第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

 当社グループは、経営の基本方針を次のとおり「基本理念」として掲げております。

 ① 社会   よき企業市民として社会との調和ある成長を目指す。

        ・企業倫理の徹底をはかり、公正で透明な企業活動の推進。

        ・クリーンで安全な商品を提供することを使命とし、地球環境保護を重視した企業活動の推進。

        ・地域社会の一員としての役割を自覚し、よい社会づくりに貢献。

 ② お客さま 革新的な技術開発、製品開発に努め、お客さまに喜ばれる、よい商品を提供する。

 ③ 株主   将来の発展に向けた革新的経営を進め、株主の信頼に応える。

 ④ 社員   労使相互信頼を基本に、社員の個性を尊重し、安全で働きやすい職場環境をつくる。

 ⑤ 取引先  開かれた取引関係を基本に、互いに研鑚に努め、ともに長期安定的な成長を目指す。

 

(2)経営環境及び対処すべき課題

 当社は持続可能な成長を続けるために、以下の取り組みを推進してまいります。

 

①インテリアスペースクリエイターの実現に向けて、企画提案力と技術開発力の向上に取り組みます。

  ・ マーケティングおよび企画体制の整備による移動空間全体の企画提案推進

  ・ インテリアスペースクリエイター・マルチパスウェイ※1・新規事業創出への技術戦略の策定、推進

  ・ 技術ロードマップ※2の明確化および開発リソーセスの確保

  ・ 効率的な開発プロセスの再構築および確実な原価企画・収益確保

 

②サプライチェーン全体で、お客さまに信頼され・選ばれるための「ものづくり競争力」の確保を目指します。

  ・ 2030ものづくり戦略※3の実現に向けた生産モデルラインを軸としたグローバル展開の基盤整備

  ・ 労働力不足、カーボンニュートラルに対応した持続可能でつながる物流の実現

  ・ 米州地域の持続可能な収益体質への改革

  ・ 次世代骨格関連部品への不具合未然防止活動の推進

 

③世界中のさまざまなお客さまから選ばれるために、販売能力の引き上げを目指します。

  ・ ターゲット顧客、ターゲットプロジェクトの戦略的方向付け

  ・ 顧客から選ばれるための提案力の強化と信頼の獲得

  ・ グローバル営業体制のさらなる充実

 

④上記①~③の実践を横断的に支える経営基盤の強化に取り組みます。

  ・ 環境重点取組み(温暖化抑制・資源循環・自然共生)を通じた環境経営の実践

  ・ 多様な人材が満足感・充実感をもって活躍することができる風土・組織づくり

  ・ 2030年に向けた強固な収益・財務基盤の確立

  ・ CVC※4、アライアンス、新規事業の事業化を通じた社内イノベーションの促進・競争力強化

  ・ TQM※5の浸透による経営品質と業務品質の絶え間ない向上

 

 当社は、インテリアスペースクリエイターとして快適な移動空間を実現し、製品、顧客の幅を広げながら社会課題の解決に貢献し、CSV経営※6を実践することにより経済的/社会的価値を向上し、「社会に必要とされ続ける企業」を目指してまいります。

 なお、先日公表されたトヨタグループビジョン※7に則り、創業精神「世のため 人のため」という原点に立ち返り、信頼される企業に向けた努力を続けてまいります。

 

※1 マルチパスウェイ:ハイブリッド車(HEV)から電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)に至るまで、多様なパワートレインの開発に焦点を当てた、トヨタ自動車株式会社の経営戦略

※2 技術ロードマップ:快適・安全・安心な車室空間の実現に向け、技術を蓄積するとともに、将来必要となる技術や開発設備を計画的に獲得するために、必要となる技術アイテムと時期を明確化したもの

※3 2030ものづくり戦略:開発から生産技術、製造まで、ものづくりを一気通貫でとらえ、 技術ロードマップと工法開発を紐づけ課題を明確にし、 解決のための取り組みを整理したもの

※4 CVC(Corporate Venture Capitalの略):事業会社が自己資金でファンドを組成し、主に未上場の新興企業(ベンチャー企業)に出資や支援を行う活動・組織のこと

※5 TQM(Total Quality Managementの略):総合的品質管理。柔軟で強靭な企業体質を保つため、基本理念の「全員参加」「お客さま第一」「絶え間ない改善」に基づき、「人」「組織」「プロセス」の能力を高め、業務品質向上を図る

※6 CSV経営:Creating Shared Valueの略。本業の中で社会課題の解決に取り組み、経済的な価値と社会的な価値の両立を目指そうとする経営

※7 トヨタグループビジョン:トヨタ自動車株式会社の豊田章男会長が2024年1月30日に発表した、トヨタグループ17社が進むべき方向を示した新たなビジョン

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ

 

[戦略]

トヨタ紡織グループは、創業者である豊田佐吉の考えをまとめた「豊田綱領」に基づき、すべてのステークホルダーから信頼され続けるために「基本理念」を制定し、事業活動において着実に実践しています。持続可能な成長の追求を通じて経済的価値の向上を図り、その成果をステークホルダーのみなさまに還元するとともに、持続可能な成長への投資をすることで、中長期的に企業価値の向上を図り、ステークホルダーのみなさまの期待に応え、国際社会・地域社会の発展に貢献します。

これまでもCSR活動に取り組み、SDGsの達成に貢献してきましたが、世の中の変化に合わせ、2019年3月よりCSRからCSV経営へのシフトを加速させています。そして2020年7月、さまざまな社会課題の中から本業を通じて優先的に取り組む重要な課題を特定し、解決する姿をマテリアリティとして策定しました。

さらに、CSV経営の考え方を明確にするため、CSRの考え方を見直し、2021年11月に取締役会の承認を受け、「トヨタ紡織グループサステナビリティ基本方針」を策定しました。

