(1) 経営の基本方針
当社グループは、経営の基本方針を「基本理念」として掲げており、その内容は次のとおりであります。
(2) 経営環境、対処すべき課題
今後の見通しにつきましては、欧米を中心とした金融政策などに伴う景気後退の懸念や、ウクライナや中東での紛争をはじめとする地政学リスクなどから、その先行きは依然として不透明な状況が続いております。
他方、持続可能な社会の実現に向けた要請は多様化し、またデジタル化の進展などテクノロジーの分野における変化が著しいなか、当社の主要な事業である自動車、産業車両の分野においても、電動化、自動運転領域の開発の進展や、IT、デジタル技術の活用による新規参入、業界構造の変化など、企業間の競争は厳しさが増しております。そのようななか、当社は物流ソリューション事業を機軸に、モビリティ関連のモノづくりと結びついた総合力の発揮、次世代R&D等への挑戦を通じて、今後の持続的な成長や企業価値の向上に取り組んでまいります。
一方で、当社は、2024年1月29日に、エンジン国内認証に関する調査結果について公表、2月22日付で国土交通省からの是正命令を受け、それに対し3月22日に、同エンジン認証問題の再発防止策を国土交通省へ報告いたしました。
それら再発防止について、当社は、「安全、安心な品質の製品」をお客様に提供し、社会に貢献し続けるという原点に立ち返り、正しいことを正しく行うための「風土」「しくみ」「組織/体制」の3つの改革を再発防止策に落とし込み、引き続き、全員が心をひとつにして取り組み、豊田自動織機の再生を果たしていくとともに、次に挙げる2点に取り組んでまいります。
(基本の再徹底)
経営の土台である法規遵守、コンプライアンスを徹底し、加えて、モノづくりにおける 「安全第一、品質第二、生産第三」の優先順位を堅持してまいります。
(体質の変革)
各部門の役割、責任を再確認し、欠けている点や弱いところに対して手を打つとともに、現場の状況やFACT(事実)に基づく声を正しく汲み取り、しくみや組織/体制を見直してまいります。また、業務の優先順位づけ、改廃を進め、課題解決に取り組むとともに、内外のリスクに対して本社/事業部、部門間で連携して取り組み、デジタル技術を積極的に活用しつつ、業務の効率化、高度化を進めてまいります。
これらの取り組みを通じて、次の成長を確かなものとするための強固な経営基盤を築きあげてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが合理的な一定の前提に基づいて判断したものであり、その実現を約束する趣旨のものではありません。実際の結果は不確実性により変更される可能性があります。
(1) ガバナンス
当社グループは取締役会の下位の会議体に、サステナビリティへの取り組みを含む経営ビジョンや中期経営戦略を扱うマネジメント・コミッティ、特定の専門分野を扱うサステナビリティ委員会、リスク管理委員会、コンプライアンス委員会(いずれも旧:CSR委員会)、環境委員会を組織し、CSR重要課題(マテリアリティ)をはじめとする当社グループのサステナビリティ分野の課題やリスクについて、審議、決定し、必要に応じ、取締役会でも報告、審議しております。
サステナビリティ委員会では、持続可能性を土台に企業価値の向上をはかり、社会の持続的発展に貢献するため、ステークホルダーの声や世の中の動向を見据えたサステナビリティの方向性、中期・年度活動計画、目標値策定、進捗管理および「豊田自動織機グループサステナビリティ方針」の見直しなどについて審議しております。リスク管理委員会では、当社グループとして対処すべきリスクを的確に捉え、未然防止や有事に適切に対処するため、全社として特に重点的に管理すべきリスクとしての重点リスクの策定および対策案の審議、進捗管理および有事対応の振り返りと改善計画の審議・承認などを行っております。コンプライアンス委員会では、当社グループ全体で、社会の一員としての倫理観や社会規範を重視したコンプライアンス活動が有効に機能するよう、全社コンプライアンス活動計画、「内部統制の整備に関する基本方針」の運用状況の確認、コンプライアンスに関する重大事案への対応状況および再発防止策の確認などを行っております。環境委員会では、当社グループの生産活動および製品に起因する環境負荷低減に対して、継続的に取り組み、地球環境の保全と経済の発展を両立した“環境経営”を推進するため、活動方針、環境目的など環境経営推進上の重要課題の審議や、活動状況の進捗確認、改善提案などに関する審議などを実施しております。
サステナビリティ委員会(旧:CSR委員会)
コーポレート・ガバナンス体制図については、「
(2) 戦略
① 2030年ビジョンとCSR重要課題(マテリアリティ)
当社グループは創業以来、社是である豊田綱領とそれに基づく基本理念の考え方である「住みよい地球と豊かな社会づくり」のもと、事業を通じて積極的に社会課題の解決に取り組んでまいりました。2030年に目指す姿である「2030年ビジョン」は、創業以来の事業「繊維機械」を原点として「自動車」「産業車両・物流」を両輪に事業展開し、社会と調和しながら、持続的に成長していく方向性を示しております。当社グループは、これからも社会のお役に立つとともに、持続的に成長することを目指して、取り巻く社会の変化や課題に真摯に向き合い取り組んでまいります。
