第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 当社グループの経営理念及び経営方針

① グループ経営理念

 郵政ネットワークの安心、信頼を礎として、民間企業としての創造性、効率性を最大限発揮しつつ、お客さま本位のサービスを提供し、地域のお客さまの生活を支援し、お客さまと社員の幸せを目指します。また、経営の透明性を自ら求め、規律を守り、社会と地域の発展に貢献します。

 

② グループ経営方針

・ お客さまの生活を最優先し、創造性を発揮しお客さまの人生のあらゆるステージで必要とされる商品・サービスを全国ネットワークで提供します。

 ・ 企業としてのガバナンス、監査・内部統制を確立しコンプライアンスを徹底します。

 ・ 適切な情報開示、グループ内取引の適正な推進などグループとしての経営の透明性を実現します。

 ・ グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指します。

・ 働く人、事業を支えるパートナー、社会と地域の人々、みんながお互い協力し、社員一人ひとりが成長できる機会を創出します。

 

(2) 経営環境

当連結会計年度の国内経済は、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況により一部弱さが残るものの、各種政策の効果や海外経済の改善もあり、持ち直しの動きが見られました。しかし、2022年2月以降ロシアによるウクライナ侵攻の影響を受け、景気の下振れリスクが急速に高まりました。

世界経済においても、ワクチン接種の進捗等により、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が緩和される中、先進国経済の回復が海外経済の改善を牽引し、国・地域ごとにばらつきがあるものの、全体的には回復が見られました。しかし、2022年2月以降ロシアによるウクライナ侵攻の影響を受け、エネルギーのロシア依存度が高い欧州経済への悪影響が強く懸念されるほか、資源価格高騰やサプライチェーンの混乱により、世界的に景気の不透明感が強まりました。

金融資本市場では、国内の10年国債利回りは、長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策のもと、ゼロ%付近で概ね安定的に推移しておりましたが、2022年1月以降欧米の長期金利が上昇するにつれて上昇しました。日経平均株価は、米国金利低下に伴う円高進行や新型コロナウイルス感染症の拡大への懸念から下落傾向にありましたが、2021年8月下旬からの感染拡大ピークアウトの兆しや米国株高を受けて上昇に転じ、9月には一時30,000円台まで回復しました。その後は、新型コロナウイルス感染症の新たな変異株への懸念等により下落傾向が続き、2022年3月にはロシアによるウクライナ侵攻の影響を受け、一時24,000円台まで落ち込みました。

物流業界においては、eコマース市場の拡大が継続している中、各社が商品・サービスの向上を通じたシェア獲得に取り組むなど、厳しい競争下にあります。郵便事業においては、デジタル化の進展等により、郵便物の減少が継続しております。また、最低賃金の改定等を背景に、人件費単価の上昇等も続いております。

銀行業界においては、当連結会計年度は、全国銀行における預金は23年連続で増加し、貸出金も11年連続で増加しました。金融システムは、新型コロナウイルス感染症の拡大が引き続き国内外の経済・金融面に大きな影響を及ぼしているものの、全体として安定性を維持しております。

生命保険業界においては、超高齢社会の進展、ライフスタイルの変化等を背景としたお客さまニーズの多様化や選別志向の高まりが見られます。

当社グループは、「郵便・物流」「貯金」「保険」の生活に必要な基礎的サービスや物販、提携金融サービス等を全国約2万4,000カ所の郵便局ネットワークを通じて提供するほか、不動産事業など多数のサービスを展開しております。郵便・物流事業においては1日に約3,100万カ所への郵便配達箇所数、銀行業においては約1億2,000万口座の通常貯金口座数、生命保険業においては2,105万人のお客さま数(契約者さま及び被保険者さまを合わせた人数(個人保険及び個人年金保険を含み、かんぽ生命保険が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約を含みます。))など、毎日の生活の中で多くのお客さまにご利用頂いており、お客さまとの接点の多さは当社グループの強みとなっております。

 

(3) 当社グループの経営戦略等

① 中期経営計画等について

当社グループは、2021年5月に、中期経営計画「JPビジョン2025」(2021年度~2025年度)を発表しました。当社グループは、少子高齢化やデジタル化の進展等、グループを取り巻く社会環境の変化を踏まえ、お客さまと地域を支える「共創プラットフォーム」を目指し、DXの推進により、リアルの郵便局ネットワークとデジタルの融合に取り組んでおります。また、ユニバーサルサービスを含むコアビジネス(郵便・物流事業、銀行業、生命保険業)の充実強化に加え、不動産事業の拡大や、新規ビジネス等の推進により、ビジネスポートフォリオを転換させることで、グループの新たな成長の実現に取り組んでおります。

 

※ DXとは、企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立することです。

 

〔日本郵政グループが目指す姿〕


 

当社は、収益性を明確にお示しする指標として、連結当期純利益、親会社株主に帰属する当期純利益及びROEを採用しております。また、株主に対する利益の還元を経営上重要な施策の一つとして位置付けております。

 

 

 

② 経営者の問題意識と今後の方針

当社グループは、中期経営計画「JPビジョン2025」において、お客さまと地域を支える「共創プラットフォーム」を、当社グループが目指す姿として掲げております。当社グループの最大の強みである郵便局ネットワークにより、グループ内で一体的なサービスを提供していくとともに、これまでになかったグループ外の多様な企業等との連携を行うことで、地域において生活するお客さまが、安全・安心で、快適で、豊かな生活・人生を実現することを支えてまいります。

当社グループが抱える経営課題については、持株会社として、グループ各社と連携を深めながら、必要な支援を行い、その解消に努めます。

まずは、業務の適正を確保するため、コーポレートガバナンスのさらなる強化に向け、引き続き、グループ全体の内部統制の強化を推進し、コンプライアンス水準の向上を重点課題として、グループ各社に必要となる支援・指導を行います。特に、かんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題を受けた業務改善計画の実行に、引き続き着実に取り組んでまいります。

また、当連結会計年度において、郵便物等の放棄・隠匿、郵便局長等による資金横領等の不祥事案が発覚・発生するとともに、業務用カレンダーの配布に当たり、郵便局長が会社の活動と業務外の活動をしゅん別せず、また、お客さま情報を目的外に使用した等の不適切な取扱いがあった事案が発覚しました。これを踏まえ、お客さまからの信頼確保に向け、これらの事案の再発防止策を徹底してまいります。併せて、部内犯罪や社員の不正、不適正営業の防止、個人情報保護、マネー・ローンダリング対策等の取組みを継続・強化してまいります。

そして、郵便、貯金及び保険のユニバーサルサービスの確保については、交付金・拠出金制度も活用しつつ、その責務を果たし、地域社会に貢献するとともに、郵便局ネットワークの一層の活用・維持による安定的なサービスの提供等を図るため、グループ各社の経営の基本方針を策定し、その実施に努めてまいります。

ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の株式については、2社の経営状況、ユニバーサルサービスの責務の履行への影響等を勘案しつつ、できる限り早期に処分するものとするという郵政民営化法の趣旨に沿って、所要の準備を行ってまいります。

「持続可能な開発目標(SDGs)」を踏まえ、ESGに関する取組みをグループ全体として推進し、企業価値の向上につなげてまいります。具体的には、政府が掲げる「2050年カーボンニュートラルの実現」に向けた動きを踏まえ、CO2の排出量削減に向けたグループ全体のEV車両の導入拡大、カーボン排出係数の低い電力への段階的な切り替え等により、事業サービスを通じた環境負荷軽減等にも積極的に取り組みます。

そのほか、人的依存度の高いサービスを提供する当社グループにとって、人材は最も重要な経営資源との認識に立ち、お客さまへの総合的なコンサルティングサービス向上に向けた研修等の人材育成、女性管理職の登用拡大に向けた計画的な女性社員の育成、仕事と生活の両立ができる職場風土づくりなど、社員の多様な能力・個性を活かすダイバーシティ・マネジメントの推進に取り組んでまいります。

また、自然災害の発生や感染症の大流行等の危機に備え、危機管理態勢を整備するとともに、危機発生時には迅速かつ的確な対応を行い、業務継続の確保に努めます。特に、新型コロナウイルス感染症の流行下において、当社グループは、公益性が強いグループとしての社会的使命を果たすため、感染防止・感染拡大防止対策を行い、社員の安全確保と事業運営の継続に取り組んでまいります。

 

当社は、必要に応じ、自己株式の取得を行うことにより資本効率の維持・向上を図ることとしており、2021年6月10日付の取締役会決議に基づき、2021年6月11日付で自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)により、当社普通株式276,090,500株を取得、2021年6月18日付の取締役会決議に基づき、2021年6月30日付で保有自己株式のうち732,129,771株を消却いたしました。

また、2021年10月6日付の取締役会決議に基づき、2021年11月1日から2022年4月7日の間、取引一任契約に基づく市場買付により当社普通株式110,072,500株を取得し、2022年4月25日付の取締役会決議に基づき、2022年5月20日付で保有自己株式のうち110,072,529株を消却いたしました。その結果、2022年5月20日時点における発行済株式総数は3,657,797,700株となりました。

なお、日本国政府は、2021年10月に公表した当社株式の国内売出し及び海外売出しにより当社株式1,027,477,400株を処分しており、その時点において、日本国政府による当社株式の保有割合は発行済株式の約33.3%(自己株式を除く議決権保有割合は約33.3%)となりました

さらに、2022年5月13日付の取締役会決議に基づき、2022年5月16日から2023年3月31日までを取得期間とし、当社普通株式278,000,000株、取得価額の総額2,000億円をそれぞれ上限として、取引一任契約に基づく市場買付による当社自株式の取得を実施することを決議しております。同決議に基づき、2022年5月16日から2022年5月31日までの間に、15,430,700株を取得いたしました。これにより、2022年5月末日現在における発行済株式総数に対する政府が保有する株式の保有割合は34.3%(議決権保有割合は34.5%)となっております。

 

(4) 対処すべき課題

① 当社グループの「お客さまの信頼回復に向けた約束」について

2019年度に発覚したかんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題など金融商品販売に係る不祥事等を受け、当社グループが真にお客さま本位の企業グループに生まれ変わる決意を幅広く公表するために、外部専門家で構成されるJP改革実行委員会の助言も受けながら、「お客さまの信頼回復に向けた約束」を2020年9月に策定いたしました。

2021年9月のJP改革実行委員会において、「日本郵政グループが一丸となり取り組んできた信頼回復に向けた活動は、この1年間で一定の成果があげられたものと評価できる」との評価をいただきました。また、「これからは、本格的に顧客との信頼を構築していくために次のフェーズの活動に移行していくべき。真に顧客本位の事業運営を徹底することで、顧客との信頼構築に向けて取り組んでいくことが必要」との提言をいただきました。

    今後は、経営理念や行動憲章の実践、お客さま本位の事業運営に継続的に取り組むとともに、お客さまから更なる信頼を得られるように取り組んでまいります。

 

お客さまの信頼回復に向けた約束

「目指す姿の約束」

一人ひとりのお客さまに寄り添い、お客さまの満足と安心に最優先で取り組み、信頼していただける会社になることを約束します。

 

「活動の約束」

〇 お客さま本位の事業運営を徹底し、お客さまにご満足いただける丁寧な対応を行います。

〇 お客さまの声をサービス向上に反映するため、お客さまの声に誠実に耳を傾けます。

〇 社員の専門性を高め、お客さまにご納得いただけるよう正確にわかりやすく説明します。

〇 法令・ルールを遵守し、お客さまが安心してご利用いただける高品質のサービスを提供します。

〇 お客さまのニーズを踏まえ、お客さまに喜んでいただける商品・サービスを提供します。

 

② かんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題について

2019年度において、かんぽ生命保険及び日本郵便では、お客さまのご意向に沿わず不利益が生じた契約乗換等に係る事案及び法令違反又は社内ルール違反が認められた事案(募集品質問題)が判明いたしました。

これにより、2019年12月27日、当社は、総務大臣より日本郵政株式会社法第13条第2項に基づく業務改善命令、金融庁より保険業法第271条の29第1項に基づく業務改善命令を、日本郵便は、総務大臣より日本郵便株式会社法第15条第2項に基づく業務停止命令及び業務改善命令、金融庁より保険業法第307条第1項及び第306条に基づく業務停止命令及び業務改善命令を、かんぽ生命保険は、金融庁より保険業法第132条第1項に基づく業務停止命令及び業務改善命令を受けました。2019年7月以降、郵便局及びかんぽ生命保険の支店からの積極的なかんぽ生命保険商品のご提案を控えてまいりましたが、当該業務停止命令により、2020年1月1日から同年3月31日までの間、お客さまの自発的な意思表示を受けて行う保険募集及び保険契約の締結を除き、かんぽ生命保険商品に係る保険募集及び保険契約の締結を停止いたしました。また、当該業務改善命令を受けて、2020年1月31日付で、当社及び日本郵便は業務改善計画を総務大臣及び金融庁に、かんぽ生命保険は業務改善計画を金融庁に提出いたしましたが、その後も当該業務改善計画の進捗状況等について報告し協議を行っております。

業務改善計画に掲げたお客さまのご意向に沿わず不利益が発生した可能性が特定可能な類型のご契約の調査について、具体的にお客さまのご意向に沿わず不利益を生じさせたものがないかをご確認する特定事案調査及びお客さまのご意向に沿わず不利益を生じさせたものがないかを全てのご契約について確認する全ご契約調査は、お客さま都合によるもの等を除き、お客さま対応を完了しました。また、全ご契約調査の更なる深掘調査(多数回にわたって契約の消滅・新規契約が繰り返され、お客さまのご意向に沿ったものではない可能性がある事例を確認する多数契約調査等)に係るお客さま対応も、お客さま都合によるもの等を除き、完了しました。

また、募集人調査について、特定事案調査における募集人調査は、2020年4月末までに、病休等で調査ができない事案を除き概ね完了しております。さらに、多数契約調査のうち一昨年より実施している事案における募集人調査は、病休等で調査ができない事案を除き2020年10月末までに完了しております。加えて、深掘調査等の優先的に調査を行っている募集人調査は、2021年3月末までに、退職者等を除いて概ね完了しております。なお、特定事案調査及び多数契約調査のうち一昨年より実施している事案の募集人資格に係る処分、募集人及び管理者等に対する人事上の処分、日本郵便及びかんぽ生命保険の本社・支社・エリア本部等の責任者の人事処分については、2021年3月末までに、病休等で調査ができない事案を除き概ね完了しております。2021年3月からは、お客さまの申出内容などから問題があると考えられる募集人に対して募集人調査を実施しているほか、その他の募集人については、書面による募集実態調査を実施しております。これらに対する人事処分についても、順次実施しております。

かんぽ生命保険商品の販売については、2019年7月以降、2020年1月から同年3月までの業務停止命令期間を含め、郵便局及びかんぽ生命保険支店におけるかんぽ生命保険商品の積極的な営業活動を控えておりましたが、JP改革実行委員会より、当社、日本郵便及びかんぽ生命保険にて設定した営業再開条件について概ね充足したとの評価を受けるとともに、信頼回復に向けた業務運営の趣旨が、社員へ共有・徹底されていること等が確認できたことから、2020年10月5日より、お客さまへのお詫びを第一とした信頼回復に向けた業務運営を行っておりました。

これらの信頼回復に向けた業務運営の活動やかんぽ生命保険商品と投資信託の横断的な販売への対応が進捗し、お客さまからこれらの活動に対する理解を得られてきたこと等を踏まえ、2021年4月より、郵便局及びかんぽ生命保険支店において、お客さまのニーズに応じた保険商品やサービスの情報提供やご提案を全てのお客さまに対し実施することとし、営業活動を通じたお客さまとの信頼関係の構築を進めていく新たな営業スタンスへ移行しました。

また、毎年10月に一斉に発送していた「ご契約内容のお知らせ」を、2021年5月より、ご契約者さまの誕生月の前月に合わせて送付することとしております。引き続き、「ご契約内容のお知らせ」を受領したご契約者さまへの確認・説明等、ご契約内容確認活動を進めてまいります。

さらに、2022年4月1日から、新しいかんぽ営業体制の構築として、お客さま担当制を導入します。日本郵便の訪問営業を行う社員はかんぽ生命保険商品およびがん保険商品の提案とアフターフォローに専念し、貯金業務・投資信託および一部の提携金融商品は郵便局の窓口が担当することとなります。多様化するお客さまニーズにきめ細やかに対応するため、お客さまへの専門性を持った対応を充実してまいります。そして、同年4月1日から、新契約と契約継続の両面を評価する保有契約の純増を観点とした目標を導入するとともに、アフターフォローや募集品質の維持などの活動を評価する目標をバランスよく設定し、結果に至るまでのプロセスも重視してまいります。

今後とも、業務改善計画に掲げる各種施策については、定期的に外部のモニタリングを受けながら着実に進捗管理を実施し、当社グループの全役職員が一丸となって推進してまいります。

 

③ かんぽ生命保険商品と投資信託の横断的な販売への対応について

かんぽ生命保険商品と投資信託にまたがるお客さまの苦情を受け、お客さま本位でない営業による苦情のお客さま及び同苦情の懸念のある取引に係るお客さまに対するご意向確認、及び関連社員へのヒアリングを実施し、契約無効措置等のご要望を頂いたお客さまには、順次必要な対応を実施してまいりました。

2021年度以降も引き続き、お客さま本位の業務運営の観点から改善に向け、お客さま本位でない営業を防止するために、社内ルールの徹底及び金融商品間の横断的な取引についてモニタリングによる取引内容の精査等を行っております。

 

④ ESG経営

近年、関心が高まっているESGやSDGsについては、当社グループにおいても経営における重要課題として認識しており、トップレベルで関与していることが求められる事項と認識しております。

当社グループは、当社グループの強みである郵便局ネットワークを活用し、事業を通じて、地域社会への貢献、社会的な課題に取り組むことにより、当社グループの持続可能な成長と中長期的な企業価値の創出を図ってまいります。また、新たな中期経営計画において、「人生100年時代の『一生』を支え、日本全国の『地域社会』の発展・活性化に貢献し、持続可能な社会の構築を目指すこと」をESG目標として設定し、各種の取組を推進していくこととしています。

環境面においては、「2050年カーボンニュートラルの実現」という超長期の目標と、それを着実に達成するためのマイルストーンとして、2030年度目標(対2019年度比46%削減)を設定し、当面の取組として、EV車両の導入拡大、郵便局等における照明器具等のLED化及び再エネ率の高い電力会社への切替等を積極的に行うほか、当社グループの持つリソースを活用し、再生可能エネルギーの利用拡大など国内外のカーボンニュートラル化を後押しする投資等も展開していく予定です。

また、2019年4月には気候関連財務情報開示タスクフォースの提言に賛同表明し、気候変動が当社グループの安定した事業運営に影響を及ぼしうる重要な課題の一つであるとの認識のもと、気候変動への対応を経営戦略における重要課題として位置付け、取組強化に努めています。

今後は、気候変動が当社グループの事業に与える影響の定量化と対応策の検討を進め、更なる情報開示に取り組んでまいります。

社会面では、地方の人口減少局面の中でも地域社会を支えるインフラ機能を果たすため、JR・地方銀行等他企業や地方公共団体との連携・協業を推進しているほか、地域活性化ファンドへの参加により地域社会の発展・活性化に貢献しています。

人権・労働関連では、多様な人材が活躍できるよう、ダイバーシティの推進に取り組んでいきます。女性管理者比率の向上に関しては、2030年度に本社における女性管理者比率30%を目指すほか、本社以外においても、管理者・役職者を目指す社員を増やすための環境整備・人材育成等を進めます。また、健康経営、労働時間の適正化等、社員視点に立った働き方改革の推進にも取り組んでまいります。

企業統治面では、金融2社商品・サービスに係る不祥事等により大きく毀損した信頼の回復に向け、「お客さまの信頼回復に向けた約束」を実行するとともに、グループの持株会社として、グループCxO制の導入、日本郵政・日本郵便の一体的運営を図り、グループガバナンスを強化します。また、「コンダクト・リスク」を早期に探知し対応する態勢を構築し、グループ一体となったリスク管理を行います。

今後も当社グループは、持続可能な社会の実現に貢献するための活動を、グループ一体となり取り組んでまいります。

 

 

各事業セグメント別の対処すべき課題は、以下のとおりであります。

 

⑤ 郵便・物流事業

日本郵便の郵便・物流事業において、郵便物の減少や荷物需要の増加に対応するため、以下の取組みを行います。

 

(a) 商品・サービス・オペレーション体系の一体的見直しとサービスの高付加価値化

引き続き、年賀状を始めとしたスマートフォン等を使ったSNS連携サービスや手紙の楽しさを伝える活動の展開等により、郵便利用の維持に取り組んでまいります。また、成長するEC市場やフリマ市場を確実に取り込むため、差出・受取利便性の高いサービスを提供するとともに、営業倉庫を活用した物流ソリューションの拡大、企業間物流の強化等により、収益の拡大を図ってまいります。

なお、過去5事業年度の郵便、ゆうメール、ゆうパック及びゆうパケットの取扱物数の推移は以下のとおりとなります。

 

 

 

 

(単位:百万通・百万個)

 

2018年3月期

2019年3月期

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

郵便

17,222

16,781

16,350

15,244

14,858

ゆうメール

3,637

3,650

3,569

3,299

3,346

ゆうパック

(含 ゆうパケット)

876

942

974

1,091

989

(再掲)

 ゆうパケット

261

357

428

497

420

 

 

(b) 先端技術の積極的な活用による利便性・生産性向上

郵便物の減少傾向が継続する中、成長市場である荷物分野へのリソースシフトを進めるとともに、業務量に応じたコストコントロールの取組の深化やDXの推進等を通じて、生産性の向上に努めてまいります。

あわせて、テレマティクス技術(移動体通信システムを利用したサービス)を用いて取得するデータを、社員の安全確保や配達の相互応援、郵便物の配達順路や配達エリアの見直しにも活用していくほか、AIによる配送ルートの自動作成等によるゆうパック等の集配業務の効率化や、AGV(無人搬送車)の導入等による局内作業の省人化・スリム化も進めてまいります。

また、他企業との連携により、効率の良い配送システムの構築や利便性の高い受け取りサービスの提供等を実現する新たな物流プラットフォームの構築に取り組むとともに、将来的な実用化に向けて、ロボティクス(ピッキング用ロボット等)や配送の高度化(ドローンや配送ロボット等)についても試行・実験を重ねてまいります。

 

 

⑥ 郵便局窓口事業

日本郵便の郵便局窓口事業において、地域やお客さまニーズに応じたサービスを提供するため、以下の取組みを行います。

 

(a) 総合的なコンサルティングサービスの実現に向けた体制への変革

2022年4月より、新しいかんぽ営業体制を開始し、日本郵便からかんぽ生命保険に兼務出向した、高い機動性と専門性をもったコンサルタントと、多様なお客さまニーズに応える窓口社員が、それぞれの能力を最大限に発揮することで、専門性と幅広さを兼ね備えた「総合的なコンサルティングサービス」をグループ一体で実現してまいります。窓口社員については、窓口における積極的なお声かけや幅広い金融商品の提案を行っていくほか、郵便局窓口、電話及び郵送を中心としたアフターフォローに従事してまいります。

 

(b) リアルな存在としての郵便局を活かした、郵便局ネットワークの価値向上

地域金融機関との連携強化により、郵便局内へのATMコーナー設置や銀行手続事務の受託等を進めるほか、幅広い地方公共団体事務の受託や駅と郵便局の一体的な運営等、地方公共団体や他企業と連携しながら、地域やお客さまニーズに応じた個性・多様性ある郵便局を展開することにより、郵便局ネットワークの価値を向上させてまいります。また、郵便局窓口業務運営のデジタル化を進め、業務を効率化するとともに、それによって創出した経営資源を活かし、リアルならではのサービスを展開してまいります。

 

(c) 不動産事業の拡大に向けた取組み

JPタワー等の賃貸事業を行うとともに、住宅地に所在する土地の有効活用事業として、住宅、保育所及び高齢者施設の賃貸事業を行います。また、新たな収益機会の拡大や保有不動産の有効活用の観点から、広島駅南口計画、虎ノ門・麻布台地区第一種市街地再開発事業及び大阪駅前不動産開発等を推進し、不動産事業が収益の柱の一つとなるよう取り組んでまいります。

 

⑦ 国際物流事業

日本郵便において、トール社に対する経営管理を強化・徹底してまいります。

同社の業績不振の主要因となっていたエクスプレス事業※1について、2021年8月に譲渡が完了しました。今後は、人員配置の合理化等により、残るロジスティクス事業・フォワーディング事業の採算性を向上させるとともに、シンガポール・ベトナムなど、アジア域内で特に成長が見込まれる数か国と小売業界・工業界といったトール社の得意とする業種にフォーカスした事業展開を行うこと等により、豪州に依存した事業構造から脱却し、日本を含むアジアを中心としたビジネスモデルへの転換による成長へ向けた取り組みを加速させてまいります。

さらに、海外のBtoB事業※2を中心に事業展開するトール社と、国内に顧客基盤を有する日本郵便のシナジーを強化し、コントラクトロジスティクス※3を中心に国内のBtoB事業の拡大を進め、国内外での総合物流事業展開による一貫したソリューションの提供を推進してまいります。具体的には、トール社が持つノウハウを用いて、2018年10月に発足したJPトールロジスティクス株式会社を通じたコントラクトロジスティクスサービスを提供し、一貫性をもった物流サービスの提供を推進します。

また、トール社を親会社とする連結グループの債務超過の金額は2022年3月末時点で881億円であります。トール社の経営環境が非常に厳しい中、資金繰り安定化を企図し、トール社の借入等に対して、日本郵便による債務保証を付しております。

 

※1 エクスプレス事業とは豪州及びニュージーランド国内におけるネットワークを活用して道路、鉄道、海上及び航空貨物輸送サービスを提供する事業のことです。

※2 BtoB 事業とは、Business-to-Businessの略語で、企業間の商取引、企業が企業向けに行う事業のことです。

※3 コントラクトロジスティクスとは、売買に関与しない第三者が特定の荷主顧客と契約を結び、輸送や在庫・配送業務の効率運営を図るサービスのことです。

 

 

⑧ 銀行業

ゆうちょ銀行は中期経営計画のもとで、急激に変化する社会環境に対応したサステナブルな経営の実現を目指すべく、ESG経営を推進しています。2021年度は、5つの重点戦略を着実に推進し、その基盤を固めました。2022年度は、各重点戦略の取組みを加速し、目指す姿の実現に向けた道筋をつけてまいります。

 

(a) リアルとデジタルの相互補完による新しいリテールビジネスへの変革

安心・安全を最優先に、デジタル人材を強化しつつ、すべてのお客さまが利用しやすいデジタルサービスを拡充してまいります。

具体的には、通帳アプリ等のデジタルサービスについて、機能や使いやすさの継続的な改善に取り組むとともに、「家計簿・家計相談アプリ」の構築に取り組んでまいります。また、全国の郵便局ネットワークを活用し、各種デジタルサービスの積極的なご案内・身近なサポートを進めてまいります。さらに、通帳アプリ、家計簿・家計相談アプリを起点として、多様な事業者との連携を通じて最適なサービスを提供する、オープンな「共創プラットフォーム」の構築に注力してまいります。

また、資産形成サポートビジネスにおいては、お客さま本位の業務運営推進の下、対面チャネルとデジタルチャネルの相互補完により、お客さまニーズに応じ、最適な商品・チャネルを提案いたします。

対面チャネルにおいては、2022年4月から窓口の投資信託商品ラインアップをお客さまに理解いただきやすい商品に厳選するとともに、投資初心者には主に積立投資を提案してまいります。また、2022年5月からは「投資一任サービス(ゆうちょファンドラップ)」を開始しました。加えて、オンラインでの相談環境の一層の充実を図るとともに、デジタルチャネルにおいて、投資信託Webページやアプリのさらなる充実に取り組み、よりお客さまに利用いただきやすいチャネルに見直してまいります。

さらに、キャッシュカード一体型のブランドデビットカード「ゆうちょデビット」の取扱いを2022年5月から開始しております。また、「信託・相続サービス」等、新たなサービスの開始に向けて、準備してまいります。

 

※ 投資一任サービスとは、投資一任契約に基づき、投資運用業者がお客さまから投資判断の全部又は一部を一任されるとともに、当該投資判断に基づきお客さまのための投資を行うのに必要な売買・管理等までを行うサービスのことです。

 

(b) デジタル技術を活用した業務改革・生産性向上

窓口タブレットをゆうちょ銀行全直営店に導入するほか、新規口座開設をスマートフォン上で行う「口座開設アプリ」のサービスを開始する等、お客さまの取引チャネルの選択肢を拡充しながら、窓口業務の効率化を進めてまいります。また、貯金事務センターにおいては、BPMSの機能・拠点の拡大に向けた準備や相続関連業務のシステム化を進める等、今後ともデジタル技術を組み合わせた総合的な事務の自動化を推進してまいります。

これらの取組みを通じ、引き続き窓口等の業務量削減を図る一方、強化分野への人員シフトを継続しつつ、育成の強化を図ることで、より一層、生産性の向上を図ってまいります。

また、引き続き、戦略的なIT投資等、重点分野への投資を強化しつつ、既定経費の削減により、経営の効率性改善を目指してまいります。

 

※ BPMSとは、Business Process Management Systemの略。

RPAを自動で起動し、人による確認作業等を要求するなど、業務フローをシステム的に制御し、自動的に工程管理を行うシステムのことです。

 

(c) 多様な枠組みによる地域への資金循環と地域リレーション機能の強化

お客さまからお預かりした大切な資金を、地域へと循環するために、特にエクイティ性資金の供給を拡充し、地域活性化への貢献に努めてまいります。

具体的には、「地域活性化ファンド」や「投資・事業経営会社」への出資を推進するとともに、「JPインベストメント地域・インパクト1号ファンド」に出資する等、地域経済発展に貢献してまいります。

また、地域金融機関と連携し、「地域の金融プラットフォーム」として、ATM連携や税公金取りまとめ事務共同化等について取り組むなど、全国の地方創生を多面的に支援してまいります。

 

(d) ストレス耐性を意識した市場運用・リスク管理の深化

ウクライナ情勢、インフレ懸念を背景とした米国等の金融政策の転換等によるマーケット変動に十分留意しつつ、リスク対比リターンやストレス耐性の強化等を意識したポートフォリオ運営を実施します。

具体的には、リスク性資産については、投資適格領域のクレジット資産(国内外の社債等)を中心に残高を積み上げていくほか、リスク性資産のうち、戦略投資領域については、中長期的な視点で、優良ファンドへの選別的な投資を継続してまいります。

加えて、ストレステスト高度化、モニタリング充実、外貨流動性リスク低減等、リスク管理高度化の取組みを推進してまいります。

 

※ 戦略投資領域とは、プライベートエクイティファンド(成長が見込まれる未上場企業等へ投資するファンド)、不動産ファンド等からなる戦略的な投資領域のことです。

 

(e) 一層信頼される銀行となるための経営基盤の強化

引き続き、組織風土改革に取り組むとともに、内部管理体制の強化においては、日本郵便及び当社と連携し、部内犯罪防止やお客さま情報の漏洩・紛失の防止等、コンプライアンス態勢のさらなる強化に努めてまいります。

 

また、上記5つの重点戦略に加え、ESG経営の推進として、「環境の負荷低減」と「働き方改革・ガバナンス高度化の推進」に引き続き取り組んでまいります。具体的には、引き続き使用電力の再生可能エネルギーへの切り替えを推進するとともに、ESGテーマ型投資の2025年度の残高目標を従来の2兆円から4兆円に引き上げ、資金運用業務を通じた社会全体の環境負荷低減に努めてまいります。また、強化分野の人材確保・育成、多様な人材を活かす環境整備や健康経営の積極的な推進等の人材投資の強化に加え、社員のキャリア形成支援・人材の見える化実現による人的資本の最大化を目指してまいります。

 

※ ESG債(グリーン債、ソーシャル債(パンデミック債含む。)、サステナビリティ債)、再生可能エネルギーセクター向け与信、地域活性化ファンド等のことです。

 

 

⑨ 生命保険業

かんぽ生命保険は、2021年5月に中期経営計画を公表しており、お客さまから真に信頼される企業へと再生し、お客さまに感動いただける保険サービスのご提供を通じて、持続的な成長を目指してまいります。

 

(a) 再生に向けた取組み

2022年4月より、専門性と幅広さを兼ね備えた新しいかんぽ営業体制を構築し、日本郵政グループ一体での総合的なコンサルティングサービスを実施してまいります。

リテール領域では、かんぽ生命保険内にかんぽサービス部を新設し、日本郵便から同部に出向したコンサルタント(主にお客さまのお宅を訪問して活動する社員)は、かんぽ生命保険商品及びがん保険商品のご提案・アフターフォローに専念するとともに、かんぽ生命保険が直接責任をもってマネジメントする体制とします。加えて、お客さま担当制を導入することで、お客さまのライフステージの変化等によるニーズの変化に適切に対応するための定期的なコンタクトを充実させ、お客さまに寄り添った質の高いアフターフォローを実施してまいります。

これらの施策を実施するにあたり、2022年3月に、「かんぽ営業(リテール領域)の目指す世界観」を定めております。ここでは「お客さまの信頼・満足を起点としてお客さま数を拡大していく」、「フロントラインに寄り添った仕組み・制度の運用を通じ、適正なマネジメントを定着させ、社員の成長を支える」及び「社会・経営環境を敏感に捉え、進化し続ける」ことを掲げており、この世界観を全社員で共有し、実行していくことで「マーケットも人材も成長させる文化」への転換を図ってまいります。その実現に向けては、土台であるマネジメントの成長を促すために、全社一体となってフロントラインのマネジメントに寄り添い、フロントラインの課題の解決に取り組んでまいります。また、営業目標、評価、手当等の諸制度について世界観と同期を図った形へ大きく見直し、2022年度の営業目標については、新契約と契約継続の両面を評価する保有契約の純増を観点とした目標を導入するとともに、アフターフォローや募集品質の維持などの活動を評価する目標をバランスよく設定し、結果に至るまでのプロセスも重視してまいります。これらの制度の仕組み・運用については、お客さまのためにできることを最優先に考えるとともに、変化し続ける社会環境や経営環境に適切に対応しながら、不断の見直しを図ってまいります。

法人営業領域でも同様に、2020年度に定めた法人営業ビジョン「社員一人ひとりがお客さまや地域社会とともに進化することに挑戦し続けます」に基づき、引き続き、経営者に寄り添い、より幅広く、より質の高いサービスをご意向に合わせてご提供することにより、お客さまとの真の信頼関係を構築、拡大してまいります。

事業基盤の強化については、「保険サービスの充実」、「資産運用の深化・高度化」、「事業運営の効率化・高度化」に取り組んでまいります。

「保険サービスの充実」においては、人生100年時代における、あらゆる世代のお客さまの保障ニーズにお応えする保険サービスの開発を進めてまいります。

昨今、医療の進展により入院日数は短期化傾向にあるとともに、外来での手術も定着しております。他方で、病気によっては長期の入院が必要となり、経済的に不安を抱えているお客さまも多く、公的医療保険制度の対象外となる費用負担などに対応した医療保障へのニーズは高いと考えております。このようなニーズに対応するため、2022年4月より、新しい医療特約「もっとその日からプラス」の取扱いを開始しております。「もっとその日からプラス」では、従来の医療特約より、入院一時金の金額・回数を充実させ、短期・長期のいずれの入院にも対応するとともに、外来又は入院中の手術のどちらでも同じ手術保険金額をお受け取りいただける、手厚い医療保障をご提供しております。

このほか、2022年4月より、お客さまの利便性向上を図るため、生命保険商品の受託販売範囲を広げるとともに、法人向け商品の受託販売等について、経営者向け定期保険に付加できる特約の種類を拡大しております。

今後も、青壮年層のお客さまニーズに応える低廉な保険料でバランスのとれた保障の提供や、人生100年時代を踏まえた高齢・中高年層の保障等のニーズに応える商品の拡充のほか、お客さまの健康づくりをサポートする商品の研究に取り組んでまいります。

資産運用においては、ERM※1のフレームワークの下、ALM運用を基本として、安定的な資産運用収益の確保を目指すとともに、2025年予定の経済価値ベースの新資本規制導入の動きに適切に対処しつつ、オルタナティブ投資等投資領域ごととポートフォリオ構築の両面から資産運用を深化・高度化してまいります。

収益追求資産への投資については、中期経営計画期間(2021年度~2025年度)において、総資産に占める同資産の比率を18~20%程度まで引き上げることを見込んでおります。特にオルタナティブ投資※2については、プライベートエクイティ、不動産ファンド、インフラエクイティ、ヘッジファンドの4分野で戦略分散・地域分散を図りながら、リスク許容量と投資機会に応じて段階的に投資残高を積み上げてまいります。

ESG投資については、温室効果ガス削減目標達成に向けた投資先に対するエンゲージメントの強化、中期経営計画期間中のKPIに設定した投融資先再生可能エネルギー施設の総発電出力※3の目標達成に向けた投融資の積極化、社会課題解決に向けたインパクト投資※4の推進を進めてまいります。

また、デジタル化の推進により、お客さまサービス向上と業務の効率化及び経費の削減に取り組んでいくほか、更なる事業費管理の高度化に向け、自律的にコストコントロールの役割を担う予算管理者を本社各部に設置する等の新たな事業費管理の仕組みを導入し、経費削減を進めてまいります。これにより生じた経営資源は、お客さまサポート領域、DXの推進等の強化領域にシフトするなど、事業運営の効率化・高度化に取り組んでまいります。

