第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループは、貴金属事業及び環境保全事業の拡大により発展を遂げ、環境と社会をつなぐ循環経済の担い手として、今後も社会貢献することで発展し続けていくことを目指しております。また、その過程においては、安定的な利益の確保と持続的な成長の維持との均衡を重視しており、これらを通して企業価値を高め、長期に亘って顧客、株主、従業員を含むすべてのステークホルダーの期待に応えることを基本方針としております。

 

(2)目標とする経営指標

経営の基本方針に基づき、連結売上収益と連結営業利益、また株主重視の観点から、株主資本当期利益率(ROE)をそれぞれ重要な指標と考えております。

 

(3)経営戦略等

当社グループは、2030年に向けた中長期ビジョンにおいて、ありたい姿を「環境と社会をつなぐ循環経済の担い手となる」とし、「地球環境に配慮した資源循環の推進」「脱炭素思考のウェイストマネジメント」をミッションに掲げています。社会の課題を解決する事が当社グループの価値を高めると考え、「既存事業を強固な収益の土台に」「新分野・新領域での収益拡大」「海外事業の拡大」「バランスシートの改善」「事業発展に沿った人材形成」の5つの戦略主題を定め、取り組みを推進しています。

 

(4)経営環境

当連結会計年度におけるわが国経済はゆるやかに拡大を続けたものの、急激な物価上昇や深刻な自然災害の影響により、その後半において景気回復が足踏みの状態にあり、世界的な金融引き締めや中国経済の先行き懸念により、さらに国内外の景気を下押しする懸念が生じています。このような経営環境を踏まえて、当社グループは持続的な利益成長に向けた取り組みを一層強化してまいります。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 貴金属事業セグメント

当社グループの中核的事業であり、以下の施策をもって収益の拡大を図ります。

○貴金属リサイクルの拡大やリサイクル工程の改善などにより、カーボンニュートラル戦略を推進する。

○製薬領域や水素製造などの工業分野における貴金属需要を開拓し、新分野への事業拡大を推進する。

○人権・環境に配慮した貴金属製品の製造・販売事業を通して、付加価値の高い製品などを国内外のお客様に提供し、グローバルレベルのブランディングの確立を目指す。

○「責任ある貴金属管理」を徹底し、リスク管理を強化する。

○ITを活用して効率的な営業活動体制や技術プロセスを確立し、競争力を高める。

 

② 環境保全事業セグメント

当社グループの安定成長事業として、成長とともに収益性を重視した経営を行います。

また、以下の施策をもって収益の拡大を図ります。

○ジャパンウェイストとレナタスとの株式交換を、日本における静脈産業のメジャー形成の足掛かりとし、動静脈連携による循環型社会を推進する。

○DX事業を拡大し、デジタルプラットフォームの構築により効率的・効果的な事業体制を確立する。

○水素事業など新規事業を創出し、カーボンニュートラル戦略を推進する。

 

(6)内部管理体制の整備・運用状況

① コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方及びその施策の実施状況

当該事項につきましては、コーポレート・ガバナンスに関する報告書に記載しております。

② 内部管理体制の充実に向けた取り組みの最近1年間における実施状況

当社グループ内で「内部統制推進会議」を組織し、内部統制のためのルールについて運用状況を確認・評価するなど、内部統制強化のための継続的な活動を行っております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループは「この手で守る自然と資源」をグループ共通のパーパスとして掲げ、長きにわたり事業活動を展開してきました。当社の事業活動はサステナビリティ貢献そのものであり、事業の成長が社会的課題の解決につながっています。持続可能な社会の実現を目指し、当社が優先的に解決に向けて取り組むべき社会的課題に対して、テーマおよび目標を設定し、その達成に向けて積極的に取り組んでいます。

 

①ガバナンスとリスク管理

 当社グループのサステナビリティ推進体制は以下の通りです。代表取締役社長(CEO)が統括し、グループ会社の社長及び技術部門のトップで構成されるサステナビリティ委員会では、サステナビリティに関する戦略、企画、施策、理数管理及びモニタリングの審議を四半期ごとに行っています。また取締役会に対しては、サステナビリティ委員会の審議事項を報告するとともに、重要事項を取締役会で決議することでガバナンスを効かせています。加えてサステナビリティ委員会の審議事項をグループリスク管理部門にも報告することで、当社グループ全体のリスク管理体制に組み入れて管理しています。

