1」を2023年秋から欧州各国にて発売

 

 

(バッテリー戦略)

バッテリーについては、足元から将来まで複数のバッテリー調達手法を準備し、電動化の加速に対応していきます。新たなバリューチェーンを構築するため、北米ではLGエナジーソリューションとの合弁会社で2025年からバッテリーの量産を開始予定です。重要鉱物の調達については、阪和興業㈱やPOSCOホールディングスと、リサイクル観点ではアセンド・エレメンツやサーバ・ソリューションズとパートナーシップを締結しています。2020年代後半からは、液体リチウムイオン電池の進化に加え、半固体電池・全固体電池などの次世代電池を開発・投入していきます。液体リチウムイオン電池の性能進化に向けては、㈱GSユアサと高容量・高出力なEV用液体リチウムイオン電池の開発に着手し、日本国内における電動化の加速に貢献していきます。また、次世代電池の技術進化に向けて、半固体電池については、SES AI コーポレーションへの出資を通じて、安全で高い耐久性を持つ大容量バッテリーの実現をめざし、共同開発を推進していきます。全固体電池については、2024年に栃木県さくら市での実証ラインを立ち上げ、2020年代後半の市場投入をめざし、取り組みを加速させていきます。

 

(充電・インフラ戦略)

EVの拡充にあわせた充電サービスの拡大に取り組んでいます。公共充電については、北米でのEVの普及加速をめざし、Hondaの米国現地法人であるアメリカンホンダモーターカンパニー・インコーポレーテッドと、BMWグループ、ゼネラルモーターズ(GM)、ヒョンデ、キア、メルセデス・ベンツグループ、ステランティスN.V.の計7社が、米国とカナダでEV用高出力充電網を新たに構築する合弁会社の設立に合意しました。同社は、2024年夏に米国で初となる充電ステーションの開設を計画しており、大都市圏や主要幹線道路沿いから順次充電網を拡大していきます。家庭充電は、北米ですでに展開しているEV向け充電サービス「Honda Smart Charge」をベースとし、EVの電力供給能力を活用したスマートエネルギーサービスを順次、展開予定です。

 

(ソフトウェア戦略)

ソフトウェアがハードウェアやサービスの価値を定義する「ソフトウェアデファインドモビリティ」の発想に基づき、ソフトウェアの開発を加速させます。具体的には2025年に北米で投入する中大型EVからの採用をめざして、E&Eアーキテクチャーをさらに進化させるとともに、Honda独自のビークルOSの開発を進めています。このビークルOSを基盤として、車載ソフトウェアを常に進化させることで、車両販売後も機能やサービスを進化させていきます。また、EVと親和性の高いデジタルサービスを、安心・快適・信頼をベースとしつつ、一元管理で分かりやすい充電案内などUX起点の魅力的なサービスとしてスピーディに提供していきます。

 

(EV生産体制)

世界的な電動化加速に伴い、グローバルHondaにおける電動車生産体制の構築を推進しています。北米では、米国オハイオ州内の3つの既存工場(四輪車を生産するメアリズビル工場とイーストリバティ工場、四輪車用パワートレインを生産するアンナ・エンジン工場)をEV生産のハブ拠点と位置づけ、既存工場を活用しながら、高効率かつフレキシビリティの高いEV生産ラインを構築しています。

なお、上記のようなカーボンニュートラルの取り組みおよび後記「② 交通事故ゼロ社会の実現」に向けた取り組みをさらに加速するためには、環境対応技術・電動化技術・ソフトウェア開発などの領域に関する強化が不可欠となります。そこで、当社は、2024年3月15日に日産自動車株式会社との間で自動車の電動化・知能化に向けて戦略的パートナーシップの検討を開始する覚書を締結しました。これを受け、当社グループでは、同社との間で、自動車車載ソフトウェアプラットフォーム、バッテリーEVに関するコアコンポーネントおよび商品の相互補完を含む幅広いスコープで提携の検討を進めています。

さらに、バッテリー戦略とEV生産体制においては、2024年4月に、北米での将来的なEV需要の増加に向けたEV供給体制の強化をはかるため、EVの包括的バリューチェーンをカナダに構築することをめざし、本格的な検討を開始することを発表しました。このバリューチェーンの内容には、EV専用の完成車工場・EV用バッテリー工場の建設に加え、パートナー企業との合弁会社設立による、セパレーターや正極材といったバッテリーの主要部材のカナダ国内での生産体制の確立を含んでいます。

今後も、共同開発や合弁などの手法を用いながら様々な領域での提携を進めバッテリー戦略、充電・インフラ戦略、ソフトウェア戦略、EV生産体制の構築を進めていきます。

 

二輪事業においては、当社グループの二輪車は世界中のお客様の「移動のニーズ」に対応し、多くの人々に利用されています。これまでICE車のプラットフォーム展開で培った競争力あるものづくりの技術とノウハウを活かし、各国のお客様のニーズに適応する電動二輪プラットフォームを順次開発していきます。高効率なものづくりにより、電動車においてもICE車同様に「移動の喜び」を適切な価格でお届けすることで、グローバルでの二輪車の電動化を牽引していきます。2026年には電動二輪車をグローバルで合計10モデル以上投入し、販売台数年間100万台をめざします。2030年にはラインナップをさらに拡充し、400万台の販売をめざします。

この実現に向けては、当社グループの強みである、商品のフルラインナップ展開、開発・生産・調達能力、「走る・曲がる・止まる」の基本性能に加えたコネクティビティの進化、3万店の販売網を活用したオフライン・オンライン融合の顧客接点を活かして取り組んでいきます。

 

(商品のフルラインナップ展開)

当社グループは、2030年までにスーパースポーツ、オフロード、Kids向けバイク、ATVなど合計30機種以上を積極的に投入し、電動二輪車のフルラインナップ化への取り組みを加速させていきます。またお客様がそれぞれの環境にあわせて選択できるよう、バッテリー交換式と固定バッテリーによるプラグイン充電の2つの方式を用意して幅広い需要に応えていきます。

 

(開発・生産・調達戦略)

電動二輪車の開発においては、モジュールプラットフォームという形で、バッテリー、パワーユニット、車体をそれぞれモジュール化し、これらを組み合わせることで、多様なバリエーション展開が可能になります。これによりグローバルのさまざまな顧客ニーズに対応できる商品を、スピーディに、かつ、効率よく市場に投入していきます。生産については、まずは既存のICE用インフラを活用しますが、2030年の販売台数400万台の実現に向けた盤石な体制構築と一層の競争力を確保すべく、2027年以降をめどに、電動二輪車専用生産工場をグローバルで順次稼働させます。調達については、これまで完成部品で調達していたものを、材料、加工、組み立て、物流などの各工程を見直すことで、より競争力のある体制にしていきます。

 

(ソフトウェア戦略)

電動二輪車で大きく進化する装備の一つに、コネクティビティがあります。これにより購入後もOTAなどを通じてソフトウェアの機能追加などのアップデートを行うことが可能となります。将来的には、ICE搭載車と電動二輪車の双方から得られるデータを活用し、車両の利用状況から顧客のニーズを理解することで、新しい発見や安全性を高める機能など、当社グループならではの体験を提供していきます。

 

(オフライン・オンライン融合の顧客接点)

電動二輪事業では、店舗に行くことなく二輪車を購入できるオンライン販売を行い、お客様の利便性を向上させていくとともに、グローバルで3万店を超える当社グループの既存の販売網のサービスによる安心感も提供していきます。既存の販売店の強みに加え、オンラインサービスの強化で、これまで以上に、お客様により便利で安心感のあるオンオフ融合の顧客接点を提供していきます。

また、電動化に限ることなくICE領域での燃費向上、バイオエタノール燃料の対応技術など、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを、地域特性に合わせながら一層加速させていきます。

 

パワープロダクツ事業の電動商品の展開においては、小型建機領域とガーデン領域の電動化に注力し進めていきます。また、二輪事業で発売した交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」をパワープロダクツ事業へも拡大していきます。小型建機領域では、基幹事業で培ったBtoBの顧客基盤を活かした電動化を推進していきます。電動パワーユニット「eGX」の販売と搭載支援を通じ、完成機メーカーの電動化を後押しします。また、既存顧客のみならず、今後電動化が期待される領域での製品搭載の拡大を推進していきます。ガーデン領域では、歩行芝刈機の「きれいに刈れる」「耐久性」といった強みを武器に培った高いプレゼンスがあります。今後は、外部協業先とのパートナーシップも視野に、効率の良い開発・生産スキームで電動化を加速させていきます。マリン領域でも、今後、湖沼等でのICE製品の使用に関する規制が想定されるため、小型船舶用の電動推進機の実証実験を開始するなど、電動化に向けた取り組みを行っていきます。

国や地域によって多様化するニーズに柔軟に対応しながら、ICE製品の投入市場を見極め、二輪事業とのシナジーを活かし、部品の共用化や生産・調達体制の最適化など開発・生産領域における効率的なオペレーションを追求していきます。これを通じて、生産領域においても、商品魅力を向上させて、電動化に向けた事業体質の強化をはかります。同時に燃費改善、カーボンニュートラル燃料対応技術といった環境性能を高めることで、さらなる競争力の高い商品・サービスの展開をめざしていきます。

 

2.「クリーンエネルギー」3「リソースサーキュレーション」の詳細については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」を参照ください。

 

 

② 交通事故ゼロ社会の実現

当社グループは、2050年に全世界で、当社グループの二輪車、四輪車が関与する交通事故死者ゼロをめざしています。また、そのマイルストーンとして2030年に全世界で当社グループの二輪車、四輪車が関与する交通事故死者の半減をめざしています。これらは、新車だけでなく、市場に現存するすべての二輪車、四輪車が対象となります。

 


 

詳細については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」を参照ください。

 

③ 人的資本経営の進化

当社グループの人的資本経営の取り組みとして、事業戦略と人材戦略の連動をはかるため、人領域において集中的に取り組むべき課題を「人材マテリアリティ」として定義しています。人材マテリアリティの定義にあたっては、全社重要テーマである「人的資本経営の進化」において中長期的に取り組むべき観点と、事業戦略に資するための短中期的観点の両面で、集中的に取り組むべき方向性を全社での議論を経て定めています。

そして、人材マテリアリティが達成された状態を測る指標として経営管理指標(KGI)とその目標値を定め、この目標値を達成するための人材戦略・施策・施策KPIを一連のストーリーとして定義しています。KGIおよび関連する施策KPIは経営管理の枠組みで定期的にモニタリングされ、必要に応じて指標・目標値の見直しや施策の修正・追加などを行い、PDCAサイクルを実行していきます。

 


 

詳細については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3) 人的資本(人材の多様性を含む。)に関する戦略並びに指標及び目標」を参照ください。

 

④ 独創的な技術の創出

めざす提供価値として定めた「Transcend」・「Augment」の実現に向け、「コア技術の創出こそが将来にわたるサステナブルな事業基盤や競争力を生む源泉になる」という考え方に立脚し、イノベーションマネジメントの強化に取り組んでいます。研究子会社である㈱本田技術研究所は、2019年から2020年にかけて二輪・四輪・パワープロダクツ事業における商品開発機能を本田技研工業㈱へ移管し、より長期的な視点での価値創造に向けた基礎技術の研究に専念できる体制へと再編しました。モビリティの価値のさらなる拡張に向けて、先進技術研究、パワーユニット研究、材料研究などの領域への資源投入を強化するとともに、新たなモビリティやロボット、水素活用をはじめとする次世代エネルギー、バッテリー、知能化/AI、サステナブルマテリアルなどのさまざまな技術ドメインを定め、各領域のエキスパートが新価値の創出に向けた技術開発をリードしています。また国内だけでなく、世界中のさまざまな研究機関と共同研究を行うことで、グローバルでの知の探究と結集をはかっています。

このような体制のもと、それぞれの技術ドメインにおいて生み出された新たな技術を応用し、空、海洋、宇宙など、さまざまなフィールドにおいて新しい価値をお届けできる魅力的な次世代モビリティの開発を進めています。具体的には「eVTOL」、「アバターロボット」、さらには宇宙領域へのチャレンジといった幅広い領域で新価値の創出に取り組んでおり、燃焼・電動・制御・ロボティクス技術などの当社グループが培ってきたコア技術を活用することで、「人々の生活の可能性を拡げる喜び」の実現をめざしています。

 

⑤ ブランド価値の向上

Hondaのブランドは、創業時から現在に至るまで、お客様とともに歩み続けたあらゆる企業活動の積み重ねによって形作られてきました。75年の歴史によって紡がれたHondaブランドをさらに輝かせ、将来に亘ってその価値を高めていくことは、当社グループにとって極めて重要な課題の一つであると認識しています。

この大きな変革期において、当社グループが創造する価値を世界中のお客様に明確に示すとともに、全ての従業員が共通の目的に向かって一丸となって取り組むことをめざし、グローバルブランドスローガンである「The Power of Dreams」の再定義を行いました。これを単なる「言葉」に留めることなく、商品・サービスを含めた全ての企業活動へ反映し、一貫性のある「実践」へと繋げていくことが、さらに進化したHondaブランドを創り上げていくと考えています。このような考え方を踏まえ、再定義したグローバルブランドスローガンを当社グループのブランドマネジメントの起点と位置づけ、その根底に流れる信念をさまざまなブランドアセットへと投影することで、一貫したブランディングの支柱を形成していきます。社内外において、揺らぐことのない共通の基軸に基づくブランディングを展開することで、当社グループで働くすべての仲間の「夢」を原動力とした創造性の発揮を後押しするとともに、ステークホルダーの皆様から共感いただける魅力的なブランドの確立をめざしてまいります。

 

 

<財務戦略

⑥ 経済的価値の向上

当社グループを取り巻く環境が大きく変化するとともに、地政学的リスクをはじめとした事業リスクが多様化する中、企業価値の向上に向けては、財務・非財務資本を活用し、キャッシュ・フローの持続的な成長と資本効率の向上を実現する必要があります。この実現に向けては、「事業変革のフェーズごとにめざす目標を明確に定め、戦略的な資源配分を実行すること」「資本コストを意識した経営の強化などガバナンスの強化とリスクマネジメントを適切に行うこと」「ステークホルダーと積極的な対話を行いながら、経営の質と透明性を高めること」が重要なミッションであると考えています。

 


 

1.事業変革フェーズに応じた戦略的な資源配分

~2025年:「ICE製品事業の体質強化とEV事業への資源投入」フェーズ

事業ポートフォリオの変革に必要なEV事業への資源投入を行うとともに、ICE製品事業の体質強化とEV事業への資源投入に注力し全社ROS(売上高営業利益率)7%以上をめざします。また、これまで取り組んできた四輪事業体質の強化により強固な財務基盤を築いた上で、EV事業への資源投入を着実に実行していきます。

 

~2030年:「ICE製品からEVへの事業転換」フェーズ

EV事業の成長につながる戦略的な投資を加速させるとともに、EVのラインナップを二輪と四輪を中心に拡充し、市場での競争力を強化していきます。一時的な先行投資の影響はありますが、さらにICE事業のキャッシュ創出力を高め、変革に向けた資源投入を支えると同時に、資本コストを上回るROIC(投下資本利益率)(注1)を維持し、2030年度には、全社ROICは10%以上をめざします。