 

 ERMとは、Enterprise Risk Managementの略語で、会社が直面するリスクに関して、潜在的に重要なリスクを含めて総体的に捉え、会社全体の自己資本などと比較・対照することによって、事業全体として行うリスク管理のことです。

※2 オルタナティブ投資とは、債券や上場株式などの相対的に歴史の長い金融商品(伝統的資産)以外の新しい投資対象や投資手法の総称です。

※3 投融資先再生可能エネルギー施設から出力される電力に限ります。かんぽ生命保険持ち分換算後です。

※4 インパクト投資とは、財務的リターンと並行して、ポジティブで測定可能な社会的及び環境的インパクトを同時に生み出すことを意図する投資行動を指します。

 

(b) 持続的成長に向けた取組み

お客さま体験価値(CX)の向上の観点から、保険サービスを抜本的に見直し、お客さまの利便性や募集品質を向上させることで、「かんぽ生命に入っていてよかった」と感動いただけるよう取り組みます。また、その体験価値をご評価いただいたお客さまから、そのご家族や知人、さらには地域・社会全体へかんぽ生命をお勧めいただくことで、お客さまを広げてまいります。

具体的には、「お客さま一人ひとりに寄り添う適切なご提案」、「その場で完結する簡便な手続きの提供」、「チーム一体でのきめ細やかなサポート」、「お客さまとのつながりを重視したアフターフォローの充実」に取り組んでまいります。

「お客さま一人ひとりに寄り添う適切なご提案」を行うため、お客さまのニーズや必要な保障内容などについてデジタルを活用したツールにより可視化するとともに、遠方にお住いのご家族等にも同席いただけるシステムを導入し、お客さま一人ひとりに寄り添う適切なご提案を実現してまいります。また、「その場で完結する簡便な手続きの提供」を行うため、デジタル技術の活用により、お客さまのニーズに応じて、オンライン、対面等様々なお申込み・ご請求形態を選択できるようにしてまいります。具体的には、お客さま自身のスマートフォン等の端末から被保険者同意及び告知を可能とするため、アジャイル開発手法を用い、一部地域から段階的に試行実施してまいります。このほか、インターネット上での入院・手術保険金請求の拡大等に取り組むとともに、マイページからの入院・手術保険金請求に対して、専門スタッフ(カスタマーセンター)がリアルタイムにサポートするチャット機能を実装する等、その場での諸手続き等の完了を可能にしてまいります。さらに、「チーム一体でのきめ細やかなサポート」を行うため、お客さまのご契約情報やお問合せ情報等をお客さま単位で集約したお客さまデータベースを構築し、コンサルタント、郵便局窓口、専門スタッフなど、お客さまにご対応する全ての社員がチーム一体で、きめ細やかなあたたかみのあるサポートを提供できる環境を整備してまいります。

そして、「お客さまとのつながりを重視したアフターフォローの充実」のため、訪問による対面対応に加えて、オンライン会議など様々な方法による手厚いアフターフォローや、メール・SNS等によるお客さまごとに最適なタイミングでのアフターフォローを行い、お客さまのニーズに幅広くお応えし、お客さまの周囲の方々も含めた信頼の獲得を目指してまいります。

 

※ アジャイル開発とは、システムを開発する手法のひとつです。短期間に設計やテストを繰り返しながら開発を進めることで、サービス開始までの開発期間を短縮するとともに、開発途中の仕様・要件変更にも柔軟に対応することを目指します。

 

(参考)

過去の新契約、保有契約の件数の推移は下記のようになります。

 

 

 

 

 

(単位:万件)

契約の種類

2018年3月期

2019年3月期

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

新契約(個人保険)

173

171

64

12

17

簡易生命保険

1,248

1,104

990

894

806

かんぽ生命保険

1,792

1,809

1,716

1,589

1,474

 

(注) 2007年10月1日の民営化時の簡易生命保険契約は5,517万件でした。

 

2 【事業等のリスク】

下記Ⅰ~Ⅷにおいて、当社及び当社グループの事業内容、経営成績、財政状態等に関する事項のうち投資者の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主なリスクを例示しております。もっとも、当社及び当社グループの事業等のリスクは、これらに限定されるものではありません。

下記「Ⅰ. 当社経営陣が特に重視する当社グループの事業等のリスク」において、当連結会計年度末現在において当社経営陣が特に重視する事項について記載し、その他の重要なリスクは下記Ⅱ~Ⅷに記載しております。

なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

<当社グループのリスク管理態勢>

当社グループでは、グループ協定等に、事業子会社の管理対象リスクや当社への報告事項等、リスク管理に係る基本事項を定め、当社がグループのリスク管理状況や改善状況をモニタリングすること等により、グループ全体のリスク管理を行っています。

当社では、グループガバナンス強化のため、グループのリスク管理統括責任者として、執行役の中から「グループ・チーフ・リスク・オフィサー(グループCRO)」を選任しています。グループCROは、事業子会社のリスク管理担当役員をメンバーとする「グループオペレーショナルリスク管理連絡会」等を通じ、事業子会社のリスク管理の向上に向けた情報共有・協議等を実施するとともに、グループのリスク管理状況・取組みについて取締役会等への報告等を行い、取締役等からレビューを受けています。

なお、事業子会社は、自社のリスク管理を統括する部署を定め、自ら主体的に自社の事業特性やリスク特性に応じたリスクの特定、評価、制御、モニタリング等のリスク管理を行うとともに、当社に対し必要事項を報告する等のリスク管理態勢を整備しています。

 


 

 

<グループ重要リスク管理>

当社は、外部環境の変化や事業戦略等を踏まえ、毎年、当社グループの事業に重大な影響を及ぼす可能性のあるリスク(グループ重要リスク)の見直しを行っています。具体的なリスクの特定、評価については、取締役及び執行役へのアンケート(役員アンケート)を通じて行い、改善策の策定、改善策取組状況のモニタリング等を経営陣が行うPDCAサイクルを回しています。

 


 

 

Ⅰ.当社経営陣が特に重視する当社グループの事業等のリスク

 

当社は、役員アンケートを通じて、グループ重要リスクのうち発生可能性と当社グループの業績への影響の観点から特に重要度の高いものをトップリスクと定め、「経営陣が特に重視する当社グループの事業等のリスク」としています。下図は、かかる当社経営陣によるリスク分析の状況をわかりやすく示すために、「経営陣が特に重視する当社グループの事業等のリスク」と位置付けた10のリスクにつき、その相対的な位置づけを図示したものです。ここに記載した各リスクの発生可能性、影響度、優先度は、本書提出日現在における当社経営陣の分析に基づくものであり、また、発生可能性、影響度又は優先度が「小」と記載されたリスクについても、現に当該リスクが発生し又は当社の事業等に重大な影響を及ぼす可能性を否定するものではありません。

 


 

1.低金利環境の長期化に伴うリスク

当社グループの収益の多くは、銀行業及び生命保険業(以下「金融事業」と総称します。)の運用・調達から生じる収益により占められています。

歴史的な低金利環境の長期化を受けて、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険(以下「金融2社」といいます。)の債券運用収益が低位から回復しないことにより、基礎的な収益力が低下し、当社グループの収益が大幅に減少するリスクは大きいものと認識しております。また、低金利政策の出口としての急激な金利上昇により、当社グループの保有資産の価値が大幅に下落するリスクや預金の預け替え、保険の解約が進むリスクが顕在化した場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

これらに対し、金融2社では中長期的に収益の確保を図ることを目的に、資産・負債を総合管理するALM(Asset Liability Management)の枠組みの下、市場環境の変化、リスク・リターン等を踏まえた機動的なポートフォリオ運営を行っているほか、財務健全性の観点から、リスク管理態勢を高度化するとともに、ストレス・テストや損益シミュレーション等を実施することによりリスクの分散に取り組み、市場リスク等を適切に管理するよう努めておりますが、低金利環境がさらに長期化した場合や急激な金利上昇が生じた場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

2.金融2社の株式売却に関するリスク

当社は、金融2社の株式売却に関しては、郵政民営化法を踏まえ、金融2社の経営の自立性・自由度を広げる観点から、できる限り早期に金融2社株式の保有割合を50%以下とすることを目指しております(2022年3月末日現在、当社によるゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の議決権保有割合はそれぞれ、89.0%と49.9%です。)。金融2社の株式の売却が進んだ場合には、非支配株主に帰属する当期純利益の増加や持分法による投資利益の減少により、当社の連結財務諸表に反映される金融2社の利益が減少します。

また、株式売却は市場環境等にも左右されるため、当社の想定通りに株式の売却が進まない可能性があります。さらには、金融2社の株式保有割合が低下してグループの一体的な業務運営が難しくなること等により、顧客離れ・ブランド力低下が発生し、当社グループの収益が金融2社の持分低下の影響を超えてさらに低下する可能性もあります。

当社としては、将来的に金融2社に代わる事業基盤を確保するとともに、これら2社の株式売却により得た資金を活用して、例えば、お客さまと地域を支える「共創プラットフォーム」として新たなビジネスを展開して収益機会を確保する等、ビジネスポートフォリオを転換することに取り組みますが、当社グループを取り巻く国内外の経済情勢は厳しい状況にあるほか、投資先の選定・管理等の難易度は増しており、上記の当社連結業績への影響を補えない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、2022年4月の東京証券取引所の市場区分見直しに際し、ゆうちょ銀行はプライム市場の上場維持基準のうち「流通株式比率35%以上」に適合しなかったため、経過措置の適用を受けたうえで、プライム市場へ移行しました。当分の間、プライム市場への上場が維持される見込みですが、当社によるゆうちょ銀行株式売却が進まないこと等により、経過措置期間内に上場維持基準を充足できない場合には、ゆうちょ銀行の上場維持が認められず、ゆうちょ銀行の株式の株価下落により当社個別業績が悪化し、又はゆうちょ銀行株式売却がさらに困難になる可能性があります。

 

3.法令等違反に関するリスク

当社グループでは、郵便局長等による資金横領や預払金横領事案等が複数件発生しており、当社グループ内で連携して発生原因の分析、再発防止策の検討等を行い、法令等違反の撲滅に向けてコンプライアンスの徹底・強化、並びにグループガバナンス及び内部統制の強化に取り組んでおります。

また、当社グループは、2019年、かんぽ生命保険商品の募集品質に係る諸問題に関し、監督当局からの行政処分を受け、2020年1月に策定した業務改善計画に基づき各種施策に取り組み、外部専門家で構成されたJP改革実行委員会のモニタリングを受けながら、お客さまからの信頼回復に向けた改善策を実行してまいりました。

加えて、かんぽ生命保険商品と投資信託を同一のお客さまに販売した際に、一部の取引について法令違反があったことを受け、契約無効措置等のお客さま対応を実施したほか、商品横断的なデータモニタリングなどの必要な対応を行いました。

さらに、当社グループは、内部通報制度等を活用して社員の声の収集・分析を行い潜在的なリスクの検知に努め、法令等遵守を徹底しております。

しかしながら、かかる態勢・予防策が十分な効果を発揮するとは限らず、結果として当社グループの役員・従業員による法令その他諸規則等の違反、社内規程・手続等の不遵守、不正行為、事故、不祥事等が生じた場合には、当社グループの事業、社会的信用、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4.顧客向けDXで競合他社から後れを取る等事業環境の変化に対応できないリスク

新型コロナウイルス感染症の拡大や少子高齢化・デジタル化の進展の中、企業が競争上の優位性を確保するためには、ビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、お客さまや社会のニーズに基づき、商品・サービス、ビジネスモデルを変革し、業務、組織、企業文化・風土等を変革することが必要となります。

当社グループでは、お客さまと地域を支える「共創プラットフォーム」として、グループ一体でのDX推進による、リアルの郵便局ネットワークとデジタル(デジタル郵便局)との融合により新たな価値を提供できるように取組みを進めるほか、楽天グループ株式会社などグループ外企業等との資本・業務提携、その他新規事業への投資等に取り組んでおりますが、これらの取組みが成功する保証はなく、事業環境の変化に適時かつ適切に対応できない場合には、当社グループの業務・商品の競争力低下等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、P-DX(Postal-Digital transformation:デジタル化された差出情報と、日本郵便ならではの配達先情報を活用し、データ駆動型のオペレーションサービスを実現するための郵便・物流事業改革)の推進、オペレーション改革、窓口業務運営のデジタル化等を進めておりますが、かかる取組みが奏功せず、競合他社から後れを取るなど、事業環境の変化に対応できない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

5.グローバル経済の減速による海外信用悪化に伴うリスク

当社グループの収益の多くは、金融事業の運用・調達から生じる収益により占められています。

世界的な金融政策の変更、ロシアによるウクライナ侵攻等の地政学リスクの高まり、新型コロナウイルス感染症の拡大等による歴史的な金融・資本市場の動揺、グローバル経済の減速懸念時には、金融2社については、海外金融資産の増加に伴い海外クレジット市場の信用スプレッド拡大、外貨の調達、通貨ベーシスの拡大によるヘッジコスト上昇の影響を強く受け、当社グループ各社の保有資産の評価損、減損損失及び売却損の計上、剰余金の処分による分配可能額の減少・消失等、金融事業に影響を及ぼすリスクは大きいものと認識しております。

これらに対し、財務健全性の観点から、リスク管理態勢を高度化し、ストレス・テスト等を実施し、運用の分散や機動的な運営に努め、必要な自己資本比率を確保しておりますが、金融・資本市場、国内外の経済情勢その他事業環境の変動が生じた場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

6.顧客本位の業務運営に反するリスク

当社グループでは、業務改善計画に基づいた改善策の実行に向けて取り組んでいるかんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題に加え、かんぽ生命保険商品と投資信託の横断的な販売について、一部お客さま本位といえない営業が行われていたことや、ゆうちょ銀行のキャッシュレス決済サービスの不正利用、郵便局におけるお客さま情報の紛失等の問題が発生しています。当社グループは、外部専門家の方々で構成された、各種取組みを公正・中立な立場から検証するJP改革実行委員会からの評価、助言等も踏まえ、ガバナンス機能、グループコンプライアンス機能、監査部門の機能の強化等を図り、業務改善計画を着実に実行しており、また、お客さまからの信頼回復に向け、2020年9月に発表した「お客さまの信頼回復に向けた約束」をもとに、お客さまや社員の声を経営や営業・業務改善に活用する等、お客さま本位の事業運営を徹底し、お客さまからの信頼回復に向けた改善策を実行してまいりました。

また、ゆうちょ銀行の即時振替サービスの不正利用事案等に関し、2021年1月にJP改革実行委員会から受領した「株式会社ゆうちょ銀行のガバナンス等に係る検証報告書」において、ガバナンス強化に向けた改善策に係る提言を受けており、提言事項への対応に取り組んでおります。

併せて、当社は、2021年4月1日付でグループコンダクト統括室を設置し、子会社からのコンダクト・リスクに係る情報を迅速に把握し、グループとして一体的な対応を可能とするための態勢整備を行いました。

他方、日本郵便では、経費で購入した業務用カレンダーの配布にあたって全国郵便局長会より不適切な指示が行われていた問題が発覚しました。再発防止のため、「会社の活動」と「業務外の活動」のしゅん別に関する全役員・社員への継続的な指導等を着実に実行し、同様の事案を発生させないよう取り組んでおります。

また、同カレンダーの配布にあたって、業務上得られた個人情報を業務外の活動に使用する等の不適切な取扱いも発覚しました。再発防止のため、個人情報の適正な取扱いの徹底等に関する教育・研修を日本郵便の全社員対象に行っております。

当社グループは、2022年4月1日付でグループコンダクト向上委員会を設置し、グループ行動憲章を実践していくためのグループコンダクトを向上させる取組みについて、外部有識者による助言をいただき、お客さまからの信頼回復などに取り組んでまいります。

さらに、2022年4月からは、「新しいかんぽ営業体制」を開始し、日本郵便からかんぽ生命保険に兼務出向した高い機動性と専門性をもったコンサルタントと、多様なお客さまニーズに応える日本郵便の窓口社員が、それぞれの能力を最大限に発揮し、専門性と幅広さを兼ね備えた「総合的なコンサルティングサービス」をグループ一体で実現してまいります。

当社グループは、お客さま本位の業務運営を徹底し、組織風土改革を含む信頼回復に向けた取組みを継続してまいりますが、今後、お客さまの不利益となる他の事例や法令違反又は社内ルール違反となる他の事例が追加で判明する可能性は否定できず、この場合には、更なる行政処分を受ける可能性があり、当社グループの事業、社会的信用、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

7.サイバーセキュリティに関するリスク

重要インフラである郵便・物流事業、銀行業、生命保険業を運営している当社グループにおいては、事業運営上のシステムへの依存度が高い状況にあります。当社グループは、お客さまと地域を支える「共創プラットフォーム」としてグループ一体でのDXを推進していることから、今後ますますその重要性が高まることが予想される一方、社会ではシステムに対するサイバー攻撃や各種サービスの不正利用が発生しております。当社グループの事業運営における情報システムへの依存度は高く、インターネットを活用した顧客とのアクセスも多くなり、その結果、サイバー攻撃や各種サービスの不正利用のリスクが高くなっています。また、かかるリスクはサイバー攻撃の高度化や在宅勤務(テレワーク)の拡大等により、今後さらに増大する可能性があります。

当社グループでは、このような高まりを見せるサイバー空間におけるリスクに対して、恒常的にサイバーセキュリティ対策の高度化に取り組んでおりますが、かかる対策にもかかわらず、当社グループのシステムへの攻撃、各種サービスの不正利用により、当社グループの事業が大規模かつ長期間に亘り停止又は制約を受けるような事案が発生した場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

8.ユニバーサルサービス提供に係るリスク

当社及び日本郵便は、郵政民営化法等に基づき、郵便の役務、簡易な貯蓄、送金及び債権債務の決済の役務並びに簡易に利用できる生命保険の役務が、利用者本位の簡便な方法により郵便局で一体的に利用できるようにするとともに、将来にわたりあまねく全国において公平に利用できることが確保されるよう、郵便局ネットワークを維持する法律上の義務を負っています(かかる義務に基づき郵便局ネットワークを通じて行われる役務提供を、以下「ユニバーサルサービス」といいます。)。

そのため、当社グループの郵便・物流事業及び郵便局窓口事業においては、全国各地の郵便局及び配送拠点等に係る設備費、車両費等の多額の固定費に加え、多数の社員の給与等の人件費が発生しております。特に、人件費については、労使交渉・労働法制の変更等を受けて従業員への給与等を増額した場合には、それが一人当たりは比較的小さな増額であっても、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、高齢化に伴う厚生年金保険料率、雇用保険料率及び健康保険組合保険料率の引き上げなどによる法定福利費等の上昇も想定されます。

当社及び日本郵便は、今後、地方における過疎化の進展、企業活動又は個人の消費活動の縮小、電子メール等インターネットやウェブサイトを通じた通信手段、金融サービスの普及等を背景に、郵便物や荷物の取扱数量や、金融・保険商品の販売・募集の減少等、当社グループが郵便局を通じて提供するサービスの利用が減少した場合であっても、ユニバーサルサービスを維持する法的義務があり、収益性の低い事業又は拠点等を縮小する等の対応が制限されているため、かかる方法により固定費を削減することが困難となる可能性があります。当社グループの提供する商品・サービスの内容、対象若しくは対価を変更し若しくはその提供を中止し、又は、郵便局ネットワークを縮小するなどの対応ができず若しくは制約され、かかる固定費に見合った収益を挙げられない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、ユニバーサルサービス維持のため、固定費の負担から当社グループの損益が大幅に悪化し、その結果、事業運営コストを賄うために収益性を過度に追求した営業や過度のリスクを伴う資金運用を行い、コンダクト・リスクや運用リスクが顕在化する可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

ユニバーサルサービスの確保については、2015年9月28日付「郵政事業のユニバーサルサービス確保と郵便・信書便市場の活性化方策の在り方」に関する情報通信審議会からの答申において、短期的には、「日本郵政及び日本郵便は自らの経営努力により現在のサービスの範囲・水準の維持が求められる」、「また、国は、ユニバーサルサービス確保に向けたインセンティブとなるような方策について検討することが必要である」、中長期的には、「郵政事業を取り巻く環境の変化やこれに応じた国民・利用者が郵政事業に期待するサービスの範囲・水準の変化も踏まえて、ユニバーサルサービスの確保の方策やコスト負担の在り方について継続的に検討していくことが必要」とされており、答申を受けて実施される政府の施策の内容によっては、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

9.事業子会社における中長期の戦略リスク(既存事業の成長に関するリスク)

当社グループは、国内外の市場金利、為替、株価、経営環境(消費税増税を含む。)、競争状況、営業費用等多くの前提に基づいて中期経営計画を策定し、郵便・物流事業、郵便局窓口事業、国際物流事業、銀行業、生命保険業等の業務に係る中期的な事業戦略・方針を定めております。2022年度は当社グループ5カ年の中期経営計画「JPビジョン2025」の2年目となりますが、「お客さまと地域を支える共創プラットフォームの構築」の戦略のもとに、成長に向けた投資、効率化施策、生産性向上の取組みを行っています。

しかしながら、将来の戦略、計画、方針等には様々なリスク等が内在しており、当社グループの施策が奏功しなかった場合、又は、当社グループの採用した前提と異なる状況が生じた場合には、当該計画の実現又は目標の達成ができない可能性があります。

日本郵便は、中期経営計画「JPビジョン2025」では、P-DXを推進することで、荷物分野の競争激化に打ち勝つ配送サービスを提供するとともに、生産性向上等に向けオペレーションの効率化を実施していくとしております。しかし、P-DXの推進が想定通りに進まなかった場合は、eコマース市場の荷物の獲得や生産性向上によるコストの抑制に遅れが生じる場合があります。また、窓口業務運営のデジタル化等により、業務の効率化を徹底する取組み等を進めておりますが、想定通りに業務の効率化が進まず、コスト削減を実現できない場合があります。

ゆうちょ銀行は、“信頼を深め、金融革新に挑戦”のスローガンの下、「リアルとデジタルの相互補完による新しいリテールビジネスへの変革」、「デジタル技術を活用した業務改革・生産性向上」等の5つの重点戦略を通じて、ビジネスモデルの変革と事業のサステナビリティ強化に取り組んでおります。

かんぽ生命保険は、「新しいかんぽ営業体制の構築」、「保険サービスの充実」、「事業運営の効率化」、「資産運用の深化・高度化」などの事業基盤の強化、及び「お客さま体験価値(CX)の向上」を中心に取り組んでおります。

しかしながら、当社グループのかかる施策が十分な効果を発揮しない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、これにより当社の分配可能額が減少し、当社株主への配当の支払い額が減少し又は配当の支払い自体が困難となる可能性があります。

 

10.ESG・気候変動に関するリスク

当社グループは、郵便局ネットワークを活用し、事業を通じて、地域社会への貢献、SDGs等の社会的な課題に取り組むことにより、グループの持続可能な成長と中長期的な企業価値の創出を図っておりますが、その対応が不十分と評価された場合には、当社グループの資本市場における評価その他社会的な評価の低下につながる可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態並びに当社の株価に影響を及ぼす可能性があります。

その中でも、気候変動への対応は、我が国及び世界において大きな課題となっており、当社グループにおいては、異常気象や増加する自然災害等により外務社員の熱中症などの従業員の健康被害や店舗、その他の設備や施設の損壊その他正常な業務遂行を困難とする状況等の郵便局ネットワークの損傷といった物理的リスクのほか、当社グループの気候変動への対応が遅れることで、より環境負荷の低い輸送手段を持つ企業に顧客が移る等の移行リスクに適切に対応する必要があります。当社グループとしても「2050年カーボンニュートラルの実現」を目指し、温室効果ガス(GHG)の削減に取り組んでおりますが、その達成には、我が国における再生可能エネルギーの普及などが進むことが必要となります。当社グループも、持てるリソースの活用によって我が国及び世界のカーボンニュートラル化を後押しすることとしております。しかしながら、これらの動きが十分に進まなかった場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態並びに当社の株価に影響を及ぼす可能性があります。

 

Ⅱ.当社グループ全般に関するリスク

 

1.事業環境に関するリスク

(1) 経済・政治情勢その他の事業環境の変化に伴うリスク

当社グループが行う事業のうち、郵便・物流事業、郵便局窓口事業、銀行業、生命保険業等は、その収益の多くが日本国内において生み出されるものであるため、主として国内における経済情勢の変化、金利の動向、金融市場の変動、消費税増税、少子高齢化の進展、eコマース市場の動向、技術革新、賃金水準の変動、不動産価格の変動、預金水準等の影響を受けます。

また、国際物流事業において日本郵便の子会社であるトール社が、日本を含むアジア太平洋地域等におけるフォワーディング、ロジスティクス等の国際的な事業活動を行っており、世界経済の減速、新型コロナウイルス感染症の拡大を含む各国・地域における経済情勢や政治情勢等の変動による影響を受け、銀行業・生命保険業においては、運用の多様化・高度化の下、国際分散投資を推進している結果、足元の急速な円安や米国での金利上昇、株式市場の混乱など、国際金融・資本市場の変動による影響も受けます。加えて、郵便・物流事業においても、国際情勢や円安の影響等を受けてエネルギー価格が高騰した場合、費用が増加し、収益性が低下する可能性があります。従って、足元の新型コロナウイルス感染症の拡大を含む国内外の経済情勢、金融・資本市場その他事業環境の変動が、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 他社との競合に関するリスク

当社グループが行う事業は、いずれも、激しい競争状況に置かれております。当社グループと競合関係にある同業他社は、AI・Fintech・テレマティクス等の技術の急速な進展・活用、その他の事業環境の変化・事業戦略の変更等で、当社グループより優れた商品構成、サービス、価格競争力、事業規模、シェア、ブランド価値、顧客基盤、資金調達手段、事業拠点、ATM・物流拠点その他のインフラ・ネットワーク等を有する可能性があります。

例えば、日本郵便が行っている郵便・物流事業については、信書便事業者や他の物流事業者等と競合関係にあります。特に成長が見込まれる物流事業における競争は激しく、日本郵便としては価格競争による個数獲得は目指さない方針ですが、競業他社が日本郵便よりも競争力のある価格でサービスを提供すること等により、日本郵便のシェアも影響を受けております。このように、他社サービスの競争力の向上その他の理由により他社の提供するサービスへの乗り換えが発生した場合、又は、競争激化により日本郵便の事業、シェア若しくは収益の動向が当社グループの想定通りに進捗しなかった場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、ゆうちょ銀行が行っている銀行業、及びかんぽ生命保険が行っている生命保険業も、同業他社等と競合関係にあります。今後、両社が金融サービスに対する顧客ニーズの変化や市場構造の変化等に適切に対応できなかった場合、又は、両社が競合他社に対して優位に立てない場合等においては、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

さらに、近年では、国内外の各業界において統合や再編、業務提携が積極的に行われているほか、参入規制の緩和や業務範囲の拡大等の規制緩和が行われております。当社グループ各社が市場構造の変化に対応できなかった場合や規制緩和や新規参入が想定以上に進んだ場合は、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。例えば、日本のeコマース市場の拡大に伴い宅配取扱数量の増加がみられる一方で、物流事業者やEC事業者による提携、主要なECプラットフォーマーによる独自の物流サービスの展開等が進んでおり、日本郵便がeコマース市場の拡大に伴う需要の増加を十分に取り込める保証はありません。また、郵便事業と競合する一般信書便事業については、民間事業者による信書の送達に関する法律(以下「信書便法」といいます。)に基づき、一定の参入条件が課された許可制とされており、現時点において同事業に参入している民間事業者はおりません。しかしながら、信書便法の改正等により、信書便事業の業務範囲の拡大や参入条件が変更されるなど参入規制が緩和された場合には、新規事業者の参入により競争が発生し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 大規模災害等に伴うリスク

当社グループは、日本国内のみならず国際的な事業活動も行っており、各国・地域における地震、噴火、津波、台風、洪水、大雪、火災等の大規模自然災害(異常気象・気候変動に伴うものを含む。)、新型インフルエンザやエボラ出血熱等の感染症の大流行、戦争、テロリズム、武力衝突等の人的災害、水道、電気、ガス、通信・金融サービス等に係る社会的インフラの重大な障害や混乱等の発生、又は当社グループの店舗、その他の設備や施設の損壊その他正常な業務遂行を困難とする状況等が生じた場合、当社グループの業務の全部若しくは一部が停止し、又は、運営に支障をきたすおそれがあり、また、設備やインフラの回復、顧客等の損失の補償等のために長期の時間及び多額の費用を要する可能性があります。

また、かかる状況下において当社グループの業務が円滑に機能していたとしても、かかる状況の発生に伴う経済・社会活動の沈滞等の影響を受け、当社グループやその顧客・取引先企業の事業活動の継続性に支障をきたす可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

特に、当社グループは生命保険子会社としてかんぽ生命保険を保有していることから、大地震その他の大規模災害や新型インフルエンザのような感染症の大流行を原因として大量の死者が出た場合に、かんぽ生命保険による保険給付に関し、通常の想定を超える債務を負うリスクにさらされております。同社は、保険業法の基準に従って危険準備金を積み立てておりますが、予想を超える大規模災害等の発生により危険準備金を超えるような保険金・給付金の支払いが発生した場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 新型コロナウイルス感染症の拡大に関するリスク

新型コロナウイルス感染症の拡大は、郵便局等での営業、郵便・物流事業、国際物流事業を行う当社グループの事業活動に影響を及ぼしており、新型コロナウイルス感染症への対策として、当社社長を本部長とする本社合同対策本部を設置し、関係機関と連携を図り、感染の防止と業務・サービスの継続等のため、必要な取組みを継続しており、お客さまと社員の安全確保のための措置を行っております。具体的には郵便局及びゆうちょ銀行店舗窓口におけるマスク着用、郵便物等の対面配達時におけるマスク着用の徹底を行ったほか、ゆうパックや書留郵便物等をご希望に応じて対面ではなく郵便受箱や玄関前等に配達する等、お客さまへの影響と感染拡大の防止に最大限配慮して、業務を継続していくこととしていますが、今後の実際の感染拡大の収束時期や、国内外の経済環境、金融・資本市場の動揺などを通じた様々な要因により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、感染症の国際的な拡大は、国際物流事業を行うトール社の事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

さらに、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大により、金融・資本市場が大きく変動するとともに実体経済が多大な影響を受ける環境下においては、金融2社の国際分散投資による適切なポートフォリオ運営及びリスク管理が奏功せず、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症の大流行を原因として大量の死者が出た場合のかんぽ生命保険による保険給付に関する通常の想定を超える債務を負うリスクについては前記(3)のとおりです。

このほか、新型コロナウイルス感染症の収束後においても、非対面・非接触サービスの定着や、在宅勤務(テレワーク)が広まるなど、社会の在り方やライフスタイルが変わるような事業環境の変化に当社グループが適切に対応できない場合には、当社グループのサービスの競争力低下等により、当社グループの現在の収益基盤となっている郵便・物流事業や郵便局窓口事業等において収益性が悪化するなど、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

2.法的規制・法令遵守等に関するリスク

(1) 法的規制及びその変更に関するリスク

当社グループは、業務を行うにあたり、以下のような各種の法的規制等の適用を受けております。

 これらの規制により、当社グループは、同業他社に比して、新規事業の展開や既存事業の拡大、低収益分野からの撤退又は縮小が制約されるため、競争力を失い、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループに適用のある法令等の改正や新たな法的規制等により、当社グループの競争条件が悪化したり、事業活動の一部が制限又は変更を余儀なくされた場合は、新たな対応費用の増加、収益機会等の喪失等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

① 郵便法等に基づく規制

郵便法上、郵便事業は当社の連結子会社である日本郵便が独占的に行うこととされておりますが、郵便約款の変更や業務委託の認可制、全国一律料金制度、定形郵便物の料金制限、郵便料金の届出制(第三種郵便物及び第四種郵便物については認可制)といった、本事業特有の規制又は他の事業や他社とは異なる規制を受けております。

 

② 銀行法及び保険業法に基づく規制

当社グループの金融事業においては、一般的に適用される銀行法及び保険業法といった金融業規制を受けております。また、現在監督(規制)当局等において、銀行業におけるバーゼルⅢの最終化や生命保険業における経済価値ベース新規制等の適用に関する議論がなされており、当社グループではこれらの議論を注視しつつ、新たな規制等の導入を考慮した内部管理を行っていますが、規制の内容によっては、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(a) ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険及び金融持株会社としての当社に対する規制

金融2社は、それぞれ銀行法、保険業法及び関連業規制に基づき、金融庁の監督を受けており、内閣総理大臣からの委任を受けた金融庁長官による、法令違反等による免許取消し並びに業務の健全性かつ適切な運営を確保する等のために必要があると認めるときの業務停止及び立入検査等を含む広範な監督に服しております。当社も銀行持株会社及び保険主要株主として、銀行法及び保険業法に基づき金融庁の監督に服する等の金融業規制を受けております。

金融2社は、それぞれ銀行法、保険業法及び関連業規制に基づき、法令により定められた業務以外の業務を営むことができず、また、ゆうちょ銀行は自己資本の充実度合いを計る基準である自己資本比率(国内基準)を4.0%以上に維持すること等を、かんぽ生命保険は、大災害や株価の大暴落など、通常の予測を超えて発生するリスクに対応できる「支払余力」を有しているかどうかを判断する指標の一つであるソルベンシー・マージン比率を200%以上に維持すること等をそれぞれ求められております。

また、当社も銀行持株会社として、銀行法に基づき金融庁の監督に服するとともに、連結自己資本比率(国内基準)を4.0%以上に維持すること等が必要とされるほか、顧客の利益保護のための体制の整備や事業年度毎の規制当局に対する業務報告書等の提出の義務等を負っております。

2022年3月31日現在、ゆうちょ銀行の連結自己資本比率は15.56%、かんぽ生命保険の連結ソルベンシー・マージン比率は1,045.5%、当社グループの連結自己資本比率は17.21%であり、いずれも法令上の規制比率に比べ相当程度高い水準を確保しております。しかしながら、近時の金融市場の状況に対応したリスク性資産の増加により、これらの比率は低下傾向にあることに加え、保有有価証券等の価値の低下、これらの比率の算出方法の変更、比率に係る規制の変更、新たな規制の導入等により、連結自己資本比率がさらに低下する可能性があり、当該比率が規制比率を下回るような場合には、規制当局から、報告又は資料の提出や、業務の縮小等を含む改善措置が求められる可能性があり、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

なお、国際的な監督規制では、システム上重要な金融グループに対する規制強化を図っているところですが、選定基準の見直し等、規制当局の動向によっては、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(b) 日本郵便に対する規制

日本郵便は、当社グループの郵便局窓口事業に関連して、ゆうちょ銀行を所属銀行とする銀行代理業者として、かんぽ生命保険を所属保険会社等とする生命保険募集人として、それぞれ銀行法及び保険業法に基づき、金融庁の監督に服しております。また、日本郵便は、銀行代理業者として、内閣総理大臣の承認を得ない限り、法令により定められた業務以外の業務を営むことができず、また、分別管理義務、銀行代理業務を行う際の顧客への説明義務、断定的判断の提供等の一定の禁止行為等の規制を受けております。また、生命保険募集人として、顧客に対する説明義務、虚偽説明等の一定の禁止行為等の規制を受けております。日本郵便が上記規制に違反する等した場合には、規制当局から、許可又は登録の取消しや業務の一部又は全部の停止を命ぜられる可能性があり、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(c) 事業の前提となる許認可

当社グループは、主として以下のような許認可等を受けております。

許認可等の名称

根拠条文

会社名

有効期限

許認可等の取消事由等

銀行持株会社の認可

銀行法第52条の17第1項

日本郵政株式会社

なし

同法第52条の34第1項

保険主要株主の認可

保険業法第271条の10第1項

日本郵政株式会社

なし

同法271条の16第1項

銀行代理業の許可

銀行法第52条の36第1項

日本郵便株式会社

なし

同法第52条の56第1項

生命保険募集人の登録

保険業法第276条

日本郵便株式会社

なし

同法第307条第1項

銀行業の免許

銀行法第4条第1項

株式会社ゆうちょ銀行

なし

同法第26条第1項、第27条、第28条

生命保険業の免許

保険業法第3条第4項

株式会社かんぽ生命保険

なし

同法第132条第1項、第133条、第134条

 

上記許認可等が取消しとなるような事由の発生は認識しておりませんが、将来、何らかの理由により、各法が定める取消事由等に該当し、所管大臣より許認可の取消処分等を受けることとなった場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 当社グループ固有に適用される規制等

ユニバーサルサービスの確保については、2015年9月28日付「郵政事業のユニバーサルサービス確保と郵便・信書便市場の活性化方策の在り方」に関する情報通信審議会からの答申において、短期的には、「日本郵政及び日本郵便は自らの経営努力により現在のサービスの範囲・水準の維持が求められる」、「また、国は、ユニバーサルサービス確保に向けたインセンティブとなるような方策について検討することが必要である」、中長期的には、「郵政事業を取り巻く環境の変化やこれに応じた国民・利用者が郵政事業に期待するサービスの範囲・水準の変化も踏まえて、ユニバーサルサービスの確保の方策やコスト負担の在り方について継続的に検討していくことが必要」とされており、答申を受けて実施される政府の施策の内容によっては、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、ユニバーサルサービスの提供に関するリスクについては、「Ⅰ.当社経営陣が特に重視する当社グループの事業等のリスク 8.ユニバーサルサービス提供に係るリスク」も併せてご参照ください。