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②戦略並びに指標と目標

 サステナビリティに関する項目の気候変動関連については、当社グループに与える影響の大きさから重要と考え、上記「ガバナンス」と「リスク管理」に加えて、「戦略」並びに「指標と目標」に関しても、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に基づき対応を実施しました。TCFD対応で明らかになったリスクと機会については毎年1回以上、取締役会及びサステナビリティ委員会に対応状況やリスクと機会の変化について報告しています。

 

<戦略>

 2030年における当社貴金属事業(国内及び北米事業)、環境保全事業に影響を及ぼす気候変動関連のリスクと機会の抽出を行うとともに、「大」「中」「小」の3段階で定性的に評価しました。その際には2030年以降2050年に向けての気候変動の更なる影響についても考慮しました。その結果、「政策・法規制」「市場」「技術」などが特定されました。

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<指標と目標>

 当社は事業マテリアリティの一つにCO2排出量の削減を掲げるとともに、2030年度までに、CO2排出量を、2015年度比で63%削減するという目標を設定しています。目標達成のために、CO2フリー電力への切り替え、燃料使用量の削減、営業所のZEB化等を進めています。またCO2排出量(Scope1、Scope2、Scope3)に関する第三者検証を実施済です。合わせて2050年度にカーボンニュートラルを目指すことを宣言しています(対象はScope1及びScope2)。

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③当社における人的資本経営方針

 当社が目指す中長期ビジョン達成のためには、社員全員が当社のパーパスやアサヒウェイを理解し、実践する必要があると考えます。多様な社員が信頼と絆のもと、仕事に誇りを持ちながら革新に向け活き活きと挑戦することで、組織全体の生産性が最大化すると私たちは信じます。そのため当社では“社員一人ひとり”を大切なステークホルダーと位置づけ、人的資本への投資を体系的に進めて参ります。

 

<人材戦略>

 多様な社員がそれぞれ自分らしく仕事と生活全体との調和を得られるダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン推進や健康経営を基盤に据え、日々の仕事の中で成長し、能力発揮をしていただくための環境を整えています。

 また今後人材の流動化がより進んでいくことが想定される労働市場においては、エンゲージメントの向上こそが人材の定着につながると考えます。アサヒウェイを中核とした人的資本への投資により社員エンゲージメントの向上をもたらし、人材基盤の充実を図ります。

 

<指標と目標>

 当社では上記において記載した、人的資本経営方針並びに人材戦略について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

指標

目標

実績(当連結会計年度)

インターバル勤務制度

2020年度末までに100

99.97

女性従業員に占める

管理職比率の向上

2030年度末までに男性における管理職比率と同等水準

女性管理職比率12.20

(男性管理職比率21.06%)

※海外を含む全グループ会社の正社員が対象

障がい者雇用の推進

2030年度末までにその時点の法定障がい者雇用率同等以上

3.58

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のある主なリスクには、以下のようなものがあります。これらは投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項と考えておりますが、記載した項目は当社グループが当該有価証券報告書提出日現在で認識しているものに限られており、全てのリスクが網羅されているわけではありません。なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。

当社グループは、事業活動上のリスクの把握・評価および対策を実施する体制として、監査等委員会の監督下に内部監査部門を設置してガバナンス強化に努めるとともに、内部統制推進会議や安全推進会議を定期的に開催して、コンプライアンスおよび安全体制を確立するなど、事業を取り巻く様々なリスクに対して適切な管理を行い、リスクの顕在化の未然防止を図っております。

 

(1)貴金属相場および為替相場について

当社グループの「貴金属事業」における主力製品である貴金属および希少金属は、国際市場で取引されており、その価格は、国際的又は地域的な需給、政治経済社会動向、為替相場、金融政策等、世界の様々な要因により変動しております。このため、当社グループは基本的に先渡取引等を通して貴金属価格をヘッジしていますが、ロジウムは流動性に乏しくヘッジ手段が限られているため、他の手段も活用しながら、リスクの軽減に取り組んでおります。また、主要な貴金属価格の変動状況等について適時経営陣に報告しております。貴金属相場および為替相場の変動の幅、先渡取引の環境等により、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(2)法規制について