また、「基本理念」を実践するために、グローバルでの共通の価値観や行動パターンとして「TB Way」「トヨタ紡織グループ行動指針」を制定し、共有しています。

 

 

 

トヨタ紡織グループ サステナビリティ基本方針

トヨタ紡織グループのサステナビリティ基本方針は、「経営の考え方」、「マテリアリティ」、「経営の目指す姿」で構成されています。

 

 

 

1.経営の考え方

トヨタ紡織グループは、「豊田綱領」に

基づいて「マテリアリティ」を定め、本業を

通じて、社会に貢献していきます。

※トヨタグループの創始者である豊田佐吉の

考えをまとめたもの

 

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2.マテリアリティ

インテリアスペースクリエイターとして

快適・安全・安心を創造し、こころ豊かな

暮らしと交通事故死傷者ゼロ社会に貢献

していきます。

また、再生可能エネルギーの活用やサーキュ

ラーエコノミーでカーボンニュートラルの

実現に挑戦していきます。

 

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3.経営の目指す姿

当社の企業価値は、よき企業市民として

社会的価値への貢献と、競争力・経営基盤の

強化の取り組みを軸に経済的価値の向上を

図り、ステークホルダーのみなさまの期待に

応えると同時に持続可能な成長を追求して

いきます。

 

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[ガバナンス]

「CSV推進会議」(議長:CSO(Chief Strategy Officer))で、企業価値向上に向けた課題や方向性の報告、審議を行うとともに、目標を設定し、活動をフォローしています。

CSV推進会議には、ESGの観点で整理し、マテリアリティの進捗を測るESG KPIの責任者である全てのチーフオフィサーが出席し、ESG KPIのモニタリングを実施しています。これらの活動を通して、マテリアリティの達成度合いを正確に把握し、必要に応じてPDCAサイクルを回し、リカバリーを図ります。また、CSV推進会議で報告、審議された内容は取締役会に報告しています。

各機能や関係部署と協力し、日々の活動を通じて、トヨタ紡織グループ全体の社会的価値に貢献できるよう取り組みを推進しています。

 

体制図

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[リスク管理]

2019年4月から2020年7月にかけて、全社をあげて重要課題の特定に取り組み、マテリアリティを策定しました。

特定した重要課題は、人と生活を豊かにする「プラスの影響を最大化するもの」と、リスクを回避する「マイナスの影響を最小化するもの」に分類し、それらを「本業を通じて解決する安全・環境・快適に関する課題」と、「競争力を発揮するための源泉となる人・組織に関する課題」に整理。それぞれの課題へ「解決する姿」を加えたものを、トヨタ紡織グループのマテリアリティとしました。

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[指標及び目標]

2025年中期経営計画で設定した経済的価値を測る財務KPIに加え、社会的価値を測る非財務KPIのESG KPIを、2021年12月に設定しました。

ESG KPIをもとにマテリアリティを実現し、企業価値を向上することで、ステークホルダーのみなさまの期待に応えていきます。

なお、ESG KPIは、CSV推進会議(議長:CSO(Chief Strategy Officer))で、フォローしています。

また、2030年中期経営計画策定にともない、ESG KPIを見直しました。2024年度からは新ESG KPIのモニタリングを実施していきます。

 

<ESG KPI策定の考え方>

1.ESGの観点で整理

2.トヨタ紡織グループサステナビリティ基本方針に沿っている

3.マテリアリティの進捗を測ることができる

4.コーポレートガバナンスコードに則している

5.社会からの要請に対応している

No (※)

関連する

マテリアリティ

KPI項目

2023年度

実績

目標値

2025年度

2030年度

生産CO2排出量削減率(総量)

(2019年度比)

▲38%

▲25%

▲50%

再エネ導入率

34%

35%

50%

物流CO2排出量削減率(2011年度比)

▲29%

▲14%

▲20%

廃棄物排出量削減率(2011年度比)

▲36%

▲14%

▲20%

水使用量低減率(2013年度比)

▲36%

▲6%

▲8%

自然共生(植樹本数)

4.4万本

累計64万本

累計77万本

環境負荷ミニマム化につながる電動化製品のユニット部品における売上高比率

8%

10%

45%

①②

特許出願数

324件

320件/年

500件/年

①②

社外発表・論文数

74件

90件/年

120件/年

10

インテリアスペースクリエイターにつながる新製品開発率

9%

15%

30%

11

交通安全に寄与する製品の採用が予定される車種率

25%

20%

50%

12

社会貢献活動の推進 参加者数

延べ2,728人

延べ2,000人

延べ2,000人

13

行動指針の実践度

87.6%

90%

90%

14

全社員へのストレスチェック実施回数

1回/年

1回/年

1回/年

15

健康診断受診率

100%

100%

100%

16

社員の重大災害発生件数

1件

0件

0件

17

③⑤

外来工事業者・外来者の重大災害件数

0件

0件

0件

18

③⑤

環境異常・苦情発生件数

1件

0件

0件

19

サイバーセキュリティ重大インシデント発生件数

1件

0件

0件

20

DX認定

認定事業者かつ注目事業者に向け活動中

DX銘柄

DX銘柄

21

独占禁止法違反件数

0件

0件

0件

22

贈収賄違反件数

0件

0件

0件

23

④⑤

サプライチェーン上の人権リスク対応(人権デュー・ディリジェンスの展開)

展開率100%

展開率100%

展開率100%

24

客先からの外部表彰

3件

5件

5件

25

適時開示順守率

100%

100%

100%

(※) 上記KPIの実績および目標値のうち、No.1、2、4、5、6、13、16、17、18、19、21、22は、トヨタ紡織グループグローバル、No.3、7、8、9、10、11、12、14、15、20、23、24、25はトヨタ紡織㈱単体の数値です。