(2030年ビジョン)
この2030年ビジョンに掲げる「住みよい地球と豊かな生活、そして温かい社会づくり」に貢献することを目指し、「豊田自動織機グループサステナビリティ方針」に基づき、事業を通じた持続可能な社会の実現に向け、当社グループが取り組むべき特に重要な事項を次のとおりCSR重要課題(マテリアリティ)として定義し、その解決に努めております。
② 気候変動
当社グループの経営方針、経営戦略等に影響を与える可能性があるサステナビリティ関連の取り組みのうち、気候変動を重要な項目の1つとして位置付けております。気候変動のリスクと機会が当社グループに与える影響を把握するため、主要事業である産業車両事業についてシナリオ分析を実施しました。時間軸としては中期経営計画と長期環境ビジョンの2030年と2050年とし、選択したシナリオは移行リスクが顕在化する「2℃未満シナリオ」および物理リスクが顕在化する「4℃シナリオ」を設定しました。分析にあたり気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書「代表的濃度経路に関する将来シナリオ(RCP2.6、8.5シナリオ)」、国際エネルギー機関(IEA)のWorld Energy Outlookより「持続可能な開発シナリオ(SDS)」、「公表政策シナリオ(STEPS)」を参照しました。
(シナリオ分析前提条件)
(各シナリオにおける当社グループを取り巻く社会像)
これらのシナリオが事業に与えるリスクと機会のうち影響が大きなものを次の表のとおり抽出しました。その上で、例えば、気候変動緩和に向けた規制強化による売上げ減少のリスクや環境性能に優れた製品の需要拡大による売上げ増加の機会を特定し、CSR重要課題の目標として掲げ、事業戦略へ織り込んでおります。
(シナリオ分析による財務影響の評価)
(リスクと機会への対応)
③ 人的資本
当社グループは、「豊田自動織機グループサステナビリティ方針」に基づき、「企業活動の成功は、従業員一人ひとりの個性と能力を伸ばし、全体の総合力を発揮することによってこそ達成される」との信念のもと、従業員を尊重し、個々人の成長を支援しております。そのために、均等な雇用機会を提供するとともに、従業員の多様性を確保し、職場力の強化に努めております。また、女性の活躍推進活動を進めており、国内では女性活躍推進法に基づき行動計画を策定し、管理職比率などの目標を設定して活動を推進しております。外国人や中途採用者については、個人の能力を公平、公正に評価し、管理職への登用を実施しております。
<人材の育成に関する方針および主な取り組み>
先行きが不透明で、さまざまな変化のスピードが増している環境に対応できる「しなやかで強い組織づくり」に向け、「自ら変えていく、変わっていく人材の育成」に取り組むとともに、従業員の挑戦を後押ししております。
ⅰ) OJT(業務を通じた育成)
メンバーの役割、テーマの設定~指導~評価、フィードバックというOJTのサイクルを大切にして各職場で人材育成に取り組んでおります。育成の基本となるのは、半期に1度、上司-部下の1対1で行う「対話」です。そこでは、メンバーの成長、活躍志向(キャリアプラン)や能力の振り返りについて話し合い、その結果を踏まえて部門としての育成計画をつくり、メンバーに共有し、やりがい向上やさらなる成長、活躍を促進しております。また、「異動」による育成を重点と捉え、「海外研修制度」、「社内公募制度」、「戻り前提ローテーション」等、さまざまな活躍の場を提供する施策を積極的に実施しております。
ⅱ) Off-JT(研修)
新入社員研修、昇格者研修、専門知識、能力を習得する講座など、職場での実践につながる各種研修を実施しております。これら研修は、国内関係会社からのニーズに基づき、その従業員も受講できるものとなっております。また、グローバルでの人材育成として以下の3つを柱にして取り組んでおります。
①グローバルリーダー研修
②人材交流(海外出向、海外研修、海外事業体社員を当社に受け入れるICT制度)
③海外事業体で実践する当社グループ共通の価値観研修(豊田綱領、仕事の仕方、職制の役割)
ⅲ) 品質教育
社祖である豊田佐吉の「完全なる営業的試験を行うにあらざれば、発明の真価を世に問うべからず」という遺訓の精神を受け継ぎ、法令や規格、基準、お客様と合意した仕様を遵守することを土台に、品質こそ会社の生命線と考えております。そこで、全従業員を対象に、実務で必要な品質保証スキルを身につけるため、体系化された品質教育を実施しております。その一環として、SQC(統計的品質管理)と機械学習の基礎教育などを実施し、機械学習の実践活用を拡大するため、職場の問題解決を通じた中核人材の育成をしております。また、技能系職場を対象にQCサークル活動に全員参加で取り組んでおり、それらの成果として、全国のQCサークル大会で発表し多くの賞を頂いております。海外生産拠点でもQCサークル活動に活発に取り組んでおり、各拠点にグローバルQCサークルトレーナーを育成、認定して、自律した活動ができるよう指導しております。さらに、創意工夫提案の取り組みでは、全員が日々改善に取り組んでおります。