当社グループが事業展開している国および地域におきましては、事業の許可、輸出入・輸送規制、商取引、労働、租税、知的財産権、環境保全等のさまざまな法規制の適用を受けております。当社グループは、コンプライアンス重視の姿勢の下、全事業領域に関連する法改正情報を一元管理して現場へ周知徹底する仕組を構築し、法規制および社会的ルールの遵守を徹底しておりますが、万一、これらの法規制および社会的ルールが遵守できなかった場合や、法規制および社会的ルールの変化によって事業が制約を受ける等の事態が発生した場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(3)経済変動について

当社グループの2つの事業セグメントである「貴金属事業」「環境保全事業」の取引業界のひとつである製造業に関しては、日本のみならずさまざまな国や地域の経済状況の影響を受けます。景気後退等に伴ってそれらの業界の需要が減少した場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。また、貴金属リサイクル分野は、エレクトロニクス関連機器や自動車などの最終製品に含まれる貴金属をリサイクルしていることから、消費動向の影響を受けるため、一般消費水準の減退による個人消費の落ち込み等が当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(4)事業環境について

当社グループの2つの事業セグメントである「貴金属事業」「環境保全事業」は、事業分野毎の関連する法規制や許認可等の変更により顧客ニーズが大きく変化する可能性や、顧客企業の海外移転が想定以上に進展する可能性があります。また、業界再編など事業環境が大きく変化する可能性もあります。加えて新事業・新分野への挑戦を進めています。事業の実施の際には執行会議等で十分な検討を行い、必要に応じてリスク管理体制を講じていますが、事業環境が想定と異なった場合などにはリスクが顕在化する可能性があります。その結果、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(5)競合との競争激化について

当社グループの2つの事業セグメントである「貴金属事業」「環境保全事業」は、事業分野毎にさまざまな企業と競合しております。グループ各社は、営業努力をはじめ、技術・製品面やコスト対応面等での取り組みにより、顧客ニーズに的確にお応えすることで、競争優位性を確保すべく努力を続けておりますが、競合他社との競争の激化により、各社の製品・サービスが厳しい価格競争にさらされる可能性があります。その結果によっては、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(6)海外事業展開について

当社グループは、海外事業の拡大を成長戦略の一つとして、北米・アジア等の国および地域において事業展開しておりますが、事業に不利な政治または経済的事象の発生、労働環境の違いによる労働争議等の発生、現地での適切な人材確保の不確実性、紛争・テロその他の要因による社会的混乱の可能性、ビジネスインフラ未整備による当該国および地域当局からの不当な介入等のリスクが内在しております。また北米精錬事業においては精錬を土台とした付加価値サービスを拡大しており、その中にはトレーディングや融資等も含まれています。また、新たな事業として貴金属倉庫業を開始しています。事業の実施の際には十分なリスク分析を行うとともに、リスク管理部門の関与や取締役会等で議論を行うなど十分な管理体制を講じていますが、経済環境や取引先の信用状況が悪化した場合は、リスクが顕在化する可能性があります。

これらの事態が発生した場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(7)企業買収について

当社グループは、これまで企業買収によって事業内容および事業規模の拡大を図ってきており、今後も当社グループのさらなる成長に資する案件に対して前向きに取り組んで行く予定です。対象事業および企業との統合効果を最大限に高めるために、当社グループの事業戦略やオペレーションとの統合・融合を図っておりますが、人材や資産の統合等が想定通り進まなかった場合には、期待した統合・融合効果をあげられず、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(8)のれん・固定資産の減損について

当社グループは、企業買収の際に生じたのれんや、事業用の様々な有形固定資産および無形資産を計上しております。買収時は、財務、法務、人事、設備等の観点から十分な調査を実施しておりますが、買収した企業や事業が、市場環境の変化等によって当初予定した業績を上げられず、経営成績や収益性が著しく悪化した場合、これらの資産の減損が発生する可能性があります。そのような場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(9)自然災害・感染症について

大規模な地震・台風等の自然災害や新たな感染症の発生等によって、当社グループの生産・物流・販売および情報管理関連施設等の拠点に甚大な被害が発生する可能性があります。当社グループでは、事業継続マネジメント(BCM)の策定、水害対策、防災訓練、社員安否確認システムの構築などの対策を講じておりますが、これらは自然災害や未知の感染症等による被害を完全に排除できるものではなく、発生した場合には当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う規制は撤廃されましたが、今後同様の事態が発生すれば、国内外経済や市場に悪影響を与える可能性があり、その結果、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(10)安全衛生について