 

 

個別項目

 

(2)人的資本

 

1.人的資本経営の取組み

トヨタ紡織グループは2030年の目指す姿を「インテリアスペースクリエイターとして快適な移動空間を実現し、製品、顧客の幅を広げながら社会課題の解決に貢献している会社」としています。今後、自動車市場の変化や顧客ニーズの多様化に対応し、ものづくりの競争力を磨き続けることに加え、お客さまへの提供価値の拡大を図り、車室空間全体を企画・提案できるインテリアスペースクリエイターへ成長していくことが必要です。その実現のためには、多様なアイデンティティを持つ人材が、トヨタ紡織グループに魅力を感じて集まり、自由に意見を出し合い、尊重し合うことにより、新しい価値やアイデアが生まれ続ける環境をつくっていくことが必要です。

このために、事業戦略と整合した人材戦略が必要であり、2023年に取組むテーマ、目指す姿、及び具体的な人事施策まで落とし込み、これらの進捗を管理するためKPIを定めました。私たちの目指す姿の実現に向け、人的資本経営のサイクルを確立し、そしてレベルアップすることにより、社員、家族さらにはお客さまのWell-beingの実現につなげたいと考えています。

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2.取り組むべき人事施策

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 ※ 人的資本に関する取組み・KPIの詳細は、「人的資本レポート」をご参照ください。
https://www.toyota-boshoku.com/_assets/dl/company/library/human_capital_2023.pdf

 

1)必要な人材の明確化

人材ポートフォリオに基づく採用・育成と、人材の活躍状況をモニタリングする仕組みを構築し、「活躍の3領域」における必要な人材の適時かつ効率的な確保を目指します。

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また、日本本社との連携のために海外に派遣している多くの日本人コーディネータ(非ライン長)を適正化し、帰任者が新領域で活躍できるよう、日本以外の国の拠点長・統括会社機能トップポストのローカル化も推進しています。

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2)成長への支援

活躍の3領域それぞれで活躍できる人材の育成のため、2023年からは、社員が自身の専門分野以外の業界や領域から学ぶ機会の提供や、社員の新たな挑戦を後押しするため、希望する部署やポストに異動できる社内公募制度の対象を若手社員に拡大しました。社内公募制度では、37件の募集数に対し、13名のマッチングが成立しました。

コア領域では技能や技術力の強化、顧客拡大領域ではグローバル対応力の強化を図ります。新価値領域では先駆的な提案を行うために必要な各分野のエキスパートや、新たなビジネスモデルを構築するための幹部人材・経営層の育成にも力を入れています。事業領域の拡大、新規ビジネス創成の担い手を育てることを目的に、ワークショップやアイディアコンテストの実施、新たな価値観・考え方を身につけることを意図したベンチャー企業・他社・大学への派遣制度の整備や、新事業を立案する専門部署の設立などの施策を推進しています。

 

3)ダイバーシティ&インクルージョンの浸透

2022年に社員の生の声を把握し、経営陣に伝えて問題解決につなげるための従業員ネットワークグループ、ENRG(Employee Network Resources Group)を設立しました。「女性」「若手」「外国人」「シニア」「障がい者」の5つのグループに分かれて活動しています。

2023年は5つのENRGが主体となり、D&Iウィークを開催しました。妊婦体験、車いす体験、育児休業取得者(男性・女性)の経験談、シニア・障がい者グループの紹介、ボーイング社の従業員グループとのパネルディスカッションなど、ENRGイベントを行いました。

女性社員のキャリア支援では、重点育成対象者を登録、個別育成計画を立案し、各職場で育成しています。また、本人・上司の意識変革のため、主任職(係長級)の女性社員と上司向けのキャリア教育や、育休後の復職前セミナー、アンコンシャスバイアス教育を行っています。

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そして、性別に限らず、育児や介護などさまざまなライフイベントに直面した社員に多様な選択肢を与えることでキャリアとの両立を図れるよう、各種制度の見直しも行ってきました。

2023年からは、家族のケア(育児・介護・配偶者の妊娠サポート)、不妊治療といった幅広い事由で取得できる休暇制度の新設をすすめ、2024年4月から開始しました。育児理由の短時間勤務制度もフレックスやテレワークが可能なことに加え、選択できる勤務時間を拡充し、子どもの年齢が18歳まで利用できるようにしています。

また当社では、仕事と家庭を両立できる環境整備が、社員のモチベーション向上や業務の進め方の見直しに繋がると考え、男性の育休への意識向上と職場の理解を推進しています。2023年からは、育児休業給付金の受給後も減少する収入を補填する支援金制度も開始し、育休中の経済面でのサポートを行い、取得を後押ししています。

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4)働きやすさの追求

当社では、「社員のいきいき」を定量的に評価するため、全社で統一された指標として、「いきいきKPI」を導入し、その向上に向けて、これまで制度や環境の整備を進めてきました。

「いきいき働き方改革」では、テレワーク制度の拡充(遠隔地における長期リモートワークの導入)や、業務の効率化に関する提案を行う制度(インセンティブあり)、会議体の見直しやノー会議デーの設定により、柔軟で効率的かつ創造的に働けるよう、環境整備を行っています。同時に、誰もが自分の考えを気兼ねなくオープンにできる「風通しのよい職場風土」を醸成するため、昨年に引き続き、サンクス活動、あいさつ運動、ハラスメント未然防止教育、思いやりコミュニケーション研修、有識者による講演会、いきいきコミュニケーション活動(コミュニケーション費用を会社が補助)を実施しました。また、「本音でものを言えるとは何か」「本音でものをいえる職場にしていくために私たちがやるべきこと」をテーマに、各職場において、本音対話会を実施し、社員が明るく楽しく、いきいきと働ける職場づくりに注力しています。

