文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当第2四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。
当第2四半期連結累計期間において、前事業年度の有価証券報告書に記載した「事業等のリスク」について重要な変更及び追加があった事項は以下のとおりであり、変更箇所は下線で示しております。
なお、以下の見出し及び本文中に付された項目番号は、前事業年度の有価証券報告書における「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 事業等のリスク」の項目番号に対応したものです。
Ⅰ.当社経営陣が特に重視する当社グループの事業等のリスクの概要
8.海外子会社に関するリスク
日本郵便は、豪州・アジア市場を中心に、海外子会社による国際的な事業展開を推進しております。日本郵便の子会社であるトール社については、2021年8月、Allegro Funds Pty Ltdの傘下企業との間で赤字が継続しているエクスプレス事業※の譲渡手続きが完了いたしました(これにより2021年3月期において674億円の特別損失、当第2四半期連結累計期間において106億円の事業譲渡損を計上しております。)が、トール社は債務超過の状態となっており、依然厳しい経営状況となっております。当社グループは、豪州事業の合理化やアジア中心のビジネスモデルへの転換による成長を図りますが、期待される経営改善策及び成長戦略が功を奏せず、業績が向上しない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があり、トール社の保有する物流設備その他の固定資産について更なる減損損失を計上する可能性があります。
※ エクスプレス事業とは豪州及びニュージーランド国内におけるネットワークを活用して道路、鉄道、海上及び航空貨物輸送サービスを提供する事業のことです。
Ⅱ.当社グループ全般に関するリスク
1.事業環境に関するリスク
(2) 他社との競合に関するリスク
当社グループが行う事業は、いずれも、激しい競争状況に置かれております。当社グループと競合関係にある同業他社は、AI・Fintech・テレマティクス等の技術の急速な進展・活用、その他の事業環境の変化・事業戦略の変更等で、当社グループより優れた商品構成、サービス、価格競争力、事業規模、シェア、ブランド価値、顧客基盤、資金調達手段、事業拠点、ATM・物流拠点その他のインフラ・ネットワーク等を有する可能性があります。
例えば、日本郵便が行っている郵便・物流事業については、信書便事業者や他の物流事業者等と競合関係にあります。特に成長が見込まれる物流事業における競争は激しく、日本郵便としては価格競争による個数獲得は目指さない方針ですが、競業他社が日本郵便よりも競争力のある価格でサービスを提供すること等により、日本郵便のシェアも影響を受けております。このように、他社サービスの競争力の向上その他の理由により他社の提供するサービスへの乗り換えが発生した場合、又は、競争激化により日本郵便の事業、シェア若しくは収益の動向が当社グループの想定通りに進捗しなかった場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、ゆうちょ銀行が行っている銀行業、及びかんぽ生命保険が行っている生命保険業も、同業他社等と競合関係にあります。今後、両社が金融サービスに対する顧客ニーズの変化や市場構造の変化等に適切に対応できなかった場合、又は、両社が競合他社に対して優位に立てない場合等においては、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、近年では、国内外の各業界において統合や再編、業務提携が積極的に行われているほか、参入規制の緩和や業務範囲の拡大等の規制緩和が行われております。当社グループ各社が市場構造の変化に対応できなかった場合や規制緩和や新規参入が想定以上に進んだ場合は、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。例えば、日本のeコマース市場の拡大に伴い宅配取扱数量の増加がみられる一方で、物流事業者やEC事業者による提携、主要なECプラットフォーマーによる独自の物流サービスの展開等が進んでおり、日本郵便がeコマース市場の拡大に伴う需要の増加を十分に取り込める保証はありません。また、郵便事業と競合する一般信書便事業については、民間事業者による信書の送達に関する法律(以下「信書便法」といいます。)に基づき、一定の参入条件が課された許可制とされており、現時点において同事業に参入している民間事業者はおりません。しかしながら、信書便法の改正等により、信書便事業の業務範囲の拡大や参入条件が変更されるなど参入規制が緩和された場合には、新規事業者の参入により競争が発生し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは事業の競争力を維持するため、グループ横断的な新規事業への進出やDXの検討・実践に向けた取組み等を進めておりますが、適時かつ適切に効果的な施策を講じることができなかった場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、業務の効率化が進まなかった場合、事業運営コストを賄うため、収益性を過度に追求した営業や過度のリスクを伴う資金運用を行う場合には、コンダクト・リスクや運用リスクが顕在化し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
2.法的規制・法令遵守等に関するリスク
(1) 不正・不祥事に関するリスク
当社グループでは、業務改善計画に基づいた改善策の実行に向けて取り組んでいるかんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題に加え、2020年度に発覚した、かんぽ生命保険商品と投資信託の横断的な販売について、一部お客さま本位といえない営業が行われていたことや、ゆうちょ銀行のキャッシュレス決済サービスの不正利用等の新たな問題が発覚しています。当社グループは、外部専門家の方々で構成された、各種取組みを公正・中立な立場から検証するJP改革実行委員会からの評価、助言等も踏まえ、ガバナンス機能、グループコンプライアンス機能、監査部門の機能の強化等を図り、業務改善計画を着実に実行しており、また、お客さまからの信頼回復に向け、2020年9月に発表した「お客さまの信頼回復に向けた約束」をもとに、お客さまや社員の声を経営や営業・業務改善に活用する等、お客さま本位の事業運営を徹底してまいりますが、かかる態勢・予防策が十分な効果を発揮しない場合、当社グループの役員・従業員による法令その他諸規則等の違反、社内規程・手続等の不遵守、不正行為、事故、不祥事等が生じ、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
このほか、当社グループでは、2020年度以降においても、長崎県の郵便局で発覚した現金詐取事案や、愛媛県の郵便局における郵便局資金横領等事案、従業員による郵便物等の放棄・隠匿事案、郵便局元課長が郵便切手横領容疑で逮捕される事案等が発覚しており、このような事案を含め、不祥事等が発生した場合には、被害者等に対して損害賠償責任を負い、監督官庁からの行政上の処分等を受ける可能性があるほか、当社グループの社会的信用が低下するおそれもあります。特に、規制当局や世間の関心の対象となる不祥事等はその時々によって異なり、かかる変化に適応することが求められますが、事業環境や資金調達取引の複雑化などにより、当社グループがあらゆる事象に適時・適切に対応することができない可能性があります。
(3) 訴訟その他法的手続に関するリスク
当社グループは、事業の遂行に関して、人事労務、業務上の事故、外部委託、知的財産権等の利用に関する事項をはじめとする、訴訟、行政処分その他の法的手続が提起又は開始されるリスクを有しております。一部ではありますが、人事処遇や勤務管理などの人事労務上の問題や職場の安全衛生管理上の問題等に関連する訴訟等を、当社グループの従業員等から提起されております。
かかる訴訟等の解決には相当の時間及び費用を要する可能性があるとともに、社会的関心・影響の大きな訴訟等が発生した、当社グループに対して損害賠償の支払等が命じられる等不利な判断がなされた場合には、当社グループにおいても当該判断を踏まえた対応が必要となるなど、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、労働契約法第20条(平成30年法律第71号による改正前のもの)に基づき、期間雇用社員である原告が正社員と期間雇用社員に労働条件の差異があるのは不合理であるとして提訴した訴訟については、2020年10月15日に最高裁判所が、一部の手当や休暇制度について、正社員と期間雇用社員である原告間に差異があるのは不合理との判決を言い渡しました。当社グループにおける今後の人事労務制度改正の内容については、最高裁判所の判決の内容を踏まえ、労使交渉のうえ決定していくこととしておりますが、その内容等によっては対応に相当の費用を要するなど、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
3.事業運営に関するリスク
(1) 中期経営計画に関するリスク
当社グループは国内外の市場金利、為替、株価、経営環境(消費税増税を含む。)、競争状況、営業費用等多くの前提に基づいて中期経営計画を策定し、郵便・物流事業、郵便局窓口事業、国際物流事業、銀行業、生命保険業等の業務に係る中期的な事業戦略・方針を定めております。当社グループの中期経営計画「JPビジョン2025」では、「お客さまと地域を支える共創プラットフォームの構築」、「グループ一体でのDX推進による新しい価値提供」の戦略のもとに、成長に向けた投資、効率化施策、生産性向上の取組みを行っています。
しかしながら、将来の戦略、計画、方針等には様々なリスク等が内在しており、当社グループの施策が奏功しなかった場合、又は、当社グループの採用した前提と異なる状況が生じた場合には、当該計画の実現又は目標の達成ができない可能性があります。具体的には、エンジニアの確保・育成や既存の人材・システムの置換が進まないこと等により、DXの推進による業務効率化、サービスの拡充や新たな価値創造、固定費の削減、当社グループの成長に向けた戦略的なIT投資が予定通りに進まない可能性があります。また、不動産開発に関するノウハウの不足又は不動産市況の悪化等により不動産事業の強化が期待された効果を生まない可能性があります。さらに、他社とのM&Aや提携については、他の投資者等との競合や規制上の理由により当社グループが企図したM&Aや提携を実施できない可能性があるほか、完了したM&Aや提携についても、実施後の統合プロセスが不十分なものであったり、M&Aや提携の効果についての見積もりが楽観的であったこと等により、期待されたリターンを得られない可能性があります。現在公表している楽天グループとの提携や佐川急便との協業に関する基本合意についても、現時点では必ずしもその具体的な内容が実施又は決定されているわけではないなど、当社グループが進める出資や提携が期待された効果を生まない可能性があります。加えて、新規ビジネス等の推進を目指していく中で、拡大するポートフォリオを十分に管理することができず、投資や撤退の時期等を適切に見極めることができなくなる可能性があります。
また、P-DX等の推進による郵便・物流事業における業務効率化が想定通りに進まない可能性があるほか、eコマース市場の成長又は物流市場における需要の増加が当社グループの想定を下回る、又は、当社グループがかかる物流需要を十分に取り込めない可能性があります。かんぽ生命保険に関しては、市場金利の低下に伴う保険料の値上げなどにより貯蓄性商品の新契約の獲得実績が想定以上に減少していることに加えて、保険募集プロセスの品質事案等の影響で新契約の獲得が計画通り進まない、又は、既存の契約の解約数が増加する可能性があり、かかる場合、当該計画期間終了後も新契約の獲得や既存の契約の維持については、厳しい状況が継続することが見込まれます。なお、中期経営計画のうち、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険にかかる事業戦略及び経営計画に関するリスクについては、それぞれ「Ⅳ.銀行業に関するリスク (8) 事業戦略・経営計画に係るリスク」及び「Ⅴ.生命保険業に関するリスク (5)事業戦略・経営計画が奏功しないリスク」も併せてご参照ください。
さらに、金融2社等当社グループ各社が保有する有価証券の価値の低下による減損損失、売却損の計上やその他有価証券評価差額金の減少等により当社グループ各社からの配当収入が減少する結果、当社では十分な配当可能額が確保できず、中期経営計画における配当目標を達成できない可能性があります。
また、2021年3月31日付で公表したとおり、当社は、2021年3月期通期の個別決算において、ゆうちょ銀行の株式について、時価が著しく下落したため減損処理を行い、2,229,538百万円の関係会社株式評価損(特別損失)を計上いたしました。今後も金融2社株式を含む当社保有の株式の時価が下落することにより更なる減損処理が必要となった場合には、これに伴う剰余金の減少によりさらに分配可能額が減少し、あるいは消失する可能性があります。
なお、当社は将来的な国際財務報告基準(IFRS)の適用を検討しており、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) グループ外の企業との資本・業務提携、外部委託及び企業買収並びに業務範囲の拡大等に伴うリスク