また、当社及び日本郵便は、それぞれ日本郵政株式会社法及び日本郵便株式会社法に基づき、新規業務、株式の募集、又は株式交換若しくは株式交付に際しての株式の交付、取締役の選解任(当社のみ)、事業計画の策定、定款の変更、合併、会社分割、解散等を行う場合には、総務大臣の認可(ただし、日本郵便の新規業務については総務大臣への届出)が必要とされています。また、金融2社は、銀行法又は保険業法に基づく規制に加え、同種の業務を営む事業者との対等な競争条件を確保するため、郵政民営化法に基づき、新規業務、子会社対象金融機関等(ゆうちょ銀行)・子会社対象会社(かんぽ生命保険)の保有、合併、会社分割、事業の譲渡・譲受け等を行う場合には、内閣総理大臣及び総務大臣の認可が必要とされているほか、ゆうちょ銀行においては銀行を、かんぽ生命保険においては保険会社等を子会社として保有することはできません。さらに、銀行業における預入限度額規制、生命保険業における加入限度額規制が課される等、同業他社とは異なる規制が課されております(なお、金融2社におけるこれらの規制を、以下「郵政民営化法上の上乗せ規制」といいます。)。

さらに、当社及び金融2社は、新たな収益機会を得るために新規業務を行う場合、郵政民営化法に基づき内閣総理大臣及び総務大臣の認可を得る必要があり、当該認可が得られず、又は認可取得に時間を要する場合には、当社グループが計画した時期又は内容で新商品を投入又は新サービスを提供できない可能性があるなど、当社グループによる新規事業の展開を含む業務範囲の拡大には一定の制約が伴います。

当社は、2021年6月9日、郵政民営化法第62条第2項に基づき、かんぽ生命保険の株式の2分の1以上を処分した旨の総務大臣への届出を行いました。当社が総務大臣に届け出た日以後は、かんぽ生命保険が上記の各業務を行おうとするときは、認可は要しないものの、その内容を定めて、内閣総理大臣及び総務大臣への届出を要するとともに、業務を行うに当たっては、他の生命保険会社との適正な競争関係及び利用者への役務の適切な提供を阻害することのないよう特に配慮しなければならないものとされております。

 

④ WTO(World Trade Organization:世界貿易機関)による政府調達ルール

公社を承継した機関として、当社、日本郵便及び金融2社が政府調達協定その他の国際約束の適用を受ける物品等を調達する場合には、国際約束に定める手続の遵守が求められます。当社グループ各社の作為又は不作為により、これらのルールを遵守できなかった場合には、調達行為が成立しない、あるいは調達行為に遅れが発生する可能性があり、当初想定していた計画が実施できないなど、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 訴訟その他法的手続に関するリスク

当社グループは、事業の遂行に関して、人事労務、業務上の事故、外部委託、知的財産権等の利用に関する事項をはじめとする、訴訟、行政処分その他の法的手続が提起又は開始されるリスクを有しております。一部ではありますが、人事処遇や勤務管理などの人事労務上の問題や職場の安全衛生管理上の問題等に関連する訴訟等を、当社グループの従業員等から提起されております。

かかる訴訟等の解決には相当の時間及び費用を要する可能性があるとともに、社会的関心・影響の大きな訴訟等が発生した、当社グループに対して損害賠償の支払等が命じられる等不利な判断がなされた場合には、当社グループにおいても当該判断を踏まえた対応が必要となるなど、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

なお、労働契約法第20条(平成30年法律第71号による改正前のもの)に基づき、期間雇用社員である原告が正社員と期間雇用社員に労働条件の差異があるのは不合理であるとして提訴した訴訟については、2020年10月15日に最高裁判所が、一部の手当や休暇制度について、正社員と期間雇用社員である原告間に差異があるのは不合理との判決を言い渡しました。当社グループにおける今後の人事労務制度改正の内容については、最高裁判所の判決の内容を踏まえ、労使交渉のうえ決定していくこととしておりますが、その内容等によっては対応に相当の費用を要するなど、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 社会的信用の低下に関するリスク

当社グループは、あまねく全国に広がる郵便局ネットワークを通じて、多数の郵便物・荷物の配達や金融サービスの提供を行っております。当社グループの商品・サービス、事業、従業員、提携先又は委託先企業に関連して、郵便物の管理上の不備・遅配・誤配及び破棄・紛失等、配達員による交通事故、銀行口座やクレジットカードの不正利用、キャッシュカードの盗難、マネー・ローンダリング、テロ資金供与等の犯罪、サイバー攻撃等によるシステム・トラブルや個人情報その他の機密情報の漏えい、不正行為、顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)に反する行為、反社会的勢力との取引、労働問題、ハラスメント(業務の適正な範囲を超える言動等)、事故、業務上のトラブル、社内規程・手続違反、不祥事等が発生した場合には、当社グループが提供するサービスに対する社会的信用が低下し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループではかかる事態の発生を未然に防止するため、グループ会社全社員へのコンプライアンス教育や「お客さま本位の業務運営」の徹底を通じ、影響の低減に努めておりますが、これらの施策にもかかわらず上記のような事態が生じた場合、社会的信用の低下により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

特に「かんぽ生命保険契約問題 特別調査委員会」が2019年12月18日付で公表した調査報告書では、当社グループにおいて、「不適正募集の実態把握につながる現場の声が経営陣に届かない」、「リスク事象を探知した際の原因追究・解決の先送り」、「問題の矮小化」及び「部門間の横での連携不足及び上意下達のもとでの情報伝達の目詰まり」といった企業風土又は組織文化が従前から存在してきたことが指摘されていました。当社グループにおいては、経営陣主導の下、かかる企業風土又は組織文化の健全化に取り組んでおりますが、かかる取組みが功を奏しない又は功を奏するまでに想定以上の時間を要する場合には、類似の事案が発生する結果、当社グループの社会的信用が低下する、又は当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、2021年11月26日に公表したとおり、日本郵便では、経費で購入した業務用カレンダーの配布にあたって全国郵便局長会より不適切な指示が行われていた問題が発覚しました。再発防止のため、「会社の活動」と「業務外の活動」のしゅん別に関する全役員・社員への継続的な指導等を着実に実行し、同様の事案を発生させないよう取り組んでおります。また、支社機能の強化の一環として、支社長の下に地方本部長を配置し、局長とのコミュニケーションの強化を行いつつ、課題の把握、解決を図ることに取り組んでおります。しかしながら、かかる取組みが功を奏せず、類似の事案が発生した場合、当社グループの社会的信用が低下する可能性があります。

加えて、当社グループが行っている事業全般に対する風評・風説が、報道機関・市場関係者への情報伝播、インターネット上の掲示板やSNSへの書込み等により拡散した場合、又は、報道機関により否定的報道が行われた場合には、仮にそれらが事実に基づかない場合であっても、当社グループが提供するサービスの公益性、事業規模、社会における認知度・注目度等を背景に、当社グループは、顧客や市場関係者等から、否定的理解・認識をされ、又は、強い批判がなされる可能性があり、それにより当社グループ、商品・サービス、事業のイメージ・社会的信用が低下し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

3.事業運営に関するリスク

(1) 中期経営計画に関するリスク

当社グループは、国内外の市場金利、為替、株価、経営環境(消費税増税を含む。)、競争状況、営業費用等多くの前提に基づいて中期経営計画を策定し、郵便・物流事業、郵便局窓口事業、国際物流事業、銀行業、生命保険業等の業務に係る中期的な事業戦略・方針を定めております。当社グループの中期経営計画「JPビジョン2025」では、「お客さまと地域を支える共創プラットフォームの構築」、「グループ一体でのDX推進による新しい価値提供」の戦略のもとに、成長に向けた投資、効率化施策、生産性向上の取組みを行っています。

しかしながら、将来の戦略、計画、方針等には様々なリスク等が内在しており、当社グループの施策が奏功しなかった場合、又は、当社グループの採用した前提と異なる状況が生じた場合には、当該計画の実現又は目標の達成ができない可能性があります。具体的には、エンジニアの確保・育成や既存の人材・システムの置換が進まないこと等により、DXの推進による業務効率化、サービスの拡充や新たな価値創造、固定費の削減、当社グループの成長に向けた戦略的なIT投資が予定通りに進まない可能性があります。また、不動産開発に関するノウハウの不足又は不動産市況の悪化等により不動産事業の強化が期待された効果を生まない可能性があります。さらに、他社とのM&Aや提携については、他の投資者等との競合や規制上の理由により当社グループが企図したM&Aや提携を実施できない可能性があるほか、完了したM&Aや提携についても、実施後の統合プロセスが不十分なものであったり、M&Aや提携の効果についての見積もりが楽観的であったこと等により、期待されたリターンを得られない可能性があります。現在公表している楽天グループとの提携や佐川急便との協業に関する基本合意についても、現時点では必ずしもその具体的な内容が実施又は決定されているわけではないなど、当社グループが進める出資や提携が期待された効果を生まない可能性があります。加えて、新規ビジネス等の推進を目指していく中で、拡大するポートフォリオを十分に管理することができず、投資や撤退の時期等を適切に見極めることができなくなる可能性があります。

また、P-DX等の推進による郵便・物流事業における業務効率化が想定通りに進まない可能性があるほか、eコマース市場の成長又は物流市場における需要の増加が当社グループの想定を下回る、又は、当社グループがかかる物流需要を十分に取り込めない可能性があります。かんぽ生命保険に関しては、市場金利の低下に伴う保険料の値上げなどにより貯蓄性商品の新契約の獲得実績が想定以上に減少していることに加えて、保険募集プロセスの品質事案等の影響で新契約の獲得が計画通り進まない、又は、既存の契約の解約数が増加する可能性があり、かかる場合、当該計画期間終了後も新契約の獲得や既存の契約の維持については、厳しい状況が継続することが見込まれます。なお、中期経営計画のうち、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険にかかる事業戦略及び経営計画に関するリスクについては、それぞれ「Ⅳ.銀行業に関するリスク (8) 事業戦略・経営計画に係るリスク」及び「Ⅴ.生命保険業に関するリスク (5)事業戦略・経営計画が奏功しないリスク」も併せてご参照ください。

さらに、金融2社等当社グループ各社が保有する有価証券の価値の低下による減損損失、売却損の計上やその他有価証券評価差額金の減少等により当社グループ各社からの配当収入が減少する結果、当社では十分な配当可能額が確保できず、中期経営計画における配当目標を達成できない可能性があります。

また、2021年3月31日付で公表したとおり、当社は、2021年3月期通期の個別決算において、ゆうちょ銀行の株式について、時価が著しく下落したため減損処理を行い、2,229,538百万円の関係会社株式評価損(特別損失)を計上いたしました。今後も金融2社株式を含む当社保有の株式の時価が下落することにより更なる減損処理が必要となった場合には、これに伴う剰余金の減少によりさらに分配可能額が減少し、あるいは消失する可能性があります。

なお、当社は、今後の国際財務報告基準(IFRS)の適用について国内外の会計基準の動向等を勘案し対応を検討してまいりますが、将来的に国際財務報告基準を適用する場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) グループ外の企業との資本・業務提携、外部委託及び企業買収並びに業務範囲の拡大等に伴うリスク

当社グループは、当社グループ外の企業との間で、様々な業務に関し、資本・業務提携、外部委託を行っております。当社は、アフラック・インコーポレーテッド及びアフラック生命保険との戦略提携に合意し、アフラック・インコーポレーテッドの発行済株式総数(自己株式を除く。)の約7%を取得しております。また、2021年3月12日に、当社及び日本郵便は、楽天株式会社(現楽天グループ株式会社)との資本・業務提携に合意(さらに、同年4月28日に当社、日本郵便、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険と楽天グループとの間で改めて業務提携に合意)し、同年3月29日をもって、当社は、楽天株式会社の発行済株式総数(自己株式を除く。)の約8%を取得したほか、同年7月1日、日本郵便は、楽天グループと共同でJP楽天ロジスティクスを設立し、JP楽天ロジスティクスを日本郵便の連結子会社としております。加えて、同年9月10日には、日本郵便は、佐川急便株式会社との間で、物流サービスの共創に向けた両社の事業成長を目的とした協業に関する基本合意書を締結しております。このようなグループ外の企業との資本・業務提携については、具体的な内容が決定又は実施されていないものがあることに加え、資本・業務提携先との間における、戦略上若しくは事業上の問題又は目標の変更や当社グループとの関係の変化等により、期待通りの効果が得られない可能性や、投資に見合うリターンを得られない可能性、当社グループの既存事業に負の効果を及ぼす可能性も否定できません。このような場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、資本・業務提携先、外部委託先において、業務遂行上の問題が生じ、商品・サービスの提供等に支障をきたす場合、顧客情報等の重要な情報が漏えいする等の事故、違法行為、不正行為、不祥事等が発生した場合等には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループが、他の企業を買収するに当たっては、買収先企業や買収先事業を効果的かつ効率的に当社グループの事業と統合できない可能性、買収先企業の重要な顧客、仕入先、その他関係者との良好な関係を維持できない可能性、買収資産の価値が毀損し、損失が発生する可能性などがあります。また、想定した事業環境と異なる状況が発生する可能性、経営陣を含む人材流出・不足等の可能性などがあります。このような事象が発生した場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、今後の業務範囲の拡大については、当社グループが業務範囲を拡大することができたとしても、限定的な経験しか有していない業務分野に進出した場合、競争の激しい分野に進出した場合や業務拡大により過度の人的・物的負担が生じた場合等において、業務範囲の拡大が功を奏する保証はなく、当初想定した成果をもたらさず、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 情報通信システム及び個人情報その他の機密情報の漏えいに関するリスク

当社グループは、郵便・物流事業、郵便局窓口事業、国際物流事業、銀行業、生命保険業等を営んでおり、当社グループのコンピュータシステムは、顧客や各種決済機構等のシステムとサービスの提供に必要なネットワークで接続されるなど極めて重要な機能を担っております。これらについて、地震、噴火、津波、台風、洪水、大雪、火災等の自然災害やテロリズム等に加えて、人的過失、事故、停電、コンピュータウイルスの感染、不正アクセス等のサイバー攻撃、システムの新規開発・更新における瑕疵、通信事業者等の第三者の役務提供の瑕疵等により重大なシステム障害や故障等が発生する可能性があります。こうしたシステムの障害、故障等が生じた場合に、業務の停止・混乱等及びそれに伴う損害賠償、行政処分、社会的信用の低下、対応や対策に要する費用等が発生することにより、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、日本郵便では、経費で購入した業務用カレンダーの配布にあたって業務上得られた個人情報を業務外の活動に使用する等の不適切な取扱いがあった事案や、投資信託取引及び国債取引に係る「金融商品仲介補助簿」を紛失した事案等も発生しています。当社グループは、多くの顧客や取引先等から様々な情報を取得しているほか、事業・人事などに関する多数の情報を保有しており、これらの情報については、郵便法、銀行法、保険業法、金融商品取引法等のほか、個人情報の保護に関する法律等に基づき適切に取り扱うことが求められています。当社グループは、かかる事態の発生を未然に防止するため、グループ会社全社員へのコンプライアンス教育や「お客さま本位の業務運営」の徹底に努めております。また、外部の専門人材の活用等多様な防御対策を講じることにより、システム障害等の発生の未然防止に努めています。しかしながら、当社グループのコンピュータシステムの障害・故障その他の理由により、当社グループが保有する個人情報及び機密情報等の外部への漏えいが発生した場合は、損害賠償や当該事案への対応費用、行政処分、社会的信用の低下による顧客の喪失等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、不正アクセス等のサイバー攻撃に対しては、メールやWeb閲覧に対するウイルス感染抑止等の入口対策、外部デバイスの接続制限や、許可された通信先以外の遮断等の出口対策を講じるとともに、当社グループのサイバーセキュリティ担当役員によるグループサイバーセキュリティ委員会を設置し、グループ全体でセキュリティの高度化を推進することに加え、セキュリティ専門家による点検・指導、対策推進等サイバー攻撃への対応に努めております。しかしながら、かかる施策によっても高度化するサイバー攻撃等を完全に防ぐことは困難であり、特に近年、不正アクセス等サイバー攻撃による企業・団体が保有する個人情報等の漏えいが多発しており、在宅勤務(テレワーク)の増加により、かかる脅威は今後さらに増大する可能性があります。また、グループ共通のアプリ・IDシステムの導入など、お客さまとの接点のデジタル化によってもかかる脅威は増大する可能性があるほか、当社グループの主要事業に適用される規制の影響により、利便性と安全性を兼ね備えたアプリの開発に支障が生じる可能性があります。

また、当社グループは、基幹ITシステムを含む当社グループのITシステムのアップグレードを行っており、かつ、新規のシステム投資を行うこともありますが、かかる作業の遅延、失敗、多額の費用発生により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 人的リスク(人材確保・ハラスメント・労働問題・人件費増加)

少子高齢化による労働人口の減少などにより人材の確保は厳しさを増していることに加え、当社グループにおいて技術革新等に起因する経営環境の変化等に適切に対応できない場合などには、当社グループは、郵便・物流事業に従事する配達又は運送に係る各種人材のほか、DX推進に必要なIT等の高度な専門性及び知識・経験を有する有能な人材の確保が困難となる可能性があります。

また、当社グループが労働条件や人材育成システムの整備等による魅力的な労働環境を提供できなかった場合、又は人事処遇やハラスメント等の人事労務上の問題や職場の安全衛生管理上の問題等が発生した場合には、人材の流出・不足等を招く可能性があります。

当社グループは、かかる事態に対処するため、社員視点に立った働き方改革として働きやすい職場づくり、労働条件の整備、ダイバーシティの推進、人材育成を推進しておりますが、当社グループの想定通りの人材確保ができない場合、又は人材育成・教育が進まない場合には、人材不足や人件費の増加等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 不動産事業に関するリスク

当社グループは、事務所・商業施設・住宅等の賃貸・管理事業、分譲住宅事業等の不動産事業を営んでおります。当社グループは多くの不動産を保有しているものの、不動産事業におけるノウハウが限られていること、また、必要な人員の採用、定着が進まないこと等により、当該事業を発展させることができない可能性があります。加えて、当社グループは、グループ保有不動産の再開発を加速するとともに、グループ外不動産への投資を強化することで、不動産事業の利益拡大を目指してまいりますが、不動産市況等によってはかかる開発が当社グループの想定通りに進捗する保証はなく、また、グループ外の企業との共同プロジェクトにおいては、当社グループによるプロジェクトへの管理が及ばなくなったり、共同事業者との間で意見の不一致が生じること等により、事業の進捗に支障が生じる可能性があります。

また、不動産事業については、国内外の景気又は特定地域の経済状況や紛争の発生、人口、市場における需給等の変化により、不動産価格の下落、賃貸料の下落や未収、空室率の上昇、建築資材の価格や工事労務費等の高騰、着工・竣工時期の遅延や見直し、棚卸資産の増加、さらに、法的規制の変更、大規模災害や感染症の発生等の影響を受ける可能性があります。特に今般の新型コロナウイルス感染症の拡大による緊急事態宣言等を受けた深刻な経済活動の停滞により、テナント賃料の減免等が一部発生しているほか、空室率の上昇、開発中の案件における竣工時期の遅延等が想定され、また、収束後も、eコマース市場の拡大などの消費者動向の変化、ライフスタイルや働き方の変容により、オフィス需要や商業施設(特に小売り)の需要の変化等の影響を受ける可能性があります。これらの事象により、当社グループの不動産事業の収益や費用に影響を及ぼしたり、保有不動産等に評価損・減損損失や売却損が発生する可能性があります。その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 海外子会社に関するリスク

国際物流事業を担うトール社の事業は、世界経済の減速や新型コロナウイルス感染症、サイバー攻撃等の影響等もあり、厳しい経営環境が継続しております。エクスプレス事業については、2021年8月、Allegro Funds Pty Ltdの傘下企業への譲渡手続きが完了いたしましたが、本件譲渡に伴い、当社グループは、2021年3月期において、特別損失として674億円(減損損失619億円、その他の特別損失54億円)、2022年3月期において、特別損失(事業譲渡損)108億円を計上しました。エクスプレス事業の譲渡手続きは完了したものの、残存するトール社のオペレーションから当該事業を完全に切り離すことには困難を伴う又は時間を要する可能性があり、かかる対応のために追加の費用等が生じる可能性があります。また、トール社を親会社とする連結グループは、2022年3月末日現在で881億円の債務超過となっており、依然厳しい経営状況にあります。エクスプレス事業の譲渡後も、日本郵便は、人員配置の合理化等によりトール社の残るロジスティクス事業及びフォワーディング事業の採算性の向上に努めるとともに、JPトールロジスティクス及びトールエクスプレスジャパンの活用等により、豪州に依存した経営構造から脱却し、日本を含むアジアを中心としたビジネスモデルへの転換による成長を図りますが、かかる経営改善策及び成長戦略が功を奏せず、トール社の業績が向上しない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があり、トール社の保有する物流設備その他の固定資産について更なる減損損失を計上する可能性もあります。また、日本郵便がトール社の事業再編その他日本を含むアジアを中心としたビジネスモデルへの転換に係る施策をさらに進めるに際して総務大臣の認可が必要となる場合、必要な認可を適時に取得できない又は認可を得られないことにより、事業再編等に支障が生じる可能性があります。

また、トール社は、日本郵便の買収以前に多数の企業買収を行い、事業統合を実施している過程にありますが、当社グループとの事業統合も含め統合が予定通り進捗しない場合には、複数のビジネス・ユニットによる取引先の競合やオペレーションの重複等が解消されないこと、複雑な業務及び設備、並びに異なる地理的エリアに存する多様な企業風土と異なる言語に基づく従業員を十分に管理できないこと、トール社と競合関係にある同業他社が、トール社より優れた革新的な商品・サービスを提供することで、トール社のマーケットシェア及び利益が低減すること、自然災害、事故等により、基幹ⅠTシステム、主要な輸送手段、倉庫が損害等を受けること、さらには、買収時に発見できなかった問題が発生すること等により、当社グループ又はトール社の事業に負の効果を及ぼして、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 宿泊事業・病院事業に関するリスク

当社の営む宿泊事業は、2021年9月29日開催の取締役会における決議に従い、営業中のかんぽの宿33施設のうち32施設に係る事業の譲渡を決定し、2022年4月1日及び同月5日をもって、事業を譲渡しました。これに伴い、2022年3月期の連結決算において、特別損失として減損損失及び社員の異動に伴う退職金等の割り増し分を計上しました。なお、当社運営時における事象について、事業譲渡後も、当社グループには、事業譲渡先等に対する損害賠償責任を負うリスク、行政処分等のリスク、及び引き続き事業を継続する一部施設の自然災害、事故、火災、食中毒等のリスクが残存します。

病院事業については、自然災害、火災、医療事故等から生じる潜在的な損失の発生、損害賠償責任、行政処分等のリスクを内包しています。また、高齢化等に伴う近時の医療費適正化の流れは、病院事業の収益性に影響を及ぼす可能性があります。

病院事業では、近年継続して営業損失を計上していることから、個々の病院の状況を踏まえ、増収対策や経費削減による経営改善を進めています。しかしながら、昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、病院における患者数の減少により、さらに収益減少が続き赤字額の拡大が想定されます。かかる状況では、経営改善策が功を奏する保証はなく、当初想定した成果をもたらさず、又は損失が拡大する可能性があります。その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) マネー・ローンダリング、テロ資金供与、銀行口座の不正使用等に伴うリスク

金融犯罪が多様化かつ高度化し、世界各所でテロ犯罪が継続的に発生する等、マネー・ローンダリング、テロ資金供与及び拡散金融対策(以下「マネロン対策」といいます。)の重要性が急速に高まっております。

本邦においては、2021年8月の我が国のマネロン対策に関する法規制の遵守状況及び対策の実効性を審査するFATF第4次対日相互審査結果の公表及び本邦の行動計画の策定等、マネロン対策の強化が課題となっています。

当社グループは、郵便・物流事業、郵便局窓口事業、国際物流事業、銀行業、生命保険業等の業務を営んでおります。当社グループの商品・サービス、事業、従業員、提携先又は委託先企業に関連して、マネー・ローンダリング、テロ資金供与等の犯罪、銀行口座の不正使用等が発生した場合には、当社グループが提供するサービスに対する社会的信用が低下する可能性があり、これらのリスクは大きいものと認識しております。

当社グループは、国内外の法令諸規制の適用及びそれに基づく国内外の当局の監督を受けており、国内外の法令諸規制を遵守する態勢を整備するとともに、役員・従業員への研修等を通じてマネロン対策の更なる強化を継続的に実施しております。

しかしながら、かかる取組みが有効に機能せず、仮に法令諸規制の違反等が発生した場合には、業務停止、制裁金等の行政処分等により、当社グループの事業、社会的信用、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4.財務に関するリスク

(1) 保有株式及び固定資産の減損損失に関するリスク

新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた株式市場の混乱の影響を受けるなど、当社が保有する金融2社等の株式の株価又は実質価額が低下する可能性があります。これらの株式の株価等が取得した価額に比べて著しく下落し、回復する可能性があるとは認められない場合には、減損損失を計上することになり、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、これにより当社の分配可能額が減少し、会社法の規定により当社株主への配当の支払いが困難となる可能性があります。

また、当社グループは、郵便・物流事業、郵便局窓口事業及び国際物流事業を中心に、多額の固定資産を所有しております。経営環境の変化や収益性の低下等により投資額の回収が見込めなくなった場合には、減損損失を計上することが必要となり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 繰延税金資産に関するリスク

当社グループは、現行の会計基準に従い、将来の課税所得見積りを合理的に行った上で、貸借対照表において繰延税金資産を計上しておりますが、将来の課税所得見積額の変更や税制改正に伴う税率の変更等により、繰延税金資産の全部又は一部に回収可能性がないと判断した場合、繰延税金資産が減額され、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 退職給付債務に関するリスク

当社グループの退職給付費用及び債務は、将来の退職給付債務算出に用いる年金数理上の前提条件に基づいて算出しておりますが、金利環境の急変等により、実際の結果が前提条件と異なる場合、又は、前提条件に変更があった場合には、退職給付費用及び債務が増加する可能性があります。また、当社グループにおいて退職給付制度を改定した場合にも、追加的負担が発生する可能性があります。その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 財務報告に係る内部統制に関するリスク

当社は、金融商品取引法に基づき、財務報告に係る内部統制の有効性を評価し、その結果を記載した内部統制報告書を提出すること、及び監査法人による監査を受けることを義務付けられております。当社グループは、財務報告の信頼性を確保するため、財務報告に係る内部統制の評価及び報告に関する規程等を制定し、財務報告に係る内部統制について必要な体制を整備しております。また、評価の過程で発見された問題点等は速やかに改善するべく努力しております。しかしながら、財務報告に係る内部統制が有効でない場合には、当社グループの財務報告の適正性を確保できず、その信頼性に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 格付の低下に関するリスク

当社は、格付機関より信用格付を取得しておりますが、財務内容の悪化、日本国債の格下げ等により当社の信用格付が格下げとなった場合、著しく高い金利での資金調達を余儀なくされる等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 管理会計等に係る内部管理に関するリスク

本書には、日本の会計基準によらず外部監査を受けていない管理会計等に基づく数値・分析等が含まれております。当社は、これらについても正確性の確保に努めておりますが、管理会計等に係る内部管理が十分でない場合等には、当該数値等の信頼性に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

Ⅲ.郵便・物流事業、郵便局窓口事業、国際物流事業に関するリスク

 

(1) 郵便局窓口業務のサービス品質に関するリスク

日本郵便及びかんぽ生命保険におけるお客さまのご意向に沿わず不利益が生じた保険契約乗換等に係る事案(以下「募集品質問題」といいます。)及び法令違反又は社内ルール違反が認められた事案の発生により、当社グループに対する株主、投資家、お客さま、その他ステークホルダーからの信頼は未だ回復途上にあり、早期の信頼回復が最重要課題と認識しております。当社グループは、募集品質問題について、お客さまからの信頼の早期回復、並びに保険募集プロセスにおける法令遵守及びお客さま本位の意識の徹底による募集品質の確保・向上を図るため、お客さまの不利益の解消に向けたご契約調査等の対応や、2020年1月31日付で監督当局に提出した業務改善計画に基づく再発防止策の実施に最優先で取り組んでまいりました。

また、日本郵便において行われた一部のお客さまのご意向に沿っていない取引のうち法令違反が認められたかんぽ生命保険商品と投資信託の横断的な販売について、契約無効措置等のお客さま対応を実施するとともに、日本郵便が商品横断的なデータモニタリングを行うなど、改善に向けた取組みを進めてまいりました。

しかしながら、今後、これらの取組みが期待された効果を発揮しない又は効果の発揮までに想定以上の時間を要する場合には、当社グループに対するステークホルダーからの信頼の回復に影響を及ぼす可能性があります。さらに、お客さまのご意向に沿わず不利益となる事例、法令違反又は社内ルール違反となる事例が新たに判明する場合、保険契約ないし投資信託契約等に対する苦情や無効申請等のお申し出が発生する等の場合には、当社グループの事業、社会的信用、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このように、今後、当社グループにおいて遵守すべき法令等の義務に反する行為が発生・発覚する場合、又は業務改善計画の進捗及び改善状況について監督当局がそれらを不十分であると判断した等の場合、当該違反行為の規模や程度又は日本郵便及びかんぽ生命保険の取組状況によっては、監督当局から再度業務停止命令等の行政処分を受けるなど、当社グループの経営や事業の存続にとって重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

さらに、日本郵便及びかんぽ生命保険は、上記の募集品質問題等を受けて、2019年7月以降、2020年1月から3月までの業務停止命令期間を含め、郵便局及びかんぽ生命保険支店におけるかんぽ生命保険商品の積極的な営業活動を控えておりましたが、2020年10月5日からお客さまにおかけしたご迷惑をお詫びすることを第一とする信頼回復に向けた業務運営を開始し、2021年4月1日からは、営業活動を通じたお客さまとの信頼関係の構築を進めていく新たな営業スタンスへ移行しております。

しかしながら、新契約の実績は、本書提出日現在において伸び悩んでおり、今後もこれらの取組みが奏功しない場合には、新契約の実績が長期にわたり計画通り進捗しない、又は保有契約の維持を図れないなどの理由により、当社グループの業務運営及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、新契約の実績が進捗しないなどの期間がより長期にわたり継続する場合には、当社グループの中期的な事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

加えて、日本郵便が取り扱う金融商品の販売が回復しない場合には、日本郵便が受領する金融2社及びその他の提携金融機関からの受託手数料の減少により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 郵便・物流事業における経営環境の変化に関するリスク

郵便・物流事業においては、近年のeコマース市場の拡大に伴う宅配便需要の急激な増加とこれによる労働力の不足といった経営環境の急激な変化が顕在化しており、他の主要な物流事業者等においては、基本運賃や大口顧客向け特約運賃の値上げを含む契約条件の改定、配達時間帯や再配達に係るサービス内容の見直し、労働環境又は労働条件の改善のための取組みを行っているものも見受けられます。日本郵便においては、P-DXの推進やオペレーション改革などにより業務の効率化を徹底しますが、当社グループがこのような経営環境の変化に適時かつ適切に対応できなかった場合、当社グループの競争力、収益性、人材の確保等に影響し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

電子メール、SNSやスマートフォンの普及に加え、当社グループの顧客における請求書や取引明細書等の電子メール送信・Web閲覧の浸透等の影響により、郵便物数は年々減少を続けており、加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大によってデジタル化が進み、今後もかかる傾向は継続することが予想されるほか、ロシアによるウクライナ侵攻等の地政学リスクの高まりにより、国際郵便等の引き受けを停止することにより取扱物数が減少するリスクがあります。また、当社グループの郵便・物流事業における重要な収益の柱となっている年賀状の配達数も年々減少傾向にあり、国民の生活様式や社会慣行の変化等の要因により、今後も減少傾向が進む可能性があります。

日本郵便は、2020年12月4日に公布され、2021年5月1日に施行された郵便法等改正法を受けて、同年10月以降、普通扱いとする郵便物等の土曜日配達の休止、郵便区内特別郵便物の差出条件の見直し、速達郵便料金の1割程度の引下げ等を行っており、送達日数についても、宛先の地域に応じて 2022年1月以降1日程度の繰下げを行いました。また、2022年4月1日には、郵便区内特別郵便物のうち特別料金(3)又は特別料金(4)が適用となるもの及び配達地域指定郵便物の料金改定を行いました。これら郵便料金の改定、サービスの見直し等により、当社グループが取り扱う郵便物等の数に影響を及ぼす可能性があります。これらの事情により、当社グループの郵便・物流事業において取り扱う郵便物等の数が減少し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 金融2社からの郵便局窓口業務の受託に関するリスク

日本郵便が金融2社との間で締結している銀行窓口業務契約等及び保険窓口業務契約等に基づく受託手数料は、銀行法・保険業法に定められたアームズレングスルール等を遵守することが求められており、恣意的な変更が行われることは想定しておりませんが、今後、上記各窓口業務契約等が、合理的な理由に基づき受託手数料の額を減額する又は対象となる業務の範囲を限定する等、日本郵便にとって不利に改定された場合には、当社グループの郵便局窓口事業における収益に影響を与える可能性があります。また、特にゆうちょ銀行から受け取る受託手数料については、ゆうちょ銀行の直営店での業務コストをベースに、日本郵便での取扱実績に基づいて委託業務コストに見合う額が算出されます。ゆうちょ銀行は、業務効率化等を通じて日本郵便への委託手数料の減少に向けた取組みを行う方針であり、ゆうちょ銀行においてかかる業務コストの削減が行われた場合には、当社グループの郵便局窓口事業における収益に影響を与える可能性があります。さらに、これらの受託手数料の一定部分は、日本郵便において取り扱われた業務の量にかかわらず一定の計算方法により算定されるものとされていますが、今後仮に金融2社が日本郵便における業務量に比例する受託手数料の割合を高めようとする場合には、当社グループの郵便局窓口事業における収益に影響を与える可能性があります。

また、2018年12月1日、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法の一部を改正する法律が施行され、2020年3月期から郵便局ネットワーク維持に要する費用のうち、ユニバーサルサービス確保のために不可欠な費用(日本郵便が負担すべき額を除く。)は、金融2社からの拠出金を原資として郵政管理・支援機構から日本郵便に交付される交付金で賄われることとなり、これを契機に委託手数料が見直されました。かかる交付金・拠出金制度の下で、今後も同手数料が見直される場合があり、その内容によっては当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

2022年3月期における銀行窓口業務契約等及び保険窓口業務契約等に基づく各社からの受託手数料並びに郵政管理・支援機構から交付される交付金は、それぞれ3,543億円及び1,902億円並びに2,909億円であり、それぞれ当社グループの郵便局窓口事業セグメントにおける経常収益の約31%及び約16%並びに約25%を占めています。

当社グループとしては、今後もユニバーサルサービスが利用者本位の簡便な方法により郵便局で一体的に利用できるようにするとともに、将来にわたりあまねく全国において公平に利用できることが確保されるよう、日本郵便と金融2社との関係を引き続き強化していく所存であり、当社が金融2社の株式を処分したことにより当社による両社への影響力が低下・消滅した場合においてもこの関係は変わるものではないと当社としては考えております。しかし、金融2社はユニバーサルサービスの提供に係る法的義務を負うものではなく、金融2社が、郵便局ネットワークに代替する販売チャネル(例えば、ATMの相互利用、オンライン取引、グループ外の企業への委託を含みますがこれらに限られません。)をより重視するようになった場合等や、窓口業務の健全・適切な運営確保の観点から特段の事由が生じた場合等、銀行窓口業務契約等及び保険窓口業務契約等の解除が発生した場合には、当社グループの郵便局窓口事業の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

(4) 国際物流事業に関するリスク

① トール社の業績に関するリスク

国際物流事業を担うトール社の事業は、世界経済の減速や新型コロナウイルス感染症、サイバー攻撃等の影響等もあり、厳しい経営環境が継続しております。エクスプレス事業については、2021年8月、Allegro Funds Pty Ltdの傘下企業への譲渡手続きが完了いたしましたが、本件譲渡に伴い、当社グループは、2021年3月期において、特別損失として674億円(減損損失619億円、その他の特別損失54億円)、2022年3月期において、特別損失(事業譲渡損)108億円を計上しました。エクスプレス事業の譲渡手続きは完了したものの、残存するトール社のオペレーションから当該事業を完全に切り離すことには困難を伴う又は時間を要する可能性があり、かかる対応のために追加の費用等が生じる可能性があります。また、トール社を親会社とする連結グループは、2022年3月末日現在で881億円の債務超過となっており、依然厳しい経営状況にあります。エクスプレス事業の譲渡後も、日本郵便は、人員配置の合理化等によりトール社の残るロジスティクス事業及びフォワーディング事業の採算性の向上に努めるとともに、JPトールロジスティクス及びトールエクスプレスジャパンの活用等により、豪州に依存した経営構造から脱却し、日本を含むアジアを中心としたビジネスモデルへの転換による成長を図りますが、かかる経営改善策及び成長戦略が功を奏せず、トール社の業績が向上しない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があり、トール社の保有する物流設備その他の固定資産について更なる減損損失を計上する可能性もあります。また、日本郵便がトール社の事業再編その他日本を含むアジアを中心としたビジネスモデルへの転換に係る施策をさらに進めるに際して総務大臣の認可が必要となる場合、必要な認可を適時に取得できない又は認可を得られないことにより、事業再編等に支障が生じる可能性があります。