ⅳ) 自己啓発支援
従業員の知識、視野の拡大や自発的に学ぶ意欲を高めるために、自己啓発や自主研究の機会、場を提供するとともに、自己啓発を支援する手当も支給しております。
ⅴ) 時間や場所にとらわれない働き方
従業員が高い生産性を発揮できるよう、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方ができる制度、環境の整備に取り組んでおります。「コアタイムのないフレックスタイム制度」、「サテライトオフィス」、「裁量労働制度」、「在宅勤務制度」などを導入しており、働き方の選択肢の多様性に取り組んでおります。
<社内環境整備に関する方針および主な取り組み>
ⅰ) 「風通しの良い職場風土の醸成」に向けて
一人ひとりが成長し、自分らしく持てる力を発揮してやりがいを感じるために、風通しの良い職場づくりを大切にし、当社グループでは、上司、先輩が率先して、メンバーが発言、提案しやすい風土づくりに取り組み、メンバーの困り事や悩みにも真摯に対応する関係づくりを進めております。
また、労使共通の重点テーマである、「何でもタイムリーに言い合える関係づくり」について、年間を通じて労使間で話し合い、全員参加で取り組んでおります。
従業員意識調査を全社的に毎年実施し、従業員が感じる、職場の風土、個人の成長実感、上司のマネジメントなどをさまざまな観点から確認しております。結果は従業員にフィードバックし、自職場をより良くする活動を部門長が責任者となって各部門で取り組んでおります。仕事を離れた場面でも、人間関係、信頼関係づくりを推進するため、社内駅伝大会や納涼祭等のコミュニケーション活動にも力を入れております。
ⅱ) 仕事と家庭の両立支援
仕事と家庭の両立に取り組む従業員が、高い目標を持って活躍し、キャリアを形成できるよう、両立支援制度の充実、両立に対する理解促進を柱に取り組みを進めております。両立支援制度の充実では、「事業所内託児所の設置」、「育児のための短時間勤務制度」、「不妊治療のための公休制度、資金貸与制度」、「育児、介護、配偶者の転勤による退職者の復職制度」などの導入により、従業員が安心して長期にわたり当社で活躍することを支援しております。また、両立に対する理解促進の取り組みでは、仕事と育児の両立支援ハンドブックや、仕事と介護の両立支援ハンドブックを従業員へ配付しております。その他、従業員や家族を対象とした仕事と介護の両立セミナーの定期開催や、希望者への介護ニュース配信も行っております。
これらの取り組みの結果、厚生労働省より「プラチナくるみん」企業の認定を受け、「愛知県ファミリー・フレンドリー企業表彰」を受賞しました。
<多様性に関する方針および主な取り組み>
環境変化、お客様ニーズの多様化に柔軟に対応して新たな価値を生み出すために、さまざまな考え、価値観を持つ人材が最大限能力を発揮し、共創できる組織をめざしております。
性別、年齢、国籍、人種、宗教、性的指向、性自認、性表現、障がい、経験、価値観など目に見えない違いも含め、従業員がお互いの違いを認め合い、尊重し合う組織風土の実現に向けた取り組みを進めております。
ⅰ) 女性の活躍推進
性差なく一人ひとりが活躍できることをめざし、意識改革、女性のキャリア支援、柔軟な働き方の推進などの切り口でさまざまな取り組みを行っております。加えて、生産現場の女性従業員が第一線で働き続けることをめざし、「技能職女性向け働き方セミナー」、技能職新任研修での「女性活躍講座」を開催しております。
これらの取り組みの結果、厚生労働省より、「えるぼし」企業認定を受け、愛知県からは「あいち女性輝きカンパニー優良企業表彰」を受けております。
(女性活躍推進の取り組み)
ⅱ) 障がいのある方への取り組み
「障がい者と健常者が一緒に仕事をし、働きがい、生きがいを共有する」という基本的な考えのもと、毎年継続的に障がい者の採用を行っており、入社後は公平な成長、活躍機会が得られるように研修時の手話通訳士の派遣、コミュニケーション支援ツールの準備、上司、先輩による面倒見に加え、工場総務、独身寮、人事部等に相談員を設置し、職場をサポートする体制を構築しております。また、各階層別研修時に障がい者自身を講師に招いた研修を実施し、障がい者に対する理解をより深め、職場風土の醸成をはかっております。
ⅲ) 年齢によらず活躍し続けられる職場づくり
幅広い業務経験、視野を持つベテラン層が、職場テーマ実践を通じてデジタル技術の知識・活用ノウハウを学ぶ「ベテラン層デジタル実践教育」を実施しております。教育を通じて自らの知識、スキルを高めることに加え、職場にも貢献しております。教育後は、各職場でデジタル技術活用を推進する立場として活躍しております。