当社グループは、当社グループ外の企業との間で、様々な業務に関し、資本・業務提携、外部委託を行っております。当社は、アフラック・インコーポレーテッド及びアフラック生命保険との戦略提携に合意し、アフラック・インコーポレーテッドの発行済株式総数(自己株式を除く。)の約7%を取得しております。また、2021年3月12日に、当社及び日本郵便は、楽天株式会社(現楽天グループ株式会社)との資本・業務提携に合意(さらに、同年4月28日に当社、日本郵便、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命と楽天グループ株式会社との間で改めて業務提携に合意)し、同年3月29日をもって、当社は、楽天株式会社の発行済株式総数(自己株式を除く。)の約8%を取得したほか、同年7月1日、日本郵便は、楽天グループ株式会社とJP楽天ロジスティクスを設立し、連結子会社としております。加えて、同年9月10日には、日本郵便は、佐川急便株式会社との間で、物流サービスの共創に向けた両社の事業成長を目的とした協業に関する基本合意書を締結しております。このようなグループ外の企業との資本・業務提携については、具体的な内容が決定又は実施されていないものがあることに加え、資本・業務提携先との間における、戦略上若しくは事業上の問題又は目標の変更や当社グループとの関係の変化等により、期待通りの効果が得られない可能性や、投資に見合うリターンを得られない可能性、当社グループの既存事業に負の効果を及ぼす可能性も否定できません。このような場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、資本・業務提携先、外部委託先において、業務遂行上の問題が生じ、商品・サービスの提供等に支障をきたす場合、顧客情報等の重要な情報が漏えいする等の事故、違法行為、不正行為、不祥事等が発生した場合等には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループが、他の企業を買収するに当たっては、買収先企業や買収先事業を効果的かつ効率的に当社グループの事業と統合できない可能性、買収先企業の重要な顧客、仕入先、その他関係者との良好な関係を維持できない可能性、買収資産の価値が毀損し、損失が発生する可能性などがあります。また、想定した事業環境と異なる状況が発生する可能性、経営陣を含む人材流出・不足等の可能性などがあります。このような事象が発生した場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、今後の業務範囲の拡大については、当社グループが業務範囲を拡大することができたとしても、限定的な経験しか有していない業務分野に進出した場合、競争の激しい分野に進出した場合や業務拡大により過度の人的・物的負担が生じた場合等において、業務範囲の拡大が功を奏する保証はなく、当初想定した成果をもたらさず、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 情報通信システム及び個人情報その他の機密情報の漏えいに関するリスク
当社グループは、郵便・物流事業、郵便局窓口事業、国際物流事業、銀行業、生命保険業等を営んでおり、当社グループのコンピュータシステムは、顧客や各種決済機構等のシステムとサービスの提供に必要なネットワークで接続されるなど極めて重要な機能を担っております。これらについて、地震、噴火、津波、台風、洪水、大雪、火災等の自然災害やテロリズム等に加えて、人的過失、事故、停電、コンピュータウイルスの感染、不正アクセス等のサイバー攻撃、システムの新規開発・更新における瑕疵、通信事業者等の第三者の役務提供の瑕疵等により重大なシステム障害や故障等が発生する可能性があります。こうしたシステムの障害、故障等が生じた場合に、業務の停止・混乱等及びそれに伴う損害賠償、行政処分、社会的信用の低下、対応や対策に要する費用等が発生することにより、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、多くの顧客や取引先等から様々な情報を取得しているほか、事業・人事などに関する多数の情報を保有しており、これらの情報については、郵便法、銀行法、保険業法、金融商品取引法等のほか、個人情報の保護に関する法律等に基づき適切に取り扱うことが求められていることから、当社グループは、かかる事態に対処するため、外部の専門人材の活用等多様な防御対策を講じることにより、システム障害等の発生の未然防止に努めています。しかしながら、当社グループのコンピュータシステムの障害・故障その他の理由により、当社グループが保有する個人情報及び機密情報等の外部への漏えいが発生した場合は、損害賠償や当該事案への対応費用、行政処分、社会的信用の低下による顧客の喪失等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、不正アクセス等のサイバー攻撃に対しては、メールやWeb閲覧に対するウイルス感染抑止等の入口対策、外部デバイスの接続制限や、許可された通信先以外の遮断等の出口対策を講じるとともに、当社グループのサイバーセキュリティ担当役員によるグループサイバーセキュリティ委員会を設置し、グループ全体でセキュリティの高度化を推進することに加え、セキュリティ専門家による点検・指導、対策推進等サイバー攻撃への対応に努めております。しかしながら、かかる施策によっても完全に高度化するサイバー攻撃等を防ぐことは困難であり、特に近年、不正アクセス等サイバー攻撃による企業・団体が保有する個人情報等の漏えいが多発しており、在宅勤務(テレワーク)の増加により、かかる脅威は今後さらに増大する可能性があります。また、グループ共通のアプリ・IDシステムの導入など、お客さまとの接点のデジタル化によってもかかる脅威は増大する可能性があるほか、当社グループの主要事業に適用される規制の影響により、利便性と安全性を兼ね備えたアプリの開発に支障が生じる可能性があります。
加えて、当社グループは、基幹ITシステムを含む当社グループのITシステムのアップグレードを行っており、かつ、新規のシステム投資を行うこともありますが、かかる作業の遅延、失敗、多額の費用発生により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
Ⅲ.郵便・物流事業、郵便局窓口事業、国際物流事業に関するリスク
(1) 郵便局窓口業務のサービス品質に関するリスク
日本郵便及びかんぽ生命保険におけるお客さまのご意向に沿わず不利益が生じた保険契約乗換等に係る事案(以下「募集品質問題」といいます。)及び法令違反又は社内ルール違反が認められた事案の発生により、当社グループに対する株主、投資家、お客さま、その他ステークホルダーからの信頼は未だ回復途上にあり、早期の信頼回復が最重要課題と認識しております。当社グループは、募集品質問題について、お客さまからの信頼の早期回復、並びに保険募集プロセスにおける法令遵守及びお客さま本位の意識の徹底による募集品質の確保・向上を図るため、お客さまの不利益の解消に向けたご契約調査等の対応や、2020年1月31日付で監督当局に提出した業務改善計画に基づく再発防止策の実施に最優先で取り組んでまいりました。
また、日本郵便において行われた一部のお客さまのご意向に沿っていない取引のうち法令違反が認められたかんぽ生命保険商品と投資信託の横断的な販売について、契約無効措置等のお客さま対応を実施するとともに、日本郵便が商品横断的なデータモニタリングを行うなど、改善に向けた取組みを進めてまいりました。
しかしながら、今後、これらの取組みが期待された効果を発揮しない又は効果の発揮までに想定以上の時間を要する場合には、当社グループに対するステークホルダーからの信頼の回復に影響を及ぼす可能性があります。さらに、お客さまのご意向に沿わず不利益となる同種の事例、法令違反又は社内ルール違反となる事例が判明する場合、過去に締結した保険契約ないし投資信託契約等に対する苦情や無効申請等、原状回復のお申し出が再発する又は解消しない等の場合には、当社グループの社会的信用、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このように今後募集品質問題等に関連して当社グループが遵守すべき法令等の義務に反する行為が発生・発覚する場合、又は業務改善計画の進捗及び改善状況について監督当局がそれらを不十分であると判断した等の場合、当該違反行為の規模や程度又は日本郵便及びかんぽ生命保険の取組状況によっては、監督当局から再度業務停止命令等の行政処分を受けるなど、当社グループの経営や事業の存続にとって重大な悪影響を及ぼす可能性があります。また、さらに追加での各種調査やお客さまの不利益の解消に向けた保険契約に関する手続きが必要となる場合には、追加的な費用を要する可能性や新契約の獲得に悪影響を及ぼす可能性があります。加えて、募集品質問題に関連して、保険契約者等から訴訟を提起された場合にも、当社グループの社会的信用、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、日本郵便及びかんぽ生命保険は、上記の募集品質問題等を受けて、2019年7月以降、郵便局からの積極的なかんぽ生命保険の保険商品のご提案を控えていたことに加えて、2019年12月27日に監督当局から業務停止命令を受けたことに伴い、2020年1月1日から2020年3月31日までの間、保険募集及び保険契約の締結を停止しておりましたが、2020年10月5日からお客さまにご迷惑をおかけしたことをお詫びすることを第一とする信頼回復に向けた業務運営を開始し、2021年4月1日からは、お客さまのニーズの確認を行いながら、お客さまニーズに応じた金融商品の情報提供やご提案を行うことで、営業活動を通じたお客さまとの信頼関係の構築を進めていく新たな営業スタンスへ移行しております。
当社グループの2021年度から2025年度を計画期間とする中期経営計画においては、お客さま本位の業務運営を徹底し、お客さまからの信頼を回復することを基本方針として掲げ、勧誘方針やかんぽ営業スタンダードなどのプリンシプルに基づく活動をはじめ、適切な募集プロセスのもと、お客さまが納得・満足の上で商品・サービスをご利用いただく活動の展開、お客さまへの丁寧なアフターフォローを通じた信頼関係の再構築に取り組むなど、信頼回復に向けた取組みを継続してまいります。また、新しいかんぽ営業体制を構築し、当社グループのコアビジネスである生命保険業を安定的かつ持続的に提供するために、日本郵便のコンサルタント(2020年4月に日本郵便の渉外社員の呼称をコンサルタントへ変更しております。以下同じ。)と窓口社員の役割を明確化し、コンサルタントについては、かんぽ生命保険が人件費等の負担を含め直接責任をもってマネジメントする体制に改めるとともに、コンサルタントは生命保険およびがん保険のアフターフォローと保障のご提案に専念します。
しかしながら、これらの取組みが奏功しない場合には、既存契約の維持を図れない又は新契約の獲得が想定よりも進まないなどの理由により、当社グループの業務運営及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、新契約の獲得が進まないなどの期間がより長期にわたり継続する場合には、当社グループの中期的な事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
加えて、日本郵便が取り扱う金融商品の販売が回復しない場合には、日本郵便が受領する金融2社及びその他の提携金融機関からの受託手数料の減少により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 郵便・物流事業における経営環境の変化に関するリスク
郵便・物流事業においては、近年のeコマース市場の拡大に伴う宅配便需要の急激な増加とこれによる労働力の不足といった経営環境の急激な変化が顕在化しており、他の主要な物流事業者等においては、基本運賃や大口顧客向け特約運賃の値上げを含む契約条件の改定、配達時間帯や再配達に係るサービス内容の見直し、労働環境又は労働条件の改善のための取組みを行っているものも見受けられます。日本郵便においては、P-DXの推進やオペレーション改革などにより業務の効率化を徹底しますが、当社グループがこのような経営環境の変化に適時かつ適切に対応できなかった場合、当社グループの競争力、収益性、人材の確保等に影響し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
電子メール、SNSやスマートフォンの普及に加え、当社グループの顧客における請求書や取引明細書等の電子メール送信・Web閲覧の浸透等の影響により、郵便物数は年々減少を続けており、加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大によってデジタル化が進み、今後もかかる傾向は継続することが予想されます。また、当社グループの郵便・物流事業における重要な収益の柱となっている年賀状の配達数も年々減少傾向にあり、国民の生活様式や社会慣行の変化等の要因により、今後も減少傾向が進む可能性があります。
日本郵便は、消費税増税に伴い2019年10月1日に郵便料金及び荷物運賃の改定を行いました。また、2020年12月4日に公布され、2021年5月1日に施行された改正郵便法を受けて、同年10月以降、普通扱いとする郵便物等の土曜日配達の休止、郵便区内特別郵便物の差出条件の見直し、速達郵便料金の1割程度の引下げ等を行っており、送達日数についても、宛先の地域に応じて2022年1月以降順次1日程度の繰下げを行う予定です。これら郵便料金の改定、サービスの見直し等により、当社グループが取り扱う郵便物等の数に影響を及ぼす可能性があります。これらの事情により、当社グループの郵便・物流事業において取り扱う郵便物等の数が減少し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 金融2社からの郵便局窓口業務の受託に関するリスク
日本郵便が金融2社との間で締結している銀行窓口業務契約等及び保険窓口業務契約等に基づく受託手数料は、銀行法・保険業法に定められたアームズレングスルール等を遵守することが求められており、恣意的な変更が行われることは想定しておりませんが、今後、上記各窓口業務契約等が、合理的な理由に基づき受託手数料の額を減額する又は対象となる業務の範囲を限定する等、日本郵便にとって不利に改定された場合には、当社グループの郵便局窓口事業における収益に影響を与える可能性があります。また、特にゆうちょ銀行から受け取る受託手数料については、ゆうちょ銀行の直営店での業務コストをベースに、日本郵便での取扱実績に基づいて委託業務コストに見合う額が算出されます。ゆうちょ銀行は、業務効率化等を通じて日本郵便への委託手数料の減少に向けた取り組みを行う方針であり、ゆうちょ銀行においてかかる業務コストの削減が行われた場合には、当社グループの郵便局窓口事業における収益に影響を与える可能性があります。さらに、これらの受託手数料の一定部分は、日本郵便において取り扱われた業務の量にかかわらず一定の計算方法により算定されるものとされていますが、今後仮に金融2社が日本郵便における業務量に比例する受託手数料の割合を高めようとする場合には、当社グループの郵便局窓口事業における収益に影響を与える可能性があります。