また、トール社は、日本郵便の買収以前に多数の企業買収を行い、事業統合を実施している過程にありますが、当社グループとの事業統合も含め統合が予定通り進捗しない場合には、複数のビジネス・ユニットによる取引先の競合やオペレーションの重複等が解消されないこと、複雑な業務及び設備、並びに異なる地理的エリアに存する多様な企業風土と異なる言語に基づく従業員を十分に管理できないこと、トール社と競合関係にある同業他社が、トール社より優れた革新的な商品・サービスを提供することで、トール社のマーケットシェア及び利益が低減すること、自然災害、事故等により、基幹ⅠTシステム、主要な輸送手段、倉庫が損害等を受けること、さらには、買収時に発見できなかった問題が発生すること等により、当社グループ又はトール社の事業に負の効果を及ぼして、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② トール社に適用される規制等

国際物流事業を担うトール社は、豪州を中心に、アジア太平洋地域等におけるフォワーディング、ロジスティクス等の国際的な事業活動を行っており、関連する国・地域の事業許可や租税に係る法規制、運送、貿易管理、贈収賄防止、独占禁止、為替規制、環境、各種安全確保等の法規制の適用を受けております。法令等の改正や新たな法規制等により、当社グループの競争条件が悪化したり、事業活動の一部が制限又は変更を余儀なくされた場合、また、コンプライアンス態勢が十分な効果を発揮せず、トール社に適用される規制等への違反が生じた場合は、新たな対応費用の増加、収益機会等の喪失等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 為替変動・国際財務報告基準(IFRS)の適用のリスク

国際物流事業を担うトール社の連結財務諸表は外貨建て(豪ドル)で作成されていることから、大幅な為替相場の変動が生じた場合、外貨建ての資産・負債等が当社の連結財務諸表作成のために円換算される際に為替相場の変動による影響を受けるため、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、トール社の連結財務諸表は国際財務報告基準(IFRS)が適用されていることから、国際財務報告基準(IFRS)の変更により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 資金繰り等のリスク

トール社は、継続的に設備投資等を行っており、事業上必要な資金を確保する必要があるため、金融機関からの借入等に依存する割合も少なくありません。トール社の経営状況が非常に厳しい中、資金繰り安定化を企図し、トール社の借入金等に対し、日本郵便による債務保証を付しております。

今後、トール社の経営状況が改善せず、トール社による返済が困難となる場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 不動産事業に関するリスク

当社グループは、郵便局窓口事業において、日本郵便が保有する不動産を有効活用して事務所・商業施設・住宅等の賃貸・管理事業、分譲住宅事業等の不動産事業を営んでおります。当社グループは多くの不動産を保有しているものの、不動産事業におけるノウハウが限られていること、また、必要な人員の採用、定着が進まないこと等により、当該事業を発展させることができない可能性があります。加えて、当社グループは、グループ保有不動産の再開発を加速することで、不動産事業の利益拡大を目指してまいりますが、不動産市況等によってはかかる開発が当社グループの想定通りに進捗する保証はなく、また、グループ外の企業との共同プロジェクトにおいては、当社グループによるプロジェクトへの管理が及ばなくなったり、共同事業者との間で意見の不一致が生じること等により、事業の進捗に支障が生じる可能性があります。

また、不動産事業については、国内外の景気又は特定地域の経済状況や紛争の発生、人口、市場における需給等の変化により、不動産価格の下落、賃貸料の下落や未収、空室率の上昇、建築資材の価格や工事労務費等の高騰、着工・竣工時期の遅延や見直し、棚卸資産の増加、さらに、法的規制の変更、大規模災害や感染症の発生等の影響を受ける可能性があります。特に今般の新型コロナウイルス感染症の拡大による緊急事態宣言等を受けた深刻な経済活動の停滞により、テナント賃料の減免等が一部発生しているほか、空室率の上昇、開発中の案件における竣工時期の遅延等が想定され、また、収束後も、eコマース市場の拡大などの消費者動向の変化、ライフスタイルや働き方の変容により、オフィス需要や商業施設(特に小売り)の需要の変化等の影響を受ける可能性があります。これらの事象により、当社グループの不動産事業の収益や費用に影響を及ぼしたり、保有不動産等に評価損・減損損失や売却損が発生する可能性があります。その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

Ⅳ.銀行業に関するリスク

 

(1) 市場リスク

ゆうちょ銀行が保有する金融資産・負債の多くは、市場の変動による価値変化等を伴うものであります。ゆうちょ銀行では、中長期的に収益の確保を図ることを目的に、資産・負債を総合管理するALMの枠組みの下、市場環境の変化、リスク・リターン等を踏まえた機動的なポートフォリオ運営を行っているほか、ストレス・テストや損益シミュレーション等を実施することにより、市場リスク等を適切に管理するよう努めております。

しかし、かかる管理にかかわらず、足許では、インフレ懸念を背景とした米国等の金融政策の転換等に伴い、外貨調達コストの上昇やクレジットスプレッドの拡大等の影響が見込まれますが、これに加えて、更なる金融引き締めの進展、ウクライナ情勢の悪化、新型コロナウイルス感染症の再拡大等に伴い、更なる市場の大幅な変動や金融市場の混乱等が生じた場合には、当社グループの業績及び財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があり、中長期的な収益の確保を目的とした外国証券やオルタナティブ資産への投資等、運用の高度化・多様化が目的に即した結果を生まない可能性もあります。

 

① 金利リスク

ゆうちょ銀行が保有する日本国債(2022年3月末日現在、49.2兆円・総資産額の21%)や外国証券(2022年3月末日現在、その他の証券(外国債券や主な投資対象が外国債券である投資信託等で構成)は74.1兆円・総資産額の31%)などの金融資産と、定額貯金をはじめとする貯金や外貨を含む市場性調達の負債の期間や金利更サイクル等には、差異が存在します。このため、金利(長期や短期の金利)の変動は、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当連結会計年度末現在において、日本国債の一部の金利がマイナスとなる等市場金利は歴史的な低水準にあり、さらに、今後の金融政策の動向によりかかる金利水準が長期に亘り継続し又は低下する場合、運用収益の減少に比して、相対的に貯金の調達コストが減少しないことにより、資金粗利鞘が減少し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、足許では、インフレ懸念を背景とした米国等の金融政策の転換等により、海外短期金利が上昇し、国内外の金利差が拡大傾向にあることから、外貨調達コストの上昇が見込まれますが、今後、大幅に国内外の金利差が拡大した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

さらに、市場金利及びクレジットスプレッドの変動は、ゆうちょ銀行の債券ポートフォリオ等の価値に影響を及ぼします。例えば、国内外の景気変動、中央銀行の金融政策、日本国政府の財政運営やその信認の変化等、様々な要因により市場金利が上昇(クレジットスプレッドが拡大)した場合、保有する債券等の価値下落によって評価損・減損損失、売却損やゆうちょ銀行が保有する有価証券中の投資信託において収益認識できない特別分配金の発生等が生じる可能性があります。その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

加えて、貯金について、急激な市場金利上昇等により、定額貯金(預入から6カ月経過後は払戻し自由、3年までは6カ月ごとの段階金利、それ以降は固定金利の10年満期・複利貯金)への預け替え等が発生した場合にも、調達コスト等の上昇等を通じて、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、ゆうちょ銀行は、金利リスク状況のモニタリングの一環として、監督当局による「主要行等向けの総合的な監督指針」において定められた重要性テストの過程で用いられる手法に基づき、金利変動による資産・負債の経済価値の減少額(以下「ΔEVE」といいます。)を計測しております。今後、ゆうちょ銀行のΔEVEの最大値が重要性テストにおける評価基準である自己資本の額の20%を超え、監督当局から深度ある対話を行う必要が認められる銀行と判断される場合には、対話を通じて共有された課題認識に基づき、原因への対応も含めて必要な改善対応を求められる可能性があります。なお、仮に当該改善計画を確実に実行させる必要があると監督当局から判断された場合、監督当局から行政上の措置が課される可能性があります。

 

② 為替リスク

ゆうちょ銀行は、収益源泉・リスクの分散を目的に、運用の高度化・多様化の一環として国際分散投資を進め、外国債券や主な投資対象が外国債券である投資信託等の外国証券の保有が増加しております。これらのうち、外貨建て資産については、為替リスクを軽減する目的から通貨スワップや為替予約等によりヘッジ取引を行っておりますが、その一部については為替リスクを軽減するヘッジを当初から行わない、若しくはヘッジを行った後に外国証券の価格変動等によりヘッジ比率に変動が生じる、又は短期のヘッジを行うことがあります。その結果、外国証券の取得後に大幅な為替相場の変動が発生した場合、非ヘッジ部分に係る差損が発生し、又は通貨ベーシスの拡大が発生した場合、ヘッジコストが上昇すること等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 株式価格変動リスク

ゆうちょ銀行は、直接又は金銭の信託や投資信託を通じて間接的に、株式を保有することがあることから、国内外の経済状況又は市場環境の変化によって株価が変動する場合には、保有株式に評価損・減損損失や売却損等が発生し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 市場流動性リスク

ゆうちょ銀行では、市場流動性を確保する観点から、流動性が低い資産への投資が過大にならないよう、また、市場規模に比して過大なポジションを保有することがないよう、基準を設定することにより、市場流動性リスクを適切に管理するよう努めておりますが、かかる管理にかかわらず、経済状況の著しい悪化や金融市場の混乱、銀行・金融業界全体の社会的信用や信認が低下する場合等には、当社グループが国内外の市場で取引・決済ができなくなることや、通常よりも著しく不利な価格での取引を余儀なくされること等により、損失を被る可能性があります。その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります

 

(3) 資金流動性リスク

うちょ銀行では、安定的な資金繰りを達成するため、資金の受払いの差額について基準を設定しているほか、予期しない資金流出等に備え、流動性の高い資産の保有額に基準を設定することにより、資金流動性リスクを適切に管理するよう努めておりますが、かかる管理にかかわらず、当社グループの業績や財政状態の悪化、風評等の発生や、予期せぬ資金流出、運用と調達の期間のミスマッチ(差異)等、また、当社グループの収益力・信用力の低下、日本国債の格下げ等の影響を受けたゆうちょ銀行格付の引き下げにより、円貨・外貨の必要資金確保が困難になる、又は、通常よりも著しく高い金利での資金調達を余儀なくされることにより、損失を被る可能性があります。その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります

 

(4) 信用リスク

ゆうちょ銀行では有価証券発行体や貸出先などの債務者に対し、内部格付を付与の上、定期的にモニタリングを行うほか、個社・企業グループ及び国・地域に対するエクスポージャーの上限管理等を実施することにより、信用リスクを適切に管理するよう努めておりますが、かかる管理にかかわらず、債務者において、例えば、新型コロナウイルス感染症の拡大による国内外の経済情勢(景気・信用状況等)への深刻な影響や特定の業種を取り巻く経営環境の変化、誤った経営判断、不祥事等の発生、その他不測の事態により財政状態が悪化した結果、ゆうちょ銀行の与信関係費用が増加又はゆうちょ銀行が保有する有価証券等の価値が下落することによって評価損・減損損失や売却損等が生じ、当社グループの事業、業績、財政状態及び自己資本の状況に影響を及ぼす可能性があり、中長期的な収益の確保を目的とした外国証券やオルタナティブ資産への投資等、運用の高度化・多様化が目的に即した結果を生まない可能性もあります

 

(5) オペレーショナル・リスク等

ゆうちょ銀行の業務においては、オペレーショナル・リスク等として、事務リスク、システムリスク、情報資産リスク、訴訟等に係るリスク、人事リスク、レピュテーショナル・リスク、災害・パンデミックに係るリスク、サイバー攻撃等に関するリスク、法令違反等(横領その他の犯罪行為、テロ資金供与、インサイダー取引規制等違反、お客さまの属性に照らし不適合な説明や資産運用商品の販売等、法令・諸規則等を遵守できない等のミスコンダクトリスクが発生する等)に係るリスク及びマネー・ローンダリング等に係るリスクが存在します。

また、ゆうちょ銀行の業務に関連して、顧客その他第三者が、偽名による口座開設、ゆうちょ口座の不正目的による使用、又は盗難カードを使用した犯罪行為その他不正行為を行うなどの事象が発生しています。

ゆうちょ銀行では日本郵便等と連携し、各種取組みを通じて事故や不正利用・不正送金の防止に努めておりますが、これらのオペレーショナル・リスク等を適切に管理できず、リスクが顕在化した場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 代理店を通じた営業に係るリスク

ゆうちょ銀行は、銀行代理業務の委託契約等に基づき日本郵便に銀行代理業務等を委託しております。ゆうちょ銀行の店舗23,734(2022年3月末日現在)のうち23,499が代理店(郵便局)となっており、貯金残高の約9割が代理店で開設された口座への預入による等、ゆうちょ銀行の事業は、代理店である日本郵便の郵便局ネットワークによる営業に大きく依拠しております。

従って、コミュニケーション手段の多様化、競合するネットワークやサービスの利便性向上等により、ゆうちょ銀行の代理店である郵便局の利用者数や利用頻度が減少したり、代理店で取り扱うゆうちょ銀行の商品・サービスの種類や代理店数が減少した場合、ゆうちょ銀行の代理店業務に従事する従業員の確保やその教育が十分でない場合、郵便局で取り扱う競合商品との競争が激化する場合、日本郵便が人材等のリソースをゆうちょ銀行の商品・サービス以外に優先的に配分する場合等においては、ゆうちょ銀行の貯金等や新商品等の販売が伸びず、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、かんぽ生命保険及び日本郵便におけるお客さまのご意向に沿わず不利益が生じた保険契約乗換等に係る事案に関し、当社グループに対する株主、投資家、お客さま、その他ステークホルダーからの大きく低下した信頼の回復は未だ途上にあり、当社グループとして、外部専門家で構成されたJP改革実行委員会のモニタリングを受けながら、お客さまからの信頼回復に向けた改善策を実行してまいりました。

また、日本郵便において行われた一部のお客さまのご意向に沿っていない取引のうち法令違反が認められたかんぽ生命保険の保険商品とゆうちょ銀行の投資信託の横断的な販売について、契約無効措置等のお客さま対応を実施するとともに、当社グループとして商品横断的なデータモニタリングを行うなど、改善に向けた取組みを進めてまいりました。しかしながら、かかる取組みが功を奏しない場合や、今後も法令違反等の不適切な事案が発生する等の場合には、当社グループへの信頼の喪失等により、日本郵便が取り扱うゆうちょ銀行の金融商品の販売が回復しない可能性があります。結果的に、ゆうちょ銀行が委託している投資信託の販売等に影響し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

2021年4月6日に公表した長崎県内の郵便局における長期・高額な現金詐取事案、2021年7月21日に公表した愛媛県内の郵便局における郵便局資金横領等事案、2022年1月20日に公表した山口県内の郵便局における貯金払戻金横領等事案を含め、郵便局において部内犯罪が依然として発生している事態を受け、ゆうちょ銀行は、日本郵便及び当社と連携し、発生原因の分析、再発防止策の検討等を行い、不祥事件の撲滅に向けてコンプライアンスの徹底・強化に取り組んでおります。また、2021年12月15日に公表した郵便局におけるお客さま情報の紛失に係る調査結果について、投資信託取引及び国債取引に関する金融商品仲介補助簿については、当該補助簿の電子化による再発防止策を実施したほか、当該補助簿以外の書類についても、紛失防止に向け、保存書類の削減、電子化(ペーパーレス化)を順次進めてまいります。しかしながら、かかる取組みが功を奏しない場合や、今後も法令違反等の不適正な事案が発覚する等の場合には、当社グループの社会的信用に影響を与える可能性があり、今後、ゆうちょ銀行の金融商品の販売が低迷し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、ゆうちょ銀行は、上記の銀行代理業務の委託契約等に基づき、郵便局を商品・サービスの販売・提供のメインチャネルとし、相当額の委託手数料を日本郵便に対して支払っておりますが、当該委託手数料の算定方法その他の条件がゆうちょ銀行と日本郵便との間の合意により見直されたり、当該契約等が解除され代替委託先等を適時に確保できない場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 事業環境等に係るリスク

① ユニバーサルサービスの提供に係るリスク

ゆうちょ銀行は、日本郵便との間で銀行窓口業務契約を締結しており、日本郵便は全国の郵便局で、ゆうちょ銀行の基本的な商品・サービスを、日本郵便株式会社法に基づくいわゆるユニバーサルサービス提供に係る法的責務の履行として提供しております。ゆうちょ銀行は、法令上この責務を直接負わないものの、郵便局で使用するATM・窓口端末機など銀行委託業務に係るⅠTシステムの導入・運行コストとともに(なお、当該ⅠTシステムはゆうちょ銀行が所有。)、同業務に従事する日本郵便の従業員の指導・教育等を通じ、ユニバーサルサービス提供に係る一定のコストを負担しております。その結果、より収益性の高い業務や地域への経営資源配分が制約されること等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、銀行窓口業務契約は、期限の定めがなく、また、本契約に定める特段の事由が生じた場合等を除き、当事者の合意がない限り、解除できないものと定めております。また、ゆうちょ銀行の定款には、日本郵便と銀行窓口業務契約を締結する旨規定しているため、当該契約を終了させる場合には、定款の変更を要します。従って、ゆうちょ銀行が銀行窓口業務契約を終了させるためには、これらの手続等を充足させる必要があります。一方、本契約が終了した場合にも、ゆうちょ銀行の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、2018年12月1日、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法の一部を改正する法律が施行されました。これによって2020年3月期からゆうちょ銀行と日本郵便との間の委託手数料の一部が交付金・拠出金となりました。そのため、ゆうちょ銀行直営店での業務コストの増減にかかわらず、拠出金と委託手数料の合計額が将来的に増加する可能性があります。また、今後、このようなユニバーサルサービスの確保に関する政府の施策、法令や規制等の改正等があった場合、その内容によっては、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります

 

② 経済・社会情勢、市場に係るリスク

ゆうちょ銀行が行う当社グループの銀行業は、その収益の多くが日本国内での貯金調達や国内外での有価証券運用によって得られており、国内外の景気・信用状況や人口動態等の経済・社会情勢、金利・為替等の市場の変動・悪化が、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。例えば、消費税率の引き上げによる家計の可処分所得の低下や、少子高齢化に伴い、日本の貯蓄率・預金水準が低下し、ゆうちょ銀行の貯金残高が減少する可能性があります。また、大幅な市場変動により、ALMやリスク管理態勢が期待通り奏功せず、ゆうちょ銀行の事業の低迷や資産内容の悪化、資金調達力・資産流動性の低下等が生じる可能性があります。このような場合、中長期的な収益の確保を目的とした運用の高度化・多様化が、目的に即した結果を生まない可能性もあります。

新型コロナウイルス感染症については、日米欧を中心としたワクチン接種の進展等、一部環境の改善要素もありますが、感染拡大予防のための経済社会活動の制限や、新規感染者数が大幅に拡大する局面も未だ見られる等、引き続き国際社会・世界経済にとって大きな脅威となっております。ゆうちょ銀行では、お客さまや社員への感染拡大防止や業務継続態勢の確保に努めておりますが、かかる対応にかかわらず、ゆうちょ銀行の商品・サービスの利用者が著しく減少した場合、また、当社グループ社員に感染が拡大することにより業務の継続が困難となった場合等は、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 事業戦略・経営計画に係るリスク

ゆうちょ銀行は、“信頼を深め、金融革新に挑戦”のスローガンの下、5つの重点戦略である「リアルとデジタルの相互補完による新しいリテールビジネスへの変革」、「デジタル技術を活用した業務改革・生産性向上」、「多様な枠組みによる地域への資金循環と地域リレーション機能の強化」、「ストレス耐性を意識した市場運用・リスク管理の深化」、「一層信頼される銀行となるための経営基盤の強化」を通じて、2021年度から2025年度までを計画期間とする中期経営計画を推進しております。しかしながら、これらに向けたゆうちょ銀行の事業戦略・経営計画は、各種のリスクにより実施が困難となり、又は有効でなくなる可能性があります。また、本項に記載したリスク要因等に伴い、事業戦略・経営計画の策定時に前提とした各種の想定が想定通りとならないこと等により、当初計画した成果が得られない可能性もあります。特に、市場(金利・為替等)・経済情勢(景気・信用状況等)等が計画策定時の想定通り安定推移しなかった場合、例えば、市場金利の低下による運用利回りの減少や米ドルをはじめとする海外短期金利上昇に伴う外貨調達コストの増加によって計画が達成できない可能性、海外のクレジットスプレッド拡大によるゆうちょ銀行が保有する有価証券中の投資信託の特別分配金発生によって計画が達成できない可能性、プライベート・エクイティの投資先の企業価値や売却時期が想定対比で乖離することによって計画が達成できない可能性、国際分散投資等の高度化・加速を継続していく中で、適切なポートフォリオ分散を達成できない可能性、より高いリスクを有する運用資産の増加によって価格変動リスクを受けやすくなり、ゆうちょ銀行の事業、業績及び財政状態に及ぼす影響が大きくなる可能性があります。さらに、DXの推進等による、各種決済サービス及び資産形成サポートサービスの利用促進等並びに店舗改革等の業務効率化、運用・リスク管理・営業等の人材確保・育成が、想定通り進捗しなかった場合、役務収支の拡大や営業経費の削減等の計画が達成できなくなる可能性があります。また、減損損失、売却損の計上等により十分な利益水準が確保できない場合や、法令によりその他有価証券の評価損が発生した際は分配可能額から控除する必要があることから、相場変動によりその他有価証券の評価損が拡大し、分配可能額を確保できない場合等には、株主還元の目標が達成できない可能性があります

 

(9) LIBOR等の指標金利に関するリスク

ゆうちょ銀行は、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)等の指標金利を参照する金融商品を保有しており、さらに当該指標金利は、ゆうちょ銀行内における金融商品の評価等においても利用されております。

2014年7月に、金融安定理事会が、金利指標の改革及び代替金利指標としてリスク・フリー・レートの構築を提言し、また、2017年7月には、LIBORを規制する英国の金融行動監視機構(FCA)長官が、2021年末以降はLIBOR公表継続のためにパネル銀行にレート呈示を強制する権限を行使しない旨表明しており、2021年末以降のLIBORの公表には不確実性があるとされていましたが、2021年3月5日、LIBOR運営機関(IBA)が、米ドルの一部テナーを除き、2021年12月末をもってLIBORの公表を停止する旨を公表し、同公表のとおり、LIBORは公表停止となりました(米ドルの一部テナーは、2023年6月末まで公表継続予定)。

ゆうちょ銀行では、LIBOR公表停止に向けて、代替金利指標への移行に対する対応を進め、2021年12月末のLIBOR公表停止に向けた対応を実施いたしました。ただし、2023年6月末に予定されている米ドルLIBORの一部テナーの公表停止に関して、後継指標に関する市場慣行等、未確定事項が残存しており、参照金利や評価方法の変更等により、指標金利を参照するゆうちょ銀行の金融資産につき損失が発生し、また、システム開発が必要になること等に伴う費用の増加等の要因により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 東京証券取引所におけるプライム市場上場維持に係るリスク

2022年4月に実施された東京証券取引所の市場区分見直しに際し、ゆうちょ銀行はプライム市場の上場維持基準のうち、「流通株式比率35%以上」に適合していませんが、2021年11月12日に「新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書」等を提出・開示し、経過措置の適用を受けることで、2022年4月4日、プライム市場へ移行しました。

当分の間、経過措置の適用対象となる結果、当該期間中はプライム市場への上場が維持されますが、当該期間中においては、当該計画書に記載の事項を遵守する必要があります。

なお、当該計画の適切な実行については、各種のリスクによりその実施が困難となり、又は有効でなくなる可能性がある等、不確実性を伴い、また仮に当該計画の遵守ができない場合には、上場維持が認められなくなる可能性があります。

また、当社のゆうちょ銀行株式保有割合が低下した場合、ゆうちょ銀行の流通株式比率向上に寄与することが期待されますが、その過程において、ゆうちょ銀行株式の追加的な売却が行われ、又はかかる売却により市場で流通するゆうちょ銀行の株式数が増え需給が悪化するとの認識が市場で広まった場合には、ゆうちょ銀行株式の流動性・株価形成等に影響を及ぼす可能性があります。

 

※ 2022年4月26日、東京証券取引所は、上場会社の企業価値向上に向けた取組みや経過措置の取扱い等について、同社に対して助言を行うことを目的とした有識者会議の設置を公表しました。

 

 

Ⅴ.生命保険業に関するリスク

 

(1) 保険募集プロセスにおける品質確保に関するリスク

日本郵便及びかんぽ生命保険における募集品質問題及び法令違反又は社内ルール違反が認められた事案の発生により、当社グループに対する株主、投資家、お客さま、その他ステークホルダーからの信頼は未だ回復途上にあることから、早期の信頼回復が最重要課題と認識しております。

当社グループは、お客さまからの信頼の早期回復、並びに保険募集プロセスにおける法令遵守及びお客さま本位の意識の徹底による募集品質の確保・向上を図るため、お客さまの不利益の解消に向けたご契約調査等の対応や、2020年1月31日付で監督当局に提出した業務改善計画に基づく再発防止策(健全な組織風土の醸成、適正な営業推進態勢の確立、適正な募集管理態勢の強化及び取締役会等によるガバナンスの強化)に最優先で取り組んでまいりました。

しかしながら、今後、これらの取組みが期待された効果を発揮しない又は効果の発揮までに想定以上の時間を要する場合や、当社グループの全役員・社員にこれらの取組みが徹底されない場合には、当社グループに対するステークホルダーからの信頼の回復に影響を及ぼす可能性があります。さらに、お客さまのご意向に沿わず不利益となる事例、法令違反又は社内ルール違反となる事例が新たに判明する場合、保険契約に対する苦情や無効申請等のお申し出が発生する等の場合には、当社グループの事業、社会的信用、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。このように、今後、当社グループにおいて遵守すべき法令等の義務に反する行為が発生・発覚する場合、又は業務改善計画の進捗及び改善状況について監督当局がそれらを不十分であると判断した等の場合、当該違反行為の規模や程度又は当社グループの取組状況によっては、監督当局から再度業務停止命令等の行政処分を受けるなど、当社グループの経営や事業の存続に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

かんぽ生命保険は、上記の募集品質問題等を受け、2019年7月以降、2020年1月から3月までの業務停止命令期間を含め、郵便局及びかんぽ生命保険支店におけるかんぽ生命保険商品の積極的な営業活動を控えておりましたが、2020年10月5日からお客さまにおかけしたご迷惑をお詫びすることを第一とする信頼回復に向けた業務運営を開始し、2021年4月1日からは、営業活動を通じたお客さまとの信頼関係の構築を進めていく新たな営業スタイルへ移行しております。

しかしながら、新契約の実績は、本書提出日現在において伸び悩んでおり、今後もこれらの取組みが奏功しない場合には、新契約の実績が長期にわたり計画通り進捗しない、又は保有契約の維持を図れないなどの理由により、当社グループの事業、業績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。かかる業績及び財政状態への影響は、営業活動に関する手数料支払の減少により利益の増加が先行するというかんぽ生命保険の収益構造の特性により、短期的には顕在化しにくいものの、新契約の実績が進捗しないなどの期間がより長期にわたり継続する場合には、当社グループの事業、業績、財政状態及びEV等の指標に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) ユニバーサルサービスの提供に関するリスク

かんぽ生命保険は、日本郵便との間で生命保険募集・契約維持管理業務委託契約及び保険窓口業務契約を締結しており、日本郵便は、郵政民営化法上のユニバーサルサービスに係る責務を履行するため、かんぽ生命保険の保険代理業務を受託し、全国の各郵便局において、かんぽ生命保険の商品・サービスを提供しております。特に、保険窓口業務契約は、期間の定めのない契約であり、本契約に定める特段の事情がない限りかんぽ生命保険から一方的に解除することはできないこととされております。また、かんぽ生命保険の定款上、かんぽ生命保険は日本郵便との間で、保険窓口業務契約を締結する旨の規定が存在し、当該契約を終了させる場合にはかんぽ生命保険の定款変更が必要となります。従って、かんぽ生命保険が日本郵便との間の保険窓口業務契約を終了させるには、これらの手続等を充足する必要があります。

このように、かんぽ生命保険が、ユニバーサルサービスの提供義務を負う日本郵便との間で、解除することが困難な保険窓口業務契約を締結していることで、日本郵便がユニバーサルサービスを提供する上での関連保険会社としての地位を維持する契約上の義務を負うため、かんぽ生命保険の柔軟な事業展開が困難となる可能性があります。

また、2018年12月1日、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法の一部を改正する法律が施行されました。これによって2020年3月期からかんぽ生命保険と日本郵便との間の委託手数料の一部が交付金・拠出金となりました。かんぽ生命保険の負担する拠出金と、日本郵便に直接支払う代理業務に係る委託手数料の合計額は、将来的に増加する可能性があります。

今後、このようなユニバーサルサービスの確保に関する政府の施策、法令や規制等の改正等があった場合、その内容によっては、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 商品の集中に関するリスク

かんぽ生命保険の取り扱う商品は、個人向け生命保険、とりわけ養老保険・終身保険などの貯蓄性商品に集中しておりますが、国内の雇用水準及び家計水準、代替商品であるその他の商品に対する相対的魅力、保険会社の財務健全性、社会的信用に対する一般的な認識、出生率及び高齢化といった日本の人口構成に影響を与える長期的な人口動態等の要因が、新契約数や保有契約の消滅率に影響を及ぼしているほか、長引く低金利環境等により、貯蓄性商品の貯蓄としての魅力が低下しております。

また、かんぽ生命保険の顧客基盤は中高年層及び女性の比重が高く、青壮年層の割合が相対的に低くなっております。

かんぽ生命保険は、お客さまの保障ニーズに対応するため、2022年4月より、新しい医療特約「もっとその日からプラス」の取扱い等を開始し、手厚い医療保障を提供するなど、青壮年層を含めたあらゆる世代のお客さまの保障ニーズにお応えする保険サービスの開発や、DX推進とともにお客さま体験価値(CX)を最優先とするサービス提供体制の構築を目指しておりますが、これらが想定通りに進捗しない場合には、中長期的な商品・販売戦略、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 日本の人口動態に関するリスク

1970年代半ば以降、日本の出生率は総じて徐々に低下する傾向にあり、現在は世界で最低の水準にあります。これらの結果、15歳から64歳までの人口は減少傾向が続いており、この傾向が、日本国内における生命保険の総保有契約高の減少の主要な要因であると考えております。また、国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、15歳から64歳までの人口は、今後も減少し続けるであろうと予測されております。こうした見通しの下、かんぽ生命保険は、人口減少や公的医療費の増加等の社会的課題を踏まえ、健康増進サービスやデジタルマーケティングの推進、青壮年層等を含むお客さまニーズにマッチした保障性商品等の開発等の検討を進めてまいりますが、お客さまニーズにマッチしたサービスの提供や商品開発ができない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります

 

(5) 事業戦略・経営計画が奏功しないリスク

かんぽ生命保険は、募集品質問題等の反省を踏まえ、お客さまから真に信頼される企業へと再生し、持続的な成長を目指すため、「信頼回復に向けた取組みの継続」、「事業基盤の強化」、「お客さま体験価値の向上」、「ESG経営の推進(社会課題の解決への貢献)」、「企業風土改革・働き方改革」、「ガバナンスの強化・資本政策」に取り組むことを基本方針とした2021年度から2025年度を計画期間とする中期経営計画をはじめとする事業戦略・経営計画を策定しておりますが、これらに含まれる施策の実施については、各種のリスクが内在しております。また、将来において、かんぽ生命保険による上記施策の実施を阻害するリスクが高まる又は新たなリスクが生じる可能性もあります。

さらに、これらの事業戦略・経営計画は、市場金利、外国為替、株価、事業環境、法制度、一般的経済状況、新しい営業体制の下での日本郵便及びかんぽ生命保険の従業員の活動状況などの多くの前提を置き、それらに基づいて作成されておりますが、かかる前提通りとならない場合や各施策に対する十分な事業評価が行われない場合には、当該計画における目標を達成できない可能性があります。なかでも、新契約の実績は、本書提出日現在において伸び悩んでおり、今後もこれらの取組みが奏功しない場合には、新契約の実績が長期にわたり想定計画通り進捗しない、又は既存保有契約の維持を図れないなどの理由により、当社グループの事業、業績、財政状態及びEV等の指標に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

また、かんぽ生命保険は、法令上可能な限りにおいて、新たな収益機会を得るため新規業務への参入を行うことがありますが、当社グループの信頼が回復途上にある状況では、新規業務への参入が困難となる可能性があります。加えて、2021年5月に公表したかんぽ生命保険による自己株式取得等により、当社のかんぽ生命保険株式の議決権比率が50%を下回ったことから、新商品の販売開始に当たって郵政民営化法に基づく認可を取得することは不要となり、届出制へ移行したため、新商品の投入スピードの向上が今後は見込まれるものの、かんぽ生命保険が事前届出を適時適切に行うことができない、郵政民営化委員会から適正な競争関係の確保と役務の適切な提供の配慮義務に関して必要な意見が述べられる、金融庁による保険業法上の認可が得られない等の事由により、新商品を予定通りに販売できない可能性や、新商品を販売した場合であっても、予想を超える外部要因等により収益が確保できない等、当該商品が当初想定した成果をもたらさない可能性があります。このような結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

さらには、中期経営計画期間において、DX推進等をはじめ、かんぽ生命保険全体で約2,500億円規模の投資を行うこととしております。これらの投資は減価償却を通じて今後数年間にわたり費用化されるとともに、その管理・維持には相当程度のコストが生じる見込みでありますが、投資額やコストに見合った成果が得られない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 資産運用に関するリスク

① 国内金利に関する市場リスク

かんぽ生命保険の資産構成は、円金利資産の割合が高く、かんぽ生命保険の保険契約者に対する債務のデュレーションが運用資産より長期であることから、資産と負債のデュレーションのミスマッチによる国内金利の変動リスクを有しております。

2016年2月の日本銀行によるマイナス金利政策導入以降、低金利環境が継続しておりますが、かんぽ生命保険が既に保有している保険契約の予定利率は変わらないことから、当初想定していた運用収益が確保できない、あるいは逆ざや(資産運用ポートフォリオの平均運用利回りが既契約の責任準備金の積立てに用いた予定利率を下回る現象)となる可能性があります。

一方、国内金利が現在の水準より上昇した場合には、資産運用利回りが上昇することにより、利息収入などの収益が向上するものの、債券価格の下落等により、評価損・減損損失や売却損等が発生する可能性があります。また、保険契約者がより高い収益を得られる別の金融商品へ資金を移動させることにより、保険契約の解約が増加する可能性があります。

 

② ①以外の市場リスク

かんぽ生命保険は外貨建資産を保有しており、その一部については、為替リスクをヘッジするため為替予約をしておりますが、為替リスクがヘッジされていない部分について、為替相場の変動が発生した場合や、為替リスクをヘッジしていたとしても、各国の金融・財政政策の動向等による国内外の金利差拡大によりヘッジコストが高まり、これまでの条件でロールによる為替予約が出来なくなった場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、各国の金融・財政政策の変更や外国金利の変動により、かんぽ生命保険の保有する外国証券の価値が下落した場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

さらに、国内外の経済状況又は市場環境の悪化や地政学リスクの顕在化等によって、かんぽ生命保険が保有する株式の価格が下落した場合には、保有株式に評価損・減損損失や売却損等が発生し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、オルタナティブ運用などの資産運用の多様化が、期待した結果を生まない可能性があります。

 

③ 信用リスク

かんぽ生命保険の取引先・投資先・かんぽ生命保険が保有する有価証券の発行者において、国内外の景気動向や特定の業種を取り巻く経営環境の変化、不祥事の発生、地政学リスクの顕在化等その他不測の事態により、財政状態が悪化した場合には、信用リスク及び与信関係費用が増加し、又はかんぽ生命保険が保有する有価証券の価値が下落すること等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、外国公社債運用などの資産運用の多様化が、期待した結果を生まない可能性があります。

上記①~③のリスクに備えて、かんぽ生命保険では、保険契約の引受けによって生じる負債に見合った運用資産を適切に管理し、損益の安定を図る目的で、資産と負債のバランスを考慮してリスクコントロールを行う、ALM及び財務健全性の維持を軸にしたERMの高度化に向けた取組みを継続しております。

また、定期的にストレス・テストを実施し、ストレス事象発生時の対応力を検証するとともに、特に運用資産の多様化に当たっては、審査やモニタリングの体制を強化しています。しかしながら、そうした対応が奏功しない場合や、各国の金融・財政政策の変更等により市場環境が大きく変動した場合には、かんぽ生命保険の業績及び財政状態に影響を及ぼし、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

(7) 保険料設定に関するリスク

かんぽ生命保険は、保険の種類及び内容、契約時の被保険者の年齢、性別、保険金額等を考慮して、次に掲げる計算基礎率(予定死亡率、予定利率、予定事業費率)等に基づいて保険料を設定しております。

 

予定死亡率

過去の統計をもとに、性別・年齢別の死亡者数を予測し、将来の保険金の支払等に充てるために必要な保険料を設定いたします。この計算に用いる予測された死亡率を予定死亡率といいます。

予定利率

資産運用による一定の収益を予め見込み、その分を割り引いて保険料を設定いたします。この割引率を予定利率といいます。

予定事業費率

保険会社の事業運営上必要な経費を予め見込んで保険料を設定いたします。この割合を予定事業費率といいます。

 

 