 

(注) 1 (親会社の所有者に帰属する当期利益+支払利息(金融事業を除く事業会社))÷投下資本(注2)

        2 親会社の所有者に帰属する持分+有利子負債(金融事業を除く事業会社)、期首期末平均により算出しています。

 

なお、市場動向を見極めながら投資タイミングは柔軟に変更するものの、2030年にEV200万台生産体制の構築に向けて、2021年度からの10年間で、設備投資と研究開発費などで合わせて10兆円の資源投入を計画しています。

 

2030年代:「EV事業の成長と新たな価値の創造」フェーズ

2040年にEV・FCEVの販売比率100%をめざし、キャッシュ・フローの持続的な成長を実現します。新たな価値創造の実現に向けては、カーボンニュートラル技術を中心とした基礎研究領域に、年間1,000億円レベルの研究予算を今後も安定的に資源配分していきます。

 

なお、成果の配分については、株主の皆様に対する利益還元を、経営の最重要課題の一つとして位置づけており、長期的な視点に立ち将来成長に向けた内部留保資金や連結業績などを考慮しながら決定していきます。配当は、連結配当性向30%を目安に、変革に向けた資源投入を加速させながらも、当社グループの強みを活かしたキャッシュ創出力を原資に安定的・継続的な配当に努めます。また、資本効率の向上および機動的な資本政策の実施などを目的として、自己株式の取得も適宜実施していきます。

 


 

2.ガバナンスの強化とリスクマネジメント

大きな変革の時代において、環境変化に柔軟かつ適切に対応し企業価値の向上を実現するために、資本コストを意識した経営の浸透をはかりガバナンスを強化していきます。具体的にはROICツリーを活用し、現場のアクションと全社目標を有機的に結び付け、ROICの分子である利益を最大化するとともに、保有する資産の効率的な活用や必要投資の見極めを通じて分母の投下資本を最適化することで資本効率を向上させます。金融サービス事業については、負債による資金調達を基本とするため、ROE(自己資本利益率)を活用することで収益性と健全性のバランスをはかりながら、資本効率を最大化し、変革を支えていきます。

 


 

3.ステークホルダーとの積極的な対話

企業価値の向上には、キャッシュ・フローの持続的成長と資本効率の向上に向けたロードマップを発信するとともに、当社グループの将来性が資本市場に浸透することが重要と考えています。そのためには、株主や投資家をはじめとしたステークホルダーに、経営の方向性が正しく理解され評価いただけるよう、経営陣が主体となり、イベントや個別面談等を通じて、これまで以上に対話を積極的に行っていきます。また、対話を通じて資本市場が求めていることや関心のあることを経営陣が直接把握し、これをステークホルダーからの貴重なフィードバックとして経営に活かしながら、さらなる企業価値の向上へつなげていきます。

 

以上のような企業活動全体を通した取り組みを行い、株主、投資家、お客様をはじめ、広く社会から「存在を期待される企業」となることをめざしていく所存でございます。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来生じうる実際の結果と大きく異なる可能性もあります。詳細は「3 事業等のリスク」を参照ください。

 

(1) ガバナンス及びリスク管理

① ガバナンス

当社グループは、「基本理念」、「社是」および「運営方針」の3つから構成されている「Hondaフィロソフィー」に根ざした企業活動を推進しています。

当社グループでは、長期経営方針や中期経営計画は経営会議(議長:取締役 代表執行役社長 最高経営責任者)や取締役会で承認・決議しています。気候変動問題への対応を含む最終的な監督機関は取締役会であり、経営会議では取締役会の決議事項等について事前審議を行うとともに、取締役会から委譲された権限の範囲内で、経営の重要事項について審議しています。

また、事業活動に伴う様々なリスクへ対応し、社会と当社グループの永続的な発展に向けた事業運営の監督を行う必要性から、気候変動問題への対応を含む「ESG・サステナビリティ」を必要スキルの一つとして定め、取締役を選任しています。

各本部・統括部や各子会社では、全社の長期経営方針や中期経営計画に基づき、実行計画・施策を企画・推進し、重要事項については経営会議で適宜、報告・承認されています。「環境」「安全」「人材」「人権」「労働安全衛生」「品質」「サプライチェーン(購買・物流)」などの各領域では、会議体を設け、情報共有や議論などを通じてグローバルマネジメントを推進しています。また、気候変動問題への対応など、部門をまたぐ重要課題については経営メンバーが直接指揮を執る「部門横断タスクフォース」を組成し、実行計画・施策の検討提案を適宜行い、重要事項については経営会議で報告・承認されています。また、各領域に関するコンプライアンスやリスク管理については、当社の内部統制システム整備の基本方針に基づいて運用されています。

これまでは、内外環境認識を踏まえた全社の方向性と、コーポレートとして取り組むべき重要課題を合意することを目的として設定された「コーポレート統合戦略会議」にて、サステナビリティ課題への方針や取り組みの議論・検討を行ってきました。また、環境安全領域の推進強化として、「世界環境安全戦略会議」を設定していました。

2023年度には、全社目標であるKGI(監督側指標)およびKPI(執行側指標)を明確にし、スピーディに提供価値へと結び付けることのできる企業運営をめざして、経営オペレーションの高度化を行いました。各本部・統括部、各子会社および「部門横断タスクフォース」にて、実行計画・施策の検討提案を適宜行い、重要事項については経営会議で報告・承認する体制としました。これに伴い、年1回を基本に開催していた「コーポレート統合戦略会議」および「世界環境安全戦略会議」は発展的解消をしました。

取締役会が監督責任を有するKGIや経営会議が執行責任を有するKPIは、取締役会や経営会議が進捗を定期的にモニタリングすることで、経営ガバナンスの強化をはかっています。財務指標および非財務指標に連動した役員報酬制度については「4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (4) 役員の報酬等」を参照ください。

 


 

 

② リスク管理

Hondaグローバルリスクマネジメント規程」を制定し、リスクを能動的にコントロールすることで、「持続的成長」や「経営の安定化」につながる活動を行っています。

リスクマネジメントオフィサー監視、監督のもと、当社グループの有形・無形の資産、企業活動、ステークホルダーに重大な被害・損失を与え、企業経営に影響をもたらす可能性があるものと定義したリスクを分類・管理・対応しています。各組織でリスクの特定・評価を実施し、その評価結果をもとに各本部のリスクマネジメントオフィサーが「本部重点リスク」を特定しています。

また、社内のリスク認識に加え社外のリスクトレンドも反映し、コーポレートとして重要なリスクを「全社重点リスク」として特定し、対応状況の確認・議論を行っています。リスクマネジメントに関する重要事項については、リスクマネジメント委員会で審議しており、実施内容については経営会議で適宜報告されています。

 

(2) 重要な戦略並びに指標及び目標

① 戦略

当社グループは、我々のめざす未来のモビリティや魅力的なモビリティ社会を、「環境・安全」という社会的価値を携えて実現することで、企業としての新たな成長軌道を描いていきたいと考えています。

 

<環境戦略>

当社グループは、環境負荷ゼロ社会の実現をめざします。「カーボンニュートラル」「クリーンエネルギー」「リソースサーキュレーション」、この3つを1つのコンセプトにまとめた「Triple Action to ZERO」を中心にして、取り組みます。また、この3つは密接に関連しており、単独で推進するのではなくそれぞれの連鎖を考慮しシナジー効果の最大化をめざしています。

 

カーボンニュートラル(二酸化炭素排出量実質ゼロ)

「気候変動問題」への対応として、産業革命以前と比較した地球の平均気温上昇を1.5℃に抑えるため、企業活動および製品ライフサイクルから排出されるCO2の排出量実質ゼロをめざします。

企業活動のCO2排出総量削減に向けて、生産効率向上、省エネルギー施策の導入、低炭素エネルギーへの転換、再生可能エネルギーの活用を推進していきます。製品領域のCO2排出量削減に向けては、電動化をはじめとするカーボンニュートラルに向けた環境革新技術の投入やエネルギーの多様化対応、トータルエネルギーマネジメントの取り組みを推進していきます。

 

クリーンエネルギー(カーボンフリーエネルギー活用率 100%)

「エネルギー問題」への対応として、企業活動および製品使用において使用されるエネルギーをすべてクリーンなエネルギーにすることをめざします。

四輪車の主要生産拠点である埼玉製作所完成車工場では、CO2削減技術の構築と、再生可能エネルギー等を活用したクリーンエネルギー化を実施し、2025年度にカーボンニュートラル工場の実現をめざしています。またこれらをグローバルに展開するにあたり、事業所間、地域間での情報共有を促進する仕組みを構築しています。

 

リソースサーキュレーション(サステナブルマテリアル使用率 100%)

「資源の効率利用」への対応として、環境負荷のない持続可能な資源(サステナブルマテリアル)を使用した製品開発や仕組みづくりに挑戦します。企業活動領域においては、2050年に工業用取水と工業系廃棄物ゼロをめざします。

積極的にリサイクル資源を活用しながら、重要鉱物などを含む材料調達の安定化をはかるとともに、先進リサイクル技術の研究や循環バリューチェーン構築の働きかけを通じて、CO2の削減とエネルギー消費の抑制にも貢献し、循環型経済につながるような取り組みを続けていきます。

 

 

<安全戦略>

当社グループは、交通事故死者ゼロの実現に向けて、人の能力(啓発活動)、モビリティの性能(技術開発)、交通エコシステム(他者との協働やシステム/サービス開発)の3つの要素を個別に進化させるとともにそれぞれを組み合わせることで、様々な要因により引き起こされる事故に対応します。

今後、2030年に向けた大きな課題は、新興国で二輪車が関与する死亡事故です。当社グループは、幅広い方々を対象とした啓発活動とともに二輪車へ「ABS」(注1)「CBS」(注2)などの先進ブレーキ、視認性および被視認性の高い灯火器などの装備を搭載しています。また四輪車については、新興国、先進国での事故低減に有効な先進運転支援システム(ADAS)の機能進化と普及を積極的に推し進めています。

そして、その先にある2050年に向けた大きな課題は、全世界における、歩行者や自転車に乗る人、ライダーなどの交通弱者の死亡事故です。この課題対応にあたっては、すべての交通参加者である人とモビリティが通信でつながることで、事故が起きる手前でリスクの予兆・回避をサポートする「安全・安心ネットワーク技術」の研究開発などを推し進め、当社グループの二輪車、四輪車が関与する交通事故死者ゼロをめざします。

 

(注) 1 アンチロックブレーキシステム

2 コンバインドブレーキシステム

 

 

② 指標及び目標

 <環境戦略>

当社グループは、「環境負荷ゼロ」社会の実現に向けて、「Triple Action to ZERO」を実行していきます。指標目標については、以下のとおりです。

 

2030年目標

2050年めざす姿

企業活動CO2排出総量削減率 (2019年度比)

46%

CO2排出実質ゼロ

電動製品販売比率

二輪車

15%

四輪車

30%

パワープロダクツ

36%

製品CO2排出原単位削減率 (2019年度比)

二輪車

34.0%

四輪車

27.2%

パワープロダクツ

28.2%

企業活動 廃棄物等総量削減率 (BAU(注)比)

14.5%

工業系廃棄物ゼロ

企業活動 取水総量削減率

(BAU(注)比)

14.5%

工業用取水ゼロ

 

(注) 2030年生産計画を基に、削減に向けた対策・施策を行なわないと仮定した場合の推計値(Business as Usual)

 

<安全戦略>

当社グループは、2050年に全世界で、当社グループの二輪車、四輪車が関与する交通事故死者ゼロをめざします。また、そのマイルストーンとして2030年に全世界で当社グループの二輪車、四輪車が関与する交通事故死者の半減(注1)をめざします。これらは新車だけでなく市場に現存するすべての二輪車、四輪車が対象となります。

2030年のマイルストーンの実現に向けて、四輪車の先進運転支援システム(ADAS)の機能進化と普及が重要となります。事故の回避、または被害軽減をさらに拡大する全方位安全運転支援システム「Honda SENSING 360」は、2030年までに先進国の全機種展開をめざします。二輪車の交通事故死者削減に向けては、四輪車の二輪検知機能を備えた「Honda SENSING」、二輪車の先進ブレーキ(ABS/CBS)を新興国含め順次展開を進めています。

 

2030年目標

先進安全装備適用率

先進国 四輪車(注2) 

Honda SENSING 360

100%

新興国 四輪車(注3)

Honda SENSING

100%

新興国 二輪車(注4)

先進ブレーキ(ABS/CBS)

100%

 

 

(注) 1 2020年比で2030年に全世界で当社グループの二輪車、四輪車が関与する1万台当たりの交通事故死者数を半減。

2 日本、米国、中国、欧州

3 代表測定国:インド、インドネシア、マレーシア、タイ、ブラジル

4 代表測定国:インド、インドネシア、ベトナム、タイ、ブラジル

 

 

(3) 人的資本(人材の多様性を含む。)に関する戦略並びに指標及び目標

① 戦略

<当社グループの人的資本経営をストーリーで定義>

当社グループの人的資本経営の取り組みとして、事業戦略と人材戦略の連動をはかるため、人領域において集中的に取り組むべき課題を「人材マテリアリティ」として定義しています。人材マテリアリティの定義にあたっては、全社重要テーマである「人的資本経営の進化」において中長期的に取り組むべき観点と、事業戦略に資するための短中期的観点の両面で、集中的に取り組むべき方向性を全社での議論を経て定めています。

そして、人材マテリアリティが達成された状態を測る指標として経営管理指標(KGI)とその目標値を定め、この目標値を達成するための人材戦略・施策・施策KPIを一連のストーリーとして定義しています。経営管理指標(KGI)および関連する施策KPIは経営管理の枠組みで定期的にモニタリングされ、必要に応じて指標・目標値の見直しや施策の修正・追加などを行い、PDCAサイクルを実行していきます。

 


 

<当社グループの人材戦略>

「人的資本の最大有効活用による企業競争力向上と事業構造改革」をめざした人材戦略を展開しています。

 

1.(中長期的観点)従業員の内発的動機の喚起と多様な個の融合

企業競争力の根源となる当社グループの価値観を大切にしながら、プロ人材育成・実践を促す場・仕組みの整備、キャリア・働き方の多様化を実施します。そして、「夢」へ挑戦するヒト・組織を強化していきます。

 

2.(短中期的観点)事業上の重点領域の人材の量的・質的充足

事業の構造改革を人の領域から推進するために、特に重点領域における量的・質的な充足を目標とした人材獲得・リソースシフトに向けた取り組みを進めていきます。さらにリソースシフト実現のため、重点領域へのリスキル・アドスキルを目的とした積極的な人材投資を実行していきます。

 

 

② 指標及び目標

<人材戦略達成のための経営管理指標(KGI)および目標の設定>

1.(中長期的観点)従業員の内発的動機の喚起と多様な個の融合

(高い意欲・目標(夢への挑戦)をもって臨み、上位者が挑戦を支援する)