また、2018年12月1日、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法の一部を改正する法律が施行され、2020年3月期から郵便局ネットワーク維持に要する費用のうち、ユニバーサルサービス確保のために不可欠な費用(日本郵便が負担すべき額を除く。)は、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険からの拠出金を原資として郵政管理・支援機構から日本郵便に交付される交付金で賄われることとなり、これを契機に委託手数料が見直されました。かかる交付金・拠出金制度の下で、今後も同手数料が見直される場合があり、その内容によっては当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
2021年3月期における銀行窓口業務契約等及び保険窓口業務契約等に基づく各社からの受託手数料並びに郵政管理・支援機構から交付される交付金は、それぞれ3,663億円及び2,070億円並びに2,934億円であり、それぞれ当社グループの郵便局窓口事業セグメントにおける経常収益の約29%及び約17%並びに約24%を占めています。
当社グループとしては、今後もユニバーサルサービスが利用者本位の簡便な方法により郵便局で一体的に利用できるようにするとともに、将来にわたりあまねく全国において公平に利用できることが確保されるよう、日本郵便と金融2社との関係を引き続き強化していく所存であり、当社が金融2社の株式を処分したこと(なお、2021年5月に公表したとおり、当社は、かんぽ生命保険が行う自己株式取得に応じた売付け及び株式処分信託設定による処分により、当社が保有するかんぽ生命保険普通株式163,306,300株を処分しており、この結果、当社のかんぽ生命保険に対する議決権保有割合は49.9%となっています。)により当社による両社への影響力が低下・消滅した場合においてもこの関係は変わるものではないと当社としては考えております。しかし、金融2社はユニバーサルサービスの提供に係る法的義務を負うものではなく、金融2社が、郵便局ネットワークに代替する販売チャネル(例えば、ATMの相互利用、オンライン取引、グループ外の企業への委託を含みますがこれらに限られません。)をより重視するようになった場合等や、窓口業務の健全・適切な運営確保の観点から特段の事由が生じた場合等、銀行窓口業務契約等及び保険窓口業務契約等の解除が発生した場合には、当社グループの郵便局窓口事業の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 国際物流事業に関するリスク
① トール社の業績に関するリスク
国際物流事業を担うトール社の事業は、豪州経済の減速や新型コロナウイルス感染症、サイバー攻撃等の影響等もあり、厳しい経営環境が継続しております。赤字が継続しているエクスプレス事業については、トール社において売却の検討を行ってまいりましたが、2021年8月、Allegro Funds Pty Ltdの傘下企業への譲渡手続きが完了いたしました。本件譲渡に伴い、当社グループは、2021年3月期において、特別損失として674億円(減損損失619億円、その他の特別損失54億円)、また、当第2四半期連結累計期間において、事業譲渡損106億円を計上しております。また、エクスプレス事業の譲渡手続きは完了したものの、当該事業から残存するトール社のオペレーションを完全に切り離すことには困難を伴い又は時間を要する可能性があり、かかる対応のために追加の費用等が生じる可能性があります。
また、トール社を親会社とする連結グループは、2021年9月末日現在で824億円の債務超過となっており、依然厳しい経営状況にあります。エクスプレス事業の譲渡後も、日本郵便は、トール社の残るロジスティクス事業及びフォワーディング事業の採算性の向上に努めるとともに、JPトールロジスティクス株式会社(以下、「JPトールロジスティクス」といいます。)及びトールエクスプレスジャパン株式会社(以下、「トールエクスプレスジャパン」といいます。)の活用などにより、豪州に依存した経営構造から脱却し、日本を含むアジアを中心としたビジネスモデルへの転換による成長を図りますが、かかる経営改善策及び成長戦略が功を奏せず、トール社の業績が向上しない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があり、トール社の保有する物流設備その他の固定資産について更なる減損損失を計上する可能性もあります。また、日本郵便がトール社の事業再編その他日本を含むアジアを中心としたビジネスモデルへの転換に係る施策をさらに進めるに際して総務大臣の認可が必要となる場合、必要な認可を適時に取得できないか又はそもそも認可を得られないことにより、事業再編等に支障が生じる可能性があります。
さらに、2020年1月にトール社は標的型サイバー攻撃を受け、一時的に全システムのシャットダウンを実施し、サービスの提供に影響を及ぼしました。さらに、同年5月に別の標的型サイバー攻撃を受けたことにより、再び全システムのシャットダウンを実施するとともに、情報流出が確認されたため、情報流出範囲の特定等、必要な対策を講じています。今後もサイバー攻撃を受け、業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、トール社は、日本郵便の買収以前に多数の企業買収を行い、事業統合を実施している過程にありますが、当社グループとの事業統合も含め統合が予定通り進捗しない場合には、複数のビジネス・ユニットによる取引先の競合やオペレーションの重複等が解消されないこと、複雑な業務及び設備、並びに異なる地理的エリアに存する多様な企業風土と異なる言語に基づく従業員を十分に管理できないこと、トール社と競合関係にある同業他社が、トール社より優れた革新的な商品・サービスを提供することで、トール社のマーケットシェア及び利益が低減すること、自然災害、事故等により、基幹ⅠTシステム、主要な輸送手段、倉庫が損害等を受けること、さらには、買収時に発見できなかった問題が発生すること等により、当社グループ又はトール社の事業に負の効果を及ぼして、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 不動産事業に関するリスク
当社グループは、郵便局窓口事業において、日本郵便が保有する不動産を有効活用して事務所・商業施設・住宅等の賃貸・管理事業、分譲住宅事業等の不動産事業を営んでおります。当社グループは多くの不動産を保有しているものの、不動産事業におけるノウハウが限られていること、また、必要な人員の採用、定着が進まないこと等により、当該事業を発展させることができない可能性があります。加えて、当社グループは、グループ保有不動産の再開発を加速することで、不動産事業の利益拡大を目指してまいりますが、不動産市況等によってはかかる開発が当社グループの想定通りに進捗する保証はなく、また、グループ外の企業との共同プロジェクトにおいては、当社グループによるプロジェクトへの管理が及ばなくなったり、共同事業者との間で意見の不一致が生じること等により、事業の進捗に支障が生じる可能性があります。
また、当該事業については、国内外の景気又は特定地域の経済状況や人口、市場における需給等の変化により、不動産価格の下落、賃貸料の下落や未収、空室率の上昇、建築資材の価格や工事労務費等の高騰、棚卸資産の増加、さらに、法的規制の変更、大規模災害や感染症の発生等の影響を受ける可能性があります。特に今般の新型コロナウイルス感染症の拡大による緊急事態宣言等を受けた深刻な経済活動の停滞により、テナント賃料の減免等が一部発生しているほか、空室率の上昇、開発中の案件における竣工時期の遅延等が想定され、また、収束後も、eコマース市場の拡大などの消費者動向の変化、ライフスタイルや働き方の変容により、オフィス需要や商業施設(特に小売り)の需要の変化等の影響を受ける可能性があります。これらの事象により、当社グループの不動産事業の収益や費用に影響を及ぼしたり、保有不動産等に評価損・減損損失や売却損が発生する可能性があります。また、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
Ⅳ.銀行業に関するリスク
(1) 市場リスク
ゆうちょ銀行が保有する金融資産・負債の多くは、市場の変動による価値変化等を伴うものであります。ゆうちょ銀行では、中長期的に収益の確保を図ることを目的に、資産・負債を総合管理するALM(Asset Liability Management)の枠組みの下、市場環境の変化、リスク・リターン等を踏まえた機動的なポートフォリオ運営を行っている他、ストレステストや損益シミュレーション等を実施することにより、市場リスク等を適切に管理するよう努めております。しかし、かかる管理にかかわらず、例えば、新型コロナウイルス感染症の拡大による歴史的な市場の動揺、さらに世界経済への深刻な影響あるいはその懸念等を背景にした大幅な市場変動等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があり、中長期的な収益の確保を目的とした外国証券やオルタナティブ資産への投資等、運用の高度化・多様化が目的に即した結果を生まない可能性もあります。
① 金利リスク
ゆうちょ銀行が保有する日本国債(2021年3月末日現在、50.4兆円・総資産額の22%)や外国証券(2021年3月末日現在、その他の証券(外国債券や主な投資対象が外国債券である投資信託等で構成)は71.1兆円・総資産額の31%)などの金融資産と、定額貯金をはじめとする貯金や外貨を含む市場性調達の負債の期間や金利更改サイクル等には、差異が存在します。このため、金利(長期や短期の金利)の変動は、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、2021年3月期末現在において、日本国債の一部の金利がマイナスとなる等市場金利は歴史的な低水準にあり、さらに、今後の金融政策の動向によりかかる金利水準が長期に亘り継続し又は低下する場合、運用収益の減少に比して、相対的に貯金の調達コストが減少しないことにより、資金粗利鞘が減少し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、市場金利の変動は、ゆうちょ銀行の債券ポートフォリオ等の価値に影響を及ぼします。例えば、国内外の景気変動、中央銀行の金融政策、日本国政府の財政運営やその信認の変化等、様々な要因により市場金利が上昇した場合、保有する債券等の価値下落によって評価損・減損損失や売却損等が生じ、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
加えて、定額貯金(2021年3月末日現在、83.4兆円・総貯金額の44%。預入から6か月経過後は払戻し自由、3年までは6か月ごとの段階金利、それ以降は固定金利の10年満期・複利貯金)について、急激な市場金利上昇等により、事前のリスク管理の想定を超える貯金流出や預替えが発生した場合にも、計画以上の運用原資の減少や調達コストの上昇を通じて、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、ゆうちょ銀行は、金利リスク状況のモニタリングの一環として、監督当局による「主要行等向けの総合的な監督指針」において定められた重要性テストの過程で用いられる手法に基づき、金利変動による資産・負債の経済価値の減少額(以下「ΔEVE」といいます。)を計測しております。今後、ゆうちょ銀行のΔEVEの最大値が重要性テストにおける評価基準である自己資本の額の20%を超え、監督当局から深度ある対話を行う必要が認められる銀行と判断される場合には、対話を通じて共有された課題認識に基づき、原因への対応も含めて必要な改善対応を求められる可能性があります。なお、仮に当該改善計画を確実に実行させる必要があると監督当局から判断された場合、監督当局から行政上の措置が課される可能性があります。
重要性テストの適用については、監督指針において、「ゆうちょ銀行は、法令上、一部の資産について国債等の安全資産の保有が義務付けられているため、(重要性テストに該当する場合の)監督上の対応をするに当たっては、当該特殊事情を適正に勘案することとする。」とされております。
また、国際的な金融規制の流れを考慮し、内部管理として、国際統一基準行目線での管理も行っております。
② 経済・社会情勢、市場に係るリスク
ゆうちょ銀行が行う当社グループの銀行業は、その収益の多くが日本国内での貯金調達や国内外での有価証券運用によって得られており、国内外の景気・信用状況や人口動態等の経済・社会情勢、金利・為替等の市場の変動・悪化が、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。例えば、消費税率の引き上げによる家計の可処分所得の低下や、少子高齢化に伴い、日本の貯蓄率・預金水準が低下し、ゆうちょ銀行の貯金残高が減少する可能性があります。また、大幅な市場変動により、ALMやリスク管理態勢が期待通り奏功せず、ゆうちょ銀行の事業の低迷や資産内容の悪化、資金調達力・資産流動性の低下等が生じる可能性があります。このような場合、中長期的な収益の確保を目的とした運用の高度化・多様化が、目的に即した結果を生まない可能性もあります。
また、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、2021年8月末時点で四度に亘って政府より緊急事態宣言が出される等、引き続き新型コロナウイルス感染症が国際社会・世界経済にとって大きな脅威となっております。ゆうちょ銀行では、お客さまや社員への感染拡大防止や業務継続態勢の確保に努めておりますが、かかる対応にかかわらず、ゆうちょ銀行の商品・サービスの利用者が著しく減少した場合、また、当社グループ社員に感染が拡大することにより業務の継続が困難となった場合等は、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 事業戦略・経営計画に係るリスク