保険契約においては、実際の死亡率が事前に設定した予定死亡率を超過した場合、実際の運用利回りが事前に設定した予定利率を下回った場合、実際の経費が事前に設定した予定事業費を超過した場合には、保険期間中の保険料等の受取総額を保険金・経費等の支払総額が上回ることにより損失が発生し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) オペレーショナルリスク

かんぽ生命保険が業務を遂行していく過程には、オペレーショナルリスクが存在し、内部及び外部の不正行為、労務管理及び職場環境面での問題発生、顧客本位の業務運営への対応が不十分であることによる信用失墜、自然災害やシステム障害等に伴う事業中断、不適切な事務処理、外部への情報漏えい等が生じる可能性があります。

かんぽ生命保険では日本郵便等と連携し、各種取組みを通じて事故や不正の防止に努めておりますが、これらのオペレーショナルリスクを適切に管理できず、リスクが顕在化した場合には、当社グループの事業、社会的信用、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、日本郵便及びかんぽ生命保険は、かんぽ生命保険の業務を行う日本郵便の従業員に対し、法令等の遵守についての指導・教育を行っておりますが、これらの指導・教育が十分行われない、又はその効果が発揮されないことにより、同社従業員による不適正な募集活動などの法令等の違反が発生した等の場合、又は、かんぽ生命保険が日本郵便の従業員による不適正な活動の実態を適時かつ適切に把握することができない場合には、同様の影響が及ぶ可能性があります。

 

(9) 保険金の支払いに関するリスク

かんぽ生命保険は、正確・迅速な保険金等の支払いが生命保険会社の根幹業務であるとの認識の下、支払管理態勢の強化、お客さまサポートの充実に取り組んでおりますが、何らかの理由により、監督当局又はかんぽ生命保険が支払管理態勢の強化が不十分であると判断した場合には、各種改善策を講じる可能性があり、当社グループの事業、社会的信用、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 格付の低下に関するリスク

かんぽ生命保険は、各格付会社より格付を取得しており、財務の健全性に対して一定の評価を得ているものと認識しております。しかしながら、募集品質問題の発生を受け、中期経営計画においては、お客さま本位の業務運営を徹底し、信頼回復に努めておりますが、新契約の実績、保有契約の維持及び事業費の抑制などが計画通りに進捗せず、かんぽ生命保険の将来的な財務内容の見通しが悪化することにより、各社の信用格付が引き下げられた場合には、かんぽ生命保険の金融・資本市場における負債性資金の調達がかんぽ生命保険に有利な内容で行えない可能性があるとともに、かんぽ生命保険の業務運営に対する不安を想起させ、更なる新契約の減少又は保有契約の解約の増加等につながる可能性があります。

 

(11) 市場流動性・資金繰りに関するリスク

① 市場流動性リスク

金融市場の混乱等により、市場において正常に金融商品の取引・資金決済ができなくなった場合や、通常よりも著しく不利な価格での取引を余儀なくされることになった場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、国内外の金融市場及び経済状況の悪化等により、市場の流動性が減退した場合には、かんぽ生命保険の保有する資産の売却可能性や価値が減少する可能性があります。

 

② 資金繰りリスク

かんぽ生命保険の財務内容の悪化等による新契約の減少に伴う保険料収入の減少、大量解約に伴う解約返戻金支出の増加、巨大災害に伴う保険金の大量支払による資金流出等により資金繰りが悪化し、保険金等の支払いが滞った場合や資金の確保に通常よりも著しく低い価格での資産売却を余儀なくされることにより損失を被った場合には、当社グループの事業、社会的信用、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 責任準備金の積立に関するリスク

かんぽ生命保険は、日本の生命保険会社として、保険業法及び関連業規制に基づき、保険料収入の大部分を責任準備金として将来の保険金等の支払いに備えて積み立てております。責任準備金は、かんぽ生命保険の負債の最も大きな部分を占めているものであり、各保険契約の保障対象となる事象の起こる頻度や時期、保険金等支払額、資産運用額等につき一定の前提を置き、これらに基づく見積りによって計算されるものであります。これらの前提と実際の結果が乖離した場合や環境の変化により将来乖離が見込まれる場合には、責任準備金の積増しが必要となる可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、責任準備金の積立水準に関するガイドラインや標準利率・標準生命表は、規制当局である金融庁等によって定められているものですが、これらに変更があった場合には、保険料見直しや責任準備金の積増しが必要となる可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) 契約者配当準備金に関するリスク

かんぽ生命保険が確保すべき契約者配当準備金の繰入額は費用として扱われ、これにより各事業年度における純利益が減少します。かんぽ生命保険は契約者配当準備金の繰入額の決定について裁量を有しており、その水準については、かんぽ生命保険商品の競争力、業績、ソルベンシー・マージン比率等の様々な要素を考慮して判断しておりますが、その水準によっては、かんぽ生命保険の株主への配当原資の額、事業、業績及び財政状態又はかんぽ生命保険の株式価値に影響を及ぼす可能性があります。

なお、かんぽ生命保険が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約については、「旧簡易生命保険契約に基づく保険責任に係る再保険契約」において、かんぽ生命保険が引き受けた保険契約と区分してその収益及び費用を経理するものとし、簡易生命保険契約の再保険損益の8割を契約者配当準備金に繰り入れることとしております。また、再保険配当の計算方法の変更の必要性について、毎事業年度、郵政管理・支援機構と当社間で協議することとされておりますが、本契約締結以降、当該計算方法が変更されたことはなく、当連結会計年度末現在において変更の予定もありません。

 

(14) 生命保険契約者保護機構への負担金及び国内の他の生命保険会社の破綻に係るリスク

かんぽ生命保険は、生命保険契約者保護機構(以下「保護機構」といいます。)への負担金支払義務を負っております。保護機構は、破綻した生命保険会社の保険契約者を保護することを目的としており、破綻した生命保険会社から他の生命保険会社へ保険契約を移転する際に、資金援助を実施しております。保護機構への負担金額は保険料収入及び責任準備金の額などに応じて決められるため、かんぽ生命保険の保険料収入及び責任準備金の額が他の生命保険会社に比して増加した場合、負担金が増加する可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、日本の他の生命保険会社の破綻は、日本の生命保険業界全体の評価にも悪影響を与え、保険契約者の生命保険業界全体に対する信用を損ない、これにより当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

Ⅵ.その他事業に関するリスク

 

(1) 投資事業に関するリスク

当社グループでは、日本郵政キャピタル株式会社及びJPインベストメント株式会社が投資事業を営んでおり、国内外への投資や新たな事業領域への出資等を行っていますが、適正な収益や機会をもたらす保証はありません。

投資事業において投資時点で投資先の価値や将来の成長性を正確に見極めることは容易ではなく、また、当社グループが投資時点で想定したとおりに投資先が事業を展開できる保証はありません。投資先の事業環境の変化その他様々な理由により、投資先の業績又は財政状態が悪化した場合には、当社グループが投資した資金を回収できず、また、投資活動により取得・発生した株式などの金融資産やのれんに評価損・減損損失が発生するなど、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

さらに、当社グループの投資先が内部統制上の問題を抱えていたり、法令に違反する行為を行っている可能性があります。当社グループが投資後にそうした問題や行為を早期に是正できない場合、当社グループの信用や企業イメージが低下し、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 不動産事業(郵便局窓口事業に係るものを除く。)に関するリスク

当社グループは、事務所・商業施設・住宅等の賃貸・管理事業、分譲住宅事業等の不動産事業を営む日本郵政不動産株式会社を2018年4月2日に設立しております。また、日本郵政不動産株式会社は、2021年8月2日に同事業を営む郵船不動産株式会社の発行済株式の51%を取得し、子会社化(2022年4月にはJPプロパティーズ株式会社に商号変更)しております。当社グループは多くの不動産を保有しているものの、不動産事業におけるノウハウが限られていること、また、必要な人員の採用、定着が進まないこと等により、当該事業を発展させることができない可能性があります。加えて、当社グループは、グループ保有不動産の再開発を加速するとともに、グループ外不動産への投資を強化することで、不動産事業の利益拡大を目指してまいりますが、不動産市況等によってはかかる開発が当社グループの想定通りに進捗する保証はなく、また、グループ外の企業との共同プロジェクトにおいては、当社グループによるプロジェクトへの管理が及ばなくなったり、共同事業者との間で意見の不一致が生じること等により、事業の進捗に支障が生じる可能性があります。

また、不動産事業については、国内外の景気又は特定地域の経済状況や紛争の発生、人口、市場における需給等の変化により、不動産価格の下落、賃貸料の下落や未収、空室率の上昇、建築資材の価格や工事労務費等の高騰、着工・竣工時期の遅延や見直し、棚卸資産の増加、さらに、法的規制の変更、大規模災害や感染症の発生等の影響を受ける可能性があります。特に今般の新型コロナウイルス感染症の拡大による緊急事態宣言等を受けた深刻な経済活動の停滞により、テナント賃料の減免等が一部発生しているほか、空室率の上昇、開発中の案件における竣工時期の遅延等が想定され、また、収束後も、eコマース市場の拡大などの消費者動向の変化、ライフスタイルや働き方の変容により、オフィス需要や商業施設(特に小売り)の需要の変化等の影響を受ける可能性があります。これらの事象により、当社グループの不動産事業の収益や費用に影響を及ぼしたり、保有不動産等に評価損・減損損失や売却損が発生する可能性があります。その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

Ⅶ.金融2社株式売却等に関するリスク

 

2022年3月期において、日本国政府は当社の発行済株式の33.3%(自己株式を除く議決権割合は34.3%)を、当社はゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の発行済株式のそれぞれ89.0%(自己株式を除く議決権割合は89.0%)及び49.9%(自己株式を除く議決権割合は49.9%)を保有しております。

郵政民営化法に基づき、日本国政府による当社株式の保有割合は常に3分の1を超えるものとされており、また、当社が保有する金融2社の株式も、金融2社の経営状況、ユニバーサルサービスの責務の履行への影響等を勘案しつつ、その全部をできる限り早期に処分するものとされております。当社では、上記趣旨に沿って、中期経営計画期間中のできる限り早期に金融2社株式の保有割合を50%以下とすることを目指します。

なお、当社は、2021年5月のかんぽ生命保険が行う自己株式取得に応じた売付け及び同年6月の株式処分信託の設定により、当社が保有するかんぽ生命保険普通株式163,306,300株を処分いたしました。

この結果、当社のかんぽ生命保険に対する議決権保有割合は49.9%となりました(本株式処分前64.5%)が、実質支配力基準により、かんぽ生命保険が当社の連結子会社であることに変更はありません。

また、日本国政府は、2021年6月の当社による自己株式取得に応じた売付けにより276,090,500株を処分しました。この結果、日本国政府による当社株式の保有割合は発行済株式の50.7%(自己株式を除く議決権割合は60.6%。なお、当社は、2021年6月18日開催の取締役会決議に基づき、同月30日付で732,129,771株の自己株式を消却しており、当該自己株式の消却を行った後における日本国政府の自己株式を除く議決権割合は60.6%)となりました。

さらに、日本国政府は、2021年10月に公表した当社株式の国内売出し及び海外売出し(以下「グローバル・オファリング」といいます。)により当社株式1,027,477,400株を処分しており、その結果、日本国政府による当社株式の保有割合は発行済株式の33.3%(当社は、2021年10月6日開催の取締役会決議に基づき、2022年3月末までに105,043,800株の自己株式を取得しており、取得後の自己株式を除く議決権割合は34.3%)となりました。

当社は、2022年5月13日付の取締役会決議に基づき、2022年5月16日から2023年3月31日までを取得期間とし、当社普通株式278,000,000株、取得価額の総額2,000億円をそれぞれ上限として、取引一任契約に基づく市場買付による当社の自己株式の取得を実施することを決議しております。同決議に基づき、2022年5月16日から2022年5月31日までの間に、15,430,700株の自己株式を取得いたしました。これにより、2022年5月末日現在における発行済株式総数に対する政府が保有する株式の保有割合は34.3%(自己株式を除く議決権割合は34.5%)となっております。

以下では、かかる日本国政府による当社株式の保有と、当社による金融2社株式の売却に起因する当社グループの事業等のリスクのうち主要なものを記載しております。

 

(1) 持分の減少による連結業績への影響、事業の規模・範囲の縮小に関するリスク

2022年3月期におけるゆうちょ銀行の営む銀行業と、かんぽ生命保険の営む生命保険業のセグメント利益・セグメント資産の各合計額は、当社グループのセグメント利益・セグメント資産の各合計額(「その他」(宿泊事業、病院事業、関係会社受取配当金等)に区分されるものを除きます。)のそれぞれ約85%及び約98%を占めております。郵政民営化法に基づき、当社が金融2社の株式を処分した場合、当社の連結財務諸表の親会社株主に帰属する当期純利益に反映される金融2社の純利益や、非支配株主持分を除く純資産の額に反映される金融2社の純資産の額が減少することになります。金融2社の議決権の過半数を保有している間は連結対象となりますが、金融2社の議決権の過半数を保有しないこととなった場合には、連結対象となるかについて他の要件とも併せて検討することとなります(なお、上記のとおり、当社のかんぽ生命保険に対する議決権保有割合は49.9%となりましたが、実質支配力基準により、かんぽ生命保険が引き続き当社の連結子会社であることに変更はありません。)。なお、金融2社が連結対象から外れた場合、連結貸借対照表上、金融2社の資産、負債を合算しなくなるため、当社グループの資産、負債の規模が減少することになります。さらに、金融2社が持分法適用関連会社からも外れた場合は、金融2社株式は「その他有価証券」となり毎期時価で評価することになり、原則として評価差額は「その他有価証券評価差額金」として純資産に計上することになります。

なお、当社の連結財務諸表に対する金融2社の収益・利益が与える影響については、以下のとおりと想定しております。

① 金融2社が当社連結対象となる場合

金融2社の収益が当社連結収益に寄与します。また、金融2社の利益が持分比率に応じて当社連結利益に寄与します。

② 金融2社が持分法適用となる場合

金融2社の利益が持分比率に応じて当社連結利益に寄与します。

③ 金融2社が①及び②以外の場合

金融2社からの配当収入があれば、当該収入が当社連結収益・利益に寄与します。

また、上記のとおり、当社が保有する金融2社の株式は、金融2社の経営状況、ユニバーサルサービスの責務の履行への影響等を勘案しつつ、その全部をできる限り早期に処分するものとされており、当社が金融2社の株式を処分しその持分が低下するにつれて、当社グループの事業は、金融2社以外の事業のウェイトが高まることになり、当該各事業における収益の悪化が、当社グループの事業、業績及び財政状態に、より影響を及ぼすことになります。また、金融2社に対する持分が低下又は消滅することにより、当社グループの財務の健全性又はキャッシュ・フローが悪化し、当社グループの資金調達能力が制限される可能性があります。

当社は、金融2社株式の売却手取金を有効に活用し企業価値の向上に努める所存ですが、金融2社からの配当収入に代わる利益を得られない場合には、当社の配当原資が確保できないおそれがあり、また、上記の金融2社の当社連結利益への影響の低下を通じて当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 議決権割合の減少による影響力の低下、少数株主との利益相反、子会社からの配当収入の減少に関するリスク

当社は、2015年11月の金融2社株式の売出し、2019年4月のかんぽ生命保険株式の売出し及び2021年5月のかんぽ生命保険株式の一部処分の実施後においても、金融2社の議決権を保有する親会社であり、当社の利益とその他の少数株主の利益は相反する可能性があります。会社法上、取締役及び執行役は、会社及び少数株主を含む総株主の利益のために業務を行う義務を負っているため、金融2社における意思決定は、常に当社の意向に沿った、又は、当社グループの利益に資するものとなるとは限りません。また、当社がゆうちょ銀行の株式の2分の1以上又は3分の1超を処分した場合には、株主総会における普通決議又は特別決議を要する事項につき、当社がゆうちょ銀行の議案を単独で可決することができなくなる可能性があります。また、2021年5月のかんぽ生命保険株式の一部処分により、当社は、株主総会における普通決議を要する事項につき、かんぽ生命保険の議案を単独で可決することはできません。当社の金融2社の株式処分により、金融2社に対する議決権割合が減少した場合には、当社が金融2社の意思決定に及ぼしうる影響はその処分割合に応じて限定的となり、金融2社の意思決定は、当社グループの意向に沿った、又は、当社グループの利益に資するものとはならない可能性があります。さらに、当社は、安定的な配当を目指してまいりますが、当社の配当の原資は金融2社からの配当収入に依存しており、当社の金融2社の株式処分により金融2社の意思決定に及ぼす影響力が低下した場合、金融2社が中期経営計画の目標を達成できない場合等においては、当社は金融2社から当社の期待する配当収入を得られる保証はありません。

 

(3) 日本国政府との利益相反・関係希薄化に関するリスク

2021年6月の当社による自己株式取得に応じた日本国政府による当社株式の売付け、2021年10月の日本国政府によるグローバル・オファリング実施、及び当社自己株式の取得を経て、2022年5月末日現在における日本国政府の当社に対する議決権割合は34.5%となっております。

当社グループの事業その他に関する日本国政府の利益は、当社のその他の株主の利益と相反する可能性があり、日本国政府が、株主としての経済的利益よりも公共政策上の判断等を優先した場合等には、当社のその他の株主の利益に反する支配力又は影響力の行使がなされる可能性があります。グローバル・オファリング実施等を経て、日本国政府の当社に対する議決権割合は34.5%であるため、グローバル・オファリング後においては、日本国政府は当社の株主総会において、普通決議事項について単独で可決することはできなくなったものの、特別決議事項については自らの意思で否決することができます。郵政民営化法により当社株式の発行済株式総数の3分の1超に相当する株式は日本国政府が引き続き保有することが規定されていることから、グローバル・オファリング実施による当社株式の処分完了後も日本国政府は引き続き当社に重要な影響を及ぼしうることになります。また、上記のとおり、日本国政府は法令上当社株式の発行済株式総数の3分の1超に相当する株式を保有している必要があるため、当社が将来新株式の発行により資金調達を実施する場合には、日本国政府に対しても新株式を割り当てることが必要となり、その条件等について日本国政府と合意できない場合には、結果として当社は新株式の発行による資金調達を断念せざるを得なくなる可能性があります

他方で、金融2社は、その唯一の株主を当社、当社の唯一の株主を日本国政府とする上場前の状態にあっても、日本国政府その他の公的機関から何らの保証その他の信用補完を受けていたわけではありませんが、当社が金融2社の親会社ではなくなることに伴い、金融2社と日本国政府との関係が弱まった場合には、顧客等が、金融2社の経済的信用力が低下した、又は、ゆうちょ銀行の貯金及びかんぽ生命保険の商品のリスクが上昇したという誤認や錯誤を有することとなる可能性があります。実際の金融2社の経済的信用力等とは無関係であるにも関わらず、かかる誤認や錯誤が社会に広く伝播した場合等においては、顧客等によるゆうちょ銀行への新規貯金の差控えや既存貯金の引出し、かんぽ生命保険との新規契約の差控えや既存契約の解約、その他金融2社との取引量の低下を招き、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります

 

(4) 当社による金融2社株式の売却に関するリスク

郵政民営化法に基づき、当社は金融2社株式の全部を処分することが規定されております。金融2社株式の処分時期について、具体的な期限の定めはないものの、その処分に際しては、金融2社の経営状況、ユニバーサルサービスの責務の履行への影響等を勘案しつつ、できる限り早期に処分することとされています。金融2社株式の処分時期については、中期経営計画において、2025年までの期間のできる限り早期に金融2社の議決権保有割合が50%以下となるまで売却していく方針としております。具体的な時期については上記の各要素を勘案して当社取締役会において決定しますが、その時期によっては当社の株主全体の利益とは一致しない可能性があります。従って、当社は、金融2社株式の処分を、適切な時期に適切な条件で実行することができない可能性があります。郵政民営化法上の上乗せ規制については、当社が金融2社の株式を2分の1以上処分した場合には、金融2社に対する新規業務に係る規制は認可制から届出制へと緩和されます。さらに、当社が金融2社の株式を全部処分した場合又は2分の1以上を処分した旨を総務大臣が内閣総理大臣に通知した日以後に、内閣総理大臣及び総務大臣が他の金融機関等との間の適正な競争関係及び利用者への役務の適切な提供を阻害するおそれがないと認め、その旨の決定をした場合には、金融2社に対する新規業務に係る規制、子会社保有、合併、会社分割、事業の譲渡・譲受け等を行う場合の規制、銀行業における預入限度額規制、生命保険業における加入限度額規制等の適用は廃止されることになります。しかしながら、今後の当社による金融2社株式の売却の時期及び規模は未確定であり、また、金融2社株式の処分に係る郵政民営化法の定めの変更、株式市場の動向等により、金融2社の株式の処分が予定通りに進まない場合には、かかる上乗せ規制の撤廃が行われず、当社の期待する金融2社の経営の自由度の拡大等が実現しない可能性があります。また、金融2社株式の売却収入が売却に係る当社保有金融2社株式の帳簿価額を下回った場合には、売却される株式の帳簿価額と売却収入の差額について、当社の損益計算書に売却損失として計上する必要があり、その結果、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります(なお、当社は、2021年5月のかんぽ生命保険が行う自己株式取得に応じた売付け及び同年6月の株式処分信託の設定により、当社のかんぽ生命保険に対する議決権保有割合は49.9%となり、かんぽ生命保険の新規業務に係る規制は、認可制から届出制に緩和されています。)。

一方、連結財務諸表においては、金融2社株式の売却収入が、売却による当社の持分の減少額を下回った場合には、売却による当社の持分の減少額と売却収入の差額を、連結貸借対照表の資本剰余金から減少させる必要があり、その結果、当社グループの財政状態に影響を与える可能性があります。また、金融2社が持分法適用関連会社となり、金融2社株式の売却収入が、売却による当社の持分の減少額を下回った場合には、売却による当社の持分の減少額と売却収入の差額について、連結損益計算書に売却損失として計上する必要があります。さらに、金融2社が子会社及び持分法適用関連会社ではなくなり、金融2社株式の売却収入が、売却に係る当社が保有する金融2社株式の帳簿価額を下回った場合には、売却される株式の帳簿価額と売却収入の差額について、連結損益計算書に売却損失として計上する必要があります。以上の結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

なお、2015年11月の金融2社株式の売出しにおいては、ゆうちょ銀行株式の売却により、当社の損益計算書における関係会社株式売却損126,236百万円及び当社の連結貸借対照表における資本剰余金351,922百万円の減少が発生し、かんぽ生命保険株式の売却により、当社の損益計算書における関係会社株式売却益32,796百万円及び当社の連結貸借対照表における資本剰余金17,754百万円の減少が発生しております。

また、2019年4月のかんぽ生命保険株式の売却により、当社の損益計算書における関係会社株式売却益129,365百万円及び当社の連結貸借対照表における資本剰余金50,199百万円の減少が発生しております。

さらに、2021年5月及び同年6月のかんぽ生命保険株式の売却により、当社の損益計算書において関係会社株式売却益が87,530百万円発生し、当社の連結貸借対照表において資本剰余金が76,576百万円減少しております。

なお、2022年3月31日現在、当社が保有するゆうちょ銀行株式の帳簿価額は3,550,602百万円、かんぽ生命保険株式の帳簿価額は332,391百万円です。

 

(5) 当社の商標等の金融2社による継続使用に関するリスク

当社及び事業子会社等が締結した、「日本郵政グループ運営に関する契約」等(以下「グループ運営契約」といいます。)に基づき、金融2社は、当社による金融2社株式の処分後も、引き続き「日本郵政」ブランド及び関連商標の使用を継続する予定です。

そのため、金融2社株式の売却後も、金融2社における業績の低迷、従業員の不祥事その他の理由により金融2社の社会的信用が低下した場合には、当社グループの社会的信用及び「日本郵政」のブランド・イメージに悪影響を及ぼす可能性があり、また、当社グループのコンプライアンス等の内部統制の十分性又は有効性に疑義があるものと受け止められる可能性があり、かかる場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社は、グループ運営契約に基づき、金融2社から、当社グループに属することによる利益の対価としてブランド価値使用料を受け取っており、当社による金融2社株式の保有割合にかかわらず、金融2社がそれぞれ日本郵便株式会社法第2条第2項に定める関連銀行又は同条第3項に定める関連保険会社である限り、収受することを想定しております。しかしながら、金融2社が関連銀行若しくは関連保険会社に該当しないこととなりグループ運営契約そのものを適用しないこととなった場合、又は重大な経済情勢の変化等に起因してブランド価値使用料の算定方法が変更された場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

Ⅷ.金融2社との関係について

 

(1) 当社と金融2社との関係について

① 当社グループにおける金融2社の位置づけ

ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の金融2社は、現在、日本郵便がユニバーサルサービス提供に係る責務を果たすために営む銀行代理業又は保険募集等に係る業務委託契約を日本郵便との間でそれぞれ締結しており、それぞれ当社グループにおいて、日本郵便株式会社法第2条第2項に定める関連銀行として銀行業セグメント、同条第3項に定める関連保険会社として生命保険業セグメントを担っております。

 

② 金融2社とのグループ協定等

グループ会社として相互に連携・協力し、シナジー効果を発揮するため、当社及び金融2社は、「日本郵政グループ協定」及び「日本郵政グループ運営に関する契約」(いずれも2015年4月1日発効。以下「グループ協定等」といいます。)を締結しており、グループ共通の理念、方針、その他グループ運営に係る基本的事項について合意しております(グループ協定等の詳細については下記「第2 事業の状況 4 経営上の重要な契約等」をご参照ください。)。

なお、グループ協定等の存続期間は、金融2社が日本郵便と締結している上記の業務委託契約が解除されるまでとしており、これらの契約の解除は、当社による金融2社の株式売却と連動しておりません。

グループ協定等に基づき、事業子会社等に関するグループ運営は、当社が中心となって行っておりますが、金融2社の独立性を確保する観点から、金融2社については事前承認ルールを採用せず、グループ運営を適切・円滑に行うために必要な事項や法令等に基づき管理等が必要となる事項について、事前協議又は報告を求めています。

 

③ 金融2社との人的関係

当社の役員1名(増田寬也)が、グループ経営体制の強化、及び金融2社のトップマネジメント強化のため、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の役員(非常勤)を兼任しております。本書提出日現在において、ゆうちょ銀行の役員1名(池田憲人)及びかんぽ生命保険の役員1名(千田哲也)がグループ経営体制の強化のため、ゆうちょ銀行の役員1名(田中進)及びかんぽ生命保険の役員1名(市倉昇)が、国が資本金の分の1以上を出資している法人である当社として国会において各子会社に関する専門的な質問への答弁対応の必要があると考えているため、当社の役員(非常勤)を兼任しております(当社の役員の状況については下記「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 () 役員の状況」をご参照ください。)。

 

④ 金融2社との取引等

当社と金融2社との2022年3月期における主な取引等は、以下のとおりであります。

取引等内容

取引等先

金額

(百万円)

取引等条件の決定方法等

ブランド価値使用料

ゆうちょ銀行

4,326

第2 事業の状況 4 経営上の重要な契約等 (1) 日本郵政グループ協定等」をご覧ください。

システム利用料(※)

ゆうちょ銀行

18,038

システムの提供にかかる必要経費に一定の利益率を乗じた金額を、日本郵便及び金融2社が、利用状況等に応じて負担する。

配当金

ゆうちょ銀行

166,851

将来に向けた安定的な企業成長を実現するために必要な内部留保資金を確保しつつ、経営成績に応じた利益還元を株主である当社に対して行う。

なお、ゆうちょ銀行は、会社法第459条の規定に基づき、取締役会の決議によって剰余金の配当を行うこととしている。

ブランド価値使用料

かんぽ生命保険

2,504

第2 事業の状況 4 経営上の重要な契約等 (1) 日本郵政グループ協定等」をご覧ください。

システム利用料(※)

かんぽ生命保険

1,930

システムの提供にかかる必要経費に一定の利益率を乗じた金額を、日本郵便及び金融2社が、利用状況等に応じて負担する。

配当金

かんぽ生命保険

36,541

将来に向けた安定的な企業成長を実現するために必要な内部留保資金を確保しつつ、経営成績に応じた利益還元を株主である当社に対して行う。

なお、かんぽ生命保険は、会社法第459条の規定に基づき、取締役会の決議によって剰余金の配当を行うこととしている。

 

(※) PNETサービス、情報系共用システムサービス及び人事関係システムサービスの利用料(日本郵政インフォメーションテクノロジー株式会社との取引を含む。)

 

(2) 日本郵便と金融2社との関係について

当社の子会社である日本郵便は、ゆうちょ銀行から銀行窓口業務等の委託、また、かんぽ生命保険から保険窓口業務等の委託を受けており、これらの業務は郵便局窓口事業セグメントの収益の大部分を占めることから、両社の経営方針に変更が生じた場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

なお、2022年3月31日現在の日本郵便と金融2社との関係につきましては、次のとおりであります。

 

① 人的関係

日本郵便では、銀行窓口業務及び保険窓口業務における営業施策の企画・立案、推進管理を金融2社と協力して行うとともに、両社から販売支援・業務指導を受けるなど、一体的な営業体制を構築することを目的として、人事交流を行っております

 

② 取引関係

日本郵便と金融2社との2022年3月期における主な取引等は、以下のとおりであります。

取引等内容

取引等先

金額

(百万円)

取引等条件の決定方法等

銀行代理業の業務に係る受託手数料の受取(※1)

ゆうちょ銀行

354,374

銀行代理業等の委託業務に関連して発生する原価を基準に決定

保険代理業務の業務に係る受託手数料の受取(※1)

かんぽ生命保険

190,263

募集手数料については、代理店方式を採用している他の生命保険会社の例に準じて設定。維持・集金手数料については、業務量に応じた計算により額を設定

郵便料金等の受取

ゆうちょ銀行

11,543

一般の利用者の料金と同一の条件で取引

かんぽ生命保険

4,860

土地・建物等の賃貸
(※2)

ゆうちょ銀行

7,082

不動産鑑定評価の考え方に基づき決定

かんぽ生命保険

2,623

シェアードサービス利用料の受取
(※3)

ゆうちょ銀行

2,855

必要経費に加え、利用状況、他企業における平均的な利益率を勘案し両社交渉により手数料率等を決定

かんぽ生命保険

1,237

 

(※1) 受託手数料の詳細は下記「第2 事業の状況 4 経営上の重要な契約等 参考1 ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険からの委託手数料、参考2 独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法の一部を改正する法律の概要及び金融2社との業務委託契約への影響」をご参照ください。

(※2) 営業店等の施設の賃貸、社員用社宅関連業務の提供等

(※3) グループ内物流業務の提供等

(※4) 上記のほか、「独立行政法人郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構法(平成17年法律第101号)」に基づき、郵便局ネットワーク維持に要する費用のうち、ユニバーサルサービス確保のために不可欠な費用(日本郵便が負担すべき額を除く。)は、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険からの拠出金を原資として郵政管理・支援機構から日本郵便に交付される交付金で賄われることとなっております。当事業年度に日本郵便が郵政管理・支援機構から交付を受けた交付金の額は290,991百万円であります。

 

当社は、上記のような当社及び日本郵便と金融2社との契約関係・人的関係・取引関係に基づき、金融2社を含む当社グループの企業価値を最大化していく方針ですが、金融2社と当社及び日本郵便とのシナジー効果を実現できない可能性があり、また、金融2社と当社及び日本郵便との利益相反を適切に管理できない可能性があります。さらに、将来の金融2社株式の追加処分などによって、かかる関係に変更が生じる又はかかる関係による当社グループの企業価値の最大化がさらに困難となる可能性があります。

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等(以下「収益認識会計基準等」といいます。)を当連結会計年度の期首から適用しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりであります。

 

(1) 財政状態の状況及び分析・検討

当連結会計年度末の資産、負債及び純資産の状況は以下のとおりであります。

資産の部合計は、前連結会計年度末比6,108,849百万円増303,846,980百万円となりました。

主な要因は、銀行業等における現金預け金5,783,552百万円の増、銀行業及び生命保険業等における買現先勘定2,237,225百万円の増、銀行業等におけるコールローン990,000百万円の増の一方、生命保険業における債券貸借取引支払保証金2,585,087百万円の減、銀行業及び生命保険業における貸出金961,887百万円の減によるものです。

負債の部合計は、前連結会計年度末比7,490,935百万円増289,157,998百万円となりました。

主な要因は、銀行業及び生命保険業における売現先勘定7,146,065百万円の増、銀行業における貯金3,746,412百万円の増、銀行業等における借用金1,714,705百万円の増の一方、生命保険業における責任準備金2,864,265百万円の減、生命保険業等における債券貸借取引受入担保金2,340,878百万円の減によるものです。

純資産の部合計は、前連結会計年度末比1,382,085百万円減14,688,981百万円となりました。

主な要因は、利益剰余金1,763,839百万円の増、自己株式の消却等による735,555百万円の増、非支配株主持分102,885百万円の増の一方、資本剰余金2,626,473百万円の減、銀行業及び生命保険業等におけるその他有価証券評価差額金1,162,740百万円の減、銀行業等における繰延ヘッジ損益150,654百万円の減によるものです。

なお、収益認識会計基準等の適用により、その他資産は5,024百万円減少し、その他負債は1,649百万円増加しております。また、利益剰余金の当期首残高は4,972百万円減少しております。

各事業セグメント別の資産の状況は以下のとおりであります。

 

① 郵便・物流事業

当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比156,174百万円増の2,185,467百万円となりました。

主な要因は、現金預け金が171,761百万円増加した一方、減価償却等により建物等の有形固定資産が14,514百万円減少したことによるものです。

 

② 郵便局窓口事業

当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比14,775百万円2,635,119百万円となりました。

主な要因は、減価償却等により建物等の有形固定資産が7,761百万円、ソフトウエア等の無形固定資産が2,032百万円減少したことによるものです。

 

③ 国際物流事業

当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比94,263百万円減の435,273百万円となりました。

主な要因は、トール社のエクスプレス事業の譲渡等により有形固定資産96,909百万円減少したことによるものです。

 

④ 銀行業

当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比9,083,808百万円増の232,954,438百万円となりました。

主な要因は、貸出金が249,756百万円減少した一方、現金預け金が5,898,223百万円増加、有価証券が1,373,114百万円増加、コールローンが1,080,000百万円増加したことによるものです。

 

⑤ 生命保険業

当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比2,998,185百万円減の67,174,796百万円となりました。

主な要因は、保有契約の減少に伴い保険契約準備金が減少したことに対応し、有価証券が1,856,029百万円減少、貸出金が712,131百万円減少したことによるものです。

 

 

(2) 経営成績の状況及び分析・検討

当連結会計年度、当社グループは、中期経営計画「JPビジョン2025」の初年度として、グループを取り巻く社会環境の変化を踏まえ、お客さまと地域を支える「共創プラットフォーム」の実現に向け、各施策に取り組んでまいりました。

DXの推進に関して、2021年7月に「株式会社JPデジタル」を設立し、グループの横断的・一体的なDX施策を進めております。

コアビジネスの充実強化に関して、楽天グループと提携し、2021年7月に「JP楽天ロジスティクス株式会社」を設立し、ゆうパック引受個数の拡大と物流ソリューションの強化を進めております。ゆうちょ銀行では、お客さまニーズに応じた多種多様な商品・サービスの展開に向けて、2021年5月から新たな口座貸越サービスやフラット35の取扱いを開始したほか、2022年5月には大和証券株式会社が提供する投資一任契約の締結の媒介業務について取扱いを開始しました。かんぽ生命では、2022年4月より新しい医療特約の取扱いを開始しました。

不動産事業に関して、グループ保有不動産の開発やグループ外不動産への投資だけでなく、建物管理・運営機能の強化を目的として郵船不動産株式会社の子会社化2022年4月には「JPプロパティーズ株式会社」に商号変更を実施するなど、不動産事業の強化・拡充に努めております

ビジネスポートフォリオの転換に関して、当社は、2021年6月9日付でかんぽ生命保険株式の163,306,300株を処分し、当社のかんぽ生命保険に対する議決権保有割合は 49.90%となりました(処分前64.48%)。これにより、郵政民営化法によりかんぽ生命保険に課せられている新規業務に係る規制が認可制から届出制へと移行しております。ゆうちょ銀行株式についても「JPビジョン2025」の期間中において、保有割合が50%以下となるまで、できる限り早期に売却することを目指します。金融2社の経営状況、ユニバーサルサービスの責務の履行への影響等を勘案しつつ、できる限り早期に処分するものとする郵政民営化法の趣旨に沿って、所要の準備を行ってまいります。

 

これらの取組みの結果、当連結会計年度における連結経常収益は11,264,774百万円(前期比455,628百万円減)、連結経常利益は991,464百万円(前期比77,300百万円増)、連結経常利益に、特別損益や契約者配当準備金繰入額等を加減した親会社株主に帰属する当期純利益は、501,685百万円(前期比83,446百万円増)となりました。

なお、国際物流事業セグメントのエクスプレス事業について、2021年8月にAllegro Funds Pty Ltdの傘下企業に譲渡が完了しております。本件譲渡に伴い、当連結会計年度において、特別損失(事業譲渡損)として10,898百万円を計上しております。

 

 

各事業セグメント別の業績は、以下のとおりであります。

なお、以下の前期比較については、収益認識会計基準等を第17期連結会計年度の期首から適用している関係で、「郵便・物流事業」、「郵便局窓口事業」及び「銀行業」セグメントにつきましては、基準の異なる算定方法に基づいた数値を用いております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)及び(セグメント情報等)」をご参照ください。

 