「当社グループで働く一人ひとりの夢」を原動力としてお客様に価値を提供するために、共通思想としてのグローバルブランドスローガンを深く認知、理解し、行動として実践することを改めて重要取り組みとして徹底していきます。高い意欲・夢への挑戦の実践度を測るために、エンゲージメントサーベイの設問を新設し、エンゲージメントスコアの算出についても、達成したい状況をより明確に表せる方法に変更しています。あわせて、一人ひとりの夢への挑戦には、組織の上位者が積極的に支援することが不可欠だと考え、エンゲージメントサーベイの設問に反映しています。

 

(多様な知の融合によるシナジーの発揮)

多様性の取り組みにおける最終ゴールは多様性を活かし新たなビジネスを生み出すことだと考えています。特に女性活躍の推進は待ったなしの課題であると認識し、ビジネス環境の変化の時こそ女性活躍の場が広がるチャンスだと捉え、継続したアプローチを行っていきます。グローバルで俯瞰すると女性の活躍機会に課題があるのは日本と捉えています。課題と捉えている日本の女性管理職比率を指標としています。また、グローバルでのダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの取り組みもあわせて展開していきます。

 


(注) 実績としては目標へ向けて推進中

   対象範囲は国内労働協約適用会社

 

2.(短中期的観点)事業上の重点領域の人材の量的・質的充足

(重点領域の人材充足を実現する人材獲得・リソースシフト)

事業の成功に資するため、事業ポートフォリオと連動した量的・質的な人材充足を推進し、事業計画の見直しを含めた充足提案を行います。

 

(重点領域への積極的な人材投資)

重点領域であるソフトウェアのスキル獲得のために、これまで以上に人材投資を推し進めていきます。全社共通のリスキルプログラムに加えて、本領域での新価値を生み出すため、専門能力を強化するプログラムを大幅に拡大します。

 


(注) 対象範囲は国内労働協約適用会社

 

 

(4) 気候変動対応 (TCFDに基づく気候関連財務情報開示)

当社グループは「気候変動・エネルギー問題への対応」を環境分野における最重要課題の一つと考え、2021年4月に「2050年に、当社グループの関わるすべての製品と企業活動を通じ、カーボンニュートラルをめざすこと」を表明しました。当社グループは金融安定理事会(FSB:Financial Stability Board)により設置されたTCFD(Task Force on Climaterelated Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)に賛同しており、TCFDが提言する情報開示フレームワークに沿った開示を行っています。

 

① ガバナンス

当社グループは、ライフサイクルでの「環境負荷ゼロ社会の実現」に向けた取り組みをグループ全体で推進しています。

当社グループは、長期経営方針や中期経営計画は経営会議(議長:取締役 代表執行役社長 最高経営責任者)や取締役会で承認・決議しています。気候変動問題への対応を含む最終的な監督機関は取締役会であり、経営会議では取締役会の決議事項等について事前審議を行うとともに、取締役会から委譲された権限の範囲内で、経営の重要事項について審議しています。

また、事業活動に伴う様々なリスクへ対応し、社会と当社グループの永続的な発展に向けた事業運営の監督を行う必要性から、気候変動問題への対応を含む「ESG・サステナビリティ」を必要スキルの一つとして定め、取締役を選任しています。

各本部・統括部や各子会社は、全社の長期経営方針や中期経営計画に基づき、実行計画・施策を企画・推進し、重要事項については経営会議で適宜、報告・承認されています。各事業本部や各地域本部では、「グローバル環境事務局会合(事務局:コーポレート戦略本部)」で共有される情報をもとに、グローバルの中長期環境方針を踏まえ、実行計画を策定し、施策を推進しています。各地域本部では、「地域環境会議」を開催し、地域本部内でのPDCAを推進しています。各事業本部では、地域の進捗状況をモニタリングし、事業本部内でのPDCAを推進しています。コーポレート戦略本部では各事業本部や各地域本部での進捗状況をモニタリングし、必要に応じて中長期環境方針や目標の見直しを検討します。なお、重要事項は経営会議にて報告・承認され、取締役会にて報告・決議されています。また、気候変動問題への対応など、部門をまたぐ重要課題については「部門横断タスクフォース」を組成し、実行計画・施策の検討提案を適宜行い、重要事項については経営会議で報告・承認されています。

気候変動を含む環境に関するコンプライアンスやリスク管理については、当社の内部統制システム整備の基本方針に基づいて運用されています。

当社グループでは「環境負荷ゼロ社会の実現」に向けて、取締役会が監督責任を有するKGIや経営会議が執行責任を有するKPIは、取締役会や経営会議が進捗を定期的にモニタリングすることで、経営ガバナンスの強化をはかっています。財務指標および非財務指標に連動した役員報酬制度については「4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (4) 役員の報酬等」を参照ください。

 


 

② リスク管理

当社グループでは、「リスクマネジメント委員会」において事業運営上重要なリスクを「全社重点リスク」として特定し、対応状況の確認・議論などを行っています。

気候変動関連リスクである、気候変動に起因する環境規制に関わるリスクや自然災害等リスクについてもこの管理・監視項目の中で把握し、組織特性を踏まえたより効果的なリスクマネジメント活動の展開をはかっています。

コーポレート戦略本部では、全社重点リスク等の社内のリスク認識に加え、社外のリスクトレンドも反映のうえ、TCFD提言に基づいたシナリオ分析を行い、気候変動関連リスクを評価・特定しています。気候変動関連リスクに関するシナリオ分析の結果は、リスクマネジメント委員会へ共有しています。

気候変動関連リスクへの対応は、コーポレート戦略本部、事業本部、地域本部を中心に、各本部・統括部、各子会社および「部門横断タスクフォース」で推進しています。

気候変動関連リスクへの対応を含むリスクマネジメントに関する重要事項については、リスクマネジメント委員会で審議しており、実施内容については経営会議で適宜報告されています。

リスクマネジメント活動におけるリスク評価・管理プロセスについては「(1) ガバナンス及びリスク管理」を参照ください。

 

③ 戦略

当社グループでは、より持続可能な企業経営実現のために、気候変動に対するリスク・機会を特定し、当社グループの全社戦略へ反映するとともに、技術・製品・サービスの進化により、新たな事業機会を創出することができるよう対応することで、企業としてのレジリエンスを高める取り組みを進めていきます。

 

<シナリオ分析の概要>

当社グループでは、気候変動が事業に与える影響を評価・考察するにあたり、パリ協定の目標である「産業革命前からの気温上昇を1.5℃未満に抑える」ことを想定した政策移行の影響が大きいシナリオ(1.5℃シナリオ)および環境規制が強化されず物理リスクが高まるシナリオ(4℃シナリオ)を含む複数のシナリオを設定し、TCFD提言にも推奨されるシナリオ分析を実施しています。

シナリオ分析では、TCFD提言の分類に沿って、気候変動関連リスクと機会を検討し、シナリオ下における2030年時点の財務影響度を可能な限り定量化し、評価・考察しました。なお、シナリオ分析は二輪・四輪・パワープロダクツ事業を対象としています。

 

 

TCFD提言に基づくシナリオ分析では、以下のシナリオを主に使用し、想定する世界観を整理しました。

 

(1.5℃シナリオ)

1.5℃シナリオでは、IEA(国際エネルギー機関)のNZE(Net Zero Emmissions Scenario)、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のAR6SSP11.9の報告内容を参考にしました。

1.5℃シナリオでは、世界全体で2050年カーボンニュートラルに向けた施策が推進され、新技術の開発や利用の促進により脱炭素製品が広く普及することや、再生可能エネルギーの利用が拡大することが想定されます。また、循環型経済への移行が加速することが想定されます。

自動車業界では、燃費・ZEV規制がさらに強化され、先進国を中心にEV(電気自動車)やFCEV(燃料電池自動車)の需要が増加する見込みです。さらに、二輪・四輪・パワープロダクツ事業において、脱炭素製品やサービスを好むお客様が増加するなど顧客価値観の変化が想定されます。

 

(4℃シナリオ)

4℃シナリオはIPCCのAR6SSP37.0を参考にしました。4℃シナリオでは不可逆的な環境の変化が想定され、自然災害が頻発化・激甚化することが想定されます。

 

<主なリスクと機会およびその対応(注)>

分類/シナリオ

リスク

機会

対応

移行

リスク

1.5℃

政策・法規制

・燃費規制未達による罰金支払い

 

・燃費規制強化によるICE(内燃機関)新車販売台数減

 

・炭素税・排出権取引(ETS)の導入による費用負担増

・電動化製品やサービスの販売拡大

 

・省エネルギー施策の導入や再生可能エネルギーの活用による事業運営コスト削減

・電動化をはじめとするカーボンニュートラルに向けた環境革新技術の投入やエネルギーの多様化対応、トータルエネルギーマネジメントの取り組みの推進

 

・生産効率向上、省エネルギー施策の導入、低炭素エネルギーへの転換、再生可能エネルギーの活用の推進

市場の変化

・市場のエネルギークリーン化に伴うエネルギー購入価格の上昇

物理

リスク

4℃

急性・慢性

・自然災害による資産損害

 

・営業停止またはサプライチェーン寸断による生産停止の発生

・災害時に非常用電源へ転用が可能な、電動化製品の需要増

・事業継続計画(BCP)の策定、見直しおよび訓練実施による対策の実施

 

・サプライチェーンの見直しおよび強化

 

 

(注) 記載されているリスクと機会ならびに対応は、すべてを網羅するものではありません。

 

④ 指標及び目標

当社グループは、2050年にすべての製品と企業活動を通じたカーボンニュートラルをめざしています。

2050年CO2排出実質ゼロにむけた指標目標については「(2) 重要な戦略並びに指標及び目標」を参照ください。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

当社グループでは、リスクマネジメント委員会において事業運営上重要なリスクを「全社重点リスク」として特定し、対応状況の確認・議論などを行っています。以下のリスクも同委員会で審議のうえ特定されたものです。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内包しているため、将来生じうる実際の結果と大きく異なる可能性もありますので、ご留意ください。

 

(1) 地政学的リスク

当社グループは、世界各国において事業を展開しており、それらの国や近隣地域での関税、輸出入規制、租税を含む現地法令・制度・協定・商習慣の変化、戦争・テロ・政情不安・治安の悪化、政治体制の変化、ストライキなど様々なリスクにさらされています。これら予期せぬ事象が発生し、政治的、軍事的、社会的な緊張の高まりに伴いサプライチェーンが寸断されるなど、事業活動の遅延・停止が発生した場合、当社グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。

その中でも、主に①経済安全保障、②国家間・地域紛争、③人権に関する法規の3つの地政学的リスクを認識しています。これらの地政学的リスクは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 優先的に対処すべき課題」に記載している当社グループの5つの重要テーマのうち、環境負荷ゼロ社会の実現、交通事故ゼロ社会の実現、人的資本経営の進化、独創的な技術の創出への取り組みに与える影響も大きいため、対策の重要性は高まっています。これらの地政学的リスクが将来及ぼしうる各地域の事業規模については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」を参照ください。

 

① 経済安全保障

<リスク>

各国において重要資源・部品、先端技術などに対する輸出入規制、ブロック化を促進する政策の強化の動きが活発化しています。2024年は米国をはじめとする各国で選挙が相次ぐため、これらの結果で政策などの変更が発生する可能性があります。各国において輸出入などに関する政策が変更された場合、生産活動の停滞や遅延、開発・購買・営業などの事業活動にかかる対応費用などが生じる可能性があり、当社グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。

<対応策>

当社グループにおいては、国内および海外の各部門が連携し各国の政策動向などの情報収集・モニタリングするインテリジェンス機能を強化するとともに、当社グループの事業に影響を与える可能性がある案件が確認された場合は、リスクマネジメント委員会が先行的に検討を行うことで、早期にリスクヘッジできる体制を構築しています。

 

② 国家間・地域紛争

<リスク>

ウクライナおよび中東などにおいて、国際情勢の見通しが不透明な状況が続いています。新たな紛争が発生した場合、発生した国や地域のみならず、それ以外の国や地域でも、人的および物的被害、サプライチェーンの寸断などが生じる可能性があり、当社グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。

<対応策>

当社グループにおいては、国家間・地域紛争の動向などの情報収集・モニタリングするインテリジェンス機能を強化するとともに、当社グループの事業に影響を与える可能性がある事象が確認された場合は、「人命・安全の確保」および「社会からの信頼の維持」を前提としたうえで、当社グループの会社資産・体制の保全、事業継続をはかるための対応を迅速に行っています。

 

③ 人権に関する法規

<リスク>

各国において、企業に人権の取り組みを求める法規の制定が進んでおり、サプライチェーン全体での人権リスク対応の必要性が急速に高まっています。これらの法規に対して適時適切な対応が出来なかった場合、ブランドイメージや社会的信用の低下に加え、当社グループの生産活動の停滞や遅延、開発・購買・営業などの事業活動にかかる対応費用などが生じる可能性があり、当社グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。

<対応策>

当社グループにおいては、「Hondaフィロソフィー」に掲げる人間尊重の基本理念のもと、事業活動において影響を受けるステークホルダーの人権を尊重する責任を果たすため、「Honda人権方針」を定めています。本方針に基づき、人権デューデリジェンス、適切な教育・啓発活動の実施など、各国法規を踏まえ自社およびサプライチェーンにおける取り組みを行っています。

 

(2) 購買・調達リスク

<リスク>

当社グループは、良い物を、適正な価格で、タイムリーにかつ永続的に調達することをめざして、多数の外部の取引先から原材料および部品を購入していますが、製品の製造において使用するいくつかの原材料および部品については、特定の取引先に依存しています。効率的かつ適正なコストで継続的に供給を受けられるかどうかは、当社グループがコントロールできないものも含めて、多くの要因に影響を受けます。それらの要因のなかには、取引先が継続的に原材料および部品を確保できるかどうか、また、供給を受けるにあたって、当社グループがその他の需要者に対してどれだけ競争力があるか等が含まれます。

取引先から原材料および部品が継続的に供給を受けられなかった場合、原材料および部品の価格が上昇した場合、もしくは主要な取引先を失った場合、生産活動の停滞や遅延、当社グループの競争力の損失に繋がる等、当社グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。また、取引先から供給された部品に起因する当社グループ製品の品質不具合が発生した場合、お客様の安心、安全を脅かすとともに当社グループのブランドイメージが毀損され、当社グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。

これらの購買・調達リスクは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 優先的に対処すべき課題」に記載している当社グループの5つの重要テーマのうち、環境負荷ゼロ社会の実現、交通事故ゼロ社会の実現、独創的な技術の創出への取り組みに与える影響も大きいため、対策の重要性は高まっています。

<対応策>

当社グループにおいては、事業、業績への影響を最小化するため、サプライチェーンの見直しおよび強化を継続的に行っています。また、部品の供給状況についてモニタリングを行い、当社グループの生産などの事業活動に悪影響を与える可能性がある事象が発生した場合には、取引先と連携し速やかに対応を実施しています。

新型コロナウイルス感染症が拡大した後の経済回復などに起因する半導体需要の高まりを受け、半導体の調達不足が顕在化しました。当社グループにおいて、国内外の一部の生産拠点における四輪車および二輪車の生産停止、減産といった影響が発生したものの、有価証券報告書提出日現在、半導体の調達不足は解消しています。