ゆうちょ銀行は、“信頼を深め、金融革新に挑戦”のスローガンのもと、5つの重点戦略である「リアルとデジタルの相互補完による新しいリテールビジネスへの変革」、「デジタル技術を活用した業務改革・生産性向上」、「多様な枠組みによる地域への資金循環と地域リレーション機能の強化」、「ストレス耐性を意識した市場運用・リスク管理の深化」、「一層信頼される銀行となるための経営基盤の強化」を通じて、2021年度から2025年度までを計画期間とする中期経営計画を推進しております。しかしながら、これらに向けたゆうちょ銀行の事業戦略・経営計画は、各種のリスクにより実施が困難となり、又は有効でなくなる可能性があります。また、本項に記載したリスク要因等に伴い、事業戦略・経営計画の策定時に前提とした各種の想定が想定通りとならないこと等により、当初計画した成果が得られない可能性もあります。特に、市場(金利・為替等)・経済情勢(景気・信用状況等)等が計画策定時の想定通り安定推移しなかった場合、例えば、市場金利の低下による運用利回りの減少によって計画が達成できない可能性、米ドルをはじめとする外貨調達コストが上昇することによって計画を達成できない可能性、海外のクレジットスプレッド拡大によるゆうちょ銀行が保有する有価証券中の投資信託の特別分配金発生によって計画が達成できない可能性、プライベート・エクイティの投資先の企業価値や売却時期が想定対比で乖離することによって計画が達成できない可能性、国際分散投資等の高度化・加速を継続していく中で、適切なポートフォリオ分散を達成できない可能性、より高いリスクを有する運用資産の増加によって価格変動リスクを受けやすくなり、ゆうちょ銀行の事業、業績及び財政状態に及ぼす影響が大きくなる可能性があります。さらに、DXの推進等による、各種決済サービス及び資産形成サポートサービスの利用促進等並びに店舗改革等の業務効率化、運用・リスク管理・営業等の人材確保・育成が、想定通り進捗しなかった場合、役務収支の拡大や営業経費の削減等の計画が達成できなくなる可能性があります。また、減損損失、売却損の計上等により十分な利益水準が確保できない場合や、法令によりその他有価証券の評価損が発生した際は分配可能額から控除する必要があることから、相場変動によりその他有価証券の評価損が拡大し、分配可能額を確保できない場合等には、株主還元の目標が達成できない可能性があります。
(9) LIBOR等の指標金利に関するリスク
ゆうちょ銀行は、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)等の指標金利を参照する金融商品を保有しており、さらに当該指標金利は、ゆうちょ銀行内における金融商品の評価等においても利用されております。
2014年7月に、金融安定理事会が、金利指標の改革及び代替金利指標としてリスク・フリー・レートの構築を提言し、また、2017年7月には、LIBORを規制する英国の金融行動監視機構(FCA)長官が、2021年末以降はLIBOR公表継続のためにパネル銀行にレート呈示を強制する権限を行使しない旨表明しており、2021年末以降のLIBORの公表には不確実性があるとされていましたが、2021年3月5日、LIBOR運営機関(IBA)が、米ドルの一部テナーを除き、2021年12月末をもってLIBORの公表を停止する旨を公表しました(米ドルの一部テナーは、2023年6月末まで公表継続)。
ゆうちょ銀行では、LIBOR公表停止に向けて、代替金利指標への移行に対する対応を進めており、市場でも後継指標の確定値の公表が開始されるなどの進捗が見られますが、後継指標に関する市場慣行等、未確定事項が残存しており、参照金利や評価方法の変更等により、指標金利を参照するゆうちょ銀行の金融資産につき損失が発生し、また、システム開発が必要になること等に伴う費用の増加等の要因により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります
(10) 東京証券取引所におけるプライム市場移行に係るリスク
2022年4月に予定されている東京証券取引所の市場区分見直しに際し、ゆうちょ銀行は現在市場第一部に上場しており、新市場区分移行手続の対象となります。
2021年7月9日、東京証券取引所より、新市場区分における上場維持基準への適合状況に関する判定結果(2021年6月30日基準)が通知され、当該通知の結果、ゆうちょ銀行は、プライム市場の上場維持基準のうち、「流通株式比率35%以上」に適合しませんでした。
「新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書」等を提出・開示することにより、当分の間、経過措置の適用対象となる結果、プライム市場へ移行することが可能となり、経過措置の適用期間中は上場が維持されますが、経過措置の適用期間中においては、当該計画書に記載の事項を遵守し、適切に進捗させる必要があります。当該計画の適切な実行については、各種のリスクによりその実施が困難となり、又は有効でなくなる可能性がある等、不確実性を伴い、また仮に当該計画の遵守ができない場合には、上場維持が認められなくなる可能性があります。
また、「JPビジョン2025」(日本郵政グループ中期経営計画)において、当社は当該経営計画期間中のできる限り早期に、ゆうちょ銀行株式の保有割合を50%以下とする方針を発表しており、ゆうちょ銀行としても当該方針に沿って民営化プロセスを着実に推進することとしております。当社のゆうちょ銀行株式保有割合が低下した場合、ゆうちょ銀行の流通株式比率向上に寄与することが期待されますが、その過程において、ゆうちょ銀行株式の追加的な売却が行われ、又はかかる売却により市場で流通するゆうちょ銀行の株式数が増え需給が悪化するとの認識が市場で広まった場合には、ゆうちょ銀行株式の流動性・株価形成等に影響を及ぼす可能性があります。
Ⅴ.生命保険業に関するリスク
(1) 保険募集プロセスにおける品質確保に関するリスク
日本郵便及びかんぽ生命保険における募集品質問題及び法令違反又は社内ルール違反が認められた事案の発生により、当社グループに対する株主、投資家、お客さま、その他ステークホルダーからの信頼は未だ回復途上にあり、早期の信頼回復が最重要課題と認識しております。
当社グループは、募集品質問題について、お客さまからの信頼の早期回復、並びに保険募集プロセスにおける法令遵守及びお客さま本位の意識の徹底による募集品質の確保・向上を図るため、お客さまの不利益の解消に向けたご契約調査等の対応や、2020年1月31日付で監督当局に提出した業務改善計画に基づく再発防止策の実施に最優先で取り組んでまいりました。
また、日本郵便において行われた一部のお客さまのご意向に沿っていない取引のうち、法令違反が認められたかんぽ生命商品と投資信託の横断的な販売について、契約無効措置等のお客さま対応を実施するとともに、当社グループとして商品横断的なデータモニタリングを行うなど、改善に向けた取組みを進めてまいりました。
しかしながら、今後、これらの取組みが期待された効果を発揮しない又は効果の発揮までに想定以上の時間を要する場合や、当社グループの役職員全体にこれらの取り組みが徹底されない場合には、当社グループに対するステークホルダーからの信頼の回復に影響を及ぼす可能性があります。さらに、お客さまのご意向に沿わず不利益となる同種の事例、法令違反又は社内ルール違反となる事例が判明する場合、過去に締結した保険契約に対する苦情や無効申請等のお申し出が再発する又は解消しない等の場合には、当社グループの社会的信用、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このように今後募集品質問題等に関連して当社グループが遵守すべき法令等の義務に反する行為が発生・発覚する場合、又は業務改善計画の進捗及び改善状況について監督当局がそれらを不十分であると判断した等の場合、当該違反行為の規模や程度又は当社グループの取組状況によっては、監督当局から再度業務停止命令等の行政処分を受けるなど、当社グループの経営や事業の存続に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。また、さらに追加での各種調査やお客さまの不利益の解消に向けた保険契約に関する手続きが必要となる場合には、追加的な費用を要する可能性や新契約の獲得に悪影響を及ぼす可能性があります。加えて、募集品質問題に関連して、保険契約者等から訴訟を提起された場合にも、当社グループの社会的信用、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
かんぽ生命保険は、上記の募集品質問題等を受け、2019年7月以降、郵便局及びかんぽ生命保険支店からの積極的なかんぽ生命保険商品のご提案を控えていたことに加えて、2019年12月27日に金融庁から業務停止命令を受けたことに伴い、2020年1月1日から2020年3月31日までの間、かんぽ生命保険商品に係る保険募集及び保険契約の締結を停止しておりましたが、2020年10月5日からお客さまにご迷惑をおかけしたことをお詫びすることを第一とする信頼回復に向けた業務運営を開始し、2021年4月1日からは、お客さまのニーズの確認を行いながら、お客さまニーズに応じた金融商品の情報提供やご提案を行うことで、営業活動を通じたお客さまとの信頼関係の構築を進めていく新たな営業スタンスへ移行しております。
かんぽ生命保険の2021年度から2025年度を計画期間とする中期経営計画においては、お客さま本位の業務運営を徹底し、お客さまからの信頼を回復することを基本方針として掲げ、勧誘方針やかんぽ営業スタンダードなどのプリンシプルに基づく活動をはじめ、適切な募集プロセスのもと、お客さまが納得・満足の上で商品・サービスをご利用いただく活動の展開、お客さまへの丁寧なアフターフォローを通じた信頼関係の再構築に取り組むなど、信頼回復に向けた取組みを継続してまいります。また、新しいかんぽ営業体制を構築し、当社グループのコアビジネスである生命保険業を安定的かつ持続的に提供するために、日本郵便のコンサルタントと窓口社員の役割を明確化し、コンサルタントについては、かんぽ生命保険が人件費等の負担を含め直接責任をもってマネジメントする体制に改めるとともに、コンサルタントは生命保険およびがん保険のアフターフォローと保障のご提案に専念します。
しかしながら、本書提出日現在においては、新契約の獲得は募集品質問題発生前と比較して大きく減少しており、今後もこれらの取組みが奏功しない場合には、既存契約の維持を図れない又は新契約の獲得が想定よりも進まないなどの理由により、当社グループの業務運営、業績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。かかる業績及び財政状態への影響は、営業活動や契約管理等に関する手数料支払の減少により利益の増加が先行するというかんぽ生命保険の収益構造の特性により、短期的には顕在化しにくいものの、新契約の獲得が進まないなどの期間がより長期にわたり継続する場合には、かんぽ生命保険の業績、財政状態及びエンベディッド・バリュー(EV)等の指標に影響を及ぼし、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 事業戦略・経営計画が奏功しないリスク
かんぽ生命保険は、募集品質問題等の反省を踏まえ、お客さまから真に信頼される企業へと再生し、持続的な成長を目指すため、「信頼回復に向けた取組みの継続」、「事業基盤の強化」、「お客さま体験価値の向上」、「ESG経営の推進(社会課題の解決への貢献)」、「企業風土改革・働き方改革」、「ガバナンスの強化・資本政策」に取り組むことを基本方針とした中期経営計画をはじめとする事業戦略・経営計画を策定しておりますが、これらに含まれる施策の実施については、各種のリスクが内在しております。また、将来において、かんぽ生命保険による上記施策の実施を阻害するリスクが高まる又は新たなリスクが生じる可能性もあります。
さらに、これらの事業戦略・経営計画は、市場金利、外国為替、株価、事業環境、法制度、一般的経済状況、新しい営業体制のもとでの日本郵便及びかんぽ生命保険の従業員の活動状況、中期経営計画期間中の当社によるかんぽ生命保険株式の早期処分に伴う新規業務に関する上乗せ規制の緩和などの多くの前提を置き、それらに基づいて作成されておりますが、かかる前提通りとならない場合には、当該計画における目標を達成できない可能性があります。
また、かんぽ生命保険は、法令上可能な限りにおいて、新たな収益機会を得るため新規業務への参入を行うことがありますが、当社グループの信頼が回復途上にある状況では、新規業務への参入が困難となる可能性があります。加えて、2021年5月に公表したかんぽ生命保険による自己株式取得等により、当社のかんぽ生命保険株式の議決権比率が50%を下回ったことから、新商品の販売開始に当たって郵政民営化法に基づく認可を取得することは不要となり、事前届出で足りることとなったため、新商品の投入スピードの向上が今後は見込まれるものの、かんぽ生命保険が事前届出を適時適切に行うことができない、郵政民営化委員会による調査審議の結果、金融庁による保険業法上の認可が得られない等の事由により、新商品を予定通りに販売できない可能性や、新商品を販売した場合であっても、商品性が市場ニーズにマッチしない、営業体制が確保できない、予想を超える外部要因等により収益が確保できない等、当該商品が当初想定した成果をもたらさない可能性があります。このような結果、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
さらには、中期経営計画期間において、DX推進等をはじめ、かんぽ生命保険全体で約2,500億円規模の投資を行うこととしております。これらの投資は減価償却を通じて今後数年間にわたり費用化されるとともに、その管理・維持には相当程度のコストが生じる見込みでありますが、投資額やコストに見合った成果が得られない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
Ⅵ.その他事業に関するリスク