当社グループは、労働災害や設備事故等の撲滅に向けて、経営陣も参加する「安全推進会議」を開催し必要な措置を講じるなど、安全管理体制の強化ならびに定期的な災害・事故防止活動を行っておりますが、これらの発生を完全に防止または軽減できる保証はありませんので、重大な労働災害や設備事故等が発生した場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(11)人材について

当社グループの中長期的な成長は、社員が信頼と絆のもと、仕事に誇りを持ちながら革新に向け活き活きと挑戦することで、組織全体の生産性が最大化することにより達成されると考えます。そのため、多様な社員がそれぞれ自分らしく仕事と生活全体との調和を得られるダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン推進や健康経営を基盤に据えています。具体的には、障碍者雇用推進、女性活躍推進、週休3日モデルといった働き方改革、中長期的に中核人材を獲得するための採用活動や種々の人材育成プログラムを実施しています。しかしながら、事業展開のスピードが増し、優秀な人材の確保や必要な戦力の整備が適切なタイミングで実施できない場合、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(12)研究開発について

当社グループは、「貴金属のリサイクル」および「産業廃棄物の無害化・再資源化」を効果的に行うため、独自の研究開発と分析技術開発を進めております。しかしながら、新技術の研究開発は、市場環境の変化、競合状況、開発成果の事業化の可否等、様々な影響を受けることから、研究開発に要した費用の回収等について不確実性が高いと考えられます。そのため、当初想定した研究開発成果が上がらない場合、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(13)重要な知的財産権について

当社グループは、事業展開にとって重要な知的財産権を保護すべく、適切な管理を行っております。しかしながら、予期せぬ事態により外部に流出する可能性があり、また特定の地域においてはこれらの知的財産権を完全に保護することが不可能なため、第三者による当社グループの知的財産権を使用した類似製品・サービスの製造・販売等を効果的に防止できない可能性があります。さらに、当社グループが将来に向けて開発している製品・技術が、意図せず他社の知的所有権等を侵害してしまう場合や、社員との関係において、職務発明の扱い等について係争となる可能性もあります。それらの結果によっては、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(14)製品品質保証・製造物責任について

当社グループは、品質保証部門が中心となり、お客様により安心・満足していただける製品を提供するためにISO9001を取得し、品質マネジメントシステムの継続的改善・品質の維持向上に努めるなど、製品の品質保証体制に万全を期しておりますが、当社グループの生産した製品に起因する損害が発生した場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(15)環境保護について

当社グループは、「環境方針」に基づいて「全社環境目標(年間計画)」を策定し、各拠点に環境委員会を設置して、環境法規制の遵守、計画の見直し、環境教育等を審議し経営層に報告するなど、地球環境保護に向けたさまざまな取り組みを継続しております。しかしながら、環境汚染等の環境に関するリスクを完全に防止または軽減できる保証はないため、当社グループに起因する重大な環境汚染等が発生した場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(16)気候変動について

国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において「パリ協定」が採択、各国で批准されたのを機に、気候変動や地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの削減を目的とした取り組みが世界的に進められております。当社グループにおいても、気候変動への取り組みを事業マテリアリティの一つとして、2030年までにCO2排出量を2015年比63%削減する目標を掲げ、削減に努めています。また2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言するとともに、CO2排出量(Scope1、2及び3)を計測し第三者による検証結果も受領しています。加えて、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同し、提言に沿った対応を実施しています。その結果、将来的な気候変動が与える影響の、移行リスクとして炭素税を含むカーボンプライシング制度が導入された場合や、物理リスクとして異常気象により自然災害が激甚化し、当社グループの設備等に甚大な影響を及ぼし、事業活動が長期間にわたって停止した場合は、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(17)情報セキュリティについて

当社グループが利用しているパソコンやタブレット端末等には、最新のセキュリティ対策が施されており、これらの導入や運用に際しては、システムトラブルや情報の盗難・紛失が発生しないよう、十分な対策を講じるとともに、情報リテラシーを高めるための社員教育を定期的に実施しております。しかしながら、コンピュータウイルスへの感染やハッキングの被害、ソフトウエアの不備等によるシステム障害の発生、また外部からの想定を超える攻撃などによって、重要データの破壊、改ざん、情報の外部漏洩等の不測の事態が発生する可能性があり、その結果、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(18)訴訟・その他の法的手続きについて