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(3)TCFDへの対応

 

トヨタ紡織グループは「地球環境保護を重視した企業活動の推進」を基本理念に、持続可能な社会の実現に向け、トヨタ紡織グループ一体となって地球環境保護に貢献しています。

2016年に「2050年環境ビジョン」を策定し、2020年には「取引先とともに「ものづくり」の革新を図り、環境負荷のミニマム化を実現する」をマテリアリティ(本業を通じて優先的に取り組む重要課題)として特定し、環境へ配慮した取り組みを推進しています。また、2023年に社会動向を踏まえ「2050年環境ビジョン」を一部見直しました。

2020 年4月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同しました。気候変動が事業に与える影響とそれによるリスクと機会をシナリオに基づいて広範に分析することで、自社の取り組みの方向性を確認し、今後の経営戦略に反映していきます。

 

※ Task Force on Climate-related Financial Disclosures

 

 

[ガバナンス]

気候変動を含む環境問題に関する具体的な取り組み施策は、取締役会での意思決定を経て、経営戦略会議、経営企画会議、経営会議などで業務執行を行っています。

取締役会、経営戦略会議、経営企画会議で指示された環境問題への対応方針などは、年3回開催される環境推進会議で共有し、トヨタ紡織グループの環境課題に対する実行計画の策定と進捗管理につなげています。また、実行計画に基づくKPIを設定し、毎月の経営会議に報告し、マネジメントレビューを実施しています。

環境推進会議で報告、議論された内容は、必要に応じて取締役会に報告し、取締役会の指示・監督のもと、戦略への反映を実施しています。

 

[戦略]

気候関連のリスクと機会のシナリオ分析

①シナリオ分析結果

国際エネルギー機関(IEA)による移行面で影響が顕在化する「1.5~2℃シナリオ※1」と、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による物理面で影響が顕在化する「4℃シナリオ※2」を踏まえ、短期・中期・長期のリスクと機会を抽出し、特にリスク・機会の評価が高いものを下表に記載。

 

※1 1.5℃シナリオ:NZE(IEA World Energy Outlook 2021)、2℃未満シナリオ:SDS(IEA World Energy Outlook 2021)

※2 4℃シナリオ:RCP8.5(IPCC第5次評価報告書)

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②重点取り組み

製品材料のサーキュラーエコノミーによるカーボンニュートラルへの挑戦

トヨタ紡織グループは製品のライフサイクルでのCO2排出量の削減を推進しています。

製品の軽量化や植物由来材料(バイオマス)の活用、電動化製品に対応した技術開発に加え、製品のリサイクル性向上も進めます。また、カーボンニュートラルに向け、製品に使われている材料のCO2排出量削減も進めていきます。

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※1 製品を原料として再利用し、新たな製品にすること

※2 使用済製品を化学的に分解して製品の原料として再利用すること

※3 再生可能な生物由来の資源

 

 

③シナリオ分析を通じて

・気候変動が事業に与えるリスク・機会の大きさを再認識するとともに、当社の取り組みがリスク低減・機会拡大につながっていることを確認することができました。

・シナリオ分析の結果は、「2025年 中期経営計画」の取り組み推進および「2030年 中期経営計画」を検討する上での参考とし、経営戦略へ反映していきます。

・今後もシナリオ分析の結果を踏まえ、リスクや機会に対する対応を強化していくとともに、さらなる情報開示に取り組んでいきます。

 

 

[リスク管理]

カーボンニュートラル環境センターが気候変動にともなう外部環境の変化と内部環境の変化を全社的にモニタリングし、事業に影響を与えるリスクを洗い出しています。

気候関連リスクは、取締役会長や取締役社長も出席し、人事総務本部を担当するChief Human Resources Officer(CHRO)が議長を務めるリスク管理推進会議で特定します。リスク管理推進会議では、各部からの報告をもとに、気候変動に起因する「台風」「洪水」を含むあらゆるリスクについて議論します。他リスクとの関係の中で相対的に重要性を判断した上で、最終的に全社にとっての気候関連リスクを特定しています。

特定されたリスクはChief Risk Officer(CRO)のマネジメントのもと、取締役会へ報告しています。

 

[指標と目標]

中期・長期目標

 

・2050年環境ビジョン

 トヨタ紡織グループ CO2排出量ゼロにチャレンジ

 ライフサイクル CO2排出量ゼロにチャレンジ

 

GHG排出量

[目標]

スコープ1,2

スコープ3

・2030年目標

・2030年目標

CO2排出量2019年度比 ▲50%

CO2排出量2019年度比 ▲30%

・2025年環境取り組みプラン

CO2排出量2019年度比 ▲25%

 

[実績]

 

項目

2023年度(概算)(※1)

2019年度

2019年度比削減率

 

 

CO2 スコープ1

69,592  t-CO₂e

76,444  t-CO₂e

▲30%

 

 

CO2 スコープ2

164,872  t-CO₂e

260,470  t-CO₂e

 

 

CO2 スコープ3

算出中(※2)

 

 

 

※1 KPMGあずさサステナビリティ株式会社による第三者保証を取得予定です。

※2 スコープ3の一部算定方法を変更したため、算出中です。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成

績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおり

であります。

 なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月20日)現在において当社グループ

が判断したものであります。

 

(1) 経済状況等

  当社グループの事業には、全世界における製品の生産と販売、サービスの提供が含まれております。重要な部分

を占める自動車関連製品の需要は、製品・サービスを提供している国又は地域の経済状況の影響を受けることにな

ります。従って、日本、北中南米、中国、アジア・オセアニア、欧州を含む当社グループの主要市場における景気後退及びそれに伴う自動車需要の縮小は、当社グループの経営成績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループの事業は、競合他社が製造を行う地域の経済状況から間接的に影響を受ける場合がありま