(1) 宿泊事業・病院事業に関するリスク
当社の営む宿泊事業及び病院事業は、自然災害、事故、火災、感染症、食中毒、医療過誤等から生じる潜在的な損失の発生、損害賠償責任、行政処分等のリスクを内包しています。
また、高齢化等に伴う近時の医療費適正化の流れは、病院事業の収益性に影響を及ぼす可能性があります。
これらの事業では、近年継続して営業損失を計上していることから、個々の施設(又は病院)の状況を踏まえ、増収対策や経費削減による経営改善を進めていることに加え、宿泊事業においては2019年度に施設配置の見直しも行ったところです。しかしながら、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、病院における患者数の減少やかんぽの宿の全施設の日帰り営業等を一時休止、一部の施設を一時全面休館したことによる施設利用のキャンセル等の多発により、さらに収益減少となり赤字額の拡大が想定されます。かかる状況では、経営改善策が功を奏する保証はなく、当初想定した成果をもたらさず、又は損失が発生する可能性があります。その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社は、2021年9月29日開催の取締役会において、2022年4月1日(予定)及び同月5日(予定)をもって、営業中のかんぽの宿33施設のうち32施設に係る事業を譲渡することを決議し、2021年10月1日付で事業譲渡契約等を締結しており、これに伴い、2022年3月期の連結決算において、特別損失として減損損失及び社員の異動に伴う退職金等の割り増し分を計上することを見込んでおります。
(3) 不動産事業(郵便局窓口事業に係るものを除く。)に関するリスク
当社グループは、事務所・商業施設・住宅等の賃貸・管理事業、分譲住宅事業等の不動産事業を営む日本郵政不動産株式会社を 2018 年4月2日に設立しております。また、日本郵政不動産株式会社は2021年8月2日に同事業を営む郵船不動産株式会社の発行済株式51%を取得し、子会社化しております。当社グループは多くの不動産を保有しているものの、不動産事業におけるノウハウが限られていること、また、必要な人員の採用、定着が進まないこと等により、当該事業を発展させることができない可能性があります。加えて、当社グループは、グループ保有不動産の再開発を加速するとともに、グループ外不動産への投資を強化することで、不動産事業の利益拡大を目指してまいりますが、不動産市況等によってはかかる開発が当社グループの想定通りに進捗する保証はなく、また、グループ外の企業との共同プロジェクトにおいては、当社グループによるプロジェクトへの管理が及ばなくなったり、共同事業者との間で意見の不一致が生じること等により、事業の進捗に支障が生じる可能性があります。
また、当該事業については、国内外の景気又は特定地域の経済状況や人口、市場における需給等の変化により、不動産価格の変動、賃貸料の下落や未収、空室率の上昇、建築資材の価格や工事労務費等の高騰、棚卸資産の増加、さらに、法的規制の変更、大規模災害や感染症の発生等の影響を受ける可能性があります。特に今般の新型コロナウイルス感染症の拡大による緊急事態宣言等を受けた深刻な経済活動の停滞により、テナント賃料の減免等や、空室率の上昇、開発中の案件における竣工時期の遅延等が想定され、また、収束後も、eコマース市場の拡大などの消費者動向の変化、ライフスタイルや働き方の変容により、オフィス需要や商業施設(特に小売り)の需要の変化等の影響を受ける可能性があります。これらの事象により、当社グループの不動産事業の収益や費用に影響を及ぼしたり、保有不動産等に評価損・減損損失や売却損が発生する可能性があります。また、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
Ⅶ.金融2社株式売却等に関するリスク
2021年3月期末現在において、日本国政府は当社の発行済株式の56.9%(自己株式を除く議決権割合は63.3%)を、当社はゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の発行済株式のそれぞれ74.2%(自己株式を除く議決権割合は89.0%)及び64.5%(自己株式を除く議決権割合は64.5%)を保有しておりました。
郵政民営化法に基づき、日本国政府が保有する当社の株式は、できる限り早期に処分するものとされており(ただし、日本国政府による当社株式の保有割合は常に3分の1を超えるものとされております。)、また、当社が保有する金融2社の株式も、金融2社の経営状況、ユニバーサルサービスの責務の履行への影響等を勘案しつつ、その全部をできる限り早期に処分するものとされております。当社では、上記趣旨に沿って、中期経営計画期間中のできる限り早期に金融2社株式の保有割合を50%以下とすることを目指します。
なお、当社は、2021年5月のかんぽ生命保険が行う自己株式取得に応じた売付け及び同年6月の株式処分信託の設定により、当社が保有するかんぽ生命保険普通株式163,306,300株を処分いたしました。
この結果、当社のかんぽ生命保険に対する議決権保有割合は49.9%となりました(本株式処分前64.5%)が、実質支配力基準により、かんぽ生命保険が当社の連結子会社であることに変更はありません。
また、日本国政府は、2021年6月の当社による自己株式取得に応じた売付けにより276,090,500株を処分しました。この結果、日本国政府による当社株式の保有割合は発行済株式の50.7%(自己株式を除く議決権割合は60.6%。なお、当社は、2021年6月18日開催の取締役会決議に基づき、同月30日付で732,129,771株の自己株式を消却しており、当該自己株式の消却を行った後における日本国政府の自己株式を除く議決権割合は60.6%)となりました。さらに、日本国政府は、2021年10月に公表した当社株式の国内売出し及び海外売出し(以下「グローバル・オファリング」といいます。)により当社株式1,027,477,400株を処分しており、その結果、日本国政府による当社株式の保有割合は発行済株式の33.3%(自己株式を除く議決権割合は33.3%)となっております。
以下では、かかる日本国政府による当社株式の売却と、当社による金融2社株式の売却に起因する当社グループの事業等のリスクのうち主要なものを記載しております。
(3) 日本国政府との利益相反・関係希薄化に関するリスク
2021年3月期末現在において、日本国政府は当社株式の議決権(自己株式を除く。)の63.3%を保有しており、また、2021年6月の当社による自己株式取得に応じた日本国政府による当社株式の売付け後の日本国政府の当社に対する議決権割合(自己株式を除く。)は60.6%となっており、さらに、グローバル・オファリング実施後における日本国政府の当社に対する議決権割合は約33.3%となっております。
当社グループの事業その他に関する日本国政府の利益は、当社のその他の株主の利益と相反する可能性があり、日本国政府が、株主としての経済的利益よりも公共政策上の判断等を優先した場合等には、当社のその他の株主の利益に反する支配権又は影響力の行使がなされる可能性があります。グローバル・オファリング実施後の日本国政府の当社に対する議決権割合は約33.3%であるため、グローバル・オファリング後においては、日本国政府は当社の株主総会において、普通決議事項について単独で可決することはできないものの、特別決議事項については自らの意思で否決することができます。郵政民営化法により当社株式の発行済株式総数の3分の1超に相当する株式は日本国政府が引き続き保有することが規定されていることから、グローバル・オファリング実施による当社株式の処分完了後も日本国政府は引き続き当社に重要な影響を及ぼしうることになります。また、上記のとおり、日本国政府は法令上当社株式の発行済株式総数の3分の1超に相当する株式を保有している必要があるため、当社が将来新株式の発行により資金調達を実施する場合には、日本国政府に対しても新株式を割り当てることが必要となり、その条件等について日本国政府と合意できない場合には、結果として当社は新株式の発行による資金調達を断念せざるを得なくなる可能性があります。
他方で、金融2社は、その唯一の株主を当社、当社の唯一の株主を日本国政府とする上場前の状態にあっても、日本国政府その他の公的機関から何らの保証その他の信用補完を受けていたわけではありませんが、当社が金融2社の親会社ではなくなることに伴い、金融2社と日本国政府との関係が弱まった場合には、顧客等が、金融2社の経済的信用力が低下した、又は、ゆうちょ銀行の貯金及びかんぽ生命保険の商品のリスクが上昇したという誤認や錯誤を有することとなる可能性があります。実際の金融2社の経済的信用力等とは無関係であるにも関わらず、かかる誤認や錯誤が社会に広く伝播した場合等においては、顧客等によるゆうちょ銀行への新規貯金の差控えや既存貯金の引出し、かんぽ生命保険との新規契約の差控えや既存契約の解約、その他金融2社との取引量の低下を招き、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
Ⅷ.金融2社との関係について
(1) 当社と金融2社との関係について
③ 金融2社との人的関係
当社の役員1名(増田寬也)が、グループ経営体制の強化、及び金融2社のトップマネジメント強化のため、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の役員(非常勤)を兼任しております。本書提出日現在において、ゆうちょ銀行の役員1名(池田憲人)及びかんぽ生命保険の役員1名(千田哲也)がグループ経営体制の強化のため、ゆうちょ銀行の役員2名(田中進、谷垣邦夫)及びかんぽ生命保険の役員1名(市倉昇)が、国が資本金の3分の1以上を出資している法人である当社として国会において各子会社等に関する専門的な質問への答弁対応の必要があると考えているため、当社の役員(非常勤)を兼任しております(当社の役員の状況については下記「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (2) 役員の状況」をご参照ください。)。
文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当第2四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。
なお、第17期中間連結会計期間より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等(以下「収益認識会計基準等」といいます。)を適用しております。詳細は、「第4 経理の状況 1 中間連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」及び「第4 経理の状況 1 中間連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりであります。
当第2四半期連結会計期間末の資産、負債及び純資産の状況は以下のとおりであります。
資産の部合計は、前連結会計年度末比1,543,815百万円増の299,281,946百万円となりました。
主な要因は、生命保険業等における買現先勘定1,817,534百万円の増、銀行業等におけるコールローン1,310,000百万円の増、銀行業等における有価証券1,212,346百万円の増の一方、生命保険業における債券貸借取引支払保証金2,585,087百万円の減、銀行業及び生命保険業における貸出金384,449百万円の減によるものです。
負債の部合計は、前連結会計年度末比1,536,334百万円増の283,203,398百万円となりました。
主な要因は、銀行業及び生命保険業における売現先勘定2,636,694百万円の増、銀行業における貯金1,972,587百万円の増、銀行業等における借用金851,933百万円の増の一方、生命保険業等における債券貸借取引受入担保金2,590,866百万円の減、生命保険業における責任準備金1,376,835百万円の減によるものです。
純資産の部合計は、前連結会計年度末比7,481百万円増の16,078,548百万円となりました。
主な要因は、利益剰余金1,527,317百万円の増、自己株式の消却等における自己株式830,984百万円の増、非支配株主持分352,088百万円の増の一方、資本剰余金2,626,119百万円の減、繰延ヘッジ損益66,387百万円の減によるものです。
なお、収益認識会計基準等の適用により、その他資産は3,173百万円減少し、その他負債は1,467百万円増加しております。また、利益剰余金の当期首残高は4,972百万円減少しております。
各事業セグメント別の資産の状況は以下のとおりであります。
当第2四半期連結会計期間末のセグメント資産は、前連結会計年度末比53,529百万円増の2,082,822百万円となりました。
主な要因は、現金預け金が70,039百万円増加したほか、減価償却等により有形固定資産が827百万円、無形固定資産が965百万円減少したことによるものです。
当第2四半期連結会計期間末のセグメント資産は、前連結会計年度末比33,280百万円減の2,616,613百万円となりました。
主な要因は、現金預け金が127,982百万円減少した一方、その他資産が112,459百万円増加したことによるものです。
当第2四半期連結会計期間末のセグメント資産は、前連結会計年度末比136,427百万円減の393,109百万円となりました。
主な要因は、トール社エクスプレス事業を譲渡した影響もあり、有形固定資産が106,905百万円、無形固定資産が4,319百万円減少したことによるものです。
当第2四半期連結会計期間末のセグメント資産は、前連結会計年度末比3,458,935百万円増の227,329,565百万円となりました。
主な要因は、現金預け金が276,063百万円、コールローンが1,350,000百万円、有価証券が1,853,768百万円増加したことによるものです。
当第2四半期連結会計期間末のセグメント資産は、前連結会計年度末比1,829,498百万円減の68,343,484百万円となりました。