また、高年齢者が生産現場でいきいきと働くことができるよう、身体的負担を減らしたラインづくりを進めております。取り扱う重量や作業環境を高年齢者に配慮した基準設定としたり、デジタル技術を取り入れるなどして生産現場の工程改善などを行っております。
ⅳ) 外国人の仲間とともに
現在、海外拠点で勤務する従業員は約5万3千人で、豊田自動織機グループの全社員のうち約7割を占めております。多様な国、地域で働く人材が相互理解を深めるため、豊田自動織機から海外拠点への出向者、駐在員、海外研修生の派遣、および海外拠点から豊田自動織機に一定期間受け入れるICT(注)を積極的に実施しております。
(注)Intra Company Transfereeの略。
ⅴ) キャリア採用の取り組み
外部から多様な知見を取り入れるため、キャリア採用を強化しております。特に事技職では、従来の専門性に特化した即戦力の採用に加え、ポテンシャルを重視した第二新卒採用の強化や、リファラル採用(自社の従業員に採用候補者を紹介してもらう採用方法)の導入を予定しており、2024年度の事技職のキャリア採用者数は、総合職採用者数の32%を計画しております(2023年度は14%)。自らが希望する事業部、職種で入社し、入社後の導入研修を経て、各職場で活躍しております。また、生産現場においては、優秀な人材の確保による安定生産に向けて、期間従業員からの正社員登用を積極的に進めております。
基本的な考え方
当社グループはリスク管理について、次の項目を基本として取り組んでおります。
・リスクの未然防止や低減への取り組みを日々の業務の中に織り込み、その実施状況をフォローすること。
・リスクが顕在化した場合には、迅速かつ的確な緊急対応により、事業や社会への影響を最小化するための適切な行動を徹底していくこと。
推進体制
当社グループは毎年、安全、品質、環境、人事労務、輸出取引、災害、情報セキュリティなどにおけるリスクの未然防止や低減への取り組みを、各事業部および本社各部門の活動方針に織り込み、推進しております。その実施状況については、機能別の会議体であるリスク管理委員会や環境委員会などで評価、フォローしております。
リスク管理委員会ではリスク統括責任者を中心に、重点リスク(全社として特に重点的に管理すべきリスク)を策定し、各機能会議体での対策案の審議や進捗管理、複数の機能にわたる新たなリスクへの対策につなげる活動を推進しております。また、2022年度には新たに地政学リスクを重点リスクの一つとして特定、関係する機能各部で連携し、さまざまな取り組みを進めております。こうした重点リスクへの対応を含め、各事業部および連結子会社のリスク管理レベルの向上を支援するため、本社の安全、品質、環境などの各機能部門は、連結子会社を含むグループ全体的な視点で規則やマニュアルを制定し、業務監査や現場点検などで確認、フォローを行っております。
気候関連リスクをはじめとするサステナビリティ分野の課題やリスクについては、当社グループのCSR重要課題(マテリアリティ)として明確に定義し、管理指標や目標を明確にし、各委員会の中で定期的にモニタリングを行っております。
(4) 指標および目標
① CSR重要課題(マテリアリティ)
当社グループはサステナビリティに関するリスクを緩和し機会を拡大するため、CSR重要課題(マテリアリティ)において、各分野での取り組み目標と活動、および中期目標値を設定し、活動を推進しております。なお、表中の「(単独)」の表記は、その取り組み目標と活動、および目標値が当社グループではなく当社のものであることを示しております。
(注)1 ※1 挑戦目標として、2030年度に2013年度比△50%。
2 最新の取り組み方針、取り組み目標と活動、目標値などにつきましては、下記リンク先「CSR重要課題(マテリアリティ)」に記載の「事業を通じた社会課題の解決に関する取り組み方針・目標・実績」および「事業活動の基盤に関する取り組み方針・目標・実績」を参照ください。下記リンク先は毎年8月頃に更新をしております。
② 気候変動
気候変動に関する指標および目標は、「① CSR重要課題(マテリアリティ)」に含めております。
③ 人的資本
人的資本に関する指標および目標は、以下のとおりであります。
当社グループの財政状態、経営成績および株価などに影響を及ぼす可能性のあるリスクとしては、以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) コンプライアンスリスク
当社グループは、コンプライアンスの徹底を事業活動の大前提であり経営の最重要課題の一つと位置付け、国内外の法令遵守はもちろん社会規範に則して事業活動を遂行すべく、体制整備や役員と従業員への教育、啓発などを推進し、コンプライアンスリスクの回避または最小化に努めておりますが、当社グループにおいて重大な法令違反などが発生した場合、当社グループの社会的信用の失墜やブランドイメージの毀損など、当社グループの財政状態と経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2) 主要な販売先