す。例えば、競合他社が現地でより低廉な人件費の労働力を雇用した場合、当社グループと同種の製品をより低価

格で提供できることになり、その結果、当社グループの売上が悪影響を受ける可能性があります。さらに、部品や

原材料を製造する地域の現地通貨が下落した場合、当社グループのみならず他のメーカーでも、製造原価が下がる

可能性があります。このような傾向により、輸出競争や価格競争が熾烈化し、いずれも当社グループの業績及び

財務状況に悪影響を及ぼす可能性が生じることになります。

 

(2) 特定の取引先への依存

 当社グループは、自動車内装品をはじめとした各種自動車部品を主にトヨタ自動車㈱に販売しており、当

連結会計年度の売上収益に占める同社への割合は、23.1%となっております。そのため、同社の自動車販売動向に

よっては、当社グループの経営成績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当連結会計年度末現在の同社による当社の議決権の所有割合は、直接所有割合32.5%であります。

 

(3) 国際的活動及び海外進出に潜在するリスク

 当社グループの生産及び販売活動は、日本をはじめ北中南米、中国、アジア・オセアニア、欧州など幅広い市場で展開しているため、これらの地域市場への事業進出には各国諸事情の違いにより次のようないくつかのリスクが内在しております。

①予期しえない法律・規制、不利な影響を及ぼす租税制度の変更

②社会的共通資本(インフラ)が未整備なことによる事業活動への影響

③不利な政治的または経済的要因の発生

④人材の採用・確保と労働問題に係るリスク

⑤テロ、戦争、感染症、その他要因による社会的混乱

 

 

(4) 為替レートの変動

 当社グループの事業には、全世界における製品の生産と販売、サービスの提供が含まれております。各地域にお

ける売上、費用、資産、負債を含む外貨建ての項目は、連結財務諸表作成のために円換算されております。これら

の項目は換算時の為替レートにより、現地通貨における価値が変わらなくても、円換算後の価値が影響を受ける可

能性があります。一般に、他の通貨に対する円高は、当社グループの経営成績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能

性があります。

 

(5) 価格競争

 自動車業界における価格競争は大変厳しいものとなっております。

 当社グループは、技術、品質、価格に優れた製品を全世界に供給し、顧客の要望に対応できる企業と考え

ておりますが、将来においても有効に競争できるという保証はありません。これは当社グループの属している各製

品市場、地域市場において新しい競合先、既存の競合先間の提携により市場シェアを急速に拡大する可能性がある

ためです。価格面での圧力又は有効に競争できないことによる顧客離れは、当社グループの経営成績及び財務状況

に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 原材料、部品供給元への依存

 当社グループの生産は、原材料・部品を複数のグループ外供給元に依存しております。当社グループは、グルー

プ外供給元と取引基本契約を結び、原材料・部品の安定的な取引を安定的な生産の前提としておりますが、供給逼

迫による世界的な品不足や供給元の不慮の事故・大規模な震災、異常気象等による台風や洪水、感染症の流行など

により、原材料・部品の不足が生じないという保証はありません。その場合、生産の遅れを招き、原価を上昇させ

る可能性があります。また、原材料・部品を生産する際に使用する電気やガスなどのエネルギー価格が著しく上昇した場合も原価を上昇させる可能性があります。

 

(7) 環境規制

当社グループは、基本理念に基づき、地球環境保護を重視した企業活動の推進を活動の基本とし、環境への負荷

低減および適用される法規制遵守を徹底しております。具体的には、環境規制に適応した製品開発、環境負荷

物質の発生を低減させる工法・技術開発、および製造段階で発生する環境負荷物質の低減に努めており

ます。

 しかし、環境に関するさまざまな法規制は、今後も改正や強化される傾向にあり、その対応に遅れた場合には、

製品開発、製品製造の限定・縮小などを引き起こす恐れがあり、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を及

ぼす可能性があると考えています。

 また、環境に関するさまざまな法規制への対応に遅れた場合は、国や自治体、地域住民、顧客からの信頼を失

い、当社の評判及び信用に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 新製品の開発力

 当社グループは、経営の基本理念の一つである「革新的な技術開発、製品開発に努め、お客さまに喜ばれる、

良い商品を提供する」のもと、高度化・多様化する市場のニーズを先取りし、顧客の満足が得られるよう、新製品

開発に努めております。今後も継続して新製品を開発し、販売できると考えておりますが、そのプロセスは複雑

かつ不確実なものであり、以下をはじめとする様々なリスクがあります。

 ①新製品や新技術への投資に必要な資金と資源を、今後、十分充当できる保証はありません。

 ②長期的な投資と大量の資源投入が、成功する新製品又は新技術へつながる保証はありません。

 ③技術の急速な進歩と市場ニーズの変化により、当社グループの商品価値が急激に低下する可能性があります。

 ④現在開発中の新技術の商品化の遅れにより、市場の需要に対応できず、収益機会を逸する可能性があります。

 

(9) 知的財産権

 当社グループは、他社製品と差別化を図るため、技術とノウハウの蓄積と、これらの保護について努力を傾注し

ておりますが、特定の地域では知的財産権による完全な保護が困難であり、または限定的にしか保護されない状況

にあります。そのため、第三者が当社グループの知的財産を使って類似した製品を製造することを防止できない

可能性があります。また、他社が類似する、もしくは、当社グループより優れている技術を開発し、当社グループ

の特許や企業秘密を模倣又は解析調査することを防止できない可能性があります。さらに、当社グループは他社の

知的財産権に配慮しながら製品や技術の開発を行っておりますが、これらが将来的に他社の知的財産権を侵害して

いると判断される可能性があります。

 