① 郵便・物流事業

郵便・物流事業につきましては、郵便法等改正法の施行に伴うサービスの見直しとして、普通扱いとする郵便物及びゆうメールの土曜日の配達休止やお届け日数の繰り下げ等を行い、その実施に当たっては、サービス提供に混乱が生じることがないよう、利用者に十分な周知を行いました。

また、スマートフォンを活用した年賀状サービスの提供や手紙の楽しさを伝える活動の展開等により、郵便の利用の維持を図るとともに、成長するEC市場やフリマ市場を確実に取り込むため、二次元コードを読み取ることで、送り状を貼付せず、郵便ポストに投函できる「ゆうパケットポスト発送用シール」の販売を開始するとともに、楽天グループ株式会社と共同で、「楽天市場」の複数店舗の商品のまとめ配送を指定できる「おまとめアプリ」の提供を開始するなど、他社とも連携しつつ、お客さまの利便性の向上を図ってまいりました。さらに、2021年7月には、共同の物流拠点の構築や共同の配送システム及び受取サービスの構築等を目的として、日本郵便と楽天グループ株式会社の両社が出資する「JP楽天ロジスティクス株式会社」を設立しました。

加えて、2021年9月には、物流サービスの共創に向けた、両社の事業成長を目的とした協業に関して、佐川急便株式会社と基本合意書を締結しました。具体的には、「飛脚ゆうパケット便」、「飛脚グローバルポスト便」、「クール宅配便」等の取組みについて公表したところであり、今後も、持続可能な社会の実現に向け、様々な物流課題や社会課題について、オープンな環境で、幅広い企業との協業も視野に入れ、新たなソリューション開発に積極的に取り組んでまいります。

あわせて、「コンプライアンスは経営上の最重要課題」との基本的考え方に基づき、郵便物等の放棄・隠匿を含む部内犯罪の根絶、顧客情報の保護等に取り組みました。

また、日本郵便(単体)における当事業年度の総取扱物数は、郵便物が148億5,786万通(前期比2.5%減)、ゆうメールが33億4,630万個(前期比1.4%増)、ゆうパックが9億8,857万個(前期比9.4%減)(うち、ゆうパケットが4億2,013万個(前期比15.4%減))となりました。

当連結会計年度、郵便・物流事業におきましては、前年度の巣ごもり消費増の反動、厳しい競争環境等により、ゆうパック(ゆうパケットを含む)が減少となりました。国際郵便が引受再開等により増収となったものの、ゆうパック減に伴う荷物や年賀葉書収入の減収等により、経常収益は2,043,624百万円(前期比28,252百万円減)、経常利益は103,898百万円(前期比22,689百万円減)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、経常収益は2,689百万円減少し、セグメント利益は1,980百万円減少しております。また、日本郵便の当連結会計年度における郵便・物流事業の営業収益は2,041,210百万円(前期比27,215百万円減)、営業利益は102,245百万円(前期比21,471百万円減)となりました。

 

引受郵便物等の状況

区分

前事業年度

当事業年度

物数(千通・千個)

対前期比(%)

物数(千通・千個)

対前期比(%)

総数

19,634,137

△6.0

19,192,732

△2.2

 

 

 

 

 

 

 郵便物

15,244,033

△6.8

14,857,863

△2.5

 

 内国

15,221,007

△6.7

14,833,119

△2.5

 

  普通

14,713,066

△6.9

14,329,819

△2.6

 

   第一種

7,765,391

△2.6

7,675,104

△1.2

 

   第二種

5,185,488

△11.2

5,049,532

△2.6

 

   第三種

178,738

△5.8

173,491

△2.9

 

   第四種

16,641

6.8

16,634

△0.0

 

   年賀

1,556,543

△9.8

1,367,774

△12.1

 

   選挙

10,265

△82.3

47,284

360.6

 

  特殊

507,941

0.1

503,300

△0.9

 

 国際(差立)

23,026

△44.1

24,743

7.5

 

  通常

13,363

△46.3

13,324

△0.3

 

  小包

2,459

△12.9

2,849

15.9

 

  国際スピード郵便

7,204

△46.5

8,570

19.0

 荷物

4,390,104

△3.4

4,334,870

△1.3

 

 ゆうパック

 (含 ゆうパケット)

1,090,792

11.9

988,575

△9.4

 

  (再掲)ゆうパケット

496,660

16.1

420,125

△15.4

 

 ゆうメール

3,299,312

△7.5

3,346,295

1.4

 

(注) 1.第一種郵便物、第二種郵便物、第三種郵便物及び第四種郵便物の概要/特徴は、以下のとおりであります。

種類

概要/特徴

第一種郵便物

お客さまがよく利用される「手紙」(封書)のことであります。一定の重量及び大きさの定形郵便物とそれ以外の定形外郵便物に分かれます。また、郵便書簡(ミニレター)、特定封筒(レターパックライト)及び小型特定封筒(スマートレター)も含んでおります。

第二種郵便物

お客さまがよく利用される「はがき」のことであります。通常はがき及び往復はがきの2種類があります。年賀郵便物の取扱期間(12/15~1/7)以外に差し出された年賀はがきを含んでおります。

第三種郵便物

新聞、雑誌など年4回以上定期的に発行する刊行物で、日本郵便の承認を受けたものを内容とするものであります。

第四種郵便物

公共の福祉の増進を目的として、郵便料金を低料又は無料としているものであります。通信教育用郵便物、点字郵便物、特定録音物等郵便物、植物種子等郵便物、学術刊行物郵便物があります。

 

2.年賀は、年賀郵便物(年賀特別郵便(取扱期間12/15~12/28)及び12/29~1/7に差し出された年賀はがきで消印を省略したもの)の物数であります

3.選挙は、公職選挙法に基づき、公職の候補者又は候補者届出政党から選挙運動のために差し出された通常はがきの物数であります。別掲で示しております。

4.特殊は、速達、書留、特定記録、本人限定受取等の特殊取扱(オプションサービス)を行った郵便物の物数の合計であります。交付記録郵便物用特定封筒(レターパックプラス)及び電子郵便(レタックス、Webゆうびん、e内容証明)を含んでおります。

5.ゆうパックは、一般貨物法制の規制を受けて行っている宅配便の愛称であります。配送中は、追跡システムにより管理をしております。

6.ゆうパケットは、一般貨物法制の規制を受けて行っている宅配便の愛称であります。小型の荷物をお届けするもので、ゆうパックより安値でポスト投函も可能な商品であります。配送中は、追跡システムにより管理をしております。

7.ゆうメールは、一般貨物法制の規制を受けて行っている1kgまでの荷物の愛称であります。主に冊子とした印刷物やCD・DVDなどをお届けするもので、ゆうパックより安値でポスト投函も可能な商品であります。

 

② 郵便局窓口事業

郵便局窓口事業につきましては、郵便局等での積極的な募集活動を停止していたかんぽ生命保険商品、投資信託、提携金融商品(変額年金保険・引受条件緩和型医療保険・傷害保険)について、信頼回復に向けた業務運営を行うことから始めることとし、2020年10月以降、その取組みを進めてまいりました。

この取組みにおいては、お客さまからご要望があった場合のみ金融商品のご提案を行ってまいりましたが、当連結会計年度は、2021年4月より、信頼回復に向けた業務運営を継続する中で、お客さまの想定されるニーズの確認を行いながら、お客さまニーズに応じた金融商品の情報提供やご提案を実施することで、営業活動を通じたお客さまとの信頼関係の構築を進めていく新たな営業スタンスへ移行しました。

不適正募集の根絶については、新規契約申込時の重層的なチェックの実施のほか、募集品質データの管理基盤を構築し、募集人に対する指導やリスク管理を強化するなど、募集品質の向上や募集管理態勢の高度化に向けた取組を継続して行ってまいりました。

そのほか、郵便局のショッピングセンター内等への新規出店や既存店舗の配置の見直し等を通じ、郵便局ネットワークの最適化にも取り組んでまいりました。また、郵便局ネットワークの価値を高めるため、地方公共団体事務の包括受託や郵便局窓口における地域金融機関の手続事務の受付・取次、郵便局窓口と駅窓口の一体的運営等、地方公共団体や他企業と連携しながら、地域やお客さまニーズに応じた個性・多様性ある郵便局の展開を進めました。

あわせて、「コンプライアンスは経営上の最重要課題」との基本的考え方に基づき、前述の保険募集等の問題に取り組んだほか、資金横領を含む部内犯罪の根絶、顧客情報の保護、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策等に取り組みました。

また、不動産事業においては、JPタワー等による事務所、商業施設、住宅や保育施設等の賃貸事業等を行いました。不動産事業における主なプロジェクトの概要は以下のとおりです。

 

名称

土地面積
(千㎡)

延床面積
(千㎡)

簿価
(百万円)

 

 

持分シェア

土地等

建物他

JPタワー

約11

約212

289,249

227,783

61,466

共同事業
メジャーシェア

大宮JPビルディング

約6

約45

9,957

3,903

6,054

単独事業

JPタワー名古屋

約12

約180

40,996

10,945

30,051

共同事業
メジャーシェア

KITTE博多

約5

約64

20,133

7,385

12,747

単独事業

 

(注) 2022年3月31日時点

 

これらの取組の結果、当連結会計年度、郵便局窓口事業におきましては、2021年4月から新たな営業スタンスに移行しているものの、2019年7月からかんぽ生命保険の積極的な営業活動を控えていたこと等により保険手数料が減少し、また、送金決済取扱件数の減少等により銀行手数料が減少したほか、収益認識に関する会計基準の適用に伴う物販事業収益の減少や前年度の不動産販売収益の剥落等もあり経常収益は1,158,552百万円(前期比126,913百万円減)、経常費用は収益同様に物販事業の経費減等で減少したものの、経常利益は24,742百万円(前期比15,103百万円減)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、経常収益は59,679百万円減少しております。また、日本郵便の当連結会計年度における郵便局窓口事業の営業収益は1,151,797百万円(前期比91,669百万円減)、営業利益は24,569百万円(前期比13,157百万円減)となりました。

※ 当連結会計年度より、当社グループの報告セグメントの区分として従来「その他」に含まれていた日本郵政インフォメーションテクノロジー株式会社及び株式会社システムトラスト研究所の営む事業を「郵便局窓口事業」に変更しており、前年同期比については、区分方法の変更に伴う組替後の数値により記載しております。

 

 

郵便局数

支社名

営業中の郵便局(局)

前事業年度末

当事業年度末

直営の郵便局

簡易

郵便局

直営の郵便局

簡易

郵便局

郵便局

分室

郵便局

分室

北海道

1,207

1

264

1,472

1,207

1

255

1,463

東北

1,895

1

592

2,488

1,896

1

574

2,471

関東

2,391

0

160

2,551

2,390

0

158

2,548

東京

1,474

0

6

1,480

1,469

0

5

1,474

南関東

953

0

68

1,021

950

0

69

1,019

信越

976

0

314

1,290

975

0

313

1,288

北陸

668

0

162

830

667

0

160

827

東海

2,050

1

302

2,353

2,050

1

285

2,336

近畿

3,092

4

317

3,413

3,086

4

314

3,404

中国

1,752

2

446

2,200

1,751

2

439

2,192

四国

930

0

204

1,134

930

0

200

1,130

九州

2,498

0

886

3,384

2,495

0

882

3,377

沖縄

175

0

21

196

175

0

22

197

全国計

20,061

9

3,742

23,812

20,041

9

3,676

23,726

 

 

③ 国際物流事業

国際物流事業につきましては、日本郵便の子会社であるトール社の経営改善の取組みを継続しており、2021年8月には、赤字が継続していたエクスプレス事業の譲渡が完了しました。

また、豪州事業の合理化等の効率化施策を推進するとともに、アジア域内で特に成長が見込まれる国や業種にフォーカスした事業展開を進めるなど、日本を含むアジアを中心としたビジネスモデルへの転換を進めております。

加えて、JPトールロジスティクス株式会社を活用し、コントラクトロジスティクスを中心とした BtoB 事業の拡大に取り組みました。

なお、エクスプレス事業の譲渡に伴い、当社グループは、当連結会計年度において、特別損失(事業譲渡損)として10,898百万円を計上しております。

 

これらの取組みの結果、当連結会計年度、国際物流事業におきましては、フォワーディング事業の貨物需要増による増収があったものの、ロジスティクス事業の新型コロナウイルス感染症対策関連の大口取扱い減少やエクスプレス事業譲渡に伴う収益剥落の影響により経常収益は687,817百万円(前期比62,251百万円減)、経常費用はフォワーディング事業の増収見合の費用増があったものの、ロジスティクス事業の減収見合いの経費減やエクスプレス事業の費用剥落等により大きく減少し、経常利益21,226百万円(前期は7,003百万円の経常損失)となりました。また、日本郵便の当連結会計年度における国際物流事業については、営業収益は687,506百万円(前期比62,372百万円減)、営業利益は28,788百万円(前期比25,282百万円増)となりました。

 

なお、トール社を親会社とする連結グループは2022年3月末時点で881億円の債務超過となっております。

トール社の経営環境が非常に厳しい中、資金繰り安定化を企図し、トール社の借入等に対して、日本郵便による債務保証を付しております。

 

 

④ 銀行業

ゆうちょ銀行では、中期経営計画で定めた5つの重点戦略(「リアルとデジタルの相互補完による新しいリテールビジネスへの変革」、「デジタル技術を活用した業務改革・生産性向上」、「多様な枠組みによる地域への資金循環と地域リレーション機能の強化」、「ストレス耐性を意識した市場運用・リスク管理の深化」、「一層信頼される銀行となるための経営基盤の強化」)に取り組み、各戦略の基盤固めを着実に遂行しました。

また、これらの取組みを通じてビジネスモデルを変革するとともに、事業のサステナビリティを強化し、企業価値向上と社会課題解決の両立を図る経営(ESG経営)を推進いたしました。

 

「リアルとデジタルの相互補完による新しいリテールビジネスへの変革」については、デジタルサービス戦略の展開として、スマートフォンを使っていつでも現在高や入出金明細を確認できる「ゆうちょ通帳アプリ」について、より便利にサービスをご利用いただけるよう、投資信託の取引や口座の住所変更、送金等の機能を追加しました。

また、資産形成サポートビジネスの推進として、対面チャネルにおいて、お客さま一人ひとりにあった資産形成のご相談に応じるべく、社員のさらなる育成に努めたほか、スマートフォンやパソコンを使って、ご自宅等にいながらゆうちょ銀行直営店社員に相談いただける「オンライン相談」を開始しました。加えて、大和証券グループとの間で協業の検討を進めていた「投資一任サービス」について、サービス開始に向け郵政民営化法に基づく認可申請を行い、2022年3月に認可を取得したほか、2022年1月からデジタルチャネルでのすべての投資信託の購入時手数料を無料としました。

さらに、新規ビジネスの推進として、2021年5月より、お客さまの急な出費や一時的な資金ニーズに対応する口座貸越サービスや、個人向け住宅融資業務(フラット35)の取扱いを開始したほか、2021年12月より、楽天カード株式会社と連携し、「楽天カードゆうちょ銀行デザイン」の取扱いを開始しました。

 

「デジタル技術を活用した業務改革・生産性向上」については、通帳繰越機能付ATMの配備推進や、一部の直営店での窓口タブレット先行導入、通帳アプリの機能拡充等、お客さまの取引チャネルの選択肢を拡充しながら、窓口業務の効率化に取り組みました。

 

「多様な枠組みによる地域への資金循環と地域リレーション機能の強化」については、お客さまからお預かりした大切な資金を地域に循環するため、地域活性化ファンドへの参加を新たに7件(累計39件)行いました。また、JPインベストメント株式会社を通じて、地域活性化やSDGsへの貢献を目的とした新たなファンドの設立に向けて準備を進めました。

 

「ストレス耐性を意識した市場運用・リスク管理の深化」については、国内の低金利環境が継続する等、厳しい運用環境の中、リスク対比リターンやストレス耐性の強化を意識しつつ、投資適格領域を中心にリスク性資産残高を拡大しました。リスク性資産のうち、戦略投資領域については、優良な案件への選別的な投資に努めました。

 

「一層信頼される銀行となるための経営基盤の強化」については、組織の風土改革に取り組んだほか、内部管理態勢の強化として、日本郵便及び当社と連携し、郵便局長等による部内犯罪等の発生原因の分析、再発防止策の策定・実行等、コンプライアンスの徹底・強化に取り組んでおります。

 

また、上記5つの重点戦略に加え、ESG経営の推進として、「環境の負荷低減」と「働き方改革・ガバナンス高度化の推進」に取り組みました。具体的には、使用電力の再生可能エネルギー化等に取り組むとともに、ESGテーマ型投資残高の積上げや、投資先との建設的な対話等、社会全体の環境負荷低減にも努めました。また、女性管理職比率の向上、男性育児休業取得率100%達成等によるダイバーシティ・マネジメントの推進、キャリアチャレンジ制度(社内公募)の募集コース拡大等による社員の自発的なキャリア形成促進、デジタルサービスや市場運用業務等の強化・成長分野での人材育成を推進しました。

 

これらの取組みの結果、当連結会計年度、銀行業におきましては、外債償還益の減少を主因にその他業務利益は減少したものの、外債投資信託やプライベートエクイティファンドの収益増加を主因とした資金利益の増加及びプライベートエクイティファンドや不動産ファンドの拡大等による臨時損益の増加等により、経常収益は1,977,642百万円(前期比30,929百万円増)、経常利益は490,893百万円(前期比96,686百万円増)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、当連結会計年度の経常収益が779百万円減少し、セグメント利益は51百万円増加しております。

また、ゆうちょ銀行における損益の概要などの詳細な状況については、下記「(参考1) 銀行業を行う当社の子会社であるゆうちょ銀行(単体)の状況」「(参考2) 自己資本比率の状況」「(参考3) 資産の査定」に記載のとおりであります。

 

 

(参考1) 銀行業を行う当社の子会社であるゆうちょ銀行(単体)の状況

(a) 損益の概要

当事業年度の業務粗利益は、前事業年度比281億円減少の1兆2,908億円となりました。このうち、資金利益は、外債投資信託やプライベートエクイティファンドの収益増加を主因に、前事業年度比1,856億円の増加となりました。外債投資信託の収益増加は、海外のクレジットスプレッドが概ね第3四半期までの間は低位で推移する中、収益認識できない特別分配金の減少、投資信託の解約益の増加、投資信託内債券の早期償還に伴う償還益の増加、外貨調達コストの減少等によるものです。プライベートエクイティファンドの収益増加は、一部の投資先企業の企業価値が向上し、その売却が進展したこと等によるものです。役務取引等利益は、ATM関連手数料が増加した一方、投資信託関連手数料の減少や、当事業年度にサービスを開始した口座貸越サービス関連費用の計上等により、前事業年度比5億円の減少となりました。その他業務利益は、外国債券の償還時為替差益の減少を主因に、前事業年度比2,132億円の減少となりました。

経費は、日本郵便への委託手数料の減少や、支払消費税の計算方法見直しに伴う税金の減少等により、前事業年度比292億円減少の9,809億円となりました。

業務純益は、前事業年度比10億円増加の3,099億円となりました。

臨時損益は、プライベートエクイティファンドや不動産ファンドに係る収益の増加等により、前事業年度比960億円増加の1,815億円となりました。

経常利益は、前事業年度比971億円増加の4,914億円となりました。

この結果、当期純利益は3,549億円、前事業年度比751億円の増益となりました。

 

 

前事業年度

(百万円)(A)

当事業年度

(百万円)(B)

増減(百万円)

(B)-(A)

業務粗利益

1,319,027

1,290,865

△28,162

 資金利益

961,884

1,147,500

185,616

 役務取引等利益

127,943

127,400

△543

 その他業務利益

229,200

15,964

△213,235

  うち外国為替売買損益

254,666

78,954

△175,712

  うち国債等債券損益

△25,980

△63,245

△37,265

経費(除く臨時処理分)

△1,010,175

△980,906

29,269

  人件費

△119,374

△116,943

2,431

 物件費

△834,256

△819,027

15,228

 税金

△56,544

△44,935

11,609

業務純益(一般貸倒引当金繰入前)

308,852

309,959

1,107

一般貸倒引当金繰入額

△9

△9

業務純益

308,852

309,949

1,097

臨時損益

85,473

181,509

96,036

 うち株式等関係損益

△188,480

△125,583

62,896

 うち金銭の信託運用損益

272,749

286,671

13,922

経常利益

394,325

491,459

97,134

特別損益

△1,564

5,682

7,246

 固定資産処分損益

△557

5,698

6,256

 減損損失

△1,006

△15

990

税引前当期純利益

392,760

497,141

104,380

法人税、住民税及び事業税

△124,123

△104,295

19,828

法人税等調整額

11,200

△37,901

△49,101

法人税等合計

△112,923

△142,196

△29,273

当期純利益

279,837

354,945

75,107

 

(注) 1.業務純益=業務粗利益-経費(除く臨時処理分)-一般貸倒引当金繰入額

2.臨時損益とは、損益計算書中「その他経常収益・費用」から一般貸倒引当金繰入額を除き、金銭の信託運用見合費用及び退職給付費用のうち臨時費用処理分等を加えたものであります。

 

3.「金銭の信託運用見合費用」とは、金銭の信託取得に係る資金調達費用であり、金銭の信託運用損益が臨時損益に計上されているため、業務費用から控除しているものであります。

4.国債等債券損益=国債等債券売却益+国債等債券償還益-国債等債券売却損-国債等債券償還損-国債等債券償却

5.株式等関係損益=株式等売却益-株式等売却損-株式等償却

6.金額が損失又は費用には△を付しております。

 

(参考) 与信関係費用

 

前事業年度
(百万円)(A)

当事業年度
(百万円)(B)

増減(百万円)
(B)-(A)

 与信関係費用

△23

△9

14

  一般貸倒引当金繰入額

△23

△9

14

  貸出金償却

  個別貸倒引当金繰入額

  償却債権取立益

 

(注) 1.金融再生法開示債権に係る費用を計上しております。

2.金額が損失又は費用には△を付しております。

 

 
(b) 国内・国際別の資金利益等

ゆうちょ銀行は、海外店や海外に本店を有する子会社(以下「海外子会社」といいます。)を有しておりませんが、円建の取引を「国内業務部門」、外貨建取引を「国際業務部門」に帰属させ(ただし、円建の対非居住者取引は「国際業務部門」に含む。)、各々の収益・費用を計上した結果、国内業務部門・国際業務部門別の資金利益等は次のとおりとなりました。

当事業年度は、国内業務部門においては、資金利益は、国内の低金利環境が継続する中、過去に投資した高利回りの日本国債の償還に伴う国債利息の減少を主因に4,022億円に減少、役務取引等利益は1,276億円、その他業務利益は△175億円となりました。

国際業務部門においては、外債投資信託やプライベートエクイティファンドの収益増加等により、外国証券利息が増加し、資金利益は7,452億円、役務取引等利益は△2億円となったほか、その他業務利益は、外国債券の償還時為替差益の減少を主因に334億円となりました。

この結果、国内業務部門、国際業務部門の相殺消去後の合計は、資金利益は1兆1,475億円、役務取引等利益は1,274億円、その他業務利益は159億円となりました。

 

イ.国内業務部門

 

前事業年度

(百万円)(A)

当事業年度

(百万円)(B)

増減(百万円)

(B)-(A)

資金利益

455,698

402,257

△53,440

 資金運用収益

518,305

446,743

△71,561

うち国債利息

364,671

304,191

△60,479

資金調達費用

62,606

44,486

△18,120

役務取引等利益

127,875

127,631

△244

役務取引等収益

156,939

157,355

416

役務取引等費用

29,063

29,724

660

その他業務利益

△41,327

△17,525

23,801

その他業務収益

3,187

433

△2,754

その他業務費用

44,514

17,958

△26,556

 

 

 

ロ.国際業務部門

 

前事業年度

(百万円)(A)

当事業年度

(百万円)(B)

増減(百万円)

(B)-(A)

資金利益

506,185

745,243

239,057

資金運用収益

751,460

991,619

240,159

うち外国証券利息

750,955

991,228

240,273

資金調達費用

245,274

246,376

1,101

役務取引等利益

67

△231

△298

役務取引等収益

436

354

△82

役務取引等費用

369

586

216

その他業務利益

270,527

33,490

△237,037

その他業務収益

290,497

87,044

△203,452

その他業務費用

19,969

53,554

33,585

 

 

ハ.合計

 

前事業年度

(百万円)(A)

当事業年度

(百万円)(B)

増減(百万円)

(B)-(A)

資金利益

961,884

1,147,500

185,616

資金運用収益

1,198,278

1,369,747

171,469

資金調達費用

236,393

222,246

△14,147

役務取引等利益

127,943

127,400

△543

役務取引等収益

157,376

157,710

334

役務取引等費用

29,433

30,310

877

その他業務利益

229,200

15,964

△213,235

その他業務収益

293,684

87,477

△206,206

その他業務費用

64,484

71,513

7,029

 

(注) 1.資金調達費用は、金銭の信託運用見合費用(前事業年度4,760百万円、当事業年度4,404百万円)を控除しております。

2.「国内業務部門」「国際業務部門」間の内部取引による相殺消去額は下表のとおりであります。

 

前事業年度
(百万円)

当事業年度
(百万円)

国内業務部門・資金運用収益

71,487

68,616

国際業務部門・資金調達費用

71,487

68,616

 

 

(c) 国内・国際別資金運用/調達の状況

当事業年度の資金運用勘定の平均残高は217兆3,611億円、利回りは0.63%となりました。また、資金調達勘定の平均残高は209兆9,361億円、利回りは0.10%となりました。

国内・国際別に見ますと、国内業務部門の資金運用勘定の平均残高は211兆3,420億円、利回りは0.21%となりました。また、資金調達勘定の平均残高は204兆5,294億円、利回りは0.02%となりました。

国際業務部門の資金運用勘定の平均残高は70兆8,346億円、利回りは1.39%となりました。また、資金調達勘定の平均残高は70兆2,221億円、利回りは0.35%となりました。

 

 

イ.国内業務部門

種類

前事業年度

当事業年度

増減

平均残高

利息

利回り

平均残高

利息

利回り

利回り

(百万円)
 

(百万円)
 

(%)
(A)

(百万円)
 

(百万円)
 

(%)
(B)

(%)
(B)-(A)

資金運用勘定

204,928,217

518,305

0.25

211,342,025

446,743

0.21

△0.04

うち貸出金

5,888,523

10,060

0.17

4,620,369

10,120

0.21

0.04

うち有価証券

70,330,066

410,942

0.58

69,451,545

341,824

0.49

△0.09

うち預け金等

56,799,558

29,230

0.05

60,361,005

29,872

0.04

△0.00

資金調達勘定

197,783,193

62,606

0.03

204,529,496

44,486

0.02

△0.00

うち貯金

188,043,501

38,323

0.02

192,386,838

20,984

0.01

△0.00

うち債券貸借取引受入担保金

155,875

155

0.09

17,507

17

0.09

0.00

 

(注) 1.「国内業務部門」は円建取引であります。

2.金銭の信託に係る収益及び費用を「その他経常収益」「その他経常費用」に計上しておりますので、資金運用勘定は金銭の信託の平均残高(前事業年度3,107,611百万円、当事業年度2,629,573百万円)を控除し、資金調達勘定は金銭の信託運用見合額の平均残高(前事業年度3,107,611百万円、当事業年度2,629,573百万円)及び利息(前事業年度1,147百万円、当事業年度△967百万円)を控除しております。

3.預け金等は、譲渡性預け金、日銀預け金、コールローン、買入金銭債権であります。「ロ.国際業務部門」「ハ.合計」においても同様であります。

4.貯金は銀行法施行規則の負債科目「預金」に相当するものであります。「ロ.国際業務部門」「ハ.合計」においても同様であります。

 

ロ.国際業務部門

種類

前事業年度

当事業年度

増減

平均残高

利息

利回り

平均残高

利息

利回り

利回り

(百万円)
 

(百万円)
 

(%)
(A)

(百万円)
 

(百万円)
 

(%)
(B)

(%)
(B)-(A)

資金運用勘定

67,100,563

751,460

1.11

70,834,616

991,619

1.39

0.28

うち貸出金

23,763

125

0.52

26,122

137

0.52

△0.00

うち有価証券

66,938,098

750,955

1.12

70,670,623

991,228

1.40

0.28

うち預け金等

資金調達勘定

67,508,045

245,274

0.36

70,222,165

246,376

0.35

△0.01

うち債券貸借取引受入担保金

1,482,339

6,752

0.45

1,458,983

2,579

0.17

△0.27

 

(注) 1.「国際業務部門」は外貨建取引であります。ただし、円建対非居住者取引については、「国際業務部門」に含めております。

2.ゆうちょ銀行は、海外店及び海外子会社を有しておりません。

3.金銭の信託に係る収益及び費用を「その他経常収益」「その他経常費用」に計上しておりますので、資金運用勘定は金銭の信託の平均残高(前事業年度994,585百万円、当事業年度1,531,380百万円)を控除し、資金調達勘定は金銭の信託運用見合額の平均残高(前事業年度994,585百万円、当事業年度1,531,380百万円)及び利息(前事業年度3,613百万円、当事業年度5,372百万円)を控除しております。

 

 

ハ.合計

種類

前事業年度

当事業年度

増減

平均残高

利息

利回り

平均残高

利息

利回り

利回り

(百万円)
 

(百万円)
 

(%)
(A)

(百万円)
 

(百万円)
 

(%)
(B)

(%)
(B)-(A)

資金運用勘定

210,430,410

1,198,278

0.56

217,361,148

1,369,747

0.63

0.06

うち貸出金

5,912,287

10,186

0.17

4,646,492

10,257

0.22

0.04

うち有価証券

137,268,164

1,161,897

0.84

140,122,168

1,333,053

0.95

0.10

うち預け金等

56,799,558

29,230

0.05

60,361,005

29,872

0.04

△0.00

資金調達勘定

203,692,867

236,393

0.11

209,936,168

222,246

0.10

△0.01

うち貯金

188,043,501

38,323

0.02

192,386,838

20,984

0.01

△0.00

うち債券貸借取引受入担保金

1,638,214

6,908

0.42

1,476,490

2,597

0.17

△0.24

 

(注) 1.金銭の信託に係る収益及び費用を「その他経常収益」「その他経常費用」に計上しておりますので、資金運用勘定は金銭の信託の平均残高(前事業年度4,102,197百万円、当事業年度4,160,954百万円)を控除し、資金調達勘定は金銭の信託運用見合額の平均残高(前事業年度4,102,197百万円、当事業年度4,160,954百万円)及び利息(前事業年度4,760百万円、当事業年度4,404百万円)を控除しております。

2.「国内業務部門」「国際業務部門」間の内部取引による相殺消去額は下表のとおりであります。

 

前事業年度

当事業年度

平均残高

(百万円)

利息

(百万円)

平均残高

(百万円)

利息

(百万円)

国内業務部門・資金運用勘定

61,598,371

71,487

64,815,494

68,616

国際業務部門・資金調達勘定

61,598,371

71,487

64,815,494

68,616

 

 

(d) 役務取引等利益の状況

当事業年度の役務取引等利益は、2022年1月の料金改定の影響等によりATМ関連手数料が増加した一方、投資信託関連手数料の減少や、当事業年度にサービスを開始した口座貸越サービス関連費用の計上等により、前事業年度比5億円減少の1,274億円となりました。

 

前事業年度

(百万円)(A)

当事業年度

(百万円)(B)

増減(百万円)

(B)-(A)

役務取引等利益

127,943

127,400

△543

為替・決済関連手数料

83,425

83,722

296

ATM関連手数料

20,152

22,776

2,624

投資信託関連手数料

14,654

13,666

△988

その他

9,710

7,234

△2,476

 

 
(参考) 投資信託の取扱状況(約定ベース)

 

前事業年度

(百万円)(A)

当事業年度

(百万円)(B)

増減(百万円)

(B)-(A)

販売金額

262,912

200,433

△62,478

純資産残高

2,565,801

2,595,536

29,734

 

 

 

(e) 預金残高の状況

当事業年度末の貯金残高は、通常貯金等の残高増加を主因に、前事業年度末比3兆8,484億円増加の193兆4,419億円となりました。

○ 預金の種類別残高(末残・構成比)

種類

前事業年度

当事業年度

増減

金額(百万円)

(A)

構成比(%)

金額(百万円)

(B)

構成比(%)

金額(百万円)

(B)-(A)

預金合計

189,593,469

100.00

193,441,929

100.00

3,848,459

流動性預金

101,309,018

53.43

112,254,409

58.03

10,945,390

振替貯金

9,150,117

4.82

10,749,849

5.55

1,599,731

通常貯金等

91,546,309

48.28

100,805,356

52.11

9,259,046

貯蓄貯金

612,591

0.32

699,203

0.36

86,612

定期性預金

88,145,649

46.49

81,022,589

41.88

△7,123,060

定期貯金

4,709,291

2.48

4,352,435

2.24

△356,855

定額貯金

83,436,358

44.00

76,670,153

39.63

△6,766,204

その他の預金

138,801

0.07

164,930

0.08

26,129

譲渡性預金

総合計

189,593,469

100.00

193,441,929

100.00

3,848,459

 

 

○ 預金の種類別残高(平残・構成比)

種類

前事業年度

当事業年度

増減

金額(百万円)

(A)

構成比(%)

金額(百万円)

(B)

構成比(%)

金額(百万円)

(B)-(A)

預金合計

188,043,501

100.00

192,386,838

100.00

4,343,336

流動性預金

96,053,067

51.08

107,384,771

55.81

11,331,703

振替貯金

8,686,730

4.61

10,025,532

5.21

1,338,802

通常貯金等

86,803,482

46.16

96,703,365

50.26

9,899,882

貯蓄貯金

562,854

0.29

655,873

0.34

93,018

定期性預金

91,763,655

48.79

84,779,519

44.06

△6,984,135

定期貯金

4,940,369

2.62

4,533,450

2.35

△406,918

定額貯金

86,823,285

46.17

80,246,068

41.71

△6,577,217

その他の預金

226,778

0.12

222,547

0.11

△4,230

譲渡性預金

総合計

188,043,501

100.00

192,386,838

100.00

4,343,336

 

(注) 1.通常貯金等=通常貯金+特別貯金(通常郵便貯金相当)

2.貯金は銀行法施行規則の負債科目「預金」に相当するものであります。「振替貯金」は「当座預金」、「通常貯金」は「普通預金」、「貯蓄貯金」は「貯蓄預金」、「定期貯金」は「定期預金」に相当するものであります。「定額貯金」は「その他の預金」に相当するものでありますが、「定期性預金」に含めております。

3.特別貯金(通常郵便貯金相当)は郵政管理・支援機構からの預り金のうち、郵政管理・支援機構が公社から承継した定期郵便貯金、定額郵便貯金、積立郵便貯金、住宅積立郵便貯金、教育積立郵便貯金に相当する郵便貯金で満期となったものなどであります。

4.上記の通常貯金、定期性預金は、「第1 企業の概況 3 事業の内容 (3) 事業に係る主な法律関連事項 ③ 郵政民営化法 (f) ゆうちょ銀行における預入限度額」に記載の郵政民営化法における預入限度額規制上の区分とは異なります。

 

 

(f) 資産運用の状況(末残・構成比)

当事業年度末の運用資産のうち、国債は49.2兆円、その他の証券は74.1兆円となりました。

種類

前事業年度

当事業年度

増減

金額(百万円)

(A)

構成比(%)

金額(百万円)

(B)

構成比(%)

金額(百万円)

(B)-(A)

預け金等

60,667,097

27.50

66,622,875

29.00

5,955,778

コールローン

1,390,000

0.63

2,470,000

1.07

1,080,000

買現先勘定

9,721,360

4.40

9,861,753

4.29

140,392

金銭の信託

5,547,574

2.51

5,828,283

2.53

280,709

うち国内株式

2,261,772

1.02

2,024,619

0.88

△237,152

うち国内債券

1,545,190

0.70

1,406,103

0.61

△139,087

有価証券

138,183,264

62.64

139,549,103

60.75

1,365,838

国債

50,493,477

22.88

49,259,766

21.44

△1,233,711

地方債

5,493,814

2.49

5,580,874

2.42

87,060

短期社債

1,869,535

0.84

1,434,510

0.62

△435,024

社債

9,145,414

4.14

9,118,414

3.96

△26,999

株式

13,755

0.00

20,533

0.00

6,777

その他の証券

71,167,266

32.26

74,135,001

32.27

2,967,735

うち外国債券

23,505,116

10.65

24,509,689

10.67

1,004,573

うち投資信託

47,591,186

21.57

49,534,425

21.56

1,943,238

貸出金

4,691,723

2.12

4,441,967

1.93

△249,756

その他

394,410

0.17

920,646

0.40

526,235

合計

220,595,431

100.00

229,694,629

100.00

9,099,197

 

(注) 「預け金等」は譲渡性預け金、日銀預け金、買入金銭債権であります。

  

 

(g) 評価損益の状況(末残)

当事業年度末の評価損益(その他目的)は、第4四半期以降の内外金利の上昇及び海外のクレジットスプレッドの拡大等に伴い、ヘッジ考慮後で、前事業年度末から1兆8,257億円減少し、1兆2,230億円(税効果前)となりました。

 

前事業年度(A)

当事業年度(B)

増減(B)-(A)

貸借対照表

計上額

評価損益

貸借対照表

計上額

評価損益

貸借対照表

計上額

評価損益

(百万円)

(百万円)

(百万円)

(百万円)

(百万円)