当社グループは、車両およびエンジンなどの商品を主にトヨタ自動車株式会社に販売しており、当連結会計年度の販売額は当社グループの総売上高の12.8%となっております。そのため、同社の自動車販売動向によっては経営成績に影響を受ける可能性があります。なお、同社は、当連結会計年度末現在、当社の議決権の24.7%を所有しております。
(3) 商品開発
当社グループは、「魅力ある新商品の開発」という考えのもとに、年々高度化、多様化する市場のニーズを先取りし、お客様の満足が得られるよう、先進技術を導入した積極的な新商品開発を進めております。その主な活動は、現在の事業分野および周辺事業分野での開発、改良であります。この分野での収益が、引き続き、当社グループの収益の大部分を占めると考えており、将来の成長は主にこの分野での新商品の開発と販売に依存すると予想しております。当社グループは、継続して魅力ある新商品を開発できると考えておりますが、「新商品への投資に必要な資金を今後十分充当できる保証はないこと」「市場に支持される新商品を正確に予想できるとは限らず、商品の販売が成功する保証はないこと」「開発した新商品や技術が、知的財産権として必ず保護される保証はないこと」などのリスクをはじめとして、当社グループが市場のニーズを予測できず、魅力ある新商品のタイムリーな開発と市場投入ができない場合には、将来の成長を低下させる可能性があります。
(4) 知的財産権
当社グループは、事業活動を展開する上で、製品、製品のデザイン、製造方法などに関連する特許などの知的財産権を、海外を含め多数取得しておりますが、出願したものすべてが権利として登録されるわけではなく、特許庁で拒絶されたり、第三者からのクレームにより無効となる可能性があります。第三者が当社グループの特許を回避して競合製品を市場に投入する可能性もあります。また、当社グループの製品は広範囲にわたる技術を利用しているため、第三者の知的財産権に関する訴訟の当事者となる可能性があります。
(5) 商品の欠陥
当社グループは、「クリーンで安全な優れた品質の商品を提供すること」を経営の基本理念のひとつとし、総力をあげて品質向上に取り組んでおります。しかし、すべての商品に欠陥がなく、将来にリコールや製造物責任賠償が発生しないという保証はありません。大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような商品の欠陥は、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を及ぼし、売上げや利益の減少、株価の低下などをまねく可能性があります。
(6) 価格競争
当社グループの収益基盤である自動車事業、産業車両事業をはじめ、各業界における競争は厳しいものとなっております。当社グループの商品は、技術的、品質的、コスト的に他社の追随を許さない高付加価値な商品であると考えておりますが、激化する価格競争の環境下で、市場シェアを維持もしくは拡大することによって収益性を保つことができなくなる可能性があります。このような場合は、当社グループの財政状態と経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(7) 原材料、部品供給元への依存
当社グループの生産は、原材料、部品を複数の供給元に依存しております。当社グループは供給元と基本取引契約を結び、原材料、部品の安定的な取引を安定的な生産の前提としておりますが、供給逼迫による世界的品不足や供給元の不慮の事故などにより、原材料、部品の不足が生じないという保証はありません。その場合、生産の遅れをまねき、また、原価を上昇させる可能性があります。
(8) 環境規制、気候変動
当社グループでは、企業の社会的責任の観点から、環境への負荷の低減および適用される法規制遵守に取り組んでおります。具体的には環境規制に適合した商品開発および環境負荷物質の発生を低減する生産工程設計に努めております。しかし、環境に関するさまざまな規制は、今後も改正、強化される傾向にあり、その対応に失敗した場合には、商品の売上げの減少、生産量の限定など、当社グループの財政状態と経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。気候変動によるリスクについては、脱炭素社会への移行リスクとして、気候変動に伴う上述のような環境規制などの改正、強化のほか、物理リスクとして、洪水等の異常気象の深刻化と頻度の上昇が想定され、工場の停止やサプライチェーンの分断により、当社グループの財政状態と経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(9) 他社との提携
当社グループは、事業の拡大などを目的として、提携や合弁などの形で他社との共同による事業活動も行っております。しかし、業界の属するマーケットの変動が激しい場合、あるいは経営、財務およびその他の理由により両者の間で方針の不一致が生じた場合は、効果を享受できない場合があります。