当社グループが国内および海外で事業展開する上で、訴訟その他の法的手続きの対象になる可能性があり、当社グループにおいてすでに発生している、または発生のおそれのある重大な訴訟案件等については、適宜モニタリングを実施するとともに、必要に応じて対策を講じております。しかしながら、当社グループがその当事者となった場合には、多額の損害賠償金等が発生する可能性があり、その結果、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)業績等の概要

① 業績

 

売上収益

(百万円)

営業利益

(百万円)

税引前利益

(百万円)

親会社の所有者に帰属する当期利益

(百万円)

基本的1株当たり当期利益

(円)

当連結会計年度

322,253

12,367

12,426

24,490

319.54

前連結会計年度

274,209

16,282

12,649

10,929

141.19

増減率(%)

17.5

△24.0

△1.8

124.1

126.3

 

当連結会計年度におけるわが国経済はゆるやかに拡大を続けたものの、急激な物価上昇や深刻な自然災害の影響により、その後半において景気回復が足踏みの状態にあり、世界的な金融引き締めや中国経済の先行き懸念により、さらに国内外の景気を下押しする懸念が生じています。このような状況の下、当社グループの各事業セグメントの状況は以下のとおりでした。

なお、当連結会計年度より、当社グループ内の会社組織変更および業績管理区分の見直しに伴い、全社費用の配分方法を変更しており、前年同期の数値を変更後の配分方法で計算した数値で比較分析しております。

 

貴金属事業セグメント

貴金属事業に関しては、金の販売量及び販売価格が前期を上回り、北米精錬事業が伸長したため、売上収益は前期比で増加しました。一方、電子・触媒分野の貴金属リサイクル事業の回復が遅れ、パラジウムおよびロジウムの価格が前期比で下落したため、営業利益は前期比で減少しました。また、電子・触媒分野における中長期的な競争力強化のため、茨城県坂東市に建設中の最新工場に関連工程を集約することに伴い、愛媛県西条市の事業所閉鎖を決定し、同事業所の固定資産等の減損損失を計上しました。

 

環境保全事業セグメント

環境保全事業に関しては、当期において、当社の連結子会社であったジャパンウェイスト株式会社を株式交換完全子会社、株式会社レナタス(以下「レナタス」という。)を株式交換完全親会社とする株式交換を行ったため、ジャパンウェイストの事業は当期及び前期において非継続事業の区分で表示しております。なお、当期における産業廃棄物の取扱量や処理施設の稼働率は安定的に推移しました。

 

また、株式交換に伴いレナタスの株式の公正価値を測定した結果を「非継続事業からの当期利益」に計上しました。

 

以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上収益322,253百万円(前年同期比48,044百万円増、17.5%増)、営業利益12,367百万円(前年同期比3,914百万円減、24.0%減)、税引前利益12,426百万円(前年同期比222百万円減、1.8%減)、当期利益24,490百万円(前年同期比13,560百万円増、124.1%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益24,490百万円(前年同期比13,560百万円増、124.1%増)となりました。セグメント別の売上収益は、貴金属事業が322,218百万円(前年同期比48,012百万円増、17.5%増)となりました。

 

セグメントの業績は次のとおりです。

 

売上収益

セグメント利益(営業利益)

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減率

(%)

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減率

(%)

貴金属事業

274,205

322,218

17.5

17,243

12,716

△26.3

環境保全事業

△0

274,205

322,218

17.5

17,243

12,716

△26.3

その他

3

34

987.7

△961

△348

合計

274,209

322,253

17.5

16,282

12,367

△24.0

調整額

連結

274,209

322,253

17.5

16,282

12,367

△24.0

 

② 財政状態の状況

 

前期末(百万円)

当期末(百万円)

増減(百万円)

増減率(%)

資産合計

287,448

317,998

30,549

10.6

資本合計

106,957

126,476

19,518

18.2

親会社所有者帰属

持分比率

37.2%

39.8%

+2.6ポイント

 

当連結会計年度末の資産につきましては、前連結会計年度末に比べ30,549百万円増加し、317,998百万円となりました。これは主に、現金及び現金同等物が11,070百万円、有形固定資産が9,361百万円減少した一方、その他の金融資産(流動)及び金融資産(非流動)が15,231百万円、その他の流動資産が19,336百万円、持分法で会計処理されている投資が27,665百万円増加したことによるものです。

負債につきましては、前連結会計年度末に比べ11,030百万円増加し、191,522百万円となりました。これは主に、社債及び借入金が3,202百万円減少した一方、その他の金融負債が3,818百万円、未払法人所得税が2,177百万円、その他の流動負債が3,147百万円、繰延税金負債が4,156百万円増加したことによるものです。