(百万円)

満期保有目的の債券

25,178,079

238,178

23,069,257

△55,784

△2,108,821

△293,962

 

 

 

 

前事業年度(A)

当事業年度(B)

増減(B)-(A)

貸借対照表

計上額

/想定元本

評価損益

/ネット繰延

損益

貸借対照表

計上額

/想定元本

評価損益

/ネット繰延

損益

貸借対照表

計上額

/想定元本

評価損益

/ネット繰延

損益

(百万円)

(百万円)

(百万円)

(百万円)

(百万円)

(百万円)

その他目的

 

118,940,510

3,586,863

122,720,450

2,002,106

3,779,939

△1,584,757

有価証券

113,392,936

2,407,252

116,892,166

1,673,052

3,499,230

△734,199

国債

 

29,917,094

542,798

34,285,554

85,743

4,368,459

△457,054

外国債券

 

23,505,116

1,031,399

22,701,193

1,484,225

△803,922

452,826

投資信託

 

47,591,186

776,215

49,534,425

82,347

1,943,238

△693,868

その他

 

12,379,538

56,838

10,370,993

20,735

△2,008,545

△36,102

時価ヘッジ効果額

△173,512

△852,922

△679,409

金銭の信託

5,547,574

1,353,124

5,828,283

1,181,977

280,709

△171,147

国内株式

 

2,261,772

1,363,424

2,024,619

1,202,212

△237,152

△161,212

その他

 

3,285,801

△10,299

3,803,663

△20,234

517,862

△9,934

デリバティブ取引

(繰延ヘッジ適用分)

16,210,065

△538,052

16,081,660

△779,085

△128,404

△241,032

評価損益合計

①+②+③+④

3,048,811

1,223,021

△1,825,789

 

(注) 「有価証券」には、有価証券のほか、現金預け金中の譲渡性預け金、買入金銭債権を含んでおります。

 

 

(h) 業種別貸出金残高の状況(末残・構成比)

業種別

前事業年度

当事業年度

増減

金額(百万円)

(A)

構成比(%)

金額(百万円)

(B)

構成比(%)

金額(百万円)

(B)-(A)

国内(除く特別国際金融取引勘定分)

4,666,152

100.00

4,415,145

100.00

△251,006

農業、林業、漁業、鉱業

製造業

81,669

1.75

92,847

2.10

11,178

電気・ガス等、情報通信業、運輸業

137,714

2.95

130,030

2.94

△7,684

卸売業、小売業

34,255

0.73

18,836

0.42

△15,418

金融・保険業

739,510

15.84

606,744

13.74

△132,765

建設業、不動産業

63,184

1.35

96,815

2.19

33,630

各種サービス業、物品賃貸業

84,214

1.80

81,943

1.85

△2,270

国、地方公共団体

3,428,219

73.46

3,304,344

74.84

△123,874

その他

97,383

2.08

83,582

1.89

△13,801

国際及び特別国際金融取引勘定分

25,571

100.00

26,821

100.00

1,250

政府等

その他

25,571

100.00

26,821

100.00

1,250

合計

4,691,723

4,441,967

△249,756

 

(注) 1.「国内」とは本邦居住者に対する貸出、「国際」とは非居住者に対する貸出であります。

2.ゆうちょ銀行は、海外店及び海外子会社を有しておりません。

3.「金融・保険業」のうち郵政管理・支援機構向け貸出金は、前事業年度末340,563百万円、当事業年度末246,483百万円であります。

 

(参考2) 自己資本比率の状況

ゆうちょ銀行の自己資本比率は、銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(平成18年金融庁告示第19号)に定められた算式に基づき、連結ベースと単体ベースの双方について算出しております。

なお、ゆうちょ銀行は、国内基準を適用のうえ、信用リスク・アセットの算出においては標準的手法を採用しております。

 

連結自己資本比率(国内基準)

 

(単位:億円、%)

 

2022年3月31日

1.連結自己資本比率(2/3)

15.56

2.連結における自己資本の額

91,993

3.リスク・アセット等の額

591,060

4.連結総所要自己資本額

23,642

 

(注) 連結総所要自己資本額は、上記3.に記載しているリスク・アセット等の額に4%を乗じた額であります。

 

単体自己資本比率(国内基準)

 

(単位:億円、%)

 

2022年3月31日

1.単体自己資本比率(2/3)

15.54

2.単体における自己資本の額

91,880

3.リスク・アセット等の額

590,895

4.単体総所要自己資本額

23,635

 

(注) 単体総所要自己資本額は、上記3.に記載しているリスク・アセット等の額に4%を乗じた額であります。

 

 

(参考3) 資産の査定

資産の査定は、「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律」(平成10年法律第132号)第6条に基づき、ゆうちょ銀行の貸借対照表の社債(当該社債を有する金融機関がその元本の償還及び利息の支払の全部又は一部について保証しているものであって、当該社債の発行が金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条第3項に規定する有価証券の私募によるものに限る。)、貸出金、外国為替、その他資産中の未収利息及び仮払金、支払承諾見返の各勘定に計上されるもの並びに貸借対照表に注記することとされている有価証券の貸付けを行っている場合のその有価証券(使用貸借又は賃貸借契約によるものに限る。)について債務者の財政状態及び経営成績等を基礎として次のとおり区分するものであります。

 

(a) 破産更生債権及びこれらに準ずる債権

破産更生債権及びこれらに準ずる債権とは、破産手続開始、更生手続開始、再生手続開始の申立て等の事由により経営破綻に陥っている債務者に対する債権及びこれらに準ずる債権をいう。

 

(b) 危険債権

危険債権とは、債務者が経営破綻の状態には至っていないが、財政状態及び経営成績が悪化し、契約に従った債権の元本の回収及び利息の受取りができない可能性の高い債権をいう。

 

(c) 要管理債権

要管理債権とは、三月以上延滞債権及び貸出条件緩和債権をいう。

 

(d) 正常債権

正常債権とは、債務者の財政状態及び経営成績に特に問題がないものとして、上記(a)から(c)までに掲げる債権以外のものに区分される債権をいう。

 

資産の査定の額

債権の区分

2021年3月31日

2022年3月31日

金額(億円)

金額(億円)

破産更生債権及びこれらに準ずる債権

危険債権

0

要管理債権

正常債権

47,749

46,580

 

 

 

 

⑤  生命保険業

かんぽ生命保険では、2019年度に判明したかんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題について、お客さまからの信頼回復に向けた取組みを継続してまいりました。再発防止策として、金融庁に提出した業務改善計画において掲げた「健全な組織風土の醸成・適正な営業推進態勢の確立」、「適正な募集管理態勢の強化」、「取締役会等によるガバナンスの強化」を着実に実行してまいりました。

また、2021年4月より、営業活動を通じたお客さまとの信頼関係の構築を進めていく新たな営業スタイルへ移行しております。具体的には、「お客さまにご納得・ご満足いただいた上で保険サービスをご利用いただく」活動を徹底していく中で、商品を前提にしたご提案ありきの旧来のスタイルから、適切な募集プロセスのもと、勧誘方針※1やかんぽ営業スタンダード※2などのプリンシプルに基づく新たなスタイルへ抜本的に転換しております。さらに、お客さまとの信頼関係を構築し、保険会社としての使命を果たしていくためには、かんぽ営業に携わる社員一人ひとりが、安心感や納得感を持って営業活動・お客さまへのご提案を推進していく必要があることから、2021年9月に「かんぽ生命の約束」を策定し、遵守・実行しております。

上記の信頼回復に向けた取組みのほか、「新しいかんぽ営業体制の構築」、「保険サービスの充実」、「資産運用の深化・高度化」等の事業基盤の強化、また「お客さま体験価値(CX)の向上」を中心に取り組みました。

「新しいかんぽ営業体制の構築」については、2021年10月より順次、コンサルタント(主にお客さまのお宅を訪問して活動する社員)の貯金業務等を郵便局窓口に移管し、コンサルタントは生命保険のご提案及びアフターフォローに専念するとともに、2022年1月より活動拠点の集約を段階的に実施してまいりました。

「保険サービスの充実」については、人生100年時代における、あらゆる世代のお客さまの保障ニーズにお応えするため、2021年4月より、青壮年層のお客さまに向けた保険期間を延長した普通定期保険及び特別養老保険の取扱いを開始したほか、同年10月より、法人のお客さまに向けた保険期間を延長した普通養老保険の取扱いを開始しております。

「資産運用の深化・高度化」については、継続的な低金利環境における安定的な運用収益の確保を目指し、ALMを基本としつつ、リスクバッファーの範囲で収益追求資産への投資を継続しております。資産運用の多様化を図るため、海外クレジットの運用拡大の一環として、米国社債の自家運用に引き続き取り組むとともに、株式の自家運用やオルタナティブ投資等についても継続して推進しております。これら資産運用の取組みについては、ERMの枠組みのもとで財務の健全性の確保や、リスク対比リターンの向上を図っております。また、ESG投資において、「Well-being※3向上」、「地域と社会の発展」、「環境保護への貢献」を重点取組みテーマとし、かんぽ生命らしい“あたたかさ” の感じられる投資を行っております。

また、「お客さま体験価値(CX)の向上」のため、保険サービスの抜本的な見直し及びお客さまの利便性・募集品質の向上により、「かんぽ生命に入っていてよかった」と感動いただけるように取り組んでおります。具体的な取組みとしては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大等に伴う非対面チャネルニーズの高まりを受け、保険手続に関する利便性を向上させるため、契約者さま向けWebサービス(マイページ)において機能を拡充し、2021年5月から契約者貸付請求、同年10月から入院・手術保険金請求について、所定の条件を満たした場合にインターネット上での手続きが可能になったほか、同月から保険料払込証明書のダウンロードが可能になりました。

 

※1 勧誘方針とは、生命保険の使命等を踏まえた高い倫理観に基づき保障を提供するという、プリンシプルベースのお客さま本位の理念に基づく方針です。

※2 かんぽ営業スタンダードとは、勧誘方針に基づく真のお客さま本位の営業活動の実践に向けた行動原則です。

※3 Well-beingとは、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、全てが満たされた状態にあることです。

 

これらの取組みをしてまいりましたが、当連結会計年度、生命保険業におきましては、金銭の信託運用益の増加等により資産運用収益は増加したものの、保有契約の減少による保険料等収入の減少等により、経常収益は6,454,208百万円(前期比332,018百万円減)となりました。また、保有契約が大きく減少したものの、事業費が減少し、加えて、順ざやが増加したこと等から、経常利益は356,113百万円(前期比10,377百万円増)となりました。

 

かんぽ生命保険における保険引受及び資産運用の状況などの詳細な状況については、下記「(参考)生命保険業を行う当社の子会社であるかんぽ生命保険の状況」に記載のとおりであります。

 

 

(参考)生命保険業を行う当社の子会社であるかんぽ生命保険の状況

(下表(a)イ.~ニ.の個人保険及び個人年金保険には、かんぽ生命保険が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約を含みません。)

 

(a) 保険引受及び資産運用の状況
イ.保有契約高明細表

 

 

(単位:千件、百万円)

区分

前事業年度末

当事業年度末

件数

金額

件数

金額

個人保険

15,893

45,912,230

14,740

42,283,881

個人年金保険

1,009

1,563,865

850

1,242,707

 

(注) 個人年金保険の金額は、年金支払開始前契約の年金支払開始時における年金原資と年金支払開始後契約の責任準備金額を合計したものであります。

 

ロ.新契約高明細表

 

 

(単位:千件、百万円)

区分

前事業年度

当事業年度

件数

金額

新契約

転換による
純増加

件数

金額

新契約

転換による
純増加

個人保険

124

390,355

390,355

173

577,452

577,413

39

個人年金保険

0

176

176

0

202

202

 

(注) 1.件数は、新契約件数に転換後契約件数を加えた数値であります。なお、転換後契約とは、既契約の転換によって成立した契約であります。

2.個人年金保険の金額は、年金支払開始時における年金原資であります。

 

ハ.保有契約年換算保険料明細表

 

 

(単位:百万円)

区分

前事業年度末

当事業年度末

個人保険

2,840,092

2,584,325

個人年金保険

357,160

301,878

合計

3,197,252

2,886,204

 

うち医療保障・
生前給付保障等

364,682

339,817

 

(注) 1.年換算保険料とは、1回あたりの保険料について保険料の支払方法に応じた係数を乗じ、1年あたりの保険料に換算した金額であります(一時払契約等は、保険料を保険期間等で除した金額)。

2.医療保障・生前給付保障等には、医療保障給付(入院給付、手術給付等)、生前給付保障給付(特定疾病給付、介護給付等)、保険料払込免除給付(障がいを事由とするものは除きます。特定疾病罹患、介護等を事由とするものを含みます。)等に該当する部分の年換算保険料を計上しております。

 

 

ニ.新契約年換算保険料明細表

 

 

(単位:百万円)

区分

前事業年度

当事業年度

個人保険

30,643

46,175

個人年金保険

16

16

合計

30,659

46,192

 

うち医療保障・
生前給付保障等

1,459

2,173

 

(注) 1.年換算保険料とは、1回あたりの保険料について保険料の支払方法に応じた係数を乗じ、1年あたりの保険料に換算した金額であります(一時払契約等は、保険料を保険期間等で除した金額)。

2.医療保障・生前給付保障等には、医療保障給付(入院給付、手術給付等)、生前給付保障給付(特定疾病給付、介護給付等)、保険料払込免除給付(障がいを事由とするものは除きます。特定疾病罹患、介護等を事由とするものを含みます。)等に該当する部分の年換算保険料を計上しております。

3.新契約年換算保険料は、新契約に係る年換算保険料に、既契約の転換による転換前後の年換算保険料の純増加分を加えた数値であります。

 

(参考)かんぽ生命保険が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約の状況

(a) 保有契約高

 

 

(単位:千件、百万円)

区分

前事業年度末

当事業年度末

件数

保険金額・年金額

件数

保険金額・年金額

保険

8,945

23,634,803

8,062

21,261,390

年金保険

1,426

478,926

1,328

440,490

 

(注) 計数は、郵政管理・支援機構における公表基準によるものであります。

 

(b) 保有契約年換算保険料

 

 

(単位:百万円)

区分

前事業年度末

当事業年度末

保険

1,058,047

954,668

年金保険

471,602

437,567

合計

1,529,649

1,392,236

 

うち医療保障・
生前給付保障等

304,432

287,264

 

(注) かんぽ生命保険が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約について、上記ハ.に記載しております個人保険及び個人年金保険の保有契約年換算保険料と同様の計算方法により、かんぽ生命保険が算出した金額であります。

 

 

ホ.一般勘定資産の構成

区分

前事業年度末

当事業年度末

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

現預金・コールローン

1,459,749

2.1

1,305,070

1.9

買現先勘定

2,120,137

3.2

債券貸借取引支払保証金

2,585,087

3.7

買入金銭債権

276,772

0.4

39,543

0.1

商品有価証券

金銭の信託

4,189,294

6.0

4,521,912

6.7

有価証券

55,274,594

78.8

53,418,564

79.5

 

公社債

48,264,456

68.8

46,747,946

69.6

 

株式

404,577

0.6

425,553

0.6

 

外国証券

4,632,376

6.6

4,332,519

6.4

 

 

公社債

4,479,823

6.4

4,181,527

6.2

 

 

株式等

152,552

0.2

150,992

0.2

 

その他の証券

1,973,184

2.8

1,912,544

2.8

貸付金

4,964,087

7.1

4,251,956

6.3

 

保険約款貸付

161,419

0.2

140,980

0.2

 

一般貸付

996,127

1.4

965,872

1.4

 

機構貸付

3,806,540

5.4

3,145,103

4.7

不動産

88,707

0.1

80,572

0.1

 

うち投資用不動産

繰延税金資産

904,333

1.3

1,005,357

1.5

その他

431,615

0.6

432,112

0.6

貸倒引当金

△384

△0.0

△379

△0.0

合計

70,173,857

100.0

67,174,848

100.0

 

うち外貨建資産

5,397,078

7.7

5,466,745

8.1

 

(注) 1.機構貸付とは、郵政管理・支援機構(簡易生命保険勘定)への貸付であります。

2.不動産については、土地・建物・建設仮勘定を合計した金額を計上しております。

 

ヘ.一般勘定資産の資産別運用利回り

 

 

(単位:%)

区分

前事業年度

当事業年度

現預金・コールローン

0.00

0.00

買現先勘定

債券貸借取引支払保証金

買入金銭債権

0.14

0.24

商品有価証券

金銭の信託

2.86

3.49

有価証券

1.57

1.63

 

うち公社債

1.51

1.49

 

うち株式

2.72

4.63

 

うち外国証券

2.16

2.95

貸付金

1.82

1.83

 

うち一般貸付

1.09

1.15

不動産

一般勘定計

1.51

1.61

 

うち海外投融資

2.15

2.95

 

(注) 1.利回り計算式の分母は帳簿価額ベースの日々平均残高、分子は経常損益中、資産運用収益-資産運用費用として算出した利回りであります。

2.一般勘定計には、有価証券信託に係る資産を含めております。

3.海外投融資とは、外貨建資産と円建資産の合計であります。

 

(b) 基礎利益

基礎利益は、保険料等収入、保険金等支払金、事業費等の保険関係の収支と、利息及び配当金等収入を中心とした運用関係の収支からなる、生命保険会社の基礎的な期間損益の状況を表す指標であります。

かんぽ生命保険の当事業年度における基礎利益は、4,371億円となりました。

 

(経常利益等の明細(基礎利益))

 

 

(単位:百万円)

項目

前事業年度

当事業年度

基礎利益

(A)

421,943

437,123

キャピタル収益

 

115,775

162,375

 金銭の信託運用益

87,593

114,553

 売買目的有価証券運用益

 有価証券売却益

20,422

26,942

 金融派生商品収益

 為替差益

7,759

20,879

 その他キャピタル収益

キャピタル費用

132,878

164,085

 金銭の信託運用損

 売買目的有価証券運用損

 有価証券売却損

32,789

51,108

 有価証券評価損

 金融派生商品費用

21,604

7,398

 為替差損

 その他キャピタル費用

78,484

105,578

キャピタル損益

(B)

△17,102

△1,710

キャピタル損益含み基礎利益

(A)+(B)

404,840

435,413

臨時収益

186,023

 再保険収入

 危険準備金戻入額

186,023

 個別貸倒引当金戻入額

 その他臨時収益

臨時費用

245,841

79,651

 再保険料

 危険準備金繰入額

79,651

 個別貸倒引当金繰入額

 特定海外債権引当勘定繰入額

 貸付金償却

 その他臨時費用

245,841

臨時損益

(C)

△59,818

△79,651

経常利益

(A)+(B)+(C)

345,022

355,762

 

(注) 1.金銭の信託に係るインカム・ゲインに相当する額(前事業年度:78,484百万円、当事業年度:105,578百万円)を「その他キャピタル費用」に計上し、基礎利益に含めております。

2.「その他臨時費用」には、保険業法施行規則第69条第5項の規定により責任準備金を追加して積み立てた額(前事業年度:245,841百万円)を記載しております。

 

 

(c) かんぽ生命保険の連結ソルベンシー・マージン比率

生命保険会社は将来の保険金等の支払いに備えて責任準備金を積み立てており、通常予測できる範囲のリスクについては責任準備金の範囲内で対応できます。

ソルベンシー・マージン比率とは、大災害や株価の大暴落など、通常の予測を超えて発生するリスクに対応できる「支払余力」を有しているかどうかを判断するための行政監督上の指標の一つであります。

この比率が200%を下回った場合は、当局によって早期是正措置がとられます。逆にこの比率が200%以上であれば、健全性の一つの基準を満たしていることになります。

当連結会計年度末におけるかんぽ生命保険の連結ソルベンシー・マージン比率は1,045.5と高い健全性を維持しております。

 

 

(単位:百万円)

項目

前連結会計年度末

当連結会計年度末

ソルベンシー・マージン総額

(A)

6,216,257

5,858,523

 

資本金等

 

1,763,280

1,526,526

 

価格変動準備金

 

904,816

972,606

 

危険準備金

 

1,611,343

1,690,994

 

異常危険準備金

 

 

一般貸倒引当金

 

36

32

 

(その他有価証券評価差額金(税効果控除前)・繰延ヘッジ
損益(税効果控除前))×90%(マイナスの場合100%)

 

1,283,545

1,086,306

 

土地の含み損益×85%(マイナスの場合100%)

 

2,203

1,809

 

未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の合計額

 

4,835

3,873

 

全期チルメル式責任準備金相当額超過額

 

364,059

299,478

 

負債性資本調達手段等

 

300,000

300,000

 

全期チルメル式責任準備金相当額超過額及び負債性
資本調達手段等のうち、マージンに算入されない額

 

 

控除項目

 

△17,862

△23,104

 

その他

 

リスクの合計額

〔{(R12+R52)1/2+R8+R9}2+(R2+R3+R7)21/2+R4+R6

(B)

1,108,789

1,120,660

 

保険リスク相当額

130,961

125,154

 

一般保険リスク相当額

 

巨大災害リスク相当額

 

第三分野保険の保険リスク相当額

49,371

44,708

 

少額短期保険業者の保険リスク相当額

 

予定利率リスク相当額

131,404

125,089

 

最低保証リスク相当額

 

資産運用リスク相当額

937,296

957,278

 

経営管理リスク相当額

24,980

25,044

ソルベンシー・マージン比率 

(A)/{(1/2)×(B)}×100

 

1,121.2%

1,045.5

 

(注)  保険業法施行規則第86条の2、第88条及び平成23年金融庁告示第23号の規定に基づいて算出しております。

 

 

(d) かんぽ生命保険のEV
イ.EVの概要

ⅰ EVについて

エンベディッド・バリュー(以下「EV」といいます。)は対象事業に割り当てられた、資産及び負債から生じる株主への分配可能な利益の価値の見積りであります。ただし、将来の新契約から生じる価値は含みません。この価値は、修正純資産及び保有契約価値で構成されるものであります。

修正純資産は株主に帰属すると考えられる純資産(時価)であり、必要資本とフリー・サープラスで構成されるものであります。

保有契約価値は、保有契約及び保有契約に係る資産から将来発生すると見込まれる株主への分配可能な利益の評価日時点の現在価値であり、必要資本を維持するための費用等を控除したものであります。

生命保険契約は、一般に販売時に多くのコストが発生するため、一時的には損失が発生するものの、契約が継続することで、将来にわたり生み出される利益によりそのコストを回収することが期待される収支構造となっております。現行の法定会計では、このような収支構造をそのまま各年度の損益として把握しておりますが、EVは、全保険期間を通じた損益を現在価値で評価することとなるため、現行の法定会計による財務情報では不足する情報を補うことができる指標の一つと考えております。

 

ⅱ EEVについて

EVの開示に関する一貫性と透明性の改善を図る目的で、2004年5月にヨーロッパの主要保険会社のCFO(最高財務責任者)の集まりである、CFOフォーラムが、ヨーロピアン・エンベディッド・バリュー(以下「EEV」といいます。)原則及び指針(ガイダンス)を制定いたしました。

2016年5月には、CFOフォーラムによってEEV原則の改正が公表され、EVに2016年1月から施行された欧州ソルベンシーⅡ等の計算で用いた計算手法及び前提の使用が許容されるようになりました。

 

ⅲ EEVの計算手法

今回のEEVの計算には、市場整合的手法を用いております。この手法は、資産又は負債から発生するキャッシュ・フローを市場で取引されている金融商品と整合的に評価するものであります。

 

ロ.簡易生命保険契約について

かんぽ生命保険は、郵政民営化法に基づき、2007年10月1日に発足しました。また、2007年9月末までに契約された簡易生命保険契約は、郵政管理・支援機構に承継されるとともに、郵政管理・支援機構が負う保険責任のすべてについて、かんぽ生命保険が受再しております。

かんぽ生命保険は、郵政管理・支援機構との再保険契約において、簡易生命保険契約を他の保険契約と区分して管理すること(簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金も区分して管理すること)、簡易生命保険契約から生じた利益(危険準備金及び価格変動準備金の戻入による利益も含んでおります。)も区分して管理すること、及び郵政管理・支援機構が簡易生命保険契約に対して既に約款で約束している確定配当所要額と再保険損益(確定配当所要額及び法人税等を除いたこの区分における利益)の8割の合計額を、郵政管理・支援機構へ再保険配当として支払うことを定めております。EEVの計算においては、この郵政管理・支援機構への再保険配当を差し引いた後の利益を反映しております。

このように郵政管理・支援機構への再保険配当の原資に、簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金の戻入による利益が含まれることから、簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金は修正純資産には含めておらず、将来において戻入する前提で保有契約価値に含めて計算しております。

 

 

ハ.EEVの計算結果

かんぽ生命保険のEEVは以下のとおりであります。

 

 

(単位:億円)

 

前事業年度末

当事業年度末

増減

EEV

40,262

36,189

△4,072

 

修正純資産

23,768

20,927

△2,840

 

保有契約価値

16,493

15,261

△1,231

 

 

 

 

 

 

 

前事業年度

当事業年度

増減

新契約価値

△127

△115

11

 

 

ⅰ 修正純資産

修正純資産は、資産の市場価値のうち、契約者に対する負債及びその他の負債の価値を超過する部分であり、株主に帰属すると考えられる価値であります。2021年5月に実施した自己株式取得による減少及び金利上昇に伴う債券の含み損益の減少を主な理由として、当事業年度末における修正純資産は前事業年度末から減少しております。修正純資産の内訳は以下のとおりであります。

 

 

(単位:億円)

 

前事業年度末

当事業年度末

増減

修正純資産

23,768

20,927

△2,840

 

純資産の部計(注1)

18,064

15,448

△2,615

 

価格変動準備金(注2)

2,497

2,774

277

 

危険準備金(注2)

4,816

4,877

60

 

その他(注3)

609

△41

△651

 

上記項目に係る税効果

△2,218

△2,131

87

 

(注) 1.計算対象に子会社を含めているため、かんぽ生命保険の連結貸借対照表の純資産の部合計を計上しております。ただし、その他の包括利益累計額合計を除いております。また、自己株式に計上している株式給付信託(BBT)が保有するかんぽ生命保険の株式の帳簿価額を加えております。

2.簡易生命保険契約に係る部分を除いております。

3.保険契約に係らない有価証券、貸付金及び不動産の含み損益、一般貸倒引当金、退職給付の未積立債務(未認識過去勤務費用及び未認識数理計算上の差異)並びに劣後債の含み損益を計上しております。

 

当事業年度末の修正純資産を計算する際に除いた保険契約に係る部分は以下のとおりであります。

 

 

(単位:億円)

 

会社合計

保険契約に
係る部分

修正純資産
①-②

修正純資産

77,663

56,736

20,927

 

純資産の部計(注1)

15,448

15,448

 

価格変動準備金(注2)

9,726

6,951

2,774

 

危険準備金(注2)

16,909

12,032

4,877

 

その他(注3)

59,583

59,624

△41

 

上記項目に係る税効果

△24,003

△21,872

△2,131

 

(注) 1.かんぽ生命保険の連結貸借対照表の純資産の部合計を計上しております。ただし、その他の包括利益累計額合計を除いております。また、自己株式に計上している株式給付信託(BBT)が保有するかんぽ生命保険の株式の帳簿価額を加えております。

2.保険契約に係る部分(②)は、簡易生命保険契約に係る部分を計上しております。「ロ.簡易生命保険契約について」をご参照ください。

3.有価証券、貸付金及び不動産の含み損益、一般貸倒引当金、退職給付の未積立債務(未認識過去勤務費用及び未認識数理計算上の差異)並びに劣後債の含み損益を計上しております。

 

 

ⅱ 保有契約価値

保有契約価値は、保有契約の評価日時点における価値を表したもので、保有契約及び保有契約に係る資産から将来発生すると見込まれる株主への分配可能な利益を現在価値に割り引いております。ニ.前事業年度末EEVからの変動要因」に記載のとおり、前提条件(経済前提)と実績の差異を主な理由として、当事業年度末における保有契約価値は前事業年度末から減少しております。保有契約価値の内訳は以下のとおりであります。

将来利益の計算において保険契約に係る資産は簿価評価しております。また、簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金が将来において戻入する前提で、その戻入による利益を含めて計算しております。「ロ.簡易生命保険契約について」をご参照ください。

 

 

(単位:億円)

 

前事業年度末

当事業年度末

増減

保有契約価値

16,493

15,261

△1,231

 

確実性等価将来利益現価

20,541

19,109

△1,431

 

オプションと保証の時間価値

△2,323

△2,174

149

 

必要資本を維持するための費用

△0

△0

0

 

ヘッジ不能リスクに係る費用

△1,724

△1,674

50

 

 

ⅲ 新契約価値

新契約価値は、当期間に獲得した新契約(条件付解約による加入契約及び転換契約については正味増加分のみ)の契約獲得時点における価値を表したものであります。

当事業年度の新契約価値は前事業年度から増加しているものの、当事業年度において新契約量の規模が小さい一方、新契約獲得にはその多寡によらない一定の事業費等が必要となるため、当事業年度の新契約価値はマイナスとなります。新契約価値の内訳は以下のとおりであります。

 

 

(単位:億円)

 

前事業年度

当事業年度

増減

新契約価値

△127

△115

11

 

確実性等価将来利益現価

△110

△73

36

 

オプションと保証の時間価値

△11

△33

△21

 

必要資本を維持するための費用

△0

△0

0

 

ヘッジ不能リスクに係る費用

△5

△7

△2

 

 

なお、新契約マージン(新契約価値の保険料収入現価に対する比率)は以下のとおりであります。 

 

 

(単位:億円)

 

前事業年度

当事業年度

増減

新契約価値

△127

△115

11

保険料収入現価(注)

2,523

3,624

1,100

新契約マージン

△5.05%

△3.19%

1.86ポイント

 

(注) 将来の収入保険料を、新契約価値の計算に用いたリスク・フリー・レートで割り引いております。

 

 

ニ.前事業年度末EEVからの変動要因 

 

 

 

(単位:億円)

 

修正純資産

保有契約価値

EEV

前事業年度末EEV

23,768

16,493

40,262

ⅰ 前事業年度末EEVの調整

△4,196

△4,196

前事業年度末EEV(調整後)

19,572

16,493

36,065

ⅱ 当事業年度新契約価値

△115

△115

ⅲ 期待収益(リスク・フリー・レート分)

△20

308

288

ⅳ 期待収益(超過収益分)

30

774

804

ⅴ 保有契約価値からの移管

1,396

△1,396

 

うち前事業年度末保有契約

1,460

△1,460

 

うち当事業年度新契約

△63

63

ⅵ 前提条件(非経済前提)と実績の差異

379

△68

310

ⅶ 前提条件(非経済前提)の変更

165

165

ⅷ 前提条件(経済前提)と実績の差異

△431

△898

△1,329

当事業年度末EEV

20,927

15,261

36,189

 

 

ⅰ 前事業年度末EEVの調整

かんぽ生命保険は当事業年度において自己株式3,588億円の取得及び株主配当金607億円の支払いを行っており、修正純資産がその分減少しております。

 

ⅱ 当事業年度新契約価値

新契約価値は、当事業年度に新契約を獲得したことによる契約獲得時点における価値を表したものであり、契約獲得に係る費用を控除した後の金額が反映されております。当事業年度において新契約量の規模が小さい一方、新契約獲得にはその多寡によらない一定の事業費等が必要となるため、新契約価値はマイナスになっております。

 

ⅲ 期待収益(リスク・フリー・レート分)

保有契約価値の計算にあたっては、将来の期待収益をリスク・フリー・レートで割り引いておりますので、時間の経過とともに割引の影響が解放されます。これには、オプションと保証の時間価値、必要資本を維持するための費用及びヘッジ不能リスクに係る費用のうち当事業年度分の解放を含んでおります。修正純資産からは、対応する資産からリスク・フリー・レート(△0.129%)分に相当する収益が発生しております。

 

ⅳ 期待収益(超過収益分)

EEVの計算にあたっては、将来の期待収益としてリスク・フリー・レートを用いておりますが、実際の会社はリスク・フリー・レートを超過する利回りを期待しております。この項目は、その期待される超過収益を表しております。

 

ⅴ 保有契約価値からの移管

当事業年度に実現が期待されていた利益が、保有契約価値から修正純資産に移管されます。これには、前事業年度末の保有契約から期待される当事業年度の利益と、当事業年度に獲得した新契約からの、契約獲得に係る費用を含めた当事業年度の損益が含まれております。

これらは保有契約価値から修正純資産への振替えであり、EEVの金額には影響しません。

 

ⅵ 前提条件(非経済前提)と実績の差異

前事業年度末の保有契約価値の計算に用いた前提条件(非経済前提)と、当事業年度の実績の差額であります。

 

 

ⅶ 前提条件(非経済前提)の変更

前提条件(非経済前提)を更新したことにより、翌事業年度以降の収支が変化することによる影響であります。

 

ⅷ 前提条件(経済前提)と実績の差異

市場金利やインプライド・ボラティリティ等の経済前提が、前事業年度末EEV計算に用いたものと異なることによる影響であります。当該影響は、当事業年度の実績及び翌事業年度以降の見積りの変更を含んでおります。

主に金利上昇に伴う債券の含み損益の減少により、修正純資産は431億円減少しました。

主に外国金利上昇に伴う外国債券の含み損益の減少により、保有契約価値は898億円減少しました。

 

 

ホ.感応度(センシティビティ)

前提条件を変更した場合のEEVの感応度は以下のとおりであります。感応度は、一度に1つの前提のみを変化させることとしており、同時に2つの前提を変化させた場合の感応度は、それぞれの感応度の合計とはならないことにご注意ください。

 

(単位:億円)

前提条件

EEV

増減額

当事業年度末EEV

36,189

感応度1:リスク・フリー・レート50bp上昇

35,718

△471

感応度2:リスク・フリー・レート50bp低下

36,206

17

感応度3:リスク・フリー・レート50bp低下(低下後の下限なし)

36,044

△144

感応度4:株式・不動産価値10%下落

34,746

△1,443

感応度5:事業費率(維持費)10%減少

38,171

1,981

感応度6:解約失効率10%減少

36,381

192

感応度7:保険事故発生率(死亡保険)5%低下

37,200

1,010

感応度8:保険事故発生率(年金保険)5%低下

35,415

△774

感応度9:必要資本を法定最低水準に変更

36,189

0

感応度10:株式・不動産のインプライド・ボラティリティ25%上昇

35,580

△609

感応度11:金利スワップションのインプライド・ボラティリティ25%上昇

35,425

△764

 

 

感応度1から4について、修正純資産の増減額は以下のとおりであります。また、感応度5から11については、保有契約価値のみの増減額となります。

 

 

(単位:億円)

前提条件

増減額

(参考)
会社合計の
増減額(注)

感応度1:リスク・フリー・レート50bp上昇

△981

△21,897

感応度2:リスク・フリー・レート50bp低下

613

14,351

感応度3:リスク・フリー・レート50bp低下(低下後の下限なし)

1,061

23,864

感応度4:株式・不動産価値10%下落

△59

△2,839

 

(注) 参考値として、保有契約に係る資産の含み損益も加えた増減額(税引後に換算)を示しております。なお、EEVの計算にあたって、保険契約に係る部分の資産の含み損益については、修正純資産ではなく、保有契約価値の計算に含めて評価しております。

 

 

当事業年度において新契約量の規模が小さく、新契約価値の感応度に重要性がないため、算定しておりません。

 

 

 

ⅰ 感応度1:リスク・フリー・レート50bp上昇

(ⅰ)リスク・フリー・レート(フォワード・レート)が各年限とも50bp上昇した場合の影響を表しております。金利の変動により時価が変動する債券・貸付金等を再評価するとともに、将来の運用利回りや割引率を変動させて保有契約価値を再計算しております。

(ⅱ)リスク・フリー・レートについて、補外開始年度以降は終局金利を変えずに補外しております。

 

ⅱ 感応度2:リスク・フリー・レート50bp低下

(ⅰ)リスク・フリー・レート(フォワード・レート)が各年限とも50bp低下した場合の影響を表しております。なお、50bp低下によりリスク・フリー・レートが0%を下回る場合は0%としております。ただし、50bp低下前のリスク・ フリー・レートが0%を下回る場合はその値をそのまま使用しております。

(ⅱ)リスク・フリー・レートについて、補外開始年度以降は終局金利を変えずに補外しております。

 

 

ⅲ 感応度3:リスク・フリー・レート50bp低下(低下後の下限なし)

(ⅰ)リスク・フリー・レート(フォワード・レート)が各年限とも50bp低下した場合の影響を表しております。なお、感応度2と異なり、リスク・フリー・レートの正負を判定せず、下限を設けずに50bp低下させております。

(ⅱ)リスク・フリー・レートについて、補外開始年度以降は終局金利を変えずに補外しております。

 

ⅳ 感応度4:株式・不動産価値10%下落

株式及び不動産の評価日時点の価格が10%下落した場合の影響を表しております。

 

ⅴ 感応度5:事業費率(維持費)10%減少

事業費率(契約維持に係るもの)が10%減少した場合の影響を表しております。

 

ⅵ 感応度6:解約失効率10%減少

解約失効率が10%減少(基本となる解約失効率に90%を乗じた水準)した場合の影響を表しております。

 

ⅶ 感応度7:保険事故発生率(死亡保険)5%低下

死亡保険について、保険事故発生率(死亡率・罹患率)が5%低下(基本となる保険事故発生率に95%を乗じた水準)した場合の影響を表しております。

 