(10) 為替レートの変動
当社グループの事業には、全世界における商品の生産と販売、サービスの提供が含まれております。一般に、他の通貨に対する円高(特に当社グループの売上げの重要部分を占める米ドルおよびユーロに対する円高)は当社グループの事業に悪影響を及ぼし、円安は好影響をもたらします。当社グループが日本で生産し、輸出する事業においては、他の通貨に対する円高は、製品のグローバルベースでの相対的な価格競争力を低下させ、財政状態と経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。このような可能性を低減するために、原則として先物為替予約などのデリバティブ取引を利用して、為替変動リスクをヘッジしております。
(11) 株価の変動
当社グループは、有価証券を保有しており、その多くが上場株式であるため、株価変動のリスクを負っております。各期末日の市場価額に基づき、当社グループは評価差益を認識しておりますが、有価証券に係る評価差益は将来の株価の変動によって減少する可能性があります。また、株価の下落は年金資産を減少させ、年金の積立不足を増加させる可能性があります。
(12) 災害や停電などによる影響
当社グループは、製造ラインの中断によるマイナス影響を最小化するため、生産設備の定期的な検査、点検を行っております。しかし、当社グループならびに仕入先の生産施設で発生する人的、自然的災害、停電などの中断事象による影響を完全に防止または軽減できる保証はありません。特に、当社グループの国内工場や、仕入先などの取引先の多くは、中部地区に所在しており、この地域で大規模な災害が発生した場合、生産、納入活動が遅延、停止する可能性があります。遅延、停止が長期間にわたる場合、当社グループの財政状態と経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。このような可能性を低減するために、原材料や部品の供給を受ける地域の分散による代替供給手段の確保など、サプライチェーンの最適化に向けて仕入先とともに対策に取り組んでおります。
(13) 国際的な活動に潜在するリスク
当社グループは、さまざまな国で商品の生産と販売、サービスの提供を行っております。その国々における予期しない政治的要因、テロ、戦争、感染症の流行などの社会的混乱、経済状況の変化などにより、当社グループの財政状態と経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(14) 情報セキュリティリスク
当社グループは、さまざまなグループ内ネットワークや情報システムを使用しております。これらの社内ネットワークやシステムに対してはセキュリティ対策を講じるとともに、社内への情報セキュリティに関する教育や訓練を通じ、情報資産の保護を図っているほか、適正な運用の定着に取り組んでおります。他方で、サイバー攻撃などの脅威は増大しており、想定を大きく超えるサイバー攻撃などを受けた場合には、生産、納入活動が遅延や停止、機密情報漏えいなどの可能性があり、その結果、競争力やレピュテーションが低下し、当社グループの財政状態と経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」)の状況の概要は次のとおりであります。なお、以下の経営成績等は、IFRSに準拠した連結財務諸表に基づいて記載しております。
① 財政状態及び経営成績の状況
当期の経済情勢を概観しますと、世界経済は、欧米を中心とした金融引き締め政策によりインフレ率は減速したものの、政策金利の引き上げに伴う景気後退懸念やウクライナや中東での紛争をはじめとする地政学リスク、中国における不動産部門低迷の影響などから、依然として先行き不透明感が継続しています。また、日本経済は、賃上げや企業の高い投資意欲など経済に前向きな動きはみられるものの、回復は緩やかなものとなりました。このような情勢のなかで、当社グループは、品質優先を基本に、お客様の信頼におこたえしますとともに、各市場の動きに的確に対応して、販売の拡大に努めてまいりました。
その結果、当連結会計年度の売上高につきましては、前連結会計年度を4,534億円(13%)上回る3兆8,332億円となりました。
利益につきましては、人件費の増加、エンジン国内認証関連費用の増加、研究開発費を含む諸経費の増加などがありましたものの、売上の増加、為替変動による影響、物流費の減少、グループあげての原価改善活動の推進などにより、営業利益は前連結会計年度を305億円(18%)上回る2,004億円、税引前利益は前連結会計年度を462億円(18%)上回る3,091億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前連結会計年度を359億円(19%)上回る2,287億円となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(自動車)