資本につきましては、19,518百万円増加し、126,476百万円となりました。これは主に、当期包括利益による増加26,275百万円、剰余金の配当による減少6,897百万円によるものであります。

以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末の37.2%から39.8%となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減

(百万円)

営業活動によるキャッシュ・フロー

36,754

12,621

△24,133

投資活動によるキャッシュ・フロー

△3,935

△28,707

△24,772

財務活動によるキャッシュ・フロー

△23,818

7,050

30,869

現金及び現金同等物期末残高

17,952

6,881

△11,070

 

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末より11,070百万円減少し、6,881百万円となりました。

 

当連結会計年度における各キャッシュ・フローは次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において営業活動の結果獲得した資金は12,621百万円(前年同期比65.7%減)となりました。これは主に、税引前利益12,426百万円(前年同期比1.8%減)、減価償却費及び償却費3,632百万円(前年同期比9.6%増)、棚卸資産の減少額6,555百万円(前年同期比70.9%減)、営業債権及びその他の債権の減少額13,587百万円(前連結会計年度は1,863百万円の増加)、営業債務及びその他の債務等の減少額13,607百万円(前連結会計年度は849百万円の減少)、法人所得税の支払額3,758百万円(前年同期比50.0%減)、法人所得税の還付額2,243百万円(前年同期比45.7%減)によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において投資活動の結果使用した資金は28,707百万円(前年同期比629.5%増)となりました。これは主に、定期預金の払戻による収入2,851百万円(前連結会計年度は50百万円)があった一方、有形固定資産の取得による支出7,585百万円(前年同期比71.7%増)、貸付けによる支出19,616百万円、株式交換による子会社の支配喪失に伴う支出7,550百万円があったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において財務活動の結果獲得した資金は7,050百万円(前連結会計年度は23,818百万円の使用)となりました。これは主に、長短借入金の純増加額14,282百万円(前連結会計年度は17,290百万円の減少)、配当金の支払額6,897百万円(前年同期比1.4%減)によるものであります。

 

(2)生産、受注及び販売の実績

当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

このため生産、受注の実績については、「(1)業績等の概要 ① 業績」におけるセグメントの業績に関連付けて示しております。

 

販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

貴金属事業

322,218

117.5

環境保全事業

その他

34

1,087.7

合計

322,253

117.5

(注)1.最近2連結会計年度の主要な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

2.セグメント間の取引については相殺消去しております。

相手先

前連結会計年度

(自  2022年4月1日

至  2023年3月31日)

当連結会計年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

Varinor SA

63,658

23.2

91,581

28.4

三井物産㈱

61,607

19.1

双日㈱

29,350

10.7

43,190

13.4

田中貴金属工業㈱

31,558

11.5

3.当連結会計年度の田中貴金属工業㈱に対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満のため記載を省略しております。また、前連結会計年度の三井物産㈱に対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満のため記載を省略しております。

 

(3)経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

文中の将来に関する事項は当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の分析

 当社グループは、戦略遂行の成果を、連結売上収益、連結営業利益、株主資本当期利益率(ROE)、自己資本比率の4つの経営目標でモニタリングしております。

 当連結会計年度の売上収益は322,253百万円(前年同期比17.5%増)、営業利益は12,367百万円(前年同期比24.0%減)、税引前利益は12,426百万円(前年同期比1.8%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は24,490百万円(前年同期比124.1%増)となりました。当社が経営効率化の指標としている株主資本当期利益率(ROE)は21.0%(前年同期比10.7ポイント増加)、自己資本比率は39.8%(前年同期比2.6ポイント増加)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る状況

(ⅰ)キャッシュ・フロー

「(1)業績等の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

(ⅱ)財務政策

当社グループは、事業活動のための適切な資金確保及び適切な流動性の維持を図るにあたり、営業活動で得られた資金により設備投資の資金をまかなうことを基本方針としています。この基本方針のもと、持続的な利益成長によってキャッシュ・フローを創出し、資本効率の向上と財務ガバナンスの強化を通じて、財務面からグループ全体の企業価値の向上に努めていきます。

 