なお、一部の原材料および部品において価格上昇が発生している、もしくは今後見込まれています。当社グループにおいては、取引先と連携し事業継続の観点から事業、業績への影響を最小化するための対応を行っています。

 

 

(3) 情報セキュリティリスク

<リスク>

当社グループは、委託先によって管理されているものを含め、事業活動および当社製品において様々な情報システムやネットワークを利用しています。特にAI技術の活用を含む自動運転や安全運転支援システム、デジタルサービスに代表されるソフトウェア領域のニーズが高まっています。サイバー攻撃は攻撃手法の高度化、複雑化が進んでおり、その攻撃対象は世界各国に渡っています。「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 優先的に対処すべき課題」に記載している 当社グループの5つの重要テーマのうち、交通事故ゼロ社会の実現、独創的な技術の創出への取り組みに与える影響も大きいため、対策の重要性は高まっています。

また、近年世界各国で個人情報保護規則が急速に整備されています。新たな価値創造への取り組みにおいては、従来の事業と比べ取り扱う個人情報の量と質が異なる可能性があるため、個人情報保護に向けた対策の重要性は高まっています。当社グループ、取引先および委託先におけるサイバーセキュリティリスクのほか、機器の不具合、管理上の不備や人為的な過失、さらには自然災害やインフラ障害等の不測の事態により、当社グループの重要な業務やサービスの停止、機密情報・個人情報等の漏洩、不適切な事務処理、あるいは重要データの破壊、改ざん等が発生する可能性があります。

このような事象が起きた場合、ブランドイメージや社会的信用の低下、影響を受けた顧客やその他の関係者への損害責任、制裁金の支払い、生産活動の停滞や遅延、当社グループの競争力の損失に繋がる等、当社グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。

<対応策>

当社グループにおいては、事業、業績への悪影響を最小化するため、情報システムのセキュリティに関する管理体制および基準を定めています。本基準に基づき、ハード面およびソフト面でのセキュリティ対策を実施し、情報システムのセキュリティ強化をはかっています。

なお、サイバーセキュリティリスクに対しては、上記に加え以下の対応を行っています。

品質改革本部ならびにコーポレート管理本部内にそれぞれ設置している主管部門を中心に、業務・生産システム、ソフトウェア、品質などの領域を横断する対応体制を構築しています。法規を踏まえた規程・手順書などの整備、対応フロー策定、サイバーセキュリティに関する演習を通じた改善点の検証・対策、人材育成などを行っています。

セキュリティ情報およびイベント情報の管理、悪意のあるアクティビティの監視のためのソリューションを活用し、サイバー攻撃の脅威および脆弱性の監視・分析を行っています。なお、サードパーティのパッケージ製品やクラウドサービスの導入に際しては、定められたセキュリティ基準を基にリスクを評価し、導入判断および導入後の年次確認を行っています。

生産設備やサプライヤーのサイバー攻撃に対しては、国内外の各拠点の生産設備やサプライヤーのセキュリティ対策状況についての検証を行うとともに、検証結果を踏まえ、セキュリティ情報およびイベント情報の管理、悪意のあるアクティビティの監視のためのソリューション導入支援等のセキュリティ強化に向けた対策を行っています。このようなセキュリティ強化のための活動については、セキュリティに関するコンサルティング会社や外部スペシャリストと業務委託契約を締結し、支援を受けています。

また、各国における個人情報保護規則やサイバーセキュリティ関連法規に対しては、現行の規制のほか、今後施行が見込まれている規則の動向などの情報収集・モニタリングを実施したうえで対応を行っています。

なお、当社グループに重大な影響を与えるサイバー攻撃に関するセキュリティインシデントが発生した場合には、リスクマネジメントオフィサーの監視、監督のもとグローバル危機対策本部を設置し、サイバーセキュリティリスクに対する主管部門が中心となり迅速に実態把握を行ったうえで、影響を最小化するための対応を全社横断的な観点で実施します。

 

(4) 他社との業務提携・合弁リスク

<リスク>

当社グループは、相乗効果や効率化などを期待、もしくは事業展開している国の要件に従う場合に、他社と業務提携・合弁による事業運営を行っています。

「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 優先的に対処すべき課題」に記載している当社グループの5つの重要テーマのうち、環境負荷ゼロ社会の実現、交通事故ゼロ社会の実現、独創的な技術の創出への取り組みを進めるにあたっては、業務提携・合弁の活用の重要性は高まっており、今後も業務提携・合弁を進めていきます。

業務提携・合弁において、当事者間における利害の不一致、利益や技術の流出、意思決定の遅れ、業務提携・合弁先の業績不振が生じた場合、あるいは業務提携・合弁の内容に関する変更や解消が生じた場合、当社グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。

<対応策>

当社グループにおいては、中長期の事業戦略に基づき業務提携・合弁の戦略を議論・策定したうえで、デューデリジェンスを通じた情報収集・リスク検証を行っています。契約締結後においても業務提携・合弁に関する運営状況のモニタリングを行い、当社グループの事業、業績への影響が発生する可能性がある場合には、業務提携・合弁先と連携し影響を最小化するための対応を行っています。

 

(5) 環境に関わるリスク

<リスク>

当社グループは、世界各国において事業を展開しており、気候変動、資源枯渇、大気汚染、水質汚染、生物多様性などをはじめとする環境に関する様々なリスクの可能性を認識しています。また、これらに関する様々な政策および規制の適用を受けています。

その中でも気候変動および燃費・排出ガスに関する政策および規制について、世界各国で見直しが実施もしくは今後予定されています。見直しの動向によっては、二輪事業、四輪事業、パワープロダクツ事業及びその他の事業において、生産・開発・購買・営業などにかかる対応費用などが生じる可能性があり、当社グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。

これらの環境に関わるリスクは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 優先的に対処すべき課題」に記載している当社グループの5つの重要テーマのうち、環境負荷ゼロ社会の実現、独創的な技術の創出への取り組みに与える影響も大きいため、対策の重要性は高まっています。

なお、気候変動に関するリスクと機会については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (4) 気候変動対応(TCFDに基づく気候関連財務情報開示)」を参照ください。

<対応策>

当社グループにおいては、製品だけでなく企業活動を含めたライフサイクルでの「環境負荷ゼロ」の実現に向け、カーボンニュートラル、クリーンエネルギー、リソースサーキュレーション、この3つを1つのコンセプトにまとめた「Triple Action to ZERO」に関する取り組みを行っています。

また、上記の政策および規制に対しては、国内および海外の各部門が連携し情報収集・モニタリングを実施するとともに、それらの状況に基づく最適な生産・開発体制の構築などの対応を行っています。

 

 

(6) 知的財産リスク

<リスク>

当社グループは、長年にわたり、自社が製造する製品に関連する多数の特許および商標を保有し、もしくはその権利を取得しています。当社グループにおいては、「新たな成長・価値創造を可能とする企業への変革」を支えるため、パワーユニットのカーボンニュートラル化、エネルギーマネジメントシステム、リソースサーキュレーション、自動運転・安全運転支援システム、IoT・コネクテッドを注力領域として選定しています。これらの特許および商標は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 優先的に対処すべき課題」に記載している当社グループの5つの重要テーマのうち、環境負荷ゼロ社会の実現、交通事故ゼロ社会の実現、独創的な技術の創出への取り組みに与える影響も大きいため、対策の重要性は高まっています。

当社グループの知的財産が広範囲にわたって保護できないこと、あるいは、広範囲にわたり当社グループの知的財産権が違法に侵害されることによる競争力の低下、さらには特許権侵害訴訟による製造・販売の差し止めや高額の損害賠償金、ライセンス料の請求によって、当社グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。

<対応策>

当社グループにおいては、外部の専門家、取引先と連携し、特許保有者からの特許権侵害訴訟を想定した対策を実施しています。また、関連法規の動向を注視・分析し、将来の法的手続で不利な判断がなされた場合など当社グループの事業、業績への悪影響が発生する可能性がある場合には、影響を最小化するための対応を行っています。

 

(7) 自然災害等リスク

<リスク>

地震、風水害、感染症などの発生時に当社グループの拠点や従業員が被害を受け、生産・開発・購買・営業などの事業活動の停止・遅延が発生した場合、当社グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。また、これらの事象によって取引先が被害を受けた場合、あるいはインフラの停止が発生した場合にも、当社グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。

加えて、世界各国において、気候変動の影響などにより気象災害が激甚化・頻発化しており、この傾向は今後も継続すると予想されます。その結果、これらの災害が当社グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。

<対応策>

当社グループにおいては、事業、業績への影響を最小化するため、これらの事象のリスク評価や事業継続計画(BCP)の策定および定期的な見直しを行っています。また、各国で顕在化した事象に基づき、対応体制および規程・手順書の見直し、訓練実施による改善点の検証・対策などを行っています。

なお、当社グループに重大な影響を与える事象が発生した場合には、グローバル危機対策本部を設置し、各地域の情報収集および影響の最小化に向けた対応を全社横断的な観点で実施します。

2024年1月に発生した能登半島地震においては、取引先の被災により国内の一部生産拠点において四輪車の減産といった影響が発生しました。当社グループにおいては、グローバル危機対策本部を設置し、取引先と連携のうえ、在庫活用や代替開発も含め、事業、業績への影響を最小化するための対応を行いました。

 

(8) 金融・経済リスク

<リスク>

① 経済動向、景気変動

当社グループは、世界各国で事業を展開しており、様々な地域、国で生産活動を行い、製品を販売しています。これらの事業活動は経済低迷、景気変動などの影響を受けることで、市場の縮小による販売台数の減少、部品調達価格および製品の販売価格の上昇、信用リスクの上昇、資金調達金利の上昇などに繋がる可能性があります。その結果として当社グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。

② 為替変動

当社グループは、日本をはじめとする世界各国の生産拠点で生産活動を行っており、その製品および部品の多くを複数の国に輸出しています。各国における生産および販売では、外貨建てで購入する原材料および部品や、販売する製品および部品があります。したがって、為替変動は、購入価格や販売価格の設定に影響し、その結果、当社グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。

<対応策>

当社グループにおいては、金融・経済などの動向をモニタリングし当社グループに対する事業影響を把握するとともに、事業計画に反映し、対応を実施しています。

 

(9) 市場環境変化リスク

当社グループは、世界各国で事業を展開しており、市場の長期にわたる経済低迷、消費者の価値観、ニーズの変化や、燃料価格の上昇および金融危機、原材料の高騰・供給量低下による製品価格上昇などによる購買意欲の低下、他社との競争激化は、当社グループの製品の需要低下につながり、当社グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。

 

(10) 金融事業特有のリスク

当社グループの金融サービス事業は、お客様に様々な資金調達プログラムを提供しており、それらは、製品の販売をサポートしています。しかしながら、お客様は当社グループの金融サービス事業からではなく、競合する他の銀行およびリース会社等を通して、製品の購入またはリースの資金を調達することができます。当社グループが提供する金融サービスは、残存価額および資本コストに関するリスク、信用リスク、資金調達リスクなどを伴います。お客様獲得に関する競合および上記金融事業特有のリスクは、当社グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。

 

(11) 法務リスク

当社グループは、訴訟、関連法規に基づく様々な調査、法的手続を受ける可能性があります。係争中、または将来の法的手続で不利な判断がなされた場合、当社グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。

 

(12) 退職後給付に関わるリスク

当社グループは、各種退職給付および年金制度を有しています。これらの制度における給付額は、基本的に従業員の給与水準、勤続年数およびその他の要素に基づいて決定されます。また、掛金は法令が認める範囲で定期的に見直されています。確定給付制度債務および確定給付費用は、割引率や昇給率などの様々な仮定に基づいて算出されています。仮定の変更は将来の確定給付費用、確定給付制度債務および制度への必要拠出額に影響を与えることにより、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

 

 

(13) ブランドイメージに関連するリスク

当社グループのブランドに対するお客様や当社グループを取り巻く社会からの信頼・支持が、企業の永続性において重要な要素の一つとなっています。このブランドイメージを支えるため、製品の品質や法規制への対応、リスク管理の実施、内部統制の充実などあらゆる企業活動において常に社会からの信頼に応えられるように努めています。しかしながら予測できない事象により、当社グループのブランドイメージを毀損した場合や迅速で適切な情報発信などの対応が実施出来なかった場合、当社グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。

これらのブランドイメージに関連するリスクは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 優先的に対処すべき課題」に記載している当社グループの5つの重要テーマのうち、ブランド価値の向上への取り組みに与える影響も大きいため、対策の重要性は高まっています。

なお、当社が過去に販売した四輪車について、型式指定申請時の認証試験に関する不適切な事案があったことを確認し、2024年5月31日に国土交通省に報告しました。今後もコンプライアンスおよびガバナンスの強化をはかり企業活動を行っていきますが、この事案により、または類似した事案が発生した場合には、当社グループのブランドイメージを毀損し、当社グループの事業、業績に悪影響を与える可能性があります。なお、これらの事案による法務リスクについては、「(11) 法務リスク」を参照ください。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 ① 経営成績の状況

当連結会計年度の当社、連結子会社および持分法適用会社(以下「当社グループ」 という。)を取り巻く経済環境は、ウクライナおよび中東における国際情勢やインフレ影響など、先行きの不透明な状況が続きましたが、新型コロナウイルス感染症の収束や半導体不足の解消などにより、持ち直しの動きがみられました。米国では、金融引締めが進んだものの、個人消費の増加などにより、景気は拡大しました。欧州では、個人消費や生産が低迷し、景気は弱含みがみられました。アジアの景気においては、インドでは回復、インドネシアでは緩やかに回復、タイでは持ち直しており、中国では持ち直しの動きに足踏みがみられました。日本では、足踏みもみられたものの、景気は緩やかに回復しました。

主な市場のうち、二輪車市場は前年度にくらべ、インド、ブラジル、インドネシアでは拡大しましたが、タイではおおむね横ばい、ベトナムでは縮小となりました。四輪車市場は前年度にくらべ、中国、米国、欧州、ブラジル、日本、インドでは拡大しましたが、インドネシア、タイでは縮小となりました。

このような中で、当社グループは、「意志を持って動き出そうとしている世界中のすべての人を支えるパワー」となることで、世の中から「存在を期待される企業」であり続けるため、従来より経営の重要テーマとして掲げてきた「環境」と「安全」に加え、当社グループの成長の原動力である「人」と「技術」、またすべての企業活動の総和ともいえる「ブランド」の5つの非財務領域を重要テーマとして選定し、財務戦略と連携させることで社会的価値・経済的価値の創出に努めてまいりました。研究開発面では、安全・環境技術や商品の魅力向上、モビリティの変革にむけた先進技術開発に、外部とのオープンイノベーションも活用し、積極的に取り組みました。生産面では、生産体質の強化や、グローバルでの需要の変化に対応した生産配置を行いました。販売面では、新価値商品の積極的な投入や、グローバルでの商品の供給などにより、商品ラインアップの充実に取り組みました。