主な要因は、保有契約の減少に伴い保険契約準備金が減少したことに対応し、有価証券が608,813百万円、貸出金が367,794百万円減少したほか、債券貸借取引支払保証金が2,585,087百万円減少、その他資産の買現先勘定が1,833,958百万円増加したことによるものです。
当第2四半期連結累計期間のわが国の経済情勢を顧みますと、設備投資が持ち直し、輸出は緩やかな増加が続いているものの、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が発出される中、自粛の影響により個人消費は弱い動きとなりました。
世界経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の影響により、一部で依然として厳しい状況が続いているものの、景気の持ち直しの動きがみられます。
金融資本市場では、日本銀行、FRB(米連邦準備制度理事会)とも大規模な金融緩和政策を継続している中で、我が国の10年国債利回りは0.01~0.1%程度で推移し、米国の10年国債利回りは1.2~1.7%程度で推移しました。
日経平均株価は、4月に30,000円台まで上昇しましたが、新型コロナウイルス感染症の感染者数の拡大とそれに伴う緊急事態宣言発出の影響もあり5月には27,300円台まで下落しました。その後、株価は上昇する局面もありましたが、緊急事態宣言の度重なる期間延長の影響もあり、8月に26,900円台まで下落しました。8月下旬にFRB(米連邦準備制度理事会)議長の講演を受けて金融緩和政策が長く続くとの受止めが広がり、また次期首相の景気浮揚策への期待が高まったことから、株価は上昇しました。9月14日には約31年ぶりの高値を記録し、9月末の終値は29,400円台となりました。
このように、当社グループを取り巻く経済情勢は、新型コロナウイルス感染症により大きな影響を受けており、全体としては先行き不透明かつ厳しい環境が継続しているものの、一部で持直しの動きがみられます。
この厳しい事業環境にあって、当第2四半期連結累計期間における連結経常収益は5,750,780百万円(前年同期比111,650百万円増)、連結経常利益は547,668百万円(前年同期比187,031百万円増)、連結経常利益に、特別損益、契約者配当準備金繰入額、法人税等及び非支配株主に帰属する中間純利益を加減した親会社株主に帰属する中間純利益は、265,163百万円(前年同期比86,211百万円増)となりました。
なお、収益認識会計基準等の適用により、当第2四半期連結累計期間の経常収益が29,707百万円減少し、経常費用は30,436百万円減少し、経常利益及び税金等調整前中間純利益はそれぞれ729百万円増加しております。
また、2021年5月に公表したかんぽ生命保険株式の売却により、当社において関係会社株式売却益が87,530百万円発生しております。さらに当社の中間連結貸借対照表において資本剰余金76,576百万円の減少が発生しております。
当社グループは、2021年5月14日に中期経営計画「JPビジョン2025」を公表しております。
グループDXにおいては、当社は、2021年7月1日にJPデジタルを設立いたしました。「リアルの郵便局ネットワークとデジタル(「デジタル郵便局」)の融合」に向けて、グループの横断的・一体的なDX施策の推進やグループのDX人材の育成に注力をしてまいります。
郵便・物流事業においては、日本郵便と楽天は、物流領域における業務提携の取組みや物流DXプラットフォームの共同事業化のため、2021年7月1日にJP楽天ロジスティクスを設立いたしました。また、日本郵便は、2021年9月10日に佐川急便株式会社との間で、物流サービスの共創に向けた両社の事業成長を目的とした協業に関する基本合意書を締結しました。
不動産事業においては、他社との連携やM&Aにより、事業の強化・拡充につなげ、利益の上積みを図ることとしており、これに基づき、日本郵政不動産は、2021年8月2日に日本郵船株式会社の子会社である郵船不動産の発行株式の51%を取得いたしました。新たな収益機会の拡大、グループ保有不動産の有効活用及びグループ外不動産への投資強化を目指してまいります。
その他、当社は、2021年7月1日にJP未来戦略ラボを設置いたしました。「共創プラットフォーム」の実現など、当社グループの横断的な課題に対して、取組方針、計画の立案及び提言を行い、イノベーションの創出につなげるための検討を行ってまいります。
今後も、金融2社株式の売却を見据え、郵便・物流事業の成長や事業ポートフォリオの移行の手段として、様々な分野で買収や提携を積極的に推進していく方針であり、2026年3月期までに5,000億円~1兆円程度の投資を予定しております。
なお、日本国政府は、2021年10月29日に、グローバル・オファリングにより、保有する当社株式について、発行済株式総数の約27%の売出しを行いました。その結果、グローバル・オファリング後における日本国政府による当社に対する議決権保有割合は約33.3%となっております。
各事業セグメント別の業績は、以下のとおりであります。
なお、以下の前年同期比較については、収益認識会計基準等を第17期中間連結会計期間の期首から適用している関係で、「郵便・物流事業」、「郵便局窓口事業」及び「銀行業」セグメントにつきましては、基準の異なる算定方法に基づいた数値を用いております。詳細については、「第4 経理の状況 1 中間連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)及び(セグメント情報等)」をご参照ください。
当第2四半期連結累計期間の郵便・物流事業におきましては、収益について、国際郵便の引受再開による増収があったものの、前年同期の新型コロナウイルス感染症拡大の影響による巣ごもり消費増の反動等により、ゆうパックとゆうパケットの取扱数量が減少し、減収となりました。費用については、コストコントロールの取組み等により、減少しました。この結果、経常収益は955,039百万円(前年同期比9,217百万円減)、経常利益は7,728百万円(前年同期比357百万円増)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、経常収益は54百万円増加し、セグメント利益は684百万円増加しております。また、日本郵便の当第2四半期連結累計期間における郵便・物流事業の営業収益は954,052百万円(前年同期比8,698百万円減)、営業利益は7,206百万円(前年同期比707百万円増)となりました。
(注) 1.第一種郵便物、第二種郵便物、第三種郵便物及び第四種郵便物の概要/特徴は、以下のとおりであります。
2.年賀郵便物は除いております。
3.選挙は、公職選挙法に基づき、公職の候補者又は候補者届出政党から選挙運動のために差し出された通常はがきの物数であります。別掲で示しております。
4.特殊は、速達、書留、特定記録、本人限定受取等の特殊取扱(オプションサービス)を行った郵便物の物数の合計であります。交付記録郵便物用特定封筒(レターパックプラス)及び電子郵便(レタックス、Webゆうびん、e内容証明)を含んでおります。
5.ゆうパックは、一般貨物法制の規制を受けて行っている宅配便の愛称であります。配送中は、追跡システムにより管理をしております。
6.ゆうパケットは、一般貨物法制の規制を受けて行っている宅配便の愛称であります。小型の荷物をお届けするもので、ゆうパックより安値でポスト投函も可能な商品であります。配送中は、追跡システムにより管理をしております。
7.ゆうメールは、一般貨物法制の規制を受けて行っている1kgまでの荷物の愛称であります。主に冊子とした印刷物やCD・DVDなどをお届けするもので、ゆうパックより安値でポスト投函も可能な商品であります。
当第2四半期連結累計期間の郵便局窓口事業におきましては、収益について、2021年4月から新たな営業スタイルに移行しているものの、2019年7月からかんぽ生命保険商品の積極的な営業活動を控えていたことによる保険手数料の減少や、送金決済取扱件数の減少等による銀行手数料の減少のほか、収益認識会計基準の適用等に伴う物販事業収益の減少や、前期の不動産販売収益の剥落等もあり、減収となりました。費用については、収益認識会計基準の適用等に伴う物販事業経費の減少を主因として減少しました。この結果、経常収益は579,172百万円(前年同期比60,766百万円減※)、経常利益は19,395百万円(前年同期比4,077百万円減)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、経常収益は29,501百万円減少しております。また、日本郵便の当第2四半期連結累計期間における郵便局窓口事業の営業収益は572,891百万円(前年同期比43,774百万円減)、営業利益は19,583百万円(前年同期比3,246百万円減)となりました。
※ 当中間連結会計期間より、当社グループの報告セグメントの区分として従来「その他」に含まれていた日本郵政インフォメーションテクノロジー株式会社及び株式会社システムトラスト研究所の営む事業を「郵便局窓口事業」に変更しており、前年同期比については、区分方法の変更に伴う組替後の数値により記載しております。
当第2四半期連結累計期間の国際物流事業におきましては、収益について、フォワーディング事業が各国における需要増を受けた貨物増加により増収になったものの、ロジスティクス事業における新型コロナウイルス感染症関連の大口取扱いの減少や、トール社のエクスプレス事業の譲渡完了による2021年9月以降の収益の剥落等により、全体では減収となりました。費用については、ロジスティクス事業アジア部門における大口取扱いの減少による経費減や、エクスプレス事業の譲渡完了に伴う2021年9月以降の費用の剥落等により、減少しました。この結果、経常収益は366,903百万円(前年同期比6,817百万円減)、経常利益は10,827百万円(前年同期は11,341百万円の経常損失)となりました。また、日本郵便の当第2四半期連結累計期間における国際物流事業の営業収益は366,827百万円(前年同期比6,804百万円減)、営業利益は15,498百万円(前年同期は6,174百万円の営業損失)となりました。
当第2四半期連結累計期間末の国際物流事業の従業員数は、前連結会計年度末から8,297名減少し、13,590名となっております。これは主に、トール社のエクスプレス事業の売却に伴う従業員の売却先への移行等によるものであります。なお、従業員数は就業人員数であり、臨時従業員数(無期転換制度に基づく無期雇用転換者(アソシエイト社員等)を含み、派遣社員を除く。)は除いています。
(注)トール社のエクスプレス事業については、2021年4月21日にAllegro Funds Pty Ltdの傘下企業に譲渡する契約を締結し、2021年8月31日に譲渡手続きを完了しました。
当第2四半期連結累計期間の銀行業におきましては、外債投資信託、プライベートエクイティファンドの収益が増加したこと等により資金利益が増加した一方、役務取引等利益が減少したほか、外債償還益の減少を主因にその他業務利益が減少しました。経費は日本郵便への委託手数料が減少したことを主因に減少しました。
この結果、経常収益は1,154,047百万円(前年同期比323,531百万円増)、経常利益は325,588百万円(前年同期比153,585百万円増)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、当第2四半期連結累計期間の経常収益が294百万円減少し、セグメント利益は50百万円増加しております。
(a) 損益の概要
当第2四半期累計期間の業務粗利益は、前年同期比980億円増加の7,683億円となりました。このうち、資金利益は、外債投資信託、プライベートエクイティファンドの収益が増加したこと等により、前年同期比2,454億円の増加となりました。役務取引等利益は、前年同期比13億円の減少となりました。その他業務利益は、外債償還益の減少を主因に、前年同期比1,460億円の減少となりました。
経費は、日本郵便への委託手数料が減少したことを主因に、前年同期比41億円減少の5,001億円となりました。
業務純益は、前年同期比1,022億円増加の2,681億円となりました。
経常利益は、前年同期比1,537億円増加の3,255億円となりました。
この結果、中間純利益は、2,349億円、前年同期比1,109億円の増益となりました。
(注) 1.業務純益=業務粗利益-経費(除く臨時処理分)-一般貸倒引当金繰入額
2.臨時損益とは、損益計算書中「その他経常収益・費用」から一般貸倒引当金繰入額を除き、金銭の信託運用見合費用及び退職給付費用のうち臨時費用処理分等を加えたものであります。
3.「金銭の信託運用見合費用」とは、金銭の信託取得に係る資金調達費用であり、金銭の信託運用損益が臨時損益に計上されているため、業務費用から控除しているものであります。
4.国債等債券損益=国債等債券売却益+国債等債券償還益-国債等債券売却損-国債等債券償還損-国債等債券償却
5.株式等関係損益=株式等売却益-株式等売却損-株式等償却
6.金額が損失又は費用には△を付しております。
(b) 国内・国際別の資金利益等
国内業務部門・国際業務部門別の資金利益等は次のとおりとなりました。
当第2四半期累計期間は、国内業務部門においては、資金利益は2,373億円、役務取引等利益は631億円、その他業務利益は△72億円となりました。
国際業務部門においては、資金利益は4,292億円、役務取引等利益は△0億円、その他業務利益は458億円となりました。
この結果、国内業務部門、国際業務部門の相殺消去後の合計は、資金利益は6,665億円、役務取引等利益は630億円、その他業務利益は386億円となりました。
イ.国内業務部門
(注) 「国内業務部門」は円建取引であります。
ロ.国際業務部門
(注) 「国際業務部門」は外貨建取引であります。ただし、円建の対非居住者取引については、「国際業務部門」に含めております。
ハ.合計
(注) 1.資金調達費用は、金銭の信託運用見合費用(前第2四半期累計期間4,646百万円、当第2四半期累計期間4,157百万円)を控除しております。
2.「国内業務部門」「国際業務部門」間の内部取引による相殺消去額等は下表のとおりであります。
(c) 役務取引等利益の状況
当第2四半期累計期間の役務取引等利益は、前年同期比13億円減少の630億円となりました。
(参考) 投資信託の取扱状況(約定ベース)
(d) 預金残高の状況