(ⅲ)資金需要

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、貴金属製品製造のための原材料の購入、製造経費、販売費および一般管理費等の営業費用によるものです。営業費用の主なものは人件費、広告宣伝費および専門家への業務委託費用です。当社グループの研究開発費は様々な営業費用の一部として計上されていますが、研究開発に携わる従業員の人件費が研究開発費の主要な部分を占めています。また、当社グループの投資資金需要のうち主なものは、主力の製造拠点である国内工場および北米拠点の工場を中心とした生産効率向上のための設備投資です。将来の成長に向けた戦略的な資金需要に対して、財務基盤の安定と資本効率の向上を両立させながら積極的に対応する方針です。

 

(ⅳ)資金調達

当社グループの運転資金および設備投資資金は、主として営業活動で得られた資金により充当し、必要に応じて金融機関からの借入や社債による資金調達を実施しています。これらの借入金および社債について、営業活動から得られるキャッシュ・フローによって十分に完済できるとともに、引き続き今後の成長に必要となる資金を適切に調達することが可能であると考えています。

なお、当社グループは、現在取引している金融機関と良好な関係を築いております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」及び同「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

 当社は、2024年2月29日開催の当社取締役会において、株式会社レナタス(以下「レナタス」という。)を株式交換完全親会社とし、当社の特定子会社であったジャパンウェイスト株式会社(以下「ジャパンウェイスト」という。)を株式交換完全子会社とする株式交換(以下「本株式交換」という。)を行うことについて、当社、ジャパンウェイスト及びレナタスとの間で本株式交換に関する基本契約書(以下「本基本契約書」という。)の締結に関して決議し、同日付で本基本契約書を締結しました。また、ジャパンウェイストは、同日付のジャパンウェイスト取締役会において、レナタスとの間の株式交換契約(以下「本株式交換契約」という。)の締結に関して決議し、同日付で本株式交換契約を締結しました。

 

(1)当該異動に係る特定子会社の名称、住所、代表者の氏名、資本金の額及び事業の内容

① 名称    :ジャパンウェイスト株式会社

② 住所    :兵庫県神戸市東灘区魚崎浜町21番地

③ 代表者の氏名:代表取締役社長 中西 広幸

④ 資本金の額 :800,000千円(2024年6月19日現在)

⑤ 事業の内容 :産業廃棄物の収集運搬業、中間処理業

 

(2)当該異動の前後における当社の所有に係る当該特定子会社の議決権の数及び当該特定子会社の総株主等の議決権に対する割合

① 当社の所有に係る当該特定子会社の議決権の数

異動前:362,543個

異動後:-個

② 当該特定子会社の総株主等の議決権に対する割合

異動前:100%

異動後:-%

 

(3)当該異動の理由及びその年月日

① 異動の理由 :当社の特定子会社であったジャパンウェイストは、2024年2月29日付のジャパンウェイスト取締役会において、レナタスとの間での本株式交換契約の締結について決議し、同日付で本株式交換契約を締結しました。本株式交換の実施により、ジャパンウェイストは当社の特定子会社に該当しないこととなりました。

② 異動の年月日:2024年3月31日

 

6【研究開発活動】

(1)研究開発活動の方針

当社グループでは、各事業セグメントにおける競争力を高めるためにコストダウンや市場ニーズに応じた新技術・新商品の開発に積極的に取り組んでいます。

貴金属事業においては、北米におけるプライマリー原料と日本を含むアジアを中心とするセカンダリー原料からの貴金属精製に関して、組成分析から製品化までの一貫したプロセスの効率向上や新技術の開発を行い、持続可能な循環型社会の形成を目指しています。また、環境保全事業においては、日本国内の産業廃棄物の無害化や資源化に関して、処理コスト低減や新技術の開発を行い、地球環境保全への貢献を目指しています。

 

(2)研究開発活動の体制

当社グループの研究開発活動は、主にアサヒプリテック株式会社テクノセンターが担っています。同センターでは、新しい処理技術や製品および分析技術の開発を担当すると共に、関連する設備の設計や改善・改良および保守をも担当しています。さらに、各グループ会社との情報交換・共有化を図りながら、さまざまな技術課題を抽出してその解決に当たっています。また、技術情報の収集・管理や知的財産の保護および新規事業を含めた企画・開発についてもテクノセンターが中心となって各グループ会社と連携をとりながら、大学や研究所等の外部機関も積極的に活用し効率的に推進しています。

 