自動車におきましては、市場は中国、欧州を中心に堅調に推移し、世界全体で拡大しました。こうしたなかで、当セグメントの売上高は前連結会計年度を1,386億円(14%)上回る1兆964億円となりました。営業利益は前連結会計年度を164億円(47%)下回る182億円となりました。
このうち車両につきましては、トヨタ「RAV4」が国内向けは減少したものの、海外向けが増加したことにより、売上高は前連結会計年度を177億円(21%)上回る1,008億円となりました。
エンジンにつきましては、ディーゼルエンジンは減少したものの、ガソリンエンジンが増加したことにより、売上高は前連結会計年度を84億円(3%)上回る3,308億円となりました。
カーエアコン用コンプレッサーにつきましては、主に中国で減少したものの、北米や欧州などで増加したことにより、売上高は前連結会計年度を364億円(8%)上回る4,661億円となりました。
電子機器ほかにつきましては、電池やDC-DCコンバーターなどが増加したことにより、売上高は前連結会計年度を760億円(62%)上回る1,985億円となりました。
(産業車両)
産業車両におきましては、市場は北米などで低迷し、世界全体で縮小しました。そのなかで、主力のフォークリフトトラックが主に日本で減少したものの、北米や欧州で増加したことにより、売上高は前連結会計年度を3,034億円(13%)上回る2兆5,872億円となりました。営業利益は前連結会計年度を438億円(36%)上回る1,656億円となりました。
(繊維機械)
繊維機械におきましては、市場は主力のインドを含むアジアで堅調に推移しました。こうしたなかで、織機や紡機が増加したことにより、売上高は前連結会計年度を90億円(11%)上回る933億円となりました。営業利益は前連結会計年度を2億円(3%)上回る80億円となりました。
資産につきましては、主に投資有価証券の評価額が増加したことにより、前連結会計年度末に比べ3兆2,573億円増加し、11兆784億円となりました。負債につきましては、主に繰延税金負債が増加したことにより、前連結会計年度末に比べ1兆394億円増加し、4兆9,251億円となりました。資本につきましては、前連結会計年度末に比べ2兆2,179億円増加し、6兆1,533億円となりました。
② キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税引前利益を3,091億円計上したことにより、4,435億円の資金の増加となりました。前連結会計年度の1,949億円の増加に比べ、2,486億円の増加となりました。また、投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の預入による8,072億円の支出や、有形固定資産の取得による3,489億円の支出があったものの、定期預金の払戻による収入が9,950億円あったことや、投資有価証券の売却による収入が2,415億円あったことで、479億円の資金の増加(前連結会計年度は4,276億円の資金の減少)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる1,655億円の収入や、社債の発行による1,424億円の収入があったものの、長期借入金の返済による支出が1,670億円あったことや、社債の償還による支出が1,491億円あったことで、2,094億円の資金の減少(前連結会計年度は1,836億円の資金の増加)となりました。
これらの増減に加え、換算差額、期首残高を合わせますと、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は4,968億円となり、前連結会計年度末に比べ2,941億円(145%)の増加となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引につきましては相殺消去しております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
(注) 自動車セグメントにつきましては、トヨタ自動車株式会社および株式会社デンソーから生産計画の提示を受け、生産能力を勘案し、見込生産を行っているため、記載を省略しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間の取引につきましては相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要性がある会計方針および見積り