 

(10) 商品の欠陥

 当社グループは、経営の基本理念の一つに「クリーンで安全な商品を提供することを使命とし、地球環境保護を

重視した企業活動の推進」を掲げ、総力をあげて品質向上に取組んでおります。しかし、全ての製品について欠陥が無く、将来リコールや製造物責任賠償が発生しないという保証はありません。

 また、製造物責任賠償について、保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する賠償額を完全にカ

バーできるという保証はありません。大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような商品の欠陥は、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を及ぼし、売上の低下、収益の悪化などにより、当社グループの経営成績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 大規模災害

 当社グループは、大規模災害による事業活動への影響を最小化する為、事業継続のための体制整備を進め、安否

確認システムの整備、定期的な訓練や生産設備の定期的な検査・点検等の諸施策を行っております。

 しかし、当社グループならびに仕入先企業の生産施設で発生する人的・自然的災害、停電などの中断事象による

影響を完全に防止又は軽減できる保証はありません。特に、当社グループの国内工場や仕入先などの取引先の多く

は、東海地方に所在しており、この地域で大規模な震災、台風、集中豪雨による洪水が発生した場合、

生産・納入活動が遅延・停止する可能性があります。遅延・停止及び混乱が長期間にわたる場合、当社グループの

経営成績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)情報セキュリティ

 当社グループは、日々高度化・巧妙化するサイバー攻撃について、外部からの不正侵入・システムへの不正アク

セスやコンピュータウイルス感染、また機密情報漏洩等を重大なリスクと捉え、セキュリティ対策を推進してい

ます。対策を推進する上で社員に対する啓発活動・教育・訓練による運用面の強化も重要と考えており、システム

面での対策強化に加え、社員に対するセキュリティ意識の底上げを組織的・継続的に行うことで、当社グループの

信頼維持・向上を図っております。また、仕入先と一緒になってセキュリティ強化の取り組みを行うことで、サプライチェーン全体の安全性確保に努めております。

 しかし、サイバー攻撃・意図的な不正・過失等により、情報システム等に障害が生じる場合や、機密情報が外部

に漏洩する可能性があります。このような事象が発生した場合、当社グループの事業活動の停滞や社会的信用の

低下等により、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 上記を含むリスクについて、当社グループは、リスク管理推進会議を通じてリスクを統合的に把握・管理すると共に、障害発生時の対応ルール・体制を整備することで、損失を未然に回避・極小化する活動を行っております。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」とい

う。)の状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況

■事業を取り巻く環境

 当連結会計年度の世界経済は、不安定な国際情勢や不確実性の高まりが影響し、減速傾向となりました。インフレ・金融引き締めの長期化など、地域ごとに経済の方向感の違いも見られました。

 自動車業界においては、原材料費や物流費の高止まりはあったものの、半導体不足が解消されたことによる増産などにより市場全体の売上規模は拡大しました。一方、カーボンニュートラルに向けて自動車のBEV※1シフトが急激に進んでまいりましたが、多数のメーカーが参入したことによる価格競争の激化や、欧米でのBEVの伸び率の鈍化など、業界の情勢変化は激しく速いものとなってきています。

 

■当期の事業概況

①足許の競争力強化

 当社は、原材料費、物流費が高止まりする中で、自動車生産台数の回復に柔軟な生産対応を行いつつ、販売価格と調達価格の両面で、適正な価格転嫁を行ってまいりました。またトヨタ紡織広瀬やトヨタ紡織精工等のシート骨格部品を開発生産する会社を仲間に加え、構成部品から完成シートまでの一貫した開発・生産体制を構築し、ものづくりのさらなる競争力強化を進めました。さらに、価格競争力を強化し稼ぐ力を向上させるため、原価企画やVA※2の推進による変動費改善、設備投資や経費等の固定費の効率化にも努め、各地域の事業体ごとにきめ細やかな収益改善策も実施し、過去最高の営業利益を実現することができました。

②中長期目線での取り組み

 モビリティ環境の変化をふまえ、2030年に向けての中期経営計画を策定し、2023年11月に公表しました。当社の強みである「ユーザーに一番近い製品」に対する技術開発力やシートなどの大きな製品をジャストインタイムでグローバルにお届けできる展開力、また豊富なグローバル人材などを活かし、「インテリアスペースクリエイター※3として快適な移動空間を実現し、製品、顧客の幅を広げながら社会課題の解決に貢献している会社」を「2030年目指す姿」といたしました。実現に向けて取り組むため、今年4月1日付で組織・体制を見直し、製品事業分野と技術開発分野を統合し、移動空間企画本部、移動空間開発本部、ユニット部品事業本部、技術開発本部に改編しました。

 また、JAPAN MOBILITY SHOW 2023におきましてMOOX-RIDEを発表しました。これは、車窓の景色に連動したVR/AR体験を搭載したモビリティエンターテイメントで、“あいちデジタルアイランドプロジェクト”※4にも参画し、公道走行での実証実験も行いました。これらの結果を評価し、事業化も検討する予定です。また、当該プロジェクトでは、当社が既に中部国際空港株式会社向けにサービスを提供しております行動・属性可視化システム※5を活用した行動変容につきましても、実証実験を行いました。今後も、車室空間全体を企画し体験価値を加えた新しいサービスや、生活空間における新価値を創造することで、新しいビジネス機会を獲得し、事業化に向けて推進していきます。

 