(3)研究開発活動の目的、主要課題、研究成果及び研究開発費

当社グループの研究開発活動は、コストダウン、製造期間短縮、品質向上、環境対策、安全性向上などの各種改善、および新商品の提供を目的として、

① 貴金属・希少金属の回収・分離・精製に関する技術

② 貴金属評価のための分析技術

③ 貴金属製品および製造技術

④ 有害物質の拡散防止および無害化に関する技術

⑤ 脱炭素社会に向けた水素製造に関する技術

等の開発を行っています。

 

主要課題と研究成果は次のとおりです。

 

<貴金属事業>

・貴金属精製技術の開発

 北米で実施しているプライマリー原料処理に対しては主に乾式貴金属精製技術の開発を行い、日本を中心にアジアで実施しているセカンダリー原料処理においては主に湿式貴金属精製技術の開発を進めています。また、乾式および湿式の両精製技術を融合させることによって、あらゆる原料に対応できる効果的な貴金属精製技術の確立を目指しています。当連結会計年度においては、2022年4月に茨城県坂東市で稼働したアサヒメタルファイン坂東工場において自動化、省力化の取り組みを進めました。金や銀などの製品製造工程でのロボット活用範囲を拡大し無人生産を実現することで、生産能力拡大とともに生産コストを削減しました。また、2025年竣工予定のアサヒプリテック坂東工場に導入する新プロセスの技術開発を進めました。アサヒプリテック坂東工場では、新技術および新設備を導入することにより電子触媒事業分野での競争力強化を図ります。自動車触媒、化学触媒等に含まれる貴金属の回収工程において、新技術を導入することで貴金属収率の向上および工程期間の短縮を目指します。また、原料の焼成工程においても、排熱の再利用やCO2排出量の少ない燃料への変更等を実施することで、CO2排出量低減に向けて取り組みます。

・貴金属剥離技術の開発

半導体やLED産業の製造で使用する部材・冶具等の表面に付着した貴金属を安全かつ確実に回収するために、化学剥離技術および物理剥離技術の開発を進めています。当連結会計年度においては、昨年度開発した化学剥離速度を大幅に向上させる技術を有した設備を尼崎工場に導入しました。この設備を活用して処理量拡大に貢献していきます。

・貴金属分析技術の開発

 製品の品質維持およびお客様との取引を正確かつ迅速に行うために、X線や誘導結合プラズマ発光分析(ICP)を用いた分析技術の開発を進めています。当連結会計年度においては、ICP分析で用いる貴金属標準液を高精度化する開発に取り組み、実用を開始しました。これにより、顧客から預かったサンプルの分析精度が向上し、顧客満足度の向上に繋がりました。

・リサイクル由来の貴金属を原料としたメッキ化成品製造技術の開発

 当社で製造するリサイクル由来(セカンダリー原料)の貴金属は、人・社会・環境に優しい貴金属としてお客様にニーズがあります。そのようなお客様のニーズに応えるために、2022年度にリサイクル由来の貴金属を原料としたメッキ化成品製造ラインを導入しました。当連結会計年度においては、メッキ化成品の生産販売を開始しました。リサイクル原料から製造した貴金属を化成品として販売することで、リサイクル由来の貴金属の価値向上に繋げていきます。

 

<環境保全事業>

・産業廃棄物の処理技術および資源回収技術の開発

当社グループ全体で回収される産業廃棄物の適正処理技術と資源回収技術を開発しています。産業廃棄物の焼却事業に関してはこれまで九州地区を中心に展開しておりましたが、新たに関東地区においても排熱回収発電能力を有した新焼却炉の建設計画を進めています。廃棄物処理量拡大と同時に環境負荷の低減、地域社会への貢献を目指した新技術導入を進めます。

・脱炭素社会に向けた技術開発

廃棄物発電によって得られる電力を有効活用し、水素を製造・圧縮・搬送する取り組みを進めています。この取り組みは環境省が公募した「令和5年度 廃棄物処理×脱炭素化によるマルチベネフィット達成促進事業」に採択され、当連結会計年度においては、横浜工場(現ジャパンウェイスト株式会社)へ、産業廃棄物処理装置、水電解装置、水素圧縮装置の導入に向けた工事を開始しました。今後、実用化に向け設備導入を進め、水素の普及拡大ならびに温室効果ガス排出削減へ貢献します。

 

当連結会計年度における研究開発費は428百万円です。なお、研究開発費については、基礎研究分野にかかわる費用をセグメント別に関連づけることが困難であるため、その総額を記載しています。