当社グループにおける重要性がある会計方針および見積りにつきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表に対する注記 2.作成の基礎 (4) 見積りおよび判断の利用」および「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表に対する注記 3.重要性がある会計方針」を参照ください。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の売上高につきましては、前連結会計年度を4,534億円(13%)上回る3兆8,332億円となりました。利益につきましては、営業利益は前連結会計年度を305億円(18%)上回る2,004億円、税引前利益は前連結会計年度を462億円(18%)上回る3,091億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前連結会計年度を359億円(19%)上回る2,287億円となりました。
(売上高)
売上高の状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
(営業利益)
営業利益の状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
(税引前利益)
税引前利益は、前連結会計年度を462億円(18%)上回る3,091億円となりました。これは、主に営業利益が前連結会計年度を305億円(18%)上回る2,004億円となったことによります。
(親会社の所有者に帰属する当期利益)
親会社の所有者に帰属する当期利益は前連結会計年度を359億円(19%)上回る2,287億円となりました。基本的1株当たり当期利益は、前連結会計年度の621円17銭に対し、736円86銭となりました。
当社グループの資本の財源および資金の流動性については、次のとおりであります。
(資金需要と株主還元)
当社グループの資金需要の主なものは、研究開発、設備投資、M&Aなどの長期資金需要と当社グループの製品製造のための材料および部品の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費などの運転資金需要であります。
当社グループは研究開発および設備投資に資金を重点的に配分するほか、事業の拡大、持続的発展に資すると判断する場合にはM&A等の投資にも資金を配分する方針であります。
株主還元につきましては、連結配当性向30%程度を目安に配当額を決定しております。配当政策に関する詳細につきましては、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」を参照ください。
(財務政策)
当社グループは、事業活動のための適切な資金調達、適切な流動性の維持および健全な財政状態の維持を財務方針としております。
当社グループの財務状況は引き続き健全性を保っており、現金及び現金同等物、有価証券などの流動性資産に加え、営業活動によるキャッシュ・フロー、社債の発行と金融機関からの借入れによる調達などを通じて、現行事業の拡大と新規事業の開拓に必要な資金を十分に提供できるものと考えております。
当社グループは、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン株式会社、ムーディーズ・ジャパン株式会社および株式会社格付投資情報センターから信用格付を取得しており、有利な条件での資金調達を実現するため、格付の維持、向上につとめております。
当社グループの資金マネジメントにつきましては、日本国内におきましては、当社が国内子会社を対象に資金集中管理を実施しており、北米におきましては、トヨタ インダストリーズ ノース アメリカ株式会社(以下、「TINA」という。)が北米の子会社の資金集中管理を実施しております。また、欧州におきましては、トヨタ インダストリーズ ファイナンス インターナショナル株式会社(以下、「TIFI」という。)が、欧州の子会社の資金集中管理を実施しております。
当社とTINA、TIFIが緊密な連携をとることにより、資金効率の向上をはかっております。
当連結会計年度において、経営上の重要な契約等は行われておりません。
当社グループは、提出会社を中心に「魅力ある新商品の開発」という考えに基づき、年々高度化、多様化する市場のニーズを先取りし、お客様の満足度向上に向けて先進技術を導入した積極的な新商品開発を進めております。その主な活動は、既存事業および周辺事業の分野での開発、改良であります。
具体的な取り組みとしましては、省エネルギーや電動化、軽量化を中心とする環境技術や自動化関連技術に磨きをかけ、それらを主力事業である自動車および産業車両の新商品に展開しております。
当連結会計年度における当社グループの研究開発費は
自動車セグメントにおきましては、ディーゼルエンジンや、ハイブリッド車、電気自動車、燃料電池自動車など電動車向けの電動コンプレッサーおよび電源機器、ハイブリッド車用の車載電池などの開発に取り組みました。
産業車両セグメントにおきましては、エネルギー効率を高めた電動フォークリフトトラックやフォークリフトトラックの次世代モデル、産業車両機器の自動化技術、物流ソリューションに対応するシステム機器などの開発に取り組みました。
これらセグメント別の研究開発費は、自動車セグメントが