当連結会計年度の連結売上収益は、四輪事業における増加や為替換算による増加影響などにより、20兆4,288億円と前連結会計年度にくらべ20.8%の増収となりました。
 営業利益は、諸経費の増加などはあったものの、売価およびコスト影響や販売影響による利益増などにより、1兆3,819億円と前連結会計年度にくらべ77.0%の増益となりました。税引前利益は、1兆6,423億円と前連結会計年度にくらべ86.7%の増益、親会社の所有者に帰属する当期利益は、1兆1,071億円と前連結会計年度にくらべ70.0%の増益となりました。 

 

事業の種類別セグメントの状況

(二輪事業)

 

Hondaグループ販売台数

連結売上台数

 

 

 

 

2022年度
(千台)

2023年度
(千台)

増  減
(千台)

増減率
(%)

2022年度
(千台)

2023年度
(千台)

増  減
(千台)

増減率
(%)

二輪事業計

18,757

18,819

62

0.3

12,161

12,219

58

0.5

 

日 本

246

241

△5

△2.0

246

241

△5

△2.0

 

北 米

459

498

39

8.5

459

498

39

8.5

 

欧 州

347

440

93

26.8

347

440

93

26.8

 

アジア

16,108

16,016

△92

△0.6

9,512

9,416

△96

△1.0

 

その他

1,597

1,624

27

1.7

1,597

1,624

27

1.7

 

 

二輪事業の外部顧客への売上収益は、連結売上台数の増加や為替換算による増加影響などにより、3兆2,201億円と前連結会計年度にくらべ10.7%の増収となりました。営業利益は、品質関連費用を含む諸経費の増加などはあったものの、売価およびコスト影響による利益増などにより、5,562億円と前連結会計年度にくらべ13.8%の増益となりました。

 

Hondaグループ販売台数は、当社および連結子会社、ならびに持分法適用会社の完成車(二輪車・ATV・Side-by-Side)販売台数です。一方、連結売上台数は、外部顧客への売上収益に対応する販売台数であり、当社および連結子会社の完成車販売台数です。

 

(四輪事業)

 

Hondaグループ販売台数

連結売上台数

 

 

 

 

2022年度
(千台)

2023年度
(千台)

増  減
(千台)

増減率
(%)

2022年度
(千台)

2023年度
(千台)

増  減
(千台)

増減率
(%)

四輪事業計

3,687

4,109

422

11.4

2,382

2,856

474

19.9

 

日 本

550

595

45

8.2

484

525

41

8.5

 

北 米

1,195

1,628

433

36.2

1,195

1,628

433

36.2

 

欧 州

84

103

19

22.6

84

103

19

22.6

 

アジア

1,744

1,651

△93

△5.3

505

468

△37

△7.3

 

その他

114

132

18

15.8

114

132

18

15.8

 

 

四輪事業の外部顧客への売上収益は、連結売上台数の増加などにより、13兆5,675億円と前連結会計年度にくらべ28.1%の増収となりました。営業利益は、諸経費の増加などはあったものの、売価およびコスト影響や販売影響による利益増などにより、5,606億円と前連結会計年度にくらべ5,772億円の増益となりました。

 

Hondaグループ販売台数は、当社および連結子会社、ならびに持分法適用会社の完成車販売台数です。一方、連結売上台数は、外部顧客への売上収益に対応する販売台数であり、当社および連結子会社の完成車販売台数です。また、当社の日本の金融子会社が提供する残価設定型クレジット等が、IFRSにおいてオペレーティング・リースに該当する場合、当該金融サービスを活用して連結子会社を通して提供された四輪車は、四輪事業の外部顧客への売上収益に計上されないため、連結売上台数には含めていませんが、Hondaグループ販売台数には含めています。

 

(金融サービス事業)

金融サービス事業の外部顧客への売上収益は、ローン収益の増加や為替換算による増加影響などにより、3兆2,488億円と前連結会計年度にくらべ10.0%の増収となりました。営業利益は、為替影響などはあったものの、諸経費の増加などにより、2,739億円と前連結会計年度にくらべ4.2%の減益となりました。

 

(パワープロダクツ事業及びその他の事業)

 

Hondaグループ販売台数/連結売上台数

 

 

2022年度
(千台)

2023年度
(千台)

増  減
(千台)

増減率
(%)

パワープロダクツ

 

 

 

 

事業計

5,645

3,812

△1,833

△32.5

 

日 本

376

302

△74

△19.7

 

北 米

2,274

1,083

△1,191

△52.4

 

欧 州

1,168

794

△374

△32.0

 

アジア

1,408

1,294

△114

△8.1

 

その他

419

339

△80

△19.1

 

 

パワープロダクツ事業及びその他の事業の外部顧客への売上収益は、パワープロダクツ事業の連結売上台数の減少などにより、3,922億円と前連結会計年度にくらべ13.0%の減収となりました。営業損失は、パワープロダクツ事業の販売影響による利益減などにより、88億円と前連結会計年度にくらべ317億円の減益となりました。なお、パワープロダクツ事業及びその他の事業に含まれる航空機および航空機エンジンの営業損失は、329億円と前連結会計年度にくらべ71億円の悪化となりました。

 

Hondaグループ販売台数は、当社および連結子会社、ならびに持分法適用会社のパワープロダクツ販売台数です。一方、連結売上台数は、外部顧客への売上収益に対応する販売台数であり、当社および連結子会社のパワープロダクツ販売台数です。なお、当社は、パワープロダクツを販売している持分法適用会社を有しないため、パワープロダクツ事業においては、Hondaグループ販売台数と連結売上台数に差異はありません。

 

 

所在地別セグメントの状況

前連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)

(単位:百万円)

 

日本

 

北米

 

欧州

 

アジア

 

その他の
地域

 

 

消去

 

連結

売上収益

4,548,002

 

9,416,252

 

703,718

 

4,857,837

 

819,615

 

20,345,424

 

△3,437,699

 

16,907,725

営業利益(△損失)

25,821

 

258,805

 

△2,556

 

408,728

 

58,935

 

749,733

 

31,036

 

780,769

 

 

当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

(単位:百万円)

 

日本

 

北米

 

欧州

 

アジア

 

その他の
地域

 

 

消去

 

連結

売上収益

5,392,760

 

12,073,777

 

966,320

 

5,009,961

 

1,081,946

 

24,524,764

 

△4,095,962

 

20,428,802

営業利益(△損失)

151,070

 

694,940

 

60,340

 

397,804

 

153,957

 

1,458,111

 

△76,134

 

1,381,977

 

(注) 1 国又は地域の区分の方法および各区分に属する主な国

(1) 国又は地域の区分の方法……………地理的近接度によっています。

(2) 各区分に属する主な国………………北米:米国、カナダ、メキシコ

欧州:英国、ドイツ、ベルギー、イタリア、フランス

アジア:タイ、中国、インド、ベトナム、インドネシア

その他の地域:ブラジル、オーストラリア

2 各セグメントの営業利益(△損失)の算出方法は、連結損益計算書における営業利益の算出方法と一致しており、持分法による投資利益、金融収益及び金融費用および法人所得税費用を含んでいません。

3 消去の金額は、セグメント間取引消去によるものです。

 

(日本)

 売上収益は、四輪事業における増加などにより、5兆3,927億円と前連結会計年度にくらべ18.6%の増収となりました。営業利益は、品質関連費用を含む諸経費の増加などはあったものの、販売影響による利益増や為替影響などにより、1,510億円と前連結会計年度にくらべ485.1%の増益となりました。

 

(北米)

 売上収益は、四輪事業における増加や為替換算による増加影響などにより、12兆737億円と前連結会計年度にくらべ28.2%の増収となりました。営業利益は、諸経費の増加などはあったものの、販売影響や売価およびコスト影響による利益増などにより、6,949億円と前連結会計年度にくらべ168.5%の増益となりました。

 

(欧州)

 売上収益は、二輪事業や四輪事業における増加などにより、9,663億円と前連結会計年度にくらべ37.3%の増収となりました。営業利益は、売価およびコスト影響による利益増などにより、603億円と前連結会計年度にくらべ628億円の増益となりました。

 

(アジア)

 売上収益は、二輪事業やパワープロダクツ事業における減少などはあったものの、為替換算による増加影響などにより、5兆99億円と前連結会計年度にくらべ3.1%の増収となりました。営業利益は、売価およびコスト影響による利益増などはあったものの、販売影響による利益減や諸経費の増加などにより、3,978億円と前連結会計年度にくらべ2.7%の減益となりました。

 

(その他の地域)

 売上収益は、二輪事業や四輪事業における増加などにより、1兆819億円と前連結会計年度にくらべ32.0%の増収となりました。営業利益は、諸経費の増加などはあったものの、売価およびコスト影響や販売影響による利益増などにより、1,539億円と前連結会計年度にくらべ161.2%の増益となりました。

 

 

 ② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、4兆9,545億円と前連結会計年度末にくらべ1兆1,515億円の増加となりました。

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況と、前連結会計年度に対する各キャッシュ・フローの増減状況は以下のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動の結果得られた資金は、7,472億円となりました。この営業活動によるキャッシュ・インフローは、顧客からの現金回収の増加などはあったものの、部品や原材料の支払いや金融サービスに係る債権の増加などにより、前連結会計年度にくらべ1兆3,817億円の減少となりました。
 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動の結果減少した資金は、8,672億円となりました。この投資活動によるキャッシュ・アウトフローは、持分法で会計処理されている投資の取得による支出の増加などにより、前連結会計年度にくらべ1,892億円の増加となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動の結果増加した資金は、9,186億円となりました。この財務活動によるキャッシュ・インフローは、資金調達による収入の増加などにより、前連結会計年度にくらべ2兆3,870億円の増加となりました。

 

 ③ 生産、受注及び販売の状況

(生産実績)

セグメントの名称

前連結会計年度
(自 2022年4月1日
 至 2023年3月31日)

当連結会計年度
(自 2023年4月1日
 至 2024年3月31日)

増減

台数(千台)

台数(千台)

台数(千台)

増減率(%)

二輪事業

12,199

12,560

361

3.0

四輪事業

2,508

2,958

450

17.9

パワープロダクツ事業

及びその他の事業

5,799

2,856

△2,943

△50.7

 

 (注) 1 生産台数は、当社および連結子会社の完成車の生産台数の合計です。

 2 二輪事業には二輪車、ATVおよびSide-by-Sideが含まれています。

 3 パワープロダクツ事業及びその他の事業にはパワープロダクツの生産台数を記載しています。

4 当連結会計年度において、パワープロダクツ事業の生産実績が著しく減少しました。この生産実績の変動については、OEM向けエンジン(注5)や芝刈機の減少といった影響があったためです。

5 相手先ブランドで販売される商品に搭載されるエンジン(OEM:Original Equipment Manufacturer)

 

(受注実績)

見込生産のため、大口需要等の特別仕様のものを除いては、受注生産はしていません。

 

 

(販売実績)

仕向地別(外部顧客の所在地別)売上収益は、以下のとおりです。

セグメントの名称

前連結会計年度
(自 2022年4月1日
  至 2023年3月31日)
(百万円)

当連結会計年度
(自 2023年4月1日
  至 2024年3月31日)
(百万円)

増  減
(百万円)

増 減 率
(%)

 

 

 

 

 

総  合  計

16,907,725

20,428,802

3,521,077

20.8

 

日 本

2,013,095

2,242,213

229,118

11.4

 

北 米

8,945,932

11,713,668

2,767,736

30.9

 

欧 州

690,663

961,185

270,522

39.2

 

アジア

4,335,765

4,313,810

△21,955

△0.5

 

その他

922,270

1,197,926

275,656

29.9

 

 

 

 

 

二輪事業計

2,908,983

3,220,168

311,185

10.7

 

日 本

109,393

113,746

4,353

4.0

 

北 米

306,725

335,558

28,833

9.4

 

欧 州

250,088

351,851

101,763

40.7

 

アジア

1,739,764

1,793,327

53,563

3.1

 

その他

503,013

625,686

122,673

24.4

 

 

 

 

 

四輪事業計

10,593,519

13,567,565

2,974,046

28.1

 

日 本

1,385,830

1,600,619

214,789

15.5

 

北 米

5,990,544

8,510,242

2,519,698

42.1

 

欧 州

332,983

506,755

173,772

52.2

 

アジア

2,523,862

2,449,802

△74,060

△2.9

 

その他

360,300

500,147

139,847

38.8

 

 

 

 

 

金融サービス事業計

2,954,098

3,248,808

294,710

10.0

 

日 本

428,228

440,775

12,547

2.9

 

北 米

2,466,537

2,729,108

262,571

10.6

 

欧 州

13,264

18,120

4,856

36.6

 

アジア

16,576

14,713

△1,863

△11.2

 

その他

29,493

46,092

16,599

56.3

  パワープロダクツ事業

 

 

 

 

   及びその他の事業計

451,125

392,261

△58,864

△13.0

 

日 本

89,644

87,073

△2,571

△2.9

 

北 米

182,126

138,760

△43,366

△23.8

 

欧 州

94,328

84,459

△9,869

△10.5

 

アジア

55,563

55,968

405

0.7

 

その他

29,464

26,001

△3,463

△11.8

 

(注) 各事業の主要製品およびサービス、事業形態につきましては、連結財務諸表注記の「4 セグメント情報」を参照ください。

 

 

(2) 経営成績等の状況の分析

当社グループは2050年に、製品だけでなく企業活動を含めたライフサイクルでの環境負荷ゼロ、全世界で当社グループの二輪車・四輪車が関与する交通事故死者ゼロをめざします。詳細については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」と「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」を参照ください。

 

これらの目標の実現に向けて、適切なタイミングでの戦略的な投資が必要不可欠であると考えています。当社グループは、二輪事業および四輪事業のICE/ハイブリッドモデルの安定した収益基盤を活用し、2030年200万台のEV生産を見据えて、Hondaならではの魅力的なEVの投入、バッテリーを中心としたEVの包括的バリューチェーンの構築、生産技術・工場の進化など電動化・ソフトウェア領域へ、EVの市場への浸透度を見定めながら、リソースシフトをさらに進めていきます。

 

当社グループが展開する事業は厳しい経済・社会環境下に置かれており、その収益性は様々な要因により左右されます。その中でも、当社グループは気候変動をはじめとした様々な社会課題の解決、リスクへの対処に積極的に取り組んでおり、認識している課題、リスク事象の詳細については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」「3 事業等のリスク」を参照ください。それらへの対処の過程、結果により販売台数の増減や追加費用などが生じ、将来の収益性に重要な影響を及ぼす可能性があると考えます。

 

以降の経営成績等の状況の分析は、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与えた事象や要因を経営者の立場から分析し、説明したものです。

なお、この経営成績等の状況の分析に記載した将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであり、リスクと不確実性を内包しているため、将来生じうる実際の結果と大きく異なる可能性もありますので、ご留意ください。

 

 ① 経営成績の分析

当社グループの業績

当連結会計年度の連結売上収益は、四輪事業における増加や為替換算による増加影響などにより、前連結会計年度にくらべ増収となりました。

営業利益は、諸経費の増加などはあったものの、売価およびコスト影響や販売影響による利益増などにより、増益となりました。


二輪事業の概要

当連結会計年度の連結売上台数は、ベトナムやタイなどで販売が減少したものの、インドやブラジル、トルコなどで増加したことにより、1,221万9千台と前連結会計年度にくらべ0.5%の増加となりました。