ⅷ 感応度8:保険事故発生率(年金保険)5%低下

年金保険について、保険事故発生率が5%低下(基本となる保険事故発生率に95%を乗じた水準)した場合の影響を表しております。

 

ⅸ 感応度9:必要資本を法定最低水準に変更

必要資本を法定最低水準(ソルベンシー・マージン比率200%水準)に変更した場合の影響を表しております。

 

ⅹ 感応度10:株式・不動産のインプライド・ボラティリティ25%上昇

オプションと保証の時間価値の計算に使用する、株式オプションのインプライド・ボラティリティが25%上昇した場合の影響を表しております。

 

ⅺ 感応度11:金利スワップションのインプライド・ボラティリティ25%上昇

オプションと保証の時間価値の計算に使用する、金利スワップションのインプライド・ボラティリティが25%上昇した場合の影響を表しております。

 

ヘ.注意事項

EEVの計算においては、リスクと不確実性を伴う将来の見通しを含んだ多くの前提条件を使用し、それらの多くは個別会社の管理能力を超えた領域に属するものであります。また、将来の実績がEEVの計算に使用した前提条件と大きく異なる場合もあり得ます。

また、EEVの計算において新型コロナウイルス感染症の潜在的な影響を直接的には考慮しておりません。

これらの理由により、本EEV開示は、EEV計算に用いられた将来の税引後利益が達成されることを表明するものではなく、使用にあたっては、十分な注意を払っていただく必要があります。

 

ト.その他の特記事項

かんぽ生命保険では、保険数理に関する専門知識を有する第三者機関(アクチュアリー・ファーム)に、EEVについて検証を依頼し、意見書を受領しております。

 

 

⑥ その他

上記各報告セグメントにおける事業のほか、病院事業については、地域医療機関との連携や救急患者の受入の強化等による増収対策、業務の効率化等による経費削減等、個々の病院の状況を踏まえた経営改善を進めているところですが、昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた患者数の減少等の影響はあるものの、営業収益14,020百万円(前期比978百万円増)、営業損失3,687百万円(前期は3,893百万円の営業損失)となりました。今後も引き続き上記増収対策や経費削減等、個々の病院の状況を踏まえた経営改善に取り組みます。

また、宿泊事業については、「かんぽの宿」が、ウィズ/アフターコロナ社会の中、引き続き地域の貴重な集客拠点・雇用の場として存在し続けるためには、ホテル・旅館の運営に実績又は意欲を有する事業者等への譲渡が最善と判断し、譲渡先の選定を進めてまいりました。その結果、かんぽの宿は、2022年4月1日及び同月5日をもって、運営していた33施設のうち32施設を事業譲渡いたしました。当連結会計年度の取組みとしては、営業推進態勢の強化やサービス水準向上による魅力ある宿づくりを継続的に進めるとともに、費用管理による経費削減等の経営改善に取り組んできたところですが、緊急事態宣言の発出に伴うかんぽの宿の休業があった昨年度と比べると経営状況が改善されたものの、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言等を受け、利用制限による利用者数の減少等の理由から、営業収益は8,728百万円(前期比1,820百万円増)、営業損失は7,685百万円(前期は11,573百万円の営業損失)となりました。なお、2022年3月「かんぽの宿有馬」の入浴施設において、同施設を利用された方のうち2名がレジオネラ症を発症されました。「かんぽの宿有馬」は2022年4月5日付で株式会社マイステイズ・ホテル・マネジメントに事業譲渡されましたが、同社と連携を取りながら、引き続き保健所の指導に沿って、再発防止に努めてまいります。

不動産事業については、当社の子会社である日本郵政不動産株式会社において「ホテル メルパルク」の賃貸・管理事業を行うとともに、グループ外不動産の取得や蔵前不動産開発(オフィス、高齢者施設、賃貸住宅、物流施設他)等に当連結会計年度に41,167百万円の投資を行いました。また、日本郵政不動産株式会社は2021年8月2日に郵船不動産株式会社の発行済株式51を取得し、同社を子会社化(2022年4月には「JPプロパティーズ株式会社」に商号変更)するとともに、2022年4月1日に日本郵便株式会社の100子会社であったJPビルマネジメント株式会社の株式の全部を取得し、同社を子会社化しております。今般の新型コロナウイルス感染症の拡大の影響によるテナント賃料の減免等や空室率の上昇、開発中の案件における竣工時期の遅延等が想定されますので、今後のマーケットへの影響、動向を引き続き注視し、必要な対策を適時適切に実施しつつ、不動産事業を慎重に進めてまいります。

投資事業については、当社の子会社である日本郵政キャピタル株式会社において、当社グループの新規事業の種を探すため、ネットワーク、ブランド力等を活用して成長が期待できる企業への出資(当連結会計年度14件、約72億円)を行い、出資先企業と当社グループとの連携を進めました。今後も、投資先の価値や将来の成長性を見極めながら、出資等に取り組みます。

なお、収益認識会計基準等の適用により、当連結会計年度の経常収益が534百万円減少し、セグメント利益が9百万円減少しております。

 

 

(3) キャッシュ・フローの状況及び分析・検討

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は当期首から5,781,269百万円増加し、68,419,223百万円となりました。

① 営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動においては、銀行業における資金の運用や調達、生命保険業における保険料の収入や保険金の支払等の結果、4,984,168百万円の収入(前期比1,980,987百万円の収入減)となりました。

主な要因として、コールマネー等の増加4,575,165百万円、貯金の増加3,746,412百万円や責任準備金の減少2,864,265百万円があげられます。

 

② 投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動においては、銀行業及び生命保険業における有価証券の売却、償還による収入等及び有価証券の取得による支出等の結果、1,413,220百万円の収入(前期比601,981百万円の収入減)となりました。

主な要因として、有価証券の償還による収入38,079,332百万円や有価証券の売却による収入7,159,507百万円、有価証券の取得による支出44,871,665百万円があげられます。

 

③ 財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動においては、自己株式の取得等の結果、621,040百万円の支出(前期は50,578百万円の収入)となりました。

主な要因として、自己株式の取得による支出345,450百万円、配当金の支払による減少202,176百万円があげられます。

 

④ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

中期経営計画において、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進やユニバーサルサービスを含むコアビジネスの充実強化等、グループの成長に資する投資として、デジタルサービスの拡充やデジタル郵便局実現等に向けた戦略的なIT投資や、グループ保有不動産等の不動産投資を計画しております。

また、上記の他に、当社グループ・グループ各社の企業価値向上に資する幅広い分野での資本提携やM&Aも実施いたします。なお、それらの実行にあたっては、投資判断基準等に照らして慎重に検討し、適切と判断したものを実施することとしております。

その財源は、既存のキャッシュ・フローのほか、潤沢な借入余力を活かした借入金や金融2社株式を売却した場合の売却手取金を想定しております。

なお、現在予定している設備の新設計画としては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1) 重要な設備等の新設等」の記載をご参照ください。

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産・負債及び収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要とします。

当社グループは、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

特に以下の重要な会計上の見積りが当社グループの連結財務諸表に大きな影響を及ぼす可能性があると考えております。

 

 ① 金融商品の時価評価

当社グループの有価証券の一部及びデリバティブ取引は、時価法に基づいて評価しております。時価は、公表された相場価格に基づいて算定しておりますが、公表された相場価格がない場合には合理的な見積りに基づいて算定された価額によっております。

将来、見積りに影響する新たな事実の発生等により、見積額は変動する可能性があります。

金融商品の時価の算定方法は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(金融商品関係)に、金融商品のうち有価証券の時価評価に用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

 ② 有価証券の減損

当社グループの金銭の信託で運用する有価証券を含め売買目的有価証券以外の有価証券のうち、時価又は実質価額が著しく下落したものについては合理的な基準に基づいて減損処理を行っております。株式市場の悪化等、将来の金融市場の状況によっては、多額の減損損失を計上する可能性があります。

 

 ③ 固定資産の減損

当社グループは、原則として内部管理上独立した業績報告が行われる単位を基礎として、資産のグルーピングを行っております。資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回った場合は、帳簿価額を回収可能価額まで減額しております。なお、資産グループの回収可能価額は正味売却価額と使用価値のいずれか高い価額としております。正味売却価額は第三者により合理的に算定された評価額等により、使用価値は将来キャッシュ・フローに基づき合理的に算定しております。

固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているため、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件が変更された場合、固定資産の減損を実施し、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。

 

 ④ 繰延税金資産の回収可能性の評価

当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の判断に際しては、将来の課税所得を合理的に見積っております。

繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存するため、将来、当社グループを取り巻く経営環境に大きな変化があった場合等、その見積額が変動した場合は、繰延税金資産の回収可能性が変動する可能性があります。

 

 ⑤ 責任準備金の積立方法

当社グループは、保険契約に基づく将来における債務の履行に備えるため、責任準備金を積み立てております。

責任準備金の計算に使用される予定死亡率、予定利率及び予定事業費率などの基礎率は合理的であると考えておりますが、実際の結果が著しく乖離した場合や環境の変化により将来乖離が見込まれる場合には、責任準備金の金額に影響を及ぼす可能性があります。

なお、責任準備金の積立方法は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載のとおりであります。

 

 ⑥ 退職給付債務及び退職給付費用

当社グループの退職給付債務及び退職給付費用は、割引率など将来の退職給付債務算出に用いる数理計算上の前提条件に基づいて算出しております。

このため、実際の結果が前提条件と異なる場合や前提条件の変更が行われた場合には、将来の退職給付債務及び退職給付費用が変動する可能性があります。

なお、退職給付債務等の計算の基礎に関する事項は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(退職給付関係)に、退職給付債務の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

 ⑦ 保険金等支払引当金の計上基準

当社グループの保険金等支払引当金は、お客さまの不利益の解消に向けたご契約調査等による将来の保険金等の支払見込額等を、お客さまのご意向確認等の実績を踏まえ、合理的に見積り計上しておりましたが、当連結会計年度末において、かかる支払見込額等が僅少となったため、計上しておりません。

なお、保険金等支払引当金の計上基準は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載のとおりであります。

 

(5) 連結自己資本比率の状況

銀行持株会社としての当社の連結自己資本比率は、銀行法第52条の25の規定に基づき、銀行持株会社が銀行持株会社及びその子会社の保有する資産等に照らしそれらの自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(平成18年金融庁告示第20号)に定められた算式に基づき、連結ベースについて算出しております。

なお、当社は、国内基準を適用のうえ、信用リスク・アセットの算出においては標準的手法を採用しております。

 

連結自己資本比率(国内基準)

 

(単位:億円、%)

 

当連結会計年度末

1.連結自己資本比率(2/3)

17.21

2.連結における自己資本の額

108,645

3.リスク・アセット等の額

631,236

4.連結総所要自己資本額

25,249

 

(注) 連結総所要自己資本額は、上記3.に記載しているリスク・アセット等の額に4%を乗じた額であります。

 

(6) 目標とする経営指標の達成状況

当社グループにおいては、主要な経営目標として1株当たり当期純利益を採用しており、2022年3月期においては当初業績予想88.91円に対し1株当たり当期純利益131.93円となりました。2022年3月期の経営成績の状況及び分析・検討については、上記「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状の分析 (2) 経営成績の状況及び分析・検討」に示しております。

 

(7) 生産、受注及び販売の状況

当社グループは、郵便・物流事業、郵便局窓口事業、国際物流事業、銀行業及び生命保険業を中心とした広範囲な事業を営んでおり、生産、受注といった区分による表示が困難であることから、「生産、受注及び販売の状況」については、上記「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営成績の状況及び分析・検討」におけるセグメントの業績に関連付けて示しております。

 

 

4 【経営上の重要な契約等】

当社グループの経営上の重要な契約等は、次のとおりであります。

 

(1) 日本郵政グループ協定等

① 日本郵政グループ協定等の締結について

当社は、事業子会社等との間で、グループ協定等を締結しております。

グループ協定等において、当社及び事業子会社等が、グループ共通の理念、方針その他のグループ運営(グループ全体の企業価値の維持・向上のための諸施策の策定及びその遂行をいいます。)に係る基本的事項について合意することにより、金融2社の上場後においても、引き続きグループ会社が相互に連携・協力し、シナジー効果を発揮する体制を維持しております。グループ協定等の締結は、グループ会社、ひいてはグループ全体の企業価値の維持・向上に寄与していると考えております。

 

② ブランド価値使用料について

グループ協定等に基づき、当社は、事業子会社等からブランド価値使用料を受け取っております。ブランド価値使用料は、当社グループに属することにより、当社グループが持つブランド力を自社の事業活動に活用できる利益の対価、すなわち、郵政ブランドに対するロイヤリティの性格を有するものです。

ブランド価値使用料は、当社グループに属することによる利益が事業子会社等の業績に反映されていることを前提とし、事業子会社等が享受する利益が直接的に反映される指標を業績指標として採用し、業績指標に一定の料率を掛けて額を算定することとしており、2022年3月期のブランド価値使用料の総額は130億円です。

なお、主要な子会社のブランド価値使用料の具体的な算定方法及び2022年3月期の金額は次のとおりです。

 

日本郵便

算定方法:連結営業収益(トール社連結及びトールエクスプレスジャパン株式会社分を除く。)(前年度)

 ×0.20%

 金  額:61億円

ゆうちょ銀行

 算定方法:貯金残高(前年度平均残高)×0.0023%

 金  額:43億円

かんぽ生命保険

 算定方法:保有保険契約高(前年度末)×0.0036%

 金  額:25億円

この算定方法は、重大な経済情勢の変化等、特段の事情が生じない限り変更しないこととしております。

 

③ 金融2社株式の処分後のグループ協定等について

郵政民営化法第7条第2項の規定により、当社が保有する金融2社の株式は、その全部を処分することを目指し、金融2社の経営状況、ユニバーサルサービス提供に係る責務の履行への影響等を勘案しつつ、できる限り早期に、処分することとされていますが、当社による金融2社の議決権所有割合にかかわらず、金融2社は、それぞれ日本郵便株式会社法第2条第2項に定める関連銀行又は同条第3項に定める関連保険会社である限り、グループ協定等を維持するものと考えております。

 

 

(2) 銀行窓口業務契約及び保険窓口業務契約(期間の定めのない契約)

日本郵便は、日本郵便株式会社法第5条の責務として、簡易な貯蓄、送金及び債権債務の決済の役務並びに簡易に利用できる生命保険の役務を利用者本位の簡便な方法により郵便局で一体的にかつあまねく全国において公平に利用できるようにするユニバーサルサービス義務を果たすために、ゆうちょ銀行との間で、銀行窓口業務契約を締結(2012年10月1日)するとともに、かんぽ生命保険との間で、保険窓口業務契約を締結(2012年10月1日)しております。

銀行窓口業務契約では、日本郵便が、ゆうちょ銀行を関連銀行として、通常貯金、定額貯金、定期貯金の受入れ及び普通為替、定額小為替、通常払込み、電信振替の取引を内容とする銀行窓口業務を営むこととしております。

保険窓口業務契約では、日本郵便が、かんぽ生命保険を関連保険会社として、普通終身保険、特別終身保険、普通養老保険及び特別養老保険の募集並びにこれらの保険契約に係る満期保険金及び生存保険金の支払の請求の受理の業務を営むこととしております。

なお、本契約は、期限の定めのない契約であり、特段の事由が生じた場合等を除き、当事者の合意がない限り解除することはできないものと定めております。

 

(3) 銀行代理業に係る業務の委託契約及び金融商品仲介業に係る業務の委託契約並びに生命保険募集・契約維持管理業務委託契約

① 銀行代理業に係る業務の委託契約及び金融商品仲介業に係る業務の委託契約(期間の定めのない契約)

日本郵便は、ゆうちょ銀行との間で、銀行代理業に係る業務の委託契約(2007年9月12日(締結)、2008年4月22日(変更)、2012年10月1日(変更)、2021年4月26日(変更))、金融商品仲介業に係る業務の委託契約(2007年9月12日(締結)、2012年10月1日(変更))を締結しております。

日本郵便が、銀行代理業に係る業務の委託契約に基づいて行う業務は、上記(2)の銀行窓口業務契約で定めた業務を含め、銀行代理業務、手形交換業務、告知事項確認業務等であります。

日本郵便が、金融商品仲介業に係る業務の委託契約に基づいて行う業務は、金融商品仲介業務、本人確認事務等であります。

なお、本契約は、期限の定めのない契約であり、契約当事者のいずれか一方から、6カ月前までに、本契約を解除する旨の協議を申し入れることができ、解除について合意にいたらない場合、書面による通知により解除することができるものと定めております。銀行窓口業務に該当する業務については、上記(2)の契約に定めがある場合を除くほかは、本契約の定めるところによります。

 

② 生命保険募集・契約維持管理業務委託契約(期間の定めのない契約)

日本郵便は、かんぽ生命保険との間で、生命保険募集・契約維持管理業務の委託契約を締結(2007年9月12日(締結)、2012年10月1日(変更)、2014年9月30日(変更)、2016年3月31日(変更))しております。

日本郵便が、生命保険募集・契約維持管理業務の委託契約に基づいて行う業務は、上記(2)の保険窓口業務契約で定めた業務を含め、保険契約の締結の媒介、保険金、年金、返戻金、貸付金及び契約者配当金等の支払等であります。

なお、本契約は、期限の定めのない契約であり、契約当事者のいずれか一方から、6カ月前までに、本契約を解除する旨の協議を申し入れることができ、解除について合意にいたらない場合、書面による通知により解除することができるものと定めております。保険窓口業務に該当する業務については、上記(2)の契約に定めがある場合を除くほかは、本契約の定めるところによります。

 

(4) 郵便貯金管理業務委託契約及び簡易生命保険管理業務委託契約等(期間の定めのない契約)

ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険は、郵政管理・支援機構の業務である郵便貯金管理業務(公社から承継した郵便貯金の管理に関する業務等)及び簡易生命保険管理業務(同簡易生命保険契約の管理に関する業務等)の一部(払戻し、利息支払等)について、郵政管理・支援機構とそれぞれ郵便貯金管理業務委託契約、簡易生命保険管理業務委託契約を締結し委託を受けております。

また、ゆうちょ銀行は郵政管理・支援機構との間で郵便貯金資産(郵便貯金管理業務の経理を区分する郵便貯金勘定に属する資産)の運用のための貯金に係る契約を、かんぽ生命保険は郵政管理・支援機構との間で簡易生命保険契約の再保険に係る契約をそれぞれ締結しております。

さらに、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険は、郵政管理・支援機構との間で郵政管理・支援機構が保有する郵便貯金の預金者、簡易生命保険の契約者及び地方公共団体に対する貸付金の総額に相当する額について、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険からの借入金として郵政管理・支援機構がそれぞれ債務を負うものとする契約を締結しております。

なお、郵便貯金管理業務委託契約、簡易生命保険管理業務委託契約及び簡易生命保険契約の再保険に係る契約の変更又は解除は、総務大臣の認可が必要とされております。

 

(5) 郵便貯金管理業務の再委託契約及び簡易生命保険管理業務再委託契約

① 郵便貯金管理業務の再委託契約(期間の定めのない契約)

ゆうちょ銀行は、日本郵便との間で、ゆうちょ銀行が郵政管理・支援機構から受託している郵便貯金管理業務について、日本郵便が郵便貯金管理業務の一部を営むこととする郵便貯金管理業務の再委託契約(2007年9月12日(締結)、2008年9月30日(変更)、2012年10月1日(変更))を締結しております。

なお、本契約は、期間の定めのない契約であり、契約当事者のいずれか一方から、6カ月前までに、本契約を解除する旨の協議を申し入れることができ、書面により本契約の解除を通知することができるものと定めております。

 

② 簡易生命保険管理業務再委託契約(期間の定めのない契約)

かんぽ生命保険は、日本郵便との間で、かんぽ生命保険が郵政管理・支援機構から受託している簡易生命保険管理業務について、日本郵便が簡易生命保険管理業務の一部を営むこととする簡易生命保険管理業務再委託契約(2007年9月12日(締結)、2012年10月1日(変更))を締結しております。

なお、本契約は、期間の定めのない契約であり、契約当事者のいずれか一方から、6カ月前までに、事業運営上の合理的な理由により本契約を解約する旨、書面による通知を行い、解約することができるものと定めております。

 

(6) 総括代理店委託契約(1年ごとの自動更新)

かんぽ生命保険は、かんぽ生命保険を保険者とする生命保険契約の募集を行う簡易郵便局に対する指導・教育等について、日本郵便と総括代理店契約(2007年9月12日(締結)、2012年10月1日(変更))を締結しております。

なお、本契約は、契約当事者のいずれか一方から、6カ月前までに、事業運営上の合理的な理由により本契約を解約する旨、書面による通知を行い、解約することができるものと定められております。また、生命保険募集・契約維持管理業務委託契約(上記(3)②)が解除された場合は、予告なしに解除することができるものと定められております。

 

(参考1) ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険からの委託手数料

日本郵便は、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険との間で、上記(2)、(3)、(5)、(6)に係る業務の対価としての委託手数料の算定方法等を定めております。

ゆうちょ銀行とは、委託手数料支払要領を締結しており、2020年3月期からは基本委託手数料として、平均総預かり資産残高に応じて支払われる「貯金や投資信託等の預かり資産に係る事務等」、送金決済取扱件数に応じて支払われる「送金決済その他役務の提供事務等」の手数料を設定しております。

これに営業目標達成や事務品質の向上を確保するため、成果に見合った「営業・事務報奨」を合わせた手数料となっております。

基本委託手数料は、ゆうちょ銀行での単位業務コストをベースに、日本郵便での取扱実績等に基づき委託業務コストに見合う額を算出し、その前年度からの増減率を、前年度の基本委託手数料に乗じて算出することとしております。

かんぽ生命保険とは、代理店手数料規程等を定めており、募集した新契約に応じて支払われる「新契約手数料」、保有契約件数等に応じて支払われる「維持・集金手数料」、総括代理店契約業務に対して支払われる「総括代理店手数料」が設定されています。

「新契約手数料」には、募集品質の確保を前提に一定基準以上の実績を確保した場合にボーナス手数料等のインセンティブの仕組みを設定する場合があります。2023年3月期においては、2022年3月期に引き続き、募集品質の向上に対するインセンティブの仕組みを実施しております。

また、「維持・集金手数料」には、契約維持管理のための活動促進等を目的にその活動内容に応じたインセンティブ手数料を設定しております。2023年3月期においては、2022年3月期に引き続き、保有契約の維持に対するインセンティブの仕組みを実施しております。

募集手数料は複数年の分割払いとなっており、最初の1年間の支払金額を高く、残りの期間を均等に低く支払うこととしておりましたが、2021年3月期から、契約の継続をより重視するため、最初の1年間の支払金額と残りの期間に支払う金額の比率を変更し、最初の1年間の支払金額を減額し、残りの期間の支払金額を増額しております。維持・集金手数料に設定されている単価は、実地調査に基づく所要時間や、これに係る人件費等を基に算出しております。

なお、2022年3月期内に限り、新しいかんぽ営業体制の構築に向けた準備業務のうち、日本郵便がかんぽ生命保険に代替して実施する業務等について、かんぽ生命保険から日本郵便へ委託手数料が設定されておりました。

 

(参考2) 独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法の一部を改正する法律の概要及び金融2社との業務委託契約への影響

2018年12月1日、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法の一部を改正する法律が施行されました。これにより、2019年4月1日に独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構の名称が「独立行政法人郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構」に変更され、また、郵政管理・支援機構の目的として、「郵便局ネットワークの維持の支援のための交付金を交付することにより、郵政事業に係る基本的な役務の提供の確保を図り、もって利用者の利便の確保及び国民生活の安定に寄与すること」が追加されました。

郵便局ネットワーク維持に要する費用は、従来、日本郵便と関連銀行・関連保険会社との間の契約に基づく委託手数料により賄われていましたが、当該費用のうち、日本郵便が負担すべき額を除くユニバーサルサービス確保のために不可欠な費用は、本法に基づき、2020年3月期から、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険からの拠出金を原資として郵政管理・支援機構から日本郵便に交付される交付金で賄われています。

当該ユニバーサルサービス確保のために不可欠な費用の算定方法は、直近の郵便局ネットワークの維持の状況を基礎とした次の費用の合計額となります。

ア あまねく全国において郵便局でユニバーサルサービスが利用できるようにすることを確保するものとなるように郵便局ネットワークを最小限度の規模の郵便局により構成するものとした場合における人件費、賃借料、工事費その他の郵便局の維持に要する費用、現金の輸送及び管理に要する費用、並びに固定資産税及び事業所税

イ 簡易郵便局で郵政事業に係る基本的な役務が利用できるようにすることを確保するための最小限度の委託に要する費用

当該ユニバーサルサービス確保のために不可欠な費用及び交付金・拠出金の算定等に係る郵政管理・支援機構の事務経費は、郵便窓口業務、銀行窓口業務又は保険窓口業務において見込まれる利用者による郵便局ネットワークの利用の度合等に応じて按分され、銀行窓口業務に係る按分額をゆうちょ銀行が、保険窓口業務に係る按分額をかんぽ生命保険が拠出金として拠出することとなり、拠出金の額は郵政管理・支援機構が年度ごとに算定し、総務大臣の認可を受けることとされております。

また、2020年3月期から、当該ユニバーサルサービス確保のために不可欠な費用は、日本郵便が負担すべき額を除き、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険からの拠出金を原資として郵政管理・支援機構から日本郵便に交付される交付金で賄われることとなり、これを契機にゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険が業務委託契約等に基づいて日本郵便に支払っている委託手数料についても2020年3月期から見直しを行っております。銀行代理業務手数料は、郵便局ネットワーク維持に係る「窓口基本手数料」を廃止するなど、保険代理業務手数料は、保有契約件数等に応じて支払われる「維持・集金手数料」のうち、郵便局数等に応じて支払われる手数料を対象に減額するなどの見直しを行いました。

 

 

過去5年間の金融2社からの手数料及び郵政管理・支援機構からの交付金の推移は以下のとおりです。

 

 

 

 

 

(単位:億円)

 

2018年3月期

2019年3月期

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

ゆうちょ銀行

5,981

6,006

3,697

3,663

3,543

かんぽ生命保険

3,722

3,581

2,487

2,070

1,902

交付金

2,952

2,934

2,909

 

(注) 1.2021年3月期及び2022年3月期のかんぽ生命保険の手数料合計額は不適正契約に伴う保険手数料の影響により、かんぽ生命保険が同日付で提出する有価証券報告書に記載されている手数料額と一致しません。

2.2022年3月期のゆうちょ銀行の手数料合計額は委託業務に係る事故等に伴う貯金手数料の影響により、ゆうちょ銀行が同日付で提出する有価証券報告書に記載されている手数料額と一致しません。

 

金融2社から郵政管理・支援機構への拠出金の推移は以下のとおりです。

 

 

 

 

(単位:億円)

 

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

ゆうちょ銀行

2,378

2,374

2,370

2,307

かんぽ生命保険

575

560

540

501

 

 

 

(参考3) 郵政管理・支援機構と契約している業務委託契約の関係は以下のとおりになります。

① 郵便貯金管理業務委託契約


 

② 簡易生命保険管理業務委託契約


 

 

(参考4) 郵便局ネットワーク支援の関係は以下のとおりになります。


 

(7) 郵便局局舎の賃貸借契約

日本郵便は、日本郵便の営業所である郵便局を関係法令に適合するように設置するため、15,266局の郵便局局舎(2022年3月31日現在)について賃貸借契約を締結しております。このうち従業員等との間で賃貸借契約を締結している局舎の数が4,452局となっておりますが、これは明治初期の国家財政基盤が不安定な時代にあって、予算的な制約を乗り越え、郵便を早期に全国に普及させるため、地域の有力者が業務を請け負い、郵便局の局舎として自宅を無償提供したことが起源となっているものです。また、1948年4月に従業員の局舎提供義務が廃止されたことに伴い、すべての郵便局局舎について賃貸借契約を締結することといたしました。その後、郵便局の新規出店、店舗配置の見直し等を通じた郵便局ネットワークの最適化を推進しており、賃貸借契約についても必要に応じて見直しを行い、現在に至っております。

郵便局局舎の賃借料については、従業員等との賃貸借契約を含め、積算法又は賃貸事例比較法に基づき算定しており、定期的に不動産鑑定士による検証等の見直しを実施しています。最近5年間の賃借料総額の実績は、2017年度分595億円、2018年度分594億円、2019年度分594億円、2020年度分593億円、2021年度分595億円になっています。

一部の郵便局局舎の賃貸借契約については、日本郵便の都合で、その全部又は一部を解約した場合で、貸主が当該建物を他の用途に転用することが出来ず損失を被ることが不可避な場合には、貸主から補償を求めることが出来る旨を契約書に記載しております。解約補償額は、貸主が郵便局局舎に対して投資した総額のうち、解約時における未回収投資額を基礎に算出することとしておりますが、2022年3月31日現在、発生する可能性のある解約補償額は61,334百万円です。なお、日本郵便の都合により解約した場合であっても、局舎を他用途へ転用する等のときは補償額を減額することから、全額が補償対象とはなりません。

賃貸借契約の契約期間は、2010年6月までに締結した契約については1年間の自動更新となっておりますが、これまで郵便局局舎は長期間、使用しているという実態を踏まえ経済合理性の観点から、長期賃貸を前提とした契約内容に見直しを行ったため、2010年7月以降に締結する契約については、税法上の耐用年数に10年を加えた年数としております。

 

(8) 簡易郵便局の郵便窓口業務等委託契約

日本郵便は、簡易郵便局受託者(2022年3月31日現在、3,635者)との間で、郵便窓口業務及び印紙の売りさばきに関する業務の委託契約、荷物の運送の取扱いに関する業務の委託契約、銀行代理業に係る業務の再委託契約、郵便貯金管理業務の再再委託契約、生命保険契約維持管理業務の再委託契約、簡易生命保険管理業務の再再委託契約及びカタログ販売等業務に係る委託契約(受託者によっては各契約の一部)を締結しております。なお、簡易郵便局の郵便窓口業務等委託契約の期間は3年間であります。

また、かんぽ生命保険は、簡易郵便局受託者(2022年3月31日現在、478者)との間で、生命保険募集委託契約を締結しております。

 

 

(参考) 簡易郵便局受託者の資格については、簡易郵便局法の規定により、禁錮以上の刑に処せられた者で、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しないもの等を除く、以下の者でなければならないと定められております。

① 地方公共団体

② 農業協同組合

③ 漁業協同組合

④ 消費生活協同組合(職域による消費生活協同組合を除く。)

⑤ ①から④までの者のほか、十分な社会的信用を有し、かつ、郵便窓口業務及び印紙の売りさばきに関する業務を適正に行うために必要な能力を有する者

 

(9) 米国アフラック・インコーポレーテッド及びアフラック生命保険株式会社との資本関係に基づく戦略提携に関する基本合意書

当社は、2018年12月19日開催の取締役会において、アフラック・インコーポレーテッド(本社:米国ジョージア州、会長兼最高経営責任者:ダニエル・P・エイモス)及びその完全子会社であるアフラック生命保険株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:古出眞敏、以下「アフラック生命」といいます。)と資本関係に基づく戦略提携(以下「戦略提携」といいます。)を行うことを決議し、同日付で戦略提携に関する基本合意書を締結いたしました。

 

① 基本合意書の目的

当社とアフラック生命は、長年に亘り、当社の連結子会社である日本郵便及びかんぽ生命保険とともに行ってきたがん保険に関する様々な取組みを通じて、ビジネスパートナーとして強固な信頼関係を確立してきました。

戦略提携は、これまでのがん保険に関する取組みについて再確認するとともに、当社によるアフラック生命の親会社アフラック・インコーポレーテッドへの投資を通じて、アフラック生命のビジネスの成長が当社への利益貢献につながるという双方の持続的な成長サイクルの実現を目指すものです。

 

② 基本合意書の内容

 (a) 資本関係

当社は、必要な許認可等の取得を前提として、アフラック・インコーポレーテッド普通株式の発行済株式総数(自己株式を除く。)の7%程度を、信託を通じて取得します。取得から4年経過し議決権が20%以上となった後(※)、アフラック・インコーポレーテッドを当社の持分法適用関連会社とすることを主たる内容とする資本関係を構築します。

これは、当社によるアフラック・インコーポレーテッドの支配権もしくは経営権の獲得又は経営への介入を目的とするものではありません。

なお、2019年4月29日に、信託を通じて、アフラック・インコーポレーテッド普通株式の取得を開始し、2020年2月13日をもって、予定していた株式数の取得を完了しました。

(※)アフラック・インコーポレーテッドでは、定款の規定により、原則として、普通株式を48カ月保有し続けると、1株につき10議決権を行使することができます。

 (b) がん保険に関する取組みの再確認

当社及びアフラック生命は、日本郵便及びかんぽ生命保険との間で実施してきたがん保険に関する取組みを再確認し、今後も進展させるべく合理的な努力を行います。

 (c) 新たな協業の取組みの検討

がん保険に関する取組みに加えて、当社、日本郵便、かんぽ生命保険及びアフラック生命の各社の企業価値向上に資することを目的とした新商品開発における協力や、デジタルテクノロジーの活用、国内外での事業展開や第三者への共同投資における協力、資産運用における協力など新たな協業の取組みの検討を行います。

 (d) 最高経営者会議及び戦略提携委員会

当社、アフラック・インコーポレーテッド及びアフラック生命は、当社及びアフラック・インコーポレーテッドの各最高経営執行者による定例会議を「最高経営者会議」として引き続き活用し、戦略提携に関する事項も協議します。

また、これまで当社、日本郵便、かんぽ生命保険及びアフラック生命の間で開催してきた、各社の代表執行役、代表取締役等による定例会議を「戦略提携委員会」として引き続き活用し、戦略提携に関する事項も協議します。

 

 (10) 楽天グループとの資本・業務提携

当社、日本郵便及び楽天グループ株式会社(東京都世田谷区、代表取締役会長兼社長三木谷浩史、以下「楽天」)は、物流、モバイル、DXなど様々な領域での連携を強化することを目的に、2021年3月12日、業務提携合意書を締結しました。

2021年4月28日、当社、日本郵便、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険が楽天と業務提携合意書を改めて締結しました。

加えて、日本郵便は楽天との間で、2021年4月28日、楽天が設立する新会社(JP楽天ロジスティクス合同会社。2021年7月2日に合同会社から株式会社への組織変更を行い、JP楽天ロジスティクス株式会社に商号変更。)に対して日本郵便が出資をすることに関する統合契約書及びJP楽天ロジスティクスの運営等に関する株主間契約書を締結しました。JP楽天ロジスティクスの概要については下記③をご参照ください。

日本郵政グループは、全国を網羅する郵便局や物流のネットワークを基盤に、人々の生活に必要不可欠な社会インフラとしての役割を担っています。一方、楽天グループは70 以上のサービスと1億以上の楽天会員を有し、独自の経済圏を形成しています。

両社グループは、本資本・業務提携に基づき、お客さまの利便性の向上、地域社会への貢献、そして事業の拡大を目的に、両社グループの経営資源や強みを効果的に生かしたシナジーの最大化を図ります。

また、両社グループは、引き続き、関係の更なる深化の可能性について幅広く検討してまいります。
 

① 業務提携の概要

2021年4月28日までに両社グループが合意しました業務提携の内容(その後の協議を踏まえて更新したもの)は、以下のとおりです。

(a) 物流

・共同の物流拠点の構築

・共同の配送システム及び受取サービスの構築

・RFC(楽天フルフィルメントセンター)の利用拡大及び日本郵便のゆうパック等の利用拡大に向けた、日本郵便・楽天グループ両社の協力・取組み

・上記取組みのための日本郵便・楽天グループの両社が出資する新会社の設立、物流DXプラットフォームの共同事業化

(b) モバイル

・郵便局内のイベントスペースを活用した楽天モバイルの申込み等カウンターの設置(全国285カ所、2022年3月末時点)

・日本郵便の配達網や郵便局ネットワークを活用したマーケティング施策の実施

(c) DX

日本郵政グループのDX推進のための日本郵政グループと楽天グループの間の人材交流に関する協議・検討

・楽天グループによる日本郵政グループのDX推進への協力

(d) 金融

・楽天カード(ゆうちょ銀行デザイン)の取扱いの開始(2021年12月1日から)

・楽天カード(ゆうちょ銀行デザイン)の状況を踏まえた、楽天カードの基盤を活用したゆうちょ銀行を発行主体とするクレジットカードに関する協議・検討

その他のキャッシュレスペイメント分野等での協業に関する協議・検討

・保険分野での協業に関する協議・検討

(e) EC

・楽天グループが運営するサイト内での日本郵便が取り扱う商品の販売の開始(2022年3月1日から)

・郵便局内での楽天市場の販売商品の注文申込みの受付け(2022年4月1日~同年6月30日の期間で、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県及び和歌山県内の2府4県の郵便局にて実施)

両社グループは、以上のほかにも企業価値の向上に資する戦略的な提携について協議、検討します。

 

② 出資の概要

・出資方法 第三者割当増資による募集株式の引受け

・引受株式数 131,004 千株

・出資金の額 149,999 百万円・出資比率 8.32%
・出資金の払込期日 2021年3月29日(月)

 

 

③ 新会社の概要

・名称:JP楽天ロジスティクス株式会社

(英語名称:JP Rakuten Logistics, Inc.)

・設立日:2021年7月1日(同年7月2日に合同会社から株式会社に組織変更)

・資本金:100百万円

・出資比率:日本郵便50.1%、楽天49.9%

・事業内容:ロジスティクス事業

 

 

5 【研究開発活動】

該当事項はありません。