※1 BEV(Battery Electric Vehicle):電気自動車

※2 VA(Value Analysis):提案製品の品質や機能を落とすことなく設計変更や工程変更によりコストダウンを実現するための手法の

一つ

※3 インテリアスペースクリエイター:構成部品1つからトータルコーディネートまで、お客さまの期待を超えるソリューションを創

造し、QUALITY OF TIME AND SPACE(すべてのモビリティーへ提供する“上質な時空間”)を提供できるリーディングカンパニー

※4 あいちデジタルアイランドプロジェクト:2030年に世の中での普及が見込まれる近未来の事業・サービスを、中部国際空港島及び

周辺地域において先行して実用化することを目指す愛知県のプロジェクト

※5 行動・属性可視化システム:当社が開発した、人の行動・属性データを可視化し、分析するシステム

 

 当連結会計年度の業績につきましては、連結売上収益は、グローバルでの車両生産台数の回復に伴う増産により、前連結会計年度に比べ3,495億円(21.8%)増加の1兆9,536億円となりました。利益につきましては、増産効果や車種構成の変化に加え合理化などにより、連結営業利益は、前連結会計年度に比べ309億円(65.0%)増加の786億円、税引前利益は、前連結会計年度に比べ350億円(67.1%)増加の873億円となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度に比べ432億円(294.3%)増加の578億円となりました。

 

 当連結会計年度末の財政状態につきましては、資産は、有形固定資産の増加などにより、前連結会計年度末に比べ1,203億円増加の1兆1,276億円となりました。一方、負債は、前連結会計年度末に比べ642億円増加し、6,347億円となりました。主な要因は、営業債務及びその他の債務の増加によるものです。資本は、前連結会計年度末に比べ560億円増加し、4,929億円となりました。主な要因は、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上によるものです。

 

セグメントごとの業績は、次のとおりであります。

 

<日本>

 売上収益は、生産台数の増加などにより、前連結会計年度に比べ1,899億円(25.9%)増加の9,228億円となりました。営業利益は、増産効果や車種構成の変化はありましたが、諸経費の増加に加え、体質強化費用及び前年度の移転価格税制調整金の影響などにより、前連結会計年度に比べ9億円(△8.5%)減少の106億円となりました。

 

<北中南米>

 売上収益は、生産台数の増加などにより、前連結会計年度に比べ1,116億円(28.7%)増加の5,003億円となりました。営業利益は、生産準備に伴う諸経費の増加はありましたが、新車種立上げ等による増産効果や過年度生産変動に伴う費用回収などにより、6億円(前連結会計年度は営業損失11億円)となりました。

 

<中国>

 売上収益は、生産台数の減少などにより、前連結会計年度に比べ84億円(△3.4%)減少の2,362億円となりました。営業利益は、車種構成の変化はありましたが、減産影響などにより、前連結会計年度に比べ27億円(△13.1%)減少の184億円となりました。

 

<アジア・オセアニア>

 売上収益は、インド、インドネシアでの拡販に伴う生産台数の増加や為替の影響などにより、前連結会計年度に比べ243億円(9.7%)増加の2,739億円となりました。営業利益は、拡販による増産効果や合理化に加え、前年度の移転価格税制調整金の影響などにより、前連結会計年度に比べ229億円(163.8%)増加の369億円となりました。

 

<欧州・アフリカ>

 売上収益は、生産台数の増加や為替の影響などにより、前連結会計年度に比べ229億円(21.2%)増加の1,312億円となりました。営業利益は、増産効果や合理化及び前期のロシア事業終了に伴う費用計上がなくなることなどにより、前連結会計年度に比べ100億円(521.6%)増加の119億円となりました。

 

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物の期末残高は、2,441億円と前連結会計年度末に

比べ40億円(△1.6%)の減少となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

<営業活動によるキャッシュ・フロー>

 営業活動の結果増加した現金及び現金同等物は1,748億円となりました。これは主に、税引前利益873億円、減価償却費及び償却費522億円などにより資金が増加したことによるものです。

 

<投資活動によるキャッシュ・フロー>

 投資活動の結果減少した現金及び現金同等物は866億円となりました。これは主に、有形固定資産の取得による

支出646億円などにより資金が減少したことによるものです。

 

<財務活動によるキャッシュ・フロー>

 財務活動の結果減少した現金及び現金同等物は915億円となりました。これは主に、リース負債の返済による支出

328億円、配当金の支払145億円などにより資金が減少したことによるものです。

 

 

 

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

 前年同期比(%)

日本(百万円)

869,233

25.0

北中南米(百万円)

468,372

30.0

中国(百万円)

208,251

△3.8

アジア・オセアニア(百万円)

246,286

10.7

欧州・アフリカ(百万円)

107,659

18.9

合計

1,899,803

19.8

 (注) 1 金額は、販売価格によっております。

2 北中南米セグメントにおいて、生産台数の増加などにより、生産実績が増加しております。

 

b.受注実績

 当社グループは、主にトヨタ自動車株式会社をはじめとする各納入先より、四半期毎及び翌月の生産計画の提示を受け、生産能力を勘案して生産計画を立て生産しております。

 

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

 前年同期比(%)

日本(百万円)

848,314

31.8

北中南米(百万円)

495,572

29.0

中国(百万円)

224,677

△4.7

アジア・オセアニア(百万円)

255,684

9.3

欧州・アフリカ(百万円)

129,375

21.4

合計

1,953,625

21.8

 (注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。

2 日本セグメントにおいて、生産台数の増加などにより、販売実績が増加しております。

3 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 相手先

 前連結会計年度

(自 2022年4月1日

  至 2023年3月31日)

 当連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

 金額(百万円)

 割合(%)

 金額(百万円)

 割合(%)