 

四輪事業の概要

当連結会計年度の連結売上台数は、米国などで販売が増加したことにより、285万6千台と前連結会計年度にくらべ19.9%の増加となりました。

 

パワープロダクツ事業及びその他の事業の概要

当連結会計年度のパワープロダクツ事業の連結売上台数は、米国などで販売が減少したことにより、381万2千台と前連結会計年度にくらべ32.5%の大幅な減少となりました。

 

(当連結会計年度の連結業績の概況)

売上収益

当連結会計年度の連結売上収益は、四輪事業における増加や為替換算による増加影響などにより、20兆4,288億円と前連結会計年度にくらべ3兆5,210億円、20.8%の増収となりました。また、前連結会計年度の為替レートで換算した場合、前連結会計年度にくらべ約2兆5,842億円、約15.3%の増収と試算されます。

 

営業費用

営業費用は、19兆468億円と前連結会計年度にくらべ2兆9,198億円、18.1%の増加となりました。売上原価は、四輪事業における連結売上収益の増加に伴う費用の増加や為替影響などにより、16兆166億円と前連結会計年度にくらべ2兆4,405億円、18.0%の増加となりました。販売費及び一般管理費は、諸経費の増加などにより、2兆1,065億円と前連結会計年度にくらべ4,366億円、26.1%の増加となりました。研究開発費は、9,236億円と前連結会計年度にくらべ427億円、4.8%の増加となりました。

 

営業利益

営業利益は、諸経費の増加などはあったものの、売価およびコスト影響や販売影響による利益増などにより、1兆3,819億円と前連結会計年度にくらべ6,012億円、77.0%の増益となりました。なお、為替影響約1,511億円の増益要因を除くと、約4,500億円の増益と試算されます。

 

ここで記載されている変動要因の各項目については、当社が現在合理的であると判断する分類および分析方法に基づいています。なお、一部の分析項目において、当社および主要な連結子会社を対象に分析しています。

・「為替影響」については、海外連結子会社の財務諸表の円換算時に生じる「為替換算差」と外貨建取引から生じる「実質為替影響」について分析しています。「実質為替影響」については、米ドルなどの取引通貨の、対円および各通貨間における為替影響について分析しています。

・「売価およびコスト影響」については、販売価格の変動影響、コストダウン効果および原材料価格の変動影響などを対象に分析し、当該項目に影響する「為替影響」は除いています。

・「販売影響」については、連結売上台数や機種構成の変化に伴う利益の変動、金融サービス事業の売上収益の変化に伴う利益の変動に加え、その他の売上総利益の変化要因を対象に分析し、当該項目に影響する「為替影響」は除いています。

・「諸経費」については、販売費及び一般管理費の前連結会計年度との差から、当該科目に影響する「為替換算差」を除いて表示しています。

・「研究開発費」については、研究開発費の前連結会計年度との差から、当該科目に影響する「為替換算差」を除いて表示しています。

また、為替影響を除いた試算数値は、当社の連結財務諸表の金額とは異なっており、IFRSに基づくものではなく、IFRSで要求される開示に代わるものではありません。しかしながら、これらの為替影響を除いた試算数値は当社の業績をご理解いただくために有用な追加情報と考えています。
 

 

 

税引前利益

税引前利益は、1兆6,423億円と前連結会計年度にくらべ7,628億円、86.7%の増益となりました。営業利益の増加を除く要因は、以下のとおりです。
 持分法による投資利益は、日本の持分法適用会社における利益の増加はあったものの、アジア地域の持分法適用会社における利益の減少などにより、66億円の減益要因となりました。
 金融収益及び金融費用は、受取利息の増加やデリバティブから生じる損益の影響などにより、1,682億円の増益要因となりました。なお、詳細については、連結財務諸表注記の「22 金融収益及び金融費用」を参照ください。

 

法人所得税費用

法人所得税費用は、4,597億円と前連結会計年度にくらべ2,975億円、183.4%の増加となりました。また、当連結会計年度の平均実際負担税率は、前連結会計年度において、従前は未認識であった税務上の欠損金、税額控除または過去の期間の一時差異から生じた便益を認識した影響などにより、前連結会計年度より9.6ポイント高い28.0%となりました。なお、詳細については、連結財務諸表注記の「23 法人所得税 (1) 法人所得税費用」を参照ください。

 

当期利益

当期利益は、1兆1,825億円と前連結会計年度にくらべ4,652億円、64.9%の増益となりました。

 

親会社の所有者に帰属する当期利益

親会社の所有者に帰属する当期利益は、1兆1,071億円と前連結会計年度にくらべ4,557億円、70.0%の増益となりました。

 

非支配持分に帰属する当期利益

非支配持分に帰属する当期利益は、754億円と前連結会計年度にくらべ95億円、14.5%の増益となりました。

 

 

(二輪事業)

連結売上台数は、欧州地域で増加したことなどにより、1,221万9千台と前連結会計年度にくらべ0.5%の増加となりました。二輪事業の外部顧客への売上収益は、連結売上台数の増加や為替換算による増加影響などにより、3兆2,201億円と前連結会計年度にくらべ3,111億円、10.7%の増収となりました。なお、販売価格の変動はあったものの、売上収益に与える影響は軽微でした。また、前連結会計年度の為替レートで換算した場合、前連結会計年度にくらべ約2,046億円、約7.0%の増収と試算されます。

営業費用は、2兆6,639億円と前連結会計年度にくらべ2,436億円、10.1%の増加となりました。売上原価は、連結売上台数の増加に伴う費用の増加や為替影響などにより、2兆2,257億円と前連結会計年度にくらべ1,258億円、6.0%の増加となりました。販売費及び一般管理費は、品質関連費用を含む諸経費の増加などにより、3,564億円と前連結会計年度にくらべ1,080億円、43.5%の増加となりました。研究開発費は、816億円と前連結会計年度にくらべ97億円、13.6%の増加となりました。

営業利益は、品質関連費用を含む諸経費の増加などはあったものの、売価およびコスト影響による利益増などにより、5,562億円と前連結会計年度にくらべ675億円、13.8%の増益となりました。

 

日本

2023年度二輪車総需要(注)は、約39万台と前年度にくらべ約3%の減少となりました。

当連結会計年度の連結売上台数は、新型「CL250」の投入効果などはあったものの、「PCX」や「ジョルノ」の減少などにより、24万1千台と前連結会計年度にくらべ2.0%の減少となりました。

 

(注) 出典:JAMA(日本自動車工業会)

 

北米

主要市場である米国の2023年(暦年)二輪車・ATV総需要(注)は、約73万台と前年にくらべ約1%の増加となりました。

当連結会計年度の北米地域の連結売上台数は、主にメキシコにおいて、「Navi」の増加などにより、49万8千台と前連結会計年度にくらべ8.5%の増加となりました。

 

(注) 出典:MIC(米国二輪車工業会)

            二輪車・ATVの合計であり、Side-by-Side(S×S)は含まない。

 

欧州

欧州地域の2023年(暦年)二輪車総需要(注1)は、約118万台と前年にくらべ約10%の増加となりました。

当連結会計年度の連結売上台数は、「XL750 TRANSALP」や「CB750 HORNET」の増加などにより、44万台と前連結会計年度にくらべ26.8%の大幅な増加となりました。

 

(注) 1 英国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、スイス、ポルトガル、オランダ、ベルギー、オーストリアの10ヵ国の合計、当社調べ(ICE車の合計であり、EV/EM/EB(注2)は含まない。)

      2 EM:Electric Moped(電動モペッド)、最高速度25km/h~50km/hのカテゴリー。

     EB:Electric Bicycle(電動自転車)、最高速度25km/h以下のカテゴリー。

     電動アシスト自転車は含まない。

 

アジア

最大市場のインドの2023年(暦年)二輪車総需要(注1)は、約1,661万台と前年にくらべ約8%の増加となりました。その他アジア地域主要国の2023年(暦年)二輪車総需要(注2)は、インドネシアなどで販売が増加したものの、パキスタンなどで減少したことにより、約1,847万台と前年にくらべ約4%の減少となりました。

当連結会計年度の連結売上台数は、ベトナムにおける「Air Blade」シリーズや「Wave」シリーズの減少などにより、941万6千台と前連結会計年度にくらべ1.0%の減少となりました。

なお、持分法適用会社であるインドネシアのピー・ティ・アストラホンダモーターの販売台数は連結売上台数に含まれませんが、当連結会計年度の販売台数は、「BeAT」シリーズや「PCX」の増加などにより、約477万台と前連結会計年度にくらべ約7%の増加となりました。

 

(注) 1 当社調べ(ICE車の合計であり、EV/EM/EBは含まない。)

   2 タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナム、パキスタン、中国の7ヵ国の合計、当社調べ(ICE車の合計であり、EV/EM/EBは含まない。)

 

その他の地域

主要市場であるブラジルの2023年(暦年)二輪車総需要(注)は、約153万台と前年にくらべ約13%の増加となりました。

当連結会計年度の連結売上台数は、ブラジルにおける「Biz」シリーズや「PCX」シリーズの増加などにより、162万4千台と前連結会計年度にくらべ1.7%の増加となりました。

 

(注) 出典:ABRACICLO(ブラジル二輪車製造者協会)

 

 

(四輪事業)

連結売上台数は、北米地域で増加したことなどにより、285万6千台と前連結会計年度にくらべ19.9%の増加となりました。四輪事業の外部顧客への売上収益は、連結売上台数の増加などにより、13兆5,675億円と前連結会計年度にくらべ2兆9,740億円、28.1%の増収となりました。なお、販売価格の変動はあったものの、売上収益に与える影響は軽微でした。また、前連結会計年度の為替レートで換算した場合、前連結会計年度にくらべ約2兆3,305億円、約22.0%の増収と試算されます。セグメント間取引を含む四輪事業の売上収益は、13兆7,915億円と前連結会計年度にくらべ3兆97億円、27.9%の増収となりました。

営業費用は、13兆2,308億円と前連結会計年度にくらべ2兆4,325億円、22.5%の増加となりました。売上原価は、連結売上台数の増加に伴う費用の増加などにより、10兆9,099億円と前連結会計年度にくらべ2兆1,317億円、24.3%の増加となりました。販売費及び一般管理費は、諸経費の増加などにより、1兆5,065億円と前連結会計年度にくらべ2,683億円、21.7%の増加となりました。研究開発費は、8,142億円と前連結会計年度にくらべ324億円、4.1%の増加となりました。

営業利益は、諸経費の増加などはあったものの、売価およびコスト影響や販売影響による利益増などにより、5,606億円と前連結会計年度にくらべ5,772億円の増益となりました。
 

各カテゴリ別の販売台数構成比は概ね以下のとおりです。(小売販売台数ベース)

パッセンジャーカー(セダン・コンパクト等):前連結会計年度42%、当連結会計年度39%

ライトトラック(SUV・ミニバン等):前連結会計年度50%、当連結会計年度54%

軽自動車:前連結会計年度8%、当連結会計年度7%

 

四輪事業における主要な製品は以下のとおりです。

パッセンジャーカー(セダン・コンパクト等):

「ACCORD」 、「CITY」 、「CIVIC」 、「FIT」 、

「INTEGRA」、「JAZZ」

ライトトラック(SUV・ミニバン等):

「BREEZE」 、「CR-V」 、「FREED」 、「HR-V」 、「ODYSSEY」 、

「PILOT」 、「VEZEL」 、「ZR-V」

軽自動車:

「N-BOX」

 

カテゴリ別の収益性を決定する要因はさまざまですが、販売価格は重要な要素の一つと考えています。上記カテゴリごとの販売価格については、各モデルによって異なるものの、全体的には、ライトトラックは比較的高く、軽自動車は比較的低い傾向があります。

車両の貢献利益も各モデルによって異なりますが、一般的にライトトラックは販売価格が高いことから貢献利益も高く、軽自動車は販売価格が低いことから貢献利益も低い傾向があります。例えば、当社グループの主要な販売地域である日本市場と米国市場における、当連結会計年度のカテゴリ別の貢献利益は、ライトトラックは全カテゴリ平均と比較して約20%高く、パッセンジャーカーは同水準、軽自動車は約65%低いと試算されます。上記の貢献利益は売上収益から販売量に比例して発生すると考えられる材料費を控除した金額の台当たり金額と定義して算定したものです。

 

 

日本

2023年度四輪車総需要(注1)は、約452万台と前年度にくらべ、約3%の増加となりました。

当連結会計年度の連結売上台数(注2)は、新型車「ZR-V」の投入効果や「VEZEL」の増加などにより、52万5千台と前連結会計年度にくらべ8.5%の増加となりました。

当連結会計年度の生産台数は、70万7千台と前連結会計年度にくらべ9.9%の増加となりました。

 

(注) 1 出典:JAMA(日本自動車工業会:登録車+軽自動車)

2 当社の日本の金融子会社が提供する残価設定型クレジット等が、IFRSにおいてオペレーティング・リースに該当する場合、当該金融サービスを活用して連結子会社を通して提供された四輪車は、四輪事業の外部顧客への売上収益に計上されないため、連結売上台数には含めていません。

 

北米

主要市場である米国の2023年(暦年)四輪車総需要(注)は、約1,560万台と前年にくらべ約12%の増加となりました。

当連結会計年度の北米地域での連結売上台数は、「CR-V」や「CIVIC」が増加したことなどにより、162万8千台と前連結会計年度にくらべ36.2%の大幅な増加となりました。

当連結会計年度の北米地域での生産台数は、160万台と前連結会計年度にくらべ28.1%の大幅な増加となりました。

 

(注) 出典:Autodata

 

欧州

欧州地域の2023年(暦年)四輪車総需要(注)は、約1,284万台と前年にくらべ約14%の増加となりました。

当連結会計年度の連結売上台数は、新型車「ZR-V」の投入効果や「HR-V」の増加などにより、10万3千台と前連結会計年度にくらべ22.6%の大幅な増加となりました。

 

(注) 出典:ACEA(欧州自動車工業会)乗用車部門(EU27ヵ国、EFTA3ヵ国、英国)

 

 

アジア

アジア地域主要国の2023年(暦年)四輪車総需要(注1)は、インドやマレーシアなどで増加したことにより、約885万台と前年にくらべ約6%の増加となりました。

中国の2023年(暦年)四輪車総需要(注2)は、約3,009万台と前年にくらべ約12%の増加となりました。

当連結会計年度の連結売上台数の合計は、インドネシアにおける「BRIO」や「BR-V」の減少などにより、46万8千台と前連結会計年度にくらべ7.3%の減少となりました。

なお、持分法適用会社である中国の東風本田汽車有限公司および広汽本田汽車有限公司の販売台数は連結売上台数に含まれませんが、当連結会計年度の販売台数は、「ACCORD」や「VEZEL」の減少などにより、118万5千台と前連結会計年度にくらべ4.4%の減少となりました。

アジア地域の連結子会社の当連結会計年度の生産台数(注3)は、55万9千台と前連結会計年度にくらべ0.5%の増加となりました。

なお、持分法適用会社である中国の東風本田汽車有限公司および広汽本田汽車有限公司の当連結会計年度の生産台数は116万3千台と前連結会計年度にくらべ11.0%の減少となりました。