当第2四半期会計期間末の貯金残高は前事業年度末比2兆45億円増加の191兆5,979億円となりました。
○ 預金の種類別残高(末残・構成比)
(注) 1.通常貯金等=通常貯金+特別貯金(通常郵便貯金相当)
2.貯金は銀行法施行規則の負債科目「預金」に相当するものであります。「振替貯金」は「当座預金」、「通常貯金」は「普通預金」、「貯蓄貯金」は「貯蓄預金」、「定期貯金」は「定期預金」に相当するものであります。「定額貯金」は「その他の預金」に相当するものでありますが、「定期性預金」に含めております。
3.特別貯金(通常郵便貯金相当)は独立行政法人郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構(以下「郵政管理・支援機構」といいます。)からの預り金のうち、郵政管理・支援機構が日本郵政公社(以下「公社」といいます。)から承継した定期郵便貯金、定額郵便貯金、積立郵便貯金、住宅積立郵便貯金、教育積立郵便貯金に相当する郵便貯金で満期となったものなどであります。
(e) 資産運用の状況(末残・構成比)
当第2四半期会計期間末の運用資産のうち、国債は50.3兆円、その他の証券は72.5兆円となりました。
(注) 「預け金等」は譲渡性預け金、日銀預け金、買入金銭債権であります。
(f) 業種別貸出金残高の状況(末残・構成比)
(注) 1.「国内」とは本邦居住者に対する貸出、「国際」とは非居住者に対する貸出であります。
2.ゆうちょ銀行は、海外店及び海外子会社を有しておりません。
3.「金融・保険業」のうち郵政管理・支援機構向け貸出金は、前事業年度末340,563百万円、当第2四半期会計期間末293,345百万円であります。
自己資本比率は、銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(平成18年金融庁告示第19号)に定められた算式に基づき、連結ベースと単体ベースの双方について算出しております。
なお、ゆうちょ銀行は、国内基準を適用のうえ、信用リスク・アセットの算出においては標準的手法を採用しております。
連結自己資本比率(国内基準)
(単位:億円、%)
(注) 連結総所要自己資本額は、上記3.に記載しているリスク・アセット等の額に4%を乗じた額であります。
単体自己資本比率(国内基準)
(単位:億円、%)
(注) 単体総所要自己資本額は、上記3.に記載しているリスク・アセット等の額に4%を乗じた額であります。
資産の査定は、「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律」(平成10年法律第132号)第6条に基づき、ゆうちょ銀行の中間貸借対照表の社債(当該社債を有する金融機関がその元本の償還及び利息の支払の全部又は一部について保証しているものであって、当該社債の発行が金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条第3項に規定する有価証券の私募によるものに限る。)、貸出金、外国為替、その他資産中の未収利息及び仮払金、支払承諾見返の各勘定に計上されるもの並びに中間貸借対照表に注記することとされている有価証券の貸付けを行っている場合のその有価証券(使用貸借又は賃貸借契約によるものに限る。)について債務者の財政状態及び経営成績等を基礎として次のとおり区分するものであります。
(a) 破産更生債権及びこれらに準ずる債権
破産更生債権及びこれらに準ずる債権とは、破産手続開始、更生手続開始、再生手続開始の申立て等の事由により経営破綻に陥っている債務者に対する債権及びこれらに準ずる債権をいう。
(b) 危険債権
危険債権とは、債務者が経営破綻の状態には至っていないが、財政状態及び経営成績が悪化し、契約に従った債権の元本の回収及び利息の受取りができない可能性の高い債権をいう。
(c) 要管理債権
要管理債権とは、3カ月以上延滞債権及び貸出条件緩和債権をいう。
(d) 正常債権
正常債権とは、債務者の財政状態及び経営成績に特に問題がないものとして、上記(a)から(c)までに掲げる債権以外のものに区分される債権をいう。
資産の査定の額
⑤ 生命保険業
当第2四半期連結累計期間の生命保険業におきましては、金銭の信託運用損益の改善等により資産運用収益は増加したものの、保有契約の減少による保険料等収入の減少等により、経常収益は3,226,121百万円(前年同期比159,237百万円減)となりました。また、外国籍投資信託からの分配金や金銭の信託で保有する国内株式等からの配当の増加により順ざやが増加したものの、保有契約の減少等に伴う保険関係損益の減少により基礎利益が減少した一方で、金銭の信託運用におけるキャピタル損益が改善したこと等から、経常利益は183,883百万円(前年同期比21,159百万円増)となりました。
(参考1)生命保険業を行う当社の子会社であるかんぽ生命保険の保険引受の状況
(個人保険及び個人年金保険は、かんぽ生命保険が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約を含みません。)
(a) 保有契約高明細表
(注) 個人年金保険の金額は、年金支払開始前契約の年金支払開始時における年金原資と年金支払開始後契約の責任準備金額を合計したものであります。
(b) 新契約高明細表
(注) 1.件数は、新契約に転換後契約を加えた数値であります。
2.個人年金保険の金額は、年金支払開始時における年金原資であります。
(c) 保有契約年換算保険料明細表
(注) 1.年換算保険料とは、1回あたりの保険料について保険料の支払方法に応じた係数を乗じ、1年あたりの保険料に換算した金額であります(一時払契約等は、保険料を保険期間等で除した金額)。
2.医療保障・生前給付保障等には、医療保障給付(入院給付、手術給付等)、生前給付保障給付(特定疾病給付、介護給付等)、保険料払込免除給付(障がいを事由とするものは除きます。特定疾病罹患、介護等を事由とするものを含みます。)等に該当する部分の年換算保険料を計上しております。
(d) 新契約年換算保険料明細表
(注) 1.年換算保険料とは、1回あたりの保険料について保険料の支払方法に応じた係数を乗じ、1年あたりの保険料に換算した金額であります(一時払契約等は、保険料を保険期間等で除した金額)。
2.医療保障・生前給付保障等には、医療保障給付(入院給付、手術給付等)、生前給付保障給付(特定疾病給付、介護給付等)、保険料払込免除給付(障がいを事由とするものは除きます。特定疾病罹患、介護等を事由とするものを含みます。)等に該当する部分の年換算保険料を計上しております。
3.新契約年換算保険料は、新契約に転換による純増加を加えた数値であります。
(参考2)かんぽ生命保険が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約の状況
(a) 保有契約高
(注) 計数は、郵政管理・支援機構における公表基準によるものであります。
(b) 保有契約年換算保険料
(注) かんぽ生命保険が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約について、(参考1)(c)に記載しております個人保険及び個人年金保険の保有契約年換算保険料と同様の計算方法により、かんぽ生命保険が算出した金額であります。
(参考3)かんぽ生命保険の連結ソルベンシー・マージン比率
当第2四半期連結会計期間末におけるかんぽ生命保険の連結ソルベンシー・マージン比率(大災害や株価の大暴落など、通常の予測を超えて発生するリスクに対応できる「支払余力」を有しているかどうかを判断するための行政監督上の指標のひとつ)は、1,090.3%と高い健全性を維持しております。なお、2021年5月に公表したかんぽ生命保険株式の売却により、当社のかんぽ生命保険に対する議決権保有割合は49.9%となり、保険業法に基づく規制は保険持株会社としての規制から保険主要株主としての規制に変わり、連結ソルベンシー・マージン比率の規制は受けないこととなっています。
(注) 保険業法施行規則第86条の2、第88条及び平成23年金融庁告示第23号の規定に基づいて算出しております。
当第2四半期連結累計期間における各報告セグメントの事業のほか、病院事業については、地域医療機関との連携や救急患者の受入の強化等による増収対策、業務の効率化等による経費削減等、個々の病院の状況を踏まえた経営改善を進めているところです。昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた患者数の減少等の影響はあるものの、営業収益は6,866百万円(前年同期比502百万円増)、営業損失は1,898百万円(前年同期は2,129百万円の営業損失)となりました。今後も引き続き上記増収対策や経費削減等、個々の病院の状況を踏まえた経営改善に取り組みます。
宿泊事業については、営業推進態勢の強化やサービス水準向上による魅力ある宿づくりを継続的に進めるとともに、費用管理による経費削減等の経営改善に取り組んでいるところですが、緊急事態宣言の発出に伴うかんぽの宿の休業があった昨年度と比べると経営状況が改善されたものの、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言等を受け、利用制限による利用者数の減少等の理由から、営業収益は3,882百万円(前年同期比1,523百万円増)、営業損失は4,322百万円(前年同期は6,326百万円の営業損失)となりました。なお、かんぽの宿事業は、現在運営している33施設のうち29施設を株式会社マイステイズ・ホテル・マネジメント及びYakushima特定目的会社、3施設を他3社に事業を譲渡することを決議し、2021年10月1日に事業譲渡契約等を締結いたしました。
不動産事業については、当社の子会社である日本郵政不動産において、「旧ゆうぽうと」跡地(東京都品川区)において、大規模複合開発「五反田計画(仮称)」の新築工事に着手するなど、不動産投資を行うとともに、賃貸不動産の賃貸・管理事業を行いました。また、日本郵政不動産は2021年8月2日に郵船不動産の発行済株式51%を取得し、子会社化しております。今後、働き方や人々の行動様式の変容により、不動産の在り方が変化する可能性がありますが、マーケット動向を引き続き注視し、必要な対策を適時適切に実施しつつ、グループ経営基盤を支える収益の柱の一つとなるよう不動産事業を成長させてまいります。
投資事業については、当社の子会社である日本郵政キャピタル株式会社において、当社グループの新規事業の種を探すため、ネットワーク、ブランド力等を活用して成長が期待できる企業への出資を行い、出資先企業と当社グループとの連携を進めました。今後も、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大の影響など、投資先の事業環境の変化による価値や将来の成長性を見極めながら、出資等に取り組みます。
なお、収益認識会計基準等の適用により、当第2四半期連結累計期間の経常収益が243百万円減少し、セグメント利益は5百万円減少しております。
当第2四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物は当期首から123,057百万円増加し、62,761,012百万円となりました。
営業活動においては、銀行業における資金の運用や調達、生命保険業における保険料の収入や保険金の支払等の結果、381,351百万円の収入(前年同期比5,178,500百万円の収入減)となりました。
主な要因として、貯金の増加1,972,587百万円、借用金の増加856,600百万円、責任準備金の減少1,376,835百万円、コールローン等の増加1,355,342百万円があげられます。
投資活動においては、銀行業及び生命保険業における有価証券の売却、償還による収入等及び有価証券の取得による支出等の結果、250,943百万円の収入(前年同期比1,042,454百万円の収入増)となりました。
主な要因として、有価証券の取得による支出19,260,406百万円、有価証券の償還による収入16,161,931百万円、有価証券の売却による収入2,413,641百万円があげられます。
財務活動においては、当社の配当金の支払等の結果、509,101百万円の支出(前年同期比359,695百万円の収入減)となりました。
主な要因として、配当金の支払による支出202,044百万円、自己株式の取得による支出250,000百万円があげられます。
前事業年度の有価証券報告書の「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載した事項のほか、本書の「第2 事業の状況 2 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (6) 主要な設備」に記載の設備投資を計画しております。
銀行持株会社としての当社の連結自己資本比率は、銀行法第52条の25の規定に基づき、銀行持株会社が銀行持株会社及びその子会社の保有する資産等に照らしそれらの自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(平成18年金融庁告示第20号)に定められた算式に基づき、連結ベースについて算出しております。
なお、当社は、国内基準を適用のうえ、信用リスク・アセットの算出においては標準的手法を採用しております。
連結自己資本比率(国内基準)
(単位:億円、%)
(注) 連結総所要自己資本額は、上記3.に記載しているリスク・アセット等の額に4%を乗じた額であります。
(5) 対処すべき課題
当第2四半期連結累計期間において、前事業年度の有価証券報告書に記載した「対処すべき課題」について変更があった事項は以下のとおりであり、変更箇所は下線で示しております。
なお、以下の見出しに付された項目番号は、前事業年度の有価証券報告書における「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)対処すべき課題」の項目番号に対応したものです。
① 当社グループの「お客さまの信頼回復に向けた約束」について
2019年度に発覚したかんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題など金融商品販売に係る不祥事等を受け、当社グループが真にお客さま本位の企業グループに生まれ変わる決意を幅広く公表するために、外部専門家で構成されるJP改革実行委員会の助言も受けながら、「お客さまの信頼回復に向けた約束」を2020年9月に策定いたしました。