トヨタ自動車㈱

345,660

21.5

450,992

23.1

トヨタ モーター ノース アメリカ㈱

162,051

10.1

228,214

11.7

トヨタ車体㈱

150,938

9.4

199,711

10.2

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

①重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針及び4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、連結売上収益が、前連結会計年度に比べ3,495億円(21.8%)増加の1兆9,536億円となりました。連結営業利益は、前連結会計年度に比べ309億円(65.0%)増加の786億円となりました。連結税引前利益は、前連結会計年度に比べ350億円(67.1%)増加の873億円となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度に比べ432億円(294.3%)増加の578億円となりました。

 なお、当社グループは、経営成績に重要な影響を与える要因として、取引先である自動車メーカーの自動車生産

台数、販売台数及び販売車種等の変動の影響を受けております。

 

 

a.売上収益

 売上収益はグローバルでの車両生産台数の回復に伴う増産により前連結会計年度に比べ3,495億円(21.8%)増加の1兆9,536億円となりました

b.営業利益

 営業利益は、増産効果や車種構成の変化に加え合理化などにより前連結会計年度に比べ309億円(65.0%)

増加の786億円となりました

c.税引前利益

 税引前利益は営業利益の増加などにより、前連結会計年度に比べ350億円(67.1%)増加の873億円となりました

d.法人所得税費用

 法人所得税費用は、前連結会計年度に比べ115億円(△36.8%)減少の198億円となりました。また、税引前

利益に対する比率は、前連結会計年度の60.2%から22.8%となりました。

e.親会社の所有者に帰属する当期利益

 親会社の所有者に帰属する当期利益は前連結会計年度に比べ432億円(294.3%)増加の578億円となり、基本的1株当たり当期利益は311円74銭となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フロー

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッ

シュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

b.経営及び財務に関する考え方

 当社グループは、経済的価値向上の成果をステークホルダーに長期安定的に還元するとともに、将来の成長分野へ積極的に投資することで、中長期的に企業価値の向上をはかることを「経営の目指す姿」とし、経営基盤と競争力を強化しつつ、お客さまや社会に対する提供価値の多面化や事業領域の拡大を進めております。

 

c.資金調達の方針及び方法

当社グループは、事業活動の継続、適切な流動性の維持及び財務構造の安定化、成長への投資を目的として、

資金調達を実施しております。資金調達の方法については、直接金融、間接金融双方の市場環境を踏まえ、資金

調達方法の多様化や経済合理性の観点から総合的に判断し、決定しております。

設備投資や研究開発費などの長期資金需要については、金融機関からの長期借入金及び社債の発行にて対応し

ております。その際、返済負担の軽減を図るために、年度別の返済・償還額の平準化をしております。運転資金需要については短期借入金にて対応しております。

また、多様化する資金調達環境下において、安定的に資金調達可能な環境を確保すべく、当社グループは国

内の格付機関から格付を取得しております。本報告書提出日現在において、株式会社日本格付研究所より格付

AA(安定的)を付与されております。こうした外部機関からの当社グループへの財務状況に対する評価は一定

のキャッシュポジションを維持していることなどによるものであります。

また、緊急的な資金需要に対して、コミットメントラインを設定し、資金を確保できる体制を整えておりま

す。

 

④経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成の状況を判断するための客観的な指標等

 2023年11月に発表した中期経営計画において、2030年目指す姿を「インテリアスペースクリエイターとして快適な移動空間を実現し、製品、顧客の幅を広げながら社会課題の解決に貢献している会社」とし、2030年の財務目標として、売上収益2兆2,000億円、営業利益1,500億円、営業利益率7%を目標に掲げました

 2023年度の財務実績は、売上収益は前期比3,495億円増加の1兆9,536億円、営業利益は前期比309億円増加の786億円となりました。

 2023年度は、日本での減産や将来に向けた体質強化費用の計上があった一方で、全社を挙げた不採算事業体の収益改善活動や客先回収など、競争力強化活動は着実に実施してまいりました。今後も、人材戦略投資や研究開発、新たな顧客への拡販などの先行投資を積極的に実施し、2030年中期経営計画の実現を目指してまいります。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当する事項はありません。

 

 

6【研究開発活動】

研究開発活動の基本方針

 当社グループでは、「お客さまに信頼と満足をお届けする製品の開発」という基本的な考えのもと、当社独自の技術や仕組みにより、世界のあらゆるお客さまの期待に応えられる魅力的で高品質な商品開発に取り組んでおります。

 そのために、年々高度化・多様化するお客さまのニーズを先取りし、他社を凌駕する魅力的な技術・商品開発、

及びコア技術の更なる熟成を図っております。また、各地域統括会社が、それぞれの地域のニーズに即した製品

開発を行うことで、グループをあげて、グローバルマーケットを視野に入れた最適な開発体制を構築しております。

 また、新興国市場の急激な拡大にも対応できる徹底した良品廉価活動による競争力の強化を進めてまいります。

 なお、無形資産に計上された開発費を含む当連結会計年度の研究開発費は、50,350百万円であり、セグメント別の

活動状況及び研究開発費は、次のとおりであります。

 

①日本

 シート・内外装事業におきましては、車室内イルミネーションを、シート動作や空調、音響と連動制御させることにより、五感に働きかける先進的な照明システムを開発し、お客さまの様々な使用シーンに合わせた快適な空間を提供します。

 また、ユニット部品事業におきましては、第2世代の燃料電池車および、第2.5世代の外販用燃料電池モジュールにセパレーターやイオン交換器を供給しております。

燃料電池システムの外販や商用車への展開に呼応し、水素社会の実装に貢献するとともに売上拡大を行ってまいります。

 当地域に係る研究開発費は、50,020百万円であります。

 

②北中南米

 特に記載すべき活動状況はありません。

 当地域に係る研究開発費は、330百万円であります。

 

③中国

 特に記載すべき事項はありません。

 

④アジア・オセアニア

 特に記載すべき事項はありません。

 

⑤欧州・アフリカ

 特に記載すべき事項はありません。