 

(注) 1 タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナム、台湾、インド、パキスタンの8ヵ国の合計、当社調べ

2 出典:中国汽車工業協会

3 タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、台湾、インド、パキスタンの7ヵ国の合計

 

その他の地域

主要市場であるブラジルの2023年(暦年)の四輪車総需要(注)は、約218万台と前年にくらべ約11%の増加となりました。

当連結会計年度の連結売上台数は、ブラジルにおける「HR-V」の増加などにより、13万2千台と前連結会計年度にくらべ15.8%の増加となりました。

当連結会計年度のブラジル工場での生産台数は、7万7千台と前連結会計年度にくらべ17.4%の増加となりました。

 

(注) 出典:ANFAVEA(ブラジル自動車製造業者協会:乗用車+軽商用車)

 

(金融サービス事業)

当社グループは、製品販売のサポートを主な目的として、日本・米国・カナダ・英国・ドイツ・ブラジル・タイにある金融子会社を通じて、顧客に対する金融サービス(小売金融、オペレーティング・リースおよびファイナンス・リース)および販売店に対する金融サービス(卸売金融)を提供しています。
 

金融サービスに係る債権およびオペレーティング・リース資産残高の合計は、13兆3,780億円と前連結会計年度末にくらべ2兆7,569億円、26.0%の増加となりました。また、前連結会計年度末の為替レートで換算した場合、前連結会計年度末にくらべ約1兆3,439億円、約12.7%の増加と試算されます。

金融サービス事業の外部顧客への売上収益は、ローン収益の増加や為替換算による増加影響などにより、3兆2,488億円と前連結会計年度にくらべ2,947億円、10.0%の増収となりました。また、前連結会計年度の為替レートで換算した場合、前連結会計年度にくらべ約1,239億円、約4.2%の増収と試算されます。セグメント間取引を含む金融サービス事業の売上収益は、3兆2,517億円と前連結会計年度にくらべ2,956億円、10.0%の増収となりました。

営業費用は、2兆9,778億円と前連結会計年度にくらべ3,075億円、11.5%の増加となりました。売上原価は、ローン収益の増加に伴う費用の増加や為替影響などにより、2兆8,053億円と前連結会計年度にくらべ2,611億円、10.3%の増加となりました。販売費及び一般管理費は、諸経費の増加などにより、1,724億円と前連結会計年度にくらべ463億円、36.8%の増加となりました。

営業利益は、為替影響などはあったものの、諸経費の増加などにより、2,739億円と前連結会計年度にくらべ118億円、4.2%の減益となりました。

 

 

(パワープロダクツ事業及びその他の事業)

パワープロダクツ事業の連結売上台数は、北米地域で減少したことなどにより、381万2千台と前連結会計年度にくらべ32.5%の減少となりました。パワープロダクツ事業及びその他の事業の外部顧客への売上収益は、パワープロダクツ事業の連結売上台数の減少などにより、3,922億円と前連結会計年度にくらべ588億円、13.0%の減収となりました。また、前連結会計年度の為替レートで換算した場合、前連結会計年度にくらべ約748億円、約16.6%の減収と試算されます。セグメント間取引を含むパワープロダクツ事業及びその他の事業の売上収益は、4,223億円と前連結会計年度にくらべ541億円、11.4%の減収となりました。

営業費用は、4,312億円と前連結会計年度にくらべ223億円、4.9%の減少となりました。売上原価は、パワープロダクツ事業の連結売上台数の減少に伴う費用の減少などにより、3,325億円と前連結会計年度にくらべ367億円、9.9%の減少となりました。販売費及び一般管理費は、諸経費の増加などにより、710億円と前連結会計年度にくらべ138億円、24.2%の増加となりました。研究開発費は、276億円と前連結会計年度にくらべ5億円、1.9%の増加となりました。

営業損失は、パワープロダクツ事業の販売影響による利益減などにより、88億円と前連結会計年度にくらべ317億円の減益となりました。なお、パワープロダクツ事業及びその他の事業に含まれる航空機および航空機エンジンの営業損失は、329億円と前連結会計年度にくらべ71億円の悪化となりました。

 

日本

当連結会計年度の連結売上台数は、OEM向けエンジンが減少したことなどにより、30万2千台と前連結会計年度にくらべ19.7%の減少となりました。

 

北米

当連結会計年度の連結売上台数は、OEM向けエンジンが減少したことなどにより、108万3千台と前連結会計年度にくらべ52.4%の大幅な減少となりました。
 

欧州

当連結会計年度の連結売上台数は、OEM向けエンジンが減少したことなどにより、79万4千台と前連結会計年度にくらべ32.0%の大幅な減少となりました。

 

アジア

当連結会計年度の連結売上台数は、OEM向けエンジンが減少したことなどにより、129万4千台と前連結会計年度にくらべ8.1%の減少となりました。

 

その他の地域

当連結会計年度の連結売上台数は、芝刈機やOEM向けエンジンが減少したことなどにより、33万9千台と前連結会計年度にくらべ19.1%の減少となりました。

 

 ② 重要な会計上の見積り

当社および連結子会社は、IFRSに準拠した連結財務諸表を作成するにあたり、会計方針の適用、資産・負債および収益・費用の報告額ならびに偶発資産・偶発債務の開示に影響を及ぼす判断、見積りおよび仮定の設定を行っています。実際の結果は、これらの見積りとは異なる場合があります。

なお、これらの見積りや仮定は継続して見直しています。会計上の見積りの変更による影響は、見積りを変更した報告期間およびその影響を受ける将来の報告期間において認識されます。

 

当社の連結財務諸表に重要な影響を与える可能性のある会計上の見積りおよび仮定に関する情報は、連結財務諸表注記の「2 作成の基礎 (5) 見積りおよび判断の利用」を参照ください。

 

 

 ③ 流動性と資金の源泉

(資金需要、源泉、使途に関する概要)

当社および連結子会社は、事業活動のための適切な資金確保、適切な流動性の維持および健全なバランスシートの維持を財務方針としています。当社および連結子会社は、主に二輪車、四輪車およびパワープロダクツの製造販売を行うとともに、製品の販売をサポートするために、顧客および販売店に対する金融サービスを提供しています。生産販売事業における主な運転資金需要は、製品を生産するために必要となる部品および原材料や完成品の在庫資金のほか、販売店向けの売掛金資金です。また設備投資資金需要のうち主なものは、新機種の投入に伴う投資や、生産設備の拡充、合理化および更新ならびに販売施設や研究開発施設の拡充のための必要資金です。また、当社グループは、モビリティカンパニーとして、「環境負荷ゼロ」「絶対安全」という大きな課題に真摯に向き合い、当社グループのめざす未来のモビリティや魅力的なモビリティ社会を、「環境・安全」という社会的価値を携えて実現することで、企業としての新たな成長軌道を描いていきたいと考えています。こうした「環境・安全」の実現に向けて事業変革フェーズに応じた戦略的な資源配分を実施していきます。なお、市場動向を見極めながら投資タイミングは柔軟に変更するものの、2030年にEV200万台生産体制の構築に向けて、2021年度からの10年間で、設備投資と研究開発費などで合わせて10兆円の資源投入を計画しています。上記取り組みに関する資源配分の計画に関しては、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 ⑥ 経済的価値の向上 1.事業変革フェーズに応じた戦略的な資源配分」を参照ください。 

生産販売事業における必要資金については、主に営業活動から得られる資金、銀行借入金および社債の発行などによりまかなっております。なお、当社は、2021年度において、「環境」と「安全」への取り組みに対する支出の一部を社債発行により調達するためのサステナブル・ファイナンス・フレームワークを設定し、資金使途をそのフレームワークに準じた環境事業に限定する米ドル建てグリーンボンドを、総額27.5億米ドル発行しました。これらを踏まえ、現在必要とされる資金水準を十分確保していると考えています。これら生産販売事業の資金調達に伴う当連結会計年度末の債務残高は8,630億円となっています。また、顧客および販売店に対する金融サービスでの必要資金については、主にミディアムタームノート、銀行借入金、金融債権の証券化、オペレーティング・リース資産の証券化、コマーシャルペーパーの発行および社債の発行などによりまかなっています。これら金融子会社の資金調達に伴う当連結会計年度末での債務残高は9兆3,085億円となっています。

当社および連結子会社の借入必要額に、重要な季節的変動はありません。

今後も必要資金と手元資金の状況を鑑みながら、必要に応じて資金調達を検討していきます。

 

(流動性)

当社および連結子会社の当連結会計年度末の現金及び現金同等物4兆9,545億円は、主に米ドル建てと円建てを中心としていますが、その他の外貨建てでも保有しています。 

当社および連結子会社の当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、売上収益の約2.9ヵ月相当の水準となっており、当社および連結子会社の事業運営上、十分な流動性を確保していると考えています。

しかしながら、景気後退による市場の縮小や金融市場・為替市場の混乱などにより、流動性に一部支障をきたす場合も考えられます。このため、特に1兆1,923億円の短期債務を負う金融子会社では、継続的に債務を借り換えしているコマーシャルペーパーについて、代替流動性として合計1兆4,615億円相当の契約信用供与枠(コミットメントライン)を保有しています。さらに、有価証券報告書提出日現在、当社および連結子会社は世界的に有力な銀行と契約に基づかない信用供与限度額を十分に設定しています。

当社および連結子会社の当連結会計年度末の資金調達に係る債務は、主に米ドル建てを中心としていますが、円建てやその他の外貨建てでも保有しています。

資金調達に係る債務の追加情報については、連結財務諸表注記の「15 資金調達に係る債務」および「25 金融リスク管理」を参照ください。

また、当社および連結子会社が発行する短期および長期債券は、ムーディーズ・インベスターズ・サービス、スタンダード・アンド・プアーズおよび格付投資情報センターなどから、2024年3月31日現在、以下の信用格付を受けています。

 

 

信用格付

短期格付

長期格付

ムーディーズ・インベスターズ・サービス

P-2

A3

スタンダード・アンド・プアーズ

A-2

A-

格付投資情報センター

a-1+

AA

 

 

なお、これらの信用格付は、当社および連結子会社が格付機関に提供する情報または格付機関が信頼できると考える他の情報に基づいて行われるとともに、当社および連結子会社の発行する特定の債券に係る信用リスクに対する評価に基づいています。各格付機関は当社および連結子会社の信用格付の評価において異なった基準を採用することがあり、かつ各格付機関が独自に評価を行っています。これらの信用格付はいつでも格付機関により改訂または取り消しされることがあります。また、これらの格付は債券の売買・保有を推奨するものではありません。

 

 

 ④ 簿外取引

(貸出コミットメント)

当社および連結子会社は、販売店に対する貸出コミットメント契約に基づき、貸付金の未実行残高を有しています。当連結会計年度末において、販売店への保証に対する割引前の将来最大支払額は、923億円です。これらの貸出コミットメント契約には、貸出先の信用状態等に関する審査を貸出の条件としているものが含まれているため、必ずしも貸出実行されるものではありません。

 

(従業員の債務に対する保証)

当社および連結子会社は、当連結会計年度末において、従業員のための銀行住宅ローン50億円を保証しています。従業員が債務不履行に陥った場合、当社および連結子会社は、保証を履行することを要求されます。債務不履行が生じた場合に、当社および連結子会社が負う支払義務の割引前の金額は、当連結会計年度末において、上記の金額です。2024年3月31日現在、従業員は予定された返済を行えると考えられるため、当該支払義務により見積られた損失はありません。

 

 ⑤ 契約上の債務

当連結会計年度末における契約上の債務は、以下のとおりです。

 

期間別支払金額(百万円)

合計

1年以内

1~3年

3~5年

それ以降

資金調達に係る債務

10,941,618

4,379,834

4,050,714

1,824,995

686,075

その他の金融負債

736,378

239,112

166,843

104,716

225,707

発注残高およびその他契約残高(注1)

108,440

101,068

7,152

220

確定給付制度への拠出(注2)

38,252

38,252

合計

11,824,688

4,758,266

4,224,709

1,929,931

911,782

 

  (注) 1 当社および連結子会社の発注残高は、設備投資に関するものです。

 2 2025年度以降の拠出額は未確定であるため、確定給付制度への拠出は、次連結会計年度に拠出するもののみ記載しています。

 

 ⑥ 市場リスクに関する定量および定性情報の開示

連結財務諸表注記の「25 金融リスク管理 (2) 市場リスク」を参照ください。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社および連結子会社の研究開発は、先進の技術によって、個性的で国際競争力のある商品群を生み出すことを目的としています。製品に関する研究開発につきましては、当社のほか、㈱本田技術研究所、ホンダディベロップメントアンドマニュファクチュアリングオブアメリカ・エル・エル・シーを中心に、また、生産技術に関する研究開発につきましては、当社のほか、ホンダディベロップメントアンドマニュファクチュアリングオブアメリカ・エル・エル・シーを中心に、それぞれ現地に密着した研究開発を行っています。

当社は電動事業のさらなる強化、加速をはかるため、電動事業の強化に向けて2022年4月に発足した事業開発本部をベースとし、電動事業開発本部を発足しました。この本部に、四輪事業に関わる事業戦略機能と電気自動車(EV)の商品開発機能、ならびに二輪・パワープロダクツ事業に関わる電動領域の戦略および開発機能を集約し、「電動事業のさらなる加速」とモビリティの拡がりによる「新たな価値創造」の実現をめざしていきます。

当連結会計年度に発生した研究開発支出は、9,763億円となりました。

また、当社および連結子会社では研究開発支出の一部について、無形資産に計上しています。連結損益計算書に計上されている研究開発費の詳細については、連結財務諸表注記の「21 研究開発費」を参照ください。

 

セグメントごとの研究開発活動の状況につきましては、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来生じうる実際の結果と大きく異なる可能性もあります。詳細は「3 事業等のリスク」を参照ください。

 

(二輪事業)

二輪事業では、「チャレンジする組織風土を最大化し、今後の環境変化を乗り越え、手の届く価格で、お客様に喜んでもらえる商品を創造し続けられるものづくり集団となる」を方針として、研究開発活動に取り組んでまいりました。

主な成果として、2023年4月にインドにて、競合他社が高いマーケットシェアを占める地区での攻略を見据えて開発したモーターサイクルである「Shine 100」を発売しました。新エンジン、新フレーム設計によるコスト低減活動を反映し競争力のある価格を実現しています。

さらに、モダンなデザインと実用的な仕様装備、お買い得感のある価格でATシェア拡大をめざす、「GIORNO+」をタイにて発売し、インドネシアにおいては「Stylo 160」を発売しました。

加えて、二輪車用有段式マニュアルトランスミッションのクラッチコントロールを自動制御することで、ライダーの手動によるクラッチレバー操作を不要とした、「Honda E-Clutch」を世界で初めて(注1)開発しました。「Honda E-Clutch」は、発進、変速、停止など、駆動力が変化するシーンで、ライダーのクラッチレバー操作を必要とせず、最適なクラッチコントロールを自動制御することで違和感のないスムーズなライディングを実現する電子制御技術です。また、ライダーの要求に幅広く対応するため、電子制御によるクラッチコントロール中でも、ライダーがクラッチレバー操作を行えば、通常のマニュアルトランスミッション車と同様、手動によるクラッチコントロールを行えるようにしています。この「Honda E-Clutch」は、軽量コンパクトなシステムで構成されており、既存のエンジンレイアウトを大きく変更することなく車体に搭載できるため、既に発売した「CB650R」や「CBR650R」を皮切りに、趣味性の高いFUNモーターサイクルへ順次適用していきます。