2021年9月のJP改革実行委員会において、「日本郵政グループが一丸となり取り組んできた信頼回復に向けた活動は、この1年間で一定の成果があげられたものと評価できる」との評価をいただきました。また、「これからは、本格的に顧客との信頼を構築していくために次のフェーズの活動に移行していくべき。真に顧客本位の事業運営を徹底することで、顧客との信頼構築に向けて取り組んでいくことが必要」との提言をいただきました。
今後は、経営理念や行動憲章の実践、お客さま本位の事業運営に継続的に取り組むとともに、お客さまから更なる信頼を得られるように取り組んでまいります。
お客さまの信頼回復に向けた約束
「目指す姿の約束」
一人ひとりのお客さまに寄り添い、お客さまの満足と安心に最優先で取り組み、信頼していただける会社になることを約束します。
「活動の約束」
〇 お客さま本位の事業運営を徹底し、お客さまにご満足いただける丁寧な対応を行います。
〇 お客さまの声をサービス向上に反映するため、お客さまの声に誠実に耳を傾けます。
〇 社員の専門性を高め、お客さまにご納得いただけるよう正確にわかりやすく説明します。
〇 法令・ルールを遵守し、お客さまが安心してご利用いただける高品質のサービスを提供します。
〇 お客さまのニーズを踏まえ、お客さまに喜んでいただける商品・サービスを提供します。
また、お客さまからの信頼を取り戻すため、当社取締役兼代表執行役社長の直下で実施した「JP VOICEプロジェクト」を活かし、お客さまや社員のご意見・ご要望をグループ一体で業務改善等に活用するなど、経営陣自らがいただいた声を経営に活かしてまいります。
② かんぽ生命保険商品の募集品質に係る問題について
2020年3月期においてかんぽ生命保険及び日本郵便では、お客さまのご意向に沿わず不利益が生じた契約乗換等に係る事案及び法令違反又は社内ルール違反が認められた事案(募集品質問題)が判明いたしました。
これにより、2019年12月27日、当社は、総務大臣より日本郵政株式会社法第13条第2項に基づく業務改善命令、金融庁より保険業法第271条の29第1項に基づく業務改善命令を、日本郵便は、総務大臣より日本郵便株式会社法第15条第2項に基づく業務停止命令及び業務改善命令、金融庁より保険業法第307条第1項及び第306条に基づく業務停止命令及び業務改善命令を、かんぽ生命保険は、金融庁より保険業法第132条第1項に基づく業務停止命令及び業務改善命令を受けました。2019年7月以降、郵便局及びかんぽ生命保険の支店からの積極的なかんぽ生命保険商品のご提案を控えてまいりましたが、当該業務停止命令により、2020年1月1日から同年3月31日までの間、お客さまの自発的な意思表示を受けて行う保険募集及び保険契約の締結を除き、かんぽ生命保険商品に係る保険募集及び保険契約の締結を停止いたしました。また、当該業務改善命令を受けて、2020年1月31日付で、当社及び日本郵便は業務改善計画を総務大臣及び金融庁に、かんぽ生命保険は業務改善計画を金融庁に提出いたしましたが、その後も当該業務改善計画の進捗状況等について報告し協議を行っております。
業務改善計画に掲げたお客さまのご意向に沿わず不利益が発生した可能性が特定可能な類型のご契約の調査について、具体的にお客さまのご意向に沿わず不利益を生じさせたものがないかをご確認する特定事案調査及びお客さまのご意向に沿わず不利益を生じさせたものがないかを全てのご契約について確認する全ご契約調査は、お客さま都合によるもの等を除き、お客さま対応を完了しました。また、全ご契約調査の更なる深掘調査(多数回にわたって契約の消滅・新規契約が繰り返され、お客さまのご意向に沿ったものではない可能性がある事例を確認する多数契約調査等)に係るお客さま対応も、お客さま都合によるもの等を除き、完了しました。
また、募集人調査について、特定事案調査における募集人調査は、2020年4月末までに、病休等で調査ができない事案を除き概ね完了しております。さらに、多数契約調査のうち一昨年より実施している事案における募集人調査は、病休等で調査ができない事案を除き2020年10月末までに完了しております。加えて、深掘調査等の優先的に調査を行っている募集人調査は、2021年3月末までに、退職者等を除いて概ね完了しております。なお、特定事案調査及び多数契約調査のうち一昨年より実施している事案の募集人資格に係る処分、募集人及び管理者等に対する人事上の処分、日本郵便及びかんぽ生命保険の本社・支社・エリア本部等の責任者の人事処分については、2021年3月末までに、病休等で調査ができない事案を除き概ね完了しております。2021年3月からは、お客さまの申出内容などから問題があると考えられる募集人に対して募集人調査を実施しているほか、その他の募集人については、書面による募集実態調査を実施しております。
かんぽ生命保険商品の販売については、2019年7月以降、2020年1月から3月までの業務停止命令期間を含め、郵便局及びかんぽ生命保険支店におけるかんぽ生命保険商品の積極的な営業活動を控えておりましたが、JP改革実行委員会より、当社、日本郵便及びかんぽ生命保険にて設定した営業再開条件について概ね充足したとの評価を受けるとともに、信頼回復に向けた業務運営の趣旨が、社員へ共有・徹底されていること等が確認できたことから、2020年10月5日より、お客さまへのお詫びを第一とした信頼回復に向けた業務運営を行っておりました。
これらの信頼回復に向けた業務運営の活動やかんぽ生命保険商品と投資信託の横断的な販売への対応が進捗し、お客さまからこれらの活動に対する理解を得られてきたこと等を踏まえ、2021年4月より、郵便局及びかんぽ生命保険支店において、お客さまのニーズに応じた保険商品やサービスの情報提供やご提案を全てのお客さまに対し実施することとし、営業活動を通じたお客さまとの信頼関係の構築を進めていく新たな営業スタンスへ移行しました。
また、年1回一斉送付としていた「ご契約内容のお知らせ」を、2021年5月より、ご契約者さまの誕生月の前月に合わせて送付することとしております。引き続き、「ご契約内容のお知らせ」を受領したご契約者さまへの訪問・説明等、ご契約内容確認活動を進めてまいります。
さらに、2022年4月1日から、新しいかんぽ営業体制の構築として、お客さま担当制を導入します。日本郵便の訪問営業を行う社員はかんぽ生命保険商品およびがん保険商品の提案とアフターフォローに専念し、貯金業務・投資信託および一部の提携金融商品は郵便局の窓口が担当することとなります。多様化するお客さまニーズにきめ細やかに対応するため、お客さまへの専門性を持った対応を充実してまいります。
今後とも、業務改善計画に掲げる各種施策については、定期的に外部のモニタリングを受けながら着実に進捗管理を実施し、当社グループの全役職員が一丸となって推進してまいります。
⑤ 郵便・物流事業
日本郵便の郵便・物流事業において、郵便物の減少や荷物需要の増加に対応するため、以下の取組みを行います。
(a) 商品・サービス・オペレーション体系の一体的見直しとサービスの高付加価値化
引き続き、年賀状を始めとしたスマートフォン等を使ったSNS連携サービスや手紙の楽しさを伝える活動の展開等により、郵便利用の維持を図っていくほか、eコマース市場の拡大による荷物需要の増加に対応するため、P-DX(Postal-Digital transformation)の推進等を通じて差出・受取利便性の高いサービスを提供し、また、営業倉庫の拡大等により、eコマース事業等を展開しているお客さまの物流に関する課題を解決するソリューション営業を強化することで、収益の拡大を図ってまいります。
また、業務効率向上や不在再配達率の削減に向け、P-DXの推進や置き配の普及・拡大、業務量に応じた担務別人件費・要員マネジメントの高度化等を図ることにより、競争力あるオペレーションの確立を目指します。
さらに、eコマース市場の拡大等による物流市場における需要の増加を踏まえ、取扱数量が縮小する郵便事業から拡大する物流事業へ経営資源をシフトさせることで、更なる収益の拡大を図ってまいります。
なお、過去5事業年度の郵便、ゆうメール、ゆうパック及びゆうパケットの取扱物数の推移は以下のとおりとなります。
(注) ゆうメールに含めていたゆうパケットの物数については、2016年10月より、ゆうパックに含めて表示する方法に変更しました。これに伴い、2017年3月期については全ての期間の物数に当該変更を反映しております。
(b) 先端技術の積極的な活用による利便性・生産性向上
先端技術の活用によってオペレーション体系を見直し、生産性を向上させていくため、テレマティクス(移動体通信システムを利用したサービス)技術を用いて取得するデータを、社員の安全確保や配達の相互応援等に活かしていくほか、郵便物の配達順路や配達エリアの見直しにも活用してまいります。加えて、AIによる配送ルートの自動作成等にも取り組み、ローコストオペレーションを実現してまいります。
また、他企業との連携により、効率の良い配送システムの構築や利便性の高い受取サービスの提供等を実現する新たな物流プラットフォームの構築に取り組むほか、将来的な実用化に向けて、ロボティクス(無人搬送車やピッキング用ロボット等)やドローン、配送ロボット等についても試行・実験を重ねてまいります。
(c) 改正郵便法に伴うサービスの見直し
引き続き、お客さまへの丁寧な周知や、正常な業務運営の確保等に向けた準備を進めてまいります。
⑥ 郵便局窓口事業
日本郵便の郵便局窓口事業において、地域やお客さまニーズに応じたサービスを提供するため、以下の取組みを行います。
(a) 総合的なコンサルティングサービスの実現に向けた体制への変革
日本郵政グループとして、専門性と幅広さを兼ね備えた「総合的なコンサルティングサービス」の実現を目指し、専門性・機動性を有するコンサルタントと幅広い商品ラインアップを提供する窓口社員の役割分担を明確にし、前者をかんぽ生命保険の指揮下に置く(かんぽ生命保険商品の営業等に限る)準備を進めてまいります。
(b) リアルな存在としての郵便局を活かした、郵便局ネットワークの価値向上
地域金融機関等との連携強化や駅と郵便局の一体的な運営等、地方公共団体や他企業と連携しながら、地域やお客さまニーズに応じた個性・多様性ある郵便局を展開することにより、郵便局ネットワークの価値を向上させてまいります。
(c) 不動産事業の拡大に向けた取組み
JPタワー等の賃貸事業を行うとともに、住宅地に所在する土地の有効活用事業として、住宅、保育所及び高齢者施設の賃貸事業を行います。また、新たな収益機会の拡大やグループ保有不動産の有効活用の観点から、広島駅南口計画、梅田3丁目計画等を推進し、不動産事業が収益の柱の一つとなるよう取り組んでまいります。
(d) 金融2社からの手数料収入の確保
人口減少やデジタル化の影響により、郵便局窓口の利用者が減少する中、日本郵便は金融2社それぞれと協力して、お客さまニーズに的確に応える商品・サービスの提供を進めることにより、手数料収入を確保してまいります。
⑦ 国際物流事業
日本郵便において、トール社に対する経営管理を強化・徹底してまいります。
同社では、2021年8月末に完了したエクスプレス事業の売却等による不採算事業からの撤退、本社機能やロジスティクス事業における人員配置等の合理化によるコスト削減等、経営改善に向けた取組みを推進するとともに、シンガポール・ベトナムなど、アジア域内で特に成長が見込まれる数か国と小売業界・工業界といったトール社の得意とする業種にフォーカスした事業展開を行うこと等により、豪州に依存した事業構造から脱却し、日本を含むアジアを中心としたビジネスモデルへの転換による成長を図ります。
さらに、海外のBtoB事業を中心に事業展開するトール社と、国内に顧客基盤を有する日本郵便のシナジーを強化し、コントラクトロジスティクス※を中心に国内のBtoB事業の拡大を進め、国内外での総合物流事業展開による一貫したソリューションの提供を推進してまいります。具体的には、トール社が持つノウハウを用いて、2018年10月に発足したJPトールロジスティクスを通じたコントラクトロジスティクスサービスを提供し、一貫性をもった物流サービスの提供を推進します。国内のBtoB事業においては、日本郵便、JPトールロジスティクス及びトールエクスプレスジャパンでの連携を通じたロジスティクスのバリュー・チェーンの上流部分への進出等の事業拡大を図ります。
また、トール社を親会社とする連結グループの債務超過の金額は2021年9月末時点で824億円であります。トール社の経営環境が非常に厳しい中、資金繰り安定化を企図し、トール社の借入等に対して、日本郵便による債務保証を付しております。
※ コントラクトロジスティクスとは、売買に関与しない第三者が特定の荷主顧客と契約を結び、輸送や在庫・配送業務の効率運営を図るサービスのことです。
(6) 主要な設備
① 前連結会計年度末において計画中であった主要な設備の新設、休止、大規模改修、除却、売却等について、当第2四半期連結累計期間に著しい変動があった設備は、次のとおりであります。
a 新設
2021年9月30日現在
(注) 1.投資予定額については、当第2四半期連結会計期間末に計画されている投資予定額の総額から既支払額を差し引いた金額を記載しております。
2.五反田不動産開発については、2021年3月末時点において未定であった投資予定額が確定したため記載しております。着手年月は、着工予定年月を記載しております。
b 売却
前連結会計年度末において計画中であった国際物流事業におけるトール社のエクスプレス事業の設備の売却について、2021年8月にAllegro Funds Pty Ltdの傘下企業への譲渡手続きが完了しております。
② 当第2四半期連結累計期間において、新たに確定した重要な設備の売却の計画は、次のとおりであります。
売却
2021年9月30日現在
(注) 宿泊施設については、2021年9月29日開催の取締役会において、2022年4月をもって、営業中のかんぽの宿33施設のうち32施設に係る事業を譲渡することを決議し、2021年10月1日付で事業譲渡契約等を締結しております。
当第2四半期連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。