また、サウジアラビアで開催されたFIM(注2)世界ラリーレイド選手権の開幕戦で「世界一過酷なモータースポーツ競技」と言われている「ダカールラリー2024」に、「Monster Energy Honda Team」として、ワークスマシン「CRF450 RALLY」で参戦し、2021年以来3年ぶりとなる総合優勝を果たしました。

「環境負荷ゼロ」へ向けた取り組みとして、2040年代にすべての二輪製品でのカーボンニュートラルを実現することをめざし、2030年における当社グループのグローバルでの電動二輪車の年間販売台数目標を、2022年9月に公表した数値から50万台引き上げた400万台とし、さらに、2030年までに、グローバルで電動モデルを合計約30機種投入していきます。2023年は、「EM1 e:」を、欧州、日本、インドネシアにて発売しました。

「EM1 e:」は、交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」を動力用電源に採用した、原付一種(第一種原動機付自転車)の電動二輪パーソナルコミューターで、Honda国内二輪ラインアップで初めてとなる一般向けの電動二輪車となります。

さらに、2024年には「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」に出展した「SC e: Concept」をベースとしたモデルを、2025年にはFUN用途に使えるモデルや、プラグイン充電式の電動二輪車をそれぞれ世界各国に投入します。これらのモデルに加えスーパースポーツ、オフロード、Kids向けバイク、ATVなど、電動二輪車のフルラインアップ化への取り組みを加速させていきます。

また、モータースポーツでも、電動オフロードバイクの世界戦であるFIM E-Xplorer World Cupに、㈱ホンダ・レーシングが運営するワークスチーム(注3)「Team HRC」として、電動モトクロスバイク「CR ELECTRIC PROTO」で参戦するなど、新たな電動二輪車レースに挑戦することで、技術の強化を進めていきます。

二輪事業に係る研究開発支出は、799億円となりました。

 

(注) 1 当社調べ(2023年10月時点)

2 Fédération Internationale de Motocyclisme(国際モーターサイクリズム連盟)の略称

3 マシンを製造しているメーカーが運営しているチーム

 

 

(四輪事業)

四輪事業では、「魅力ある強い商品のために総合力を発揮し、ものづくりプロセスの深化により、四輪事業を永続的に成長させる」を方針として研究開発に取り組んでまいりました。

主な成果として、2023年10月に3代目となる新型「N-BOX」を発売しました。新型「N-BOX」は上質さが感じられるデザインに磨き上げるとともに、広い室内空間はそのままに、開放感のあるすっきりとした視界にすることで運転がしやすく、居心地の良い空間を実現しました。また、お客様がより安心・快適なカーライフを楽しむために新世代コネクテッド技術を搭載した車載通信モジュール「Honda CONNECT」をHondaの軽自動車として初めて採用しました。さらに、先進の安全運転支援システム「Honda SENSING」を標準装備しました。従来機能のほか、近距離衝突軽減ブレーキ、急アクセル抑制機能を新たに追加しました。

また、インド生産の新型SUV「WR-V」をインド、日本および南アフリカで発売しました。「WR-V」は、安心と信頼を感じられる力強いデザインとするとともに、クラストップレベル(注1)の荷室空間を実現し、また、すべての人が安心して運転できるダイナミック性能の提供をめざしました。

「環境負荷ゼロ」へ向けた取り組みとして、当社グループは2040年までにEV・FCEV販売比率をグローバルで100%とする目標を掲げ、各地域の市場特性にあわせたEVの投入を進めています。

北米においては、新型EV「PROLOGUE」Acura「ZDX」を2024年に発売しました。「PROLOGUE」と「ZDX」はともに、ゼネラルモーターズ(GM)の「Ultium」バッテリーを搭載したGMとの共同開発モデルであり、カーボンニュートラル実現に向けた北米の電動化戦略を力強く加速させるモデルとなります。

2024年1月には、米国ネバダ州ラスベガス市で開催されたCES 2024において、2026年よりグローバル市場への投入を開始する新たなEV「Honda 0シリーズ」を発表しました。「Honda 0シリーズ」は、グローバルブランドスローガンや電動化方針のもと、大きく変革するHondaを象徴するEVシリーズです。新たなEVシリーズの開発にあたり、「Hondaのクルマづくりの出発点に立ち返り、ゼロから全く新しいEVを創造していく」という決意が込められています。HondaのEV戦略を担う「Honda 0シリーズ」は、“Thin, Light, and Wise.(薄く、軽く、賢く)”という新たなEV開発アプローチにより、ゼロからの発想で創り出す、全く新しいEVシリーズです。「Honda 0シリーズ」は、2026年に北米での上市を皮切りに、2030年までに小型から中大型モデルまで、グローバルで7モデルの投入を予定しています。

中国においては、2027年までにEVを10機種投入し、2035年までにEV販売比率100%の達成をめざしています。現在展開している「e:N」シリーズに加えて、新型EV「イエ」シリーズを発表し、引き続きEVラインアップを拡充していきます。

「イエ」シリーズは、次世代EVとしての価値をより高めることを追求しました。当社グループのクルマづくりの理念である「M・M思想(注2)」に基づく人を中心としたパッケージングに加え、走行性能においては、中国で新開発したEV専用プラットフォームの適用と、長年培った電動化技術の融合により、「操る喜び」をさらに突き詰めました。また、智能化技術においては、先進のAIによるサポートなど、全ての乗員が快適に移動できる空間をめざしています。

小型EVについては、2024年秋に日本で発売を予定する軽商用EV「N-VAN e:」を皮切りに、2025年には軽乗用EVモデル、2026年には操る楽しさを際立たせた小型EVなど、小型EVのニーズがある地域に対して順次製品を投入していきます。さらに、「Honda Mobile Power Pack e:」を活用した電動化展開として、2025年度中に「Honda Mobile Power Pack e:」を4個搭載する超小型モビリティを日本へ投入するなど拡充をはかっていきます。

また、当社グループは、水素を電気とともに有望なエネルギーキャリアと位置づけており、2024年2月には、2024年夏に日本で発売予定の新型燃料電池車、「CR-V e:FCEV」を世界初公開しました。「CR-V e:FCEV」は、日本の自動車メーカーが発売するモデルとして初めて(注3)、外部から充電可能なプラグイン機能を持つ燃料電池車です。燃料電池車が持つ長い航続距離と水素の充填時間の短さといった特長はそのままに、家庭や外出先で充電できるプラグイン機能を加えることで利便性をさらに高めています。

「交通事故死者ゼロ」へ向けた取り組みとしては、2023年11月に、車両周辺の死角をカバーし、交通事故の回避やドライバーの運転負荷の軽減をサポートする全方位安全運転支援システム「Honda SENSING 360+」を発表しました。「Honda SENSING 360+」は、従来の「Honda SENSING 360」の機能に加え、新たにドライバーモニタリングカメラ、高精度地図を採用することでドライバーの状態確認や、車両の制御機能が向上し、ドライバーの運転負荷を軽減させます。これにより、健康起因やヒューマンエラーで発生する事故を抑制し、全ての人が心から安心して自由に移動できることに加え、「積極的に出かけたい」「もっと遠くまで行きたい」と思えるようなクルマの提供をめざします。「Honda SENSING 360+」は、2024年に中国で、「ACCORD」から適用を開始します。その後、グローバルでの展開を予定しています。

四輪事業に係る研究開発支出は、8,699億円となりました。

 

(注) 1 コンパクトSUVクラスにおいて。当社調べ(2023年12月時点)

2 マン・マキシマム/メカ・ミニマム思想。人間のためのスペースは最大に、機械のためのスペースは最小限にして、クルマのスペース効率を高めようとする、当社グループのクルマづくりの基本的な考え方

3 当社調べ(2024年2月時点)

 

(パワープロダクツ事業及びその他の事業)

パワープロダクツ事業では、「暮らしの“未来”を創造し「役立ち」と「喜び」を更なる高みへ」を方針として、研究開発活動に取り組んでまいりました。

主な成果として、高い動力性能や優れた経済性でご好評をいただいている4ストローク船外機「BFシリーズ」において最大出力となる350馬力を発揮する、新型船外機「BF350」を、2024年2月に発売しました。「BF350」は、新たに専用設計で開発したV型8気筒エンジンを搭載し、排気量4,952cm3、最大出力350馬力の力強い推進力を発揮するHonda船外機のフラッグシップモデルです。豊かなトルクからもたらされる高い走破性に加え、新設計のクランクシャフトを採用することで、高い静粛性・低振動を実現しています。また、環境にやさしく経済的な船外機をめざし、クラストップレベルの燃費性能(注1)を達成しました。2024年1月には、米国BOATING誌より、最先端技術によりボートオーナーの体験に良い影響を与えた船外機に贈られる「Marine Power Innovation Awards 2023」を受賞しました。

「環境負荷ゼロ」へ向けた取り組みとしては、島根県松江市にて、2023年8月から小型船舶用の4kW電動推進機プロトタイプを用いた実証実験を開始しています。今回の実証実験で使用する電動推進機プロトタイプは、当社グループとトーハツ㈱が共同で開発しました。当社グループが出力4kWの電動パワーユニット、トーハツ㈱はギアケースやロアーユニットなどのフレーム領域をそれぞれ担当しており、バッテリーには当社グループの二輪車で使用している交換可能な着脱式可搬バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」を採用しています。なお、2024年1月からは一般の方の乗船を対象とした実証実験も開始しています。

「新たな価値創造」へ向けた取り組みとして、船外機においては、船一艇でのシステム開発に取り組んでいます。2024年2月に米国・マイアミで開催された「Miami International Boat Show 2024」にて、操船者の死角をカバーする「マルチビューカメラシステム」や、操船者が停船スペースを選択し、自動で停船スペースまで移動・停船する「自動着桟システム」、船の陸揚げする牽引トレーラーまで自動で操船し、トレーラーのレールに積載させる「自動トレーラーローディングシステム」など、知能化による技術進化を発表しました。

また、船外機以外については、当社グループ初となるバッテリー駆動の自律型電動ゼロターン乗用芝刈り機のプロトタイプ「Honda Autonomous Work Mower(以下「Honda AWM」という。)」を、2023年10月に米国・ケンタッキー州ルイビル市で開催された「Equip Exposition 2023」へ出展しました。「Honda AWM」は、ティーチング&プレイバック機能により、事前に学習したルートに沿って自動で芝刈り作業行います。2024年初めには、米国の大手造園会社との実証実験を終え、今後も企業との実証を重ねる中で、「Honda AWM」の更なる改良をめざします。

当社グループはこれからも、「新たな価値創造」へ向けた取り組みを加速していきます。

航空機においては、Honda独自の最先端技術を開発して、空の世界においても新しい価値を創造し、長期的な観点から航空機ビジネスを成長させていくためのビジネス基盤の構築をしてまいりました。

2023年10月に米国ネバダ州ラスベガスにて開催された世界最大のビジネス航空機ショー、2023 ビジネス アビエーション コンベンション アンド エキシビション(2023 NBAA-BACE)にて、開発中の新型小型ビジネスジェット機の名称「HondaJet Echelon」を発表しました。「HondaJet Echelon」は、あらゆる面で移動効率を高め、ライトジェット機より上位の機体カテゴリーと同等レベルの飛行体験を提供します。Honda独自の技術である主翼上面エンジン配置、自然層流翼型・ノーズ、コンポジット胴体をさらに進化させたことで、乗員・乗客合わせて最大11名が搭乗できます。

また、2015年後半から「HondaJet」のデリバリーを開始して以来、2023年度には250機目となるデリバリーを達成しました。「HondaJet」は14カ国・地域で型式証明を取得しており、総飛行時間は21万時間以上を記録し、航空機の信頼指数であるDispatch Reliability(出発信頼度)(注2)において、高い信頼性で業界をリードしています。

パワープロダクツ事業及びその他の事業に係る研究開発支出は、264億円となりました。

 

(注) 1 当社調べ(2024年1月時点)

2 運行予定時刻から15分以内に出発した割合のこと。航空業界において、飛行機の信頼性の指数として用いられている。

 

 

次世代技術分野においては、2023年10月に開催された「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」にて、人と分かり合える独自のAIである協調人工知能「Honda CI(Cooperative Intelligence)」を搭載し、自動走行技術により、ラストワンマイルを誰でも手軽に自由に移動できる二人乗りの四輪電動モビリティの実証車である「Honda CI-MEV」を出展しました。公共交通機関が無い場所での移動や長距離の歩行が困難な場合など、移動範囲が狭くなりがちな人の生活圏の拡張を実現することをめざしています。

また、2024年2月には、「Honda CI」を搭載した「Honda CIマイクロモビリティ」の技術実証実験の一環として、一般向け自動走行技術実証実験を茨城県常総市で開始しました。CIマイクロモビリティを一般のお客様に体験いただき、フィードバックを得ることで、CIの進化、モビリティとしての使い勝手の向上をめざすとともに、2030年頃の実用化を見据えた社会受容性の醸成をはかっていきます。

当社グループは、いつでも、どこでも、どこへでも、人とモノの移動を「交通事故ゼロ」・「ストレスフリー」で可能とし、「自由な移動の喜び」を一人ひとりが実感できる社会の実現をめざし、CIマイクロモビリティの技術開発に取り組んでいます。

2023年10月には、カナダのトロント・ピアソン空港にて、プラットフォーム型自律移動モビリティ「Honda Autonomous Work Vehicle(以下「Honda AWV」という。)」を活用した実証実験を実施しました。「Honda AWV」は、マッピングと障害物検知機能を活用し、オペレーターによって独自に設定されたルートの自律的な走行や、障害物との衝突を回避するための自動減速・自動停止などを行います。

さらに、2024年2月に開催された「WIND EXPO 春 ~第13回 国際 風力発電展~」にて、洋上風力発電のメンテナンスなど水中作業に活用可能な遠隔操作型の無人潜水機「作業用ROV(Remotely Operated Vehicle)コンセプトモデル」を世界初公開しました。2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、クリーンエネルギーの創出は重要であり、その中でも洋上風力発電の発電量が今後大きく伸びることが予測されています。当社グループは洋上風力発電施設の施工・メンテナンスに貢献することをめざして、ASIMOをはじめとするロボティクス研究で培った技術を活用した作業用ROVの研究開発を行っています。

なお、これらの取り組みに係る研究開発支出は各事業に配分されています。

 

当連結会計年度末時点において、当社および連結子会社は、国内で13,100件以上、海外で26,600件以上の特許権を保有しています。また、出願中の特許が国内で4,800件以上、海外で11,900件以上あります。当社および連結子会社は、特許の重要性を認識していますが、特許のうちのいくつか、または、関連する一連の特許が終了または失効したとしても、当社および連結子会社の経営に重要な影響を及ぼすことはないと考えています。